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  • 特許-床の強化工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】床の強化工法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/12 20060101AFI20241011BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20241011BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241011BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241011BHJP
【FI】
E04F15/12 F
E04F15/12 L
E04F15/12 C
E04G23/02 H
C09D175/04
C09J7/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020215599
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101166
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000177139
【氏名又は名称】三洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 賢
(72)【発明者】
【氏名】石山 隆一
(72)【発明者】
【氏名】中村 文明
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-108154(JP,U)
【文献】特開2008-221742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0333311(US,A1)
【文献】特開2018-178367(JP,A)
【文献】特開2019-073858(JP,A)
【文献】特開2009-061680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E04G 21/24、21/30、23/02
C09D 175/04
C09J 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系床材が施工された床面であって、高荷重及び高摩擦力が加わることで破損が予測される特定範囲の箇所に、予め、合成樹脂製のシート材を貼付し、
さらに当該シート材の上面部及び当該シート材の周辺部に対し前記上面部と前記周辺部が連続するウレタン塗装を施して補強し強化することを特徴とする床の強化工法。
【請求項2】
木質系床材が施工された床面であって、高荷重及び高摩擦力が加わることで破損した特定範囲の箇所に、合成樹脂製のシート材を貼付し、
さらに当該シート材の上面部及び当該シート材の周辺部に対し前記上面部と前記周辺部が連続するウレタン塗装を施して補修し強化することを特徴とする床の強化工法。
【請求項3】
前記ウレタン塗装を、前記シート材の上面部、及び前記シート材の端部から10mm~30mmの範囲に施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の床の強化工法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の床の強化工法において、
前記床面の特定範囲の箇所を磨く工程と、
前記特定範囲の箇所に、前記シート材を貼り付ける工程と、
前記貼り付けた前記シート材の上面を磨く工程と、
前記磨いた前記シート材の上面部及び当該シート材の周辺部対し、前記上面部と前記周辺部が連続する前記ウレタン塗装を施す塗装工程と、を含むことを特徴とする床の強化工法。
【請求項5】
請求項に記載の床の強化工法において、さらに、
前記塗装工程の後、前記ウレタン塗装の上面を磨く工程と、
前記磨いた前記ウレタン塗装の上面部に、再度のウレタン塗装を行う再塗装工程と、を含むことを特徴とする床の強化工法。
【請求項6】
前記シート材の厚さを0.1mm~0.5mmの範囲としたことを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の床の強化工法。
【請求項7】
前記シート材の貼付の際には、矩形状の前記シート材を複数用い、これらシート材を並べて前記床面の特定範囲の箇所に配置し貼着したことを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の床の強化工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体育館、ホール等の床面の補強又は補修を行う床の強化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の床材等のキズ等に対してその修復等が行われており、例えば特許文献1に記載のキズ補修用転写テープは、床等に生じたキズを補修するため、転写テープの接着剤層を床のキズにあて、基材シートを押圧し、塗膜層を床に転写するものであり、これにより修復部が違和感なく仕上がるというものである。
【0003】
また、特許文献2には、多彩模様塗膜補修工法の発明の記載があり、これは、多彩模様塗膜の破損部に、塗膜と同一組成の多彩模様塗料から形成されたパッチ用フィルムを接着剤により貼り付けることにより、簡便に補修工法が行えるというものである。
【0004】
一方、特許文献3には、合成樹脂及び木質材料が積層された積層体の面を保護する塗料として、アクリルウレタン系樹脂を含む水性組成物からなる水性塗料、及びこの水性塗料により床材表面を保護する方法に係る発明の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-76269号公報
【文献】特開平10-220033号公報
【文献】特開2005-264136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、床材等の表面を保護する塗料、工法として前記特許文献1-3が知られているが、施設等の床材に関しては、特にキズ、消耗等の破損は特定の箇所に集中することも予測され、また実際そのような箇所の床材の傷みは他と比べても激しく、床材のささくれ等の破損があった場合などは、運動、移動する人の事故の虞も予測される。
【0007】
しかし、このような床に対しては補修の必要があるが、その補修には、費用及び時間等がかかり、加えて、補修の間施設を休止しなければならないという問題がある。これに対して、床材の床面の破損を軽減できる対策、処置がとれないか現場からの要請がある。
一方、すでに、床面の破損があった場合、これを効果的に補修する手立てがないものか、等の要請もある。
【0008】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、床材のキズ等の破損、消耗等が予測される箇所を補強、強化し、またすでに破損、消耗があった箇所を補修、強化し、良好な床面が得られるための床の強化工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の技術的課題を解決するため、本発明に係る床の強化工法は図1等に示すように、木質系床材が施工された床面であって、資材搬入ルート、或いは球技のアタックゾーン等の高荷重及び高摩擦力が加わることで破損が予測される特定範囲の箇所に、予め、合成樹脂製のシート材を貼付して補強し強化する構成である。
【0010】
本発明に係る床の強化工法は、木質系床材が施工された床面であって、資材搬入ルート、或いは球技のアタックゾーン等の高荷重及び高摩擦力が加わることで破損した特定範囲の箇所に、合成樹脂製のシート材を貼付して補修し強化する構成である。
【0011】
本発明に係る床の強化工法は、木質系床材が施工された床面であって、資材搬入ルート、或いは球技のアタックゾーン等の高荷重及び高摩擦力が加わることで破損が予測される特定範囲の箇所に、予め、合成樹脂製のシート材を貼付し、さらに当該シート材の表面及びその周辺部に、ウレタン塗装を施して補強し強化する構成である。
【0012】
本発明に係る床の強化工法は、木質系床材が施工された床面であって、資材搬入ルート、或いは球技のアタックゾーン等の高荷重及び高摩擦力が加わることで破損した特定範囲の箇所に、合成樹脂製のシート材を貼付し、さらに当該シート材の表面及びその周辺部に、ウレタン塗装を施して補修し強化する構成である。
【0013】
本発明に係る床の強化工法は、前記ウレタン塗装を、前記シート材の上面部、及び前記シート材4の端部から10mm~30mmの範囲に施す構成である。
【0014】
本発明に係る床の強化工法は、前記床の強化工法において、前記床面の特定範囲の箇所を磨く工程と、前記特定範囲の箇所に、前記シート材を貼り付ける工程と、前記貼り付けた前記シート材の表面を磨く工程と、前記磨いた前記シート材の表面に前記ウレタン塗装を行う塗装工程と、を含む構成である。
【0015】
本発明に係る床の強化工法は、前記床の強化工法において、さらに、前記塗装工程の後、前記ウレタン塗装の表面を磨く工程と、前記磨いた前記ウレタン塗装の表面に、再度のウレタン塗装を行う再塗装工程と、を含む構成である。
【0016】
本発明に係る床の強化工法は、前記シート材の厚さを0.1mm~0.5mmの範囲とした構成である。
【0017】
本発明に係る床の強化工法は、前記シート材の貼付の際には、矩形状の前記シート材を複数用い、これらシート材を並べて前記床面の特定範囲の箇所に配置し貼着した構成である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る床の強化工法によれば、高荷重及び高摩擦力が加わることで破損が予測される特定範囲の箇所に、予め、合成樹脂製のシート材を貼付して補強し強化する構成を採用したから、シート材の貼付により床面の強度が高まり、高荷重等が加わった際にも床材のささくれ、ひび割れ、凹み及び剥がれ等の破損が発生し難くなり、補修の事態の回避も可能となり、また強度が必要な箇所の床面の安全が確保され、加えてシート材の配置が容易に行える等施工性にも優れるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る床の強化工法によれば、高荷重及び高摩擦力が加わることで破損した特定範囲の箇所に、合成樹脂製のシート材を貼付して補修し強化する構成を採用したから、シート材の貼付により破損個所が良好に改善され、また床面の強度が高まり、その後高荷重等が加わった際にも床材のささくれ、ひび割れ、凹み及び剥がれ等の破損が発生し難くなり、強度が必要な箇所の床面の安全が確保され、加えてシート材の配置が容易に行える等施工性にも優れるという効果を奏する。
【0020】
本発明に係る床の強化工法によれば、高荷重及び高摩擦力が加わることで破損が予測される特定範囲の箇所に、予め、合成樹脂製のシート材を貼付し、さらに当該シート材の表面及びその周辺部に、ウレタン塗装を施して補強し強化する構成を採用したから、上記シート材の貼付による効果に加えて、周辺の床面との間の滑りが均一化されてつまずき等が防止され、加えてウレタン塗装によりシート材の貼り付け等が補強され耐久性が向上するという効果を奏する。
【0021】
本発明に係る床の強化工法によれば、高荷重及び高摩擦力が加わることで破損した特定範囲の箇所に、合成樹脂製のシート材を貼付し、さらに当該シート材の表面及びその周辺部に、ウレタン塗装を施して補修し強化する構成を採用したから、上記シート材の貼付による破損個所が改善される等の効果に加えて、周辺の床面との間の滑りが均一化されてつまずき等が防止され、加えてウレタン塗装によりシート材の貼り付け等が補強され耐久性が向上するという効果を奏する。
【0022】
本発明に係る床の強化工法によれば、ウレタン塗装を、シート材の上面部及びシート材の端部から10mm~30mmの範囲に施す構成としたから、シート材の境界とウレタン塗装の部位及びウレタン塗装と他の床面との境界の滑りが均一化され、自然な床面が形成されるという効果がある。
【0023】
本発明に係る床の強化工法によれば、床面の特定範囲の箇所を磨く工程と、特定範囲の箇所に、シート材を貼り付ける工程と、貼り付けたシート材の表面を磨く工程と、磨いたシート材の表面にウレタン塗装を行う塗装工程と、を含む構成を採用したから、シート材の貼着が良好且つ強固に行え、またシート材表面のウレタン塗装がシート材になじんで塗装が良好に行え、床面の強化に寄与するという効果がある。
【0024】
本発明に係る床の強化工法によれば、さらに、塗装工程の後、ウレタン塗装の表面を磨く工程と、磨いたウレタン塗装の表面に、再度のウレタン塗装を行う再塗装工程と、を含む構成を採用したから、先のウレタン塗装に対して再度のウレタン塗装がなじんで塗装が良好に行え、耐久性が良くなるという効果がある。
【0025】
本発明に係る床の強化工法によれば、シート材の厚さを0.1mm~0.5mmの範囲とした構成としたから、床面の高低差が適度に保てることから床面に違和感もなく、また床面の強度も確保できるという効果がある。
【0026】
本発明に係る床の強化工法によれば、シート材の貼付の際には、矩形状のシート材を複数用い、これらシート材を並べて床面の特定範囲の箇所に配置し貼着した構成としたから、シート材として手ごろで適度な大きさのものを使用でき、これによりシート材の貼付が確実に行え、またシート材を貼付する際の作業が効率良く行え、加えてシート材の管理も容易であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態に係り、広い床面にシート材を配置し、ウレタン塗装を施した状態を示した床面構造を示す図(a)(b)(c)である。
図2】実施の形態に係り、廊下など直線状或いはコーナ状の床面にシート材を配置し、ウレタン塗装を施した状態を示した床面構造を示す図(a)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施の形態を詳しく説明する。
なお、本発明はこれら形態の例示に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更を行い得ることは勿論である。
【0029】
この実施の形態に係る強化工法は、体育館、ホール(コンサートホール)、イベント会場等の木質系床材が施工された建物等の床面2について、その一部の特定範囲の箇所を補強して強化し、又は補修して強化する工法である。
【0030】
前記特定範囲の箇所とは、人の運動、移動或いは資材搬入による車両などの通過箇所等、高荷重が加わりまた摩擦等の激しい箇所であり、例えば、球技等のアタック、スパイク等が頻繁に行われるゾーン、部屋等の出入り口の近傍、或いは移動観覧席の移動箇所、資材搬入ルート、廊下など高荷重及び高い摩擦力が加わる箇所である。これら、高荷重及び高摩擦力が加わる特定範囲の箇所では、床面2の破損が見られ、又床面2の破損を予め予測することが可能である。
【0031】
特に、バレーボールコートのアタックラインの近傍(フロントゾーン)、或いはバスケットコートのゴール近傍のシュートゾーンの近傍等は選手の動きも活発で摩擦も激しい。そして、このような高摩擦力或いは高荷重が加わる箇所は、床材のキズ(ささくれ、ひび割れ、へこみ、はがれ等)による破損が生じやすく、人等の事故が発生する事態を招く虞もある。
【0032】
このため、前記高荷重、高摩擦がかかる特定範囲の箇所の床面2に、予め補強の処理を施して強化し、前記事故等を防止、回避する。また、すでに床材の破損が生じた箇所では、人等の事故が発生する虞もあるため、破損が生じた箇所に補修の処理を施して強化し、前記事故等を防止、回避する。
なお、ここで特定範囲の箇所に予め補強の処理を施す場合、当該予めとは、床面2の前記特定範囲の箇所にキズ等の破損がない状態、或いは床材の敷設工事が終了し、まだ床面2が新しい状態である場合をさし、これらの状態の床面2に対して予めこれを補強する工法を採用する。
【0033】
前記強化工法としては、未だ床面2の特定範囲の箇所が破損していない状態でこの工法を施す場合には補強工法となり、また既に床面2の特定範囲の箇所が破損していた場合はこれが補修工法となる。また、破損の程度が軽微な場合は、補修工法でもあり又補強工法ともなり、何れも床面2を強化する工法である点では実施的に工法の内容は変わらない。
床の強化工法の効果については、これを、床を補強する工法又は補修する工法の何れと考えても、その後床面2が強化され、キズ等の破損が軽減される点では変りはない。また補強する工法とみれば、当該工法の施工当初から床面2が強化されることから、床面2の破損及び補修の心配が軽減され、床面2の良好な環境が長く維持されることになる。
【0034】
これら強化工法に際しては、前記特定範囲の箇所に床面2を強化するための処置を施し、当該箇所の破損等を防止し、又破損個所を修理して強化する。
強化工法の主な構成としては、床面2の前記特定範囲の箇所に合成樹脂製のシート材4(フィルム材)を貼付し、さらに、ここではシート材4の上面部及びその周辺部7に、ウレタン塗装6を施す。
図1及び図2は、床面2にシート材4を配置、貼付し、さらにウレタン塗装6を施した床面構造を示している。
【0035】
シート材4は、合成樹脂材を薄いシート状(フィルム状)に加工したものである。シート材4としては、長方形、正方形、台形或いは三角形等、形状が定まったシート材4を用いる。なお、特定範囲の形状等、必要な場合にはシート材を所定の形状に切断して使用してもよい。
矩形状(長方形、正方形)のシート材4は、広い床面2における特定範囲の箇所への配置、また主に直線方向、或いは直交する方向にシート材4を並べて配置する場合に用いる。また台形状、三角形状のシート材4は、主にカーブ等の曲線状、或いは円弧状の箇所にシート材4を配置する場合等に用いる。
【0036】
シート材4の大きさは、長方形状のものでは、短辺(縦)150mm~300mm、長辺(横)200mm~500mm程度のものを用いるが、これ以上の大きさであっても使用は可能である。これは、用紙のサイズでは、A3サイズ(297×420mm)、A4サイズ(210×297mm)、或いはA5サイズ(148×210mm)程度である。勿論、A0サイズ、A1サイズ或いはA2サイズのシート材4を用いることも可能であるが、シート材4が大きくなると、配置作業に複数の作業者が必要となり手間もかかる。
シート材4が正方形の場合、その大きさは前記長方形の場合に準じたサイズのものを使用する。例えば、シート材4の一辺が200mm~500mmの大きさのものを使用する。
【0037】
シート材4は、大きなサイズのものを所定の大きさに切断して使用してもよいが、一定の大きさのもの、例えばA4サイズ等の手ごろな大きさのものを用意し、これらを複数用い互いに並べて配置するのが効果的である。これは、シート材4の大きさが適度であれば、シート材4の貼付が確実に行え、またシート材4を貼付する際の作業が効率良く行え、加えてシート材4の管理も容易であるためである。
【0038】
また、シート材4の厚さは0.1mm~0.5mmの範囲のものが良好であり、ここでは厚さ0.3mmのシート材4を用いる。この範囲の厚さでは、床面2の高低差が適度に保てることから床面2に違和感もなく、また床面2の強度も十分確保できる。シート材4があまり厚いと、床面2に僅かな段差が発生する。またシート材4が薄すぎると、強度等の問題がある。
【0039】
シート材4を前記特定範囲の箇所に配置し貼付する場合、シート材4の適当なサイズとしては、作業性及び配置範囲等からすれば、縦200mm、横300mm(A4サイズ程度)の大きさのものが適当である。シート材4が正方形の場合には、一辺が200mm~300mm程度の大きさのものを使用する。ここでは、主にA4サイズの大きさのシート材4を使用する。
【0040】
また、シート材4として、長方形及び正方形など複数の種類のものを混同して用いてもよい。シート材4を配置する特定範囲の箇所が、コーナ等の曲線状である場合、台形等の四角形、或いは三角形等のシート材4を用いると効果的である。
シート材4のサイズは、これが小さすぎると配置作業に手間がかかり、また大きすぎると配置し貼付する範囲が無駄に広くなり、また作業性も悪いという問題がある。
【0041】
シート材4の材料としては、塩化ビニル系の合成樹脂、或いはアクリル系の合成樹脂等が床面の強化には有効である。塩化ビニル樹脂は、耐久性及び耐薬品性に優れ、また難燃性であり接着性にも優れる。アクリル樹脂は透明性が高く、耐候性、耐久性に優れる。
シート材4は、予め片面に接着剤(粘着剤)が塗布された粘着シートを用いるのが効率的であり、これにより貼着作業等が簡単に行なえ、シート材4の維持管理も容易である。勿論、別途に接着材(粘着材)を床面2に塗布し、シート材4を貼着するようにしてもよい。
【0042】
図1は、体育館等の広い床面2の一部として、特定範囲の箇所を強化する場合の床面構造を示すものであり、床面2に対するシート材4及びウレタン塗装6の配置形態を示している。
体育館等の床面2に強化工法を施す場合、バレーコートのフロント(アタック)ゾーン、バスケットコートのゴール近傍、及び館内の出入り口等の特定範囲の箇所に施す。また、これらの特定範囲の箇所で破損が生じている場合も同様に強化工法を施す。
【0043】
図2は、廊下など直線、曲線状の床面2等の特定範囲の箇所を強化する場合の床面構造を示すものであり、床面2に対するシート材4及びウレタン塗装6の配置形態を示している。
廊下等に強化工法を施す場合には、廊下に沿った直線状、或いは直角(カーブ)等に曲がる曲線状(コーナ状)など、これらの床面2の特定範囲の箇所に施す。廊下は、例えば運搬車両、台車等が通過する箇所、廊下の中央部の左右側など、車両の左右の車輪が通過する箇所等に前記工法を施す。また、これらの箇所に破損が生じている場合も同様に強化工法を施す。
【0044】
ここで、シート材4の貼付(接着)工程、及びウレタン塗料の塗装工程について説明する。前記特定範囲の箇所にシート材4を貼り付ける場合には、当該範囲に複数のシート材4を並べて配置しこれらを粘着(接着)する。ここでは、シート材4として、A4サイズの大きさのもので、裏面には接着材が塗布された粘着シートを用いる。粘着シートは粘着剤(層)から剥離紙をはがせば、そのままシート材4を床面2に貼着(接着、粘着)することができ、作業が容易に行える。
【0045】
シート材4は、通常、一枚ずつ左右及び前後(手前奥)方向に順に並べて配置する。但し、場所によっては、上下に2重に或いは3枚以上重ねて配置することもできる。この場合、上下のシート材4は、端部の辺同士が重ならないよう、互いに辺の半分程度ずらして配置するとよい。
このように、床面2にシート材4を配置し貼付することにより、床面2の強度が増す。
【0046】
また、隣り合うシート材4は、辺同士を突合(密着)させ、重ねないで張り付けるのが良いが、緩い段差或いはカーブ状の箇所では、少し端部同士を重ねて張り付けてもよい。なお、シート材4の端部等に接着剤を塗布し、シート材4の貼着を補強しても良い。
シート材4を配置する箇所が曲線状の場合、該当する箇所については、矩形状以外のシート材4、例えば台形状或いは三角形状のシート材4を用い、また各形状のシート材4を組み合わせて曲線状のラインを形成するように配置する。台形状或いは三角形状のシート材4は、長方形状のシート材4を現場で切断して成形してもよい。
【0047】
さらに、ここでは、前記シート材4の配置、貼着に加えて、当該シート材4の上面、及びその周辺部7にウレタン塗装6を施す。シート材4のみでも、床面2が強化されるが、これにウレタン塗装6を加えることで、さらに強度、耐久性等が改善される。
ウレタン塗装6には、ウレタン系樹脂を主成分としたウレタン塗料を用いる。ウレタン塗料には、1液型と2液型があるが、ここでは塗膜性能及び密着性の高い水性2液型を使用する。
【0048】
前記ウレタン塗装6を施す周辺部7の範囲として、前記シート材4の端部から10mm以上、10mm~30mmの範囲、好ましくは20~30mmの範囲に施す。これらの範囲にウレタン塗装6を施した場合、シート材4の境界とウレタン塗装6の部位及びウレタン塗装6と他の床面2との境界の滑りが均一化され、自然な床面2が形成される。
【0049】
このようにウレタン塗装6は、シート材4の上面部の全体、さらにシート材4の周辺部7に塗布する。ウレタン塗装6は、刷毛等で塗料を塗布する。このウレタン塗装6により、シート材4を補強することができ、加えて、シート材4の摩擦係数を他の床面となじむように改善することができる。つまり、ウレタン塗装6を施すことにより、シート材4の摩擦を床面2の摩擦となじませることができ、周辺の床面2との間での滑りを均一化することができる。これにより、人等がシート材2を配置した床面2とその他の床面2を移動する際、つまずき等を防止できる。
【0050】
このため、ウレタン塗装6後の床面2の摩擦係数は、同塗装のされていない、その周囲の床面2の摩擦係数と同一又は同程度とするのが有効であり、違和感も軽減される。また、通常、体育館の床面は同様の塗装が施されており、ウレタン塗装6は他の床面とも摩擦係数等でなじむものである。ウレタン塗装6には適度なグリップ力もあり、スポーツ関連の床面2等には適している。
【0051】
図1(a)(b)(c)は、広い床面2の特定範囲の箇所にシート材4を配置、貼着し、さらに上からウレタン塗装6を施した場合の種々の配置形態を示したものである。同図(a)は、左右方向及び前後(手前奥)方向に各シート材4を互いに端部(各辺部)を密着させ、床面2に配置し貼着したものである。ここでは、シート材4は全て同一サイズの長方形状のものを用いている。
【0052】
この場合、シート材4を左右方向にライン状に配置し、且つ各シート材4同士は互いに隙間なく配置し、床面2に貼着する。また、前後方向側については、前方の段或いは後方の各段について、前記と同様にそれぞれ左右方向にシート材4を配置し貼付する。前後のシート材4同士についても同様に隙間なく配置する。
シート材4は、重ねないで(一重)貼れば良いが、場所によっては二重、或いは三重等と重ねて貼り、強度を高めるようにしても良い。
【0053】
ウレタン塗装6は、全てのシート材4の上面部、及びそれらの周辺部7に連続的且つ均一に施している。ここでシート材4の周辺部7とは、特定範囲の床面2に前後左右に配置されたシート材4の内、最も外側のシート材4の周辺(シート材4が配置されてない床面2の箇所)をさす。
【0054】
また同図(b)は、一方向(左右方向)には辺同士を揃え且つ並べて配置し(通し目地形)、またこれと直交する前後方向(手前奥方向)には、前後間で辺同士の継ぎ目が重ならないよう、半分ずつずらして配置(馬踏み目地形)し貼着したものである。ここでは、シート材4は全て同一サイズの長方形状のものを用いている。
そして、ウレタン塗装6は、全てのシート材4の上面部及びその周辺部7に施している。
【0055】
同図(c)は、左右方向及び前後方向に各シート材4を互いに端部(各辺部)を密着させて床面2に配置したもので、この場合、シート材4は長方形状のものと、これの短辺部と辺の長さが同じ正方形状のものを混在させて配置し貼着している。ここでは、左右の端部に正方形のシート材4を配置し、横(左右側)の長さを調整している。ウレタン塗装6は、全てのシート材4の上面部及びその周辺部7に施している。
【0056】
図2(a)(b)は、廊下等の直線状、或いはコーナ等の直角状(或いは曲線状)の各特定範囲の箇所の床面2に、シート材4を配置し貼着する場合の配置形態を示したものである。通常、廊下を通って物を運搬等する場合、四輪(或いは三輪)の車輪、或いはキャスター等が取り付けられた重機、台車等が用いられる。この場合、車両の各車輪が通過する廊下の中央部の左右の箇所に、それぞれシート材4を直線状或いは曲線状に並べて配置する。
【0057】
同図(a)は、直線状の廊下の床面2に、車輪が通過する箇所として二列に且つ平行にそれぞれシート材4を配置し貼着したものである。そして、ウレタン塗装6を、列状に配置された各シート材4の上面部及びその周辺部7に連続的に施している。
【0058】
同図(b)は、廊下が直角に曲がった箇所にシート材4を配置し貼着した状態を示したものである。このような箇所では車両などは曲線状にカーブを曲がりながら通過する。シート材4の配置についても、車両の車輪が通過するライン(軌跡)を描くよう、車輪の外側のライン及び内側のラインに沿ってシート材4を配置する。このため、ここでは、矩形状(長方形及び正方形)のシート材4に加えて、台形状、及び三角形状のシート材4を用いこれらをカーブしたライン状に配置する。
【0059】
例えば、外側のラインには、台形状のシート材4を組み合わせてカーブしたライン状にシート材4を配置する。また、内側のラインには、角部に正方形状のシート材4を配置し、角部の内側には車両が曲線を描いて通過し易いよう三角形(直角三角形)状のシート材4を配置し、シート材4の上部を車輪が容易に通過できるようにする。そして、ウレタン塗装6を、列状に配置された各シート材4の上面部及びその周辺部7に施している。
【0060】
前記床の強化工法(補強工法又は補修工法)における作業工程として、基本的な工程の手順は下記の通りである。
(1)床面2の床掃除及び磨き工程
先ず、前記特定範囲の箇所の床面2の表面にキズ等が無いか確認し、キズ等があればパテ等で表面の補修作業を行う。
そして、ポリッシャー掛け等を行い、床の掃除、洗浄作業、及び床の磨き、研磨作業を行う。
(2)シート材4の貼付(接着)工程
床面2の特定範囲の箇所の強化のため、当該床面2の箇所にシート材4を配置し貼付の作業を行う。シート材4の貼り付けの際には、シート材4の裏面(床面2との間)に空気が入らないよう、ローラー等を使用するのが効果的である。
シート材4の貼り付けでは、所定形状(例えばA4サイズなど)のものを必要範囲に並べて配置する。この必要範囲が狭い場合には、所定形状に成形したシート材4を用いても良い。シート材4のサイズが大きい場合には、2人以上で作業を行なうのが良い。
(3)シート材4の表面処理(磨き)工程
前記貼り付けたシート材4の表面にポリッシャー掛け等を行って磨き(研磨)、塗料(ウレタン塗装6)がシート材4になじむようにする。
(4)塗装工程(1回目)
この後、前記貼付したシート材4の表面、及びその周辺にウレタン塗装6(1回目)を施す。
(5)塗装工程(2回目)
そして、一回目のウレタン塗装6後、塗料が乾いた後に、このウレタン塗装6の表面にポリシャー掛け等を行って磨き、当該ウレタン塗装6の上部に再度のウレタン塗装6を施す。
以上が、床の強化工法の基本的な作業行程である。
【0061】
従って、前記床の強化工法によれば、シート材4の貼付により床面2の強度が高まり、高荷重等が加わった際にも床材のささくれ、ひび割れ、凹み及び剥がれ等の破損が発生し難くなり且つ補修の事態も回避され、また床面2が強化されて強度及び床面2の安全が確保され、加えてシート材4の配置が容易に行える等施工性にも優れる。
【0062】
また前記床の強化工法によれば、シート材4の貼付により破損個所が良好に改善され、また床面2の強度が高まり、その後高荷重等が加わった際にも床面2の破損が発生し難くなり、また床面2の安全が確保される。さらに、シート材4の上面等のウレタン塗装6により、周辺の床面2との滑りが均一化されて自然な床面2が形成され、つまずき等も防止され、加えてウレタン塗装6によりシート材4の貼り付けが補強され、また耐久性も向上する。
【符号の説明】
【0063】
2 床面
4 シート材
6 ウレタン塗装
7 周辺部
図1
図2