(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】レーザ結石破砕術のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/00 20060101AFI20241011BHJP
H01S 3/113 20060101ALI20241011BHJP
H01S 3/115 20060101ALI20241011BHJP
H01S 3/117 20060101ALI20241011BHJP
A61B 17/22 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01S3/00 A
H01S3/113
H01S3/115
H01S3/117
A61B17/22
(21)【出願番号】P 2021502523
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 US2019042491
(87)【国際公開番号】W WO2020033121
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-11
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ビー・アルトシュラー
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシア・コヴァレンコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア・ヴィンニチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・ヤロスラフスキー
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0342678(US,A1)
【文献】特表2019-531605(JP,A)
【文献】米国特許第05820627(US,A)
【文献】米国特許第05860972(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0036253(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0289937(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
A61B 17/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結石を破壊するためのレーザシステムであって、
レーザパルスのシーケンスを発するレーザを備え、前記レーザが、前記レーザパルスが、
一振幅周期群のパルス内のパルス数に等しい振幅変調周期Naの周期的に変化されるパルスピークパワーおよびパルスエネルギーの少なくとも一方で、前記パルスピークパワーおよび/または前記パルスエネルギーが、それぞれ、前記一振幅周期群のパルス内の最初から最後のパルスまで単調に増加し、かつ、
一周波数周期群のパルス内のパルス数に等しい周波数変調周期Npの周期的に変化されるPF、
で発される振幅周波数変調(AFMR)様式で動作可能であり、
前記AFMR様式は、パルスピークパワーおよびパルスエネルギーの前記少なくとも一方
と周波数との同時周期変化を有する、レーザシステム。
【請求項2】
ピークパワーおよびパルスエネルギーの少なくとも一方の前記振幅変調周期Naが、2~10のレーザパルスに及ぶ、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項3】
前記PFの前記周波数変調周期Npが、2~10のレーザパルスに変化する、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項4】
前記レーザが、ダイオード励起固体レーザ、ダイオード励起ファイバレーザ、フラッシュランプ励起固体レーザまたはダイレクトダイオードレーザから選択される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項5】
前記レーザが、1.908μm~1.96μmで動作する、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項6】
前記レーザが、Tm:YAG、Tm:YLF、Tm:YAP、Tm:LuAG、Tm:LuLF、Tm:LuAP、TmファイバまたはHo:YAGレーザの1つである、請求項5に記載のレーザシステム。
【請求項7】
前記レーザが、2および5000Hz間に及ぶ前記PFでレーザパルスの前記シーケンスを出力するフリーランニングモードで動作し、各レーザパルスが、
0.01J~10Jの範囲のレーザパルスエネルギー、
250~3000W範囲のレーザパルスピークパワー、および
50μs~10msの範囲のレーザパルス持続時間
を特徴とする、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項8】
前記AFMRでの所望のピークパワーもしくはパルスエネルギーおよび所望のPFに関する情報を含む制御信号を出力するコントローラと、
前記コントローラに結合されて、周期的に変調されかつ前記レーザを励起するポンプの入力へ結合される電流パルスのシーケンスを出力するように動作するドライバと、
を更に備える、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項9】
前記ドライバが、前記コントローラに動作的に結合されるエネルギー貯蔵器具を更に備える、請求項8に記載のレーザシステム。
【請求項10】
前記コントローラおよび前記レーザに結合されて、共振器の品質が変調されたQモードで動作し、前記レーザパルスを出力する音響光学変調器(AOM)、電気光学変調器(EOM)または受動変調器を更に備え、各レーザパルスが、
0.1mJ~10mJで変化するエネルギー、
200W~1000000Wに及ぶピークパワー、ならびに
500Hz~500000Hz間に及ぶPF、
を特徴とする、請求項8に記載のレーザシステム。
【請求項11】
破砕手術法の間前記AFMR様式で動作する前記レーザが、光パルスの前記シーケンスを、
1Hz~5000Hzで変化する前記PF、
2光パルス~10光パルスに及ぶ前記振幅変調周期Na、ならびに
1光パルス~100光パルスに及ぶ前記周波数変調周期Np、
で出力し、
前記光パルスが各々、
1.908μm~1.98μm波長範囲、
250W~3000Wのピークパワー範囲、
0.5~10J間で変化するパルス当たりエネルギー、
で出力される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項12】
非接触手術法において前記AFMR様式で動作する前記レーザが、光パルスの前記シーケンスを、
10Hz~3000Hzで変化する前記PF、
2光パルス~100光パルスに及ぶ前記振幅変調周期Na、ならびに
1光パルス~100光パルスに及ぶ前記周波数変調周期Np、
で出力し、
前記光パルスが各々、
1.908μm~1.98μm波長範囲で、
250W~1000Wの範囲のピークパワーで、
0.05J~0.5Jの範囲で変化するパルス当たりエネルギーで、
出力される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項13】
前記結石へ前記レーザパルスを導くファイバを更に備える、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項14】
結石を破壊するための方法であって、
レーザからレーザパルスのシーケンスを、
一振幅周期群のパルス内のパルス数に等しい振幅変調周期Naでパルスピークパワーもしくはパルスエネルギーの少なくとも一方またはパルスピークパワーおよびエネルギーを周期的に変化させることであって、前記パルスピークパワーおよび/または前記パルスエネルギーが、それぞれ、前記一振幅周期群のパルス内の最初から最後のパルスまで単調に増加し、変化させること、ならびに
一周波数周期群のパルス内のパルス数に等しい周波数変調周期NpでPRFを周期的に変化させること、
によって発するステップを含み、
パルスピークパワーまたはパルスエネルギーの前記少なくとも一方
と周波数との周期変化が同時に行われる、方法。
【請求項15】
ピークパワーおよびパルスエネルギーの少なくとも一方の前記振幅変調周期Naが、2~10のレーザパルスに及ぶ、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記PRFの前記周波数変調周期Npが、2~10までのレーザパルスに変化する、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザが、ダイオード励起固体レーザ、ダイオード励起ファイバレーザ、フラッシュランプ励起固体レーザまたはダイレクトダイオードレーザから選択される、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザが、1.91μm~1.96μmの波長範囲で動作する、請求項
14に記載の方法。
【請求項19】
破砕手術法においてレーザパルスの前記シーケンスを、
1Hz~3000Hzで変化す
るPF、
2~10の光パルスに及ぶ前記振幅変調周期Na、ならびに
1~100の光パルスに及ぶ前記周波数変調周期Np、
で送出するステップを更に含み、
前記光パルスが各々、
1.908μm~1.98μm波長範囲、
250W~3000Wのピークパワー範囲、
0.5J~10Jで変化するパルス当たりエネルギー、
で出力される、請求項
14に記載の方法。
【請求項20】
非接触手術法においてレーザパルスの前記シーケンスを、
10Hz~1000Hzで変化す
るPF、
2~100の光パルスに及ぶ前記振幅変調周期Na、ならびに
1~100の光パルスに及ぶ前記周波数変調周期Np、
で送出するステップを更に含み、
前記光パルスが各々、
1.908μm~1.98μm波長範囲で、
250W~1000Wの範囲のピークパワーで、
0.05J~1Jで変化するパルス当たりエネルギーで、
出力される、請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、レーザパワーの時間的構造を制御することで様々な手術手技に従う石治療の速度を上げる、人体または動物体内の結石を治療するための方法およびレーザシステムを対象とする。特に、本発明は、パルスエネルギー、ピークパワーおよび繰返し率の他にパルス形状の変調により改善された時間的構造を有するレーザパルスで結石を治療するための方法およびレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間および動物内の結石を排除するための結石破砕法にパルスレーザ源が使用され得る。結石(本明細書において石とも称される)は、身体の器官または導管に生じ得る物質の凝固物である。尿結石には、腎石(腎臓内結石または腎結石とも呼ばれ得る)の他に膀胱石(膀胱内結石または膀胱結石とも呼ばれ得る)を含み、そして混合組成を含め、各種の組成のいずれか1つを有し得る。主組成には、しばしば、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸二アンモニウムカルシウム、リン酸マグネシウム、システイン、尿酸または尿酸塩、およびキサンチンを含む。胆嚢および胆管の結石は胆石と呼ばれ、主に胆汁酸塩およびコレステロール誘導体から発生される。結石は、鼻道、胃腸管、唾液腺、扁桃および静脈を含め、身体の他の部位にも生じ得る。
【0003】
レーザ結石破砕術は、様々な機構を通じて石の破壊を誘発するレーザの使用法である。剛性または軟性または山型内視鏡の長軸に沿って進む光ファイバが、典型的に、砕石のためにレーザビームを伝送する。石は、1および3から4mm間の寸法の粒子へ分割でき(破砕)、続いてバスケットまたは類似の器具を使用して剛性器具の作業チャネルを通して除去できる。代替的に、石は、ダスティングと称されるプロセスで小粒子(サイズが<1mm)へ分割できる。微細ダスティング(粒子<0.25から0.5mm、石組成および塵粒子の形状に応じる)として知られているダスティングの下位分類の結果、尿流によって、または約40cm高さに吊るされた水/生理食塩水バッグによって供給される標準潅流によって除去されるのに十分に小さな破片になる。分子レベルまでの気化も可能である。アブレーションの効率は治療部位における条件に依存しており、大きな石に対してまたは単一の手術法で複数の石を治療するときは実質的に低くなり得る。この問題は、手術中に接触および非接触モードで石ダスティングを完了することが目的であるときに軟性尿管鏡による大きな腎石および複数の腎石の治療に対してより典型的である。
【0004】
別の問題が、後退による治療中の石の移動である。後退は以下の現象によって引き起こされる。ファイバと石との間のギャップにおける水によって吸収された光エネルギーが水圧波を発生して、ファイバの先端から離れる方向に石を押しやる。レーザエネルギーが石によって吸収されて石のアブレーションが起こると、アブレーションの反跳運動量によっても、石がファイバから離れて変位されるようになる。後退は手術時間を長引かせ、かつ外科医が石の破砕またはダスティングを完了して遺残石粒子のない結果を達成することを困難にする。レーザ平均パワーおよび治療の時間を増加させて低アブレーション率を補償することは、軟組織損傷のリスクを上昇させることによって制限され得る。
【0005】
レーザ結石破砕術を行うための幾つかの手術手技が知られており、例えばファイバ先端および治療されるべき石の相互位置および相対変位に基づく。これらの手技は概して以下の範疇の1つに入る:接触破砕、準接触走査(ダンシング)および非接触(ポップコーン)手技。破砕手技を使用するときは、ファイバ先端が石中心と接触して位置付けられ、そして石のマクロ割れおよび破砕が生じるまで石にレーザパワーが送出される。破砕手技では、レーザパワーは、比較的長時間の間1つの小範囲に印加される。そのような動作モードの結果、比較的深いドリル孔および石のマクロ割れを誘発する熱機械的応力になる。
【0006】
走査手技では、ファイバは、石と準接触(距離0~1mm)して石表面を横断して連続的に移動する。石表面を横断するどのパスの結果も、石の薄層を除去(切除)することになる。この手技は、石を小破片へ切除(ダスティング)するのに好ましい。後退により接触または準接触モードで動作する可能性が許容されなければ、石の小破片(典型的にサイズが3mm未満)の治療のためには非接触手技が使用される。非接触手技では、ファイバが標的とされた石の破片の位置に近い固定位置に位置決めされ、そしてレーザが非接触様式で照射される。水気化および気泡爆縮の結果、水が流れて、石の小破片が移動するようになる。そのような破片が手術用ファイバの遠位端の有効範囲に入ると、更なる破砕/ダスティングが生じる結果、一層小さな石の破片になる。
【0007】
アブレーション率はアブレーション機構によって決定されており、石の化学組成および構造に、レーザの動作パラメータ(例えば、波長、放射エネルギー、ピークパワー、パルス幅および繰返し周波数)に、放射を供給するファイバの端と石の表面との間の中間層の厚さに、ならびにこの中間層における物質の光学的性質(透明性)に依存する。アブレーションの様々な物理プロセスおよび機構が上述した石破壊の手術手技に伴い、かつ光機械、光熱および/または光化学機構を含む。
【0008】
数マイクロ秒より短いレーザパルスに対して典型的である光機械機構は、レーザ誘起引張応力が標的の極限引張強度を超えるときにアブレーションが開始されることを断定する。この機構における主要因には標的物質の機械的性質およびレーザ誘起応力を含む。固体物質中の過渡引張応力が顕微鏡的亀裂および他の欠陥の形成に至り、そして応力が物質の有効強度を超えれば、破断および物質放出が生じ得る(破砕と呼ばれるプロセス)。加えて、液体中の過渡引張応力が媒体を破裂させることができ、キャビテーションとして知られている現象を引き起こす。キャビテーションは液体中の空洞の成長および崩壊を伴い、周囲の固体物質への損傷を引き起こし得る。レーザエネルギーは、物体上のプラズマ形成にも至ることができる。プラズマ形成は、光学破壊を伴う高速物体イオン化を通じて達成されるが、これは、レーザ放射が照射物体によってかつ/または標的上に高パワー密度で強く吸収されるときに生成される非線形効果である。液体治療環境では、直接またはプラズマ媒介吸収によって液体中のレーザ誘起気泡形成が引き起こされる。この吸収が、成長する蒸気気泡を生じさせる。成長する蒸気気泡は石に達しないかもしれないとはいえ、パルスからのエネルギーが液体によって更に吸収される。このように、成長する気泡の前に両極性圧力パルス(すなわち、衝撃波)が形成されて、石の割れを誘発する。気泡を伴うキャビテーションプロセスが衝撃波成長に更に寄与する。このように、標的物質上にレーザエネルギーを集束させることで、一連の光学破壊を伴うプラズマ形成、衝撃波発生、および気泡キャビテーション中の負圧の誘発によって物質に損傷を与える。
【0009】
光熱機構は、約12マイクロ秒より長いパルスを有するレーザに対して典型的である。エネルギー送出のためにシリカファイバが使用される結石破砕術のためには、1940nm(1.85から2.1μm範囲)の吸水ピークに近い波長を有するミリ秒未満およびミリ秒レーザが好ましい。水は、シリカファイバを通して伝送される赤外スペクトルで石を破断させるのに寄与する熱および熱機械エネルギーへのレーザエネルギーの変換を促進する石内の唯一の最も重要な初期発色団である。
【0010】
光熱機構は2つのモードで実行できる。第1のモードは石ダスティングであり、それは、最初は石の細孔、割れ目、初期ミクロ亀裂および他のミクロ空間内の石の微結晶間において石に閉じ込められた膨張または蒸発水(石重量/重量の約10%)によって引き起こされる高圧により生じる。それら自体約2μm波長の光の低吸収を示す石の鉱物および有機成分によって囲まれた水の選択吸収によって加熱および続く沸騰が引き起こされる。この機構は、サイズが基本微結晶の特性寸法から(数百ミクロンまでに、主にサブミクロンから数十ミクロンまでに)及ぶ破片または0.5mm(微細ダスティング)もしくは1mm(ダスティング)までの特性寸法のそれらの集合体/領域の分離に至る。第2のモードは砕石(破片>1mmへ)であり、それは、主にレーザによって加熱される範囲周辺の石の容積内の熱応力によるものであり、レーザパワーが石上の一点に印加される(石穿孔)ときにダスティングに優越する。第1のモードは手術手技に関係なく事実上常に存在するが、しかしそれは走査およびポップコーニング手術手技において優越する。第2のモードは、非常に高いパルスエネルギーに対しておよび破砕手技に対して妥当である。
【0011】
アブレーションの光化学機構は、物質中の分子結合の直接解離に至る高エネルギー光子の吸収に基づく。光化学機構は、石構造内の有機分子の炭化または鉱物マトリックス内の熱化学反応による石の吸収を増加させる役割を果たし得る。微細ダスティング、ダスティングおよび破砕などの手術法、アブレーション効率ならびに後退効果は、パルス幅、パルス当たりエネルギー、パルス繰返し率および平均パワーなどのレーザパラメータによって制御できる。加えて、エネルギー送出の方法、例えば、コア径、開口数、遠位先端条件、およびファイバの遠位端と石との間の距離などのファイバパラメータも重要な役割を果たす。最後に、穿孔、走査または非接触印加も全て、レーザ-石相互作用の結果に寄与する。
【0012】
レーザ結石破砕法に数種類のレーザが使用され得、種々の判定基準に基づいて選択される。例えば、ホルミウム:ヤグ(Ho:YAG)フラッシュランプ励起レーザ砕石器は典型的に高パルスエネルギー(0.1~6J)で動作されるが、しかし結石破砕法の間、低パルス率(5~100Hz)に制限される。パルス形状および時間的性質の他の特性の制御は、フラッシュランプ励起によりこのレーザに対して非常に制限される。
【0013】
レーザ結石破砕術に使用されかつ約1.94μmの吸水ピークに近い波長で動作するHo:YAG以外の他のレーザには、ダイオード励起ツリウムTm:YAGレーザおよびダイオード励起Tmファイバレーザ(TFL)を含むが、これらに限定されない。特に、ダイオード励起Tmファイバレーザは多くの有利な特性を有する。これらのレーザは広パルスエネルギー範囲(0.001~20J)で、かつ高低パルス率(1~1000000Hz)で動作できる。比較検討TFLおよびHo:YAG構成が行われた(例えばBlackmonら、Journal of Biomedical Optics、16(7):071403、2011年7月を参照のこと)。加えて、パワー設定などのレーザパルス動作パラメータの、または後退を軽減することへの効果が検討された(例えばWhiteら、Journal of Endourology、12(2):183-186、2009年3月およびAndreeva Vら、World journal of urology、2019年5月4日:1-7を参照のこと)。TFLの輝線は、1.85および2.2μm間の範囲で調整し、かつ1.94μm前後の吸水ピーク(約20~30℃の水に対して1.94μmおよび約90~100℃の水に対して1.908μm)に非常に近くすることができる。種々の石組成に対するTFLアブレーション閾値がHo:YAG結石破砕システムのそれらより非常に低く(約5倍)、同じアブレーション率に対してより低いパルスエネルギーまたは同等のパルスエネルギーであるがHo:YAGシステムより効率的な石アブレーションの意味になる。
【0014】
TFLを含め、ファイバレーザのビームプロファイルは、このように、ファイバへの不可避の損傷のため小コアファイバへ結合できない、Ho:YAGレーザまたは他の固体レーザのマルチモードビームより均一かつ対称的である。例えば、シングルモード(SM)ツリウムファイバレーザは、約25ミクロンにまでレーザビームを集束させることが可能である。TFLによって提供される小ファイバ径がホルミウムレーザの場合より高いパワー密度の集束を可能にして、後退も減少させる。小ファイバ径は石表面上の放射露光または放射照度を増加させるが、これは、レーザアブレーションプロセスの間、低レーザパルスエネルギーが使用され得ることを意味する。小さな作業チャネルを有する軟性尿管鏡にファイバが使用されるとき、潅流を改善するためにも尿管鏡の偏向角を損なわないためにも、小ファイバ径が重要である。ツリウムファイバレーザによって提供される改善された空間ビームプロファイルは、近位ファイバ先端面へのレーザ誘起損傷を軽減しており、ホルミウムベースのシステムより長い動作寿命の意味になる。小径ファイバ(150ミクロン(μm)未満、好ましくは50および125μm間)の使用が、微結晶のクラスタ(領域)間にならびに石表面上の亀裂および割れ目内へレーザエネルギーを集束させることを通じて微細ダスティングの効率を上昇させることができる。ホルミウムレーザシステムは熱も発生して、ビームミスアライメントに関与し、次いでファイバ損傷を引き起こす可能性を有する。
【0015】
群として、ダイオード励起ファイバレーザは、Ho:YAGシステムなどの従来のフラッシュランプ励起固体レーザより多種多様のレーザ動作パラメータで動作することが可能である。例えば、単一レーザヘッドHo:YAGシステムは、典型的に、過熱してレーザロッドへの熱損傷を引き起こす可能性により<30Hzのパルス率に制限される。フラッシュランプからの白色光は、大部分が熱の形態で浪費されて、ごく一部分だけがレーザの実際の動作に寄与しており、これらのシステムは典型的に<1~2%のウォールプラグ効率を有する。これらのシステムがこの熱を放散させてレーザロッドへの損傷を防止するために、大型でかさばった冷却装置(例えば、水冷装置)がしたがって必要とされる。対照的に、ダイオード励起ファイバレーザシステムは約10~50%のウォールプラグ効率を有し、これは、非常に小型の冷却装置(例えば、空冷)が使用され得ることを意味する。上昇したウォールプラグ効率は、ファイバベースのシステムがホルミウムベースのシステムより高い平均パワーで動作するが、それでも110~120V電気コンセントを使用することが可能であることも可能にする。
【0016】
ダイオード励起Tmファイバレーザの他の利点には、1.85~2.2μm範囲で発する他のダイオード励起レーザでも実装できる、広範囲のパルス形状を含む種々の時間的構造を生成するそれらの能力を含む。例えば、ダイオードレーザポンピングによるTm:YAGレーザがこの能力を有する。ダイオード励起固体およびファイバレーザの上述した利点は本発明に組み込まれ、本出願において述べられることになる。
【0017】
レーザ結石破砕術の開発と関連した課題には動作の時間を削減することを含んでおり、石のアブレーション率、破片の移動の経路(速度)(例えば、後退を軽減)の他に、破壊の生成物と関連付けられる。この課題は、レーザ発光の時間的構造を最適化することによって有意に改善でき、この能力はダイオード励起ファイバまたは固体レーザによって提供される。
【0018】
レーザ結石破砕術のために使用される全てのレーザは、予め設定されたパルス当たりエネルギー(E=0.025~6J)、繰返し率(ν=1~2500Hz)、パルス幅および平均パワーP=E×ν(2~120W)で動作される。レーザパラメータ(E、νおよびP)は、所望の結果を達成するように:破砕、ダスティングまたはポップコーニング、かつ器官壁穿孔または水過熱および粘膜の熱焼灼のリスクを最小化するはずである安全域を提供するように予め選択される。しかしながら、石は、上述したように、種々の組成、形状およびサイズを有する。前述したパラメータの固定組が1つの特定の石を有効に割ることができるとはいえ、それは別のものに対しては無効であるかもしれない。
【0019】
高アブレーション効率で最小の後退を達成するために、パルス幅を広げること(長パルスモード)または特別な二重パルス様式を使用することが提案された。米国特許第5,321,715号が、標的(一例として石)に照射する方法を提案しており、レーザ放射を吸収する液体媒体によって通常占有される標的とファイバ端との間の空間が2つのステップで透明にされる:(1)ファイバの送出端において液体媒体中に蒸気気泡を形成するのに十分なエネルギーを有する第1のレーザパルスを発生する、および(2)第1のパルス後に所定の時間間隔で第2のレーザパルスを発生し、所定の時間間隔は、第2のレーザパルスが蒸気気泡を通して標的に送出され得るように、蒸気気泡がファイバの送出端と標的との間の空間から液体媒体の実質部分を変位させるのに十分な量だけ膨張するのを許容するように選択され、それによって液体媒体によって吸収されるレーザ放射を最小化し、かつ標的に達するレーザ放射を最大化する。このように、第1のパルスはファイバ端と標的との間に蒸気チャネルを生じさせ(モーゼ効果)、そして第2のパルスは最小損失および液体との相互作用で標的に伝搬する。しかしながら、この特許によって教示される解決策は部分的成功しかもたらさなかった。
【0020】
したがって、パルスエネルギー、ピークパワー、パルス繰返し周波数およびパルス形状を変調して、治療時間およびコスト減少に至るレーザ-石相互作用のための最適条件を提供するように動作するレーザシステムによって行われる整形パルスレーザ結石破砕術の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【非特許文献】
【0022】
【文献】Blackmonら、Journal of Biomedical Optics、16(7):071403、2011年7月
【文献】Whiteら、Journal of Endourology、12(2):183-186、2009年3月
【文献】Andreeva Vら、World journal of urology、2019年5月4日:1-7
【文献】Blackmon RL、Fried NM、Irby PB、Enhanced thulium fiber laser lithotripsy using micro-pulse train modulation、Journal of biomedical optics、2012年2月、17(2):028002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この目的は、本発明による人体または動物体内の結石を治療するためのレーザシステムおよび方法によって満たされる。概して、高効率アブレーション率を提供する一方で、後退の望ましくない影響を最小化する発明概念の2つの態様がある:1.パルスエネルギー、ピークパワーおよびパルス周波数の変調または周期変化、ならびに2.最適パルス形状の形成および維持。態様の各々が、結石を治療するためのレーザシステムおよび結石を治療する方法に鑑みて述べられる。レーザおよび泌尿器技術の当業者にとって容易に明らかであるように、態様は互いと相補的であり、態様の一方の後述する構造特徴は他方の態様に使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
それぞれの態様の方法は、特定範囲のレーザパワー密度で1.85~2.2μm波長範囲で動作するダイオード励起ファイバレーザまたはダイオード励起固体レーザを使用することによって1mm未満、好ましくは0.5mm未満、および最も好ましくは0.25mm未満の範囲の多成分サイズの粒子を提供する。500μm未満、好ましくは250μm未満の粒子は、腎臓にとって安全である圧力(<40cm水柱高さ)が構成される尿管鏡を通して潅流によって容易に除去できる。
【0025】
第1の態様による方法は、パルスエネルギーEおよび/またはパルスピークパワーPpの変調に関しており、振幅変調(AM)と称される他に、周波数変調(FM)として定義されるパルス周波数(すなわち、パルス繰返し率)νの変調に関する。最後に、本方法は、同時振幅および周波数変調-振幅周波数変調(AFM)に関する。
【0026】
特に、第1の態様による人体または動物体内の結石を治療するための方法はAMに関しており、一定パルス繰返し周波数(PRF)で、かつ振幅変調周期Na≧2の周期的に変化するピークパワーもしくはパルスエネルギーまたはピークパワーおよびパルスエネルギーで、レーザからレーザパルスのシーケンスを発するステップを含む。
【0027】
レーザパルスのシーケンスを発するAFMに対処する方法は、一振幅周期群のパルス内のパルス数に等しい変調周期Naでパルスピークパワーもしくはパルスエネルギーの少なくとも一方またはパルスピークパワーおよびエネルギーを周期的に変化させること、ならびに一周波数周期群のパルス内のパルス数に等しい周波数変調周期NpでPRFを周期的に変化させることに備える。
【0028】
第1の態様の上記方法の両方とも、2から1000のレーザパルス、好ましくは2から100のレーザパルス、最も好ましくは2から10のレーザパルスに及ぶ変調周期Naが実装され、PRFの変調周期Npは、2から1000までのレーザパルス、好ましくは2から100までのレーザパルス、最も好ましくは2から10までのレーザパルスに変化する。両方法において、レーザパルスは1.85から2.2μmの波長範囲で、好ましくは1.91から1.96μm波長範囲で発される。
【0029】
本発明の第2の態様は、以下の2つの実施形態に従って形成される最適パルス形状の形成に関した。
【0030】
特に、一方の実施形態において、人体または動物体内の結石を治療するための方法は、所望のレーザパルス形状に関する情報を含む制御信号を出力するステップを含む。制御信号に応じて、各レーザパルスが互いから時間的に離間される第1および第2のサブパルスで形成される所望のレーザ形状を有するように、レーザパルスのシーケンスが発される。第1のサブパルスのエネルギーは0.02から0.15J(好ましくは0.05から0.1J)の範囲で変化し、そしてそのピークパワーは50から500W(好ましくは100から300W)に及ぶ。サブパルスは、時間的に、100から500μs範囲が好ましい、50から900μs範囲で変化する間隔にある。第2のサブパルスのエネルギーが第1のサブパルスのそれを超えて、0.1から10Jの範囲で変化する一方で、そのピークパワーは第1のサブパルスのピークパワーを超えて、300から20000Wの範囲で変化する。
【0031】
他方の実施形態は、人体または動物体内の結石を治療するための方法に関しており、所望のレーザパルス形状に関する情報を含む制御信号を出力するステップを含む。制御信号に応じて、所望のレーザパルス形状が初期および後続区間を有し、後続区間が初期区間より高いパワーレベルを有するように、レーザパルスのシーケンスが発される。初期区間のパワーは最小パワーレベルから後続区間のパワーレベルに単調に増加され、最小パワーレベルは0および200W間で変化する。初期区間の持続時間が0.1から10ms範囲で変化する一方で、初期パルス区間のエネルギーはパルスの全エネルギーの10から70%を構成する。後続区間は、パワーが400および20000W間で変化し、そして後続区間の持続時間は0.5から20ms範囲で変化する。
【0032】
本発明の上述した一方の態様に従って、本発明による結石を治療するためのレーザシステムは、パルス繰返しレーザを構成することによって多成分固体のレーザアブレーションのクラスタ型機構を提供する。特に、レーザには、同時に(i)アブレーション生成物のサイズを制御し、(ii)アブレーション率を向上させ、かつ(iii)石後退を減少させるために、変調レーザ放射およびレーザパルスの制御形状が構成される。破砕モードでもアブレーション率を向上させかつ後退を減少させるために、変調レーザ発光およびレーザパルスの制御形状が使用できる。
【0033】
この態様の1つの特徴に従って、本発明によるレーザシステムには、レーザパルスのシーケンスを発し、かつAM様式(AMR)で動作可能なレーザが構成される。この様式では、レーザは、一定パルス繰返し周波数(PRF)ならびに一振幅周期群のパルス内のレーザパルス数に等しい振幅変調周期Naの周期的に変化するピークパワーおよびパルスエネルギーの少なくとも一方でレーザパルスを発する。
【0034】
別の特徴に従って、本発明によるレーザシステムは、振幅周波数変調様式(AFMR)で動作可能なレーザを含む。この様式は、レーザが一振幅周期群のパルス内のパルス数に等しい変調周期Naの周期的に変化されるパルスピークパワーもしくはパルスまたは両方でレーザパルスのシーケンスを発することによって特性化される。AMPR様式は、一周波数周期群のパルス内のパルス数に等しい周波数変調周期Npの周期的に変化されるPRFで発されるパルスのシーケンスに更に備える。
【0035】
上記特徴の本発明によるレーザシステムのいずれかに活用されるレーザの種類には、好ましくは、ダイオード励起固体レーザ、および励起固体レーザなどのダイオード励起ファイバレーザを含む。特に、ダイオード励起レーザは、Tm:YAG、Tm:YLF、Tm:YAP、Tm:LuAG、Tm:LuLF、Tm:LuAPおよびTmファイバレーザである。しかしながら、Ho:YAGなどのフラッシュランプ励起固体レーザが本発明によるレーザシステムに利用できる。更には、直接ダイオードレーザの使用は本発明の範囲から除外されない。
【0036】
周期的に変化されるピークパワー、パルスエネルギーまたは両方の変調周期Naは2から100のレーザパルスに及び、両特徴のレーザシステムに適用できる。AMRでのピークパワーもしくはパルスエネルギーの少なくとも一方または両方の変調周期は2から1000のレーザパルスに及ぶ。AFMRでの周期的に変化されるPFの周期Npは2から1000までのレーザパルスに変化する。
【0037】
本発明によるレーザシステムの両特徴の構成に活用されるレーザは、1.85から2.2μmの波長範囲で、好ましくは1.908から1.96μm波長範囲でレーザパルスを発する。これらの波長での動作は、上述した手術手技のいずれにも極めて有益である、水によるレーザ放射の優勢な吸収を許容する。
【0038】
両特徴の構成に使用される上述したレーザは、その間の構造差が一種の変調器であるフリーランニングモードおよびQスイッチで動作できる。フリーランニング様式で活用される変調器にはダイオードレーザを含む一方で、Qスイッチモードは音響光学または電気光学変調器(それぞれ、AOMおよびEOM)と関連付けられる。
【0039】
フリーランニングモードでは、開示したレーザのいずれも、2および5000Hz間に及ぶPRFでレーザパルスのシーケンスを出力する。各レーザパルスは以下の特性を有する:0.001J~10J範囲のレーザパルスエネルギー、100~20000W、好ましくは250~3000W範囲のレーザパルスピークパワー、および100μs~15ms範囲が好ましい、25μs~50ms範囲のレーザパルス持続時間。
【0040】
共振器の品質が変調されたQスイッチモードで動作するレーザは、以下のパルス特性によって特性化されるレーザパルスを出力する:0.1および10mJ間で変化するエネルギー、200および1000000W間に及ぶピークパワー、ならびに500および500000Hz間に及ぶPF。
【0041】
両特徴のレーザ構成の本発明によるシステムは、AMRでの所望のピークパワーもしくはパルスエネルギーまたはAFMRでの所望のピークパワーもしくはパルスエネルギーおよび所望のPRFに関する情報を含む制御信号を出力するコントローラを含む。信号は、上述した変調器のいずれのドライバへも結合される。
【0042】
他方の態様に従って、本発明によるレーザシステムには、所望のレーザパルス形状に関する情報を含む制御信号を出力するコントローラが構成される。レーザは、制御信号に応じて各レーザパルスが所望のレーザパルス形状を有するようにコントローラに動作的に結合される。整形レーザパルスは、互いから時間的に離間される第1および第2のサブパルスで形成される。第1のサブパルスのエネルギーは0.02から0.15J(好ましくは0.05から0.1J)の範囲で変化し、そして第1のサブパルスのピークパワーが50から500W(好ましくは100から250W)の範囲で変化する。第1および第2のサブパルス間の間隔は、100から500μs範囲が好ましい、50から900μs範囲で変化する。第2のサブパルスは、エネルギーが第1のサブパルスのエネルギーを超えて、0.1から10Jの範囲で変化し、ピークパワーが第1のサブパルスのピークパワーを超えて、300から20000Wの範囲で変化する。
【0043】
この態様による本発明によるレーザシステムの更に別の構成には、所望のレーザパルス形状に関する情報を含む制御信号を出力するコントローラが構築される。レーザは、各レーザパルスに所望のレーザパルス形状が形成されるようにコントローラに動作的に結合され、制御信号に応じてレーザパルスのシーケンスを発する。整形レーザパルスは初期および後続区間で形成され、後続区間が初期区間のそれより高いパワーを有する。
【0044】
初期区間は、0および200W間で変化する最小パワーレベルから400および20000W間で変化する後続区間のパワーレベルに単調に増加するパワーを有する。初期区間の持続時間が0.1から10ms範囲で変化し、初期区間のエネルギーがパルスの全エネルギーの10~70%である一方で、後続区間の持続時間は0.5から20ms範囲で変化する。初期区間のパワーは、線形、多項式および指数関数の1つに従って増加する。
【0045】
本発明の更に他の態様、構造細部および利点が以下に特定の説明において詳述される。その上、以上の情報も以下の詳細な説明も単に様々な態様および実施形態の例示的な例であり、特許請求される態様および実施形態の本質および特性を理解するための概観または枠組みを提供すると意図されることが理解されるはずである。容易に理解できるように、本発明の以上および以下に開示される構造詳細の全てが、レーザおよび泌尿器分野の当業者によって容易に理解されるいずれの合理的な組合せでも組み合わされ得る。
【0046】
本発明の態様は、一定の縮尺で描画されているとは意図されない添付の図を参照しつつ更に後述される。図は、様々な構造特徴の例示および更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成するが、しかしいかなる特定の実施形態の範囲の定義としても意図されない。図面は、本明細書の残りと共に、記載および特許請求された態様および実施形態の原理および動作を説明する役目をする。図において、様々な図に例示される各同一またはほぼ同一の構成要素は同様の数字によって表される。明瞭さの目的で、あらゆる構成要素があらゆる図において標識されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による結石破砕術のためのレーザシステムおよびデリバリシステムの例証的な線図である。
【
図2A】公知の先行技術のレーザ結石破砕術に現在使用されている一定ピークパワーおよび均一パルス周期のレーザパルスのシーケンスを例示する図である。
【
図2B】当該技術において公知の、ダイオード励起ファイバまたは固体レーザのパルス形状を例示する図である。
【
図2C】当該技術において公知の、フラッシュランプ励起固体レーザのパルス形状を例示する図である。
【
図2D】当該技術において公知の、スパイクを伴うフラッシュランプ励起固体レーザのパルス形状を例示する図である。
【
図2E】当該技術において公知の、マルチヘッドフラッシュランプ励起固体レーザのパルス形状を例示する図である。
【
図2F】当該技術において公知の、ファイバの遠位端と標的との間の水中でのエネルギー損失を最小化するように設計された、フラッシュランプ励起固体レーザの特別に構築されたパルス形状を例示する図である。
【
図3】レーザパルス数に等しい変調周期Naの周期的に変化されるピークパワーPpまたはエネルギーEによって特性化される振幅周波数変調様式(AFMR)を動作させる本発明によるレーザシステムによって発されるレーザパルスの例証的なシーケンスを例示する図である。振幅周期パルス群では、周波数周期パルス群内のパルス数に対応する変調周期Npの周期的に変化されるパルス周波数。
【
図4A】当該技術において公知の、正常様式としてダスティング、破砕および非接触実験に使用されるレーザパルスシーケンスの例を例示する図である。
【
図4B】当該技術において公知の、正常様式としてダスティング、破砕および非接触実験に使用されるレーザパルスシーケンスの例を例示する図である。
【
図4C】振幅周波数変調様式(AFMR)で動作する本発明によるシステムによって発されてダスティング実験に使用されるレーザパルス群の例を例示する図である。
【
図4D】振幅周波数変調様式(AFMR)で動作する本発明によるシステムによって発されてダスティング実験に使用されるレーザパルス群の例を例示する図である。
【
図4E】振幅周波数変調様式(AFMR)で動作する本発明によるシステムによって発されてダスティング実験に使用されるレーザパルス群の例を例示する図である。
【
図6A】種々の振幅変調周期Naによって特性化されて接触モード実験に使用されるAMRでの振幅周期群のレーザパルスの例の図である。
【
図6B】種々の振幅変調周期Naによって特性化されて接触モード実験に使用されるAMRでの振幅周期群のレーザパルスの例の図である。
【
図6C】種々の振幅変調周期Naによって特性化されて接触モード実験に使用されるAMRでの振幅周期群のレーザパルスの例の図である。
【
図6D】種々の振幅変調周期Naによって特性化されて接触モード実験に使用されるAMRでの振幅周期群のレーザパルスの例の図である。
【
図6E】種々の振幅変調周期Naによって特性化されて接触モード実験に使用されるAMRでの振幅周期群のレーザパルスの例の図である。
【
図6F】種々の振幅変調周期Naによって特性化されて接触モード実験に使用されるAMRでの振幅周期群のレーザパルスの例の図である。
【
図6G】種々の振幅変調周期Naによって特性化されて接触モード実験に使用されるAMRでの振幅周期群のレーザパルスの例の図である。
【
図7A】AMRに従う変調周期Naを有し非接触モード実験に使用される振幅周期群のレーザパルスの更なる例を例示する図である。
【
図7B】AMRに従う変調周期Naを有し非接触モード実験に使用される振幅周期群のレーザパルスの更なる例を例示する図である。
【
図7C】AMRに従う変調周期Naを有し非接触モード実験に使用される振幅周期群のレーザパルスの更なる例を例示する図である。
【
図8】周波数変調様式(FMR)の一例の図である。
【
図9】異なるピークパワーを有する2つの時間的に離間されるサブパルスで整形される単一のレーザパルスの一例である。
【
図10】2つの隣接区間で整形される単一のレーザパルスの一例の図である。
【
図11A】破砕実験に使用される異なるレーザパルス形状の図である。
【
図11B】破砕実験に使用される異なるレーザパルス形状の図である。
【
図11C】破砕実験に使用される異なるレーザパルス形状の図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
ここで本発明の実施形態に詳細な参照がなされることになる。可能な限り、同じまたは同様の部品またはステップを指すために図面および説明に同じまたは類似の参照数字または文字が使用される。図面は簡略形態であり、正確な縮尺ではない。便宜および明瞭さのみの目的で、方向を示す(上/下、等)または運動を示す(前/後、等)用語が図面に対して使用され得る。用語「結合する」および類似の用語は、必ずしも直接かつ即時の接続を意味するわけではなく、中間要素または装置を通じた接続も含む。
【0049】
本発明の発明概念は、アブレーション効率を上昇させることによって高アブレーション率を提供する一方で、後退効果を最小化することに基づく。同概念は、(a)パルスエネルギーE(n)またはピークパワーPp(n)または両方の変調(周期変化)であり、AMとして定義される、(b)パルス周期T(n)のパルス周波数(繰返し率)ν(n)の変調であり、FMとして定義される、(c)AFMと称される同時振幅および周波数変調、ならびに(d)特定のパルス形状の構成によって実現される。
【0050】
本発明の第1の態様-パルスピークパワーおよび/またはエネルギーの変調-は以下の説明を考慮してより良く理解できる。人体または動物体内の結石を治療するための本レーザシステムにおいて、レーザパワーの時間的構造は、次式によって記述できる周期パルスシーケンス(列)である:
P(t)=Pp*f(t-T*n, n=0,1,2,..., (1)
式中、P(t)は瞬時レーザパワーであり、Ppはピークパワーであり、f(t)は個々のパルス形状(プロファイル)であり、Tはシーケンス周期であり、パルス周波数に反比例する:T=1/ν。パルス当たりエネルギーはパワーの積分である:
E=INT(P(t),0,T)=Pp*τ, (2)
式中、τは有効パルス幅である。
【0051】
周期パルスシーケンスは次式によっても記述できる:
P(t)=(E/τ)*f(t-T*n), (3)
個々のパルス形状(プロファイル)f(t)はパルス幅τによって特性化される。結石破砕術のためのレーザシステムに関しては、パルス幅はシーケンス周期より非常に短い:τ<<Tまたはτ<0.1T。
【0052】
従来の石治療手技は、Pp、T、νおよびEが治療前に設定されて治療中に一定に保たれる様式に基づく。一部のレーザシステムには、一定のピークパワー、周波数およびパルス当たりエネルギーを持つ2組のパラメータ間で切り替え可能である二重ペダル治療パラメータが構成できる:Pp1、T1、ν1、E1およびPp2、T2、ν2、E2。
【0053】
本発明による振幅変調(AM):
公知の先行技術と対照的に、振幅変調は、ここで一定周期Tおよび周波数νならびにピークパワーPpの周期変化を有する様式として定義される:
P(t)=Pp(n)*f(t-T*n), n=0,1,2,... (4)
またはエネルギー
P(t)=E(n)/τ(n)*f(t-T*n), (5)
式中、Pp(n)=Pp(n-Na)またはE(n)=E(n-Na)またはτ(n)=τ(n-Na)またはその組合せであり、Naは振幅変調の周期と称される正整数である。本発明によるレーザのAM様式(AMR)では、全てのレーザパルスシーケンスが、群内の可変振幅を伴う一群のNaパルス(振幅変調周期パルス群)の周期シーケンスとして提示できる。
【0054】
図6A~
図6Gおよび
図7A~
図7Cは、AMRで動作する本発明によるレーザシステムから発される種々の変調周期Naのレーザパルスのシーケンスを例示する。これらの図は以下に詳述される。
【0055】
本発明による周波数変調(FM)
公知の先行技術と対照的に、本出願で使用される周波数変調は、一定ピークパワーPpまたはエネルギーEおよび周波数νまたはパルス周期Tの周期変化を有する様式として定義される:
P(t)=Pp*f(t-T(n)*n), n=0,1,2,... (6)
または
P(t)=E/τ*f(t-T(n)*n), (7)
式中、T(n)=T(n-Np)、Npは周波数変調の周期と称される正整数である。周波数変調は、ν(n)=1/T(n)=ν(n-Np)であるので周波数変調を意味する。FM様式(FMR)では、全てのレーザパルスシーケンスが、群内のパルス間の可変周期を伴う一群のNpパルス(周波数変調周期パルス群)の周期シーケンスとして提示できる。
【0056】
図8は、FMRで動作する本発明によるレーザシステムを例示する。
【0057】
本発明による振幅周波数変調(AFM):
本発明に従って定義されるAMおよびFMに基づいて、振幅周波数変調は、ピークパワーPp(またはエネルギーE)ならびに周波数ν(および周期T)の同時周期変化を有する様式として定義される:
P(t)=Pp(n)*f(t-T(n)*n), n=0,1,2,... (8)
またはエネルギー
P(t)=E(n)/τ(n)*f(t-T(n)*n), (9)
式中、Pp(n)=Pp(n-Na)またはE(n)=E(n-Na)またはτ(n)=τ(n-Na)およびT(n)=T(n-Np)。
【0058】
図3および
図4A~
図4Cは、AFMRで動作する本発明によるシステムを例示しており、以下に詳述される。
【0059】
概略的に図示された例証的な本発明によるレーザシステム100を例示する
図1に着目すると、構造的にこのシステムが本発明による両態様の考察に関連し、かつ様々な種類のレーザ技術を使用して具現化できることを当業者は直ちに認識する。しかしながら、好適な実施形態は、レーザ技術の特定の分類、詳細には、フリーランニングモードかQスイッチモードかで動作するパルスレーザ104を含むパルスレーザ技術に基づく。レーザ動作のいずれのモードでもレーザ種類に関係なく、本発明によるレーザシステム100には、レーザ104を励起するポンプ103が構成される。典型的に、ポンプ104は、1つまたは複数のダイオードレーザで構成される。最適な実施形態において、パルスレーザ技術は、エネルギー貯蔵装置(例えば、電気コンデンサ、インダクタまたはこれらの組合せ)の使用を意味する。
【0060】
電源101がシステムに電力を供給し、任意選択でエネルギー貯蔵装置102は、レーザパルスを形成するのに必要な十分なエネルギー量を貯蔵する。ポンプ104のレーザドライバ103が、制御モジュール108からの制御信号に応じて指定された特性の電気パルスを形成する。電気パルスは、レーザ空洞105内のレーザ媒質を励起するのに必要な光パルスを形成するポンプ104の1つまたは複数のダイオードによって受信される。レーザ媒質の出力は、光カプラ106を通してレーザシステムに外部とみなしているデリバリシステム107に結合される。
【0061】
システム全体が制御モジュールCM(108)によって制御されて、収容される校正曲線または表(所望の光出力を達成するのに必要な電気パルスの特性を定める)、制御信号、タイミングおよび安全機能を提供する。励起ダイオードの代わりに、例えばフラッシュランプなどの他の装置が励起光源として使用できる。
【0062】
代替的に、レーザ媒質自体がエネルギー貯蔵装置として使用できる。この構成では、パルス形成は、音響光学、電気光学または受動変調器などのQ変調装置としての空洞損失の内部光変調器の適用を通じて達成される。
【0063】
本発明の目的のために、以下の用語が定義される:
レーザパルスは、レーザドライバ103によるダイオード電流の直接変調またはエネルギー貯蔵装置102の単一充放電サイクルによって発生される本発明によるレーザシステム100の出力である、
レーザパルスのシーケンスは、多数の直接単一変調またはエネルギー貯蔵装置102の単一充放電サイクルによって発生されるレーザシステムの出力である。
【0064】
このように、本発明の一方の態様によるパルスシーケンスの変調は、制御モジュール108によってAMに関しては所望のピークパワーPpもしくはパルスエネルギーEを、またはFM様式では2つの連続パルス間の間隔Tを設定することを通じて達成される。他方の本発明による態様によるパルス整形は、レーザドライバ103においてパルスの所望の時間的構造を形成することを通じて達成される。
【0065】
本発明によるAMならびに組み合わせたAMおよびFMを数学的に記述する、上述した式4~9に基づいて、レーザ発光の時間的構造を制御することによって第1の態様に従って動作するレーザシステム100は、以下を通じて制御される:
a)パルスのシーケンス内のパルス数に対するピークパワーPpまたはパルスエネルギーEを変調する、Pp(n)=Pp(n-Na)、式中Naは振幅変調の周期、
b)パルス数に対するパルスシーケンスの周期T(および、それぞれ、周波数ν)を変調する、T(n)=T(n-Np)、式中Npは周波数変調の周期、
c)上記a)、b)およびc)に記載した変調モダリティを組み合わせる、例えば、振幅および周波数の同時変調(振幅周波数変調)。
【0066】
全ての3種類の変調(振幅、周波数および振幅周波数)の他に、個々のパルス形状を調整することは本発明の様々な態様に使用される。ダイオード励起ファイバ(好ましい)および固体レーザは、励起ダイオードの電流を制御することによって変調でき、かつ励起ダイオード上の電流を変化させることによってレーザパラメータを変更することを許容できる。好ましくは、ダイオード電流は、ダイオード励起レーザ発生の閾値電流Ithと、ダイオード電流の関数としてのレーザパワーの飽和レベルIst未満である、或る最大電流との間の範囲で変化されるべきである。この範囲では、レーザパワーはダイオード電流にほぼ線形に依存しており、レーザドライバの励起電流をプログラムすることによって種々のレーザ時間的構造を生成できる。
【0067】
本発明の主要な提案は、安全性プロファイルを損なうまたは(好ましくは)増やすことなく石ダスティングまたは破砕の速度を上げることである。これは、適当なパルス整形によって、またはパルスのシーケンスを変調すること(上記した変調モダリティの1つもしくは複数で)によって達成できる。そのような変調は、接触ダスティングまたは破砕などの各治療のモードに対しておよび非接触ダスティングに対して最適なはずである。
【0068】
接触ダスティングの場合、所望の最終結果は、1mm未満、好ましくは0.5mm未満、および最も好ましくは0.25mm未満の小粒子への石の破砕である。現行のレーザシステムでは、この様式は、比較的低いパルス当たりエネルギー(0.025~0.3J)を使用する石表面を横断するファイバの連続移動を必要とする。パルス当たりの低エネルギーによるパルス当たりの低アブレーション体積を補償するために、繰返し率が可能な限り高くある一方で、尿路内の温水による軟組織の熱損傷を回避するために平均パワーPa=E*νを安全限界内に保つべきである。Pa maxのこの安全限界は潅水率および全治療時間に依存する。レーザ出力の時間的構造は、レーザパルス整形を通じて、かつ/またはレーザパルスのシーケンスを変調し、同時に後退を減少させるもしくは少なくとも同じレベルに保つことを通じて、平均パワーが等しい高アブレーション速度を達成するように最適化できる。アブレーション効率および後退効果は、以下を含むがそれらに限定されない多くの要因の組合せの結果である:
1.パルスエネルギー、パルスピークパワーまたはパルス幅、繰返し率
2.ビーム径、ファイバコア径に依存する
3.ファイバ端と石との間の距離
4.ファイバ移動の速度。この要因は、一点に印加される有効パルス数に関連する。この数は式K=(d/2v)*νによって推定でき、式中、dは石表面上のビーム径であり、vはファイバの移動速度である。アブレーションの効率は、ファイバ端とレーザクレータの底との間の距離増加、アブレーションの生成物からの日陰効果、レーザクレータの底の水損、および他の要因のため、Kの増加と共に減少する
5.レーザパルシングによって誘発されるファイバの振動。ファイバは、或る振幅の範囲で振動し得る。これらの振動は、水中のレーザ誘起気泡形成からの力、電歪効果、および他の機構によって誘発される。ファイバ振動は、一点Kに印加されるパルス数を有効に減少させて、アブレーション効率を上昇させることができる。
6.石のサイズおよび形状
【0069】
パルス変調は、全ての列記した要因と組み合わさって作用するが、種々の効果に至り得る。例えば、レーザエネルギーの最小から最大への周期増加がアブレーション効率の低下を補償できる一方で、同じ周波数および平均パワーおよびファイバ移動速度では一点において一定エネルギーでレーザ処理する。以下に提供されるのは、種々の振幅の様式(正常様式、治療石の現在の様式を表す)で一定パルスエネルギーおよびピークパワーおよび周波数を使用する石アブレーションおよび後退速度の実験比較であり、振幅および振幅周波数変調が接触および非接触モードに対して提案された様式の利点を証明する。
【0070】
レーザ結石破砕術の時間様式の特性化
レーザ結石破砕術を最適化する包括的目的は、手順を速めること、所望のサイズの破片への石の破損を保証すること、および副作用の発生率を最小化することである。この目的に関連するパラメータの中で、最も重要な2つが、石アブレーションの効率および後退効果の大きさである。レーザ発光の様々な時間様式を比較する目的で、我々は以下のメトリックを使用する:1)石アブレーションの効率Ka、Va/Etとして定義され、式中Vaは全切除体積であり、Etは全レーザエネルギー[mm3/J]である、2)臨界後退速度Vr、レーザ治療の第1の事例における後退の速度として定義される[mm/s]、3)時間様式の絶対品質Qa、アブレーション効率と共に上昇して後退と共に低下するKa/Vr[mm2/W]として定義される、4)時間様式の相対品質Qr、(Qa)/(Qa)refとして定義され、式中添字refは参照正常様式を指す[無次元]、5)破砕モードで石を割る時間として定義する石割れの時間
【0071】
様々な時間様式を特性化および比較するために以下の実験技術が使用された:
【0072】
走査実験
機器:
1)波長1.94μm、ピークパワー最大1000WのTmファイバレーザ
2)200μmのコア径のデリバリファイバ
3)2Dモータステージ
4)高速度カメラ(Phantom Vision Research製Phantom Miro M310)
5)ファイバホルダ
6)機械式粗面計(株式会社ミツトヨ、川崎、日本製Contracer(登録商標))
【0073】
材料および方法:
全ての実験は人造石ファントムで行われた。BegoStone粉末(Bego GmbH、Bremen、Germany)を5:1の混水比で使用して石が生産された。サンプルが、60×40×8mmの寸法を有するスラブへ切り出された。石は、レーザ露光前に24時間水に浸された。
【0074】
アブレーション効率および後退効果が2つの異なる器材で測定された。
【0075】
第一に、水が入った容器に石が入れられた(器材の十分な位置決めのために、2つの気泡レベルが使用された。)。2-Dモータステージにファイバホルダが搭載された。典型的な臨床走査速度を表す6mm/sの速度の1-D水平ファイバ移動を使用して30mm長の直線クレータが作成された。以下の表に従って、レーザパラメータが変更された。機械式粗面計を使用してクレータの横断面積、深さおよび幅の測定が行われた。プロファイルの横断面を使用し、走査速度を掛け平均レーザパワーで割り、アブレーション率および効率が計算された。走査中、ファイバ端と平坦な石表面との間の距離は約0.2+/-0.1mmに保たれた。
【0076】
第二に、同じレーザパラメータに対して後退効果が測定された。石変位の大きさを測定するために、2つの直線定規が長辺に沿って取り付けられて、90°溝を形成した。溝が水槽に浸された。器材の十分な位置決めのために、2つの気泡レベルが使用された。石サンプル(5×5×5mm立方体)が溝へ入れられた。器材の側面の穴に設けられたホルダを通してファイバが導入された。ファイバ先端が石中心と接触させられた。石移動を取得するために、高速度(毎秒1000フレーム)カメラ(Phantom MIRO M310、Phantom Vision Research、USA)が使用された。石の移動は、露光の最初の0.5秒の間に分析された。画像ソフトウェアを使用して時間の関数としての石の移動が定量化され、そしてレーザ処理の初期の瞬間における石移動の速度がレーザ処理の開始時にそのような関数の傾きとして計算された。
【0077】
気泡特性化実験
機器:
1)波長1.94μm、ピークパワー最大1000WのTmファイバレーザ
2)200μmのコア径のファイバ
3)クォーツキュベット
4)実験スタンド
5)ハロゲン照明システム
6)高速度カメラPhantom Miro M310
【0078】
材料および方法:
実験室スタンドにファイバホルダが取り付けられた。水で満たされたクォーツキュベットにファイバが入れられた。高速度カメラを使用して、様々なレーザパラメータ(それぞれ0.025mJから0.4Jのおよび100から500Wの範囲のエネルギーおよびピークパワーレーザ)に対して単一パルスによるビデオ気泡形成が記録された。カメラのフレームレートは毎秒120,000フレームであり、露光時間は7μsであった。場面を照らすためにハロゲン照明システムが使用された。記録ビデオは、1mmまでの、2.5mmまでの、および気泡の最大寸法までの気泡の成長時間を評価するために使用された。ImageJソフトウェアを使用して気泡長さが定量化された。
【0079】
非接触モード
機器:
1)波長1.94μm、ピークパワー最大1000WのTmファイバレーザ
2)200μmのコア径のファイバ
3)軟性内視鏡
4)2つのガラスキュベット
【0080】
材料および方法:
実験器材には、直径が13mmで、40mmの高さで壁に0.25mm孔が穿孔された、特別に構築された内側キュベットを含んだ。軟性内視鏡を通じてレーザ治療が行われた。軟性内視鏡を通じた水の流れは10ml/分であった。内側キュベットが外側キュベットへ入れられて、これが、結石破砕術中に側孔を通って水流によって排出される0.25mm未満の浮遊塵粒子を伴う排水を回収した。石ファントムとして2mmの半径のBegaStone球がこの検討に使用された。各レーザパラメータに対して5つの球が使用された。結石破砕術は2分40秒の期間の間行われた。結石破砕術後に、内側キュベット内に残っている破片が計量された。球の初期質量と残留破片のそれとの間の差として塵の質量が決定された。アブレーション率は、塵の質量と治療の期間との間の比率として定義された。
【0081】
穿孔および割れ
機器:
1)波長1.94μm、ピークパワー最大1000WのTmファイバレーザ
2)200μmのコア径のファイバ
3)ファイバホルダ
4)ガラスキュベット
5)ストップウォッチ
【0082】
材料および方法:
実験は人造石ファントムで行われた。BegoStone粉末(Bego GmbH、Bremen、Germany)を5:1の混水比で使用して石が生産された。石は5×2.5×2.5mmサイズとされた。石は、レーザ露光前に24時間水に浸された。水で満たされたガラスキュベットに石サンプルが入れられた。石は、ファイバが5×2.5mm側の中央において常に石と接触して破砕様式の治療を模倣するような方法で、レーザ放射の様々なパラメータで穿孔された。実験中、ストップウォッチを使用して、石サンプルが2つの破片となる割れ時間が記録された。その後、上の走査実験項に記載された器材を使用して、同じレーザパラメータで後退が評価された。
【0083】
全ての測定は3回繰り返され、設定点、平均値および標準偏差ごとに計算された。
【0084】
振幅周波数変調(AFM)
現行のレーザ結石破砕術に現在使用されているレーザパルスシーケンスの一般的ケースが
図2によって例示される。ここで、シーケンスは、各単一パルスの一定の大きさ(ピークパワー)Pp、一定パルスエネルギーEおよび一定周期Tによって特性化される(
図2A)。単一パルス(201)形状は、一方では、ダイオード励起レーザに対して典型的である単純な準矩形パルス202(
図2B)、急な立上がりエッジおよびロングテールを持つ、フラッシュランプ励起レーザに特有のパルス形状203(
図2C)、レーザの緩和振動により滑らかな一般形状が不規則なマイクロパルスもしくはスパイクで変調される、同じくフラッシュランプ励起固体レーザに対して一般的であるパルス形状204(
図2D)、またはマルチヘッドフラッシュランプ固体レーザシステムに見られる複合パルス形状205(
図2E)間で変化できる。例えば、規則的なマイクロパルスのポケット[Blackmon RL、Fried NM、Irby PB、Enhanced thulium fiber laser lithotripsy using micro-pulse train modulation、Journal of biomedical optics、2012年2月、17(2):028002]、または2つのサブパルス206(
図2F)から成り、前方低エネルギーサブパルスの100から200μsの間隔後に高エネルギー後方サブパルス206が続くパルス[米国特許第5321715号]など、当該技術において他のパルス形状が知られている。
【0085】
対照的に、本発明は、式(4~9)に従って量Pp、EおよびTの1つまたは複数を変化させることによってもたらされる様々な利点および利益を強調する。振幅周波数変調が、本発明によって包含される最も一般的な変調型である。AFMの一例が
図3に図示される。ここで、振幅変調周期Naは周波数変調Npに等しくかつ4に等しい。AFMは、平均群周期Tavによって特性化され得、以下に定義される:
【0086】
【0087】
式中、Ngは周期群内のパルス数であり、Tiはi番目のパルスの周期である。
【0088】
AFMは、接触および非接触の両治療モードに対して有益である。好適なAFMパラメータは次の通りである:
1.走査モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=250~5000W、より好ましくは400~1000W
パルス当たりエネルギー0.01~2J、より好ましくは0.05~0.5J
パルス繰返し率ν=5~3000Hz/周期T=0.00033~0.2s、より好ましくは50~1000Hz、0.001~0.02s
Na=2~10
Np=1~100
これらの設定は
図4およびTable 1(表1)によって例証される。全ての実験は同一の平均パワー30Wで行われて、同じ軟組織安全性プロファイルを提供した。
【0089】
【0090】
表は、AFM様式が500Wおよび1000Wのピークパワーの正常(非変調)様式と比較して後退を増大させることなくアブレーション効率(最大3.1倍)およびアブレーションの深さを有意に増大させることを示す。
【0091】
接触/破砕モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=100~2000W、より好ましくは250~1000W
パルス当たりエネルギー0.2~10J、より好ましくは0.5~5J
パルス繰返し率ν=1~300Hz/周期T=0.0033~1s
Na=2~10
Np=1~100
2.非接触(ポップコーニング)モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=500~3000W、より好ましくは500~2000W
パルス当たりエネルギー0.05~1J、より好ましくは0.05~0.5J
パルス繰返し率ν=10~1000Hz/周期T=0.001~0.1s
Na=2~100
Np=1~100
【0092】
振幅変調
振幅変調はAFMの特定のケースであり、パルス周期が一定のままである。振幅変調(AM)の典型的なケースが
図5に図示される。ここで、大きさ(PpまたはE)が周期Na=3で変化する一方で、個々のパルス間の周期Tは一定のままである。時間間隔T*Na内の一群のパルス501は振幅変調周期パルス群と称される。
【0093】
パルス群の多くの変形が可能である。一部が
図6(a-g)によって例示される。
図6から見て取れるように、PpもEもAMの枠組み内で変化できる。AMは、レーザ結石破砕術の両主モード(すなわち、接触および非接触)に対して有益であり得る。以下に要約されるのは、好ましい様式および図例である:
1.接触/走査モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=250~3000W、より好ましくは400~1000W
パルス当たりエネルギー0.02~2J、より好ましくは0.05~0.5J
パルス繰返し率ν=5~3000Hz/周期T=0.00033~0.2s、より好ましくは50~1000Hz、0.001~0.02s
Na=2~10
これらの設定は
図6およびTable 2(表2)によって例証される。
【0094】
【0095】
これらのデータは、振幅変調が様式品質を3倍以上上昇させ得ることを示唆する。
2.接触/破砕モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=100~20000W、より好ましくは250~3000W
パルス当たりエネルギー0.2~20J、より好ましくは0.5~10J
パルス繰返し率ν=1~500Hz/周期T=0.002~1s
Na=2~10
3.非接触(ポップコーニング)モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=500~3000W、より好ましくは500~2000W
パルス当たりエネルギー0.05~1J、より好ましくは0.05~0.5J
パルス繰返し率ν=10~3000Hz/周期T=0.0003~0.1s
Na=2~100
これらの設定は
図7およびTable 3(表3)によって例証される。
【0096】
【0097】
これらのデータは、振幅変調が非接触ダスティング法を完了するために必要とされる時間を有意に(最大60%)削減する一方で、レーザの平均パワーを一定に維持できることを示唆する。
【0098】
周波数変調(FM)
周波数変調はFMの特定のケースであり、パルス周期が変化する一方で、パルスエネルギーもピークパワーも一定のままである。周波数変調の典型的なケースが
図8に図示される。ここで、大きさ(PpおよびE)が一定のままである一方で、パルス周期は周期Np=5で変化する。AFMとして、FMは平均パルス周期Tavによって特性化される。時間間隔Tav*Np内の一群のパルス801が周期パルス群を形成する。
【0099】
FMパルス群の多くの変形が可能である。
【0100】
FMは、レーザ結石破砕術の両主モード(すなわち、接触および非接触)に対して有益であり得る。以下に要約されるのは、好ましい様式である:
1.接触/走査モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=250~3000W、より好ましくは400~1000W
パルス当たりエネルギー0.02~2J、より好ましくは0.05~0.5J
パルス繰返し率ν=5~3000Hz/周期T=0.00033~0.2s、より好ましくは50~1000Hz、0.001~0.02s
Np=10~100
2.接触/破砕モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2μm、より好ましくは1.908~1.98μm
ピークパワーPa=100~3000W、より好ましくは400~1000W
パルス当たりエネルギー0.2~20J、より好ましくは0.5~5J
パルス繰返し率ν=1~300Hz/周期T=0.0033~1s
Np=10~100
3.非接触(ポップコーニング)モード
好ましいパラメータ:
波長1.81~2.2、より好ましくは1.908~1.98
ピークパワーPa=250~5000W、より好ましくは250~1000W
パルス当たりエネルギー0.02~1J、より好ましくは0.05~0.5J
パルス繰返し率ν=10~1000Hz/周期T=0.001~0.1s
Np=10~100
【0101】
パルス形状
ファイバ端から発して、標的石または組織に向けてファイバ端と石または組織表面との間のギャップにおける液体(水)媒体中を進行するレーザエネルギーは吸収されることになるが、しかし吸収は予想されるより少なくなり得、これは「モーゼ効果」に帰されており、発されたエネルギーの第1の成分が液体によって吸収されて液体媒体中に蒸気気泡を生じさせる結果、低光減衰によって特性化される低拘束性または吸収性気体/蒸気媒体を残存エネルギーが通過する。初期パルスの間に生じたレーザ誘起蒸気気泡は「水を分ける」ように機能して、後続パルスがより効率的に石に送出されることを可能にする。この現象は、2つのパルスを使用して石アブレーションの効率を上昇させるために使用すると提案されており、まず蒸気気泡を生じさせる短い低エネルギーパルスを送出した後に、より長く、より高エネルギーの治療パルスが続く(米国特許第5,321,715号を参照のこと)。
【0102】
本発明において、レーザパワーの時間的構造を制御することは、後退効果を最小化するために使用される。石と遠位ファイバ端との間の水気泡形成は、石をファイバから離れて移動させる圧力および力を発生し得る。この効果は、気泡形成中にレーザパワーおよびエネルギーを減少させることによって最小化できる。パルス間の気泡の崩壊が石への負圧および力を発生し、そして石アブレーションの間、気泡成長および反跳移動により石移動を補償できる(吸収効果)。これらの効果は、個々のパルス形状f(t)、パルスエネルギーE、およびパルス間の間隔Tを変化させることによって制御できる。
【0103】
レーザアブレーションは通常、高アブレーション効率および低後退効果の組合せを要求する。異なる時間的レーザ構造を比較するために、アブレーションの生成物の体積割る、この体積を切除するために費やされた全レーザエネルギーおよびレーザパルシングのまさに開始時の後退による石変位の速度V、として定義されるレーザアブレーション効率ηablを使用できる。Vの値は、低繰返し率に関しては単一パルスの衝撃によって、または高繰返し率レーザシステムに関しては約0.1sの間の幾つかのパルスの衝撃によって決定される。詳細には、比率ηabl/Vは、治療の実際的な(複合)効率または速度を特性化できる。
【0104】
フラッシュランプポンピングが構成された固体レーザのためのパルス形状は、通常不規則なスパイク構造を有しており、非常に限られた方式でフラッシュランプをポンピングすることを通じて電流によって制御できる。対照的に、ダイオード励起ファイバおよび固体レーザは、広範なパラメータ内でパルス形状の精密制御を許容して治療の速度を上げる。
【0105】
本発明において、AMおよびAFMに加えて、レーザ発光の時間的構造は、個々のパルス形状f(t)を変調して、最高効率および後退軽減の石アブレーションのための最適条件を提供することを通じて制御される。
【0106】
接触モードで石を治療するとき、目的は、石を破砕するために必要とされる合計時間を削減するために石アブレーションの効率を上昇させることである。これは、パルスの第1の部分に低輝度を適用して最小エネルギー損失でモーゼチャネルを確立するが、同時にそのようなパルスの後退効果を最小化することによって、続いてパルスの第2の部分に高輝度を適用して石への熱または熱機械的効果を最大化することによって、パルスの形状を調整することを通じて達成できる。パルスの第2の部分の吸水損失は、パルスの第1の部分によって確立されるモーゼチャネルにより非常に削減されることになる。しかしながら、モーゼ気化気泡またはチャネルは、ファイバ端と石との間で成長しており、石への圧力および力を発生し、したがって後退効果を生じさせる。本発明において、レーザパルスピークパワーおよびエネルギーを最小化して後退効果を低減させることが提案される。実験設定では、毎秒120000フレーム速度の高速度ビデオカメラを使用して0.2mmファイバの端において気泡力学が測定された。単一パルス露光の石サンプルの変位効果が測定された。上記実験器材の説明を参照のこと。
【0107】
【0108】
Table 4(表4)は、1940nmの波長および0.2mmのファイバコアを有するTFLに対する実験データを要約する。結果は、気泡圧力に比例する気泡の長さおよび石変位がレーザパルスピークパワーおよびエネルギーと共に増加することを示す。ファイバ端と臨床接触設定下の石との間の距離が0および1mm間の範囲にあるが、しかし治療中に短期間の間それは2.5mmを超えることができる。アブレーション効率のためにモーゼ(気化)チャネルを利用するためであるが、後退効果を最小化するために、最低圧力で長くても2.5mmである長さを有する気泡を生じさせる第1のサブパルスのレーザパラメータを使用することが提案される。モーゼ(蒸気)チャネルを生じさせる、第1のレーザサブパルスの測定ピークパワーデータに基づいて、ピークパワーは範囲50~500W、好ましくは100~300Wにあるべきであり、そしてパルス当たりエネルギーは0.02~0.15J、好ましくは0.05~0.1Jであるべきである。効率的なアブレーションのための第1および第2のサブパルス間の間隔は、以下の判定基準に基づいて定義されるべきである:1)第2のサブパルスは、蒸気チャネルフロントが石に達した後に、すなわち気泡が2.5mm、好ましくは1mmに成長したときに開始されるべきである。2)石吸収効果を生成するために、気泡への圧力は低下したまたは負になった。
【0109】
【0110】
Table 5(表5)は、提案された範囲からレーザピークパワーおよびエネルギーの関数として1mmおよび3mmまでの気泡成長のための時間を示す。それゆえに、サブパルス間の間隔は範囲50~900μs、好ましくは100~500μsにあるべきである。第2のサブパルスのエネルギーは0.1から10Jの範囲にあるべきである。そのようなパルス形状が
図9によって例示される。
【0111】
本発明の他の実施形態において、我々は、パルスの間に連続的に送出されたパワーを持つパルス形状を提唱する。この形状は、オペレータが穿孔手技を使用する一方で全治療サイクルの間レーザファイバ端と石との間の密接を提供するときに破砕モードに対して最も有効である。この場合、ファイバ端と石との間の水層は極めて最小限である(0.5mm未満)または全く存在することができない。結石破砕術のために現在使用されているレーザは均一の矩形のまたは平頂パルスを有しており、ダイオード励起ファイバおよび固体レーザに対して典型的である202(
図2)。Ho:YAGなどのフラッシュ励起固体レーザは、パルスの始めに高パワーおよびバックテールにパワーの緩徐な緩和を持つ非対称形状を有する203または204(
図2)。パルスのこれらの形状は、穿孔中に割れる石に対して最適でない。穿孔および破砕中のアブレーションの効率を上昇させるために、本発明において、我々は2つの部分を持つパルスを使用することを提案し、第1の部分は、ファイバと石との間の残留水分を除去すること、および石のアブレーション、およびアブレーションクレータ周辺の石の予熱のために使用される(
図10)。低パワーのパルスの第1の部分による予熱の結果、レーザクレータ周辺の熱応力の上昇、および100~250℃を越える加熱により石マトリックスの吸収係数を上昇させることになるであろう。高パワーのパルスの第2の部分は、石物質によってより有効に吸収されるであろう、かつ第1のパルス部分より良好な吸収および第2の部分の高ピークパワーによるより効率的な機械的損傷、ならびにレーザクレータ周辺の石の初期機械的応力をもたらすであろう。結果として、石が大きな部分へ割れる確率が上昇するであろう。同時に、そのようなパルシングの後退効果は、高反跳モーメントを持つ小粒子のアブレーションによるよりもむしろ割れへのレーザエネルギーのより有効な変換により低下されるであろう。これは
図10によって例示され、τ
1がパルスの第1の部分の持続時間であり、τ
2がパルスの第2の部分の持続時間である。パルスの第1の部分のパワープロファイルf
1(t)はレベルP
minで一定である、またはP
minからP
maxに増加する、線形、指数、多項式関数などの単調関数であることができ、P
maxはパルスの第2の部分のピークパワーである。輝度の他の時間依存も可能であり、当業者にとって明らかであろう。パルスの第1の部分の持続時間は、モーゼチャネルを確立するために必要とされる最小エネルギーを考慮することから決定でき、かつレーザクレータ周辺の石マトリックスの実質的な加熱で石のアブレーションをもたらして、石マトリックス吸収を増加させるかつ石マクロ割れ効果を強化できる。代替実施形態において、第1の部分の持続時間は、フィードバック機構を使用してリアルタイムに決定できる。フィードバック機構は、モーゼチャネルの確立および/または石クレータ温度の信号を送ることになり、光学、音響または他の技術に基づくことができる。例えば、石温度は、レーザパワー送出のために使用される同じファイバを通じて石によって発される熱放射を測定することによって、検出できる。波長1.94μmのTFLに対して、我々は、パルスの第1の部分のレーザパワーが範囲P
min=50~200Wにあるべきであり、パルス持続時間τ
1が範囲0.1から10msにあるべきであり、第1の部分のエネルギーがパルスの全エネルギーの10~70%である一方で、パルスの第2の部分のパワーが範囲400から20000Wに、かつその持続時間が範囲0.5から20msにあるべきであることを実験的に発見した。
【0112】
石穿孔および破砕のために最適化されるパルス形状の例が
図11およびTable 6(表6)に与えられる。
【0113】
【0114】
Table 6(表6)は、正常様式でピークパワーを増加させることで割れ時間を減少させることに至るが、しかし後退効果も増加させ、結果的な様式品質はほぼ同じままであることを示す。対照的に、本発明に提案されるパルスの整形は割れ時間も後退効果も減少させ、したがって様式品質の所望の上昇に至る。
【0115】
上記記述および例は、単に本開示を例示するために記載されており、限定的であるとは意図されない。したがって、本開示は、添付の請求項の範囲内に全ての変形を含むと広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0116】
100 レーザシステム
101 電源
102 エネルギー貯蔵装置
103 レーザドライバ
104 ポンプ
105 レーザ空洞
106 光カプラ
107 デリバリシステム
108 制御モジュール
201~205 パルス
206 サブパルス
501 パルス
801 パルス