(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】車両用バンパユニット
(51)【国際特許分類】
B60R 19/04 20060101AFI20241011BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20241011BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B60R19/04 M
B62D25/08 D
B62D25/20 C
(21)【出願番号】P 2021050180
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博
(72)【発明者】
【氏名】井上 十一
(72)【発明者】
【氏名】江口 慎司
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109713(JP,A)
【文献】特開2014-234148(JP,A)
【文献】特開2001-71934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
B62D 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延在するように車幅方向両側に設けられるフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側に位置する外側面から車幅方向外側に拡開しながら前方に延出するガセットと、を備えた車両に取り付けられる車両用バンパユニットであって、
前記フロントサイドフレームとの固定部よりも車幅方向外側に位置する外側部が、外側に向かうにつれて後方に傾斜する形状を有し、車幅方向に延在するように前記フロントサイドフレームの前端部に直接もしくは間接的に固定されたバンパビームと、
前記バンパビームの後側においてクリアランスを空けて前記ガセットの前端に対峙するように取り付けられ、
前記ガセットの前端に対峙するガセット対峙領域を有する後壁と、
前記外側部に沿って配され、前記車両の前方から視て、前記ガセット対峙領域よりも車幅方向について幅広となるように設けられている前壁と、
前記ガセット対峙領域の車幅方向内側に位置する内側縁部に接続され、車両前後方向との間の角度が前記ガセットの延出方向と車両前後方向との間の角度よりも小さくなる方向に延在して、前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する前後連結壁と、を備える荷重伝達部材と、を備える車両用バンパユニット。
【請求項2】
前記前後連結壁は、前記内側縁部の車両前後方向前方もしくは車両前後方向前方よりも車幅方向内側において前記前壁に接続されている、請求項1に記載の車両用バンパユニット。
【請求項3】
前記荷重伝達部材は、
前記バンパビームが前記フロントサイドフレームに固定された状態において上下方向に延在する空所を有するアルミニウム製の中空部材であって、
前記前壁に直交して前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する傾斜連結壁をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の車両用バンパユニット。
【請求項4】
前記傾斜連結壁は、前記ガセット対峙領域の車幅方向外側に位置する外側縁部に連結されている、請求項3に記載の車両用バンパユニット。
【請求項5】
前記荷重伝達部材は、前記前後連結壁と前記傾斜連結壁との間において、車両前後方向との間の角度が前記ガセットの延出方向と車両前後方向との間の角度よりも小さくなる方向に延在して前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する前後中壁をさらに備える、請求項3または請求項4に記載の車両用バンパユニット。
【請求項6】
前記前後中壁の厚さは、前記前後連結壁の厚さよりも小さい、請求項5に記載の車両用バンパユニット。
【請求項7】
前記荷重伝達部材は、前記前後連結壁と前記傾斜連結壁との間において、前記前壁に直交して前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する傾斜中壁をさらに備える、請求項3から請求項6の何れか一項に記載の車両用バンパユニット。
【請求項8】
前記傾斜中壁の厚さは、前記傾斜連結壁の厚さよりも大きい、請求項7に記載の車両用バンパユニット。
【請求項9】
前記後壁には、前記ガセット対峙領域の車幅方向外側において後方に延出するガイド部が設けられている、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の車両用バンパユニット。
【請求項10】
前記クリアランスは、前記ガセット対峙領域の車幅方向内側に位置する内側縁部と前記ガセットの前記前端との間において最も小さくなるように設定されている、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の車両用バンパユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バンパユニットに関する。特に、車両前部に設けられたフロントサイドフレームに取り付けられる車両用バンパユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、車両の安全性、特に、車両が障害物や対向車等の衝突物と部分的に衝突するオフセット衝突時の安全性を向上させる技術として、ガセットを備えた車両の前部車体構造が記載されている。この車体構造では、車両の車幅方向両側に設けられたフロントサイドフレームの車幅方向外側面に、ガセットが接続されている。ガセットは、車幅方向外側に拡開しながら前方に延出され、バンパビームの後面に対峙している。
【0003】
特許文献1の前部車体構造では、バンパビームのフロントサイドフレームへの取付部分(以下、「固定部」と称する)よりも車幅方向外側の部分(以下、「外側部」と称する)に衝突物が衝突した場合、衝突荷重は、バンパビームの固定部からフロントサイドフレームに伝えられるのに加え、衝突時の衝撃によって外側部の後面に当接するガセットを介してもフロントサイドフレームに伝達されるようになっている。なお、以下、上記したようにバンパビームの外側部に衝突荷重が加えられるような衝突を、「SOL(スモールオーバーラップ)衝突」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SOL衝突時の車両の安全性を向上させるためには、バンパビームに加えられた衝突荷重を、効率的にフロントサイドフレームに伝達することが求められる。上記構造では、SOL衝突時にバンパビームにおけるガセットとの対峙位置よりも車幅方向内側に荷重が加えられると、衝突荷重の一部は、バンパビームを車幅方向外側に伝わった後に、バンパビーム後面に当接したガセットを介してフロントサイドフレームへと伝達される。ここで、衝突荷重が車両前方から後方に向かう方向に加えられるのに対し、ガセットは、車両前後方向に対して一定の角度をもって傾斜しながら延出している。バンパビームからフロントサイドフレームへと向かう荷重を、ガセットの延出方向よりも車両前後方向に沿った経路で伝達できれば、荷重伝達効率の向上が期待できる。
【0006】
本技術は、上記事情に基づいて完成されたものであって、耐衝突性能に優れた車両用バンパユニット、特にSOL衝突時に優れた荷重伝達効率を発揮する車両用バンパユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する技術に係る車両用バンパユニットは、下記の構成を有する。
(1)車両前後方向に延在するように車幅方向両側に設けられるフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側に位置する外側面から車幅方向外側に拡開しながら前方に延出するガセットと、を備えた車両に取り付けられる車両用バンパユニットであって、前記フロントサイドフレームとの固定部よりも車幅方向外側に位置する外側部が、外側に向かうにつれて後方に傾斜する形状を有し、車幅方向に延在するように前記フロントサイドフレームの前端部に直接もしくは間接的に固定されたバンパビームと、前記バンパビームの後側においてクリアランスを空けて前記ガセットの前端に対峙するように取り付けられ、前記ガセットの前端に対峙するガセット対峙領域を有する後壁と、前記外側部に沿って配され、前記車両の前方から視て、前記ガセット対峙領域よりも車幅方向について幅広となるように設けられている前壁と、前記ガセット対峙領域の車幅方向内側に位置する内側縁部に接続され、車両前後方向との間の角度が前記ガセットの延出方向と車両前後方向との間の角度よりも小さくなる方向に延在して前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する前後連結壁と、を備える荷重伝達部材と、を備える。
【0008】
(2)上記(1)において、前記前後連結壁は、前記内側縁部の車両前後方向前方もしくは車両前後方向前方よりも車幅方向内側において前記前壁に接続されている。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)において、前記荷重伝達部材は、前記バンパビームが前記フロントサイドフレームに固定された状態において上下方向に延在する空所を有するアルミニウム製の中空部材であって、前記前壁に直交して前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する傾斜連結壁をさらに備える。
【0010】
(4)上記(3)において、前記傾斜連結壁は、前記ガセット対峙領域の車幅方向外側に位置する外側縁部に連結されている。
【0011】
(5)上記(3)又は(4)において、前記荷重伝達部材は、前記前後連結壁と前記傾斜連結壁との間において、車両前後方向との間の角度が前記ガセットの延出方向と車両前後方向との間の角度よりも小さくなる方向に延在して前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する前後中壁をさらに備える。
【0012】
(6)上記(5)において、前記前後中壁の厚さは、前記前後連結壁の厚さよりも小さい。
【0013】
(7)上記(3)から(6)の何れかにおいて、前記荷重伝達部材は、前記前後連結壁と前記傾斜連結壁との間において前記前壁に直交して前記ガセット対峙領域と前記前壁を連結する傾斜中壁をさらに備える。
【0014】
(8)上記(7)において、前記傾斜中壁の厚さは、前記傾斜連結壁の厚さよりも大きい。
【0015】
(9)上記(1)から(8)の何れかにおいて、前記後壁には、前記ガセット対峙領域の車幅方向外側において後方に延出するガイド部が設けられている。
【0016】
(10)上記(1)から(9)の何れかにおいて、前記クリアランスは、前記ガセット対峙領域の車幅方向内側に位置する内側縁部と前記ガセットの前記前端との間において最も小さくなるように設定されている。
【0017】
なお、本明細書において、「車両前後方向」「車幅方向」「上下方向」は、概ねこれらの方向にあることを意味し、本開示の要旨を逸脱しない限り、多少のずれがあっても構わないものとする。また、「直交」「平行」には、略直交、略平行であるものが含まれるものとする。
【発明の効果】
【0018】
本技術によれば、衝突性能に優れた車両用バンパユニット、特にSOL衝突時に優れた荷重伝達効率を発揮する車両用バンパユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、フロントサイドフレームに取り付けられた実施形態に係る車両用バンパユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、上方から視た車両用バンパユニットの平面図である。
【
図4】
図4は、車両前方から視た車両用バンパユニットの固定部近傍の構成を示す立面図である。
【
図5】
図5は、
図2の車両用バンパユニットがSOL衝突した後に、衝突荷重が伝達される様子を示した模式図である。
【
図6A】
図6Aは、変形例1に係る荷重伝達部材の平面図である。
【
図6B】
図6Bは、変形例2に係る荷重伝達部材の平面図である。
【
図6C】
図6Cは、変形例3に係る荷重伝達部材の平面図である。
【
図7A】
図7Aは、上方から視た変形例4に係る車両用バンパユニットの平面図である。
【
図7B】
図7Bは、上方から視た変形例5に係る車両用バンパユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
本明細書が開示する技術に係る車両用バンパユニットの一実施形態を、以下に
図1から
図5を参照しつつ説明する。なお、本技術はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。なお、各図の左下部分に付した矢線は、車両の前方(F)、左方(L)、上方(U)を示している。また、複数の同一部材については、一部の部材に符号を付して他の部材の符号を省略することがある。
【0021】
(車両側の構造)
まず、本実施形態の車両用バンパユニット100が取り付けられる車両200側の構造について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る車両用バンパユニット100は、車両200の車両前後方向に沿って延設されるフロントサイドフレーム20に取り付けられる。
図1及び
図2に示すように、フロントサイドフレーム20の車幅方向外側に位置する外側面20Sには、ガセット10が接続されている。なお、フロントサイドフレーム20は、車両200の両側に左右一対となるように設けられているが、
図1等では、左側のフロントサイドフレーム20のみを示している。本実施形態に係る車両用バンパユニット及びその取付部分の構造は、車両200の左側と右側で略同様(左右対称)の構成であるため、以下の説明では左側の構造について説明し、右側の構造についての説明は、必要な場合を除き、割愛する。
【0022】
(フロントサイドフレーム)
フロントサイドフレーム20には、例えば、鋼板製の矩形閉断面状の部材が用いられる。フロントサイドフレーム20は、車両200の前部において車両前後方向に延在するように車両両側に設けられており、左右一対のフロントサイドフレーム20の車幅方向内側には、例えばラジエータやエンジン等の車両機器が配置される。
図1及び
図2に示すように、フロントサイドフレーム20の前端には、車両前後方向に直交する略平面状をなす衝撃吸収体取付部21が設けられており、この衝撃吸収体取付部21に、後述する衝撃吸収体40の被取付部41が固定される。衝撃吸収体取付部21は、フロントサイドフレーム20の本体部分から上下方向及び車幅方向に突出し、上下方向及び車幅方向の寸法が、衝撃吸収体40の本体部分の当該寸法よりも若干大きくなるように形成されている。
【0023】
(ガセット)
図1及び
図2に示すように、ガセット10は、車幅方向外側に拡開しながら前方に延出するように、フロントサイドフレーム20の外側面20Sに接続されている。ガセット10のフロントサイドフレーム20への接続方法は、特に限定されるものではなく、例えば溶接や締結具等によって固定することができる。フロントサイドフレーム20からのガセット10の延出長さは、ガセット10の延出端である前端10Tが、所定のクリアランスCを空けて、後述するバンパビーム30の後面30Sに対峙する長さとされている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るガセット10の前端10T近傍には、ガセット支持部材19が固定されており、ガセット10は、その前端10T近傍の車幅方向内側の内側面が、ガセット支持部材19を介してフロントサイドフレーム20に支持されている。ガセット支持部材19には、例えば鋼板製の板材を用いることができる。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るガセット支持部材19は、上方視で略階段状に屈曲されている。ガセット支持部材19は、フロントサイドフレーム20に固定され、ガセット10の前端部を支持している。
【0025】
(車両用バンパユニット)
続いて、本実施形態に係る車両用バンパユニット100について、
図1から
図5を参照しつつ説明する。車両用バンパユニット100は、車幅方向に延在するようにフロントサイドフレーム20の前端部に固定されるバンパビーム30と、バンパビーム30の後面30Sに取り付けられた荷重伝達部材50と、を備える。本実施形態に係る車両用バンパユニット100は、バンパビーム30の後面30Sに取り付けられた衝撃吸収体40をさらに備える。
【0026】
本実施形態に係る車両用バンパユニット100を構成するバンパビーム30、衝撃吸収体40、及び荷重伝達部材50は、何れもアルミニウム合金製の中空部材からなる。従来は鋼材製とされていた車両用バンパユニットをアルミニウム合金製としたことで、軽量化が図られている。後述するように、本技術によって荷重伝達効率の向上やバンパビームの変形低減といった効果が得られることで、アルミニウム合金製の中空部材のように、一般に従来の鋼鉄製のバンパビームと比較して軽量である一方で強度の低い部材の使用が可能とされている。軽量化の利点を得る一方で十分な強度を発現させるため、特にバンパビーム30や荷重伝達部材50に用いるアルミニウム合金としては、アルミニウム合金の中でも強度に優れたものを用いることが好ましい。限定されるものではないが、強度や耐食性等の観点から、アルミニウム合金としては、6000系(Al-Mg-Si系)や、7000系(Al-Zn-Mg系)のアルミニウム合金を好ましく用いることができる。特に、強度に優れた7000系のアルミニウム合金の使用が好ましい。
【0027】
(バンパビーム)
バンパビーム30には、例えば長手方向に空所(中空部)が延在する矩形閉断面状の長尺部材が用いられる。補強等を目的として、バンパビーム30の壁部に凹条部や凸条部が形成されていたり、内部にリブ壁が配設されたりしていてもよい。バンパビーム30は、全体として車幅方向に沿って延設される。
図1及び
図2に示すように、バンパビーム30の後面30Sには、衝撃吸収体40及び荷重伝達部材50が取り付けられている。バンパビーム30のうち、衝撃吸収体40が取り付けられる部分を固定部31とし、固定部31よりも車幅方向外側に位置する部分を外側部33とすると、バンパビーム30は、固定部31の方が外側部33よりも前方に位置し、外側部33が車幅方向外側に向かうにつれて後方に傾斜する形状とされている。外側部33は、平面状であっても曲面状であってもよく、上方視で直線的に傾斜していても、曲線状に傾斜(湾曲)していても、どちらでも構わない。また、左右の固定部31の間に位置して車幅方向に延在する中央部分の形状は特に限定されるものではなく、例えば中央部分の一部もしくは全体が湾曲していても構わない。なお、固定部31及び外側部33の後面は、バンパビームの後面30Sからなる。そのため、以下では、固定部31もしくは外側部33の後面を、「後面30S」と表すことがある。
【0028】
バンパビーム30は、後述するように、衝撃吸収体40を介して間接的に、フロントサイドフレーム20に接続・固定される。バンパビーム30の上下方向の寸法(高さ)は、フロントサイドフレーム20本体部分の同寸法よりも大きいものとされている。車両用バンパユニット100が車両に取り付けられた状態において、バンパビーム30は、衝撃吸収体40を介して固定部31がフロントサイドフレーム20に支持され、外側部33は、車幅方向外側の端部を自由端とする片持ち状に配される。
【0029】
(衝撃吸収体)
衝撃吸収体40には、例えば矩形閉断面状の部材が用いられ、空所が車両前後方向に延在するように配される。
図1及び
図2に示すように、衝撃吸収体40は、フロントサイドフレーム20の前端に設けられた衝撃吸収体取付部21と、バンパビーム30の後面30Sとの間に介在される。衝撃吸収体40本体部分の上下方向の寸法(高さ)は、バンパビーム30の同寸法(高さ)よりも若干小さく、フロントサイドフレーム20本体部分の同寸法よりも大きい。また、衝撃吸収体40本体部分の車幅方向の寸法も、フロントサイドフレーム20本体部分の同寸法より大きいものとされている。本実施形態に係る衝撃吸収体40は、
図5について後述するように、車両200の前方から衝突荷重Fが加えられたとき、軸方向(車両前後方向)に圧潰して衝突エネルギーを吸収する、いわゆるクラッシュボックスとして機能する。
【0030】
衝撃吸収体40の前端は、溶接等によってバンパビーム30の固定部31に固定されている。また、衝撃吸収体40の後端には、衝撃吸収体40の本体部分から上下方向及び車幅方向に突出する被取付部41が設けられており、衝撃吸収体取付部21に固定されるようになっている。
【0031】
(荷重伝達部材)
さて、本実施形態に係る車両用バンパユニット100では、バンパビーム30の外側部33に、荷重伝達部材50が取り付けられている。ガセット10が、従来構造(例えば特許文献1に記載の前部車体構造)のようにバンパビームの後面に直接対峙するのではなく、バンパビーム30の後面30Sに取り付けられた荷重伝達部材50に対峙していることで、SOL衝突時の衝突荷重を、より効率的にバンパビーム30からフロントサイドフレーム20に伝達可能となる。また、鋼板製のガセットがアルミニウム合金製の中空部材からなるバンパビームに直接対峙していると、SOL衝突時にガセットの前端がバンパビームの後面に食い込んでバンパビームを破損する可能性があるが、本実施形態では両部材の間に荷重伝達部材50が介在していることにより、このような事態を抑制できる。荷重伝達部材50には、例えば閉断面状の中空部材が用いられ、空所が上下方向に延在するように配される。荷重伝達部材50の形状及び寸法について、
図3及び
図4を参照しつつ詳しく説明する。
【0032】
図3に示すように、本実施形態に係る荷重伝達部材50は、水平断面の外形が、略台形と略三角形を合体させた略四角形状(概ね後述する前後連結壁53、前後中壁55、後壁51、及び前壁52の一部からなる略台形と、概ね前後中壁55、傾斜連結壁54、及び前壁52の一部からなる略三角形と、を合体させた形状)をなしている。また、
図4に示すように、荷重伝達部材50の上下方向の寸法は、バンパビーム30の同寸法(高さ)よりも若干小さくガセット10の前端10Tの同寸法よりも大きいものとされている。
【0033】
図3及び
図4に示すように、荷重伝達部材50は、ガセット対峙領域51Rを有する後壁51と、バンパビーム30の外側部33の後面30Sに沿って配される前壁52と、車両前後方向に延在してガセット対峙領域51Rと前壁52を連結する前後連結壁53と、を備える。ガセット対峙領域51Rは、一定の面積を有する領域であって、後壁51において、クリアランスCを空けてガセット10の前端10Tに対峙し、SOL衝突時に前端10Tが当接する領域である。
図4にも示すように、本実施形態では、車両前方から視た後壁51の車幅方向の寸法はガセット10の前端10Tの同寸法と略同等であって、ガセット対峙領域51Rは後壁51の車幅方向の略全長に亘っている。また、同じく
図4に示すように、本実施形態では、車両前方から視た後壁51の上下方向の寸法(高さ)はガセット10の前端10Tの同寸法よりも大きく、高さ方向については、ガセット対峙領域51Rが後壁51の一部を占めるように設定されている。
【0034】
図3に示すように、後壁51は、ガセット対峙領域51Rが所定のクリアランスCを空けてガセット10の前端10Tに対峙する。クリアランスCは、SOL衝突時に想定される衝突荷重の大きさや作用箇所、荷重伝達部材50を構成する各壁の強度、ガセット10やガセット支持部材19の強度等を考慮して設定できる。クリアランスCは、ガセット対峙領域51Rの車幅方向内側に位置する内側縁部と前端10Tとの間において、最も小さくなるように設定することが好ましい。本実施形態では、前端10Tが車幅方向外側に向かうにつれて若干後方に傾斜しているのに対し、ガセット対峙領域51Rが車幅方向に延在することで、クリアランスCが車幅方向内側において車幅方向外側よりも小さくなるように設定されている。
【0035】
図3に示すように、前壁52は、バンパビーム30外側部33の後面30Sに沿うように配される。本実施形態では、前壁52の前面の全域が外側部33の後面30Sに当接した状態で配されている。また、
図4に示すように、本実施形態において、後面30Sに当接する前壁52の車幅方向の寸法は、ガセット対峙領域51Rの同寸法(本実施形態では後壁51の同寸法と同じ)よりも大きいものとされている。また、本実施形態では、前壁52の上下方向の寸法(本実施形態では後壁51の同寸法と同じ)は、ガセット対峙領域51Rの同寸法よりも大きいものとされている。このように、車両前方から視て、前壁52は、後壁51さらにはガセット対峙領域51Rよりも大きな面積を有するように設定されている。
【0036】
図3に示すように、前後連結壁53は、後壁51におけるガセット対峙領域51Rの内側縁部、すなわち後壁51の車幅方向内側の端部に接続されている。これにより、SOL衝突時にバンパビーム30の外側部33が後方に変位してガセット対峙領域51Rがガセット10の前端10Tに当接すると、前後連結壁53からガセット対峙領域51Rの内側縁部に伝達された衝突荷重は、主にガセット10の車幅方向内側(フロントサイドフレーム20側)を通ってフロントサイドフレーム20に伝えられる。
また、本実施形態では、前後連結壁53は車両前後方向に延在しており、ガセット対峙領域51Rの内側縁部の前方において前壁52に接続されている。前後連結壁53が車両前後方向に延在していることで、車両前後方向に沿ってバンパビーム30に加えられ前壁52に伝達された衝突荷重を、前後連結壁53を介して、効率的にガセット対峙領域51Rへと伝えることができる。前後連結壁53は、本実施形態のように車両前後方向に延在していることが特に好ましいが、厳密に車両前後方向に延在することを要さず、前後連結壁53は、車両前後方向に対して若干の角度、例えば-7°以上+7°以下、好ましくは-5°以上+5°以下、より好ましくは-3°以上+3°以下の角度をなす方向に延在するように設定できる。前後連結壁53の延在方向がこのような範囲であれば、十分効率的に前壁52からガセット対峙領域51Rへと衝突荷重を伝えることができる。
【0037】
また、前後連結壁53は、ガセット10の内側面の延出面とバンパビーム30との交線よりも車幅方向内側寄り、すなわちバンパビーム30の固定部31寄りの位置において、前壁52に接続される。SOL衝突によってガセット対峙領域51Rがガセット10の前端10Tに当接すると、バンパビーム30は、フロントサイドフレーム20との固定部31と、前後連結壁53の前壁52との接続部によって後面から支持された状態で変形する。本実施形態では、前後連結壁53の前壁52との接続部が、車幅方向内側すなわちSOL衝突時の初期接触点やフロントサイドフレーム20との固定部31に近い側に位置していることで、バンパビーム30の後面がガセットに直接対峙する従来の構成と比較して、SOL衝突時のバンパビーム30の変形が低減される。
【0038】
図3に示すように、本実施形態に係る荷重伝達部材50は、前壁52に直交してガセット対峙領域51Rと前壁52とを連結する傾斜連結壁54をさらに備える。本実施形態に係る傾斜連結壁54は、後壁51におけるガセット対峙領域の外側縁部、すなわち後壁51の車幅方向外側の端部と、前壁52の車幅方向外側の端部とを連結している。これにより、荷重伝達部材50の断面は、既述したような四角外形状の閉断面をなしている。傾斜連結壁54は、厳密に前壁52に直交することを要さず、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、前壁52の法線に対して若干の角度(例えば-7°以上+7°以下、好ましくは-5°以上+5°以下、より好ましくは-3°以上+3°以下の角度)をなす方向に延在していても構わない。
【0039】
図3に示すように、本実施形態に係る荷重伝達部材50は、前後連結壁53と傾斜連結壁54との間において、車両前後方向に延在して前壁52と後壁51を連結する前後中壁55をさらに備える。前後中壁55は、前後連結壁53よりも車幅方向外側に位置し、後壁51、前壁52、前後連結壁53、及び傾斜連結壁54によって形成される閉四角外形状断面の空所内に、この空所を車両前後方向に分割するように配される。前後中壁55は、前後連結壁53と同じく、厳密に車両前後方向に延在することを要さず、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、車両前後方向に対して若干の角度をなす方向に延在していても構わない。また、前後中壁55は、前後連結壁53と平行であることを要さず、前後連結壁53に対して若干の角度をなす方向に延在していても構わない。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る荷重伝達部材50は、前後連結壁53と傾斜連結壁54との間において、前壁52に直交して前壁52と後壁51を連結する傾斜中壁56をさらに備える。傾斜中壁56は、傾斜連結壁54及び前後中壁55よりも車幅方向内側に位置し、後壁51、前壁52、前後連結壁53、及び前後中壁55によって形成される閉四角外形状断面の空所内に、この空所を車両前後方向から傾斜下方向に分割するように配される。傾斜中壁56は、傾斜連結壁54と同じく、厳密に前壁52に直交することを要さず、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、前壁52の法線に対して若干の角度をなす方向に延在していても構わない。また、傾斜中壁56は、傾斜連結壁54と平行であることを要さず、傾斜連結壁54に対して若干の角度をなす方向に延在していても構わない。
【0041】
図3に示すように、上記のような本実施形態に係る荷重伝達部材50では、前後中壁55と前後連結壁53、傾斜中壁56と傾斜連結壁54は、それぞれ互いに平行に配される。本実施形態に係る荷重伝達部材50では、互いに平行に配される各壁について、車幅方向内側に位置する壁(前後連結壁53、傾斜中壁56)が、車幅方向外側に位置する壁(前後中壁55、傾斜連結壁54)よりも大きな厚さを有するように形成されている。具体的には、前後連結壁53の厚さを53W、前後中壁55の厚さを55Wとすると、厚さ53W>厚さ55Wとされている。また、傾斜中壁56の厚さを56W、傾斜連結壁54の厚さを54Wとすると、厚さ56W>厚さ54Wとされている。フロントサイドフレーム20やバンパビーム30の配置・寸法形状・材質や、荷重伝達部材50の後壁51や前壁52等の寸法形状等にもよるが、荷重伝達部材50の平面視の断面形状が変形しにくいように設定されることが好ましい。例えば、厚さ53Wは厚さ55Wの1.2倍以上、厚さ56Wは厚さ54Wの1.2倍以上とすることが好ましく、それぞれ1.5倍以上とすることがより好ましい。各壁の厚さを上記範囲とすることで、荷重伝達部材50について十分な強度を確保しながら軽量化を図るとともに、SOL衝突時の衝突荷重を車幅方向内側から効率的にフロントサイドフレーム20に伝達できる。
【0042】
(車両用バンパユニットの製造)
上記の構造の車両用バンパユニット100は、例えば下記のように製造できる。
まず、上記したようなアルミニウム合金を、公知の方法により、上記の寸法形状に成形して、バンパビーム30、衝撃吸収体40、荷重伝達部材50の各部材を製造する。荷重伝達部材50等の成形は、押出成形によって好適に行うことができるほか、例えば削出加工等によって行うことも可能である。各部材を成形した後、バンパビーム30の後面30Sの所定位置に、衝撃吸収体40及び荷重伝達部材50を固定する。衝撃吸収体40及び荷重伝達部材50の固定は、溶接や締結具を用いた締結等、公知の方法によって行うことができる。
【0043】
製造された車両用バンパユニット100は、例えば上記したように、衝撃吸収体40の被取付部41に、フロントサイドフレーム20の前端に設けられた衝撃吸収体取付部21を固定することで、車両200の左右両側に取り付けられる。
【0044】
(SOL衝突)
上記のような車両用バンパユニット100を取り付けた車両200が、バリア等の衝突物BにSOL衝突したときの衝突荷重Fの伝達の一例について、
図2及び
図5を参照しつつ説明する。なお、車両200の衝突によって車両用バンパユニット100に加えられる衝突荷重の影響は、固定部31(衝撃吸収体40の取付箇所)と、衝突荷重がバンパビーム30に加えられる荷重箇所との位置関係によって変化するが、以下では、
図2に示すように、衝突物BとのSOL衝突による衝突荷重Fが、バンパビーム30の外側部33における車幅方向内側の端部(固定部31の近傍)に加えられる場合について説明する。
【0045】
衝突物BとのSOL衝突によってバンパビーム30の上記位置に衝突荷重Fが加えられると、衝突荷重Fの一部は、例えば
図5に矢線A1,A2で示すように、衝撃吸収体40を介してフロントサイドフレーム20に伝達される。このように衝突荷重Fが伝えられるのに伴い、衝撃吸収体40は徐々に圧潰し、車両200に対してバンパビーム30が相対的に後方に変位し、バンパビーム30とフロントサイドフレーム20とが接近する。
【0046】
他方、衝突荷重Fの他の一部は、例えば
図5に矢線B1,B2,B3で示すように、荷重伝達部材50からガセット10へ、さらにはフロントサイドフレーム20へと伝達されことになる。荷重伝達部材50及びガセット10を介した衝突荷重Fの伝達は、具体的には、下記のように進行する。
【0047】
片持ち状に配された外側部33に衝突荷重Fが加えられると、衝突荷重Fの一部は、例えば
図5に矢線B1等で示すように、バンパビーム30の後面30Sに当接した前壁52から荷重伝達部材50に伝達される。バンパビーム30において荷重伝達部材50の取り付け位置よりも車幅方向内側に加えられた衝突荷重Fの多くは、
図5に矢線B2で示すように、前壁52の車幅方向内側縁から前後連結壁53を通って後壁51へと伝えられる。
【0048】
また、片持ち状に配されている外側部33に衝突荷重Fが加えられると、バンパビーム30が変形し、外側部33の車幅方向外側の端部が固定部31との境界を回転中心として車両後方に向けて移動する。このようなバンパビーム30の変形と、既述した衝撃吸収体40の圧潰によるバンパビーム30の相対的な変位により、荷重伝達部材50がガセット10に接近し、クリアランスCをもって対峙していたガセット対峙領域51Rが前端10Tに当接する。ガセット対峙領域51Rが前端10Tに当接すると、荷重伝達部材50の後壁51に伝えられた荷重が、ガセット対峙領域51Rにおいて、荷重伝達部材50からガセット10へと伝達される。そしてさらに、
図5に矢線B3等で示すように、ガセット10を通ってフロントサイドフレーム20へと伝達される。
【0049】
<本実施形態の作用効果>
以上に記載したように、本実施形態に係る車両用バンパユニット100によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態に係る荷重伝達部材50では、前後連結壁53が、SOL衝突による衝突荷重Fが加えられる車両前後方向に延在し、後壁51のガセット対峙領域51Rと前壁52とを連結している。よって、バンパビーム30から前壁52に伝達された衝突荷重Fを、前後連結壁53によって非常に効率的にガセット対峙領域51Rに伝えることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50では、前後連結壁53が、ガセット対峙領域51Rの車幅方向内側に位置する内側縁部に接続されている。よって、荷重伝達部材50の前壁52に伝達された衝突荷重Fは、前後連結壁53によってガセット対峙領域51Rの内側縁部に伝えられる。この結果、バンパビーム30の変形や変位等によってガセット対峙領域51Rが前端10Tに当接したときに荷重伝達部材50からガセット10へと伝えられる荷重は、主としてガセット10の車幅方向内側、すなわちフロントサイドフレーム20に近接する側に伝達される。このように、SOL衝突の衝突荷重Fを、より効率的に短い経路でフロントサイドフレーム20へと伝えることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50では、前壁52が、後壁51のガセット対峙領域51Rよりも車幅方向に大きくなるように設けられている。よって、バンパビーム30の外側部33に加えられた衝突荷重Fは、広い範囲に配された前壁52に伝達され、荷重伝達部材50を介してガセット対峙領域51Rに伝えられる。この結果、SOL衝突によりバンパビーム30の外側部33に加えられた衝突荷重Fは、バンパビーム30の変形や変位等によってガセット対峙領域51Rが前端10Tに当接すると、荷重伝達部材50を介して効率的にガセット10に伝えられ、フロントサイドフレーム20へと伝達される。なお、本実施形態では、前壁52の上下方向の寸法も、ガセット対峙領域51R(本実施形態では後壁51の同寸法)の同寸法よりも大きいものとされており、より広い範囲に亘って前壁52から衝突荷重Fが荷重伝達部材50に伝達されるようになっている。
【0053】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50では、前後連結壁53は、ガセット対峙領域51Rの内側縁部の車両前後方向前方において、前記前壁に接続されている。よって、ガセット10が直接バンパビーム30の後面に対峙する従来の構成と比較して、SOL衝突時に外側部33における固定部31寄りの位置に衝突荷重が加わった場合の外側部33の変形を、低減できる。
【0054】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50は、バンパビーム30がフロントサイドフレーム20に固定された状態において上下方向に延在する空所を有するアルミニウム製の中空部材であって、前壁52に直交してガセット対峙領域51Rと前壁52を連結する傾斜連結壁54をさらに備える。よって、荷重伝達部材50を軽量に形成しながら、中空部材からなる荷重伝達部材50の断面剛性を傾斜連結壁54によって向上させて、変形や圧壊を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50では、傾斜連結壁54が、ガセット対峙領域51Rの車幅方向外側に位置する外側縁部に接続されている。すなわち、傾斜連結壁54は、車幅方向について最も外側に配される。よって、バンパビーム30に加えられた衝突荷重Fを外側部33の広い範囲から前壁52に伝達させ、荷重伝達部材50の圧壊を抑制しながらフロントサイドフレーム20へと伝えることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50は、前後連結壁53と傾斜連結壁54との間において車両前後方向に延在してガセット対峙領域51Rと前壁52を連結する前後中壁55をさらに備える。前後中壁55を備えることにより、荷重伝達部材50の断面剛性を向上させて、荷重伝達部材50の圧壊を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50において、前後中壁55の厚さ55Wは、前後連結壁53の厚さ53Wよりも小さい。前後中壁55は、荷重伝達部材50の圧壊を抑制できる程度の厚さがあればよい。前後連結壁53よりも前後中壁55を肉薄に形成することにより、荷重伝達部材50の軽量化を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50において、荷重伝達部材50は、前後連結壁53と傾斜連結壁54との間において前壁52に直交してガセット対峙領域51Rと前記前壁52を連結する傾斜中壁56をさらに備える。傾斜中壁56を備えることにより、荷重伝達部材50の断面剛性を向上させて、荷重伝達部材50の変形(圧壊)を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る荷重伝達部材50において、傾斜中壁56の厚さ56Wは、傾斜連結壁54の厚さ54Wよりも大きい。傾斜中壁56は、荷重伝達部材50の圧壊を抑制できる程度の厚さがあればよい。傾斜中壁56よりも傾斜連結壁54を肉薄に形成することにより、荷重伝達部材50の軽量化を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る車両用バンパユニット100において、荷重伝達部材50とガセット10との間に設けられるクリアランスCは、ガセット対峙領域51Rの車幅方向内側に位置する内側縁部とガセット10の前記前端10Tとの間において最も小さくなるように設定されている。このような構成によれば、SOL衝突により荷重伝達部材50がフロントサイドフレーム20等に対して変位すると、後壁51のガセット対峙領域51Rは、まず内側縁部においてガセット10の前端10Tに当接する。よって、荷重伝達部材50からガセット10へと伝えられる荷重は、まずガセット10の車幅方向内側すなわちフロントサイドフレーム20に近接する側に伝達される。この結果、衝突荷重Fを、より効率的に短い経路でフロントサイドフレーム20に伝達することができる。
【0061】
<実施形態の変形例>
車両用バンパユニット100を構成する荷重伝達部材50の変形例について、
図6Aから
図6C、並びに、
図7A及び
図7Bを参照しつつ説明する。下記の変形例に係る荷重伝達部材150,250,350,450,550には、実施形態に係る荷重伝達部材50と同じく、例えばアルミニウム合金製の閉断面状中空部材を用いることができる。荷重伝達部材150,250,350,450,550は、荷重伝達部材50と同じく、空所が上下方向に延在するように、バンパビーム30外側部33の後面30Sに取り付けられる。以下では、荷重伝達部材50と基本的に同様の構成については実施形態と同じ符号を付して説明を省略し、実施形態と同様の作用効果についての説明も割愛する。
【0062】
(変形例1)
図6Aは、変形例1に係る荷重伝達部材150を上方から視た平面図である。本変形例に係る荷重伝達部材150は、後壁51、前壁52、前後連結壁53、傾斜連結壁54によって画成される空所内に、前壁52に直交する傾斜中壁156のみを有し、実施形態の前後中壁55に対応する壁を有しない点において、上記実施形態に係る荷重伝達部材50と相違している。傾斜中壁156は、荷重伝達部材50の傾斜中壁56よりも車両方向外側すなわち傾斜連結壁54寄りに配されており、傾斜連結壁54よりも肉厚に形成されている。
【0063】
(変形例1の作用効果)
本変形例に係る荷重伝達部材150は、荷重伝達部材50と比較して、構造が簡素化されているため、軽量化及びコスト削減を図る上で有利である。また、荷重伝達部材150の空所内に、比較的肉厚な傾斜中壁156が空所を概ね等分に分割するように配置されていることで、前後中壁55を備えていなくとも荷重伝達部材150が圧壊し難く、衝突荷重を効率的にフロントサイドフレーム20へと伝達できる。
【0064】
(変形例2)
図6Bは、変形例2に係る荷重伝達部材250を上方から視た平面図である。本変形例に係る荷重伝達部材250は、後壁251の車両方向外側の端部に、後方すなわちガセット10に向かって延出するガイド部251G1が形成されている点において、上記実施形態に係る荷重伝達部材50と相違している。ガイド部251G1は、後壁251のガセット対峙領域251Rよりも車両方向外側の端部が、後方に屈曲されることによって形成されている。
【0065】
(変形例2の作用効果)
本変形例に係る荷重伝達部材250では、後壁251に、ガセット対峙領域251Rの車幅方向外側において後方に延出するガイド部251G1が設けられている。SOL衝突によってガセットが拡開し、ガセットの前端が車幅方向外側にスライドすると、前端が荷重伝達部材のガセット対峙領域にしっかり当接せず、衝突荷重が荷重伝達部材からガセットへ上手く伝達されない可能性がある。ガイド部251G1が設けられていることにより、ガセット10の前端10Tの車幅方向外側への移動が規制される。この結果、前端10Tをガセット対峙領域251Rにしっかりと当接させて、衝突荷重Fを荷重伝達部材250からガセット10へ、さらにはフロントサイドフレーム20へと確実に伝達可能となる。
【0066】
(変形例3)
図6Cは、変形例3に係る荷重伝達部材350を上方から視た平面図である。本変形例に係る荷重伝達部材350は、後壁351の車両方向両側の端部に、後方すなわちガセット10に向かって延出する外側ガイド部351G1及び内側ガイド部351G2が形成されている点において、上記実施形態に係る荷重伝達部材50と相違している。外側ガイド部351G1は、後壁351のガセット対峙領域351Rよりも車両方向外側の端部が後方に屈曲され、内側ガイド部351G2は、後壁351のガセット対峙領域351Rよりも車両方向内側の端部が、ガセット10の延出方向に沿った方向に屈曲されることによって形成されている。
【0067】
(変形例3の作用効果)
SOL衝突によってガセットが内側に倒れ込み、ガセットの前端が車幅方向内側にスライドすると、前端が荷重伝達部材のガセット対峙領域にしっかり当接せず、衝突荷重が荷重伝達部材からガセットへ上手く伝達されない可能性がある。また、ガセットとフロントサイドフレームとの接続部分が損傷する可能性もある。上記の構成によれば、外側ガイド部351G1によってガセット10の前端10Tの車幅方向外側への移動が規制されるとともに、内側ガイド部351G2によってガセット10の前端10Tの車幅方向内側への移動が規制されて、前端10Tがガセット対峙領域351Rに略正対する位置へと確実に導かれる。この結果、前端10Tをガセット対峙領域351Rにしっかりと当接させて、衝突荷重Fを荷重伝達部材350からガセット10へ、さらにはフロントサイドフレーム20へと一層確実に伝達可能となる。
【0068】
(変形例4)
図7Aは、バンパビーム30の後面30Sに取り付けられた変形例4に係る荷重伝達部材450を、上方から視た平面図である。本変形例に係る荷重伝達部材450は、バンパビーム30に取り付けられた状態において、前後連結壁453が、車両前後方向DFRとの間の角度がθ1となる方向D453に延在するように形成されている点において、上記実施形態に係る荷重伝達部材50と相違している。角度θ1は、ガセット10の延出方向DG1と車両前後方向DFRとの間の角度αに対し、θ1<αとなるように設定される。SOL衝突時に後壁51がガセット10の前端10Tに接触する際のバンパビーム30や衝撃吸収体40の変形を考慮して、このような接触時における前後連結壁453の延在方向が上記範囲となるように配設したものも、本開示の範囲に属する。なお、
図7Aに示すように、本変形例に係る荷重伝達部材450では、前壁452が実施形態1に係る前壁52よりも短く形成されており、前後連結壁453は、車両前方に向かうにつれて車幅方向外側に拡開する方向に延在している。
【0069】
(変形例4の作用効果)
本変形例に係る荷重伝達部材450では、前後連結壁453が延在する方向D453が、ガセット10の延出方向DG1と比較して、SOL衝突による衝突荷重Fが加えられる車両前後方向DFRに沿うように(近くなるように)設定されている。よって、ガセット10の前端10Tがバンパビーム30の後面30Sに直接対峙する従来の構成と比較して、バンパビーム30から前壁452に伝達された衝突荷重Fを、前後連結壁453によって効率的にガセット対峙領域51Rに伝えることができる。また、前後連結壁453は、ガセット10の車幅方向内側面の延長面とバンパビーム30の後面30Sとの交線よりも車幅方向内側において、前壁452に接続される。よって、従来の構成と比較して、SOL衝突時に外側部33における固定部31寄りの位置に衝突荷重が加わった場合の外側部33の変形が低減される。この結果、荷重伝達部材450を備えるバンパユニットは、従来の構成のバンパユニットと比較して高い耐衝突性能を発揮可能となる。
【0070】
(変形例5)
図7Bは、バンパビーム30の後面30Sに取り付けられた変形例4に係る荷重伝達部材550を、上方から視た平面図である。
図7Bに示すように、本変形例に係る荷重伝達部材550では、前壁552が実施形態1に係る前壁52よりも長く形成されており、前後連結壁553は、車両前方に向けて車幅方向内側に傾斜する方向D553に延在している。前後連結壁553が延在する方向D553と車両前後方向DFRとの間の角度θ2は、ガセット10の延出方向DG1と車両前後方向との間の角度αに対し、θ2<αとなるように設定される。すなわち、
図7Bに示すように、車両前後方向DFRについて延出方向DG1と線対称となる方向を対称方向DG2とすると、方向D553は対称方向DG2よりも車両前後方向DFRに沿った方向となる。
【0071】
(変形例5の作用効果)
本変形例に係る荷重伝達部材550でも、前後連結壁553の延在方向は、ガセット10の延出方向と比較して、SOL衝突による衝突荷重Fが加えられる車両前後方向に沿うように設定されている。よって、ガセット10の前端10Tがバンパビーム30の後面30Sに直接対峙する従来の構成と比較して、バンパビーム30から前壁552に伝達された衝突荷重Fを、前後連結壁553によって効率的にガセット対峙領域51Rに伝えることができる。また、前後連結壁553は、ガセット10の車幅方向内側面の延長面とバンパビーム30の後面30Sとの交線よりも車幅方向内側、さらにはガセット対峙領域51Rの内側縁部の前方よりも車両方向内側において、前壁552に接続される。よって、実施形態1と比較しても、SOL衝突時に外側部33における固定部31寄りの位置に衝突荷重が加わった場合の外側部33の変形がより低減される。この結果、荷重伝達部材550を備えるバンパユニットは、高い耐衝突性能を発揮可能となる。
【0072】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術には、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えることができる。例えば、次のような実施形態も、本明細書が開示する技術の技術的範囲に含まれる。
【0073】
(1)上記実施形態では、SOL衝突前から、前壁52の前面が全域に亘って外側部33の後面30Sに当接している場合について例示した。このようにすれば、SOL衝突等の際に、バンパビーム30の変形・破損等を抑制しつつ、衝突荷重Fを前壁52の前面全域から荷重伝達部材50に伝達できるため好ましい。しかしながら、このような態様に限定されることはなく、前壁52が外側部33に沿って配されており、バンパビーム30に前方から荷重が加えられたときに、後面30Sの少なくとも一部の領域(好ましくは全域)が、前壁52の前面に当接するように構成されていればよい。例えば、湾曲する外側部33に対し、前壁52を平面状に形成してもよい。なお、上記実施形態では、外側部33及び前壁52の双方が、上方視で直線的に形成されている場合について記載したが、両部材が湾曲していても構わない。
【0074】
(2)上記実施形態では、車幅方向外側に向かうにつれて後方に傾斜する前端10Tに対し、ガセット対峙領域51Rを車幅方向に延在させることで、クリアランスCがガセット対峙領域51Rの内側縁部において最も小さくなるように設定された場合について例示したが、これに限定されない。例えば車幅方向に延在する前端10Tに対し、後壁51を、車幅方向内側に向かうにつれてガセット対峙領域51Rが後方に傾斜するような形状に形成してもよく、前端10Tとガセット対峙領域51Rの双方を、車幅方向に対して傾斜させてもよい。或いは、ガセット対峙領域51R及び前端10Tの内側縁部の一方もしくは双方を、他方に向けて部分的に突出させても構わない。
【0075】
(3)上記実施形態では、バンパビーム30が衝撃吸収体40を介して、フロントサイドフレーム20に間接的に固定される場合について記載したが、これに限定されない。衝撃吸収体を備えておらず、バンパビームがフロントサイドフレームに直接固定される構成の車両用バンパユニットも、本開示の範囲に含まれる。
【0076】
(4)上記変形例1では、実施形態の前後中壁55に対応する中壁を有さず、傾斜中壁156を有する荷重伝達部材150について記載したが、これに限定されない。実施形態の傾斜中壁56に対応する中壁を有さず、前後中壁55に対応する中壁のみを有する荷重伝達部材でも、構造の簡素化等による同様の効果を得ることができる。さらには、荷重伝達部材を、中壁を有しない四角形閉断面形状としたり、前壁と後壁とが前後連結壁によって連結された断面略C字状や断面略I字状に形成したりすることも可能である。
【0077】
(5)上記変形例4及び変形例5では、前後連結壁453,553が、車両前後方向DFRとの間の角度θ1,θ2が、ガセット10の延出方向DG1と車両前後方向DFRとの間の角度αよりも小さくなる方向D453,D553に延在する場合について示した。同様に、例えば実施形態における前後中壁55を、車両前後方向DFRとの間の角度がガセット10の延出方向DG1と車両前後方向DFRとの間の角度αよりも小さくなる方向に延在するように、形成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
100…車両用バンパユニット、200…車両
10…ガセット、10T…前端、19…ガセット支持部材、20…フロントサイドフレーム、20S…外側面、21…衝撃吸収体取付部、30…バンパビーム、30S…後面、31…固定部、33…外側部、40…衝撃吸収体、41…被取付部、50,150,250,350,450,550…荷重伝達部材、51,251,351…後壁、51R,251R,351R…ガセット対峙領域、52,452,552…前壁、53,453,553…前後連結壁、54…傾斜連結壁、55…前後中壁、56,156…傾斜中壁、251G1…ガイド部、351G1…外側ガイド部、351G2…内側ガイド部
B…衝突物、C…クリアランス、F…衝突荷重