(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】締結部材および締結部材の封止方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20241011BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20241011BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16J15/14 G
F16J15/10 C
F16L23/02 D
(21)【出願番号】P 2021183295
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 崇
(72)【発明者】
【氏名】水磨 裕之
(72)【発明者】
【氏名】橋川 雄樹
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-172085(JP,U)
【文献】特開2009-228849(JP,A)
【文献】特開平08-014455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136238(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16J 15/14
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部材に設けられる開口部の周囲に締結される締結部材において、
環状のフランジ部と、
前記フランジ部に設けられる環状をなすシール部材と、
前記シール部材に対して高圧空間側に隣接して前記フランジ部に設けられる環状をなす溝部と、
外部から前記溝部に
流動性を有するシール材を充填可能な入口通路と、
前記溝部に充填された前記シール材を外部に排出可能な出口通路と、
を備
え、
前記溝部は、前記フランジ部の径方向に沿う仕切板が配置される、
締結部材。
【請求項2】
前記入口通路は、一端部が前記仕切板により仕切られた前記溝部の一方側に連通し、前記出口通路は、一端部が前記仕切板により仕切られた前記溝部の他方側に連通する、
請求項1に記載の締結部材。
【請求項3】
前記シール部材および前記溝部は、前記フランジ部における前記被締結部材への取付面側に露出する、
請求項1
または請求項2に記載の締結部材。
【請求項4】
前記シール部材は、前記フランジ部の径方向に間隔を空けて設けられる第1シール部材および第2シール部材を有し、前記溝部は、前記第1シール部材と前記第2シール部材との間に設けられる、
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の締結部材。
【請求項5】
前記入口通路は、他端部にシール材供給装置が設けられ、前記出口通路は、他端部にシール材排出装置が設けられる、
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の締結部材。
【請求項6】
前記シール材供給装置および前記シール材排出装置は、開閉弁が設けられる、
請求項5に記載の締結部材。
【請求項7】
前記被締結部材は、既設フランジを有する既設配管であり、前記締結部材は、前記フランジ部が前記既設フランジに接触するようにボルト締結される連結配管である、
請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載の締結部材。
【請求項8】
被締結部材に設けられる開口部の周囲に環状のフランジ部を介して締結される締結部材の封止方法であって、
前記フランジ部に設けられた環状をなすシール部材が前記被締結部材に接触するように前記フランジ部を前記被締結部材に締結する工程と、
前記シール部材より高圧空間側に隣接して設けられる環状をなす
と共に前記フランジ部の径方向に沿う仕切板が配置された溝部に対して、前記仕切板により仕切られた前記溝部の一方側に連通する入口通路を通して外部から流動性を有するシール材を充填する工程と、
前記溝部に充填された前記シール材が
前記仕切板により仕切られた前記溝部の他方側に連通する出口通路から外部に排出されると前記シール材の充填を停止する工程と、
を有する締結部材の封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、締結部材および締結部材の封止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力施設では、放射線の管理が必要な管理区域と、管理を要さない一般区域とが隔壁により区画されている。隔壁は、配管が貫通し、配管は、例えば、開閉部材により封止される。この場合、配管は、既設配管に対して連結配管が連結され、連結配管に開閉部材が設けられる。既設配管と連結配管とは、フランジ部同士がシール部材を介して締結される。このような技術として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設配管に連結配管を連結するとき、連結配管のフランジ部にシール部材を装着し、シール部材を既設配管のフランジ部に密着させてシールする。シール部材は、樹脂製であることから経年劣化する。また、シール部材は、使用環境が放射線管理区域であるとき、放射線により劣化度合いが激しくなる。そのため、定期的にシール部材を交換する必要がある。ところが、高放射線環境下では、作業者が直接シール部材の交換作業を実施することは、被ばくの観点から好ましくない。そのため、シール部材の交換作業は、作業者が比較的線量の低い場所で、作業機器を遠隔操作することで行うことの検討が必要となる。作業機器の遠隔操作は、長時間を要することから、シール部材の交換作業が長期間にわたり、作業コストおよび被ばく量が増加してしまう。また、遠隔操作機器の開発に莫大なコストと時間を要するという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、シール部材の長寿命化を図る締結部材および締結部材の封止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の締結部材は、被締結部材に設けられる開口部の周囲に締結される締結部材において、環状のフランジ部と、前記フランジ部に設けられる環状をなすシール部材と、前記シール部材に対して高圧空間側に隣接して前記フランジ部に設けられる環状をなす溝部と、外部から前記溝部に粘性を有するシール材を充填可能な入口通路と、前記溝部に充填された前記シール材を外部に排出可能な出口通路と、を備える。
【0007】
また、本開示の締結部材の封止方法は、被締結部材に設けられる開口部の周囲に環状のフランジ部を介して締結される締結部材の封止方法であって、前記フランジ部に設けられた環状をなすシール部材が前記被締結部材に接触するように前記フランジ部を前記被締結部材に締結する工程と、前記シール部材より高圧空間側に隣接して設けられる環状をなす溝部に外部から入口通路を通して粘性を有するシール材を充填する工程と、前記溝部に充填された前記シール材が出口通路から外部に排出されると前記シール材の充填を停止する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の締結部材および締結部材の封止方法によれば、シール部材の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の締結部材としての連結配管と既設配管との締結状態を表す概略断面図である。
【
図2】
図2は、連結配管のフランジ部を表す一部切欠正面図(
図3のII矢視図)である。
【
図4】
図4は、連結配管のフランジ部を表す断面図((
図3のIV-IV断面図)である。
【
図6】
図6は、本実施形態の封止方法を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<連結配管の連結構造>
図1は、本実施形態の締結部材としての連結配管と既設配管との締結状態を表す概略断面図である。
【0012】
本実施形態において、
図1に示すように、原子力発電所などの原子力施設にて、放射線の管理が必要な管理区域内において高放射線環境下である区域(以下、高放射線区域)101Aと、高放射線区域101Aよりは低い高放射線環境下である区域(以下、低放射線区域)101Bとが隔壁(図示略)により区画される。
【0013】
既設配管(被締結部材)111は、軸方向の一端部が高放射線区域101Aに連通し、軸方向の他端部が低放射線区域101Bに連通可能である。既設配管111は、円筒形状をなし、配管本体112と、フランジ部(既設フランジ部)113とを有する。配管本体112は、軸方向における低放射線区域101B側の端部にフランジ部113が一体に設けられる。フランジ部113は、リング形状(環状)をなす。既設配管111は、フランジ部113側に開口部114が設けられる。
【0014】
連結配管(締結部材)11は、円筒形状をなし、配管本体12と、フランジ部13とを有する。配管本体12は、軸方向における高放射線区域101A側の端部にフランジ部13が一体に設けられる。フランジ部13は、リング形状(環状)をなす。連結配管11は、フランジ部13側に開口部14が設けられる。また、連結配管11は、図示しないが、内部に開閉装置が設けられる。開閉装置は、高放射線区域101Aと低放射線区域101Bとの境界(バウンダリ)として機能する。
【0015】
なお、既設配管111は、円筒形状としたが、この形状に限らず、角筒形状などであってもよい。また、連結配管11は、円筒形状としたが、円筒形状に限らず、角筒形状などであってもよい。但し、連結配管11のフランジ部13は、既設配管111のフランジ部113と同形状であることが好ましい。
【0016】
連結配管11は、既設配管111に設けられる開口部114の周囲に締結される締結部材として機能する。連結配管11は、フランジ部13が既設配管111のフランジ部113に密着した状態で、フランジ部13,113同士が複数の締結ボルト115および締結ナット116により締結される。
【0017】
<連結配管の構成>
図2は、連結配管のフランジ部を表す一部切欠正面図(
図3のII矢視図)、
図3は、
図2のIII-III断面図、
図4は、連結配管のフランジ部を表す断面図((
図3のIV-IV断面図)、
図5は、
図4のV-V断面図である。
【0018】
図1から
図5に示すように、連結配管11は、フランジ部13と、シール部材21と、溝部22と、入口通路23と、出口通路24とを備える。
【0019】
フランジ部13は、リング形状(環状)をなし、既設配管111のフランジ部113に密着する平面部が取付面13aとなる。取付面13aは、平面である。また、フランジ部13は、周方向に間隔を空けて複数の取付孔13bが形成される。取付孔13bは、連結配管11の締結時に、締結ボルト115が挿通される。
【0020】
シール部材21は、フランジ部13に設けられる。シール部材21は、環状をなす。シール部材21は、第1シール部材31と、第2シール部材32とを有する。第1シール部材31と第2シール部材32は、フランジ部13の径方向に間隔を空けて設けられる。第1シール部材31および第2シール部材32は、フランジ部13における取付面13a側に露出する。
【0021】
すなわち、フランジ部13は、取付面13aに第1環状溝33および第2環状溝34が形成される。第1環状溝33および第2環状溝34は、矩形断面形状をなし、周方向に連続する。第1環状溝33と第2環状溝34は、フランジ部13の径方向に間隔を空けて設けられる。第1シール部材31および第2シール部材32は、弾性を有するゴム部材であり、例えば、ニトリルゴム(NBR)を材料とするOリングである。但し、第1シール部材31および第2シール部材32は、このように構成に限定されない。第1シール部材31は、第1環状溝33に配置され、第2シール部材32は、第2環状溝34に配置される。
【0022】
溝部22は、環状をなしてフランジ部13に設けられる。溝部22は、第1シール部材31と第2シール部材32との間に設けられる。溝部22は、第1シール部材31に対して高圧空間である高放射線区域101A側に隣接して配置される。高放射線区域101Aは、低放射線区域101Bより高圧状態に維持される。溝部22は、矩形断面形状をなし、周方向に連続する環状溝である。溝部22は、フランジ部13の取付面13a側に開口して露出する。
【0023】
入口通路23および出口通路24は、フランジ部13に設けられる。入口通路23および出口通路24は、フランジ部13の径方向に沿って設けられる。入口通路23と出口通路24は、フランジ部13の径方向の内方側の端部が接近し、フランジ部13の径方向の外方側に行くほど離間する。入口通路23は、外部から溝部22に粘性を有するシール材25を充填可能である。出口通路24は、溝部22に充填されたシール材25を外部に排出可能である。
【0024】
詳細に説明すると、
図2および
図3に示すように、入口通路23は、径方向通路41と、軸方向通路42とを有する。出口通路24は、径方向通路43と、軸方向通路44とを有する。径方向通路41,43は、フランジ部13の径方向に沿って形成される。軸方向通路42,44は、フランジ部13の板圧方向に沿って形成される。入口通路23にて、径方向通路41は、一端部が軸方向通路42の一端部に連通し、軸方向通路42は、他端部が溝部22に連通する。出口通路24にて、径方向通路43は、一端部が軸方向通路44の一端部に連通し、軸方向通路44は、他端部が溝部22に連通する。
【0025】
図4および
図5に示すように、溝部22は、フランジ部13の径方向に沿う仕切板51が配置される。仕切板51は、溝部22の少なくとも一部を閉塞することで、溝部22に充填されたシール材25の流動を仕切板51とは反対側に促すことができる。入口通路23は、軸方向通路42の他端部が仕切板51により仕切られた溝部22の一方側に連通する。出口通路24は、軸方向通路44の他端部が仕切板51により仕切られた溝部22の他方側に連通する。すなわち、軸方向通路42の他端部と軸方向通路44の他端部とは、仕切板51を挟んで対向して配置される。そのため、入口通路23から溝部22に充填されたシール材25は、仕切板51により溝部22を周方向の一方側(
図4の反時計回り方向側)に流動し易くなり、欠損なく全周を充填できることになる。
【0026】
入口通路23は、他端部にシール材供給装置61が設けられる。出口通路24は、他端部にシール材排出装置62が設けられる。シール材供給装置61は、フランジ部13の外側に露出した端部にシール材供給ライン(図示略)が連結される。シール材排出装置62は、フランジ部13の外側に露出した端部にシール材回収ライン(図示略)が連結される。シール材供給装置61は、開閉弁63が設けられる。シール材排出装置62は、開閉弁64が設けられる。開閉弁63,64は、例えば、ボール弁である。
【0027】
なお、溝部22に配置される仕切板51と入口通路23および出口通路24の構成は、上述したものに限定されない。例えば、溝部22に複数の仕切板51を配置し、各仕切板51に仕切られた複数の分割溝部に対して入口通路23および出口通路24をそれぞれ設けてもよい。
【0028】
溝部に充填されるシール材25は、粘性を有し、且つ、流動性を有するシール材である。シール材25は、ゾルやジェルなどであって、例えば、シリコングリスが適用される。但し、シール材25は、この構成に限定されるものではない。
【0029】
<封止方法>
図6は、本実施形態の封止方法を表す説明図である。
【0030】
本実施形態の封止方法は、フランジ部13に設けられた環状をなすシール部材21が既設配管111のフランジ部113に接触するようにフランジ部13をフランジ部113に締結する工程と、シール部材21を構成する第1シール部材31より高圧空間側に隣接して設けられる環状をなす溝部22に外部から入口通路23を通して粘性を有するシール材25を充填する工程と、溝部22に充填されたシール材25が出口通路24から外部に排出されるとシール材25の充填を停止する工程とを有する。
【0031】
図1および
図3に示すように、連結配管11は、フランジ部13の第1環状溝33に第1シール部材31が装着されると共に、第2環状溝34に第2シール部材32が装着される。また、連結配管11は、入口通路23にシール材供給装置61が連結され、出口通路24にシール材排出装置62が連結される。そして、連結配管11は、溝部22と入口通路23と出口通路24にシール材25が充填されていない。
【0032】
作業者は、まず、連結配管11を既設配管111に連結する。すなわち、連結配管11のフランジ部13を既設配管111のフランジ部113に密着させ、締結ボルト115および締結ナット116によりフランジ部13,113同志を締結する。このとき、連結配管11は、フランジ部13に設けられたシール部材21(第1シール部材31および第2シール部材32)が既設配管111のフランジ部113に接触する。
【0033】
図6に示すように、作業者は、次に、シール材供給装置61の開閉弁63を開放すると共に、シール材排出装置62の開閉弁64を開放する。すると、シール材供給装置61からシール材25が入口通路23に供給され、入口通路23から連結配管11のフランジ部13に設けられた溝部22に供給される。このとき、シール材25は、溝部22における仕切板51に隣接した位置に供給されることから、仕切板51の一方面により移動方向が制限され、溝部22を
図6の反時計回り方向に移動する。このとき、溝部22の空気が出口通路24を通ってシール材排出装置62から外部に排出される。
【0034】
そして、シール材25が溝部22を
図6の反時計回り方向に移動し、仕切板の他方面に到達すると、移動方向が制限され、シール材25は、出口通路24を通ってシール材排出装置62から外部に排出される。
【0035】
シール材排出装置62からシール材25が排出するということは、溝部22にシール材25が充填されたということである。作業者は、シール材排出装置62からのシール材25の排出を確認すると、シール材供給装置61の開閉弁63を閉止し、溝部22へのシール材25の供給を停止する。また、作業者は、シール材排出装置62の開閉弁64を閉止し、溝部22からのシール材の排出を停止する。
【0036】
連結配管11は、既設配管111に連結された状態で、第1シール部材31および第2シール部材32が既設配管111のフランジ部113に接触する。また、連結配管11は、第1シール部材31と第2シール部材32との間に設けられた溝部22にシール材25が充填される。そのため、既設配管111と連結配管11は、フランジ部13,113同志に取付面で封止され、ここに境界(バウンダリ)が形成される。
【0037】
既設配管111と連結配管11は、この状態で、溝部22に充填されたシール材25が第1シール部材31を径方向の外側に押圧し、第2シール部材32を径方向の内側に押圧する。そのため、長期の使用によりシール部材21が劣化しても、シール性能の低下が抑制される。すなわち、溝部22に充填されたシール材25は、第1シール部材31の内径側(高圧側)および第2シール部材32の低圧側(外径側)を押圧している。すると、第1シール部材31および第2シール部材32は、表面が硬質になっても、第1シール部材31と各フランジ部13,113との密着面、第2シール部材32と各フランジ部13,113との密着面の密着性が確保される。
【0038】
シール部材21は、高圧側である高放射線区域101A側から第2シール部材32の外径側に対して圧力や放射線が作用して劣化する可能性がある。この場合であっても、シール材25は、第1シール部材31の内径側(高圧側)を押圧しており、第1シール部材31と各フランジ部13,113との密着面の密着性が確保される。
【0039】
また、溝部22に充填されたシール材25の劣化によるシール性能の低下が懸念される。そのため、溝部22に充填されたシール材25を定期的に交換することが好ましい。すなわち、上述した封止方法と同様に、外部から入口通路23を通して溝部22にシール材25を充填することで、シール材25の交換作業を行う。
【0040】
すなわち、すでに溝部22にシール材25が充填されている状態で、シール材供給装置61の開閉弁63を開放すると共に、シール材排出装置62の開閉弁64を開放する。すると、シール材供給装置61からシール材25が入口通路23に供給され、入口通路23から連結配管11のフランジ部13に設けられた溝部22に供給される。すると、溝部22に充填されていたシール材25が押され、出口通路24を通ってシール材排出装置62から外部に排出される。
【0041】
そして、シール材排出装置62から所定量のシール材25が排出されると、溝部22に充填されていた古いシール材25が排出され、新しいシール材25に置換されたということである。すなわち、所定量は、溝部22へのシール材25の充填量である。作業者は、シール材排出装置62からの所定量のシール材25の排出を確認すると、シール材供給装置61の開閉弁63を閉止し、溝部22へのシール材25の供給を停止する。また、作業者は、シール材排出装置62の開閉弁64を閉止し、溝部22からのシール材の排出を停止する。
【0042】
なお、溝部22の古いシール材25を新しいシール材25に交換するとき、新しいシール材に着色してもよい。シール材供給装置61から入口通路23を通して溝部22に着色した新しいシール材25を供給する。そして、この着色した新しいシール材25が出口通路24を通って排出されることで、古いシール材25の排出を確認することができる。
【0043】
溝部22に充填されていた古いシール材25を新しいシール材25に交換することで、既設配管111と連結配管11のフランジ部13,113同志に取付面に形成された境界(バウンダリ)が維持される。
【0044】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る締結部材は、環状のフランジ部13と、フランジ部13に設けられる環状をなすシール部材21と、シール部材21に対して高圧空間側に隣接してフランジ部13に設けられる環状をなす溝部22と、外部から溝部22に粘性を有するシール材25を充填可能な入口通路23と、溝部22に充填されたシール材25を外部に排出可能な出口通路24とを備える。
【0045】
第1の態様に係る締結部材によれば、シール部材21が装着されると共に溝部22が形成されたフランジ部13を既設配管111のフランジ部113に締結し、入口通路23から溝部22にシール材25を充填する。すると、溝部22のシール材25は、シール部材21を連結配管11および既設配管111の各フランジ部13,113に押圧することとなり、シール部材21の劣化が抑制され、シール部材21の長寿命化を図ることができる。
【0046】
第2の態様に係る締結部材は、シール部材21および溝部22がフランジ部13における既設配管111への取付面13a側に露出する。これにより、溝部22にシール材25が充填された状態で、シール材25がシール部材21を各フランジ部13,113に押圧することができ、シール部材21のシール性能を維持することができる。
【0047】
第3の態様に係る締結部材は、シール部材21として、フランジ部13の径方向に間隔を空けて設けられる第1シール部材31および第2シール部材32を有し、溝部22が第1シール部材31と第2シール部材32との間に設けられる。これにより、溝部22に充填されたシール材25は、第1シール部材31の内径側(高圧側)および第2シール部材32の低圧側(外径側)を押圧し、第1シール部材31および第2シール部材32を各フランジ部13,113に密着させており、シール部材21のシール性能を向上することができる。
【0048】
第4の態様に係る締結部材は、溝部22にフランジ部13の径方向に沿う仕切板51を配置する。これにより、溝部22に供給されたシール材の流動方向を仕切板51が制限することで、溝部22に対するシール材の供給と排出を適切に実行することができる。
【0049】
第5の態様に係る締結部材は、入口通路23の一端部が仕切板51により仕切られた溝部22の一方側に連通し、出口通路の一端部が仕切板51により仕切られた溝部22の他方側に連通する。これにより、入口通路23から溝部22に供給されたシール材25は、出口通路24側に向けて移動し、シール材25を溝部22の全域に適切に充填することができる。
【0050】
第6の態様に係る締結部材は、入口通路23の他端部にシール材供給装置61を設け、出口通路24の他端部にシール材排出装置62を設ける。これにより、シール材25を入口通路23から溝部22に供給することができると共に、溝部22のシール材を出口通路24から外部に排出することができ、溝部22に対するシール材25の充填や交換を容易に行うことができる。
【0051】
第7の態様に係る締結部材は、シール材供給装置61およびシール材排出装置に開閉弁63,64を設ける。これにより、開閉弁63,64を開閉操作することで、溝部22へのシール材25の充填作業、溝部22でのシール材25の維持作業、溝部22からのシール材25の排出作業を容易に行うことができる。
【0052】
第8の態様に係る締結部材は、締結部材としての連結配管11のフランジ部13が既設配管111のフランジ部113に接触するようにボルト締結される。これにより、既設配管111と連結配管10との連結部の封止作業を容易に行うことができる。
【0053】
第9の態様に係る締結部材の封止方法は、既設配管(被締結部材)111に設けられる開口部114の周囲に締結される連結配管(締結部材)11の封止方法であって、フランジ部13に設けられた環状をなすシール部材21が既設配管111のフランジ部113に接触するようにフランジ部13をフランジ部113に締結する工程と、シール部材21を構成する第1シール部材31より高圧空間側に隣接して設けられる環状をなす溝部22に外部から入口通路23を通して粘性を有するシール材25を充填する工程と、溝部22に充填されたシール材25が出口通路24から外部に排出されるとシール材25の充填を停止する工程とを有する。これにより、溝部22のシール材25は、シール部材21を連結配管11および既設配管111の各フランジ部13,113に押圧することとなり、シール部材21の劣化が抑制され、シール部材21の長寿命化を図ることができる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、シール部材として、2個の第1シール部材および第2シール部材を適用したが、1個のシール部材であってもよい。この場合、フランジ部に設けたシール部材に対して高圧空間側に隣接して溝部を設けることが好ましい。
【0055】
また、上述した実施形態では、被締結部材として既設配管111を適用し、締結部材として連結配管11を適用したが、この構成に限定されるものではない。例えば、被締結部材として開口部を有する容器を適用し、締結部材として開口部を閉止する蓋を適用したり、被締結部材として開口部を有する壁部を適用し、締結部材として開口部を閉止するカバーを適用したりしてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、原子力施設にて、管理区域と一般区域との間で各種の機器を移動するものとして説明したが、原子力施設に限らず、その他の発電プラントや化学プラントなどに適用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
11 連結配管(締結部材)
12 配管本体
13 フランジ部
13a 取付面
13b 取付孔
21 シール部材
22 溝部
23 入口通路
24 出口通路
25 シール材
31 第1シール部材
32 第2シール部材
33 第1環状溝
34 第2環状溝
41,43 径方向通路
42,44 軸方向通路
51 仕切板
61 シール材供給装置
62 シール材排出装置
63,64 開閉弁
101A 高放射線区域
101B 低放射線区域
111 既設配管(被締結部材)
112 配管本体
113 フランジ部(既設フランジ部)
114 開口部
115 締結ボルト
116 締結ナット