(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】橋梁添架ケーブル保護管の補修用ソケット
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20241011BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20241011BHJP
E01D 19/02 20060101ALI20241011BHJP
H02G 9/02 20060101ALI20241011BHJP
H02G 9/04 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H02G1/06
E01D22/00 A
E01D19/02
H02G9/02
H02G9/04
(21)【出願番号】P 2021073979
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000100942
【氏名又は名称】アイレック技建株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 泰司
(72)【発明者】
【氏名】川上 敏仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏司
(72)【発明者】
【氏名】和田 佳也
(72)【発明者】
【氏名】硲 昌也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誠
(72)【発明者】
【氏名】奥田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】榎本 寧
(72)【発明者】
【氏名】長澤 秀毅
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232237(JP,A)
【文献】特開2014-051834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
E01D 22/00
E01D 19/02
H02G 9/02
H02G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に添架されたケーブル保護管(10)の劣化部分を除去して補修する際に、前記ケーブル保護管(10)の接続に使用されるものであり、円筒部(1)の外周にリブ状のストッパ(2)を有する形状とされた補修用ソケット(S)において、
前記円筒部(1)は、炭素繊維強化プラスチック層(11)と、ガラス繊維強化プラスチック層(12)とからなり、これらが積層された構造になっていることを特徴とする橋梁添架ケーブル保護管の補修用ソケット。
【請求項2】
前記円筒部(1)は、前記炭素繊維強化プラスチック層(11)を形成するシート材と、前記ガラス繊維強化プラスチック層(12)を形成するシート材と
が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の橋梁添架ケーブル保護管の補修用ソケット。
【請求項3】
前記ストッパ(2)は、前記円筒部(1)より柔軟な弾性を有するゴム製であり、前記円筒部(1)の外周に接着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の橋梁添架ケーブル保護管の補修用ソケット。
【請求項4】
前記円筒部(1)の管厚が1.5mm以上2.5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の橋梁添架ケーブル保護管の補修用ソケット。
【請求項5】
前記円筒部(1)及び前記ストッパ(2)が二分割された一対の半割管(3)からなり、前記一対の半割管(3)同士が突き合わされて構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の橋梁添架ケーブル保護管の補修用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信ケーブル等のケーブルが挿通されて橋梁に添架されるケーブル保護管の補修用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、通信ケーブル等のケーブルを橋梁に沿って添架する場合、ケーブルをケーブル保護管に挿通して保護している。このようなケーブル保護管としては、鋼製が多用されているが、ケーブル保護管は、風雨や温度変化に曝されるほか、自重や外力の作用を受けるので、時間の経過に伴い、腐食や割れ等の劣化が進行する。特に、橋台等の支持部分に近い部分は、自重や外力による応力が集中しやすく、劣化が進行しやすい。
【0003】
ケーブル保護管の劣化が進行した部分は、保守作業時に切除されて、補修管材に取り替えられる。このとき使用する補修管材の構成部材として、下記特許文献1乃至3には、円筒部の外周にリブ状のストッパを有する補修用ソケットが記載されている。
【0004】
下記特許文献1に記載された補修用ソケットは、円筒部及びストッパが共にケーブル保護管と同様の鋼製であると推察され、下記特許文献2に記載された補修用ソケットは、全体が軽量で耐蝕性に優れたガラス繊維強化プラスチック製とされている。また、下記特許文献3に記載された補修用ソケットは、円筒部が繊維強化プラスチック製とされ、ストッパがケーブル保護管の端部保護のためゴム製とされている。
【0005】
これらの補修用ソケットにより、橋台の壁面近くのケーブル保護管の劣化部分を補修する際には、橋台の外壁面に臨むケーブル保護管の劣化部分を切除した後、橋台内に埋め込まれた既設のケーブル保護管の内部に円筒部を一端側から差し込み、橋台の外壁面にストッパを当接させ、円筒部の他端側を橋台とは反対側の空中に渡された既設のケーブル保護管に管継手や半割補修管を介して接続する。
【0006】
一方、地中に埋設されたケーブル保護管の再生技術として、
図9に示すように、補修対象のケーブル保護管10に、その内径よりも外径が小さいポリ塩化ビニル製の内挿管20を新たに挿入し、管路を再生するPIT(Pipe Insertion Type)新管路方式が採用されることがある。
【0007】
内挿管20は、内部を細管で区画することにより、既設のケーブルCの収容空間21だけでなく、新たな2つの収容空間22,22を創出できる構造とされている。また、内挿管20は、既設のケーブルCを切断することなく収容空間21に収納するため、上管部20aと下管部20bとに分割されており、ケーブル保護管10の内部で上管部20aと下管部20bとを組み合わせる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平1―322003号公報
【文献】特開2006―191717号公報
【文献】特開2016―59116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記PIT新管路方式は、地中に埋設されたケーブル保護管の再生だけでなく、橋梁添架ケーブル保護管の再生にも採用されつつあり、その施工に使用できる補修用ソケットが求められている。
【0010】
しかしながら、現在製造されている繊維強化プラスチック製の補修用ソケットは、円筒部の管厚が厚いことから、橋台内に埋め込まれた既設のケーブル保護管と、その内部で新たな管路を形成する内挿管の隙間に挿入することができず、仮に、円筒部の管厚を薄くすると、強度や剛性が十分に確保できなくなる恐れがある。
【0011】
そこで、この発明は、PIT新管路方式による橋梁添架ケーブル保護管の補修に使用可能な補修用ソケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明は、橋梁に添架されたケーブル保護管の劣化部分を除去して補修する際に、前記ケーブル保護管の接続に使用されるものであり、円筒部の外周にリブ状のストッパを有する形状とされた補修用ソケットにおいて、
前記円筒部は、炭素繊維強化プラスチック層と、ガラス繊維強化プラスチック層とからなり、これらが積層された構造になっているものとしたのである。
【0013】
また、前記円筒部は、前記炭素繊維強化プラスチック層を形成するシート材と、前記ガラス繊維強化プラスチック層を形成するシート材とが巻付成形されて積層されているものとしたのである。
【0014】
また、前記ストッパは、前記円筒部より柔軟な弾性を有するゴム製であり、前記円筒部の外周に接着されているものとしたのである。
【0015】
また、前記円筒部の管厚が1.5mm以上2.5mm以下であるものとしたのである。
【0016】
そして、前記円筒部及び前記ストッパが二分割された一対の半割管からなり、前記一対の半割管同士が突き合わされて構成されるものとしたのである。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る補修用ソケットは、円筒部を、強度・剛性に優れた炭素繊維強化プラスチック層と、安価で成形が容易なガラス繊維強化プラスチック層とを積層した構造としているので、管厚を薄くしても強度・剛性が確保される。
【0018】
このため、橋台に埋め込まれた既設のケーブル保護管と、新たな管路を形成する内挿管の隙間に円筒部が挿入可能となり、PIT新管路方式による橋梁添架ケーブル保護管の補修に使用することができる。
【0019】
また、繊維強化プラスチックの性質上、鋼製のものに比べて著しく軽く、錆びることがないため、施工性に優れ、海岸付近や寒冷地等、腐食が進行しやすい環境においても、良好な耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施形態に係る補修用ソケットを示す(1A)斜視図、(1B)(1A)のX-X断面図
【
図2】同上の一対の半割管の分離状態を示す(2A)斜視図、(2B)(2A)のX-X断面図
【
図3】同上の補修用ソケットを橋台側に挿入する過程を示す斜視図
【
図4】同上の補修用ソケットを橋台側に挿入した状態を示す斜視図
【
図7】同上の橋台側とその反対側のケーブル保護管の接続過程を示す斜視図
【
図8】同上の橋台側とその反対側のケーブル保護管の接続状態を示す斜視図
【
図9】PIT新管路方式によるケーブル保護管の再生工法を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すソケットSは、橋梁に添架されるケーブル保護管の劣化部分を除去して補修する際に、ケーブル保護管の接続に使用されるものであり、円筒部1の外周にリブ状のストッパ2を有する形状とされている。
【0023】
円筒部1は、内面側の炭素繊維強化プラスチック層11と、外面側のガラス繊維強化プラスチック層12とからなり、これらを積層した構造となっている。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、強度及び剛性に優れた性質を有するものであり、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は、安価で成形が容易なものである。
【0024】
この円筒部1の製造に際しては、炭素繊維強化プラスチック層11を形成するシート材と、ガラス繊維強化プラスチック層12を形成するシート材とがシートワインディング法により巻付成形されて積層されている。
【0025】
シートワインディング法(SW法)は、フィラメントワインディング法(FW法)と異なり、シート状のプリプレグ(中間材料)を芯金型に巻き付けて成形する方法であり、繊維角度の自由度が高く、様々な強度特性を持ったパイプを作ることが可能である。
【0026】
ストッパ2は、円筒部1の炭素繊維強化プラスチック層11及びガラス繊維強化プラスチック層12のいずれよりも柔軟な弾性を有するゴム製とされている。これにより、当接する対象面の傷付きが防止される。
【0027】
そして、ソケットSは、
図2に示すように、円筒部1及びストッパ2が周方向に二分割された一対の半割管3,3からなり、これらを突き合わせて構成される。半割管3の突合部には、管軸方向に延びるように、その一方に山形状の係合突条4が形成され、他方にV字状の係合溝5が形成されている。なお、係合突条4と係合溝5が省略され、半割管3の突合部が平坦面になっている場合もある。
【0028】
図3乃至
図8は、上記のようなソケットSを使用して、橋梁に添架されてケーブルCが挿通されたケーブル保護管10を補修する工程を示している。
【0029】
この補修に際しては、管路を再生する工法として、PIT新管路方式が採用される。その初期工程では、
図3に示すように、橋台Aの壁面近くのケーブル保護管10の劣化した部分が切除されて、橋台Aに埋め込まれた既設のケーブル保護管10の内部に、ポリ塩化ビニル製の内挿管20が新たに挿入されている。
【0030】
このような状態において、ケーブルCが挿通された内挿管20を、ソケットSの一対の半割管3で左右から抱き囲むようにして、一対の半割管3,3同士を突き合わせ、係合突条4と係合溝5とを係合させる。係合突条4と係合溝5が省略されている場合には、半割管3の平坦な突合部同士を突き合わせる。
【0031】
そして、
図4に示すように、ソケットSの円筒部1を、橋台Aに埋め込まれている既設のケーブル保護管10と内挿管20の隙間に一端側から差し込み、橋台Aの壁面に露出したケーブル保護管10の端面にストッパ2を当接させる。
【0032】
この実施形態では、
図5及び
図6を参照して実際の寸法関係を説明すると、ケーブル保護管10の内径d
2が80mm以上(すなわち下限が80mm)とされ、内挿管20の外径D
2が72mmとされている。この寸法の下、ケーブル保護管10と内挿管20の隙間にソケットSの円筒部1を確実に差し込むため、円筒部1の内径d
1は75(+0.3/―0.5)mmとされ、外径D
1は79(+0.3/―0.5)mmとされ、円筒部1の管厚は、1.5mm以上2.5mm以下とされている。
【0033】
これにより、ソケットSの応力度と断面係数の積であるσ・Zは、945N・m以上となり、PIT新管路方式以外の橋梁添架ケーブル保護管の補修工法で使用されている現行品と同等の性能が確保される。
【0034】
このようにソケットSを橋台A側のケーブル保護管10に差し込んだ後、
図7に示すように、他のソケットSの円筒部1を、橋台Aとは反対側に位置する既設の空中のケーブル保護管10に一端側から差し込み、このケーブル保護管10の端面にストッパ2を当接させる。このとき、既設の空中のケーブル保護管10に内挿管20が挿入されていれば、ソケットSの円筒部1は、ケーブル保護管10と内挿管20の隙間に差し込む。
【0035】
続いて、
図8に示すように、橋台A側のケーブル保護管10に差し込んだソケットSの円筒部1と空中の既存のケーブル保護管10に差し込んだソケットSの円筒部1とにわたり、一対の半割補修管30を上方及び下方から抱持するように組み付け、半割補修管30の両端をそれぞれのソケットSのストッパ2に当接させ、管軸方向に位置決めする。
【0036】
最後に、両側のソケットSの間の部分で、半割補修管30の外周にステンレスバンド等の締付具40を巻き付け、半割補修管30同士を締付具40で締め付けて、既設のケーブル保護管10と半割補修管30とを、ソケットSを介して一体化する。
【0037】
上記のような補修用ソケットSは、円筒部1を、強度・剛性に優れた炭素繊維強化プラスチック層11と、安価で成形が容易なガラス繊維強化プラスチック層12とを積層した構造としているので、管厚を薄くしても強度・剛性が確保される。
【0038】
このため、橋台Aに埋め込まれた既設のケーブル保護管10と、新たな管路を形成する内挿管20の隙間に円筒部1が挿入可能となり、PIT新管路方式による橋梁添架ケーブル保護管10の補修に使用することができる。
【0039】
また、繊維強化プラスチックの性質上、鋼製のものに比べて著しく軽く、錆びることがないため、施工性に優れ、海岸付近や寒冷地等、腐食が進行しやすい環境においても、良好な耐久性を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
A 橋台
C ケーブル
S ソケット
1 円筒部
2 ストッパ
3 半割管
4 係合突条
5 係合溝
10 ケーブル保護管
20 内挿管
20a 上管部
20b 下管部
21,22 収容空間
11 炭素繊維強化プラスチック層
12 ガラス繊維強化プラスチック層
30 半割補修管
40 締付具