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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】飛行体の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20240101AFI20241011BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20241011BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20241011BHJP
   B64C 11/34 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/08
B64C39/02
B64C11/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021207198
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023092169
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久夫
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-075649(JP,A)
【文献】特開2021-165143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/24
B64C 27/08
B64C 39/02
B64C 11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機、前記発電機を駆動させる駆動源、及び前記発電機で発電された電力を貯蓄するバッテリを含むパワーユニットと、
前記発電機及び前記バッテリの少なくとも一方から供給される電力により駆動される電気モータと、
前記電気モータにより駆動される回転翼と、
前記バッテリの充電状態を検出するバッテリ状態検出部と、
前記回転翼のピッチを変更する可変ピッチ機構と、
前記バッテリ状態検出部により検出された前記バッテリの充電率に基づいて、前記回転翼の前記ピッチを変更するか否かを判定するピッチ変更制御部と、
を備え
前記ピッチ変更制御部は、前記バッテリの前記充電率に基づいて前記バッテリへの充電が不可能と判断した場合、前記電気モータの負荷が増加するように前記ピッチを変更することを特徴とする飛行体の制御装置。
【請求項2】
前記ピッチ変更制御部は、前記パワーユニットから供給される電力量に基づいて、前記回転翼の前記ピッチの変化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の飛行体の制御装置。
【請求項3】
前記飛行体のフライトコントローラから前記パワーユニットへ要求出力の低下が要求されたとき、前記ピッチ変更制御部は前記ピッチの変更を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飛行体の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンエンジン等の駆動源と、駆動源により発電された電力を貯蓄するバッテリと、を備えた飛行体が知られている。これらの飛行体では、過充電などによるバッテリの劣化を抑制するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、燃料電池と、燃料電池の余剰電力を貯蓄し且つ燃料電池の出力不足時に放電して電力を外部に出力するバッテリと、を備える電源装置の構成が開示されている。電源装置は、電力を消費する電力消費手段をさらに有し、燃料電池の発電電力が負荷電力より大であり且つバッテリが満充電状態である場合に、過剰となった電力を電力消費手段により消費させる。特許文献1に記載の技術によれば、全システムのうち一部の機構(電力消費手段)を作動させることにより、過剰電力を消費させ、これによりバッテリの過充電を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-32906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、駆動源により駆動される発電機と、発電機の余剰電力を貯蓄するバッテリと、発電機又はバッテリからの電力により駆動するプロペラ(回転翼)と、を有し、プロペラの駆動により推進力を得る飛行体が知られている。これらの飛行体では、飛行中に過剰電力を消費する必要がある。このため、例えば全システムのうち一部の機構を作動させつつ飛行体の飛行状態をも維持する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、飛行状態を維持しつつバッテリの劣化を抑制することができる飛行体の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る飛行体の制御装置(例えば、実施形態における飛行体の制御装置1)は、発電機(例えば、実施形態における発電機11)、前記発電機を駆動させる駆動源(例えば、実施形態におけるガスタービンエンジン12)、及び前記発電機で発電された電力を貯蓄するバッテリ(例えば、実施形態におけるバッテリ13)を含むパワーユニット(例えば、実施形態におけるパワーユニット2)と、前記発電機及び前記バッテリの少なくとも一方から供給される電力により駆動される電気モータ(例えば、実施形態における電気モータ3)と、前記電気モータにより駆動される回転翼(例えば、実施形態における回転翼4)と、前記バッテリの充電状態を検出するバッテリ状態検出部(例えば、実施形態におけるバッテリ状態検出部5)と、前記回転翼のピッチを変更する可変ピッチ機構(例えば、実施形態における可変ピッチ機構6)と、前記バッテリ状態検出部により検出された前記バッテリの充電率に基づいて、前記回転翼の前記ピッチを変更するか否かを判定するピッチ変更制御部(例えば、実施形態におけるピッチ変更制御部7)と、を備え、前記ピッチ変更制御部は、前記バッテリの前記充電率に基づいて前記バッテリへの充電が不可能と判断した場合、前記電気モータの負荷が増加するように前記ピッチを変更することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る飛行体の制御装置は、前記ピッチ変更制御部は、前記パワーユニットから供給される電力量に基づいて、前記回転翼の前記ピッチの変化率を算出することを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る飛行体の制御装置は、前記飛行体のフライトコントローラ(例えば、実施形態におけるフライトコントローラ20)から前記パワーユニットへ要求出力の低下が要求されたとき、前記ピッチ変更制御部は前記ピッチの変更を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の飛行体の制御装置によれば、例えばバッテリ状態検出部により検出されたバッテリの充電率が所定値以上となった場合に、ピッチ変更制御部により回転翼のピッチを変更する。具体的に、ピッチ変更制御部は、回転翼を回転させる電気モータの負荷が増加するように、回転翼のピッチを変更する。これにより、回転翼における効率が低下するので、飛行状態を維持しつつ回転翼における消費電量を増加させることができる。よって、バッテリの電力又は発電機で発電された電力の消費量を増加させ、過剰電力を効果的に消費することができる。その結果、過充電によるバッテリの劣化を抑制することができる。
したがって、飛行状態を維持しつつバッテリの劣化を抑制することができる飛行体の制御装置を提供できる。
さらに、例えばバッテリの充電率が低い場合には、電気モータの負荷が低減するように回転翼のピッチを変化させる。これにより、駆動源の作動により発電機で発電された電力をバッテリへの充電電力として振り分けることができる。よって、駆動源の負荷を低減し、燃費の悪化を抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の飛行体の制御装置によれば、パワーユニットから供給される電力量に基づいて回転翼のピッチの変化率が決定されるので、消費したい電力分に合わせてピッチの変化率を設定できる。よって、回転翼や可変ピッチ機構に対して過剰な負荷を与えることを抑制できる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の飛行体の制御装置によれば、要求出力の低下が要求されたときにピッチの変更を行う。ここで、駆動源は、フライトコントローラからの要求に対して短時間では応答できないことが多い。つまりフライトコントローラからパワーユニットへ出力低下の要求がされてから実際に駆動源の出力が低下するまでの間にもバッテリへの給電(充電)が行われる場合がある。このため、特に要求出力の低下が要求され、かつバッテリが満充電である場合は、要求出力の増加が要求されたときと比較して過剰電力の消費条件が厳しい状況となる。本発明の飛行体の制御装置によれば、要求出力の低下が要求されたときにピッチの変更を行うので、ピッチ変更で消費する電力と、ピッチ変更に伴う回転翼の抵抗増加による電気モータの負荷増大と、により、より効果的に過剰電力を消費することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る飛行体の制御装置の回路構成図。
図2】ピッチ角の違いによる回転翼の周速と揚力との関係を示すグラフ。
図3】ピッチとパワーユニットの出力との関係を示すグラフ。
図4】実施形態に係る制御装置による制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(飛行体の制御装置)
図1は、実施形態に係る飛行体の制御装置1(以下、単に制御装置1という場合がある。)の回路構成図である。
制御装置1は、例えば航空機等の飛行体(不図示)の機体に搭載されている。制御装置1は、詳しくは後述する発電機11で発電される電力によって駆動される複数の電気モータ3により飛行体を推進させる、ハイブリッド推進システムを構成している。
制御装置1は、パワーユニット2と、電気モータ3と、回転翼4と、バッテリ状態検出部5と、可変ピッチ機構6と、ピッチ変更制御部7と、を備える。
【0016】
(パワーユニット)
パワーユニット2は、駆動源12と、発電機11と、バッテリ13と、を備える。パワーユニット2は、例えばフライトコントローラ20からの信号に応じて駆動源12、発電機11及びバッテリ13の駆動を制御する。
駆動源12は、例えばガスタービンエンジンである。ガスタービンエンジン12は、圧縮機及びタービンを有する。圧縮機は、航空機の機体に設けられた不図示の通風孔から吸入される吸入空気を圧縮する。タービンは、回転軸を介して圧縮機と接続され、圧縮機と一体回転する。なお、本実施形態ではガスタービンエンジン12を駆動源の一例として説明するが、これに限られない。駆動源12は、発電機11を作動させて電力を生成するための動力装置であればよく、例えば燃料電池等であってもよい。
【0017】
発電機11は、ガスタービンエンジン12と接続されている。発電機11とガスタービンエンジン12との間には、変速機構等が設けられていてもよい。発電機11は、タービンの駆動によって電力(交流電力)を発電する。発電機11で発電された交流電力は、パワードライブユニット(PDU)のコンバータで直流電力に変換され、バッテリ13に貯留される。
【0018】
バッテリ13には、ガスタービンエンジン12の駆動によって発電機11において発電された電力のうち、電気モータ3によって消費されなかった分の電力が貯留される。バッテリ13に貯蓄された電力は、電気モータ3を駆動するための電力として利用可能となっている。つまりバッテリ13は、コンバータの発電電力がインバータの消費電力を上回るとき、発電機11による発電電力を吸収して充電する。一方、バッテリ13は、コンバータの発電電力がインバータの消費電力を下回るとき、不足電力を補うように放電する。
【0019】
(電気モータ)
電気モータ3は、例えばブラシレスDCモータである。なお、電気モータ3は、不図示の姿勢保持用あるいは水平推進用の補助モータ等を含んでもよい。電気モータ3は、パワーユニット2の発電機11及びバッテリ13にそれぞれ接続される。バッテリ13からの放電電力及び発電機11からの電力のうち少なくとも一方は電気モータ3に供給される。つまり、発電機11から電気モータ3への電力の供給と、バッテリ13から電気モータ3への電力の供給と、は適宜切り替えられる。具体的に、少なくとも以下の(i)~(iii)のいずれかの状態となるように発電機11、バッテリ13、及び電気モータ3が制御される。
【0020】
(i)発電機11から電気モータ3へ電力を供給するとともにバッテリ13から電気モータ3への電力の供給を停止した状態。
(ii)発電機11から電気モータ3への電力の供給を停止するとともにバッテリ13から電気モータ3へ電力を供給する状態。
(iii)発電機11及びバッテリ13の両方から電気モータ3へ電力を供給する状態。このとき、発電機11又はバッテリ13のそれぞれからの電力の供給量の割合は必要に応じて変化させることが可能である。
【0021】
(回転翼)
回転翼4は、電気モータ3に接続されている。電気モータ3と回転翼4との間には、電気モータ3と回転翼4とを機械的に接続するプロペラシャフト(不図示)が設けられる。制御信号に応じて電気モータ3が回転することで回転翼4が回転する。制御信号は、パイロットの操作または自動操縦における指示に基づく航空機を制御するための信号である。回転翼4のピッチは変更可能に構成されている。換言すれば、本実施形態の飛行体は、可変ピッチ式の飛行体となっている。
【0022】
上述したように、飛行体は、主にガスタービンエンジン12で駆動する発電機11によって発電される電力によって電気モータ3を駆動させ、電気モータ3によって回転する回転翼4によって推力を得るように構成される。また、発電機11において発電された電力をバッテリ13に貯蓄し、必要に応じてバッテリ13からの電力を、電気モータ3を駆動するための電力として利用することが可能である。
【0023】
(バッテリ状態検出部)
バッテリ状態検出部5は、バッテリ13の充電状態を検出する。バッテリ状態検出部5は、バッテリ13の充電状態として、例えばバッテリ13の全容量に対するバッテリ13の現在の充電量を示すバッテリ充電率(SOC)を検出する。加えて、バッテリ状態検出部5は、例えば充電時の充電スピードや放電時の放電スピード等を検出してもよい。
【0024】
(可変ピッチ機構)
可変ピッチ機構6は、回転翼4のピッチを変更する。可変ピッチ機構6は、例えば回転翼4の中心軸の近傍に取り付けられている。可変ピッチ機構6は、詳しくは後述するピッチ変更制御部7からの信号に基づいて、所定のピッチ角となるように回転翼4のピッチを変化させる。本実施形態において、可変ピッチ機構6は、ピッチ角0%(回転翼4が地面と平行となる状態)から90%(回転翼4が地面に対して垂直となる状態)までの間で回転翼4のピッチを変更可能である。
【0025】
(ピッチ変更制御部)
ピッチ変更制御部7は、バッテリ状態検出部5により検出されたバッテリSOCに基づいて、回転翼4のピッチを変更するか否かを判定する。また、ピッチ変更制御部7は、ピッチを変更する場合、パワーユニット2から供給される電力量に基づいてピッチの変化率を算出し、可変ピッチ機構6に算出結果を出力する。これにより、回転翼4のピッチが所望のピッチ角となるように制御される。
【0026】
本実施形態において、ピッチ変更制御部7は、飛行体のフライトコントローラ20からパワーユニット2へ要求出力の低下が要求されたときであって、かつ所定の条件を満たす場合に可変ピッチ機構6にピッチの変更を行わせる。具体的に、ピッチ変更制御部7は、要求出力の低下が要求され、ガスタービンエンジン12における出力低下が不十分であり、かつバッテリSOCが所定値以上であるとき、ピッチを変更させる。一方、要求出力の低下を要求されたガスタービンエンジン12における出力低下が十分である(ガスタービンエンジン12のみの応答で許容できる)場合、及び、要求出力の低下を要求されたがバッテリSOCが所定値未満である場合は、ピッチを変更しない。
【0027】
本実施形態では、要求出力の低下が要求されてピッチを変更する場合、ピッチ変更制御部7は、まず過剰電力を算出する。過剰電力は、発電機11の発電電力から、回転翼4の駆動電力及びバッテリ13の電力の合計を差し引いた値である。その後ピッチ変更制御部7は、目標とするピッチ角が現在のピッチ角よりも小さくなるように回転翼4のピッチを変更する。
【0028】
図2は、ピッチ角の違いによる回転翼4の周速Vrと揚力Lfとの関係を示すグラフである。図2のグラフG1は、ピッチ角が0%(回転翼4が地面と平行)の場合を示す。グラフG2は、ピッチ角が20%の場合を示す。グラフG3は、ピッチ角が40%の場合を示す。グラフG4は、ピッチ角が60%の場合を示す。グラフの横軸は回転翼4の周速Vrを示す。グラフの縦軸は飛行体の揚力Lfを示す。グラフG5は、飛行体の目標揚力を示す。
【0029】
図2のグラフG1に示すように、ピッチ角が0%の場合、周速Vrによらず揚力はゼロである。グラフG2からG4に示すように、ピッチ角が20%,40%,60%の場合、回転翼4の周速Vrが上昇するにつれて揚力Lfが増加する。また、グラフG2からG4を比較すると、ピッチ角が大きいほど、目標揚力G5を得るために必要な周速Vrが小さくなる。すなわち、ピッチ角を大きくするほど、より少ないエネルギで必要な揚力を得ることができる。一方、ピッチ角を小さく(例えば40%:グラフG3)すれば、ピッチ角が大きい場合(例えば60%:グラフG6)と同等の揚力を得るために、より多くのエネルギを消費する。
【0030】
図3は、ピッチPとパワーユニット2の出力OPUとの関係を示すグラフである。グラフの横軸は、回転翼4のピッチPを示す。グラフの縦軸は、パワーユニット2の出力OPUを示す。パワーユニット2の出力OPUとは、発電機11からの出力及びバッテリ13からの出力の合計値である。グラフG6は、飛行体の目標揚力を示す。
【0031】
図3に示すように、通常時(本実施形態では、ピッチ変更前の状態)、飛行体は、ポイントA1で動作している。ポイントA1では、回転翼4のピッチPが第一ピッチP1に設定され、パワーユニット2の出力OPUが第一出力PWR1に設定されている。
ピッチ変更制御部7により回転翼4のピッチを変更することが決定されると、ピッチ変更制御部7は、飛行体がポイントA2で動作するようにピッチP及びパワーユニット2からの出力OPUを変更する。ポイントA2では、回転翼4のピッチPが第二ピッチP2に設定され、パワーユニット2の出力OPUが第二出力PWR2に設定されている。第二ピッチP2は、第一ピッチP1よりも小さいピッチ角である(P2<P1)。第二出力PWR2は、第一出力PWR1よりも大きい(PWR2>PWR1)。
【0032】
このように回転翼4のピッチPを第一ピッチP1から第二ピッチP2へ変更することで、目標揚力を得るために必要なパワーユニット2からの電力OPUが電力量Dだけ大きくなる。よって、ピッチ変更制御部7は、要求出力の低下が要求され、ガスタービンエンジン12における出力低下が不十分であり、かつバッテリSOCが所定値以上であるとき、第一ピッチP1から第二ピッチP2へ変更することにより、通常時と比較して過剰電力を電力量D分だけ消費することができる。これによりバッテリ13への過充電が抑制される。
【0033】
(飛行体の制御装置における制御の流れ)
図4は、実施形態に係る制御装置1による制御の流れを示すフローチャートである。以下、図4を用いて制御装置1における制御の流れについてより詳細に説明する。各符号については図1を併せて参照されたい。
【0034】
まず、制御装置1は、ガスタービンエンジン12(駆動源)及び発電機11の情報を取得することにより、発電機11が発電中であるか否かを判定する(ステップS01)。発電機11が発電中でない場合(ステップS01でNO)、ピッチ変更制御部7は、回転翼4のピッチを変更せず、処理を終了する(ステップS07)。
【0035】
発電機11が発電中であると判定された場合(ステップS01でYES)、制御装置1は、発電した電力をバッテリ13に充電可能か否かを判定する(ステップS03)。ステップS03において、制御装置1は、例えば現在のバッテリSOCが、予め設定された所定値以上であるか否かの判定結果に基づいて、バッテリ13の充電可否を判定する。制御装置1は、例えば現在のバッテリSOCが所定値以上である場合、バッテリ13への充電が不可能であると判定する。一方、例えば現在のバッテリSOCが所定値未満である場合、制御装置1は、バッテリ13への充電が可能であると判定する。
【0036】
発電した電力がバッテリ13に充電可能であると判定された場合(ステップS03でYES)、制御装置1は、バッテリ13への充電を開始する(ステップS05)。その後、ステップS07へ進み、ピッチ変更を行うことなく処理を終了する。
【0037】
一方、発電した電力がバッテリ13に充電不可能であると判定された場合(ステップS03でNO)、ピッチ変更制御部7は、発電機11の発電電力、回転翼4の駆動電力及びバッテリ13の電力の取得結果に基づいて、過剰電力を算出する(ステップS11)。次に、ピッチ変更制御部7は、算出した過剰電力に基づいて、ピッチの変化率を算出する(ステップS13)。ピッチの変化率は、現在のピッチから、目標とするピッチまでの変化率である。目標とするピッチは、例えば基準ピッチに対して1以下の補正係数を乗算することにより算出される。補正係数は、例えば過剰電力の大きさに応じて変化する値であってもよい。例えば過剰電力が大きいほど補正係数の値が漸次小さくなるように補正係数が設定されてもよい。このようにして算出された目標とするピッチとは、電気モータ3の負荷を増加させることにより算出された過剰電力を消費するために必要なピッチである。
【0038】
次に、ピッチ変更制御部7は、算出したピッチの変化率を実現するように可変ピッチ機構6に信号を出力する。可変ピッチ機構6は、ピッチ変更制御部7からの信号に基づいて、目標とするピッチとなるように回転翼4のピッチを変更する(ステップS15)。ピッチの変更が完了すると、処理を終了する。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
【0039】
(作用、効果)
次に、上述の飛行体の制御装置1の作用、効果について説明する。
本実施形態の飛行体の制御装置1によれば、回転翼4のピッチを変更する可変ピッチ機構6と、バッテリ状態検出部5により検出されたバッテリ13の充電率に基づいて、回転翼4のピッチを変更するか否かを判定するピッチ変更制御部7と、を備える。これにより、例えばバッテリ状態検出部5により検出されたバッテリ13の充電率が所定値以上となった場合に、ピッチ変更制御部7により回転翼4のピッチを変更する。具体的に、ピッチ変更制御部7は、回転翼4を回転させる電気モータ3の負荷が増加するように、回転翼4のピッチを変更する。これにより、回転翼4における効率が低下するので、飛行状態を維持しつつ回転翼4における消費電量を増加させることができる。よって、バッテリ13の電力又は発電機11で発電された電力の消費量を増加させ、過剰電力を効果的に消費することができる。その結果、過充電によるバッテリ13の劣化を抑制することができる。
したがって、飛行状態を維持しつつバッテリ13の劣化を抑制することができる飛行体の制御装置1を提供できる。
【0040】
ピッチ変更制御部7は、パワーユニット2から供給される電力量に基づいて、回転翼4のピッチの変化率を算出する。これにより、消費したい電力分に合わせてピッチの変化率を設定できる。よって、回転翼4や可変ピッチ機構6に対して過剰な負荷を与えることを抑制できる。
【0041】
ピッチ変更制御部7は、要求出力の低下が要求されたときにピッチの変更を行う。ここで、ガスタービンエンジン12(駆動源)は、フライトコントローラ20からの要求に対して短時間では応答できないことが多い。つまりフライトコントローラ20からパワーユニット2へ出力低下の要求がされてから実際にガスタービンエンジン12の出力が低下するまでの間にもバッテリ13への給電(充電)が行われる場合がある。このため、特に要求出力の低下が要求され、かつバッテリ13が満充電である場合は、要求出力の増加が要求されたときと比較して過剰電力の消費条件が厳しい状況となる。本発明の飛行体の制御装置1によれば、要求出力の低下が要求されたときにピッチの変更を行うので、ピッチ変更で消費する電力と、ピッチ変更に伴う回転翼4の抵抗増加による電気モータ3の負荷増大と、により、より効果的に過剰電力を消費することができる。
【0042】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、要求出力の低下が要求され、かつバッテリSOCが所定値以上であるときにピッチ変更を行うとしたが、これに限られない。例えばバッテリ13のSOCが予め設定された下限値よりも低い場合には、電気モータ3の負荷が低減するように回転翼4のピッチを変化(ピッチ角を増加)させてもよい。これにより、ガスタービンエンジン12の作動により発電機11で発電された電力をバッテリ13への充電電力として振り分けることができる。よって、ガスタービンエンジン12の負荷を低減し、燃費の悪化を抑制することが可能となる。
【0043】
ガスタービンエンジン12や発電機11が複数設けられていてもよい。
駆動源としてガスタービンエンジン12が用いられる例について説明したが、これに限られない。駆動源12として、例えば燃料電池等が用いられてもよい。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 飛行体の制御装置
2 パワーユニット
3 電気モータ
4 回転翼
5 バッテリ状態検出部
6 可変ピッチ機構
7 ピッチ変更制御部
11 発電機
12 ガスタービンエンジン(駆動源)
13 バッテリ
20 フライトコントローラ
図1
図2
図3
図4