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特許7570299炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241011BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241011BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241011BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20241011BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20241011BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 652L
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
H01L29/78 657C
H01L29/91 C
H01L29/78 652F
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021126563
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021602
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大久野 幸史
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/038133(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/098294(WO,A1)
【文献】特開2004-273647(JP,A)
【文献】特開2015-211159(JP,A)
【文献】特開2016-018952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/861
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において、スイッチング素子が形成されるデバイス領域と、ゲートパッドが形成されるゲートパッド領域と、前記デバイス領域と前記ゲートパッド領域の間のゲート下ウェルコンタクト領域とを含む複数の領域に区分され、
炭化珪素からなる半導体層を備え、
前記半導体層は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ゲートパッド領域および前記ゲート下ウェルコンタクト領域に亘り前記ドリフト層の表層に形成されたウェル領域と、を備え、
前記ゲートパッド領域において前記半導体層の上面に形成された厚み0.8μm以上のフィールド絶縁膜と、
前記ゲートパッド領域の前記フィールド絶縁膜上に形成されたゲート電極およびエッチングストッパー層と、
前記ゲート電極上および前記エッチングストッパー層上に形成された層間絶縁膜と、
前記ゲート下ウェルコンタクト領域において前記層間絶縁膜上に形成され、前記フィールド絶縁膜および前記層間絶縁膜を貫通するウェルコンタクトホールを介して前記ウェル領域と接触する表面電極と、
前記ゲートパッド領域において前記層間絶縁膜上に形成され、前記層間絶縁膜を貫通するゲートコンタクトホールを介して前記ゲート電極と接触するゲートパッドと、をさらに備え、
前記エッチングストッパー層は、前記層間絶縁膜および前記フィールド絶縁膜のエッチングに対して選択比が5.0以上の物質からなり、少なくとも前記ゲートパッド領域において前記ゲート下ウェルコンタクト領域の前記ウェルコンタクトホールから最も離れた位置に設けられる、
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記エッチングストッパー層は前記ゲート電極と同一材料で構成される、
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記エッチングストッパー層は絶縁膜により前記ゲート電極と離間する、
請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記エッチングストッパー層は、絶縁膜により複数の領域に分断される、
請求項3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記複数の領域は、ポリシリコンからなる温度センスダイオードを有する温度センスダイオード領域と、前記温度センスダイオードと電気的に接続される温度センスパッドを有する温度センスパッド領域とを含み、
前記フィールド絶縁膜は前記ゲートパッド領域および前記温度センスパッド領域において前記半導体層の上面に形成され、
前記エッチングストッパー層は、ポリシリコンからなり、前記ゲートパッド領域および前記温度センスパッド領域の前記フィールド絶縁膜上に形成される、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記エッチングストッパー層は、交互に繰り返し配置される複数のp型領域と複数のn型領域とを含み、
隣り合う前記p型領域同士の間、および隣り合う前記n型領域同士の間には絶縁膜からなる分断領域が設けられる、
請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記複数の領域は、前記デバイス領域を囲む終端領域を含み、
前記フィールド絶縁膜は前記ゲートパッド領域および前記終端領域において前記半導体層の上面に形成され、
前記エッチングストッパー層は、窒化珪素からなり、前記ゲートパッド領域および前記終端領域の前記フィールド絶縁膜上に形成される、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記エッチングストッパー層は、前記フィールド絶縁膜と前記ゲート電極との段差の上には形成されない、
請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記ウェル領域は、
前記ドリフト層の表層に形成されたp型のウェル本体領域と、
前記ウェル本体領域の表層に形成されたn型のウェルコンタクト領域とを備え、
前記ウェルコンタクト領域の上面に前記ドリフト層より低い抵抗率を有する導電膜をさらに備える、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
平面視において、スイッチング素子が形成されるデバイス領域と、ゲートパッドが形成されるゲートパッド領域と、前記デバイス領域と前記ゲートパッド領域の間のゲート下ウェルコンタクト領域とを含む複数の領域に区分される炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
n型の炭化珪素からなるドリフト層を形成し、
前記ゲートパッド領域および前記ゲート下ウェルコンタクト領域に亘り前記ドリフト層の表層にウェル領域を形成し、
前記ゲートパッド領域において前記ドリフト層および前記ウェル領域の上に厚み0.8μm以上のフィールド絶縁膜を形成し、
前記ゲートパッド領域の前記フィールド絶縁膜上にゲート電極およびエッチングストッパー層を形成し、
前記ゲート電極上および前記エッチングストッパー層上に層間絶縁膜を形成し、
前記フィールド絶縁膜および前記層間絶縁膜を貫通するウェルコンタクトホールを介して前記ウェル領域と接触する表面電極を、前記ゲート下ウェルコンタクト領域において前記層間絶縁膜上に形成し、
前記層間絶縁膜を貫通するゲートコンタクトホールを介して前記ゲート電極と接触するゲートパッドを、前記ゲートパッド領域において前記層間絶縁膜上に形成し、
前記エッチングストッパー層は、前記層間絶縁膜および前記フィールド絶縁膜のエッチングに対して選択比が5.0以上の物質からなり、少なくとも前記ゲートパッド領域において前記ゲート下ウェルコンタクト領域の前記ウェルコンタクトホールから最も離れた位置に形成される、
炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型でゲート構造を持つMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体装置において、ゲートパッド領域にはワイヤボンドなどにより端子が接続されるため、ある程度広い領域が確保される。逆バイアス時にゲートパッド領域下では、変位電流がゲートパッド領域外に設置されたゲート下ウェルコンタクトに向かって流れることで空乏化し、炭化珪素半導体内のPN接合で耐圧を保持する。しかし、炭化珪素半導体装置で要求される高速動作(高dV/dt印加)時には、空乏化し切る前に電圧印加がなされるため、絶縁膜に高い電界がかかる。
【0003】
特許文献1には、ゲートパッド領域下部の半導体表面に薄い酸化膜と導電体からなる容量を設けた構成が開示されている。これにより、高dV/dt印加時に絶縁膜にかかる電界が低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018-038133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構造を含む従来の半導体装置では、不具合なく形成されれば、高dV/dt印加時にも絶縁破壊しないだけの膜厚が形成される。しかし、異物の混入等、プロセス上の不具合によって絶縁膜の欠損が生じ、絶縁膜が薄くなった場合、高dV/dt印加時に絶縁破壊が生じる恐れがある。また、絶縁膜が薄くなった半導体装置を後工程の電気的テストでリジェクトするには、高dV/dtを印加したテストを実施する必要があるため、絶縁破壊が生じる恐れがある。
【0006】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、炭化珪素半導体装置において、プロセス上の不具合が発生しても高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の炭化珪素半導体装置は、平面視において、スイッチング素子が形成されるデバイス領域と、ゲートパッドが形成されるゲートパッド領域と、デバイス領域とゲートパッド領域の間のゲート下ウェルコンタクト領域とを含む複数の領域に区分され、炭化珪素からなる半導体層を備え、半導体層は、第1導電型のドリフト層と、ゲートパッド領域およびゲート下ウェルコンタクト領域に亘りドリフト層の表層に形成されたウェル領域と、を備え、ゲートパッド領域において半導体層の上面に形成された厚み0.8μm以上のフィールド絶縁膜と、ゲートパッド領域のフィールド絶縁膜上に形成されたゲート電極およびエッチングストッパー層と、ゲート電極上およびエッチングストッパー層上に形成された層間絶縁膜と、ゲート下ウェルコンタクト領域において層間絶縁膜上に形成され、フィールド絶縁膜および層間絶縁膜を貫通するウェルコンタクトホールを介してウェル領域と接触する表面電極と、ゲートパッド領域において層間絶縁膜上に形成され、層間絶縁膜を貫通するゲートコンタクトホールを介してゲート電極と接触するゲートパッドと、をさらに備え、エッチングストッパー層は、層間絶縁膜およびフィールド絶縁膜のエッチングに対して選択比が5.0以上の物質からなり、少なくともゲートパッド領域においてゲート下ウェルコンタクト領域のウェルコンタクトホールから最も離れた位置に設けられる。

【発明の効果】
【0008】
本開示の炭化珪素半導体装置によれば、プロセス上の不具合が発生しても高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1のMOSFETの第1パターンの平面図である。
図2】実施の形態1のMOSFETの第2パターンの平面図である。
図3】実施の形態1のMOSFETの断面図である。
図4】第1パターンのMOSFETのゲートパッド領域において高dV/dt印加時に発生する電位分布のシミュレーション結果を示す図である。
図5】第2パターンのMOSFETのゲートパッド領域において高dV/dt印加時に発生する電位分布のシミュレーション結果を示す図である。
図6】比較例のMOSFETの断面図である。
図7】実施の形態1のMOSFETの製造工程を示す断面図である。
図8】実施の形態1のMOSFETの製造工程を示す断面図である。
図9】実施の形態1のMOSFETの製造工程を示す断面図である。
図10】実施の形態1のMOSFETの製造工程を示す断面図である。
図11】実施の形態1のMOSFETの製造工程を示す断面図である。
図12】実施の形態1のMOSFETの製造工程を示す断面図である。
図13】実施の形態1の変形例のMOSFETの断面図である。
図14】実施の形態2のMOSFETの第1パターンの平面図である。
図15】実施の形態2のMOSFETの第2パターンの平面図である。
図16】実施の形態2のMOSFETの断面図である。
図17】実施の形態2の変形例のMOSFETの断面図である。
図18】実施の形態2の変形例のMOSFETにおいて層間絶縁膜およびフィールド絶縁膜にそれぞれ欠損が生じた状態を示す断面図である。
図19図18に対応するエッチングストッパー層と層間絶縁膜とを示す平面図である。
図20】実施の形態2のMOSFETにおいて層間絶縁膜およびフィールド絶縁膜にそれぞれ欠損が生じた状態を示す断面図である。
図21図20に対応するエッチングストッパー層と層間絶縁膜とを示す平面図である。
図22】実施の形態3のMOSFETのデバイス領域、ゲート下ウェルコンタクト領域およびゲートパッド領域を示す断面図である。
図23】実施の形態3のMOSFETのデバイス領域、温度センスパッドウェルコンタクト領域、温度センスパッド領域および温度センスダイオード領域を示す断面図である。
図24】実施の形態3のMOSFETのデバイス領域、ゲート下ウェルコンタクト領域、ゲートパッド領域および温度センスダイオード領域の製造工程を示す断面図である。
図25】実施の形態3のMOSFETのデバイス領域、ゲート下ウェルコンタクト領域、ゲートパッド領域および温度センスダイオード領域の製造工程を示す断面図である。
図26】実施の形態3のMOSFETのデバイス領域、ゲート下ウェルコンタクト領域、ゲートパッド領域および温度センスダイオード領域の製造工程を示す断面図である。
図27】実施の形態3の変形例のMOSFETの断面図である。
図28】実施の形態3の変形例のMOSFETにおけるエッチングストッパー層を示す平面図である。
図29】実施の形態3の変形例のMOSFETにおけるエッチングストッパー層を示す平面図である。
図30】実施の形態4のMOSFETの平面図である。
図31】実施の形態4のMOSFETのデバイス領域、ゲート下ウェルコンタクト領域およびゲートパッド領域を示す断面図である。
図32】実施の形態4のMOSFETのデバイス領域、終端ウェルコンタクト領域、ゲート配線領域および終端領域を示す断面図である。
図33】段差の上に形成されたエッチングストッパー層にクラックが生じる様子を示す断面図である。
図34】実施の形態5のMOSFETの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、半導体の導電型としてn型を第1導電型、p型を第2導電型とするが、これらの導電型が反対であってもよい。また、n型はn型よりn型不純物濃度が低いことを表し、N+型はn型よりn型不純物濃度が高いことを表す。同様に、p型はp型よりp型不純物濃度が低いことを表し、P+型はp型よりp型不純物濃度が高いことを表す。
【0011】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成>
図1は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置であるMOSFET101の第1パターンの平面図である。図2は、MOSFET101の第2パターンの平面図である。図3は、図1のA-A線または図2のB-B線に沿ったMOSFET101の断面図である。図1および図2において、破線3はウェルコンタクトホールHW1の位置を示し、破線4はゲートコンタクトホールHGの位置を示している。また、点Pは、ゲートパッド領域13においてゲート下ウェルコンタクト領域12、言い換えればウェルコンタクトホールHW1から最も離れた点を示している。
【0012】
MOSFET101は、ソース電極1およびゲートパッド2を備える。ゲートパッド2は、図1に示されるようにチップの一辺における中央に設けられてもよいし、図2に示されるようにチップの角に設けられてもよい。ソース電極1およびゲートパッド2の材料は例えばAlである。チップの終端部および電極間には、半導体装置の保護膜として例えばポリイミドなどが形成される。
【0013】
図3に示されるように、MOSFET101は、n型のドリフト層22を備えている。ドリフト層22はn型のSiC基板上にエピタキシャル成長によって形成されるが、図3ではSiC基板の図示が省略されている。ドリフト層22の不純物濃度は、SiC基板の不純物濃度に比べて低く、例えば1×1013cm-3以上1×1018cm-3以下である。ドリフト層22の厚みは、例えば4μm以上200μm以下である。SiC基板の下面には、裏面電極としてドレイン電極(図3において図示せず)がスパッタ法またはめっき法などにより設けられている。裏面電極を形成する際には、例えば100μm以上300μm以下の所望の膜厚になるようSiC基板を研削する。そして、SiC基板の下面にNiまたはTiを堆積した後、800℃以上1000℃以下の温度でアニール処理することにより、堆積したNiまたはTiをシリサイド化する。これにより、低抵抗なコンタクトが得られる。最後に、下地接合に必要な材料(例えばはんだ接合であればNi、Auなど)をNiまたはTi上に堆積する。
【0014】
図3に示されるMOSFET101の断面構造は、平面視においてデバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12、およびゲートパッド領域13に区分される。ゲートパッド2が形成される領域をゲートパッド領域13とする。ソース電極1が形成される領域のうち、ゲートパッド領域13に隣接する領域をゲート下ウェルコンタクト領域12とし、その他の領域をデバイス領域11とする。
【0015】
ドリフト層22の表層には、デバイス領域11においてp型の第1ウェル領域23が設けられ、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13において第2ウェル領域26が設けられる。第2ウェル領域26は、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13においてドリフト層22の表層に形成されたp型のウェル本体領域26Lと、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13においてウェル本体領域26Lの表層に形成されたP+型のウェルコンタクト領域26Hとを備える。ウェルコンタクト領域26Hをウェル低抵抗層とも称する。
【0016】
第1ウェル領域23の表層にはn型のソース領域24が設けられる。また、ソース領域24の表面からソース領域24を貫通して第1ウェル領域23に達するn+型のウェルコンタクト領域25が設けられる。
【0017】
第1ウェル領域23およびその周辺の上と、第2ウェル領域26のデバイス領域11に近い端部上にはゲート絶縁膜31が設けられる。図3に示されるように、ゲート絶縁膜31は、第1ウェル領域23と第2ウェル領域26との間のドリフト層22上に設けられていてもよい。また、ゲート絶縁膜31はソース領域24上に設けられていてもよい。ゲート絶縁膜31は、例えば熱酸化法または堆積法によって形成される。熱酸化法は、ウェット雰囲気、酸素(O2)雰囲気、または酸化窒素(NOまたはN2O)雰囲気などの酸化系ガス雰囲気中で実施される。堆積法は、高誘電率材料、いわゆる「high-k材料」を用いて行われてもよい。
【0018】
第2ウェル領域26の上面のうちゲート絶縁膜31が設けられない領域にはフィールド絶縁膜32が設けられる。フィールド絶縁膜32はゲートパッド領域13およびゲート下ウェルコンタクト領域12に設けられる。フィールド絶縁膜32はゲート絶縁膜31よりも厚い。フィールド絶縁膜32はゲート絶縁膜31と同様に例えば熱酸化法または堆積法によって形成される。フィールド絶縁膜32は、例えばTEOS(Tetraethyl orthosilicate)からなる。
【0019】
ゲート絶縁膜31上およびフィールド絶縁膜32上にはゲート電極33が設けられる。ソース領域24とドリフト層22とに挟まれた第1ウェル領域23の表層がチャネル領域となる。ゲート電極33は、チャネル領域上にゲート絶縁膜31を介して配置された部分を有する。ゲート電極33は、例えばCVD法による成膜と、フォトリソグラフィー技術を用いたパターニングとによって形成される。成膜には、例えば、多結晶シリコン材料が用いられる。用いられる多結晶シリコンは、P原子またはB原子が含まれることによって低い抵抗を有することが望ましい。PまたはBなどの不純物は、多結晶シリコンの成膜中に導入されてもよいし、成膜後にイオン注入法などによって導入されてもよい。ゲート電極33は、多結晶シリコンと金属とからなる多領域膜、多結晶シリコンと金属シリサイドとからなる多領域膜、または金属膜であってもよい。ゲート電極33の最も外周側の端面は、ゲート絶縁膜31上ではなくフィールド絶縁膜32上に配置されることが好ましい。これにより、ゲート電極33のパターニングのためのドライエッチング処理におけるオーバーエッチングによって、ゲート電極33の最も外周側の端面の近傍でゲート絶縁膜31がエッチングされることによる品質劣化を防ぐことができる。
【0020】
フィールド絶縁膜32上には、ゲート電極33の他にエッチングストッパー層51が設けられる。ゲート電極33およびエッチングストッパー層51の上には、これらを覆うように層間絶縁膜34が設けられる。デバイス領域11において、層間絶縁膜34にはソースコンタクトホールHSが形成される。ソースコンタクトホールHSは、ゲート絶縁膜31の開口部に重なると共に、ソース領域24およびウェルコンタクト領域25上に位置する。従って、ソースコンタクトホールHSを通してソース電極1はソース領域24およびウェルコンタクト領域25と接触する。ゲート下ウェルコンタクト領域12において、層間絶縁膜34にはウェルコンタクトホールHW1(第1ウェルコンタクトホール)が形成される。ウェルコンタクトホールHW1はフィールド絶縁膜32を貫通してウェルコンタクト領域26Hに達する。従って、ウェルコンタクトホールHW1を通してソース電極1はウェルコンタクト領域26Hと接触する。ゲートパッド領域13において、層間絶縁膜34にはゲートコンタクトホールHGが形成される。ゲートコンタクトホールHGを通してゲートパッド2はゲート電極33と接触する。層間絶縁膜34は、例えば酸化物または二酸化珪素膜からなる。層間絶縁膜34は、CVD法などの堆積法により形成される。コンタクトホールは、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いて形成される。
【0021】
フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34は、ゲート絶縁膜31より十分厚く、膜単体でもゲートパッド下の領域ではDC動作および高dV/dt(AC)動作での逆バイアス時にかかる電界に対して絶縁耐量があるだけの十分な膜厚を持つ。フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34は、例えば、TEOS酸化膜のように絶縁性が8MV/cm以上10MV/cm以下と高く、CVDで0.8μm以上と厚く堆積できるものが望ましい。
【0022】
ゲートパッド2は、層間絶縁膜34のゲートコンタクトホールHGを通ってゲート電極33に接続されている。層間絶縁膜34のゲートコンタクトホールHGにおいてゲート電極33とゲートパッド2との界面がシリサイド化されているとよい。ゲートパッド2に加えて、ゲートパッド2から延びるゲート配線部11wが設けられてもよい。ゲート配線部11wは、層間絶縁膜34のゲートコンタクトホールHGを通ってゲート電極33に接続される。ゲート配線部11wは平面レイアウトにおいてソース電極1を取り囲んでいてもよい。ゲートパッド2およびゲート配線部11wは、ユニットセルのゲート電極33に電気的に接続されることによって、外部の制御回路から供給されたゲート電圧をゲート電極33に印加する。ゲート配線部11wはDoped-PolySi等で形成される。
【0023】
ソース電極1はソースコンタクトホールHSを通ってソース領域24およびウェルコンタクト領域25に接続される。また、ソース電極1はウェルコンタクトホールHW1を通って第2ウェル領域26に接続される。ソース電極1は典型的には、平面レイアウトにおける中央部に配置されている。ソース電極1は、オーミック電極を含む。オーミック電極は、ソースコンタクトホールHSにおいてソース領域24およびウェルコンタクト領域25に接しており、ウェルコンタクトホールHW1において第2ウェル領域26に接している。
【0024】
ゲートパッド領域13において、層間絶縁膜34とフィールド絶縁膜32との間の少なくとも一部の領域にはエッチングストッパー層51が設けられている。エッチングストッパー層51は、ポリシリコンまたは窒化珪素(SiN)など、層間絶縁膜34およびフィールド絶縁膜32のエッチングに対して選択比(以下、「エッチング選択比」と称する)が高い物質からなる。エッチング選択比は、層間絶縁膜34またはフィールド絶縁膜32を被エッチング膜とし、エッチングストッパー層51をマスクとする場合に、層間絶縁膜34またはフィールド絶縁膜32のエッチングレートを、エッチングストッパー層51のエッチングレートで除算することにより得られる。エッチング選択比は、少なくとも5.0以上であることが望ましい。層間絶縁膜34またはフィールド絶縁膜32のエッチングプロセスにおいて、エッチングストッパー層51の膜厚は、{(層間絶縁膜34またはフィールド絶縁膜32の膜厚)/エッチング選択比}以上であることが望ましい。エッチング選択比が小さいと、エッチングストッパー層51の膜厚を大きくする必要がある。その結果、ゲートコンタクトホールHGに露出するゲート電極33の上面と層間絶縁膜34の上面との段差が大きくなり、ゲートコンタクトホールHGへのゲートパッド2の埋め込みが困難になる。
【0025】
エッチングストッパー層51は、ゲートパッド領域13において、ゲート下ウェルコンタクト領域12、言い換えればウェルコンタクトホールHW1から最も離れた点Pを含む領域に設けられる。エッチングストッパー層51が設けられることにより、MOSFET101の製造工程において異物発生等の不具合が生じ、層間絶縁膜34およびフィールド絶縁膜32の少なくともいずれかが欠損した場合でも、高dV/dtに耐え得るだけの膜厚の絶縁膜を残すことができ、高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することができる。以下にその理由を説明する。
【0026】
<A-2.エッチングストッパー層>
図4は、第1パターンのMOSFET101のゲートパッド領域13において高dV/dt印加時に発生する電位分布のシミュレーション結果を示している。また、図5は、第2パターンのMOSFET101のゲートパッド領域13において高dV/dt印加時に発生する電位分布のシミュレーション結果を示している。ゲートパッド領域13に発生する電位の最大値は、dV/dt印加条件を10kV/μsとし、ゲートパッド領域13の大きさを約1000μm四方とすると、200V以上300V以下にもなり、一般的には15V程度であるゲート動作電圧よりも大きくなる。そして、電位が最も高くなる場所は、ゲートパッド領域13のうちゲート下ウェルコンタクト領域12から最も離れている点Pである。従って、エッチングストッパー層51は、点Pを含む電位が高くなるところに設けられることが効果的である。
【0027】
エッチングストッパー層51が窒化珪素(SiN)等の非導電性であれば、それぞれ別工程で形成されたフィールド絶縁膜32と層間絶縁膜34とにおいて、平面視において互いに重なる場所に欠損が生じない限り、高dV/dt印加時での絶縁破壊を抑制することができる。
【0028】
エッチングストッパー層51単体でも、高dV/dt(AC)動作での逆バイアス時にかかる電界に対して絶縁耐量を有するだけの十分な膜厚を持っても良い。
【0029】
なお、エッチングストッパー層51は導電性でもよいが、ゲートパッド領域13において、層間絶縁膜34またはフィールド絶縁膜32のどちらか一方を他方およびゲート絶縁膜より十分大きい膜厚にすることが好ましい。
【0030】
図6は、比較例としてエッチングストッパー層を持たないMOSFET100の断面構成を示している。エッチングストッパー層51を持たないことを除いて、MOSFET100はMOSFET101と同様の構成である。逆バイアス時にゲートパッド領域13下では、p型のウェル本体領域26Lから正孔28がP+型のウェルコンタクト領域26Hに移動し、n型のドリフト層22のウェル本体領域26Lとの界面から電子29が下方に移動する。そして、ウェルコンタクト領域26Hにおいてゲートパッド領域13からゲート下ウェルコンタクト領域12に向かって変位電流Idが流れることで、第2ウェル領域26とドリフト層22によるpn接合部が空乏化し、耐圧が保持される。しかし、炭化珪素半導体装置で要求されるような高速動作(高dV/dt印加)時にはpn接合部が空乏化しきる前に電圧印加がなされるため、フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34に高い電界がかかる。図6では、領域64においてフィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34に欠損が生じ、絶縁膜が薄くなった状態を示している。このような場所に上記の高い電界がかかると、絶縁破壊が生じてしまう。
【0031】
<A-3.製造工程>
図7から図12は、MOSFET101の製造工程を示す断面図である。以下、図7から図12を用いてMOSFET101の製造工程を説明する。まず、SiC基板21上に、n型のドリフト層22をエピタキシャル成長により形成する。エピタキシャル成長には、例えば化学気相堆積(ChemicalVaporDeposition:CVD)法が用いられる。
【0032】
そして、デバイス領域11におけるドリフト層22の表層にp型の第1ウェル領域23を形成し、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13におけるドリフト層22の表層にp型のウェル本体領域26Lを形成する。また、第1ウェル領域23の表層にn型のソース領域24およびN+型のウェルコンタクト領域25を形成し、ウェル本体領域26Lの表層にP+型のウェルコンタクト領域26Hを形成する。
【0033】
第1ウェル領域23、ソース領域24、ウェルコンタクト領域25、ウェル本体領域26L、およびウェルコンタクト領域26Hは、注入マスク(図示せず)を利用した選択的なイオン注入が必要な回数行われることにより形成される。注入マスクとしては、例えばレジストマスクまたは酸化膜マスクが用いられる。イオン注入時に、半導体基板は積極的に加熱されなくてもよく、または200℃以上800℃以下程度に加熱されてもよい。イオン注入に用いられるイオンとして、p型の付与のためにはAl(アルミニウム)またはB(硼素)が好適であり、n型の付与のためにはN(窒素)またはP(燐)が好適である。こうして、図7に示す断面構造が得られる。
【0034】
次に、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13にフィールド絶縁膜32を形成する。フィールド絶縁膜32は、例えば半導体層の全面に形成された後、所望の領域にのみ残すようにパターニングが行われる。その後、フィールド絶縁膜32が形成されていない半導体層の上面にゲート絶縁膜31を形成する。こうして、図8に示す断面構造が得られる。
【0035】
その後、デバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13にゲート電極33を形成し、パターニングを行う。こうして、図9に示す断面構造が得られる。
【0036】
次に、ゲートパッド領域13にエッチングストッパー層51を形成し、パターニングを行う。エッチングストッパー層51は、ゲートパッド領域13に形成されたゲート電極33の、ゲート下ウェルコンタクト領域12と反対側の端部に接触して形成される。さらに、デバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13に層間絶縁膜34を形成し、パターニングを行う。これにより、エッチングストッパー層51はゲートパッド領域13においてフィールド絶縁膜32と層間絶縁膜34とに挟まれる。こうして、図10に示す断面構造が得られる。
【0037】
その後、デバイス領域11において層間絶縁膜34とゲート絶縁膜31を貫通し、ソース領域24およびウェルコンタクト領域25に達するソースコンタクトホールHSを形成する。また、ゲート下ウェルコンタクト領域12において層間絶縁膜34とフィールド絶縁膜32を貫通しウェルコンタクト領域26Hに達するウェルコンタクトホールHW1を形成する。また、ゲートパッド領域13において層間絶縁膜34を貫通しゲート電極33に達するゲートコンタクトホールHGを形成する。その後、表面電極としてデバイス領域11およびゲート下ウェルコンタクト領域12にソース電極1を形成し、ゲートパッド領域13にゲートパッド2を形成する。ソース電極1は、ソースコンタクトホールHSを通してソース領域24およびウェルコンタクト領域25と接触し、ウェルコンタクトホールHW1を通してウェルコンタクト領域26Hと接触する。ゲートパッド2はゲートコンタクトホールHGを通してゲート電極33と接触する。こうして、図11に示す断面構造が得られる。
【0038】
次に、表面電極上にポリイミドなどの保護膜41を形成する。また、SiC基板21の裏面側に裏面電極としてドレイン電極7を形成する。こうして、図12に示す断面構造のMOSFET101が完成する。
【0039】
<A-4.変形例>
図13は実施の形態1の変形例のMOSFET101Aの断面図である。MOSFET101Aの平面図は図1または図2に示す通りである。図13は、図1のA-A線、または図2のB-B線に沿った断面構成を示している。
【0040】
MOSFET101Aは、エッチングストッパー層51に代えてエッチングストッパー層51Aを備える点でMOSFET101と相違する。エッチングストッパー層51Aは、ゲート電極33と同一材料である低抵抗なポリシリコンで構成される。従って、エッチングストッパー層51Aは、ゲート電極33の製造工程と同時に形成することが可能である。
【0041】
<A-5.効果>
実施の形態1のMOSFET101は、平面視において、スイッチング素子が形成されるデバイス領域11と、ゲートパッド2が形成されるゲートパッド領域13と、デバイス領域11とゲートパッド領域13の間のゲート下ウェルコンタクト領域12とを含む複数の領域に区分される。MOSFET101は、炭化珪素からなる半導体層を備える。この半導体層は、n型のドリフト層22と、ゲートパッド領域13およびゲート下ウェルコンタクト領域12に亘りドリフト層22の表層に形成された第2ウェル領域26と、を備える。MOSFET101は、ゲートパッド領域13において半導体層の上面に形成されたフィールド絶縁膜32と、ゲートパッド領域13のフィールド絶縁膜32上に形成されたゲート電極33およびエッチングストッパー層51と、ゲート電極33上およびエッチングストッパー層51上に形成された層間絶縁膜34と、ゲート下ウェルコンタクト領域12において層間絶縁膜34上に形成され、フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34を貫通するウェルコンタクトホールHW1を介して第2ウェル領域26と接触する表面電極であるソース電極1と、ゲートパッド領域13において層間絶縁膜34上に形成され、層間絶縁膜34を貫通するゲートコンタクトホールHGを介してゲート電極33と接触するゲートパッド2と、を備える。エッチングストッパー層51は、層間絶縁膜34およびフィールド絶縁膜32のエッチングに対して選択比が5.0以上の物質からなり、少なくともゲートパッド領域13においてゲート下ウェルコンタクト領域12のウェルコンタクトホールHW1から最も離れた位置に設けられる。以上の構成により、最も高電界がかかる領域において、フィールド絶縁膜32と層間絶縁膜34の少なくともいずれか一方に欠損が生じたとしても、エッチングストッパー層51によって絶縁性能を維持することが可能である。その結果、高dV/dt印加時の絶縁破壊が抑制できる。
【0042】
また、実施の形態1のMOSFET101Aにおいて、エッチングストッパー層51Aはゲート電極33と同一材料で構成される。従って、エッチングストッパー層51Aをゲート電極33と同時に形成することが可能である。
【0043】
実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法は、n型の炭化珪素からなるドリフト層22を形成し、ゲートパッド領域13およびゲート下ウェルコンタクト領域12に亘りドリフト層22の表層に第2ウェル領域26を形成し、ゲートパッド領域13においてドリフト層22および第2ウェル領域26の上にフィールド絶縁膜32を形成し、ゲートパッド領域13のフィールド絶縁膜32上にゲート電極33およびエッチングストッパー層51を形成し、ゲート電極33上およびエッチングストッパー層51上に層間絶縁膜34を形成し、フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34を貫通するウェルコンタクトホールHW1を介して第2ウェル領域26と接触する表面電極であるソース電極1を、ゲート下ウェルコンタクト領域12において層間絶縁膜34上に形成し、層間絶縁膜34を貫通するゲートコンタクトホールHGを介してゲート電極33と接触するゲートパッド2を、ゲートパッド領域13において層間絶縁膜34上に形成し、エッチングストッパー層51は、層間絶縁膜34およびフィールド絶縁膜32のエッチングに対して選択比が5.0以上の物質からなり、少なくともゲートパッド領域13においてゲート下ウェルコンタクト領域12のウェルコンタクトホールHW1から最も離れた位置に形成される。従って、実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、炭化珪素半導体装置の最も高電界がかかる領域において、フィールド絶縁膜32と層間絶縁膜34の少なくともいずれか一方に欠損が生じたとしても、エッチングストッパー層51によって絶縁性能を維持することが可能である。その結果、高dV/dt印加時の絶縁破壊が抑制できる。
【0044】
<B.実施の形態2>
<B-1.構成>
図14は、実施の形態2の炭化珪素半導体装置であるMOSFET102の第1パターンの平面図である。図15は、MOSFET102の第2パターンの平面図である。図16は、図14のC-C線または図15のD-D線に沿ったMOSFET102の断面図である。図14および図15において、破線3はウェルコンタクトホールHW1の位置を示し、破線4はゲートコンタクトホールHGの位置を示している。また、点Pは、ゲートパッド領域13においてゲート下ウェルコンタクト領域12、言い換えればウェルコンタクトホールHW1から最も離れた点を示している。
【0045】
図16に示されるように、MOSFET102はエッチングストッパー層51に代えてエッチングストッパー層52を備える点でMOSFET101と相違する。エッチングストッパー層52は、実施の形態1の第1変形例のエッチングストッパー層51Aと同様に低抵抗なポリシリコンで構成される。しかし、エッチングストッパー層52は層間絶縁膜34によってゲート電極33と離間している。エッチングストッパー層52とゲート電極33との間に存在する層間絶縁膜34を離間領域60とも称する。
【0046】
ゲートコンタクトホールHGは、ゲートパッド領域13においてゲートパッド2の外周の少なくとも一部に沿って設けられている。ウェルコンタクトホールHW1は、ゲート下ウェルコンタクト領域12においてゲートパッド2の外周に沿って設けられる。ゲート下ウェルコンタクト領域12は、少なくともゲートコンタクトホールHGに対向するゲート下ウェルコンタクト領域12の領域に設けられる。エッチングストッパー層52とゲート電極33との間の離間領域60はゲートコンタクトホールHGの近傍に配置される。図14および図15において、実線D3は離間領域60の位置を示している。エッチングストッパー層52とゲート電極33との間に離間領域60を設けることで、層間絶縁膜34が欠損しても絶縁破壊を抑制することができる。
【0047】
エッチングストッパー層52は非導電性が好ましい。しかし、エッチングストッパー層52が導電性であっても、ゲートパッド領域13下において、層間絶縁膜34またはフィールド絶縁膜32のどちらか一方を他方またはゲート絶縁膜より十分大きい膜厚にすることによって、絶縁破壊を抑制することができる。
【0048】
図14の例では、ゲートコンタクトホールHGは矩形のゲートパッド領域13の4辺のうち3辺に沿って設けられる。また、図15の例では、ゲートコンタクトホールHGは矩形のゲートパッド領域13の4辺のうち2辺に沿って設けられる。図4および図5に示したように、高dV/dt印加時にゲートパッド領域13に発生する電位はゲート下ウェルコンタクト領域12に近いほど小さくなる。そこで、ゲートコンタクトホールHGはゲートパッド2の外周の近傍に配置し、ゲートコンタクトホールHGの近傍にウェルコンタクトホールHW1を配置し、エッチングストッパー層52とゲート電極33との離間領域60をゲートコンタクトホールHGの近傍に配置する。これにより、離間領域60においてフィールド絶縁膜32または層間絶縁膜34の少なくともいずれか一方に欠損が生じても、離間領域60では高dV/dt印加時に発生する電位が小さいため、高dV/dt印加時の絶縁破壊が抑制できる。フィールド絶縁膜32または層間絶縁膜34の少なくともいずれか一方に欠損が発生したとしても、離間領域60において絶縁破壊がないようにするため、離間領域60の幅は層間絶縁膜34の厚み以上であることが望ましい。
【0049】
ゲートパッド領域13の端辺のうちゲートコンタクトホールHGが配置されない辺において、離間領域60はゲートパッド領域13内に配置する必要はなく、例えばゲートパッド領域13とゲート下ウェルコンタクト領域12との境界に重なるように配置されることが望ましい。これにより、フィールド絶縁膜32または層間絶縁膜34の少なくともいずれか一方に欠損が生じても、表面電極間、すなわちソース電極1とゲートパッド2との絶縁破壊を抑制することができる。
【0050】
<B-2.変形例>
図17は実施の形態2の変形例のMOSFET102Aの断面図である。MOSFET102Aの平面図は図14または図15に示す通りである。図17は、図14のC-C線、または図15のD-D線に沿った断面構成を示している。
【0051】
MOSFET102Aは、エッチングストッパー層52に代えてエッチングストッパー層52Aを備える点でMOSFET102と相違する。エッチングストッパー層52Aは、層間絶縁膜34によって複数の領域52A1,52A2,52A3,52A4に分断される点で、エッチングストッパー層52と異なる。言い換えれば、エッチングストッパー層52Aは層間絶縁膜34による分断領域65によって複数の領域52A1,52A2,52A3,52A4に分断される。
【0052】
エッチングストッパー層52Aが複数の領域52A1,52A2,52A3,52A4に分断されることの利点を以下に説明する。
【0053】
図18は、層間絶縁膜34およびフィールド絶縁膜32にそれぞれ欠損61,62が生じた状態を示すMOSFET102Aの断面図である。図19は、図18に示すMOSFET102Aのエッチングストッパー層52Aと層間絶縁膜34とを示す平面図である。図20は、層間絶縁膜34およびフィールド絶縁膜32にそれぞれ欠損61,62が生じた状態を示すMOSFET102の断面図である。図21は、図20に示すMOSFET102のエッチングストッパー層52と層間絶縁膜34とを示す平面図である。図20および図21に示されるように、層間絶縁膜34とフィールド絶縁膜32とにおいて同時に欠損61,62が生じると、MOSFET102においては欠損61,62において高dV/dt印加時に絶縁破壊のおそれがある。
【0054】
一方、MOSFET102Aにおいては、図18および図19に示されるように、欠損61の直下にあるエッチングストッパー層52Aの領域52A2と、欠損62の真上にあるエッチングストッパー層52Aの領域52A1とは層間絶縁膜34によって分断されている。従って、欠損61,62に起因する高dV/dt印加時の絶縁破壊は抑制される。このように、MOSFET102Aでは、エッチングストッパー層52Aの同一領域に対応するフィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34の領域に同時に欠損が生じない限り、高dV/dt印加時の絶縁破壊が抑制される。
【0055】
<B-3.効果>
実施の形態2のMOSFET102において、エッチングストッパー層52は層間絶縁膜34によりゲート電極33と離間する。従って、層間絶縁膜34が欠損しても絶縁破壊を抑制することができる。
【0056】
実施の形態2のMOSFET102Aにおいて、エッチングストッパー層52Aは、絶縁膜により複数の領域52A1,52A2,52A3,52A4に分断される。従って、MOSFET102Aでは、エッチングストッパー層52Aの同一領域に対応するフィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34の領域に同時に欠損が生じない限り、高dV/dt印加時の絶縁破壊が抑制される。
【0057】
<C.実施の形態3>
<C-1.構成>
実施の形態3の炭化珪素半導体装置であるMOSFET103は、デバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13に加えて、温度センスダイオード領域14、温度センスパッドウェルコンタクト領域15および温度センスパッド領域16を備える。図22は、MOSFET103のデバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13を示す断面図である。図23(a)は、MOSFET103のデバイス領域11、温度センスパッドウェルコンタクト領域15および温度センスパッド領域16を示す断面図である。図23(b)は、MOSFET103の温度センスダイオード領域14を示す断面図である。
【0058】
図22に示されるように、MOSFET103のゲートパッド領域13には、ウェルコンタクトホールHW1から最も離れた点Pを含む位置において、フィールド絶縁膜32と層間絶縁膜34との間にエッチングストッパー層53を備える。エッチングストッパー層53は、例えばp型のポリシリコンである。また、フィールド絶縁膜32上およびゲート電極33上には分離絶縁膜35が設けられている。MOSFET103のデバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13におけるその他の構成は、実施の形態1または実施の形態2のMOSFET101,102と同様である。
【0059】
図23(a)に示されるように、温度センスパッドウェルコンタクト領域15は、MOSFET103におけるゲート下ウェルコンタクト領域12と同様の構成である。また、温度センスパッド領域16は、ゲートパッド2に代えて温度センスパッド8が設けられ、ゲートコンタクトホールHGおよびゲート電極33がない点を除き、MOSFET103におけるゲートパッド領域13と同様の構成である。すなわち、温度センスパッド領域16にもフィールド絶縁膜32と層間絶縁膜34との間にエッチングストッパー層53が設けられる。温度センスパッド8は、温度センスダイオード領域14の温度センスダイオードと電気的に接続される。
【0060】
図23(b)に示されるように、温度センスダイオード領域14は、ドリフト層22、フィールド絶縁膜32、分離絶縁膜35、n型領域36、p型領域37、層間絶縁膜34、アノード電極5、およびカソード電極6を備える。フィールド絶縁膜32はドリフト層22の上に設けられる。分離絶縁膜35はフィールド絶縁膜32の上に設けられる。分離絶縁膜35の上にはn型領域36およびp型領域37が隣接して設けられる。n型領域36およびp型領域37はポリシリコンからなる。分離絶縁膜35、n型領域36およびp型領域37の上には層間絶縁膜34が設けられる。層間絶縁膜34にはアノード電極5およびカソード電極6が設けられる。アノード電極5およびカソード電極6は、層間絶縁膜34のコンタクトホールを通してn型領域36およびp型領域37にそれぞれ接触する。温度センスダイオード領域14において、n型領域36およびp型領域37により横型のpnダイオードが温度センスダイオードとして構成される。
【0061】
上記では、エッチングストッパー層53をn型のポリシリコンとしたが、p型のポリシリコンであってもよい。
【0062】
<C-2.製造工程>
図24から図26は、実施の形態3のMOSFET103のデバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12、ゲートパッド領域13および温度センスダイオード領域14の製造工程を示す断面図である。図24(a),図25(a),図26(a)は、デバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13の製造工程を示し、図24(b),図25(b),図26(b)は、温度センスダイオード領域14の製造工程を示している。以下、MOSFET103のデバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12、ゲートパッド領域13および温度センスダイオード領域14の製造工程を説明する。
【0063】
まず、SiC基板21上にドリフト層22をエピタキシャル成長で形成する。次いで、デバイス領域11に第1ウェル領域23、ソース領域24およびウェルコンタクト領域25を形成すると共に、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13に第2ウェル領域26を形成する。その後、ゲートパッド領域13、ゲート下ウェルコンタクト領域12の一部、および温度センスダイオード領域14にフィールド絶縁膜32を形成する。また、ゲート下ウェルコンタクト領域12のフィールド絶縁膜32が形成されていない領域およびデバイス領域11にゲート絶縁膜31を形成する。その後、デバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12、ゲートパッド領域13にゲート電極を形成する。
【0064】
次に、ゲート電極と温度センスダイオードとを絶縁するための分離絶縁膜35を、デバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12、ゲートパッド領域13および温度センスダイオード領域14に形成する。分離絶縁膜35は、例えばTEOSである。
【0065】
その後、温度センスダイオード領域14において分離絶縁膜35上にn型領域36およびp型領域37を形成すると共に、ゲートパッド領域13にエッチングストッパー層53を形成する。具体的には、n型のポリシリコンをゲートパッド領域13、および温度センスダイオード領域14の全面に形成する。これにより、ゲートパッド領域13に堆積されたn型のポリシリコンがエッチングストッパー層53となる。次いで、温度センスダイオード領域14に堆積されたn型のポリシリコンにマスクなどを用いて選択的にp型不純物を注入し、注入した領域をp型に反転させる。p型に反転したポリシリコンがp型領域37となり、p型不純物が注入されない領域がn型領域36となる。こうして、図24に示す断面構造が得られる。
【0066】
次に、デバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12、ゲートパッド領域13および温度センスダイオード領域14に層間絶縁膜34を形成し、パターニングする。また、ソースコンタクトホールHS、ウェルコンタクトホールHW1、およびゲートコンタクトホールHGを形成する。そして、表面電極として、デバイス領域11およびゲート下ウェルコンタクト領域12にソース電極1を、ゲートパッド領域13にゲートパッド2を、温度センスダイオード領域14にアノード電極5およびカソード電極6をそれぞれ形成する。こうして、図25に示す断面構造が得られる。
【0067】
次に、表面電極上にポリイミドなどの保護膜41を形成する。また、SiC基板21の裏面側に裏面電極としてドレイン電極7を形成する。こうして、図26に示す断面構造のMOSFET103が完成する。
【0068】
<C-3.変形例>
図27は、実施の形態3の変形例のMOSFET103Aのデバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13の断面図である。MOSFET103Aの温度センスダイオード領域14、温度センスパッドウェルコンタクト領域15および温度センスパッド領域16はMOSFET103と同様である。あるいは、MOSFET103Aの温度センスパッド領域16において、エッチングストッパー層53に代えて後述するエッチングストッパー層53Aが設けられていてもよい。
【0069】
MOSFET103Aは、MOSFET103と比較すると、ゲートパッド領域13においてエッチングストッパー層53に代えてエッチングストッパー層53Aを備えている。エッチングストッパー層53Aは、複数のp型領域53A1と複数のn型領域53A2とからなり、エッチングストッパー層53と同様にゲートパッド領域13においてフィールド絶縁膜32と層間絶縁膜34との間に設けられる。複数のp型領域53A1と複数のn型領域53A2とは、互いに隣接して交互に配置される。p型領域53A1はp型にドーピングされたポリシリコンからなり、n型領域53A2はn型にドーピングされたポリシリコンからなる。
【0070】
図28および図29は、MOSFET103Aにおけるエッチングストッパー層53Aのp型領域53A1およびn型領域53A2の配置を示す平面図である。図28は略矩形のp型領域53A1およびn型領域53A2が市松模様状に配置された例を示し、図29は略三角形のp型領域53A1およびn型領域53A2が鱗模様状に配置された例を示している。このように、複数のp型領域53A1および複数のn型領域53A2が交互に隙間なく配置された場合、各p型領域53A1または各n型領域53A2は、他のp型領域53A1および他のn型領域53A2と互いの角部で接触する。ここで、p型領域53A1同士、またはn型領域53A2同士が接触することを避けるため、各p型領域53A1または各n型領域53A2の角部には層間絶縁膜34による分断領域66が設けられる。これにより、p型領域53A1およびn型領域53A2を隙間なく配置しつつ、同一導電型領域の導通を避けることができる。従って、p型領域53A1およびn型領域53A2は、厳密な矩形または三角形ではなく、矩形または三角形の角部が分断領域66に相当する分だけ除去された略矩形または略三角形である。
【0071】
上記のエッチングストッパー層53Aにより、複数のpnダイオードが構成される。そして、ゲートパッド領域13のエッチングストッパー層53Aが設けられた領域では、平面視における任意の2点間の距離が大きくなるにつれて、pnダイオードの接続数が多くなる。従って、フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34の両方に欠損が生じたとしても、それら2つの欠損の発生位置に一定の距離があれば、pnダイオードで分圧することができるため、高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0072】
また、図28および図29に示されるように、分断領域66は各p型領域53A1または各n型領域53A2の角部にのみ設けられるため、実施の形態2の変形例のMOSFET102Aにおける分断領域65に比べて面積を小さくすることができる。これにより、高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0073】
<C-4.効果>
実施の形態3のMOSFET103が平面視において区分される複数の領域は、ポリシリコンからなる温度センスダイオードを有する温度センスダイオード領域14と、温度センスダイオードと電気的に接続される温度センスパッド8を有する温度センスパッド領域16とを含む。フィールド絶縁膜32はゲートパッド領域13および温度センスパッド領域16において半導体層の上面に形成される。エッチングストッパー層53は、ポリシリコンからなり、ゲートパッド領域13および温度センスパッド領域16のフィールド絶縁膜32上に形成される。以上の構成により、温度センスダイオードを有するMOSFET103においても、実施の形態1と同様に、高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0074】
実施の形態3の変形例のMOSFET103Aにおいて、エッチングストッパー層53Aは、交互に繰り返し配置される複数のp型領域53A1と複数のn型領域53A2とを含む。そして、隣り合うp型領域53A1同士の間、および隣り合うn型領域53A2同士の間には絶縁膜からなる分断領域66が設けられる。以上の構成により、図28および図29に示されるように、分断領域66は各p型領域53A1または各n型領域53A2の角部にのみ設けられるため、その面積を小さくすることができる。これにより、高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0075】
<D.実施の形態4>
<D-1.構成>
図30は、実施の形態4の炭化珪素半導体装置であるMOSFET104の平面図である。MOSFET104は、ソース電極1が形成されるデバイス領域11およびゲート下ウェルコンタクト領域12と、ゲートパッド2が形成されるゲートパッド領域13と、チップ外周の終端領域19とを備える。終端領域19とデバイス領域11との間には、終端ウェルコンタクト領域17と、ゲート配線領域18とがある。
【0076】
図31は、図30のE-E線に沿ったMOSFET104のデバイス領域11、ゲート下ウェルコンタクト領域12およびゲートパッド領域13の断面図である。図32は、図30のF-F線に沿ったMOSFET104のデバイス領域11、終端ウェルコンタクト領域17、ゲート配線領域18および終端領域19の断面図である。終端領域19には、ドリフト層22の表層にp型の電界緩和層26Aが設けられる。
【0077】
MOSFET104は、実施の形態1のMOSFET101と比較すると、エッチングストッパー層51に代えて窒化珪素(SiN)からなるエッチングストッパー層54が設けられること、そしてエッチングストッパー層54がゲートパッド領域13に加えて終端領域19にも設けられる点で異なる。エッチングストッパー層54は、フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34と材料および物性が異なる。フィールド絶縁膜32および層間絶縁膜34は、SiO2またはTEOSなどのCVD膜からなる。
【0078】
炭化珪素半導体層では、内部であれば高電界が印加されても絶縁破壊が生じない。しかし、炭化珪素半導体層の表面の電界が高くなると、傍に水分があれば加水分解が誘発され、表面に酸化膜が形成されて隆起し、炭化珪素半導体層の上の膜を破損させることがある。この点、窒化珪素からなるエッチングストッパー層54は耐湿性が高く、MOSFET104の外部からの水分の侵入を抑制することができる。従って、図32に示されるようにエッチングストッパー層54は電界が高くなるチップの終端領域19に設置されることが望ましい。
【0079】
エッチングストッパー層54は窒化珪素からなるため、層間絶縁膜34およびフィールド絶縁膜32のエッチングに対して選択比が高い。そのため、エッチングストッパー層54は、フィールド絶縁膜32またはゲート電極33などエッチングストッパー層54より前に形成された積層膜の上に、鋭角な段差部をもって成膜されてしまう。ここで、鋭角な段差部は、例えばテーパー角80°以上90°未満のテーパーまたは逆テーパーを持つ段差部を含む。図33は、ゲート電極33とフィールド絶縁膜32の段差の上にエッチングストッパー層54が形成された状態を示している。窒化珪素膜はクラックが入りやすいため、エッチングストッパー層54が段差上に形成されると、領域Gにおいて応力がかかってクラック63が生じやすい。そして、クラック63が高電界の領域まで進行すると、高電界の領域に水分が侵入して前述の通り、堆積膜の破損を招く。従って、エッチングストッパー層54は、フィールド絶縁膜32またはゲート電極33など、エッチングストッパー層54より前に形成された積層膜による段差上には形成しないことが望ましい。
【0080】
<D-2.効果>
実施の形態4のMOSFET104が平面視において区分される複数の領域は、デバイス領域11を囲む終端領域19を含む。フィールド絶縁膜32はゲートパッド領域13および終端領域19において半導体層の上面に形成される。エッチングストッパー層54は、窒化珪素からなり、ゲートパッド領域13および終端領域19のフィールド絶縁膜32上に形成される。以上の構成により、MOSFET104によれば、終端領域19に設けられたエッチングストッパー層54によって、MOSFET104の外部からの水分の侵入を抑制することができる。
【0081】
また、MOSFET104において、エッチングストッパー層54は、フィールド絶縁膜32とゲート電極33との段差の上には形成されない。従って、エッチングストッパー層54におけるクラックを抑制することができる。
【0082】
<E.実施の形態5>
<E-1.構成>
図34は、実施の形態5の炭化珪素半導体装置であるMOSFET105の断面図である。MOSFET105の平面図は図1または図2に示す通りである。図34は、図1のA-A線、または図2のB-B線に沿った断面構成を示している。
【0083】
MOSFET105は、ゲートパッド領域13およびゲート下ウェルコンタクト領域12において、P+型のウェルコンタクト領域26Hに代えてN+型のウェルコンタクト領域26H1を備える。また、MOSFET105は、ゲートパッド領域13およびゲート下ウェルコンタクト領域12において、半導体層の表面に導電膜38を備える。また、MOSFET105は、ゲート下ウェルコンタクト領域12においてウェルコンタクトホールHW1の下方に、ウェルコンタクト領域26H1を貫通してウェル本体領域26Lに達するp型のウェルコンタクト領域25を備える。以上の点で、MOSFET105は実施の形態1のMOSFET101と異なる。
【0084】
導電膜38は、半導体層よりも低い抵抗率を有する金属膜などである。
【0085】
以上の構成によれば、ゲートパッド領域13およびゲート下ウェルコンタクト領域12において、導電膜38の抵抗が小さいため、変位電流が流れやすく、高dV/dt印加時に絶縁膜にかかる電界そのものが低減する。そのため、フィールド絶縁膜32または層間絶縁膜34に欠損が生じても、残りの膜厚分で、高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0086】
ウェルコンタクト領域26H1がp型である場合、使用条件によっては、ゲート下ウェルコンタクト領域12でバイポーラ動作が伴う。従って、炭化珪素半導体層に積層欠陥があった場合、その欠陥が成長してオン抵抗の増加または漏れ電流の増加を招く。このような不良を抑制するため、ウェルコンタクト領域26H1はn型とした。
【0087】
<E-2.効果>
実施の形態5のMOSFET105において、第2ウェル領域26は、ドリフト層22の表層に形成されたp型のウェル本体領域26Lと、ウェル本体領域26Lの表層に形成されたn型のウェルコンタクト領域26H1とを備える。また、MOSFET105は、ウェルコンタクト領域26H1の上面にドリフト層22より低い抵抗率を有する導電膜38を備える。従って、ゲートパッド領域13およびゲート下ウェルコンタクト領域12において、導電膜38の抵抗が小さいため、変位電流が流れやすく、高dV/dt印加時に絶縁膜にかかる電界そのものが低減する。そのため、フィールド絶縁膜32または層間絶縁膜34に欠損が生じても、残りの膜厚分で、高dV/dt印加時の絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0088】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 ソース電極、2 ゲートパッド、5 アノード電極、6 カソード電極、7 ドレイン電極、8 温度センスパッド、11 デバイス領域、11w ゲート配線部、12 ゲート下ウェルコンタクト領域、13 ゲートパッド領域、14 温度センスダイオード領域、15 温度センスパッドウェルコンタクト領域、16 温度センスパッド領域、17 終端ウェルコンタクト領域、18 ゲート配線領域、19 終端領域、21 SiC基板、22 ドリフト層、23 第1ウェル領域、24 ソース領域、25 ウェルコンタクト領域、26 第2ウェル領域、26A 電界緩和層、26H,26H1 ウェルコンタクト領域、26L ウェル本体領域、28 正孔、29 電子、31 ゲート絶縁膜、32 フィールド絶縁膜、33 ゲート電極、34 層間絶縁膜、35 分離絶縁膜、36 n型領域、37 p型領域、38 導電膜、41 保護膜、51,51A,52,52A,53,53A,54 エッチングストッパー層、53A1 p型領域、53A2 n型領域、60 離間領域、61,62 欠損、63 クラック、65,66 分断領域。
図1
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