(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】アミノシランを用いてモレキュラーシーブの表面を改質する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/02 20060101AFI20241011BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20241011BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241011BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20241011BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
C01B39/02
B01J31/02 102A
B01J37/08
B01D53/86 222
B01D53/86 ZAB
B01D53/94 222
(21)【出願番号】P 2021522380
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 GB2019053318
(87)【国際公開番号】W WO2020109759
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】キルマーティン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】サンカラン、アシュウィン
(72)【発明者】
【氏名】トンプセット、デヴィット
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044162(JP,A)
【文献】特表2014-521494(JP,A)
【文献】特開2010-125342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/02
B01J 31/02
B01J 37/08
B01D 53/86
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質モレキュラーシーブを調製するための方法であって、前記方法が、結晶性小細孔又は大細孔モレキュラーシーブをアミノシランと反応させること、及び、該反応物と白金族金属、又はその塩若しくは酸化物から選択される金属化合物とをさらに反応させること、を含み、前記結晶性小細孔又は大細孔モレキュラーシーブとアミノシランとの反応が、水性溶媒中で実施され、前記水性溶媒が、少なくとも10体積%の量の水を含み、
前記結晶性モレキュラーシーブが、アルミノケイ酸骨格、シリコアルミノリン酸骨格、金属置換アルミノケイ酸塩骨格又は金属充填シリコアルミノリン酸塩骨格を有
し、
前記結晶性小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらのいずれか2つ以上の混合又は連晶からなる群から選択される骨格型を有し、
前記結晶性大細孔モレキュラーシーブは、CON、BEA、FAU、MOR及びEMTからなる群から選択される骨格型を有する、方法。
【請求項2】
前記水性溶媒が、少なくとも25体積%の量の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶性モレキュラーシーブが、アルミノケイ酸塩骨格を有する金属充填モレキュラーシーブであり、前記充填された金属が、銅、パラジウム、白金、又はこれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶性モレキュラーシーブが、小細孔モレキュラーシーブであり、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、及びこれらのいずれか2つ以上の混合又は連晶からなる群から選択される骨格型を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記小細孔モレキュラーシーブが、AEI、AFX、又はCHAである骨格型を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶性モレキュラーシーブが、アルミノケイ酸塩骨格又は金属充填アルミノケイ酸塩骨格、及び10~200のシリカ対アルミナのモル比を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アミノシランが、以下の一般式:
【化1】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3が、それぞれ独立して、H及びOR
4からなるリストから選択され、
R
4=H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、又はアミン保護基であり、
R
5、及びR
6が、それぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、又はアシルからなるリストから選択され、
n=0~12である]を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R
2及びR
3が、それぞれ独立して、OR
4である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
R
5及びR
6が、それぞれHである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記アミノシランが、3-アミノプロピルシラン加水分解物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性溶媒が水である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物のpHを調整する工程を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記改質モレキュラーシーブを官能性ポリマーと反応させる工程を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記官能性ポリマーが、以下の官能基:アクリレート、メタクリレート、ホスフェート、又はOR
7[式中、R
7=H、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はアシルである]のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記官能性ポリマーが、アクリレート官能基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
触媒物品を形成する方法であって、前記方法が、
i)請求項1~15のいずれか一項に記載の方法によっ
て得ることができる改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートで基材をコーティングすることと、
ii)前記コーティングされた基材を乾燥及び/又は焼成することと、を含む、方法。
【請求項17】
触媒物品を形成する方法であって、
a)結晶性モレキュラーシーブを水性溶媒中のアミノシランと反応させて、改質モレキュラーシーブを形成し、該改質モレキュラーシーブと、卑金属、白金族金属、又はその塩若しくは酸化物から選択される金属化合物とをさらに反応させる工程と、
b)前記工程(a)で得られた改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートで基材をコーティングする工程と、
c)前記コーティングされた基材を乾燥及び/又は焼成する工程と、を含み、
前記結晶性モレキュラーシーブが、アルミノケイ酸骨格、シリコアルミノリン酸骨格、金属置換アルミノケイ酸塩骨格又は金属充填シリコアルミノリン酸塩骨格を有する、方法。
【請求項18】
工程(a)において、前記水性溶媒が、少なくとも10体積%の量の水を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(a)において、前記水性溶媒が、水から本質的になる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)において、前記結晶性モレキュラーシーブが、アルミノケイ酸塩骨格を有する金属充填モレキュラーシーブであり、前記充填された金属が、銅、パラジウム、白金、又はこれらの混合物を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記結晶性モレキュラーシーブが、小細孔モレキュラーシーブであり、前記小細孔モレキュラーシーブが、AEI、AFX又はCHAである骨格型を有する、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程(a)において、前記アミノシランが、以下の一般式:
【化2】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3が、それぞれ独立して、H及びOR
4からなるリストから選択され、
R
4=H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、又はアミン保護基であり、
R
5、及びR
6が、それぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、又はアシルからなるリストから選択され、
n=0~12である」を有する、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記アミノシランが、3-アミノプロピルシラン加水分解物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを請求項16~23のいずれか一項に記載の方法によ
り得ることができる触媒物品と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モレキュラーシーブの表面を改質するための方法に関する。本発明はまた、このような方法によって得られる又は得ることができる改質モレキュラーシーブ、ウォッシュコート、触媒物品の形成方法、及びこのような方法によって得られる又は得ることができる触媒物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
既知のSCR(選択的触媒還元)触媒としては、モレキュラーシーブが挙げられる。有用なモレキュラーシーブとしては、例えば、アルミノケイ酸塩(ゼオライト)又はシリコアルミノリン酸塩(SAPO)であり得る結晶性又は準結晶性材料が挙げられる。このようなモレキュラーシーブは、規則的な結晶内空洞及び分子寸法のチャネルを有する骨格を形成するために、例えば、環に連結された、繰り返しSiO4、AlO4、及び任意にPO4四面体単位で構築されている。四面体単位(環員)の特定の配置は、モレキュラーシーブの骨格(framework)を生じさせるものであり、慣例によって、各独特の骨格には、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association(IZA))によって独特の3文字コード(例えば、「CHA」)が割り当てられている。既知のSCR触媒であるモレキュラーシーブ骨格の例としては、骨格型コードCHA(チャバザイト)、BEA(ベータ)、及びMOR(モルデナイト)が挙げられる。
【0003】
モレキュラーシーブ触媒、特にゼオライト触媒は、金属で促進化され得る(metal-promoted)。金属促進化モレキュラーシーブ触媒(metal-promoted molecular sieve catalysts)の例としては、鉄、銅、及びパラジウム促進化モレキュラーシーブ触媒が挙げられ、金属は、例えばイオン交換又は含浸によってモレキュラーシーブに取り入れられ得る。鉄及び銅促進化モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)は、SCR反応を促進することが知られている。パラジウム促進化モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)は、受動的NOx吸着剤(PNA)で使用することが知られている。
【0004】
典型的には、モレキュラーシーブ触媒は、モノリスなどの基材上又はその中に配置され、触媒物品を形成する。モレキュラーシーブ触媒は、ウォッシュコートとして基材に適用されてもよく、又は基材自体の一部(例えば、押出触媒(extruded catalyst))を形成してもよい。結晶性モレキュラーシーブは、基材の孔径が、最小の様々な未粉砕モレキュラーシーブの粒径よりもはるかに大きい場合であっても、ウォッシュコート配合物に組み込まれる前に粉砕される必要があり得ることが、当該技術分野において既知である。モレキュラーシーブを粉砕して、特定の下流プロセス要件又は製品仕様を満たすのに必要な所望の粒径分布及び形状に、粒子を分解(deaggregate)又は細かく砕くこと(comminute)が必要とされる場合がある。しかしながら、この粉砕工程の追加は、モレキュラーシーブ含有ウォッシュコート配合物を調製する時間及び困難さを増大させる。プロセスにおいて粉砕工程が必要になることは、粉砕プロセスのための終点を定量化することが困難になり得るため、最終製品に望ましくない量の変動性ももたらし得る。
【0005】
したがって、このような触媒を粉砕する必要なく、均一で予測可能なバルク特性を有するモレキュラーシーブ触媒(例えば、ゼオライト触媒)を得るための手段が提供されるならば、触媒調製の技術分野ではかなりの進歩であろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様では、結晶性モレキュラーシーブをアミノシランと反応させることを含む、モレキュラーシーブの表面を改質する方法が提供され、この反応は水性溶媒中で実施される。
【0007】
水性溶媒は、少なくとも10体積%の量の水を含んでもよい。
【0008】
第2の態様では、本発明は、上述の方法によって得られる又は得ることができる改質モレキュラーシーブを提供する。
【0009】
本発明の第3の態様では、上記で定義された方法によって得られる又は得ることができる改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートが提供される。
【0010】
第4の態様では、本発明は、
I.上記定義されたような改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートで基材をコーティングする工程と、
II.コーティングされた基材を乾燥及び/又は焼成する工程と、を含む、触媒物品を形成するための方法を提供する。
【0011】
第5の態様では、本発明は、
a)結晶性モレキュラーシーブを水性溶媒中のアミノシランと反応させて、改質モレキュラーシーブを形成する工程と、
b)工程a)で調製された改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートで基材をコーティングする工程と、
c)コーティングされた基材を乾燥及び/又は焼成する工程と、を含む、触媒物品を形成するための方法を提供する。
【0012】
第6の態様では、本発明は、上記定義された方法によって得られる又は得ることができる触媒物品を提供する。
【0013】
第7の態様では、本発明は、排気ガスを上記定義された触媒物品と接触させることを含む、排気ガスを処理する方法を提供する。
【0014】
定義
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において周知である。ウォッシュコートは、典型的には、液体及び触媒成分を含む。ウォッシュコートは、溶媒中の触媒材料の溶液、例えばスラリー又は懸濁液の形態をとることができる。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「貴金属(noble metal)」は、概ね、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金からなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「貴金属」は、好ましくは、ロジウム、白金、パラジウム、及び金からなる群から選択される金属を指す。
【0016】
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0017】
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相である金属酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する金属酸化物の組成物を指す。
【0018】
本明細書で使用される用語「溶液」は、概ね、溶媒に溶解された材料又は物質を指すが、用語「懸濁液」又は「スラリー」も包含する。したがって、本明細書で使用される「水溶液」という表現は、材料のかなりの部分が水性媒体中に溶解されていないが、その中に懸濁又はスラリー化されている懸濁液又はスラリー、例えば、材料と水性媒体との混合物を指してもよい。
【0019】
本明細書で使用される「から本質的になる」という表現は、ある特徴の範囲を、指定された材料と、例えば微量不純物など、その特徴の基本特性に実質的に影響しない任意の他の材料又は工程と、を含むように限定する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0020】
材料に関して本明細書で使用される「実質的に含まない」という表現は、材料が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下で存在し得ることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0021】
本明細書で使用される用語「酸」は、ルイス酸又はブレンステッド酸を指す。
【0022】
本明細書で使用される用語「塩基」は、ルイス塩基又はブレンステッド塩基を指す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、本発明の好ましい及び/又は任意選択的な特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の好ましい及び/又は任意選択的な特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせのいずれかで、組み合わせることができる。
【0024】
範囲が本明細書で指定される場合、範囲の各端点は独立していることが意図される。したがって、範囲の列挙された各上端点は、列挙された各下端点と独立して組み合わせることができ、その逆もまた同様であることが明白に想到される。
【0025】
本発明においては、結晶性モレキュラーシーブの表面は、結晶性モレキュラーシーブとアミノシランとを反応させることによって改質され、この反応は、水性溶媒中で行われる。驚くべきことに、結晶性モレキュラーシーブの表面をこのように改質することによって、モレキュラーシーブを粉砕する必要なしに、仕様を満たす(すなわち、同等のバルク物理的特性を有する)モレキュラーシーブ触媒、例えば、SCR触媒を製造することができることが見出された。基材上へのコーティングのためのウォッシュコートの調製における必要な粉砕工程の除去は、例えば、粉砕装置自体及び関連するエネルギー及び操作者入力からのコスト削減、並びに、全体的なプロセスの操作の容易さ及び最終製品の堅牢性の向上をもたらすため、有利である。
【0026】
アミノシランを使用することにより、酸性(pH<7)環境において、モレキュラーシーブの表面電荷を正に帯電した表面に変化させることが可能であることも判明している。特定のアミノシラン系官能基の使用は、自己集合を使用して、更なる複雑なコロイド構造を組み立てることができることを意味する。使用され得るアミノシランの例は、Evonilにより販売されているHydrosil及びSivoブランドからのものである。具体的な例としては、Hydrosil 1151、Hydrosil 2909、Hydrosil 2627及びSIVO 160が挙げられる。
【0027】
結晶性モレキュラーシーブの表面、例えばゼオライトを、結晶性モレキュラーシーブをアミノシランと反応させることで改質することによって、得られる改質モレキュラーシーブは、改質モレキュラーシーブの表面にアミン部分が存在するため、均一かつ一貫した表面化学プロファイルを有する。この一貫した表面化学プロファイルの結果、改質モレキュラーシーブの処理及び取り扱いの容易さの改善、特に、このような改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートをモノリス基材などの基材上へコーティングする際の改善がもたらされる。これらの利点は、フィルタ基材(例えばウォールフローフィルタ基材)をコーティングする際に特に明らかであり、フィルタ基材は、フロースルー基材と比較して一貫してコーティングすることがより課題であり得る。
【0028】
加えて、アミノシランの使用は、従来の方法と比較して、ウォッシュコートの調製における結晶性モレキュラーシーブ(例えばゼオライト)の堅牢かつ普遍的な分散ストラテジーを提供する。従来の界面活性剤及び/又は分散剤は、モレキュラーシーブの種類の範囲にわたって普遍的に作用せず、製造バッチのばらつきに起因して不充分となりやすい。理論に束縛されるものではないが、改質モレキュラーシーブによって達成される改善された分散性は、モレキュラーシーブの表面電荷を変化させることに起因し得ると考えられる。特に、モレキュラーシーブの等電点(すなわち、モレキュラーシーブの表面電荷がゼロであるpH)を上昇させることにより、分散性の向上をもたらし得ると考えられる。
【0029】
驚くべきことに、本発明による方法によって調製された改質モレキュラーシーブ(例えばゼオライト)を、改質モレキュラーシーブがウォッシュコートで基材(例えばウォールフローフィルタ)に適用される触媒物品を形成するための方法で使用すると、未改質の(すなわち、アミノシランと反応していない)結晶性モレキュラーシーブ(例えば、未改質ゼオライト)を使用して調製された同等な触媒物品と比較するとき、使用時により低い背圧を示す触媒物品を形成することができることが見出された。
【0030】
結晶性モレキュラーシーブは、典型的には、アルミニウム、ケイ素、及び/又はリンから構成される。結晶性モレキュラーシーブは、概して、酸素原子の共有によって結合されるSiO4、AlO4、及び任意にPO4の三次元配列(例えば骨格)を有する。結晶性モレキュラーシーブは、アニオン性骨格を有してもよい。アニオン性骨格の電荷は、アルカリ元素及び/又はアルカリ土類元素(例えば、Na、K、Mg、Ca、Sr、及びBa)のカチオン、アンモニウムカチオン及び/又はプロトンなどのカチオンによって相殺され得る。
【0031】
好ましくは、結晶性モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格、アルミノリン酸塩骨格、シリコアルミノリン酸塩骨格、金属充填アルミノケイ酸塩骨格、金属充填アルミノリン酸塩骨格、又は金属充填シリコアルミノリン酸塩骨格を有する。特に好ましくは、結晶性モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格又は金属充填アルミノケイ酸塩骨格を有する。結晶性モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格又はアルミノリン酸塩骨格を有してもよい。結晶性モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格又はシリコアルミノリン酸塩骨格を有することが好ましい。より好ましくは、結晶性モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格を有する。
【0032】
結晶性モレキュラーシーブがアルミノケイ酸塩骨格を有する場合には、モレキュラーシーブは、好ましくはゼオライトである。
【0033】
結晶性モレキュラーシーブは、小細孔結晶性モレキュラーシーブ(すなわち、8個の四面体原子による最大環サイズを有する結晶性モレキュラーシーブ)、中細孔結晶性モレキュラーシーブ(すなわち、10個の四面体原子による最大環サイズを有する結晶性モレキュラーシーブ)、及び大細孔結晶性モレキュラーシーブ(すなわち、12個の四面体原子による最大環サイズを有する結晶性モレキュラーシーブ)から選択され得る。より好ましくは、結晶性モレキュラーシーブは、小細孔結晶性モレキュラーシーブ及び中細孔結晶性モレキュラーシーブから選択される。
【0034】
第1の結晶性モレキュラーシーブの実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは、小細孔モレキュラーシーブである。小細孔結晶性モレキュラーシーブは、好ましくは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらのいずれか2つ以上の混合又は連晶からなる群から選択される骨格型を有する。連晶は、好ましくは、KFI-SIV、ITE-RTH、AEW-UEI、AEI-CHA、及びAEI-SAVから選択される。より好ましくは、小細孔結晶性モレキュラーシーブは、AEI、CHA、又はAEI-CHA連晶である骨格型を有する。更により好ましくは、小細孔結晶性モレキュラーシーブは、AEI、AFX又はCHA、特にAEIである骨格型を有する。
【0035】
好ましくは、小細孔結晶性モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格又はシリコアルミノリン酸塩骨格を有する。より好ましくは、小細孔結晶性モレキュラーシーブは、特に、小細孔結晶性モレキュラーシーブがAEI、CHA又はAEI-CHA連晶、特にAEI又はCHAである骨格型を有する場合、アルミノケイ酸塩骨格を有する(すなわち、モレキュラーシーブはゼオライトである)。
【0036】
第2の結晶性モレキュラーシーブの実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは、AEI、MFI、EMT、ERI、MOR、FER、BEA、FAU、CHA、LEV、MWW、CON及びEUO、並びにこれらのいずれか2つ以上の混合からなる群から選択される骨格型を有する。
【0037】
第3の結晶性モレキュラーシーブの実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは、中細孔結晶性モレキュラーシーブである。中細孔結晶性モレキュラーシーブは、好ましくは、MFI、FER、STI、MWW、及びEUO、より好ましくはMFIからなる群から選択される骨格型を有する。
【0038】
第4の結晶性モレキュラーシーブの実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは、大細孔結晶性モレキュラーシーブである。大細孔結晶性モレキュラーシーブは、好ましくは、CON、BEA、FAU、MOR及びEMT、より好ましくはBEAからなる群から選択される骨格型を有する。
【0039】
第1から第4の結晶性モレキュラーシーブのそれぞれの実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは、好ましくはアルミノケイ酸塩骨格を有する(例えば、結晶性モレキュラーシーブはゼオライトである)。前述の3文字のコードのそれぞれは、「IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature」及び/又は「Structure Commission of the International Zeolite Association」に準拠した骨格型を表す。
【0040】
第1から第4の結晶性モレキュラーシーブのいずれか1つの実施形態において、概して、結晶性モレキュラーシーブ(例えば、大細孔、中細孔、又は小細孔)は、少なくとも2つの異なる骨格型の連晶ではない骨格を有することが好ましい場合がある。
【0041】
結晶性モレキュラーシーブは、典型的には、10~100、より好ましくは15~80(例えば15~30)などの、10~200(例えば10~40)のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。SARは概して、アルミノケイ酸塩骨格(例えば、ゼオライト)又はシリコアルミノリン酸塩骨格、好ましくはアルミノケイ酸塩骨格(例えば、ゼオライト)を有する分子に関する。
【0042】
結晶性モレキュラーシーブは、金属含有モレキュラーシーブであってもよく、例えば、モレキュラーシーブ自体の骨格は、アルミニウム以外の骨格金属を含んでもよい。追加として又は代替として、結晶性モレキュラーシーブは、金属充填結晶性モレキュラーシーブ(例えば、アルミノケイ酸塩又はアルミノリン酸塩骨格を有する金属充填モレキュラーシーブ)であってもよい。金属充填結晶性モレキュラーシーブにおいて、充填された金属は、「骨格外金属」の種類、すなわち、モレキュラーシーブ内及び/又はモレキュラーシーブ表面の少なくとも一部上に、好ましくはイオン種として存在する金属であり、モレキュラーシーブの骨格を構成する原子を含まない。金属充填結晶性モレキュラーシーブは、例えば、湿式含浸、湿式イオン交換、又は固体イオン交換による結晶性モレキュラーシーブの合成後処理によって調製することができる。本発明において、結晶性モレキュラーシーブは、金属充填結晶性モレキュラーシーブであることが好ましい。具体的には、結晶性モレキュラーシーブは、貴金属(precious metal)、例えば、白金族金属若しくは貴金属、又は追加的に若しくは代替的に、卑金属で充填されてもよい。したがって、結晶性モレキュラーシーブは、白金族金属充填結晶性モレキュラーシーブ又は貴金属充填結晶性モレキュラーシーブであってもよい。結晶性モレキュラーシーブが卑金属を含む場合、結晶性モレキュラーシーブは、卑金属で充填された結晶性モレキュラーシーブであってもよい。結晶性モレキュラーシーブ触媒が卑金属及び貴金属を含む場合には、結晶性モレキュラーシーブは、貴金属及び卑金属で充填された結晶性モレキュラーシーブであってもよい。
【0043】
好ましくは、結晶性モレキュラーシーブは金属充填アルミノケイ酸塩であり、充填された金属は、銅、パラジウム、白金、又はこれらの混合物を含む。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは銅を含む。別の好ましい実施形態では、結晶性モレキュラーシーブはパラジウムを含む。更に別の実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは白金を含む。なお更なる実施形態では、結晶性モレキュラーシーブは、銅及び/又はパラジウム及び/又は白金の混合物を含む。
【0044】
本発明の方法は、結晶性モレキュラーシーブをアミノシランと反応させることを含む。本明細書で使用される用語「アミノシラン」は、少なくとも1つのアミン官能基(すなわち、一級、二級又は三級アミン官能基)及びケイ素含有官能基を含む有機又は無機分子を指す。好ましくは、アミノシランは、有機アミノシランであり、すなわち、アミノシランは、1つ以上の炭素原子、例えばメチル又はメチレンなどのアルキル基を含む。
【0045】
本発明の好ましい方法では、アミノシランは一般式:
【0046】
【化1】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、H及びOR
4からなるリストから選択され、
R
4=H、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はアシルであり、
R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、又はアミン保護基からなるリストから選択され、
n=0~12である]を有する。
【0047】
好ましくは、R2及びR3は、それぞれOR4である。
【0048】
特に好ましくは、R5及びR6は、それぞれHである。換言すれば、アミノシランは、好ましくは一級アミノシランである。あるいは、アミノシランは、二級又は三級アミノシランであってもよい。アミノシランが二級又は三級アミノシランである場合、アミン官能基は、1つ以上の保護基で置換され得る。好ましくは、1つ又は複数の保護基は、水、酸、又は塩基によって除去可能である。
【0049】
本発明の特に好ましい方法では、アミノシランは、3-アミノプロピルシラン加水分解物である。驚くべきことに、3-アミノプロピルシラン加水分解物は、結晶性モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)の表面を改質するプロセス中に、十分に親水性であり、水溶性であり、かつ化学的に安定であることから、本発明の方法で使用するのに特に有利であることが見出された。
【0050】
本発明の方法は、水性溶媒中で結晶性モレキュラーシーブとアミノシランとの間の反応を実施することを含む。本明細書で使用される用語「水性溶媒」は、水を含有する溶媒を指す。したがって、水性溶媒は、水混和性有機溶媒と水との混合物であり得る。好適な水混和性有機溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールなど)、アミド(N-メチルピロリジン、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドなど)、並びにエーテル(テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、水性溶媒は、少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも25体積%、より好ましくは少なくとも50体積%、特に好ましくは少なくとも75体積%の量の水を含む。
【0051】
本発明の特に好ましい方法では、水性溶媒は、水から本質的になるか、又は水からなる。すなわち、水性溶媒は水を含有するが、微量の非水性(例えば、有機又は無機)不純物も含有してもよい。好ましくは、水は有機溶媒を実質的に含まない。したがって、水性溶媒は、好ましくは、少なくとも75体積%、好ましくは少なくとも90体積%、特に好ましくは少なくとも95体積%、より特に好ましくは少なくとも99体積%の量の水を含む。
【0052】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、水性溶媒は、有機溶媒を実質的に含まない。驚くべきことに、水性溶媒が有機溶媒を実質的に含まない方法では、得られる改質モレキュラーシーブ(例えば、改質ゼオライト)は、反応混合物中に有機溶媒が存在する場合(例えば、有機溶媒と水との混合物又は懸濁液として)と比較して、改善された分散特性を示すことが見出された。
【0053】
水は脱イオン水又は脱塩水であってもよい。
【0054】
本発明のいくつかの好ましい方法では、本方法は、結晶性モレキュラーシーブがアミノシランと反応する反応混合物のpHを調整する工程を更に含む。反応混合物のpHは、有機酸又は無機酸の添加によって調整されてもよい。反応混合物のpHは、有機塩基又は無機塩基の添加によって調整されてもよい。特に好ましい酸は、カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、又はプロピオン酸などの有機酸である。反応混合物のpHを調整するために特に好ましい有機酸は、酢酸である。
【0055】
本発明のいくつかの好ましい方法では、改質モレキュラーシーブは、改質モレキュラーシーブを官能性ポリマーと反応させるなどの更なる改質工程を受けてもよい。すなわち、本方法は、最初にモレキュラーシーブをアミノシランと反応させることを含み、この反応は水性溶媒中で実施され、このようにして得られた改質モレキュラーシーブを官能性ポリマーと反応させることを更に含む。
【0056】
本発明の好ましい方法で使用するのに好適な官能性ポリマーは、モレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)の改質表面に付着する可能性を有する「より粘着性のある」基を有する。このような官能性ポリマーは、限定されないが、カルボン酸官能基、アクリル官能基、メタクリル官能基、エーテル官能基、ポリエーテル官能基、及びリン酸官能基から選択される官能基を含んでもよい。
【0057】
これらのポリマーの具体例は、Dispex Ultra PX 4275、4575、4522、4583、Disperalon、及びXyndisp 168Dである。
【0058】
官能性ポリマーは、好ましくは、以下の官能基:アクリレート、メタクリレート、ホスフェート、又はOR7[式中、R7=H、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はアシルである]のうちの1つ以上を含む。特に好ましくは、官能性ポリマーは、アクリレート官能基を含む。したがって、官能性ポリマーは、アクリレート官能基を含むポリマー又はコポリマーであってもよい。官能性ポリマーは、線状ポリマーであってもよく、又は架橋ポリマーであってもよい。官能性ポリマーは、ブロックコポリマーであってもよい。
【0059】
好ましくは、官能性ポリマーは、水溶液として添加される。
【0060】
改質モレキュラーシーブを官能性ポリマーと反応させる工程の前に、無機酸化物を反応混合物に添加してもよい。好ましい無機酸化物としては、アルミナ、セリア、シリカ、マグネシア、ジルコニア、及びこれらの混合物若しくは混合酸化物、例えば、セリア/ジルコニア混合若しくは複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ混合若しくは複合酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。このような方法では、十分な量の官能性ポリマー、又はその前駆体を反応混合物に添加して、(i)改質モレキュラーシーブが官能性ポリマーによって官能化され(すなわち、官能性ポリマーと反応する)、無機酸化物が官能化されず(すなわち、官能性ポリマーと反応しない)ことを確実にするか、又は(ii)改質モレキュラーシーブ及び無機酸化物の両方が、官能性ポリマーによって官能化される(すなわち、官能性ポリマーと反応する)ことを確実にする。選択肢(ii)が特に好ましい。したがって、選択肢(ii)において、改質モレキュラーシーブ及び無機酸化物の両方が、反応が完了したときに、それらのそれぞれの表面上に実質的に同じポリマー基を含有する。その結果、官能性ポリマーを含む改質モレキュラーシーブ及び官能性ポリマーを含む無機酸化物の表面特性は、非官能化改質モレキュラーシーブ及び非官能化無機酸化物の表面特性よりも実質的に類似している。
【0061】
驚くべきことに、改質モレキュラーシーブへの官能性ポリマーの添加を伴う方法は、非官能化改質モレキュラーシーブと比較した場合に、改善された加工特性及び取り扱い特性をもたらすことが見出された。具体的には、このような方法は、ウォッシュコートに組み込まれたときに、官能化改質モレキュラーシーブの堅牢な分散を提供する。理論に束縛されるものではないが、この改善された分散は、エレクトロステアリックメカニズム(electro-stearic mechanism)から生じると考えられる。更に、結晶性モレキュラーシーブ、例えば、ゼオライト上のこの追加のポリマー層は、その潤滑プロファイルを改善することによって、モレキュラーシーブのコーティングプロファイルを改善する。
【0062】
本発明の方法は、卑金属、白金族金属、又はその塩若しくは酸化物から選択される金属化合物を反応混合物に添加することを更に含んでもよい。これらの金属化合物を、結晶性モレキュラーシーブに、改質モレキュラーシーブに、又は官能化改質モレキュラーシーブ(すなわち、アミノシランを結晶性モレキュラーシーブに添加した後、官能性ポリマーを改質モレキュラーシーブに添加することによって生じる反応生成物)に添加することができる。金属化合物は、改質モレキュラーシーブ(上記のアミノシランとの反応により改質されたモレキュラーシーブ)に添加することが好ましい。
【0063】
好ましい卑金属、又はその塩若しくは酸化物としては、銅及び鉄、特に好ましくは銅が挙げられる。
【0064】
好ましい白金族金属、又はその塩若しくは酸化物としては、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0065】
結晶性モレキュラーシーブ及びアミノシランは、任意の順序で水性溶媒に添加されてもよい。したがって、アミノシランは、モレキュラーシーブの水溶液、例えば水性スラリーに添加されてもよく、又はモレキュラーシーブは、アミノシランの水溶液に添加されてもよい。
【0066】
好ましくは、結晶性モレキュラーシーブとアミノシランとの反応は、約5~95℃、好ましくは約10~75℃、より好ましくは約10~35℃、特に好ましくは約15~25℃の温度で実施される。反応は、ほぼ周囲温度で実施されることが特に好ましい。本発明の方法は、ほぼ周囲気圧で実施されることが好ましい。したがって、本発明の好ましい方法は、結晶性モレキュラーシーブをアミノシランと反応させることを含み、この反応は水性溶媒中で実施され、反応は、約5~95℃、好ましくは約10~75℃、より好ましくは約10~35℃、特に好ましくは約15~25℃の温度、例えば周囲温度で実施される。反応は、好ましくは約1気圧の圧力で実施される。
【0067】
モレキュラーシーブとアミノシランとの反応は、改質モレキュラーシーブを形成するのに十分な時間にわたって実施される。典型的には、必要とされる反応時間は、数時間以下ほどであり、例えば約3時間未満、好ましくは約2時間未満、より好ましくは約1時間未満、すなわち約1~約180分、好ましくは約1~約120分、より好ましくは約1~約60分である。特に好ましくは、反応時間は、数分ほどであり、例えば約60分未満、好ましくは約30分未満、より好ましくは約10分未満である。
【0068】
改質モレキュラーシーブの調製は、段階的な、例えば、逐次的な方法で実施することができる。あるいは、改質モレキュラーシーブの調製は、バッチプロセスで、すなわち、中間体化合物(改質モレキュラーシーブなど)の単離又は精製を行わずに、試薬を逐次添加して行われてもよい。更に、反応は、追加の利益を得るために、複数回、例えば、2回、3回、又は4回実施されてもよい。例えば、結晶性モレキュラーシーブとアミノシランとの反応を複数回実施することにより、モレキュラーシーブの表面と反応するアミノシランの量を増加させて、反応を1回行った場合よりも、改質モレキュラーシーブの収率を高くすることができる。疑義を避けるために、改質モレキュラーシーブを得るためには、本発明の方法を複数回行う必要はない。
【0069】
本発明の更なる態様は、上述の方法によって得られる又は得ることができる改質モレキュラーシーブである。このような改質モレキュラーシーブは、例えば、触媒物品の調製のためのウォッシュコートで使用される場合、未改質モレキュラーシーブと比較して、改善された加工特性及び取り扱い特性を有し得る。
【0070】
上述の方法によって得ることができる特に好ましい改質モレキュラーシーブとしては、限定するものではないが、一般式:
【0071】
【化2】
[式中、
Zは、モレキュラーシーブ、好ましくはゼオライトであり、
R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、H及びOR
4からなるリストから選択され、
R
4=Z、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はアシルであり、
R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、又はアミン保護基からなるリストから選択され、
n=0~12である]を有する改質モレキュラーシーブが挙げられる。
【0072】
好ましくは、R5及びR6は、それぞれHである。
【0073】
改質モレキュラーシーブの特に好ましい一実施形態では、R2及びR3はそれぞれ、OR4であり、R4は、H又はZであり、n=2であり、R5及びR6は、それぞれHである。
【0074】
驚くべきことに、本明細書に記載の方法によって得ることができる改質モレキュラーシーブで調製された触媒組成物は、未改質モレキュラーシーブと比較して、触媒特性の改善を有することが見出された。特に、Pd含有改質モレキュラーシーブを含む触媒組成物は、未改質のPd含有モレキュラーシーブと比較して、改善されたNOx吸蔵率及び改善されたCO酸化特性を有する。
【0075】
本発明の更なる態様は、上述のような改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートである。本組成物は、改質モレキュラーシーブに加えて、溶媒、結合剤、及び分散剤などの追加成分を含んでもよい。本発明の組成物は、1つ以上の更なるモレキュラーシーブ触媒(改質されていても、又は未改質であってもよい)、酸素吸蔵成分、NOx吸蔵成分、又は酸化触媒(例えば、無機酸化物上に担持される1つ以上の卑金属又はPGMを含む)などの追加の触媒活性成分を含んでもよい。
【0076】
ウォッシュコートは、典型的には、改質モレキュラーシーブを含むスラリー又は懸濁液などの溶液である。ウォッシュコートは、好ましくは水を含んでもよく、すなわち、好ましくは組成物は、改質モレキュラーシーブを含む水溶液又は懸濁液である。
【0077】
本発明の更なる態様は、触媒物品を形成する方法であって、該方法は、
i)上述のような改質モレキュラーシーブを含むウォッシュコートで基材をコーティングすることと、ii)該コーティングされた基材を乾燥及び/又は焼成することと、を含む。
【0078】
上の方法でウォッシュコートを基材上にコーティングする工程は、当該技術分野において既知である基材上にウォッシュコートを適用するための任意の従来の方法であってもよい(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第99/47260号、国際公開第2007/077462号、国際公開第2011/080525号及び国際公開第2014/195685号を参照されたい)。
【0079】
基材は、入口端部及び出口端部を有してもよく、複数のチャネル(例えば、排気ガスが通過する)を備えてもよい。概して、基材はセラミック材料又は金属材料である。
【0080】
基材は、コーディエライト(SiO2-Al2O3-MgO)、炭化ケイ素(SiC)、Fe-Cr-Al合金、Ni-Cr-Al合金、チタン酸アルミニウム、又はステンレス鋼合金で作製又は構成されることが好ましい。
【0081】
典型的には、基材はモノリスである。モノリスは、当該技術分野において周知である。モノリスは、ディーゼル排気などの燃焼エンジン排気ガスから微粒子を濾過するのに好適なフロースルーモノリス又はフィルタリングモノリスであってもよい。
【0082】
フロースルーモノリスは、典型的には、そこを貫通して延びる複数のチャネルを有するハニカムモノリス(例えば、金属又はセラミックのハニカムモノリス)を含み、ここでは、各チャネルが、入口端部及び出口端部で開いている。
【0083】
フィルタリングモノリスは、概して、複数の入口チャネル及び複数の出口チャネルを含み、入口チャネルは、上流端(すなわち、排気ガス入口側)で開き、下流端(すなわち、排気ガス出口側)で塞がれる又は閉じ、出口チャネルは、上流端で塞がれる又は閉じ、下流端で開き、各入口チャネルは、多孔質のウォールによって出口チャネルから分離されている。
【0084】
モノリスがフィルタリングモノリスである場合、フィルタリングモノリスはウォールフローフィルタであることが好ましい。ウォールフローフィルタでは、各入口チャネルは、多孔質構造のウォールによって出口チャネルから交互に分離されており、逆もまた同様である。入口チャネル及び出口チャネルは、ハニカム配列で配置されることが好ましい。ハニカム配列が存在する場合、入口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは上流端部で塞がれていることが好ましく、逆もまた同様である(すなわち、出口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは、下流端部で塞がれる)。いずれかの端部から見たとき、チャネルの、交互に塞がれ、開いている端部は、チェス盤の外観をとる。
【0085】
原則として、基材は、任意の形状又は大きさであってもよい。しかし、基材の形状及び大きさは、通常、触媒中の触媒活性材料の排気ガスへの暴露を最適化するように選択される。基材は、例えば、管状、繊維状、又は微粒子形態を有してもよい。好適な担持基材の例としては、モノリシックハニカムコーディエライト型の基材、モノリシックハニカムSiC型の基材、層状繊維又は編地型の基材、発泡体型の基材、クロスフロー型の基材、金属ワイヤメッシュ型の基材、金属多孔質体型の基材、及びセラミック粒子型の基材が挙げられる。
【0086】
基材は、電気的に加熱可能な基材であってもよい(すなわち、電気的に加熱可能な基材は、使用中に電気的に加熱する基材である)。基材が電気的に加熱可能な基材である場合、本発明の触媒は、電力接続部、好ましくは少なくとも2つの電力接続部、より好ましくは2つだけの電力接続部を含む。各電力接続部は、電気的に加熱可能な基材及び電源に電気的に接続されてもよい。触媒は、ジュール加熱によって加熱することができ、抵抗器を通る電流は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。
【0087】
好適な電気的に加熱可能な基材の例は、米国特許第4,300,956号、同第5,146,743号、及び同第6,513,324号に記載されている。
【0088】
概ね、電気的に加熱可能な基材は、金属を含む。金属は、電力接続部又は複数の電力接続部に電気的に接続されてもよい。
【0089】
典型的には、電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能なハニカム基材である。電気的に加熱可能な基材は、使用中に、電気的に加熱するハニカム基材であってもよい。
【0090】
電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能な基材モノリス(例えば、金属モノリス)を含んでもよい。モノリスは、波形金属シート又は箔を含んでもよい。波形金属シート又は箔は、ロール処理、巻き取り、又は積層されてもよい。波形金属シートがロール処理又は巻き取りされる場合、コイル、螺旋形状、又は同心パターンにロール処理又は巻き取りされてもよい。
【0091】
電気的に加熱可能な基材の金属、金属モノリス及び/又は波形金属シート又は箔は、Fecralloy(商標)などのアルミニウムフェライト鋼を含んでもよい。
【0092】
上記の方法の工程(ii)、すなわち、コーティングされた基材を乾燥及び/又は焼成する工程では、好適な乾燥及び焼成条件は、組成物(すなわち、改質モレキュラーシーブを含む組成物)及び基材の種類に依存する。このような条件は、当該技術分野において既知である。
【0093】
本発明の更なる態様は、上述の方法によって得られる又は得ることができる触媒物品である。
【0094】
驚くべきことに、このような触媒物品、すなわち、本明細書に記載の方法によって得られる又は得ることができる触媒物品は、未改質モレキュラーシーブを含む組成物を含む触媒に対して改善された(すなわち、より低い)背圧を有することが見出された。この利点は、フィルタ基材(例えばウォールフローフィルタ基材)を含む触媒物品の場合に特に有用であり、なぜなら、このような触媒される基材における背圧問題を克服することが特に課題であるためである。
【0095】
本発明の触媒物品は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、リーンNOxトラップ(LNT)、リーンNOx触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤煙フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、コールドスタート触媒(dCSC)、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)又は三元触媒(TWC)であり得る。触媒物品は、帯状(zoned)又は層状触媒であってもよく、ここでは、異なる帯域又は層は、異なる触媒材料を含んでもよい。
【0096】
上述の触媒の一部は、フィルタリング基材を有する。フィルタリング基材を有する触媒物品は、触媒煤煙フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、及びガソリン微粒子フィルタ(GPF)からなる群から選択され得る。
【0097】
本発明の更なる態様は、排気ガスを上述のような触媒物品と接触させることを含む、排気ガスを処理する方法である。排気ガスは、車両内燃機関などの内燃機関からの排気ガスであり得る。あるいは、排気ガスは、固定発生源、例えば、発電所からの排気ガスであってもよい。
【0098】
好ましい方法では、排気ガスはリッチガス混合物である。更に好ましい方法では、排気ガスは、リッチガス混合物とリーンガス混合物との間で循環する。好ましくは、内燃機関はリーンバーンエンジンである。好ましくは、リーンバーエンジンはディーゼルエンジンである。
【0099】
ディーゼルエンジンは、均一予混合圧縮着火(HCCI)エンジン、予混合圧縮着火(PCCI)エンジン、又は低温燃焼(LTC)エンジンであってもよい。ディーゼルエンジンは、通常の(すなわち従来からの)ディーゼルエンジンであることが好ましい。
【0100】
リーンバーンエンジンは、燃料、好ましくはディーゼル燃料で運転するように構成又は適合され、≦50ppmの硫黄、より好ましくは≦15ppmの硫黄、例えば≦10ppmの硫黄、更により好ましくは≦5ppmの硫黄を含むことが好ましい。
【0101】
排気ガスが内燃機関からの排気ガスである場合、内燃機関は車両の構成要素であることが好ましい。車両は、米国又は欧州法令で定義されるような軽量ディーゼル車両(LDV)であってもよい。軽量ディーゼル車両は、典型的には、<2840kgの重量、より好ましくは<2610kgの重量を有する。
【0102】
米国では、軽量ディーゼル車両(LDV)は、≦8,500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車両を指す。欧州では、軽量ディーゼル車両(LDV)という用語は、(i)運転席に加えて8席以下で、最大質量が5トンを超えない乗用車、及び(ii)最大質量が12トンを超えない物品輸送用の車両を指す。
【0103】
あるいは、車両は、米国法令で定義されるような、>8,500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車などの大型ディーゼル車両(HDV)であり得る。
【0104】
内燃機関からの排気ガスを処理するいくつかの好ましい方法では、排気ガスは、約150~750℃の温度である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明の触媒物品は、SCR触媒を含んでもよく、この場合、排気ガスを処理する方法は、還元剤、例えば、アンモニアなどの窒素還元剤、又は尿素若しくはギ酸アンモニウムなどのアンモニア前駆体、好ましくは尿素を、触媒物品の上流の排気ガスに噴射することを更に含んでもよい。
【0106】
このような噴射は、インジェクタによって行われてもよい。インジェクタは、窒素系還元剤前駆体の供給源(例えばタンク)に流体連結されてもよい。排気ガスへの前駆体のバルブ制御された投入は、排気ガスの組成をモニタリングするセンサによって提供される、適切にプログラム化されたエンジン管理手段及び閉ループ又は開ループフィードバックによって調節され得る。
【0107】
アンモニアはまた、カルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することによって生成することができ、生成されたアンモニアを排気ガス中に噴射することができる。
【0108】
インジェクタの代わりに又はそれに加えて、in situで(例えば、SCR触媒触媒の上流に配置されたLNTのリッチ再生中で)、アンモニアを生成することができる。したがって、本方法は、排気ガスを炭化水素で富化することを更に含んでもよい。
【0109】
排気ガスを処理する更に好ましい方法では、排気ガスを、上述の触媒物品に加えて、1つ以上の更なる排出制御デバイスと接触させる。更なる排出制御デバイス(1つ又は複数)は、好ましくは本発明の触媒物品の下流にある。あるいは、更なる排出制御デバイス(1つ又は複数)は、本発明の触媒物品の上流にある。
【0110】
更なる排出制御デバイスの例としては、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、リーンNOxトラップ(LNT)、リーンNOx触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒煤煙フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、コールドスタート触媒(dCSC)、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)、三元触媒(TWC)及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。このような排出制御デバイスは、当該技術分野において周知である。
【0111】
上述の排出制御デバイスの一部は、フィルタリング基材を有する。フィルタリング基材を有する排出制御デバイスは、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)、触媒煤煙フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF(商標))触媒、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)、及び三元触媒(TWC)からなる群から選択され得る。
【実施例】
【0112】
これから、以下の非限定的な実施例によって本発明を例示する。
【0113】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0114】
実施例1
チャバザイト構造を有し、約3重量%の銅を含む市販のゼオライトを、全固形分基準で測定した場合の30重量%の濃度で水中に分散させた。これに、水中30重量%の3-アミノプロピルシラン加水分解物の市販の溶液を添加した。3-アミノプロピルシラン加水分解物溶液の濃度は、ゼオライト固形分の乾燥重量基準で1%であった。必要に応じて、4~6の範囲を目標として、反応混合物のpHを、酢酸を用いて調整した。理論に束縛されるものではないが、これは、ゼオライトの表面上にアミノシラン部分を不可逆的に堆積させると考えられる。
【0115】
ゼオライトの表面がアミンで改質されているため、系の等電点の変化を測定することができる。等電点は、ゼオライトの表面電荷がゼロであるpHとして定義される。この測定は、200mLの脱イオン水中に改質ゼオライトを含む200マイクロリットルのスラリーを添加し、溶液を10分間撹拌して平衡化させることによって行われる。続いて、希釈された溶液の少量のアリコートをゼータ電位測定セルに移し、Malvern Zeta Nano Sゼータ電位分析器を使用して表面電荷を測定する。等電点に達するまで塩基(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)又は酸(酢酸)のいずれかを添加することによって、pHを変化させる。この実験の結果を、以下の表1に示す。試料1は、未改質ゼオライトである。試料2は、本発明による方法によって調製された改質ゼオライトである。
【0116】
【0117】
表1の結果から分かるように、本発明による方法は、アミノシランの添加によるゼオライト表面の改質の結果として、CHAゼオライトの等電点の変化をもたらす。
【0118】
実施例2
実施例1と同様に、チャバザイト構造を有し、約3重量%の銅を含む市販のゼオライトを、全固形分基準で測定した場合の30重量%の濃度で水中に分散させた。これに、水中30重量%の3-アミノプロピルシラン加水分解物の市販の溶液を添加した。3-アミノプロピルシラン加水分解物溶液の濃度は、ゼオライト固形分の乾燥重量基準で1%であった。必要に応じて、4~6の範囲を目標として、反応混合物のpHを、酢酸を用いて調整した。ここでゼオライトの表面がアミン表面に改質されているため、このことが従来の分散剤を付着させることを可能にする。Xyndisp XA168Dは、Xyntra BVによって分散剤として販売されている官能性ポリマーであり、それはゼオライト上のアミンと相互作用することができるアクリル基を有する。官能性ポリマーと改質ゼオライトとの間の静電相互作用を利用して、電子立体安定化(electro-steric stabilization)を使用して、より頑丈に分散した系を作製することができる。改質ゼオライトスラリーに、5重量%のXA168D水溶液を、乾燥ゼオライト固形分に対して添加する。ポリマー濃度は、ゼオライトの乾燥重量に関して計算する。続いて、pHを6~7にもっていくために、酢酸又はテトラエチルアンモニウムヒドロキシドのいずれかを用いて任意の必要なpH調整を行う。
【0119】
ゼオライトの表面がアミンで改質されているため、系の等電点の変化を測定することができる。等電点は、ゼオライトの表面電荷がゼロであるpHとして定義される。この測定は、200mLの脱イオン水中に改質ゼオライトを含む200マイクロリットルのスラリーを添加し、溶液を10分間撹拌して平衡化させることによって行われる。続いて、希釈された溶液の少量のアリコートをゼータ電位測定セルに移し、Malvern Zeta Nano Sゼータ電位分析器を使用して表面電荷を測定する。等電点に達するまで塩基(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)又は酸(酢酸)のいずれかを添加することによって、pHを変化させる。この実験の結果を、以下の表2に示す。試料1は、未改質ゼオライトである。試料2は、実施例1に記載の本発明の方法に従って調製された改質ゼオライトである。試料3は、上記のように、官能性ポリマーを添加することによって更に官能化された改質ゼオライトである。
【0120】
【0121】
実施例3
未粉砕ゼオライトを使用して、表面改質の方法、続いてポリマー添加を用いてフィルタ基材をコーティングした。表面改質ゼオライトは、以下の方法に従って調製した。実施例1及び2と同様に、AEI構造を有し、約3.75重量%の銅を含む市販のゼオライトを、全固形分基準で測定した場合の30重量%の濃度で水中に分散させた。これに、水中30重量%の3-アミノプロピルシラン加水分解物の市販の溶液を添加した。3-アミノプロピルシラン加水分解物溶液の濃度は、ゼオライト固形分の乾燥重量基準で1%であった。必要に応じて、4~6の範囲を目標として、反応混合物のpHを、酢酸を用いて調整した。このウォッシュコートに、市販の結合剤を添加した。結合剤の濃度は、乾燥ゼオライト固形分に対して11重量%であると計算される。最終固形分濃度を、水添加を用いて35.5重量%に調整した。このゼオライト-結合剤スラリーに、5重量%のXA168D水溶液を、乾燥ゼオライト固形分に対して添加する。ポリマー濃度は、ゼオライトの乾燥重量に関して計算する。続いて、pHを6~7にもっていくために、酢酸又はテトラエチルアンモニウムヒドロキシドのいずれかを用いて任意の必要なpH調整を行う。
【0122】
このように調製したスラリーを使用して、従来のウォッシュコート注入技術(washcoat dosing techniques)を用いて、SiCで作製されたフィルタ基材をコーティングした。基材上の最終的なウォッシュコートの充填量は、1.9g/インチ3であることを目的とした。参照部分にも、同じ方法であるが、異なるウォッシュコートを用いて注入した。参照のウォッシュコートは、本発明による方法によっては改質されていなかったゼオライトを含有するが、それ以外は同じであった。コーティングされた部分は、600m3/時の流量でSuperflowにより製造されたFlowbench SF-1020を使用して測定した場合の最終的な背圧によって特性評価した。結果を以下の表3に示す。試料1は、本発明の方法によって調製された改質ゼオライトを含むフィルタ基材である。試料2は、参照部分である。参照部分の背圧は、機械の最大測定可能限界よりも大きかった。
【0123】
【0124】
表3の結果から分かるように、本発明の方法に従って調製された改質モレキュラーシーブを含む基材は、未改質モレキュラーシーブ成分を含む参照部分と比較して、より低い背圧をもたらす。
【0125】
実施例4
チャバザイト構造を有する市販のゼオライトを、全固形分基準で測定した場合の30重量%の濃度で水中に分散させた。これに、水中30重量%の3-アミノプロピルシラン加水分解物の市販の溶液を添加した。3-アミノプロピルシラン加水分解物溶液の濃度は、ゼオライト固形分の乾燥重量基準で1%であった。必要に応じて、4~6の範囲を目標として、反応混合物のpHを、酢酸を用いて調整した。理論に束縛されるものではないが、これは、ゼオライトの表面上にアミノシラン部分を不可逆的に堆積させると考えられる。
【0126】
ここでゼオライトの表面がアミン表面に改質されているため、このことが金属塩の添加を可能にする。ある特定の金属塩は、改質ゼオライトのアミン表面とかなり強く相互作用することができる。アミン安定化パラジウム塩は、パラジウムの正味の添加がゼオライト固形分に対して1.5重量%となるように添加される。次いで、この溶液を乾燥させ、500℃の温度で2時間焼成した。第2の試料は、同様の方法で調製したが、パラジウム塩を添加する前に、水中に3-アミノプロピルシラン加水分解物を添加することなく調製した。固体状態の試料をUV/VIS分光計で分析して、表面上の酸化パラジウムに交換されたパラジウムの量を定量化した。
【0127】
試料のUV-VISスペクトルは、Praying Mantisを装備したPerkin Elmer Lambda 650S分光計を使用して測定した。測定は、室温にて2cm-1の間隔で800~180cm-1の波長走査(scanning wavelength)を用いる拡散反射モードで行う。交換されたPdのPdOに対する比は、それぞれ、200cm-1(Pd-O電荷移動バンドに対応する)及び400cm-1(PdOxの基準点として使用)でのクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)値を使用することによって決定する。
【0128】
粉末はまた、触媒性能、この場合、NOx吸蔵率についても試験した。触媒のNOx吸蔵活性を試験するために、ペレット化された(350~225マイクロメートル)粉末0.4gを、2L/分でN2の流れの下で100℃に加熱し、保持した。14℃/分で500℃まで温度を上昇させる前に、粉末を、12体積%のO2、60ppmのNO、5体積%のCO2、1500ppmのCO、150ppmのC10H22、及び5体積%のH2Oからなるガス混合物に、100℃で5分間曝露した。ガス濃度を、オンラインFTIRガス分析器でモニターした。続いて、触媒性能を、以下の表4に示されるこれらのFTIR測定値を使用して計算した。試料1は、本発明の方法によって調製した。試料2は、アミノシランによる表面改質を受けなかったゼオライトにパラジウムを添加した参照試料である。
【0129】
【0130】
表4の結果から分かるように、本発明による方法によって調製された試料1は、パラジウム塩を添加する前にアミノシランをゼオライトに添加することによって改質されなかった試料2と比較して、改善されたNOx吸蔵率を有する。
【0131】
実施例5
上記実施例4と同じ試料を、一酸化炭素酸化により測定した場合の触媒性能について試験した。ライトオフ温度は、COの50%の酸化が起こる温度である。各粉末試料のCO酸化活性は、実施例4と同じ条件下で触媒を測定した。結果を以下の表5に示す。
【0132】
【0133】
表5の結果から分かるように、本発明による方法によって調製された試料1は、パラジウム塩を添加する前にアミノシランをゼオライトに添加することによって改質されなかった試料2と比較して、より低いCOライトオフ温度を有し、すなわち、改善されたCO酸化性能を有する。
【0134】
実施例6
AEI構造を有し、約3重量%の銅を含む市販のゼオライトを、全固形分基準で測定した場合の30重量%の濃度で水中に分散させた。これに、水中30重量%の3-アミノプロピルシラン加水分解物の市販の溶液を添加した。3-アミノプロピルシラン加水分解物溶液の濃度は、ゼオライト固形分の乾燥重量基準で1%であった。必要に応じて、4~6の範囲を目標として、反応混合物のpHを、酢酸を用いて調整した。理論に束縛されるものではないが、これは、ゼオライトの表面上にアミノシラン部分を不可逆的に堆積させると考えられる。
【0135】
ここでゼオライトの表面がアミン表面に改質されているため、このことが金属塩の添加を可能にする。ある特定の金属塩は、改質ゼオライトのアミン表面とかなり強く相互作用することができる。アミン安定化パラジウム塩は、パラジウムの正味の添加がゼオライト固形分に対して1.5重量%となるように添加される。次いで、この溶液を乾燥させ、500℃の温度で2時間焼成した。焼成した粉末を30重量%の濃度で水中に分散させた。このスラリーに、更に水中5重量%の3-アミノプロピルシラン加水分解物を、ゼオライト重量に対して添加した。このスラリーを、対流炉(convective oven)内で100℃で更に乾燥させた後、500℃で2時間焼成した。以下の表6は、NOxのピーク放出温度の効果を示し、これは、NOxの最大量が触媒によって放出される温度によって定義される。試料1は、本発明の方法によって調製した。試料2は、アミノシランによる表面改質を受けなかったゼオライトにパラジウムを添加した参照試料である。
【0136】
【0137】
表6の結果から分かるように、本発明による方法によって調製された試料1は、未改質ゼオライトを含む試料2よりも高いピークNOx放出温度を有する。このより高いNOx放出温度は、SCR触媒などの下流触媒デバイスが、放出されたNOxを還元するために使用される用途において有利である。より高いNOx放出温度とは、下流触媒デバイスがそのライトオフ温度を達成する可能性が高く、したがって、改質モレキュラーシーブ含有触媒から放出されるNOxの還元のために触媒活性であることを意味する。これにより、排気システムからのNOxの漏れ(slippage)の低下をもたらす。