(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】落下防止具及び携帯工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20241011BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 H
(21)【出願番号】P 2021069890
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】高萩 耕司
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-042465(JP,A)
【文献】特開2019-181598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯工具と別体に形成され、前記携帯工具を吊り下げ具から吊り下げるための落下防止具であって、
前記携帯工具へ着脱可能な取付部と、
前記取付部へ一体に設けられ、前記吊り下げ具を連結するための連結部と、
前記取付部を前記携帯工具へ取り付けて前記連結部に前記吊り下げ具を連結した状態で、前記携帯工具が落下した際の前記連結部への衝撃荷重の発生を報知する報知部と、
が設けられている
と共に、前記報知部は、前記衝撃荷重よりも低い耐荷重で形成され、前記衝撃荷重によって破断する破断部であり、
前記連結部には、前記吊り下げ具の端部に設けたリング体が貫通する透孔が形成され、
前記連結部には、前記リング体と係止して前記リング体を前記透孔の内縁と接触させない係止位置と、前記リング体への係止を解除して前記リング体の前記内縁との接触を許容する係止解除位置との間で移動可能な係止部材が設けられ、
前記係止部材は、前記係止位置で前記連結部に固定される突出片を有し、前記突出片に前記破断部が形成されている落下防止具。
【請求項2】
前記係止部材は、前記連結部に外装されるスリーブである請求項
1に記載の落下防止具。
【請求項3】
携帯工具と別体に形成され、前記携帯工具を吊り下げ具から吊り下げるための落下防止具であって、
前記携帯工具へ着脱可能な取付部と、
前記取付部へ一体に設けられ、前記吊り下げ具を連結するための連結部と、
前記取付部を前記携帯工具へ取り付けて前記連結部に前記吊り下げ具を連結した状態で、前記携帯工具が落下した際の前記連結部への衝撃荷重の発生を報知する報知部と、
が設けられていると共に、前記報知部は、前記衝撃荷重よりも低い耐荷重で形成され、前記衝撃荷重によって破断する破断部であり、
前記連結部には、前記吊り下げ具の端部に設けたリング体が貫通する透孔が形成され、
前記連結部には、前記リング体と係止して前記リング体を前記透孔の内縁と接触させない係止部材が固定されて、
前記係止部材は、前記連結部に外装されるスリーブであり、前記スリーブにおける前記リング体との係止部分に前記破断部が形成されている落下防止具。
【請求項4】
前記取付部及び前記連結部は、金属製であり、前記係止部材は、樹脂製である請求項
1乃至3の何れかに記載の落下防止具。
【請求項5】
前記携帯工具は、バッテリ装着部を有し、前記取付部は、前記バッテリ装着部に取り付けられる請求項1乃至
4の何れかに記載の落下防止具。
【請求項6】
前記取付部は、前記バッテリ装着部の外周を囲むリング状である請求項
5に記載の落下防止具。
【請求項7】
前記連結部は、前記取付部から突出している請求項
6に記載の落下防止具。
【請求項8】
前記取付部は、帯状板をリング状に折曲して形成され、前記連結部は、前記帯状板の端部同士を重ね合わせて形成されている請求項
6又は7に記載の落下防止具。
【請求項9】
前記取付部は、前記バッテリ装着部にネジ止めされる請求項
5乃至8の何れかに記載の落下防止具。
【請求項10】
前記バッテリ装着部における前記取付部の取付面には、係止溝が形成され、前記取付部には、前記係止溝に係止する係止片が形成されている請求項
9に記載の落下防止具。
【請求項11】
請求項1乃至
10の何れかに記載の落下防止具を取り付けてなる携帯工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動工具等の携帯工具を用いて高所等で作業する際に、携帯工具を落下させてしまうことを防止するために用いられる落下防止具と、その落下防止具を取り付けた携帯工具とに関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具等の携帯工具を用いて高所で作業を行う場合、誤って携帯工具を落下させないようにテザーストラップ等の吊り下げ具を用いて携帯工具を足場や手すりに結合する対策が採られる。
例えば特許文献1には、電動工具のハウジングに、吊り下げ具の結合部を設けた発明が開示されている。特にここでは、吊り下げ具を介して結合部に大きな衝撃荷重が加わることで損傷を受けたことが容易に目視できるように、結合部に耐衝撃性が低い空洞部や薄肉部等を設けている。この空洞部等に生じるひび割れ等で、作業者に結合部の損傷を視覚的に報知可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の結合部は、ひび割れ等の損傷が作業者にわかりにくい場合がある。また、結合部がハウジングに設けられるため、結合部が損傷して報知機能が失われると、報知機能を回復させるためにハウジングを交換する必要が生じる。よって、コストや手間がかさんでしまう。
【0005】
そこで、本開示は、簡単な構成で衝撃荷重による損傷を確実に報知できる落下防止具及び携帯工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、携帯工具と別体に形成され、前記携帯工具を吊り下げ具から吊り下げるための落下防止具であるのが望ましい。
前記落下防止具は、前記携帯工具へ着脱可能な取付部と、前記取付部へ一体に設けられ、前記吊り下げ具を連結するための連結部とを有するものであることが望ましい。
前記落下防止具は、前記取付部を前記携帯工具へ取り付けて前記連結部に前記吊り下げ具を連結した状態で、前記携帯工具が落下した際の前記連結部への衝撃荷重の発生を報知する報知部が設けられているのが望ましい。
前記報知部は、前記衝撃荷重よりも低い耐荷重で形成され、前記衝撃荷重によって破断する破断部であるのが望ましい。
前記連結部には、前記吊り下げ具の端部に設けたリング体が貫通する透孔が形成され、前記連結部には、前記リング体と係止して前記リング体を前記透孔の内縁と接触させない係止位置と、前記リング体への係止を解除して前記リング体の前記内縁との接触を許容する係止解除位置との間で移動可能な係止部材が設けられているのが望ましい。
前記係止部材は、前記係止位置で前記連結部に固定される突出片を有し、前記突出片に前記破断部が形成されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡単な構成で衝撃荷重による損傷を確実に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】落下防止具を装着したインパクトドライバの斜視図である。
【
図3】落下防止具を装着したインパクトドライバの平面図である。
【
図4】落下防止具を用いたインパクトドライバの吊り下げ状態の説明図で、
図4Aは通常時、
図4Bは落下衝撃が加わった時をそれぞれ示す。
【
図5】変更例の落下防止具を装着したインパクトドライバの部分斜視図である。
【
図6】変更例の落下防止具を用いたインパクトドライバの吊り下げ状態の説明図で、
図6Aは通常時、
図6Bは落下衝撃が加わった時をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、報知部は、衝撃荷重よりも低い耐荷重で形成され、衝撃荷重によって破断する破断部であってもよい。この構成によれば、破断部の破断によって衝撃荷重の発生を容易に報知することができる。
本開示の一実施形態において、連結部には、吊り下げ具の端部に設けたリング体が貫通する透孔が形成され、連結部には、リング体と係止してリング体を透孔の内縁と接触させない係止位置と、リング体への係止を解除してリング体の内縁との接触を許容する係止解除位置との間で移動可能な係止部材が設けられていてもよい。そして、係止部材は、係止位置で連結部に固定される突出片を有し、突出片に破断部が形成されていてもよい。この構成によれば、破断部の破断に伴う係止部材の移動によって衝撃荷重の発生をより確実に報知することができる。また、破断部が破断した際の連結部による吊り下げ状態の維持も確実に行える。
本開示の一実施形態において、連結部には、吊り下げ具の端部に設けたリング体が貫通する透孔が形成され、連結部には、リング体と係止してリング体を透孔の内縁と接触させない係止部材が固定されて、係止部材におけるリング体との係止部分に破断部が形成されていてもよい。この構成においても、破断部の破断によって衝撃荷重の発生をより確実に報知することができる。また、破断部が破断した際の連結部による吊り下げ状態の維持も確実に行える。
【0010】
本開示の一実施形態において、係止部材は、連結部に外装されるスリーブとしてもよい。この構成によれば、破断部が破断した際に係止解除位置へスムーズに移動させることができる。
本開示の一実施形態において、取付部及び連結部は、金属製であり、係止部材は、樹脂製であってもよい。この構成によれば、取付部及び連結部の剛性を確保しつつ、衝撃荷重の発生による係止部材の破断を確実に行わせることができる。
本開示の一実施形態において、携帯工具は、バッテリ装着部を有し、取付部は、バッテリ装着部に取り付けられるものであってもよい。この構成によれば、邪魔にならない箇所に落下防止具を取り付けることができる。
本開示の一実施形態において、取付部は、バッテリ装着部の外周を囲むリング状であってもよい。この構成によれば、取付部をバランスよくバッテリ装着部に装着可能となる。
本開示の一実施形態において、連結部は、取付部から突出していてもよい。この構成によれば、作業の邪魔になりにくい箇所に吊り下げ具を連結できる。
本開示の一実施形態において、取付部は、帯状板をリング状に折曲して形成され、連結部は、帯状板の端部同士を重ね合わせて形成されていてもよい。この構成によれば、取付部及び連結部の一体性を高めることができると共に、連結部の強度も確保できる。
本開示の一実施形態において、取付部は、バッテリ装着部にネジ止めされてもよい。この構成によれば、取付部の着脱が簡単に行える。
本開示の一実施形態において、バッテリ装着部における取付部の取付面には、係止溝が形成され、取付部には、係止溝に係止する係止片が形成されていてもよい。この構成によれば、取付部をがたつきなくバッテリ装着部に取付可能となる。
【実施例】
【0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、携帯工具であるインパクトドライバ1に落下防止具20を装着した一例を示す斜視図である。
まず、インパクトドライバ1は、本体部2と、ハンドル部3とを備えている。本体部2は、モータ及び出力部を収容して前後方向に延びている。出力部は、前方へ突出して先端工具を装着するアンビル4を備えている。ハンドル部3は、本体部2に連設されて下向きに延びる。ハンドル部3には、モータを駆動させるためのトリガ5が設けられている。ハンドル部3の下端には、バッテリ装着部6が設けられている。バッテリ装着部6には、電源となるバッテリパック7が装着可能となっている。バッテリ装着部6の左右の側面には、
図2に示すように、ネジ孔8と、その上側で前後方向に延びる係止溝9とがそれぞれ形成されている。
【0012】
落下防止具20は、バッテリ装着部6に取り付けられる。落下防止具20は、取付部21と連結部22とを有している。取付部21は、バッテリ装着部6の外周を周回する平面視四角形のリング状である。取付部21は、帯状の金属板を折曲して形成されている。取付部21は、前辺部23と、後辺部24と、左辺部25と、右辺部26とを備えている。前辺部23は、バッテリ装着部6の前面に沿って左右方向に延びる。後辺部24は、バッテリ装着部6の後面に沿って左右方向に延びる。左辺部25は、バッテリ装着部6の左側面に沿って前後方向に延びる。右辺部26は、バッテリ装着部6の右側面に沿って前後方向に延びる。
【0013】
左辺部25及び右辺部26には、ネジ止め孔27と係止片28とがそれぞれ形成されている。ネジ止め孔27は、バッテリ装着部6のネジ孔8に対応する位置に設けられている。係止片28は、係止溝9に対応する位置に設けられている。係止片28は、左辺部25及び右辺部26の上端から内側へ折曲形成されている。
左辺部25及び右辺部26は、上下の幅が前辺部23及び後辺部24よりも大きく形成されている。左辺部25及び右辺部26の下端は、前辺部23及び後辺部24よりも下方へ張り出している。左辺部25及び右辺部26の下部には、前後方向に延びる補強用の凸部29がそれぞれ形成されている。
右辺部26の後部で凸部29より上側には、透孔30が形成されている。右辺部26の内面には、
図3に示すように、透孔30と同軸のナット31が固定されている。
【0014】
連結部22は、左右一対の内側片32A,32Bとからなる。連結部22には、スリーブ33が外装されている。
右側の内側片32Aは、取付部21の右辺部26から後方へ延長状に延ばして形成されている。左側の内側片32Bは、後辺部24の右端部を後方へ折曲して形成されている。内側片32A,32Bは、左右方向へ非接触で重なっている。すなわち、連結部22は、金属板の端部となる内側片32A,32B同士を非接触で重ね合わせることで形成されている。
内側片32A,32Bには、前後方向に延びる長孔34,34がそれぞれ形成されている。長孔34,34は、左右方向で重なっている。内側片32A,32Bの後端は、半円状に形成されている。
【0015】
スリーブ33は、樹脂製である。スリーブ33は、前後を開口して内側片32A,32Bに後方から外装される正面視縦長の角筒形状となっている。スリーブ33の後部は、内側片32A,32Bの後端に合わせた半円状となっている。スリーブ33は、長孔34,34を左右から覆っている。但し、スリーブ33の左右両面には、円形の係止孔35,35が形成されている。係止孔35は、長孔34の上下幅と同じ直径を有し、長孔34と左右方向に重なる。スリーブ33は、内側片32A,32Bに対して前後移動可能に外装されている。
スリーブ33の右側部には、前方へ延びる突出片36が一体形成されている。突出片36の前端には、固定部37が形成されている。固定部37は、スリーブ33の外装状態で右辺部26の透孔30の外側に位置する。固定部37には、透孔30と重なる小孔38が形成されている。
突出片36において、スリーブ33側の根元と固定部37とを除く中間部は、上下幅が小さい破断部39となっている。
【0016】
内側片32A,32Bに外装されたスリーブ33は、ネジ40によって固定される。ネジ40は、固定部37の小孔38と、右辺部26の透孔30とに貫通させてナット31にねじ込まれる。すると、スリーブ33は、突出片36が右辺部26にネジ止めされることで前後のスライドが規制された状態で連結部22に固定される。この状態でスリーブ33の係止孔35は、
図4Aに示すように、長孔34の前部に位置している。
こうして形成された落下防止具20は、前述のように、左辺部25及び右辺部26の左右の係止片28,28をバッテリ装着部6の左右の係止溝9,9にそれぞれ係止させる。そして、左辺部25及び右辺部26の左右のネジ止め孔27,27をそれぞれ貫通させたネジ41,41を、バッテリ装着部6の左右のネジ孔8,8にねじ込む。すると、
図3に示すように、落下防止具20は、取付部21がバッテリ装着部6を囲む格好で固定される。この状態で連結部22は取付部21の右後端から後方へ突出する。
【0017】
落下防止具20が装着されたインパクトドライバ1は、足場や手すりから吊り下げられた吊り下げ具に吊り下げ可能となる。
図4Aに示すように、ランヤード50の下端に設けられたカラビナ51を、スリーブ33の係止孔35及び連結部22の内側片32A,32Bの長孔34,34に貫通させて結合する。すると、インパクトドライバ1は、本体部2が下側となる向きで吊り下げられる。このとき、長孔34の前側に位置している係止孔35は、カラビナ51が長孔34,34の内縁に接触しない位置でカラビナ51に係止している(係止位置)。このため、インパクトドライバ1及び落下防止具20を含む荷重(静的荷重)は、スリーブ33を固定する突出片36に加わることになる。突出片36の破断部39の耐荷重は、この静的荷重や、作業中に加わる引っ張り荷重より大きく設定されている。但し、破断部39の耐荷重は、インパクトドライバ1を落下させた際にランヤード50を介して突出片36に加わる衝撃荷重よりも小さく設定されている。
【0018】
よって、作業中にインパクトドライバ1を誤って落下させると、落下の際の衝撃が、係止孔35を介してスリーブ33に加わる。よって、スリーブ33を固定する突出片36に応力が集中する。最も小幅の破断部39の耐荷重は、衝撃荷重より低く設定されているので、応力の集中により破断部39が破断することになる。
すると、
図4Bに示すように、固定部37から切り離されたスリーブ33は、カラビナ51と共に係止孔35が長孔34の後側となる位置(係止解除位置)までスライドする。よって、カラビナ51は、内側片32A,32Bの長孔34,34の内縁に係止する。このため、吊り下げ状態は維持される。
このとき、作業者は、破断部39の破断を直ちに認識することができる。すなわち、破断部39の破断が連結部22への衝撃荷重の発生を報知した格好となる。よって、作業者は、落下防止具20を取り外して新しいものに交換したり、新たな落下防止具20を装着した別のインパクトドライバ1に交換したりする対応が迅速に行える。
【0019】
上記形態の落下防止具20は、インパクトドライバ1へ着脱可能な取付部21と、取付部21へ一体に設けられ、ランヤード50(吊り下げ具)を連結するための連結部22とを有する。そして、落下防止具20は、取付部21をインパクトドライバ1へ取り付けて連結部22にランヤード50を連結した状態で、インパクトドライバ1が落下した際の連結部22への衝撃荷重の発生を報知する破断部39(報知部)を備えている。
この構成によれば、連結部22に破断部39を設ける簡単な構成で衝撃荷重による損傷を確実に報知することができる。
【0020】
報知部は、衝撃荷重よりも低い耐荷重で形成され、衝撃荷重によって破断する破断部39である。よって、破断部39の破断によって衝撃荷重の発生を容易に報知することができる。
連結部22には、ランヤード50の端部に設けたカラビナ51(リング体)が貫通する長孔34(透孔)が形成されている。連結部22には、カラビナ51と係止してカラビナ51を長孔34の内縁と接触させない係止位置と、カラビナ51への係止を解除してカラビナ51の内縁との接触を許容する係止解除位置との間で移動可能なスリーブ33(係止部材)が設けられている。そして、スリーブ33は、係止位置で連結部22に固定される突出片36を有し、突出片36に破断部39が形成されている。よって、破断部39の破断に伴うスリーブ33の移動によって衝撃荷重の発生をより確実に報知することができる。また、破断部39が破断した際の連結部22による吊り下げ状態の維持も確実に行える。
係止部材は、連結部22に外装されるスリーブ33である。よって、破断部39が破断した際に係止解除位置へスムーズに移動させることができる。
取付部21及び連結部22は、金属製であり、スリーブ33は、樹脂製である。よって、取付部21及び連結部22の剛性を確保しつつ、衝撃荷重の発生によるスリーブ33の破断を確実に行わせることができる。
【0021】
インパクトドライバ1は、バッテリ装着部6を有し、取付部21は、バッテリ装着部6に取り付けられる。よって、邪魔にならない箇所に落下防止具20を取り付けることができる。
取付部21は、バッテリ装着部6の外周を囲むリング状である。よって、取付部21をバランスよくバッテリ装着部6に装着可能となる。
連結部22は、取付部21から突出している。よって、作業の邪魔になりにくい箇所にランヤード50を連結できる。
取付部21は、帯状板をリング状に折曲して形成され、連結部22は、帯状板の端部同士を重ね合わせて形成されている。よって、取付部21及び連結部22の一体性を高めることができると共に、連結部22の強度も確保できる。
取付部21は、バッテリ装着部6にネジ止めされる。よって、取付部21の着脱が簡単に行える。
バッテリ装着部6における取付部21の取付面には、係止溝9が形成され、取付部21には、係止溝9に係止する係止片28が形成されている。よって、取付部21をがたつきなくバッテリ装着部6に取付可能となる。
【0022】
以下、本開示の変更例について説明する。
上記実施例では、スリーブの突出片を連結部の片面側にのみ設けているが、両面に設けることもできる。突出片の位置及び破断部を含む形状は適宜変更可能である。
上記実施例では、連結部の長孔に対して、スリーブに設けた円形の係止孔をずらすことで、カラビナに係止させているが、これに限らず、連結部の透孔を円形にしてスリーブの係止孔をずらすことでもカラビナとの係止は可能である。この場合、スリーブの係止孔を連結部の円形孔より小径としてもよい。
上記実施例では、スリーブを前後方向へ移動可能としているが、連結部に設けた支点を中心に係止部材を回転可能に設けてもよい。この場合、支点と別に設けた突出片を連結部に固定すればよい。よって、係止部材は、スリーブでなくてもよい。
【0023】
上記実施例では、係止部材であるスリーブをカラビナとの係止位置と係止解除位置とに移動可能としているが、移動させない形態も可能である。
図5にその一例を示す。
図5に示す落下防止具20aにおいて、連結部22に設けられるスリーブ33aは、後側に半円部を有しない短い角筒状となっている。突出片36は、破断部を有さず、前後へ同じ幅に形成されて、固定部37でネジ止めされている。この状態でスリーブ33aの後端は、内側片32A,32Bの長孔34,34の後端よりも前方に位置している。
スリーブ33aにおいて、カラビナ51が係止する係止孔42は、円形でなく、前側が半円状、後側が四角形状となっている。係止孔42の後側は、前後幅が小さい連結片43によって閉塞されている。連結片43の上端に、連結片43の下部よりも前後幅が小さい破断部44が形成されている。ここでも破断部44の耐荷重は、前述の静荷重及び引っ張り荷重よりも大きく、且つ衝撃荷重よりも小さく設定されている。
【0024】
この落下防止具20aを用いた場合、ランヤード50からの吊り下げ状態で、カラビナ51は、
図6Aに示すように、係止孔42の連結片43に係止して連結部22の長孔34には接触しない。
そして、作業中にインパクトドライバ1を誤って落下させると、落下の際の衝撃が、係止孔42を介してスリーブ33aに加わる。よって、連結片43に応力が集中する。破断部44の耐荷重は、衝撃荷重より低く設定されているので、破断部44が破断することになる。
すると、
図6Bに示すように、連結片43から離れたカラビナ51は、内側片32A,32Bの長孔34,34に係止する。このため、吊り下げ状態は維持される。
このとき、作業者は、破断部44の破断を直ちに認識することができる。よって、落下防止具20aを取り外して新しいものに交換したり、新たな落下防止具20aを装着した別のインパクトドライバ1に交換したりする対応が迅速に行える。
このように、この変更例の落下防止具20aでは、連結部22に、カラビナ51と係止してカラビナ51を長孔34の内縁と接触させないスリーブ33aを固定して、スリーブ33aの連結片43(カラビナ51との係止部分)に破断部44を形成している。よって、破断部44の破断によって衝撃荷重の発生をより確実に報知することができる。また、破断部44が破断した際の連結部22による吊り下げ状態の維持も確実に行える。
【0025】
その他、各例において、連結部は、一対の内側片を互いに接触させた状態で重ね合わせて形成してもよい。
重ね合わせた一対の内側片は、接触状態又は非接触状態の何れに限らず、ネジやリベット等の締結具によって互いに固定してもよい。
このように、取付部を、帯状の金属板を、携帯工具の外周を囲むリング状に折曲して形成し、連結部を、金属板の端部同士を重ね合わせた状態で互いに固定することで形成すれば、連結部の強度アップが期待できる。
逆に、各例において、内側片は一対でなく1つのみとしてもよい。
連結部の位置は、上記例に限らず、取付部の右側から突出させてもよいし、左右方向の中央から突出させてもよい。
取付部は、リング状でなくてもよい。取付部は、バッテリ装着部以外の携帯工具の外周に取り付けてもよい。
落下防止具を取り付ける電動工具は、インパクトドライバに限らない。本開示の落下防止具は、インパクトレンチ、スクリュードライバ、ドライバドリル等の各種電動工具も取付対象となる。また、本開示の落下防止具は、電動工具以外の携帯工具も取付対象となる。
【符号の説明】
【0026】
1・・インパクトドライバ、2・・本体部、3・・ハンドル部、6・・バッテリ装着部、8・・ネジ孔、9・・係止溝、20,20a・・落下防止具、21・・取付部、22,22a・・連結部、23・・前辺部、24・・後辺部、25・・左辺部、26・・右辺部、27・・ネジ止め孔、28・・係止片、32A,32B・・内側片、33,33a・・スリーブ、35,42・・係止孔、36・・突出片、37・・固定部、39,44・・破断部、40,41・・ネジ、43・・連結片、50・・ランヤード、51・・カラビナ。