(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241011BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/00 A
(21)【出願番号】P 2021198105
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】202011468188.4
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 聖彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲駿▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 瑶
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-159237(JP,A)
【文献】特開2017-035918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
B60K 7/00-8/00,16/00
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するための電池パックと、
少なくとも一つの交差連結構造を有する車体補強構造部材と、
を備え、
前記車体補強構造部材の左右両側は、それぞれ車体の左右側に固定され、
前記車体補強構造部材の少なくとも一箇所が前記電池パックに固定され
、
前記車体補強構造部材は、前記車体に取り付けられ、かつ、前記電池パックに連結される補強構造本体を備え、前記補強構造本体は、少なくとも第一補強ロッド及び第二補強ロッドを有し、
前記車体補強構造部材は、前記第一補強ロッド及び/又は前記第二補強ロッドに連結される電池パック連結ブラケットを備え、
前記電池パック連結ブラケットの一端が前記車体の底部に取り付けられ、前記電池パック連結ブラケットの他端が前記電池パックに連結される、ことを特徴とする、電動車両。
【請求項2】
前記第二補強ロッドは、前記第一補強ロッドに交差連結される、少なくとも一組の組み合わせロッドである、ことを特徴とする、
請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記第二補強ロッドは、それぞれ独立して設置された第一ストラットおよび第二ストラットを備え、
前記第一ストラットおよび前記第二ストラットは、前記第一補強ロッドの対向する両側に配置され、かつ、前記交差連結構造を形成し、
前記第一補強ロッドの中心軸線と、前記第一ストラットの中心軸線と、前記第二ストラットの中心軸線とは同じ平面に位置する、ことを特徴とする、
請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記補強構造本体は、前記交差連結構造に取り付けられた固定ブラケットを含む、ことを特徴とする、
請求項1に記載の電動車両。
【請求項5】
前記電池パック連結ブラケットは、前記第一補強ロッドおよび前記第二補強ロッドの間の最大間隔の位置で前記第一補強ロッドと前記第二補強ロッドとに連結される、ことを特徴とする、
請求項1に記載の電動車両。
【請求項6】
前記車体補強構造部材は、
前記電池パックに取り付けられた電池保護板と、
前記第一補強ロッド及び/又は前記第二補強ロッドに連結されて、一端が前記電池保護板に取り付けられた補強ブラケットと、
をさらに備える、ことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項7】
前記第一補強ロッドの端部は、それぞれ前記第二補強ロッドの端部に連結される、ことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項8】
前記車体補強構造部材は、連結部材を備え、
前記第一補強ロッドの前記端部は、前記連結部材によってそれぞれ前記第二補強ロッドの前記端部に連結されて、それぞれ前記車体の左右両側に固定される、ことを特徴とする、
請求項7に記載の電動車両。
【請求項9】
前記第一補強ロッドと前記第二補強ロッドとは、それぞれ中空ロッドである、ことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項10】
前記車体補強構造部材は、前記車体の底側に取り付けられ、かつ、前記電池パックの後部に隣接する、ことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項11】
車両を駆動するための電池パックと、
少なくとも一つの交差連結構造を有する車体補強構造部材と、
を備え、
前記車体補強構造部材の左右両側は、それぞれ車体の左右側に固定され、
前記車体補強構造部材の少なくとも一箇所が前記電池パックに固定され、
前記車体補強構造部材は、前記車体に取り付けられ、かつ、前記電池パックに連結される補強構造本体を備え、前記補強構造本体は、少なくとも第一補強ロッド及び第二補強ロッドを有し、
前記車体補強構造部材は、
前記電池パックに取り付けられた電池保護板と、
前記第一補強ロッド及び/又は前記第二補強ロッドに連結されて、一端が前記電池保護板に取り付けられた補強ブラケットと、
をさらに備える、ことを特徴とする、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両構造の技術分野に関し、特に電動車両を提供する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の発展に伴い、ますます多くの電気自動車が道路に現れる。一般的に、電気自動車の電池パックは、自動車の底部に取り付けられる。電池パックの存在により、車両のアンバランスを引き起こしやすい。車両が転向時の追従性を確保するために、車両の局所的な剛性を向上させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、一つの車体前部構造を開示している。この車体前部構造は、車室の前方側の前室内に位置し、かつ、車体の前後方向に延在する一対の前側縦ビームと、前室内において、前室の幅方向両側に配置され、かつ、内部に前輪用サスペンションが設けられた一対のストラットタワーと、ストラットタワーの上部およびストラットタワーに対向する前側縦ビームに結合され、かつ、それらの間に延在する補強部材とを備える。上記の構造により、自動車車体のねじり剛性及び横曲げ剛性が向上する。しかしながら、電池パックを取り付けることにより、車体の剛性不足に起因する車両のアンバランスを引き起こすという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電動車両を提供することにより、従来の電動車両において、電池パックを取り付けることにより車体の剛性が不足して車両のアンバランスを引き起こすことを解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様によれば、電動車両は、車両を駆動するための電池パックと、少なくとも一つの交差連結構造を有する車体補強構造部材と、を備え、前記車体補強構造部材の左右両側は、それぞれ車体の左右側に固定され、前記車体補強構造部材の少なくとも一箇所が前記電池パックに固定される。
上述の構成によれば、電動車両は、交差連結構造を有する車体補強構造部材の左右両側をそれぞれ車体の左右両側に固定することにより、車体補強構造部材が車体を補強し、車体の剛性を確保し、かつ、車両のアンバランスが発生するという問題を回避できる。同時に、車体補強構造部品の少なくとも一箇所を電池パックに固定することにより、電池パックの安定性を向上させ、車両の走行時における揺れを低減する。また、交差連結構造は、車体補強構造全体の剛性及び安定性を確実に向上させることができる。
【0007】
一つの実施例において、前記車体補強構造部材は、前記車体に取り付けられ、かつ、前記電池パックに連結される補強構造本体を備え、前記補強構造本体は、少なくとも第一補強ロッド及び第二補強ロッドを有してもよい。
上述の構成によれば、補強構造本体を車体に取り付けて、かつ、補強構造本体を電池パックに連結することにより、補強構造本体の第一補強ロッド及び第二補強ロッドが車体を補強する。これにより、車体の構造強度を向上させる。第一補強ロッド及び第二補強ロッドは、電池パックに連結されることにより、電池パックの安定性を向上させ、質量の大きい電池パックが車両の走行中に発生する揺れを回避することができる。
【0008】
一つの実施例において、前記第二補強ロッドは、前記第一補強ロッドに交差連結される、少なくとも一組の組み合わせロッドであってもよい。
上述の構成によれば、少なくとも一組の組み合わせロッドが交差して第一補強ロッドに連結され、すなわち第一補強ロッドと第二補強ロッドとが少なくとも一回交差して連結される。交差連結の構造剛性及び安定性がより優れるため、少なくとも第一補強ロッド及び第二補強ロッドを含む補強構造本体はより高い剛性及び安定性を有する。補強構造本体を車体に取り付けかつ電池パックに連結することにより、車体の構造剛性が補強されると同時に、電池パックの安定性も向上する。
【0009】
一つの実施例において、前記第二補強ロッドは、それぞれ独立して設置された第一ストラットおよび第二ストラットを備え、前記第一ストラットおよび前記第二ストラットは、前記第一補強ロッドの対向する両側に配置され、かつ、前記交差連結構造を形成し、前記第一補強ロッドの中心軸線と、前記第一ストラットの中心軸線と、前記第二ストラットの中心軸線とは同じ平面に位置してもよい。
上述の構成によれば、第二補強ロッドはそれぞれ独立した第一ストラット及び第二ストラットを有する。取り付ける際、第一ストラット及び第二ストラットは、それぞれ第一補強ロッドのロッド本体における対向する両側に配置され、かつ、交差連結構造を形成することができる。この構成により、交差連結構造の構造強度を保証する前提で、第一補強ロッドと第二補強ロッドとが交差連結時に干渉するということを回避できる。同時に、第一補強ロッドの中心軸線と、第一ストラットの中心軸線および第二ストラットの中心軸線のいずれもが同一平面に位置する構造は、交差連結構造が占有する空間を減少させると同時に、第一補強ロッドと第二補強ロッドとが衝突し、騒音を発生させることを回避できる。
【0010】
一つの実施例において、前記補強構造本体は、前記交差連結構造に取り付けられた固定ブラケットを含んでもよい。
上述の構成によれば、固定ブラケットを交差連結構造に取り付け、すなわち固定ブラケットを利用して交差連結構造を補強し保護することにより、補強構造本体の全体構造強度及び安定性を向上させる。
【0011】
一つの実施例において、前記車体補強構造部材は、前記第一補強ロッド及び/又は前記第二補強ロッドに連結される電池パック連結ブラケットを備え、前記電池パック連結ブラケットの一端が車体の底部に取り付けられ、前記電池パック連結ブラケットの他端が前記電池パックに連結されてもよい。
上述の構成によれば、第一補強ロッド及び/又は第二補強ロッドに連結された電池パック連結ブラケットの両端がそれぞれ車体の底部と電池パックに取り付けられることにより、第一補強ロッド及び/又は第二補強ロッドは、車体と電池パックとに連結される。これにより、補強構造本体が電池パックおよび車体に直接連結することが難しいことを効果的に解決できる。同時に、電池パック連結ブラケットが第一補強ロッド及び第二補強ロッドと共に安定した三角型構造を構成することができるため、補強構造本体の構造強度を向上させる。また、電池パック連結ブラケットにより、電池パックを補強構造本体と車体とに同時に固定することにより、電池パックの安定性をさらに向上させる。
【0012】
一つの実施例において、前記電池パック連結ブラケットは、前記第一補強ロッドおよび前記第二補強ロッドの間の最大間隔の位置で前記第一補強ロッドと前記第二補強ロッドとに連結されてもよい。
上述の構成によれば、電池パック連結ブラケットを第一補強ロッドおよび第二補強ロッドに連結し、かつ、電池パック連結ブラケットの連結位置は、第一補強ロッドと第二補強ロッドとの間隔が最大間隔の位置である。これにより、電池パック連結ブラケットは、第一補強ロッドと第二補強ロッドとの間を複数の三角型構造に仕切ることにより、補強構造本体の構造強度及び安定性を向上させる。
【0013】
一つの実施例において、前記車体補強構造部材は、前記電池パックに取り付けられた電池保護板と、前記第一補強ロッド及び/又は前記第二補強ロッドに連結されて、一端が前記電池保護板に取り付けられた補強ブラケットと、をさらに備えてもよい。
上述の構成によれば、電池パックに電池保護板を増設することにより電池パックを保護する。同時に、補強ブラケットを用いて第一補強ロッド及び/又は第二補強ロッドと電池保護板との間の連結強度をさらに向上させることができ、車体補強構造部材の全体構造強度を向上させる。また、補強ブラケットと第一補強ロッドおよび第二補強ロッドとの間に構造が安定した三角形構造を構成することができるため、補強構造本体の構造強度及び安定性を効果的に向上させる。
【0014】
一つの実施例において、前記第一補強ロッドの端部は、それぞれ前記第二補強ロッドの端部に連結されてもよい。
上述の構成によれば、第一補強ロッドの端部と第二補強ロッドの端部とを連結し、すなわち第一補強ロッドと第二補強ロッドとが交差して連結され、かつ、交差連結構造を形成すると同時に、第一補強ロッドと第二補強ロッドとが端部でも連結される。これにより、第一補強ロッドと第二補強ロッドとは、それぞれ対向する両端部と中部とで交差連結されることにより、補強構造本体の構造強度を向上させる。
【0015】
一つの実施例において、前記車体補強構造部材は、連結部材を備え、前記第一補強ロッドの前記端部は、前記連結部材によってそれぞれ前記第二補強ロッドの前記端部に連結されて、それぞれ前記車体の左右両側に固定されてもよい。
上述の構成によれば、連結部材を採用することにより、第一補強ロッド及び第二補強ロッドの端部を連結部材により車体の左右両側に固定し、第一補強ロッドの端部と第二補強ロッドの端部とを連結することが不便であり、かつ、車体に直接固定しにくいことを効果的に解決する。
【0016】
一つの実施例において、前記第一補強ロッドと前記第二補強ロッドとは、それぞれ中空ロッドであってもよい。
上述の構成によれば、第一補強ロッドと第二補強ロッドとのそれぞれが中空ロッドを採用することにより、全体構造強度を保証し、かつ、全体の重量を効果的に軽減すると同時に、車体補強構造部材のコストも低減する。
【0017】
一つの実施例では、前記車体補強構造部材は、前記車体の底側に取り付けられ、かつ、前記電池パックの後部に隣接してもよい。
上述の構成によれば、車体補強構造部材を車体の底側、かつ、電池パックの後部に隣接する位置に取り付けることにより、車体補強構造部材が電池パックの後部から電池パックに連結され、剛性が弱い車両後部に対して強化を行うと同時に、電池パックの安定性も向上させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上述各態様に係る電動車両によれば、従来の電動車両に対し、電池パックを取り付けることにより車体の剛性が向上させ、車両のアンバランスが起きることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係る電動車両の車体補強構造部材の構造概略図である。
【
図2】本発明の実施例に係る補強構造本体の構造概略図である。
【
図3】本発明の実施例に係る車体補強構造部材が電動車両の車体の底側に取り付けられる概略図である。
【
図4】本発明の実施例に係る車体補強構造部材が電動車両の車体の底側に取り付けられる場合、別の角度からの概略図である。
【
図5】本発明の実施例に係る電動車両における車体補強構造部材の別の構造概略図である。
【
図6】本発明の実施例に係る電動車両における車体補強構造部材の別の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の技術課題、技術構成および効果をより明確に説明するために、以下、図面および実施形態を参照し、本発明をより詳細に説明する。ここで、具体的な実施形態は、本発明の構成を説明するために記載しており、本発明を限定する目的ではない。以下の説明に用いる図面は、本発明のいくつかの実施形態であり、本技術領域の当業者にとって、これらの図面を参照して、その他の関連する図面を取得できる。
【0021】
以下の説明において、理解すべきこととして、用語「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等によって示された方位や位置関係などは、添付された図に示された方位や位置関係であり、説明を簡易にするために用いられる。これらの用語は、装置や部品などが必ず特定の方位や位置関係を有して、特定の操作を有することを示すあるいは暗示する目的で使用されることはない。このため、これらの用語は、本発明に対する限定ではなく、本技術領域の当業者にとって、具体的な状況に基づいて上述の用語の意味を理解することができる。
【0022】
用語「第一」および「第二」は、説明を行うために用いられ、構成の重要性や、技術構成の数量を示すあるいは暗示する目的で使用されることはない。用語「複数」の意味は、その他の特別な限定がない限り、二個または二個以上を意味する。
【0023】
以下の説明において、その他の明確な規定および限定がない限り、用語「取付」、「連なる」、および「連結」などは、広義に理解されるべきである。例えば、これらの用語によれば、固定連結であってもよく、取り外し可能に連結されてもよく、又は一体的に連結されてもよい。そして、機械的連結であってもよく、電気的連結であってもよい。直接連結されてもよく、中間媒体を介して間接的に連結されてもよく、二つの素子内部の連通であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0024】
図3及び
図4に示すように、本発明に係る電動車両は、車両駆動用の電池パック90、及び少なくとも一つの交差連結構造31を有する車体補強構造部材100を含む。車体補強構造部材100の左右両側は、それぞれ車体10の左右両側に固定され、かつ、車体補強構造部材100が少なくとも一箇所で電池パック90に固定される。
【0025】
本発明に係る電動車両は、交差連結構造31を有する車体補強構造部材100の左右両側をそれぞれ車体10の左右両側に固定することにより、車体補強構造部材100が車体10を補強する。これにより、車体10の剛性を確保し、車両の剛性アンバランスの問題を回避する。同時に、車体補強構造部材100の少なくとも一箇所を電池パック90に固定することにより、電池パック90の安定性を向上させ、走行過程における揺れを低減する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、一つの実施例において、車体補強構造部材100は、車本体10に取り付けられ、かつ、電池パック90に連結された補強構造本体110を有する。電池パック90の体積及び質量が一般的に大きいため、車両走行の過程において、電池パック90に揺れ現象が発生しやすいため、車両全体の安定性が低い。このため、補強構造本体110を車体10の底側に取り付けかつ電池パック90に連結することにより、補強構造本体110は、車体10の構造強度を補強するだけでなく、電池パック90を連結しロックすることにより、電池パック90の安定性を向上させ、さらに車両全体の安定性を向上させることができる。
【0027】
具体的には、補強構造本体110は、少なくとも第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30を含む。補強構造本体110が車体10に取り付けられかつ電池パック90に連結されることにより、補強構造本体110の第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30は、車体10を補強することにより、車体10の構造強度を向上させる。また、第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30は、電池パック90に連結されることにより、電池パック90の安定性を向上させ、質量の大きい電池パック90が車両走行過程に発生する揺れ現象を回避できる。
【0028】
補強構造本体110は、一本の第一補強ロッド20及び一本の第二補強ロッド30を含むと理解してもよい。
図1及び
図2に示すように、第一補強ロッド20のロッド本体と第二補強ロッド30のロッド本体とを連結することにより、構造強度がより強く、安定性がより高い交差連結構造31を構成し、このような交差連結構造31を有する補強構造本体110の構造強度及び安定性をさらに向上する。
【0029】
または、補強構造本体110は、一本の第一補強ロッド20及び二本以上の第二補強ロッド30を有してもよい。
図5に示すように、各第二補強ロッド30をそれぞれ第一補強ロッド20のロッド本体に間隔を開けて連結することにより、第一補強ロッド20と各第二補強ロッド30とが二つ以上の交差連結構造31をそれぞれ構成する。このような二つ以上の交差連結構造31を有する補強構造本体110は、構造強度及び安定性がさらに向上する。
【0030】
又は、補強構造本体110は、二本以上の第一補強ロッド20及び複数本の第二補強ロッド30を有してもよい。
図6に示すように、第二補強ロッド30の数が第一補強ロッド20の数以上であり、かつ、各第一補強ロッド20はいずれも交差しない。複数本の第二補強ロッド30をそれぞれ各第一補強ロッド20と交差連結することにより、各第一補強ロッド20は、それぞれ少なくとも一本の第二補強ロッド30と交差連結される。すなわち、各第一補強ロッド20は、それぞれ第二補強ロッド30と少なくとも一つの交差連結構造31を構成する。これにより、二つ以上の第一補強ロッド20及び複数本の第二補強ロッド30を有する補強構造本体110は、より優れた構造強度及び安定性を有する。
【0031】
本発明に係る電動車両は、補強構造本体110を車体10に取り付けられ、かつ、電池パック90に連結することにより、補強構造本体110の第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30が車体10を補強し、車体10の構造強度を向上させる。そして、第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30が電池パック90に連結されることにより、電池パック90の安定性を向上させ、質量の大きい電池パック90が車両走行過程で発生する揺れ現象を回避できる。
【0032】
図1から
図4に示すように、一つの実施例において、第二補強ロッド30は、第一補強ロッド20と交差して連結された、少なくとも一組の組み合わせロッドである。少なくとも一組の組み合わせロッドが第一補強ロッド20に交差して連結され、すなわち第一補強ロッド20が第二補強ロッド30と少なくとも一回交差連結される。交差連結の構造剛性及び安定性がより優れるため、少なくとも第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30を含む補強構造本体110は、より高い剛性及び安定性を有する。補強構造本体110を車体10に取り付けかつ電池パック90に連結することにより、車体10の構造剛性が補強されると同時に、電池パック90の安定性も向上する。ここで、第二補強ロッド30は、第一補強ロッド20と交差して連結された一組の組み合わせロッドであってもよく、第一補強ロッド20と間隔を開けて交差連結された複数組の組み合わせロッドであってもよい。組み合わせロッドの具体的な数は、実際の状況に応じて決定することができる。
【0033】
図1及び
図2に示すように、一つの実施例において、第二補強ロッド30は、それぞれ独立して設置された第一ストラット301及び第二ストラット302を含み、第一ストラット301及び第二ストラット302がそれぞれ第一補強ロッド20の対向する両側に配置されて交差連結構造31を形成する。第一補強ロッド20の中心軸線は、第一ストラット301の中心軸線および第二ストラット302の中心軸線のいずれも同一平面に位置する。取り付ける際に、第一ストラット301と第二ストラット302とは、それぞれ第一補強ロッド20のロッド本体の対向する両側に配置し、かつ、交差連結構造31を形成することができる。これにより、交差連結構造31の構造強度を保証する前提で第一補強ロッド20と第二補強ロッド30とが交差連結時に干渉するという問題を回避する。同時に、第一補強ロッド20の中心軸線が第一ストラット301の中心軸線および第二ストラット302の中心軸線のいずれも同じ平面に位置する構造は、交差連結構造31が占有する空間を減少させると同時に、第一補強ロッド20と第二補強ロッド30とが衝突して騒音を発生させることを回避できる。理解できるように、第二補強ロッド30は、一組ずつ独立して設置された第一ストラット301及び第二ストラット302を含むことができる。また、第二補強ロッド30は、二組以上の第一ストラット301及び第二ストラット302を含むことができる。そして、各組の第一ストラット301及び第二ストラット302は、それぞれ第一補強ロッド20の対向する両側に間隔を開けて配置され、かつ、複数の交差連結構造31を構成できる。
【0034】
図1から
図4に示すように、一つの実施例において、補強構造本体110は、交差連結構造31に取り付けられた固定ブラケット60を含む。固定ブラケット60を交差連結構造31に取り付け、すなわち固定ブラケット60を用いて交差連結構造31を補強保護することにより、補強構造本体110の全体構造強度及び安定性を向上させる。ここで、固定ブラケット60は、交差連結構造31を完全に覆うように、被覆式の構造を採用することができる。具体的には、固定ブラケット60は、前固定フレーム61と、前固定フレーム61に取り付けられる後固定フレーム62とを備える。前固定フレーム61の一側に前収容溝を有し、後固定フレーム62の一側に後収容溝を有する。前固定フレーム61と後固定フレーム62とを連結して取り付ける際、前収容溝と後収容溝とは共に第一補強ロッド20および第二補強ロッド30を配置するための収容キャビティを構成する。前固定フレーム61と後固定フレーム62とをそれぞれ第一補強ロッド20と第二補強ロッド30とで構成された交差連結構造31の対向する両側に取り付け、かつ、前固定フレーム61と後固定フレーム62とをボルト連結又は溶接することにより、第一補強ロッド20と第二補強ロッド30との交差連結箇所が収容キャビティ内にロックされる。これにより、交差連結構造31の構造強度が効果的に補強される。
【0035】
図1から
図4に示すように、一つの実施例において、車体補強構造部材100は、第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30に連結された電池パック連結ブラケット50を有する。電池パック連結ブラケット50は、一端が車体10に取り付けられ、他端が電池パック90に連結される。第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30に連結された電池パック連結ブラケット50の両端は、それぞれ車体10の底部及び電池パック90に取り付けられることにより、第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30が車体10及び電池パック90にそれぞれ連結される。これにより、丸棒状の第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30を含む補強構造本体110が電池パック90及び車体10に直接連結しにくいことを効果的に解決することで、補強構造本体110が取り付けやすくなる。同時に、電池パック連結ブラケット50、第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30は、共に安定した三角型構造を構成することにより、補強構造本体110の構造強度及び安定性を向上させる。ここで、電池パック連結ブラケット50が第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30に連結される方式は溶接、螺着、係止等の方式であってもよい。本実施例において、電池パック連結ブラケット50は、二つの弧度構造51を有し、第一補強ロッド20および第二補強ロッド30をそれぞれ対応する弧度構造51に設置し、例えば、第一補強ロッド20および第二補強ロッド30をそれぞれ対応する弧度構造51に溶接して連結することにより、第一補強ロッド20および第二補強ロッド30と電池パック連結ブラケット50とを溶接すると同時に、弧度構造51が第一補強ロッド20および第二補強ロッド30をある程度ロックすることができるため、全体の構造強度を向上させる。
【0036】
図1及び
図2に示すように、一つの実施例において、電池パック連結ブラケット50は、第一補強ロッド20と第二補強ロッド30との最大間隔の位置で第一補強ロッド20および第二補強ロッド30に連結される。電池パック連結ブラケット50を第一補強ロッド20および第二補強ロッド30に連結し、かつ、電池パック連結ブラケット50の連結位置が第一補強ロッド20と第二補強ロッド30との間隔が最大な位置であるため、電池パック連結ブラケット50と第一補強ロッド20および第二補強ロッド30との間に最大の三角型構造を形成することにより、補強構造本体110の構造強度及び安定性を向上させる。
【0037】
図1及び
図2に示すように、一つの実施例において、車体補強構造部材100は、電池パック90に取り付けられた電池保護板40と、第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30に連結され、かつ、一端が電池保護板40に取り付けられた補強ブラケット70とを含む。電池パック90に電池保護板40を増設することにより、電池パック90を保護し、同時に補強ブラケット70を用いて第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30と電池保護板40との間の連結強度をさらに向上させることができるため、車体補強構造部材100全体の構造強度を向上させる。具体的には、第二補強ロッド30が第一補強ロッド20と交差して連結されるため、補強ブラケット70は、第一補強ロッド20に連結されてもよいし、第二補強ロッド30に連結されてもよいし、または第一補強ロッド20および第二補強ロッド30に順に連結されてもよい。同時に、補強ブラケット70の一端を電池保護板40に取り付けることにより、補強構造本体110を電池保護板40に連結させる。補強ブラケット70が第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30に順次連結される場合、補強ブラケット70と第一補強ロッド20または第二補強ロッド30との間に安定した三角形構造を構成することができるため、補強構造本体110の構造強度および安定性を向上させる。ここで、補強ブラケット70は、凹溝型のロックキャッチ部71を有し、ロックキャッチ部71を第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30に嵌着して係止し、さらに補強ブラケット70の他端をボルトにより電池保護板40に取り付けることにより、補強構造本体110の構造強度及び安定性を向上させる。
【0038】
図1から
図4に示すように、一つの実施例において、第一補強ロッド20の端部は、それぞれ第二補強ロッド30の端部に連結される。第一補強ロッド20の端部と第二補強ロッド30の端部とを直接又は間接的に連結し、すなわち第一補強ロッド20と第二補強ロッド30とは交差して連結されて交差連結構造31を構成する。同時に、第一補強ロッド20と第二補強ロッド30とは、端部に直接又は間接的に連結されることにより、第一補強ロッド20と第二補強ロッド30とがそれぞれ両端部および中間部で交差連結され、“∞”型の安定構造を形成し、補強構造本体110の構造強度を向上させる。
【0039】
図1から
図4に示すように、一つの実施例において、車体補強構造部材100は、連結部材80を有し、第一補強ロッド20の端部が連結部材80を介してそれぞれ第二補強ロッド30の端部に連結され、かつ、それぞれ車体10の左右両側に固定される。連結部材80を用いることにより、第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30の端部を連結部材80によって車体10の左右両側に固定し、第一補強ロッド20の端部と第二補強ロッド30の端部との間の連結が不便であり、かつ、車体10に直接固定しにくいことを効果的に解決する。ここで、連結部材80は、板状の構造を採用することができ、かつ、連結部材80が第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30に溶接することができる。車体10は、さらに電池パック90と車体10のサスペンションとを固定するために設置されたリアトレーリングアームブラケット11を有する。連結部品80をリアトレーリングアームブラケット11に連結すると、他の部品を追加する必要がなくて車体補強構造部材100を車体10の両側に固定することができるため、構造を簡略化し、コストを低減することができる。同時に、連結部材80にボルト孔を有し、ボルト孔により連結部材80を車体10のリアトレーリングアームブラケット11に螺着すればよい。
【0040】
図1及び
図2に示すように、一つの実施例において、第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30は、いずれも中空ロッドである。第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30は、それぞれ中空ロッドとして形成されることにより、全体的な構造強度を確保するとともに、全体の重量を効果的に軽減し、車体補強構造部材100のコストも低減する。
【0041】
図1から
図4に示すように、一つの実施例において、車体補強構造部材100は、車体10の底側、かつ、電池パック90の後部に隣接するように取り付けられる。車体補強構造部材100を車体10の底側、かつ、電池パック90の後部に隣接するように取り付けることにより、車体補強構造部材100が電池パック90の後部から電池パック90に連結されて、剛性が弱い車両後部を強化すると同時に、電池パック90の安定性を向上させる。
【0042】
車体補強構造部材100を取り付ける際、第一補強ロッド20と第一ストラット301および第二ストラット302とを溶接の方式で交差連結し、かつ、交差連結構造31を形成する。同時に、前固定フレーム61と後固定フレーム62とをそれぞれ交差連結構造31の対向する両側に連結し固定して、固定ブラケット60を形成する。これにより、交差連結構造31は、前固定フレーム61と後固定フレーム62とで構成された収容キャビティに覆われる。第一ストラット301における第二ストラット302から離れた一端と、第二ストラット302における第一ストラット301から離れた一端とは、それぞれ第一補強ロッド20の両端に連結されることにより、第一補強ロッド20と、第一ストラット301および第二ストラット302とは、それぞれ両端部および中間部で交差連結され、“∞”型の安定構造を形成する。電池パック連結ブラケット50を第一補強ロッド20と第二補強ロッド30との最大間隔の位置で第一補強ロッド20および第二補強ロッド30に順に連結し、かつ、電池パック連結ブラケット50の対向する両端をそれぞれ車体10および電池保護板40に連結することにより、第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30のそれぞれが車体10及び電池パック90に連結される。同時に、二つの補強ブラケット70を補強構造本体110にそれぞれ連結され、かつ、それぞれ交差連結構造31の両側に位置することにより、補強ブラケット70は、第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30に連結され、かつ、補強ブラケット70の一端が電池保護板40に連結される。これにより、第一補強ロッド20及び/又は第二補強ロッド30と電池保護板40との間の連結強度をさらに向上させ、補強構造本体110の全体構造強度を向上させる。電池パック連結ブラケット50及び補強ブラケット70は、それぞれ第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30と複数の三角型の安定構造を構成することにより、補強構造本体110の構造強度及び安定性を顕著に向上させる。補強構造本体110は、さらに連結部材80を有し、連結部材80を用いて、第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30を連結部材80に連結し、さらに第一補強ロッド20及び第二補強ロッド30が取り付けられた連結部材80を車体10の両側のリアトレーリングアームブラケット11に取り付けることにより、管状の第一補強ロッド20と管状の第二補強ロッド30との間の連結が不便であり、かつ、車体10に固定されたリアトレーリングアームブラケット11に連結されにくいことを効果的に解決する。ここで、第一補強ロッド20、第一ストラット301及び第二ストラット302は、いずれも中空ロッドの構造を採用し、全体の重量を減少させ、かつ、コストを低減する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
100 車体補強構造部材
110 補強構造本体
10 車体
11 リアトレーリングアームブラケット
20 第一補強ロッド
30 第二補強ロッド
301 第一ストラット
302 第二ストラット
31 交差連結構造
40 電池保護板
50 電池パック連結ブラケット
51 弧度構造
60 固定ブラケット
61 前固定フレーム
62 後固定フレーム
70 補強ブラケット
71 ロックキャッチ部
80 連結部材
90 電池パック