(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】カスタムメイドの股関節インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/36 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
A61F2/36
(21)【出願番号】P 2020505482
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2018071003
(87)【国際公開番号】W WO2019025546
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-29
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517113152
【氏名又は名称】ビスペビアウ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラウリッツェン, ブルーン イェス
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】栗山 卓也
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0226068(US,A1)
【文献】特表2016-514515(JP,A)
【文献】米国特許第5405403(US,A)
【文献】特表2016-500311(JP,A)
【文献】特開2002-315766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の股関節の生来の大腿骨頭に取り付け、対象の股関節の生来の大腿骨頭を少なくとも部分的に覆うためのカスタマイズされた医療用インプラントであって、前記医療用インプラントは、赤道線と赤道面とを有するドーム型シェルを含み、前記ドーム型シェルは、高さh、内側の赤道のシェルの半径r
s、オリフィスの半径r
o、前記赤道線での厚さt
s、ドームの上部での厚さt
tを有し、前記厚さt
s、前記厚さt
t、前記赤道のシェルの半径r
s、前記オリフィスの半径r
o、前記シェルの高さhの1つ以上は、前記股関節の前記生来の大腿骨頭および寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいて、前記対象の前記股関節に対してカスタマイズされ、脚の長さの不一致を補正または低減するために、前記ドームの前記上部での厚さは、前記赤道線での厚さよりも大きく、t
t>t
sであり、
前記シェルの内面のうち少なくとも前記赤道面上方の全体が球形であり、前記シェルの外面のうち少なくとも前記赤道面上方の全体が球形であり、前記シェルの内面の中心が前記シェルの外面よりも下方にずれている、医療用インプラント。
【請求項2】
前記厚さt
s、前記厚さt
t、前記赤道のシェルの半径r
s、前記オリフィスの半径r
o、前記シェルの高さhのうちの1つ以上が、球体を前記3Dコンピューター断層撮影画像の前記大腿骨頭および/または前記寛骨臼に適合させることによって選択されるように、前記医療用インプラントの寸法は、前記対象の前記股関節に対してカスタマイズされる、請求項1に記載の医療用インプラント。
【請求項3】
脚の長さの不一致が補正または低減され得るように、前記ドームの前記上部での厚さt
tのカスタマイズは、前記脚の長さの不一致のX線撮影測定に基づいている、
請求項1または2に記載の医療用インプラント。
【請求項4】
前記オリフィスの半径r
oのカスタマイズは、前記オリフィスの半径r
oが前記大腿骨頭の最大限の直径に一致するように選択され、
前記最大限の直径は、前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から任意に得られる、請求項1~3のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項5】
外側の赤道のシェルの半径のカスタマイズは、前記寛骨臼の直径に一致するように選択され、
前記寛骨臼の直径は、前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像の前記寛骨臼に適合する円または球体の半径から任意選択に判定される、請求項1~4のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項6】
前記高さのカスタマイズは、前記オリフィスの半径
、外側の赤道のシェルの半径、前記シェルの厚さから判定される、請求項1~5のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項7】
インプラントの対象の適格性を評価するための、および/または、前記インプラントの1つ以上のパラメータを選択するための意思決定支援システムであって、
前記インプラントは、対象の股関節の生来の大腿骨頭に取り付け、対象の股関節の生来の大腿骨頭を少なくとも部分的に覆うためのカスタマイズされた医療用インプラントを含み、前記医療用インプラントは、赤道線と赤道面とを有するドーム型シェルを含み、前記ドーム型シェルは、高さh、内側の赤道のシェルの半径r
s、オリフィスの半径r
o、前記赤道線での厚さt
s、ドームの上部での厚さt
tを示すパラメータによって特徴付けられ、脚の長さの不一致を補正または低減するために、前記ドームの前記上部での厚さは、前記赤道線での厚さよりも大きく、t
t>t
sであり、
前記シェルの内面のうち少なくとも前記赤道面上方の全体が球形であり、前記シェルの外面のうち少なくとも前記赤道面上方の全体が球形であり、前記シェルの内面の中心が前記シェルの外面の中心よりも下方にずれており、
前記意思決定支援システムは、前記股関節の前記生来の大腿骨頭および寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいており、
前記
意思決定支援システムは、前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から前記大腿骨頭および前記寛骨臼の形状を抽出するように構成されている処理ユニットを含み、
前記処理ユニットは、対象の適格性を判定するために前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から抽出された前記大腿骨頭および前記寛骨臼の形状を評価するためにさらに構成されている、意思決定支援システム。
【請求項8】
前記インプラントは、
請求項2~6のいずれかによってさらに特徴付けられる、請求項7に記載の
意思決定支援システム。
【請求項9】
前記大腿骨頭および前記寛骨臼の形状を抽出することは、少なくとも皮質骨を組織の残りの部分から区別するための少なくとも1つの強度の閾値に基づいている、
請求項7または8に記載の
意思決定支援システム。
【請求項10】
前記大腿骨頭および前記寛骨臼の形状を抽出することは、参照スキャンまたは参照モデルに基づいており、前記参照スキャンのセグメンテーションは
、患者のスキャンに変形または変換されることが可能であり、これにより、スキャンのセグメンテーションの基準として機能する、請求項7~9のいずれかに記載の
意思決定支援システム。
【請求項11】
前記
意思決定支援システムは、少なくとも1つの断面のスキャンにおける前記大腿骨頭の真円度に基づいて前記大腿骨頭の前記形状を評価するために、および/または、少なくとも1つの断面のスキャンにおける前記寛骨臼の真円度に基づく前記寛骨臼の形状を評価するために構成されている、請求項7~10のいずれかに記載の
意思決定支援システム。
【請求項12】
前記
意思決定支援システムは、少なくとも1mm、または、少なくとも2mm、または、少なくとも3mm、または、少なくとも4mmの真円度の許容範囲に基づいて患者を適格として選択するために構成されている、請求項7~11のいずれかに記載の
意思決定支援システム。
【請求項13】
前記大腿骨頭の形状を評価することは、前記大腿骨頭の真球度に基づいており、および/または、前記寛骨臼の形状を評価することは、前記寛骨臼の真球度に基づいている、請求項7~12のいずれかに記載の
意思決定支援システム。
【請求項14】
前記
意思決定支援システムは、少なくとも1mm、または、少なくとも2mm、または、少なくとも3mm、または、少なくとも4mmの真球度の許容範囲に基づいて患者を適格として選択するために構成されている、請求項7~13のいずれかに記載の
意思決定支援システム。
【請求項15】
前記
意思決定支援システムは、前記大腿骨頭下方
の大腿骨頸部の半径が前記大腿骨頭の半径より、少なくとも1mm、または、少なくとも1.5mm、または、少なくとも2mm、または、少なくとも2.5mm低いときに、患者を適格として選択するために構成されている、請求項7~14のいずれかに記載の
意思決定支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、罹患している股関節の状態を抱える対象の痛みを軽減するための、カスタムメイドのインプラントに関する。本開示はさらに、対象に対する最も適切な股関節治療を判定し、本開示のカスタマイズされたインプラントを受け入れる対象の適格性を判定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節置換手術は、今日行われている特に一般的な整形外科手術の1つである。股関節置換手術の一般的な理由には、変形性関節症、無腐性壊死及び股関節骨折が含まれる。手術は、対象の痛みを和らげ、股関節の機能を改善するために行われる。
【0003】
股関節の手術は通常、大腿骨頭全体を取り除き、人工大腿骨頭付きのステムを大腿骨に挿入する人工股関節全置換術として行われる。股関節全置換術には、寛骨臼にシェルを挿入することも含まれるが、これは場合によっては省くことができる。インプラントは、骨の質が良好な場合、適所にセメントで固定するか、セメントを使用せずに挿入する。いずれの方法でも臨床的に良好な結果を得ることはできるが、インプラントの長期的なゆるみは依然として課題であり、大幅な修正手術が必要になる場合がある。
【0004】
股関節置換手術は周知の処置であるが、この種の手術の問題は依然として存在している。手術は軟組織に関して広範囲に行われるが、大腿骨頭の骨の切除と寛骨臼の拡張も必要である。インプラントを大腿骨に挿入して衝撃を加えると、骨に人工関節周囲骨折を引き起こすリスクがある。さらに、例えばセメントを使用した、骨を切断してインプラントを固定することに由来する手術の侵襲的な特徴は、その場所の感染リスクを高める。やはり、インプラントの経時的なゆるみによる合併症の重大なリスクがある。
【0005】
人工股関節全置換術には、プラスチック/ポリエチレン製コンポーネントを使用しても、メタル・オン・メタルのインプラントを使用してもよい。これは、股関節の動きによる摩擦によって引き起こされる摩耗に起因して、インプラントが使用中に小さな粒子を放出するリスクをもたらす。このような状況では、電解腐食や隙間腐食も発生する可能性がある。
【0006】
上記の列挙した問題は、合併症がより少ない股関節手術用の低侵襲医療用インプラントに対する必要性を示している。大腿骨頭に取り付けられたドーム型のシェルの形態のインプラントは、本発明と同じ発明者によって以前に提案された。WO 2014/094785を参照されたい。この特許出願には、大腿骨頭に取り付けるためのシェルが記載されている。そのようなインプラントは、特定の所定のサイズで製造され、対象に最適なインプラントが選択される。これにより、大幅に小規模の手術が必要とされるといった諸問題の一部が軽減された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の発明の目的は、一般的な人工股関節全置換術よりも侵襲性の低い外科処置を必要とする股関節インプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題は、本開示の医療用インプラントによって改善される。第1の実施形態は、対象の股関節の生来の大腿骨頭に取り付け、少なくとも部分的に覆うためのカスタマイズされた医療用インプラントに関する。医療用インプラントは、高さh、内側の赤道のシェルの半径rs、オリフィスの半径ro、赤道線での厚さts、及びドームの上部での厚さttを有するドーム型シェルを含む。好ましい実施形態では、本開示のインプラントは、厚さts、厚さtt、赤道のシェルの半径rs、オリフィスの半径ro、及びシェルの高さhの1つ以上が、対象の股関節に対してカスタマイズされるように構成される。カスタマイズは、好ましくは、該股関節を示す少なくとも1つの医用画像に基づいている。特に、生来の大腿骨頭及び/または寛骨臼が該医用画像(複数可)で見えることが好ましい。骨はX線画像で非常にはっきりと示されるため、医用画像(複数可)はX線ラジオグラフィーに基づくことが好ましい。X線ラジオグラフィーの例には、投影放射線撮影、コンピューター断層撮影、二重エネルギーX線吸収測定法、蛍光透視法、血管造影法、造影放射線撮影法がある。
【0009】
好ましい実施形態では、医用画像は、例えば、生来の該股関節の大腿骨頭及び寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像である。
【0010】
本開示のインプラントは、好ましくは単一の部分のみからなり、したがって、股関節全置換用のインプラントよりも簡素である。また、股関節全置換術用の先行技術の(及びより複雑な)インプラントと比較して、本開示のカスタマイズされたインプラントの植込みに伴うより簡単な外科処置は、手術に関連するコストの削減につながる。股関節全置換術に使用されるインプラントは、必ずしも患者固有のカスタマイズを必要とせず、そのようなインプラントは固定のサイズのスケールで存在する。
【0011】
本開示のインプラントは、インプラントを必要とする患者に正確に適合するようにカスタマイズされている。前述のように、カスタマイズは少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいていてもよく、大腿骨頭と寛骨臼の表面全体を使用してインプラントのカスタマイズに必要な適切なパラメータ(複数可)を判定できる。
【0012】
本開示の医療用インプラントは、シェル全体の周りに均一な厚さを有し得る。場合によってはこれで十分適切な場合もあるが、可変の厚さのインプラントを利用することも有利な場合がある。また、カスタマイズされた股関節インプラントに適格な患者は、罹患している関節によって引き起こされる可能性のある脚の長さの不一致に苛まれる可能性もある。したがって、本発明の実施形態では、ドームの上部での厚さttは、赤道の厚さとは異なる。罹患している股関節を有する患者の脚が他方の脚よりも短い場合、インプラントの上部での厚さが赤道での厚さよりも大きくなるようにインプラントをカスタマイズすることができ、それにより脚の長さの不一致を少なくとも部分的に改善することができる。一実施形態では、インプラントの厚さは、脚の長さの不一致のX線撮影測定に基づいて選択される。
【0013】
好ましくは、本発明のインプラントは、滑らかな内面及び外面を有し、股関節の摩擦を低減し、ほぼ排除する。インプラントは滑らかな内面と外面で構成されているため、インプラントは少なくとも最初は拘束されておらず、大腿骨頭と寛骨臼の両方に対して動くことが可能である。したがって、本開示のインプラントは、好ましくは、本物の罹患した大腿骨頭への少なくとも最初の拘束されない取り付けをするように構成される。これは、大腿骨頭がインプラントの滑らかな内面に対して自由に動くことができ、寛骨臼がインプラントの滑らかな外面に対して自由に動くことができることを意味する。これにより、関節の摩擦がさらに低減でき、また痛みをさらに軽減できる。
【0014】
最初に拘束されていないインプラントは、最終的に、大腿骨頭または寛骨臼に付着するようになり得る。これは、インプラントの近くまたは周囲の生来の組織の成長によって生じることが可能である。このような場合、インプラントは最大の摩擦でその部分に付着し、それより少ない摩擦で部分から離れて関節の動きに対して自由になる見込みがある。これにより、インプラントの取り付けられていない部分の滑らかな表面が、やはり関節の低い摩擦をもたらし、やはり痛みを軽減する。インプラントは最初は大腿骨頭と寛骨臼の両方に対して自由に動くため、インプラントは最終的には自然に最も好ましい構成で大腿骨頭または寛骨臼に取り付けられる。
【0015】
インプラントが単一の部分からなるため、腐食や粒子がインプラントから放出されることに伴う問題が、大幅に減少する。これは、インプラントが関節の元の骨にのみ接触し、メタル・オン・メタルでの接触が存在しないためである。
【0016】
本発明は、公知の方法と比較すると、他の利点をもたらす。処置は侵襲性がはるかに低いものであり、またカスタマイズされた股関節インプラントが、例えば股関節全体の置換用のインプラントよりも大幅に小さな大きさであることにより、患者の切開を小さいものにして手術を行うことができるようになる、つまり手術中の軟組織の損傷が少なくなり、失血が少なくなる。インプラントは、手術中に骨を取り除くことを一切またはほとんど必要としないように設計されている。これもまた、はるかに侵襲性の低い処置であることを意味し、インプラントの近くでプロテーゼ周囲の骨折が生じるリスクを低減する。また、手術が低侵襲性であるため、入院期間を短くすることを必要とし、患者は術後の回復が早くなる。さらに、インプラントにセメントは必要ない。つまり、患者がセメントに対してアレルギー反応を起こすリスクがない。
【0017】
インプラントを大腿骨頭に適合させるには、インプラントの寸法をカスタマイズしなければならない。さらに、大腿骨頭は、十分に高い真球度を有する必要がある。つまり、インプラントを大腿骨頭に取り付けるときに良好な結果を得るべく、大腿骨頭は好ましくは球形に近いものにするべきである。術中及びインプラントの挿入中に、軟組織、嚢、靭帯を犠牲にして、最終的なインプラントの場所を作ることができる。
【0018】
本開示のインプラントは、ヒトに使用できるが、犬や馬といった動物に適合するように構築することもできる。そのような場合、インプラントの寸法は動物の関節に適合するように調整する必要がある。
【0019】
本開示のカスタマイズされた股関節インプラントが変性骨関節炎の軟骨表面による患者の痛みを成功裏に緩和するためには、大腿骨頭の骨を十分に保存する必要があることが多い。したがって、本開示はさらに、対象にとって最も適切な股関節の治療を判定する方法に関する。この方法の第1のステップは、該対象の股関節の大腿骨頭及び寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像を取得することを含む。第2のステップは、該少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から大腿骨頭及び/または寛骨臼の形状を抽出することを伴う。その後、大腿骨頭及び/または寛骨臼の形状を評価して、最適な治療法を判定する。
【0020】
概して、関節の骨の形状は、対象の股関節を示す定期的なスキャンから抽出され得る。ただし、場合によっては、関節の骨材料が非常に接近していることがあり、そのため、スキャンで骨の形状を分離して抽出することがより困難になる場合がある。抽出された形状に疑念があり、質が満足のいくものでない状況では、スキャンで骨をよりよく分離するために脚に力を加えることを検討することができる。したがって、本開示の方法の一実施形態では、股関節の3Dコンピューター断層撮影画像が、脚に牽引力を適用させている状態で実行され、関節を分析できるように、骨を識別するためのスキャン中に関節に十分な分離を作出することができる。
【0021】
少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像が取得されると、画像を分析して、罹患している股関節に最も適した治療法を判定できる。本発明の医療用インプラントが最も適した治療である場合、インプラントのカスタマイズパラメータを判定する必要がある。関節における骨の3Dコンピューター断層撮影画像の変換は、インプラントの潜在的な形状を示すことができる。この変換には、画像の反転、補間、回転、セグメンテーション、並進、及び分析を完了するための他の調整の1つ以上が含まれ得る。この分析により、インプラントの適合と寸法を最適化するために、関節をデジタル上で分離及び修正させることができる。3Dコンピューター断層撮影画像はさらに、インプラントの関節への適合を確認するために、大腿骨頭、寛骨臼、及びトライアルインプラントのデジタルテンプレートを作成するために使用してもよい。
【0022】
本開示はさらに、カスタマイズされた医療用インプラントの対象の適格性を評価すること、及び/またはカスタマイズされた医療用インプラントのカスタマイズパラメータを選択することのための意思決定支援システムに関し、該対象の股関節の大腿骨頭及び寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像が与えられている。システムは、該少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から大腿骨頭及び寛骨臼の形状を抽出するように構成された処理ユニットを備える。処理ユニットは、対象の適格性を判定するために該少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から抽出された大腿骨頭及び寛骨臼の形状を評価するためにさらに構成される。システムは、カスタマイズされる1つ以上のパラメータを選択し、該1つ以上のパラメータ(複数可)の値を判定するように構成されてもよい。カスタマイズ可能なパラメータには、高さh、内側の赤道のシェルの半径rs、オリフィスの半径ro、赤道線での厚さts、及びドームの上部での厚さttが含まれるが、これらに限定されない。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
対象の股関節の生来の大腿骨頭に取り付け、少なくとも部分的に覆うためのカスタマイズされた医療用インプラントであって、高さh、内側の赤道のシェルの半径r
s
、オリフィスの半径r
o
、前記赤道線での厚さt
s
、及びドームの上部での厚さt
t
を有するドーム型シェルを含み、前記厚さt
s
、前記厚さt
t
、前記赤道のシェルの半径r
s
、前記オリフィスの半径r
o
、及び前記シェルの高さhの1つ以上が、前記股関節の前記生来の大腿骨頭及び前記寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいて、前記対象の前記股関節に対してカスタマイズされ、前記ドームの前記上部での前記厚さは、前記赤道線での前記厚さよりも大きく、t
t
>t
s
である、前記医療用インプラント。
(項目2)
前記厚さt
s
、前記厚さt
t
、前記赤道のシェルの半径r
s
、前記オリフィスの半径r
o
、及び前記シェルの高さhのうちの1つ以上が、球体を前記3Dコンピューター断層撮影画像の前記大腿骨頭及び/または前記寛骨臼に適合させることによって選択されるように、前記医療用インプラントの前記寸法が、前記対象の前記股関節に対してカスタマイズされる、項目1に記載の医療用インプラント。
(項目3)
脚の長さの不一致を補正または低減できるように、前記ドームの前記上部での前記厚さt
t
のカスタマイズが前記脚の長さの不一致のX線撮影測定に基づいている、先行項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
(項目4)
前記オリフィスの半径r
o
のカスタマイズが、前記大腿骨頭の最大限の直径に一致するように選択され、
前記最大限の直径が、前記3Dコンピューター断層撮影画像(複数可)から任意に得られる、先行項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
(項目5)
前記外側の赤道のシェルの半径のカスタマイズが、前記寛骨臼の直径に一致するように選択され、
前記寛骨臼の直径が、前記3Dコンピューター断層撮影画像(複数可)の前記寛骨臼に適合する円または球体の半径から任意選択に判定される、先行項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
(項目6)
前記高さのカスタマイズが、前記オリフィスの半径、前記外側の赤道のシェルの半径、及び前記シェルの前記厚さから判定される、先行項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
(項目7)
インプラントの対象の適格性を評価するための、及び/または前記インプラントの1つ以上のパラメータを選択するための意思決定支援システムであって、
前記インプラントが、
対象の股関節の生来の大腿骨頭に取り付け、少なくとも部分的に覆うためのカスタマイズされた医療用インプラントであって、高さh、内側の赤道のシェルの半径r
s
、オリフィスの半径r
o
、前記赤道線での厚さt
s
、及びドームの上部での厚さt
t
を示すパラメータによって特徴づけられるドーム型シェルを含む前記医療用インプラント
を含み、
前記意思決定支援システムが、
前記股関節の前記生来の大腿骨頭及び前記寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいており、
前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から前記大腿骨頭及び前記寛骨臼の形状を抽出するように構成された処理ユニットを含み、
前記処理ユニットが、対象の適格性を判定するために前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から抽出された前記大腿骨頭及び前記寛骨臼の前記形状を評価するためにさらに構成される、前記システム。
(項目8)
前記インプラントが、項目2~7のいずれかによってさらに特徴付けられる、項目7に記載のシステム。
(項目9)
前記大腿骨頭及び前記寛骨臼の前記形状の前記抽出は、少なくとも皮質骨を組織の残りの部分から区別するための少なくとも1つの強度の閾値に基づいている、項目7~8のいずれかに記載のシステム。
(項目10)
前記大腿骨頭及び前記寛骨臼の前記形状の前記抽出は、参照スキャンまたは参照モデルに基づいており、前記参照スキャンのセグメンテーションを前記患者のスキャンに変形または変換することができ、スキャンのセグメンテーションの基準として機能する、項目7~9のいずれかに記載のシステム。
(項目11)
前記システムは、少なくとも1つの断面のスキャンにおける前記大腿骨頭の真円度に基づいて前記大腿骨頭の前記形状を評価するために、及び/または少なくとも1つの断面のスキャンにおける前記寛骨臼の前記真円度に基づく前記寛骨臼の前記形状を評価するために構成される、項目7~10のいずれかに記載のシステム。
(項目12)
前記システムは、少なくとも1mm、または少なくとも2mm、または少なくとも3mm、または少なくとも4mmの前記真円度の許容範囲に基づいて患者を適格として選択するために構成される、項目7~11のいずれかに記載のシステム。
(項目13)
前記大腿骨頭の前記形状の前記評価が、前記大腿骨頭の真球度に基づいており、及び/または前記寛骨臼の前記形状の前記評価が、前記寛骨臼の真球度に基づいている、項目7~12のいずれかに記載のシステム。
(項目14)
前記システムは、少なくとも1mm、または少なくとも2mm、または少なくとも3mm、または少なくとも4mmの前記真球度の許容範囲に基づいて患者を適格として選択するために構成される、項目7~13のいずれかに記載のシステム。
(項目15)
前記システムは、前記大腿骨頭下方の前記大腿骨頸部の半径が前記大腿骨頭の半径より、少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mm、または少なくとも2.5mm低いときに、患者を適格として選択するために構成される、項目7~14のいずれかに記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】大腿骨頭に取り付けるためのカスタマイズされた医療用インプラントの一実施形態の断面側面図を示している。
【
図2】本開示の発明用に使用される患者の骨盤領域の3Dコンピューター断層撮影画像の例である。
【
図3】大腿骨の骨部分が分離された3Dコンピューター断層撮影画像の例を示している。
【
図4】両方の股関節の2DのX線画像の前後投影の例を示している。X線画像は、コンピューター断層撮影スキャンに基づいている。大腿骨頭はデジタル手段によって囲まれている。
【
図5】右股関節の2DのX線水平面の例を示している。X線画像は、コンピューター断層撮影スキャンに基づいている。大腿骨頭はデジタル手段によって囲まれている。
【
図6】前後の面における両方の股関節のCTスキャンの例である。大腿骨頭と寛骨臼の両方がデジタル手段によって囲まれている。円の直径も示されており、潜在可能性のあるインプラントの厚さの指標として使用できる。
【
図7】
図7A~
図7Dは、骨及び表面のスキャンのセグメント化及び識別のために一実施形態で使用されるITKーSNAPから得たスクリーンショットである。この場合、組み込み関数を伴うプログラムのみがセグメンテーションに使用された。
【
図8】
図8A~
図8Dは、スキャンのセグメント化及び骨及び表面の識別のために別の実施形態で使用されるITKーSNAPによるスクリーンショットである。いくつかの箇所が手動で作成及び/または調整されて、関節のより良好なモデルが作成されている。
【
図9】スキャンによる骨盤骨表面の表現を示している。右側に示される生のスキャンには、縁部とステップが含まれる場合がある。表面再構成アルゴリズムと共にマーチングキューブ法のアルゴリズムを使用して、左側に示す滑らかな表面を生成する。
【
図10】スキャンされた大腿骨(左)、インプラントの寸法を判定するために使用される骨の表面の箇所(中央)、及び大腿骨頭に取り付けられた球体を備えた骨の表面(右)の図である。
【
図11】股関節のスキャンされた骨の視覚化と、特定の関節に合うように計算及びカスタマイズされたインプラントを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述のように、インプラントは患者の罹患している股関節に完全に適合するためにカスタマイズする必要がある。したがって、シェルは好ましくは、赤道線での厚さts、上部での厚さtt、赤道のシェルの半径rs、オリフィスの半径ro及びシェルの高さhのうちの1つまたは複数が、球体を該3Dコンピューター断層撮影画像の大腿骨頭に適合させることによって選択されるように構成される。シェルはさらに、厚さts、厚さtt、赤道のシェルの半径rs、オリフィスの半径ro及びシェルの高さhのうちの1つまたは複数が、球体を該3Dコンピューター断層撮影画像の寛骨臼に適合させることによって選択されるように構成され得る。インプラントは、可能な限り痛みや不快感が軽減されるように、インプラントが可能な限り最善の方法で、大腿骨頭と寛骨臼の間に収まるように構築するべきである。パラメータは、股関節の3Dコンピューター断層撮影画像から、X線画像から、または代わりに股関節のコンピューターモデルでインプラントの試行錯誤の取り付け品を使用して、判定することもできる。さらに、パラメータは、円を股関節の2D画像に適合させることで判定できる。
【0025】
好ましくは、インプラントは、赤道のシェルの半径がオリフィスの半径よりも大きく、rs>roであり、高さが赤道のシェルの半径よりも大きく、h>rsになるように構成される。インプラントを大腿骨頭に押し込むことができるように、オリフィスの半径は大腿骨頭の半径に適合するべきである。大腿骨頭の最大限の直径に一致するようにオリフィスの直径を選択することは、大腿骨頭を損傷する危険を冒すことなくインプラントを取り付けることができるということを意味する。大腿骨頭の赤道付近まで、及びその下方に延びる軟骨及びその他の軟組織は、インプラントが取り付けられたときに変形することがあり、またインプラントが大腿骨頭から外れるリスクを減らし得る。一実施形態では、オリフィスは円形であり、円周方向の丸い縁部によって画定される。これにより、インプラントを大腿骨頭に押し付けやすくなり、その過程で骨を損傷するリスクが軽減される。インプラントは大腿骨頭に押し付けられ得るが、大腿骨頭に対して移動できるように、依然としてカスタマイズすることができる。したがって、別の実施形態では、医療用インプラントは、本物の罹患した大腿骨頭への少なくとも最初の拘束されない取り付けをするように構成される。
【0026】
インプラントが寛骨臼に対して効率的に移動し、可能な限り摩擦が少なくなるようにするために、シェルの外面は、好ましくは少なくとも赤道面上方で球形である。より好ましくは、シェルの外面全体が球形である。シェルは好ましくは、股関節に植込まれた後、少なくとも最初は拘束されていない。したがって、さらなる実施形態では、シェルの内面は、少なくとも赤道面上方で球形である。より好ましくは、シェルの内面全体が球形である。内面と外面が球面になっていると、インプラントが大腿骨頭と寛骨臼の両方に対して自由に回転及び傾斜できることになり、寛骨臼の縁にインプラントが衝突するリスクが軽減される。あるいは、外面及び/または内面は、放物面または楕円面などの他の形状を有してもよい。摩擦を低減するためのさらなる手段として、インプラントは、一実施形態では、シェルの内面及び/または外面が滑らかであり、好ましくは、0.1mm未満の表面の粗さを得るべく研磨されるように構成される。
【0027】
本発明の一実施形態では、シェルの厚さは、ts=ttのように一定になるよう選択される。別の実施形態では、ドームの上部の厚さは、赤道線の厚さよりも大きく、tt>tsである。さらに別の実施形態では、シェルの内面及び外面は球形であるが、シェルの内面の曲率半径がシェルの外面の曲率半径よりも小さく、そのため、シェルの厚さは、ドームの上部では赤道線でのシェルの厚さよりも大きく、tt>tsである。シェルの厚さは、均一であることが好ましい。ただし、脚の長さの不一致を補正するために、シェルの厚さをシェルの赤道よりも上部で大きくするよう選択することが利用できる。したがって、さらに別の実施形態では、脚の長さの不一致を補正または低減できるように、脚の長さが不一致であるX線撮影測定に基づいて、ドーム上部での厚さttが選択される。この方法は、インプラントのカスタマイズによりシェル上部の厚さを厚くすることができるときや、股関節が罹患している方の患者の脚が、他方の脚よりも短い場合に好適である。
【0028】
シェルの厚さは、関節の3Dコンピューター断層撮影画像に基づいて、できるだけ大きくなるように選択するべきである。これにより、インプラントの強度が高まり、損傷や変形のリスクが軽減され、インプラントの耐久性が向上する。本発明の一実施形態では、シェルの最小限の厚さは、少なくとも0.6mm、または少なくとも0.75mm、または少なくとも1.0mm、または少なくとも1.2mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも1.8mm、または少なくとも2.0mm、または少なくとも2.5mmになるように選択される。また、シェルの最小限の厚さは、挿入される関節のサイズによる。いくつかの実施形態では、シェルの厚さは、ヒトでは少なくとも1.0mmであり、イヌでは少なくとも0.75mmである。別の実施形態では、シェルのオリフィスの縁部が丸くなっており、曲率半径がオリフィスのシェルの厚さの半分になるようにしている。これは、インプラントを大腿骨頭に取り付ける間、または術後に骨を損傷する可能性のある鋭い縁部がインプラントにないことを意味する。
【0029】
前述のように、インプラントは、脚の長さの不一致を軽減または補正するために、シェルの厚さが可変であるように構築されてもよい。一実施形態では、これは外面と比較してインプラントの内面を移動させることにより達成され、その結果共通の中心を分かち合わない。例えば、内面をある程度下方に(オリフィスに向かって)移動させることで、インプラントの上部の厚さを増やすことができる。
【0030】
医療用インプラントを大腿骨頭に取り付けられるようにするために、オリフィスを、インプラントを大腿骨頭に押し付けるのに十分に大きいものにすべきである。したがって、一実施形態では、オリフィスの半径roは、roが、該3Dコンピューター断層撮影画像における真の大腿骨骨頭の骨材料の最大限の直径に一致するか、それよりも大きくなるように選択される。インプラントは、シェルの高さが赤道のシェルの半径よりも大きく、シェルの丸みを帯びた形状または球形がシェルの赤道面より下方に延び、それによって関節のより良好な運動を可能にするように構成されることが好ましい。したがって、別の実施形態では、高さと赤道のシェルの半径h/rsとの間の比率は、少なくとも1.24、または少なくとも1.27、または少なくとも1.30、または少なくとも1.32、または少なくとも1.35、または少なくとも1.38になるように選択される。
【0031】
あるいは、高さと赤道のシェルの半径との間の比率h/rsは、1.40未満、または1.35未満、または1.32未満、または1.30未満、または1.27未満、または1.24未満に選択される。オリフィスが大腿骨頭と同等であるかそれより大きく、またシェルの高さが赤道のシェルの半径よりも大きいため、大腿骨頭は赤道のシェルの半径よりわずかに小さくなる。このことは、インプラントが最初に拘束されておらず、大腿骨頭に対して動くことを可能にするため、合併症を引き起こすはずがない。さらに、大腿骨頭の赤道領域まで及びその下方に延びる軟骨及び他の軟組織は、インプラントが大腿骨頭に押し付けられると可逆的に変形し、その後少なくとも部分的に元の形状に戻ることができる。これは、インプラントがしっかりと取り付けられることを確実にするよう促し、インプラントが関節から外れるリスクを減らす。時間が経つと、インプラントは大腿骨頭または寛骨臼のいずれかに付着することができ、これは生来の組織がインプラントの周囲に形成されることによって生じる。
【0032】
好ましい実施形態では、外側の赤道のシェルの半径は、該少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像の寛骨臼に適合する円または球体の半径から判定される。赤道のシェルの半径を、寛骨臼に適合する円または球体の半径と一致させることにより、インプラントと寛骨臼の良好な適合が確実になる。これにより、インプラントによる痛みと不快感が軽減される。
【0033】
少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいて選択されたオリフィスの半径、外側の赤道の半径、及びシェルの厚さは、インプラントを構築するために必要なパラメータを判定するために使用されることが好ましい。一実施形態では、高さは、オリフィスの半径、外側の赤道のシェルの半径、及びシェルの厚さから判定することもできる。さらに、シェルの厚さを可変にするべきか、どれほど変えるべきかを判定するために、脚の長さの可能な測定された差を利用することができる。
【0034】
場合によっては、大腿骨頭は球形に近いものでなくてもよく、例えば一方向に大きな直径を、別の方向により小さな直径を有していてもよい。その場合、大腿骨頭に取り付ける前に可逆的にインプラントを変形させて、インプラントが少なくとも部分的に楕円形になるようにすることが、有利であり得る。この場合、インプラントを変形した状態で大腿骨頭に押し込み、その後少なくとも部分的に元の形状に戻すことが可能である。
【0035】
シェルを製造するために使用される材料は、金属または合金であり得る。好ましい実施形態では、シェル用の材料は、Wrought(UNS R31537、UNS R31538またはUNS R31539)合金などのCo28Cr6Mo合金といったコバルトクロムモリブデンの合金である。別の実施形態では、シェルの材料は、316LVMなどの鋼の合金、またはTi6Al4Vなどのチタンの合金である。
【0036】
本発明はさらに、対象にとって最適な股関節の治療を判定する方法に関する。この方法は、罹患している股関節の少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像を取得するステップを含む。場合によっては、関節の2つの部分が、3Dコンピューター断層撮影画像で、過度に近接して一緒に表示されることがある。これは、関節の軟骨の損傷または欠損が原因である可能性がある。そのような場合、インプラントのカスタマイズのために大腿骨頭と寛骨臼を分離することは困難である。したがって、本発明の一実施形態では、股関節の少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像は、脚に牽引力を適用させている状態で実行される。関節の牽引は、3Dコンピューター断層撮影を改善でき、大腿骨と寛骨臼の骨が、他の方法では問題がある場合に、識別可能になるようにする。脚に加えられる牽引力は、いくつかの実施形態では、少なくとも10kgまたは約100Nであり得る。牽引は、骨盤と脚、例えば腿、ふくらはぎ、または好ましくは足との間に力を加える牽引ブレースを使用して加えることができる。牽引ブレースは、好ましくは、3Dコンピューター断層撮影スキャンを妨げないように、非金属の材料で構成するべきである。別の実施形態では、対象の股関節のX線透視画像を使用して、股関節の3Dコンピューター断層撮影撮像中に、脚への牽引が必要かどうかを判定する。
【0037】
大腿骨頭と寛骨臼は、好ましくは、インプラントが可能な限り痛みを緩和するよう、十分に保存されるべきである。患者の適格性を評価するために、少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影から得られた大腿骨頭と寛骨臼の形状が評価される。したがって、この方法の一実施形態では、大腿骨頭の形状の評価は、少なくとも1つの断面のスキャンにおける大腿骨頭の真円度に基づいている。別の実施形態では、寛骨臼の形状の評価は、少なくとも1つの断面のスキャンにおける寛骨臼の真円度に基づいている。さらに別の実施形態では、患者が医療用インプラントに適格であるためには、真円度は少なくとも1mm、または少なくとも2mm、または少なくとも3mm、または少なくとも4mmの許容範囲を有するべきである。許容範囲とは、例えば断面のスキャンでの大腿骨頭が、許容と等しい半径の差がある2つの円の中に収まるべきであることを意味している。さらに別の実施形態では、患者が医療用インプラントに適格であるためには、真円度は少なくとも0.70、または少なくとも0.80、または少なくとも0.85、または少なくとも0.90、または少なくとも0.93、または少なくとも0.96であるべきである。
【0038】
真円度は、大腿骨頭または寛骨臼の2Dの断面のスキャンから判定されることが好ましい。しかし、評価はまた真球度に基づいてもよい。これは、好ましくは少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から抽出された形状から評価される。本方法の一実施形態では、大腿骨頭の形状の評価は、大腿骨頭の真球度に基づいている。別の実施形態では、寛骨臼の形状の評価は、寛骨臼の真球度に基づいている。さらに別の実施形態では、患者が医療用インプラントに適格であるためには、真球度は少なくとも1mm、または少なくとも2mm、または少なくとも3mm、または少なくとも4mmの許容範囲を有するべきである。真円度と同様に、これは、例えば大腿骨頭の形が、許容と等しい半径の差がある2つの球体の間に収まるべきものであることを意味している。別の実施形態では、患者が医療用インプラントに適格であるためには、真球度は少なくとも0.80または少なくとも0.85、または少なくとも0.9、または少なくとも0.93、または少なくとも0.95、または少なくとも0.98であるべきである。
【0039】
大腿骨頭及び/または寛骨臼の真円度または真球度を判定する代わりに、またはそれに加えて、別の実施形態では、関節のスキャンを使用して、円または球体を大腿骨頭及び/または寛骨臼に適合させることもできる。そのような適合は、大腿骨頭または寛骨臼に属する箇所を選択し、例えば、選択された箇所に円または球体を適合させるべく最小二乗法を使用することにより、実行され得る。大腿骨頭または寛骨臼に属する箇所の選択は、自動であることが好ましい。別の実施形態では、箇所を手動で選択できる。さらに別の実施形態では、自動的に選択された箇所は、箇所を含める及び/または除外する及び/または移動することによって、手動で調整することができる。また、インプラントのカスタマイズは、大腿骨頭全体を含むことができる最小の球体、または寛骨臼内に収まる最大の球体を収めることによって、実行することもできる。
【0040】
インプラントが対象に取り付けられるとき、骨は、好ましくは、インプラントが大腿骨頭から容易に外れないように形作られるべきである。したがって、一実施形態では、大腿骨頭下方の大腿骨頸部の半径は、患者が医療用インプラントに適格であるために、大腿骨頭の半径よりも少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mm、または少なくとも2.5mm低くするべきである。これにより、インプラントが大腿骨頭に取り付けられた状態が保たれる。しかし、大腿骨頭への取り付け後、インプラントは少なくとも最初は拘束されていないことが、依然として好適である。その後、インプラントで軟組織が発達し、インプラントが大腿骨頭または寛骨臼に付着するに至る可能性がある。本発明のさらなる実施形態では、シェルの上部の厚さtt及び赤道線tsの厚さは、対象の両脚の長さの測定に基づいて選択される。これは、インプラントのカスタマイズ時にこの測定値を使用できるように、対象の脚の長さの不一致を判断するために使用される。その場合、インプラントの厚さは、可能なとき、脚の長さの不一致を軽減または補正するために使用できる。
【0041】
本開示はさらに、カスタマイズされた医療用インプラントの対象の適格性を評価するための、及び/またはインプラントのパラメータを選択するための意思決定支援システムに関する。このシステムは、罹患している関節の少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいている。システムは、該少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から大腿骨頭及び寛骨臼の形状を抽出すること、及び対象の適格性を評価するために大腿骨頭及び寛骨臼の形状を評価することのために構成される処理ユニットをさらに備える。一実施形態では、処理ユニットは、該対象の股関節の少なくとも1つの断面のスキャンで大腿骨頭及び/または寛骨臼の真円度を判定するように、さらに構成される。別の実施形態では、処理ユニットは、該対象の股関節の少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像において大腿骨頭及び/または寛骨臼の真球度を判定するように、さらに構成される。さらに別の実施形態では、処理ユニットは、大腿骨頭と比較した大腿骨頸部での狭窄の程度を判定するように、さらに構成される。
【0042】
意思決定支援システムは、プロセッサによって実行されたときに、カスタマイズされた医療用インプラントの対象の適格性を評価する方法及び/または本明細書に記載のインプラント用のパラメータを選択する方法を実行する命令を格納するための、非推移的なコンピューター可読ストレージデバイスを、さらに備え得る。システムは、プロセッサ及びメモリを備え、本方法を実行するように適合されたモバイルデバイスを備えることができるが、これはまた固定されているシステム、または中央のロケーションから操作するシステム、及び/またはリモートシステム、例えばクラウドコンピューティングに関与したものにすることができる。本発明はさらに、コンピューティングデバイスまたはシステムによって実行されるときに、コンピューティングデバイスまたはシステムに、説明された方法に従ってオンラインサービスのアカウントの不正アクセスを特定させる命令を有するコンピュータープログラムに関する。この文脈におけるコンピュータープログラムは、広く解釈されるものとし、例えばPCで実行するプログラム、またはスマートフォン、タブレットコンピューター、またはその他のモバイルデバイスで実行するように設計されたソフトウェアを含むものとする。
【0043】
カスタマイズされた医療用インプラントに適格な患者をより慎重にスクリーニング及び選択するために、一実施形態では、意思決定支援システムは、患者の特定の基準を含むように構成される。インプラントに適格である患者の基準には、保存的治療が成功せず不十分になった、大腿骨頭の円形度が保持された状態の片側または両側の股関節変形性関節症の臨床症状を有する患者が含まれ得る。適格性について患者を除外する基準は、先天性股関節脱臼に続く二次性変形性関節症、Calve-Legg-Perthes病、大腿骨頭の変形を伴う感染性股関節疾患、中等度から重度の股関節形成異常、ピン止めまたは動的股関節スクリュー、または股関節スクリューを伴う髄内釘による股関節骨折手術、大腿骨頭すべり症、寛骨臼骨折、無菌性大腿骨頭壊死、及び減圧性骨壊死からなる群から選択できる。
【0044】
意思決定支援システムは、インプラントをカスタマイズするために骨の表面を分析できるように、スキャンにおいて異なる骨のセグメンテーション用に構成されることが好ましい。骨のセグメンテーションは、あるコンピューターまたは組み合わせによって、手動または自動で実行でき、その場合、コンピューターは、後に手動で調整されるセグメンテーションの提案を提示する。一実施形態では、大腿骨頭及び寛骨臼の形状の抽出は、少なくとも皮質骨を組織の残りの部分から区別するための少なくとも1つの強度の閾値に基づいている。スキャンの閾値は、皮質骨の端でのスキャンの値の急激な変化を識別するように調整することができる。この閾値は、手動または自動で設定できる。セグメンテーションのプロセスは自動であることが好ましい。ただし、スキャンの自動セグメンテーション用のソフトウェアでは良好な結果が得られない場合がある。そのような場合、セグメンテーションを手動で調整することが必要であることがある。そのような場合は、皮質骨が薄い場合、または2つの骨の皮質骨の表面がわずかな距離だけ離れている場合であり得る。
【0045】
自動セグメンテーションのモデルは、様々な様式で構築できる。1つの方法は、後続のスキャンのセグメンテーションに対して参照モデルを使用することである。したがって、別の実施形態では、大腿骨頭及び寛骨臼の形状の抽出は、参照スキャンまたは参照モデルに基づいており、その結果参照スキャンのセグメンテーションを患者のスキャンに変形または変換することができ、それにより、スキャンのセグメンテーションの基準として機能する。
【0046】
別の実施形態では、自動セグメンテーションのモデルは、大きなデータセットに基づいてもよい。これは、骨の良好なセグメンテーションを得るために手動で調整された複数のスキャンを行うことで実現できる。次いで、セグメント化されたスキャンのこのデータセットをモデルに使用して、対象間の解剖学的なばらつきを学習し、それを使用して新たなスキャンで骨をより適切に識別及びセグメント化できる。これにより、他のモデルよりも優れた自動セグメンテーションを施すことができる。
【0047】
少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像は、画像に所与の解像度をもたらす複数のボクセルからなる。ボクセルの数は有限であり、場合によっては制限されているため、画像は多くのステップと縁部を含んでいて粗く見える場合がある。一実施形態では、画像は表面再構成アルゴリズムにより滑らかにさせる。一実施形態では、マーチングキューブ法のアルゴリズムを適用して、モデルにより滑らかな表面をもたらす多角形のメッシュを設ける。別の実施形態では、マルコフ確率場の表面再構成アルゴリズムなどの表面再構成アルゴリズムを適用して、多角形メッシュよりも遥かに滑らかな表面を設ける。
【0048】
図面の詳細な説明
図1は、罹患している股関節の痛みを緩和するためのカスタマイズされた医療用インプラント1の一実施形態の断面図を示す。この実施形態では、ドーム形のシェル1は球形である。インプラントは、シェルを患者の大腿骨頭に取り付けることができるように、シェルの底部にオリフィス5を備えている。インプラントはさらに、外側のシェルの半径2と内側のシェルの半径3を特徴とする。オリフィスの縁部4は、丸みを帯びていることが好ましい。
【0049】
図2は、両方の股関節を示す患者の3Dコンピューター断層撮影画像の例である。大腿骨7の上部は、大腿骨頸部8及び大腿骨頭9とともに画像の下部において見られる。骨盤6全体が画像で見え、大腿骨頭9が骨盤6へ接続する寛骨臼10の外縁を含んでいる。
【0050】
図3は、股関節の3Dコンピューター断層撮影画像から分離された大腿骨の一部分の例である。大腿骨頸部8及び大腿骨頭9と共に大腿骨7が画像に示されている。大腿骨の一部分と骨盤骨の一部分、つまり寛骨臼を分離することは、カスタマイズされた医療用インプラントの最適なパラメータを判定する際に有用である。
【0051】
図4は、両方の股関節の2DのX線画像の前後投影の例を示している。画像はコンピューター断層撮影スキャンに基づいている。画像は、大腿骨7、大腿骨頸部8、大腿骨頭9、寛骨臼10、及び骨盤骨6の一部を示している。画像では、両方の大腿骨頭がデジタル手段によって取り囲まれている(11)。これは、カスタマイズされたインプラントの直径を判定するために使用される。
【0052】
図5は、患者の右股関節の2DのX線水平面の例を示している。やはり、大腿骨7、大腿骨頸部8、大腿骨頭9、寛骨臼10、及び骨盤骨6の一部が画像に示されている。そのような画像を使用して、カスタマイズされたインプラントのパラメータを判定し、手術の適格性を判定することができる。この場合、大腿骨頭9はよく保持されており、高い真円度を備えている。やはり、大腿骨頭9はデジタル手段によって取り囲まれている11。画像はさらに、股関節の大腿骨頭9と寛骨臼10の間に明確な分離があることを示している。分離が少ない場合、大腿骨頭9と寛骨臼10を十分に分離するために、脚への牽引が必要になる場合がある。
【0053】
図6は、患者のCTスキャンの例であり、両方の股関節が前後双方の面に示されている。両方の股関節は、軟骨下骨硬化と縁部の骨棘を伴う変形性関節症の放射線学的徴候を示す。大腿骨頭と寛骨臼は両方の股関節で明確に分離されている。各股関節の大腿骨頭は、デジタル手段によって囲まれている(11)。この円の直径13も示されている。同様に、各股関節の寛骨臼はデジタル手段で囲まれ12、やはり直径14が示されている。大腿骨頭と寛骨臼の直径は、潜在的なインプラントの厚さの指標として使用できる。
【0054】
図7A~
図7Dは、本発明の一実施形態で使用されるITKスナップから得たスクリーンショットを示す。このプログラムは、スキャンのセグメンテーションと骨と表面の識別に使用される。この実施形態では、組み込み機能を備えたプログラムのみセグメンテーションに使用した。
図7Aでは、強調表示された領域は、大腿骨頭9と骨盤骨6が明確に分離されたセグメント化された骨を示している。
図7Bは、大腿骨頭9と寛骨臼10との間の明確な分離が少ない異なる角度を示している。
図7C及び
図7Dはそれぞれ、この実施形態のセグメント化された骨の他の角度を示す。
【0055】
図8A~
図8Dは、スキャンのセグメント化及び骨及び表面の識別のために別の実施形態で使用されるITKスナップによるスクリーンショットである。この実施形態では、いくつかの箇所が手動で作成及び/または調整されて、より良好なモデル及び関節のより良好なセグメンテーションが作成されている。時には、関節のより良好な及び/またはより滑らかな及び/またはより正確なモデルを得るために、セグメント化された骨のいくつかの箇所を手動で調整及び/または作成及び/または削除及び/または移動することが必要な場合がある。
図8Aは、
図7Aと同じスキャンを示しているが、この時点では手動での調整に起因してより良好なセグメンテーションが行われて、各々の骨が識別されて異なるグレースケールで強調表示されるようにしている。
図8B~
図8Dは、手動で調整されたセグメンテーションの、
図7B~
図7Dと類似した関節の図を示しており、様々な骨が様々なグレースケールで強調表示されている。
【0056】
図9は、スキャンによる骨盤骨の表面の表現を示している。スキャンの解像度により、右側に示される生のスキャンには、縁部とステップが含まれる場合がある。粗い表面は、様々な手法を使用して滑らかにすることができる。左側の実施形態に示される1つの方法は、表面再構成のアルゴリズムと共にマーチングキューブ法のアルゴリズムを使用して、インプラントのカスタマイズ用に骨のより良質の表面を作り出すものである。
【0057】
図10は、スキャンして滑らかにさせた大腿骨の図が示されている。図の中央部分には、表面の諸箇所が示されている。この実施形態では、大腿骨頭に属する箇所が手動で選択されている。また、このプロセスは自動で行うことも、箇所の自動選択を提示し、その後必要に応じて手動で修正することも可能である。大腿骨頭に属する箇所は、球体を大腿骨頭に合わせるために利用される(右)。これは、該球体の半径を判定するために利用され、それはインプラントの内側の赤道のシェルの半径を判定するために利用される。球体は最小二乗法を利用して適合させることができる。球体はまた、大腿骨頭の外側に適合する最小の球体を判定するために適合させることもできる。
【0058】
図11は、本発明の一実施形態による股関節のスキャンされた骨及びインプラントを示す。左の部分は、スキャンから得られたセグメント化された骨を示しており、後続的に表面が滑らかになっている。特定の関節に合うように計算及びカスタマイズされたインプラントが、図の中央部分の関節に挿入されているのが示されている。図の右側は、関節に挿入されたインプラントの滑らかでわずかに透明なものを示している。
【0059】
本開示のさらなる詳細
本開示は、以下の項目によって説明され得る。
【0060】
1.対象の股関節の生来の大腿骨頭に取り付け、少なくとも部分的に覆うためのカスタマイズされた医療用インプラントであって、高さh、内側の赤道のシェルの半径rs、オリフィスの半径ro、赤道線での厚さts、及び前記ドームの上部での厚さttを有するドーム型シェルを含み、前記厚さts、前記厚さtt、前記赤道のシェルの半径rs、前記オリフィスの半径ro、及び前記シェルの高さhの1つ以上が、前記股関節の前記生来の大腿骨頭及び前記寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像に基づいて、前記対象の前記股関節に対してカスタマイズされる、前記医療用インプラント。
【0061】
2.前記厚さts、前記厚さtt、前記赤道のシェルの半径rs、前記オリフィスの半径ro、及び前記シェルの高さhのうちの1つ以上が、球体を前記3Dコンピューター断層撮影画像の前記寛骨臼に適合させることによって選択される、項目1に記載の医療用インプラント。
【0062】
3.前記厚さts、前記厚さtt、前記赤道のシェルの半径rs、前記オリフィスの半径ro、及び前記シェルの高さhのうちの1つ以上が、球体を前記3Dコンピューター断層撮影画像の前記寛骨臼に適合させることによって選択される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0063】
4.前記赤道のシェルの半径が前記オリフィスの半径よりも大きく、rs>roであり、前記高さが前記赤道のシェルの半径よりも大きく、h>rsである、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0064】
5.前記オリフィスが円形であり、円周方向の丸い縁部によって画定される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0065】
6.前記インプラントは、前記生来の罹患している大腿骨頭への少なくとも初期の拘束されない取り付けのために構成される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0066】
7.前記シェルの外面が、少なくとも前記赤道面上方で球形である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0067】
8.前記シェルの前記外面全体が球形である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0068】
9.前記シェルの内面が、少なくとも前記赤道面上方で球形である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0069】
10.前記シェルの前記内面全体が球形である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0070】
11.前記シェルの前記内面及び/または前記外面が滑らかであり、好ましくは、0.1mm未満の表面の粗さを得るべく研磨される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0071】
12.前記シェルの前記厚さが、ts=ttのように一定になるよう選択される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0072】
13.前記ドームの前記上部での前記厚さが、前記赤道線での前記厚さよりも大きく、tt>tsである、項目1~11のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0073】
14.前記シェルの前記内面及び外面は球形であるが、前記シェルの前記内面の曲率半径が前記シェルの前記外面の曲率半径よりも小さく、前記ドームの前記上部での前記シェルの前記厚さは、前記赤道線での前記シェルの前記厚さよりも大きく、tt>tsである、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0074】
15.脚の長さの不一致を補正または低減できるように、前記脚の長さの不一致のX線撮影測定に基づいて、前記ドームの前記上部での前記厚さttが選択される、項目14に記載の医療用インプラント。
【0075】
16.前記シェルの前記最小限の厚さは、少なくとも0.6mm、または少なくとも0.75mm、または少なくとも1.0mm、または少なくとも1.2mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも1.8mm、または少なくとも2.0mm、または少なくとも2.5mmになるように選択される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0076】
17.前記シェルの前記オリフィスの前記縁部が丸くなっており、前記曲率半径が前記オリフィスの前記シェルの前記厚さの半分である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0077】
18.前記オリフィスの半径roは、roが、前記3Dコンピューター断層撮影画像における真の大腿骨骨頭の最大限の直径に一致するか、それよりも大きくなるように選択される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0078】
19.外側の赤道のシェルの半径が、前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像の前記寛骨臼に適合する円または球体の半径から判定される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0079】
20.前記高さが前記オリフィスの半径、前記外側の赤道のシェルの半径、及び前記シェルの前記厚さから判定される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0080】
21.前記高さと前記赤道のシェルの半径との間の比率h/rsが、少なくとも1.24、または少なくとも1.27、または少なくとも1.30、または少なくとも1.32、または少なくとも1.35、または少なくとも1.38になるように選択される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0081】
22.前記高さと前記赤道のシェルの半径との間の比率h/rsが、1.40未満、または1.35未満、または1.32未満、または1.30未満、または1.27未満、または1.24未満に選択される、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0082】
23.前記シェルの材料が金属または合金である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0083】
24.前記シェル用の材料が、Wrought(UNS R31537、UNS R31538またはUNS R31539)の合金などのCo28Cr6Mo合金といったコバルトクロムモリブデンの合金である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0084】
25.前記シェルの材料が、316LVMなどの鋼の合金、またはTi6Al4Vなどのチタン合金である、先行する項目のいずれかに記載の医療用インプラント。
【0085】
26.対象にとって最適な股関節の治療を判定する方法であって、
前記対象の股関節の大腿骨頭及び寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像を取得すること、
前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から前記大腿骨頭及び/または前記寛骨臼の形状を抽出すること、及び
前記大腿骨頭及び/または前記寛骨臼の前記形状を評価して、前記最適な治療法を判定すること
を含む、前記方法。
【0086】
27.前記股関節の前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像が、前記脚に牽引力を適用させている状態で実行される、項目26に記載の方法。
【0087】
28.前記脚に加えられる前記牽引力が少なくとも10kgまたは少なくとも100Nである、項目27に記載の方法。
【0088】
29.前記対象の前記股関節のX線透視画像を利用して、前記股関節の3Dコンピューター断層撮影撮像中に、前記脚への牽引が必要かどうかを判定する、項目26~28のいずれかに記載の方法。
【0089】
30.前記大腿骨頭の前記形状の前記評価が、少なくとも1つの断面のスキャンにおける前記大腿骨頭の真円度に基づいている、項目26~29のいずれかに記載の方法。
【0090】
31.前記寛骨臼の前記形状の前記評価が、少なくとも1つの断面のスキャンにおける前記寛骨臼の真円度に基づいている、項目26~30のいずれかに記載の方法。
【0091】
32.前記患者が項目1~25のいずれかに記載の医療用インプラントに適格であるために、前記真円度が少なくとも1mm、または少なくとも2mm、または少なくとも3mm、または少なくとも4mmの許容範囲を有するべきである、項目30~31のいずれかに記載の方法。
【0092】
33.前記患者が項目1~25のいずれかに記載の医療用インプラントに適格であるために、前記真円度が少なくとも0.70、または少なくとも0.80、または少なくとも0.85、または少なくとも0.90、または少なくとも0.93、または少なくとも0.96であるべきである、項目30~32のいずれかに記載の方法。
【0093】
34.前記大腿骨頭の前記形状の前記評価が、前記大腿骨頭の真球度に基づいている、項目26~33のいずれかに記載の方法。
【0094】
35.前記寛骨臼の前記形状の前記評価が、前記寛骨臼の真球度に基づいている、項目26~34のいずれかに記載の方法。
【0095】
36.前記患者が項目1~25のいずれかに記載の医療用インプラントに適格であるために、前記真球度が少なくとも1mm、または少なくとも2mm、または少なくとも3mm、または少なくとも4mmの許容範囲を有するべきである、項目34~35のいずれかに記載の方法。
【0096】
37.前記患者が項目1~25のいずれかに記載の医療用インプラントに適格であるために、前記真球度が少なくとも0.80、または少なくとも0.85、または少なくとも0.9、または少なくとも0.93、または少なくとも0.95、または少なくとも0.98であるべきである、項目34~36のいずれかに記載の方法。
【0097】
38.前記大腿骨頭下方の前記大腿骨頸部の半径は、前記患者が項目1~25のいずれかに記載の医療用インプラントに適格であるために、前記大腿骨頭の半径よりも少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mm、または少なくとも2.5mm低くするべきである、項目26~37のいずれかに記載の方法。
【0098】
39.厚さtt及び厚さtsが、前記対象の両脚の長さの測定に基づいて選択される、項目26~38のいずれかに記載の方法。
【0099】
40.項目1~25のいずれかに記載のカスタマイズされた医療用インプラントの対象の適格性を評価すること、及び/または前記カスタマイズされた医療用インプラントのパラメータを選択することのための意思決定支援システムであって、前記対象の股関節の前記大腿骨頭及び前記寛骨臼の実質的に全体を示す少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像が与えられ、
前記システムが、
前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から前記大腿骨頭及び前記寛骨臼の前記形状を抽出するように構成された処理ユニット
を含み、
前記処理ユニットが、対象の適格性を判定するために前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像から抽出された前記大腿骨頭及び前記寛骨臼の前記形状を評価するためにさらに構成される、前記システム。
【0100】
41.前記処理ユニットが、前記対象の股関節の少なくとも1つの断面のスキャンで、前記大腿骨頭及び/または前記寛骨臼の真円度を判定するようにさらに構成される、項目40に記載のシステム。
【0101】
42.前記処理ユニットが、前記対象の股関節の前記少なくとも1つの3Dコンピューター断層撮影画像において、前記大腿骨頭及び/または前記寛骨臼の真球度を判定するようにさらに構成される、項目40~41のいずれかに記載のシステム。
【0102】
43.前記処理ユニットが、前記大腿骨頭と比較される前記大腿骨頸部での狭窄の程度を判定するようにさらに構成される、項目40~42のいずれかに記載のシステム。