(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20241011BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241011BHJP
【FI】
H05K5/03 A
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2021130250
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 駿介
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-259680(JP,A)
【文献】特開平05-015017(JP,A)
【文献】特開2014-117001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
H02M 7/48
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された筐体と、
前記開口部を覆う開閉可能なカバーと、
前記筐体に収容される電気回路と、
前記電気回路における互いに異なる位置にそれぞれの一端が電気的に接続されている複数の第1接続端子と、前記複数の第1接続端子を互いに絶縁させて保持する第1保持部材と、を有する1つまたは複数の回路コネクタと、
複数の第2接続端子と、
前記第2接続端子のそれぞれの一端を露出させた状態で前記複数の第2接続端子を覆って、前記複数の第2接続端子を保持する第2保持部材と、
前記第2接続端子のそれぞれの他端に接続され、前記複数の第2接続端子を電気的に接続し、一部が前記第2保持部材に覆われ、前記回路コネクタへの取り付け方向に直交する前記第2保持部材の面から他の一部が引き出される1つまたは複数の電線と、を有し、前記回路コネクタに取り付けられて前記複数の第2接続端子が前記複数の第1接続端子に接触することで前記複数の第1接続端子を短絡する1つまたは複数の短絡コネクタと、
前記短絡コネクタの少なくともいずれかが前記回路コネクタに取り付けられている場合は、前記回路コネクタに取り付けられている前記短絡コネクタの前記第2保持部材
の前記電線が引き出されている前記面とは異なる前記第2保持部材の他のいずれかの面と前記カバーとに当接することで、前記カバーが閉じられることを制限するインターロック機構と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記インターロック機構は、
前記筐体または前記カバーに取り付けられる支持部材と、
前記支持部材によって移動可能に支持され、前記カバーが閉じられることを許容する許容位置および前記短絡コネクタの前記第2保持部材および前記カバーに当接することで前記カバーが閉じられることを制限する制限位置のいずれかに位置する可動部材と、を有する、
請求項
1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記支持部材は前記筐体の内部に設けられる固定フレームを介して前記筐体に取り付けられ、
前記可動部材が前記許容位置に位置する場合、前記可動部材は前記筐体の内部に収容され、前記可動部材が前記制限位置に位置する場合、前記可動部材の少なくとも一部は前記開口部から前記筐体の外部に突出する、
請求項
2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記可動部材は、前記支持部材によって、回転軸周りに回動可能に支持される、
請求項
2または
3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記可動部材は、前記支持部材によって、直線的に移動可能に支持される、
請求項
2または
3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記インターロック機構は、前記許容位置に位置する前記可動部材に係合する係合部材をさらに備える、
請求項
2から
5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
主面が前記開口部の貫通方向に沿って、1つの側面が前記開口部に向く向きで前記筐体の内面に取付られる板状の固定フレームをさらに備え、
前記1つまたは複数の回路コネクタは、前記固定フレームの前記主面に取り付けられる、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記複数の回路コネクタは、前記開口部の貫通方向に並んで設けられ、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記回路コネクタのそれぞれが有する前記第1保持部材に、前記開口部の貫通方向に交差する方向に開口し、前記短絡コネクタが挿入される第1差込口が形成される、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第1差込口は、短手方向が前記開口部の貫通方向に沿う矩形形状を有する、
請求項
9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記短絡コネクタが取り付け可能な1つまたは複数の保持コネクタをさらに備え、
前記インターロック機構は、前記短絡コネクタがそれぞれ対応する前記保持コネクタに取り付けられている場合は前記カバーが閉じられることを許容する、
請求項1から
10のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項12】
主面が前記開口部の貫通方向に沿って、1つの側面が前記開口部に向く向きで前記筐体の内面に取付られる板状の固定フレームをさらに備え、
前記1つまたは複数の保持コネクタは、前記固定フレームの前記主面に取り付けられる、
請求項
11に記載の電子機器。
【請求項13】
前記保持コネクタのそれぞれに、前記開口部の貫通方向に交差する方向に開口し、前記短絡コネクタが挿入される第2差込口が形成される、
請求項
11または
12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記第2差込口は、短手方向が前記開口部の貫通方向に沿う矩形形状を有する、
請求項
13に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば、鉄道車両に搭載される推進制御装置、電源装置等は、鉄道車両に取り付けられる筐体と、筐体の内部に収容される電気回路と、を備える。筐体には、電気回路の保守点検作業を行うための開口部が形成される。開口部には、開口部を覆う開閉可能なカバーが取り付けられている。電気回路の保守点検作業として、例えば、電気回路の複数の位置が短絡され同電位となった状態で高電圧を電気回路に印加し、電子機器が備える絶縁部材の絶縁性能の劣化の有無を判別する耐電圧試験が行われる。
【0003】
電子機器の一例として特許文献1に開示される蓄電池装置は、耐電圧試験を可能にするために、電気回路中の互いに異なる位置、例えば、電力変換回路の一対の入力端子に接続される複数の端子を有する耐圧コネクタと、耐圧コネクタに取付可能な可動コネクタと、を備える。可動コネクタが耐圧コネクタに取り付けられると、可動コネクタは、耐圧コネクタが有する複数の端子を電気的に接続する。この結果、電力変換回路の一対の入力端子が短絡されて同電位となり、耐電圧試験を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動コネクタが耐圧コネクタに取り付けられている場合、換言すれば、電力変換回路の一対の入力端子が短絡されている場合、特許文献1に開示される蓄電池装置は、電力の供給を受けても、通常動作、例えば、蓄電池の充電処理を行うことができない。換言すれば、通常動作時は、可動コネクタは耐圧コネクタから取り外されている必要がある。そこで、特許文献1に開示される蓄電池装置は、安全性を高めるため、取り外された可動コネクタを保持する保持用コネクタと、可動コネクタが耐圧コネクタに取り付けられている場合に筐体のカバーを閉じて蓄電池装置が通常動作を開始することを制限するインターロック機構と、を備える。
【0006】
詳細には、特許文献1に開示される蓄電池装置は、インターロック機構として、耐圧コネクタおよび保持用コネクタを覆うカバーであって、可動コネクタが耐圧コネクタに取り付けられている場合は閉じることができない触手防止カバーを備える。このため、蓄電池装置を小型化することが困難となる。さらに、複数の耐圧コネクタが設けられる場合、触手防止カバーが大きくなり、結果として、蓄電池装置が大型化してしまう。この課題は、蓄電池装置に限られず、耐電圧試験を行うために電気回路の短絡を可能とするコネクタと、電気回路が短絡した状態での通常動作開始を防止するインターロック機構と、を有する電子機器で起こり得る。
【0007】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、電気回路の短絡を可能とするコネクタを有する小型で安全性の高い電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の電子機器は、筐体と、カバーと、電気回路と、1つまたは複数の回路コネクタと、1つまたは複数の短絡コネクタと、インターロック機構と、を備える。筐体には、開口部が形成されている。カバーは、開口部を覆い、開閉可能である。電気回路は、筐体に収容される。回路コネクタは、電気回路における互いに異なる位置にそれぞれの一端が電気的に接続されている複数の第1接続端子と、複数の第1接続端子を互いに絶縁させて保持する第1保持部材と、を有する。短絡コネクタは、複数の第2接続端子と、第2接続端子のそれぞれの一端を露出させた状態で複数の第2接続端子を覆って、複数の第2接続端子を保持する第2保持部材と、第2接続端子のそれぞれの他端に接続され、複数の第2接続端子を電気的に接続し、一部が第2保持部材に覆われ、他の一部が回路コネクタへの取り付け方向に直交する第2保持部材の面から引き出される1つまたは複数の電線と、を有する。短絡コネクタは、回路コネクタに取り付けられて複数の第2接続端子が複数の第1接続端子に接触することで、複数の第1接続端子を短絡する。インターロック機構は、短絡コネクタの少なくともいずれかが回路コネクタに取り付けられている場合は、回路コネクタに取り付けられている短絡コネクタの第2保持部材の電線が引き出されている面とは異なる第2保持部材の他のいずれかの面とカバーとに当接することで、カバーが閉じられることを制限する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電子機器が備えるインターロック機構は、電気回路に電気的に接続されている複数の第1接続端子を有する回路コネクタに短絡コネクタが取り付けられている場合、短絡コネクタの第2保持部材とカバーとに当接することで、カバーが閉じられることを制限する。電子機器は、各コネクタを覆うカバーを必要としないため、小型で安全性の高い電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】実施の形態1に係る電子機器の斜視図の部分拡大図
【
図5】実施の形態1に係る各コネクタおよびインターロック機構を示す図
【
図6】実施の形態1に係る各コネクタおよびインターロック機構を示す図
【
図7】実施の形態1に係る各コネクタの
図5におけるVII-VII線での矢視断面図
【
図8】実施の形態1に係る各コネクタおよびインターロック機構を示す図
【
図9】実施の形態1に係るインターロック機構が許容位置にある状態を示す図
【
図10】実施の形態1に係るインターロック機構が制限位置にある状態を示す図
【
図11】実施の形態1に係るインターロック機構が制限位置にある状態を示す図
【
図12】実施の形態1に係る各コネクタの
図11におけるXII-XII線での矢視断面図
【
図13】実施の形態1に係るインターロック機構が制限位置にある状態を示す図
【
図14】実施の形態2に係る各コネクタおよびインターロック機構を示す図
【
図15】実施の形態2に係る各コネクタおよびインターロック機構を示す図
【
図16】実施の形態2に係る各コネクタの
図14におけるXVI-XVI線での矢視断面図
【
図17】実施の形態2に係るインターロック機構が制限位置にある状態を示す図
【
図18】実施の形態2に係るインターロック機構が制限位置にある状態を示す図
【
図19】実施の形態に係るインターロック機構の第1変形例を示す図
【
図20】実施の形態に係るインターロック機構の第1変形例を示す図
【
図21】実施の形態に係るインターロック機構の第2変形例を示す図
【
図22】実施の形態に係る回路コネクタおよび保持コネクタの取付方の変形例を示す図
【
図23】実施の形態に係る電子機器の第1変形例を示す図
【
図24】実施の形態に係る電子機器の第2変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る電子機器について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0012】
(実施の形態1)
直流電力を交流電力に変換する電気回路を有する電子機器を例にして、実施の形態1に係る電子機器1について説明する。
図1に示す電子機器1が備える電気回路11は、入力端子11a,11bから供給される直流電力を三相交流電力に変換し、出力端子11c,11d,11eから出力する。
【0013】
電子機器1は、例えば、鉄道車両に搭載され、電力供給線を介して変電所から供給される電力を取得する集電装置から直流電力の供給を受ける。電子機器1は、集電装置から供給される直流電力を三相交流電力に変換し、三相交流電力を出力端子11c,11d,11eに接続される負荷機器に供給する3レベルインバータである。負荷機器は、例えば、三相交流電力の供給を受けて駆動されると鉄道車両の推進力を生じさせる三相誘導電動機である。
【0014】
詳細には、電気回路11は、一端が入力端子11aに接続される接触器MC1と、一端が接触器MC1の他端に接続されるリアクトルL1と、一端がリアクトルL1の他端に接続されるコンデンサC1と、一端がコンデンサC1の他端に接続され、他端が入力端子11bに接続されるコンデンサC2と、を備える。電気回路11はさらに、直列に接続されたスイッチング素子Su1,Su2,Su3,Su4と、直列に接続されたスイッチング素子Sv1,Sv2,Sv3,Sv4と、直列に接続されたスイッチング素子Sw1,Sw2,Sw3,Sw4と、を備える。
【0015】
電気回路11はさらに、アノードがコンデンサC1,C2の接続点に接続され、カソードがスイッチング素子Su1,Su2の接続点に接続されるクランプダイオードD1と、アノードがスイッチング素子Su3,Su4の接続点に接続され、カソードがコンデンサC1,C2の接続点に接続されるクランプダイオードD2と、を備える。
【0016】
電気回路11はさらに、アノードがコンデンサC1,C2の接続点に接続され、カソードがスイッチング素子Sv1,Sv2の接続点に接続されるクランプダイオードD3と、アノードがスイッチング素子Sv3,Sv4の接続点に接続され、カソードがコンデンサC1,C2の接続点に接続されるクランプダイオードD4と、を備える。
【0017】
電気回路11はさらに、アノードがコンデンサC1,C2の接続点に接続され、カソードがスイッチング素子Sw1,Sw2の接続点に接続されるクランプダイオードD5と、アノードがスイッチング素子Sw3,Sw4の接続点に接続され、カソードがコンデンサC1,C2の接続点に接続されるクランプダイオードD6と、を備える。
【0018】
電気回路11はさらに、電気回路11において互いに異なる位置に接続される複数の回路端子P1-P13を備える。
【0019】
電気回路11の各部の詳細について以下に説明する。
接触器MC1は、実施の形態1では、直流電磁接触器である。接触器MC1は、リアクトルL1の一端と入力端子11aの間の電気的接続を切り替える。接触器MC1が投入されると、入力端子11a,11bを介して電気回路11の各素子に電力が供給される。接触器MC1が開放されると、電気回路11の各素子に電力は供給されない。
【0020】
リアクトルL1およびコンデンサC1,C2は、LCフィルタを形成し、スイッチング素子Su1-Su4,Sv1-Sv4,Sw1-Sw4のそれぞれのスイッチング動作によって生じる高調波電流を低減する。
【0021】
直列に接続されたスイッチング素子Su1,Su2,Su3,Su4、直列に接続されたスイッチング素子Sv1,Sv2,Sv3,Sv4、および、直列に接続されたスイッチング素子Sw1,Sw2,Sw3,Sw4はそれぞれ、U相、V相、W相に対応し、コンデンサC1,C2に並列に接続される。スイッチング素子Su2,Su3の接続点、スイッチング素子Sv2,Sv3の接続点、およびスイッチング素子Sw2,Sw3の接続点はそれぞれ、出力端子11c,11d,11eに接続される。
【0022】
スイッチング素子Su1-Su4,Sv1-Sv4,Sw1-Sw4の構成は互いに同じであるため、スイッチング素子Su1について説明する。スイッチング素子Su1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)12と、アノードがIGBT12のエミッタ端子に接続され、カソードがIGBT12のコレクタ端子に接続される還流ダイオード13と、を有する。
【0023】
上述のスイッチング素子Su1-Su4,Sv1-Sv4,Sw1-Sw4は、図示しない制御装置によって制御されて、スイッチング動作を行う。詳細には、スイッチング素子Su1-Su4,Sv1-Sv4,Sw1-Sw4のそれぞれが有するIGBT12のゲート端子に制御装置からゲート信号が供給され、IGBT12がスイッチング動作を行う。この結果、電気回路11は、直流電力を三相交流電力に変換する。
【0024】
クランプダイオードD1,D2は、U相に対応し、スイッチング素子Su1-Su4に過電圧が印加されることを抑制する。クランプダイオードD3,D4は、V相に対応し、スイッチング素子Sv1-Sv4に過電圧が印加されることを抑制する。クランプダイオードD5,D6は、W相に対応し、スイッチング素子Sw1-Sw4に過電圧が印加されることを抑制する。
【0025】
回路端子P1-P13は、上述の電気回路11を構成する回路素子の接続点、具体的には、回路素子を接続するバスバーに固定され、かつ、バスバーに電気的に接続される。詳細には、回路端子P1は、接触器MC1の他端とリアクトルL1の一端との接続点に接続されている。回路端子P2は、リアクトルL1の他端とコンデンサC1の一端との接続点に接続されている。回路端子P3は、コンデンサC2の他端と入力端子11bとの接続点に接続されている。
【0026】
回路端子P4は、コンデンサC1,C2の接続点に接続されている。回路端子P5は、スイッチング素子Su1,Su2の接続点に接続されている。回路端子P6は、スイッチング素子Su3,Su4の接続点に接続されている。回路端子P7は、スイッチング素子Sv1,Sv2の接続点に接続されている。回路端子P8は、スイッチング素子Sv3,Sv4の接続点に接続されている。
【0027】
回路端子P9は、スイッチング素子Sw1,Sw2の接続点に接続されている。回路端子P10は、スイッチング素子Sw3,Sw4の接続点に接続されている。回路端子P11は、スイッチング素子Su2,Su3の接続点に接続されている。回路端子P12は、スイッチング素子Sv2,Sv3の接続点に接続されている。回路端子P13は、スイッチング素子Sw2,Sw3の接続点に接続されている。
【0028】
回路端子P1-P13が接続されている位置の少なくともいずれかの電位は、電気回路11が通常動作、具体的には、直流電力を三相交流電力に変換する動作を行っている場合に、回路端子P1-P13が接続されている他の位置の電位と異なる。一例として、回路端子P1の電位は入力端子11aの電位に相当し、回路端子P3の電位は入力端子11bの電位に相当するため、入力端子11a,11bに直流電圧が印加されている場合、回路端子P1,P3の電位は異なる。他の一例として、回路端子P11,P12,P13の電位はそれぞれ、U相電位、V相電位、W相電位に相当するため、電気回路11が三相交流電力を出力している場合、回路端子P11,P12,P13の電位は互いに異なる。
【0029】
上記構成を有する電気回路11の保守点検作業の一例として、電気回路11が通常動作を行う際に異なる電位となる位置を短絡して同電位とした状態で、電気回路11に高電圧を印加して電子機器1が備える図示しない絶縁部材の絶縁性能の劣化の有無を判別する耐電圧試験が行われる。詳細には、回路端子P1-P13が短絡された状態で、入力端子11a,11bに高電圧、例えば、1500Vの直流電圧を印加して絶縁部材の絶縁性能の劣化の有無が判別される。回路端子P1-P13を短絡するための電子機器1の構成および安全性を高めるための電子機器1の構成について以下に説明する。
【0030】
図2に示す電子機器1は、電気回路11を内部に収容する筐体21と、開閉可能なカバー22と、を備える。カバー22の記載を省略した
図3に示すように、筐体21に開口部21aが形成される。
図2および
図3において、開口部21aが形成される面に平行な面に含まれ、互いに直交する軸として、X軸およびZ軸を設定する。実施の形態1では、X軸は開口部21aの長手方向に延び、Z軸は開口部21aの短手方向に延びる。さらに、開口部21aの貫通方向に平行であって、X軸およびZ軸のそれぞれに直交する軸としてY軸を設定する。開口部21aの貫通方向は、開口部21aが形成される筐体21の面に直交する方向である。上述のように、X軸、Y軸、およびZ軸を有する直交座標系を設定し、適宜参照する。電子機器1が鉄道車両に搭載される場合、Y軸方向が鉄道車両の幅方向に一致し、X軸方向が鉄道車両の進行方向に一致する向きで電子機器1が鉄道車両に取り付けられることが好ましい。鉄道車両が水平な場所に位置する場合、Z軸方向は鉛直方向を示す。
【0031】
図2に示すように、筐体21にX軸方向に並んで取り付けられている一対の保持部材23に、カバー22にX軸方向に並んで取り付けられている一対の係止部材24が係止する。一対の係止部材24が取り付けられたカバー22は、回転軸AX1周りに回転可能である。この結果、カバー22は、開口部21aを開閉することが可能となる。回転軸AX1は、X軸に平行に延びる。
【0032】
図3に示すように、電子機器1は、筐体21に取り付けられる固定フレーム25をさらに備える。固定フレーム25は、板状部材であって、主面が開口部21aの貫通方向に沿って、1つの側面が開口部21aに向く向きで筐体21の内面に取り付けられ、筐体21の中央部分を支持する。実施の形態1では、固定フレーム25は、Y軸正方向に向く側面およびZ軸に直交する両側面が筐体21の内面に当接した状態で、筐体21に取り付けられる。固定フレーム25は、嵌合、ろう付け、溶接、接着剤を用いた接着、締結部材を用いた締結等の取り付け方法で筐体21に取り付けられる。固定フレーム25の強度を確保するため、固定フレーム25は、筐体21と同じ部材、例えばアルミニウムで形成されることが好ましい。
【0033】
図3の部分拡大図である
図4、
図5、および
図6に示すように、電子機器1は、導体38を介して回路端子P1-P13の内、対応する回路端子に接続される回路コネクタ31と、回路コネクタ31に取り付けられると、回路コネクタ31に接続されている回路端子P1-P13を短絡する短絡コネクタ32と、を備える。
【0034】
電子機器1はさらに、電気回路11が通常動作する際に短絡コネクタ32を固定しておくために、短絡コネクタ32が取付可能な保持コネクタ33を備えることが好ましい。保持コネクタ33の個数は、短絡コネクタ32の個数と同じである。実施の形態1では、保持コネクタ33は、電気回路11とは絶縁されている。
【0035】
電子機器1はさらに、短絡コネクタ32が回路コネクタ31に取り付けられている場合に、短絡コネクタ32およびカバー22に当接することで、カバー22が閉じられることを防止するインターロック機構34と、回路コネクタ31と回路端子P1-P13とを電気的に接続する導体38と、を備える。
【0036】
実施の形態1では、電子機器1は、開口部21aの貫通方向、すなわち、Y軸方向に並んで設けられた2つの回路コネクタ31と、2つの短絡コネクタ32と、2つの回路コネクタ31のZ軸負方向側に、Y軸方向に並んで設けられた2つの保持コネクタ33と、を備える。
図4および
図5において、保持コネクタ33の構成を明確にするために、一方の短絡コネクタ32の記載が省略されている。実施の形態1では、回路コネクタ31、保持コネクタ33およびインターロック機構34は、固定フレーム25に取り付けられている。具体的には、回路コネクタ31、保持コネクタ33およびインターロック機構34は、固定フレーム25の主面、例えば、X軸正方向に向く面に取り付けられている。
【0037】
各コネクタ、すなわち、回路コネクタ31、短絡コネクタ32、および保持コネクタ33、ならびにインターロック機構34の詳細について、以下に説明する。
【0038】
図5におけるVII-VII線での矢視断面図である
図7に示すように、回路コネクタ31は、それぞれの一端が導体38を介して回路端子P1-P13のいずれかに電気的に接続される複数の第1接続端子42と、複数の第1接続端子42のそれぞれの他端を露出させた状態で複数の第1接続端子42を覆って、複数の第1接続端子42を保持する第1保持部材41と、を備える。
【0039】
第1保持部材41は、絶縁部材、例えば、樹脂で形成され、複数の第1接続端子42を互いに絶縁させて保持する。第1保持部材41には、開口部21aの貫通方向に直交する方向に開口し、短絡コネクタ32が挿入可能な第1差込口41aが形成される。実施の形態1では、第1保持部材41には、X軸正方向を向いて開口し、短手方向が開口部21aの貫通方向に沿う矩形形状を有する第1差込口41aが形成される。第1保持部材41は、嵌合、ろう付け、溶接、接着剤を用いた接着、締結部材を用いた締結等の取り付け方法で固定フレーム25に取り付けられる。
【0040】
各第1接続端子42は、導体38を介して、回路端子P1-P13のいずれかに電気的に接続される。実施の形態1では、回路コネクタ31は、12個の第1接続端子42を有する。
【0041】
短絡コネクタ32は、複数の第2接続端子53と、複数の第2接続端子53を保持する第2保持部材51と、複数の第2接続端子53を電気的に接続する複数の電線52と、を有する。
【0042】
実施の形態1では、第2保持部材51は、絶縁部材、例えば、樹脂で形成され、複数の第2接続端子53を互いに絶縁させて保持する。詳細には、第2保持部材51は、複数の第2接続端子53のそれぞれの一端を露出させた状態で複数の第2接続端子53を覆う。
【0043】
各第2接続端子53は、短絡コネクタ32が回路コネクタ31に取り付けられた場合に、第1接続端子42に接触する形状を有する。実施の形態1では、短絡コネクタ32は、それぞれが第1接続端子42と嵌合し得る12個の第2接続端子53を有する。各第2接続端子53が第1接続端子42に接触することで、複数の第1接続端子42が短絡される。
【0044】
各電線52は、複数の第2接続端子53の他端に接続され、複数の第2接続端子53を電気的に接続する。詳細には、各電線52は、両端が2つの第2接続端子53のそれぞれの他端に接続される。各電線52の一部は第2保持部材51に覆われ、他の一部が第2保持部材51から引き出されている。詳細には、各電線52は、第2保持部材51の面51aから引き出されている。
【0045】
保持コネクタ33は、複数の第3接続端子62と、複数の第3接続端子62を保持する第3保持部材61と、を有する。
【0046】
第3保持部材61は、絶縁部材、例えば、樹脂で形成され、複数の第3接続端子62を保持する。第3保持部材61には、開口部21aの貫通方向に直交する方向に開口し、短絡コネクタ32が挿入可能な第2差込口61aが形成される。実施の形態1では、第3保持部材61には、X軸正方向を向いて開口し、短手方向が開口部21aの貫通方向に沿う矩形形状を有する第2差込口61aが形成される。第3保持部材61は、嵌合、ろう付け、溶接、接着剤を用いた接着、締結部材を用いた締結等の取り付け方法で固定フレーム25に取り付けられる。
【0047】
各第3接続端子62は、第2接続端子53を保持可能な形状を有する。例えば、第3接続端子62は、第1接続端子42と同様の形状を有することが好ましい。実施の形態1では、各第3接続端子62は、第2接続端子53と嵌合する形状を有する。各第3接続端子62が各第2接続端子53に嵌合することで、保持コネクタ33は短絡コネクタ32を保持することが可能となる。第3接続端子62は、第2接続端子53を保持するためのものであり、電気回路11に接続されている必要はない。実施の形態1では、第3接続端子62は、電気回路11とは絶縁されている。
【0048】
インターロック機構34は、
図5および
図6に示すように、筐体21に取り付けられる支持部材35と、支持部材35によって移動可能に支持され、カバー22が閉じられることを許容する許容位置およびカバー22が閉じられることを制限する制限位置のいずれかに位置する可動部材36と、を備える。インターロック機構34は、許容位置にある可動部材36の動きを制限するために、許容位置にある可動部材36に係合する係合部材37を備えることが好ましい。実施の形態1では、係合部材37は、支持部材35に取り付けられている。
【0049】
支持部材35の筐体21への取り付けは、筐体21への直接的な取り付け、および、他の部材を介した筐体21への間接的な取り付けを含むものとする。実施の形態1では、支持部材35は、固定フレーム25を介して筐体21に間接的に取り付けられている。詳細には、支持部材35は、筐体21に取り付けられている固定フレーム25に締結部材によって取り付けられる。
【0050】
支持部材35は、回路コネクタ31および保持コネクタ33を取り囲む位置で固定フレーム25に取り付けられ、端部が折り曲げられている板状部材である。
図4、および
図4から可動部材36の記載を省略した
図8に示すように、支持部材35のZ軸正方向側の端部35aが、Z軸に直交する断面の形状がL字型となる形に折り曲げられる。L字型に折り曲げられた端部35aに、係合部材37が取り付けられる。
【0051】
図8に示すように、支持部材35のZ軸負方向側の端部35bが、Z軸に直交する断面においてU字型となる形に折り曲げられる。U字型に折り曲げられた端部35bは、可動部材36を回動可能に支持する。詳細には、端部35bは、可動部材36に取り付けられるシャフト35cを回転軸AX2周りに回転可能に支持する。
【0052】
可動部材36は、端部35bに回転可能に支持されるシャフト35cに取り付けられ、シャフト35cの回転に伴って、回転軸AX2周りに回動する。可動部材36には、可動部材36が
図5に示す許容位置にある状態でY軸正方向に延びる突出部36aを有する。可動部材36が制限位置にある場合は、突出部36aが回路コネクタ31に取り付けられている短絡コネクタ32に当接することで、短絡コネクタ32が回路コネクタ31に取り付けられている場合にカバー22が閉じられることが防止される。可動部材36には、係合部材37と嵌合する貫通孔36bが形成される。
【0053】
係合部材37は、例えば、可動部材36に向く面に突起が形成されている柱状部材である。係合部材37の突起が、許容位置にある可動部材36の貫通孔36bに嵌合する。この結果、許容位置にある可動部材36が、X軸方向に移動することが抑制される。
【0054】
上記構成を有する電子機器1の電気回路11を短絡する際の手順について以下に説明する。電子機器1は、電子機器1への電力供給が停止され、コンデンサC1,C2が放電された場合にのみ、カバー22を開けることが可能となる機構を有することが好ましい。例えば、電子機器1への電力供給が停止された後、ナイフスイッチである放電スイッチが操作され、放電スイッチがコンデンサC1,C2を放電させる放電位置に移動する。放電スイッチが放電位置に移動すると、
図1に示すコンデンサC1,C2が放電スイッチを介して図示しない放電回路に電気的に接続される。この結果、コンデンサC1,C2が放電される。放電スイッチが放電位置にある場合に抜き取り可能となる鍵でカバー22が解錠され、カバー22を開けることが可能となる。
【0055】
カバー22を開けることが可能となった状態では、
図9に示すように、各短絡コネクタ32は、保持コネクタ33に取り付けられている。
図9の例では、インターロック機構34は、許容位置に位置している。インターロック機構34が許容位置に位置する場合、インターロック機構34が有する可動部材36の突出部36aが回路コネクタ31のX軸正方向側に位置する。このため、短絡コネクタ32を回路コネクタ31に取り付けることはできない。
【0056】
カバー22が開かれると、
図10に示すように、インターロック機構34を制限位置まで回動させることが可能となる。具体的には、インターロック機構34が有する可動部材36の一部、具体的には、許容位置でZ軸正方向側に位置する端部を、開口部21aから突出する位置まで回動させることが可能となる。例えば、保守作業員が、カバー22を開いた後に、
図9に示す状態の可動部材36のZ軸正方向端部を開口部21aに向けて引き出すと、
図10に示す位置まで可動部材36が回動する。この結果、インターロック機構34が有する可動部材36の突出部36aが回路コネクタ31のX軸正方向側に位置しないため、保持コネクタ33から取り外した短絡コネクタ32を回路コネクタ31に取り付けることが可能となる。
【0057】
保持コネクタ33から取り外された短絡コネクタ32が、
図11および
図11におけるXII-XII線での矢視断面図である
図12に示すように回路コネクタ31に取り付けられると、複数の第1接続端子42が複数の第2接続端子53および複数の電線52を介して短絡される。この結果、
図1に示す電気回路11において、回路端子P1-P13の接続位置が同電位となる。回路端子P1-P13の接続位置が同電位となると、電子機器1の耐電圧試験を行うことが可能となる。
【0058】
図13に示すように、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、インターロック機構34の可動部材36が保守作業員によって許容位置に向けて動かされると、可動部材36の突出部36aが短絡コネクタ32の第2保持部材51に当接する。詳細には、突出部36aの端部が、第2保持部材51の電線52が引き出されている位置と異なる位置で第2保持部材51に当接する。実施の形態1では、突出部36aの端部は、第2保持部材51の電線52が引き出されている面51aと異なる面51bに当接する。面51bは、第2保持部材51の開口部21aに向く面である。
【0059】
突出部36aが第2保持部材51の面51bに当接している状態で、可動部材36は、開口部21aから筐体21の外部に突出する。このため、保守作業員がカバー22を閉じようとしても、可動部材36が第2保持部材51とカバー22とに当接するため、カバー22を閉じることが制限される。換言すれば、可動部材36が
図13に示すように、開口部21aから筐体21の外部に突出した状態で、第2保持部材51とカバー22とに当接する制限位置に位置する場合、カバー22を閉じることができない。この結果、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、カバー22が閉じられることが防止される。
【0060】
一方の短絡コネクタ32のみが回路コネクタ31に取り付けられている場合も同様に、可動部材36は、突出部36aが、回路コネクタ31に取り付けられている短絡コネクタ32の第2保持部材51とカバー22とに当接する。この結果、一方の短絡コネクタ32のみが回路コネクタ31に取り付けられている状態で、カバー22が閉じられることが防止される。
【0061】
以上説明した通り、実施の形態1に係る電子機器1が備えるインターロック機構34が有する可動部材36は、回路コネクタ31に取り付けられた短絡コネクタ32の第2保持部材51とカバー22とに当接することで、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、カバー22が閉じられることを制限する。このため、電子機器1の安全性は高い。
【0062】
電子機器1は、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、カバー22が閉じられることを制限するために、回路コネクタ31、短絡コネクタ32、および保持コネクタ33を覆うカバーを必要としない。この結果、小型の電子機器1が得られる。
【0063】
回路コネクタが筐体の開口部の開口面に沿って並んで設けられている電子機器の場合、回路コネクタの数が増えると、開口部の開口面の広さにおける回路コネクタが占める割合が増大する。この結果、開口部の近傍の作業スペースが狭くなり、開口部を通した保守点検作業の効率が低くなる。一方、実施の形態1に係る電子機器1が備える複数の回路コネクタ31は、開口部21aの貫通方向、すなわち、Y軸方向に並んで設けられている。このため、回路コネクタ31の数が増えても、開口部21aの開口面の広さ、すなわち、開口部21aのY軸方向に直交する断面の面積における回路コネクタ31が占める割合は一定である。換言すれば、回路コネクタ31の数が増えても、開口部21aの近傍の作業スペースが確保され、開口部21aを通した保守点検作業の効率が低下しない。
【0064】
可動部材36は、第2保持部材51の電線52が引き出される面51aと異なる面51bに当接するため、可動部材36が電線52に接触することによる電線52の損傷が防止される。
【0065】
(実施の形態2)
実施の形態1では、インターロック機構34は、回転軸AX2周りに回動する可動部材36を有するが、インターロック機構34の構造は、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、カバー22が閉じられることを制限することができる構造であれば任意である。直線的に移動する可動部材を有するインターロック機構を備える電子機器2について、実施の形態2で説明する。
【0066】
電子機器2の回路構成は、電子機器1と同様である。短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられている状態でカバー22が閉じられることを防止するための電子機器2の機構について、実施の形態1と異なる点を中心に以下に説明する。
【0067】
図14に示す電子機器2は、短絡コネクタ32が回路コネクタ31に取り付けられている状態でカバー22が閉じられることを防止するインターロック機構71を備える。インターロック機構71は、筐体21に取り付けられる支持部材72と、支持部材72によって移動可能に支持され、カバー22が閉じられることを許容する許容位置およびカバー22が閉じられることを制限する制限位置のいずれかに位置する可動部材73と、を備える。
【0068】
支持部材72は、
図15に示すように、Y軸に直交する断面の形状がL字型の板状部材であり、回路コネクタ31のZ軸正方向側において、固定フレーム25に締結部材によって取り付けられる。
図14におけるXVI-XVI線での矢視断面図である
図16に示すように、支持部材72には、Y軸方向に延びる溝72aが形成される。
【0069】
可動部材73は、
図15に示すように、Y軸に直交する断面の形状がL字型の板状部材である。可動部材73には、
図16に示すように、支持部材72の溝72aに係止する突起73aが形成される。突起73aが溝72aに係止した状態で、可動部材73は溝72aに沿ってY軸方向に移動することができる。換言すれば、可動部材73は、支持部材72によって、直線的に移動可能に支持される。
【0070】
上記構成を有する電子機器2の電気回路11を短絡する際の手順について以下に説明する。実施の形態1と同様に、電子機器2は、電子機器2への電力供給が停止され、コンデンサC1,C2が放電された場合にのみ、カバー22を開けることが可能となる機構を有することが好ましい。
【0071】
カバー22を開けることが可能となった状態で、
図14に示すように、各短絡コネクタ32は、保持コネクタ33に取り付けられている。
図14の例では、インターロック機構71は許容位置に位置している。インターロック機構71が許容位置に位置する場合、インターロック機構71が有する可動部材73の一部が回路コネクタ31のX軸正方向側に位置する。このため、短絡コネクタ32を回路コネクタ31に取り付けることはできない。
【0072】
カバー22が開かれると、
図17に示すように、インターロック機構71を制限位置まで直線的に移動させることが可能となる。具体的には、インターロック機構71の可動部材73の一部、具体的には、Y軸負方向端部を、開口部21aから突出する位置まで移動させることが可能となる。例えば、保守作業員が、カバー22を開いた後に、
図14に示す状態の可動部材73を開口部21aに向けて引き出すと、
図17に示す位置まで可動部材73が移動する。この結果、インターロック機構71が有する可動部材73が回路コネクタ31のX軸正方向側に位置しないため、保持コネクタ33から取り外した短絡コネクタ32を回路コネクタ31に取り付けることが可能となる。
【0073】
保持コネクタ33から取り外された短絡コネクタ32が、
図18に示すように回路コネクタ31に取り付けられると、複数の第1接続端子42が複数の第2接続端子53および複数の電線52を介して短絡される。この結果、
図1に示す電気回路11において、回路端子P1-P13の接続位置が同電位となる。回路端子P1-P13の接続位置が同電位となると、電子機器2の耐電圧試験を行うことが可能となる。
【0074】
図18に示すように、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、インターロック機構71の可動部材73が保守作業員によって許容位置に向けて動かされると、可動部材73の端部が第2保持部材51に当接する。詳細には、可動部材73のY軸正方向の端部が、第2保持部材51の電線52が引き出される面51aと異なる面51bに当接する。
【0075】
可動部材73のY軸正方向の端部が第2保持部材51の面51bに当接している状態で、可動部材73のY軸負方向の端部が開口部21aから筐体21の外部に突出する。このため、保守作業員がカバー22を閉じようとしても、可動部材73が第2保持部材51とカバー22とに当接するため、カバー22を閉じることが制限される。換言すれば、可動部材73が
図18に示すように、開口部21aから筐体21の外部に突出した状態で、第2保持部材51とカバー22とに当接する制限位置に位置する場合、カバー22を閉じることができない。この結果、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、カバー22が閉じられることが防止される。
【0076】
一方の短絡コネクタ32のみが回路コネクタ31に取り付けられている場合も同様に、可動部材73は、回路コネクタ31に取り付けられている短絡コネクタ32の第2保持部材51とカバー22とに当接する。この結果、一方の短絡コネクタ32のみが回路コネクタ31に取り付けられている状態で、カバー22が閉じられることが防止される。
【0077】
以上説明した通り、実施の形態2に係る電子機器2が備えるインターロック機構71が有する可動部材73は、回路コネクタ31に取り付けられた短絡コネクタ32の第2保持部材51とカバー22とに当接することで、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、カバー22が閉じられることを制限する。このため、電子機器2の安全性は高い。
【0078】
電子機器2は、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、カバー22が閉じられることを制限するために、回路コネクタ31、短絡コネクタ32、および保持コネクタ33を覆うカバーを必要としない。この結果、小型の電子機器2が得られる。
【0079】
本開示は、上述の実施の形態に限られない。インターロック機構34,71の構造は、上述の実施の形態に限られず、短絡コネクタ32が回路コネクタ31に取り付けられている場合に、回路コネクタ31に取り付けられている短絡コネクタ32の第2保持部材51およびカバー22に当接することで、カバー22が閉じられることを制限することができる構造であれば任意である。
【0080】
一例として、インターロック機構は、例えば、カバー22に取り付けられてもよい。
図19に示す電子機器3は、カバー22に取り付けられ、筐体21の内部に向かって突出する棒状部材であるインターロック機構74を備える。インターロック機構74は、嵌合、ろう付け、溶接、接着剤を用いた接着、締結部材を用いた締結等の取り付け方法でカバー22に取り付けられる。
【0081】
図20に示すように、短絡コネクタ32の少なくともいずれかが回路コネクタ31に取り付けられた状態で、保守作業員がカバー22を閉じようとすると、インターロック機構74の端部が第2保持部材51に当接するため、カバー22が閉じられることが制限される。
【0082】
他の一例として、可動部材36の回転軸AX2は、可動部材36のZ軸正方向端部に位置してもよい。詳細には、支持部材35のZ軸正方向側の端部35aが、Z軸に直交する断面の形状がU字型となる形に折り曲げられ、可動部材36を回動可能に支持してもよい。
【0083】
他の一例として、インターロック機構71の支持部材72は、
図21に示すように、筐体21に直接的に取り付けられてもよい。例えば、支持部材72は、筐体21のZ軸負方向に向く内面に締結部材によって締結される。
【0084】
電気回路11は、3レベルインバータに限られず、耐電圧試験を行うために短絡する必要がある任意の回路である。一例として、電気回路11は、DC(Direct Current:直流)-DCコンバータでもよい。
【0085】
回路コネクタ31の個数は、2個に限られず、任意である。短絡コネクタ32の個数は、回路コネクタ31の個数と同数であることが好ましい。各回路コネクタ31に対応する回路端子P1-P13を同時に短絡する必要がない場合、短絡コネクタ32の個数は、回路コネクタ31の個数より少なくてもよい。
【0086】
保持コネクタ33の構造は上述の例に限られない。一例として、保持コネクタ33が有する第3保持部材61に、短絡コネクタ32が有する第2保持部材51が嵌合することで、保持コネクタ33が短絡コネクタ32を保持可能な場合、保持コネクタ33は、第3接続端子62を備えなくてもよい。他の一例として、通常動作の際に電気回路11において短絡される箇所がある場合は、第3接続端子62は電気回路11に電気的に接続されてもよい。
【0087】
回路コネクタ31および保持コネクタ33を固定フレーム25に取り付ける向きは、上述の例に限られない。実施の形態1と異なる向きで回路コネクタ31および保持コネクタ33が固定フレーム25に取り付けられる変形例を
図22に示す。
図22において、図の複雑化を避けるため、支持部材35の端部35a、係合部材37、第1接続端子42、第3接続端子62、および一方の短絡コネクタ32の記載が省略されている。
【0088】
図22の例では、回路コネクタ31は第1差込口41aが開口部21aの貫通方向に交差する向きで固定フレーム25に取り付けられる。詳細には、第1差込口41aの開口面がYZ平面から傾いた向きで、第1保持部材41が固定フレーム25の貫通孔に挿入され固定フレーム25に取り付けられる。第1保持部材41の一部は、固定フレーム25の貫通孔からX軸負方向に突出している。
【0089】
保持コネクタ33は、第2差込口61aが開口部21aの貫通方向に交差する向きで固定フレーム25に取り付けられる。詳細には、第2差込口61aの開口面がYZ平面から傾いた向きで、第3保持部材61が固定フレーム25の貫通孔に挿入され、固定フレーム25に取り付けられる。第3保持部材61の一部は、固定フレーム25の貫通孔からX軸負方向に突出している。
【0090】
上述のように回路コネクタ31および保持コネクタ33を固定フレーム25に取り付けることで、開口部21aの開口面の広さにおける回路コネクタ31および保持コネクタ33が占める割合が低減される。この結果、開口部21aの近傍の作業スペースが増大し、開口部21aを通した保守点検作業の効率が向上する。
【0091】
電子機器1は、
図23に示すように、電線52を保護するための保護カバー39をさらに備えてもよい。保護カバー39は、第2保持部材51の電線52が引き出される面51aを覆う形状を有する。例えば、保護カバー39は、第2保持部材51に向く面が開口している箱型の形状を有する。保護カバー39は、樹脂、弾性部材等で形成され、電線52に他の部材が接触することを防止する。電子機器2,3についても同様である。
【0092】
電気回路11が通常動作する際に短絡コネクタ32を固定する場所が電子機器1の外部にある場合は、電子機器1の構成は、
図24に示すように、保持コネクタ33を備えない構成でもよい。電子機器2,3についても同様である。
【0093】
電子機器1-3は、鉄道車両に限られず、自動車、船舶、航空機等の任意の移動体に搭載することができる。電子機器1-3は、移動体に搭載されず、屋内または屋外に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1,2,3 電子機器、11 電気回路、11a,11b 入力端子、11c,11d,11e 出力端子、12 IGBT、13 還流ダイオード、21 筐体、21a 開口部、22 カバー、23 保持部材、24 係止部材、25 固定フレーム、31 回路コネクタ、32 短絡コネクタ、33 保持コネクタ、34,71,74 インターロック機構、35,72 支持部材、35a,35b 端部、35c シャフト、36,73 可動部材、36a 突出部、36b 貫通孔、37 係合部材、38 導体、39 保護カバー、41 第1保持部材、41a 第1差込口、42 第1接続端子、51 第2保持部材、51a,51b 面、52 電線、53 第2接続端子、61 第3保持部材、61a 第2差込口、62 第3接続端子、72a 溝、73a 突起、AX1,AX2 回転軸、C1,C2 コンデンサ、D1,D2,D3,D4,D5,D6 クランプダイオード、L1 リアクトル、MC1 接触器、P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10,P11,P12,P13 回路端子、Su1,Su2,Su3,Su4,Sv1,Sv2,Sv3,Sv4,Sw1,Sw2,Sw3,Sw4 スイッチング素子。