(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
G21C 9/004 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
G21C9/004
(21)【出願番号】P 2021046532
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】大本 節男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄基
(72)【発明者】
【氏名】垣上 英正
(72)【発明者】
【氏名】桐田 晃
(72)【発明者】
【氏名】川田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】二宮 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武岡 聖五
(72)【発明者】
【氏名】羽立 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】永井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】安武 昭典
(72)【発明者】
【氏名】安達 遥
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-241590(JP,A)
【文献】特開昭48-091500(JP,A)
【文献】特開2012-016659(JP,A)
【文献】特開2016-002531(JP,A)
【文献】米国特許第05997612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00-9/06
G21F 9/02
B01D 53/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を含むベントガスが流通するガスライン上に設けられ、前記放射性物質を吸着可能な吸着剤が充填された第一吸着塔、及び第二吸着塔と、
前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔の上流側にそれぞれ設けられた入口弁と、
前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔の下流側にそれぞれ設けられた出口弁と、
前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔を真空状態にすることが可能な真空ポンプと、
を備えるガス処理設備を用いたガス処理方法であって、
前記入口弁を開き、前記出口弁を閉めた状態で、予め真空状態とされた前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔のいずれか一方のみに前記放射性物質を含むベントガスを常圧となるまで充填する第一ステップと、
前記常圧となった前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔のいずれか一方の前記入口弁、及び前記出口弁を開き、前記放射性物質を含むベントガスを流通させることで前記吸着剤によって前記放射性物質を吸着する第二ステップと、
前記放射性物質を吸着した前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔のいずれか一方の前記入口弁、及び前記出口弁を閉め、前記真空ポンプによって前記真空状態とする第三ステップと、
を含むガス処理方法。
【請求項2】
前記入口弁は、
前記ガスライン上に設けられた主弁と、
該主弁を迂回するバイパスライン上に設けられ、前記主弁よりも流量が小さい副弁と、
を有し、
前記第一ステップでは、前記主弁を閉め、前記副弁を開けることで前記放射性物質を含むベントガスを充填する請求項1に記載のガス処理方法。
【請求項3】
前記真空ポンプに接続された貯留タンクをさらに備え、
前記第三ステップでは、前記吸着剤によって吸着された前記放射性物質を含むガスを前記貯留タンクに貯留する請求項1又は2に記載のガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉設備は、フィルタベント装置を備えている。フィルタベント装置は、過酷事故(シビアアクシデント)の発生時に、原子炉格納容器内の水蒸気を含むガスを、フィルタを経由して外部に放出することで内圧を開放し、原子炉格納容器(CV)の破損を防止するものである。フィルタベント装置は、フィルタにより核分裂生成物の放出を抑制することができる。
【0003】
しかしながら、フィルタベント装置では、キセノンやクリプトンを含む放射性希ガス元素を除去することができない。これらの物質を処理するための方法として、例えば下記特許文献1に記載された圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption:PSA)と呼ばれる方法が実用化されている。この方法では、少なくとも3つの吸着塔が用いられる。まず、第一の吸着塔に窒素、ヘリウム、アルゴン等を導入して内圧を高め、その後、原料ガスを流すことで吸着剤による目的物質の吸着を行う。次いで、吸着が完了した後で外部からの吸引を行うことで内圧を下げ、吸着剤を再生する。このようなサイクルを3つの吸着塔の間で順次繰り返すことでガス処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のPSA方式では少なくとも3つの吸着塔が必要となることから、設備が複雑かつ高価になることに加えて、ガス処理に要する時間が長くなってしまうという課題があった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、廉価かつ短時間に処理を行うことが可能なガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るガス処理方法は、放射性物質を含むベントガスが流通するガスライン上に設けられ、前記放射性物質を吸着可能な吸着剤が充填された第一吸着塔、及び第二吸着塔と、前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔の上流側にそれぞれ設けられた入口弁と、前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔の下流側にそれぞれ設けられた出口弁と、前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔を真空状態にすることが可能な真空ポンプと、を備えるガス処理設備を用いたガス処理方法であって、前記入口弁を開き、前記出口弁を閉めた状態で、予め真空状態とされた前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔のいずれか一方のみに前記放射性物質を含むベントガスを常圧となるまで充填する第一ステップと、前記常圧となった前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔のいずれか一方の前記入口弁、及び前記出口弁を開き、前記放射性物質を含むベントガスを流通させることで前記吸着剤によって前記放射性物質を吸着する第二ステップと、前記放射性物質を吸着した前記第一吸着塔、及び前記第二吸着塔のいずれか一方の前記入口弁、及び前記出口弁を閉め、前記真空ポンプによって前記真空状態とする第三ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、廉価かつ短時間に処理を行うことが可能なガス処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係るガス処理設備の構成を示す系統図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るガス処理方法の工程を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施形態に係るガス処理方法の時間経過ごとの吸着塔の状態を示す説明図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るガス処理方法における第一ステップの状態を示す説明図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るガス処理方法における第二ステップの状態を示す説明図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るガス処理方法における第三ステップの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ガス処理設備の構成)
以下、本開示の実施形態に係るガス処理設備100について、
図1から
図6を参照して説明する。このガス処理設備100は、過酷事故の際に原子力発電プラントの原子炉格納容器から排出されるベントガスを処理する(放射性希ガス元素を除去する)ための設備である。
【0012】
図1に示すように、ガス処理設備100は、ガスライン1と、入口弁2と、第一吸着塔31と、第二吸着塔32と、出口弁4と、再生装置5と、を備えている。
【0013】
ガスライン1は、導入ライン10と、第一主ライン11と、第一バイパスライン12と、第二主ライン13と、第二バイパスライン14と、排出ライン15と、戻しライン16と、を有している。
【0014】
導入ライン10は、フィルターベントシステム(FVS)から原料ガスとしての放射性物質を含むベントガスを導く。このベントガスには、キセノンやクリプトン等の放射性希ガス元素が含まれている。第一主ライン11と第二主ライン13は導入ライン10の下流側の端部に接続されている。第一主ライン11は後述する第一吸着塔31に接続されている。第二主ライン13は後述する第二吸着塔32に接続されている。
【0015】
第一吸着塔31、及び第二吸着塔32の下流側には排出ライン15が接続されている。この排出ライン15は、第一吸着塔31、及び第二吸着塔32を通過した後の処理済みガスを外部に放出するために設けられている。戻しライン16は、後述する貯留タンク50と導入ライン10とを接続している。また、この戻しライン16上には戻し弁8が設けられている。
【0016】
入口弁2は、第一主ライン11上に設けられた第一主弁21と、この第一主ライン11を迂回する第一バイパスライン12上に設けられた第一副弁22と、第二主ライン13上に設けられた第二主弁23と、この第二主ライン13を迂回する第二バイパスライン14上に設けられた第二副弁24と、を有している。第一副弁22、及び第二副弁24は、第一主弁21、及び第二主弁23よりも小さな流量のガスを流通させるように相対的に小型に構成されている。
【0017】
第一吸着塔31、及び第二吸着塔32には、上述したキセノンやクリプトン等の放射性希ガス元素を吸着可能な吸着剤が充填されている。この種の吸着剤として具体的にはゼオライト系、特にモルデナイトが好適に用いられる。
【0018】
排出ライン15上であって、第一吸着塔31、及び第二吸着塔32の下流側には、それぞれ出口弁4が設けられている。出口弁4は、第一出口弁41と、第二出口弁42と、を有している。第一出口弁41は第一吸着塔31の下流側に配置されている。第二出口弁42は第二吸着塔32の下流側に配置されている。また、排出ライン15には、空気ライン15aが接続されている。空気ライン15a上には開閉弁15bが設けられている。開閉弁15bを開状態することで、排出ライン15を通じて第一吸着塔31、又は第二吸着塔32に外部から空気を導入することが可能とされている。
【0019】
再生装置5は、貯留タンク50と、真空ポンプ51と、第一再生ライン61と、第二再生ライン62と、第一再生弁71と、第二再生弁72と、を有している。
【0020】
貯留タンク50は、第一吸着塔31、及び第二吸着塔32に対してそれぞれ第一再生ライン61、及び第二再生ライン62によって接続されている。第二再生ライン62は、第一再生ライン61の中途から第二吸着塔32に向かって分岐している。また、第一再生ライン61上には真空ポンプ51が設けられている。詳しくは後述するが、この真空ポンプ51を駆動することによって、第一吸着塔31、又は第二吸着塔32の内部を真空状態にすることが可能とされている。さらに、第一再生ライン61上には第一再生弁71が設けられ、第二再生ライン62上には第二再生弁72が設けられている。
【0021】
(ガス処理方法)
続いて、上述したガス処理設備100を用いたガス処理方法について、
図2から
図6を参照して説明する。
図2に示すように、このガス処理方法は、第一吸着塔31又は第二吸着塔32のうちのいずれか一方を常圧となるまで原料ガス(放射性物質を含むベントガス)によって充填する第一ステップS1と、常圧となった第一吸着塔31又は第二吸着塔32に原料ガスを流通させることで放射性物質を吸着させる第二ステップS2と、吸着の完了した後に真空状態とすることで吸着剤の再生を行う第三ステップS3と、を含む。
【0022】
各ステップの詳細な状態について、
図3から
図6を参照して説明する。
図3は、第一吸着塔31が予め真空状態とされている時点からの各ステップの様子を示している。同図に示すように、まず、第一吸着塔31で上述の第一ステップS1を実施することで、当該第一吸着塔31を真空状態から常圧状態とする。ここでいう常圧状態とは、100kPa程度の圧力のことを指す。また、真空状態とは5kPa程度の圧力のことを指す。
【0023】
図4に示すように、この第一ステップS1では、第一吸着塔31の入口弁2のうち、第一副弁22のみを開き、第一主弁21は閉めた状態とする。これにより、小流量のもとで第一吸着塔31に原料ガスを導入する。また、この時、第一出口弁41は閉められている。
【0024】
次いで、第一ステップS1によって第一吸着塔31が常圧状態となった時点で、第一出口弁41、第一主弁21、及び第一副弁22を全て開く(
図5)。これにより、第一吸着塔31内に原料ガスが流通した状態となる。その中途で吸着剤による放射性物質の吸着が行われる(第二ステップS2)。これら第一ステップS1、及び第二ステップS2に要する時間は60秒程度である。
【0025】
第二ステップS2が完了すると(つまり、第一ステップS1の開始から60秒程度が経過すると)、第一吸着塔31では第三ステップS3を実行する。第三ステップS3を実行する第一吸着塔31では、
図6に示すように、第一主弁21、第一副弁22、及び第一出口弁41をいずれも閉める。さらに、第一再生弁71を開き、真空ポンプ51を駆動する。これにより、第一吸着塔31の吸着剤から放射性物質が脱離され、貯留タンク50内に貯留されることとなる。この第三ステップS3は、第一吸着塔31が再び真空状態となるまで継続される。一例として第三ステップS3に要する時間は60秒程度である。第三ステップS3における20秒程度で5kPaまで真空引きし、その後、真空引きを行いながら、40秒程度の間、第一吸着塔31の下流側に設けられた空気ライン15aから空気を導入し、ガスの分圧差による脱着を促進させる。
これら第一ステップS1~第三ステップS3を繰り返し実行する。
【0026】
第一吸着塔31で第三ステップS3を開始すると同時に、第二吸着塔32では第一ステップS1を開始する。つまり、第一吸着塔31で第三ステップS3による吸着剤の再生を行っている間に、第二吸着塔32による常圧復帰と吸着を並行して行われる。このようなサイクルが第一吸着塔31と第二吸着塔32の間で行われることで、放射性物質を含むベントガスの処理が連続的に進行する。
【0027】
(作用効果)
ここで、従来のPSA方式では少なくとも3つの吸着塔が必要となることから、設備が複雑かつ高価になることに加えて、ガス処理に要する時間が長くなってしまうという課題があった。そこで、本実施形態に係るガス処理設備100、及びガス処理方法は上述した各構成と各ステップを採っている。
【0028】
上記方法によれば、第一ステップS1では、原料ガスとしての放射性物質を含むベントガスによって、第一吸着塔31、及び第二吸着塔32のいずれか一方を常圧状態まで加圧する。その後、同じく放射性物質を含むベントガスを流通させることで、第二ステップS2で放射性物質の吸着を行う。これにより、例えば放射性ガス以外の窒素やアルゴンを用いて常圧まで加圧する方法に比べて、処理に要する時間を短縮することができる。具体的には、従来は常圧復帰と吸着にそれぞれ60秒程度の時間を要していたところが、これら第一ステップS1と第二ステップS2との合計時間を60秒程度に短縮することができる。さらに、吸着が完了した後は、第三ステップとして真空ポンプによって真空状態とすることで吸着剤を再生する。このような3つのステップを2つの吸着塔(第一吸着塔31、及び第二吸着塔32)のみを用いて繰り返すことで、ガスの処理が行われる。したがって、吸着塔の数や処理に要する時間を大きく削減することが可能となる。
【0029】
ここで、第一ステップS1で放射性ガスを常圧状態となるまで充填する際、最初に導入された放射性ガスの流速が高いと、吸着剤の流動化や、吸着剤の間の隙間を通り抜けて放射性物質が吸着されずに下流側の出口弁4まで到達してしまう可能性がある。しかしながら、上記方法では、第一ステップS1で主弁(第一主弁21、又は第二主弁23)を閉め、副弁(第一副弁22、又は第二副弁24)を開けることで、小流量のもとで放射性ガスが充填される。これにより、放射性物質が十分に吸着されるため、上記のような事態が生じる可能性を低減することができる。よって、より安全かつ効率的にガス処理を行うことができる。
【0030】
また、上記方法によれば、第一吸着塔31、又は第二吸着塔32から貯留タンク50に向けて直接的に放射性物質を導き、貯留することができる。これにより、設備の簡略化とコストの削減を実現することができる。
【0031】
以上、本開示の実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の方法や構成に種々の変更と改修を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、放射性物質をベントガスから除去する場合を例にガス処理方法、及びガス処理設備100について説明した。しかしながら、原料ガスに含まれるある特定の成分を貯留タンク50内に濃縮することを目的として、放射性物質を含まない各種ガス分離/精製プラントにも上記の方法や構成を適用することが可能である。
【0032】
<付記>
各実施形態に記載のガス処理方法、及びガス処理設備100は、例えば以下のように把握される。
【0033】
(1)第1の態様に係るガス処理方法は、放射性物質を含むベントガスが流通するガスライン1上に設けられ、前記放射性物質を吸着可能な吸着剤が充填された第一吸着塔31、及び第二吸着塔32と、前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32の上流側にそれぞれ設けられた入口弁2と、前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32の下流側にそれぞれ設けられた出口弁4と、前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32を真空状態にすることが可能な真空ポンプ51と、を備えるガス処理設備100を用いたガス処理方法であって、前記入口弁2を開き、前記出口弁4を閉めた状態で、予め真空状態とされた前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32のいずれか一方のみに前記放射性物質を含むベントガスを常圧となるまで充填する第一ステップS1と、前記常圧となった前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32のいずれか一方の前記入口弁2、及び前記出口弁4を開き、前記放射性ガスを流通させることで前記吸着剤によって前記放射性物質を吸着する第二ステップS2と、前記放射性物質を吸着した前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32のいずれか一方の前記入口弁2、及び前記出口弁4を閉め、前記真空ポンプ51によって前記真空状態とする第三ステップS3と、を含む。
【0034】
上記方法によれば、第一ステップS1では放射性物質を含むベントガスによって第一吸着塔31、及び第二吸着塔32のいずれか一方を常圧状態まで加圧する。その後、同じく放射性物質を含むベントガスを流通させることで、第二ステップS2で放射性物質の吸着を行う。これにより、処理に要する時間を短縮することができる。さらに、第三ステップS3として真空ポンプ51によって真空状態とすることで吸着剤を再生する。このような3つのステップを2つの吸着塔(第一吸着塔31、及び第二吸着塔32)のみを用いて繰り返すことで、ガスの連続的処理が行われる。したがって、吸着塔の数や処理に要する時間を大きく削減することが可能となる。
【0035】
(2)第2の態様に係るガス処理方法では、前記入口弁2は、前記ガスライン1上に設けられた主弁と、該主弁を迂回するバイパスライン上に設けられ、前記主弁よりも流量が小さい副弁と、を有し、前記第一ステップS1では、前記主弁を閉め、前記副弁を開けることで前記放射性物質を含むベントガスを充填する。
【0036】
上記方法では、第一ステップS1で主弁を閉め、副弁を開けることで、小流量のもとで放射性物質を含むベントガスが充填される。これにより、吸着剤の間の隙間を通り抜けさせることなく放射性物質を十分に吸着することができる。
【0037】
(3)第3の態様に係るガス処理方法では、前記真空ポンプ51に接続された貯留タンク50をさらに備え、前記第三ステップS3では、前記吸着剤によって吸着された前記放射性物質を含むガスを前記貯留タンク50に貯留する。
【0038】
上記方法によれば、第一吸着塔31、又は第二吸着塔32から貯留タンク50に向けて直接的に放射性物質を導き、貯留することができる。これにより、設備の簡略化とコストの削減を実現することができる。
【0039】
(4)第4の態様に係るガス処理設備100は、放射性物質を含むベントガスが流通するガスライン1上に設けられ、前記放射性物質を吸着可能な吸着剤が充填された第一吸着塔31、及び第二吸着塔32と、前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32の上流側にそれぞれ設けられた入口弁2と、前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32の下流側にそれぞれ設けられた出口弁4と、前記第一吸着塔31、及び前記第二吸着塔32を真空状態にすることが可能な真空ポンプ51と、前記真空ポンプ51に接続された貯留タンク50と、を備える。
【0040】
上記構成によれば、はじめに放射性物質を含むベントガスによって第一吸着塔31、及び第二吸着塔32のいずれか一方を常圧状態まで加圧する。その後、同じく放射性物質を含むベントガスを流通させることで放射性物質の吸着を行う。これにより、例えば放射性ガス以外の窒素やアルゴンを用いて常圧まで加圧する方法に比べて、処理に要する時間を短縮することができる。さらに、吸着が完了した後は、真空ポンプ51によって真空状態とすることで吸着剤を再生する。このような3つのステップを2つの吸着塔(第一吸着塔31、及び第二吸着塔32)のみを用いて繰り返すことで、ガスの連続的処理が行われる。したがって、吸着塔の数や処理に要する時間を大きく削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
100 ガス処理設備
1 ガスライン
2 入口弁
4 出口弁
5 再生装置
8 戻し弁
10 導入ライン
11 第一主ライン
12 第一バイパスライン
13 第二主ライン
14 第二バイパスライン
15 排出ライン
15a 空気ライン
15b 開閉弁
16 戻しライン
21 第一主弁
22 第一副弁
23 第二主弁
24 第二副弁
31 第一吸着塔
32 第二吸着塔
41 第一出口弁
42 第二出口弁
50 貯留タンク
51 真空ポンプ
61 第一再生ライン
62 第二再生ライン
71 第一再生弁
72 第二再生弁