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特許7570224電力計測情報管理方法、電力計測情報管理システム、情報処理装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電力計測情報管理方法、電力計測情報管理システム、情報処理装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20241011BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241011BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20241011BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20241011BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20241011BHJP
   G06Q 20/38 20120101ALI20241011BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
H02J3/00 170
H02J3/14
H04Q9/00 311H
G06Q50/06
G06Q20/38 310
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020214087
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099982
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 崇
(72)【発明者】
【氏名】中山 匡
(72)【発明者】
【氏名】細谷 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】岡井 由香利
(72)【発明者】
【氏名】高田 晃平
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特許第6767561(JP,B1)
【文献】特表2020-515222(JP,A)
【文献】特開2013-161144(JP,A)
【文献】特開2018-201263(JP,A)
【文献】特開2002-345154(JP,A)
【文献】国際公開第2019/084262(WO,A1)
【文献】特開2020-57940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0005403(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00
H02J 3/14
H04Q 9/00
G06Q 50/06
G06Q 20/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が、
電力会社及び需要家を接続する第1通信経路を介して、前記需要家に設置される電力計測器が計測した電力に係る電力計測情報を取得し、
取得した前記電力計測情報を分散台帳システムに記憶し、
前記電力会社及び前記需要家の間に仲介者が介在する第2通信経路を介して、需給調整を実施する指令を送信し、
前記指令を送信する前に、需給調整を依頼する需給調整依頼を前記第2通信経路へ送信し、
前記電力会社及び前記需要家の間に介在する仲介者が前記分散台帳システムに記憶した需給調整の対象となる需要家に関する情報及び前記分散台帳システムが記憶した前記電力計測情報に基づいて、需給調整に係る数値を算出する、
電力計測情報管理方法。
【請求項2】
前記数値は、需給調整の基準値であり、
算出した前記基準値を前記分散台帳システムに記憶する、
請求項1に記載の電力計測情報管理方法。
【請求項3】
前記数値は、需給調整の実績値又は達成率であり、
算出した前記実績値又は達成率を前記分散台帳システムに記憶する、
請求項1又は請求項2に記載の電力計測情報管理方法。
【請求項4】
前記電力会社及び複数の前記需要家の間に、一又は複数の前記需要家を管理する子仲介者と、一又は複数の子仲介者を管理する親仲介者とが介在し、
前記親仲介者について前記数値を算出する、
請求項3に記載の電力計測情報管理方法。
【請求項5】
前記子仲介者について前記数値を算出する、
請求項4に記載の電力計測情報管理方法。
【請求項6】
記分散台帳システムが記憶する前記需要家に関する情報には、前記指令に付される需給調整識別情報と、前記需要家を識別する需要家識別情報とを含む、
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の電力計測情報管理方法。
【請求項7】
記需要家に関する情報は、前記需給調整依頼を受信した前記仲介者の情報処理装置により前記分散台帳システムに記憶される、
請求項6に記載の電力計測情報管理方法。
【請求項8】
前記需要家に関する情報及び前記電力計測情報に基づく算出を、前記分散台帳システムが行う、
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の電力計測情報管理方法。
【請求項9】
算出した前記数値を表示する処理を行う、
請求項1から請求項8までのいずれか1つに記載の電力計測情報管理方法。
【請求項10】
前記分散台帳システムには、前記電力計測情報及び前記数値が非公開情報として記憶される、
請求項1から請求項9までのいずれか1つに記載の電力計測情報管理方法。
【請求項11】
電力会社及び需要家を接続する第1通信経路を介して、前記需要家に設置される電力計測器が計測した電力に係る電力計測情報を取得し、取得した前記電力計測情報を分散台帳システムに記憶し、前記電力会社及び前記需要家の間に仲介者が介在する第2通信経路を介して、需給調整を実施する指令を送信し、前記指令を送信する前に、需給調整を依頼する需給調整依頼を前記第2通信経路へ送信する前記電力会社の情報処理装置と、
前記第2通信経路にて前記電力会社及び前記需要家の間に介在して前記需要家を管理し、需給調整を行う需要家に関する情報を前記分散台帳システムに記憶する仲介者の情報処理装置と
を備え、
前記分散台帳システムに記憶した前記需要家に関する情報及び前記電力計測情報に基づいて、需給調整に係る数値を算出する、
電力計測情報管理システム。
【請求項12】
電力会社及び需要家を接続する第1通信経路を介して、前記需要家に設けられる電力計測器が計測した電力に係る電力計測情報を取得する電力計測情報取得部と、
前記電力計測情報取得部が取得した前記電力計測情報を分散台帳システムに記憶する処理を行う記憶処理部と、
前記電力会社及び前記需要家の間に仲介者が介在する第2通信経路を介して、需給調整を実施する指令を送信する需給調整指令送信部と、
前記指令を送信する前に、需給調整を依頼する需給調整依頼を前記第2通信経路へ送信する需給調整依頼送信部と、
前記分散台帳システムに記憶された前記電力計測情報及び前記需要家に関する情報に基づいて、需給調整に係る数値を算出する処理を行う算出処理部と
を備える、電力会社の情報処理装置。
【請求項13】
コンピュータに、
電力会社及び需要家を接続する第1通信経路を介して、前記需要家に設けられる電力計測器が計測した電力に係る電力計測情報を取得し
取得した前記電力計測情報を分散台帳システムに記憶する処理を行い、
前記電力会社及び前記需要家の間に仲介者が介在する第2通信経路を介して、需給調整を実施する指令を送信し、
前記指令を送信する前に、需給調整を依頼する需給調整依頼を前記第2通信経路へ送信し、
前記分散台帳システムに記憶された前記電力計測情報及び前記需要家に関する情報に基づいて、需給調整に係る数値を算出する
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家が実施した需給調整に関する情報を処理する電力計測情報管理方法、電力計測情報管理システム、情報処理装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要家による電力の使用量及び発電量等を計測するスマートメータが普及している。従来は電力量計の検針値を検針員が目視で確認する作業が行われていたが、スマートメータは計測結果を電力会社のサーバ装置へ自動的に送信することができるため、検針員の作業が不要になる利点がある。また検針員による作業が1ヶ月に1回程度の頻度であるのに対し、スマートメータによる計測結果の送信は例えば30分に1回程度の頻度で行うことができるため、電力会社が最新の計測結果を管理することができるという利点がある。
【0003】
特許文献1においては、複数のスマートメータと、データ収集通信装置と、メータデータ管理装置とを備えるデータ管理システムが提案されている。このデータ管理システムでは、スマートメータが需要先に取り付けられて以降、最初に受信したメータデータの直前のメータデータに含まれる指示数データとして、庫出指示数データを補間する機能をメータデータ管理装置が備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-57940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は電力会社が地域ごとに独占的に電力を供給していたが、電力自由化により新たな事業者が電力事業に参入してきた。様々な事業者が電力の売買に関与するようになると、売買のもととなる電力計測情報の改ざんや誤った処理が行われる恐れがあり、計測情報の改ざん防止等を実現する技術が求められる。
【0006】
以下では、電力自由化後の電力会社を単に「電力会社」(厳密には一般送配電事業者)、電力会社からの依頼により複数の需要家を束ねて電力需要を調整する事業者を「アグリゲータ(仲介者)」と呼ぶ。また複数のアグリゲータが階層的に設けられる場合があり、例えば二階層で設けられる場合には、アグリゲータの第一階層を「親アグリ(親アグリゲータ、親仲介者)」と呼び、第二階層を「子アグリ(子アグリゲータ、子仲介者)」と呼ぶ。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、電力需要の調整において扱われる情報の信頼性を高めることが期待できる電力計測情報管理方法、電力計測情報管理システム、情報処理装置及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る電力計測情報管理方法は、情報処理装置が、電力会社及び需要家を接続する第1通信経路を介して、前記需要家に設置される電力計測器が計測した電力に係る電力計測情報を取得し、取得した前記電力計測情報を分散台帳システムに記憶し、前記電力会社及び前記需要家の間に仲介者が介在する第2通信経路を介して、需給調整を実施する指令を送信し、前記指令を送信する前に、需給調整を依頼する需給調整依頼を前記第2通信経路へ送信し、前記電力会社及び前記需要家の間に介在する仲介者が前記分散台帳システムに記憶した需給調整の対象となる需要家に関する情報及び前記分散台帳システムが記憶した前記電力計測情報に基づいて、需給調整に係る数値を算出する。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態による場合は、電力に係る電力計測情報の信頼性を高めることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る電力計測情報管理システムの概要を説明するための模式図である。
図2】本実施の形態に係る電力計測情報管理システムの構成を説明するための模式図である。
図3】本実施の形態に係る電力会社サーバ装置の構成を示すブロック図である。
図4】台帳情報の一構成例を説明するための模式図である。
図5】分散台帳システムに設けられる電力計測情報DBの一構成例を示す模式図である。
図6】本実施の形態係る親アグリサーバ装置の構成を示すブロック図である。
図7】本実施の形態に係る子アグリサーバ装置の構成を示すブロック図である。
図8】DR需要家DBの一構成例を示す模式図である。
図9】本実施の形態に係るスマートメータ及びGWの構成を示すブロック図である。
図10】本実施の形態に係る電力計測情報管理システムが行う電力計測情報管理処理を説明するための模式図である。
図11】本実施の形態に係る電力会社サーバ装置が行う電力計測情報記憶処理の手順を示すフローチャートである。
図12】本実施の形態に係る電力会社サーバ装置が行うDR実施処理の手順を示すフローチャートである。
図13】本実施の形態に係る子アグリサーバ装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
図14】本実施の形態に係る需要家のGWが行う処理の手順を示すフローチャートである。
図15】本実施の形態に係る分散台帳システムのノード装置が行うベースライン算出処理の手順を示すフローチャートである。
図16】本実施の形態に係る分散台帳システムのノード装置が行う達成率算出処理の手順を示すフローチャートである。
図17】電力会社サーバ装置による達成率算出結果の表示例を示す模式図である。
図18】電力会社サーバ装置による達成率算出結果の表示例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る電力計測情報管理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
<システム概要>
図1は、本実施の形態に係る電力計測情報管理システムの概要を説明するための模式図であり、以下では一例として、電力の需給調整への適用を示す。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、電力の需給調整において、電力会社1、親アグリ2、子アグリ3及び需要家4等が電力に関する情報の送受信を行い、これらの情報を基に需給調整の達成率等を算出する処理を行うシステムである。
【0013】
電力は発電量と消費量を一致させる必要がある。従来は消費量に合うように発電量を調整していた。近年では発電量が制御しにくい太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入拡大や供給可能な発電量を上回る消費が発生しそうな事態の対策として、消費量を調整する方法も行われるようになってきた。電力の需給調整において、消費量を減らすことは発電量を増やすことと等価とみなすことができ、この需要の減少分は「ネガワット」と呼ばれる。この需給調整において、「ネガワット」の対価を支払うには、需要家の電力消費量がアグリゲータや電力会社間で不正な改ざん等が行われることなく信憑性の高い情報であることが求められる。
【0014】
また電力の需給調整において、消費量を上回る発電が発生しそうな事態の対策として、消費量を増やすことで調整を行うことがあり、この消費の増加分は「ポジワット」と呼ばれる。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、電力の消費量を減らす「ネガワット」と、電力の消費量を増やす「ポジワット」とのいずれについても扱うことが可能である。本実施の形態においては、需要家が電力の消費量を低減又は増加させて調整を行う行為を「デマンドレスポンス(Demand Response)」と呼び、以下では省略して「DR」と記載する。また「ネガワット」及び「ポジワット」をまとめて「調整力」と呼ぶ。
【0015】
電力会社1は、管轄する地域内で電力の発電量と消費量を調整する役割を行う。図1においては電力会社1が1つのみ図示されているが、例えば日本においては関東又は関西等の地方毎に1つの電力会社1が存在する。
【0016】
アグリゲータは、需要家4から調整力を調達する事業者、組織又は会社等であり、需給調整においては取引会員とも呼ばれ得る。アグリゲータは、電力会社と需要家の間で需要のバランスをコントロールする仲介者である。またアグリゲータは、電力会社1及び需要家4の間で調整力の取引を仲介する仲介者である。アグリゲータは、複数の需要家4を管理しており、電力会社1が必要となったタイミングで監理下の需要家4に必要なDRを依頼する。本実施の形態においてアグリゲータは、親アグリ2及び子アグリ3の2階層の階層構造をなしている。電力会社1は複数の親アグリ2から調整力を買い取り、各親アグリ2は複数の子アグリ3から調整力を買い取り、各子アグリ3は複数の需要家4から調整力を買い取ることになる。
【0017】
また電力会社1はDRの目標値(ネガワット又はポジワットの量)を指定して各親アグリ2にDRの依頼を行い、この依頼を受けた親アグリ2は指定された目標値を適宜に分配して複数の子アグリ3にDRの依頼を行う。親アグリ2からの依頼を受けた子アグリ3も同様に、親アグリ2から指定された目標値を適宜に分配し、複数の需要家4に対して目標値を指定したDRの依頼を行う。この依頼を受けた需要家4は、指定された目標値を目標としてDRを実施する。なおアグリゲータの階層構造は2階層でなくてよく、1階層又は3階層以上であってよい。
【0018】
需要家4は、例えば一般家庭、企業、工場又は商業施設等のように電力を消費するものであり、需要量を増減させることにより調整力を提供するものである。需要家4は、例えば自家発電設備又は蓄電池等の設備を備えることにより需給調整に協力してもよい。
【0019】
例えば電力会社1は、需要家4によるDR(電力需要の低減又は増加)を実施する依頼をアグリゲータへ与える。本実施の形態において電力会社1は、日時及びDRの目標値(ネガワット又はポジワットの量)等を指定したDR依頼を、DRを実施する日時より前にアグリゲータへ与えると共に、DRを実施する日時に至った際に、DRの実施指令をアグリゲータへ与える。アグリゲータは、電力会社1からのDR依頼に応じてDRを実施する需要家4を、自身の管理下にある複数の需要家4の中から適宜に選択し、電力会社1からのDRの実施指令に応じて選択した需要家4にDRを実施させる。その後、選択された需要家4によるDRの結果が電力会社1からのDR依頼を満たすものであるか否かが判断され、DR依頼を満たすDRが行われていた場合には、電力会社1からアグリゲータに対して報酬が支払われる。またアグリゲータは、DRを行った需要家4に対して報酬を支払ってよい。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る電力計測情報管理システムの構成を説明するための模式図である。なお図2においては、簡略化のために電力会社1、親アグリ2、子アグリ3及び需要家4をそれぞれ1つだけ図示している。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、電力会社1の電力会社サーバ装置10と、親アグリ2の親アグリサーバ装置20と、子アグリ3の子アグリサーバ装置30と、需要家4に設置されたスマートメータ40及びGW(ゲートウェイ)50とを備えて構成されている。
【0021】
スマートメータ40は、需要家4における電力の消費量(又は発電量)を計測する装置である。スマートメータ40は、通信機能を備えており、第1通信経路及び第2通信経路の2つの通信経路を介して、電力会社サーバ装置10との通信を行うことができる。第1通信経路は、スマートメータ40及び電力会社サーバ装置10の間を直接的に結ぶ通信経路であり、スマートメータによる電力検針システムにおいてAルートとも呼ばれ得る通信経路である。例えばスマートメータ40は、第1通信経路を介して30分に1回の周期で、電力量等の電力に係る電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信する。スマートメータ40が送信する電力計測情報は、例えば需要家4が単位時間当たりに消費した電力量、又は、需要家4に設置された発電施設が単位時間当たりに発電した電力量等であってよい。またスマートメータ40以外の装置によって、計測値が第1通信経路を介して電力会社サーバ装置10へ送られてもよい。
【0022】
また、第2通信経路は、電力会社サーバ装置10及びスマートメータ40の間に、親アグリサーバ装置20、子アグリサーバ装置30及びGW50等の複数の仲介者となる装置が介在する通信経路である。スマートメータ40及びGW50を結ぶ通信経路は、スマートメータにおいてはBルートと呼ばれ得る通信経路を利用するものであり、第2通信経路はこのBルートを含むスマートメータ40及び電力会社サーバ装置10の間の通信経路である。スマートメータ40は、例えばGW50からの要求に応じて、第1通信経路の送信周期より短い周期、例えば1分~30分に1回程度の周期で、電力量等の電力計測情報をGW50へ送信する。なお第1通信経路及び第2通信経路の通信は、有線通信又は無線通信のいずれであってもよい。また本実施の形態においては需要家4の電力量を計測する電力計測器をスマートメータ40とするが、これに限るものではなく、例えばトランスデューサ―等の装置であってもよい。
【0023】
電力会社サーバ装置10は、例えば電力会社1が管理運営するサーバ装置であり、例えば上記の第1通信経路を介してスマートメータ40から取得した情報から需要家4が1ヶ月間に消費した電力量を集計し、消費した電力量分の使用料金の請求等を行うことができる。この場合に電力会社サーバ装置10は、第1通信経路を介して、例えば30分に1回の周期で需要家4のスマートメータ40から送信される情報を受信する。
【0024】
また本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10は、需給調整において設定されたDRの日時及び目標値等に基づいて、DRの実施を依頼するDR依頼を予め送信する処理、及び、DRの日時に至った際又はその直前にDRの実施指令を送信する処理等を行う。この場合に電力会社サーバ装置10は、上記の第2通信経路を介してDR依頼及びDRの実施指令等を親アグリサーバ装置20へ送信する。電力会社サーバ装置10が送信したDR依頼及びDRの実施指令等は、親アグリサーバ装置20から子アグリサーバ装置30へ送信され、子アグリサーバ装置30の管理対象である複数の需要家4から選択されたいくつかの需要家4にてDRが実施されることとなる。
【0025】
電力会社サーバ装置10は、需要家4によるDRの実施状況を監視すべく、上記の第2通信経路を介して需要家4のスマートメータ40が計測した電力量に関する情報を取得することができる。この場合に電力会社サーバ装置10は、第1通信経路における情報送受信の周期よりも短い周期、例えば1分~30分に1回の周期で、第2通信経路に含まれる親アグリサーバ装置20、子アグリサーバ装置30及びGW50等の装置を介して、需要家4のスマートメータ40に対する電力量等の情報の送信を要求する。電力会社サーバ装置10からのこの要求に応じてスマートメータ40は、需要家4の消費電力等の計測値を含む情報を、第2通信経路のGW50、子アグリサーバ装置30及び親アグリサーバ装置20を介して、電力会社サーバ装置10へ送信する。
【0026】
親アグリサーバ装置20は、例えば親アグリ2が管理運営するサーバ装置であり、電力会社サーバ装置10と子アグリサーバ装置30との間の通信を中継する。例えば親アグリサーバ装置20は、需要家4のスマートメータ40が計測した電力量等の電力計測情報を子アグリサーバ装置30から受信して電力会社サーバ装置10へ送信する。このときに親アグリサーバ装置20は、複数の子アグリサーバ装置30から受信した計測値の集計(合計値の算出)等の演算処理を行い、演算処理の結果を電力会社サーバ装置10へ送信してもよい。また親アグリサーバ装置20は、電力会社サーバ装置10からDRの日時及び電力値等を指定したDR依頼を受信した場合、又は、DRの実施指令を受信した場合に、受信したDR依頼又はDRの実施指令を、親アグリ2が管理する子アグリ3の子アグリサーバ装置30へ送信する。このときに親アグリサーバ装置20は、受信したDR依頼に含まれるDRの目標となる電力値を適宜に分割し、分割した電力値をDRの目標とするDR依頼を各子アグリサーバ装置30へ送信してもよい。
【0027】
子アグリサーバ装置30は、例えば子アグリ3が管理運営するサーバ装置であり、親アグリサーバ装置20とGW50との間の通信を中継する。例えば子アグリサーバ装置30は、子アグリ3が管理する複数の需要家4からスマートメータ40が計測した電力量等に係る電力計測情報をGW50から受信して親アグリサーバ装置20へ送信する。このときに子アグリサーバ装置30は、複数のGW50から受信した計測値の集計等の演算処理を行い、演算処理の結果を親アグリサーバ装置20へ送信してもよい。また子アグリサーバ装置30は、親アグリサーバ装置20を介して電力会社サーバ装置10からのDRの日時及び電力値等を指定したDR依頼を受信した場合に、子アグリ3が管理する複数の需要家4からDRを実施する需要家4を選択する処理を行う。その後、子アグリサーバ装置30は、親アグリサーバ装置20を介して電力会社サーバ装置10からのDRの実施指令を受信した場合、予め決定しておいたDRを実施する需要家4に対して、DRの実施指令を送信する。
【0028】
GW50は、通信を中継する装置であり、本実施の形態においてはスマートメータ40と子アグリサーバ装置30との間の通信を中継する。GW50は、電力会社サーバ装置10からの情報送信の要求を親アグリサーバ装置20及び子アグリサーバ装置30を介して受信し、スマートメータ40に対して計測値等の電力計測情報の送信を要求する。GW50は、この要求に応じてスマートメータ40が送信する情報を受信し、受信した情報を子アグリサーバ装置30及び親アグリサーバ装置20を介して電力会社サーバ装置10へ送信する。なお本実施の形態においては、電力会社サーバ装置10からの要求に応じてスマートメータ40が計測値等の情報を送信する構成とするが、これに限るものではない。スマートメータ40に対する情報送信の要求は、例えば親アグリサーバ装置20が行ってもよく、子アグリサーバ装置30が行ってもよく、GW50が行ってもよい。またスマートメータ40は、要求に応じて情報を送信するのではなく、GW50を介して自発的に、子アグリサーバ装置30、親アグリサーバ装置20及び電力会社サーバ装置10等の一又は複数の装置に対する情報送信を行ってもよい。
【0029】
また本実施の形態において、電力計測情報管理システムを構成する電力会社サーバ装置10、親アグリサーバ装置20及び子アグリサーバ装置30の各装置は、分散台帳システムを構成するノード装置として機能する。分散台帳システムは、一又は複数のデータを格納したブロックが連結されたブロックチェーンを複数のノード装置が分散して共有することにより、データの信頼性を高めるシステムである。なお本実施の形態においては、電力会社サーバ装置10がノード装置としての処理を行うものとするが、これに限るものではなく、電力会社1が電力会社サーバ装置10とは別にノード装置を備え、電力会社サーバ装置10がこのノード装置を介してブロックチェーンにアクセスする構成であってもよい。親アグリ2及び子アグリ3についても同様である。なお分散台帳システムを構成するノード装置には、図2に示す電力会社サーバ装置10、親アグリサーバ装置20及び子アグリサーバ装置30以外の装置が含まれてもよい。図2には示されていない種々の装置、例えば本実施の形態に係る電力計測情報管理システムが管理する情報を提供するクラウドサービスのサーバ装置等がノード装置として分散台帳システムに含まれていてもよい。
【0030】
また本実施の形態において各需要家4は、分散台帳システムを構成するノード装置を有しておらず、自身を管理する子アグリ3が有するノード装置(子アグリサーバ装置30)を介してブロックチェーンに対するデータの書き込み及び読み出し等の処理を行うものとする。ただし、需要家4がノード装置を有する構成であってもよく、この場合にはGW50がノード装置の機能を有していてもよく、GW50とは別にノード装置を有していてもよい。またノード装置を有する需要家4と、ノード装置を有していない需要家4とが混在していてもよい。
【0031】
なお本実施の形態に係る分散台帳システムは、プライベート型又はコンソーシアム型等と呼ばれる技術、例えば「Hyperledger Fabric」又は「Enterprise Ethereum」等が採用されている。プライベート型の分散台帳システムでは、複数のノード装置が扱うデータの一部又は全部を秘匿し、データに対する秘匿設定に応じてそのデータを記憶するノード装置が設定される。本実施の形態においては、図1に示したように電力会社1、親アグリ2、子アグリ3及び需要家4が木構造で階層化されている。各階層のノード装置は、自身及び自身の管理下(自身より下の階層)にあるノード装置が分散台帳システムに書き込んだデータを記憶し、記憶したデータを自身の処理に利用することができる。各階層のノード装置は、自身の管理下にないノード装置が分散台帳システムに書き込んだデータは記憶せず、このデータを自身の処理に利用することはできない。分散台帳システムの詳細構成については後述する。
【0032】
上述のように、電力会社サーバ装置10は、DRを行う日時及びDRの目標とする電力値等が決定された場合、DRを行う日時より前(例えば数時間前~数日前)の段階で、DRの日時及び電力値等の情報を含むDR依頼を親アグリサーバ装置20へ送信する。電力会社サーバ装置10からのDR依頼は、親アグリサーバ装置20を介して子アグリサーバ装置30にて受信される。子アグリサーバ装置30は、受信したDR依頼に応じてDRを行う需要家4を選択し、選択した需要家4に関する情報を分散台帳システムに記憶する。
【0033】
また電力会社サーバ装置10は、DRを行う日時に至った場合(又はその直前に)、DRの実施を命じるDRの実施指令を親アグリサーバ装置20へ送信する。電力会社サーバ装置10からのDRの実施指令は、親アグリサーバ装置20を介して子アグリサーバ装置30にて受信される。子アグリサーバ装置30は、DRを行う需要家4として予め分散台帳システムに情報を記憶した需要家4に対して、DRの実施指令を送信する。子アグリサーバ装置30からのDRの実施指令は、需要家4のGW50にて受信され、例えば需要家4に対してDR実施が通知され、需要家4にてDRが実施される。
【0034】
本実施の形態に係る電力計測情報管理システムにおいては、少なくともDRが実施されている間、電力会社サーバ装置10は、第2通信経路を介して例えば1分~30分に1回の周期で需要家4のスマートメータ40に対して測定した電力量等の情報送信を要求し、この要求に応じてスマートメータ40が送信する情報を、第2通信経路を介して受信する。電力会社サーバ装置10は、受信した情報を自身のデータベース(分散台帳とは異なるデータベース)に記憶する。なお本実施の形態においては、電力会社サーバ装置10がスマートメータ40に対して情報送信を要求するものとするが、これに限るものではない。例えば、親アグリサーバ装置20、子アグリサーバ装置30又はGW50等がスマートメータ40に対する情報送信の要求を行ってもよい。また例えば、スマートメータ40は要求に応じて情報を送信するのではなく、自発的に所定の周期で情報送信を行ってもよい。
【0035】
また本実施の形態において需要家4に設けられたスマートメータ40は、測定した電力量等を記憶し、例えば30分に1回の周期で、記憶した電力量等の電力計測情報を、第1通信経路を介して電力会社サーバ装置10へ送信する。電力会社サーバ装置10は、第1通信経路を介して受信した電力計測情報を分散台帳システムに記憶する。なお本実施の形態においては、スマートメータ40が電力計測情報を自発的に電力会社サーバ装置10へ送信するものとするが、これに限るものではない。例えば電力会社サーバ装置10が第1通信経路を介してスマートメータ40に対して電力計測情報の送信を要求し、この要求に応じてスマートメータ40が第1通信経路を介して電力会社サーバ装置10へ要求された情報を送信してもよい。
【0036】
電力会社サーバ装置10は、DRが実施された後の所定のタイミングで(例えば1ヶ月に1回の周期で)、分散台帳システムに記憶された情報に基づくDRの達成率等の算出処理を行う。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、この達成率等を算出する処理を、分散台帳システム上で動作するプログラム、いわゆるスマートコントラクトで行う。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、スマートメータ40が計測した電力量等の電力計測情報と、DRを実施する需要家4に関する情報とを分散台帳システムに記憶することによって、これらの情報の信頼性を向上させている。また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、これらの情報に基づいて達成率等を算出する処理を分散台帳システム上のスマートコントラクトを利用して実行することにより、処理の透明性を向上することができる。このため本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、スマートコントラクトの処理結果として算出される達成率等の情報の信頼性を向上することができる。
【0037】
また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、電力会社サーバ装置10がスマートメータ40から取得した電力計測情報を分散台帳システムに記憶する処理、及び、子アグリサーバ装置30がDRを行う需要家4に関する情報を分散台帳システムに記憶する処理等についても、分散台帳システム上で動作するスマートコントラクトを実行することで行う。
【0038】
なお本実施の形態においては、DRの達成率を算出する処理及び情報を分散台帳システムに記憶する処理等を、分散台帳システムのスマートコントラクトで行うものとするが、これに限るものではない。DRの達成率を算出する処理及び情報を分散台帳システムに記憶する処理等は、スマートコントラクトとは異なる方法で行われてもよい。例えば電力会社サーバ装置10又は他の装置が分散台帳システムに記憶された情報を取得して、DRの達成率を算出する処理を行ってもよい。本実施の形態において分散台帳システムのスマートコントラクトが行う処理の一部又は全部は、電力会社サーバ装置10、親アグリサーバ装置20、子アグリサーバ装置30、GW50又はこれら以外の装置で行われてよい。
【0039】
<装置構成>
図3は、本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10は、処理部11、記憶部(ストレージ)12及び通信部(トランシーバ)13等を備えて構成されている。なお本実施の形態においては、1つのサーバ装置にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数のサーバ装置が分散して処理を行ってもよい。
【0040】
処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)等を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを読み出して実行することにより、DR依頼及びDRの実施指令等を送信する処理、需要家4のスマートメータ40から情報を取得して分散台帳システムに記憶する処理、及び、分散台帳システムのノード装置としての処理等の種々の処理を行う。
【0041】
記憶部12は、例えばハードディスク等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するサーバプログラム12aを記憶する。また本実施の形態において記憶部12は、複数のノード装置により分散して共有される台帳情報100を記憶する。
【0042】
本実施の形態においてサーバプログラム12aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録された態様で提供され、電力会社サーバ装置10は記録媒体99からサーバプログラム12aを読み出して記憶部12に記憶する。ただし、サーバプログラム12aは、例えば電力会社サーバ装置10の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよい。また例えばサーバプログラム12aは、遠隔の他のサーバ装置等が配信するものを電力会社サーバ装置10が通信にて取得してもよい。例えばサーバプログラム12aは、記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出して電力会社サーバ装置10の記憶部12に書き込んでもよい。サーバプログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0043】
図4は、台帳情報100の一構成例を説明するための模式図である。台帳情報100は、分散台帳システムを構成するノード装置、即ち本実施の形態において電力会社サーバ装置10、親アグリサーバ装置20及び子アグリサーバ装置30が共有して記憶する情報である。本実施の形態において台帳情報100は、ブロックチェーン101と、ステートDB102とを備えて構成されている。ブロックチェーン101は、複数のブロックがチェーン状に連結されたデータ構造を有する情報である。各ブロックには、最低限、一又は複数のデータと、1つ前のブロックを一意に指し示す情報、例えばひとつ前のブロックの情報を基に算出したハッシュ値とが含まれている。本実施の形態において各ブロックに含まれるデータは、「トランザクション」と呼ばれるデータである。
【0044】
トランザクションは、台帳情報100に対する情報の書き込みが行われた際に生成されるデータであり、書き込みの対象となる情報が含まれている。ステートDB102は、書き込み又は読み出しの対象となる情報、例えば本実施の形態において電力計測情報等の実体を記憶するデータベースである。即ち本実施の形態に係る分散台帳システムでは、電力計測情報等の情報の実体は、ブロックチェーン101に記憶されるのではなく、ステートDB102に記憶され、ブロックチェーン101にはステートDB102に対する情報の書き込みの履歴となる情報が記憶される。
【0045】
なお、図示の台帳情報100に含まれるブロックチェーン101は、全てのノード装置が共有して記憶している。分散台帳100に対して何らかのデータを書き込む際に、そのデータを共有するノード装置を指定することで、データが記憶されるステートDB102及び分散台帳100を有するノード装置を制限することができる。データが記憶されるステートDB102を制限した際、全てのノード装置で共有されるブロックチェーンのブロックに記憶されるトランザクションには、書き込むデータそのものではなく、そのデータから定められた手順で求められる、データを逆算不可能かつデータと一意に紐づく情報、例えばハッシュ値が記録される。一方、データの共有先として指定されたノード装置には、トランザクションを介さずに直接データが送信される。このため、全てのノード装置は分散台帳システム上に何らかのデータの書き込みが行われたことは確認できるが、データの内容を知ることはできない。一方、データを共有している特定のノード装置は、トランザクションに記録されたハッシュ値などの情報から、受信したデータが正当なものであることを知ることができる。
【0046】
また図4において図示は省略するが、分散台帳システムを構成するノード装置は、この分散台帳システム上で動作するプログラム、いわゆるスマートコントラクトと呼ばれるプログラムのコードを共有して記憶している。各ノード装置は、このスマートコントラクトのプログラムを実行することができる。
【0047】
電力会社サーバ装置10の通信部13は、有線又は無線のネットワークを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部13は、第1通信経路を介して需要家4のスマートメータ40と通信を行う。また本実施の形態において通信部13は、一又は複数の親アグリサーバ装置20との間で通信を行う。通信部13は、処理部11から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部11へ与える。
【0048】
なお記憶部12は、電力会社サーバ装置10に接続された外部記憶装置であってよい。また電力会社サーバ装置10は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。また電力会社サーバ装置10は、上記の構成に限定されず、例えば可搬型の記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部、操作入力を受け付ける入力部、又は、画像を表示する表示部等を含んでもよい。
【0049】
また本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10の処理部11には、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、DR依頼部11a、実施指令部11b、情報取得部11c、達成率確認部11d及び台帳処理部11e等が、ソフトウェア的な機能部として処理部11に実現される。
【0050】
DR依頼部11aは、電力会社1が需要家4に対するDRを依頼することを決定した場合に、親アグリ2の親アグリサーバ装置20に対してDR依頼を送信する処理を行う。DR依頼には、このDRに対して一意に付されるDR依頼IDと、例えばDRを実施する日時、及び、DRの目標となる電力値(ネガワット又はポジワットの値)等の情報とが含まれ得る。DR依頼部11aは、電力会社サーバ装置10が管理する複数の親アグリサーバ装置20の全てに対してDR依頼を送信するのではなく、複数の親アグリサーバ装置20から適宜に選択した一又は複数の親アグリサーバ装置20へDR依頼を送信してよい。また複数の親アグリサーバ装置20へDR依頼を送信する場合、DRを実施する日時は共通とし、目標の電力値を親アグリ2毎に異なる値としてもよい。
【0051】
実施指令部11bは、DRを実施する日時に至った場合又はその直前(例えば数分前)に、親アグリ2の親アグリサーバ装置20に対してDRの実施指令を送信する処理を行う。DRの実施指令には、少なくともDRに対して一意に付されるDR依頼IDが含まれ、DRを実施する日時及び目標の電力値等の情報は含まれていてもよい。実施指令部11bは、少なくともDR依頼を送信した親アグリサーバ装置20に対して、DRの実施指令を送信する。
【0052】
情報取得部11cは、第1通信経路を介して、需要家4のスマートメータ40に対して例えば30分に1回の周期で電力量等の電力計測情報の送信を要求し、スマートメータ40から送信される電力計測情報を通信部13にて受信することにより、情報を取得する処理を行う。情報取得部11cは、一又は複数のスマートメータ40から取得した情報を、分散台帳システムに記憶する。このときに情報取得部11cは、分散台帳システムに設けられた電力計測情報DBに、スマートメータ40から取得した電力計測情報を記憶する。
【0053】
図5は、分散台帳システムに設けられる電力計測情報DBの一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、分散台帳システムを利用して、需要家4のスマートメータ40から電力会社サーバ装置10が取得した電力計測情報を記憶する電力計測情報DBが複数のノード装置間で共有される。本実施の形態に係る電力計測情報DBは、親アグリ2に付された「親アグリID」、子アグリ3に付された「子アグリID」及び需要家4に付された「需要家ID」に対応付けて、需要家4のスマートメータ40が測定した電力量及び測定日時等の情報を含む電力計測情報を記憶する。なお電力計測情報DBは、図4に示した台帳情報100のステートDB102を利用して論理的に構築されるデータベースである。電力計測情報DBへの電力計測情報の登録は、電力会社サーバ装置10が「親アグリID」、「子アグリID」、「需要家ID」及び「電力計測情報」を入力して分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することで行われる。
【0054】
なお本実施の形態においては、需要家を識別する情報を「需要家ID」と呼ぶが、これはどのような情報であってもよい。「需要家ID」は、例えば従来の検針票に記載されていた「供給地点特定番号」又は「お客様番号」等の情報が用いられ得る。これらの情報はスマートメータ40を識別する情報、即ち「スマートメータID」とみなすこともでき、「需要家ID」=「スマートメータID」とみなすことができる。これに対して例えば1つの需要家が複数の拠点(家屋、建物又は工場等)を有しており、各拠点にスマートメータ40が設置されることを考慮する必要がある場合、「需要家ID」と「スマートメータID」とは区別されることが好ましく、この場合には第1電力計測情報DB12bに「スマートメータID」を記憶するか、又は、「需要家ID」及び「スマートメータID」の両方を記憶してもよい。
【0055】
達成率確認部11dは、DRの実施が終了した後、例えば1ヶ月に1回の周期で、DRの目標値に対する親アグリ2及び/又は子アグリ3のDRの達成率を算出する処理を行う。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは達成率の算出は分散台帳システムのスマートコントラクトにより行われ、達成率確認部11dは、DRの日時及びDRを識別するDRID等の情報を入力として分散台帳システムのスマートコントラクトを実行し、スマートコントラクトにより算出される達成率を取得することで、親アグリ2及び/又は子アグリ3の達成率を算出する処理を行う。また達成率確認部11dは、算出した達成率を、例えば電力会社1のオペレータ等に通知する処理を行う。なお本実施の形態においては、達成率を算出する処理を分散台帳システムのスマートコントラクトで行うものとするが、これに限るものではなく、例えば電力会社サーバ装置10が分散台帳システムから必要な情報を取得して達成率の算出を行ってもよい。
【0056】
台帳処理部11eは、分散台帳システムのノード装置としての処理、即ち分散台帳システムに対する情報の書き込み及び読み出し、並びに、スマートコントラクトの実行等の処理を行う。例えば台帳処理部11eは、スマートコントラクトを実行することによって、分散台帳システムのステートDB102に情報を記憶すると共に、この情報を記憶する処理を行ったことを示すトランザクションを含むブロックをブロックチェーン101に追加する処理を行う。また台帳処理部11eは、他のノード装置がステートDB102及びブロックチェーン101に記憶した情報を共有すべく、自身のステートDB102及びブロックチェーン101に同じ情報を記憶する処理を行う。
【0057】
分散台帳システムを構成するノード装置の1つがステートDB102に対する情報の記憶及びブロックチェーン101に対するブロックの追加を行った場合、これらは他のノード装置に反映される必要がある。分散共有された全てのブロックチェーンに対してブロックの追加を反映する処理、いわゆる合意形成処理は、例えばパブリック型の分散台帳システムの場合、暗号資産等の分散台帳システムで広く採用されている「Proof of Work」又は「Proof of Stake」等の方法を採用することができ、これらの方法では不特定多数のノード装置による合意形成を行うことができるものが主流である。これに対してプライベート型の分散台帳システムの場合、例えば予め定められた一又は複数のノード装置がブロックチェーンに追加するブロックを決定し、各ノード装置へ決定したブロックの追加を指示する方法を採用することができる。分散台帳システムにおける情報の分散共有に関する処理については既存の技術であるため、本明細書では詳細な処理の説明を省略する。
【0058】
図6は、本実施の形態に係る親アグリサーバ装置20の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る親アグリサーバ装置20は、処理部(プロセッサ)21、記憶部(ストレージ)22及び通信部(トランシーバ)23等を備えて構成されている。なお本実施の形態においては、1つのサーバ装置にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数のサーバ装置が分散して処理を行ってもよい。処理部21は、CPU、MPU又はGPU等の演算処理装置、ROM及びRAM等を用いて構成されている。処理部21は、記憶部22に記憶されたサーバプログラム22aを読み出して実行することにより、電力会社サーバ装置10から受信した電力計測情報の要求、DR依頼及び実施指令等を管理下の子アグリサーバ装置30へ送信する処理、子アグリサーバ装置30から受信した需要家4の電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信する処理、並びに、分散台帳システムを構成するノード装置としての処理等の種々の処理を行う。
【0059】
記憶部22は、例えばハードディスク等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部22は、処理部21が実行する各種のプログラム、及び、処理部21の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部22は、処理部21が実行するサーバプログラム22aを記憶する。また本実施の形態において記憶部22は、分散台帳システムを構成する複数のノード装置により分散して共有される台帳情報100を記憶する。
【0060】
本実施の形態においてサーバプログラム22aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体97に記録された態様で提供され、親アグリサーバ装置20は記録媒体97からサーバプログラム22aを読み出して記憶部22に記憶する。ただし、サーバプログラム22aは、例えば親アグリサーバ装置20の製造段階において記憶部22に書き込まれてもよい。また例えばサーバプログラム22aは、遠隔の他のサーバ装置等が配信するものを親アグリサーバ装置20が通信にて取得してもよい。例えばサーバプログラム22aは、記録媒体97に記録されたものを書込装置が読み出して親アグリサーバ装置20の記憶部22に書き込んでもよい。サーバプログラム22aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体97に記録された態様で提供されてもよい。
【0061】
通信部23は、有線又は無線のネットワークを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部23は、インターネット、携帯電話通信網及び無線LAN等のネットワークを介して、子アグリサーバ装置30及び電力会社サーバ装置10との通信を行う。通信部23は、処理部21から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部21へ与える。
【0062】
なお記憶部22は、親アグリサーバ装置20に接続された外部記憶装置であってよい。また親アグリサーバ装置20は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。また親アグリサーバ装置20は、上記の構成に限定されず、例えば可搬型の記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部、操作入力を受け付ける入力部、又は、画像を表示する表示部等を含んでもよい。
【0063】
また本実施の形態に係る親アグリサーバ装置20の処理部21には、記憶部22に記憶されたサーバプログラム22aを処理部21が読み出して実行することにより、DR依頼部21a、実施指令部21b、情報中継部21c及び台帳処理部21d等が、ソフトウェア的な機能部として処理部21に実現される。
【0064】
DR依頼部21aは、電力会社サーバ装置10から送信されるDR依頼を受信して、管理下の子アグリ3の子アグリサーバ装置30へDR依頼を送信する処理を行う。DR依頼には、DR依頼ID、DRの日時及びDRの目標の電力値等の情報が含まれており、DR依頼部21aは、受信したDR依頼に含まれるDR依頼ID及びDRの日時については受信した内容を維持し、受信したDR依頼に含まれるDRの目標の電力値は管理下の子アグリ3の数等に応じて適宜に分割して、各子アグリサーバ装置30へ送信するDR依頼を生成する。例えば電力会社サーバ装置10から受信したDR依頼に目標の電力値が100kWと設定されており、管理下の子アグリ3が5つ存在する場合、目標の電力値の100kWを5つの子アグリ3で等分して、目標値を20kWとしたDR依頼をDR依頼部21aが作成し、5つの子アグリサーバ装置30へ送信する。なおDR依頼部21aは、目標の電力値を等分するのではなく、適宜に分割して各子アグリ3に異なる目標の電力値を設定してもよい。
【0065】
実施指令部21bは、電力会社サーバ装置10から送信されるDRの実施指令を受信して、管理下の子アグリ3の子アグリサーバ装置30へ実施指令を送信する処理を行う。
【0066】
情報中継部21cは、需要家4のスマートメータ40による電力量等を含む電力計測情報の送信要求を、電力会社サーバ装置10から受信して、対応する需要家4を管理する子アグリ3の子アグリサーバ装置30へ送信する処理を行う。また情報中継部21cは、この要求に応じて需要家4のスマートメータ40が送信する電力計測情報を子アグリサーバ装置30から受信し、受信した電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信する処理を行う。情報中継部21cは、これら以外の電力会社サーバ装置10及び子アグリサーバ装置30の間で送受信される情報についても、一方から受信した情報を他方へ送信することで中継してよい。
【0067】
台帳処理部21dは、分散台帳システムのノード装置としての処理、即ち分散台帳システムに対する情報の書き込み及び読み出し、並びに、スマートコントラクトの実行等の処理を行う。例えば台帳処理部21dは、スマートコントラクトを実行することによって、分散台帳システムのステートDB102に情報を記憶すると共に、この情報を記憶する処理を行ったことを示すトランザクションを含むブロックをブロックチェーン101に追加する処理を行う。また台帳処理部21dは、他のノード装置がステートDB102及びブロックチェーン101に記憶した情報を共有すべく、自身のステートDB102及びブロックチェーン101に同じ情報を記憶する処理を行う。
【0068】
図7は、本実施の形態に係る子アグリサーバ装置30の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る子アグリサーバ装置30は、処理部(プロセッサ)31、記憶部(ストレージ)32及び通信部(トランシーバ)33等を備えて構成されている。なお本実施の形態においては、1つのサーバ装置にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数のサーバ装置が分散して処理を行ってもよい。処理部31は、CPU、MPU又はGPU等の演算処理装置、ROM及びRAM等を用いて構成されている。処理部31は、記憶部32に記憶されたサーバプログラム32aを読み出して実行することにより、DRを実施する需要家4を決定する処理、親アグリサーバ装置20から受信した情報を需要家4へ送信する処理、需要家4から受信した情報を親アグリサーバ装置20へ送信する処理、並びに、分散台帳システムを構成するノード装置としての処理等の種々の処理を行う。
【0069】
記憶部32は、例えばハードディスク等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部32は、処理部31が実行する各種のプログラム、及び、処理部31の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部32は、処理部31が実行するサーバプログラム32aを記憶する。また本実施の形態において記憶部32は、分散台帳システムを構成する複数のノード装置により分散して共有される台帳情報100を記憶する。
【0070】
本実施の形態においてサーバプログラム32aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体98に記録された態様で提供され、子アグリサーバ装置30は記録媒体98からサーバプログラム32aを読み出して記憶部32に記憶する。ただし、サーバプログラム32aは、例えば子アグリサーバ装置30の製造段階において記憶部32に書き込まれてもよい。また例えばサーバプログラム32aは、遠隔の他のサーバ装置等が配信するものを子アグリサーバ装置30が通信にて取得してもよい。例えばサーバプログラム32aは、記録媒体98に記録されたものを書込装置が読み出して子アグリサーバ装置30の記憶部32に書き込んでもよい。サーバプログラム32aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体98に記録された態様で提供されてもよい。
【0071】
通信部33は、有線又は無線のネットワークを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部33は、インターネット、携帯電話通信網及び無線LAN等のネットワークを介して、需要家4のGW50及び親アグリサーバ装置20との通信を行う。通信部33は、処理部31から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部31へ与える。
【0072】
なお記憶部32は、子アグリサーバ装置30に接続された外部記憶装置であってよい。また子アグリサーバ装置30は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。また子アグリサーバ装置30は、上記の構成に限定されず、例えば可搬型の記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部、操作入力を受け付ける入力部、又は、画像を表示する表示部等を含んでもよい。
【0073】
また本実施の形態に係る子アグリサーバ装置30の処理部31には、記憶部32に記憶されたサーバプログラム32aを処理部31が読み出して実行することにより、需要家決定部31a、実施指令部31b、情報中継部31c及び台帳処理部31d等が、ソフトウェア的な機能部として処理部31に実現される。
【0074】
需要家決定部31aは、電力会社サーバ装置10からのDR依頼を、親アグリサーバ装置20を介して受信した場合に、このDR依頼に応じてDRを行う需要家4を決定する処理を行う。需要家決定部31aは、子アグリ3が管理する複数の需要家4の中から、DRを実施する一又は複数の需要家4を決定する。DRを実施する需要家4を決定する方法は、どのような方法であってもよい。また需要家4の決定を子アグリサーバ装置30が行うのではなく、子アグリ3のオペレータ等が行ってもよい。この場合に需要家決定部31aは、DR依頼に応じて需要家4の決定をオペレータに求め、オペレータから需要家4を決定する操作を受け付ける。
【0075】
また需要家決定部31aは、決定した需要家4に関する情報を、分散台帳システムに記憶する処理を行う。このときに需要家決定部31aは、DRを実施する需要家4の情報を登録する処理を行うスマートコントラクトを実行することで、実施されるDRに対して付されたDR依頼IDと、決定した需要家4の需要家IDとを対応付けた情報を、分散台帳システムに記憶する。
【0076】
本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、分散台帳システムを利用して、DR依頼ID及び需要家ID等の情報を記憶するDR需要家DBが複数のノード装置間で共有される。図8は、DR需要家DBの一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係るDR需要家DBは、「DR依頼ID」、「親アグリID」、「子アグリID」、「需要家ID」、「ベースライン」、「需要実績値」、「DR実績値」及び「達成率」等の情報が対応付けて記憶される。なおDR需要家DBは、図4に示した台帳情報100のステートDB102を利用して論理的に構築されるデータベースである。DR需要家DBの各情報は、子アグリサーバ装置30及び電力会社サーバ装置10が分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することで記憶される。
【0077】
DR需要家DBの「DR依頼ID」、「親アグリID」、「子アグリID」及び「需要家ID」は、子アグリサーバ装置30の需要家決定部31aが決定したDRを実施する需要家4に基づいて登録される情報である。例えば需要家決定部31aは、電力会社サーバ装置10からのDR依頼に基づいてDRを実施する需要家4を決定し、DR依頼に含まれるDR依頼IDと、決定した需要家4の需要家IDと、自身の子アグリIDと、これを管理する親アグリ2の親アグリIDとを入力して分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することで、DR需要家DBにこれらの情報が登録される。
【0078】
またDR需要家DBの「ベースライン」は、需要家4のDRの基準となる電力[kW]であり、DRが行われなかった場合に需要家4が消費したと予測される電力である。本実施の形態において各需要家4のベースラインは、分散台帳システムの電力計測情報DBに記憶された電力計測情報に基づいて算出される。例えば、需要家4の過去の1週間又は1ヶ月等の所定期間における消費電力の平均値をベースラインとすることができる。なおベースラインはどのような情報に基づいて、どのような演算方法で算出されてもよい。また本実施の形態においてベースラインは分散台帳システムのスマートコントラクトにより算出される。子アグリサーバ装置30の需要家決定部31aは、上述のようにDRを実施する需要家4に関する情報を分散台帳システムのDR需要家DBに登録した後、分散台帳システムのベースラインを算出するスマートコントラクトを実行する。スマートコントラクトの実行により、例えば分散台帳システムの電力計測情報DBから算出対象の需要家4について所定期間の消費電力が抽出され、所定期間の消費電力平均値が算出されてベースラインとしてDR需要家DBに登録される。
【0079】
またDR需要家DBの「需要実績値」、「DR実績値」及び「達成率」は、DRが実施された後に登録される情報である。「需要実績値」は、需要家4がDR実施期間中に消費した電力[kW]である。「DR実績値」は、ベースラインと需要実績値との差分に相当する値であり、需要家4がDRした電力[kW]である。即ち、「DR実績値=ベースライン-需要実績値」である。「達成率」は、DRの目標値に対するDR実績値の比率を示す値であり、需要家4がDRの目標をどの程度達成できたかを示す情報である。本実施の形態において「需要実績値」、「DR実績値」及び「達成率」は、電力会社サーバ装置10の達成率確認部11dが分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することにより算出され、算出結果がDR需要家DBに登録される。ただしこれらの情報は、分散台帳システムに記憶されなくてもよく、例えば電力会社サーバ装置10の記憶部12等にのみ記憶されてもよい。
【0080】
なお本実施の形態においては、上記のベースライン及びDR実績値を算出する処理を、分散台帳システムのスマートコントラクトの実行により行われる。ただし、ベースライン及びDR実績値を算出する処理は、スマートコントラクト以外の方法で行われてもよい。例えば、ベースライン及びDR実績値を算出する処理は、子アグリサーバ装置30又は電力会社サーバ装置10等の装置にて実行されるプログラムにより行われてもよい。
【0081】
実施指令部31bは、電力会社サーバ装置10から送信されるDRの実施指令を受信して、需要家4のGW50へDRの実施指令を送信する処理を行う。実施指令部31bは、電力会社サーバ装置10が送信するDRの実施指令を、親アグリサーバ装置20を介して受信する。DRの実施指令にはDR依頼IDが含まれており、実施指令を受信した場合に実施指令部31bは、実施指令に含まれるDR依頼IDを取得し、取得したDR依頼IDに係るDRを実施すると予め決定していた需要家4のGW50へDRの実施指令を送信する。
【0082】
情報中継部31cは、電力会社サーバ装置10から需要家4のスマートメータ40への電力計測情報の送信要求を、親アグリサーバ装置20を介して受信して、対応する需要家4のGW50へ送信する処理を行う。また情報中継部31cは、この要求に応じて需要家4のスマートメータ40が送信する電力計測情報をGW50から受信し、受信した電力計測情報を親アグリサーバ装置20へ送信する処理を行う。情報中継部21cは、これら以外の親アグリサーバ装置20及びGW50の間で送受信される情報についても、一方から受信した情報を他方へ送信することで中継してよい。
【0083】
台帳処理部31dは、分散台帳システムのノード装置としての処理、即ち分散台帳システムに対する情報の書き込み及び読み出し、並びに、スマートコントラクトの実行等の処理を行う。例えば台帳処理部31dは、スマートコントラクトを実行することによって、分散台帳システムのステートDB102に情報を記憶すると共に、この情報を記憶する処理を行ったことを示すトランザクションを含むブロックをブロックチェーン101に追加する処理を行う。これにより台帳処理部31dは、スマートコントラクトを実行することによって、DR需要家DBにDR依頼ID及び需要家IDを対応付けた情報を記憶する処理を行うことができる。また台帳処理部31dは、他のノード装置がステートDB102及びブロックチェーン101に記憶した情報を共有すべく、自身のステートDB102及びブロックチェーン101に同じ情報を記憶する処理を行う。
【0084】
図9は、本実施の形態に係るスマートメータ40及びGW50の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るスマートメータ40は、計測部41、処理部42、記憶部43、第1通信部44及び第2通信部45等を備えて構成されている。スマートメータ40は、例えば住宅、ビル又は工場等の施設に設置され、この施設で消費又は生産される電力量を計測する装置である。計測部41は、スマートメータ40が設置された施設において消費又は生産される電力量を計測する。計測部41は、例えば数秒~数分に1回程度の周期で電力量の計測を行い、計測結果を処理部42へ与える。
【0085】
処理部42は、例えばCPU又は専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のIC(Integrated Circuit)を用いて構成されている。処理部42は、計測部41から与えられた電力量を、外部の装置からの要求に応じて送信する処理を行う。処理部42は、計測部41から与えられた電力量の情報を記憶部43に一時的に記憶する。処理部42は、記憶部43に記憶した電力量を集計し、集計した電力量を含む電力計測情報を所定周期(例えば30分に1回の周期)で、電力会社サーバ装置10へ第1通信経路を介して送信する。このときに処理部42は、数秒~数分の周期で測定された電力量の複数の測定結果を合算することで、所定周期で消費又は生産された電力量を算出し、この合算値を計測結果として含む電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信する。
【0086】
また処理部42は、集計した計測結果を含む電力計測情報を所定周期(例えば1分~30分に1回の周期)で、電力会社サーバ装置10へ第2通信経路を介して送信する。なお第2通信経路を介した情報送信の周期は、上記の第1通信経路を介した情報送信の周期よりも短く設定される場合が多いが、長く設定されてもよい。また処理部42による第1通信経路及び第2通信経路を介した情報の送信は、スマートメータ40から自発的に行われてもよく、他の装置からの要求に応じて行われてもよい。
【0087】
記憶部43は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部43は、処理部42の処理に用いられる種々の情報を記憶する。例えば記憶部43は、計測部41が計測した電力量を一時的に、第1通信経路及び第2通信経路を介した情報送信を完了するまでの間、記憶する。第1通信部44及び第2通信部45は、それぞれトランシーバ等のICを用いて構成され、所定の通信規格に応じた通信を行う。第1通信部44は、第1通信経路を介して電力会社サーバ装置10との間で通信を行う。第2通信部45は、第2通信経路を介して電力会社サーバ装置10との通信を行う。第1通信部44及び第2通信部45は、処理部42から与えられた情報を他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信した情報を処理部42へ与える。第1通信部44及び第2通信部45は、有線又は無線のいずれで通信を行ってもよい。
【0088】
本実施の形態に係るGW50は、スマートメータ40が設置された住宅、ビル又は工場等の施設に設置され、通信を中継する装置である。GW50は、処理部(プロセッサ)51、記憶部(ストレージ)52、第1通信部(トランシーバ)53及び第2通信部(トランシーバ)54等を備えて構成されている。処理部51は、CPU又はMPU等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部51は、記憶部52に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施の形態において処理部51は、記憶部52に記憶されたプログラム52aを読み出して実行することにより、スマートメータ40と子アグリサーバ装置30との間の通信を中継する処理等の種々の処理を行う。
【0089】
記憶部52は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部52は、処理部51が実行する各種のプログラム、及び、処理部51の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部52は、処理部51が実行するプログラム52aを記憶している。なおプログラム52aは、例えばGW50の製造段階において記憶部52に書き込まれてもよく、また例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものをGW50が通信にて取得してもよく、また例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体に記録されたプログラムをGW50が読み出して記憶部52に記憶してもよく、また例えば記録媒体に記録されたものを書込装置が読み出してGW50の記憶部52に書き込んでもよい。プログラム52aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体に記録された態様で提供されてもよい。
【0090】
第1通信部53及び第2通信部54は、それぞれトランシーバ等のICを用いて構成され、所定の通信規格に応じた通信を行う。第1通信部53は、Bルートを介してスマートメータ40との間で通信を行う。第2通信部54は、例えばインターネット、携帯電話通信網及び無線LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、子アグリサーバ装置30との間で通信を行う。第1通信部53及び第2通信部54は、処理部51から与えられた情報を他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信した情報を処理部51へ与える。第1通信部53及び第2通信部54は、有線又は無線のいずれで通信を行ってもよい。
【0091】
また本実施の形態に係るGW50は、記憶部52に記憶されたプログラム52aを処理部51が読み出して実行することにより、情報中継部51a等が処理部51にソフトウェア的な機能部として実現される。情報中継部51aは、電力会社サーバ装置10から需要家4のスマートメータ40への電力計測情報の送信要求を、親アグリサーバ装置20及び子アグリサーバ装置30を介して受信し、スマートメータ40へ送信する処理を行う。また情報中継部51aは、この要求に応じてスマートメータ40が送信する電力計測情報を受信し、受信した電力計測情報を子アグリサーバ装置30へ送信する処理を行う。情報中継部51aは、これら以外の子アグリサーバ装置30及びスマートメータ40の間で送受信される情報についても、一方から受信した情報を他方へ送信することで中継してよい。
【0092】
<電力計測情報管理処理>
本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、上述のように電力会社サーバ装置10、親アグリサーバ装置20及び子アグリサーバ装置30がノード装置として機能することで分散台帳システムを構成している。分散台帳システムでは、複数のノード装置がピア・ツー・ピア型のネットワークを介して接続され、複数のノード装置が情報を分散して共有することにより、情報の信頼性を高めている。なお本実施の形態において「分散して共有する」又は「分散共有する」等の表現は、複数のノード装置が実質的に同一内容の情報をそれぞれ記憶している状態を表している。「実質的に同一」とは、ある時点においては複数の情報の内容が一部相異する状態となる可能性があるが、ある程度の時間が経過することによって相違が解消されて同一の内容となることを含めた表現であり、以下において単に「同一」と記載されている場合であってもこの「実質的に同一」を含むものとする。
【0093】
本実施の形態においては、分散台帳システムには図5に示したDR需要家DB及び図8に示した電力計測情報DBが論理的に構築されて複数のノード装置に分散共有されており、これらの情報の信頼性を高めている。Hyperledger Fabric及びEnterprise Ethereum等の分散台帳システムでは、情報を記憶する際にその情報が記憶されるノード装置の範囲を限定することが可能であり、本実施の形態に係る分散台帳システムも同様にして情報に対して記憶されるノード装置の範囲が限定されている。本実施の形態に係る分散台帳システムでは、上述のDR需要家DBの「指令ID」、「親アグリID」、「子アグリID」及び「需要家ID」等の情報をパブリック(公開)情報とし、全てのノード装置がその情報を保持する。
【0094】
これに対して上述のDR需要家DBの「ベースライン」、「需要実績値」及び「DR実績値」等の情報と、電力計測情報DBの各情報とはプライベート(非公開)情報とし、各ノード装置は自身の管理下にある需要家4に関する情報のみを記憶する。即ち、電力会社サーバ装置10は全ての需要家4の電力計測情報を記憶し、親アグリサーバ装置20は自身が管理する子アグリサーバ装置30が管理する需要家4の電力計測情報を記憶し、子アグリサーバ装置30は自身が管理する需要家4の電力計測情報を記憶する。なお本実施の形態においては、分散台帳システムが分散して共有する台帳情報100のステートDB102について、情報の記憶時に、情報を記憶するノード装置を限定することで、情報が記録されるステートDB102を制限する。なお電力計測情報管理システムは、DR需要家DBの「指令ID」、「親アグリID」、「子アグリID」及び「需要家ID」等の情報についてもプライベート情報として扱ってもよい。
【0095】
本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、電力会社サーバ装置10が例えば30分に1回の周期で第1通信経路を介して需要家4のスマートメータ40に電力計測情報の送信を要求し、この要求に応じてスマートメータ40が第1通信経路を介して電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信する。電力会社サーバ装置10は、スマートメータ40から受信した電力計測情報を、この需要家4に付された需要家ID、この需要家4を管理する子アグリ3に付された子アグリID及びこの子アグリ3を管理する親アグリ2に付された親アグリIDに対応付けて、分散台帳システムの電力計測情報DBに記憶する。
【0096】
また電力会社サーバ装置10は、DRの実施が決定された場合に、このDRを識別するDR依頼ID、DRを実施する日時及びDRの目標値等の情報を含むDR依頼を、第2通信経路を介して送信する。このDR依頼を受信した子アグリサーバ装置30は、DRを実施する需要家4を決定し、DR依頼ID、親アグリID、子アグリID及び需要家IDを対応付けて分散台帳システムのDR需要家DBに記憶する。また子アグリサーバ装置30は、分散台帳システムのスマートコントラクトを実行して各需要家4のベースラインを算出させる。
【0097】
DRの実施後、本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10は、例えば1ヶ月に1回の周期で、DRの結果を確認する処理を行う。このときに電力会社サーバ装置10は、DRを依頼した親アグリ2及び子アグリ3について、例えばDRの目標値をどの程度達成できたかを示す達成率を算出する。本実施の形態において、親アグリ2及び子アグリ3の達成率を算出する処理は、分散台帳システムのスマートコントラクトとして実装されている。電力会社サーバ装置10は、例えばDR依頼IDと達成率の算出対象とする親アグリID又は子アグリIDとを入力して分散台帳システムのスマートコントラクトを実行する。
【0098】
分散台帳システムのノード装置(電力会社サーバ装置10、又は、達成率の算出に必要な電力計測情報を有するノード装置)は、スマートコントラクトを実行して親アグリ2又は子アグリ3のDRの達成率を算出する処理を行う。このときにノード装置は、分散台帳システムのDR需要家DBを参照して、算出対象の親アグリ2又は子アグリ3が管理する需要家4のうち、DR依頼IDに対応するDRを実施した一又は複数の需要家4を特定する。ノード装置は、特定した各需要家4について、DRが実施された期間における消費電力を電力計測情報DBに記憶された電力計測情報から取得し、取得した消費電力を需要実績値としてDR需要家DBに記憶する。ノード装置は、各需要家4についてベースラインと需要実績値との差分をDR実績値として算出し、算出したDR実績値をDR需要家DBに記憶する。またノード装置は、算出対象の親アグリ2又は子アグリ3が管理する需要家4についてDR実績値を集計(合計)し、親アグリ2又は子アグリ3についてDRの目標値と集計したDR実績値とに基づいて、以下の(1)式の演算を行うことによって達成率を算出する。
【0099】
達成率 = DR実績値/目標値 …(1)
【0100】
電力会社サーバ装置10は、分散台帳システムによる達成率の算出結果を取得する。電力会社サーバ装置10は、取得した親アグリ2及び子アグリ3についての達成率を、例えば電力会社1のオペレータ等に対して通知する。また分散台帳システムは、算出したDR実績値及び達成率等の情報を、例えば台帳情報100に設けられたDR需要家DB等に記憶する。ただしこれらの情報は、分散台帳システムには記録されず、電力会社サーバ装置10の記憶部12等にのみ記憶されてもよい。
【0101】
なお本実施の形態においては、DRの達成率を算出して通知するものとするが、これは一例であり、DRの結果が判断し得る情報であればどのような情報を通知してもよい。DRの結果として、例えばDR実績値を通知してもよく、また例えば目標を達成したか否かを通知してもよく、これら以外の情報を通知してもよい。また達成率の算出方法は、上記の(1)式に基づくものに限らず、種々の方法が採用されてよい。
【0102】
また本実施の形態においては、分散台帳システムのスマートコントラクトの実行によりベースラインの算出及び達成率の算出等の処理を行っているが、これに限るものではない。ベースラインの算出及び達成率の算出等の処理は、電力会社サーバ装置10、親アグリサーバ装置20又は子アグリサーバ装置30等の装置にて実行されるプログラムにより行われてもよい。また、達成率はオペレータ等に対して通知するための形式の一例であり、電力計測情報、ベースライン、需要実績値、DR実績値又はこれらから算出した達成率以外の情報をオペレータ等に対して通知してもよい。
【0103】
図10は、本実施の形態に係る電力計測情報管理システムが行う電力計測情報管理処理を説明するための模式図である。なお本図においては、親アグリ2による情報の中継を省略している。本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、電力会社1がDRの実施を決定した場合に、電力会社サーバ装置10がDR依頼ID、DRの日時及びDRの目標値等の情報を含むDR依頼を送信する。このDR依頼は、親アグリ2の親アグリサーバ装置20を介して子アグリ3の子アグリサーバ装置30にて受信される。子アグリサーバ装置30は、DR依頼の受信に応じて、DRを実施する一又は複数の需要家4を決定する。子アグリサーバ装置30は、決定した需要家4の需要家IDと、この需要家4を管理する子アグリ3の子アグリIDと、この子アグリ3を管理する親アグリ2の親アグリIDとを、DR依頼IDに対応付けて分散台帳システムの台帳情報100のDR需要家DBに記憶する。またこのときに子アグリサーバ装置30は、DRを実施する需要家4についてベースラインに関する情報を分散台帳システムのDR需要家DBに登録する。
【0104】
その後、DRを実施する日時に至った場合(又はその直前に)、電力会社サーバ装置10はDRの実施指令を送信する。実施指令には、DR依頼IDの情報が含まれている。この実施指令は親アグリサーバ装置20を介して子アグリサーバ装置30にて受信される。実施指令を受信した子アグリサーバ装置30は、DRを実施する需要家4のGW50へ実施指令を送信する。例えばGW50は実施指令を受信したことを需要家4に通知し、需要家4はDRを実施する。
【0105】
電力会社1の電力会社サーバ装置10は、例えば1分間に1回の周期で、第2通信経路の親アグリサーバ装置20及び子アグリサーバ装置30を介して需要家4へ電力計測情報の送信を要求する。情報要求を受けた需要家4のGW50は、スマートメータ40から電力量の計測値等を含む電力計測情報を取得して、第2通信経路の子アグリサーバ装置30及び親アグリサーバ装置20を介して電力会社サーバ装置10へ電力計測情報を送信する。電力会社サーバ装置10による電力計測情報の要求及びこの要求に応じたスマートメータ40による電力計測情報の送信は、例えば1分間に1回の周期で繰り返し行われる。電力会社サーバ装置10は、スマートメータ40から取得した電力計測情報に基づいて、DRの実施状況等を監視することができる。
【0106】
なお本実施の形態においては電力会社サーバ装置10が第2通信経路を介してスマートメータ40の電力計測情報の送信を要求し、この要求に応じてスマートメータ40及びGW50が第2通信経路を介して電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信するものとするが、これに限るものではない。例えば電力計測情報の送信要求は、親アグリサーバ装置20、子アグリサーバ装置30又はGW50等がスマートメータ40に対して行ってもよい。また例えばスマートメータ40が要求に応じて電力計測情報の送信を行うのではなく、所定の周期で自発的に電力計測情報の送信を行ってもよい。
【0107】
またスマートメータ40は、DRの実施の有無とは関係なく、例えば30分に1回の周期で、第1通信経路を介して電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信する。電力会社サーバ装置10は、スマートメータ40から受信した電力計測情報を、この需要家4の需要家IDと、この需要家4を管理する子アグリ3の子アグリIDと、この子アグリ3を管理する親アグリ2の親アグリIDとに対応付けて、分散台帳システムの電力計測情報DBに記憶する。
【0108】
なお本実施の形態においてはスマートメータ40が所定の周期で自発的に電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ第1通信経路を介して送信するものとするが、これに限るものではない。例えば電力会社サーバ装置10が第1通信経路を介してスマートメータ40の電力計測情報の送信を要求し、この要求に応じてスマートメータ40及びGW50が第1通信経路を介して電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信してもよい。
【0109】
その後、例えば1ヶ月に1回の周期で、電力会社1は、DRに関する報酬等の支払いを親アグリ2、子アグリ3及び需要家4等へ行う前に、DRに関する達成率を確認する処理を行う。電力会社1の電力会社サーバ装置10は、例えば確認の対象となるDRを識別するDR依頼IDと、親アグリ2の親アグリID又は子アグリ3の子アグリIDとを入力して分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することにより、分散台帳システムにDRの達成率の確認を要求する。この要求を与えられた分散台帳システムのノード装置は、スマートコントラクトを実行してDRの達成率を確認する。このときにノード装置は、指定されたDR依頼IDに基づいてDR需要家DBを参照することで、DRを行った需要家4を特定する。次いでノード装置は、特定した需要家4について、DRが実施された期間の電力計測情報を電力計測情報DBから抽出する。ノード装置は、各需要家4について、DR需要家DBに記憶されたベースラインと、電力計測情報に含まれる消費電力の需要実績値との差分からDR実績値を算出してDR需要家DBに記憶する。ノード装置は、対象となる親アグリ2又は子アグリ3の管理下の需要家4についてDR実績値を集計し、DR実績値の集計値とDRの目標値とに基づいてDRの達成率を算出し、算出した達成率をスマートコントラクトの実行を要求した装置、即ち電力会社サーバ装置10へ与える。ノード装置は、算出した達成率をDR需要家DBに記憶する。なおDRの目標値は、例えばDR依頼IDに対応付けて分散台帳システムに記憶されてもよく、電力会社サーバ装置10が記憶していてもよい。
【0110】
なお本実施の形態においては、達成率を算出する処理等を分散台帳システムのスマートコントラクトにより行っているが、これに限るものではない。例えば所定のプログラムを実行することにより電力会社サーバ装置10が分散台帳システムに記憶された情報を取得し、取得した情報に基づいて電力会社サーバ装置10が達成率の算出等の処理を行ってもよい。
【0111】
電力会社サーバ装置10は、分散台帳システムのスマートコントラクトによる達成率の算出結果を取得して、例えば電力会社1のオペレータ等に達成率を表示する処理を行う。このときに電力会社サーバ装置10は、例えば自装置に接続されたディスプレイ装置に達成率を表示してもよく、また例えばオペレータ等が使用する端末装置へ達成率に関する情報を送信し、端末装置のディスプレイに達成率を表示してもよい。また、達成率はオペレータ等に対して通知するための形式の一例であり、電力計測情報、ベースライン、需要実績値、DR実績値又はこれらから算出した達成率以外の情報をオペレータ等に対して通知してもよい。
【0112】
図11は、本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10が行う電力計測情報記憶処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10の処理部11の情報取得部11cは、例えば30分に1回の周期で需要家4のスマートメータ40が送信する電力計測情報を受信したか否かを判定する(ステップS1)。電力計測情報を受信していない場合(S1:N0)、情報取得部11cは、電力計測情報を受信するまで待機する。
【0113】
電力計測情報を受信した場合(S1:YES)、情報取得部11cは、スマートメータ40から受信して取得した電力計測情報を、需要家4の需要家ID、この需要家4を管理する子アグリ3の子アグリID及びこの子アグリ3を管理する親アグリ2の親アグリID等の情報に対応付けて、分散台帳システムの電力計測情報DBに記憶し(ステップS2)、処理を終了する。
【0114】
図12は、本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10が行うDR実施処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10の処理部11のDR依頼部11aは、電力会社1にて決定されたDRについて日時及び目標値等の情報を取得する(ステップS11)。DR依頼部11aは、DRを識別するDR依頼IDと、ステップS11にて取得した日時及び目標値等の情報とを含むDR依頼を親アグリ2の親アグリサーバ装置20へ送信する(ステップS12)。
【0115】
処理部11の実施指令部11bは、決定されたDRを実施するタイミングに至ったか否かを判定する(ステップS13)。DRを実施するタイミングに至っていない場合(S13:NO)、実施指令部11bは、DRを実施するタイミングに至るまで待機する。DRを実施するタイミングに至った場合(S13:YES)、実施指令部11bは、実施するDRを識別するDR依頼IDを含むDRの実施指令を親アグリサーバ装置20へ送信する(ステップS14)。
【0116】
その後、処理部11の達成率確認部11dは、例えば1ヶ月に1回等のDRに関する達成率の確認を行うタイミングに至ったか否かを判定する(ステップS15)。確認を行うタイミングに至っていない場合(S15:NO)、達成率確認部11dは、確認を行うタイミングに至るまで待機する。確認を行うタイミングに至った場合(S15:YES)、達成率確認部11dは、確認の対象となるDRを識別するDR依頼IDと、対象となる親アグリ2の親アグリID又は子アグリ3の子アグリIDとを入力として分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することにより、分散台帳システムに親アグリ2又は子アグリ3の達成率の確認を要求する(ステップS16)。達成率確認部11dは、この要求に応じて分散台帳システムにてスマートコントラクトにより算出される達成率を取得し(ステップS17)、処理を終了する。電力会社サーバ装置10は、取得した達成率を例えば電力会社1のオペレータ等に表示する処理を行ってよい。
【0117】
図13は、本実施の形態に係る子アグリサーバ装置30が行う処理の手順を示すフローチャートである。なお親アグリサーバ装置20が行う処理についてはフローチャートによる図示及び説明を省略する。本実施の形態に係る子アグリサーバ装置30の処理部31の需要家決定部31aは、電力会社サーバ装置10が送信するDR依頼を、親アグリサーバ装置20を介して受信したか否かを判定する(ステップS21)。DR依頼を受信していない場合(S21:NO)、需要家決定部31aは、DR依頼を受信するまで待機する。
【0118】
DR依頼を受信した場合(S21:YES)、需要家決定部31aは、子アグリ3が管理する複数の需要家4の中から、DRを実施する一又は複数の需要家4を決定する(ステップS22)。需要家決定部31aは、DR依頼に含まれるDR依頼IDと、決定した需要家4の需要家ID、この需要家4を管理する子アグリ3の子アグリID及びこの子アグリ3を管理する親アグリ2の親アグリID等の情報とを入力として分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することにより、分散台帳システムのDR需要家DBにDR依頼ID及び需要家ID等を対応付けて登録(記憶)する(ステップS23)。次いで需要家決定部31aは、分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することにより、DR需要家DBに登録した需要家4についてベースラインを算出し、算出したベースラインをDR需要家DBに登録する(ステップS24)。
【0119】
処理部31の情報中継部31cは、電力会社サーバ装置10が送信するDRの実施指令を、親アグリサーバ装置20を介して受信したか否かを判定する(ステップS25)。実施指令を受信していない場合(S25:NO)、情報中継部31cは、実施指令を受信するまで待機する。実施指令を受信した場合(S25:YES)、情報中継部31cは、受信した実施指令に含まれるDR依頼IDを取得し、このDR依頼IDにて識別されるDRを実施すると予め決定していた一又は複数の需要家4のGW50へ、DRの実施指令を送信する(ステップS26)。その後、情報中継部31cは、電力会社サーバ装置10からの電力計測情報の送信要求を需要家4へ送信し、この送信要求に応じた需要家4のスマートメータ40からの電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信することで、電力計測情報の中継を行い(ステップS27)、処理を終了する。
【0120】
なお本実施の形態においては、子アグリサーバ装置30が分散台帳システムのスマートコントラクトを実行することで需要家4に関する情報の登録及びベースラインの算出等の処理を行っているが、これに限るものではなく、これらの処理を子アグリサーバ装置30が実行するプログラムにて行ってもよい。例えば子アグリサーバ装置30がベースラインを算出する処理を行って、算出結果を分散台帳システムに登録してもよい。
【0121】
図14は、本実施の形態に係る需要家4のGW50が行う処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る需要家4のGW50の処理部51の情報中継部51aは、電力会社サーバ装置10が送信するDRの実施指令を、子アグリサーバ装置30を介して受信したか否かを判定する(ステップS41)。情報中継部51aは、実施指令を受信していない場合(S41:NO)、実施指令を受信するまで待機する。実施指令を受信した場合(S41:YES)、情報中継部51aは、需要家4に対してDRの実施を通知する。DR実施の通知は、どのような方法で行われてもよく、例えば需要家4が有する端末装置にメッセージを送信することで行われ得る。その後、情報中継部51aは、電力会社サーバ装置10からの電力計測情報の送信要求をスマートメータ40へ送信し、この送信要求に応じたスマートメータ40からの電力計測情報を電力会社サーバ装置10へ送信することで、電力計測情報の中継を行い(ステップS43)、処理を終了する。
【0122】
図15は、本実施の形態に係る分散台帳システムのノード装置が行うベースライン算出処理の手順を示すフローチャートであり、分散台帳システムのスマートコントラクトにより行われる処理の手順である。分散台帳システムのノード装置は、スマートコントラクトの実行に伴って子アグリサーバ装置30から与えられる情報から、算出の対象となる需要家4の需要家IDを取得する(ステップS51)。ノード装置は、取得した需要家IDに基づいて分散台帳システムの電力計測情報DBを参照することにより、この需要家4による過去の電力計測情報(例えば過去1週間分の電力計測情報)を取得する(ステップS52)。
【0123】
次いでノード装置は、取得した過去の電力計測情報に基づいて、例えば電力の計測値の平均値を算出することで、需要家4のベースラインを算出する(ステップS53)。ノード装置は、算出したベースラインの値を、分散台帳システムのDR需要家DBに記憶する(ステップS54)。その後、ノード装置は、ベースラインの算出対象となる全ての需要家4について算出処理を終了したか否かを判定する(ステップS55)。算出処理を終了していない需要家4が残されている場合(S55:NO)、ノード装置は、ステップS51へ処理を戻し、別の需要家4についてベースラインの算出を行う。全ての需要家4について算出処理を終了した場合(S55:YES)、ノード装置は、処理を終了する。
【0124】
図16は、本実施の形態に係る分散台帳システムのノード装置が行う達成率算出処理の手順を示すフローチャートであり、分散台帳システムのスマートコントラクトにより行われる処理の手順である。分散台帳システムのノード装置は、スマートコントラクトの実行に伴って電力会社サーバ装置10から与えられる情報から、検証の対象となるDRを識別するDR依頼IDを取得する(ステップS61)。ノード装置は、取得したDR依頼IDに基づいて分散台帳システムのDR需要家DBを参照することにより、DRを行った一又は複数の需要家4を特定する(ステップS62)。
【0125】
次いでノード装置は、特定した需要家4の需要家IDに基づいて分散台帳システムの電力計測情報DBを参照することにより、DRを実施した需要家4のDRが実施された日時における電力計測情報を取得する(ステップS63)。ノード装置は、取得した電力計測情報に含まれるスマートメータ40が測定した電力量を需要実績値として分散台帳システムのDR需要家DBに記憶する(ステップS64)。ノード装置は、DR需要家DBに記憶されたベースライン及び需要実績値の差分を算出することでDR実績値を算出し(ステップS65)、算出したDR実績値をDR需要家DBに記憶する(ステップS66)。ノード装置は、対象の親アグリ2又は子アグリ3について、管理下の需要家4のDR実績値を集計する(ステップS67)。ノード装置は、DRの目標値に対するDR実績値の集計値を達成率として算出する(ステップS68)。ノード装置は、算出した達成値をDR需要家DBに記憶して(ステップS69)、処理を終了する。
【0126】
<達成率表示処理>
達成率の算出を行った電力会社サーバ装置10は、例えばディスプレイ装置等に達成率の算出結果を表示する処理を行う。図17及び図18は、電力会社サーバ装置10による達成率算出結果の表示例を示す模式図である。本実施の形態に係る電力会社サーバ装置10は、例えば1ヶ月に1回の周期で、親アグリ2及び子アグリ3についてDRの達成率を算出し、図17に示す達成率報告画面をディスプレイ装置等に表示して、電力会社1のオペレータ等に対する通知を行う。電力会社サーバ装置10は、図17に示す達成率報告画面において、例えば最上部に「達成率(親アグリレベル)」のタイトル文字列を表示し、このタイトル文字列の下方に親アグリに関する達成率を表形式で表示する。図17に示す達成率報告画面の表は、「DR依頼ID」、「親アグリ(の名称等)」、「目標値」、「DR実績値」、「達成率」及び「子アグリ詳細」等の情報を対応付けたものである。図示の例では、「親アグリA」~「親アグリC」の3つの親アグリ2が存在するものとし、「DR依頼ID」に「0001」~「0003」の識別情報が付された3回分のDRについて、「目標値」、「DR実績値」及び「達成率」を表示している。また表の右端に設けられた「子アグリ詳細」には、各達成率に対応付けて「詳細」のラベルが付されたボタンが表示されており、例えば電力会社1のオペレータ等がマウス等の入力装置を利用してこのボタンに対するクリック操作を行った場合、電力会社サーバ装置10は対応する子アグリ3についての詳細情報を表示する。
【0127】
図18は、図17に示す達成率報告画面においてDR依頼ID=0001の親アグリAに関する子アグリ詳細の詳細ボタンが操作された場合に、電力会社サーバ装置10が表示する詳細画面の一例である。電力会社サーバ装置10は、図18に示す詳細画面において、例えば最上段に「達成率(子アグリレベル)」のタイトル文字列を表示し、このタイトル文字列の下方に親アグリAの管理下の子アグリ3に関する達成率の詳細情報を表形式で一覧表示する。図18に示す詳細画面の表は、「DR依頼ID」、「親アグリ」、「子アグリ」、「目標値」、「DR実績値」及び「達成率」の情報を対応付けたものである。「DR依頼ID」及び「親アグリ」は図17の達成率報告画面にて表示される表のものと同じである。「子アグリ」には、詳細表示の対象の親アグリ2が管理する一又は複数の子アグリ3のID又は名称等であり、本例では「親アグリA」が「子アグリA」及び「子アグリB」の2つを管理している。「目標値」、「DR実績値」及び「達成率」は、子アグリ3毎に算出された値である。
【0128】
なお図17及び図18に示した画面は一例であってこれに限るものではなく、電力会社サーバ装置10はどのような方法で達成率の算出結果を表示してもよい。電力会社サーバ装置10は、例えば更に子アグリ3が管理する需要家4毎の詳細情報を表示してもよい。
【0129】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、電力会社1及び需要家4を接続する第1通信経路を介して、需要家4に設置されたスマートメータ40が計測した電力に係る電力計測情報を電力会社サーバ装置10が例えば30分に1回の周期で取得し、分散台帳システムの電力計測情報DBに記憶する。また第2通信経路において電力会社1及び需要家4の間に介在する子アグリ3の子アグリサーバ装置30が、DRを行う需要家に関する情報を分散台帳システムのDR需要家DBに記憶すると共に、DRを行った需要家4についてDRのベースライン(基準値)を算出してDR需要家DBに記憶する。電力計測情報管理システムは、分散台帳システムに記憶された電力計測情報、DRを行う需要家4及び需要家4のベースラインに基づいて、需要家4のDR実績値(節電量)を算出して分散台帳システムのDR需要家DBに記憶し、DR実績値に基づいて親アグリ2又は子アグリ3についてのDRの達成率を算出する。これにより本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、信頼性の高い分散台帳システムに記憶された情報に基づいて、親アグリ2又は子アグリ3についてDRの達成率を算出することができ、需給調整において扱われる情報の信頼性を高めることが期待できる。
【0130】
また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、電力会社1及び需要家4の間に複数のアグリゲータ、即ち親アグリ2及び子アグリ3が介在しており、親アグリ2についてのDRの達成率を算出すると共に、子アグリ3についてのDRの達成率を算出する。
【0131】
また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、電力会社サーバ装置10が第2通信経路を介してDRの実施指令を送信し、実施指令を受信した子アグリ3の子アグリサーバ装置30が予め決定したDRを行う需要家4へ実施指令を送信する。分散台帳システムのDR需要家DBには、この実施指令に付されるDR依頼IDと、需要家4に付される需要家IDとが対応付けて記憶される。これにより、DRを実施した需要家4がいずれであるかについての情報の信頼性を向上することができる。
【0132】
また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムは、電力会社サーバ装置10がDRの実施指令を送信する前に、DRを依頼するDR依頼を第2通信経路へ送信し、DR依頼を受信した子アグリサーバ装置30がDRを行う需要家4の情報を分散台帳システムに記憶する。これにより、DRの実施に先立って子アグリ3が決定したDRを実施する需要家4に関する情報を、信頼性の高い分散台帳システムに記憶しておくことができる。
【0133】
また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、DRを行う需要家4についてのベースラインの算出、DRを行った需要家4についてのDR実績値の算出、並びに、親アグリ2及び子アグリ3についてのDRの達成率の算出等の処理を、分散台帳システムがスマートコントラクトを実行することにより行う。これにより、達成率等を算出する処理の信頼性を向上することができる。
【0134】
また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、分散台帳システムが行った算出結果に基づいて、電力会社サーバ装置10が親アグリ2及び子アグリ3についてDRの達成率を表示する処理を行う。これにより、例えば電力会社1のオペレータ等は電力会社サーバ装置10が表示した情報に基づいて、DRの実績等を把握することができる。
【0135】
また本実施の形態に係る電力計測情報管理システムでは、分散台帳システムがDR需要家DBの指令ID及び需要家ID等の情報を公開情報として管理する。また分散台帳システムは、DR需要家DBの「ベースライン」、「需要実績値」及び「DR実績値」等の情報と、電力計測情報DBの各情報とを非公開情報として管理する。この非公開情報に関して、親アグリ2及び子アグリ3等のノード装置には、自身の管理下にある需要家4に関する非公開情報のみが記憶され、自身の管理外にある需要家4に関する非公開情報は記憶されない。これにより、需要家4のDR実績値等の情報について秘匿性を高めることができる。
【0136】
なお本実施の形態において説明した電力計測情報管理システムのシステム構成、このシステムに含まれる各装置の装置構成、各装置が行う処理、各装置が扱う情報及び装置間で送受信される情報等は、一例であってこれに限るものではなく、適宜に構成の変更等が行われ得る。また電力計測情報管理システムが利用する分散台帳システムの構成は、一例であってこれに限るものではなく、適宜に構成の変更等が行われ得る。本実施の形態に係る分散台帳システムは、「Hyperledger Fabric」又は「Enterprise Ethereum」等のプライベート型の分散台帳システムを想定しているが、パブリック型の分散台帳システムであってもよい。また本実施の形態においては分散台帳システム上で動作するプログラムを「スマートコントラクト」と記載したが、このプログラムは例えば「チェーンコード」等の別の名称で呼ばれ得る。
【0137】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
1 電力会社
2 親アグリ
3 子アグリ
4 需要家
10 電力会社サーバ装置
11 処理部
11a DR依頼部
11b 実施指令部
11c 情報取得部
11d 達成率確認部
11e 台帳処理部
12 記憶部
12a サーバプログラム
13 通信部
20 親アグリサーバ装置
21 処理部
21a DR依頼部
21b 実施指令部
21c 情報中継部
21d 台帳処理部
22 記憶部
22a サーバプログラム
23 通信部
30 子アグリサーバ装置
31 処理部
31a 需要家決定部
31b 実施指令部
31c 情報中継部
31d 台帳処理部
32 記憶部
32a サーバプログラム
33 通信部
40 スマートメータ
41 計測部
42 処理部
43 記憶部
44 第1通信部
45 第2通信部
50 GW
51 処理部
51a 情報中継部
52 記憶部
52a プログラム
53 第1通信部
54 第2通信部
97~99 記録媒体
100 台帳情報
101 ブロックチェーン
102 ステートDB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図15
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