(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ビーズを含むIn Vitro診断デバイス及びその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/538 20060101AFI20241011BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20241011BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241011BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241011BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241011BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20241011BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G01N33/538
G01N33/543 561
G01N33/53 K
G01N33/569 A
G01N33/569 B
G01N33/569 G
C12M1/34 F
C12Q1/70
C12Q1/04
(21)【出願番号】P 2020543592
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2019053886
(87)【国際公開番号】W WO2019158726
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-14
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508135943
【氏名又は名称】ディアガスト
【氏名又は名称原語表記】DIAGAST
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ・ベトレミュ-メルリエ
(72)【発明者】
【氏名】ラジーザ・アムニアイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・シェルプ
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-273419(JP,A)
【文献】特表2015-518969(JP,A)
【文献】特表2001-502795(JP,A)
【文献】特開2006-215017(JP,A)
【文献】特表2007-516422(JP,A)
【文献】特表2010-529444(JP,A)
【文献】特開2013-011626(JP,A)
【文献】米国特許第05552276(US,A)
【文献】特開平08-054390(JP,A)
【文献】特表2009-513938(JP,A)
【文献】PORCELIJN, L. et al.,A new bead-based human platelet antigen antibodies detection assay versus the monoclonal antibody immobilization of platelet antigens assay,Transfusion,2014年,Vol.54, No.6,p.1486-1492,doi.org/10.1111/trf.12509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/538
G01N 33/543
G01N 33/53
G01N 33/569
C12M 1/34
C12Q 1/70
C12Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的液体の試料から、抗原及び/又は抗体を検出及び/又は特定するためのin vitro診断デバイスであって、
- 支持体、及び
- 前記試料を受け取るための少なくとも1つの親水性反応領域を含む、前記支持体に配置されている疎水性多孔性膜であって、前記疎水性多孔性膜の表面よりも小さい前記親水性反応領域の表面は、少なくとも1つの捕捉抗体又は捕捉抗原を含み、前記捕捉抗体又は捕捉抗原はビーズの表面に固定化されて
おり、前記ビーズの平均サイズは、1μm~130μmに含まれる、疎水性多孔性膜
を含むin vitro診断デバイス。
【請求項2】
前記捕捉抗体は、抗赤血球細胞抗体、抗血小板抗体、ウイルス抗原の抗体、細菌抗原の抗体、及び寄生虫抗原の抗体を含む群から選択される、請求項1に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項3】
前記捕捉抗体は、抗赤血球細胞抗体から選択される、請求項1に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項4】
前記捕捉抗原は、赤血球細胞抗原、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される、請求項1に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項5】
ウイルス抗原の前記抗体及び前記ウイルス抗原は、B型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルスに由来する、請求項2又は4に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項6】
細菌抗原の前記抗体及び前記細菌抗原は、トレポネーマ属に由来する、請求項2又は4に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項7】
寄生虫抗原の前記抗体及び前記寄生虫抗原は、プラスモジウム属に由来する、請求項2又は4に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項8】
前記捕捉抗体又は捕捉抗原は、前記ビーズの表面に直接的に又は間接的に固定化されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項9】
前記捕捉抗体又は捕捉抗原は、別の抗体を介して前記ビーズの表面に間接的に固定化されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項10】
前記別の抗体は、免疫グロブリンIgM又はIgGである、請求項9に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項11】
前記捕捉抗体は、抗体に対して親和性を有するタンパク質から選択されるリガンドを介して前記ビーズの表面に間接的に固定化されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項12】
前記タンパク質は、プロテインA、プロテインG、又はプロテインLから選択される、請求項11に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項13】
前記ビーズの表面は、アルデヒド基、クロロメチル基、NHS基、及びカルボキシル基から選択される少なくとも1つの化学基を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項14】
前記ビーズは、前記ビーズが懸濁される溶液に対して1%~10%に含まれる濃度で使用され、前記溶液の、加える容積は、1~100μlに含まれる、請求項1から
13のいずれか一項
に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項15】
前記疎水性多孔性膜の厚さは、0.4mm~2mmに含まれる、請求項1から
14のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項16】
前記疎水性多孔性膜の前記親水性反応領域は、界面活性剤により親水化される、請求項1から
15のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項17】
前記界面活性剤は、溶液に対して0.01~5重量/容積%に含まれる濃度で使用され、前記界面活性剤を含む前記溶液の0.1~5μlが、前記疎水性多孔性膜に加えられる、請求項
16に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項18】
吸収層である少なくとも1つの層であって、前記疎水性多孔性膜の下に配置されている、少なくとも1つの層を更に含む、請求項1から
17のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項19】
排水性材料で作製されている少なくとも1つの別の層であって、前記疎水性多孔性膜と吸収層との間に配置されている、少なくとも1つの層を含む、請求項1から
18のいずれか一項に記載のin vitro診断デバイス。
【請求項20】
- 赤血球細胞抗原、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される少なくとも1つの抗原、
- 抗赤血球細胞抗体、抗血小板抗体、抗ウイルス抗体、抗細菌抗体、及び抗寄生虫抗体を含む群から選択される少なくとも1つの抗体
を、生物学的液体の試料から決定及び/又は特定するための、請求項1から
19のいずれか一項に記載のin vitroデバイスの使用。
【請求項21】
血液の試料又は血液成分の試料から、赤血球細胞抗原及び/又はin vivo感作赤血球細胞及び/又は血小板抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 前記試料を含む溶液を、請求項1、2、及び8から
19のいずれか一項に記載のin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、
- 前記反応領域に添加した前記試料を読み取る(又は画像を取得する)ステップ、
- すすぎ溶液を前記反応領域に加えるステップ、及び
- 前記反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗原若しくは前記in vivo感作赤血球細胞が存在すると決定するか、又は前記反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体反応が存在しないと決定することにより前記抗原又は前記in vivo感作赤血球細胞が存在しないと決定するために読み取る(又は画像を取得する)ステップ
を含むin vitroの方法。
【請求項22】
血液の試料又は血液成分の試料から抗赤血球細胞抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 試験しようとする前記試料を、緩衝液及び表現型が既知の赤血球細胞試剤と共にインキュベートするステップ、
- 請求項1、4、及び8から
19のいずれか一項に記載のin vitroデバイスの反応領域に混合物を加えるステップ、
- すすぎ溶液を前記反応領域に加えるステップ、及び
- 前記反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗体/抗原反応が存在すると決定することにより抗赤血球細胞抗体が存在すると決定するか、又は前記反応領域に無色スポットが出現する場合、抗体/抗原反応が存在しないと決定することにより前記抗体が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法。
【請求項23】
生物学的液体の試料から、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 前記試料を含む溶液又は前記試料と緩衝液との混合物を、請求項1、2、及び5~
19のいずれか一項に記載のin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、及び
- 前記反応領域に有色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗原が存在すると決定するか、又は前記反応領域に色の薄いスポットが出現する場合、抗原/抗体反応が存在しないと決定することにより前記抗原が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法。
【請求項24】
生物学的液体の試料から、抗ウイルス抗体、抗細菌抗体、及び抗寄生虫抗体を含む群から選択される抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 前記試料を含む溶液又は前記試料と緩衝液との混合物を、請求項1、4から
19のいずれか一項に記載のin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、及び
- 前記反応領域に有色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗体が存在すると決定するか、又は前記反応領域に色の薄いスポットが出現する場合、抗原/抗体反応が存在しないと決定することにより前記抗体が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法。
【請求項25】
前記生物学的液体の試料は、血液の試料又は血液成分の試料である、請求項1に記載のin vitro診断デバイス、請求項
20に記載の使用、又は請求項
23及び
24に記載の方法。
【請求項26】
- 前記添加するステップの前に、試験しようとする前記試料を緩衝液と共にインキュベートするステップ、及びこのステップの後に、
- すすぐ前に試料ロード対照について読み取るステップ、及び/又は
- すすぎ溶液を前記反応領域に加えるステップ、
をさらに含む、請求項
23又は
24に記載のin vitroの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫診断の分野である。特に、本発明は、生物学的液体の試料から、特に血液の試料又は血液成分の試料から抗原及び/又は抗体を検出/特定するためのin vitro診断デバイスに関する。また、本発明は、赤血球細胞抗原又は抗赤血球細胞抗体、血小板抗原又は抗血小板抗体、ウイルス抗原又は抗ウイルス抗体、細菌抗原又は抗細菌抗体、寄生虫抗原又は抗寄生虫抗体の検出及び/又は特定等の、本デバイスの様々な使用に関する。本発明のデバイスを使用するin vitroの方法も本発明の一部分である。
【背景技術】
【0002】
免疫診断アッセイは、幾つかの試験形式で利用可能であり、抗体、抗原、又は両方の組合せを検出するために使用可能な方法である。一般的に、こうした検出試験は、試験される試料に存在する任意の特異的な抗体を捕捉する固定化抗原の使用に基づくが、抗原を検出するために使用される試験は、試料に存在する特異的抗原の捕捉を可能にする固定化抗体に基づく。
【0003】
こうしたアッセイは、例えば、感染性病原体等を検出するために、特に輸血安全性を保証するために、免疫血液学において広く使用されている。
【0004】
輸血は、ドナー血液から得られる濃縮赤血球調製物(血球濃縮物)の静脈内注射である。輸血には2つの主なリスクがある。
【0005】
主要リスクは、レシピエント(輸液を受ける個人)の体内にて抗体及びその赤血球抗原が一緒になる可能性である。そのような免疫学的反応の帰結は、臨床徴候のない非効率的輸液から、軽度の臨床反応(不安、震え)、重度の臨床反応(ショック、ヘモグロビン尿症、腎不全)、又は死亡をもたらす劇的な臨床反応(ショック、播種性血管内溶血)にまで及ぶ場合がある。
【0006】
輸血は、疾患伝染源の可能性がある。細菌、ウイルス、及び寄生虫を含む無数の因子が、潜在的に輸血を介して伝染し得る。これらのうち、細菌は、最も一般的に伝染し、トレポネーマ属(Treponema)、エルシニア(Yersinia)属、プロテウス(Proteus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、エシェリヒア(Escherichia)属、クレブシェラ(Klebsiella)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、及びセラチア(Serratia)属の種が挙げられ、グラム陽性生物の中では、プロピオンバクテリウム(Propionibacterium)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、バチルス(Bacillus)菌、クロストリジウム(Clostridium)属、及びエンテロコッカス(Enterococcus)属が単離された。輸血を介して伝染することが可能なウイルス因子としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス、西ナイルウイルス(WNV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトT細胞リンパ球指向性ウイルス(HTLV)、及びパルボウイルスB19が挙げられる。別の例は、マラリアを引き起こし、輸液を介して伝達し得るプラスモジウム(Plasmodium)属の種を含む原生動物である。
【0007】
輸血安全性を保証するためには、一方では、レシピエントがドナーの赤血球抗原に対する循環抗体を有していない場合、ドナー赤血球細胞はレシピエントの血液と適合性であると考えられること、及び他方ではドナー赤血球は、輸血伝染性感染因子を含まないことが必要とされる。
【0008】
ドナー赤血球細胞とレシピエントとの適合性を保証するため、現在、血液型及び血漿/血清中の抗赤血球細胞抗体の存在を決定するための試験が使用されている。
【0009】
免疫血液学的診断の目的は、赤血球細胞抗原とそのような抗原に対して特異的な抗体との免疫反応を決定及び/又は特定することである。そのためには、赤血球細胞の表面に存在する抗原を決定するためのツールを有することが必要である。それらの存在又はそれらの非存在が血液型を規定する。また、レシピエントの血液が、ドナーの赤血球細胞の既知抗原に対する1つ又は複数の抗体を含むか否かを特定することが可能であり、抗体の存在は、非適合性の可能性を意味する。
【0010】
血液型を構成する赤血球膜抗原の全ての抗原性変異型の中でも、ヒトにおいて現在まで30種を超える赤血球抗原系が特定されている:A(ABO1)、B(ABO2)、AB(AB03)、及びA1(ABO4)のABO式血液型、D(RH1)、E(RH3)又はe(RH5)、及びC(RH2)又はc(RH4)抗原のRh式血液型、ケル式血液型(K又はKEL1、k又はKEL2、...)、ダッフィ式血液型(Fya又はFY1、Fyb又はFY2、...)、キッド式血液型(Jka又はJK1、Jkb又はJK2、...)、MNS(MNS1、MNS2、MNS3、MNS4...)式血液型、又はルーテル、ルイス等それほど頻繁には実用的に研究されていない他の系も存在する。同じ組合せの赤血球抗原を有する個体は、同じ赤血球血液型に属する。血液型は、幾つかの抗原系が使用される場合、更により複雑になり、数が更により多くなる。
【0011】
慣例的な技法は、そうした細胞の表面における赤血球細胞抗原の存在若しくは非存在を探索及び特定すること、及び/又は血漿中若しくは血清中における血液型の抗赤血球細胞抗体の存在又は非存在を探索及び特定することである。
【0012】
例えば、ABO式血液型の場合、ベス-ビンセント試験により、赤血球細胞が保持する抗原が決定され、補完的なSimonin-Michon試験又は逆血液型分類により、血漿中又は血清中の循環抗体が決定される。
【0013】
ベス-ビンセント試験では、個体の赤血球細胞を、特異性が既知の抗体の試薬と一緒にする。一般に、この試験では、抗体の試薬が、対応する赤血球細胞抗原を認識すると、赤血球細胞の凝集が観察されることにより可視化される。
【0014】
Simonin-Michon試験では、個体の血漿又は血清を、各々がABO式血液型の正確な抗原群に属する赤血球細胞試剤と一緒にする。これは、個体の血漿又は血清に存在する抗体により赤血球細胞を凝集させる試験である。IgM型免疫グロブリンであるそうした抗体は、in vitroで赤血球細胞を凝集させることができる。IgM型免疫グロブリンは、対応する抗原を赤血球細胞の表面に保持しない個体の血清又は血漿に全身性に存在するため、「規則性」抗体と呼ばれる。
【0015】
「不規則性」(又は「免疫性」)抗体と呼ばれる第2のクラスの抗体も存在する。それらは、血清又は血漿中に存在しない場合もあり、非ABO式血液型の抗原に対するものである。これは、一般に、外来性赤血球細胞による抗原刺激中に、例えば、輸血後の1つ若しくは複数の抗原に対する免疫化の後に、又は母体血液型に属していない胎児赤血球抗原に対する母体免疫反応により妊娠中に、又は同種移植後に出現するIgG(時にはIgM)を含む。
【0016】
こうした不規則性抗体のスクリーニングは、間接凝集素試験(IAT, indirect agglutinin test)又は間接クームズアッセイ(indirect Coombs assay)と呼ばれる。この試験は、個体の血液中の種々の赤血球細胞抗原に対するIgG抗体の存在又は非存在を検出するために使用され、IgGそれ自体ではin vitroで自発的に凝集を誘導することができないため、凝集を促進するためにヒト抗グロブリンが使用される。そのため、この試験では、こうした抗体が、抗原性が既知の試剤赤血球細胞に結合することを示すことが目的とされる。この方法を、異なる既知抗原性を有する幾つかの赤血球細胞に対して同時に実施し、結果を比較することにより、IgG存在の特異性を特定することが可能になる。
【0017】
Rh D(RH1)等、ほとんどの免疫原性抗原だけでなく、他のRh血液型(E(RH3)>c(RH4)>e(RH5)>C(RH3))、ケル式血液型の抗原(KEL1)、ダッフィ式血液型の抗原(FY1、FY2)、キッド式血液型の抗原(JK1、JK2)等も、リスクがより高い。
【0018】
実際、適切な瞬間に適切な血液型を得ることは可能ではないと考えられ、特に一部の抗原性組合せは非常に希少であるため、輸血を実施する際に、こうした抗原全てを考慮することは可能ではない。標準的輸血では、ABO型、及び抗原Dの存在又は非存在(RH:1又はRH:-1)が考慮されるに過ぎない。不規則性抗体が存在する状況では、幾つかの他の血液型、特にRh式血液型(C(RH2)又はc(RH4)及びE(RH3)又はe(RH5))、及びケル式血液型、及び時には他の血液型が考慮される。したがって、こうしたリスク状況では、こうした不規則性抗赤血球細胞抗体の存在又は出現リスクを考慮することにより、ドナーの血液型とレシピエントの血液型との適合性を保証することが重要である。
【0019】
したがって、不規則性抗赤血球細胞抗体を有するレシピエント患者の場合、又は複数の輸血を受ける患者等のリスク状況では、レシピエントの抗体がそれらに対するものであるか又はそれらに対して出現する可能性が高い抗原をドナーの赤血球細胞が有さないように、輸血される赤血球濃縮物単位(erythrocyte concentrate unit)を選択することが重要である。
【0020】
こうした患者の場合、血液型を決定するための並びに不規則性抗赤血球細胞を探索及び特定するための試験は必須であり、赤血球濃縮物の投与前に全てのレシピエント患者に対して及び胎児母胎間不適合性を検出するために妊婦に対して予防的に使用される。加えて、レシピエント血清又は血漿の存在下でドナーの赤血球細胞が用いられる直接適合性試験による試験を使用して、適合性を確認することも必須である。そうした場合、IATに使用される技法において凝集反応も溶解反応も見出されるべきでない。
【0021】
いわゆる不規則性抗体の探索には、種々の赤血球細胞抗原に対する免疫グロブリンの個体血液中の存在又は非存在を検出することが必要である。抗体が既にin vivoで固定化されている場合、直接試験又は直接クームズアッセイが実施される。同種抗体検索の場合、目的は、間接クームス技法により赤血球試験(red blood test)にて、その抗原が既知であるそうした免疫グロブリンの固定化を明らかにすることである。
【0022】
免疫血液学の分野には、赤血球細胞抗原を検出及び/又は特定するために並びに抗赤血球細胞抗体を検出及び/又は特定するために使用される方法及びデバイスが多数存在するが、それらには数多くの欠点がある。
【0023】
スライド法は、スライドガラス又は白色ポーセレン支持体上で、ドナー又はレシピエント血液の液滴を、抗A(抗ABO1)、抗B(抗ABO2)、及び抗D(抗RH1)と別々に混合することである。ABO式血液型及びRh D式血液型を決定することができる凝集を視覚的に観察することができる。この試験は、5~10分間で終了し、安価である。しかしながら、この試験は感度の低い方法である。この試験は、結果を解釈することが難しい反応性が弱いか又はほとんど反応性でない抗原の場合には実施することができず、加えて、抗A(抗ABO1)又は抗B(抗ABO2)は力価が低いため、偽陽性又は偽陰性の結果に結び付く場合がある。この試験は、結果が迅速に得られるため、緊急時の予備的血液型適合性検査に非常に有用である。しかしながら、安全な輸血を完全に保証するほどの信頼性はない。
【0024】
チューブ試験は、ベス-ビンセントアッセイ及びSimonin-Michonアッセイを両方とも決定することで構成される。この方法では、ベス-ビンセント分類のため、血液細胞を、希釈培地としての生理食塩水と共に2つの試験チューブに入れ、その後、各抗A(抗ABO1)及び抗B(抗ABO2)の一滴を、そうした試料に別々に添加する。こうしたチューブを、数分間遠心分離し、その後、得られたマトリックスを、穏やかに振盪して凝集を観察する。遠心分離の目的は、特に、反応が弱い抗体が反応し、したがって凝集に結び付くように、化学的相互作用の増強を保証することである。同様に、A1及びBの(並びに任意選択で血液型O及びA2の)赤血球細胞試薬で血清を処理し、その後の凝集パターンをモニターすることにより、Simonin-Michon逆分類を実施することができる。一般に、チューブ法は、スライド試験よりもはるかにより高感度であり、試薬の容量が少なくてすみ、一部の予期しない抗原も検出することができる。しかしながら、幼児では、決定しようとする抗体が十分な量で産生されないため、逆分類を実施するのが多少難しい。この試験は手作業による方法であるため、ハイスループット分析のためのその使用は非常に制限される。
【0025】
古典的な方法の中でも、マイクロプレート技術は、数マイクロリットル(μl)の試薬を含む多数の小さなチューブを血液試料で処理することで構成される。遠心分離及びインキュベーション後、その後の凝集を、自動読取りデバイスにより検査することができる。この方法は、低試薬容積でハイスループット分析の自動化が実施可能である、血液型判定するための及び抗赤血球細胞抗体を検出/特定するためのより高感度で迅速な分析である。しかしながら、マイクロプレート技法は、遠心分離段階に続いて撹拌ステップが必要であるため、弱い凝集を解消させてしまい、強力な凝集の再懸濁に成功しないリスクがある。マイクロプレート技法は、視覚的点検下で実施しなければならず、一部の試薬の付着現象には特に注意を払われなければならない。
【0026】
ゲル試験による濾過技法は、細胞凝集を定量化するための標準的手順である。カラムは、凝集体を捕捉するためのゲルマトリックスを含む。血液型判定の場合、制御されたインキュベーション及び遠心分離下で、赤血球細胞を、抗A(抗ABO1)試薬、抗B(抗ABO2)試薬、及び抗D(抗RH1)試薬、又は他の血液型に対する他の抗体とマイクロチューブ中で混合する。逆血液型判定の場合及び抗赤血球細胞抗体を検出/特定する場合、制御されたインキュベーション及び遠心分離下で、血漿又は血清を、既知抗原性を有する赤血球細胞と混合する。ゲル粒子は凝集体を捕捉するが、非凝集血液細胞は、カラムを通過することが可能である。ゲル材料の代わりのガラスビーズを使用することにより分析時間を低減することができる。そのようにすると、より迅速な遠心分離速度を達成することができ、それにより迅速な結果に結び付くからである。この技術は高感度であり、簡単明瞭であり、より少ない専門的人員で比較的容易に操作できる。しかしながら、主なリスクは、小さな凝集体はゲル内へと進むと共に剪断力により解離するため、特にABO式血液型の血漿試験中に一部の凝集体が検出されないことである。
【0027】
また、こうした技法には全て大きな欠点がある。それは、赤血球細胞をデカントするための又はゲルを通過させるための遠心分離ステップが必要であるからであり、このステップは、相当な時間及び分析コストが追加される、取扱いが難しいバルク遠心分離の使用を必要とする制限ステップである。
【0028】
また、関連技術には、分子インプリンティング法(総説は、Mujahid、2016年、Sensors)に基づく、プラズモン共鳴画像法による抗体アレイ技法(Houngkamhang、2013年、sensors;Pipatpanukul、2018年、Biosensors and Bioelectronics)に基づく、量子ドット磁気ビーズアッセイ(Xu、2017年、International Journal of Nanomedicine)に基づく、又は毛細管若しくは減圧駆動マイクロフルイディクス(In capillary- or vacuum-driven microfluidics)(Zhai、2017年、Lab on a Chip)に基づく他の方法及び他の方法が記載されている。
【0029】
国際公開第2012010666号パンフレットには、血液型及び表現型の抗体/抗原複合体を決定するための磁気免疫診断法が記載されている。
【0030】
例えば、欧州特許第2167967号明細書に記載の免疫濾過法は、捕捉要素を保持する多孔性膜を通過する際に、試料に存在する分析物を捕捉すること、及び顕色要素によりその存在を明らかにすることで構成される。この方法は、試料を加える際に拡散し多孔性膜に吸収され、数多くの分析物が多孔性膜のデッドボリュームで失われるか又は捕捉領域外部を通過するため、著しい感度及び特異性の問題を有する。同じことが顕色溶液にも当てはまる。したがって、試験しようとする試料及び顕色溶液のより大きな容積を加えることができるように吸着系を大型化することが必要とされ、これは、その動力学が制御され、顕色剤を受け取ることなく、ロボットピペットが使用可能になる小型化された試験の実施を防げる。
【0031】
この問題を解決し、抗原/抗体反応後に発せられるシグナルを濃縮する試みにおいて、カナダ特許第1312265号明細書又は国際公開第02052263号パンフレットには、流動が捕捉スポットを通過することを強いるように穿孔された疎水性構造を親水性多孔性膜の上下に配置することが提案されている。しかしながら、こうしたデバイスには、スポットからの遠心的拡散の問題が依然として存在し、捕捉スポットを通過し、捕捉スポットに固定化されない顕色要素が、親水性多孔性膜で遠心的に拡散し、スポットの周辺部に蓄積され得ることになる。
【0032】
今日の既存の免疫濾過デバイスの別の主要な問題は、膜を通過する試料の運動速度及び一部の場合ではプレインキュベーション時間の制御である。こうした時間は、捕捉要素(多くの場合、抗体)と分析物(多くの場合、抗原)との相互作用、並びに分析物と顕色要素との相互作用が特定の動力学を有するため、重要である。系は特定しないが、親水性膜の通過は、迅速である(500μl/分)。
【0033】
流動を制御するため、特に米国特許出願第2008318342号明細書では、ピストンの利用が提案されている。
【0034】
プレインキュベーション時間を制御するため、国際公開第03016902号パンフレットには、2つの部分:試料収集領域及び多孔性膜を含む上部部分並びに多孔性膜及び吸収膜を含む下部部分のデバイスを使用することが提案されている。
【0035】
そのような機械的手法は、専用システムの開発及び使用を必要とするため、ロボットを使用して実行することが難しい。また、そのような機械的手法では、取扱い中に専門家があらゆる突出部に曝される。
【0036】
欧州特許第0334015号明細書に記載されている別の方法は、流動を制御するために、第1の膜の直下に追加の膜を使用することであるが、提案されたデバイスは、親水性多孔性膜での試料及び顕色要素の拡散に関連付けられる問題を解決しない。
【0037】
血小板輸血は、血小板濃縮としても知られており、低血小板数又は血小板機能不良のいずれかを有する人々の出血を予防又は治療するために使用される。予防的輸血は、血小板レベルが10×109/L未満の人々に行われることが多い。出血中の人々には、典型的には50×109/L未満で輸血が実施される。血小板は、静脈内注射により投与される。血小板は、全血から又はアフェレーシスによるかのいずれで生産することができる。現在まで、33種のヒト血小板同種抗原(HPA)が、6つの機能的に重要な血小板糖タンパク質(GP)複合体で特定されている。最も多数の認識されているHPA(33種のうち20種)は、止血及び炎症の媒介に重要なリガンドの受容体としての役目を果たすGPIIb/IIIa複合体に存在する。それらとしては、白人集団におけるFNAIT及びPTPに最も一般的に関与するHPAであるHPA-1aが挙げられる。他の血小板GP複合体GPIb/V/IX、GPIa/IIa、及びCD109は、残り13種のHPAを発現する。認識されているHPAのうち、12種は、6つの血清学的に及び遺伝学的に規定された二対立遺伝子「系」として生じ、「a」形態は、より高頻度の対立遺伝子を表し、「b」形態は、より低頻度の対立遺伝子を表す。21種の他のHPAは、より高頻度の「a」であると想定される対立遺伝子が、抗体特異性としてまだ特定されていない低頻度又は希少抗原である。HPAマーカーに加えて、血小板は、ABO及びヒト白血球抗原(HLA)抗原も発現する。血液型一致(ABO、RH1)は、典型的には、血小板投与前が推奨される。
【0038】
幾つかの異なる臨床状況では、患者のHPA抗原を正確に判定することが必要であり、血液事業者は、HPA判定アフェレーシス血小板ドナー及び全血ドナーのパネルを確保して、HPA同種免疫患者を支援することが必要である。血小板減少症の患者から得ることができる血小板は非常に少量であることが多く、HPA-1a及びHPA-5b以外のHPA抗原の信頼性の高い血清型判定試薬が希少であるため、血清学的HPA表現型判定の価値は制限される。赤血球細胞表現型判定とは対照的に、HPA-1aを例外として、HPA判定用のモノクローナル抗体は開発されていない。しかしながら、ポリクローナル又は組換え抗HPA-1aのいずれかを使用した迅速スクリーニングアッセイのための幾つかの方法が、最近発表されている。こうした表現型判定アッセイは、HPA選択ドナーパネルの準備のための遺伝子型判定アッセイを補完することができる。
【0039】
血小板ドナーと血小板レシピエントとの間の適合性を保証することが重要である。しかしながら、一致血小板が入手できないため、不一致血小板がたびたび使用される。不適合性は、胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)、輸血後紫斑病(PTP)、及び多輸血血小板不応状態(MPR、multi-transfusion platelet refractoriness)を含む同種免疫血小板障害をもたらす場合がある。
【0040】
FNAITは、胎児-母体同種免疫性血小板減少症(FMAIT)として知られている場合も多く、父親から遺伝した胎児血小板同種抗原に対する母体免疫化の帰結として生じる。その後、母体IgG同種抗体は、胎盤を越え、子宮内での血小板の免疫破壊、つまり新生児の溶血性疾患と似た状況を引き起こす。
【0041】
輸血後紫斑(PTP)は、血小板又は血小板膜を含む任意の血液産物を輸血したおよそ1週間後に生じる、珍しいが重篤な疾患である。患者は、以前の妊娠又は輸血により感作されていると推測され、高力価のHPA(及び多くの場合はHLA)抗体を産生することにより、非適合性血小板の第2の負荷に応答する。その結果生じる輸血血小板の免疫破壊は、一般的に生じる輸血反応に寄与する場合がある。
【0042】
MPRは、無作為ABO同一ドナー血小板の輸血後の血小板数の不適切な増加であると定義されている。これは、複数の血小板輸血を受けた患者に一般的な合併症である。
【0043】
過去25年にわたって、HPA抗体を検出するための広範な技法が開発されており、4つの技法又はそれらの改変法が最も一般的なものになっている;(1)血小板免疫蛍光試験(PIFT);(2)血小板抗原のモノクローナル抗体固定化(MAIPA)アッセイ;(3)固相赤血球付着アッセイ;及び及び(4)様々なELISAに基づく技法。しかしながら、抗血小板抗体検出の進歩は、技法、細胞パネル、及び作業者の経験を含む様々な要因に依存し、それにより、上記で言及されている技法の一部が、高価になり、実施が困難になり、信頼性がより低くなる場合がある。
【0044】
過去40年間にわたって、潜在的な輸血伝染性感染を検出するための、免疫応答を活用する数多くの診断試験が開発されている。最も広く使用されている試験は、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原等のいずれかの感染因子の抗原を検出するように、又は感染時の免疫化により産生される感染因子に対する抗体を検出するように設計されている。しかしながら、こうした試験は全ての状況に適しているとは限らず、どの試験にも、その選択中に知らなければならず、考慮しなければならない制限がある。多くの場合、免疫診断は、試薬として抗体を使用することに基づく。
【0045】
免疫診断試験で使用される方法には様々なものがある。そうした方法の一部が下記に記載されている。
【0046】
免疫沈降は、試薬抗体を試料と共にインキュベートし、その対応する抗原と反応させて不溶性凝集体を形成させた後で生ずる沈降物の量を測定する最も単純なイムノアッセイ法である。免疫沈降反応は、定性的であってもよく又は定量的であってもよい。
【0047】
粒子イムノアッセイでは、試料中の抗体又は特異性抗原の存在が検出され、抗原又は適切な抗体のいずれかでコーティングされている粒子を使用して試験される。幾つかの抗体を粒子(ゼラチン又はラテックス)に連結することにより、粒子は、数多くの分子と同時に結合することができ、凝集を促進する。これは、可視反応の速度を大きく加速する。梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)粒子凝集アッセイ(TPPA試験とも呼ばれる)は、考え得る輸血伝染性感染因子である梅毒の原因因子に対する抗体を検出するために使用される粒子イムノアッセイの別の例である(Manaviら、2006年、Int. J. STD AIDS)。これは、ゼラチン粒子が梅毒トレポネーマ抗原で感作される間接凝集アッセイである。患者血清が梅毒に対して陽性である場合、粒子は凝集して凝集塊を形成するが、陰性試験は、ゼラチン粒子の凝集塊を示さない。
【0048】
免疫比濁アッセイは、感染を検出するために開発されたイムノアッセイの別の例である。抗体及び抗原の結合により形成される免疫複合体が小さすぎて沈降しない場合でも、そうした複合体は、入射光を散乱することになるため、比濁計と呼ばれる機器を使用して測定することができる。反応の数分以内に抗原濃度を決定することができる。
【0049】
ラジオイムノアッセイ(RIA)では、放射性同位体を使用して抗原又は抗体のいずれかを標識する。この同位体はガンマ線を放射し、ガンマ線が、通常は未結合放射性標識を除去した後で測定される。RIAの主要な利点は、他のイムノアッセイと比較して、感度がより高く、シグナル検出が容易であり、確立された迅速アッセイである。主要な欠点は、放射線の使用によりもたらされる健康及び安全性のリスク、並びに放射線安全性及び廃棄プログラム免許の維持に関連する時間及び費用である。この理由で、RIAは、日常的な臨床検査業務では、酵素(EIA)、蛍光(FIA)、又は化学発光(CLIA)イムノアッセイにより大部分が置き換えられている。
【0050】
EIA、FIA、及びCLIAは、現在、ウイルス感染、細菌感染、及び寄生虫感染、特に血液ドナー試料中の輸血伝染性感染を検出するための最も多く用いられている試験である。感染性疾患を検出するための最も広く用いられているEIA法の1つは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である。感染因子を検出するためのそのようなアッセイの性能を示す数多くの特許及び刊行物が存在する。
【0051】
こうした方法は、原理が類似しており、その結果生じる免疫複合体の検出モードが異なるに過ぎない。EIA及びELISAの場合は比色分析であり、FIA及びCLIAの場合は酵素/化学反応により生成される蛍光及び光度の測定である。蛍光及び化学ルミネセンス測定は、本質的に比色測定よりも高感度である。したがって、こうした方法は、光学濃度測定が使用されるEIA法よりも高い分析感度を有する。
【0052】
また、中間段階がなく使い捨てであり1回だけ使用して廃棄される迅速/単純なユニット試験も存在する。そうした試験のほとんどは、試料(血液、血漿、又は血清)を不活性ストリップに通し、このストリップに事前に固定化されている試薬(抗体又は抗原)と反応させる免疫クロマトグラフィーに基づく。任意の陽性反応が、ストリップに出現するドット又はバンドとして視覚化される。こうした試験は、使用が容易であり、キットに含まれているもの以外に追加の試薬を必要としない。また、こうした試験は、数分以内に単純な質的結果をもたらす。しかしながら、こうした試験は、多数の試料のスクリーニングには好適ではない。
【0053】
上記の欠点を克服するために、出願人は、血液又はその成分の1つの試料から、抗原と、この抗原に対して特異的な抗体との間の少なくとも1つの反応を検出するための、疎水性多孔性膜を含むin vitro診断デバイスであって、上記試料を受け取るための少なくとも1つの親水性反応領域が、疎水性多孔性膜の表面よりも大きくない表面を有するin vitro診断デバイスを実現させた。このデバイスは、例えば、国際公開第2013/186482号パンフレットに記載されている。このデバイスは、
- 偽陽性の原因である顕色剤の戻りを防止すること
- より低容積での使用で感度を増加させること
- システムを小型化及び自動化すること
- デバイスの機械的取扱いを必要とせずに反応の動力学を制御すること
により、上記で言及されている試験から生じる、特に免疫濾過から生じる幾つかの欠点を改善する。
【0054】
このデバイスには明白な利点があるにも関わらず、この診断が、捕捉剤を使用することを含む場合、及びこの捕捉剤が抗体(試料中の対応する抗原を検出するための)であるか又は抗原(試料中の対応する抗体を検出するための)である場合、実施される診断の感度及び特異性を向上させる必要性が依然として存在する。上記デバイス部分を使用すると、診断試験中に、親水化反応領域に配置された捕捉剤(例えば、血液細胞抗原に対する抗体)が、抗体希釈に使用した溶液と共に多孔性膜に吸着する。結果的に、試験の特異性及び感度が低減される。この捕捉剤の「喪失」を補償するため、多量の捕捉剤を添加することが必要であり、それによりこの診断試験のコストが増加する場合がある。
【0055】
この欠点を克服するため、本発明の発明者らは、より厚い多孔性膜を使用すること、又はより低い多孔度の膜を使用すること等、幾つかの技術的解決法を試験したが、有意義な結果は得られていない。
【0056】
多孔性膜の特徴又はこのデバイスの他の構造要素を調節する他の可能性を研究する代わりに、本発明者らは、驚くべきことに、その表面に捕捉剤(例えば、抗体又は抗原)が固定化又は吸着されてもよく、多孔性膜の反応領域に堆積(deposed)させる特に選択されたビーズを追加することにより、捕捉剤を膜の表面に維持することが可能になり、したがって捕捉剤が分析物(例えば、抗原又は抗体)に結合する際に発するシグナルが向上することを見出した。結果的に、そのようなビーズの使用により、大量の捕捉剤を使用せずに、以前に開示されたデバイスの特異性及び感度を向上させることが可能になる。
【0057】
表面に抗体及び/又は抗原固定化されているビーズは、診断目的の技術分野において周知である。例えば、国際公開第95/31731号パンフレットには、赤血球細胞抗原を検出するための方法であって、表面に特異的抗赤血球細胞抗体がタンパク質リガンドを介して固定化されている粒子を含むカラムに、血液細胞を含む試料を添加するステップを含む方法が開示されている。しかしながら、上述の方法は、親水化多孔性膜を含むデバイスを使用せず、膜による捕捉剤の吸収に関する問題に対処していない。
【0058】
したがって、高い特異性及び感度を有するin vitro診断法を実施するために、部分的に親水化された多孔性膜に、表面に捕捉剤としての抗体及び/又は抗原が直接的に又は間接的に固定化又は吸着されているビーズを付随させることは、関連技術分野の水準に照らして意外なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【文献】国際公開第2012010666号パンフレット
【文献】欧州特許第2167967号明細書
【文献】カナダ特許第1312265号明細書
【文献】国際公開第02052263号パンフレット
【文献】米国特許出願第2008318342号明細書
【文献】国際公開第03016902号パンフレット
【文献】欧州特許第0334015号明細書
【文献】国際公開第95/31731号パンフレット
【文献】国際公開第2013/186482号パンフレット
【非特許文献】
【0060】
【文献】Mujahid、2016年、Sensors
【文献】Houngkamhang、2013年、sensors
【文献】Pipatpanukul、2018年、Biosensors and Bioelectronics
【文献】Xu、2017年、International Journal of Nanomedicine
【文献】Zhai、2017年、Lab on a Chip
【文献】Manaviら、2006年、Int. J. STD AIDS
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0061】
上記に示されているように、抗原及び/又は抗体を検出及び/又は特定するための感度及び特異性を向上させるために、並びに使用される分析物の量を低減するために、本発明者らは、反応領域に配置され、抗体及び/又は抗原がビーズ表面に固定化又は吸着されているビーズを更に含む、国際公開第2013/186482号パンフレットで開示されたものと類似するデバイスを実現した。
【0062】
したがって、一態様によると、本発明は、生物学的液体の試料から、好ましくは血液の試料又は血液成分の試料から、抗原及び/又は抗体を検出及び/又は特定するためのin-vitro診断デバイスであって、
- 支持体、及び
- 前記試料を受け取るための少なくとも1つの親水性反応領域を含む、支持体に配置されている疎水性多孔性膜であって、疎水性多孔性膜の表面よりも小さい親水性反応領域の表面は少なくとも1つの抗体及び/又は抗原を含み、前記抗体及び/又は抗原はビーズ表面に固定化又は吸着されている疎水性多孔性膜
を含むin-vitro診断デバイスに関する。
【0063】
本発明の発明者らは、幾つかの試験を実施し、本発明のin vitro診断デバイスを、様々なタイプの抗原又は抗体を検出及び/又は特定するために使用することができることを実証した。そのために、様々なタイプの抗体及び/又は抗原を、ビーズ表面に固定化又は吸着させることができる。そうした抗体は、赤血球細胞抗原に対する抗体から、血小板抗原、抗ウイルス抗原、抗細菌抗原、及び抗寄生虫抗原に対する抗体、又は抗免疫グロブリンから選択することができる。こうした抗原は、赤血球細胞抗原、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原から選択することができる。
【0064】
したがって、別の態様によると、本発明は、
- 部分凝集集団(mixed-field population)を含む赤血球細胞抗原、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される少なくとも1つの抗原、
- 抗赤血球細胞抗体、抗血小板抗体、抗ウイルス抗体、抗細菌抗体、及び抗寄生虫抗体を含む群から選択される少なくとも1つの抗体
を、生物学的液体の試料から、好ましくは血液の試料又は血液成分の試料から、決定及び/又は特定するための、本発明によるin vitroデバイスの使用に関する。
【0065】
特に、本発明者らは、本発明のin vitroデバイスを、生物学的液体の試料から、特に血液又は血液成分の試料から、赤血球細胞抗原及び/又はin vivo感作赤血球及び/又は血小板抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法で使用することができることを実証した。
【0066】
したがって、別の態様によると、本発明は、血液の試料又は血液成分の試料から、赤血球細胞抗原及び/又はin vivo感作赤血球及び/又は血小板抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 前記試料を含む溶液を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、
- すすぐ前に試料ロード対照について読み取るステップ、
- すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗原若しくは前記血液細胞が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在しないと決定することにより前記抗原又は前記血液細胞が存在しないと決定するステップ
を含む方法に関する。
【0067】
更に、本発明者らは、本発明のin vitroデバイスを、生物学的液体の試料から、特に血液又は血液構成成分の試料から、抗赤血球細胞抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法に使用することができることも実証した。
【0068】
したがって、本発明の別の態様は、血液の試料又は血液成分の試料から抗赤血球細胞抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 試験しようとする試料を、緩衝液及び抗原性が既知の赤血球細胞試剤と共にインキュベートするか、又はレシピエントの血漿若しくは血清をドナーの赤血球細胞と共にインキュベートするステップ、
- 混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に加えるステップ、
- すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗体/抗原相互作用が存在すると決定することにより抗赤血球細胞抗体が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗体/抗原相互作用が存在しないと決定することにより前記抗体が存在しないと決定するステップ
を含む方法に関する。
【0069】
本発明のin vitroデバイスは、生物学的液体の試料から、特に血液又は血液成分の試料から抗血小板抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法に使用することができる。
【0070】
したがって、本発明の別の態様は、血液の試料又は血液成分の試料から抗血小板抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 試験しようとする試料を、緩衝液及び抗原性が既知の血小板試剤と共にインキュベートするか、又はレシピエントの血漿若しくは血清をドナーの血小板と共にインキュベートするステップ、
- 混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に加えるステップ、
- すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗体/抗原相互作用が存在すると決定することにより抗血小板抗体が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗体/抗原相互作用が存在しないと決定することにより前記抗体が存在しないと決定するステップ
を含む方法に関する。
【0071】
また、本発明のin vitroデバイスは、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される異なるタイプの抗原、又は抗ウイルス抗体、抗細菌抗体、及び/又は抗寄生虫抗体を含む群から選択され、感染時にウイルス抗原、又は細菌抗原、又は寄生虫抗原に対して産生される異なるタイプの抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法に使用することができる。
【0072】
したがって、本発明の更に別の態様は、生物学的液体の試料から、好ましくは血液試料又は血液成分の試料から、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 任意選択で、試験しようとする試料を緩衝液と共にインキュベートするステップ、
- 前記試料を含む溶液又は試料と緩衝液との混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、
- 任意選択で、すすぐ前に試料ロード対照について読み取るステップ、
- 任意選択で、すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に有色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗原が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体反応が存在しないと決定することにより前記抗原が存在しないと決定するステップ
を含む方法に関する。
【0073】
また、別の態様によると、本発明は、生物学的液体の試料から、好ましくは血液試料又は血液成分の試料から、抗ウイルス抗体、抗細菌抗体、及び/又は抗寄生虫抗体を含む群から選択される抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 任意選択で、試験しようとする試料を緩衝液と共にインキュベートするステップ、
- 前記試料を含む溶液又は試料と緩衝液との混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、
- 任意選択で、すすぐ前に試料ロード対照について読み取るステップ、
- 任意選択で、すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に有色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗原が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体反応が存在しないと決定することにより前記抗原が存在しないと決定するステップ
を含む方法に関する。
【0074】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から、本出願に添付された一組の図面にも示されている本発明の一部の実施形態を示す例から明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0075】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、本発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。そうした定義の一部は、本出願の背景技術の部分で言及されており、本発明に適用される。また、特定の定義は、下記の詳細な説明にて示されている。
【0076】
本発明のin vitroデバイス
上記に示されているように、本発明の発明者らは、抗原及び/又は抗体を高い特異性及び感度で決定及び/又は特定するためのin vitroデバイスを実現させた。
【0077】
一態様では、本発明のin vitroデバイスは、生物学的液体の試料から、好ましくは血液の試料又は血液成分の試料から、抗原及び/又は抗体を検出及び/又は特定するためのin vitro診断デバイスであって、
- 支持体、及び
- 前記試料を受け取るための少なくとも1つの親水性反応領域を含む、前記支持体に配置されている疎水性多孔性膜であって、疎水性多孔性膜の表面よりも小さい親水性反応領域の表面は、少なくとも1つの抗体及び/又は抗原を含み、前記抗体及び/又は抗原は、ビーズ表面に固定化又は吸着されている疎水性多孔性膜
を含むin vitro診断デバイスである。
【0078】
本発明のデバイスは、幾つかのタイプの抗原又は抗体を検出及び/又は特定するのに好適である。この検出及び/又は特定は、抗原を、ビーズ表面に固定化若しくは吸着されている抗体と結合されることにより、又は抗体を、ビーズ表面に固定化若しくは吸着されている抗原と結合させることにより実施される。この状況では、検出及び/又は特定しようとする抗原又は抗体のタイプに応じて、任意の抗体及び/又は抗原を本発明のデバイスのビーズ表面に固定化又は吸着させることができる。したがって、本発明のin vitroデバイスは、特定の抗原又は抗体(赤血球細胞抗原及び抗赤血球細胞抗体としての)を検出及び/又は特定するためだけでなく、様々なタイプの抗原及び抗体を検出及び/又は特定するように構成することもできる。当業者であれば、検出及び/又は特定しようとする目的の抗体又は抗原に応じて、それぞれ目的の抗体又は抗原に連結する抗原又は抗体をビーズ表面に固定化することにより、本発明のin vitroデバイスを構成することができるだろう。
【0079】
したがって、用語「抗体」は、本明細書では最も幅広い意味で使用され、特に、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE等の任意のアイソタイプのモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異的抗体、キメラ抗体、及び抗原結合性断片を包含する。特定の抗原と反応性である抗体は、ファージ又は類似のベクターで組換え抗体のライブラリーを選択すること等の組換え法により、又は抗原若しくは抗原をコードする核酸で動物を免疫することにより生成することができる。
【0080】
典型的な抗体は、ジスルフィド結合により接合されている、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成される。本発明の意味では、用語「軽鎖」は、2つの連続したドメイン:1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインを有する、哺乳動物免疫グロブリン軽鎖ラムダ(λ)又はカッパ(κ)を指す。
【0081】
用語「重鎖」は、α、δ、ε、γ、及びμと表記される哺乳動物免疫グロブリンの鎖を指す。これらの5つのクラス内で、免疫グロブリンは、重鎖(γ1、γ2、γ3、γ4、α1、及びα2)に応じて、サブクラス(IgG1、2、3、若しくは4、又はIGA1若しくは2)に分けることができる。各重鎖は、定常領域及び可変領域という2つの領域を有する。定常領域は、同じアイソタイプの全ての抗体で同一である。各重鎖の可変領域は、単一のIgドメインで構成される。
【0082】
抗体の「可変領域」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれる場合がある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれる場合がある。こうしたドメインは、一般に、抗体の最も可変性の部分であり、抗原結合部位を含む。各可変領域は、抗原のエピトープとの結合の主な要因である「相補性決定領域」(「CDR」)又は「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントを含む。したがって、CDRは、抗体の結合特異性を決める。それらは、通常、CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、N末端基から連続的に付番される。最も高度に保存されている可変領域の部分は「フレームワーク領域」と呼ばれる。
【0083】
本発明の一実施形態では、本発明で使用される抗体、具体的には、ビーズ表面に固定化又は吸着されている抗体は、ポリクローナル抗体である。「ポリクローナル抗体」は、1つ又は複数の他の非同一抗体の中で又は存在下で産生された抗体である。一般に、ポリクローナル抗体は、非同一抗体を産生する幾つかの他のBリンパ球の存在下にてBリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫された動物から直接的に得られる。
【0084】
別の実施形態によると、本発明で使用される抗体、具体的には、ビーズ表面に固定化又は吸着されている抗体は、モノクローナル抗体である。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、ほとんど均質な抗体集団から生じる抗体を指す。より詳しくは、集団の個々の抗体は、最小限の割合で見出すことができる少数の考え得る天然に存在する突然変異を除いて同一である。言い換えれば、モノクローナル抗体は、単一細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核生物宿主細胞、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核生物宿主細胞等)の増殖から生じる均質な抗体集団で構成されており、一般に、ただ1つのクラス及びサブクラスの重鎖並びに1つのタイプのみの軽鎖により特徴付けられる。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に対するものである。
【0086】
「キメラ抗体」は、本明細書で使用される場合、可変領域が、異なる種の定常領域に連結されているか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属するように、定常領域又はその部分が、変更、置換、又は交換されている抗体である。
【0087】
「抗原結合性断片」は、本明細書で使用される場合、抗原に結合する、抗体の領域である。それは、各重鎖及び軽鎖の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインで構成される。
【0088】
本発明の1つの好ましい実施形態によると、抗体は、抗赤血球細胞抗体、抗血小板抗体、ウイルス抗原に対する抗体、細菌抗原に対する抗体、及び寄生虫抗原に対する抗体を含む群から、好ましくは抗赤血球細胞抗体又は抗血小板抗体から選択される。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「抗血小板抗体」又は「血小板抗原の抗体」は、1つ又は複数の血小板抗原に対する1つ又は複数の抗体に関する。好ましくは、本発明で使用される血小板抗原の抗体は、精製若しくは半精製モノクローナル抗体、精製若しくは半精製ポリクローナル抗体、又は抗血清であってもよい。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルス抗原に対する抗体」は、ウイルス抗原に対するものであり、対象の感染時に産生される1つ又は複数の抗体を指す。好ましくは、本発明で使用されるウイルス抗原に対する抗体は、精製若しくは半精製モノクローナル抗体、精製若しくは半精製ポリクローナル抗体、又は抗血清であってもよい。本発明のin vitroデバイスにより検出及び/又は特定される抗ウイルス抗体は、チクングニヤ、サイトメガロウイルス、デング熱、エボラ、EBV、脳炎、ネコ白血病ウイルス、ハンタウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヘルペス、HIV、HTLV、インフルエンザ ラッサ、麻疹、おたふく風邪、ノロウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、風疹、SARS、水痘、西ナイルウイルス、及びジカに特異的な抗原に対する抗体を含む群から選択することができる。特に、HIV、HTLV B型肝炎、又はC型肝炎に対する抗体の検出は、輸血安全性に必須である。特に、本発明のin vitroデバイスは、HIV、B型肝炎、及びC型肝炎、より具体的にはB型肝炎を検出及び/又は特定するために使用される。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「細菌抗原に対する抗体」は、細菌抗原に対するものであり、対象の感染時に産生される1つ又は複数の抗体を指す。好ましくは、本発明で使用される細菌抗原に対する抗体は、精製若しくは半精製モノクローナル抗体、精製若しくは半精製ポリクローナル抗体、又は抗血清であってもよい。こうした抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体であってもよく、特に当業者に周知のモノクローナル抗細菌抗体であってもよい。例えば、そのような抗体は、特に、ボレリア(Borrelia)、クラミジア(Chlamydia)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter Pylori)、ミコプラズマ(Mycoplasma)、S.チフス(S. Typhi)、エルシニア(Yersinia)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas)、エシェリヒア(Escherichia)、クレブシェラ(Klebsiella)、アシネトバクター(Acinetobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、セラチア(Serratia)、プロピオンバクテリウム(Propionibacterium)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、バチルス(Bacillus)、トレポネーマ(Treponema)、及びエンテロコッカス(Enterococcus)に由来するグラム陽性又はグラム陰性の細菌から選択することができる。特に、抗細菌抗体は、トレポネーマ、特に梅毒の原因である梅毒トレポネーマの特異的抗原に対するものである。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「寄生虫抗原に対する抗体」は、寄生虫抗原に対するものであり、対象の感染時に産生される1つ又は複数の抗体を指す。好ましくは、本発明で使用される寄生虫抗原に対する抗体は、精製若しくは半精製モノクローナル抗体、精製若しくは半精製ポリクローナル抗体、又は抗血清であってもよい。本発明で使用される抗寄生虫抗体は、トキソプラズマ(Toxoplasma)、トリパノゾーマ(Trypanosoma)、プラスモジウム(Plasmodium)を含む群から選択される。特に、抗体は、シャガス病の原因であるトリパノスマ・クルージ(Trypanosma Cruzi)の特異的抗原に対するものである。より詳しくは、抗体は、プラスモジウム(Plasmodium)、好ましくは、マラリアの原因であるプラスモジウム・ファクリパラム(Plasmodium facliparum)に対するものである。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「抗免疫グロブリン」は、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE等の、1つ又は複数の免疫グロブリンに対する抗体に関する。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「抗赤血球細胞抗体」又は「赤血球細胞抗原の抗体」は、1つ又は複数の赤血球細胞抗原に対する1つ又は複数の抗体に関する。好ましくは、本発明で使用される赤血球細胞抗原の抗体は、精製若しくは半精製モノクローナル抗体、精製若しくは半精製ポリクローナル抗体、又は抗血清であってもよい。凝集素又はレクチンも使用することができる。
【0095】
本発明で使用される抗体及び抗原の非網羅的リストは、以下の通りである。
【0096】
【0097】
【0098】
上記の列挙されている抗体のほとんどは、出願人Diagast社から購入することができる。本発明の一実施形態によると、ビーズ表面に固定化又は吸着された抗体は、Table 1(表1)の抗体のいずれか1つから選択される抗赤血球細胞抗体である。例えば、抗赤血球細胞抗体は、抗体である抗A、抗B、抗AB、抗D、抗RH2、抗RH3、抗RH4、抗RH5et抗Kell、抗MNS(MNS1、2、3、及び4)、抗JK(JK1、JK2)、抗FY(FY1、FY2)、抗LE(LE1、LE2)、抗LU(LU1、LU2)、及び抗P1PKを含む群から選択することができる。
【0099】
本発明の状況では、用語「抗原」は、抗体が選択的に結合することができる所定の分子に関する。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、糖タンパク質、又は糖脂質、又は任意の他の天然に存在するか若しくは合成の化合物であってもよい。好ましくは、標的抗原は、ポリペプチド、糖タンパク質、又は糖脂質である。
【0100】
本発明の1つの好ましい実施形態によると、抗原は、赤血球細胞抗原(Table 1(表1)に列挙されているような)、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から、より好ましくは、赤血球細胞抗体又はウイルス抗原から選択される。好ましくは、本発明で使用される抗原は、精製又は半精製された天然抗原、組換え又は合成抗原であってもよい。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルス抗原」は、菌株特異的であり、ウイルス粒子と緊密に付随する複数の抗原性を有する抗原に関する。この抗原は、天然又は組換えタンパク質であってもよい。ウイルス抗原は、例えば、チクングニヤ、サイトメガロウイルス、デング熱、エボラ、EBV、脳炎、ネコ白血病ウイルス、ハンタウイルス、A型肝炎、B型肝炎(HBsAg)、C型肝炎(HCsAg)、D型肝炎、E型肝炎、ヘルペス、HIV、HTLV、インフルエンザ ラッサ、麻疹、おたふく風邪、ノロウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、風疹、SARS、水痘、西ナイルウイルス、及びジカに特異的な抗原を含む群から選択される。特に、本発明は、抗原HBsAg及びHCsAgの特定及び/又は検出に、より具体的にはHBsAgに関する。それは、抗原HBsAg及びHCsAgが、輸血安全性に必須であるからである。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「細菌抗原」は、細菌生物の表面に見出される分子に関する。細菌抗原は、細菌菌株のいずれか1つから選択することができるが、好ましくは、ボレリア、クラミジア、ヘリコバクター・ピロリ、ミコプラズマ、S.チフス、エルシニア、プロテウス、シュードモナス、エシェリヒア、クレブシェラ、アシネトバクター、セラチア、クロストリジウム、プロピオンバクテリウム、スタフィロコッカス、バチルス、及びエンテロコッカスから選択される。特に、梅毒の原因である細菌梅毒トレポネーマの特異的抗原が検出及び/又は特定されもよく、又はビーズ表面に固定化及び/又は吸着されていてもよい。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「寄生虫抗原」は、寄生虫細胞の表面に見出される分子に関する。寄生動物は、上記で規定されている通りであってもよい。好ましくは、寄生虫抗原は、トキソプラズマ、トリパノゾーマ、プラスモジウムに特異的な抗原、より好ましくは、プラスモジウムに特異的な抗原、特にマラリアを引き起こす熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に特異的な抗原を含む群から選択される。
【0104】
抗原、並びにウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原に対する抗体の非網羅的リストは、下記のTable 2(表2)に示されている。
【0105】
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「血小板抗原」は、血小板の表面に存在する全ての免疫原性分子に関係し、必要に応じて、こうした分子に対する抗体の産生を引き起こすことができ、及び/又はそれらの認識を可能にすることができる血小板の抗原に関する。血小板抗原は、例えば、二対立遺伝子抗原HPA-1、-2、-3、-4、-5、及び-15を含む群から選択することができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、血液型の抗原としても知られている用語「赤血球細胞抗原」は、赤血球細胞の表面に存在する全ての免疫原性分子に関し、必要に応じて、こうした分子に対する抗体の産生を引き起こすことができ、及び/又はそれらの認識を可能にすることができる。赤血球細胞抗原としては、部分凝集集団抗原が挙げられる。赤血球細胞抗原の非網羅的リストは、Table 1(表1)に示されている。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「部分凝集集団」は、ドナーとレシピエントとの間の適合性赤血球細胞による輸血(O型赤血球細胞がA型患者又はB型患者に輸血される)後、又は骨髄移植後に観察される場合がある、異なる抗原を有する2つの赤血球細胞の集団に関する。本発明のin vitroデバイスは、部分凝集集団を有する試料の検出を可能にする。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「in vivo感作赤血球」は、in vivoにてそれらの膜表面に免疫グロブリン(IgG)又は補体(C3d)が結合している赤血球細胞に関する。in vivo感作赤血球は、溶血性輸血反応、胎児及び新生児溶血性疾患(HDFN)、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、並びに患者の薬物誘発性抗体を含む、様々な臨床溶血状態において出現する場合がある。
【0110】
本発明の別の実施形態によると、前記抗体及び/又は抗原は、ビーズ表面に直接的又は間接的に固定化又は吸着されている。
【0111】
現在のところ、単純なポリマービーズへの吸着、表面官能化マイクロスフェアへの共有結合による付着を含む、免疫学的試験及びアッセイにて固相支持体として使用されるビーズに生物学的リガンドを付着させるための手段は幾つか存在する。吸着の機序は、主として、吸着されるリガンドの疎水性部分とビーズのポリマー表面との間の疎水性(ファンデルワールス型、ロンドン型)引力に基づく。これは、主として、非常に活性で安定なビーズ試薬が必要とされる場合、生体分子を固定化するための共有結合カップリングで構成される手段であるが、間接的固定化は、目的の抗原に対する二次抗体を捕捉するビーズに共有結合で固定化されているか又は吸着されている、抗ヒトグロブリン(AHG)等の抗免疫グロブリンにより媒介される。
【0112】
抗体及び/又は抗原がビーズ表面に直接的に固定化又は吸着される場合、それは、ビーズを抗体及び/又は抗原と接触させることにより実施される。例えば、抗体及び/又は抗原を含む溶液は、pH4~pH10に、好ましくはpH6.5~pH7.8に、更により好ましくはpH7~pH7.5に安定化されたpH溶液を含む、非変性緩衝液であってもよい。抗体は、吸着されているか又は共有結合で連結されているかのいずれであってもよい。
【0113】
抗体溶液は、培養上清又は上清の濃縮液、精製抗体、半精製又は濃縮抗体から選択される。抗原溶液は、精製又は半精製天然抗原、組換え又は合成抗原から選択される。抗体及び/又は抗原は、アジ化ナトリウム、抗生物質等の、それらの微生物学的安定性を維持するための、及び糖(スクロース、デキストロース、トレハロース)等の、その立体構造安定性を維持するための助剤に、並びにそうした機能を発揮することが当業者に公知である任意の他の作用剤に加えることができる。
【0114】
一実施形態によると、ビーズ表面は、アルデヒド基、クロロメチル基、NHS基、及びカルボキシル基から選択される少なくとも1つの化学基を含む。
【0115】
特に、ビーズ表面がアルデヒド基を含む場合、この基は、決定及び/又は特定しようとする抗原に対する抗体との直接的な固定化を可能にする抗体、又はビーズの表面に間接的に固定化(下記に記載)された抗体のアミノ基と反応する。抗原を固定化する場合、この基は、決定及び/又は特定しようとする抗体により認識される抗原の直接的固定化を可能にする抗原のアミノ基と反応する。
【0116】
別の特定の実施形態では、ビーズ表面は、NHS基(又はN-ヒドロキシサクシニミド(NHS)官能基とも呼ばれる)を含み、好ましくは、NHS-エステル官能基を含む。
【0117】
本発明の別の実施形態によると、決定及び/若しくは特定しようとする抗原又は既知抗原に対する抗体を、別の抗体、例えば抗免疫グロブリンを介してビーズ表面に間接的に固定化してもよい。そのような抗免疫グロブリンは、好ましくは、免疫グロブリン、より好ましくはIgM又はIgGに対するものである。この場合、ビーズ表面がアルデヒド基を含む場合、抗免疫グロブリンのアミノ基がアルデヒド基と反応し、この様式で抗免疫グロブリンがビーズ表面に固定化される。その後、決定及び/又は特定しようとする抗原に対する抗体を、タンパク質間相互作用により抗免疫グロブリンに固定化する。
【0118】
更に別の実施形態によると、決定及び/若しくは特定しようとする抗原又は既知抗原に対する抗体を、プロテインA、プロテインG、及び/又はプロテインL等の、抗体に対して親和性を有するタンパク質から選択されるリガンドを介して、ビーズ表面に間接的に固定化することができる。
【0119】
本発明のin vitroデバイスの多孔性膜に堆積させるビーズは、ガラス、ポリマー等の様々なタイプの材料、特にラテックスで実施してもよい。好ましくは、ビーズは、ガラスビーズ、COOH官能化ポリスチレンビーズ、プロテインA/G及び/若しくはL官能化アガロースビーズ、NHS官能化アガロースビーズ、エポキシ官能化ビーズ、クロロメチル官能化ラテックスビーズ、又はアルデヒド官能化ビーズの群から選択される。
【0120】
より好ましくは、ビーズは、ラテックスビーズ、特にアルデヒド官能化ラテックスビーズである。
【0121】
一実施形態によると、ビーズは、多孔性膜の親水化反応領域に加える溶液に対して1%~10%、好ましくは1%~5%、より好ましくは2%~6%又は1%~3%に含まれる濃度、更により好ましくは3%で使用される。前記溶液の、加える容積は、1~100μl、好ましくは1~50μl、より好ましくは5~50μl、及び更により好ましくは1~10μl又は5~10μlに含まれる。
【0122】
ビーズのサイズは、疎水性多孔性膜の細孔のサイズの関数として選択される。ビーズのサイズは、ビーズが多孔性膜に吸収されることを回避するため、多孔性膜の細孔のサイズよりも大きくなければならないしかしながら、ビーズのサイズは、凝集現象を回避するため、大き過ぎてはいけない。当業者であれば、多孔性膜の細孔のサイズに応じてビーズのサイズを選択することができるだろう。
【0123】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビーズのサイズは、1μm~130μm、好ましくは5μm~20μmに含まれ、より好ましくは9μmである。
【0124】
本発明によるin vitroデバイスの一実施形態によると、多孔性膜は、0.4mm~2mm、好ましくは0.6mm~1.5mmに含まれる厚さを有する。
【0125】
疎水性多孔性膜は、水性溶媒により変更されない任意の材料を含んでいてもよい。この材料は、特に、例えば、ニトロセルロースポリマー、セルロース等の、化学的に修飾されているか若しくはされていない天然ポリマーから、又は例えば、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)等の合成ポリマーから、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素化ポリマーから選択することができ、好ましくはポリエチレンであってもよい。こうしたポリマーは、後に使用される捕捉剤との連結を創出することが可能な試薬基で官能化されていてもよく又はされていなくともよい。
【0126】
疎水性多孔性膜は、ビーズが堆積される少なくとも1つの親水性反応領域を含む。反応領域は、疎水性多孔性膜の表面よりも小さい表面を有する。すなわち、膜は、完全には親水化されてはいけない。
【0127】
多孔性膜の親水性反応領域は、好ましくは、疎水性多孔性膜を事前の化学的又は物理的処理により多孔性基材の化学的機能を修飾することなく、界面活性剤を局所的に添加することにより親水化されている。
【0128】
本発明の状況では、用語「界面活性剤」は、任意の親水化剤、すなわち、試験される分析物を含む試料を毛管現象により通過させるのに十分な程度に疎水性膜を親水性にすることが可能な任意の物質を意味する。
【0129】
使用される界面活性剤は、天然界面活性剤、化学的に修飾された天然界面活性剤から選択することができるか、又は化学合成により得ることができる。好ましくは、これは、非イオン性界面活性剤、例えば、Triton X-100、Tween 20、又はサポニン、ポリオキシエチレン、又はノニル-β-Dグルコシドである。
【0130】
界面活性剤は、水性溶液又はエタノール等の有機溶媒で、0.01~5%(重量/容積)の濃度に希釈してもよい。好ましくは、膜を局所的に親水性にするために使用される界面活性剤は、0.1%~3%、より好ましくは0.5~2%、及び更により好ましくは0.5~1%(重量/容積)の濃度で使用される。
【0131】
疎水性多孔性膜を親水化にするために、0.1~5μl、好ましくは0.3~3μl、より好ましくは0.5~2μlの、界面活性剤を含む溶液を膜に加える。
【0132】
したがって、一実施形態によると、疎水性多孔性膜の親水性反応領域は、好ましくは、溶液に対して0.01~5重量/容積%、より好ましくは0.1重量/容積%~3重量/容積%、更により好ましくは0.5重量/容積%~2%重量/容積%に含まれる濃度で使用される界面活性剤により親水性にされ、界面活性剤を含む前記溶液の0.1~5μl、好ましくは0.3~3μl、及びより好ましくは0.5~2μlを、疎水性多孔性膜に加える。
【0133】
使用される界面活性剤の濃度は、膜の他の特徴(特に多孔度及び厚さ)に相関し、膜を通過する液体の運動速度を制御する。捕捉要素を受け取るための膜を親水化するためには、Triton X-100の場合は0.1%及びTweenの場合は0.05%の最大用量を超える必要はないことが一般に認められる。しかし、本発明による膜の特定の特徴のため、この膜を局所的に親水性にすることが可能な界面活性剤は、特にTriton X-100又はTween-20の場合、領域の反応性を妨害せずに最大5%、好ましくは最大3%で使用することができ、そのため、膜の親水化がより容易である。
【0134】
同じ疎水性膜が幾つかの親水性反応領域を含んでいてもよいが、その場合そうした領域は交差しない。
【0135】
反応領域は、いかなる幾何学的形態であってもよいが、好ましくは、直径が0.3mm~20mmの円又はスポットの形態であってもよい。
【0136】
反応領域は、多孔性膜の厚さ全体にわたって及び/又は表面が親水性であってもよい。
【0137】
反応領域は、親水化の度合いが一様であってもよく、つまり反応領域は、同じ度合いの親水化を有する。
【0138】
一実施形態によると、反応領域は、親水化の度合いが異なる幾つかの領域を含んでいてもよい。例えば、反応領域は、反応領域の中心部の親水化の度合いが周辺部よりも大きい2つの親水性領域を含んでいてもよい。こうした親水性領域は、好ましくは、膜の表面にのみ存在する。
【0139】
また、反応領域は、一方は表面にあり、他方は厚みの中にある、親水化の度合いが異なる2つの親水性領域を含んでいてもよい。
【0140】
反応領域が2つの親水性領域を含む場合、反応領域は、多孔性膜の事前の化学的又は物理的処理により多孔性基材の化学的機能を修飾することなく、2つの異なる界面活性剤を用いて親水化されている。
【0141】
有利には、反応領域が、特に表面に親水化の異なる2つの区域を有する構成は、血液又は血液成分の試料から部分凝集集団を検出する場合に有用である。また、この構成は、試験しようとする試料中の特定の抗体及び/又は抗原を検出及び/又は特定するのに特に適している。
【0142】
一実施形態によると、本発明のin vitroデバイスは、多孔性膜の真下に配置されている吸収層(又は吸収膜とも呼ばれる)を含んでいてもよい。この層は、特に反応領域が膜の厚さ全体にわたって親水性である場合、多孔性膜により保持されない、反応領域のレベルに加えた液体を吸収する。
【0143】
吸収層は、吸収紙、セルロース等の、毛細管現象による受動吸収を可能にするか、又は吸収性ポリマーで作られている材料を含んでいてもよい。例として、吸収層として使用される製品は、以下のものを引用することができる。
- MerckMillipore(登録商標)C048、C068、C083、C248(Merck社)
- Whatman(登録商標)CF3、CF4、CF10、グレード470、CF5、CF6、CF7、グレード900、グレード300
- Ahlstrom(登録商標)グレード601、642、631、238、237、222、243、320(Munktell社)
- Pallグレード111、113、133、165、197、8975、8964、8301(Pall Corporation社)、Direct Collection, Storage, and Efficient Rapid Release of Biological Samples for Clinical Diagnostics Accuwik(登録商標)Ultra用の膜
- クリニスGelmax(登録商標)超吸収性パッド
- Mc Arlaid T-499、SCP-300-TCF、T-089、T-183-5、及びSCP-200-TCF
【0144】
吸収膜の組成及びその寸法は、それらが、試験中に使用される溶液(Vtotal、μlで表される)を全て吸収することができるように選択されなければならない。各膜は、吸収能力(C、μl/cm2で表される)により特徴付けられており、膜及びその寸法(D、cm2で表される)は、以下の数式:D>Vtotal/Cを満たすように選択される。
【0145】
一実施形態によると、本発明のin vitroデバイスは、多孔性疎水性膜と吸着層との間に配置されており、排水性材料で作られている少なくとも別の層も含む。排水性材料は、例えば、脱脂綿、NA7150PES、NT9610HY、NT9750HY NV170F、NV250F、NV340F、(Subrenat社)、又はPacktex HY050B等である。
【0146】
多孔性膜並びに任意選択で吸収層及び排水層は、デバイスの支持体に配置されている。
【0147】
本発明によるin vitroデバイスの支持体は、好ましくは剛性支持体である。それは、例えば、シェルであってもよい。
【0148】
支持体は、好ましくは、液体を逃がさない剛性材料を含む。これは、特に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、メチルポリメタクリレート等のプラスチック材料であってもよい。
【0149】
本発明のin vitroデバイスの支持体は、好ましくは、2つの部分:疎水性多孔性膜、排水層、及び吸収層が配置されている下部部分、並びに下部部分を覆う上部部分を含む。
【0150】
好ましくは、支持体の下部部分の表面には、疎水性多孔性膜が配置されている吸収層が配置されている。より好ましくは、吸収層と多孔性膜との間に排水層が配置されている。更により好ましくは、支持体の下部部分の表面には、発泡体の層が配置されており、その上に吸収層、次いで排水層が堆積されており、その上に、その表面が膜の表面よりも小さい少なくとも1つの親水性反応領域を含む疎水性多孔性膜が堆積されており、反応領域の上に、それらの表面に抗体が固定化及び/又は吸着されているビーズが堆積されている(
図1a及び
図1b)。
【0151】
支持体の上部部分は、疎水性多孔性膜等の下部部分を覆い、他の層が支持体に存在する場合、他の層のいずれか1つ又は全てが、支持体に包まれていてもよい。
【0152】
支持体の上部部分は、好ましくは、少なくとも1つ又は複数の開口部を含む。この開口部は、親水性反応領域に加える試料の収集領域に相当する。親水性領域は、2つの親水性領域が膜上の疎水性領域により常に隔てられている限り、開口部の底部のサイズと同一のサイズであってもよく、より小さくてもよく、又はより大きくてもよい。
【0153】
収集領域は、反応膜に加える試験しようとする試料又は反応混合物の少なくとも最大容積を含有することができるようなサイズでなければならない。
【0154】
一実施形態によると、本発明のin vitroデバイスの様々な部品は、キットとして供給される場合、ユーザが組み立ててもよい。デバイスは、一体型で供給することもできる。
【0155】
上記に示されているように、本発明のin vitroデバイスは、抗体を検出及び/又は特定することもできる。
【0156】
一実施形態によると、抗体の検出は、ビーズ表面に固定化及び/又は吸着されている特異的な既知抗原の結合により実施される。生物学的液体の試料中の特定及び/又は決定しようとする抗体は、既知抗原と特異的に結合することができる。この結合の検出は、前記抗原に対して特異的な抗体を検出することを可能にする。
【0157】
本発明の別の実施形態によると、抗体の検出は、試験しようとする試料に存在する別の抗体(検出及び/又は特定しようとする)に結合することができる抗免疫グロブリンである抗免疫グロブリン(抗体)をビーズ表面に固定化又は吸着させることにより実施することができる。その後、顕色剤、例えばこの抗体と特異的に結合する標識抗原を使用することにより、第2の抗体を検出及び/又は特定することになる。
【0158】
本発明の別の実施形態によると、抗体の検出は、試験しようとする試料に存在する抗体(検出及び/又は特定しようとする)に結合することができる抗体に対して親和性を有するタンパク質をビーズ表面に固定化又は吸着させることにより実施することができる。その後、顕色剤、例えばこの抗体と特異的に結合する標識抗原を使用することにより、抗体を検出及び/又は特定することになる。
【0159】
一実施形態では、抗赤血球細胞抗体を決定及び/又は特定する場合、ビーズには、血液試料、特に血清又は血漿中の循環抗赤血球細胞抗体を捕捉することになる抗免疫グロブリン(抗IgG及び/又は抗IgM)を固定化又は吸着させる。こうした抗体の顕色及び特定は、対応する抗原を保持する赤血球細胞を使用して実施することができる。
【0160】
一実施形態では、抗赤血球細胞抗体を決定及び/又は特定する場合、ビーズには、in vivo感作赤血球細胞の表面に存在する抗赤血球細胞抗体を捕捉することになる抗免疫グロブリン(抗IgG及び/又は抗IgM)を固定化又は吸着させる。こうした抗体の顕色及び特定は、in vivo感作赤血球自体により実施される。
【0161】
一実施形態では、ビーズには、IgM型抗赤血球細胞抗体のin vivo固定化による補体の活性化に起因するin vivo補体-感作赤血球を捕捉することになる抗C3d抗体を固定化又は吸着させる。こうした抗体の顕色及び特定は、in vivo感作赤血球自体により実施される。
【0162】
同じ原理を、感染が疑われる試験される対象の血液中を循環するウイルス抗原、細菌抗原、又は寄生虫抗原に対する抗体に、例えば、対応する抗原とカップリングされた第2のセットの有色ビーズ、又は酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)若しくはコロイド金ナノ粒子とコンジュゲートされた抗体等の、例えば、様々な系の顕色を使用して、適用することができる。
【0163】
本発明のin vitroデバイスは、生物学的液体の試料から、抗原及び/又は抗体を決定及び/又は特定するためのものである。
【0164】
本発明の状況では、用語「生物学的液体の試料」は、生体生物により産生される生物有機液体から得られる任意の試料に関する。生物学的液体は、細胞外液、血管内液、間質液、リンパ液、及び細胞透過液を含む群から選択される。特に、生物学的液体の試料は、血液及び血液成分、尿、唾液等を含む群から選択される。
【0165】
より好ましい実施形態では、生物学的液体の試料は、血液の試料又は血液成分の試料である。「血液の試料」又は「血液成分の試料」は、全血、又は特に赤血球画分、白血球画分、血小板、血漿、又は血清から選択されるその成分の1つを意味する。
【0166】
特に、本発明のin vitroデバイスが、赤血球細胞抗原及び/又はそうした抗原に対する抗体を検出及び/又は特定するために使用される場合、試料は、血液試料又は血液成分の試料である。
【0167】
特に、本発明のin vitroデバイスが、ウイルス抗原、細菌抗原、若しくは寄生虫抗原、及び/又はそうした抗原に対する抗体を検出及び/又は特定するために使用される場合、試料は、血液試料又は血液成分の試料である。
【0168】
上記に記載のような試料は、任意の生物から、特に哺乳動物から、及びより詳しくはヒトから得ることができる。
【0169】
好ましい実施形態
本発明によるin vitroデバイスの種々の基本要素に対応する種々の好ましい特定の特徴は、上記のその要素に特に関係するセクションに記載されている。本発明の状況では、特定の要素の適切な特徴の各リスト、及び特定の要素について開示された各々の特定の特徴は、任意の基本的な他の要素、前記他の要素の適切な特徴のリスト、又は前記他の要素について開示された任意の特定の特徴と組み合わせることができる。
【0170】
特に、本発明によるin vitroデバイスの要素の好ましい実施形態は、任意の基本的な他の要素、又は前記他の要素の好ましい実施形態と組み合わせることができる。
【0171】
好ましい実施形態は、少なくとも1つの要素が、下記のTable 3(表3)に列挙されているような好ましい実施形態に限定されているものに相当する。
【0172】
【0173】
本発明のin vitroデバイスの使用
本発明のin vitroデバイスは、生物学的液体の試料から、抗原及び/又は抗体を検出及び/又は特定するために使用することができる。
【0174】
上記に示されているように、このデバイスは、ビーズ表面に固定化又は吸着されている抗体及び/又は抗原に応じて、任意の抗原及び/又は任意の抗体を検出及び/又は特定するために好適である。
【0175】
本発明者らは、本発明のin vitroデバイスが、血液細胞抗原に対する抗体、及びウイルス、細菌、又は寄生虫に特異的な少なくとも1つの抗原に対する抗体等の、ビーズ表面に固定化されている構造的差異を有する抗体を用いた使用に好適であることを実証するために研究を実施した。例えば、試験される抗体は、それぞれC型肝炎及びB型肝炎を引き起こすHCV(HCsAg)又はHBV(HBsAg)の抗原に対する抗体であり、前記抗体は、それぞれの引用された抗原を検出及び/又は特定するために、ビーズ表面に固定化又は吸着されていてもよい。好ましくは、前記抗体は、抗原HBV(HBsAg)に対する抗体である。
【0176】
特に、本発明者らは、本発明のin vitroデバイスが、生物学的液体から、特に血液の試料又は血液成分の試料から、赤血球細胞、ウイルス、細菌、及び寄生虫の抗原及び/又は抗体を検出及び/又は特定するのに有用であることを実証した。
【0177】
したがって、別の態様によると、本発明は、
- 部分凝集集団を含む赤血球細胞抗原、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される少なくとも1つの抗原、
- 抗赤血球細胞抗体、抗血小板抗体、抗ウイルス抗体、抗細菌抗体、及び抗寄生虫抗体を含む群から選択される少なくとも1つの抗体
を、生物学的液体の試料から、好ましくは血液の試料又は血液成分の試料から決定及び/又は特定するための本発明によるin vitroデバイスの使用に関する。
【0178】
上記に示されているように、ビーズ表面に固定化又は吸着されている抗体又は抗原のタイプに依存して、様々なタイプの抗原又は抗体を、本発明のin vitroデバイスにより検出及び/又は特定することができる。
【0179】
特に、本発明のin vitroデバイスは、赤血球細胞抗原、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群の抗原を検出及び/又は特定するために使用される。より詳しくは、デバイスは、赤血球細胞抗原を検出及び/又は特定するために使用される。
【0180】
本発明のin vitroデバイスは、特に、赤血球細胞を決定及び/又は特定(又は更に表現型判定)するために、すなわち、それらの表面にある抗原を決定するために使用することができる。赤血球細胞の表現型判定は、通常、血液型を決定及び/又は特定することを意味する。本発明の状況では、用語「血液型」は、例えば、ABO式血液型、D式血液型、Rh式血液型、ケル式血液型、MNS式血液型、JK(キッド)式血液型、FY(ダフィー)式血液型、LE(ルイス)式血液型、LU(ルーテル)式血液型、P1PK式血液型から選択される群に関する。
【0181】
本発明のin vitroデバイスは、自己抗体、同種抗体、異種抗体、及び寒冷抗グロブリン(cold antiglobulin)を含む抗赤血球細胞抗体(又は抗血液細胞抗体とも呼ばれる)の群から選択される抗体を検出及び/又は特定するためにも使用される。特に、こうした抗体は、血液の試料又は血液成分の試料から検出及び/又は特定される。
【0182】
本発明のin vitroデバイスは、特に、以下のために使用される。
- 抗A(抗ABO1)抗体又は抗B(抗ABO2)抗体の存在を特定するSimonin-Michon試験、
- 間接抗グロブリン試験により同種抗体、自己抗体、異種抗体、又は更に寒冷凝集素を探索する点での、細胞抗原、特に赤血球細胞に対する抗体の探索又は特定、
- 交差適合反応の実施によるドナーの赤血球細胞とレシピエントの血液との適合性の探索、
- 直接抗グロブリン試験による、in vivoで赤血球細胞に固定化された抗体の探索。
【0183】
本明細書で使用される場合、用語「同種抗体」は、同じ種の遺伝学的に異なる個体に由来する1つ又は複数の抗原と反応する、対象により産生される1つ又は複数の抗体に関する。そうした同種抗体は、輸血後、妊娠中、移植又はグラフト後の免疫化により産生される。
【0184】
本明細書で使用される場合、用語「自己抗体」は、同じ対象の1つ又は複数の抗原に対する、対象から産生される1つ又は複数の抗体に関する。自己抗体の検出は、好ましくは、輸血後に、又は溶血性貧血(自己免疫、薬物誘発性、又は輸血後)の場合に実施される。
【0185】
本明細書で使用される場合、用語「異種抗体」は、別の種に由来する1つ又は複数の抗原に対する、対象から産生される1つ又は複数の抗体に関する。
【0186】
本明細書で使用される場合、用語「寒冷凝集素」は、低温で赤血球凝集を引き起こす抗体に関する。
【0187】
本明細書で使用される場合、用語「交差適合反応」は、ドナーの赤血球細胞が、意図されているレシピエントの血液又は血漿と適合性であるか否かを決定するために、輸血前に実施される試験に関する。
【0188】
in vitroデバイスにより検出及び/又は特定される抗ウイルス抗体、抗細菌抗体、及び抗寄生虫抗体は、対象の感染時にウイルス抗原、細菌抗原、又は寄生虫抗原に対して産生される免疫抗体である。
【0189】
本発明のin vitroデバイスは、1つ又は複数のウイルス抗原、細菌抗原、又は寄生虫抗原の存在を決定することにより、病原体因子の存在を検出するためにも使用することができる。
【0190】
本発明の方法
本発明のin vitroデバイスは、部分凝集集団、in vivo感作赤血球細胞(C3d陽性細胞とも呼ばれる)、血小板抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原を含む赤血球細胞抗原を含む群から選択される抗原を検出及び/又は特定するための、或いはin vivo感作赤血球(IgG陽性細胞)を含む抗赤血球細胞抗体、及び/又は抗血小板抗体、及び/又は血液中に存在する、対象の感染時にウイルス抗原、細菌抗原、若しくは寄生虫抗原に対する抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法での使用に特に好適である。
【0191】
したがって、別の態様によると、本発明は、血液の試料又は血液成分の試料から、部分凝集集団を含む赤血球細胞抗原及び/又はin vivo感作赤血球細胞(C3d陽性細胞)及び/又は血小板抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 前記試料を含む溶液を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、及び
- すすぐ前に試料ロード対照について読み取るステップ、
- すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗原若しくは血液細胞が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在しないと決定することにより前記抗原又は血液細胞が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法に関する。
【0192】
一実施形態によると、ビーズを含む反応領域上に試験しようとする試料を加える前に、既に親水化された反応領域を緩衝液で水和させることが可能である。この緩衝液は、pH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、特にpH7~pH7.5の安定したpH及び250mOsm~800mOsm、好ましくは300mOsm~600mOsmのオスモル濃度の溶液を含んでいてもよい。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(0.01から0.05質量/容積%までのTween 20)、飽和剤(BSA)、及び/又は抗原-抗体反応を起こすことが可能な作用剤を含んでいてもよい。緩衝液は、任意選択で、例えば、パパイン又はブロメライン等の酵素を添加することにより得られるプロテアーゼ活性を有していてもよい。この緩衝液は、任意選択で、反応を起こすために及び赤血球細胞と捕捉要素とのより長期接触を維持するために、ポリブレン又はポリリジン等のポリカチオン性作用剤を含んでいてもよい。
【0193】
したがって、上記のin vitroの方法は、任意選択で、試験される試料を添加する前に多孔性膜を水和するステップを含む。
【0194】
また、別の実施形態によると、上記のin vitroの方法は、表現型判定しようとする赤血球細胞を緩衝溶液で、例えばpH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、特にpH7~pH7.5の安定したpH及び250mOsm~800mOsm、好ましくは300mOsm~600mOsmのオスモル濃度の溶液を含む緩衝液等の、添加剤を任意選択で含む免疫-血液学的反応に有利であることが知られている緩衝溶液で希釈する別の任意選択のステップを含む。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(特に、0.01から0.05質量/容積%までのTween 20)、飽和剤(例えば、BSA)、及び/又は抗原-抗体反応を起こすことが可能な作用剤を含んでいてもよい。この緩衝液は、任意選択で、例えば、パパイン又はブロメライン等の酵素を添加することにより得られるプロテアーゼ活性を有していてもよい。この緩衝液は、任意選択で、反応を起こすために及び血球と捕捉要素とのより長期接触を維持するために、ポリブレン又はポリリジン等のポリカチオン性作用剤を含んでいてもよい。
【0195】
更に別の実施形態によると、上記に記載の本発明の方法は、任意選択で、試験される試料を、反応領域に加える前に、好ましくは15~40℃、特に18℃~37℃の温度で、2秒間から30分間まで、特に1分間から20分間までの期間にわたってインキュベートする追加のステップを含む。
【0196】
同様に、結果を読み取るために、緩衝液すすぎのステップを実行することが必要である。洗浄緩衝液は、好ましくは、PBS、TBS、又は2~10、好ましくは5~9のpHの生理食塩溶液を含む。緩衝液のオスモル濃度は、赤血球細胞の溶血を回避するように制御されなければならない。緩衝液は、捕捉剤(ビーズ表面に固定化及び/又は吸着されている抗体)に直接的に又は間接的に固定化されている顕色剤又は有色分析物が離脱しないように選択しなければならない。驚くべきことに、本発明によるin vitroデバイスを使用する場合、NaCl等の塩性作用剤又は例えばグリシン若しくはタウリン等の非イオン性オスモライト(osmolite)の存在により得られるわずかに高浸透圧性洗浄溶液(すなわち、300mOsm~800mOsm)を使用することが望ましい。この緩衝液は、任意選択で、顕色剤の色とは対照的な色で着色されていてもよい。例えば、顕色剤が赤血球細胞である場合、洗浄緩衝溶液は、青色又は緑色に着色されていてもよい。バックグラウンドノイズを除去するために、低用量の界面活性剤を洗浄溶液に添加することも可能である。こうした界面活性剤は、好ましくは、非イオン性界面活性剤、具体的には糖のエステル、特にソルビタンのポリオキシエチレンエステル(Tween)である。
【0197】
in vitroデバイスの使用中、液体は、特に、ピペットシステムにより又は毛細管現象複製システム(capillarity replication system)により加えることができる。
【0198】
前記in vitroの方法では、本発明によるin vitroデバイスの多孔性膜の反応領域の親水化は、厚さ親水化、つまり、多孔性膜の厚さ全体にわたって実施される親水化であってもよい。
【0199】
親水化は、0.1μl~5μl、好ましくは0.3μl~3μl、及びより好ましくは0.5μl~2μlの容積中、0.01質量/容積%~5質量/容積%、好ましくは0.1質量/容積%~3質量/容積%、好ましくは0.5質量/容積%~2質量/容積%の濃度のTriton X100の水溶液により実施することができる。
【0200】
一部の応用では、Tritonが使用される場合、多孔性膜の親水化は部分的であってもよく、すなわち膜の厚さ全体にわたっては行われていない。
【0201】
試料に存在する赤血球細胞が、ビーズ表面に固定化又は吸着されている特異的抗体により認識される抗原(赤血球細胞の抗原又はin vivo感作赤血球細胞に固定化された抗体)を保持する場合、赤血球細胞は、すすぎを行っても、反応領域に配置されているビーズ表面に固定されたままであり、反応領域は赤色又はピンク色のままである。試料に存在する赤血球細胞が、ビーズ表面に固定化又は吸着されている抗体により認識される抗原を保持しない場合、赤血球細胞は、すすぎ溶液により洗い流され、反応領域は無色のままである。
【0202】
結果の読取りは、目視であってもよく、又は自動であってもよい。
【0203】
in vivo感作赤血球の検出及び/又は特定は、赤血球細胞の表面に吸着されている自己抗体又は同種抗体の検出を可能にする。特に、この検出は、それらの膜に固定化されているIgG又はC3d(その形成は、IgMにより誘導される)により、試験しようとする赤血球細胞を捕捉することになる抗免疫グロブリン(抗IgG)又は抗C3d抗体(IgMに対する)にカップリングされているビーズの使用に基づく。
【0204】
本発明によるデバイスには、遠心分離も、撹拌も、減圧も、特別なデバイスも必要としないという利点がある。また、本発明によるデバイスは、完全に自律的に手動で使用することができ、ロボットで容易に自動化することができる。
【0205】
更に、本発明者らは、本発明のin vitroデバイスを、生物学的液体の試料から、特に血液又は血液成分の試料から、抗赤血球細胞抗体(同種抗体、自己抗体、及び寒冷凝集素)を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法に使用することができることも実証した。
【0206】
したがって、本発明の別の態様は、血液の試料又は血液成分の試料から、抗赤血球細胞抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 試験しようとする試料を、緩衝液及び表現型が既知の赤血球細胞試剤と共にインキュベートするステップ、
- 混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に加えるステップ、
- すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗体/抗原反応が存在すると決定することにより抗赤血球細胞抗体が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗体/抗原反応が存在しないと決定することにより前記抗体が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法に関する。
【0207】
インキュベートステップは、赤血球細胞を凝集させることが可能な作用剤の存在下で、4~40℃の温度にて、3~60分間、好ましくは5~30分間の期間にわたって実施することができる。当業者であれば、検出及び/又は特定しようとする抗体に応じて、温度を決定することができるだろう。
【0208】
インキュベートステップで使用される緩衝液は、LISS緩衝液(例えば、50mM未満のNaClを含む)等の、イオン力の低い緩衝液である。
【0209】
この方法の一実施形態によると、赤血球細胞を凝集させることが可能な作用剤、例えば、ヘキサジメトリンブロミドの溶液、好ましくは0.01~2%(質量/容積)、更により好ましくは0.05~0.5%の溶液中濃度のヘキサジメトリンブロミドを、インキュベーションのステップで得られる混合物に添加してもよい。ヘキサジメトリンブロミドは、赤血球細胞凝集を促進する。
【0210】
抗赤血球細胞抗体を検出及び/又は特定するための方法の別の実施形態によると、赤血球細胞を凝集させることが可能な作用剤を加えた後で、ヒト抗グロブリン又は抗補体試薬を反応領域に加えてもよい。
【0211】
反応領域をすすぐために使用されるすすぎ溶液は、例えば、pH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、好ましくはpH7~pH7.5の安定したpH及び300mOsm~800mOsmのオスモル濃度の高張性生理食塩溶液等であってもよい。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(例えば、Tween 20 0.01~0.05質量/容積%)及び赤色(青色又は緑色)と対照的な色の色素を含んでいてもよい。
【0212】
加えようとする試料は、pH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、特にpH7~pH7.5の安定したpH及び250mOsm~800mOsm、好ましくは300mOsm~600mOsmのオスモル濃度の溶液を含む緩衝液で希釈されているか又は希釈されていない血漿、血清、又は全血若しくは血液成分であってもよい。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(例えば、Tween 20 0.01~0.05質量/容積%)、飽和剤(特に、BSA)、及び/又は抗原-抗体反応を起こすことが可能な作用剤を含んでいてもよい。この緩衝液は、好ましくは、NaClが50mM未満の塩分を有する。
【0213】
試験される血漿が、顕色剤(赤血球細胞試剤)に存在する抗原に対する抗体を含む場合、赤色(又はピンク色)のスポットが反応領域に出現する。無色中心は、顕色作用剤(赤血球細胞試剤)に存在する抗原に対する抗体が存在しないこと又は検出不能な用量であることを意味する。
【0214】
結果の読取りは、目視であってもよく、又は自動であってもよい。
【0215】
更に、本発明の別の態様は、血液の試料又は血液成分の試料から抗血小板抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 試験しようとする試料を、緩衝液及び抗原性が既知の血小板試剤と共にインキュベートするか、又はレシピエントの血漿若しくは血清をドナーの血小板と共にインキュベートするステップ、
- 混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に加えるステップ、
- すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 反応領域に赤色若しくはピンク色のスポットが出現する場合、抗体/抗原相互作用が存在すると決定することにより抗血小板抗体が存在すると決定するか、又は反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在しないと決定することにより前記抗体が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法に関する。
【0216】
本発明のin vitroデバイスは、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される様々なタイプの抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法にも使用することができる。
【0217】
したがって、本発明の更に別の態様は、生物学的液体の試料から、好ましくは血液試料又は血液成分の試料から、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原を含む群から選択される抗原を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 任意選択で、試験しようとする試料を緩衝液と共にインキュベートするステップ、
- 前記試料を含む溶液又は試料と緩衝液との混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、
- 任意選択で、すすぐ前に試料ロード対照について読み取るステップ、
- 任意選択で、すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 好ましくは反応領域に有色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗原が存在すると決定するか、又は好ましくは反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体反応が存在しないと決定することにより前記抗原が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法に関する。
【0218】
インキュベートステップは、反応を増加させることが可能な作用剤の存在下で、4~40℃の温度にて、3~60分間、好ましくは5~30分間の期間にわたって実施することができる。当業者であれば、検出及び/又は特定しようとする抗体又は抗原に応じて、適切な温度を決定することができるだろう。
【0219】
インキュベートステップで使用される緩衝液は、反応を増加させるための分子を有する緩衝液である。
【0220】
加えようとする試料は、生物学的液体、例えば、pH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、特にpH7~pH7.5の安定したpH及び250mOsm~800mOsm、好ましくは300mOsm~600mOsmのオスモル濃度の溶液を含む緩衝液で希釈されているか又は希釈されていない血漿、血清、又は全血若しくは血液成分であってもよい。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(例えば、Tween 20 0.01~0.05質量/容積%)、飽和剤(特に、BSA)、及び/又は抗原-抗体反応を起こすことが可能な作用剤を含んでいてもよい。この緩衝液は、好ましくは、NaClが50mM未満の塩分を有する。
【0221】
反応領域をすすぐために使用されるすすぎ溶液は、例えば、pH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、好ましくはpH7~pH7.5の安定したpH及び300mOsm~800mOsmのオスモル濃度の高張性生理食塩溶液等であってもよい。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(例えば、Tween 20 0.01~0.05質量/容積%)を含んでいてもよい。
【0222】
抗原/抗体相互作用の顕色は、好ましくは、対応する病原体抗原と相互作用することになる抗体又は他の分子にカップリングされた有色ビーズ又はHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を使用することにより実施することができる。
【0223】
当業者であれば、前記抗原の検出及び/又は特定を可能にする他の手段の標識を決定することができるだろう。
【0224】
試験される血漿が、顕色剤に存在する抗原に対する抗体を含む場合、無色スポットが反応領域に出現する。無色中心は、顕色作用剤に存在する抗原に対する抗体が存在しないこと又は検出不能な用量であることを意味する。
【0225】
結果の読取りは、目視であってもよく、又は自動であってもよい。
【0226】
上記に示されているように、ウイルス抗原、細菌抗原、又は寄生虫抗原の群から選択される抗原に対する抗体を、本発明のin vitroデバイスを使用して検出及び/又は特定することもできる。実際、病原体(ウイルス、細菌、又は寄生動物)の存在又は非存在が、例えば輸血中に決定される場合のほとんどでは、感染した対象により産生される、前記抗原に対する抗体を決定及び/又は特定することにより行われる。こうした抗体も、本出願では、対象の感染時にウイルス抗原、細菌抗原、又は寄生虫抗原に対して産生される免疫抗体として言及されている。それらは、感染した対象の血液を循環する場合がある。
【0227】
したがって、更に別の態様によると、本発明のin vitroデバイスは、対象の感染時に産生されるウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原に対する様々な抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法でも使用することができる。
【0228】
したがって、本発明の更に別の態様は、生物学的液体の試料から、好ましくは血液試料又は血液成分の試料から、ウイルス抗原、細菌抗原、及び寄生虫抗原に対する抗体を含む群から選択される、好ましくは感染時に産生される抗体を検出及び/又は特定するためのin vitroの方法であって、
- 任意選択で、試験しようとする試料を緩衝液と共にインキュベートするステップ、
- 前記試料を含む溶液又は試料と緩衝液との混合物を、本発明によるin vitroデバイスの反応領域に添加するステップ、
- 任意選択で、すすぐ前に試料ロード対照について読み取るステップ、
- 任意選択で、すすぎ溶液を反応領域に加えるステップ、及び
- 好ましくは反応領域に有色スポットが出現する場合、抗原/抗体相互作用が存在すると決定することにより前記抗体が存在すると決定するか、又は好ましくは反応領域に無色スポットが出現する場合、抗原/抗体反応が存在しないと決定することにより前記抗体が存在しないと決定するステップ
を含むin vitroの方法に関する。
【0229】
インキュベートステップは、反応を増加させることが可能な作用剤の存在下で、4~40℃の温度にて、3~60分間、好ましくは5~30分間の期間にわたって実施することができる。当業者であれば、検出及び/又は特定しようとする抗体又は抗原に応じて、適切な温度を決定することができるだろう。
【0230】
インキュベートステップで使用される緩衝液は、反応を増加させるための分子を有する緩衝液である。
【0231】
反応領域をすすぐために使用されるすすぎ溶液は、例えば、pH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、好ましくはpH7~pH7.5の安定したpH及び300mOsm~800mOsmのオスモル濃度の高張性生理食塩溶液等であってもよい。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(例えば、Tween 20 0.01~0.05質量/容積%)を含んでいてもよい。
【0232】
加えようとする試料は、生物学的液体、例えば、pH6~pH8.5、好ましくはpH6.5~pH7.8、特にpH7~pH7.5の安定したpH及び250mOsm~800mOsm、好ましくは300mOsm~600mOsmのオスモル濃度の溶液を含む緩衝液で希釈されているか又は希釈されていない血漿、血清、又は全血若しくは血液成分であってもよい。この溶液は、任意選択で、低濃度の界面活性剤(例えば、Tween 20 0.01~0.05質量/容積%)、飽和剤(特に、BSA)、及び/又は抗原-抗体反応を起こすことが可能な作用剤を含んでいてもよい。この緩衝液は、好ましくは、NaClが50mM未満の塩分を有する。
【0233】
試験される血漿が、顕色剤に存在する抗原に対する抗体を含む場合、無色スポットが反応領域に出現する。無色中心は、顕色作用剤に存在する抗原に対する抗体が存在しないこと又は検出不能な用量であることを意味する。
【0234】
抗体/抗原反応の顕色は、好ましくは、対応する病原体抗原と相互作用することになる抗体又は分子にカップリングされた有色ビーズ又はHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を使用することにより実施される。
【0235】
当業者であれば、前記抗体の検出及び/又は特定を可能にする他の手段の標識を決定することができるだろう。
【0236】
結果の読取りは、目視であってもよく、又は自動であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【
図1】a. 本発明によるin vitroデバイスの特定の実施形態の透視ダイヤグラムを示す図である。前記デバイスは、多孔性膜を含み、多孔性膜は、9μmのサイズを有する幾つかのビーズが堆積されている反応領域を含み、ビーズの表面には、抗体又は抗原が直接的に又は間接的に固定化又は吸着されている。膜の下には、排水性材料の層、吸収性材料の層、及び発泡体の層の3つの層が示されている。また、
図1は、ビーズ及びビーズの表面に固定化された抗体を含む多孔性膜の切片の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。b. 本発明のin vitroデバイスの特定の実施形態の概略図である。前記デバイスは支持体を含み、支持体には多孔性膜が配置されており、多孔性膜は親水化反応領域を含み、親水化反応領域には、その表面に抗体が固定化されている幾つかのビーズが堆積されている。多孔性膜の下には、
図1aに示されているものと同じ層が示されている。
【
図2】国際公開第2013/186482号パンフレットに記載されているもののようなin vitroデバイス(
図2a)及び本発明のin vitroデバイス(
図2b)による、抗ABO01、抗ABO02、抗ABO03、抗RH1、抗RH2、抗RH3、抗RH4、抗RH5、抗KEL1、及び陰性対照を用いた、赤血球細胞抗原の検出の比較試験を示す図である。
【
図3】プロテインA/G/Lに対するタンパク質を介してラテックスビーズに間接的に固定化されたIgM抗体による、赤血球細胞ABO01、ABO02、及びABO3抗原の検出を示す図である。
【
図4】a及びb:クロロメチルラテックスビーズにカップリングされたAHG(抗ヒトグロブリン)に結合されているIgM抗体による赤血球細胞ABO01抗原の検出を示す図である。抗体カップリングビーズは、2つの異なる容積で膜にロードされている(a:20μl及びb:10μl)。c及びd:AHGカップリングクロロメチルラテックスビーズに結合されているIgG抗体による赤血球細胞ABO01抗原の検出を示す図である。抗体カップリングビーズは、2つの異なる容積で膜にロードされている(c:20μl及びd:10μl)。
【
図5】AHGカップリングエポキシドビーズに結合されているIgM特異的抗体による赤血球細胞抗原の検出を示す図である。(a:RH2抗原;b:RH3抗原;c:RH4抗原;d:RH5抗原;e:KEL1抗原、及びf:陰性対照)
【
図6】実施例3に記載の条件での、AHG(抗ヒトグロブリン)カップリングNHSアガロースビーズに結合されているIgG特異的抗体によるFY1及びRH1赤血球細胞抗原の検出を示す図である。a.、b.、c.は、異なる検出手順を表し、d.は、異なる反応デバイス及び検出手順を表す。
【
図7】赤血球細胞ABO02抗原及び部分凝集集団の検出を示す図である。抗ABO02がカップリングされたアルデヒド9μmラテックスビーズが異なる量(1~5%)で多孔性膜にロードされている。
【
図8】a. 1.5mm厚の膜を含むデバイスでの、特異的抗体がカップリングされたアルデヒド9μmラテックスビーズの異なる量(0.125~4%)による、ABO01、RH2、RH5、及びKEL1赤血球細胞抗原の検出を示す図である。b. 0.6mm厚の膜を含むデバイスでの、特異的抗体がカップリングされたアルデヒド9μmラテックスビーズ(4%)による、ABO01、RH2、及びKELI1赤血球細胞抗原の検出を示す図である。
【
図9】a. Triton X-100、b. ポリオキシエチレン、c. ノニルβDグルコシドで親水化された0.6mm厚の膜を含むin vitroデバイスにロードされた、特異的抗体がカップリングされたアルデヒド9μmラテックスビーズによる赤血球細胞ABO1抗原の検出を示す図である。
【
図10】a. 吸収材としてT-499(左)又はSCP-300-TCF(右)を含むデバイスでの、特異的抗体がカップリングされたアルデヒド9μmラテックスビーズによる赤血球細胞RH2抗原の検出を示す図である。b. 吸収材としてT-099(左)又はT-499(右)を含むデバイスでの、特異的抗体がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズによる赤血球細胞RH2抗原の検出を示す図である。c. 吸収材としてT-499(左)又はT-183-5(右)を含むデバイスでの、特異的抗体がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズによる赤血球細胞RH2抗原の検出を示す図である。d. 吸収材としてT-499(左)又はSCP-200-TCF(右)を含むデバイスでの、特異的抗体がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズによる赤血球細胞RH2抗原の検出を示す図である。各画像(imagen)には、分解された状態のデバイスが示されている。上から下に、プラスチックデバイス上の膜及び吸収材。
【
図11】a. 排水パッドとして脱脂綿を含むデバイスでの、抗ABO03抗体がカップリングされたアルデヒド9μmラテックスビーズによる赤血球細胞ABO02抗原の検出を示す図である。b. 排水パッドとしてNT9750HYを含むデバイスでの、抗ABO03抗体がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズによる赤血球細胞ABO02抗原の検出を示す図である。c. 排水パッドとしてNT9610HYを含むデバイスでの、抗ABO03抗体がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズによる赤血球細胞ABO02抗原の検出を示す図である。各画像には、分解された状態のデバイスが示されている。上から下に、膜、排水パッド、及び吸収材。
【
図12】a.及びc. IgM抗体(抗ABO01及び抗ABO02)がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズによる赤血球細胞ABO01又はABO02抗原の検出を示す図である。b.及びd. 部分凝集集団の識別を可能にするシグナル解釈。
【
図13】a. 弱いRH1抗原の検出を示す図である。様々なタイプの弱いRH1赤血球細胞(Df1、Df2、...)を、A/G/Lタンパク質がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズに固定化された抗RH1(HM16及びESD1クローン)により捕捉する。b. ダフィー(FY1及びFY2)、キッド(JK1及びJK2)、及びMSN(MNS3及びMNS4式血液型)の抗原の検出を示す図である。陽性赤血球細胞を、A/G/Lタンパク質がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズに固定化された特異的抗体により捕捉する。
【
図14】逆分類を示す図である。表現型(A1、A2、B、及びO)が既知の試剤赤血球細胞を血漿と共にインキュベートし、抗ヒトIgM(CP6D4クローン)がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズにより捕捉する。
【
図15】直接クームス試験を示す図である。a. IgG感作赤血球を、抗ヒトグロブリン(SA6532、CPC5-1、及び188 33クローン)がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズにより捕捉する。b. 陽性赤血球細胞を、抗ヒトグロブリン(SA6532)及び/又は抗ヒトC3d(C7610)がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズにより捕捉する。c. 陽性赤血球細胞を、抗ヒトグロブリン(SA6532)及び/又は抗ヒトC3d(C7610)に固定化し、A/G/Lタンパク質がカップリングされたアルデヒド/サルフェート9μmラテックスビーズで捕捉する。
【
図16】熱帯熱マラリア原虫MSP1抗原に特異的な抗体の検出を示す図である。a. HRP検出法で本発明のデバイスを使用した。b. 検出法として1μm赤色ビーズを用いた本発明のデバイスを使用した。c. 検出法としてコロイド金ナノ粒子を用いた本発明のデバイスを使用した。各例には、陰性及び陽性反応並びにシグナル強度の定量化が示されている(n=3~5)。
【
図17】検出法として1μm赤色ビーズを用いた本発明のデバイスを使用した、梅毒トレポネーマp15、p17、及びp47抗原に特異的な抗体の検出を示す図である。陰性及び陽性反応並びにシグナル強度の定量化が示されている(n=3)。
【
図18】検出法として1μm赤色ビーズを用いた本発明のデバイスを使用した、B型肝炎ウイルスに由来するHBsAg抗原に特異的な抗体の検出を示す図である。陰性及び陽性反応並びにシグナル強度の定量化が示されている(n=3)。
【
図19】B型肝炎ウイルスに由来するHBsAg抗原の検出を示す図である。a. 検出法としてHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を用いた発明のデバイスを使用した(図及び画像)。b. 検出法として1μm赤色ビーズを用いた発明のデバイスを使用した。各例には、陰性及び陽性反応並びにシグナル強度の定量化が示されている(n=3)。
【実施例】
【0238】
(実施例1)
抗赤血球細胞抗体が直接的に又は抗免疫グロブリンIgM及びIgGを介して間接的にビーズにカップリングされているin vitroデバイスでの赤血球細胞型判定及び表現型判定
1. 膜に直接的にスポッティングされた抗赤血球細胞抗体を反応領域の表面に含むin vitroデバイスを調製するためのプロトコール
1.1. in vitroデバイスを調製するための材料:
- 膜「POREX」 0.6mm 疎水性 9~12μmの多孔度;綿
- クリニス(Cleanis)
- 親水化緩衝液(1% triton、1%緑色素、リン酸緩衝生理食塩水)
- 洗浄緩衝液(TLA組成物)
- 希釈緩衝液(Chromasolcoombs);
- 抗体(抗ABO01、抗ABO02、抗ABO03、抗RH1、抗RH2、抗RH3、抗RH4、抗RH5、抗KEL1、陰性対照)。
【0239】
1.2. 反応媒体の調製モード
- 各ウェルに1μlの親水化溶液を加える。
- 37℃及び10%湿度で16時間乾燥させる。
- 1ウェル当たり2μlの抗体を加える。
- 37℃及び10%湿度で72時間乾燥させる。
試験を実現させるための材料は、反応支持体、洗浄緩衝液、及び希釈緩衝液である。
【0240】
1.3. 試験実施形態
- 赤血球細胞のペレットを希釈緩衝液で20%に希釈する。
- 20μlの懸濁物をウェルに加える。
- 室温で3分間インキュベートする。
- 80μlの洗浄緩衝液を加える。
- 室温で1分間インキュベートする。
- 80μlの洗浄緩衝液を加える。
【0241】
2. 抗赤血球細胞抗体が直接的に又は抗免疫グロブリンIgM及びIgGを介して間接的にビーズにカップリングされたin vitroデバイスを調製するためのプロトコール
2.1. ラテックスビーズに抗ABO01(抗A)、抗ABO02(抗B)、及び抗ABO03(抗AB)抗体を直接的にカップリングするためのプロトコール
1mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェートビーズ9μm 4%重量/容積)に、100μlの20×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、2mlの濃縮抗体を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0242】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁し、続いて室温で2時間混合することにより過剰活性基をブロックキングする。その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0243】
2.2. 抗RH1、抗RH2、抗RH3、抗RH4、抗RH5、及び抗KEL1抗体間接カップリングプロトコール
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに、200μlの20×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、250μlの1mg/ml 6D4(抗ヒトIgM、Diagast社製クローン)又は100μlの3.69mg/ml C5-1(抗ヒトIgG、Diagast社製クローン)を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0244】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁し、続いて室温で2時間混合することにより過剰活性基をブロックキングする。その後、抗ヒトグロブリン(AHG)カップリングビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。ビーズペレットを、2mlの濃縮抗体+2mlのリン酸緩衝生理食塩水で再懸濁する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0245】
その後、得られたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。陰性対照ビーズを、エタノールアミンで直接的に飽和させる。
【0246】
実施例で使用された抗体クローンは、下記のTable 4(表4)に示されている。
【0247】
【0248】
Table 4(表4)の抗体クローンは、出願人(Diagast社、フランス)により実施及び販売されているクローンである。
2.3. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Subrenat社のNA7150 PES)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0249】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(0.5%のTriton X-100で補完されたリン酸緩衝生理食塩水;0.5%緑色素及び0.13Mショ糖)で親水化し、潜在的には37℃、10%湿度で1時間乾燥させる。その後、5μlの4%抗体カップリングビーズ又は陰性対照カップリングビーズをスポッティングし、デバイスを、即時使用又は長期保存の前に37℃、10%湿度で1時間乾燥させる。
【0250】
赤血球細胞をChromasolcoombs(Diagast社製剤)で5%に希釈することにより試験を開始し、10μlを各ウェルに導入し、続いて30μlの洗浄(0.2% Tween20及び0.54%緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)を2回行う。
【0251】
また、この例では、出願人は、上記に記載のプロトコールにより調製された、血液型分類及び表現型判定のための、ビーズにカップリングされた抗赤血球細胞抗体を含むin vitroデバイスを、抗赤血球細胞抗体が多孔性膜に直接的にスポッティングされたin vitroデバイス(国際公開第2013/186482号パンフレットに記載のものに類似)と比較した。
【0252】
3. 結果
得られた相対的な結果は、
図2に示されている。暗灰色スポット(カラーバージョンの赤色スポットに対応する)の存在は、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示し(赤血球細胞表面に抗原が存在する)、無色スポットの存在は、陰性反応を反映する(赤血球細胞表面に抗原が存在しない)。
【0253】
図2から明らかなように、ビーズ表面に直接的に又は間接的に固定化された血液型の抗体である抗ABO01、抗ABO02、抗ABO03、抗RH1、抗RH2、抗RH3 抗RH4、抗RH5、及び抗KEL1は、試験される試料の赤血球細胞の表面に存在する対応する抗原に特異的な様式で結合する。実際、ビーズが堆積されたスポットの表面は、十分に赤色のままである。これは、赤血球細胞の抗体が多孔性膜により吸着されず、それにより赤血球細胞抗原の特異的及び高感度検出が可能になることを示す(
図2b)。
【0254】
図2aから理解することができるように、ビーズを用いないin vitroデバイスでは、一部の抗体、特に抗RH1、抗RH3、抗RH4、抗RH5、及び抗KEL1抗体との反応は、感度が低い(暗灰色の強度が非常に低い)。
【0255】
本発明のin vitroデバイスで得られた
図2bの結果を、ビーズを用いないin vitroデバイスで得られた
図2aの結果と比較すると、
図2aの抗RH1、抗RH3、抗RH4、抗RH5、及び抗KEL1KEL1の灰色スポットは、
図2aの灰色スポットよりもはるかにより可視的である。これは、本発明のin vitroデバイスが、ほとんどの抗赤血球細胞抗原のより高感度検出の取得を可能にすることを示す。
【0256】
(実施例2)
抗体に対する親和性タンパク質を介した赤血球細胞抗体の間接的カップリング
1. 間接抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ラテックスビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)に対して、5又は2.5μgのプロテインAGLを3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0257】
プロテインAGLとカップリングされた1mlの遠心分離した4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)に、3mlの1×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、1mlの抗ABO01抗体(91 13 D10 Diagast社製クローン)、又は抗ABO02抗体(96 21 A8 Diagast社製クローン)、又は抗ABO03(152D12 Diagast社製クローン)を溶解する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0258】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0259】
2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0260】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、2μlの2%抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0261】
0.00625%のTween20で補完されたPBS1Xで1.5%に希釈された50μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。
【0262】
洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された30μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0263】
3. 結果
図3は、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。
【0264】
(実施例3)
表面に異なる化学官能基を有しサイズが異なるビーズに赤血球細胞の抗体を異なる反応条件でカップリングする
1. クロロメチル基
1.2. 抗体カップリング
500μlのホモジナイズされたクロロメチルビーズ(Thermo Fisherクロロメチルラテックスビーズ 4重量/容積%、2.0μm)に、1.5mlのリン酸緩衝液を添加し、得られた溶液を、3000gで20分間遠心分離する。上清を廃棄し、その後ビーズペレットを、950μlのリン酸緩衝生理食塩水及び50μlの濃縮CPC51又はCP6D4(Diagast社製AHG)のミックスで再懸濁する。抗体ビーズ溶液を、チューブ揺動器で一晩室温にてインキュベートする。
【0265】
AHG化学カップリングの後、ビーズ溶液を3000gで15分間遠心分離し、上清を廃棄する。ビーズを、1.5mlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、溶液を3000gで10分間遠心分離する。上清を廃棄し、1mlの1Mエタノールアミンを添加してから室温で20分間混合することにより過剰活性基をブロッキングする。AHGカップリングビーズ溶液を3000gで20分間遠心分離してから、1.5mlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。1mlの濃縮抗A(抗ABO1)抗体(クローンIgM 91 13 D10又はIgG 162 47 (3) E6、両方ともDiagast社製クローン)をビーズペレットに溶解し、溶液を室温で2時間混合してから1.5mlのリン酸緩衝生理食塩水で遠心分離及び洗浄する。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0266】
1.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0267】
多孔性膜を、2.5μlの界面活性剤溶液(1%のTriton X-100で補完された濾過水)で親水化し、その後、20μl(
図4A及び
図4C)又は10μl(
図4B及び
図4D)の4%抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスは、使用前に室温で30分間静置する。
【0268】
30μlのchromasolcoombs(Diagast社製剤)中10%赤血球細胞及び10μlのヘキサジメトリンブロミド溶液の13μlのミックスを各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。
【0269】
反応ゾーンを、0.1%のTween-20で補完された25μlのリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄する。
【0270】
1.3. 結果
図4は、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成(A型赤血球細胞)、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応(B型赤血球細胞)を反映する。
【0271】
2. エポキシド基
2.1. 抗体カップリング
0.5gのエポキシド樹脂(Biorad Profinityエポキシド樹脂、乾燥粉末として供給され、粒子サイズは45~90ミクロン)を量り取り、50mlのリン酸緩衝生理食塩水中で穏やかに撹拌しながら30分間膨潤させる。ビーズは5mlに膨張し、およそ10%の溶液が得られる。
【0272】
ビーズを2500gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを4.5mlのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁し、その後再び遠心分離する。
【0273】
360μlの濃縮抗IgM AHG(CP6D4 Diagast社)を、12mlのリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、このミックスをカップリングのためにビーズペレットに添加する。抗体ビーズ溶液を、ロータリー振盪器で1時間30分間室温にてインキュベートする。
【0274】
AHG化学カップリングの後、ビーズ溶液を2500gで5分間遠心分離し、上清を廃棄する。ビーズを、4.5mlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、溶液を2500gで5分間遠心分離する。上清を廃棄し、3mlの1Mエタノールアミンを添加してから室温で45分間混合することにより過剰活性基をブロッキングする。AHGカップリングビーズ溶液を2500gで5分間遠心分離してから、4.5mlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0275】
300μlの抗RH2、抗RH3、抗RH4、又は抗RH5(それぞれ、P3X255 13 G8 Diagast社製クローン、RH3 906 Diagast社製クローン、MS33 Millipore社製クローン、及びP3GD C512 Diagast社製クローン)を、2200μlのリン酸緩衝生理食塩水で希釈し、AHGカップリングビーズに添加した。抗Kell抗体の場合、1500μlを、1000μlのリン酸緩衝生理食塩水で希釈し、陰性対照は、2500μlのリン酸緩衝生理食塩水である。得られた溶液を室温で45分間混合してから、遠心分離及び洗浄する。最後に、ビーズペレットを、保存剤で補完されたリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁して、カップリングビーズの50%溶液に戻す。
【0276】
2.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0277】
多孔性膜を、1μlの界面活性剤溶液(1%のTriton X-100で補完された濾過水)で親水化し、室温で一晩乾燥した。その後、10μlの50%抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスは、使用前に室温で30分間静置する。
【0278】
10μlの未希釈赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.2%のTween-20及び保存剤で補完された40μlのリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄する。
【0279】
2.3. 結果
図5は、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。赤血球細胞表現型が何であれ、陰性対照は無色スポットをもたらす。
【0280】
3. N-ヒドロキシサクシニミド(NHS)基
3.1. 抗体カップリング
1mlのNHSビーズ(Pierce(商標)NHS活性化アガローススラリー)を、5mlのリン酸緩衝生理食塩水で希釈し、2500gで5分間遠心分離し、上清を廃棄する。ペレットを、3回の追加洗浄のため4.5mlのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁する。
【0281】
2mlの濃縮抗IgG AHG(C51 Diagast社)を、3mlのリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、このミックスをカップリングのためにビーズペレットに添加する。抗体ビーズ溶液を、ロータリー振盪器で1時間30分間室温にてインキュベートする。
【0282】
AHG化学カップリングの後、ビーズ溶液を2500gで5分間遠心分離し、上清を廃棄する。ビーズを、4.5mlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、溶液を2500gで5分間遠心分離する。上清を廃棄し、3mlの1Mエタノールアミンを添加してから室温で45分間混合することにより過剰活性基をブロッキングする。AHGカップリングビーズ溶液を2500gで5分間遠心分離してから、4.5mlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0283】
10mlの抗RH1抗体及び抗FY1抗体(それぞれ、HM16及びF655 Diagast社製クローン)を、AHGカップリングビーズに添加する。得られた溶液を室温で1時間混合してから、遠心分離及び洗浄する。最後に、ビーズペレットを、保存剤で補完されたリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁して、カップリングビーズの50%溶液を得る。
【0284】
3.2. 反応デバイス調製及び検出手順
図6(A、B、及びC)に表されているデバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0285】
多孔性膜を、2.5μlの界面活性剤溶液(1%のTriton X-100で補完された濾過水)で親水化し、37℃で一晩乾燥した。その後、20μlの50%抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスは、使用前に室温で30分間静置する。
【0286】
図6A:0.25%ヘキサジメトリンブロミド溶液で25%に希釈した7μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.01%のTween-20で補完された20μl+30μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0287】
図6B:0.3%ヘキサジメトリンブロミド溶液で25%に希釈した5μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.01%のTween-20で補完された20μl+30μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0288】
図6C:0.4%ヘキサジメトリンブロミド溶液で25%に希釈した5μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.01%のTween-20で補完された20μl+30μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0289】
図6Dに表されているデバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、105μmの厚さ及び12μmの多孔度(Solupor 70M01A)のLydall UHMWPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0290】
多孔性膜を、2μlの界面活性剤溶液(1%のTriton X-100で補完された濾過水)で親水化し、37℃で1時間30分間乾燥した。その後、20μlの50%抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスは、使用前に室温で30分間静置する。
【0291】
0.25%ヘキサジメトリンブロミド溶液で25%に希釈した7μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.01%のTween-20で補完された30μl+50μlリン酸緩衝生理食塩水で、並びに0.1%のTween-20及び0.007%のTriton X-100で補完された追加の20μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0292】
3.3. 結果
図6の得られた画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応(RH1又はFY1抗原の検出)を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。
【0293】
(実施例4)
ビーズの濃度
この経験の目的は、多孔性膜に堆積させるビーズの様々な濃度を試験することである。
【0294】
1. 抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4%重量/容積)に、100μlの20×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、2mlの親和性精製抗ABO02抗体(96 21 A8 Diagast社製クローン)を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0295】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁することにより過剰活性基をブロックキングし、室温で2時間混合する。その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0296】
2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0297】
多孔性膜を、1μlの界面活性剤溶液(1%のTriton X-100及び1%緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、10μlの1~5%濃度の抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0298】
0.00625%のTween20で補完されたChromasolcoombsで0.15%に希釈された50μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された30μlのリン酸緩衝生理食塩水で1回又は2回洗浄する。
【0299】
3. 結果
図7は、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応(ABO02型赤血球細胞)を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。1から5%までに及ぶビーズ濃度では、1回又は2回の洗浄後でも特異性及び感度は妨害されない。部分凝集血液細胞は、100%陽性集団のシグナルと比較して強度が減少することにより検出可能である。
【0300】
(実施例5)
多孔性疎水性膜の厚さ
1. 抗体カップリング
1.1. 抗ABO01カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermofisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)に、100μlの20×リン酸緩衝液を添加し、2mlの親和性精製抗ABO01(25 21 B8 Diagast社製クローン)抗体を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0301】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁することにより過剰活性基をブロックキングし、室温で2時間混合する。その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0302】
1.2. 抗RH2、抗RH5、及び抗KEL1カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに、200μlのPBS20Xを添加し、抗RH2及び抗RH5(それぞれ、P3x255 13 G8及びP3GD C512 Diagast社製クローン)の場合は250μlの1mg/ml 6D4(抗ヒトIgM)、又は抗KEL1(601 Diagast社製クローン)の場合は100μlの3.5mg/ml C5-1(抗ヒトIgG)を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0303】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁することにより過剰活性基をブロックキングし、室温で2時間混合する。その後、AHGカップリングビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。ビーズペレットを、2mlの濃縮抗体+2mlのリン酸緩衝液に再懸濁する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0304】
その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0305】
1.3 反応デバイス調製及び検出手順
図8aに示されているデバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、1.5mmの厚さ及び7~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0306】
多孔性膜を、1μlの界面活性剤溶液(3%のTriton X-100、0.26Mショ糖、及び1%緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。デバイスを、最初に37℃、10%湿度にて1時間乾燥させた。その後、5μlの0.125~4%濃度の抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスは、使用前に、37℃、10%湿度で1時間の2回目の乾燥を行う。
【0307】
生理学的な水で5%に希釈された10μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.1%のTween-20及び0.007%のTriton X-100で補完された100μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0308】
図8bに示されているデバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Subrenat社のNA7300PES)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0309】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(0.5%のTriton X-100、0.13Mショ糖、及び0.5%緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。デバイスを、最初に37℃、10%湿度にて1時間乾燥させた。その後、5μlの4%抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスは、使用前に、37℃、10%湿度で1時間の2回目の乾燥を行う。
【0310】
生理学的な水で5%に希釈された10μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.1%のTween-20及び0.007%のTriton X-100で補完された100μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0311】
1.4. 結果
図8aの暗灰色スポット(赤色スポット)の存在は、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す。4から0.125%までに及ぶビーズ濃度では、感度は妨害されず、強度は減少する。
【0312】
図8bの暗灰色スポット(赤色スポット)の存在は、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示し、無色スポットの存在は、陰性反応を反映する。
【0313】
(実施例6)
多孔性膜を親水化にするために使用される界面活性剤のタイプ及び濃度
1. 抗ABO01カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)に、100μlの20×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、1mlの親和性抗ABO01抗体(25 21 B8 Diagast社製クローン)を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0314】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0315】
2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0316】
多孔性膜を、上記に列挙されている1μlの界面活性剤溶液で親水化する。
a. 1.5%のTriton X-100
b. ポリオキシエチレン 10%
c. ノニル-β-Dグルコシド 50mM
【0317】
その後、10μlの3%濃度の抗体カップリングビーズをスポッティングする。0.00625%のTween-20で補完されたリン酸緩衝生理食塩水で1.5%に希釈された50μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された30μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0318】
3. 結果
図9は、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。どの界面活性剤を使用しても、特異性は妨害されない。
【0319】
(実施例7)
本発明のデバイスで使用される吸収性材料及び排水性材料
1. 吸収性材料
1.1. 抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに、200μlの20×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、250μlの6D4(抗ヒトIgM Diagast社製クローン)を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0320】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁することにより過剰活性基をブロックキングし、室温で2時間混合する。その後、AHGカップリングビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。ビーズペレットを、2mlの濃縮抗RH2抗体(P3X255 13 G8 Diagast社製クローン)+2mlのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0321】
その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0322】
1.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Subrenat社のNA7150 PES)、及び吸収パッド(下記のMc Arlaid社製のものを参照)が組み立てられている。
【0323】
使用した吸着性材料は以下の通りである
T-499又はSCP-300 TCF(
図10a)
T-099又はT-499(
図10b)
T-499又はT-183-5(
図10c)
T-499又はSCP-200-TCF(
図10d)
【0324】
多孔性膜を、1μlの界面活性剤溶液(0.5%のTriton X-100で補完されたリン酸緩衝生理食塩水;1%緑色素)で親水化する。その後、10μlの1%抗体カップリングビーズ又は陰性対照カップリングビーズをスポッティングし、デバイスを、即時使用又は長期保存の前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0325】
赤血球細胞をChromasolcoombs(Diagast社製剤)で2.5%に希釈することにより試験を開始し、50μlを各ウェルに導入し、続いて30μl洗浄緩衝液(0.2%のTween20で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)を2回導入する。
【0326】
1.3. 結果
図10a、
図10b、
図10c、及び
図10dから明らかなように、試験した吸収層はいずれも、RH2陽性赤血球細胞の検出(灰色スポットとして可視化されている赤色スポットの存在)を保証することができた。特異性は妨害されず、無色スポットは、RH2陰性赤血球細胞を反映する。
【0327】
2. 排水性材料
2.1. 抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに、1mlの濃縮抗AB抗体(152 D12 Diagast社製クローン)を溶解する。リン酸緩衝生理食塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0328】
その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0329】
2.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(下記を参照)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0330】
排水性材料は以下の通りである。
脱脂綿(Alan &co社製)、
図11aに示されている
NT 9750 HY(Subrenat社製)、
図11bに示されている
NT 9610 HY(Subrenat社製)、
図11cに示されている
【0331】
多孔性膜を、1μlの界面活性剤溶液(1%のTriton X-100で補完されたリン酸緩衝生理食塩水;1%緑色素)で親水化する。その後、10μlの1%抗体カップリングビーズ又は陰性対照カップリングビーズをスポッティングし、デバイスを、即時使用又は長期保存の前に37℃、10%湿度で15分間乾燥させる。
【0332】
赤血球細胞をChromasolcoombs(Diagast社製剤)で2.5%に希釈することにより試験を開始し、50μlを各ウェルに導入し、続いて30μlの洗浄(0.2%のTween20で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)を2回行う。
【0333】
2.3. 結果
図11は、排水パッドはいずれも、B陽性赤血球細胞の検出(図では暗灰色スポットとして可視化されている赤色スポットの存在)を保証することができたことを示す。特異性は妨害されず、O型赤血球細胞では無色スポットが得られる。
【0334】
(実施例8)
本発明のデバイスを使用した部分凝集集団の分類及び検出
1. 抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)に、100μlの20×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、2mlの抗ABO01抗体(91 13 D10 Diagast社製クローン)又は抗ABO02抗体(96 21 A8 Diagast社製クローン)を溶解する。脱塩水で容積を最終的に4mlにする。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0335】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁することにより過剰活性基をブロックキングし、室温で2時間混合する。その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0336】
2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Alan&co社製の脱脂綿)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0337】
多孔性膜を、1μlの界面活性剤溶液(1%のTriton X-100及び1%緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、10μlの3%抗体カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0338】
0.00625%のTween20で補完されたChromasolcoombsで0.15%に希釈された50μlの赤血球細胞を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。
【0339】
それぞれChromasolcoombsで0.15%に事前希釈されたA型及びO型又はB型及びO型の赤血球細胞を混合することにより、所望の濃度の部分凝集A及びB集団を生成する(30% O型赤血球細胞及び70% A型若しくはB型赤血球細胞、又は50% O型及び50% A型若しくはB型赤血球細胞)。
【0340】
洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された30μlのリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄する。各洗浄後に画像を取得する。
【0341】
3. 結果
図12a及び
図12cに示されているように、洗浄前に、全てのスポットで灰色(又は赤色)が出現する。第2の洗浄後に特異性に到達する。赤色スポット(暗灰色スポットとして可視化されている)の存在は、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示し、無色スポットの存在は、陰性反応を反映する。
【0342】
図12b及び
図12dは、取得した画像の強度を解釈した後で(2回の洗浄前後のシグナルが差し引かれている)、天然集団と部分凝集集団との識別が達成されることを示す。
【0343】
(実施例9)
抗体に対する親和性タンパク質を介して赤血球細胞抗体をビーズに間接カップリングすることによる、弱いRH1抗原の検出及び広範な表現型判定
1. プロテインAGLカップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに対して、50μgのプロテインAGLを3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0344】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0345】
2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0346】
多孔性膜を、1μlの界面活性剤溶液(1.5%のTriton X-100;0.5%ウシ血清アルブミンで補完されたリン酸緩衝生理食塩水;0.25Mショ糖、及び5.1%ビーズ)で親水化する。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0347】
各ウェルに50μlの反応物を導入することにより検出手順を開始し(弱いRH1又は広範な表現型判定)、0.00625%のTween20で補完されたPBS1Xで1.5%に希釈された50μlの赤血球細胞を添加する。
【0348】
洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された30μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0349】
3. 結果
図13aは、弱いRH1の得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。
【0350】
図13bは、広範な表現型判定の得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに対応する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。
【0351】
(実施例10)
ビーズにカップリングされた6D4抗体による逆分類
1. 逆分類
1.1. 抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)、3mlの1×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、100μgのCP6D4抗体を溶解する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0352】
ビーズ抗体溶液に150μlの1Mエタノールアミンを懸濁することにより過剰活性基をブロックキングし、室温で2時間混合する。その後、カップリングされたビーズを、3mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0353】
1.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Subrenat社製9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0354】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(1.5%のTriton X-100で補完されたリン酸緩衝生理食塩水;0.5%緑色素)で親水化する。その後、5μlの1%抗体カップリングビーズをスポッティングし、デバイスを、即時使用又は長期保存の前に37℃、10%湿度で15分間乾燥させる。
【0355】
30μlの血漿及び20μlの赤血球細胞(A1; B; A2; O)を5分間インキュベートすることにより、試験を開始する。25μlを各ウェルに導入し、続いて30μlの洗浄緩衝液(0.2%のTween20で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)を導入する。
【0356】
1.3. 結果
図14は、IgM感作赤血球の捕捉、したがって陽性逆分類反応を暗灰色スポット(赤色スポットに対応する)の存在を示し、無色スポットの存在は陰性反応(未感作赤血球細胞)を反映する。
【0357】
(実施例11)
本発明のデバイスを使用したDAT(直接クームス試験)試験
1. 抗体で事前に感作された赤血球細胞
1.1. 抗体カップリング
3mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)に、抗ヒトグロブリンの3ml溶液を溶解する。研究したAHGは、SA6532(ヒトIgGに対するポリクローナルウサギ抗体)、C5-1(Diagast社製クローン、ヒトIgGに対するマウスIgG)、及び188 33(Diagast社製クローン、ヒトIgGに対するマウスIgM)である。溶液を1時間回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0358】
ビーズ懸濁物を、2500gで5分間遠心分離する。ビーズペレットを、6mlの50mMエタノールアミン溶液に再懸濁し、続いて30分間混合することにより、過剰活性基をブロックキングする。その後、カップリングされたビーズを、9mlの保存緩衝液で2回よく洗浄する(洗浄前後に2500gで5分間遠心分離する)。最後に、ビーズペレットを保存緩衝液に再懸濁して、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0359】
1.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Subrenat社製9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0360】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(1.5%のTriton X-100で補完されたリン酸緩衝生理食塩水;0.5%緑色素)で親水化する。その後、5μlの3%抗体カップリングビーズをスポッティングし、デバイスを、即時使用又は長期保存の前に37℃、10%湿度で15分間乾燥させる。
【0361】
赤血球細胞を、FY IgG抗体、KEL1KEL1 IgG抗体、又はRH1 IgG抗体でin vitroで事前に感作して、直接クームス陽性赤血球細胞を模倣する。
【0362】
赤血球細胞(クームス陰性又は陽性)を、0.00625%のTween20で補完されたChromasolcoombs(Diagast社製剤)で0.25%に希釈することにより試験を開始する。50μlを各ウェルに導入し、続いて30μl洗浄緩衝液(0.2%のTween20で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)を導入する。
【0363】
2. 抗IgG及び抗C3dによる直接抗グロブリン試験
2.1. 抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズ(Thermo Fisherラテックスアルデヒド/サルフェート 9μm 4重量/容積%)に、3mlの1×リン酸緩衝生理食塩水を添加し、100μgのSA6532抗体又はC7610抗体を溶解する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0364】
2.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(Subrenat社製9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0365】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(1.5%のTriton X-100で補完されたリン酸緩衝生理食塩水;0.5%緑色素)で親水化する。その後、5μlの4%抗体カップリングビーズをスポッティングし、デバイスを、即時使用又は長期保存の前に37℃、10%湿度で15分間乾燥させる。
【0366】
赤血球細胞(DAT陰性又は陽性)を、0.00625%のTween20で補完されたリン酸緩衝生理食塩水で1.5%に希釈することにより試験を開始し、50μlを各ウェルに導入し、続いて30μlの洗浄緩衝液(0.2%のTween20で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)を導入する。
【0367】
3. 抗体に対する親和性タンパク質によるDAT
3.1. プロテインAGLカップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに対して、50μgのプロテインAGLを3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0368】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0369】
3.2. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0370】
多孔性膜を、AGLカップリングビーズを有する1μlの界面活性剤溶液(1.5%のTriton X-100;0.5%ウシ血清アルブミンで補完されたリン酸緩衝生理食塩水;0.25Mショ糖、及び5.1%ビーズ)で親水化する。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0371】
ウェル中で20μlの反応物をインキュベーションすることにより検出手順を開始し(DAT)、0.00625%のTween20で補完されたPBS1Xで3%に希釈された50μlの赤血球細胞をウェルに添加し、20μlのIAT溶液2緩衝液を添加する。120μlのミックスをカートリッジウェルに移す。
【0372】
洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、40μlのIAT溶液2緩衝液で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0373】
4. 結果
図15aは、IgG感作赤血球の捕捉、したがって陽性直接クームス反応を示す暗灰色スポット(赤色スポットに対応する)の存在を示し、無色スポットの存在は陰性反応(未感作赤血球細胞)を反映する。
【0374】
図15bは、IgG及び/又はC3D感作赤血球細胞の捕捉、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(赤色スポットに対応する)の存在を示し、無色スポットの存在は陰性反応(未感作赤血球細胞)を反映する。
【0375】
図15cは、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポット(カラー画像の赤色スポットに相当する)の存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映する。
【0376】
(実施例12)
本発明のデバイスを使用したマラリア抗原に特異的な抗体の検出
1. 抗原カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに対して、100μgの抗原Mal003を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0377】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0378】
2. 検出用の抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4% 1μmビーズに対して、200μgの抗原6D4を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0379】
その後、カップリングされたビーズを、5000gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0380】
3. 反応デバイス調製及びHRPによる検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0381】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%の緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、2μlの4%抗原Mal003カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0382】
100μlの試料(キットab178649)を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。100μlの抗IgG抗体及び/又は抗IgM抗体HRPコンジュゲート(キットab178649)を添加する。洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された30μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。その後、反応ゾーンを、30μlの顕色緩衝液(TMB基質(キットab178649))で洗浄する。15分後に画像を取得する。
【0383】
4. 反応デバイス調製及びビーズによる検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0384】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%の緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、2μlの4%抗原Mal003カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0385】
100μlの試料(キットab178649)を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。30μlの0.1% 1μm抗体6D4ビーズを添加する。洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された120μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0386】
5. 反応デバイス調製及びコロイド金ナノ粒子による検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0387】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%の緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、5μlの4%抗原Mal003カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0388】
50μlの試料(キットab178649)を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。10μlの抗ヒトIgA、IgG、IgM 60nm金コンジュゲート(AC-60-14-10)を添加する。洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された50μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0389】
6. 結果
図16aは、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポットの存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映し、図は灰色の強度を示す。
【0390】
図16bは、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポットの存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映し、図は灰色の強度を示す。
【0391】
図16cは、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポットの存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映し、図は灰色の強度を示す。
【0392】
(実施例13)
検出法として1μm赤色ビーズを用いた本発明のデバイスを使用した、梅毒トレポネーマ抗原に特異的な抗体の検出
1. 抗原カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに対して、100μgのp15、p17、p47梅毒トレポネーマ抗原(30-AT76)を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0393】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0394】
2. 検出用の抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4% 1μmビーズに対して、200μgのAGLタンパク質を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0395】
その後、カップリングされたビーズを、5000gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0396】
3. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0397】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%の緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、2μlの4% p15、p17、p47梅毒トレポネーマ抗原カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0398】
10μlの試料(梅毒トレポネーマ抗体20-TR89)を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。30μlの0.1% 1μm AGLタンパク質ビーズを添加する。洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された120μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0399】
4. 結果
図17は、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポットの存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映し、図は灰色の強度を示す。
【0400】
(実施例14)
1μm赤色ビーズ検出法による本発明のデバイスを使用したB型肝炎ウイルス抗原(HbsAg)に特異的な抗体の検出
1. 抗原カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに対して、100μgのHB抗原(30-AH15)を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0401】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0402】
2. 検出用の抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4% 1μmビーズに対して、200μgのAGLタンパク質を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0403】
その後、カップリングされたビーズを、5000gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0404】
3. 反応デバイス調製及び検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0405】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%の緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、2μlの4% HB抗原カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0406】
10μlの試料(HBsAg抗原10-H05G)を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。30μlの0.1% 1μm AGLタンパク質ビーズを添加する。洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された120μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0407】
4. 結果
図18は、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポットの存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映し、図は灰色の強度を示す。
【0408】
(実施例15)
本発明のデバイスを使用したB型肝炎ウイルス抗原の検出
1. 抗原カップリング
1mlのホモジナイズされた4%ビーズに対して、100μgのHB抗原(10-H05G)を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0409】
その後、カップリングされたビーズを、2500gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0410】
2. 検出用の抗体カップリング
1mlのホモジナイズされた4% 1μmビーズに対して、200μgのHB抗原(10-H05H)を3mlのPBS1Xに溶解し、添加する。溶液を一晩回転混合して、確実にカップリングさせる。
【0411】
その後、カップリングされたビーズを、5000gで5分間遠心分離する。最後に、ビーズペレットを、保存緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び0.25Mショ糖で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁し、導入ビーズ溶液の重量を元に戻す。
【0412】
3. 反応デバイス調製及び検出法としてHRP法を用いた検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0413】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%の緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、2μlの4%抗原HB抗体(10-H05G)カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0414】
50μlの試料(キット1701-12)を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。50μlの抗HB抗原抗体HRPコンジュゲート(キット1701-12)を添加する。洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、100μlの顕色緩衝液(TMB基質(キット1701-12))で洗浄する。15分後に画像を取得する。
【0415】
4. 反応デバイス調製及びビーズ法による検出手順
デバイスは、成型プラスチックカセットであり、そこに、0.6mmの厚さ及び9~12μmの多孔度のPorex HDPE疎水性膜、排水パッド(9610HY)、及び吸収パッド(クリニス)が組み立てられている。
【0416】
多孔性膜を、0.5μlの界面活性剤溶液(2%のTriton X-100及び1%の緑色素で補完されたリン酸緩衝生理食塩水)で親水化する。その後、2μlの4% HB抗体(10-H05G)カップリングビーズをスポッティングする。デバイスを、使用前に37℃、20%湿度で15分間乾燥させる。
【0417】
10μlの試料HB抗原(キット1701-12)を各ウェルに導入することにより、検出手順を開始する。100μlの0.025% HB抗体(10-H05H)1μmビーズを添加する。洗浄前に第1の画像を取得する。その後、反応ゾーンを、0.2%のTween-20で補完された120μlのリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。洗浄後に画像を取得する。
【0418】
5. 結果
図19aは、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポットの存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映し、図は灰色の強度を示す。
【0419】
図19bは、得られた画像を示し、画像には、免疫複合体の形成、したがって陽性反応を示す暗灰色スポットの存在が観察され、無色スポットの存在は陰性反応を反映し、図は灰色の強度を示す。