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特許7570309ノード属性およびリンク属性の双方を有するグラフニューラルネットワークを用いた配電故障位置特定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ノード属性およびリンク属性の双方を有するグラフニューラルネットワークを用いた配電故障位置特定
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20241011BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241011BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20241011BHJP
【FI】
H02J13/00 301D
H02J3/00 170
H02J13/00 311R
G01R31/08
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021185020
(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公開番号】P2022129353
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】17/183,636
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン・ホンボー
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-281289(JP,A)
【文献】特開2000-050488(JP,A)
【文献】特開2020-080630(JP,A)
【文献】特開平09-145772(JP,A)
【文献】特開平11-142466(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112327104(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112180217(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112180210(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112098889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111880044(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111650472(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110346692(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110223195(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109784672(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109782124(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106874963(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00
G01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランチとノードとを有する配電フィーダにおける故障の検出および位置特定のために故障検出装置が実行する方法であって、前記方法は、
配電システムの配電フィーダにおけるフィーダ生データを受信するステップと、
前記配電フィーダの予め定められた動作電気特性とともに前記フィーダ生データを処理することにより、すべてのブランチについて、一対のノードによって分離された各ブランチごとにブランチ属性データセットを生成し、前記配電フィーダにおけるすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成するステップと、
前記ブランチ属性データセットおよび前記ノード属性データセットを、訓練された故障検出ニューラルネットワークに入力し、ブランチが故障を有するか否かを判断し前記ブランチ内の故障位置を判断し、前記故障の分類および前記故障位置を出力し、前記分類した故障および前記故障位置の判断に基づいてアラート信号を生成するステップと、
前記アラート信号をアラート制御システムに送信し、前記アラート信号が受信されると、停電レスポンスシステムに対する前記アラート信号に応答してアクションを生成するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記故障検出装置は、故障前ブランチレギュレーションおよび通電と、前記配電フィーダに対応付けられたセンサから得られた故障中の時間同期ノード電圧および電流の大きさおよび角度とを、リアルタイムで測定するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各ブランチごとの前記ブランチ属性データセットは、リアルタイムで測定された故障前レギュレーションおよび通電ブランチ生データから生成され、各ノードごとの前記ノード属性データセットは、前記フィーダ生データを介して、リアルタイムで測定された故障中の電圧および電流ノード生データから生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ブランチ属性データセットにおけるブランチ属性は、前記ブランチによって分離されたノードに対応する等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列の少なくとも一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配電ラインについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、前記ラインについての直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
配電変圧器についての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、前記変圧器のラインについての変圧器比率、直列インピーダンス、および巻線接続に従って求められる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
電圧レギュレータを下流配電ラインと組み合わせたブランチについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、前記レギュレータのレギュレーション比率のセットおよび巻線接続、ならびに配電ラインの直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
スイッチを下流配電ラインと組み合わせたブランチについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、前記スイッチのすべての位相についての通電ステータスのセット、ならびに配電ラインの直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記ノード属性データセットにおけるノード属性は、双方が大きさおよび角度の測定値を含む測定された相間電圧およびゼロシーケンス電圧と、大きさおよび角度の測定値を含む測定された注入電流とを含み、前記ブランチ属性データセットにおけるブランチ属性は、前記ブランチによって分離されたノードに対応する等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列の少なくとも一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記配電フィーダの前記予め定められた動作電気特性は、ノードに接続された電力負荷の負荷需要プロファイルおよび位相接続を含むノード標準動作データと、ノードに接続された分散発電機の標準動作発電プロファイルおよび位相接続と、ノードに接続された分路キャパシタのキャパシタ容量および位相接続とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記配電フィーダの前記予め定められた動作電気特性は、配電ブランチについての直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列を含むブランチデータと、変圧器比率、直列インピーダンス、および巻線接続を含む、各変圧器ごとのパラメータのセットと、レギュレーション比率および巻線接続を含む各電圧レギュレータごとのパラメータのセットと、スイッチについての位相通電ステータスのセットとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記訓練された故障検出ニューラルネットワークは、前記配電フィーダのすべてのブランチのうちの各ブランチについて予め定められた故障状態のセットを別々にシミュレートすることによって生成された故障シナリオのセットを用いて訓練され、前記故障状態は、故障の種類と、前記ブランチに沿った相対的な故障位置と、前記故障位置におけるインピーダンスと、故障前負荷需要レベルおよび故障前発電レベルとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シミュレートされた各故障シナリオごとの、ノード属性のデータセット、ブランチ属性のデータセット、および出力属性のセットを得るステップをさらに含み、出力属性は、故障を有するブランチによって分離されたノードと、前記故障位置と前記故障を有するブランチのノードとの間の相対距離と、前記故障を有するブランチの故障位相のセットとを特定するためのデータを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記故障の種類は、1相地絡故障、2相地絡故障、相間故障、3相地絡故障、および3相間故障を含む、前記請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記訓練された故障検出ニューラルネットワークはグラフニューラルネットワークであり、前記グラフニューラルネットワークは、ノードおよびブランチ属性をノード埋め込みにアグリゲートするための一連のグラフ処理層と、グラフノード埋め込みに従って故障位置を推定するための一連の全接続予測層とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記一連のグラフ処理層のうちの第1のグラフ処理層は、ノード埋め込みにノード属性を設定し、前記一連のグラフ処理層は、その隠れノード埋め込みを、前の層における重み付けされたノード埋め込みの組み合わせの活性化総和および近傍の影響の重み付け総和として計算し、各近傍ごとの近傍の影響は、近傍埋め込みと近傍ノードに接続されたブランチの重み付けされたブランチ属性との減衰組み合わせとして計算され、減衰因子は、重み付けされたノード埋め込み、重み付けされたブランチ属性、重み付けされた近傍埋め込み、およびバイアスの加算の、活性化総和として計算される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
近傍の影響の総和は、固定数の近傍サンプルの予想される近傍の影響として近似され、サンプリング確率が、近傍埋め込みと重み付けされたブランチ属性との組み合わせのノルムに従って近似される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各予測層は、その出力特徴を、バイアスが加えられた前の層からの重み付けされた入力の活性化総和として計算し、最初の予測層の入力は、最後のグラフ処理層の前記計算されたノード埋め込みであり、最後の予測層の前記出力特徴は、前記故障位置に関連するデータである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
合計された前記近傍埋め込みは、固定数の近傍をサンプリングすることによって推定され、各近傍埋め込みのノルムに従って定められたサンプリング確率を有するサンプルについての近傍埋め込みの期待値として近似される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ブランチとノードとを有する配電フィーダにおける故障の検出および位置特定のための故障検出装置であって、前記故障検出装置は、
トランシーバと、命令モジュールを有するデータストレージと、処理のために構成された回路とを含む、コンピューティングシステムを備え、前記回路は、前記故障検出装置に、
配電システムの配電フィーダにおけるフィーダ生データを、前記トランシーバを介して受信することと、
前記データストレージを介してアクセスされる前記配電フィーダの予め定められた動作電気特性とともに前記フィーダ生データをプロセッサを介して処理することにより、すべてのブランチについて、一対のノードによって分離された各ブランチごとにブランチ属性データセットを生成し、前記配電フィーダにおけるすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成することと、
前記ブランチ属性データセットおよび前記ノード属性データセットを、訓練された故障検出ニューラルネットワークに入力し、ブランチが故障を有するか否かを判断し前記ブランチ内の故障位置を判断し、前記故障の分類および前記故障位置を出力し、前記分類した故障および前記故障位置の判断に基づいてアラート信号を生成することと、
前記アラート信号をアラート制御システムに前記トランシーバを介して送信することとを、実行させ、前記アラート信号が受信されると、前記アラート制御システムは、停電レスポンスシステムに対する前記アラート信号に応答してアクションを生成し、前記故障を有する前記配電フィーダの切断された電源に対し電力および復旧サービスを別ルートで送る、故障検出装置。
【請求項21】
コンピュータプログラムを有する非一時的なコンピュータ読取可能媒体であって、前記コンピュータプログラムは、故障検出装置のプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
配電システムの配電フィーダにおける、リアルタイムで測定された故障前ブランチレギュレーションおよび通電データと、リアルタイムで測定された故障中ノード電圧および電流生データとを含むフィーダ生データを受信することと、
前記配電フィーダの予め定められた動作電気特性とともに前記フィーダ生データを処理することにより、すべてのブランチについて、一対のノードによって分離された各ブランチごとにブランチ属性データセットを生成し、前記配電フィーダにおけるすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成することと、
前記ブランチ属性データセットおよび前記ノード属性データセットを、訓練された故障検出ニューラルネットワークに入力し、ブランチが故障を有するか否かを判断し前記ブランチ内の故障位置を判断し、前記故障の分類および前記故障位置を出力し、前記分類した故障および前記故障位置の判断に基づいてアラート信号を生成することと、
停電レスポンスシステムに送信され前記停電レスポンスシステムが受信する前記アラート信号に基づいて、前記故障を有する前記配電フィーダの切断された電源に対し電力および復旧サービスを別ルートで送ることとを、実行させる、非一時的なコンピュータ読取可能媒体。
【請求項22】
前記受信したフィーダ生データは、物理インテリジェント電子装置(IED)または物理フェーザ測定ユニット(PMU)が記録された前記ノードからの、リアルタイムで測定された電圧および電流生データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記受信したフィーダ生データは、スイッチのためのコントローラまたは電圧レギュレータのためのタップチェンジャーに記録された前記ブランチからの、リアルタイムで測定されたレギュレーションおよび通電生データを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、概して電力システムに関し、より具体的には配電システムにおける短絡故障の検出および位置特定に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
配電システムは、停電を引き起こす短絡故障の脅威に常に晒されている。配電システムのオペレーション品質および信頼性を高めるために、システムオペレータは、停電に適時対処しなければならない。したがって、故障が発生すると直ちに故障位置を正確に特定し故障を素早く解消することで、迅速な復旧を実現できるようにすることが、最も重要である。
【0003】
文献における既存の故障位置特定技術は、いくつかのカテゴリーに、すなわち、インピーダンスに基づく方法、進行波に基づく方法、および機械学習に基づく方法に、分類することができる。インピーダンスに基づく故障位置特定方法は、電圧および電流の測定値を用いて故障インピーダンスと故障位置とを推定する。しかしながら、インピーダンスに基づく方法の精度は、故障の種類、不平衡負荷、異種の架空線、および測定誤差を含む要素の影響を受ける可能性がある。進行波に基づく方法は、元の波および故障で生じた反射波の観察を利用する。しかしながら、一般的に、進行波に基づく方法は、高サンプリングレートおよび測定装置の通信オーバーヘッドを必要とする、または、所定の周波数の追加の信号注入を必要とする。人工ニューラルネットワーク(ANN:artificial neural network)、サポートベクターマシン(SVM:support vector machine)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:convolutional neural network)、およびグラフ畳み込みネットワーク(GCN:graph convolutional network)等の機械学習モデルは、配電システム内の故障位置の特定のために強化される。しかしながら、従来の機械学習に基づく方式は、バス測定値と所定の接続性構成を有する故障位置との関係の学習のみによって故障位置を推定するが、故障挙動に対するトポロジー構成やブランチレギュレーションの影響は無視していた。故障状態における配電システムの挙動は、トポロジー構成およびブランチレギュレーションに大きく依拠するので、従来の、学習したこれらの故障位置と測定値との関係に基づく方式は、無効になる。これらの従来の学習した関係に基づく方式が無効になるいくつかの理由として、データの調整、すなわち所定の接続性構成を有する故障位置の調整が挙げられ、これらのデータの調整が原因で、多大な計算労力を要する新たな学習プロセスをやり直さなければならなくなる。
【0004】
たとえば、特許出願US2003/0085715A1は、配電システムの複数の位相のうちの故障位相を検出することによって故障の位置を特定する方法を開示している。ライン周波数と異なる周波数である測定周波数を有する測定信号が、検出した故障位相に注入される。故障位置は、選択された区間について、注入した信号に対応する測定された少なくとも1つの残留電流と、配電システムの予め定められた相対インピーダンスとに基づいて、判断される。しかしながら、US2003/0085715A1の方法は、電力会社が入手できる従来の測定値に基づいて故障位置を判断することができない、予め定められた周波数を有する追加の注入信号に対する要求であることから、現代の電力産業の要求を満たさない。US5,537,327Aは、配電システム内の高インピーダンス故障を検出しこの故障の解消を可能にする方法および装置を開示している。配電システムにおける少なくとも1つの位相の電流が、センサによってリアルタイムでモニタリングされ、関連する特徴が時間ドメインから周波数ドメインに変換される。次に、変換されたデータが、訓練されたニューラルネットワークに与えられ、ニューラルネットワークは、HIF条件が確からしいときに出力トリガ信号を提供する。しかしながら、US5,537,327Aの方法は、故障挙動に対するシステムトポロジーおよびブランチレギュレーションの影響を考慮しておらず、US5,537,327Aの方法による故障の検出は、システムトポロジーおよびブランチパラメータが変更されるときは正確ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2003/0085715号明細書
【文献】米国特許第5,537,327号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、電力産業が使用している従来入手可能な測定値を最大限活用し、故障の挙動に対するシステムトポロジー、ブランチパラメータ、レギュレーションおよびその他の影響を含めることにより、故障位置をより正確に特定し故障発生後適時故障を解消することで、配電ネットワークオペレーションの品質および信頼性をさらに高める、より進化した故障検出および位置特定システムおよび方法が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示は、配電システム内の短絡故障の検出および位置特定に関する。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、ノード属性およびブランチ属性の双方が考慮される、配電システムのためのグラフニューラルネットワーク(GNN:graph neural network)に基づいた故障位置特定方法を使用する。ノード属性は、双方が大きさおよび角度の測定値を含む測定された相間電圧およびゼロシーケンス電圧、または、測定された位相対地電圧と、大きさおよび角度の測定値を含む測定された注入電流とを含み得る。ブランチ属性は、ブランチによって隔てられたノードに対応する、等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列の少なくとも一部を含み得る。
【0009】
ある局面において、本開示の実施形態において故障位置を検出するためにはブランチ情報が重要である理由は、各ブランチ(リンクまたはラインブランチとも呼ばれる)が、各ノード(バス、電柱、またはポールとも呼ばれる)で取得される情報とは違って、具体的な属性を有する2つのエンティティ間の本質的な関係を表すからである。非限定的な例として、2つのノードを接続するブランチは、これらの2つのノードのうちのいずれかで得られた測定値との比較において、異なるインピーダンスおよびアドミタンスの測定値を有し得る。そのため、これらのブランチ属性に対応付けられる測定値を考慮することにより、従来のGCN方式では無視されていた一対のノード(すなわち、バス、電柱またはポール)間の正確な関係を取り戻す機会を実現する。
【0010】
実際、従来のGCN方式は、グラフの低近接度およびノード特徴を効果的に強化する個々のグラフノードについてのローカル近傍情報のランクをアグリゲートすることにより、故障の検出を実現する。これらの従来のGCN方式は、故障ノード(すなわちバス)と測定値(測定されたノードの位相電圧および電流値)との関係を学習するように構成されたノード測定のみに基づいている。これらの従来のGCN方式は、1つのバスにおける故障位置を判断するので、停電作業員を、故障スポットを探すためにバスの場所に派遣することができる。しかしながら、これらの従来のGCN方式には多くの問題があり、この方式は、たとえば、グラフリンクの属性をバイナリまたはスカラー値に単純化し、これは、ローカルな近傍で重み付けされた場合に近傍性およびその影響を特定するためのノード接続状態を説明する。問題は、グラフリンクが持っている属性が、GCNの既存の能力では無視されることである。もう1つの問題は、これらの従来のGCN方式が、故障挙動に対するシステムトポロジーの影響を有効にモデル化していないことである。たとえば、ラインの直列インピーダンスは、故障位置と故障電流との関係に影響を与える。このことは、同一の故障電流が、インピーダンスが同一でない場合は、異なる故障位置から生じる可能性があることを、意味する。これらの従来のGCN方式は、バスにおける故障位置を検出するので、作業員がバスの場所に派遣された場合、作業員は、故障を発見するためにはライン/ブランチに沿ってバスの場所の下流か上流のいずれの方向に歩けばよいかわからない。作業員は故障を探すためには上流または下流のいずれの方向を探せばよいかわからないので、膨大な労力および修理時間が浪費され、このことは、顧客が電力を供給されない停電期間がさらに延長されることを意味する。このように、これらの従来のGCN方式は失敗に終わる、なぜなら、グラフリンクが持っている属性を知らずに故障位置とシステムトポロジーおよび特徴との正確な関係を見出すことは難しいからである。さらに、正確な関係なしでノード間のライン/ブランチ上の故障位置を正確に特定することは難しい。
【0011】
実験中に故障位置特定方法をテストしているときに得られる少なくとも1つの認識は、現実世界における故障位置特定のシナリオにおいて、一対のノード(バス、電柱、またはポールとも呼ばれる)を分離するブランチ(リンク、ラインブランチまたはブランチとも呼ばれる)は、各ノード位置で得られる情報のような、近傍状態の単純な指標よりも、一層多くの情報を持っている、という認識である。ノードは、バス、または電力会社の配電ラインもしくは架空電線を支える電柱またはポールとみなされる。各ブランチは、配電フィーダの一対のノード間の架空電線のうちのある区画である。配電またはディストリビュータという用語は、架空配電ラインと理解することができ、このラインの長さに沿って電力を取り出して消費者またはその他何らかの給電部に供給する。フィーダという用語は、配電/一次変電所から二次変電所に電流を送るライン、または一次配電ラインと考えることができる。よって、予め定められた動作電気(POE:predetermined operational electrical)特性を、または過去に検出された故障の故障挙動に対応付けられた過去の動作データを、各配電フィーダの各ノードごとおよび各ブランチごとに、取得することができ、本開示の故障検出システムおよび方法に利用することができる。
【0012】
本開示の実施形態を発展させる際に克服すべきいくつかの課題は、一対のノード間のブランチ上の故障位置を判断することであり、これは、ノード位置の故障位置を判断するよりも難しく、ほとんどの故障がノードではなくブランチに沿って発生する実際の生活状況においてはより現実的である。先に述べたように、ブランチ情報は電流割当および電圧レベルに影響を与えた直列のインピーダンスおよび並列アドミタンスを提供する、という認識がある。もう1つの認識は、故障位置を検出するときに、送配電網のフィーダにおいてブランチまたはバス/ノードに短絡(故障)イベントが発生している場合は、正確な故障位置を発見するために、本開示のシステムおよび方法は、ブランチ属性、システムトポロジー、およびバス/ノードにおける所定の測定値を使用しなければならない、という認識である。たとえば、本開示のシステムおよび方法は、異なるバスにおける複数の測定値を異なるブランチにおけるブランチパラメータと統合してGNNの入力とすることができ、ブランチ上の故障位置を、故障したブランチに接続されている対応するノードの出力特徴に、変換することができる。故障位相を正確に捉えるために、すべての位相の電圧および電流の測定値を使用することができる。本来GNNが考慮することができるシステムトポロジーに加えて、ブランチパラメータと、関連するレギュレーションおよび通電ステータスとを、リンク属性として明確に考慮に入れることができる。
【0013】
均一のパラメータセットを使用して種類が異なるブランチを表すために、本開示の実施形態は、等価のノードコンダクタンス行列および等価のノードサセプタンス行列を使用することにより、ブランチ特徴を表すことができる。ブランチインピーダンスを有するブランチに関しては、必要なコンダクタンスおよびサセプタンス行列を簡単に公式化することはできるが、これは、電圧レギュレータまたはスイッチを備えたブランチの場合、ゼロブランチインピーダンスが原因で、難しい。電圧レギュレータブランチの場合、本開示のいくつかの実施形態は、電圧レギュレータブランチを下流ラインと併合し、レギュレータの電圧および電流増幅率とラインの直列インピーダンスおよび並列アドミタンスとを用いて、対応する、等価のコンダクタンスおよびサセプタンス行列を、導き出した。スイッチブランチの場合、スイッチブランチを下流ラインと併合することができ、スイッチの位相通電行列とラインの直列インピーダンスおよび並列アドミタンスとを用いて、対応する、等価のコンダクタンスおよびサセプタンス行列を求める。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態は、故障検出および位置特定問題を、ノード出力特徴の公式化に従い、非線形回帰または分類問題にマッピングすることができ、ノード属性およびリンク属性の双方を有する拡張されたGCNモデルを通じて解決した。この拡張されたGCNモデルは、ノード属性とリンク属性の双方を入力として取り、リンクは、裁量属性を有するエンティティ間の本質的関係に戻される。リンク属性とノード属性との間の相互作用を十分に捉えるために、これらのテンソル積を近傍特徴として使用する。加えて、訓練プロセスを加速するために、近傍全体における特徴の総和を、推定分散を最小にするためのサンプリング戦略を用い、モンテカルロ法を通じて推定する。訓練時間を予測できるようにするために、訓練対象のノードのセットをいくつかのバッチに分割し、各バッチは固定数のノードを有する。他の配電システムへのモデルマイグレーションを容易にするために、研究対象のノードのすべての近傍からランダムに選択することで、ノードごとに固定数の近傍サンプルを考慮すればよく、ノードに対する近傍の影響を、サンプリングされた近傍とサンプリング確率とに基づいて評価する。加えて、ノード特徴、ブランチ特徴、および出力特徴を、トポロジーが異なる他のシステムへのマイグレーションを容易にするために使用する前に、正規化する。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態は、ノード特徴とブランチ特徴とをアグリゲートして隠れノード表現にするための一組のグラフ処理層と、隠れノード表現を故障位置に関連する出力特徴に関連付けるための一組の全接続予測層とを使用するように、GNNを構成することができる。本開示のこのGNNを訓練することにより、ブランチ上の故障位置と、関連するバス/ブランチの測定値またはパラメータおよびこれらの限定数の近傍との関係を、学習することができる。GNNは、特定のトポロジーを有するサンプルシステムを用いて訓練されるが、本開示のこのGNNは、ノード特徴の数、ブランチ数、および出力特徴が同一であれば、その他のシステムにも同様に使用することができる。
【0016】
実際の応用
本実施形態は、停電の前または停電中に、バス/ノード/ポール間のラインブランチにおける故障および故障位置を如何にして検出するかという、電力産業に固有の技術的問題を解決している。このことが、電力産業にとって故障および故障位置を迅速に特定するために重要であるいくつかの理由は、オペレータが、資源の割当のために、たとえば適切な停電技術作業員やその故障の種類専用の適当な種類の機器の割当のため、および、停電の修理部品の発注のために、必要な組織的準備を行わねばならないことにある。これらの資源は、その地域の資源または国/州外の資源である可能性があり、そのため、これらのオペレータにとって、故障を正確に検出しその位置を特定することは、停電に素早く対処しかつ資源を無駄にしないためには必須である。多くの電力会社が、正しい資源の割当ができず結果として停電を迅速に解消できないことに悩まされている。たとえば、2020年に米国で生じた暴風雨は、停電を引き起こし、結果として何百万人もの顧客が受電できなくなった。実際、米国の送配電網は、旧式で疲労しており、他のどの先進諸国と比べても最悪の状態である(Ula Chrobak氏の論文「The US has more power outages than any other developed country. Here's why(米国は他のどの先進国よりも停電が多い。その理由がここにある。)」、2020年8月17日、Popular Science参照)。正確に故障を検出しその位置を特定する他の理由は、送配電網をより周到に準備して送配電網の費用効率を高めることにあり、同様に重要なことは、顧客の電力会社(送配電網)が推測を行うのではなく実際の定量分析に基づいて停電への備えについての判断を行っていることを顧客に知らせることで、信頼を顧客に植え付けることである。このように、分散型エネルギーシステムの動作を常にモニタリングすることで差し迫った故障を検出しその位置を特定するとともに、システム機器の故障区間を切り離す機能を備えた、機器の健全性をモニタリングし診断することが可能なシステムおよび/または方法が必要とされている。
【0017】
本開示のシステムおよび方法は、電力産業に固有の技術的問題を、ブランチが故障を有するか否かを判断し、バス/ノード/ポール間のブランチ内の故障の位置を判断し、故障の分類と故障位置とをオペレータに出力することにより、解決している。これらの解決策は、予想される差し迫った故障に対するより適切な解決を提供し、これらの故障の進展をモニタリングし、根元的な原因を判断し、これらの故障の位置を特定する。実際、多くの課題が克服され、ブランチ情報として認識された情報は、電流割当および電圧レベルに影響を与えた直列のインピーダンスおよび並列アドミタンスを提供し、ブランチ属性、システムトポロジー、およびバス/ノードにおける所定の測定値の使用は、送配電網のフィーダにおけるブランチまたはバス/ノードに短絡(故障)イベントが発生している場合には、正確な故障位置を発見するために、必要である。
【0018】
たとえば、本開示の実施形態の技術的効果は、異なるバスにおける複数の測定値を統合する一方で、システムトポロジーおよびブランチパラメータを考慮することにより、生じる。バスにおける測定値、ならびにブランチにおけるインピーダンス、アドミタンスおよびレギュレーションパラメータは、それぞれ、GNNモデルにおけるノード属性およびリンク属性としてモデル化される。具体的には、GNNは、ノード属性およびリンク属性を有するグラフ処理層を使用することにより、システムトポロジー、バス測定値、およびブランチパラメータを、隠れノード埋め込みにマッピングし、全接続層を使用することにより、関連する故障位置をノード埋め込みにマッピングする。本開示の実施形態は、1相地絡、2相地絡、相間短絡、3相地絡、および3相短絡を含む、さまざまな種類の故障に使用することができる。先に述べたように、グラフのノード属性は、測定された位相電圧および電流測定値を含み、ブランチインピーダンス、アドミタンス、およびレギュレーションパラメータは、グラフのリンク属性に統合される。これも先に述べたように、一対のノード間のリンクは、遥かに多くの情報を持っており、通常は具体的な属性とともに、2つのエンティティ間の本質的関係を表す。たとえば、2つのバスと接続されたラインブランチは、異なるインピーダンスおよびアドミタンスを有し得る。この認識はむしろ、グラフリンクが持っている属性を知らずに故障位置とシステムトポロジーおよび特性との正確な関係を見出すことは難しいので従来のGCNは失敗に終わることから生まれる。さらに、正確な関係を持っていなければ、ノード間のライン/ブランチ上の故障位置を正確に特定することは難しい。これらの追加の制限は、特徴および様相を実際の応用に組み入れる配電システムの技術分野における改善を反映し、これらの特徴および様相は、技術的課題への解決策に対して有意義な制限を与える。したがって、これらのシステムおよび方法を、全体として、抽象という観点から、人間の心の中の側面を単に実行しているものとみなすことも、データを集め(収集し)、データを処理し、データを分析し、特定の結果を表示するものに過ぎないとみなすことも、できない。これに対し、当該システムおよび方法は、配電フィーダにおける故障を検出し、ノード/ポール間のラインブランチにおける故障位置を判断し、故障を有するフィーダを他のフィーダから分離し、故障を有するフィーダの切断された電源または負荷に対し、電力および復旧サービスを別ルートで送る。これらの解決策はさらに、故障を検出し故障の位置を特定するという技術的問題を解決し、電力会社の技術者および緊急時対応スタッフに、ブランチに故障があるか否かの正確な判断、ブランチ内の故障の位置、および、故障の分類を提供することで、停電を低減することになり、これは、停電のリスク管理を支援することによってその状況を素早く解決する。
【0019】
本開示のある実施形態に係る、配電システムに接続された配電フィーダの故障の検出および位置特定のための方法が提供される。この方法は、処理するように構成された回路を有するコンピューティングシステムを使用することを含み、配電フィーダは、予め定められた動作電気(POE)特性を有し、配電フィーダは、ノードによって分離されるブランチに分割される。配電フィーダの、リアルタイムで測定された故障前レギュレーションおよび通電(RMPRE)ブランチ生データと、リアルタイムで測定された故障中電圧および電流(RMDVC)ノード生データとを受ける。配電フィーダのすべてのブランチについて、一対のノードを分離する各ブランチごとに、RMPREブランチ生データおよびPOE特性から、ブランチ属性データセットを生成する。配電フィーダのすべてのノードについて、各ノードごとに、RMDVCノード生データおよびPOE特性から、ノード属性データセットを生成する。ブランチ属性データセットおよびノード属性データセットを、訓練された故障検出ニューラルネットワークに入力し、ブランチが故障を有するか否かを判断しブランチ内の故障の位置を判断し、故障の分類および故障位置を出力し、故障の分類および故障位置を表示する。
【0020】
本開示の別の実施形態に係る、ブランチとノードとを有する配電フィーダにおける故障の検出および位置特定のために故障検出装置が実行する方法。この方法は、配電システムの配電フィーダにおけるフィーダ生データを受信することを含む。配電フィーダの予め定められた動作電気特性とともにフィーダ生データを処理することにより、すべてのブランチについて、一対のノードによって分離された各ブランチごとにブランチ属性データセットを生成する。配電フィーダにおけるすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成する。ブランチ属性データセットおよびノード属性データセットを、訓練された故障検出ニューラルネットワークに入力し、ブランチが故障を有するか否かを判断しブランチ内の故障位置を判断し、故障の分類および故障位置を出力する。分類した故障および故障位置の判断に基づいてアラート信号を生成する。アラート信号が受信されると、アラート信号をアラート制御システムに送信し、停電レスポンスシステムに対するアラート信号に応答してアクションを生成する。
【0021】
本開示の別の実施形態に係る、ブランチとノードとを有する配電フィーダにおける故障の検出および位置特定のための故障検出装置。故障検出装置は、トランシーバと、命令モジュールを有するデータストレージとを有するコンピューティングシステムを含む。故障検出装置は、処理のために構成された回路を含み、この回路は、故障検出装置に、配電システムの配電フィーダにおけるフィーダ生データを、トランシーバを介して受信することを実行させる。データストレージを介してアクセスされる配電フィーダデータの予め定められた動作電気特性とともにフィーダ生データをプロセッサを介して処理することにより、すべてのブランチについて、一対のノードによって分離された各ブランチごとにブランチ属性データセットを生成する。配電フィーダにおけるすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成する。ブランチ属性データセットおよびノード属性データセットを、訓練された故障検出ニューラルネットワークに入力し、ブランチが故障を有するか否かを判断しブランチ内の故障位置を判断し、故障の分類および故障位置を出力する。分類した故障および故障位置の判断に基づいてアラート信号を生成する。アラート信号をアラート制御システムにトランシーバを介して送信する。アラート信号が受信されると、アラート制御システムは、停電レスポンスシステムに対するアラート信号に応答してアクションを生成し、故障を有する配電フィーダの切断された電源に対し電力および復旧サービスを別ルートで送る。
【0022】
本開示の別の実施形態に係る、コンピュータプログラムを有する非一時的なコンピュータ読取可能媒体。このコンピュータプログラムは、故障検出装置のプロセッサによって実行されると、当該プロセッサに、配電システムの配電フィーダにおける、リアルタイムで測定された故障前ブランチレギュレーションおよび通電データと、リアルタイムで測定された故障中ノード電圧および電流生データとを含むフィーダ生データを受信することを、実行させる。配電フィーダの予め定められた動作電気特性とともにフィーダ生データを処理することにより、すべてのブランチについて、一対のノードによって分離された各ブランチごとにブランチ属性データセットを生成する。配電フィーダにおけるすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成する。ブランチ属性データセットおよびノード属性データセットを、訓練された故障検出ニューラルネットワークに入力し、ブランチが故障を有するか否かを判断しブランチ内の故障位置を判断し、故障の分類および故障位置を出力する。分類した故障および故障位置の判断に基づいてアラート信号を生成する。停電レスポンスシステムに送信され停電レスポンスシステムが受信するアラート信号に基づいて、故障を有する配電フィーダの切断された電源に対し電力および復旧サービスを別ルートで送る。
【0023】
ここに開示される実施形態を添付の図面を参照しながらさらに説明する。示されている図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、代わりに、概ね、ここに開示される実施形態の原理の説明の際には強調が加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システム内の故障を検出しその位置を特定するための方法のいくつかのステップを示すブロック図である。
図1B】本開示のいくつかの実施形態に係る、方法プロセスフローのいくつかのステップおよび方法を実現するためのいくつかの構成要素を示す概略図である。
図1C】本開示のいくつかの実施形態に係る、インテリジェント電子装置(IED:intelligent electronic device)および配電管理システム(DMS:distribution management system)または配電制御システム(DCS:distribution control system)を有する配電システムを示す概略図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態に係る、短絡故障を有する3相表現の配電システムの概略図(上部分)および比較のためにさらに設けた単線図(下部分)である。
図3A】本開示のいくつかの実施形態に係る、接地配電システムのバスについてのノード特徴を示す図である。
図3B】本開示のいくつかの実施形態に係る、非接地配電システムのバスについてのノード特徴を示す図である。
図4A】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムのブランチについてのいくつかのリンク特徴を示す概略図である。
図4B】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システム内の配電ラインについてのπモデルを示す概略図である。
図4C】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムにおいて電圧レギュレータを下流配電ラインと組み合わせる等価ブランチについてのリンク特徴を示す概略図である。
図4D】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムにおいて電圧レギュレータを下流配電ラインと組み合わせた等価ブランチのいくつかのパラメータを示す概略図である。
図4E】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムにおいてスイッチまたは遮断器を下流配電ラインと組み合わせる等価ブランチのリンク特徴を示す概略図である。
図5A】本開示のいくつかの実施形態に係る、各バスが各位相ごとに1つの独立した特徴を有する配電システムにおけるバスについて故障位置を表すいくつかの出力特徴を示す概略図である。
図5B】本開示のいくつかの実施形態に係る、各バスが各位相ごとに2つの独立した特徴を定める配電システムにおけるバスについて故障位置を表すいくつかの出力特徴を示す概略図である。
図5C】本開示のいくつかの実施形態に係る、各バスが各位相ごとに2値独立特徴のセットを定める配電システムにおけるバスについて故障位置を表すいくつかの出力特徴を示す概略図である。
図6】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムの故障の検出および位置特定に使用されるグラフニューラルネットワークの構成を示す概略図である。
図7】本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムを表すために使用されるノード属性およびリンク属性の双方によって記述されたグラフを示す概略図である。
図8】本開示のいくつかの実施形態に係る、グラフニューラルネットワークに含まれるグラフ処理層のアーキテクチャを示す概略図である。
図9】本開示の実施形態に係る、方法およびシステムのいくつかの技術を実現するために使用できるコンピューティング装置を示す概略図である。
図10】本開示の実施形態に係る、システムおよび方法を実現するために使用できるいくつかの構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記図面はここに開示されている実施形態を説明しているが、明細書に記載されているようにその他の実施形態も意図されている。本開示は、説明のための実施形態を、限定のためではなく代表として示す。当業者は、ここに開示される実施形態の原理の範囲および精神に含まれるその他多くの変形および実施形態を考案することができる。
【0026】
詳細な説明
本開示は、配電システムにおける短絡故障を検出しその位置を特定することに関する。
【0027】
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システム内の故障を検出しその位置を特定するための方法のいくつかのステップを示すブロック図である。図1Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る、図1Aのシステムを示すブロック図であり、このシステムはいくつかの構成要素を用いて実現される。
【0028】
図1Aおよび図1Bを参照して、図1Aのステップ125は、方法100Aが、リアルタイムで測定された故障前ブランチレギュレーションと、測定された通電データと、測定された故障中ノード電圧と、測定された電流データとを、図1Bの情報ネットワーク153を介して受信することを、含む。
【0029】
図1Aのステップ130は、図1Bのコンピュータ151のハードウェアプロセッサ155を用いて、故障前ブランチレギュレーションおよび通電データから、配電フィーダのすべてのブランチについて、一対のノードを分離する各ブランチごとに、ブランチ属性データセットを生成することを含む。
【0030】
図1Aのステップ131は、図1Bのハードウェアプロセッサ155を用いて、故障中ノード電圧および電流データから、配電フィーダのすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成する。
【0031】
図1Aのステップ132は、図1Bのハードウェアプロセッサ155を用いて、訓練された故障検出ニューラルネットワークを使用しブランチ属性およびノード属性を入力することにより、ブランチが故障を有するか否かを判断し故障の位置を判断することを含む。
【0032】
図1Aのステップ136は、図1Bの通信デバイス157を用いて、図1Bの情報ネットワーク153を介し、さらに他のアクションのために、推定された故障位置を配電システムオペレータに送る。
【0033】
図1Bを参照すると、これはコンピュータまたはコンピュータシステム151を含み得るものであり、コンピュータまたはコンピュータシステム151は、入力インターフェイス145と通信するハードウェアプロセッサ155、メモリ135、情報ネットワーク153、および通信デバイス157で構成されている。通信デバイス157は、インテリジェント電子装置120を備えた配電システム110に接続することができる。コンピュータ151は、配電システムに情報を送信し配電システムから情報を受信することができる。ハードウェアプロセッサ155が、特定用途の要件に応じて2つ以上のハードウェアプロセッサを含み得ることが、意図されている。当然、その他の構成要素が、入力インターフェイス、出力インターフェイスおよびトランシーバを含めて、方法100Aおよびシステム100Bに組み込まれてもよい。図1Bのステップ125は、リアルタイムで測定された故障前ブランチレギュレーションおよび通電データと、故障中ノード電圧および電流データとを、情報ネットワーク153を介して受信する。ステップ130は、コンピュータ151のハードウェアプロセッサ155を用いて、故障前ブランチレギュレーションおよび通電データから、配電フィーダのすべてのブランチについて、一対のノードを分離する各ブランチごとに、ブランチ属性データセットを生成する。ステップ131は、ハードウェアプロセッサ155を用いて、故障中ノード電圧および電流データから、配電フィーダのすべてのノードについて、各ノードごとにノード属性データセットを生成する。ステップ132は、訓練された故障検出ニューラルネットワークを用い、ブランチ属性およびノード属性を入力することにより、ブランチが故障を有するか否かおよび故障の位置を判断し、ステップ133は、故障の分類および故障の位置を出力する。ステップ136は、通信デバイス157を用いて、情報ネットワーク153を介し、推定された故障位置を、配電システムオペレータに、さらに他のアクションのために送る。
【0034】
図1Cは、本開示のいくつかの実施形態に係る、インテリジェント電子装置(IED)および配電管理システム(DMS)または配電制御システム(DCS)19を有する配電システム110Cを示す概略図である。配電システム110Cは、DMSまたはDCS19によって運営および制御され、DMS19は、さまざまな通常条件および緊急条件の下で、配電システム110Cを制御および管理するための、一組の機能を提供する。DMS19の機能のうちの1つは、短絡故障16を、このようなイベントが発生したときに配電システム100Cから収集されたリアルタイムの測定値に基づいて、検出しその位置を特定する。短絡故障は、倒木6および絶縁障害等のさまざまな理由で起こり得る。測定値は、インテリジェント電子装置(IED)2A~2D、位相測定ユニット(PMU)(図示せず)、タップチェンジャー(図示せず)、およびスイッチコントローラ(図示せず)等の、さまざまな検知および制御装置から提供することができる。DMS19は、検知および制御装置と、有線または無線通信ネットワーク4を介して通信する。
【0035】
引続き図1Cを参照すると、配電システム100Cは、送配電網(すなわち送電システム)9またはダイバータサブシステム15B、ならびにソーラーパネル17A、バイオシステム17Bおよび風力発電所17C等のローカルな分散された発電機から、電力を得て、この電力を、配電ライン7を通して需要負荷顧客18に送る。配電システム110Cは、送電システム9またはダイバータシステム15と、変電所11を通して接続する。ダイバータシステム15Bは、エネルギストレージ13またはその他の外部ソースから変換された15A電源を提供する。変電所11は下流のバス12と接続し、バス12は一組の下流フィーダ23と接続される。各フィーダ23は一組のラインセグメント7を含む(各ラインセグメント(すなわちラインブランチ、リンク)は、各ペアの電柱間1ー2、2ー3等にある)。電柱♯1、♯2、♯3に搭載された、フィーダ/回路遮断器23、通常は開いているスイッチ26、および通常は閉じているスイッチ24A、24Bを含む、配電システムの接続性を調整するための切換可能な装置もある。送電システム9またはダイバータシステム15Bからの電力も、電圧レギュレータおよび変圧器(図示せず)等の各種電圧レギュレーション装置(図示せず)を通して、需要負荷顧客18に送ることができる。図1Cは単線図を示す概略図であるが、実際のところ、配電システム100Cは、ユーザ機器の構成および条件に応じて、3相4ワイヤシステムまたは3相3ワイヤシステムを有し得る。
【0036】
図2は、短絡故障を有する3相表現の配電システムの概略図(上部分)を示しており、単線図(下部分)も比較のために設けられている。配電システム210は、1つのデルタ接続3相ソース211と、2つの3相配電ライン220および230と、1つのデルタ接続3相負荷240と、スター/デルタ接続を有する1つの変圧器250とを含む。システム210内には、バス1 260と、バス2 270と、バス3 280と、バス4 290とを含む4つの3相バスがあり、各バスは3相を有する。配電システム210は、非接地配電システムと接地配電システムとに分類することができる。配電システム210は、変圧器または負荷等のデバイスを通じて直接接地されている場合は接地システムである。一方、配電システム210は、直接接地されていない場合は非接地システムである。図2は、サンプルとしての非接地配電システムを示す。加えて、ライン220上には1相地絡故障275がある。
【0037】
いずれかの配電ライン220またはバス1~4に短絡故障275が生じている場合、バス1~4から検知できるリアルタイムの測定値に基づいて、故障の正確な位置を発見しなければならず、システムトポロジーおよびブランチパラメータは、スイッチコントローラ、変圧器/レギュレータタップチェンジャー、および配電システム210のその他の情報源から提供することができる。
【0038】
引続き図2を参照して、配電システム210は、グラフとしてモデル化することができ、配電システム210のバスおよびブランチはこのグラフのノードおよびリンクとみなすことができる。バスにおける測定値はノード特徴とみなされ、ブランチのパラメータはリンク特徴とみなされる。故障位置は、ノードの出力特徴としてモデル化される。故障の位置を特定することは、出力特徴とノード特徴およびリンク特徴との関係を見出すことである。新たな故障が発生すると、この故障に対応するノード特徴およびリンク特徴が入手できる場合は故障の種類と故障の位置とを判断することができる。
【0039】
【数1】
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
【0042】
【数4】
【0043】
ブランチは、インピーダンスに基づくブランチとゼロインピーダンスブランチとに分類することができる。インピーダンスに基づくブランチは、配電ラインおよび変圧器を含む。ゼロインピーダンスブランチは、電圧レギュレータ、回路遮断器、およびスイッチを含む。
【0044】
【数5】
【0045】
3相ブランチの場合、すべてのブランチ電流およびバス電圧は3×1ベクトルであり、自己および相互アドミタンス行列は3×3行列である。
【0046】
ある配電ラインについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、そのラインの直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる。
【0047】
【数6】
【0048】
変圧器についての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、この変圧器についての変圧器タップ比率、直列インピーダンス、および巻線接続に従って求められる。
【0049】
引続き図4Bを参照して、電圧レギュレータ、スイッチ、および回路遮断器等のゼロインピーダンスブランチの場合、これらのブランチは、モデル化する隣接するインピーダンスブランチに併合される。レギュレータを下流配電ラインと組み合わせたブランチについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、レギュレータのレギュレーション比率のセット、ならびに配電ラインの直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる。
【0050】
【数7】
【0051】
【数8】
【0052】
【数9】
【0053】
スイッチまたは遮断器を下流配電ラインと組み合わせたブランチについて、等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、スイッチまたは遮断器のすべての位相についての通電ステータスのセットと、配電ラインの直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列とに従い、求められる。
【0054】
【数10】
【0055】
【数11】
【0056】
【数12】
【0057】
【数13】
【0058】
引続き図4Eを参照して、ノード特徴、ブランチ特徴および出力特徴を、トポロジーが異なる他のシステムへのマイグレーションを容易にするために使用する前に正規化する。
【0059】
故障位置は、ノードの出力特徴としてモデル化される。故障状態を表すノード出力特徴を定めるための、数多くの方法がある。出力特徴は、図5Aおよび図5Bに示されるように実数を用いて、または、図5Cに示されるように2値数を用いて、表すことができる。
【0060】
【数14】
【0061】
図5Aにおいて、故障はバスpとバスsとの間のブランチで発生している。故障ブランチのターミナルバス、すなわちバスpおよびバスsのみが、その出力特徴ベクトルにおいて非ゼロ要素を有する。その他すべてのバスについて、たとえば、バスmおよびバスtについて、出力特徴の値はゼロに設定される。故障ブランチのターミナルバスについて、故障位相に対応する要素のみが、その出力特徴ベクトルにおいて非ゼロ値で設定される。故障ブランチのターミナルバス上の故障位相の出力特徴の大きさは、故障スポットからバスまでの相対距離に基づいて決定され、故障は、このバスから上流または下流の方向にある。上流および下流方向は、配電システムの変電所までの距離を比較することによって決定される。一対のバスについて、変電所に近い方のバスを上流バスとみなし、他方を下流バスとみなす。
【0062】
【数15】
【0063】
既知の故障イベントについて、故障ブランチ、故障位置および故障位相から、それに応じてすべてのバスについて出力特徴を求めることができる。したがって、このイベントについて、フルセットの出力特徴、ノード特徴、およびブランチ特徴を取得し、出力特徴とノードおよびブランチ特徴との関係を学習するための訓練サンプルとして使用することができる。
【0064】
【数16】
【0065】
【数17】
【0066】
【数18】
【0067】
【数19】
【0068】
【数20】
【0069】
【数21】
【0070】
【数22】
【0071】
【数23】
【0072】
本開示は、配電システムの故障位置とバス特徴およびブランチ特徴との関係をマッピングするために使用されるグラフニューラルネットワーク(GNN)を含み得る。組み合わされたノードおよびリンク属性を有するグラフ処理層を用いることにより、システムトポロジー、バス測定値およびブランチパラメータを、隠れノード埋め込みにマッピングし、全接続高密度層を用いることにより、故障位置を隠れノード埋め込みに関連付ける。図3Aおよび図3Bに示されるように、グラフのノード属性は、測定された電圧および電流を含む。ブランチインピーダンス/アドミタンスおよびレギュレーションパラメータに基づいて生成された等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、図4A図4Eに示されるように、グラフのリンク属性に統合される。図5A図5Cに示されるように、故障位置は、グラフの実数および2値数で、ノード出力特徴として表される。このグラフニューラルネットワークは、1相地絡、2相地絡、相間故障、および3相間故障を含むさまざまな種類の故障に適用可能である。
【0073】
図6は、本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムの故障の検出および位置特定に使用されるグラフニューラルネットワークの構成を示す概略図である。具体的には、図6は、故障位置特定タスクに適用されるGNNモデルの構造を示している。これは、いくつかのグラフ処理層と、それに続くいくつかの全結合高密度層とを含む。入力XおよびYは、Lのグラフ処理層およびLの全結合高密度層を通り、その後に非線形活性化関数が続く。回帰モデルにはシグモイド関数が使用され、分類モデルにはソフトマックス関数が使用される。グラフ処理層および全結合層の重みおよびバイアスは、回帰モデルの場合は出力特徴の二乗誤差損失として、分類モデルの場合は出力特徴の交差エントロピー損失として定義される、損失関数を最小にすることによって最適化される。このモデルを訓練するためにアダムオプティマイザー(Adam optimizer)が使用される。
【0074】
所定の配電システムについて、正常ケースおよび欠陥ケースを、当該システム内のブランチごとにシミュレートすることにより、故障位置特定モデルを訓練し評価するために使用する訓練およびテストデータセットを生成する。故障の種類は、1相地絡故障、2相地絡故障、相間故障、3相地絡故障、および3相間故障を含む。ブランチごとの異なる故障位置特定、故障ごとの異なる故障抵抗、およびシステムの異なる負荷レベルがシミュレートされる。故障中の電圧および電流フェーザが測定される。
【0075】
引続き図6を参照して、GNNモデルを実現するために、Xは、すべてのバスの測定値を含む。測定されないバスについて、対応する値をゼロに設定する。Yは、すべてのブランチのパラメータを含む。スイッチまたはレギュレータブランチについては、これを、考慮すべき下流ブランチと併合し、併合したブランチのパラメータYを、下流ブランチのインピーダンスおよびアドミタンス、ならびにレギュレータおよびスイッチの通電/レギュレーション設定に基づいて求め、このブランチは、下流でスイッチまたはレギュレータに直接接続されている。加えて、レギュレータまたはスイッチブランチと下流ブランチとの間の中間バスは無視し、そのノード特徴は考慮しない。
【0076】
使用されるGNNモデルは、拡張されたグラフ畳み込みネットワークモデルである。グラフ畳み込みネットワーク(GCN)は、個々のグラフノードについてのローカル近傍情報のアグリゲートにおいて強力なアーキテクチャであることが証明されている。低ランクの近接度およびノード特徴は、既存のGCNにおいて首尾よく強化されるが、グラフリンクが持っているであろう属性は、通常は無視される。なぜなら、これらのモデルのほとんどすべてが、グラフリンクを、ノードの接続状態を記述するバイナリまたはスカラー値に単純化するからである。それと比較して、使用される拡張されたGCNモデルは、ノード属性とリンク属性の双方を入力として取り込む。
【0077】
図7は、本開示のいくつかの実施形態に係る、配電システムを表すために使用されるノード属性およびリンク属性の双方によって記述されたグラフを示す概略図である。具体的には、図7は、行ベクトルを用いてその特徴を記述するために属性のセットを有する各ノードを示し、各ブランチも、行ベクトルとしてその特徴を記述するためにこのブランチ自身の属性のセットを有する。リンク属性とノード属性との間の相互作用を十分に捉えるために、ノードの近傍特徴を、リンク属性と、対応するノード属性とのテンソル積と定義することができる。
【0078】
【数24】
【0079】
【数25】
【0080】
【数26】
【0081】
【数27】
【0082】
【数28】
【0083】
【数29】
【0084】
【数30】
【0085】
【数31】
【0086】
【数32】
【0087】
【数33】
【0088】
【数34】
【0089】
サンプリング確率をバッチごとに評価することはむしろ非効率的になる可能性がある。ネットワークパラメータはバッチごとに著しく異なるものではないという仮定の下で、最適分布の計算の間隔を制御することにより、分散と効率との兼ね合いと図ることができる。すなわち、すべての訓練ノードのサンプリング確率を、k個のバッチごとに計算する。この計算は時間がかかるかもしれないが、バッチ平均の時間的コストは、1/kに短縮される。
【0090】
引続き図8を参照して、訓練時間を予測できるようにするために、訓練対象のノードのセットをいくつかのバッチに分割し、各バッチは固定数のノードを有する。計算の負担を軽減し他の配電システムへのモデルマイグレーションを容易にするために、固定数の近傍サンプルを、調査対象のノードのすべての近傍からランダムに選択することにより、各ノードごとに考慮する。
【0091】
【数35】
【0092】
【表1】
【0093】
【数36】
【0094】
【表2】
【0095】
図9は、本開示の実施形態に係る、方法およびシステムのいくつかの技術を実現するために使用できるコンピューティングシステム999を非限定的な例として示す概略図である。このコンピューティングシステム999は、各種形態のデジタルコンピュータ、たとえばラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、携帯情報端末、サーバ、ブレードサーバ、メインフレーム、およびその他の適切なコンピュータを表す、コンピューティング装置またはデバイス900を含み得る。
【0096】
コンピューティングデバイス900は、電源908と、プロセッサ909と、メモリ910と、ストレージデバイス911とを含み得るものであり、これらはすべてバス950に接続されている。さらに、高速インターフェイス912、低速インターフェイス913、高速拡張ポート914、および低速接続ポート915を、バス950に接続することができる。また、低速接続ポート916がバス950に接続される。意図されているのは、特定の用途に応じて、非限定的な例900として共通のマザーボード上に搭載し得る各種コンポーネント構成である。またさらに、入力インターフェイス917をバス950を介して外部受信機906および出力インターフェイス918に接続できる。受信機919をバス950を介して外部送信機907および送信機920に接続できる。また、外部メモリ904、外部センサ903、マシン902および環境901をバス950に接続できる。さらに、1つ以上の外部入出力デバイス905をバス950に接続できる。ネットワークインターフェイスコントローラ(NIC)921を、バス950を通してネットワーク922に接続するように適合させることができ、とりわけ、データまたはその他のデータを、コンピュータデバイス900の外部にある、サードパーティディスプレイデバイス、サードパーティイメージングデバイス、および/またはサードパーティプリンティングデバイス上でレンダリングすることができる。
【0097】
意図されているのは、メモリ910が、コンピュータデバイス900が実行可能な命令、履歴データ、ならびに本開示の方法およびシステムが利用できる任意のデータを格納できることである。メモリ910は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、またはその他の適切なメモリシステムを含み得る。メモリ910は、1つもしくは複数の揮発性メモリユニットおよび/または1つもしくは複数の不揮発性メモリユニットであってもよい。また、メモリ910は、磁気または光ディスクのような別の形態のコンピュータ読取可能媒体であってもよい。
【0098】
引続き図9を参照して、ストレージデバイス911は、コンピュータデバイス900が使用する補足データおよび/またはソフトウェアモジュールを格納するように適合させることができる。たとえば、ストレージデバイス911は、本開示に関して先に述べたような履歴データおよびその他の関連データを格納することができる。これに加えてまたはこれに代えて、ストレージデバイス911は、本開示に関して先に述べたようなデータと同様の履歴データを格納することができる。ストレージデバイス911は、ハードドライブ、光学ドライブ、サムドライブ(thumb-drive)、ドライブのアレイ、またはその任意の組み合わせを含み得る。さらに、ストレージデバイス911は、コンピュータ読取可能媒体、たとえば、フロッピー(登録商標)ディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、またはテープデバイス、フラッシュメモリまたはその他同様のソリッドステートメモリデバイス、または、ストレージエリアネットワークもしくはその他の構成内のデバイスを含むデバイスのアレイ等を含み得る。命令は情報キャリアに格納できる。命令は、1つ以上の処理デバイス(たとえばプロセッサ909)によって実行されると、先に述べた方法のような1つ以上の方法を実行する。
【0099】
このシステムは、任意で、当該システムをディスプレイデバイス925およびキーボード924に接続するように適合させたディスプレイインターフェイスまたはユーザインターフェイス(HMI)923に、バス950を通してリンクさせることができ、このディスプレイデバイス925は、とりわけ、コンピュータモニタ、カメラ、テレビ、プロジェクタ、またはモバイルデバイスを含み得る。
【0100】
引続き図9を参照して、コンピュータデバイス900は、プリンタインターフェイス(図示せず)に適合させたユーザ入力インターフェイス917を含み得るものであり、プリンタインターフェイスも、バス950を通してプリンティングデバイス(図示せず)に接続するように適合させることができ、プリンティングデバイスは、とりわけ、液体インクジェットプリンタ、固体インクプリンタ、大規模商用プリンタ、サーマルプリンタ、UVプリンタ、または染料昇華型プリンタを含み得る。
【0101】
高速インターフェイス912はコンピューティングデバイス900の帯域幅集約動作を管理し、低速インターフェイス913は低帯域幅集約動作を管理する。このような機能の割当は一例に過ぎない。いくつかの実装形態において、高速インターフェイス912は、メモリ910、ユーザインターフェイス(HMI)923、およびキーボード924とディスプレイ925に、(たとえばグラフィックスプロセッサまたはアクセラレータを通して)結合することができ、かつ、バス950を介して各種拡張カード(図示せず)を受け入れることができる高速拡張ポート914に、結合することができる。この実装形態において、低速インターフェイス913は、ストレージデバイス911および低速拡張ポート915にバス950を介して結合される。各種通信ポート(たとえばUSB、ブルートゥース(登録商標)、イーサネット(登録商標)、無線イーサネット)を含み得る低速拡張ポート915は、1つ以上の入出力デバイス905に、およびその他のデバイス、キーボード924、ポインティングデバイス(図示せず)、スキャナ(図示せず)、または、スイッチもしくはルータ等のネットワーキングデバイスに、たとえばネットワークアダプタを通して結合されてもよい。
【0102】
引続き図9を参照して、コンピューティングデバイス900は、図面に示されるようにいくつかのさまざまな形態で実現し得るものである。たとえば、標準サーバ926として、または、このようなサーバのグループにおいて複数回、実現されてもよい。加えて、ラップトップコンピュータ927のようなパーソナルコンピュータにおいて実現されてもよい。また、ラックサーバシステム928の一部として実現されてもよい。これに代えて、コンピューティングデバイス900のコンポーネントを、モバイルコンピューティングデバイス等のモバイルデバイス内のその他のコンポーネントと組み合わせてもよい。このようなデバイスの各々は、コンピューティングデバイス900およびモバイルコンピューティングデバイスのうちの1つ以上を含み得るものであり、システム全体を、相互に通信する複数のコンピューティングデバイスで構成してもよい。
【0103】
図10は、本開示の実施形態に係る、ネットワーク概要を含む、システムおよび方法を実現するために使用できるいくつかのコンピューティングデバイスを有する別のコンピュータシステム1000を示す、ブロック図である。配電制御システム(DCS)1051を実現するためのネットワークの一例は、中央コンピュータ1042を含み得る、すなわち、2つ以上の中央コンピュータであってもよく、配電制御システムはまた、ネットワーク接続されたコンピュータ1044、1046、1048、1050および1052に対して通信可能に接続されたネットワーク1049を含み得る。中央コンピュータ1042は、DCS1051を管理し動作させることができ、非限定的な例として、ネットワーク接続されたコンピュータ1044、1046、1048、1050および1052に対応付けられた電気負荷またはリソースのために働くまたはその逆の配電システムを管理するオペレータに対応付けることができる。中央コンピュータ1042は、電力システム内の1つ以上のバス/1種類以上の変電所に対応付けることができる。また、ネットワーク1049は、非限定的な例として、電気デバイス、発電機その他に接続されたコンピューティングハードウェアを含み得るものであり、コンピューティングハードウェアは、本開示のシステムおよび方法を実施するように構成された集積回路を含み得る。中央コンピュータ1042は、コンピューティングデバイス1046、1408であってもよい、インテリジェント電子装置および位相測定ユニット等のモニタリングデバイスに対応付けられたコンピューティングデバイスから、リアルタイムの測定値を受信することができ、また、コンピューティングデバイス1044、1050および1052であってもよい、電圧レギュレーションデバイスまたは切換可能デバイスに対応付けられたコンピューティングデバイスから、ステータスまたはレギュレーション設定を受信することができる。そうすると、オペレータまたは中央コンピュータ1042は、リアルタイムの測定値またはステータスを収集することを求める要求を、コンピューティングデバイス1044、1046、1048、1050および1052に送ることができる。この要求が受信されると、求められた情報が収集され、処理のためにDCSに返される。たとえば、中央コンピュータ1042は、コンピューティングデバイス1044、1046、1048、1050および1052が収集したデータを用いて、配電フィーダにおける短絡故障を検出しその位置を特定することができる。中央コンピュータ1042はまた、ネットワーク接続されたコンピュータに送信することができる履歴故障イベント等のその他のデータを有し得る。さらに、有線ネットワーキング(たとえばイーサネットIEEE規格802.3もしくはその他の適切な規格)または無線ネットワーキングを使用するローカルエリアネットワーク(「LAN」)として使用することができるネットワーク1049を通して、中央コンピュータ1042にアクセスすることができる。
【0104】
たとえば、先に述べたように、DCS1051は、たとえばインターネットを通して中央コンピュータ1042にDCSの要求を送信するウェブサイトを通して要求を受信すると、コンピューティングデバイス1046、1048を用いて、故障中電圧および電流測定値に基づいてノード属性データセットを生成することができる。このような場合、要求は、非一時的なコンピュータ読取可能媒体(たとえばメモリまたはストレージ)に格納されたコンピュータ実行可能命令を実行することにより、計算および送信することができる。中央コンピュータ1042が、モニタリングデバイスの1046、1048に対応付けられたコンピューティングデバイスからノード属性データセットを受信することが可能であり、コンピューティングデバイス1044、1050および1052を介してブランチレギュレーションおよび通電データに対応付けられたコンピューティングデバイスからブランチ属性データセットを受信することが可能である。
【0105】
引続き図10を参照して、(タップチェンジャーまたはスイッチコントローラであってもよい)コンピューティングデバイス1052は、トランシーバ1056と通信するハードウェアプロセッサ1054を含む。トランシーバ1056は、電気デバイスの動作対象であるエリアに関連する環境1001からデータを収集する1つのセンサ1002または複数のセンサと通信することができる。センサ1002は、入力を、メモリ1058に格納できる信号に変換する。ハードウェアプロセッサ1054は、コンピュータストレージメモリ、すなわちメモリ1058と通信し、メモリ1058は、ハードウェアプロセッサ1054が実現可能なアルゴリズム、命令およびその他のデータを含む、格納されたデータを含む。コンピューティングデバイス1052はさらに、コントローラ1060と、送信機1007と、外部メモリデバイス1062と、ネットワーク対応サーバ1064と、クライアンデバイス1068とを含み得る。
【0106】
意図されているのは、ハードウェアプロセッサ1054が、特定の用途の要件に応じて2つ以上のハードウェアプロセッサを含み得ることであり、これらのプロセッサは内部プロセッサまたは外部プロセッサのいずれであってもよい。もちろん、その他のデバイスのうちの出力インターフェイスおよびトランシーバを含む、その他の構成要素を方法1000に取り入れてもよい。
【0107】
ネットワーク1049は、非限定的な例として、1つ以上のローカルエリアネットワーク(LAN)および/またはワイドエリアネットワーク(WAN)を含み得る。ネットワーキング環境は、エンタープライズ規模のコンピュータネットワーク、イントラネットおよびインターネットに類似するものであってもよい。上記構成要素のすべてについて意図されているのは、システム1000内で任意の数のクライアントデバイス、ストレージコンポーネント、およびデータリソースを使用できることである。各々は、1つのデバイスを、または分散環境内で協働する複数のデバイスを含み得る。さらに、システム1000は、1つ以上のデータソース(図示せず)を含み得る。データソースは、訓練ニューラルネットワークが故障位置特定回帰または分類関数を表現するためのデータリソースを含み得る。データソースが提供するデータは、故障中電圧および電流測定値、故障前ブランチレギュレーションおよび通電データ、ならびに履歴短絡イベントの検証済の故障の種類および位置を含み得る。
【0108】
本開示は、既存の技術および技術分野を、たとえば、DCSが提供する故障検出結果に基づいて制御されるインテリジェントコントローラを使用する配電システム管理および制御の分野を、改善する。たとえば、コンピューティングハードウェアは、故障位置が判明すると、DCSが発したコマンドに基づいて、フィーダ遮断器等の電気装置を起動または停止する。具体的には、本開示のシステムおよび方法の構成要素は、切換可能なデバイスの制御を、当該デバイスに対応付けられたコンピューティングデバイスを用いて改善し、そうすることで配電システム管理を改善するために、有意義に適用される。さらに、本開示のシステムおよび方法のステップは、電気デバイスに対応付けられたコンピューティングハードウェアによるものである。
【0109】
特徴
ある局面は、ノード属性が、大きさおよび角度の測定値を含む測定された位相対地電圧と、大きさおよび角度の測定値を含む測定された注入電流とを含むことを、含み得る。別の局面において、故障検出装置は、故障前ブランチレギュレーションおよび通電と、故障中の時間同期ノード電圧および電流と、配電フィーダに対応付けられたセンサから得られた、一次フィーダの起点端子、一次フィーダの終端端子、および配電フィーダに対応付けられた配電変圧器の低電圧側のいずれかにおける、大きさおよび角度とを、リアルタイムで測定するように構成されている。
【0110】
別の局面において、ノード属性は、双方が大きさおよび角度の測定値を含む測定された相間電圧およびゼロシーケンス電圧と、大きさおよび角度の測定値を含む測定された注入電流とを含む。
【0111】
他の局面において、ブランチ属性は、ブランチによって分離されたノードに対応する等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列の少なくとも一部を含む。配電ラインについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、そのラインについての直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる。配電変圧器についての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、変圧器のラインについての変圧器比率、直列インピーダンス、および巻線接続に従って求められる。電圧レギュレータを下流配電ラインと組み合わせたブランチについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、レギュレータのレギュレーション比率のセットおよび巻線接続、ならびに配電ラインの直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる。スイッチを下流配電ラインと組み合わせたブランチについての等価のノードコンダクタンスおよびサセプタンス行列は、スイッチのすべての位相についての通電ステータスのセット、ならびに配電ラインの直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列に従って求められる。
【0112】
別の局面において、POE特性は、ノードに接続された電力負荷の典型的な負荷需要プロファイルおよび位相接続を含むノードデータと、ノードに接続された分散発電機の典型的な発電プロファイルおよび位相接続と、ノードに接続された分路キャパシタのキャパシタ容量および位相接続とを含み得る。
【0113】
さらに、ある局面において、POE特性は、配電ブランチについての直列インピーダンス行列および並列アドミタンス行列を含むブランチデータと、変圧器比率、直列インピーダンス、および巻線接続を含む、変圧器ごとのパラメータのセットと、レギュレーション比率および巻線接続を含む電圧レギュレータごとのパラメータのセットと、スイッチについての位相通電ステータスのセットとを含み得る。別の局面において、ノードから受信した、測定された電圧および電流生データは、インテリジェント電子装置(IED)に、または物理フェーザ測定ユニット(PMU)に記録される。他の局面において、ブランチから受信した、リアルタイムで測定されたレギュレーションおよび通電生データは、レギュレータのためのタップチェンジャーまたはスイッチのためのコントローラに記録される。
【0114】
ある局面において、故障検出ニューラルネットワークは、配電フィーダのすべてのブランチのうちの各ブランチについて予め定められた故障状態のセットを別々にシミュレートすることによって生成された故障シナリオのセットを用いて訓練され、故障状態は、故障の種類と、ブランチに沿った相対的な故障位置と、故障位置におけるインピーダンスと、故障前負荷需要レベルおよび故障前発電レベルとを含む。さらに、シミュレートされた各故障シナリオごとの、ノード属性のデータセット、ブランチ属性のデータセット、および出力属性のセットを得ることを含む。出力属性は、故障を有するブランチによって分離されたノードと、故障位置と故障を有するブランチのノードとの間の相対距離と、故障を有するブランチの故障位相のセットとを特定するためのデータを含む。故障の種類は、1相地絡故障、2相地絡故障、相間故障、3相地絡故障、および3相間故障を含む。
【0115】
別の局面において、故障検出ニューラルネットワークはグラフニューラルネットワークであり、グラフニューラルネットワークは、ノードおよびブランチ属性を隠れノード埋め込みにアグリゲートするための一連のグラフ処理層と、グラフ隠れノード埋め込みに従って故障位置を推定するための一連の全接続予測層とを含む。第1のグラフ処理層は、ノード埋め込みにノード属性を設定し、一連のグラフ処理層は、そのノード埋め込みを、前の層における重み付けされたノード埋め込みの組み合わせの活性化総和および近傍の影響の重み付け総和として計算する。各近傍ごとの近傍の影響は、近傍埋め込みと近傍ノードに接続されたブランチの重み付けされたブランチ属性との減衰組み合わせとして計算され、減衰因子は、重み付けされたノード埋め込み、重み付けされたブランチ属性、重み付けされた近傍埋め込み、およびバイアスの加算の、活性化総和として計算される。
【0116】
他の局面において、近傍の影響の総和は、固定数の近傍サンプルの予想される近傍の影響として近似され、サンプリング確率が、近傍埋め込みと重み付けされたブランチ属性との組み合わせのノルムに従って近似される。各予測層は、その出力特徴を、バイアスが加えられた前の層からの重み付けされた入力の活性化総和として計算し、最初の予測層の入力は、最後のグラフ処理層の計算されたノード埋め込みである。最後の予測層の出力特徴は、故障位置に関連するデータである。合計された近傍埋め込みは、固定数の近傍をサンプリングすることによって推定され、各近傍埋め込みのノルムに従って定められたサンプリング確率を有するサンプルについての近傍埋め込みの期待値として近似される。
【0117】
本開示のいくつかの実施形態は、従来のグラフ畳み込みネットワーク(GCN)を拡張したものであるGNNモデルを含む。本開示のGNNは、故障の挙動に影響し得る要素およびパラメータのより完全なセットをモデル化し、そうすることで、従来のGCNと比較して故障の検出および位置特定の精度を改善する。従来のGCNは従来の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に基づく。CNNは、入力画像を取り込み、画像内のさまざまな様相/物体に重要度(学習可能な重みおよびバイアス)を割り当て、これらを互いに区別することができる。従来のグラフ畳み込みネットワーク(GCN)は、先に述べたように、グラフに対して直接作業することができこれらの構造上の情報を利用することができるタイプの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。故障および故障位置を検出するために使用される従来のGCNは、具体的にはバスの位置における故障を検出するためのものであり、その原因は、個々のグラフノードについてローカル近傍情報をアグリゲートする際の従来のGCN機能にある。これらの従来のGCNはグラフの低ランク近接度およびノード特徴を強化するが、無視されているのは、グラフリンクが持っているであろう属性であり、これらの従来のGCNモデルのすべてが、グラフリンクを、ノード接続性を記述するバイナリまたはスカラー値に単純化し、バス位置においてローカル近傍で重み付けされた場合に近傍性およびそれらの影響を特定する。
【0118】
定義
短絡故障:短絡故障は、意図されていない経路に沿い、電気インピーダンスがないまたは非常に低い状態で電流が流れるようにする、電気回路である。結果として、この回路には過剰な電流が流れる。配電システムにおいて配電フィーダに沿ってさまざまな種類の短絡故障が生じることは、避けられない事実である。恒久的な故障は、遮断器を開きフィーダの故障が生じた区間を囲むエリアの電源を断つリレーアクションを生じさせる。
【0119】
フィーダ:配電フィーダは、非限定的な例として、電圧レギュレータ、インライン変圧器、さまざまな構成の架空配電線および地下ケーブル、いくつかの不平衡スポットおよび配電負荷、ならびに分路キャパシタバンクを、有し得る。また、フィーダは、3相、2相、および1相ラテラルを有する。
【0120】
イベント:イベントは、送配電網の少なくとも一部に損傷を引き起こす何らかのアクションとみなされ、結果として、配電ネットワークにおける電力の不安定化または損失を引き起こし、即時、または近い将来のある時点のいずれかで、連続電力供給の中断を生じさせる可能性がある。イベントのいくつかの例は、自然災害イベント(気象、地震その他)、故意の破壊イベント(テロリストの攻撃その他)、または意図せぬ破壊イベント(倒木、航空機墜落、列車事故その他)と考えられる。
【0121】
電力途絶:電力途絶は、配電ネットワークにおける停電または電源異常の可能性がある。電源異常のいくつかの原因の例は、発電所における故障、送電線、変電所もしくは配電システムの他の部分の損傷、短絡、または電気幹線の過負荷を含み得る。具体的には、停電は、損傷の程度または停電の原因に応じて、1つの家屋、建築物または都市全体に影響を与える可能性がある、送配電網の所定のエリアまたは区間における短期間または長期間の電力損失状態となり得る。
【0122】
電力負荷:電力負荷は、(アクティブ)電力を消費する回路の電気構成要素または部分である電気負荷の可能性がある。これは、電力を生成する電池または発電機等の電源とは逆である。電力回路における負荷の例は、電化製品および照明である。負荷はさらに、臨界負荷と非臨界負荷とに分類することができる。
【0123】
状態情報:デバイスからの状態情報は、デバイスの通電ステータス、デバイスの損傷/切断ステータス、端子電圧、および電力潮流を含み得る。たとえば、デバイスから受ける電流状態情報は、状態情報を受けたまたは得た瞬間の更新された状態情報であってもよい。
【0124】
配電網データ:配電網データは、配電網のトポロジー、負荷および電源の位置、負荷および発電の典型的なプロファイルを、臨界負荷のサブセットおよび非臨界い負荷のサブセットとしての1つ以上の負荷のラベル付けとともに、含み得る。
【0125】
実施形態
以下の説明は、具体例としての実施形態のみを提供し、開示の範囲、適用可能性、または構成を限定することを意図していない。むしろ、具体例としての実施形態の以下の説明は、具体例としての1つ以上の実施形態を実装すること可能にする説明を、当業者に提供するであろう。添付の請求項に記載されている開示された主題の精神および範囲から逸脱することなく、要素の機能および構成に対してなされ得る、各種変更が意図されている。
【0126】
具体的な詳細事項は、以下の記載において、実施形態の十分な理解のために与えられる。しかしながら、これらの具体的な詳細事項がなくても実施形態を実行できることを、当業者は理解できる。たとえば、開示された主題におけるシステム、プロセス、および他の要素は、実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないために、ブロック図の形態で構成要素として示される場合もある。他の例では、実施形態を不明瞭にしないよう、周知のプロセス、構造、および技術は、不必要な詳細事項を伴わずに示されることがある。さらに、各種図面における同様の参照番号および名称は同様の要素を示す。また、個々の実施形態は、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、またはブロック図として示されるプロセスとして説明される場合がある。フローチャートは動作を逐次プロセスとして説明することができるが、動作の多くは並列にまたは同時に実行することができる。加えて、動作の順序は入れ替え可能である。プロセスは、その動作が完了したときに終了されてもよいが、論じられていないかまたは図に含まれていない追加のステップを有する場合がある。さらに、具体的に記載されている何らかのプロセスにおけるすべての動作がすべての実施形態に起こり得る訳ではない。プロセスは、方法、関数、手順、サブルーチン、サブプログラムなどに対応し得る。プロセスが関数に対応する場合、関数の終了は、呼び出し関数または主関数に関数を戻すことに対応し得る。
【0127】
さらに、開示されている主題の実施形態は、少なくとも一部、手作業でまたは自動で実装されてもよい。手作業または自動の実装は、マシン、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、またはその任意の組み合わせを通じて、実行されてもよく、または、少なくとも支援されてもよい。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアまたはマイクロコードで実装される場合、必要なタスクを実行するためのプログラムコードまたはコードセグメントは、マシン読取可能媒体に格納されてもよい。プロセッサは必要なタスクを実行してもよい。本明細書に概要が記載される各種方法またはプロセスは、各種オペレーティングシステムまたはプラットフォームのうちのいずれか1つを使用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとして符号化されてもよい。加えて、このようなソフトウェアは、複数の適切なプログラミング言語および/またはプログラミングもしくはスクリプティングツールのうちのいずれかを用いて記述されてもよく、また、フレームワークまたは仮想マシン上で実行される実行可能なマシン言語コードまたは中間コードとしてコンパイルされてもよい。典型的に、プログラムモジュールの機能は、各種実施形態において希望に応じて組み合わされても分散されてもよい。
【0128】
本開示の実施形態は、その一例が提供されている方法として実施されてもよい。方法の一部として実行される行為は、任意の適切なやり方で順序付けられてもよい。したがって、実施形態は、行為が、説明した順序と異なる順序で実行されるものとして構成されてもよく、これは、いくつかの行為を、説明のための実施形態では一連の行為として示されていても、同時に実行することを含み得る。さらに、請求項において請求項の要素を修飾するための「第1」、「第2」等の順序を示す用語の使用は、それ自体が、請求項のある要素の、別の要素に対する優先、先行、または順序を、またはある方法の行為が実行される時間的順序を、暗示するものではなく、クレームの要素を区別するために、特定の名称を有する請求項のある要素を(順序を示す用語の使用を別にして)同一の名称を有する別の要素と区別するためのラベルとして使用されているに過ぎない。本開示をいくつかの好ましい実施形態を用いて説明してきたが、その他さまざまな適合化および修正を本開示の精神および範囲の中で実施できることが理解されねばならない。したがって、本開示の真の精神および範囲に含まれるこのような変形および修正形をすべてカバーすることが以下の請求項の局面である。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10