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特許7570246生産工程管理システム及び生産工程管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】生産工程管理システム及び生産工程管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20241011BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20241011BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021016723
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119526
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】中谷 和孝
(72)【発明者】
【氏名】杉本 崇
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 和人
(72)【発明者】
【氏名】多胡 昇
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-357010(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162435(WO,A1)
【文献】特開2008-046721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設部材の生産工程に関する生産工程情報を取得する生産工程情報取得部と、
前記建設部材の生産工程に用いられる建設機器の位置情報を取得する第1位置情報取得部と、
前記生産工程のうち、前記建設機器の位置情報に基づいて前記建設機器を用いる機器使用工程期間を判定する工程判定部と、を備え、
前記建設機器は、コンクリート打設機又は生コンホッパーであり、
前記機器使用工程は、打設工程である、
生産工程管理システム。
【請求項2】
建設部材の生産工程に関する生産工程情報を取得する生産工程情報取得部と、
前記建設部材の生産工程に用いられる建設機器の位置情報を取得する第1位置情報取得部と、
前記生産工程のうち、前記建設機器の位置情報に基づいて前記建設機器を用いる機器使用工程期間を判定する工程判定部と、を備え、
前記建設部材は、プレキャストコンクリートである、
生産工程管理システム。
【請求項3】
前記第1位置情報取得部は、前記建設機器が第1領域に第1閾値以上の間、継続して滞留しているか否かに関する前記建設機器の位置情報を取得する、
請求項1又は2に記載の生産工程管理システム。
【請求項4】
前記工程判定部は、前記生産工程情報に基づいて、前記生産工程のうち、少なくとも1つ以上の前記機器使用工程以外の工程期間を判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の生産工程管理システム。
【請求項5】
作業者が前記生産工程のうち担当可能な生産工程を含む作業者情報を取得する作業者情報取得部と、
前記作業者の位置情報を取得する第2位置情報取得部と、
をさらに備え、
前記工程判定部は、前記作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、前記生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の開始時及び終了時を判定する、
請求項に記載の生産工程管理システム。
【請求項6】
前記工程判定部は、前記作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、前記生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の作業実績を判定する、
請求項に記載の生産工程管理システム。
【請求項7】
前記第2位置情報取得部は、前記作業者が第2領域に第2閾値以上の間、継続して滞留しているか否かに関する前記作業者の位置情報を取得する、
請求項5又は6に記載の生産工程管理システム。
【請求項8】
前記第2領域及び前記第2閾値は、前記生産工程の各工程に応じて設定される、
請求項に記載の生産工程管理システム。
【請求項9】
前記機器使用工程以外の工程は、セット工程及び脱型工程のうち、少なくともいずれかの工程を含む、
請求項に記載の生産工程管理システム。
【請求項10】
プロセッサを含む生産工程管理システムが実行する生産工程管理方法であって、
建設部材の生産工程に関する生産工程情報を取得する生産工程情報取得ステップと、
前記建設部材の生産工程に用いられる建設機器の位置情報を取得する第1位置情報取得ステップと、
前記生産工程のうち、前記建設機器の位置情報に基づいて前記建設機器を用いる機器使用工程期間を判定する工程判定ステップと、を含み、
前記建設機器は、コンクリート打設機又は生コンホッパーであり、
前記機器使用工程は、打設工程である、
生産工程管理方法。
【請求項11】
プロセッサを含む生産工程管理システムが実行する生産工程管理方法であって、
建設部材の生産工程に関する生産工程情報を取得する生産工程情報取得ステップと、
前記建設部材の生産工程に用いられる建設機器の位置情報を取得する第1位置情報取得ステップと、
前記生産工程のうち、前記建設機器の位置情報に基づいて前記建設機器を用いる機器使用工程期間を判定する工程判定ステップと、を含み、
前記建設部材は、プレキャストコンクリートである、
生産工程管理方法。
【請求項12】
前記工程判定ステップは、前記生産工程情報に基づいて、前記生産工程のうち、少なくとも1つ以上の前記機器使用工程以外の工程期間を、前記機器使用工程期間を判定する前、後、又は共に、判定する、
請求項10又は11に記載の生産工程管理方法。
【請求項13】
作業者が前記生産工程のうち担当可能な生産工程を含む作業者情報を取得する作業者情報取得ステップと、
前記作業者の位置情報を取得する第2位置情報取得ステップと、
をさらに含み、
前記工程判定ステップは、前記作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、前記生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の開始時及び終了時を、前記機器使用工程期間を判定する前、後、又は共に、判定する、
請求項10から12のいずれか一項に記載の生産工程管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産工程管理システム及び生産工程管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、土木工事及び建設現場において、コンクリート部材を用いる際、建設現場でコンクリートを打設してコンクリート部材を完成させる現場打ち工法、又は工場でコンクリート部材を生産して建設現場に持ち込むプレキャスト工法が採用されている。
【0003】
プレキャスト工法は、工場で生産されたコンクリート部材を建設現場まで運搬しなければならないが、建設現場においてコンクリートを打設する必要がない。また、プレキャスト工法は、適切な設備及び検査環境を有する工場でコンクリート部材を生産することにより、高品質、品質の安定性及び作業の安全性が期待でき、建設現場等での工期短縮や作業員の省人化が可能となる。
【0004】
ところで、土木工事、建設現場及び工場等に限らず、製品の製造が行われる作業現場等においては、様々な工夫により生産効率の向上が図られている。
【0005】
例えば、特許文献1では、作業現場での作業内容を容易に把握可能な作業データ管理システム等に関する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に開示されている作業データ管理システムは、作業現場の映像データに基づいて、作業現場で作業者によって行われる作業を複数の時系列的な詳細工程に分類し、当該映像データ及び詳細工程を可視化している。このように各詳細工程における作業内容を把握することによって、製品の品質や生産性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-16226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の作業データ管理システムでは、作業現場の映像データに基づいて詳細工程に分類したり、種々のデータ分析を行なったりしているため、作業現場において、広範囲に、かつ死角が生じないように、適切な位置に複数のカメラを設置しなければならないという問題がある。
【0008】
また、プレキャストコンクリートを生産する工場では、大型の設備、機材及び部材が配置されているため、複数のカメラを設置したとしても、工場内の広範囲において、映像データに基づいて種々の分析を行うことは容易ではない。また、工場が半屋外である場合には、埃等により、カメラのメンテナスも大変となる。
【0009】
そこで、本発明は、適切に生産工程を管理できる生産工程管理システム及び生産工程管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る生産工程管理システムは、建設部材の生産工程に関する生産工程情報を取得する生産工程情報取得部と、建設部材の生産工程に用いられる建設機器の位置情報を取得する第1位置情報取得部と、生産工程のうち、建設機器の位置情報に基づいて建設機器を用いる機器使用工程期間を判定する工程判定部と、を備える。
【0011】
この態様によれば、工程判定部が、生産工程のうち、建設機器の位置情報に基づいて建設機器を用いる機器使用工程期間を判定するため、適切に生産工程を管理することができる。
【0012】
上記態様において、第1位置情報取得部は、建設機器が第1領域に第1閾値以上の間、継続して滞留しているか否かに関する建設機器の位置情報を取得してもよい。
【0013】
この態様によれば、第1位置情報取得部が、建設機器が第1領域に第1閾値以上の間、継続して滞留しているか否かに基づいて、当該建設機械の位置情報を取得し、第1領域に建設機械が滞留しているか否かを適切に把握する。そして、工程判定部は、生産工程のうち、適切に機器使用工程期間を判定するため、より適切に生産工程を管理することができる。
【0014】
上記態様において、工程判定部は、生産工程情報に基づいて、生産工程のうち、少なくとも1つ以上の機器使用工程以外の工程期間を判定してもよい。
【0015】
この態様によれば、工程判定部は、生産工程情報に基づいて、生産工程のうち、少なくとも1つ以上の機器使用工程以外の工程期間を判定するため、機器使用工程のみならず他の工程期間を判定でき、より適切に生産工程を管理することができる。
【0016】
上記態様において、作業者が生産工程のうち担当可能な生産工程を含む作業者情報を取得する作業者情報取得部と、作業者の位置情報を取得する第2位置情報取得部と、をさらに備え、工程判定部は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の開始時及び終了時を判定してもよい。
【0017】
この態様によれば、工程判定部は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の開始時及び終了時を判定するため、各工程期間を、より詳細に、実態に沿って把握することができ、より適切に生産工程を管理することができる。
【0018】
上記態様において、工程判定部は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の作業実績を判定してもよい。
【0019】
この態様によれば、工程判定部は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の作業実績を判定するため、各工程の作業実績を把握しつつ、より適切に生産工程を管理することができる。
【0020】
上記態様において、第2位置情報取得部は、作業者が第2領域に第2閾値以上の間、継続して滞留しているか否かに関する作業者の位置情報を取得してもよい。
【0021】
この態様によれば、第2位置情報取得部が、作業者が第2領域に第2閾値以上の間、継続して滞留しているか否かに基づいて、当該作業者の位置情報を取得し、第2領域に作業者が滞留しているか否かを適切に把握する。そして、工程判定部は、生産工程の工程期間の作業実績を判定するため、より適切に生産工程を管理することができる。
【0022】
上記態様において、第2領域及び第2閾値は、生産工程の各工程に応じて設定されてもよい。
【0023】
この態様によれば、第2領域及び第2閾値は、生産工程の各工程に応じて設定されるため、第2位置情報取得部は、各工程に応じた適切な領域及び閾値に基づいて、作業者の位置情報を取得し、当該領域に作業者が滞留しているか否かを適切に把握する。これにより、工程判定部は、生産工程の工程期間の実績を工程毎に適切に判定するため、より適切に生産工程を管理することができる。
【0024】
上記態様において、建設機器は、コンクリート打設機又は生コンホッパーであり、機器使用工程は、打設工程であってもよい。
【0025】
この態様によれば、工程判定部は、コンクリート打設機又は生コンホッパーの位置情報に基づいて、当該コンクリート打設機又は生コンホッパーを用いる機器使用工程である打設工程の期間を判定することができる。これにより、コンクリート部材の生産工程において、適切に生産工程を管理することができる。
【0026】
上記態様において、機器使用工程以外の工程は、セット工程及び脱型工程のうち、少なくともいずれかの工程を含んでもよい。
【0027】
この態様によれば、工程判定部は、打設工程の前後であるセット工程及び脱型工程のうち、少なくともいずれかの工程の期間を判定することができる。これにより、コンクリート部材の生産工程において、より適切に生産工程を管理することができる。
【0028】
上記態様において、建設部材は、プレキャストコンクリートであってもよい。
【0029】
この態様によれば、プレキャスト工場におけるプレキャストコンクリートの生産工程において、適切に生産工程を管理することができる。
【0030】
本発明の一態様に係る生産工程管理方法は、プロセッサを含む生産工程管理システムが実行する生産工程管理方法であって、建設部材の生産工程に関する生産工程情報を取得する生産工程情報取得ステップと、建設部材の生産工程に用いられる建設機器の位置情報を取得する第1位置情報取得ステップと、生産工程のうち、建設機器の位置情報に基づいて建設機器を用いる機器使用工程期間を判定する工程判定ステップと、を含む。
【0031】
この態様によれば、工程判定ステップにおいて、生産工程のうち、建設機器の位置情報に基づいて建設機器を用いる機器使用工程期間が判定されるため、適切に生産工程を管理することができる。
【0032】
上記態様において、工程判定ステップは、生産工程情報に基づいて、生産工程のうち、少なくとも1つ以上の機器使用工程以外の工程期間を、機器使用工程期間を判定する前、後、又は共に、判定してもよい。
【0033】
この態様によれば、工程判定ステップは、生産工程情報に基づいて、生産工程のうち、少なくとも1つ以上の機器使用工程以外の工程期間を判定するため、機器使用工程のみならず他の工程期間を判定でき、より適切に生産工程を管理することができる。
【0034】
上記態様において、作業者が生産工程のうち担当可能な生産工程を含む作業者情報を取得する作業者情報取得ステップと、作業者の位置情報を取得する第2位置情報取得ステップと、をさらに含み、工程判定ステップは、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の開始時及び終了時を、機器使用工程期間を判定する前、後、又は共に、判定してもよい。
【0035】
この態様によれば、工程判定部は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の開始時及び終了時を判定するため、各工程期間を、より詳細に、実態に沿って把握することができ、より適切に生産工程を管理することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、適切に生産工程を管理できる生産工程管理システム及び生産工程管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10を示すシステム概要図である。
図2】本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程のうち打設工程(機器使用工程)期間が判定される様子を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程のうち打設工程以外の工程期間が判定される様子を示す図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程に含まれる工程期間が判定された様子を示す図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程に含まれる工程期間の作業実績が判定される様子を示す図である。
図5】作業者が属する業種に対応する担当可能な生産工程を示す一例である。
図6】各工程における、(1)担当可能業種と、(2)当該担当可能業種の作業者が当該工程における作業を実施していると判定するために必要な滞留時間(第2閾値)とを示す一例である。
図7】PC部材Aの脱型工程期間の作業者aの作業実績を集計する様子を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10が実行する生産工程管理方法M10を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0039】
<一実施形態>
[生産工程管理システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10を示すシステム概要図である。図1に示されるように、生産工程管理システム10は、位置測位システム20及び生産管理システム30等からデータを収集するデータ収集システム100と、当該データ収集システム100からのデータを分析するデータ分析システム200とから構成されている。
【0040】
データ収集システム100は、位置情報取得部110と、生産工程情報取得部120と、作業者情報取得部130と、データ記録部140と、送信部150とを備え、データ分析システム200は、受信部210と、工程判定部220と、表示部230とを備える。
【0041】
なお、本実施形態では、プレキャストコンクリートの生産工程を一例に挙げて、データ収集システム100はプレキャスト工場に配置され、データ分析システム200はクラウドに構築されているが、これに限定されるものではない。例えば、1つの生産工程管理システム10として、プレキャスト工場に配置しても構わないし、クラウドに構築しても構わないし、又は、サーバシステム等を管理する別の場所に配置及び構築しても構わない。
【0042】
位置情報取得部110は、建設部材の生産工程に用いられる建設機器の位置情報を取得する。本実施形態では、建設部材をプレキャストコンクリート、及び建設機器をコンクリート打設機であるため、具体的には、位置情報取得部110は、コンクリート打設機の位置情報を取得する(第1位置情報取得部)。
【0043】
例えば、プレキャスト工場に、リアルタイム位置情報システム(RTLS:Real Time Location System)及び屋内測位システム(IPS:Indoor Positioning System)等の位置測位システムを構築し、位置情報(測位データ)を収集するロケータを配置する。ロケータは、典型的には、コンクリート打設機に取り付けられた発信機から、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)、及びWi-Fi(登録商標)等の無線通信を介して、当該コンクリート打設機の位置情報(測位データ)を受信する。さらに、GNSS等を利用して測位データを取得するようにしても構わない。
【0044】
また、位置情報取得部110は、プレキャスト工場で作業する作業者の位置情報を取得しても構わない(第2位置情報取得部)。例えば、作業者が装着するヘルメット、作業着、靴又はベルトに発信機を取り付けても構わないし、その他、作業者に発信機を携帯させたり、作業者が携帯する通信機器(例えば、スマートフォンやタブレット等)に専用のアプリケーションを備えたりしても構わない。基本的には、発信機は、作業者が絶えず身に着けられる態様であって実装されている。ロケータは、作業者の位置情報(測位データ)も収集することができる。
【0045】
なお、コンクリート打設機及び作業者に取り付けられた発信機は、例えば、0.1~5秒毎に、測位データをロケータに発信すればよい。なお、発信機から測位データが発信される間隔は、0.1~5秒毎に限定されるものではなく、例えば、コンクリート打設機及び作業者の位置情報について、システム上、要求される精度に基づいて、適宜設定するようにしても構わない。また、建設機器及び作業者毎に異なる設定にしても構わない。
【0046】
このように、位置情報取得部110は、プレキャスト工場内において、コンクリート打設機及び各作業者がどこに位置しているかについて、各発信機の識別情報(ID)及び座標、時間等で示される位置情報を取得する。
【0047】
生産工程情報取得部120は、プレキャストコンクリートの生産工程に関する生産工程情報を取得する。例えば、生産工程情報取得部120は、生産管理システム30にて管理されている生産工程情報を取得する。ここで、生産工程情報とは、例えば、プレキャストコンクリートを含む建設部材について、各部材の詳細な部材情報、打設日、打設場所、及びその他生産工程に関する情報等が含まれる。
【0048】
なお、生産工程情報取得部120は、生産工程情報を生産管理システム30から取得することに限定されるものではなく、例えば、生産工程管理システム10に構築されたデータベースに予め記録された生産工程情報を取得しても構わないし、その他、別システムに記録されている生産工程情報を取得しても構わない。
【0049】
作業者情報取得部130は、作業者が生産工程のうち担当可能な生産工程を含む作業者情報を取得する。例えば、作業者情報取得部130は、生産工程管理システム10に構築されたデータベースに予め記録された作業者情報を取得しても構わないし、作業者情報が記録されている別システムから取得しても構わない。例えば、上述した生産管理システム30に作業者情報が記録されていれば、当該生産管理システム30から取得しても構わない。
【0050】
ここで、作業者情報とは、プレキャスト工場で作業する作業者に関する情報であって、例えば、識別情報(ID)や氏名に紐づけて、少なくとも生産工程のうちどの工程を担当可能かに関する情報が含まれ、当該作業者が属する業種、性別、年齢、経験、スキル、国籍及び住所等に関する様々な個人情報が含まれても構わない。
【0051】
データ記録部140には、位置情報取得部110によって取得されたコンクリート打設機及び作業者の位置情報(測位データ)、生産工程情報取得部120によって取得された生産工程情報、及び作業者情報取得部130によって取得された作業者情報が記録され、さらに蓄積されても構わない。なお、コンクリート打設機及び作業者の位置情報(測位データ)、生産工程情報、及び作業者情報は、当該データ記録部140に蓄積されず、直接、送信部150によってデータ分析システム200に送信されても構わない。その場合、データ記録部140は、データ分析システム200に含まれても構わない。
【0052】
送信部150は、データ記録部140に記録(蓄積)された各種情報を、例えば、インターネット等を介してデータ分析システム200に送信する。
【0053】
受信部210は、データ収集システム100の送信部150によって送信された各種情報を受信する。
【0054】
工程判定部220は、受信部210によって受信された各種情報に基づいて、プレキャストコンクリートの生産工程を分析する。具体的には、工程判定部220は、生産工程のうち、コンクリート打設機の位置情報に基づいて当該コンクリート打設機を用いる機器使用工程期間を判定する。コンクリート打設機を用いる機器使用工程とは、コンクリートをセットされた型枠に打ち込む打設工程である。一般的には、打設工程の期間、コンクリート打設機は、所定の領域に滞留しているため、工程判定部220は、コンクリート打設機の位置情報に基づいて、コンクリート打設機が継続して滞留していると把握すれば、打設工程期間を判定することができる。
【0055】
また、工程判定部220は、生産工程情報に基づいて、生産工程のうち、打設工程以外の工程期間を判定する。例えば、工程判定部220は、一般的に、打設工程の前に実施されるセット工程及び検査工程、打設工程と並行して実施される仕上げ工程、及び打設工程の後に実施される脱型工程を判定する。
【0056】
ここで、セット工程とは、打設工程を実施するための準備であり、典型的には、型枠を組み立てたり、当該型枠に鉄筋を入れ込む工程であり、検査工程とは、当該型枠や鉄筋の検査を実施する工程である。仕上げ工程とは、プレキャストコンクリートのコンクリート打設面を平滑にする工程であり、脱型工程とは、プレキャストコンクリートを型枠から抜き出す(型枠を外す)工程であり、鍛冶工程とは、形状や穴の位置などを部材に合わせて鋼製型枠を加工する工程である。
【0057】
なお、工程判定部220が判定する工程は、これらに限定されるものではなく、例えば、鉄筋工程、製品検査工程及び養生工程等を含めるようにしても構わないし、さらに、細分化された工程等であっても構わない。
【0058】
このように、工程判定部220は、コンクリート打設機の位置情報に基づいて当該コンクリート打設機を用いる打設工程期間を判定し、当該打設工程期間、及びプレキャストコンクリートを含む建設部材について、各部材の詳細な部材情報、打設日、打設場所、及びその他生産工程に関する情報等が含まれる生産工程情報に基づいて、生産工程における各工程期間を判定することができる。
【0059】
また、工程判定部220は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の開始時及び終了時を判定しても構わない。一般的に、生産工程に含まれる各工程は、それぞれプレキャスト工場内における作業領域が決められており、各工程を担当できる作業者の業種も決められている。工程判定部220は、作業者情報に基づいて各作業者がどの工程を担当可能であるか、作業者の位置情報に基づいて各作業者がどの領域に継続して滞留しているかについて、その滞留の開始時と終了時とを確認する。これにより、工程判定部は、各工程期間を、より詳細に、実態に沿って把握することができる。
【0060】
なお、工程判定部220は、打設工程以外の各工程期間を、打設工程期間を判定し、当該判定された打設工程期間を基準にして判定しても構わないし、作業者の位置情報及び作業者情報に基づいて、打設工程期間の判定とともに、又は前に判定するようにしても構わない。例えば、工程判定部220は、作業者の位置情報及び作業者情報に基づいて脱型工程期間を判定し、コンクリート打設機の位置情報に基づいて打設工程期間を判定する。そして、判定された脱型工程期間及び打設工程期間を基準にして、その他の工程(セット工程、検査工程及び仕上げ等)期間を判定しても構わない。
【0061】
さらに、工程判定部220は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の作業実績を判定する。工程判定部220は、作業者情報に基づいて各作業者がどの工程を担当可能であるか、作業者の位置情報に基づいて各作業者がどの領域に継続して滞留しているかを確認することによって、各工程期間の作業実績を判定することができる。
【0062】
上述した工程判定部220が判定する工程期間及び作業実績に関して、具体的な詳細については、後述する。
【0063】
表示部230は、工程判定部220によって判定された工程期間及び作業実績を表示する。例えば、生産工程管理を視覚的に理解し易くするために、表形式で画面に表示したり、工程毎に異なる色で表示したり、作業実績を作業者毎に表示したり、グラフ形式で表示したりしても構わない。さらに、生産工程管理システム10における表示部230に限定されるものではなく、例えば、Eメール等で通知したり、別システムの表示部に表示するようにしても構わない。
【0064】
[工程期間及び作業実績の詳細]
次に、工程期間及び作業実績について、具体例を挙げながら詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程のうち打設工程(機器使用工程)期間が判定される様子を示す図である。図2に示されるように、生産工程のうち、プレキャストコンクリート(PC部材)Bの打設工程期間が判定されている。
【0065】
工程判定部220は、コンクリート打設機の位置情報に基づいて、当該コンクリート打設機を用いる打設工程期間を判定する。具体的には、工程判定部220は、PC部材Bを打設するためのコンクリート打設機が、当該打設工程を実施する領域に継続して滞留していることを確認し、打設工程期間(2020年2月1日11時~2月2日4時)を判定している。
【0066】
ここで、コンクリート打設機が滞留しているか否かについては、全く同一位置に留まっていることのみならず、所定の領域(第1領域)において所定の時間(第1閾値)に留まっていることも滞留していることとして判定しても構わない。例えば、コンクリート打設機の調整、位置情報の検出誤差、及び突発的な事象等によって発生する位置情報の誤差(変化)に応じて、打設工程期間が誤判定されることを回避することができる。また、第1閾値は、少なくとも打設工程に必要な滞留時間であって、例えば、所定時間留まっている期間があれば、その期間は、滞留していることを意味する。
【0067】
さらに、工程判定部220は、生産工程情報等に基づいて、スケジュールとして前部材(PC部材A)の脱型工程が終了していることを確認した上で、打設工程期間を判定するようにしても構わない。
【0068】
図3は、本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程のうち打設工程以外の工程期間が判定される様子を示す図である。図3に示されるように、生産工程のうち、プレキャストコンクリート(PC部材)Bのセット工程、検査工程、脱型工程、仕上げ工程、及び鍛冶工程が判定されている。
【0069】
工程判定部220は、生産工程情報等に基づいて、脱型工程期間(2020年2月2日4時~2月2日8時)を判定している。なお、工程判定部220は、コンクリート打設機が、当該打設工程を実施する領域に継続して滞留していないことを確認した上で、脱型工程期間を判定するようにしても構わない。
【0070】
工程判定部220は、生産工程情報等に基づいて、前部材(PC部材A)の脱型工程の終了後で、PC部材Bの打設工程の開始前に、セット工程期間及び検査工程期間(2020年2月1日8時~2月1日11時)を判定する。
【0071】
工程判定部220は、生産工程情報等に基づいて、PC部材Bの打設工程開始から脱型工程の開始前に、仕上げ工程期間(2020年2月1日11時~2月2日4時)を判定する。
【0072】
さらに、工程判定部220は、生産工程情報等に基づいて、PC部材Aの脱型工程終了からPC部材Bの打設工程終了後に、鍛冶工程期間(2020年2月1日8時~2月2日4時)を判定しても構わない。
【0073】
このように、工程判定部220は、PC部材Bについて、コンクリート打設機の位置情報に基づいて打設工程期間を判定し、当該打設工程期間及び生産工程情報等に基づいて、打設工程以外の工程期間を判定することによって、生産工程の各工程期間を判定している。生産工程情報には、PC部材毎の詳細な部材情報、打設日、打設場所、及びその他生産工程に関する情報等が含まれているため、PC部材毎の生産工程における各工程期間を判定することができ、それらを組み合わせることによって、複数のPC部材やプロジェクト全体の生産工程における各工程期間を判定することができる。さらには、1箇所のプレキャスト工場のみならず、複数のプレキャスト工場、さらには、建設現場やその他の場所で実施されている生産工程の各工程期間を判定することもできる。
【0074】
なお、ここでは、PC部材Bの生産工程のうち打設工程期間を判定し、当該打設工程期間、生産工程情報等、及び前部材であるPC部材Aの生産工程(脱型工程の終了)に基づいて、打設工程以外の工程期間を判定したが、これに限定されるものではない。例えば、前部材であるPC部材Aの脱型工程終了日時が取得できない場合には、PC部材Aの打設工程日(例えば、2020年1月31日)の翌日(2020年2月1日)の8時をPC部材Aの脱型工程終了日時として、PC部材Bのセット工程期間、検査工程期間及び鍛冶工程期間等を判定しても構わないし、それ以外にも生産工程情報等に予め判定条件を設定しておき、それらの条件に基づいて判定するようにしても構わない。
【0075】
上述のように、工程判定部220は、コンクリート打設機の位置情報に基づいて打設工程期間を判定し、生産工程情報等に基づいて打設工程以外の各工程期間を判定したが、これらの判定に際して、作業者の位置情報及び作業者情報を用いて、各工程期間の開始時及び終了時を判定するようにしても構わない。
【0076】
例えば、工程判定部220は、生産工程のうち担当可能な工程の作業者が、当該工程が実施される領域に継続して滞留を開始する時、及び滞留を終了する時を判定し、当該工程期間の開始時及び終了時を判定する。各工程において、作業者の位置情報に応じて開始時及び終了時を判定することによって、より詳細に、実態に沿った工程期間を判定することができる。換言すれば、各工程の間には、いずれの工程期間にも属さない空白期間が存在する場合もあり(存在しない場合もあり)、それらを把握することもできる。なお、作業者が担当可能な工程、及び各工程が実施する領域に滞留していると判定する方法についての詳細は、後述する。
【0077】
また、工程判定部220は、コンクリート打設機の位置情報に基づいて打設工程期間を判定し、その後、生産管理情報、作業者の位置情報及び作業者情報、又はこれらの組み合わせに基づいて、打設工程以外の各工程期間を判定しても構わないし、打設工程期間を判定する前、又は共に、打設工程以外の各工程期間のうち一部又は全部を判定しても構わない。例えば、工程判定部220は、作業者の位置情報及び作業者情報に基づいて脱型工程期間を判定し、コンクリート打設機の位置情報に基づいて打設工程期間を判定する。そして、判定された脱型工程期間及び打設工程期間を基準にして、その他の工程(セット工程、検査工程及び仕上げ等)期間を判定しても構わない。
【0078】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程に含まれる工程期間が判定された様子を示す図であり、図4Bは、本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10において、生産工程に含まれる工程期間の作業実績が判定される様子を示す図である。図4Aには、上述したように、PC部材毎の生産工程における各工程期間が判定された様子が示されており、図4Bには、作業者aの脱型工程期間及びセット工程期間における作業実績、及び作業者bの検査工程期間における作業実績が判定されている。ここでは、生産工程に含まれる工程期間について、作業者毎の作業実績を判定する様子について詳しく説明する。
【0079】
工程判定部220は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の作業実績を判定する。工程判定部220は、作業者aの位置情報と作業者情報とに基づいて、PC部材Aの脱型工程期間の作業実績(2020年2月1日4時~2月1日7時)、PC部材Bのセット工程期間の作業実績(2020年2月1日8時~2月1日10時)及び脱型工程期間の作業実績(2020年2月2日4時~2月2日7時)を判定している。また、工程判定部220は、作業者bの位置情報と作業者情報とに基づいて、PC部材Bの検査工程期間の作業実績(2020年2月1日8時~2月1日9時)を判定している。
【0080】
具体的には、工程判定部220は、作業者aの作業者情報に基づいて、作業者aが脱型工程を担当可能であること、及び作業者aの位置情報に基づいて、作業者aがPC部材Aの脱型工程を実施する領域に継続して滞留していることを確認し、当該作業者aがPC部材Aの脱型工程における作業をしていると判定している。同様に、工程判定部220は、PC部材Bのセット工程及び脱型工程における作業をしていると判定している。
【0081】
また、工程判定部220は、作業者bの作業者情報に基づいて、作業者bが検査工程を担当可能であること、及び作業者bの位置情報に基づいて、作業者bがPC部材Bの検査工程を実施する領域に継続して滞留していることを確認し、当該作業者bがPC部材Bの検査工程における作業をしていると判定している。
【0082】
ここで、各作業者が生産工程のうちどの工程を担当可能であるかについては、作業者情報に含まれる、例えば、各作業者が属する業種に対応する担当可能工程に関する情報等に基づいて判定すればよい。
【0083】
図5は、作業者が属する業種に対応する担当可能な生産工程を示す一例である。図5に示されるように、業種「セット」の作業者は、セット工程及び脱型工程を担当可能であり、業種「打設」の作業者は、セット工程、打設工程及び脱型工程を担当可能であり、業種「仕上げ」の作業者は、セット工程、打設工程、仕上げ工程及び脱型工程を担当可能であり、業種「検査員」の作業者は、検査工程を担当可能であり、業種「鍛冶工」の作業者は、鍛冶工程を担当可能である。本実施形態では、作業者aは、業種「セット」であり、作業者bは、業種「検査員」である。
【0084】
さらに、各作業者が各工程を実施する領域に滞留しているか否かについては、全く同一位置に留まっていることのみならず、各工程を実施するそれぞれ所定の領域(第2領域)において所定の時間(第2閾値)に留まっていることも滞留していることとして判定しても構わない。
【0085】
例えば、作業者が各工程における作業を実施する場合、各工程を実施する領域において動いたり、位置情報の検出誤差、及び突発的な事象等によって発生する位置情報の誤差(変化)に応じて、当該作業者の作業実績の判定が誤判定されることを回避することができる。また、当該工程の作業を実施していないにもかかわらず、一時的に、当該領域に侵入したり、通過したりする作業者等も存在する可能性があり、このような作業者等の行動による誤判定も回避することができる。なお、第2閾値は、少なくとも各工程にそれぞれ必要な滞留時間であって、例えば、所定時間留まっている期間があれば、その期間は、滞留していることを意味する。
【0086】
図6は、各工程における、(1)担当可能業種と、(2)当該担当可能業種の作業者が当該工程における作業を実施していると判定するために必要な滞留時間(第2閾値)とを示す一例である。図6に示されるように、セット工程、検査工程、打設工程、仕上げ工程、脱型工程、及び鍛冶工程それぞれにおいて、担当可能な業種が設定されており、各工程に応じて当該工程を実施していると判定するための滞留時間(第2閾値)が設定されている。
【0087】
上述したように、本実施形態では、作業者aは、業種「セット」であって、セット工程及び脱型工程を担当可能であり、作業者bは、業種「検査員」であって、検査工程を担当可能である。
【0088】
工程判定部220は、作業者aの位置情報に基づいて、PC部材Aの脱型工程を実施する領域に、12秒以上留まっている期間が最初に確認できる「2020年2月1日4時」から最後に確認できる「2020年2月1日7時」の範囲のうち、1分間に12秒以上滞留している時間をPC部材Aの脱型工程期間の作業実績として集計する。
【0089】
図7は、PC部材Aの脱型工程期間の作業者aの作業実績を集計する様子を示す図である。図7に示されるように、作業者aがPC部材Aの脱型工程を実施する領域に1分間に12秒以上滞留していれば、滞留していると判定し、その時間を作業実績として計上する。
【0090】
同様に、工程判定部220は、作業者aの位置情報に基づいて、PC部材Bのセット工程を実施する領域に、12秒以上留まっている期間が最初に確認できる「2020年2月1日8時」から最後に確認できる「2020年2月1日10時」の範囲のうち、1分間に12秒以上滞留している時間をPC部材Bのセット工程期間の作業実績として判定し、PC部材Bの脱型工程を実施する領域に、12秒以上留まっている期間が最初に確認できる「2020年2月2日4時」から最後に確認できる「2020年2月2日7時」の範囲のうち、1分間に12秒以上滞留している時間をPC部材Bの脱型工程期間の作業実績として判定する。
【0091】
また、工程判定部220は、作業者bの位置情報に基づいて、PC部材Bの検査工程を実施する領域に、26秒以上留まっている期間が最初に確認できる「2020年2月1日8時」から最後に確認できる「2020年2月1日9時」の範囲のうち、1分間に26秒以上滞留している時間をPC部材Bの検査工程期間の作業実績として判定する。
【0092】
なお、作業者a及び作業者bの各PC部材の各工程における作業実績は、図4Aに示されるような工程判定部220が判定した生産工程における各工程期間と紐づけて判定しても構わないし、コンクリート打設機の位置情報も考慮して判定しても構わない。例えば、作業者が担当可能な工程期間が重なる場合、コンクリート打設機が滞留している場合は、打設工程の作業実績として判定し、コンクリート打設機が滞留していない場合は、仕上げ工程の作業実績として判定する。
【0093】
さらに、ここでは、各工程における滞留時間(第2閾値)を図6に示される値で設定されているが、これらに限定されるものではなく、例えば、作業者のスキル、PC部材の大きさ、形状及び種類等、各工程で用いられる機器や環境、その他種々の事情に応じて、適宜、各工程に応じて適切な滞留時間(第2閾値)を設定すればよい。
【0094】
このように、工程判定部220は、各作業者の担当可能工程に関する情報を含む作業者情報を確認しつつ、各作業者の位置情報に基づいて、各担当者がどの領域に継続して滞留しているかを把握することによって、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の作業実績を判定している。これにより、作業者毎に、各PC部材の各工程期間における作業実績を判定することができ、それらを組み合わせることによって、複数のPC部材やプロジェクト全体の生産工程における各工程期間における作業実績を判定することができる。さらには、1箇所のプレキャスト工場のみならず、複数のプレキャスト工場、さらには、建設現場やその他の場所で実施されている生産工程の各工程期間における作業実績を判定することもできる。
【0095】
[生産工程管理方法]
次に、生産工程管理を実行する手順について、具体的に詳しく説明する。
【0096】
図8は、本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10が実行する生産工程管理方法M10を示すフローチャートである。図8に示されるように、生産工程管理方法M10は、ステップS110~S150を含み、各ステップは、生産工程管理システム10に含まれるプロセッサによって実行される。
【0097】
ステップS110では、生産工程管理システム10は、各種情報を取得する。具体例としては、位置情報取得部110が位置測位システム20からコンクリート打設機及び作業者の位置情報(測位データ)を取得したり、生産工程情報取得部120が生産管理システム30から生産管理情報を取得したりする。また、作業者情報取得部130が作業者情報を取得する。なお、これらの各種情報は、例えば、データ記録部140に蓄積される。
【0098】
ステップS120では、生産工程管理システム10は、機器使用工程期間を判定する。具体例としては、工程判定部220がコンクリート打設機の位置情報に基づいて打設工程期間を判定する。
【0099】
ステップS130では、生産工程管理システム10は、機器使用工程以外の工程期間を判定する。具体例としては、工程判定部220が、生産工程情報、作業者の位置情報及び作業者情報、又はこれらの組み合わせに基づいて、打設工程以外の工程期間を判定する。例えば、工程判定部220は、打設工程の前に実施されるセット工程及び検査工程、打設工程と並行して実施される仕上げ工程、及び打設工程の後に実施される脱型工程を判定する。
【0100】
なお、ここでは、生産工程管理システム10は、ステップS130で機器使用工程以外の工程期間を判定しているが、機器使用工程以外の工程のうち一部又は全部を、ステップS120の判定の前又は共に判定しても構わない。
【0101】
ステップS140では、生産工程管理システム10は、各工程期間における作業実績を判定する。具体例としては、工程判定部220が作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、生産工程に含まれる少なくとも1つ以上の工程期間の作業実績を判定する。
【0102】
ステップS150では、生産工程管理システム10は、各工程期間及び作業実績を表示する。具体例としては、表示部230がステップS120~ステップS140で判定された各工程期間及び作業実績をモニタ等に表示する。例えば、表示部230は、図4A及び図4Bに示されたような形式で各工程期間及び作業実績を表示する。また、表示形式は、その他、表、グラフ及びデータ等であっても構わない。
【0103】
以上のように、本発明の一実施形態に係る生産工程管理システム10及び生産工程管理方法M10によれば、工程判定部220は、コンクリート打設機の位置情報に基づいて打設工程期間を判定し、生産工程情報、作業者の位置情報及び作業者情報、又はこれらの組み合わせに基づいて打設工程以外の工程期間を判定する。そして、工程判定部220は、作業者の位置情報と作業者情報とに基づいて、各工程期間における作業実績を判定する。その結果、工程期間を適切に判定することによって生産工程を管理することができ、また、作業実績も考慮して、より適切に生産工程を管理することもできる。
【0104】
なお、本実施形態では、主に、一部材(PC部材B)の生産工程を中心に、概ね1日(24時間)単位の処理として説明したが、生産工程管理システム10が処理する単位としては、例えば、複数の部材の生産工程を対象(前提)として、1週間単位、1ヶ月単位、又は所定期間のプロジェクト単位等で処理するようにしても構わない。具体的には、生産工程管理システム10は、データ記録部140に蓄積された1ヶ月分のデータに基づいて、複数の部材それぞれの打設工程期間を判定し、その後、複数の部材それぞれの打設工程以外の工程期間を判定するようにしても構わない。
【0105】
なお、本実施形態では、建設機器をコンクリート打設機として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、建設機器は、コンクリートポンプ車及び生コンホッパー等であっても構わない。また、建設部材もコンクリート部材に限定されるものではなく、その他の建設部材であっても構わないし、その場合、建設機器もコンクリート打設機又は生コンホッパーではなく、当該その他の建設部材に対応する建設機器であっても構わない。
【0106】
また、本発明をコンクリート部材以外の建設部材の生産工程管理に適用する場合には、機器使用工程も打設工程ではなく、当該建設機器を使用する工程であっても構わないし、機器使用工程以外の工程も、コンクリート部材以外の建設部材の生産工程に応じた工程であっても構わない。
【0107】
また、コンクリート部材を建設現場ではなく、プレキャスト工場で生産するプレキャスト工法を一例に挙げたが、これに限定されるものではなく、建設現場でコンクリートを打設する現場打ち工法でも、本発明に係る生産工程管理システム10を適用することが可能である。
【0108】
さらに、本発明は、コンクリート部材の生産工程管理に限定されるものではなく、その他建設部材の生産工程、土木工事現場、建設現場、ALC工場、及びGRC工場、さらには、その他業種における生産工程の管理に適用することも可能である。
【0109】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0110】
10…生産工程管理システム、20…位置測位システム、30…生産管理システム、100…データ収集システム、110…位置情報取得部、120…生産工程情報取得部、130…作業者情報取得部、140…データ記録部、150…送信部、200…データ分析システム、210…受信部、220…工程判定部、230…表示部、M10…生産工程管理方法、S110~S150…生産工程管理方法M10の各ステップ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8