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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】スポンジローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241011BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241011BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241011BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/00 551
C08L83/04
F16C13/00 B
F16C13/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020098789
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021192084
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大柴 秀隆
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-070574(JP,A)
【文献】特開2009-139836(JP,A)
【文献】特開2005-300591(JP,A)
【文献】特開2019-163806(JP,A)
【文献】特開2019-191304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G15/20
G03G15/00
F16C13/00
C08L83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、該軸体の外周に形成された発泡弾性層とを備えたスポンジローラであって、
前記発泡弾性層が、ミラブル型シリコーンゴム組成物、ビニル基含有シリコーン生ゴム、発泡剤、及び架橋剤を含有する発泡弾性層用組成物を発泡及び加硫させてなり、
前記発泡剤が、化学発泡剤及び樹脂マイクロバルーンを含む、又は樹脂マイクロバルーンのみを含むものであり、
前記発泡弾性層用組成物から前記発泡剤を除いたゴム組成物の硬化物の、下記測定条件での損失係数tanδが0.020以下である
スポンジローラ。
<測定条件>
周波数8Hz、温度100℃、歪み制御5μm
【請求項2】
前記発泡弾性層の硬度変化量が、-2.5以内であり、
前記発泡弾性層のアスカーC硬度が、15度以上40度以下である請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項3】
加圧ローラである請求項1又は2記載のスポンジローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジローラに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種印刷用スポンジローラを備えている。
【0003】
上記の画像形成装置における定着手段としては、例えば、熱ローラ定着方式が採用されている。熱ローラ定着方式では、加熱ローラ(定着ローラ)と加圧ローラとを一対の基本構成とし、ローラ対の圧接ニップ部に、トナー画像が担持された被記録材(転写材シート、ファックス紙、印字用用紙等)を導入することで、被記録材にトナー画像を熱圧定着させることが一般的である。定着手段に用いる定着ローラ又は加圧ローラには、適度なニップ圧に調整するために、発泡弾性層(スポンジ層)が用いられている。
【0004】
発泡弾性層は、一般に、オルガノポリシロキサン及び充填剤を含有するミラブル型シリコーンゴムを加硫及び発泡させて形成される。発泡弾性層を有する定着又は加圧ローラは、圧接状態に装着されて、連続的又は断続的に回転することで機能を発揮するため、熱や摩擦による負荷がかかりやすく、経時で発泡弾性層の硬度が低下するため、耐久性が高いことが求められる。
繰り返し使用しても高い耐摩耗性を有する紙送り用ゴム部材を形成しうるシリコーンゴム組成物として、例えば、特許文献1に、紙送り用ゴム部材を形成するゴムコンパウンドにビニル基含有シリコーン生ゴムを加えたシリコーンゴム組成物であって、ゴムコンパウンドを加硫させた後の損失係数tanδが0<tanδ≦1であるシリコーンゴム組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-182977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年の高速、高精細、かつ高品質な画像形成装置を提供するという要望に応えるため、定着ローラ又は加圧ローラには、更なる耐久性の向上が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性が高いスポンジローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸体と、軸体の外周に形成された発泡弾性層とを備えたスポンジローラであって、発泡弾性層が、ミラブル型シリコーンゴム組成物、ビニル基含有シリコーン生ゴム、発泡剤、及び架橋剤を含有する発泡弾性層用組成物を発泡及び加硫させてなり、発泡弾性層用組成物から発泡剤を除いたゴム組成物の硬化物の、下記測定条件での損失係数tanδが0.035以下であるスポンジローラである。
<測定条件>
周波数8Hz、温度100℃、歪み制御5μm
【0008】
発泡弾性層のアスカーC硬度が、15度以上40度以下であることが好ましい。
【0009】
本発明のスポンジは、加圧ローラであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性が高いスポンジローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のスポンジローラを示す斜視図である。
図2】実施例及び比較例のスポンジローラの硬度変化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
[スポンジローラ]
本発明のスポンジローラ1は、図1に示すように、軸体2と、軸体2の外周に形成された発泡弾性層3をこの順に備えたスポンジローラ1である。
以下、本発明のスポンジローラ1の詳細について図1を参照しながら説明する。
【0014】
(軸体)
軸体2は、好ましくは、導電性を有する、従来公知の現像ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。このような金属で構成される軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0015】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0016】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、発泡弾性層3との接着性を向上させるため、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0017】
軸体2の軸線方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。例えば、印字対象がA4サイズである場合、軸体2の軸線方向の長さは250mm以上320mm以下であることが好ましく、260mm以上310mm以下であることがより好ましい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。例えば、軸体2の外径(外接円の直径)は、4mm以上14mm以下であることが好ましく、6mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0018】
(発泡弾性層)
発泡弾性層3は、(A)ミラブル型シリコーンゴム組成物、(B)ビニル基含有シリコーン生ゴム、(C)発泡剤及び(D)架橋剤を含有する発泡弾性層用組成物を発泡及び加硫させてなるものである。
【0019】
発泡弾性層3は、動的粘弾性測定において、周波数8Hz、温度100℃、歪み制御5μmで測定した損失係数tanδが、0.035以下であり、好ましくは、0.025以下である。
損失係数tanδは、上記発泡弾性層用組成物から(C)発泡剤を除いた、(A)ミラブル型シリコーンゴム組成物、(B)ビニル基含有シリコーン生ゴム及び(D)架橋剤を含有するゴム組成物の硬化物を測定したものである。すなわち、硬化物のtanδが0.035以下のゴム組成物を発泡弾性層のゴム材料として用いることによって、疲労劣化しにくい発泡弾性層を得ることができ、結果的に耐久性の高いスポンジローラを得ることができる。
以下、発泡弾性層用組成物の成分について説明する。
【0020】
(A)ミラブル型シリコーンゴム組成物
ミラブル型シリコーンゴム組成物としては、付加硬化型のミラブル型シリコーンゴム組成物が好ましい。付加硬化型のミラブル型シリコーンゴム組成物は、例えば、少なくとも(a)オルガノポリシロキサン及び(b)充填剤を含有するものが好ましい。
【0021】
(a)オルガノポリシロキサン
(a)オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示される。
SiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは互いに同一又は異種の炭素数1~12、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは1~8の非置換又は置換の一価炭化水素基である。aは1.5~2.8、好ましくは1.8~2.5、より好ましくは1.95~2.05、さらに好ましくは1.98~2.01の範囲の正数である。)
SiO(4-n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95以上2.05以下の正数を示す。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0022】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。また、Rは、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0023】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。
【0024】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンは、Rのうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0025】
(A)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(A)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(A)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0026】
(A)オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。
また、(A)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0027】
(b)充填剤
(b)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0028】
シリカ系充填材としては、RSi(ORで示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、Rは、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。Rはアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0029】
シリカ系充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11質量部以上39質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0030】
本発明におけるミラブル型シリコーンゴムは、例として、信越化学工業株式会社製のKE-571-U、KE-1571-U、KE-951-U、KE-541-U、KE-551-U、KE-561-U、KE-961T-U、KE-1541-U、KE-1551-U、KE-941-U、KE-971T-U等を使用することができる。また、導電性付与剤を含有しているミラブル型シリコーンゴムとしては、KE-87C-40PU等を使用することができる。
【0031】
(B)ビニル基含有シリコーン生ゴム
(B)ビニル基含有シリコーン生ゴムとしては、1分子中にビニル基を少なくとも1つ含有するものであり、ビニル基は1分子中に2つ含有するものあってもよい。
ビニル基含有シリコーン生ゴムとしては、ビニルメチルシリコーン生ゴム、フェニルメチルシリコーン生ゴム、フロロシリコーン生ゴム等が挙げられる。
【0032】
(A)付加硬化型のミラブル型シリコーンゴム組成物と(B)ビニル基含有シリコーン生ゴムとの配合量比は、50:50から80:20の範囲であることが好ましく、60:40から70:30の範囲であることがより好ましい。
【0033】
(C)発泡剤
発泡剤としては、発泡弾性層3の形成に用いられる既知の発泡剤を用いることができる。例えば、化学発泡剤、未膨張マイクロバルーンを用いることができる。化学発泡剤であれば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。有機アゾ化合物の中でも、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等が好適に使用される。特に、アゾビス-イソブチロニトリルが好適に使用できる。
【0034】
未膨張マイクロバルーンとして、樹脂マイクロバルーンを挙げることができる。樹脂マイクロバルーンとしては、外殻に熱可塑性樹脂を用いたものが好ましく用いられる。外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体、メタアクリロニトリル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。シリコーンゴムの硬化温度に合わせて、外殻となる樹脂の軟化温度が適当な範囲内にある樹脂マイクロバルーンを用いることが好ましい。また、内包される蒸発性物質としては、ブタン、イソブタン等の炭化水素を挙げることができる。
未膨張マイクロバルーンの平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0035】
発泡剤として未膨張マイクロバルーンを用いることもできる。本発明に好適な未膨張マイクロバルーンは、「マツモトマイクロスフェアーFシリーズ」(松本油脂製薬株式会社製)、「エクスパンセルシリーズ」(エクスパンセル社製)等として市販されている。この発明に好適な未膨張の樹脂マイクロバルーンは、弾性層を形成するのに使用される化学発泡剤の分解温度よりも高い温度で膨張する機能を有する樹脂マイクロバルーンから選択される。
発泡剤の配合量は、発泡弾性層用組成物100質量部に対しての低比重でありながら、大きさが均一なセルを得る観点から、0.5質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
【0036】
(D)架橋剤
架橋剤としては、付加反応架橋剤、有機過酸化物架橋剤等を挙げることができる。
上記付加反応架橋剤として、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
付加反応架橋剤の配合量は、通常、発泡弾性層用組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。
【0037】
付加反応架橋剤を使用する場合、有機過酸化物架橋剤は、単独でミラブル型シリコーンゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すると、得られるトナー供給ローラの強度、歪み等の物性をより一層向上させることができる。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
有機過酸化物架橋剤の配合量は、通常、発泡弾性層用組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0038】
付加反応架橋剤は、付加反応触媒を併用するのが好ましい。付加反応触媒は白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができる。
【0039】
発泡弾性層用組成物は、上記以外に、添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、導電材、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0040】
発泡弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよい。また、発泡弾性層3の成形方法も、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、押出成形等を選択することができる。また、軸体2上に形成された発泡弾性層3を研削又は研磨等してもよい。
【0041】
発泡弾性層用組成物を加硫させる際の加熱温度は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有する発泡弾性層3を容易に形成することもできる。
【0042】
発泡弾性層3の硬度(アスカーC硬度)は、15度以上40度以下であることが好ましい。このような低硬度の発泡弾性層において、上記のようなtanδを示すゴム材料を用いることは効果的である。
【0043】
本発明のスポンジローラは、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置の加圧ローラ又は定着ローラに好適である。
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた発明も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0044】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。
[実施例1]
(発泡弾性層用組成物の調製)
以下の材料で、発泡弾性層用組成物を調製した。
(A)付加硬化型のミラブル型シリコーンゴム組成物(X-30-4037U、信越化学工業株式会社製) 80質量部
(B)ビニル基含有シリコーン生ゴム(KE-77VB、信越化学工業株式会社製)
20質量部
(C)化学発泡剤 5質量部
(D)架橋剤 3質量部
【0045】
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0046】
(発泡弾性層の形成)
次いで、プライマー層を形成した軸体と発泡弾性層用組成物とを押出成形機にて一体分出し、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて上記混合物を250℃で20分間加熱することにより1次加硫し、その後、熱風乾燥炉において、210℃で10時間にわたって2次加硫することにより発泡ローラ原体を作製した。この発泡ローラ原体の円周面を、株式会社水口製作所製の研磨機により金属砥石による高速研磨を行い、外径32mmのスポンジローラローラを作製した。
【0047】
[実施例2、3、及び比較例1から3]
ビニル基含有シリコーン生ゴムの種類及び配合を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様に作製した。
【0048】
[評価]
上記実施例及び比較例について、下記の耐久性評価を行った。評価結果を表1に示す。
(硬度変化量)
耐久性評価として、以下の評価方法により硬度変化量を測定した。
シャフト径φ22.0mmを用いて製品径φ32mmのローラを作製した。そのローラをφ40.0mmの金属ローラに、ゴム厚の35%相当を圧縮し固定した。その状態で180℃の温度を与えながら、200時間回転させた。測定開始前(0時間)の硬度を0として、100時間回転後及び200時間回転後の硬度を、ASKERゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)を用い、測定荷重9.8Nで測定した。時間毎の硬度変化量を表2に示し、グラフを図2に示す。
【0049】
(損失係数tanδ)
次に、上記実施例及び比較例において、発泡剤を添加していない発泡弾性層用組成物を調製し、加硫させて、長さ20mm×幅5mm×厚み2mmの試料を作製し、粘弾性スペクトルメーター(レオロジー株式会社製)で損失係数tanδを測定した。測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
動的粘弾測定機(商品名「Pheogel-E4000」、株式会社UBM)を用い、周波数8Hz、開始温度30℃、終了温度100℃、昇温速度5℃/min、歪み制御5μm、チャック間距離10mmmで測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1、2及び図2に示すように、本発明のスポンジローラは、側鎖にビニル基を含有するシリコーン生ゴムを発泡弾性層用組成物に含有させることによって、tanδを0.035以下、硬度変化量(度)を-3以内に抑えることができる。
一方、側鎖にビニル基を含有しないシリコーン生ゴムを含有させた比較例3は、tanδ及び硬度変化量が実施例より大きく、ミラブル型シリコーン組成物のみで他のシリコーン生ゴムを含有しない比較例1および2は、更にtanδ及び硬度変化量が大きいことがわかる。
【符号の説明】
【0053】
1 スポンジローラ
2 軸体
3 発泡弾性層
図1
図2