(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】手動式開閉弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/524 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
F16K31/524 B
(21)【出願番号】P 2020101247
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雄
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-151972(JP,U)
【文献】実開昭55-177576(JP,U)
【文献】特開2002-323165(JP,A)
【文献】特開2002-130831(JP,A)
【文献】特開2013-249860(JP,A)
【文献】特開2002-068260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00
F16K 31/524
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が通過する通路に取り付けられて、前記通路を手動によって開閉するための手動式開閉弁において、
内部に弁室が形成されると共に、前記弁室に開口する第1流路と、前記第1流路とは異なる位置で前記弁室に開口する第2流路と、前記第2流路が前記弁室に開口する位置に形成された弁座とを有するケーシングと、
前記弁室内で軸方向に進退動可能に設けられた弁軸の一端側に取り付けられて、前記弁座に当接することによって前記第2流路を閉鎖する弁体と、
前記弁体を前記弁座に当接する方向に付勢する付勢バネと、
前記弁軸の前記弁体が取り付けられていない側の端部で前記弁軸に連結されて、前記弁軸を回転軸として、前記ケーシングに対して回転移動可能に設けられた操作部材と
を備え、
前記操作部材には、前記弁軸と同軸で円環形状の凹部が形成されており、
前記ケーシングには、
前記操作部材の前記凹部内に挿入される円筒形状の挿入部が、前記ケーシングと一体または別体で
立設されており、
前記操作部材
の前記凹部内または前記
挿入部の内部の何れか一方には、前記弁軸を中心として周方向に谷部と山部とが配置されたカム面が形成されており、
前記操作部材
の前記凹部内または前記
挿入部の内部の何れか他方には、
前記挿入部が前記凹部内に挿入されると、前記カム面に当接する
ことによってカム機構を形成する突起部が形成されており、
前記カム機構は、
前記突起部が前記カム面の谷部の位置にある場合には、前記弁体が前記付勢バネによって前記弁座に当接しているが、
前記操作部材の回転に伴って前記突起部が前記カム面の山部の位置に移動すると、前記操作部材が前記付勢バネに抗して前記弁軸ごと前記弁体を引き上げることによって、前記弁体を前記弁座から離間させるカム機構であり、
前記カム面の山部には、前記山部まで移動した前記突起部を保持する保持部が形成されている
ことを特徴とする手動式開閉弁。
【請求項2】
請求項1に記載の手動式開閉弁において、
前記保持部は、前記山部に形成された凹形状の部分である
ことを特徴とする手動式開閉弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れか一項に記載の手動式開閉弁において、
前記カム面は、二組の前記谷部および前記山部が、前記弁軸を中心として回転対称な位置に形成されており、
前記突起部は、前記弁軸を中心として回転対称な位置に形成されている
ことを特徴とする手動式開閉弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の手動式開閉弁において、
前記ケーシングには、前記弁軸を前記弁座に向けて進退動可能な状態で保持する弁軸受が設けられており、
前記
挿入部は、前記弁軸受が前記操作部材に向き合う位置に形成されている
ことを特徴とする手動式開閉弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が通過する通路を開閉するための手動式開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
液体が通過する通路を開閉するための開閉弁には様々なタイプの開閉弁が知られている。例えば、モータを用いて弁体を駆動することによって通路を開閉する電動弁や、電磁石に通電して弁体を吸引することによって通路を開放し、電磁石への通電を停止することによって通路を閉鎖する電磁弁などは広く使用されている。
【0003】
また、より構造が簡単で安価な開閉弁としては、手動でレバーやハンドルを動かすことによって通路を開閉する手動式開閉弁も広く使用されている。例えば、弁軸の一端に弁体が取り付けられると共に、弁軸の他端側にネジ送り機構が形成されており、操作者がハンドルを回すとネジ送り機構によって弁体が弁座に当接して閉弁状態となり、ハンドルを逆方向に回すと弁体が弁座から離間して開弁状態となる手動式開閉弁が知られている(特許文献1)。あるいは、通常時は、弁体が付勢バネによって弁座に押し付けられて閉弁状態となっているが、操作者がレバーを倒すと、弁軸と一緒に弁体が弁座から引き上げられて開弁状態となる手動式開閉弁も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-130831号公報
【文献】特開2013-249860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている手動式開閉弁には開弁状態が安定しないという問題があった。すなわち、閉弁状態では弁体が弁座に押し付けられるので、手動式開閉弁は何回閉弁させても常に同じ状態となるが、開弁状態では、閉弁状態からのレバーやハンドルの操作量に応じて弁座に対する弁体の位置が変わるので、開弁させる度に開弁状態が異なってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、開弁状態を安定させることが可能な手動式開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の手動式開閉弁は次の構成を採用した。すなわち、
液体が通過する通路に取り付けられて、前記通路を手動によって開閉するための手動式開閉弁において、
内部に弁室が形成されると共に、前記弁室に開口する第1流路と、前記第1流路とは異なる位置で前記弁室に開口する第2流路と、前記第2流路が前記弁室に開口する位置に形成された弁座とを有するケーシングと、
前記弁室内で軸方向に進退動可能に設けられた弁軸の一端側に取り付けられて、前記弁座に当接することによって前記第2流路を閉鎖する弁体と、
前記弁体を前記弁座に当接する方向に付勢する付勢バネと、
前記弁軸の前記弁体が取り付けられていない側の端部で前記弁軸に連結されて、前記弁軸を回転軸として、前記ケーシングに対して回転移動可能に設けられた操作部材と
を備え、
前記操作部材には、前記弁軸と同軸で円環形状の凹部が形成されており、
前記ケーシングには、前記操作部材の前記凹部内に挿入される円筒形状の挿入部が、前記ケーシングと一体または別体で立設されており、
前記操作部材の前記凹部内または前記挿入部の内部の何れか一方には、前記弁軸を中心として周方向に谷部と山部とが配置されたカム面が形成されており、
前記操作部材の前記凹部内または前記挿入部の内部の何れか他方には、前記挿入部が前記凹部内に挿入されると、前記カム面に当接することによってカム機構を形成する突起部が形成されており、
前記カム機構は、
前記突起部が前記カム面の谷部の位置にある場合には、前記弁体が前記付勢バネによって前記弁座に当接しているが、
前記操作部材の回転に伴って前記突起部が前記カム面の山部の位置に移動すると、前記操作部材が前記付勢バネに抗して前記弁軸ごと前記弁体を引き上げることによって、前記弁体を前記弁座から離間させるカム機構であり、
前記カム面の山部には、前記山部まで移動した前記突起部を保持する保持部が形成されている
ことを特徴とする。
【0008】
かかる本発明の手動式開閉弁においては、内部に弁室が形成されたケーシングと、ケーシングに対して回転移動可能な操作部材とを備えており、操作部材には、弁軸と同軸で円環形状の凹部が形成されている。またケーシングには、操作部材の凹部内に挿入される円筒形状の挿入部が、ケーシングと一体または別体で立設されている。そして、操作部材に形成された凹部内、または円筒形状の挿入部の内部の何れか一方には、谷部および山部を有するカム面が形成されており、操作部材の凹部内または挿入部の内部の何れか他方には、挿入部が凹部内に挿入されるとカム面に当接することによってカム機構を形成する突起部が形成されている。このため、ケーシングに対して操作部材を回転させると、突起部がカム面の山部の上を移動することになり、操作部材がケーシングから遠ざかる結果、弁軸を介して操作部材に接続されている弁体が弁座から離間して、手動式開閉弁が開弁状態となる。ここで、カム面の山部には、移動して来た突起部を保持する保持部が形成されている。
【0009】
こうすれば、手動式開閉弁を開弁させる際には、操作部材を回転させて、突起部が保持部に保持されるようにすることで、開弁する度に、弁座から弁体までの距離を一定にすることができる。このため、手動式開閉弁を開弁する度に開弁状態がばらつく事態を防止することが可能となる。加えて、操作部材の凹部内に円筒形状の挿入部が挿入されており、その円筒形状の挿入部の内部に、カム面および突起部が形成されている。すなわち、カム面および突起部は、操作部材の凹部内に挿入された円筒形状の挿入部のその内部に収容された状態となっている。このため、挿入部の内部に砂などの異物が入って、カム面と突起部との当接位置が変化したり、傷つけたりする虞も生じない。
【0010】
また、上述した本発明の手動式開閉弁においては、カム面の山部の一部を凹形状に形成することによって、保持部を形成することとしても良い。
【0011】
こうすれば、操作部材を回転させて手動式開閉弁を開弁させると、突起部が保持部に嵌まり込んで保持される。このため、何らかの拍子で操作部材に力が加わった場合でも、手動式開閉弁の開弁状態を保持しておくことが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の手動式開閉弁においては、谷部および山部を組とする二組のカム面を、弁軸を中心として回転対称な位置に形成すると共に、2つの突起部を、弁軸を中心として回転対称な位置に形成することとしても良い。
【0013】
こうすれば、操作部材を回転させることによってカム面が突起部を押し上げても、操作部材は弁軸を中心として両側から同じ大きさの力を受けることになるため、操作部材が傾くことが無い。このため、操作部材が傾くことによって一部が強く当たって回り難くなったり、部分的に摩耗したりする事態を防止することが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の手動式開閉弁においては、弁軸を弁座に向けて進退動可能な状態で保持する弁軸受をケーシングに設けておき、弁軸受が操作部材に向き合う位置の弁軸受から円筒形状の挿入部を立設させても良い。
【0015】
弁軸受は、ケーシングとは別体で操作部材と向かい合わせの位置に存在するため、弁軸受から挿入部を立設させれば、弁軸受側の挿入部と操作部材側の凹部との間に容易にカム機構を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例の手動式開閉弁1の外観形状を示す斜視図である。
【
図2】本実施例の手動式開閉弁1の分解組立図である。
【
図3】本実施例の手動式開閉弁1の内部構造を示す断面図である。
【
図4】弁軸受40の挿入部43の内部に形成されたカム面46の形状を示した説明図である。
【
図5】ハンドル20の凹部21aの内部に形成された突起部23の形状を示した斜視図である。
【
図6】ハンドル20を回転させることによって、ハンドル20の突起部23がカム面46の上を移動する様子を示した説明図である。
【
図7】ハンドル20を回転させることによって、弁室11内で弁体30が進退動する様子を示した説明図である。
【
図8】変形例のカム面46の形状についての説明図である。
【
図9】ハンドル20を回転させることによって、変形例のカム面46の上をハンドル20の突起部23が移動する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施例の手動式開閉弁1の外観形状を示した斜視図である。
図1(a)に示されるように、本実施例の手動式開閉弁1は、ケーシング10にハンドル20が取り付けられた形状となっている。ケーシング10の内部には、弁室11と、弁室11の側面に開口する第1流路12と、弁室11の円形の底面に開口する第2流路13とが形成されており、弁室11の内部には、略円筒形状の弁体30が収容されている。また、第2流路13が弁室11に開口する部分の周囲には、円環形状の弁座14が形成されている。
図1(a)では、弁体30は弁座14に当接した状態となっている。
【0020】
ハンドル20は手動で回転可能となっており、
図1(a)中で太い破線の矢印の方向にハンドル20を回転させると、弁体30が弁室11内で、弁座14から遠ざかる方向(後退方向)に移動する。その結果、
図1(b)に示したように、第2流路13を弁室11に連通させる弁口15が開放されて流体が通過可能となって、手動式開閉弁1が開弁状態となる。また、
図1(b)中に太い破線で示した矢印の方向のハンドル20を回転させると、弁室11内で弁座14に近付く方向(前進方向)に弁体30が移動して、最終的には、
図1(a)に示したように弁体30が弁座14に当接する。その結果、弁口15を液体が通過できなくなって、手動式開閉弁1が閉弁状態となる。尚、ハンドル20の回転方向を区別する必要がある際には、手動式開閉弁1が閉弁状態から開弁状態となる方向を「正方向」と称し、開弁状態から閉弁状態となる方向を「負方向」と称して区別するものとする。
【0021】
図2は、本実施例の手動式開閉弁1の分解組立図である。また、
図3は、
図1中のA-A位置で手動式開閉弁1を縦方向に切断することによって、手動式開閉弁1の内部構造を示した断面図である。
図2に示されるように本実施例の手動式開閉弁1は、ケーシング10と、弁体30と、弁軸受40と、弁軸受押さえ板50と、ハンドル20などを備えている。
図1を用いて既述したようにケーシング10の内部には弁室11が形成されており、弁室11には第1流路12および第2流路13が開口している。そして、弁室11に第2流路13が開口した部分は弁口15となっており、弁口15の周囲には円環形状の弁座14が形成されている。また、弁室11は、弁口15が形成された側と反対側の端部で内径が一段大きく形成されることによって、挿入部11aが形成されている。このため弁室11は、挿入部11aを介して外部に開口した形状となっている。
【0022】
弁体30は、円柱形状の本体部31と、ゴム材料によって形成された円環形状の当接部32と、同じくゴム材料によって形成された円形のシールリング33とを備えている。
図3(a)に示されるように、本体部31の中心軸上には、後述する弁軸34が挿通される挿通孔31bが形成されている。また、本体部31の一端面には、円形の外縁上に等間隔で3箇所のガイド片31aが突設されており、更に、本体部31の他端面には、挿通孔31bと同軸状に円柱状空間からなる凹部31cが、本体部31の軸方向略中央の位置まで穿設されている。そして、本体部31には、内部に凹部31cが形成された部分の外周に、円形のシールリング33が嵌め込まれている。更に、内部に凹部31cが形成されていない部分の本体部31の外周には、円環形状の当接部32が嵌め込まれている。
【0023】
弁軸34は細長い円柱形状の部材であり、一端側および他端側には円環形状の止金34a、34bが取り付けられている。弁軸34の軸径は、本体部31に形成された挿通孔31bに挿通可能な大きさに設定されている。弁軸34の一端に取り付けられた止金34aの外径は、挿通孔31bの内径よりも大きくなっている。このため、弁軸34に本体部31を取り付ける際には、本体部31のガイド片31aが突設された側に開口している挿通孔31bに、弁軸34の他端側を挿入して、弁軸34の一端側の止金34aが本体部31に当接するまで挿通する。この結果、弁軸34は、他端側が、本体部31に穿設された凹部31cから突出した状態となり、その弁軸34にコイルバネ35を取り付ける。コイルバネ35の外径は、凹部31cの内径よりも小さくなっているため、コイルバネ35は凹部31c内に嵌め込まれた状態となる。尚、本実施例のコイルバネ35は、本発明における「付勢バネ」に対応する。また、本実施例のハンドル20は、本発明における「操作部材」に対応する。
【0024】
弁軸受40(
図2参照)は、円柱形状の軸受部41の一端側に、軸受部41よりも小径で、内径が本体部31の外径よりも大径の円筒形状の弁体案内筒42が突設され、更に、軸受部41の他端側には、軸受部41よりも小径で円筒形状の挿入部43が突設されている。また、挿入部43の外側面には小さな半円柱形状の回り止め部44が突設されている。軸受部41の外径は、弁室11の内径よりは大きいが、弁室11の外側の挿入部11aの内径よりは小さな径に形成されている。また、弁体案内筒42の外径は、弁室11の内径よりも小さな径に形成されている。軸受部41の中心軸上には、弁軸34を挿通させるための挿通孔40a(後述する
図3(b)参照)が貫通しており、軸受部41の外周には、ゴム材料で形成された円形のシールリング45が嵌め込まれている。
【0025】
また、弁体案内筒42の内部に、円柱状空間の凹部42aが形成されており、更に、凹部42aの他端側の軸受部41内には、中心位置に凹部42aよりも小径で挿通孔40aよりも大径のシール孔41aが穿設されている。シール孔41a内に2個のスペーサ37と2個のシールリング38を挿入した後、止座金36をはめて固定した状態で、弁軸34を軸受部41の挿通孔40aに挿通させると、
図3(b)に示すように、弁軸34はスペーサ37およびシールリング38内に挿入され、本体部31およびシールリング33が凹部42a内に挿入される。その結果、弁体30および弁軸34は、弁軸34の軸方向に進退動可能な状態で保持されることになる。
【0026】
以上のようにして、弁体30や、弁軸34や、コイルバネ35、バネホルダ36、スペーサ37、シールリング38を弁軸受40に組付けた後、これらを、ケーシング10に開口している挿入部11aから、弁室11内に挿入する(
図2参照)。すると、弁体30から突設された3つのガイド片31aが、ケーシング10の弁口15から第1流路12内に挿入され、弁軸受40の軸受部41およびシールリング45が、ケーシング10の挿入部11a内に挿入された状態となる。その状態で、今度は、弁軸受押さえ板50をケーシング10に取り付ける。弁軸受押さえ板50の中央には貫通孔50aが形成されており、貫通孔50aの内径は、弁軸受40の挿入部43の外径よりは大きいが、軸受部41の外径よりは小さく形成されている。また、貫通孔50aの一部は小さく半円状に切り欠かれて切り欠き部50bが形成されており、貫通孔50aに弁軸受40の挿入部43を挿通させると、挿入部43の外側面に突設された回り止め部44が、切り欠き部50bに嵌って、弁軸受押さえ板50がケーシング10に当接した状態となる。そこで、この状態で、取付ネジ51を用いて弁軸受押さえ板50をケーシング10に取り付ける。
【0027】
また、
図2に示すように、ハンドル20は、円柱形状の本体部21の他端側の両側面から、半径方向外側に向かって直方体の操作部22が突設された形状となっている。本体部21の中心軸上には、弁軸34を挿通させるための貫通孔20aが形成されている。更に、本体部21の一端側には、本体部21と同軸に円環状空間の凹部21aが穿設されており、凹部21aの内径は、弁軸受40に突設された挿入部43の外径よりも大きく形成されている。このため、弁軸受40を貫通して挿入部43の中央から突出している弁軸34を、ハンドル20に凹部21aが形成されている側から貫通孔20aに挿入することで、ハンドル20の凹部21a内に弁軸受40の挿入部43を挿入することができる。また、貫通孔20aから顔を覗かせた状態の弁軸34先端に、止金34b(Eリング)を嵌める。こうすることによって、ハンドル20を、弁軸受40の挿入部43に対して回転可能な状態で取り付けることができる。
【0028】
また、弁軸受40は回り止め部44が切り欠き部50bに嵌っているため、弁軸受押さえ板50に対して回転不能となっており、更に、弁軸受押さえ板50は取付ネジ51でケーシング10に取り付けられている。このためハンドル20は、
図1中に太い破線の矢印で示したように、ケーシング10および弁軸受40に対して回転可能な状態で取り付けられることになる。そして、ハンドル20を回転させることで、後述するカム機構によってケーシング10の弁室11内で弁体30を前進させたり、後退させたりすることが可能となる。弁軸受40から突出した挿入部43の内部、およびハンドル20に穿設された凹部21aの内部には、以下に説明するカム機構が内蔵されている。
【0029】
図4(a)は、
図2中で矢印Bの方向から見て、弁軸受40の挿入部43の内部の形状を示した説明図である。図示されるように、挿入部43は円筒形状に形成されており、挿入部43の内部には、挿入部43の内周面43aに沿って周方向に高さが連続して変化する二組のカム面46が形成されている。また、それそれのカム面46には、高さが低くなった谷部46a(
図4(a)中では斜線を付して表示)と、谷部46a以外の山部46bとが形成されている。更に、カム面46とカム面46との間は、山部46bよりも高く形成された仕切部47によって仕切られている。
【0030】
図4(b)には、挿入部43の内周面43aに沿って360度の角度範囲に形成されたカム面46および仕切部47が、平面に展開された状態で示されている。図中で情報に向けて突出した矩形の部分は仕切部47であり、仕切部47の間にカム面46が形成されている。カム面46の中で、高さが0の位置およびその周辺の部分が谷部46aであり、カム面46から谷部46aを除いた部分が山部46bとなっている。また、山部46bは、谷部46aの中央の高さが最も低くなった位置から、角度が大きくなるに従って次第に高くなり、最も高くなった後は一旦、低くなって再び高くなる形状に形成されている。以下では、山部46bの中で、角度が大きくなるに従って高くなる部分を傾斜部46dと称し、傾斜部46dの終了後に高さが一旦低くなった部分(角度位置105度および285度の部分)を保持部46cと称することにする。また、
図4(a)および
図4(b)から明らかなように、弁軸受40には2つのカム面46が形成されているが、これらのカム面46は、弁軸受40の中心軸CLを中心として回転対称となる形状に形成されている。
【0031】
図5は、
図2中で矢印Cの方向から見て、ハンドル20の凹部21aの内部の形状を示した説明図である。図示されるように、凹部21aの中央には、凹部21aと同軸状に円柱形状の凸部21bが突設されており、凸部21bの中心軸上には、弁軸34が挿入される貫通孔20aが形成されている。また、凸部21bの両側には、凸部21bの側面に沿わせるようにして、突起部23が突設されている。ハンドル20に形成された2つの突起部23も、ハンドル20の中心軸CLを中心として回転対称となる形状に形成されている。
【0032】
このようなハンドル20の凹部21aに、弁軸受40の挿入部43を挿入すると、凹部21aに突設された突起部23の先端が、挿入部43内に形成されたカム面46に当接する。そして、ハンドル20を回転させると、突起部23がカム面46の上を移動する結果、ハンドル20が弁軸受40に対して進退動するようになる。従って、本実施例では、弁軸受40の挿入部43内に形成されたカム面46と、ハンドル20の凹部21a内に形成された突起部23とが、カム機構を形成していることになる。また、本実施例の弁軸受40から突設された挿入部43は、本発明における「カム機構部」に対応する。
【0033】
図6は、ハンドル20を回転させることによって、ハンドル20が弁軸受40に対して進退動する様子を示した説明図である。
図6では、弁軸受40に形成されたカム面46および仕切部47が平面に展開した状態で表示されている。また、このことに対応して、ハンドル20に形成された突起部23も平面に展開した状態で表示されている。
【0034】
図6(a)には、ハンドル20の突起部23が、弁軸受40のカム面46の谷部46aにある状態が示されている。尚、
図6(a)の状態を、以下では、ハンドル20の角度位置が0度の状態と表記する。ハンドル20の角度位置が0度の状態では、ハンドル20の突起部23の先端と、カム面46の谷部46aとの間には隙間が存在しているが、図中に白抜きの矢印で示した方向(正方向)にハンドル20を回転させると、突起部23の先端がカム面46の傾斜部46dに当接する。そして、更にハンドル20を正方向に回転させると、
図6(b)に示すように、ハンドル20の突起部23が、カム面46の傾斜部46dで押し上げられるようにして傾斜部46dを登っていく。これに伴って、ハンドル20は弁軸受40から遠ざかる方向に移動する。
図6(b)中には、角度位置が0度の時のハンドル20の位置が、細い破線で示されている。従って、
図6(b)に示した状態では、ハンドル20を角度位置0度の位置から正方向に回転させることによって、距離dL1だけ、ハンドル20が押し上げられている。また、このようなハンドル20の移動に伴って、弁室11内では弁体30が弁座14から遠ざかるように移動することになる。
【0035】
図7は、ハンドル20を角度位置が0度の状態から正方向に回転させることによって、弁室11内で弁体30が移動する様子を示した説明図である。
図7(a)には、ハンドル20の角度位置が0度の時(
図6(a)の状態に対応)に、弁室11内で弁体30が存在する位置が示されている。図示されるように、ハンドル20の角度位置が0度の時は、弁体30の当接部32がコイルバネ35によって弁座14に押し付けられている。従って、この状態では、手動式開閉弁1は閉弁状態となっている。
【0036】
また、
図7(b)は、ハンドル20が回転することによって、
図6(b)に示した距離dL1だけハンドル20が押し上げられた状態を表している。
図7(b)中には、押し上げられる前のハンドル20の位置が破線で示されている。このようにハンドル20が押し上げられると、その動きが弁軸34を介して弁体30に伝わる結果、弁座14に当接していた弁体30の当接部32が、弁座14から距離dL1だけ離間することになる。また、この状態では、コイルバネ35は、
図7(a)に示した状態から、弁体30が移動した距離dL1だけ押し縮められた状態となっている。従って、
図6(a)に示した状態から
図6(b)の状態まで、ハンドル20を正方向に回転させると、ハンドル20および弁体30がコイルバネ35を圧縮しながら移動することになる。
【0037】
そして、
図6(c)に示したように、ハンドル20の突起部23が、カム面46の高さが最も高くなった位置(すなわち、角度位置が90度付近あるいは270度付近)まで来ると、ハンドル20(および弁体30)の移動量は最も大きな距離dL2となる。その後、更にハンドル20を正方向に回転させると、今度は、
図6(d)に示したように、カム面46が少し低くなった保持部46cに突起部23が嵌まった状態となる。カム面46の保持部46cの位置(角度位置で105度付近、および285度付近)では、カム面46が最も高い位置(角度位置で90度付近、および270度付近)に比べるとカム面46が低くなっているので、ハンドル20(および弁体30)の移動量は、最も大きな距離dL2よりも小さな距離dL3となる。このように、ハンドル20(および弁体30)の移動量が減少した状態でも、
図7(c)に示したように、弁室11内の弁体30は、当接部32が弁座14から距離dL3だけ離間しており、手動式開閉弁1は開弁状態となっている。
【0038】
また、
図6(c)の状態から
図6(d)の状態にした時にハンドル20(および弁体30)の移動量が小さくなるということは、コイルバネ35の圧縮量が小さくなるということでもある。従って、ハンドル20を負方向に回して、
図6(d)の状態から
図6(c)の状態に戻そうとすると、コイルバネ35の圧縮量を増加させる必要が生じる。すなわち、ハンドル20を負方向に回そうとしても、コイルバネ35を圧縮するだけの力でハンドル20を回さないかぎりハンドル20は回らない。このことから、
図6(d)のように、ハンドル20の突起部23がカム面46の保持部46cに嵌っている状態は、ハンドル20の角度位置が保持部46cによって保持された状態となっている。
【0039】
以上に詳しく説明したように、本実施例の手動式開閉弁1では、弁軸受40とハンドル20との間に、カム面46と突起部23とを有するカム機構が形成されており、ハンドル20を正方向に回転させると、カム機能の働きによって弁体30を弁座14から離間させて、手動式開閉弁1を開弁させることができる。また、ハンドル20を負方向に回転させれば、コイルバネ35の付勢力で弁体30を弁座14に当接させて、手動式開閉弁1を閉弁させることができる。
【0040】
また、カム面46の山部46bには、高さが低くなった保持部46cが形成されている。このため、ハンドル20を正方向に回転させて、ハンドル20の突起部23を保持部46cの位置まで移動させれば、その角度位置でハンドル20を保持しておくことができ、従って、何かの拍子にハンドル20が勝手に負方向に回って手動式開閉弁1が閉じてしまうことを防止することができる。
【0041】
加えて、手動式開閉弁1を開弁させる際に、ハンドル20の突起部23を保持部46cの位置まで移動させておけば、弁座14から弁体30の当接部32までの距離が常に同じ距離となる。このため、手動式開閉弁1を開弁させる度に開弁状態(すなわち、弁座14から当接部32までの距離)がばらつく事態を防止することもできる。
【0042】
更に、ハンドル20の突起部23を保持部46cの位置まで移動させるためには、突起部23が、カム面46の最も高い箇所を超える必要があり、この時、コイルバネ35の圧縮量は最大となるが、この位置を超えると圧縮量は小さくなる。これに伴って、ハンドル20を正方向に回転させるために要する力も、突起部23がカム面46の最も高い箇所を超える際に最大となり、この位置を超えると小さくなる。このことから、手動式開閉弁1を開弁しようとする操作者は、ハンドル20を回す際の手ごたえから、ハンドル20の突起部23が保持部46cまで移動したことを容易に認識することができ、手動式開閉弁1を開弁する際の操作感を向上させることが可能となる。
【0043】
加えて、
図6(d)に示されるように、突起部23の先端は浅いV字型形状となっており、保持部46cの部分でのカム面46も、突起部23の先端と同形状の浅いV字型形状となっている。このため、突起部23が保持部46cの位置まで移動すると、突起部23は保持部46cによって安定した状態(すなわち、あそびの無い状態)で保持される。その結果、手動式開閉弁1を開弁する際の操作感をより一層向上させることが可能となる。
【0044】
更に加えて、手動式開閉弁1を組み立てた状態では、弁軸受40の挿入部43が、ハンドル20の凹部21a内に挿入されており、従って、カム面46および突起部23は、何れも挿入部43および凹部21a内に収容された状態となっている。このため、挿入部43および凹部21aの内部に、砂などの異物が入って、カム面46と突起部23との当接位置が変化したり、傷つけたりする虞も生じない。
【0045】
更に、弁軸受40およびハンドル20には、それぞれ2つのカム面46および突起部23が形成されているが、これらのカム面46および突起部23は、弁軸受40およびハンドル20の中心軸CLに対して回転対称となる形状に形成されている。このため、2つの突起部23がカム面46で押し上げられる際に、突起部23がカム面46から受ける力がバランスするため、ハンドル20が傾くような力が生じることがない。その結果、ハンドル20を回転させる際に、ハンドル20が傾くことによって強い摩擦が生じ、ハンドル20を回し難くなったり、ハンドル20が局所的に摩耗したりする事態を防止することが可能となる。
【0046】
上述した本実施例では、カム面46にV字状に凹んだ形状の保持部46cが形成されているものとして説明した。しかし、保持部46cは、カム面46の一部を平坦にすることによって形成しても良い。
【0047】
例えば、
図8に示した変形例では、上述した本実施例と同様に、仕切部47と仕切部47との間にカム面46が形成されており、カム面46には谷部46aと山部46bとが形成され、更に山部46bには、角度位置が大きくなるに従ってカム面46が高くなる傾斜部46dが形成されている。しかし、変形例の山部46bでは、傾斜部46dが終わった後は、角度位置が大きくなってもカム面46の高さが変わらない平坦な保持部46cが形成されており、傾斜部46dと保持部46cとの間には、小さな突起状の障害部46eが形成されている。このような変形例のカム面46でも、上述した本実施例のカム面46と同様な効果を得ることができる。
【0048】
図9は、ハンドル20を回転させることによって、変形例のカム面46の上をハンドル20の突起部23が移動する様子を示した説明図である。
図9でも、既述した
図6と同様に、弁軸受40に形成されたカム面46および仕切部47が平面に展開した状態で表示されている。
図9(a)には、ハンドル20の角度位置が0度の位置にある状態が示されている。図示されるようにハンドル20が角度位置0度の時は、突起部23はカム面46の谷部46aの位置にあり、従って、弁室11内の弁体30は当接部32が弁座14に当接した状態となっている(
図7(a)参照)。
【0049】
この状態から、正方向(
図9(a)中では白抜きの矢印で表示)にハンドル20を回転させると、突起部23の先端がカム面46の傾斜部46dに当接した後、ハンドル20の回転に従って傾斜部46dを登っていく。これに伴って、弁室11内では弁体30の当接部32が弁座14から遠ざかるように移動する(
図7(b)参照)。そして、突起部23が障害部46eを超えて平坦な保持部46cに入った後、突起部23が仕切部47に当接して停止する。また、この状態では、弁体30の当接部32が弁座14から離間しており、手動式開閉弁1は開弁状態となっている(
図7(b)参照)。
【0050】
図9(b)には、平坦な保持部46cに入った突起部23が仕切部47に当接して停止した様子が示されている。図示されるように、突起部23が保持部46cにある場合は、突起部23は、障害部46eと仕切部47との間で移動し得るが、保持部46cはカム面46の高さが一定なので、突起部23が移動しても弁座14から弁体30の当接部32までの距離が変化しない状態に保持されている。
【0051】
このような変形例のカム面46を備える手動式開閉弁1でも、突起部23が障害部46eを乗り超えた後、突起部23が保持部46cにある限りは、弁座14から弁体30の当接部32までの距離が一定に保持される。従って、突起部23が平坦部46eに達するまでハンドル20を回転させておけば、手動式開閉弁1を開弁させる度に、弁座14から当接部32までの距離が一定となるため、開弁状態がばらつく事態を回避することができる。
【0052】
加えて、突起部23が障害部46eを乗り越えて保持部46cに移動した後は、保持部46cから傾斜部46dに移動するためには障害部46eを乗り越える必要があり、この時にコイルバネ35が圧縮される。このため、開弁状態にある手動式開閉弁1のハンドル20に、何らかの拍子でハンドル20を負方向に回転させようとする力が掛かっても、コイルバネ35を圧縮して突起部23が障害部46ecを乗り越えるだけの力が掛からない限りハンドル20が回ることはなく、手動式開閉弁1を開弁状態に保持しておくことが可能となる。
【0053】
また、上述した本実施例および変形例では、カム面46は弁軸受40から突設された挿入部43の内部に形成されており、突起部23はハンドル20に穿設された凹部21aの内部に形成されているものとして説明した。しかし、ハンドル20の凹部21aの内部にカム面を形成し、弁軸受40の挿入部43の内部に突起部を形成しても良い。また、弁軸受40をケーシング10に一体に形成することによって、カム面46を有するカム機構部をケーシング10に一体に形成しても良い。
【0054】
また、上述した本実施例および変形例では、
図1および
図2に示したように、本体部21の両側に操作部22を突出させたハンドル20を回転させることによって、手動式開閉弁1を開閉させるものとして説明した。しかし、本体部21の両側ではなく、片側にだけ長い操作部22を突出させたレバー形状の部材を回転させることによって、手動式開閉弁1を開閉させるようにしても良い。
【0055】
以上、本実施例および変形例の手動式開閉弁1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…手動式開閉弁、 10…ケーシング、 11…弁室、 11a…挿入部、
12…第1流路、 13…第2流路、 14…弁座、 15…弁口、
20…ハンドル、 20a…貫通孔、 21…本体部、 21a…凹部、
21b…凸部、 22…操作部、 23…突起部、 30…弁体、
31…本体部、 31a…ガイド片、 31b…挿通孔、 31c…凹部、
32…当接部、 33…シールリング、 34…弁軸、 34a…止金、
34b…止金、 35…コイルバネ、 36…止座金、 37…スペーサ、
38…シールリング、 40…弁軸受、 40a…挿通孔、 41…軸受部、
41a…シール孔、 42…弁体案内筒、 42a…凹部、 43…挿入部、
43a…内周面、 44…回り止め部、 45…シールリング、
46…カム面、 46a…谷部、 46b…山部、 46c…保持部、
46d…傾斜部、 46e…障害部、 47…仕切部、
50…弁軸受押さえ板、 50a…貫通孔、 50b…切り欠き部、
51…取付ネジ。