(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】認知機能評価方法、認知機能検査方法、システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20241011BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20241011BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2021158099
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】水口 寛彦
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500042(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020128(WO,A1)
【文献】岩瀬弘明ほか,Trail Making TestとMini-Mental State Exaqaminationとの関連-簡便な認知機能低下の識別方法の検討-,Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy,2013年,Vol. 3, No.1,1-4,https://www.jstage.jst.go.jp/article/hppt/3/1/3_1/_pdf,要旨
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
G16H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が複数の通過ポイントを所定の規則に基づいて順次に通過するように線で繋ぐTMTに基づく検査を実行するTMT実行ステップと、
前記TMT実行ステップにより得られる検査データから、被検者が前記通過ポイントを順次にたどることにより描かれる描画線が複数の前記通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで前記第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値データと、前記描画線が前記第1の通過ポイントを移動し始めてから前記第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出するデータ抽出ステップと、
前記データ抽出ステップにおいて抽出された前記第1の検査値データと前記第2の検査値データとに基づいて被検者の認知機能を評価する評価ステップと、
を含
み、
前記評価ステップが被検者の認知機能評価値としてMMSEスコアを推定する、
ことを特徴とする認知機能評価方法。
【請求項2】
前記データ抽出ステップは、前記TMT実行ステップにより得られる検査データから、前記第1の通過ポイントおよび前記第2の通過ポイントの位置に関する位置データと、前記第1の通過ポイントから前記第2の通過ポイントへと向かう移動方向に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出し、
前記評価ステップは、前記データ抽出ステップにおいて抽出された前記第1の検査値データ、前記第2の検査値データ、前記位置データ、および、前記移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載の認知機能評価方法。
【請求項3】
前記第1の検査値データまたは前記第2の検査値データと前記位置データまたは前記移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性図を生成する特性図生成ステップを更に含み、
前記評価ステップは、前記特性図生成ステップにおいて生成される前記特性図に基づいて認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項2に記載の認知機能評価方法。
【請求項4】
ディスプレイ上でTMT検査を可能にするとともに、その検査結果を評価して前記ディスプレイ上に表示可能な認知機能評価システムであって、
前記ディスプレイ上に表示されるとともに座標面上の複数の位置に通過ポイントが設定されて成るTMT検査画像を電子的に生成する検査画像生成回路と、
被検者が接触部を前記ディスプレイ上の前記TMT検査画像の表示面に接触させた状態で移動させて前記通過ポイントを所定の順序でたどることにより描かれる描画軌跡の経時的なデータを取得する検査データ取得回路と、
前記検査データ取得回路により取得されるデータを処理してその処理結果を前記ディスプレイ上に前記検査結果として表示できるようにするデータ処理回路と、
前記各回路の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記検査データ取得回路は、前記TMT検査画像の表示面に対する前記接触部の接触を検知するセンサからの検知信号に基づいて前記座標面上における前記接触部の位置に応じた座標データを取得する座標データ取得回路と、前記各座標データの取得時間に関連付けられる時間データをタイマにより取得する時間データ取得回路とを含み、
前記データ処理回路は、前記接触部における前記座標データと前記時間データとに基づいて、前記接触部が複数の前記通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで前記第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値と、前記接触部が前記第1の通過ポイントを移動し始めてから前記第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値とを、通過すべき全ての通過ポイントに関して演算する演算回路と、前記第1の検査値と前記第2の検査値とに基づいて被検者の認知機能を評価する評価回路と、前記評価回路による評価の結果を含む検査結果を出力する検査結果出力回路とを含
み、
前記評価回路が被検者の認知機能評価値としてMMSEスコアを推定する、
ことを特徴とする認知機能評価システム。
【請求項5】
前記検査データ取得回路は、前記第1の通過ポイントおよび前記第2の通過ポイントの位置に関する位置データと、前記第1の通過ポイントから前記第2の通過ポイントへと向かう移動方向に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して取得し、
前記評価回路は、前記第1の検査値、前記第2の検査値、前記位置データ、および、前記移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の認知機能評価システム。
【請求項6】
前記データ処理回路は、前記第1の検査値または前記第2の検査値と前記位置データまたは前記移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性画像を生成する特性画像生成回路と、前記特性画像生成回路により生成される前記特性画像を出力する画像出力回路とを更に含み、
前記評価回路は、前記特性画像生成回路により生成される前記特性画像に基づいて認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項
5に記載の認知機能評価システム。
【請求項7】
前記特性画像生成回路は、前記座標面上における位置または方向に基づいて前記位置データまたは前記移動方向データを複数のグループに分け、それらの各グループに対応する検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で前記特性画像を生成する識別画像生成回路を含むことを特徴とする請求項
6に記載の認知機能評価システム。
【請求項8】
前記演算回路は、前記各グループごとに前記検査値の合算値を演算し、前記識別画像生成回路は、各グループごとに前記合算値を表示する特性画像を生成することを特徴とする請求項
7に記載の認知機能評価システム。
【請求項9】
前記演算回路は、前記各グループごとに前記検査値の合算値を演算するとともに、全グループの合算値に対する各グループの前記合算値の割合を演算し、前記識別画像生成回路は、各グループごとに前記割合を表示する特性画像を生成することを特徴とする請求項
7に記載の認知機能評価システム。
【請求項10】
前記センサからの検知信号に基づいて前記接触部による前記通過ポイントの通過を検出する通過検出回路を更に有し、前記通過検出回路は、前記接触部が前記通過ポイントを通過したと判断するための第1の座標領域と、前記接触部が前記通過ポイントに停滞していると判断するための第2の座標領域とを各通過ポイントごとに設定するとともに、前記接触部による前記第1の座標領域内への侵入を前記接触部による前記通過ポイントの通過として検出し、前記第2の座標領域内での前記接触部の移動を前記接触部による前記通過ポイントにおける停滞として検出し、前記第2の座標領域内から前記第2の座標領域外への前記接触部の移動を前記接触部による前記通過ポイントからの移動として検出し、前記演算回路は、前記通過検出回路からの前記停滞および前記移動を示す信号に基づいて前記第1の検査値および前記第2の検査値を演算することを特徴とする請求項
4から
9のいずれか一項に記載の認知機能評価システム。
【請求項11】
前記通過検出回路は、前記第1の座標領域および前記第2の座標領域の範囲を可変設定するための設定回路を含むことを特徴とする請求項
10に記載の認知機能評価システム。
【請求項12】
前記制御回路は、前記ディスプレイ上に表示されてTMT検査の検査形態および前記検査結果の表示形態を選択できるようにするモード選択メニューからの入力信号に基づいて前記各回路の動作を制御することを特徴とする請求項
4から
11のいずれか一項に記載の認知機能評価システム。
【請求項13】
ディスプレイ上でTMT検査を可能にするとともに、その検査結果を評価して前記ディスプレイ上に表示できるようにするコンピュータプログラムであって、
座標面上の複数の位置に通過ポイントが設定されて成るTMT検査画像を電子的に生成して前記ディスプレイ上に表示させる検査画像生成表示ステップと、
被検者が接触部を前記ディスプレイ上の前記TMT検査画像の表示面に接触させた状態で移動させて前記通過ポイントを所定の順序でたどることにより描かれる描画軌跡の経時的なデータを取得する検査データ取得ステップと、
前記検査データ取得ステップにより取得されるデータを処理してその処理結果を前記ディスプレイ上に前記検査結果として表示するデータ処理表示ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記検査データ取得ステップは、前記TMT検査画像の表示面に対する前記接触部の接触を検知するセンサからの検知信号に基づいて前記座標面上における前記接触部の位置に応じた座標データを取得する座標データ取得ステップと、前記各座標データの取得時間に関連付けられる時間データをタイマにより取得する時間データ取得ステップとを含み、
前記データ処理表示ステップは、前記接触部における前記座標データと前記時間データとに基づいて、前記接触部が複数の前記通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで前記第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値と、前記接触部が前記第1の通過ポイントを移動し始めてから前記第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値とを、通過すべき全ての通過ポイントに関して演算する演算ステップと、前記第1の検査値と前記第2の検査値とに基づいて被検者の認知機能を評価する評価ステップと、前記評価ステップによる評価の結果を含む検査結果を出力して前記ディスプレイ上に表示する検査結果出力表示ステップとを含
み、
前記評価ステップが被検者の認知機能評価値としてMMSEスコアを推定する、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記検査データ取得ステップは、前記第1の通過ポイントおよび前記第2の通過ポイントの位置に関する位置データと、前記第1の通過ポイントから前記第2の通過ポイントへと向かう移動方向に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して取得し、
前記評価ステップは、前記第1の検査値、前記第2の検査値、前記位置データ、および、前記移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項
13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記データ処理表示ステップは、前記第1の検査値または前記第2の検査値と前記位置データまたは前記移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性画像を生成する特性画像生成ステップと、前記特性画像生成ステップにより生成される前記特性画像を出力して前記ディスプレイ上に表示する画像出力表示ステップとを更に含み、
前記評価ステップは、前記特性画像生成ステップにより生成される前記特性画像に基づいて認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項
14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記特性画像生成ステップは、前記座標面上における位置または方向に基づいて前記位置データまたは前記移動方向データを複数のグループに分け、それらの各グループに対応する検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で前記特性画像を生成する識別画像生成ステップを含むことを特徴とする請求項
15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記演算ステップは、前記各グループごとに前記検査値の合算値を演算し、前記識別画像生成ステップは、各グループごとに前記合算値を表示する特性画像を生成することを特徴とする請求項
16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記演算ステップは、前記各グループごとに前記検査値の合算値を演算するとともに、全グループの合算値に対する各グループの前記合算値の割合を演算し、前記識別画像生成ステップは、各グループごとに前記割合を表示する特性画像を生成することを特徴とする請求項
16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
前記センサからの検知信号に基づいて前記接触部による前記通過ポイントの通過を検出する通過検出ステップを更にコンピュータに実行させ、前記通過検出ステップは、前記接触部が前記通過ポイントを通過したと判断するための第1の座標領域と、前記接触部が前記通過ポイントに停滞していると判断するための第2の座標領域とを各通過ポイントごとに設定するとともに、前記接触部による前記第1の座標領域内への侵入を前記接触部による前記通過ポイントの通過として検出し、前記第2の座標領域内での前記接触部の移動を前記接触部による前記通過ポイントにおける停滞として検出し、前記第2の座標領域内から前記第2の座標領域外への前記接触部の移動を前記接触部による前記通過ポイントからの移動として検出し、前記演算ステップは、前記通過検出ステップからの前記停滞および前記移動を示す信号に基づいて前記第1の検査値および前記第2の検査値を演算することを特徴とする請求項
13から
18のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
前記通過検出ステップは、前記第1の座標領域および前記第2の座標領域の範囲を可変設定するための設定ステップを含むことを特徴とする請求項
19に記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記ディスプレイ上に表示されてTMT検査の検査形態および前記検査結果の表示形態を選択できるようにするモード選択メニューからの入力信号に基づいて、前記ディスプレイ上でTMT検査を可能にするとともに、その検査結果を前記ディスプレイ上に表示できるようにすることを特徴とする請求項
13から
20のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
ディスプレイ上でTMT検査を可能にするとともに、その検査結果を評価して前記ディスプレイ上に表示できるようにする認知機能評価方法であって、
座標面上の複数の位置に通過ポイントが設定されて成るTMT検査画像を電子的に生成して前記ディスプレイ上に表示させる検査画像生成表示ステップと、
被検者が接触部を前記ディスプレイ上の前記TMT検査画像の表示面に接触させた状態で移動させて前記通過ポイントを所定の順序でたどることにより描かれる描画軌跡の経時的なデータを取得する検査データ取得ステップと、
前記検査データ取得ステップにより取得されるデータを処理してその処理結果を前記ディスプレイ上に前記検査結果として表示するデータ処理表示ステップと、
を含み、
前記検査データ取得ステップは、前記TMT検査画像の表示面に対する前記接触部の接触を検知するセンサからの検知信号に基づいて前記座標面上における前記接触部の位置に応じた座標データを取得する座標データ取得ステップと、前記各座標データの取得時間に関連付けられる時間データをタイマにより取得する時間データ取得ステップとを含み、
前記データ処理表示ステップは、前記接触部における前記座標データと前記時間データとに基づいて、前記接触部が複数の前記通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで前記第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値と、前記接触部が前記第1の通過ポイントを移動し始めてから前記第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値とを、通過すべき全ての通過ポイントに関して演算する演算ステップと、前記第1の検査値と前記第2の検査値とに基づいて被検者の認知機能を評価する評価ステップと、前記評価ステップによる評価の結果を含む検査結果を出力して前記ディスプレイ上に表示する検査結果出力表示ステップとを含
み、
前記評価ステップが被検者の認知機能評価値としてMMSEスコアを推定する、
ことを特徴とする認知機能評価方法。
【請求項23】
前記検査データ取得ステップは、前記第1の通過ポイントおよび前記第2の通過ポイントの位置に関する位置データと、前記第1の通過ポイントから前記第2の通過ポイントへと向かう移動方向に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して取得し、
前記評価ステップは、前記第1の検査値、前記第2の検査値、前記位置データ、および、前記移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項
22に記載の認知機能評価方法。
【請求項24】
前記データ処理表示ステップは、前記第1の検査値または前記第2の検査値と前記位置データまたは前記移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性画像を生成する特性画像生成ステップと、前記特性画像生成ステップにより生成される前記特性画像を出力して前記ディスプレイ上に表示する画像出力表示ステップとを更に含み、
前記評価ステップは、前記特性画像生成ステップにより生成される前記特性画像に基づいて認知機能を評価する、
ことを特徴とする請求項
23に記載の認知機能評価方法。
【請求項25】
前記特性画像生成ステップは、前記座標面上における位置または方向に基づいて前記位置データまたは前記移動方向データを複数のグループに分け、それらの各グループに対応する検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で前記特性画像を生成する識別画像生成ステップを含むことを特徴とする請求項
24に記載の認知機能評価方法。
【請求項26】
前記演算ステップは、前記各グループごとに前記検査値の合算値を演算し、前記識別画像生成ステップは、各グループごとに前記合算値を表示する特性画像を生成することを特徴とする請求項
25に記載の認知機能評価方法。
【請求項27】
前記演算ステップは、前記各グループごとに前記検査値の合算値を演算するとともに、全グループの合算値に対する各グループの前記合算値の割合を演算し、前記識別画像生成ステップは、各グループごとに前記割合を表示する特性画像を生成することを特徴とする請求項
25に記載の認知機能評価方法。
【請求項28】
前記センサからの検知信号に基づいて前記接触部による前記通過ポイントの通過を検出する通過検出ステップを更にコンピュータに実行させ、前記通過検出ステップは、前記接触部が前記通過ポイントを通過したと判断するための第1の座標領域と、前記接触部が前記通過ポイントに停滞していると判断するための第2の座標領域とを各通過ポイントごとに設定するとともに、前記接触部による前記第1の座標領域内への侵入を前記接触部による前記通過ポイントの通過として検出し、前記第2の座標領域内での前記接触部の移動を前記接触部による前記通過ポイントにおける停滞として検出し、前記第2の座標領域内から前記第2の座標領域外への前記接触部の移動を前記接触部による前記通過ポイントからの移動として検出し、前記演算ステップは、前記通過検出ステップからの前記停滞および前記移動を示す信号に基づいて前記第1の検査値および前記第2の検査値を演算することを特徴とする請求項
22から
27のいずれか一項に記載の認知機能評価方法。
【請求項29】
前記通過検出ステップは、前記第1の座標領域および前記第2の座標領域の範囲を可変設定するための設定ステップを含むことを特徴とする請求項
28に記載の認知機能評価方法。
【請求項30】
前記ディスプレイ上に表示されてTMT検査の検査形態および前記検査結果の表示形態を選択できるようにするモード選択メニューからの入力信号に基づいて、前記ディスプレイ上でTMT検査を可能にするとともに、その検査結果を前記ディスプレイ上に表示できるようにすることを特徴とする請求項
22から
29のいずれか一項に記載の認知機能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TMT(Trail Making Test)検査に基づいて認知機能を評価できる認知機能評価方法、認知機能検査方法、システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会に伴い、認知症は重大な関心事となっている。通常、認知症は、年齢とともに症状が進行するものであり、発症時期を明確に把握することが困難な疾病であることが認識されている。また、実際に認知症を発症して症状が進行してしまうとその回復が難しい反面、普段の生活習慣などに注意することで発症を予防でき、あるいは、発症初期に適切な対処をすることで、その進行を遅らせることができることも知られている。そのため、今日では、認知症の早期発見、早期対応のために、認知症のリスクを早期に発見できる様々なスクリーニング検査が提案されて実施されている。
【0003】
そのようなスクリーニング検査の1つとして、トレイルメイキングテスト(Trail Making Test)(以下、本明細書中の全体にわたって、単にTMTと称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このTMTは、用紙にランダムに記載された数字やアルファベット(または、ひらがな、カタカナ)を順に線で結んでいく試験であり、幅広い注意、ワーキングメモリ、空間的探索、処理速度、保続、衝動性などを総合的に測定できる。
【0004】
具体的に、TMT検査には、TMT-A検査、TMT-B検査およびTMT-J検査があり、TMT-A検査では、1から25までの数字が所定の規則に基づいてランダムに配置された用紙が用いられ、筆記具により1から25まで順番通りに線で繋いでいき、25に到達した時点で検査終了とし、終了までに要した時間を測定する。一方、TMT-B検査では、1~13の13個の数字と、A~Lの12個のアルファベットまたはこれに相当するひらがな(あ、い、う・・・;い、ろ、は・・・等)もしくはカタカナとが所定のルールに基づいてランダムに配置された用紙が用いられ、筆記具により数字とアルファベット(ひらがな又はカタカナ)とを順番通りに交互に線で結んでいき、同様に、検査終了までに要した時間を測定する。また、TMT-J検査では、TMT-A検査およびTMT-B検査とは数字およびアルファベット等の配置形態が異なる幾つかのパターンが用意されており、それらに基づいて同様の検査が行なわれる。
【0005】
そして、このようなTMT検査では、それらの検査に要した時間(TMTの開始から終了までに至る所要時間;以下、遂行時間という)が早ければ早いほど、処理速度が速く、注意力・集中力が持続したという評価がなされる。また、TMTでは、必ず検査前にそれに対応する練習を経てから実際の検査が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このようなTMTには、ミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination)(以下、本明細書中の全体にわたって、単にMMSEと称する)などの既知の他の認知機能テストとの間に有意な相関があることが分かってきている。そのため、例えば、TMTとMMSEとの相関においては、従来、TMTの遂行時間に基づいてMMSEスコア(MMSEの検査結果として得られる得点)を推定する試みもなされている。このように、TMTよりも一般に長い時間を要するMMSEのスコアをTMT検査結果から推定することにより、認知試験に要する時間を減らすことができる。
【0008】
しかしながら、TMTの遂行時間に基づくMMSEスコアの推定は、その推定精度が高いとは言い難い。例えばステップワイズ分析(例えば、k分割交差検証、R2乗値による交差検証を用いた重回帰分析を適用)により相関係数(例えば、R2乗K分割の値)を調べても、TMTの検査を何度も重ねてその検査回数を増やさなければ、高い正の相関が得られないことが分かってきている。すなわち、TMTの遂行時間に基づいてMMSEスコアを推定しようとする試みは、推定に必要なTMT実施回数が多く、認知機能の推定評価値を短時間で高精度に得ることが難しい。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、TMTとMMSEとの相関性が高い高精度な認知機能評価を短時間で行なうことができ、MMSEスコアの推定精度を向上させることもできる認知機能評価方法、認知機能検査方法、システムおよびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の認知機能評価方法は、
被検者が複数の通過ポイントを所定の規則に基づいて順次に通過するように線で繋ぐTMTに基づく検査を実行するTMT実行ステップと、
前記TMT実行ステップにより得られる検査データから、被検者が前記通過ポイントを順次にたどることにより描かれる描画線が複数の前記通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで前記第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値データと、前記描画線が前記第1の通過ポイントを移動し始めてから前記第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出するデータ抽出ステップと、
前記データ抽出ステップにおいて抽出された前記第1の検査値データと前記第2の検査値データとに基づいて被検者の認知機能を評価する評価ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明者は、実施すべきTMT回数が多く推定精度が高いとは言い難い従来行なわれていたTMTの遂行時間に基づくMMSEスコアの推定を見直し、遂行時間以外のどのようなパラメータがTMTとMMSEとの相関度合いを高めるのかにつき、試行錯誤を重ねた。具体的には、ステップワイズ分析(k分割交差検証、R2乗値による交差検証を用いた重回帰分析を適用)において様々なパラメータを変数として選択して相関係数(R2乗K分割の値)を調べた。その結果、TMTとMMSEとの相関が高い4つのパラメータを突き止めるに至った。すなわち、認知機能を評価するためのパラメータとして、TMTにおける「滞留時間」、「移動時間」、「位置」、「方向」を選択すると、TMTとMMSEとの相関性が高い高精度な認知機能評価を短時間で行なうことができ、MMSEスコアの推定精度を向上できるという知見を得た。ここで、「滞留時間」とは、被検者が複数の通過ポイントを所定の規則に基づいて順次に通過するように線で繋ぐTMTに基づく検査において、被検者が通過ポイントを順次にたどることにより描かれる描画線が複数の通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで第1の通過ポイントに停滞している時間のことである。また、「移動時間」とは、前記描画線が第1の通過ポイントを移動し始めてから第2の通過ポイントに到達するまでに要する時間のことである。また、「位置」とは、各通過ポイントの位置のことであり、「方向」とは、第1の通過ポイントから第2の通過ポイントへと向かう移動方向のことである。
【0012】
実際に、前述のステップワイズ分析において、「滞留時間」、「移動時間」、「位置」、「方向」を認知機能評価パラメータとして段階的に加味しながら、R2乗K分割の値である相関係数を調べていくと、加味するパラメータを徐々に増やすにつれて、TMTとMMSEとの相関度合いが上がっていくという実証結果を得た。具体的には、ステップワイズ分析において、「滞留時間」および「移動時間」のみを認知機能評価パラメータとして加味し、「位置」および「方向」を加味しない場合には、TMT実施回数を増やすにつれて、相関係数(R2乗K分割の値)が大きくなり、また、従来の遂行時間に基づくMMSEスコアの推定に必要なTMT実施回数よりも少ない実施回数で高い相関度合いを得ることができた。これに加えて更に「位置」および「方向」を認知機能評価パラメータとして加味して、「滞留時間」、「移動時間」、「位置」、「方向」の4つの認知機能評価パラメータに基づきステップワイズ分析を行なうと、「位置」および「方向」を加味しない場合よりも少ないTMT実施回数でより高い相関度合い(0.5を超える高い相関係数値)を得た。
【0013】
したがって、本発明における上記構成の認知機能評価方法では、TMTに基づく検査を実行するTMT実行ステップにより得られる検査データから、「滞留時間」に関する第1の検査値データと、「移動時間」に関する第2の検査値データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出し、抽出された第1の検査値データと第2の検査値データとに基づいて被検者の認知機能を評価するようにしている。これにより、TMTとMMSEとの相関性が高まり、MMSEスコアの推定に必要なTMT実施回数を減らして、高精度な認知機能評価を短時間で行なうことができるようになる。また、第1および第2の検査値データに加えて、通過ポイントの「位置」に関する位置データと、通過ポイント間の「移動方向」に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出し、抽出された第1の検査値データ、第2の検査値データ、位置データ、および、移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価すれば、TMTとMMSEとの相関性が更に高い高精度な認知機能評価をより短時間で行なうことができるようになる。このような認知機能評価は、認知症を判別する初期段階のスクリーニングとして有効となり、認知症の検出の助けとなることは勿論のこと、例えば車の運転における判断力の判定にも寄与でき、また、脳トレ的なゲームに応用できるなど、その適用範囲が広範にわたる。
【0014】
本発明の上記構成において、認知機能評価方法は、第1の検査値データまたは第2の検査値データと位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性図を生成する特性図生成ステップを更に含み、該生成ステップにおいて生成される特性図に基づいて認知機能を評価してもよい。これによれば、生成される特性図が検査値と位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示するようになっているため、通過ポイントのそれぞれの位置ごとに、または、通過ポイント間のそれぞれの移動方向ごとに、滞留時間および移動時間がどのように変化しているかなどを視覚的に一見して捉えることができ、したがって、例えば医師による細かい認知機能評価を可能ならしめることもでき、認知機能評価のための手助けとなる有用な表示形態を提供できるようになる。
【0015】
また、本発明は、このような認知機能評価方法を適用する認知機能評価システムも提供する。すなわち、本発明は、ディスプレイ上でTMT検査を可能にするとともに、その検査結果を評価して前記ディスプレイ上に表示可能な認知機能評価システムであって、
前記ディスプレイ上に表示されるとともに座標面上の複数の位置に通過ポイントが設定されて成るTMT検査画像を電子的に生成する検査画像生成回路と、
被検者が接触部を前記ディスプレイ上の前記TMT検査画像の表示面に接触させた状態で移動させて前記通過ポイントを所定の順序でたどることにより描かれる描画軌跡の経時的なデータを取得する検査データ取得回路と、
前記検査データ取得回路により取得されるデータを処理してその処理結果を前記ディスプレイ上に前記検査結果として表示できるようにするデータ処理回路と、
前記各回路の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記検査データ取得回路は、前記TMT検査画像の表示面に対する前記接触部の接触を検知するセンサからの検知信号に基づいて前記座標面上における前記接触部の位置に応じた座標データを取得する座標データ取得回路と、前記各座標データの取得時間に関連付けられる時間データをタイマにより取得する時間データ取得回路とを含み、
前記データ処理回路は、前記接触部における前記座標データと前記時間データとに基づいて、前記接触部が複数の前記通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで前記第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値と、前記接触部が前記第1の通過ポイントを移動し始めてから前記第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値とを、通過すべき全ての通過ポイントに関して演算する演算回路と、前記第1の検査値と前記第2の検査値とに基づいて被検者の認知機能を評価する評価回路と、前記評価回路による評価の結果を含む検査結果を出力する検査結果出力回路とを含む、
ことを特徴とする。
【0016】
このような認知機能評価システムにおいても、前述した認知機能評価方法と同様、「滞留時間」に関する第1の検査値と「移動時間」に関する第2の検査値とに基づいて被検者の認知機能を評価するようになっているため、TMTとMMSEとの相関性が高まり、MMSEスコアの推定に必要なTMT実施回数を減らして、高精度な認知機能評価を短時間で行なうことができるようになる。また、この場合も、第1および第2の検査値に加えて、通過ポイントの「位置」に関する位置データと、通過ポイント間の「移動方向」に関する移動方向データとを取得し、第1の検査値データ、第2の検査値データ、位置データ、および、移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価すれば、TMTとMMSEとの相関性が更に高い高精度な認知機能評価をより短時間で行なうことができるようになる。
【0017】
また、上記構成の認知機能評価システムにおいても、第1の検査値または第2の検査値と位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性画像(前述した認知機能評価方法の特性図に相当)を特性画像生成回路により生成し、この特性画像に基づいて評価回路が認知機能を評価することが好ましい。これによれば、生成される特性画像が検査値と位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示するようになっているため、通過ポイントのそれぞれの位置ごとに、または、通過ポイント間のそれぞれの移動方向ごとに、滞留時間および移動時間がどのように変化しているかなどを視覚的に一見して捉えることができ、したがって、例えば医師による細かい認知機能評価を可能ならしめることもでき、認知機能評価のための手助けとなる有用な表示形態を提供できるようになる。
【0018】
また、このような認知機能評価システムにおいては、以下のような動作も可能となる。すなわち、例えばディスプレイ上に表示されるモード選択メニューからTMT検査の検査形態を選択して入力すると、制御回路による制御下で、検査画像生成回路がその選択された検査形態に応じたTMT検査画像(例えば、TMT-A検査用の画像、TMT-B検査用の画像、または、TMT-J検査用の画像など)を生成し、それがディスプレイ上に表示される。そして、被検者が接触部をこの表示されたTMT検査画像の表示面に接触させた状態で移動させて通過ポイントを所定の順序でたどると、それにより描かれる描画軌跡の経時的なデータが検査データ取得回路により取得される。検査データ取得回路により取得されるデータはデータ処理回路によって処理され、その処理結果は、被検者の認知機能の評価も含めて、例えば前記モード選択メニューから検査結果の表示形態を選択して入力することにより、制御回路による制御の下、その選択された表示形態でデータ処理回路によりディスプレイ上に検査結果として例えば動的および/静的に表示される。このように、本発明の認知機能評価システムによれば、検査実行から検査結果取得(検査結果表示)までに至る一連の過程を自動化できるため、検査に要する時間を検査官がストップウォッチ等で計測する必要がなく、また、その計測値を含む得られた検査データを手作業で集計して解析する必要もない。そのため、検査実行から検査結果取得(検査結果表示)までに至る一連の過程を迅速かつ容易に行なうことができる。
【0019】
また、このことに加え、本発明の認知機能評価システムでは、検査データ取得回路が、TMT検査画像の表示面に対する接触部の接触を検知するセンサからの検知信号に基づいて座標面上における接触部の位置に応じた座標データを取得する座標データ取得回路と、各座標データの取得時間に関連付けられる時間データをタイマにより取得する時間データ取得回路とを含むとともに、データ処理回路が、接触部における座標データと時間データとに基づいて「滞留時間」および「移動時間」に関する第1および第2の検査値を演算する演算回路と、第1の検査値と第2の検査値とに基づいて被検者の認知機能を評価する評価回路と、評価回路による評価の結果を含む検査結果を出力する検査結果出力回路とを含む。すなわち、本発明の認知機能評価システムは、接触検知センサによる電気的な検知信号に基づいて座標面上における接触部の位置の経時的変化を時系列座標データとして取得でき、接触検知センサからの検知信号に基づいて接触部の停滞および移動に伴う経過時間をタイマにより時間データとして取得できるとともに、それらのデータに基づいて第1および第2の検査値、すなわち、接触部の滞留時間および移動時間を演算して、被検者の認知機能を自動的に評価できるようになる。したがって、ストップウォッチ等での手作業による計測と被検者による描画とに伴う計測値および描画軌跡だけでは得られない検査過程における様々な隠れた情報をも確実に捉えてそれらを医師等による被検者の認知機能評価に役立たせることが可能となる。また、このような電気的処理を伴う自動検査形態によれば、人的計測誤差を排除して検査条件を画一化できるため、検査ごとに検査結果が変動するといった事態を防止でき、検査結果の信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、このような自動化された認知機能評価システムによれば、検査官無しで被検者自身が一人で検査を行なって結果をその場で確認できるようになる。
【0021】
なお、上記構成において、「接触部」は、TMT検査画像の表示面に接触させた状態で移動させて描画軌跡を描くことができるものであれば何でもよく、被検者により操作されるスタイラスペンなどの電子的な入力デバイスを含むほか、被検者自身の手の指も含む広い概念である。また、上記構成において、「センサ」は、TMT検査画像の表示面に対する接触部の接触位置を検出できれば、その検出原理がどのようなものであってもよく、また、接触部側に設けられてもよく、あるいは、表示面側に設けられていても構わない。また、制御回路によりその動作が制御される前述の各種の回路は、物理的に個別に設けられてもよいが、これらの回路の少なくとも一部又は全部を統合する機能部(または装置)が構成されて(例えば、電子的に1つにパッケージングされて)もよく、要は、これらのそれぞれの回路の機能が確保されてさえいれば、どのような形態で回路が存在していても構わない。
【0022】
なお、上記構成の認知機能評価システムは、座標データおよび時間データを含む検査データと特性画像生成回路により生成される特性画像とを記憶するメモリを更に有することが好ましい。これによれば、メモリにデータを蓄積し、必要に応じて必要なデータを適時に読み出すことができる。また、例えば、その蓄積された履歴データ同士を比較することにより症状の経過を評価したり、あるいは、メモリに蓄積されたデータに基づいて評価の最終的な認定を行なったりすることも可能になる。ここで、「検査データ」とは、検査データ取得回路が取得し得る未処理の全てのデータを意味する。
【0023】
また、上記構成において、特性画像生成回路は、座標面上における位置または方向に基づいて位置データまたは移動方向データを複数のグループに分け、それらの各グループに対応する検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で特性画像を生成する識別画像生成回路を含むことが好ましい。
ここで、「視覚的に識別可能な表示形態」とは、例えば色、線種、模様等の違いによって各グループに対応するデータ(検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるようにする表示の形態である。また、グループ分けは、検査官や被検者を含むシステムユーザが例えば前述したモード選択メニュー等から選択でき、その選択に伴うモード選択メニューからの入力信号に基づいて制御回路が特性画像生成回路を制御して識別表示画像が生成されるようになる。
【0024】
このような識別表示機能によれば、例えば、座標面を上下左右の4つの領域に分け、すなわち、座標面を第1象限、第2象限、第3象限、および、第4象限に分けて、それぞれの象限に対応するデータ(検査値)同士を、別個のグラフ(例えば棒グラフや円グラフ)で表示する、同じグラフにおいて4色で色分けする、あるいは、座標原点からそれぞれ放射状に延びるとともに座標原点を中心に互いに等しい角度間隔を隔てる複数(例えば8本)の境界直線を設定し、これらの境界直線によって画定される複数(例えば8個)の領域を座標面内で規定するとともに、これらの領域にそれぞれ対応するデータ(検査値)同士を領域数に対応する数の色(例えば8色)で色分けするなどして識別表示することにより、また、360°の方向を幾つかの方向にグループ分けし、各グループに対応するデータ(検査値)同士を、別個のグラフ(例えば棒グラフや円グラフ)で表示する、同じグラフにおいて4色で色分けするなどして識別表示することにより、その表示形態に応じた各検査値に固有の傾向を一見して把握できる。例えば、被検者の利き手が左手または右手であるかどうかに依存する検査結果の傾向や、脳の損傷部位等に起因する検査結果の傾向、例えば一方側の眼の視力低下や局所的または全体的な身体機能低下に伴う検査結果の傾向などを視覚的に一見して明確に把握でき、医師等による被検者の認知機能評価を容易ならしめることも可能となる。
【0025】
また、上記構成において、演算回路は、各グループごとに検査値の合算値を演算し、識別画像生成回路は、各グループごとに合算値を表示する特性画像を生成してもよい。あるいは、演算回路は、各グループごとに検査値の合算値を演算するとともに、全グループの合算値に対する各グループの合算値の割合を演算し、識別画像生成回路は、各グループごとに割合を表示する特性画像を生成してもよい。これによれば、各グループに固有の傾向を一見して把握できるとともに、全グループに対する各グループの傾向度合いも把握でき、認知機能の容易な評価に寄与し得る。
【0026】
また、上記構成の認知機能評価システムは、センサからの検知信号に基づいて接触部による通過ポイントの通過を検出する通過検出回路を更に有し、通過検出回路は、接触部が通過ポイントを通過したと判断するための第1の座標領域と、接触部が通過ポイントに停滞していると判断するための第2の座標領域とを各通過ポイントごとに設定するとともに、接触部による第1の座標領域内への侵入を接触部による前記通過ポイントの通過として検出し、第2の座標領域内での接触部の移動を接触部による通過ポイントにおける停滞として検出し、第2の座標領域内から第2の座標領域外への接触部の移動を接触部による通過ポイントからの移動として検出し、演算回路は、通過検出回路からの停滞および移動を示す信号に基づいて第1の検査値および第2の検査値を演算してもよい。
このような構成によれば、通過検出回路は、被検者が第1の通過ポイントにおいて接触部を第1の座標領域内に侵入させた後に第2の座標領域内で幾分移動させる動作をしながら次の第2の通過ポイントを探している状態(接触部の揺らぎ状態)を接触部が第1の通過ポイントに停滞していると認識できる一方で、接触部が第2の座標領域内から第2の座標領域外へ移動することで接触部が第2の通過ポイントへ向けて第1の通過ポイントを移動したと認識できる。すなわち、このように停滞状態と移動状態との境界を明確に規定して、接触部が第1の通過ポイントから移動したか否かが不明瞭な曖昧な状態を排除するようにすれば、「停滞」および「移動」の自動判定を確実に行なえ、「滞留時間」および「移動時間」を正確に演算できるようになる。
【0027】
また、上記構成において、通過検出回路は、第1の座標領域および第2の座標領域の範囲を可変設定するための設定回路を含むことが好ましい。これによれば、設定回路により、接触部が通過ポイントを通過したか否か、通過ポイントに停滞しているか否か、および、通過ポイントから移動したか否かの判断に関して許容範囲を設定することができる。この場合、通過、停滞、および、移動の判断に自由裁量を持たせることができる一方で、可変設定範囲を座標で規定することにより自由裁量に一定の制約を課すこともでき、自由裁量に伴う検査結果の変動を最小限に抑えつつ、状況に合わせた自由度のある検査が可能となる。
【0028】
また、本発明は、被検者が複数の通過ポイントを所定の規則に基づいて順次に通過するように線で繋ぐTMTに基づく検査を実行するTMT実行ステップと、
前記TMT実行ステップにより得られる検査データから、被検者が前記通過ポイントを順次にたどることにより描かれる描画線が複数の前記通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで前記第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値データと、前記描画線が前記第1の通過ポイントを移動し始めてから前記第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出するデータ抽出ステップと、
前記データ抽出ステップにおいて抽出された前記第1の検査値データと前記第2の検査値データとを処理してその処理結果を検査結果として表示するデータ処理表示ステップと、
を含むことを特徴とする認知機能検査方法を提供する。
このような認知機能検査方法は、検査値データを処理してその処理結果を検査結果として表示するため、認知機能に関する医師の適切な判定に寄与し得る。
さらに、本発明は、前述の認知機能評価方法およびシステムに加えて、認知機能の自動評価に適した方法およびコンピュータプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、TMTの実行により得られる検査データから、少なくとも、「滞留時間」に関する第1の検査値と、「移動時間」に関する第2の検査値とを、通過すべき全ての通過ポイントに関して求め、これらの検査値に基づいて被検者の認知機能を評価するようにしているため、TMTとMMSEとの相関性が高い高精度な認知機能評価を短時間で行なうことができ、MMSEスコアの推定精度を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る認知機能評価方法の概念的な流れを示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る認知機能評価システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2の認知機能評価システムを用いてTMT検査を行なって検査結果を表示するプロセスの流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図4】(a)はディスプレイ上に表示されるTMT-A検査用のTMT検査画像の一例を示し、(b)はディスプレイ上に表示されるTMT-B検査用のTMT検査画像の一例を示す。
【
図5】ディスプレイ上に表示される表示設定画面の一例を示す。
【
図6】(a)は、
図5の表示設定画面で縦バージョンの方向選択がなされた際のTMT検査画像の一例を示し、(b)は、
図5の表示設定画面で横バージョンの方向選択がなされた際のTMT検査画像の一例を示す。
【
図7】(a)は、
図5の表示設定画面でパターンAの選択がなされた際のTMT検査画像の一例を示し、(b)は、
図5の表示設定画面でパターンBの選択がなされた際のTMT検査画像の一例を示し、(c)は、
図5の表示設定画面でパターンCの選択がなされた際のTMT検査画像の一例を示し、(d)は、
図5の表示設定画面でパターンDの選択がなされた際のTMT検査画像の一例を示す。
【
図8】被検者がTMT検査画像の表示面上で描く描画軌跡の表示線を1段階から5段階まで徐々に太くする表示形態において、(a)は、
図5の表示設定画面で表示線の太さが1段階目に設定された際のTMT検査画像上の描画軌跡を示し、(b)は、
図5の表示設定画面で表示線の太さが2段階目に設定された際のTMT検査画像上の描画軌跡を示し、(c)は、
図5の表示設定画面で表示線の太さが3段階目に設定された際のTMT検査画像上の描画軌跡を示し、(d)は、
図5の表示設定画面で表示線の太さが4段階目に設定された際のTMT検査画像上の描画軌跡を示し、(e)は、
図5の表示設定画面で表示線の太さが5段階目に設定された際のTMT検査画像上の描画軌跡を示す。
【
図9】(a)は、接触部が通過ポイントに接触した(通過ポイントを通過した)際に通過ポイントの色が変化する設定を
図5の表示設定画面で行なった際のTMT検査画像上の描画軌跡を示し、(b)は、接触部が通過ポイントに接触した(通過ポイントを通過した)際に通過ポイントの色が変化しない設定を
図5の表示設定画面で行なった際のTMT検査画像上の描画軌跡を示す。
【
図10】(a)は、被検者の描画軌跡を視覚的に表示しない設定が
図5の表示設定画面でなされた際のTMT検査画像を示し、(b)は、被検者の描画軌跡を最新の2つの通過ポイント間(描画中の現時点で最後に通過した通過ポイントとその直ぐ前に通過した通過ポイントとの間)でのみ視覚的に表示する設定が
図5の表示設定画面でなされた際のTMT検査画像を示し、(c)は、被検者の描画軌跡を全ての通過ポイント間で視覚的に表示する設定が
図5の表示設定画面でなされた際のTMT検査画像を示す。
【
図11】(a)は、各通過ポイントに設定される基準領域、第1の座標領域、および、第2の座標領域を示す図、(b)は、第1の通過ポイントにおいて接触部によりたどられる停滞軌跡、および、第1の通過ポイントと第2の通過ポイントとの間で接触部によりたどられる移動軌跡の一例を示す図である。
【
図12】(a)は、上下左右の4つの領域(象限)に分けられたTMT検査画像の座標面を示す図、(b)は、(a)の座標面上における4つの方向示す図である。
【
図13】第1の検査値、第2の検査値、位置データおよび移動方向データを表形態で表示する処理画像の一例を示す図である。
【
図14】(a)は、第1の検査値である滞留時間と通過ポイントの位置とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図、(b)は、第1の検査値である滞留時間と通過ポイント間の移動方向とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図である。
【
図15】(a)は、第2の検査値である移動時間と通過ポイントの位置とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図、(b)は、第2の検査値である移動時間と通過ポイント間の移動方向とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図である。
【
図16】(a)は、第1の検査値である滞留時間と通過ポイントの位置とを全ての通過ポイントに関して象限別に互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図、(b)は、第1の検査値である滞留時間と通過ポイント間の移動方向とを全ての通過ポイントに関して象限別に互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図である。
【
図17】(a)は、第2の検査値である移動時間と通過ポイントの位置とを全ての通過ポイントに関して象限別に互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図、(b)は、第2の検査値である移動時間と通過ポイント間の移動方向とを全ての通過ポイントに関して象限別に互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図である。
【
図18】滞留時間に関する第1の検査値と通過ポイントの位置とを互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図であり、(a)は、滞留時間の合算値を各象限ごとに棒グラフで識別表示した図、(b)は、滞留時間の合算値を各象限に関して円グラフで色分け又は模様分け表示した図、(c)は、滞留時間の合算値を各象限ごとに棒グラフで識別表示した図、(d)は、滞留時間の合算値を各象限に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示した図である。
【
図19】滞留時間に関する第1の検査値と通過ポイントの位置とを互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図であり、(a)は、滞留時間の割合(%)を各象限ごとに棒グラフで識別表示した図、(b)は、滞留時間の割合を各象限に関して円グラフで色分け又は模様分け表示した図、(c)は、滞留時間の割合を各象限ごとに棒グラフで識別表示した図、(d)は、滞留時間の割合を各象限に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示した図である。
【
図20】滞留時間に関する第1の検査値と通過ポイント間の移動方向とを互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図であり、(a)は、滞留時間の合算値を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示した図、(b)は、滞留時間の合算値を各移動方向に関して円グラフで色分け又は模様分け表示した図、(c)は、滞留時間の合算値を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示した図、(d)は、滞留時間の合算値を各移動方向に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示した図である。
【
図21】滞留時間に関する第1の検査値と通過ポイント間の移動方向とを互いに関連付けて表示した特性画像の一例を示す図であり、(a)は、滞留時間の割合(%)を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示した図、(b)は、滞留時間の割合を各移動方向に関して円グラフで色分け又は模様分け表示した図、(c)は、滞留時間の前記割合を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示した図、(d)は、滞留時間の前記割合を各移動方向に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示した図である。
【
図22】本発明の一実施の形態に係るTMT検査結果表示システムとしての端末が通信手段を介してサーバに接続された状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1には、本発明に係る認知機能評価方法の概念的な流れが示されている。図示のように、本発明の認知機能評価方法では、まず最初に、被検者が複数の通過ポイントを所定の規則に基づいて順次に通過するように線で繋ぐ周知のTMTに基づく検査が実行される(TMT実行ステップS1)。このTMTに基づく検査では、検査データとして、少なくとも、被検者が通過ポイントを順次にたどることにより描かれる描画線が各通過ポイントに到達する時刻、各通過ポイントから移動し始める時刻などが測定され、また、通過ポイント間での移動方向、通過ポイントの位置なども記録される。そして、このTMTに基づく検査が終了したら(ステップS2においてYESの場合)、今度は、それにより得られる検査データから、被検者が通過ポイントを順次にたどることにより描かれる描画線が複数の通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントに到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントへ移動し始めるまで第1の通過ポイントに停滞している滞留時間に関する第1の検査値データと、描画線が第1の通過ポイントを移動し始めてから第2の通過ポイントに到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値データとが、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出(取得)される(データ抽出ステップS3)。この場合、検査データから、第1の通過ポイントおよび第2の通過ポイントの位置に関する位置データと、第1の通過ポイントから第2の通過ポイントへと向かう移動方向に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して更に抽出してもよい。
【0032】
このようにして、検査値データを抽出したら、抽出された第1の検査値データと第2の検査値データとに基づいて(更には、位置データおよび/または移動方向データにも基づいて)、被検者の認知機能を評価する(評価ステップS5)。具体的には、そのような認知機能評価では、例えば、各通過ポイントにおける滞留時間とそれぞれの通過ポイント間の移動時間とに関する各測定値(演算値)に対してそれぞれ対応するカットオフ値(閾値)を設定し、カットオフ値と測定値とを比較することによって被検者の認知機能を評価することが考えられる。その場合、例えば、被検者を健常者、MCI(軽度認知障害)、認知症患者の3つに分類するべく、これらのそれぞれに関してカットオフ値を設定するようにしてもよい。あるいは、第1の検査値データ、第2の検査値データ、位置データおよび移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価する場合には、例えば、
図12に示されるように座標面上の複数の位置に通過ポイントが設定されて成るTMT検査画像に関連付けられた後述する
図13に示されるように、通過ポイントの位置(象限位置)および通過ポイント間の移動方向に依存して各通過ポイントにおける滞留時間とそれぞれの通過ポイント間の移動時間とを一覧化した測定データ(演算データ)を取得し、各通過ポイントに対応する滞留時間および移動時間に対して設定されたカットオフ値と測定データとを比較することによって被検者を例えば健常者、MCI(軽度認知障害)、認知症患者の3つに分類して評価してもよい。この場合、各象限ごとに測定値の合計値を演算し、その演算結果と合計値に対応するカットオフ値とを比較するようにしてもよい。このように、第1の検査値データと第2の検査値データとに基づいて(更には、位置データおよび/または移動方向データにも基づいて)、被検者の認知機能を評価すると、前述した発明者らの実証結果からも明らかなように、TMTとMMSEとの相関性が高まり、MMSEスコアの推定に必要なTMT実施回数を減らして、高精度な認知機能評価を短時間で行なうことができるようになる。
【0033】
また、このような評価においては、第1の検査値データまたは第2の検査値データと位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性図が用いられてもよい。そのような場合には、データ抽出ステップS3で抽出されるデータに基づいて特性図が生成され(特性図生成ステップS4)、評価ステップS5では、特性図生成ステップS4において生成された特性図に基づいて認知機能が評価される。特性図としては、
図14~
図21に示される後述する特性図(後述する自動化システムでは特性画像)を挙げることができる。具体的には、そのような特性図を用いた認知機能評価では、被検者の特性図を健常者の特性図(例えば平均的な特性図)と重ね合わせて比較することによって認知機能が評価されてもよい。
【0034】
また、評価ステップS5では、データ抽出ステップS3で抽出されるデータに基づいて被検者の認知機能評価値としてMMSEスコアが推定されてもよい。具体的には、そのようなMMSEスコアの推定は、N次多項式を成す重み付け関数を用いて計算によって算出されてもよい。すなわち、例えば、後述する
図13に示されるような一覧化した測定データ(演算データ)が取得される場合には、全体の検査時間、各通過ポイントにおける滞留時間(検索時間(search time);第1の検査値データ)、それぞれの通過ポイント間の移動時間(線引時間(drawing line time);第2の検査値データ)、通過ポイントの位置(象限位置;位置データ)、および、通過ポイント間の移動方向(線引方向;移動方向データ)を指標(パラメータ)とし、これらの各指標に重み付けをして加算することにより、以下の式にしたがってMMSEスコアを推定値として算出してもよい。
MMSEスコア=
α1×全検査時間(1~25)
+β1×SearchTime(2)+β2×SearchTime(3)+・・・+β24×SearchTime(25)
+γ1×DrawingTime(2)+γ2×DrawingTime(3)+・・・+γ24×DrawingTime(25)
+Δ1×象限(2)+Δ2×象限(3)+・・・+Δ24×象限(25)
+Ε1×線引方向(2)+Ε2×線引方向(3)+・・・+Ε24×線引方向(25)
ここで、式中、括弧内の数字は、通過ポイントの番号(target circle number)であり、α、β、γ、Δ、Eは係数(乗数)である。
なお、このようして全パラメータを加算してもよいが、次元削減によってパラメータの数を少なくして計算してもよい。
【0035】
以上のような認知機能評価方法は、医療分野に限らず様々な産業分野において医師等を含む評価当事者、さらには被検者自身による認知機能評価を支援する方法でもあり、また、認知状態を検出する方法でもあり、紙面上で行なわれる通常のTMTに基づき手作業等によって実施されてもよいが、そのような実施は、検査データの取得に要する時間を医師や検査担当者等の検査官がストップウォッチ等で計測しなければならず、あるいは、検査画像等の記録を必要とすることから、非常に煩雑であり、困難を極める。特に前述した第1乃至第4の検査値データの取得を手作業等で行なうことは面倒であり、また、その取得されたデータを集計して解析することもかなりの労力を要することになる。
【0036】
そこで、以下では、このような欠点を解消するべく、ディスプレイ上でTMTに基づく検査を可能にするとともに、その検査結果を評価してディスプレイ上に表示可能な自動化された認知機能評価システム、コンピュータプログラムおよび方法について説明する。
【0037】
ディスプレイ上でTMT検査を可能にするとともに、その検査結果をディスプレイ上に表示可能な認知機能評価システムは、本実施の形態では一例として端末として構成され、また、例えば
図22に示されるように、そのような端末1(認知機能評価システムS)は、通信手段(ネットワーク)100を介してサーバ102に接続される使用形態(これについては後述する)も考えられるが、どのような使用形態がとられても構わない。なお、端末1は、本実施の形態では、タブレット型の薄型コンピュータとして構成されるが、パーソナルコンピュータやスマートフォン等であっても構わない。
【0038】
また、本実施の形態において、端末1は、それ自体がディスプレイを備えることによりそれ単体でTMT検査およびその検査結果(評価結果)表示を行なえるようになっているが、別体のディスプレイとの協働によりTMT検査およびその検査結果表示を行なえるようにするシステムとして構成されてもよく、あるいは、そのようなTMT検査およびその検査結果表示をコンピュータによって行なえるようにするコンピュータプログラムまたはそのようなコンピュータプログラムが格納されたコンピュータプログラムプロダクトとして認知機能評価システムSが存在していても構わない。
【0039】
図2には、端末1の概念的構成がブロック図で示される。図示のように、認知機能評価システムSとしての端末1は、例えば液晶表示装置としてのディスプレイ18と、CPU10とを備える。CPU10は、ディスプレイ18上に表示されるとともに座標面上の複数の位置に通過ポイントP(
図4以降の図を参照して後述する)が設定されて成るTMT検査画像I(
図4以降の図を参照して後述する)を電子的に生成する検査画像生成回路25と、被検者が接触部80をTMT検査画像Iの表示面に接触させた状態で移動させて通過ポイントPを所定の順序でたどることにより描かれる描画軌跡の経時的なデータを取得する検査データ取得回路40と、検査データ取得回路40により取得されるデータを処理してその処理結果をディスプレイ18上に検査結果として表示できるようにするデータ処理回路50と、ディスプレイ18上に表示されてTMT検査の検査形態および検査結果の表示形態を選択できるようにするモード選択メニュー19からの入力信号に基づいて各回路25,40,50の動作を制御する制御回路30とを有する。なお、制御回路30は、本実施の形態ではディスプレイ18に設けられる表示回路17を制御することにより、ディスプレイ18上に各種の画像を表示させる。
【0040】
また、本実施の形態において、接触部80は、被検者により操作されるスタイラスペンなどの電子的な入力デバイスとして構成されるが、TMT検査画像Iの表示面に接触させた状態で移動させて描画軌跡を描くことができるものであれば何でもよく、例えば被検者自身の手の指であっても構わない。
【0041】
検査データ取得回路40は、TMT検査画像Iの表示面に対する接触部80の接触を検知するセンサ14からの検知信号に基づいて座標面上における接触部80の位置に応じた座標データを取得する座標データ取得回路42と、各座標データの取得時間に関連付けられる時間データをタイマ16により取得する時間データ取得回路44とを含む。また、データ処理回路50は、接触部80における座標データと時間データとに基づいて、接触部80が複数の通過ポイントPのうちの任意の1つの第1の通過ポイントP1に到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントP2へ移動し始めるまで第1の通過ポイントP1に停滞している滞留時間に関する第1の検査値V1と、接触部80が第1の通過ポイントP1を移動し始めてから第2の通過ポイントP2に到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値V2とを、通過すべき全ての通過ポイントPに関して演算する演算回路52と、第1の検査値V1と第2の検査値V2とに基づいて被検者の認知機能を評価する評価回路51と、評価回路51による評価の結果を含む検査結果を出力する検査結果出力回路53とを含む。
【0042】
また、本実施の形態において、検査データ取得回路40は、第1の通過ポイントP1および第2の通過ポイントP2の位置に関する位置データと、第1の通過ポイントP1から第2の通過ポイントP2へと向かう移動方向に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して取得することもでき、また、これに対応して、評価回路51は、第1の検査値V1、第2の検査値V2、位置データ、および、移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価することもできる。
【0043】
また、本実施の形態において、データ処理回路50は、第1の検査値V1または第2の検査値V2と位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性画像を生成する特性画像生成回路54と、特性画像生成回路54により生成される特性画像を含む処理画像を出力する画像出力回路58とを更に含み、また、これに対応して、評価回路51は、特性画像生成回路54により生成される特性画像に基づいて認知機能を評価することもできる。ここで、特性画像とは、被検者によるTMT検査の実施の結果を評価者が評価しやすいように視覚的に表わしたものであり、検査値V1,V2と位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示したものである。
【0044】
ここで、センサ14は、TMT検査画像Iの表示面に対する接触部80の接触を検出できれば、その検出原理がどのようなものであってもよい。また、センサ14は、本実施の形態ではディスプレイ18に設けられるが、接触部80側に設けられてもよい。
【0045】
また、本実施の形態において、特性画像生成回路54は、座標面上における位置または方向に基づいて位置データまたは移動方向データを複数のグループに分け、それらの各グループに対応する検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で前記特性画像を生成する識別画像生成回路56を含む。
【0046】
また、CPU10は、センサ14からの検知信号から座標データ取得回路42で取得された接触部80の座標に基づいて、接触部80による通過ポイントPの通過を検出する通過検出回路32と、検査データ取得回路40により取得される座標データおよび時間データを含む検査データと特性画像生成回路54により生成される特性画像とを少なくとも記憶する例えばRAMおよび/またはROMから成るメモリ20とを更に含む。この場合、通過検出回路32は、後述するように、接触部80が通過ポイントPを通過したと判断するための第1の座標領域F1と、接触部80が通過ポイントPに停滞していると判断するための第2の座標領域F2とを各通過ポイントPごとに設定して(
図11参照)、接触部80による通過ポイントPの通過、接触部80による通過ポイントPにおける停滞、および、接触部80による通過ポイントPからの移動を検出する。また、通過検出回路32は、第1の座標領域F1および第2の座標領域F2の範囲を可変設定するための設定回路34を有する。
【0047】
なお、制御回路30によりその動作が制御される前述の各種の回路は、
図2では、物理的に個別に設けられるように示されているが、これらの回路の少なくとも一部又は全部を統合する機能部(または装置)が構成されて(例えば、電子的に1つにパッケージングされて)もよく、要は、これらのそれぞれの回路の機能が確保されてさえいれば、どのような形態で回路が存在していても構わない。
【0048】
次に、
図3のフローチャートおよび
図4~
図21を参照しながら、本実施の形態に係る端末1(認知機能評価システムS)を用いてTMT検査を行なって検査結果を評価/表示するプロセスの流れについて説明する。
まず、被検者および医師等の検査官を含むシステムユーザ(以下、単にユーザという)は、端末1のディスプレイ18の例えばタッチパネル上で所定の入力を行なうことにより、ディスプレイ18上にモード選択メニュー19を表示することができる。例えば、モード選択メニュー19には、TMT-A検査、TMT-B検査等のユーザの選択メニューが表示される。この表示は、例えば、ディスプレイ18からの入力信号に基づいて制御回路30の制御下で表示回路17が行なう。そして、ユーザがこのモード選択メニュー19を通じてTMT検査の検査形態を選択すると(ステップS1)、その選択に応じたTMT検査画像Iがディスプレイ18上に表示される。具体的には、例えば、ユーザがモード選択メニュー19上でTMT-A検査を選択すると、モード選択メニュー19(ディスプレイ18)からの入力信号に基づいて検査画像生成回路25が座標面上の複数の位置に通過ポイントが設定されて成るTMT-A検査用のTMT検査画像Iを電子的に生成し、制御回路30の制御下、表示回路17によりディスプレイ18上に
図4の(a)に示されるようなTMT-A検査用のTMT検査画像Iが表示される(検査画像生成表示ステップS2)。特に本実施の形態では、
図4の(a)の上側に示されるTMT-A検査の導入画面が表示された後、
図4の(a)の下側に示されるTMT-A検査用のTMT検査画像Iが表示される。図示のように、このTMT-A検査用のTMT検査画像Iには、1から25までの丸数字が所定のルールに基づいて通過ポイントPとしてランダムに配置されており、被検者であるユーザは、検査の実行時には、接触部80をTMT検査画像Iの表示面に接触させた状態で移動させて1から25まで順番通りに線で繋いでいき、25に到達する検査終了まで、少なくとも、接触部80が各通過ポイントPに到達する時刻、各通過ポイントPから移動し始める時刻などがタイマ16により計測され、また、通過ポイントP間での移動方向、通過ポイントPの位置なども記録される。
【0049】
一方、ユーザがモード選択メニュー19上でTMT-B検査を選択すると、モード選択メニュー19(ディスプレイ18)からの入力信号に基づいて検査画像生成回路25が座標面上の複数の位置に通過ポイントが設定されて成るTMT-B検査用のTMT検査画像Iを電子的に生成し、制御回路30の制御下、表示回路17によりディスプレイ18上に
図4の(b)に示されるようなTMT-B検査用のTMT検査画像Iが表示される。この場合も、
図4の(b)の上側に示されるTMT-B検査の導入画面が表示された後、
図4の(b)の下側に示されるTMT-B検査用のTMT検査画像Iが表示される。図示のように、このTMT-B検査用のTMT検査画像Iには、1~13の13個の数字とこれに相当する12個のひらがな(あ、い、う・・・さ、し)とが所定のルールに基づいて通過ポイントPとしてランダムに配置されており、被検者であるユーザは、検査の実行時には、接触部80をTMT検査画像Iの表示面に接触させた状態で移動させて数字とひらがなとを順番通りに交互に線で結んでいき、13に到達する検査終了まで、少なくとも、接触部80が各通過ポイントPに到達する時刻、各通過ポイントPから移動し始める時刻などがタイマ16により計測され、また、通過ポイントP間での移動方向、通過ポイントPの位置なども記録される。
【0050】
なお、図示しないTMT-J検査用のTMT検査画像は、TMT-A検査用およびTMT-B検査用の検査画像Iとは数字およびアルファベット等の配置形態が異なる幾つかのパターンのものが存在し、ユーザがモード選択メニュー19上でTMT-J検査を選択すると、制御回路30によりランダムに選択される所定のパターンのTMT-J検査用のTMT検査画像がディスプレイ18上に表示され、ユーザはTMT-J検査を開始することができる。
【0051】
また、このようなTMT検査の開始に際して、ユーザは、端末1のディスプレイ18の例えばタッチパネル上で所定の入力を行なうことにより、
図5に示されるようなTMT検査の表示設定画面を表示させ、表示に関する各種の設定を行なうこともできる。具体的には、例えば、
図5の表示設定画面で縦バージョンの方向選択がなされると、制御回路30の制御下、表示回路17により
図6の(a)に示されるようにTMT検査画像Iがディスプレイ18上に縦方向で表示され、一方、
図5の表示設定画面で横バージョンの方向選択がなされると、
図6の(b)に示されるようにTMT検査画像Iが横方向で表示される。また、
図5の表示設定画面でパターンAの選択がなされると、制御回路30の制御下、検査画像生成回路25および表示回路17により
図7の(a)に示されるような規定のTMT検査画像Iがディスプレイ18上に表示され、
図5の表示設定画面でパターンBの選択がなされると、
図7の(b)に示されるようなパターンAに対して左右反転されたTMT検査画像Iがディスプレイ18上に表示され、
図5の表示設定画面でパターンCの選択がなされると、
図7の(c)に示されるようなパターンAに対して上下反転されたTMT検査画像Iがディスプレイ18上に表示され、
図5の表示設定画面でパターンDの選択がなされると、
図7の(d)に示されるようなパターンAに対して上下および左右が反転されたTMT検査画像Iがディスプレイ18上に表示される。なお、
図5の表示設定画面でランダムの選択がなされると、パターンA~Dの中から制御回路30によりランダムに決定されるパターンのTMT検査画像Iがディスプレイ18上に表示される。
【0052】
また、
図5の表示設定画面では、ユーザがTMT検査画像Iの表示面上で描く描画軌跡の表示線を例えば1段階から5段階まで徐々に太くする表示形態を任意に設定できるようになっている(例えばミリ単位で設定できてもよい)。例えば、
図5の表示設定画面で表示線の太さが1段階目に設定されると、制御回路30の制御下、表示回路17によりTMT検査画像I上に
図8の(a)に示されるような描画軌跡Tの表示線が表示され、
図5の表示設定画面で表示線の太さが2段階目に設定されると、TMT検査画像I上に
図8の(b)に示されるような描画軌跡Tの表示線が表示され、
図5の表示設定画面で表示線の太さが3段階目に設定されると、TMT検査画像I上に
図8の(c)に示されるような描画軌跡Tの表示線が表示され、
図5の表示設定画面で表示線の太さが4段階目に設定されると、TMT検査画像I上に
図8の(d)に示されるような描画軌跡Tの表示線が表示され、
図5の表示設定画面で表示線の太さが5段階目に設定されると、TMT検査画像I上に
図8の(e)に示されるような描画軌跡Tの表示線が表示される。
【0053】
また、
図5の表示設定画面では、接触部80が通過ポイントPに接触した(通過ポイントPを通過した)際に通過ポイントPの色を変化させるか否かを設定(タッチ時の色変更の設定)できるようになっている。具体的には、接触部80が通過ポイントPを通過(接触)した際に通過ポイントPの色が変化する設定を
図5の表示設定画面で行なうと、制御回路30の制御下、表示回路17により、
図9の(a)に示されるように、TMT検査画像I上で描画軌跡Tを描く接触部80により通過された通過ポイントPの色が変化される(図では、色変化された通過ポイントPとしての丸数字が黒く塗りつぶされている)。一方、接触部80が通過ポイントPを通過(接触)した際に通過ポイントPの色が変化しない設定を
図5の表示設定画面で行なうと、
図9の(b)に示されるように、TMT検査画像I上で描画軌跡Tを描く接触部80により通過された通過ポイントPの色は変化しない。
【0054】
また、
図5の表示設定画面では、被検者であるユーザによる描画軌跡の表示態様も設定できるようになっている。具体的には、描画軌跡の表示態様を「非表示」(ユーザの描画軌跡を視覚的に表示させない)に設定すると、制御回路30の制御下、表示回路17により、
図10の(a)に示されるように、ユーザが接触部80を移動させて描画軌跡を描いてもそれが表示線として表示されない(ただし、図示のように、接触部80が既に通過した通信ポイントPが色変化してもよい)。また、描画軌跡の表示態様を「2点間」に設定すると、
図10の(b)に示されるように、ユーザの描画軌跡Tが最新の2つの通過ポイントP間(描画中の現時点で最後に通過した通過ポイントPとその直ぐ前に通過した通過ポイントPとの間)でのみ表示線として視覚的に表示される。例えば、この図では、数字5の通過ポイントPに接触部80が到達した時点で、数字3の通過ポイントPと数字4の通過パターンPとの間を結ぶ表示線L2が消え、数字3の通過ポイントPと数字4の通過パターンPとの間を結ぶ表示線L1のみが残る(ただし、図示のように、接触部80が既に通過した通信ポイントPが色変化してもよい)。また、描画軌跡の表示態様を「全表示」(ユーザの描画軌跡の全てを視覚的に表示さる)に設定すると、
図10の(c)に示されるように、ユーザが接触部80を移動させることによって経時的に描かれる描画軌跡の全体が表示線Lとして表示される(例えば、図示のように、接触部80が既に通過した通信ポイントPも色変化する)。なお、
図5の表示設定画面では、初期設定(デフォルト)に戻すこともできるようになっている。また、TMT検査の開始に先立って予め用意される練習画面によりユーザがTMT検査の練習を行なえるようになっていてもよい。
【0055】
以上のようなTMT検査が被検者であるユーザにより開始される(ステップS3)と、検査データ取得回路40は、ユーザが接触部80をTMT検査画像Iの表示面に接触させた状態で移動させて通過ポイントPを所定の順序でたどることにより描かれる描画軌跡の経時的なデータを取得する(検査データ取得ステップS4)。具体的には、この検査データ取得ステップS4では、TMT検査画像Iの表示面に対する接触部80の接触を検知するセンサ14からの検知信号に基づいて座標データ取得回路42が座標面上における接触部80の位置に応じた座標データを取得する(座標データ取得ステップ)とともに、各座標データの取得時間に関連付けられる時間データを時間データ取得回路44がタイマ16により取得する(時間データ取得ステップ)。この場合、座標データは、通過ポイントPの位置に関する位置データ、および、通過ポイントP間の移動方向(第1の通過ポイントP1から第2の通過ポイントP2へと向かう移動方向)に関する移動方向データとしても取得され、これらは、通過すべき全ての通過ポイントに関して取得される。
【0056】
ここで、TMT検査中における接触部80による通過ポイントPの通過に関しては、前述したように、通過検出回路32が、センサ14からの検知信号から座標データ取得回路42で取得された接触部80の座標に基づいて、接触部80による通過ポイントPの通過を検出する(通過検出ステップ)。この場合、通過検出回路32は、接触部80が通過ポイントPを通過したと判断するための第1の座標領域F1と、接触部80が通過ポイントPに停滞していると判断するための第2の座標領域F2とを各通過ポイントPごとに設定して、接触部80による通過ポイントPの通過、接触部80による通過ポイントPにおける停滞、および、接触部80による通過ポイントPからの移動を検出する(そのようにして検出された通過、停滞および移動を示す信号は、通過検出回路32から制御回路30に出力される)。具体的には、例えば、
図11の(a)に示されるように、各通過ポイントPには、対応する数字、ひらがな、アルファベットが内側に表示された所定の直径を有する円形の境界線b0によって画定される円形の基準領域F0と、基準領域F0と同心で基準領域F0の直径の例えば1.5倍の直径を有する円形の境界線b1によって内側に画定される円形の第1の座標領域F1([円形の基準領域F0]+[境界線b0と境界線b1とによって画定される環状領域f1])と、基準領域F0と同心で基準領域F0の直径の例えば2倍の直径を有する円形の境界線b2によって内側に画定される円形の第2の座標領域F2([円形の基準領域F0]+[境界線b0と境界線b1とによって画定される環状領域f1]+[境界線b1と境界線b2とによって画定される環状領域f2])とが設定される。そして、通過検出回路32は、
図11の(b)に示されるように、TMT検査画像I上にある複数の通過ポイントPのうちの任意の1つの第1の通過ポイント(例えば、対応する数字Nを伴う)P1と、次に通過すべき第2の通過ポイント(例えば、対応する数字N+1を伴う)P2とを例にとって説明すると、接触部80が第1の通過ポイントP1の第1の座標領域F1内へ侵入した時点(境界線b1上の点Aに到達した時)を接触部80による第1の通過ポイントP1の通過として検出し、第1の通過ポイントP1における第2の座標領域F2内での接触部80の移動(例えば
図11の(b)に破線T1,T2で示される描画軌跡をたどる移動)を接触部80による第1の通過ポイントP1における停滞として検出するとともに、第1の通過ポイントP1における第2の座標領域F2内から第2の座標領域F2外への接触部80の移動(境界線b2を越える移動)を接触部80による第1の通過ポイントP1からの移動として検出し、また、接触部80が第2の通過ポイントP2の第1の座標領域F1内へ侵入した時点(第2の通過ポイントP2の境界線b1上の点Bに到達した時)を接触部80による第2の通過ポイントP2の通過として検出する。したがって、
図11の(b)に実線T3で示される描画軌跡が第1の通過ポイントP1と第2の通過ポイントP2との間での接触部80のポイント間移動軌跡となり、このポイント間移動軌跡をたどる期間が第1の通過ポイントP1と第2の通過ポイントP2との間での接触部80の移動時間となり、この移動時間を後述するように演算回路52が演算することになるが、特に、本実施の形態では、境界線b1を越えて境界線b2へと至るポイント間移動軌跡に連なる描画軌跡の期間(
図11の(b)に太い破線T2で示される描画軌跡の期間)も移動期間と見なして演算回路52が移動時間(第2の検査値)を演算するようにしている。そのため、これに対応して、本実施形態では、
図11の(b)に細い破線T1で示される描画軌跡が第1の通過ポイントP1における接触部80の停滞軌跡と見なされ、この停滞軌跡をたどる期間を第1の通過ポイントP1における接触部80の滞留時間(第1の検査値)として演算回路52が後述するように演算することになる。しかしながら、座標領域の設定の仕方、並びに、滞留時間および移動時間の求め方はこれらに限定されない(例えば、
図11の(b)に実線で示される描画軌跡の期間のみを第1の通過ポイントP1と第2の通過ポイントP2との間での接触部80の移動時間と見なしてもよい)。例えば、設定回路34により、第1の座標領域F1および第2の座標領域F2の範囲を自在に設定する(設定ステップ)ことができ、それにより、通過、停滞、および、移動の判断に自由裁量を持たせることができる(状況に合わせた自由度のある検査が可能となる)。
【0057】
以上のようにして各種の検査データを取得しつつユーザによるTMT検査が終了する(ステップS5)と(あるいは、TMT検査と並行して)、テータ処理回路50は、検査データ取得回路40により取得されるデータを処理してその処理結果をディスプレイ18上に検査結果として表示できるようにする(データ処理表示ステップ)。具体的には、データ処理回路50の演算回路52が、接触部80における座標データおよび時間データと通過検出回路32からの前述した停滞および移動を示す信号とに基づいて、接触部80が複数の通過ポイントのうちの任意の1つの第1の通過ポイントP1に到達してから次に通過すべき第2の通過ポイントP2へ移動し始めるまで第1の通過ポイントP1に停滞している滞留時間に関する第1の検査値と、接触部80が第1の通過ポイントP1を移動し始めてから第2の通過ポイントP2に到達するまでに要する移動時間に関する第2の検査値とを、通過すべき全ての通過ポイントPに関して演算する(演算ステップS6)とともに、データ処理回路50の特性画像生成回路54が、演算回路52により演算された第1の検査値または第2の検査値と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる位置データまたは移動方向データとを互いに関連付けて表示する特性画像を生成する(特性画像生成ステップS7)。
【0058】
演算回路52により演算される第1の検査値および第2の検査値と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる位置データおよび移動方向データは、例えば
図13に示されるような表の形態を成す処理画像として画像出力回路58を介してディスプレイ18上に表示されてもよい。ここで、
図13の表は、例えば
図12に示されるように座標面上の複数の位置に通過ポイントPが設定されて成るTMT検査画像Iにおけるデータとして示されている。
図13中、“Target Circle Num”は、次に通過すべき目標の通過ポイントPの数字を示し、例えば、“Target Circle Num”が「4」である場合、「3」の数字を伴う通過ポイントPから「4」の数字を伴う通過ポイントPへの移動であることを示している。また、
図13中、“Circle IN Time”は、対応する通過ポイントPに到達した時間(“Target Circle Num”に対応する通過ポイントPの第1の座標領域F1内に侵入した時間)を示し、また、“Circle OUT Time”は、対応する通過ポイントPから移動し始めた時間(境界線b1を越えて境界線b2へと至るポイント間移動軌跡に連なる描画軌跡の期間(
図11の(b)に太い破線T2で示される描画軌跡の期間)も移動期間と見なす本実施の形態では、“Target Circle Num”に対応する通過ポイントPの境界線b1を移動に伴って越えた時間)を示す。また、
図13中、“Search Time”は、対応する通過ポイントPにおける滞留時間を示し、“Drawing Line Time”は、対応する通過ポイントPへの移動時間、すなわち、例えば“Target Circle Num”が「4」である場合、「3」の数字を伴う通過ポイントPから「4」の数字を伴う通過ポイントPへの移動に伴う時間を示す。また、
図13中、“象限(位置)”は、対応する通過ポイントPの座標面上の位置、具体的には、
図12の(a)に示されるように座標面を上下左右の4つの領域、すなわち、第1象限、第2象限、第3象限、および、第4象限に分けた場合には、対応する通過ポイントが何れの象限に位置されているのかを象限の数字で示している(例えば、
図12において「2」の数字を伴う通過ポイントPは第3象限に位置されているため、
図13の表中、“Target Circle Num”が「2」の場合、その“象限(位置)”が数字「3」で示されている)。また、
図13中、“線引(方向)”は、対応する通過ポイントPへの移動方向、すなわち、例えば“Target Circle Num”が「4」である場合、「3」の数字を伴う通過ポイントPから「4」の数字を伴う通過ポイントPへの移動方向を示す。特に、ここでは、
図12の(b)に矢印で示されるように、移動方向を4つの方向、すなわち、「右上」へ向かう方向、「左上」へ向かう方向、「左下」へ向かう方向、「右下」へ向かう方向に分け、「右上」へ向かう方向を「1」の数字で、「左上」へ向かう方向を「2」の数字で、「左下」へ向かう方向を「3」の数字で、「右下」へ向かう方向を「4」の数字で示しており、したがって、
図13の表中、例えば“Target Circle Num”が「3」の場合、移動方向は、「2」の数字を伴う通過ポイントPから「3」の数字を伴う通過ポイントPへと向かう「右下」の方向であるから、その“線引(方向)”が数字「4」で示され、また、“Target Circle Num”が「4」の場合、移動方向は、「3」の数字を伴う通過ポイントPから「4」の数字を伴う通過ポイントPへと向かう「右上」の方向であるから、その“線引(方向)”が数字「1」で示されている。
【0059】
図14~
図21には、特性画像生成回路54によって生成される特性画像の一例が示されている。
図14の(a)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第1の検査値である滞留時間(次に通過すべき通過ポイントPを探している検索時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントPの位置とを全ての通過ポイント(数字1~25を伴う通過ポイント)に関して互いに関連付けて表示した画像であり、横軸が25個の各通過ポイントが伴う数字を示し、縦軸が滞留時間を示している。特に、この特性画像は、座標面上における位置に基づいて位置データを複数のグループ、すなわち、第1象限のグループ、第2象限のグループ、第3象限のグループ、および、第4象限のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値(滞留時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成される(識別画像生成ステップ)。ここでは、「視覚的に識別可能な表示形態」として、色又は模様の違いによって各グループに対応するデータ(第1の検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるように表示(色又は模様を伴うドットで表示)しているが、他の違いによって各グループに対応するデータ(検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるようにしてもよい。また、このようなグループ分けは、ユーザがモード選択メニュー19から選択でき、その選択に伴うモード選択メニューからの入力信号に基づいて制御回路80が特性画像生成回路54(識別画像生成回路56)を制御して識別表示画像が生成される。
【0060】
また、
図14の(b)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第1の検査値である滞留時間(次に通過すべき通過ポイントPを探している検索時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントP間の移動方向とを全ての通過ポイント(数字1~25を伴う通過ポイント)に関して互いに関連付けて表示した画像であり、横軸が25個の各通過ポイントが伴う数字を示し、縦軸が滞留時間を示している。特に、この特性画像は、座標面上における方向に基づいて移動方向データを複数のグループ、すなわち、「右上」へ向かう移動方向のグループ、「左上」へ向かう移動方向のグループ、「左下」へ向かう移動方向のグループ、「右下」へ向かう移動方向のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値(滞留時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成される(識別画像生成ステップ)。ここでも、「視覚的に識別可能な表示形態」として、色又は模様の違いによって各グループに対応するデータ(第1の検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるように表示(色又は模様を伴うドットで表示)しているが、他の違いによって各グループに対応するデータ(検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるようにしてもよい。
【0061】
図15の(a)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第2の検査値である移動時間(次に通過すべき通過ポイントPへ向けて線を引く線引時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントPの位置とを全ての通過ポイント(数字1~25を伴う通過ポイント)に関して互いに関連付けて表示した画像であり、横軸が25個の各通過ポイントが伴う数字を示し、縦軸が移動時間を示している。特に、この特性画像は、座標面上における位置に基づいて位置データを複数のグループ、すなわち、第1象限のグループ、第2象限のグループ、第3象限のグループ、および、第4象限のグループに分け、それらの各グループに対応する第2の検査値(移動時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成される(識別画像生成ステップ)。ここでも、「視覚的に識別可能な表示形態」として、色又は模様の違いによって各グループに対応するデータ(第1の検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるように表示(色又は模様を伴うドットで表示)しているが、他の違いによって各グループに対応するデータ(検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるようにしてもよい。
【0062】
また、
図15の(b)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第2の検査値である移動時間(次に通過すべき通過ポイントPへ向けて線を引く線引時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントP間の移動方向とを全ての通過ポイント(数字1~25を伴う通過ポイント)に関して互いに関連付けて表示した画像であり、横軸が25個の各通過ポイントが伴う数字を示し、縦軸が移動時間を示している。特に、この特性画像は、座標面上における方向に基づいて移動方向データを複数のグループ、すなわち、「右上」へ向かう移動方向のグループ、「左上」へ向かう移動方向のグループ、「左下」へ向かう移動方向のグループ、「右下」へ向かう移動方向のグループに分け、それらの各グループに対応する第2の検査値(移動時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成される(識別画像生成ステップ)。ここでも、「視覚的に識別可能な表示形態」として、色又は模様の違いによって各グループに対応するデータ(第1の検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるように表示(色又は模様を伴うドットで表示)しているが、他の違いによって各グループに対応するデータ(検査値)同士を互いに視覚的に一見して区別できるようにしてもよい。
【0063】
図16の(a)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第1の検査値である滞留時間(次に通過すべき通過ポイントPを探している検索時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントPの位置とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した画像(各通過ポイントPのデータがドットで示される)であり、横軸が座標面上の象限の位置を示し、縦軸が滞留時間を示している。すなわち、この特性画像は、座標面上における位置に基づいて位置データを複数のグループ、すなわち、第1象限のグループ、第2象限のグループ、第3象限のグループ、および、第4象限のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値(滞留時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成したものである。
【0064】
図16の(b)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第1の検査値である滞留時間(次に通過すべき通過ポイントPを探している検索時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントP間の移動方向とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した画像(各通過ポイントPのデータがドットで示される)であり、横軸が座標面上における移動方向を示し(「右上」へ向かう方向が「1」の数字で示され、「左上」へ向かう方向が「2」の数字で示され、「左下」へ向かう方向が「3」の数字で示され、「右下」へ向かう方向が「4」の数字で示されている)、縦軸が滞留時間を示している。すなわち、この特性画像は、座標面上における方向に基づいて移動方向データを複数のグループ、すなわち、「右上」へ向かう移動方向のグループ、「左上」へ向かう移動方向のグループ、「左下」へ向かう移動方向のグループ、「右下」へ向かう移動方向のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値(滞留時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成したものである。
【0065】
図17の(a)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第2の検査値である移動時間(次に通過すべき通過ポイントPへ向けて線を引く線引時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントPの位置とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した画像(各通過ポイントPのデータがドットで示される)であり、横軸が座標面上の象限の位置を示し、縦軸が移動時間を示している。すなわち、この特性画像は、座標面上における位置に基づいて位置データを複数のグループ、すなわち、第1象限のグループ、第2象限のグループ、第3象限のグループ、および、第4象限のグループに分け、それらの各グループに対応する第2の検査値(移動時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成したものである。
【0066】
図17の(b)に示される特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算された第2の検査値である移動時間(次に通過すべき通過ポイントPへ向けて線を引く線引時間:ミリ秒)と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントP間の移動方向とを全ての通過ポイントに関して互いに関連付けて表示した画像(各通過ポイントPのデータがドットで示される)であり、横軸が座標面上における移動方向を示し(「右上」へ向かう方向が「1」の数字で示され、「左上」へ向かう方向が「2」の数字で示され、「左下」へ向かう方向が「3」の数字で示され、「右下」へ向かう方向が「4」の数字で示されている)、縦軸が移動時間を示している。すなわち、この特性画像は、座標面上における方向に基づいて移動方向データを複数のグループ、すなわち、「右上」へ向かう移動方向のグループ、「左上」へ向かう移動方向のグループ、「左下」へ向かう移動方向のグループ、「右下」へ向かう移動方向のグループに分け、それらの各グループに対応する第2の検査値(移動時間)同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態の特性画像として識別画像生成回路56により生成したものである。
【0067】
図18に示される各特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算される滞留時間(検索時間:ミリ秒)に関する第1の検査値と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントの位置とを互いに関連付けて表示した画像であり、座標面上における位置に基づいて位置データを複数のグループ、すなわち、第1象限(右上“Upper Right”)のグループ、第2象限(左上“Upper Left”)のグループ、第3象限(左下“Lower Left”)のグループ、および、第4象限(右下“Lower Right”)のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で表わした識別画像である。具体的には、
図18に示される各特性画像は、演算回路52が各グループごとに各通過ポイントPにおける滞留時間の合算値を演算し、識別画像生成回路56が各グループごとに前記合算値を表示する識別画像として生成したものである。すなわち、
図18の(a)の特性画像は、滞留時間の合算値を各象限ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が滞留時間の合算値を示し、縦軸が各象限を示し、また、
図18の(b)の特性画像は、滞留時間の合算値を各象限に関して円グラフで色分け又は模様分け表示したものである。一方、
図18の(c)の特性画像は、滞留時間の合算値を各象限ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が各象限を示し、縦軸が滞留時間の合算値を示し、また、
図18の(d)の特性画像は、滞留時間の合算値を各象限に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示したものである。
【0068】
図19に示される各特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算される滞留時間(検索時間:ミリ秒)に関する第1の検査値と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイントの位置とを互いに関連付けて表示した画像であり、
図18の場合と同様に、座標面上における位置に基づいて位置データを複数のグループ、すなわち、第1象限(右上“Upper Right”)のグループ、第2象限(左上“Upper Left”)のグループ、第3象限(左下“Lower Left”)のグループ、および、第4象限(右下“Lower Right”)のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で表わした識別画像である。具体的には、
図19に示される各特性画像は、演算回路52が各グループごとに各通過ポイントPにおける滞留時間の合算値を演算するとともに全グループの合算値に対する各グループの前記合算値の割合を演算し、識別画像生成回路56が各グループごとに前記割合を表示する識別画像として生成したものである。すなわち、
図19の(a)の特性画像は、滞留時間の前記割合(%)を各象限ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が滞留時間の前記割合を示し、縦軸が各象限を示し、また、
図19の(b)の特性画像は、滞留時間の前記割合を各象限に関して円グラフで色分け又は模様分け表示したものである。一方、
図19の(c)の特性画像は、滞留時間の前記割合を各象限ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が各象限を示し、縦軸が滞留時間の前記割合を示し、また、
図19の(d)の特性画像は、滞留時間の前記割合を各象限に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示したものである。
【0069】
図20に示される各特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算される滞留時間(検索時間:ミリ秒)に関する第1の検査値と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイント間の移動方向(線引方向)とを互いに関連付けて表示した画像であり、座標面上における方向に基づいて移動方向データを複数のグループ、すなわち、「右上」(“Upper Right”)へ向かう移動方向のグループ、「左上」(“Upper Left”)へ向かう移動方向のグループ、「左下」(“Lower Left”)へ向かう移動方向のグループ、「右下」(“Lower Right”)へ向かう移動方向のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で表わした識別画像である。具体的には、
図20に示される各特性画像は、演算回路52が各グループごとに各通過ポイントPにおける滞留時間の合算値を演算し、識別画像生成回路56が各グループごとに前記合算値を表示する識別画像として生成したものである。すなわち、
図20の(a)の特性画像は、滞留時間の合算値を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が滞留時間の合算値を示し、縦軸が各移動方向を示し、また、
図20の(b)の特性画像は、滞留時間の合算値を各移動方向に関して円グラフで色分け又は模様分け表示したものである。一方、
図20の(c)の特性画像は、滞留時間の合算値を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が各移動方向を示し、縦軸が滞留時間の合算値を示し、また、
図20の(d)の特性画像は、滞留時間の合算値を各移動方向に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示したものである。
【0070】
図21に示される各特性画像は、
図13に示されるデータに関連して、演算回路52により演算される滞留時間(検索時間:ミリ秒)に関する第1の検査値と検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる通過ポイント間の移動方向(線引方向)とを互いに関連付けて表示した画像であり、
図20の場合と同様に、座標面上における方向に基づいて移動方向データを複数のグループ、すなわち、「右上」(“Upper Right”)へ向かう移動方向のグループ、「左上」(“Upper Left”)へ向かう移動方向のグループ、「左下」(“Lower Left”)へ向かう移動方向のグループ、「右下」(“Lower Right”)へ向かう移動方向のグループに分け、それらの各グループに対応する第1の検査値同士を互いに視覚的に識別可能な表示形態で表わした識別画像である。具体的には、
図21に示される各特性画像は、演算回路52が各グループごとに各通過ポイントPにおける滞留時間の合算値を演算するとともに全グループの合算値に対する各グループの前記合算値の割合を演算し、識別画像生成回路56が各グループごとに前記割合を表示する識別画像として生成したものである。すなわち、
図21の(a)の特性画像は、滞留時間の前記割合(%)を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が滞留時間の前記割合を示し、縦軸が各移動方向を示し、また、
図21の(b)の特性画像は、滞留時間の前記割合を各移動方向に関して円グラフで色分け又は模様分け表示したものである。一方、
図21の(c)の特性画像は、滞留時間の前記割合を各移動方向ごとに棒グラフで識別表示したものであり、横軸が各移動方向を示し、縦軸が滞留時間の前記割合を示し、また、
図21の(d)の特性画像は、滞留時間の前記割合を各移動方向に関して帯グラフで色分け又は模様分け表示したものである。
【0071】
このようにして演算回路52による演算によって得られる第1の検査値および第2の検査値、検査データ取得回路40により取得された座標データから得られる位置データおよび移動方向データ、並びに、特性画像生成回路54により生成される特性画像は、評価回路51による認知機能評価に利用される。すなわち、評価回路61は、第1の検査値および第2の検査値に基づいて、あるいは、第1の検査値、第2の検査値、位置データ、および、移動方向データに基づいて、あるいは、特性画像に基づいて、あるいは、これらの任意の組み合わせに基づいて、TMT検査を受けた被検者であるユーザの認知機能を評価する(評価ステップS8)。この場合、評価回路51による認知機能評価は、例えば、本実施の形態の冒頭で前述した手法によって行なわれる。また、評価回路51は、第1および第2の検査値、位置データ、および、移動方向データ、あるいは、これらの任意の組み合わせに基づいて、MMSEスコアを推定することもできる。その場合の推定も、例えば、本実施の形態の冒頭で前述した手法によって行なわれる。
【0072】
評価回路51による評価の結果を含む検査結果は、検査結果出力回路53によって出力されてディスプレイ18で表示される(検査結果出力表示ステップS9)。また、特性画像生成回路54により生成される特性画像は、画像出力回路58によって出力されてディスプレイ18で表示される(画像出力表示ステップ)。
【0073】
また、以上のような特性画像を含む処理画像、評価結果を含む検査結果、および、検査データ取得回路40により取得される座標データおよび時間データを含む検査データは、メモリ20に記憶される(データ記憶ステップS10)。このようにメモリ20に検査データ等を記憶できれば、データをメモリに蓄積し、必要に応じて必要なデータを適時に読み出すことができる。また、例えば、その蓄積された履歴データ同士を比較することにより症状の経過を評価したり、あるいは、メモリに蓄積されたデータに基づいて評価の最終的な認定を行なったりすることも可能になる。
【0074】
また、以上のような構成を成す端末1は、前述した
図22に示されるように、通信手段(ネットワーク)100を介してサーバ102に接続される使用形態をとることもできる。この場合、通信手段100は、端末1とサーバ102との間で情報のやり取りを行なうものであり、有線通信、無線通信のいずれであってもよい。そのような通信手段100としては、例えば、有線ケーブルを用いた回線、有線電話回線、携帯電話回線、WiFi回線などが挙げられる。
【0075】
また、このような使用形態において、端末1は、通信手段100を介してサーバ102との間でデータを送受信できるようにする通信回路12(
図2参照)も備える。これにより、端末1は、例えば、それ自体で得た検査データをサーバ102に送ってサーバ102側での認知機能評価等に供することができる一方で、サーバ102からの情報に基づいて各種機能の変更、増大を行なうこともできる(例えば、解析機能の更新が可能(タブレット(端末1)で解析プログラムのダウンロード可能)・・・より詳細な解析機能をサーバ102側に設け、サーバ102での解析結果をタブレットに送信)。また、サーバ102におけるデータベースには、被検者のユーザID、被検者の年齢・住所・性別等の個人データ、検査実施日、検査結果等が格納されてもよい(メイン機能)。また、どこの医療機関でもサーバ102にアクセス可能であることが好ましい。また、データベースは認知症に関するビッグデータとして活用できることが好ましい。
【0076】
以上、説明したように、本実施の形態の端末1(認知機能評価システムS)によれば、TMTに基づく検査の実行により得られる検査データから、「滞留時間」に関する第1の検査値データと、「移動時間」に関する第2の検査値データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出し、抽出された第1の検査値データと第2の検査値データとに基づいて被検者の認知機能を評価するようにしている。これにより、TMTとMMSEとの相関性が高まり、MMSEスコアの推定に必要なTMT実施回数を減らして、高精度な認知機能評価を短時間で行なうことができるようになる。また、第1および第2の検査値データに加えて、通過ポイントの「位置」に関する位置データと、通過ポイント間の「移動方向」に関する移動方向データとを、通過すべき全ての通過ポイントに関して抽出し、抽出された第1の検査値データ、第2の検査値データ、位置データ、および、移動方向データに基づいて被検者の認知機能を評価できるため、TMTとMMSEとの相関性が更に高い高精度な認知機能評価をより短時間で行なうことができるようになる。
【0077】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明では、前述した処理ステップ間に別の処理が更に加えられてもよく、また、ステップの順序が一部入れ替わっても構わない。また、前述の実施の形態では、TMT検査およびその評価等が端末により自動化されたが、全てが自動化されずに滞留時間等を利用して認知機能評価およびMMSEスコア推定を行なうあらゆる行為に本発明を適用できることは言うまでもない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 端末
14 センサ
16 タイマ
18 ディスプレイ
19 モード選択メニュー
20 メモリ
25 検査画像生成回路
30 制御回路
32 通過検出回路
34 設定回路
40 検査データ取得回路
42 座標データ取得回路
44 時間データ取得回路
50 データ処理回路
51 評価回路
52 演算回路
53 検査結果出力回路
54 特性画像生成回路
56 識別画像生成回路
58 画像出力回路
80 接触部
S 認知機能評価システム