(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】補体阻害剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241011BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20241011BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241011BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241011BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241011BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241011BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20241011BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241011BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241011BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241011BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
C07K16/00
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
A61K38/17
A61K38/16
A61P9/00
A61P37/06
A61P7/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/00
A61P27/02
A61P13/12
A61P13/02
(21)【出願番号】P 2020571499
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066491
(87)【国際公開番号】W WO2019243586
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510319959
【氏名又は名称】ウニベルジテート ウルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フーバー-ラング,マルクス
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/142362(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/109208(WO,A1)
【文献】特表2017-517272(JP,A)
【文献】特表2017-509628(JP,A)
【文献】特表2012-504939(JP,A)
【文献】国際公開第2017/114401(WO,A1)
【文献】特表2017-500049(JP,A)
【文献】Immunobiology,2016年,Vol.221,pp.1217-1218 (191)
【文献】J. Am. Soc. Nephrol.,Vol.29,2018年,pp.1649-1661
【文献】Front. Cell. Infect. Microbiol.,2016年,Vol.6,Article 40 (pp.1-10)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)Fc受容体結合モジュール;
(ii)第1の補体制御タンパク質反復(CCP)モジュール;並びに
(iii)少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する第2のCCPモジュール
を含み;
前記第2のCCPモジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの、及び、前記第1のCCPモジュールのC末端にある、マルチモジュールポリペプチド
であって、
前記Fc受容体結合モジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの第2の分子とジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を多くとも1個含む、前記マルチモジュールポリペプチド。
【請求項2】
前記第1のCCPモジュールが、(i)補体活性化の古典的経路及び/若しくは代替経路の転換酵素のための転換酵素崩壊促進モジュールである、並びに/又は(ii)補体因子C3b及び/若しくはC4bのための結合モジュールである、請求項1に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項3】
前記第1のCCPモジュールが、H因子の、CCPドメイン1~4を含む;補体受容体1型(CR1)の、CCPドメイン1~3を含む;崩壊促進因子(DAF)の、CCPドメイン1~4を含む;及び/又はC4結合タンパク質(C4BP)の、CCPドメイン1~3を含む、請求項1又は2に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項4】
前記第1のCCPモジュールが、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項5】
前記第2のCCPモジュールが、シアル酸、若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物及び/又は補体因子C3b若しくはその分解産物に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項6】
前記第2のCCPモジュールが、H因子の、CCPドメイン19~20を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項7】
前記第2のCCPモジュールが、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項8】
前記Fc受容体結合モジュールが、IgGの、Fcモジュールである、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項9】
前記Fc受容体結合モジュールが、ジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を含まない、請求項
1に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項10】
非共有ホモ二量体を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項11】
前記Fc受容体結合モジュールが、配列番号3のアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも90%同一である配列を有するペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項12】
前記第1のCCPモジュール及び前記第2のCCPモジュールが一緒になって、配列番号4、5、6、若しくは7の1つのアミノ酸配列又は前記配列の少なくとも1つに対して少なくとも90%同一である配列を含むミニ-FHとして含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項13】
配列番号8に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項15】
医薬の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド及び/又は請求項
14に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項16】
不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための医薬の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチド及び/又は請求項
14に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項17】
不適切な補体活性化を症状として有する前記疾患が、虚血再灌流障害、抗体媒介性移植片拒絶、移植後血栓性微小血管症、自己免疫性溶血性貧血、急性及び遅発性溶血性輸血反応、寒冷凝集素症、関節リウマチ、アクアポリン-4抗体陽性の視神経脊髄炎、CD59欠乏、C3-糸球体症、非定型又は定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症、及び/又は加齢黄斑変性である、請求項
16に記載の使用。
【請求項18】
補体活性化を妨げる、又はその程度を低減するためのin vitro法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモジュールポリペプチドを、補体因子を含む反応混合物、組織、及び/又は器官に適用することを含み、それによって、前記反応混合物、組織、及び/又は器官における補体活性化を妨げる、又はその程度を低減する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)Fc受容体モジュール; (ii)第1の補体制御タンパク質反復(CCP)モジュール;並びに(iii)少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する第2のCCPモジュールを含むマルチモジュールポリペプチドであって、前記第2のCCPモジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの及び前記第1のCCPモジュールのC末端にある、マルチモジュールポリペプチドに関する。本発明はまた、前記マルチモジュールポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに医薬における使用のための、特に、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患の処置及び/又は予防における使用のための、前記マルチモジュールポリペプチドに関する。更に、本発明は、補体活性化を妨げる、又はその程度を低減するin vitro法であって、マルチモジュールポリペプチドを、補体因子(複数可)を含む反応混合物、組織、及び/又は器官に適用することを含み、それによって、前記反応混合物、組織、及び/又は器官(臓器)における補体活性化を妨げる、又はその程度を低減する、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、系統発生的により古い先天性免疫及び適応免疫応答という2つの枝に分けることができる。適応免疫系又は後天性免疫系による免疫応答は、典型的には、先天性免疫応答よりも特異的である。適応免疫系の他の特徴は、免疫学的記憶の発達、及び抗原の曝露と最大免疫応答との間に典型的に観察される遅延である。
【0003】
先天性免疫系は、原始生物にさえも高度に保存されている。この枝の細胞性エフェクターは、好中球、単球、及びマクロファージを主に含むが、一方、可溶性の先天性免疫エフェクターは、急性期タンパク質又は細孔形成ペプチドのような他のエフェクターに加えて、主に補体系からなる(Parkin & Cohen (2001) The Lancet 357: 1777-89.)。補体系は、血清中の熱不安定成分からなり、これは、細菌に対する抗体反応を「補完する」とPaul Ehrlichによって記載された。補体系の他の機能は、食細胞による取り込みを通してそれらの効果的なクリアランスを支持するための、微生物侵入物、免疫複合体、破片、アポトーシス細胞及びネクローシス細胞のオプソニン化である(Ricklin et al. (2010) Nature Immunology 11: 785-797)。補体系は、古典的経路(CP)、レクチン経路(LP)、及び代替経路(AP)という3つの活性化経路で構成されている。
【0004】
CPの活性化は、典型的には、パターン認識分子(PRM)として作用する補体成分C1qを介して抗体依存的様式で達成される。一連のタンパク質分解活性化事象の後、CPのC3転換酵素(C4bC2a)は、3つの補体活性化経路全ての中心である補体成分C3を、アナフィラトキシンであるC3a、及びC3b(オプソニン)へ切断する。この切断のために、コンフォメーション変化が起こり、以前は内部にあったチオエステル結合が、C3bのタンパク質表面に達する。この活性な、そして一旦露出すると短命な、チオエステル結合は、細胞表面上に局在する分子のヒドロキシル基及びアミノ基に共有結合することができるか、又は水によって溶解(「クエンチ」)され得る。結果として、C3転換酵素(C3コンベルターゼ)が下方制御されていない場合、多くのC3b分子による細胞のオプソニン化が起こり得る。大量のC3b分子の産生は、C5転換酵素によるC5の活性化を促進する。C5転換酵素は、C5をC5a(最も強力なアナフィラトキシン)及びC5bに切断し、これは、補体因子C6~9を動員して、膜侵襲複合体(MAC)を形成し、細胞膜に穴を組み立てて溶解し殺傷する。
【0005】
レクチン経路(LP)は、CPと同様に構成されている。活性化は、病原体関連分子パターン(PAMP)又は危険関連分子パターン(DAMP)の認識を介して起こる。LP内で、PAMP又はDAMPは、C1q(CPのパターン認識分子)に相同であるいくつかのパターン認識分子、すなわちマンノース結合レクチン(MBL)並びに様々な種類のコレクチン及びフィコリンによって検出することができる。PAMP又はDAMPに続いて、結合MBLはコンフォメーション変化を受け、次いで、MBL結合セリンプロテアーゼ(MASP)と結合する。MBLは、C1qと構造及び機能が相同である。CPと類似して、MASP2は、C2をC2a及びC2bに、そしてC4をC4a及びC4bにタンパク質分解的に活性化する。活性化された成分は、LPのC3転換酵素C4bC2aを構築することができ、これはCPと同一であり、C3をC3a及びC3bに切断する。CPと類似して、C3転換酵素の厳密な調節がない場合、より多くのC3b分子の産生は、C5転換酵素を介したC5の活性化を促進する。C5のタンパク質分解活性化は、C5bがMACの形成を開始する終末及び溶解補体経路の開始点である。
【0006】
代替経路は、低レベルで自己活性化の過程を通じて活性化される。この過程は、C3の「ティックオーバー(tick-over)」活性化と呼ばれる。C3分子は、本質的に準安定なコンフォメーションを有する。常に、少ない割合のC3分子は、自発的なコンフォメーション変化(活性化)を受け、それが以前には内部にあったチオエステルモジュールを露出させる。チオエステルは、水によってクエンチされるか、又は無差別に(自己又は外来に対して)細胞表面上の求核基に付着することができる。このような「自己活性化」C3は、C3(H2O)と呼ばれ、C3b分子と構造的に類似している。C3b又はC3(H2O)は、C3に隠れている新しいタンパク質表面を露出させる。これらの新しい表面は、APの別の補体因子であるB因子に結合する。B因子がC3b又はC3(H2O)に結合している場合、それは、プロテアーゼD因子によってBa及びBbに切断され得る。Bbは、C3(H2O)(又はC3b)に結合したままであり、APのC3転換酵素であるC3bBbを構成する。CP及びLPのC3転換酵素と類似して、C3bBbは、C3を切断することによってC3b分子及びC3a分子を産生することができる。APの正の調節因子であるタンパク質プロペルジン(Properdin)は、APのC3転換酵素のタンパク質-タンパク質相互作用を安定化することによって重要な役割を果たす。調節されていない場合、代替経路、古典的経路、又はレクチン経路によって生成されたいずれのC3bも、APのより多くのC3転換酵素を構築し、正のフィードバックループにおいて産生されたC3b分子の数を更に増幅することができる。このステップは、APの「増幅ループ」と呼ばれる。したがって、活性化の3つの経路は、C3活性化のレベルで収束し、調節されていない場合は、MAC形成に蓄積する。
【0007】
古典的経路及びレクチン経路は、それらが病原体又は内因性危険分子の感知を通じて特異的に活性化されるまで不活性である。反対に、APは、常に低レベルで活性であり、無差別にC3b(又は最初はC3(H2O))分子を産生する。補体系内の10を超える異なる調節タンパク質が公知である。一部の調節因子は、まさにCP及びLPを開始するレベルで阻害するが、最も厳密に制御されるカスケードの部分は、活性化シグナルの増幅器として作用する転換酵素、並びにC3転換酵素及び炎症性C5転換酵素を形成するプラットフォームを構築するC3bである。溶解性MACを特異的に制御するいくつかの調節因子も存在する。
【0008】
調節タンパク質は、C3転換酵素を不安定化し、転換酵素のより速い崩壊をもたらす崩壊促進因子に分類することができる。更なるグループは、H因子及びI因子のように、C3b又は/及びC4bを分解するタンパク質を含む; 可溶性プロテアーゼI因子による非特異的分解を防ぐために、C3b又はC4bの不活性化は、標的に結合し、I因子を動員する補因子タンパク質(例えばFH又はCR1)の存在を必要とする。調節因子の更なるグループは、MACの形成を阻害する。
【0009】
多くの疾患、特に遺伝性疾患は、補体の機能不全、特に補体の過剰活性化に関連している。したがって、補体系の人工的な調節因子を提供しようとして、補体タンパク質C5に特異的に結合し、終末活性化を阻害するモノクローナル抗体であるエクリズマブが開発された(Hillmen et al. (2006), NEJM355(12):1233)。同様の開発系統において、C5阻害タンパク質rEV576(コバーシン(coversin))が開発された(Romay-Penabad et al (2014), Lupus 23(12):1324)。更に、リンカーを介して補体H因子の補体制御タンパク質反復(CCPドメイン)1~4及び19~20を連結する「ミニ-FH」と呼ばれるタンパク質が得られた(WO 2013/142362 A1)。MiniFHは増大した補体制御活性を有し、複数の生体外及びex vivoアッセイにおいて、補体代替経路に向けられたその制御活性がFHよりも10倍、優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2013/142362号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】Parkin & Cohen (2001) The Lancet 357: 1777-89
【文献】Ricklin et al. (2010) Nature Immunology 11: 785-797
【文献】Hillmen et al. (2006), NEJM355(12):1233
【文献】Romay-Penabad et al (2014), Lupus 23(12):1324
【発明の概要】
【0012】
しかしながら、先行技術の欠点を回避する改善された補体阻害剤に対する必要性が当技術分野に依然として存在する。この課題は、本明細書に開示される手段及び方法によって解決される。
【0013】
したがって、本発明は、(i)Fc受容体モジュール; (ii)第1の補体制御タンパク質反復(CCP)モジュール;並びに(iii)少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する第2のCCPモジュールを含むマルチモジュールポリペプチドであって、前記第2のCCPモジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの及び前記第1のCCPモジュールのC末端にある、マルチモジュールポリペプチドに関する。
【0014】
下記で使用される場合、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」又は「含む(include)」又はそれらの任意の文法的な変化形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語により導入される特徴に加えて、更なる特徴がこの文脈において説明された実体に存在しない状況、及び1つ以上の更なる特徴が存在する状況の両方を意味し得る。一例として、「AはBを有する」、「AはBを含む(comprise)」及び「AはBを含む(include)」という表現は、Bに加えて、Aに他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが単独的及び排他的にBからなる状況)、並びに、Bに加えて、実体Aに1つ以上の更なる要素、例えば要素C、要素C及び要素D又は更なる要素が存在する状況の両方を意味し得る。
【0015】
更に、下記で使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より特に」、「詳しくは」、「より詳しくは」、又は同類の用語は、任意選択的な特徴と併せて使用され、更なる可能性を限定するものではない。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意選択的な特徴であり、いかなる場合も特許請求の範囲を限定することを意図するものでない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を使用することにより実施してもよい。同様に、「本発明の実施形態において」又は同様の表現により導入される特徴は、任意選択的な特徴であるものとし、本発明の更なる実施形態に関するいかなる限定もなく、本発明の範囲に関するいかなる限定もなく、またこうして導入された特徴を本発明の他の任意選択的特徴又は非任意選択的特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる限定もない。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「標準条件」は、別段の記載がない限り、IUPACの標準的な周囲温度及び圧力(SATP)条件、すなわち、好ましくは、25℃の温度および100kPaの絶対圧力に関する;また好ましくは、標準条件は、7のpHを含む。更に、別段の記載がない限り、用語「約」は、関連分野において一般に認められている技術的精度を有する表示値に関し、好ましくは、表示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。更に、用語「本質的に」は、示された結果または使用に対する影響を有する偏差が存在しないこと、すなわち、示された結果の、潜在的な偏差が±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%を超えた逸脱を引き起こさないことを示す。したがって、「から本質的になる」とは、特定された成分を含むが、不純物として存在する材料、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する避けられない材料、及び本発明の技術的効果を達成する以外の目的で添加される成分を除く他の成分を含まないことを意味する。例えば、語句「から本質的になる」を使用して定義される組成物は、任意の公知の許容し得る添加剤、賦形剤、希釈剤、担体等を包含する。好ましくは、セットの成分から本質的になる組成物は、5重量%未満、より好ましくは、3重量%未満、更により好ましくは、1重量%未満、最も好ましくは、0.1重量%未満の非特定成分を含むであろう。核酸配列の文脈では、用語「本質的に同一」は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性%値を示す。理解されるように、本質的に同一という用語は、100%の同一性を含む。前記のことは、変更すべきところは変更して、用語「本質的に相補的」にも適用される。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「Fc受容体」は、抗体、好ましくは、IgGのFc部分に対する親和性を有する、細胞表面上の、又はエンドソーム内の受容体に関する;したがって、好ましくは、Fc受容体は、新生児Fc受容体(FcRn)(又はFc-ガンマ受容体)であり、より好ましくは、Fc受容体は、CD64、CD32、CD16a、及びCD16bから選択される。好ましくは、Fc受容体は、哺乳動物Fc受容体、より好ましくは、ヒトFc受容体である。したがって、本明細書で使用される場合、用語「Fc受容体結合モジュール」は、本明細書の上で特定されたFc受容体に対する親和性を有するマルチモジュールポリペプチドのモジュール、好ましくは、ポリペプチドドメインに関する。好ましくは、Fc受容体結合モジュール及び少なくとも1つのFc受容体に関する解離定数KDは、多くとも10-6M、より好ましくは、多くとも10-7M、更により好ましくは、多くとも10-8Mである。好ましくは、Fc受容体は、本明細書の上で特定されたFcRnであり、FcRn/Fc受容体結合モジュール複合体の解離定数は、pH6で10-6M未満、好ましくは、10-7M未満である;また好ましくは、Fc受容体は、本明細書の上で特定されたFcRnであり、FcRn/Fc受容体結合モジュール複合体の解離定数は、pH7で少なくとも10-6M、好ましくは、少なくとも10-5Mである;したがって、好ましくは、Fc受容体は、本明細書の上で特定されたFcRnであり、FcRn/Fc受容体結合モジュール複合体の解離定数は、pH6で10-6M未満、好ましくは、少なくとも10-7M未満およびpH7で少なくとも10-6M、好ましくは、少なくとも10-5Mである。また好ましくは、FcRn/Fc受容体結合モジュール複合体の解離定数は、pH6と比較して、pH7で少なくとも5倍、より好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍高い。好ましくは、Fc受容体結合モジュールは、免疫グロブリン(Ig)、より好ましくは、IgG、更により好ましくは、IgG1のFcモジュールである。好ましい実施形態においては、Fc受容体結合モジュールは、前記Fc受容体結合モジュールの第2の分子とジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を多くとも1個含み、より好ましい実施形態においては、Fc受容体結合モジュールは、ジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を含まない。したがって、好ましい実施形態においては、マルチモジュールポリペプチドは、非共有ホモ二量体(非共有結合ホモ二量体)を形成する。最も好ましくは、Fc受容体結合モジュールは、配列番号3のアミノ酸配列又はそれと少なくとも70%同一である、好ましくは、配列番号3若しくは12のアミノ酸配列を有する配列を有するペプチドを含む。好ましい実施形態においては、Fc受容体結合モジュールは、アルブミン、好ましくは、ヒトアルブミン(Genbankアクセション番号AAA98797.1)又はマウスアルブミン(Genbankアクセション番号AAH49971.1)のFc受容体結合サブ配列(複数可)を含む。
【0018】
用語「補体制御タンパク質反復ドメイン」は、本明細書では「補体制御タンパク質反復」、「CCPドメイン」、又は「CCP」とも呼ばれ、当業界で「短い補体様反復」、「短いコンセンサス反復」又は「SCR」としても知られ、原則として、当業界で公知である;CCPドメインは、例えば、Schmidt et al. (2008), Clin Exp Immunol.151(1):14-24において概説された。CCPドメインは、保存されたトリプトファン及び2個のジスルフィド結合を形成する4個の保存されたシステイン残基を含む約60~70個のアミノ酸を含むペプチド配列であり、残りのアミノ酸のかなりの配列変化を含む。補体タンパク質C3b及び/又はC4bへの結合に加えて、CCPドメインは、更なる活性、例えば、本明細書において以下に特定される崩壊促進活性及びI因子補因子活性を媒介することが見出された。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「第1のCCPモジュール」は、少なくとも1つのCCPドメインを含み、(i)補体活性化の古典的経路及び/若しくは代替経路の転換酵素に対する転換酵素崩壊促進モジュールである;並びに/又は(ii)好ましくは、I因子補因子活性を更に有する、補体因子C3b及び/若しくはC4bに対する結合モジュールである、マルチモジュールポリペプチドのモジュールに関する。したがって、好ましくは、第1のCCPモジュールは、補体活性化の代替経路及び/又は古典的経路のC3転換酵素に対する崩壊促進活性を有する少なくとも1つのCCPドメインを含む。用語「崩壊促進活性」は、本明細書で使用される場合、補体活性化の代替経路のC3転換酵素、すなわちC3bBbの、及び/又は補体活性化の古典的経路のC3転換酵素、すなわちC4bC2aの崩壊、好ましくは不活性化を媒介するCCPドメイン又はCCPモジュールの特性に関する。好ましくは、CCPドメイン又はCCPモジュールの崩壊促進活性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。好ましくは、第1のCCPモジュールは、2~10個、より好ましくは2~5個、更により好ましくは3~4個の、上記の活性を有するか又はそれに寄与するCCPドメインを含む。好ましくは、第1のCCPモジュールは、H因子、好ましくは、ヒトH因子のCCPドメイン1~4を含む;本明細書において以下に特定される補体受容体1型(CR1)、好ましくは、ヒトCR1のCCPドメイン1~3を含む;本明細書において以下に特定される崩壊促進因子(DAF)、好ましくは、ヒトDAFのCCPドメイン1~4を含む;及び/又はC4結合タンパク質(C4BP)、好ましくは、ヒトC4BPのCCPドメイン1~3を含む。好ましくは、第1のCCP含有モジュールは、天然に存在する配列における補体受容体1型(CR1)のCCPドメイン1~3を含む; 及び/又は天然に存在する配列における崩壊促進因子(DAF)のCCPドメイン1~4を含む。好ましくは、第1のCCPモジュールは、ヒトH因子のCCPドメイン1~4を含む。より好ましくは、第1のCCPモジュールは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であり、かつ補体活性化の古典的経路及び/又は代替経路の転換酵素(コンベルターゼ)に対する転換酵素崩壊促進モジュールであるという活性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。より好ましくは、第1のCCPモジュールは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。
【0020】
また好ましくは、第1のCCPモジュールは、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する、好ましくは、I因子補因子活性を更に有する、少なくとも1個、好ましくは、少なくとも2個、より好ましくは、少なくとも3個のCCPドメインを含む。当業者によって理解されるように、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する1つ以上のCCPドメインは、上で特定された崩壊促進活性を有するCCPドメインとは異なるCCPドメインであってもよい;好ましくは、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する少なくとも1個、より好ましくは、少なくとも2個、更により好ましくは、少なくとも3個のCCPドメインはまた、崩壊促進活性を有するCCPドメインでもある;より好ましくは、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有するCCP(複数可)は、上で特定された崩壊促進活性を有するCCP(複数可)である。用語「補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性」は、当業者によって理解される。好ましくは、この用語は、測定可能な親和性で、より好ましくは、多くとも5x10-5M、より好ましくは、多くとも1x10-5M、更により好ましくは、多くとも10-6MのKDで補体タンパク質C3b及びC4bの少なくとも一方に結合する、第1のCCPモジュール及び/又はそのCCPドメインの少なくとも1つの特性に関する。好ましくは、CCP又はCCPモジュールの、C3b又はC4bに対する結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。好ましくは、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する少なくとも1つのCCPは、H因子のCCPドメイン1~4、CR1、好ましくは、ヒトCR1のCCPドメイン8~10及び15~17、及びC4BP、好ましくはヒトC4BPのCCPドメイン1~3からなる一覧から選択される。したがって、好ましくは、第1のCCPモジュールは、本明細書の他の箇所で特定されるように、CR1、好ましくは、ヒトCR1のCCPドメイン8~10及び/又は15~17を含む、又は更に含む。より好ましくは、第1のCCP含有モジュールは、CR1、好ましくは、ヒトCR1のCCPドメイン15~17を含む、又は更に含む。
【0021】
用語「補体受容体1型」又は「CR1」は、原則として、C3b/C4b受容体又は分化群35タンパク質(cluster of differentiation 35 protein、CD35)としても知られる、タンパク質の補体活性化調節因子(RCA)ファミリーのメンバーに関するものとして当業者に公知である。好ましくは、CR1は哺乳動物CR1であり、より好ましくは、CR1はヒトCR1である。最も好ましくは、CR1は、Genbankアクセション番号P17927.3 GI:290457678で特定されるアミノ酸配列を有するヒトCR1である。
【0022】
用語「崩壊促進因子」又は「DAF」はまた、原則として、分化群55タンパク質(cluster of differentiation 55 protein、CD55)としても知られる、補体系の細胞表面結合調節因子に関するものとして当業者に公知である。好ましくは、DAFは、哺乳動物DAF、より好ましくはヒトDAFである。最も好ましくは、DAFは、Genbankアクセション番号P08174.4 GI:60416353で特定されるアミノ酸配列を有するヒトDAFである。
【0023】
用語「H因子」はまた、I因子によるC3bの不活性化における、並びに代替補体経路におけるC3bBb複合体(C3転換酵素)及びC3bBb3b複合体(C5転換酵素)の解離の速度を増大させるための補因子として、当業者には公知である。好ましくは、H因子は、哺乳動物H因子、より好ましくは、ヒトH因子である。最も好ましくは、H因子は、Genbankアクセション番号NP_000177.2に特定されたアミノ酸配列を有するヒトH因子である。
【0024】
用語「C4BP」はまた、血清プロテアーゼI因子による補体タンパク質C4bのタンパク質分解的不活性化のためのC3b/C4bに対する補因子として結合する補体活性化の古典的経路の制御分子として、当業者には公知である。C4BPはまた、古典的補体経路におけるC4b2a複合体(C3転換酵素)及びC4b2a3b複合体(C5転換酵素)の解離速度を増大させる。好ましくは、C4BPは、哺乳動物C4BP、より好ましくは、ヒトC4BPである。最も好ましくは、C4BPは、Genbankアクセション番号NP_000706.1で特定されるアミノ酸配列を有するヒトC4BPである。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「第2のCCPモジュール」は、少なくとも1つの細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する活性を有するマルチモジュールポリペプチドのモジュールに関する。好ましくは、第2のCCPモジュールは、シアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に結合する活性、並びに/又は補体因子C3b若しくはC4b、及び/又はその分解産物、好ましくは、iC3b、C3dg、C3d、iC4b、C4dg及び/若しくはC4dに結合する活性を有する。好ましくは、第2のCCPモジュールは、少なくとも1つの宿主細胞表面マーカーに対する結合活性を有する。より好ましくは、第2のCCPモジュールは、少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー及び少なくともC3bに対する結合活性を有する。好ましくは、第2のCCPモジュールは、検出可能な転換酵素崩壊促進活性及び/又は検出可能なI因子補因子活性を有しない。したがって、より好ましくは、第2のCCPモジュールは、上に示された少なくとも1つの分子に対する結合活性のみを有し、最も好ましくは、補体調節活性活性を含まない。好ましくは、第2のCCPモジュールは、宿主細胞表面マーカー、好ましくは、シアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に対する結合活性を有し、並びに/又は補体因子C3b分解産物、好ましくはiC3b、C3dg、C3d、iC4b、C4dg及び/若しくはC4dに対する結合活性を有する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのCCPドメインを含む。好ましくは、第2のCCPモジュールは、本明細書の上で特定された補体H因子、好ましくは、ヒト補体H因子のCCPドメイン6~8及び/若しくは19~20、又はC4BPのアルファ鎖のCCPドメイン1~8のいずれかを含む。より好ましくは、第2のCCPモジュールは、本明細書の上で特定された補体H因子、好ましくは、ヒト補体H因子のCCPドメイン6~8及び/又は19~20を含む。更により好ましくは、第2のCCPモジュールは、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であり、好ましくは宿主細胞表面マーカー、好ましくはシアル酸及び/若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物に対する結合活性を有し、並びに/又は補体因子C3b分解産物、好ましくはiC3b及び/若しくはC3dgに対する結合活性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。より好ましくは、第2のCCPモジュールは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる。好ましくは、CCP又は宿主細胞認識モジュールの宿主細胞表面マーカーへの結合活性及び補体因子C3b分解産物への結合活性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「マルチモジュールポリペプチド」は、少なくともポリペプチドモジュール(本明細書において以下に特定される)を含む任意の化学分子に関する。モジュール間の化学結合が必ずしもペプチド結合である必要はないことは理解されるべきである。モジュール間の化学結合が、エステル結合、ジスルフィド結合、又は当業者に公知の任意の他の好適な共有化学結合であることも本発明によって想定される。モジュールが他のモジュールからごくわずかな程度までしか解離しないほど低い解離定数を有する非共有結合も想定される。好ましくは、前記非共有結合の解離定数は、10-5M未満(Strep-Tag:Strep-Tactin結合を用いる場合のように)、10-6M未満(Strep-TagII:Strep-Tactin結合の場合のように)、10-8M未満、10-10M未満、又は10-12M未満(ストレプトアビジン:ビオチン結合の場合のように)である。解離定数を決定する方法は、当業者に周知であり、例えば、分光学的滴定法、表面プラズモン共鳴測定、平衡透析等が挙げられる。更に、マルチモジュールポリペプチドのモジュール間の結合は間接的であること、例えば、モジュールが、ビオチンに対する親和性を有するタグを含み、ビオチン部分を含む更なる分子又は粒子に結合することもまた想定される。好ましくは、モジュール間の化学結合はペプチド結合であり、すなわち、好ましくは、マルチモジュールポリペプチドは本発明のモジュールを含むか又はそれからなる融合ポリペプチドである。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、本明細書に記載の成分からなる。
【0027】
好ましくは、ポリペプチド、特にマルチモジュールポリペプチド、及び/又はモジュール、特に、CCPモジュールへの言及は、本明細書に記載の特定のポリペプチド及びモジュールのバリアント(変異体)を含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチドバリアント」及び「モジュールバリアント」は、少なくともモジュール(単数又は複数)(本明細書に特定される)を含むが、示される前記ポリペプチド又はモジュールとは構造が異なる任意の化学分子に関する。好ましくは、ポリペプチドバリアント又はモジュールバリアントは、本明細書に特定されるポリペプチド又はモジュールに含まれる、25~500個、より好ましくは30~300個、最も好ましくは35~150個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。更に、本発明に従って言及されるポリペプチドバリアント又はモジュールバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加のために異なるアミノ酸配列を有するものとし、バリアントのアミノ酸配列は、依然として、好ましくは、特定のポリペプチド又はモジュールのアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、又は99%同一であることが理解されるべきである。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、当技術分野において周知のアルゴリズムによって決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定されるべきであり、ここで、比較ウィンドウにおけるアミノ酸配列の断片は、最適なアラインメントのために比較される配列と比較して、付加又は欠失(例えば、ギャップ又はオーバーハング)を含み得る。パーセンテージは、好ましくはペプチドの全長にわたって、両方の配列において同一のアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して、一致する位置の数を得て、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、及びTFASTA)、又は目視検査によって行ってもよい。2つの配列が比較のために同定されていることを考慮すると、GAP及びBESTFITが、好ましくは、それらの最適なアラインメント、及びしたがって同一性の程度を決定するために使用される。好ましくは、ギャップウェイトについて5.00、及びギャップウェイトレングスについて0.30のデフォルト値が使用される。上に言及されたポリペプチドバリアント又はモジュールバリアントは、対立遺伝子バリアント、又は任意の他の種特異的ホモログ、パラログ、若しくはオルソログに由来し得る。更に、本明細書で言及されるポリペプチドバリアントは、特定のポリペプチドの断片又は前述の種類のバリアントを含む(これらの断片及び/又はバリアントが、上に言及されるモジュールを含む限り)。そのような断片は、例えば、ポリペプチドの分解産物又はスプライスバリアントであり得るか、又はそれに由来し得る。非天然アミノ酸を含むことによって、及び/又はペプチド模倣物であることによって、翻訳後修飾、例えば、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、スモ化、又はミリスチル化によって異なるバリアントが、更に含まれる。
【0028】
好ましくは、マルチモジュールポリペプチドの少なくとも2つのモジュールは、「リンカー」ペプチドによって連結されている。適切なリンカーペプチドは、原則として、当技術分野において公知である。好ましいリンカーペプチドは、グリシン、アラニン、及び/又はプロリン残基を含むか、又は好ましくはそれからなる。より好ましくは、リンカーペプチドは、ポリグリシンリンカーペプチドである。最も好ましくは、リンカーペプチド、特に、本明細書の他の箇所に特定される第1のCCPモジュール及び第2のCCPモジュールを連結するリンカーペプチドは、14又は15個のグリシン残基を含む、好ましくはそれからなるリンカーである。他の好ましいリンカーは、5又は8個のグリシン残基からなるリンカーである。好ましくは、2つのモジュールが、N末端モジュールの最後のアミノ酸及び/又はC末端モジュールの最初のアミノ酸をG残基に交換することによって連結されることも想定される。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「Xに対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むモジュール」は、前記モジュールに対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有する、上で特定されたモジュールのバリアントを含むモジュールに関する。好ましくは、Xに対して少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むモジュールは、Xの活性を有するXのバリアントであり、より好ましくは本明細書に特定されている通りである。
【0030】
したがって、好ましくは、本発明のマルチモジュールポリペプチド及びそのバリアントは、好ましくはin vitro及び/又はin vivoで、補体活性化の阻害剤であるという活性を有する、すなわち、補体反応を阻害する活性を有する。好ましくは、マルチモジュールポリペプチド及びそのバリアントは、補体系の少なくとも2つ、より好ましくは3つ全ての活性化経路を阻害する活性を有する。より好ましくは、マルチモジュールポリペプチド及びそのバリアントは、補体活性化の少なくとも代替経路及び古典的経路を阻害する活性を有し、好ましくは補体活性化の少なくとも代替経路、古典的経路、及びレクチン経路を阻害する活性を有する。
【0031】
好ましくは、マルチモジュールポリペプチドは、連続するポリペプチド配列として、そのモジュールの少なくとも2つを含み、好ましくはそのモジュールの3つ全てを含み、すなわち、マルチモジュールポリペプチドは、好ましくは、前記3つのモジュールを含む融合ポリペプチドである。好ましくは、原則として、3つのモジュールは、当業者によって適切と見なされる任意の順序で、そのような融合ポリペプチド中に含まれていてもよいが、但し、第2のCCPモジュールは、前記Fc受容体結合モジュールの及び前記第1のCCPモジュールのC末端である。好ましくは、マルチモジュールポリペプチドは、N末端からC末端の順に、Fc受容体結合モジュール、第1のCCPモジュール、及び第2のCCPモジュールの示されたモジュールを含む。理解されるように、マルチモジュールポリペプチドは、好ましくは、本明細書で言及されるもの以外の更なるドメイン及び構造エレメントを含んでもよい。より好ましくは、マルチモジュールポリペプチドは、本明細書で言及されるエレメントからなる。しかしながら、好ましくは、少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する活性を有するCCPドメイン(複数可)は、他のCCPドメイン及びFc受容体結合モジュールのC末端にあり、より好ましくは、少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する活性を有するCCPドメイン(複数可)は、マルチモジュールポリペプチドのC末端エレメントである。更により好ましくは、マルチモジュールポリペプチドは、配列番号8又は10に示されるアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなるか、又は本明細書において上で特定されたそのバリアントであり、好ましくは、前記バリアントは、上で特定された補体活性化の阻害剤であるという活性を依然として有する。最も好ましくは、マルチモジュールポリペプチドは、配列番号8又は10に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくは、それからなる。
【0032】
有利には、細胞に結合するCCPドメインが、得られる分子のC末端にあるか、又はC末端に近くなるように、Fc受容体結合モジュールと細胞に結合するCCPドメインとを含むマルチモジュールポリペプチドを構築することが重要であるということが、本発明の基礎となる研究において見出された。驚くべきことに、この配置は、マルチモジュールポリペプチドの血漿半減期に有意に影響しなかったが、有効濃度/用量に対しては明確な影響を有していた。
【0033】
上述した定義は、下記に必要な変更を加えて適用する。下記で更に述べた追加の定義及び説明はまた、本明細書に記載した全ての実施形態についても必要な変更を加えて適用する。
【0034】
本発明は更に、本発明のマルチモジュールポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドに関する。
【0035】
用語「ポリヌクレオチド」は、本発明に従って使用される場合、本明細書において上で特定されたモジュールを含むマルチモジュールポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。前述のモジュールを含むマルチモジュールポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、周知技術を用いて関連モジュールをコードするポリヌクレオチドを合成することによって、本発明に従って得られた。
【0036】
したがって、ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号8又は10に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、配列番号9又は11に示される核酸配列を含む。配列番号8又は10に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドはまた、縮重遺伝コードのために、他のポリヌクレオチドによってコードされてもよいことが理解されるべきである。
【0037】
更に、用語「ポリヌクレオチド」は、本発明に従って使用される場合、前述の特定のポリヌクレオチドのバリアントを更に包含する。ポリヌクレオチドバリアントは、好ましくは、配列が、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加及び/又は欠失によって配列番号9及び11に示される上述の特定の核酸配列から誘導することができ、それによって、バリアント核酸配列が、上に特定される活性を含むポリペプチドを依然としてコードするものとすることを特徴とする核酸配列を含む。バリアントは、配列番号9及び11に示される核酸配列の少なくとも1つに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。更に、配列番号8又は10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含される。同一性パーセント値は、好ましくは、全アミノ酸又は核酸配列領域にわたって計算される。異なる配列を比較するための様々なアルゴリズムに基づいた一連のプログラムを当業者は利用することができる。この文脈において、Needleman及びWunsch又はSmith及びWatermanのアルゴリズムにより特に信頼性の高い結果が得られる。配列アラインメントを実施するには、GCGソフトウェアパケット(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991))の一部である、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151-153)、又はプログラムGap及びBestFit(Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970))、及びSmith and Waterman(Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981))を使用することができる。上記においてパーセント(%)で列挙した配列同一性値は、好ましくは、以下の設定: ギャップウェイト: 50、レングスウェイト: 3、アベレージマッチ: 10.000、及びアベレージミスマッチ: 0.000(別段の記載がない限り、配列アラインメントの標準設定として常に使用されるものとする)で、配列領域全体に対してプログラムGAPを使用して決定することができる。バリアントはまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前述の特定の核酸配列にハイブリダイズすることが可能な核酸配列を含むポリヌクレオチドを包含する。これらのストリンジェントな条件は当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6で確認することができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に関する好ましい例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中のハイブリダイゼーション条件、続いて0.2×SSC、0.1% SDS、50~65℃での1回以上の洗浄ステップである。これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸の種類に応じて、及び例えば、有機溶媒が存在する場合、緩衝液の温度及び濃度に関して異なることは、当業者には理解される。例えば、「標準ハイブリダイゼーション条件」下では、温度は、核酸の種類に応じて、0.1~5×SSC(pH7.2)の濃度を有する水性緩衝液中42℃から58℃の間で異なる。有機溶媒が上述の緩衝液、例えば50%ホルムアミド中に存在する場合、標準条件下の温度は約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば0.1×SSC及び20℃~45℃、好ましくは30℃から45℃の間である。DNA:RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば0.1×SSC及び30℃~55℃、好ましくは45℃から55℃の間である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、長さが約100bp(=塩基対)であり、ホルムアミドの非存在下で50%のG+C含有量を有する核酸について決定される。当業者は、教科書、例えば上で言及した教科書、又は以下の教科書: Sambrook et al., "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames and Higgins (Ed.) 1985, "Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (Ed.) 1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxfordを参照することにより、必要とされるハイブリダイゼーション条件をどのように決定するかが分かる。或いは、ポリヌクレオチドバリアントは、PCRに基づく技術、例えば、DNAの混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づく増幅により、すなわち、本発明のポリペプチドの保存モジュールに対する縮重プライマーを使用して得ることができる。本発明のポリペプチドの保存モジュールは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列、又はポリペプチドのアミノ酸配列の、他のCCPドメインの配列との配列比較によって同定してもよい。鋳型として、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト由来のDNA又はcDNAを使用してもよい。
【0038】
前述の核酸配列のいずれかの断片を含むポリヌクレオチドも、本発明のポリヌクレオチドとして包含される。断片は、上に特定されるモジュールを含み、及び好ましくは上に特定される活性を依然として有するポリペプチドをコードするものとする。したがって、ポリペプチドは、前記生物活性を付与する本発明のモジュールを含み得るか、又はそれからなり得る。本明細書で意味する場合の断片は、好ましくは、前述の核酸配列の少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも250個又は少なくとも500個の連続するヌクレオチドを含むか、又は前述のアミノ酸配列の少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも80個、少なくとも100個又は少なくとも150個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは、前述の核酸配列からなるか、又は前述の核酸配列を含むかのいずれかである。したがって、それらは更なる核酸配列もまた含有し得る。詳しくは、本発明のポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードしてもよく、融合タンパク質の一方のパートナーは、上記の核酸配列によってコードされているマルチモジュールポリペプチドである。そのような融合タンパク質は、追加の部分として、発現をモニターするための他のポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色、又は赤色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ等)、又は検出可能マーカーとして若しくは精製目的のための補助手段として役立ち得るいわゆる「タグ」を含んでもよい。様々な目的のためのタグは、当技術分野において周知であり、FLAGタグ、6-ヒスチジンタグ、MYCタグ等を含む。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチド(すなわち、その天然のコンテキストから単離されたもの)として、又は遺伝子操作された形態でのいずれかで提供されるものとする。ポリヌクレオチドは、好ましくは、cDNAを含むDNA、又はRNAである。この用語は、一本鎖ポリヌクレオチド、及び二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。更に、天然に存在する修飾ポリヌクレオチドを含む化学的に修飾されたポリヌクレオチド、例えばグリコシル化ポリヌクレオチド若しくはメチル化ポリヌクレオチド、又は人工修飾されたもの、例えばビオチン化ポリヌクレオチドも含まれる。
【0041】
したがって、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、a) 配列番号9に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドであり、b) 配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドをコードし、及び/又はc) 配列番号9にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドである。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、a) 配列番号9又は11の核酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリヌクレオチドであり、及び/又はb) 配列番号8又は10のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリペプチドをコードする。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、上に特定される活性を有するマルチモジュールポリペプチドをコードする。
【0042】
本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドを含む、ベクターに関する。
【0043】
用語「ベクター」は、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクター、並びに人工染色体、例えば、細菌人工染色体又は酵母人工染色体を包含する。更にこの用語はまた、ターゲティング構築物のゲノムDNAへのランダム又は部位特異的組込みを可能にするターゲティング構築物に関する。そのようなターゲティング構築物は、好ましくは、以下に詳細に記載されるように相同組換え又は異種組換えのいずれかにとって十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主における増殖及び/又は選択のための選択マーカーを更に含む。ベクターは、当技術分野において周知の様々な技術により宿主細胞に組み込まれ得る。例えば、プラスミドベクターは、沈澱物、例えば、リン酸カルシウム沈澱物若しくは塩化ルビジウム沈澱物に、又は帯電した脂質との複合体に、又は炭素系クラスター、例えばフラーレンに導入することができる。或いは、プラスミドベクターは、熱ショック又はエレクトロポレーションの技術により導入され得る。ベクターがウイルスであるならば、宿主細胞への適用前に、適切なパッケージング細胞株を使用してin vitroでパッケージングしてもよい。レトロウイルスベクターは、複製コンピテント又は複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、補完する宿主/細胞のみにおいて起こる。
【0044】
より好ましくは、本発明のベクターにおいて、ポリヌクレオチドは、原核細胞及び/若しくは真核細胞、又は単離されたその画分における発現を可能にする発現調節配列に作動的に連結される。前記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの、ポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を保証する調節エレメントは、当技術分野において周知である。それらは、好ましくは、転写の開始を保証する調節配列を含み、任意選択で、転写の終止及び転写物の安定化を保証するポリ-Aシグナルを含む。追加の調節エレメントとしては、転写エンハンサー、及び翻訳エンハンサーを挙げることができる。原核宿主細胞における発現を許容する、可能性のある調節エレメントは、例えば、大腸菌(E. coli)におけるlac、trp又はtacプロモーターを含み、また真核宿主細胞における発現を許容する調節エレメントの例は、酵母におけるAOX1若しくはGAL1プロモーター、又はCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、又は哺乳動物及び他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。更に、誘導性発現調節配列は、本発明に包含される発現ベクターにおいて使用され得る。そのような誘導性ベクターは、tet若しくはlacオペレーター配列、又は熱ショック若しくは他の環境因子によって誘導可能な配列を含み得る。適切な発現調節配列は、当技術分野において周知である。転写開始を担うエレメントに加えて、そのような調節エレメントはまた、ポリヌクレオチドの下流にある、転写終結シグナル、例えば、SV40-ポリ-A部位又はtk-ポリ-A部位を含み得る。この文脈において、適切な発現ベクターは当技術分野において公知であり、例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pBluescript(Stratagene社)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(InVitrogene社)又はpSPORT1(GIBCO BRL社)等である。好ましくは、前記ベクターは、発現ベクター、及び遺伝子移入若しくはターゲティングベクターである。ウイルス、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、又はウシパピローマウイルス由来の発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを標的細胞個体群に送達するのに使用してもよい。当業者に周知の方法を使用して組換えウイルスベクターを構築することができる; 例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.、及びAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載されている技術を参照されたい。
【0045】
好ましくは、ベクターは、宿主細胞における本発明のポリヌクレオチドの発現を媒介するベクターである。当業者は、ベクターと、ベクターの増殖のための、及び/又はベクターによってコードされるタンパク質の発現のための宿主細胞との組み合わせをどのように選択するかを知っている。
【0046】
更に、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0047】
「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、本発明のベクターを増殖させる能力、及び/又は本発明のベクター若しくはポリヌクレオチド上にコードされるマルチモジュールポリペプチドを産生する能力を有する細菌細胞、古細菌細胞、又は真核細胞に関する。好ましくは、宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)種由来の細菌細胞、鱗翅類細胞、マウス細胞、ラット細胞、又はヒト細胞である; より好ましくは、細胞は、酵母細胞、好ましくはピキア(Pichia)属のもの、より好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞である。好ましくは、宿主細胞は、in vitroで培養された細胞である。更に好ましい実施形態において、宿主細胞は、in vivoの細胞、好ましくは網膜色素上皮細胞、脈絡膜血管系内の内皮細胞、及び/又は網膜若しくは脈絡膜内の別の細胞である。
【0048】
本発明はまた、医薬に使用するための、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター及び/又は本発明による宿主細胞に関する。更に、本発明はまた、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター及び/又は本発明による宿主細胞に関する。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「不適切な補体活性化」は、タイミング及び/又は大きさにおいて、所定の状況下の補体活性化の正常レベルを超える補体活性化に関する。したがって、好ましくは、不適切な補体活性化は、所定の状況下の健康な参照、好ましくは見かけ上健康な対象の補体活性化の程度を超える、好ましくは顕著に超える補体活性化である。好ましくは、不適切な補体活性化は、患者において疾患の症状を引き起こす補体活性化である。不適切な補体活性化の症状は、当技術分野において公知であり、溶血、黄斑変性、一時的な腫脹、例えば遺伝性血管浮腫におけるもの等を含む。好ましくは、不適切な補体活性化は、サンプル中の補体因子C3及び/又はC4活性を決定することによって決定される。
【0050】
当業者に知られているように、様々な疾患が、不適切な補体活性化に関連し、及び/又はそれによって引き起こされる。したがって、好ましくは、本発明はまた、不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターに関する。好ましい実施形態において、不適切な補体活性化を症状として有する疾患は、Ricklinら(2017), Mol Immunol. 89:10-21により開示されている疾患から選択される。好ましくは、前記の不適切な補体活性化を症状として有する疾患は、虚血再灌流障害、抗体媒介性移植片拒絶、移植後血栓性微小血管症、自己免疫性溶血性貧血、急性及び遅発性溶血性輸血反応、寒冷凝集素症、関節リウマチ、アクアポリン-4抗体陽性の視神経脊髄炎、CD59欠乏、C3-糸球体症、非定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症、及び加齢黄斑変性からなるリストから選択される。
【0051】
用語「処置する」は、本明細書で使用される場合、本明細書で言及される疾患若しくは障害又はそれに伴う症状を、好ましくは有意な程度まで、改善することを意味する。また前記処置するは、本明細書で使用される場合、本明細書で言及される疾患又は障害に関する健康の完全回復も含む。本発明に従って使用される場合の処置は、処置しようとする全ての対象において有効ではないかもしれないことを理解されたい。しかし、この用語は、好ましくは、本明細書で言及される疾患又は障害に罹患している対象の統計的に有意な部分が順調に処置され得ることを必要とするものとする。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計用評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値決定、スチューデントt検定、マンホイットニー検定等を使用し、それ以上作業することなく当業者によって決定され得る。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。好ましくは、処置は、所定のコホート又は個体群の対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に有効であるものとする。
【0052】
用語「予防する」は、本明細書で使用される場合、本明細書で言及される疾患又は障害に関する健康を、対象において一定期間維持することを意味する。前記期間は、投与された薬物化合物の量、及び本明細書の他の箇所で論じられている対象の個々の因子に依存することが理解される。予防は、本発明による化合物で処置される全ての対象において有効ではないかもしれないことも理解されるべきである。しかし、この用語は、好ましくは、コホート又は個体群の対象の統計的に有意な部分が、本明細書で言及される疾患若しくは障害、又はそれに付随する症状に罹患することから効果的に予防されることを必要とする。好ましくは、通常、すなわち本発明による予防策なしで、本明細書で言及される疾患又は障害を発症する対象のコホート又は個体群が、この文脈において想定される。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、本明細書の他の箇所で論じられている様々な周知の統計的評価ツールを使用して、それ以上作業することなく当業者によって決定され得る。
【0053】
本発明はまた、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブと組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、又は本発明によるベクターに関する。
【0054】
本発明は更に、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター及び/又は本発明による宿主細胞と組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ、又はrEV576(コバーシン)に関する。
【0055】
用語「補体タンパク質C5」は、補体経路の活性化後に切断されて補体タンパク質C5a及びC5bをもたらすタンパク質に関するものとして当業者によって理解される。対応して、「補体タンパク質C5阻害ポリペプチド」は、補体タンパク質C5を特異的に認識し阻害するポリペプチド、好ましくは抗体、より好ましくはモノクローナル抗体である。好ましくは、補体タンパク質C5阻害ポリペプチドは、C5に特異的に結合し終末活性化を阻害する抗体である; より好ましくは、補体タンパク質C5阻害ポリペプチドは、エクリズマブ(CAS番号: 219685-50-4)である。また好ましくは、補体タンパク質C5阻害ポリペプチドは、rEV576(コバーシン)である。
【0056】
本発明は更に、(i)本発明によるマルチモジュールポリペプチド、及び(ii)補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ又はrEV576(コバーシン)を含む、同時、個別又は連続使用のための組合せ製剤に関する。
【0057】
用語「組合せ製剤」は、本出願において言及される場合、1つの製剤中に本発明の薬学的に活性な化合物を含む製剤に関する。好ましくは、組合せ製剤は容器に含まれており、すなわち、好ましくは、前記容器は本発明の全ての薬学的に活性な化合物を含む。好ましくは、前記容器は、別々の製剤として、すなわち、好ましくは、マルチモジュールポリペプチドの1つの製剤、及び補体タンパク質C5阻害ポリペプチドの1つの製剤として、本発明の薬学的に活性な化合物を含む。当業者には理解されるように、用語「製剤」は、本発明の少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む、又はそれからなる化合物の(好ましくは薬学的に許容される)混合物に関する。好ましくは、組合せ製剤は、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド及びマルチモジュールポリペプチドを単一の固体医薬形態、例えば錠剤中に含み、より好ましくは、本発明の1つの化合物は、即時放出製剤又は急速放出製剤に含まれ、本発明の第2の化合物は、徐放製剤又は遅延放出製剤に含まれる; より好ましくは、本発明の化合物は、2つの別々の、好ましくは液体の製剤に含まれる; 前記別々の液体製剤は、好ましくは注射用である(好ましくは対象の体の異なる部分における)。
【0058】
好ましくは、組合せ製剤は、個別投与用又は併用投与用である。「個別投与」は、本明細書で使用される場合、本発明の薬学的に活性な化合物の少なくとも2つが、異なる経路を介して、及び/又は対象の体の異なる部分に投与される投与に関する。例えば、1つの化合物は腸内投与によって(例えば経口的に)投与され得るが、第2の化合物は非経口投与によって(例えば静脈内に)投与される。好ましくは、個別投与用の組合せ製剤は、個別投与用の少なくとも2つの物理的に分離された製剤を含み、それぞれの製剤は少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含有し; 例えば、組合せ製剤の薬学的に活性な化合物を、それらの化学的性質又は生理学的性質のために、異なる経路によって、例えば非経口的及び経口的に投与しなければならない場合に、前記選択肢は好ましい。逆に、「併用投与」は、本発明の薬学的に活性な化合物が同じ経路を介して、例えば、経口的に又は好ましくは静脈内に投与される投与に関する。
【0059】
また好ましくは、組合せ製剤は、同時投与用又は連続投与用である。「同時投与」は、本明細書で使用される場合、本発明の薬学的に活性な化合物が同時に投与される、すなわち、好ましくは、薬学的に活性な化合物の投与が15分未満の時間間隔内に、より好ましくは5分未満の時間間隔内に開始される投与に関する。最も好ましくは、薬学的に活性な化合物の投与は、例えば、薬学的に活性な化合物を含む錠剤を呑み込むことによって、又は薬学的に活性な化合物の1つを含む錠剤を呑み込み、同時に第2の化合物を注射することによって、又は1つの薬学的に活性な化合物を含む溶液の静脈内注射を適用し、体の異なる部分に第2の化合物を注射することによって、同時に開始する。逆に「連続投与」は、本明細書で使用される場合、本発明の相乗効果を可能にする、対象における薬学的に活性な化合物の血漿濃度をもたらす投与であるが、好ましくは、本明細書において上に特定される同時投与ではない投与に関する。好ましくは、連続投与は、薬学的に活性な化合物、好ましくは全ての薬学的に活性な化合物の投与を1日又は2日の時間間隔内で、より好ましくは12時間の時間間隔内で、更により好ましくは4時間の時間間隔内で、更により好ましくは1時間の時間間隔内で、最も好ましくは5分の時間間隔内で開始する投与である。
【0060】
好ましくは、組合せ製剤は、薬学的に適合性のある組合せ製剤である。用語「薬学的に適合性のある製剤」及び「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、本発明の化合物、及び任意選択により1つ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物に関する。本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として製剤化することができる。好ましい許容される塩は、酢酸塩、メチルエステル、HCl、硫酸塩、塩化物等である。医薬組成物は、好ましくは局所投与され、又はより好ましくは全身投与される。薬物投与に通常使用される適切な投与経路は、経口投与、静脈内投与、皮下投与、又は非経口投与、並びに吸入である。しかし、化合物の性質及び作用機序に応じて、医薬組成物は、他の経路によって同様に投与され得る。更に、化合物は、通常の医薬組成物中で、又は本明細書の別の箇所に特定される個別の医薬組成物として、他の薬物と組み合わせて投与することができ、前記個別の医薬組成物はパーツのキット形態で提供してもよい。好ましくは、組合せ製剤は、1つ以上の化合物に関して長期放出製剤である。
【0061】
化合物は、好ましくは、従来の手順に従って、標準の医薬担体と薬物とを組み合わせることによって調製された従来の剤形で投与される。これらの手順は、所望の製剤にとって適切な成分を混合、造粒、及び圧縮又は溶解することを含み得る。薬学的に許容される担体又は希釈剤の形態及び特性は、それが組み合わせられる有効成分の量、投与経路、及び他の周知の変動要因によって決定されることは理解されよう。
【0062】
担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合性があり、その受容者に有害でないという意味において許容されなければならない。使用される医薬担体は、例えば、固体、ゲル又は液体であり得る。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等である。液体担体の例は、リン酸緩衝生理食塩水、シロップ、落花生油及びオリーブ油等の油、水、乳剤、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液等である。同様に、担体又は希釈剤は、当技術分野で周知の時間遅延材料、例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレート等を単独で、又はワックスと共に含んでいてもよい。前記適切な担体は、上記のもの及び当技術分野で周知の他のものを含み、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。
【0063】
希釈剤(複数可)は、化合物(単数又は複数)の生物活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。更に、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤、活性酸素スカベンジャー等を含んでいてもよい。
【0064】
治療上有効量は、本明細書で言及されている疾患又は状態に伴う症状を予防、改善又は処置する、本発明の医薬組成物中で使用される化合物の量を意味する。そのような化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準の製薬手順、例えばED50(個体群の50%で治療上有効な用量)及びLD50(個体群の50%に対する致死用量)によって決定することができる。治療効果と毒性作用との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比率として表すことができる。
【0065】
投与計画は、主治医及び他の臨床学的因子によって、好ましくは上記の方法のいずれか1つに従って決定される。医学分野において周知であるように、任意のある患者のための投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的な健康状態、並びに同時に投与される他の薬物を含めた、多くの因子に依存する。経過は、定期的評価によってモニターすることができる。典型的な用量は、例えば、1~1500mgの範囲であり得る; しかし、この例示範囲の下方又は上方の用量が特に前述の因子を考慮して予測される。一般に、医薬組成物の規則的投与としての投与計画は、1日当たり100μg~100mg単位の範囲内であるべきである。投与計画が持続注入である場合はまた、毎分体重1キログラム当たり100μg~100mg単位の範囲内にそれぞれあるべきである。好ましくは、それぞれの薬物の長期放出製剤は、1週間に1回から2ヶ月に1回、又は更により長い間隔で注射される。経過は、定期的評価によってモニターすることができる。本発明の化合物の好ましい用量及び濃度は、本明細書の他の箇所に特定されている。
【0066】
例として、マルチモジュールポリペプチドの血漿濃度は、好ましくは、25nM以上、より好ましくは50nM以上である。また好ましくは、マルチモジュールポリペプチドの血漿濃度は、20nM~20μM、より好ましくは50nM~5μMの範囲である。補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、特にエクリズマブの有効濃度は、当技術分野において公知である。本発明のマルチモジュールポリペプチドの相乗効果により、併用処置における補体タンパク質C5阻害ポリペプチドの有効濃度は低くなり得る。
【0067】
本明細書で言及されている医薬組成物及び製剤は、好ましくは、本明細書で挙げた疾患又は状態を処置又は改善又は予防するために、例えば長期放出製剤の場合、少なくとも1回投与される。しかし、前記医薬組成物は、2回以上、例えば、毎日1~4回を非限定的な日数まで投与してもよい。短いクリアランス時間を有するいくつかの化合物はまた、長い処置時間中に全身に有効量を提供するために、血流中の注入として適用してもよい。
【0068】
特定の医薬組成物は、製薬分野において周知の方法で調製され、本明細書において上に言及される少なくとも1つの活性化合物を、薬学的に許容される担体又は希釈剤との混合物中で、又は他のやり方でこれらと結び付けて含む。これらの特定の医薬組成物の製造については、活性化合物(複数可)は、通常、担体若しくは希釈剤と混合されるか、又は、カプセル、サッシェ、カシェ、ペーパー若しくは他の適切な容器若しくはビヒクルに封入若しくはカプセル化される。得られた製剤は、投与様式に適合させることができ、すなわち錠剤、カプセル剤、坐剤、溶液、懸濁液等の形態である。推奨投与量は、考慮される受容者に応じて投与量の調整を予期するために、処方者又は使用者の指示書に表示されるものとする。
【0069】
本発明はまた、(i)マルチモジュールポリペプチド、(ii)補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、及び(iii)少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬; 及び上に特定される処置及び/又は予防に使用するための前記医薬に関する。
【0070】
用語「医薬」は、当業者には理解される。理解されるように、「組合せ製剤」という用語について本明細書において上に与えられた定義は、好ましくは、必要な変更を加えて本発明の医薬という用語に適用される。
【0071】
更に、本発明は、対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する方法であって、
有効量の、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター及び/又は本発明による宿主細胞を前記対象に投与すること
を含み、それによって、前記対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する、方法に関する。
【0072】
本発明の処置及び/又は予防方法は、好ましくは、in vivo法である。更に、それは、上に明確に言及されるものに加えたステップを含み得る。例えば、更なるステップは、例えば、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を診断すること、又は追加の化合物、例えば補体タンパク質C5阻害ポリペプチドを投与することに関連し得る。更に、前記ステップの1つ以上は、自動化された装置によって実施してもよい。
【0073】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、補体系を有する動物、好ましくは哺乳動物に関する。より好ましくは、対象は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌ、マウス、又はラット、最も好ましくはヒトである。
【0074】
更に、本発明は、補体活性化の程度を妨げる、又は低減するin vitro法であって、
本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター及び/又は本発明による宿主細胞を、補体因子を含む反応混合物、組織及び/又は器官(臓器)に適用すること
を含み、それによって、前記反応混合物、組織及び/又は器官における補体活性化の程度を妨げる、又は低減する、方法に関する。
【0075】
本発明の補体活性化の程度を妨げる、又は低減するin vitro法は、上に明確に言及されるものに加えたステップを含み得る。例えば、更なるステップは、例えば、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを宿主細胞に導入すること、又は前記反応混合物、組織及び/又は器官中の補体活性化の程度を決定することに関連し得る。更に、前記ステップの1つ以上は、自動化された装置によって実施してもよい。好ましくは、方法は、生体外で反応混合物に対して行われる。
【0076】
更に、本発明は、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター及び/又は本発明による宿主細胞
の使用; 及び不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための医薬の製造のための、本発明によるマルチモジュールポリペプチド、本発明によるポリヌクレオチド、本発明によるベクター及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0077】
上記を考慮すると、以下の実施形態が好ましい。
1.(i)Fc受容体結合モジュール;
(ii)第1の補体制御タンパク質反復(CCP)モジュール;並びに
(iii)少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する第2のCCPモジュールを含み;
前記第2のCCPモジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの及び前記第1のCCPモジュールのC末端にある、マルチモジュールポリペプチド。
【0078】
2.N末端からC末端の順に、Fc受容体結合モジュール、第1のCCPモジュール、及び第2のCCPモジュールの前記モジュールを含む、実施形態1に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0079】
3.前記第1のCCPモジュール及び第2のCCPモジュールが、複数のCCPドメインを含む、実施形態1又は2に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0080】
4.前記第1及び/又は第2のCCPモジュールが、2~10個、好ましくは2~5個、より好ましくは3~4個のCCPドメインを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0081】
5.前記第1のCCPモジュールが、H因子、好ましくは、ヒトH因子のCCPドメイン1~4を含む;補体受容体1型(CR1)、好ましくは、ヒトCR1のCCPドメイン1~3を含む;崩壊促進因子(DAF)、好ましくは、ヒトDAFのCCPドメイン1~4を含む;及び/又はC4結合タンパク質(C4BP)、好ましくは、ヒトC4BPのCCPドメイン1~3を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0082】
6.前記第1のCCPモジュールが、(i)補体活性化の古典的経路及び/若しくは代替経路の転換酵素のための転換酵素崩壊促進モジュールである、並びに/又は(ii)好ましくは、I因子補因子活性を更に有する、補体因子C3b及び/若しくはC4bのための結合モジュールである、実施形態1~5のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0083】
7.前記第1のCCPモジュールが、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~6のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0084】
8.前記第1のCCPモジュールが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~7のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0085】
9.前記第2のCCPモジュールが、シアル酸、(若しくは)グリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物、及び/又は補体因子C3b若しくはその分解産物に結合する、実施形態1~8のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0086】
10.前記第2のCCPモジュールが、H因子、好ましくは、ヒトH因子のCCPドメイン19~20を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0087】
11.前記第2のCCPモジュールが、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~10のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0088】
12.前記第2のCCPモジュールが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~11のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0089】
13.前記Fc受容体結合モジュールが、免疫グロブリン(Ig)のFcモジュールである、実施形態1~12のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0090】
14.前記Fc受容体結合モジュールが、IgG、好ましくはIgG1のFcモジュールである、実施形態1~13のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0091】
15.前記Fc受容体結合モジュールが、配列番号3のアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一である配列を有する、好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列を有するペプチドを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0092】
16.連続するポリペプチド配列として、前記モジュールの少なくとも2つを含み、好ましくは連続するポリペプチド配列として、前記モジュールの3つ全てを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0093】
17.前記第1のCCPモジュール及び/又は前記第2のCCPモジュールが、H因子、好ましくは、ヒトH因子のCCPドメイン1~4を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0094】
18.前記第1のCCPモジュール及び前記第2のCCPモジュールが一緒になって、配列番号4、5、6、若しくは7の1つのアミノ酸配列又は前記配列の少なくとも1つに対して少なくとも70%同一である配列を含む、好ましくは、配列番号4、5、6又は7の1つのアミノ酸配列を含むミニFHとして含まれる、実施形態1~17のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0095】
19.前記モジュールの少なくとも2つが、リンカーペプチド、好ましくは、ポリ-AG又はポリ-Gリンカーペプチドによって連結されている、実施形態1~18のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0096】
20.前記第1のCCPモジュールと、前記第2のCCPモジュールとが、1~15個、好ましくは、1、5、8、14、又は15個のグリシン残基を含む、好ましくは、それからなるリンカーによって連結されている、実施形態1~19のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0097】
21.配列番号8に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~20のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0098】
22.配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~21のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0099】
23.前記第1のCCPモジュールが、補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有し、I因子補因子活性を有する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのCCPを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載のマルチドメインポリペプチド。
【0100】
24.補体因子C3b及び/又はC4bに対する結合活性を有する前記CCPが、I因子補因子活性を有する、実施形態23に記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0101】
25.補体反応を阻害する活性を有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0102】
26.補体系の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ全ての活性化経路を阻害する活性を有する、実施形態1~25のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0103】
27.補体活性化の少なくとも代替経路及び古典的経路を阻害する活性を有し、好ましくは補体活性化の少なくとも代替経路、古典的経路、及びレクチン経路を阻害する活性を有する、実施形態1~26のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0104】
28.実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【0105】
29.前記ポリヌクレオチドが、
a)配列番号又は9に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドであり、
b)配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドをコードし、及び/又は
c)ストリンジェントな条件下で配列番号9にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドである、実施形態28に記載のポリヌクレオチド。
【0106】
30.前記ポリヌクレオチドが、
a)配列番号9若しくは11の核酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリヌクレオチドであり、及び/又は
b)配列番号8若しくは10のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるポリペプチドをコードする、
実施形態28又は29に記載のポリヌクレオチド。
【0107】
31.実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【0108】
32.実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド及び/又は実施形態31に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【0109】
33.医薬に使用するための、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、及び/又は実施形態32に記載の宿主細胞。
【0110】
34.不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、及び/又は実施形態32に記載の宿主細胞。
【0111】
35.虚血再灌流障害、抗体媒介性移植片拒絶、移植後血栓性微小血管症、自己免疫性溶血性貧血、急性及び遅発性溶血性輸血反応、寒冷凝集素症、関節リウマチ、アクアポリン-4抗体陽性の視神経脊髄炎、CD59欠乏、C3-糸球体症、非定型又は定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症、及び/又は加齢黄斑変性を処置及び/又は予防するための、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、又は実施形態32に記載の宿主細胞。
【0112】
36.補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ又はrEV576(コバーシン(coversin))と組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するのに使用するための、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、又は実施形態32に記載の宿主細胞。
【0113】
37.実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、又は実施形態32に記載の宿主細胞と組み合わせて、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するのに使用するための、補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ。
【0114】
38.(i)実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、又は実施形態32に記載の宿主細胞及び(ii)補体タンパク質C5阻害ポリペプチド、好ましくはエクリズマブ又はrEV576(コバーシン)を含む、同時的、個別的または逐次的使用のための組合せ調製物。
【0115】
39.対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する方法であって、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、及び/又は実施形態32に記載の宿主細胞の有効用量を前記対象に投与することを含み、それによって、前記対象における不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防する、方法。
【0116】
40.補体活性化を妨げる、又はその程度を低減するためのin vitro法であって、実施形態1~28のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチドを、補体因子を含む反応混合物、組織、及び/又は器官に適用することを含み、それによって、前記反応混合物、組織、及び/又は器官における補体活性化を妨げる、又はその程度を低減する、方法。
【0117】
41.不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、及び/又は実施形態32に記載の宿主細胞の使用。
【0118】
42.不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための薬剤を製造するための、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド、実施形態28~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態31に記載のベクター、及び/又は実施形態32に記載の宿主細胞の使用。
【0119】
43.前記Fc受容体結合モジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの第2の分子とジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を多くとも1個含む、好ましくは、ジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を含まない、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0120】
44.非共有(型)ホモ二量体を形成する、実施形態1~27又は43のいずれか1つに記載のマルチモジュールポリペプチド。
【0121】
本明細書で引用された全ての参考文献は、それらの開示内容全体及び本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【
図1-1】天然の、操作された、及びFc融合された構築物。(A)天然の補体調節因子であるH因子(FH)及び以前に操作されたFHバリアントであるミニFHのドメインの略図である。アミノ酸の番号付けは、シグナル配列を含む、コードされたFH配列(UniProtアクセション番号:P08603)に基づく。それぞれの卵形は、CCPドメインを表す(ドメイン番号が示される)。天然のN及びC末端残基は1文字コードで示される;非天然のリンカー配列は囲みで示される。CCPドメインの重要な機能特性を、上で強調する。(B)IgG分子及び3つのミニFH Fc融合分子のドメイン構造の図である。ポリペプチド鎖間ジスルフィド結合(S-S架橋)のみが描写され、矢印で強調されていることに留意されたい。鎖間ジスルフィド架橋は、IgGの重鎖と軽鎖の定常ドメインの間、ミニFH-Fc及びFc-ミニFHの重鎖と重鎖との間に存在する。内部の、すなわち、ポリペプチド鎖内のジスルフィド結合は、描写も強調もされていない。
【
図1-2】(C)ミニFH及びミニFHの3つの異なるFc融合物バリアントのSDS-PAGEゲル分析。2μgの各タンパク質を、還元及び非還元条件下でNovex NuPAGE 4~12%Bis-Tris SDS-PAGEゲル上にロードし、クマシー染色によって可視化した。
【
図2】マウスにおけるミニFH及び3つのFc融合物バリアントの血漿半減期の決定。ミニFH又は3つのミニFH Fc融合物バリアントの平均血漿循環レベル。タンパク質の血漿レベルを、注射後の示された時間に収集された血液から調製された血漿中で、ELISAによって測定した(0.1mg)。平均±SD;ミニFH n=3、Fc-ミニFH-short n=5、他の全てn=4。
【
図3】ミニFH及びミニFHのFc融合物バリアントのC3b結合活性。ミニFH(A)、ミニFH-Fc(C)、Fc-ミニFH(E)及びFc-ミニFH-short(G)のC3b結合に関する表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラム(特定された濃度範囲でアッセイした;4030 RUのC3bがアミンによって沈着した)。(B)ミニFH(B)、ミニFH-Fc(D)、Fc-ミニFH(F)及びFc-ミニFH-short(H)についてのC3b結合に関する親和性を適合させた(1:1の安定状態の親和性適合)、対応する濃度応答プロットが示されている。親和性平衡定数はペイン中に記述されている。
【
図4】補体代替経路媒介性溶解からのウサギ赤血球の保護。ウサギ赤血球を、示された補体阻害剤の1つと混合した血清(健康なドナー由来)中で30分間インキュベートした。アッセイにおける最終血清濃度は、25%であった。ウサギ赤血球の溶解を、ヘモグロビン放出によって測定し、水中で観察された溶解に対して正規化した(SDと共に平均3回の独立したアッセイを示す)。
【
図5】Fc融合した崩壊促進因子(DAF又はCD55)構築物。IgG分子及び2つのDAF Fc融合分子のドメイン構造の図である。
【
図6】Fc-DAF及びDAF-Fc融合物バリアントのBb結合活性。Fc-DAF(A)、DAF-Fc(B)のBb結合に関するSPRセンサーグラム。
【
図7】Fc-DAF及びDAF-Fc融合物バリアントのC3b結合活性。アッセイしたFc-DAF(A)、DAF-Fc(B)のC3b結合;(C)Fc-DAF及びDAF-FcのC3b結合に関するSPRセンサーグラム(それぞれ1.0μMの濃度で1回注入)。
【
図8】補体代替経路媒介性溶解からのウサギ赤血球の保護。ウサギ赤血球を、示された補体阻害剤の1つと混合した血清(健康なドナーのプール由来)中で30分間インキュベートした。アッセイにおける最終血清濃度は、25%であった。ウサギ赤血球の溶解を、ヘモグロビン放出によって測定し、水中で観察された溶解に対して正規化した。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。それらは、何であれ、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0124】
実施例1:組換えタンパク質及びFH
天然に存在する(完全長)血漿タンパク質H因子(FH)を、血漿から精製し、商業的供給源であるCompTech (Tyler、USA)から購入した。組換えタンパク質ミニFH、並びにミニFH(配列番号4)、ミニFH-Fc(配列番号13)、Fc-ミニFH(配列番号10)、及びFc-ミニFH-short(配列番号8)の3つの異なるFc融合物を、以前に記載された手順(Schmidt et al. (2013), J. Immunol. 190(11):5712-5721)で生成及び精製した。異なるFc:ミニFH融合タンパク質のDNA構築物を構築するために、コドン最適化された(宿主であるピチア・パストリス(Pichia pastoris)のため)ミニFHをコードするDNA及びコドン最適化された(宿主であるピチア・パストリス(Pichia pastoris)のため)、Fc部分のためのコードDNAを、pPICZαB Pichia pastoris発現ベクター(Invitrogen)中にクローニングした。コドン最適化されたDNAを、GeneArtから取得した。特異的に導入された制限酵素部位(PstI、XmaI及びXbaI)を使用して、Fc部分及びミニFHをコードするDNAを消化し、所望の向きをもたらす様式で、pPICZαB Pichia pastoris発現ベクター中に一緒にライゲーションした(構築物の概観については、
図1を参照されたい)。ピチア・パストリス株KM71H又はGS115(Invitrogen)への発現カセットの形質転換を、製造業者の説明書に従って実行し、記載された手順(わずかに変化させている)(Schmidt et al. (2011), Protein Expr. Purif. ;76(2):254-263)に従って、発酵器を使用してP.pastoris中で発現させた。タンパク質を、連続陽イオン及び/又は陰イオン交換クロマトグラフィーステップ、次いで、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。全ての組換え構築物の天然アミノ酸配列は、非天然配列EAEAAG(配列番号14)、EAAG(配列番号15)又はAG(配列番号15)に先行されると予想され、EA配列は、酵母分泌シグナルペプチドのプロセシングの残存物であり(Cereghino et al. (2000), FEMS Microbiol. Rev. 24(1):45-66)、AGはクローニング人工物である。
【0125】
実施例3:代替経路ウサギ赤血球溶血アッセイ
アッセイを、以前に公開されたように(Schmidt et al. (2016), Immunobiology. 221(4):503-511)、わずかに変化させて実行した。簡単に述べると、PBS中の20μlの補体阻害剤を、Mg-EGTAを含有する10μlのNHS(CompTech)と混合した(5mMの最終アッセイ濃度)。懸濁液中の10μlのウサギ赤血球(rRBC)を添加し、ミックスを37℃で30分間インキュベートした。反応を停止させるために、120μlの氷冷PBS/EDTA(5mM)を添加した。100μlの上清のA405を測定することによって、rRBC溶解を定量した。
【0126】
実施例4:表面プラズモン共鳴(SPR)によりモニタリングした、補体Fc融合物バリアントのC3bへの結合
表面プラズモン共鳴実験を、25μl/分の流量で、0.005%Tween20を含有するPBS中、Reichert SR7500DC SPR機器上、25℃で実施した。4030応答単位(RU)のC3bを、カルボキシメチルデキストラン(CMD)500センサーチップ(Xantec)上に固定し、アミン結合したC3bへの結合をアッセイした。分析物を、示された濃度で注入した。結合を精査するために、ミニFH又はミニFHのFc融合物の濃度系列を注入(25μl/分で2.5分)した後、300秒間にわたって緩衝液を流し、30秒間にわたる1M NaClの注入からなる再生ステップを行った。各系列の最高濃度を2回注入して、再現性を評価した。必要に応じて、安定状態での応答を、モル濃度に対してプロットした後、1:1安定状態親和性モデルを使用するTRACEDRAWERソフトウェアを用いて親和性を適合させることにより、親和性定数を抽出した。参照を差し引いたセンサーグラムを通して示す。
【0127】
実施例5:マウスにおける血漿半減期の決定
BALB/cマウスに、滅菌PBS中の0.1mgの分析タンパク質をi.v.により注入した。調査したタンパク質分析物を、必要に応じて、適用前に内毒素から清浄したので、用量は体重1kgあたり5EUの内毒素を超えなかった。典型的には、タンパク質分析物の注入の1、2、4、8、24、30、48、54及び72時間後に、血液を尾から取り出し、5mM EDTAを含有する同量のPBSと混合して、凝固反応を停止させた。2000~3000gで3分間にわたってEDTA-血液混合物をスピンすることによって、血漿を調製した。血漿を液体窒素中で凍結保存し、-80℃で保存した後、それぞれの時点でマウス血漿中のタンパク質分析物のレベルを決定するためのサンドイッチELISAにおいて使用した。
【0128】
マウス血漿中のミニFH又はミニFHのFc融合物バージョンの1つを決定するために、マイクロタイタープレート(MaxiSorp; Nunc)を、室温で2時間又は4℃で一晩、PBS中の50μl/ウェルで、2μg/mlの捕捉抗体(抗ヒト補体H因子(クローン:C18/3)、ストック:1mg/ml)でコーティングした。200μl/ウェルのPBST(PBS+0.05%Tween)で2回洗浄した後、ウェルを、RTで1時間にわたって200μl/ウェルのPBS中の1%BSA(=BSA-PBS)でブロックした。次いで、ウェルを、マウス血漿試料又は設定された濃度の分析物と、未処置のマウスの血漿とを混合することによって調製された対応する分析物の標準曲線の試料のいずれかの希釈液に曝露した。試料を、RTで30分間、ウェル中でインキュベートした後、PBST(200μl)で3回洗浄した。次いで、50μlのヤギ抗ヒトH因子ポリクローナル抗体(非コンジュゲート化、ストック:1.0mg/ml、カタログ番号A237、CompTech)を、PBS-BSA(1%BSAを含有するPBS)中、1:1000の溶液で添加し、RTで30分間インキュベートした。この後、PBST(200μl)で3回、ウェルを洗浄した。次いで、PBS-BSA中の1:1000の希釈率の溶液(santa cruz biotechnology)のロバ抗ヤギIgG HRP 50μlを添加し、RTで30分間インキュベートした。PBST(200μl)で3回洗浄した後、10mlのpH4.3の0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液、5mgのABTS(Roche)及び10μlの30%H2O2の新鮮に調製された混合物50μlを添加することによって、プレートを展開した。吸光度を405nmで読み取った。
【0129】
実施例6:ミニFHの異なるFc-融合物バージョンの生産
ミニFHの血漿半減期を増大させるために、ミニFHのポリペプチドを、IgG抗体のFc部分に融合した。ミニFHをFc部分に連結する3つの異なる方法が実現された(
図1B)。第1に、ミニFHのC末端を、Fc部分のN末端に融合した。すなわち、ミニFH-Fcである。第2の構築物においては、ミニFHのN末端を、Fc部分のC末端に融合した。すなわち、Fc-ミニFHである。そして、第3の構築物においては、ミニFHのN末端を、Fc部分のC末端に融合したが、今回は、Fc部分はより短いN末端配列からなり、したがって、IgGの重鎖のジスルフィド二量体化ドメインを欠く。すなわち、Fc-ミニFH-shortである。しかしながら、非常に高い親和性の、2つの同一のCH3ドメイン間の非共有相互作用のため、この構築物は、生理的条件下(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって確立することができる)では依然として安定な二量体である。これは、公開された報告(Ridgway et al. (1996), Protein Eng. 9(7):617-621; McAuley et al. (2008), Protein Sci. Publ. Protein Soc. 17(1):95-106)と一致する。ミニFHの3つ全てのFc融合物バリアントを、宿主であるピチア・パストリス中で上手く組換え産生し、高純度に精製することができた(
図1C)。
【0130】
実施例6:ミニFHの、Fc部分のN又はC末端への融合は、同様に血漿半減期の増大をもたらす
Fc融合物が血漿半減期にどのように影響するかを評価するために、約0.1mgのミニFH又はミニFHの3つのFc融合物バリアントの1つを、マウスにi.v.により注入し、いくつかの時点で血漿試料を収集し、これらの試料中に存在するタンパク質の量を分析することによって、血漿半減期を決定した。
図2は、ミニFHが、約2.5時間のベータ相血漿半減期を示すが、ミニFHのFc融合物バリアントはいずれも、約20時間の劇的に増大したベータ相血漿半減期(T(1/2))(ミニFH-Fc T(1/2)=23.1時間; Fc-ミニFH T(1/2)=21.1時間; Fc-ミニFH-short T(1/2)=16.5時間)を有することを示す。ミニFHの3つの異なるFc融合物バージョン間の血漿半減期の実質的な差異は決定できなかった。
【0131】
実施例7:ミニFHの、Fc部分のC末端への融合は、補体活性化産物C3bに対するより高い親和性をもたらす
Fc融合物バリアントはいずれも二量体化、したがって、ミニFHの結合パートナーに対するアビディティを導入するため、全てのFc融合物バリアントは、ミニFH自体よりも、ミニFHの主な標的(すなわち、C3b)に良好に結合すると期待される。ミニFHの、その標的であるC3bに対する予想されるより高い親和性の誘導因子は、二量体化によるアビディティの導入であるため、一方のFc融合物戦略が別のFc融合物戦略よりも良好な親和性をもたらすとは予測されなかった。しかしながら、
図3は、両方のFc-ミニFH融合物バリアント(Fc-ミニFH及びFc-ミニFH-short)が、Fcの向きが異なっているバリアントであるミニFH-Fcよりも、表面プラズモン共鳴(SPR)実験においてC3bに実質的に良好に結合することを示す。したがって、Fc-ミニFH及びFc-ミニFH-shortは、ミニFH-Fcよりも主な補体標的C3bに約3倍良好に結合する。参照物質として作用したミニFHについては、SPRアッセイ手法を交差検証して、以前に測定されたように、同じ親和性が決定された(Harder et al. (2016), J. Immunol. Baltim. Md 1950 196(2):866-876)。
【0132】
実施例8:ミニFHの、Fc部分のC末端への融合はまた、ヒト血清中でより高い補体調節活性をもたらし、したがって、細胞保護の増加をもたらす
次いで、主な補体標的であるC3bに対するより高い親和性が補体調節活性の増強をももたらすかどうかを調査した。ヒト血清をウサギ赤血球と混合した時に、ウサギ赤血球が補体の代替経路によって溶解される溶血アッセイにおいて、これを調査した。ミニFH-Fc、Fc-ミニFH及びFc-ミニFH-shortを、ミニFHと共にこのアッセイにおいて試験した。
図4は、実際に、Fc-ミニFH及びFc-ミニFH-short(Fc-ミニFH-短)のC3bに対するより高い親和性が、ミニFH-Fcと比較した場合、より高い補体調節活性をもたらしたことを示す。また、ミニFH-Fcは、二量体の結果得られるアビディティのため、ミニFHよりもわずかに高い(約2倍)C3bに対する親和性を示す。しかし、このわずかな増加は、ミニFHと比較した場合、補体代替経路活性に向かうより高い調節力を引き起こさない。補体カスケードを調節するミニFH及びミニFH-Fcの活性は、非常に類似している。対照的に、Fc-ミニFH方向のFc融合物は、ミニFH(又はミニFH-Fc)と比較して約4倍高い補体調節活性をもたらした。したがって、ミニFH N末端のFc部分 C末端への非典型的な融合は、主な補体標的であるC3bに対するより高い親和性だけでなく、ヒト血清中で顕著により高い全体的な補体調節活性ももたらした。
【0133】
実施例9:Fc-DAF及びDAF-Fc融合物バリアントのBb結合活性を試験するために(
図5)、それぞれのバリアントを、0.5μMの同一の濃度でSPRにおいて2回アッセイして、再現性を証明した。2600RUのBbを、標準的なアミンカップリングによってカルボキシメチルデキストランセンサーチップ上に沈着させた。泳動緩衝液は、1mM MgCl2及び0.005%Tween20を添加したPBSであった。参照を差し引いたセンサーグラムのみを
図6に示す。同様に、Fc-DAF及びDAF-Fc融合物バリアントのC3b結合活性を試験するために、それぞれのバリアントを、0.1μMの同一の濃度でSPRにおいて2回アッセイして、再現性を証明した。5610RUのC3bを、標準的なアミンカップリングによってカルボキシメチルデキストランセンサーチップ上に沈着させた。泳動緩衝液は、1mM MgCl2及び0.005%Tween20を添加したPBSであった。参照を差し引いたセンサーグラムのみを
図7に示す。更に、
図8に示されるように、補体代替経路により媒介される溶解からのウサギ赤血球の保護を試験した。
【0134】
両タンパク質を同じアッセイ内で同じ濃度でアッセイしたところ、2つの融合物バージョンのBbへの結合にはわずかな差異しかなかったが(
図6)、Fc-DAFはC3bに実質的に結合する一方、DAF-FcはC3bに結合することができない(
図7)。単離された成分への結合におけるこの差異がまた、血清中の全補体カスケードの全体としての調節差をもたらすかどうかを更に調査するために、ウサギ赤血球がヒト血清により補体依存的に溶解されるようになり、補体阻害剤の添加がこの溶解を防止する標準的な補体活性化アッセイを使用した。このアッセイは、結合アッセイにおいて見られるFc-DAFとDAF-Fcとの間の機能的差異(
図7)が、細胞保護アッセイにおいても血清中の全体的な補体調節活性の実質的な差異として現れることを証明する(
図8)。2μMのFc-DAFはウサギ赤血球の溶解を防止したが、2μMのDAF-Fcはほぼ完全な溶解をもたらした。実施例9から導くことができるとおり、Fcモジュールを補体活性化の調節因子のN末端に融合することは、それをC末端に融合するよりも高い調節活性が得られる。
【0135】
言及された非標準文献
- Cereghino et al. (2000), FEMS Microbiol. Rev. 24(1):45-66.
- Harder et al. (2016), J. Immunol. Baltim. Md 1950. 196(2):866-876.
- Hillmen et al. (2006), NEJM355(12):1233
- McAuley et al. (2008), Protein Sci. Publ. Protein Soc. 17(1):95-106.
- Parkin & Cohen (2001) The Lancet 357: 1777-89.
- Ricklin et al. (2010) Nature Immunology 11: 785-797
- Ricklin et al (2017), Mol Immunol. 89:10-21
- Ridgway et al. (1996), Protein Eng. 9(7):617-621.
- Romay-Penabad et al (2014), Lupus 23(12):1324
- Schmidt et al. (2008), Clin Exp Immunol.151(1):14-24
- Schmidt et al. (2011), Protein Expr. Purif. 76(2):254-263.
- Schmidt et al. (2013), J. Immunol. 190(11):5712-5721.
- Schmidt et al. (2016). Immunobiology.221(4):503-511.
- 国際公開第2013/142362号A1
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] (i)Fc受容体結合モジュール;
(ii)第1の補体制御タンパク質反復(CCP)モジュール;並びに
(iii)少なくとも1つの宿主細胞表面マーカー、補体因子C3b、補体因子C4b、補体因子C3bの分解産物、及び/又は補体因子C4bの分解産物に結合する第2のCCPモジュール
を含み;
前記第2のCCPモジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの、及び、前記第1のCCPモジュールのC末端にある、マルチモジュールポリペプチド。
[2] 前記第1のCCPモジュールが、(i)補体活性化の古典的経路及び/若しくは代替経路の転換酵素のための転換酵素崩壊促進モジュールである、並びに/又は(ii)補体因子C3b及び/若しくはC4bのための結合モジュールであり、好ましくはさらにI因子補因子活性を有する、実施形態1に記載のマルチモジュールポリペプチド。
[3] 前記第1のCCPモジュールが、H因子、好ましくは、ヒトH因子の、CCPドメイン1~4を含む;補体受容体1型(CR1)、好ましくは、ヒトCR1の、CCPドメイン1~3を含む;崩壊促進因子(DAF)、好ましくは、ヒトDAFの、CCPドメイン1~4を含む;及び/又はC4結合タンパク質(C4BP)、好ましくは、ヒトC4BPの、CCPドメイン1~3を含む、実施形態1又は2に記載のマルチモジュールポリペプチド。
[4] 前記第1のCCPモジュールが、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~3のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[5] 前記第2のCCPモジュールが、シアル酸、若しくはグリコサミノグリカンを含むポリアニオン性炭水化物及び/又は補体因子C3b若しくはその分解産物に結合する、実施形態1~4のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[6] 前記第2のCCPモジュールが、H因子、好ましくは、ヒトH因子の、CCPドメイン19~20を含む、実施形態1~5のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[7] 前記第2のCCPモジュールが、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~6のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[8] 前記Fc受容体結合モジュールが、IgG、好ましくはIgG1の、Fcモジュールである、実施形態1~7のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[9] 前記Fc受容体結合モジュールが、前記Fc受容体結合モジュールの第2の分子とジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を多くとも1個含む、好ましくは、ジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を含まない、実施形態1~8のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[10] 非共有ホモ二量体を形成する、実施形態1~9のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[11] 前記Fc受容体結合モジュールが、配列番号3のアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも70%同一である配列を有する、好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列を有する、ペプチドを含む、実施形態1~10のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[12] 前記第1のCCPモジュール及び前記第2のCCPモジュールが一緒になって、配列番号4、5、6、若しくは7の1つのアミノ酸配列又は前記配列の少なくとも1つに対して少なくとも70%同一である配列を含む、好ましくは、配列番号4、5、6又は7の1つのアミノ酸配列を含むミニ-FHとして含まれる、実施形態1~11のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[13] 配列番号8に示されるアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、実施形態1~12のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド。
[14] 実施形態1~13のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
[15] 医薬における使用のための、好ましくは、不適切な補体活性化及び/又は不適切な補体活性化を症状として有する疾患を処置及び/又は予防するための、実施形態1~13のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチド及び/又は実施形態14に記載のポリヌクレオチド。
[16] 不適切な補体活性化を症状として有する前記疾患が、虚血再灌流障害、抗体媒介性移植片拒絶、移植後血栓性微小血管症、自己免疫性溶血性貧血、急性及び遅発性溶血性輸血反応、寒冷凝集素症、関節リウマチ、アクアポリン-4抗体陽性の視神経脊髄炎、CD59欠乏、C3-糸球体症、非定型又は定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症、及び/又は加齢黄斑変性である、実施形態15に記載の使用のためのマルチモジュールポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド。
[17] 補体活性化を妨げる、又はその程度を低減するためのin vitro法であって、実施形態1~13のいずれかに記載のマルチモジュールポリペプチドを、補体因子を含む反応混合物、組織、及び/又は器官に適用することを含み、それによって、前記反応混合物、組織、及び/又は器官における補体活性化を妨げる、又はその程度を低減する、方法。
【配列表】