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特許7570335クロマトグラフィーを含まない抗体精製方法
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  • 特許-クロマトグラフィーを含まない抗体精製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーを含まない抗体精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/34 20060101AFI20241011BHJP
   C07K 1/30 20060101ALI20241011BHJP
   C07K 1/36 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
C07K1/34
C07K1/30
C07K1/36
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021543578
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2019077172
(87)【国際公開番号】W WO2020074483
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】18199137.3
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・カステールス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレム・ファン・デ・ヴェルデ
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・ファン・デ・ピュッテ
(72)【発明者】
【氏名】シンディ・デ・フリーゼ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0072322(US,A1)
【文献】国際公開第2016/144658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液からタンパク質を精製するための方法であって:
(a)第1の濾過工程であって:
(i)前記溶液を第1の膜に通して、前記タンパク質を含む第1の透過液を得る工程であって、
前記第1の膜は、40kDaから100kDaの間の公称分画分子量(NMWCO)の孔径を有し、前記第1の膜のNMWCOは、前記タンパク質の公称分子量(NMW)より大きい、前記第1の透過液を得る工程
を含む、前記第1の濾過工程と;
(b)第2の濾過工程であって:
(i)第2の膜を使用して工程(a)の終わりに得られた第1の透過液を濃縮して、前記タンパク質を含む第1の保持液を得る工程であって、
前記第2の膜は、2kDaから50kDaの間のNMWCOの孔径を有し、前記第2の膜のNMWCOは、精製するタンパク質のNMWより小さい、第1の保持液を得る工程
を含む、第2の濾過工程と;
(c)沈殿、洗浄および再懸濁工程であって:
(i)前記タンパク質を含む沈殿物が形成されるまで、工程(b)の終わりに得られた前記タンパク質を含む前記第1の保持液を沈殿させる工程と;
(ii)第3の膜を使用して前記タンパク質を含む前記沈殿物を洗浄する工程と;
(iii)工程(c)(ii)の終わりに得られた洗浄した沈殿物を再懸濁して、前記タンパク質を含む第2の保持液を得る工程と;
(iv)工程(c)(iii)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の保持液を前記第3の膜に通して濾過して、前記タンパク質を含む第2の透過液を得る工程であって、
前記第3の膜は、0.05~0.35μmの間の孔径を有する、第2の透過液を得る工程と
を含む沈殿、洗浄および再懸濁工程と;
(d)限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程であって:
(i)第4の膜を使用して工程(c)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の透過液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を得る工程であって、前記第4の膜は、2kDaから50kDaの間のNMWCOの孔径を有し、前記第4の膜のNMWCOは、精製するタンパク質のNMWより小さい、第1の透析濾過液を得る工程と;
(ii)前記第4の膜を使用して工程(d)(i)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を濃縮して、前記タンパク質を含む第3の保持液を得る工程と;
(iii)前記第4の膜を使用して工程(d)(ii)の前記タンパク質を含む第3の保持液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第2の透析濾過液を得る工程と
を含む限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程と;
を含み、前記タンパク質は、15kDaから100kDaの間の分子量(MW)を有する、前記方法。
【請求項2】
(e)製剤化および最終濾過工程であって:
(i)製剤化緩衝液中で、工程(d)の終わりに得られた前記タンパク質を含む前記第2の透析濾過液を製剤化して、前記タンパク質を含む製剤化製品を得る工程
をさらに含む、請求項1に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項3】
工程(e)は
(ii)前記製剤化製品を濾過する工程
をさらに含む、請求項2に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項4】
前記第1の濾過工程(a)、および/または前記第2の濾過工程(b)、および/または前記沈殿させる工程(c)(i)、および/または前記洗浄する工程(c)(ii)、および/または前記再懸濁する工程(c)(iii)、および/または前記濾過する工程(c)(iv)、および/または前記透析濾過する工程(d)(i)、および/または前記濃縮する工程(d)(ii)および/または前記透析濾過する工程(d)(iii)は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)において、またはノーマルフロー濾過(NFF)によって行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項5】
全ての工程(a)、(b)、(c)(i)、(c)(ii)、(c)(iii)、(c)(iv)、(d)(i)、(d)(ii)および(d)(iii)は、1つおよび同じデバイスで行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の膜、および/または前記第2の膜、および/または前記第3の膜、および/または前記第4の膜は、修飾されたポリエーテル-スルホン(mPES)、再生セルロース、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリ乳酸、セラミック、ポリエーテル-スルホン、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミドまたはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含む、請求項4または5に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項7】
前記第1の濾過工程(a)は、2~4透析濾過体積(DV)の精製水で濾過することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項8】
50%~100%の間の前記タンパク質が、第1の透過液中に回収される、請求項1~7のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項9】
前記タンパク質を含む前記第1の透過液は、前記溶液より10%~100%少ない不純物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項10】
前記第2の濾過工程(b)は精製水を使用することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項11】
前記第1の保持液中のタンパク質は、50~200mg/mlの間の濃度に濃縮される、請求項1~10のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項12】
前記沈殿させる工程は、混和性溶媒、非イオン性親水性ポリマー、多価金属イオン、および中性塩からなる群から選択される沈殿剤を含む沈殿溶液によって行われる、請求項1~11のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項13】
前記沈殿させる工程は、1.4~2.2Mの((NH4+2(SO42-で行われる、請求項12に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項14】
工程(c)(ii)の前記タンパク質を含む前記沈殿物の洗浄は、沈殿溶液を洗浄溶液に置き換えること、および2~8DVの洗浄溶液で前記沈殿物を洗浄することを含む、請求項12または13に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項15】
前記洗浄溶液は、1.4~2.2Mの間の濃度で沈殿剤を含む、請求項14に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項16】
前記洗浄溶液に含まれる前記沈殿剤は((NH4+2(SO42-である、請求項15に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項17】
工程(c)(ii)の終わりに得られた洗浄した沈殿物は、0.8~0.4Mの間の濃度で沈殿剤を含む再懸濁溶液中に再懸濁される、請求項1~16のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項18】
前記再懸濁溶液に含まれる前記沈殿剤は((NH4+2(SO42-である、請求項17に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項19】
工程(c)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の透過液は、1~4透析濾過体積(DV)の間の一次緩衝液で透析濾過される、請求項1~18のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項20】
前記第3の保持液中のタンパク質は、10~100mg/mlの間の濃度を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項21】
工程(d)(ii)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第3の保持液は、1~8透析濾過体積(DV)の一次緩衝液で透析濾過される、請求項1~20のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項22】
製剤化製品は、
- 10~100mg/mlの間の濃度のタンパク質と;
- 一次緩衝液と
を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項23】
前記一次緩衝液は、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、HEPES緩衝液からなる群から選択される、請求項22に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項24】
前記一次緩衝液のpHは5~7.5である、請求項22に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項25】
前記一次緩衝液の濃度は5mM~50mMである、請求項22に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項26】
前記一次緩衝液は20mMクエン酸塩、pH6.0である、請求項22に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項27】
前記製剤化製品は、1~12%の、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニン、および塩酸アルギニンからなる群から選択される安定剤をさらに含む、請求項22に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項28】
前記安定化剤はマンニトールである、請求項27に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項29】
前記安定化剤は10mg/mlの濃度である、請求項27に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【請求項30】
前記製剤化製品は、0.001%~0.6%の濃度で、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80、ポリソルベート-85、ポロキサマー-188、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレートおよびソルビタントリオレエートからなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項22に記載の溶液からタンパク質を精製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 発明の分野
本発明は抗体を精製するための方法に関し、前記方法は、優れた純度で高収率の精製抗体を得ることを依然として可能にしながら、限定された数の工程を含む。簡潔に述べると、この方法は、濾過および沈殿工程のみを含み、クロマトグラフィー工程を必要としない。
【背景技術】
【0002】
2 背景
抗体精製はバイオプロダクションの最も費用のかかる態様の1つであり得る。抗体(Ab)およびその断片は一般に、各クロマトグラフィー工程において特定の樹脂および緩衝液系を使用する多段階クロマトグラフィープロセスを使用して精製される。この従来の精製プロセスは、捕捉工程と、それに続くイオン交換工程とを包含し、UF/DF工程により終了する。産生のために使用される細胞培養力価およびより多くの細胞培養体積の増加に伴い、下流の処理は産業界において障害とみなされている。これは特に、モノクローナル抗体(mAb)産生に関連し、焦点はバッチ体積から下流の処理能力に向かってシフトしている。さらに、初期の前臨床および臨床段階の研究は、より迅速に産生することができる大量の抗体を必要とする。さらに、クロマトグラフィー工程は商品原価(CoG)を決定する最も重要な要因の1つである。
【0003】
産業界は、抗体精製のために使用される工程の数を減らすことを探求した。
【0004】
特許文献1は抗体を精製するための方法を開示し、前記方法は2または3のクロマトグラフィー工程を含み、第1のクロマトグラフィー工程はプロテインAカラムの使用を含み、第2のクロマトグラフィー工程はカチオン交換クロマトグラフィーカラムの使用を含み、場合による第3のクロマトグラフィー工程はアニオン交換クロマトグラフィーカラムの使用を含む。
【0005】
特許文献2は、プロテインAカラム溶出緩衝液において従来使用されているものよりも高いpHでのマルチモーダル樹脂クロマトグラフィーのローディングを開示しており、2つのクロマトグラフィー工程の間の緩衝液交換の必要性を示唆している。
【0006】
特許文献3は、母液から作製された4つの緩衝溶液を使用する、タンパク質、特にmAbの小規模および大規模精製のための3段階クロマトグラフィープロセスに関する。
【0007】
特許文献4は、母液から作製された4つの緩衝溶液のみを使用する、タンパク質を精製するための2段階クロマトグラフィープロセスを使用する抗体精製方法を記載している。
【0008】
特許文献5は、とりわけ2つのクロマトグラフィー工程を使用するNanobody精製プロセスを記載している。
【0009】
抗体精製におけるクロマトグラフィー工程の広範な使用は、最終的にヒトにおいて使用することができる精製製品の品質におけるこのプロセスの成功によって説明することができる。したがって、新規の精製方法はいずれも、最終製品をヒトにおいて使用することができる品質を保持しなければならないことが好ましい。
【0010】
クロマトグラフィー工程の数をわずか2に減らすと、処理時間およびCoGが低下した。
【0011】
しかしながら、好ましくは品質を保持しながら、抗体産生のCoGおよび処理時間をさらに減少させる等、抗体精製を最適化する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】WO2011/090719
【文献】WO2009/111347
【文献】WO2014/180852
【文献】WO2013/075740
【文献】WO2010/056550
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
3 発明の概要
宿主細胞からAbのような目的のタンパク質を精製することに伴う問題は、不純物の膨大な量およびサイズである。これらの不純物は、目的のタンパク質よりも大きいことも、目的のタンパク質よりも小さいこともあり、または目的のタンパク質と同じサイズを有することすらある。これは、精製プロセスを困難なタスクとし、今のところ、長時間にわたる高価なクロマトグラフィー方法によって対処されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、抗体を精製するための新規方法を見出し、前記方法は、優れた純度で高収率の精製抗体を得ることを依然として可能にしながら、限定された数の工程を含む。簡潔に述べると、この方法は、濾過および沈殿工程のみを含む。精製タンパク質を得る際の適合性を実証した後、本発明者らはまた、プロセスが容易に拡張可能であることを示した。本発明の精製方法の商品原価は、従来のクロマトグラフィープロセスよりもかなり低かった。実際、100Lへのアップスケーリングは、同等のクロマトグラフィー方法よりも既に86%安価であった。さらに、カセットおよび緩衝液の交換のみを必要とする、単一のタンジェンシャルフロー濾過デバイスを使用することによってプロセスをさらに簡素化することができた。CoGをさらに最小化するために、必要な純度を維持しながら、DV工程の数を最小化することができる。
【0015】
本質的に、溶液からタンパク質を精製するための本発明の方法は:
(a)目的のタンパク質がより大きな不純物から分離される、第1の濾過工程と;
(b)目的のタンパク質がより小さな不純物から分離される、第2の濾過工程と;
(c)目的のタンパク質があらゆるさらなる残存不純物から分離される、沈殿、洗浄および再懸濁工程と;
(d)目的のタンパク質が一次緩衝液中に濃縮される、限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程と
を本質的に含む。
【0016】
次に、一次緩衝液は、凍結乾燥、投与などのような、精製タンパク質についての特定の必要性に応じて賦形剤を添加することによって容易に適合される。必要に応じて、得られた製剤化タンパク質を長期間保存するために濾過することができる(場合による工程(e))。
【0017】
特に、本発明は、溶液からタンパク質を精製するための方法であって:
(a)第1の濾過工程であって:(i)前記溶液を第1の膜に通して、第1の透過液を得る工程であって、前記第1の膜は、40kDaから100kDaの間、好ましくは40kDaから80kDaの間、さらにより好ましくは50kDaの公称分画分子量(NMWCO)の孔径を有する、前記第1の透過液を得る工程を含む、前記第1の濾過工程と;
(b)第2の濾過工程であって:(i)第2の膜を使用して工程(a)の終わりに得られた第1の透過液を濃縮して、前記タンパク質を含む第1の保持液を得る工程であって、前記第2の膜は、4kDaから40kDaの間、6kDaから30kDaの間、8kDaから20kDaの間のような2kDaから50kDaの間、より好ましくは10kDaまたは15kDaのNMWCOの孔径を有する、前記第1の保持液を得る工程を含む、前記第2の濾過工程と;
(c)沈殿、洗浄および再懸濁工程であって:(i)前記タンパク質を含む沈殿物が形成されるまで、工程(b)の終わりに得られた前記タンパク質を含む前記第1の保持液を沈殿させる工程と;(ii)第3の膜を使用して前記タンパク質を含む前記沈殿物を洗浄する工程と;(iii)工程(c)(ii)の終わりに得られた洗浄した沈殿物を再懸濁して、前記タンパク質を含む第2の保持液を得る工程と;(iv)工程(c)(iii)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の保持液を第3の膜に通して濾過して、前記タンパク質を含む第2の透過液を得る工程であって、前記第3の膜は、0.1~0.3μmのような0.05~0.35μmの間または0.2μmのような0.15~0.25μmの間の孔径を有する、前記第2の透過液を得る工程とを含む前記沈殿、洗浄および再懸濁工程と;
(d)限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程であって:(i)第4の膜を使用して工程(c)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の透過液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を得る工程であって、前記第4の膜は、4kDaから40kDaの間、6kDaから30kDaの間、8kDaから20kDaの間のような2kDaから50kDaの間、より好ましくは10kDaまたは15kDa(NMWCO)の孔径を有する、第1の透析濾過液を得る工程と;(ii)前記第4の膜を使用して工程(d)(i)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を濃縮して、前記タンパク質を含む第3の保持液を得る工程と;(iii)前記第4の膜を使用して工程(d)(ii)の前記タンパク質を含む第3の保持液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第2の透析濾過液を得る工程とを含む前記限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程と;
(e)場合により、製剤化および最終濾過工程であって:(i)製剤化緩衝液中で、工程(d)の終わりに得られた前記タンパク質を含む前記第2の透析濾過液を製剤化して、前記タンパク質を含む製剤化製品を得る工程と;(ii)場合により、製剤化製品を濾過する工程とを含む前記製剤化および最終濾過工程と
を含み、タンパク質は5kDa~200kDaの間の分子量(MW)を有し、好ましくは前記タンパク質は、10kDaから150kDaの間、好ましくは15kDaから100kDaの間、さらにより好ましくは、約15kDaまたは20kDaのような、15~30kDaの間のような、15から50kDaの間のMWを有する、前記方法に関する。
【0018】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の濾過工程(a)、および/または前記第2の濾過工程(b)、および/または前記沈殿させる工程(c)(i)、および/または前記洗浄する工程(c)(ii)、および/または前記再懸濁する工程(c)(iii)、および/または前記濾過する工程(c)(iv)、および/または前記透析濾過する工程(d)(i)、および/または前記濃縮する工程(d)(ii)および/または前記透析濾過する工程(d)(iii)は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)において、またはノーマルフロー濾過(NFF)によって行われ、好ましくは全ての工程(a)、(b)、(c)(i)、(c)(ii)、(c)(iii)、(c)(iv)、(d)(i)、(d)(ii)および(d)(iii)は、1つおよび同じデバイスにおいて行われる、方法に関する。
【0019】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の膜、および/または前記第2の膜、および/または前記第3の膜、および/または前記第4の膜は、再生セルロース、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリ乳酸、セラミック、ポリエーテル-スルホン、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含む、方法に関する。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の濾過工程(a)は、3透析濾過体積(DV)のような2~4DVの精製水で濾過することを含む、方法に関する。
【0021】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、60%~100%の間、またはさらに80%~100%の間のような、前記タンパク質の50%~100%の間が、第1の透過液中に回収される、方法に関する。
【0022】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む前記第1の透過液は、前記溶液より20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、またはさらに80%~100%少ない不純物のような、前記溶液より10%~100%少ない不純物を含む、方法に関する。
【0023】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第2の濾過工程(b)は精製水を使用することを含む、方法に関する。
【0024】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の保持液中のタンパク質は、75~175mg/mlのような50~200mg/mlの間、または約120mg/mlもしくは125mg/mlのような100~150mg/mlの間の濃度に濃縮される、方法に関する。
【0025】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記沈殿させる工程は、混和性溶媒、非イオン性親水性ポリマー、Ca2+、Mg2+、Mn2+またはFe2+のような多価金属イオン、および中性塩、好ましくはコスモトロープ(kosmotrope)、最も好ましくは((NH(SO2-からなる群から選択される沈殿剤を含む沈殿溶液によって行われる、方法に関する。
【0026】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記沈殿させる工程は、1.6~2.0Mのような1.4~2.2M、好ましくは約1.8Mの((NH(SO2-で行われる、方法に関する。
【0027】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(c)(ii)の前記タンパク質を含む前記沈殿物の洗浄は、沈殿溶液を洗浄溶液に置き換えること、および好ましくは4~6DVのような2~8DVまたは5DVの洗浄溶液で前記沈殿物を洗浄することを含み、好ましくは前記洗浄溶液は、1.6~2.0Mのような1.4~2.2Mの間、好ましくは約1.8Mの濃度で沈殿剤を含み、好ましくは前記沈殿剤は((NH(SO2-である、方法に関する。
【0028】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(c)(ii)の終わりに得られた洗浄した沈殿物は、0.7~0.5Mのような0.8~0.4Mの間、好ましくは約0.6Mの濃度で沈殿剤を含む再懸濁溶液中に再懸濁され、好ましくは前記沈殿剤は((NH(SO2-である、方法に関する。
【0029】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(c)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の透過液は、1透析濾過体積(DV)のような、1~4DVの間の一次緩衝液で透析濾過される、方法に関する。
【0030】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第3の保持液中のタンパク質は、25~80mg/mlのような10~100mg/mlの間、または約50mg/mlもしくは55mg/mlのような40~60mg/mlの間の濃度を有する、方法に関する。
【0031】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(d)(ii)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第3の保持液は、3~6のような1~8透析濾過体積(DV)、または4DVもしくは5DVの一次緩衝液で透析濾過される、方法に関する。
【0032】
本発明はまた、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記製剤化製品は、
- 25~80mg/mlのような10~100mg/ml、または約50mg/mlもしくは55mg/mlタンパク質のような40~60mg/mlの間の濃度のタンパク質と;
- リン酸緩衝液、Tris緩衝液、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、HEPES緩衝液のような一次緩衝液であって、好ましくは一次緩衝液のpHは約5~約7.5であり、好ましくは一次緩衝液の濃度は約5mM~約50mMであり、より好ましくは一次緩衝液は20mMクエン酸塩、pH6.0である、一次緩衝液と;
- 場合により、約1~12%の、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニン、および塩酸アルギニンからなる群から選択される安定剤、好ましくはマンニトール、好ましくは10mg/mlと;
- 場合により、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80、ポリソルベート-85、ポロキサマー-188、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエートからなる群から選択される、約0.001%~0.6%の濃度の界面活性剤と
を含む、方法に関する。
【0033】
4 図面の説明
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】MIP試行の異なるサンプルの異なるSE-HPLC分析のオーバーレイの図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
5 詳細な説明
別段の指示または定義がない限り、使用される全ての用語は、当業者には明らかである、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。例えば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版) Vols.1~3、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)、F.Ausubelら(Current protocols in molecular biology、Green Publishing and Wiley Interscience、New York、1987)、Lewin(Genes II、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、1985)、Oldら(Principles of Gene Manipulation:An Introduction to Genetic Engineering(第2版) University of California Press、Berkeley、CA、1981);Roittら(Immunology(第6版) Mosby/Elsevier、Edinburgh、2001)、Roittら(Roitt’s Essential Immunology(第10版) Blackwell Publishing、UK、2001)、およびJanewayら(Immunobiology(第6版) Garland Science Publishing/Churchill Livingstone、New York、2005)のような標準的なハンドブック、ならびに本明細書に引用される一般的な背景技術を参照のこと。
【0036】
別段の指示がない限り、当業者に明らかなように、具体的に詳細に記載されていない全ての方法、工程、技法および操作はそれら自体が公知の様式で実行することができ、実行されている。例えば、再び、本明細書に述べられている標準的なハンドブックおよび一般的な背景技術、ならびにそれらに引用されるさらなる参考文献を参照のこと;同様に例えば以下の概説である、Presta(Adv.Drug Deliv.Rev.58(5~6):640~56、2006)、LevinおよびWeiss(Mol.Biosyst.2(1):49~57、2006)、Irvingら(J.Immunol.Methods 248(1~2):31~45、2001)、Schmitzら(Placenta 21 Suppl.A:S106~12、2000)、Gonzalesら(Tumour Biol.26(1):31~43、2005)を参照のこと。それらは、親和性成熟のようなタンパク質工学についての技法ならびに免疫グロブリンのようなタンパク質の特異性および他の所望の特性を改善するための他の技法を記載している。
【0037】
アミノ酸配列は、文脈に応じて、単一のアミノ酸または2つもしくはそれ以上のアミノ酸の非分岐配列を意味すると解釈される。ヌクレオチド配列は、3つまたはそれ以上のヌクレオチドの非分岐配列を意味すると解釈される。
【0038】
アミノ酸は、天然に存在するタンパク質に一般的に見出されるそれらのL-アミノ酸である。アミノ酸残基は、標準的な3文字または1文字のアミノ酸コードに従って示される。例えば、WO08/020079の48ページの表A-2を参照のこと。D-アミノ酸を含有するこれらのアミノ酸配列は、この定義に包含されるようには意図されていない。翻訳後修飾アミノ酸を含有する任意のアミノ酸配列は、修飾された位置;例えば、ヒドロキシル化またはグリコシル化により、この表A-2に示される記号を使用して最初に翻訳されるアミノ酸配列として記載することができるが、これらの修飾はアミノ酸配列において明示的に示されていない。配列修飾連結、架橋および末端キャップ、非ペプチジル結合などとして発現することができる任意のペプチドまたはタンパク質が、この定義に包含される。
【0039】
特に断らない限り、数値に関連する「およそ」、「約」または「実質的に」という用語は、前記値の±10%の範囲内を意味する。
【0040】
本明細書に記載される濾過工程は、不純物から目的のタンパク質を精製する、例えば分離する機械的、物理的または生物学的操作の任意の適切な手段によって実行することができる。好ましくは、濾過工程は半透膜を使用して実行される。濾過は1つまたは複数のデバイスを用いて行うことができ、供給タンパク質含有溶液は並列または直列フローにおいてデバイスと接触される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「半透膜」は、他の分子を保持しながら、ある特定の分子またはイオンが、拡散、促進拡散、受動輸送または能動輸送によって通過することを可能にする細孔を含む、任意の種類の生物学的または合成のポリマー膜に関する。通過速度は、いずれかの側の分子または溶質の圧力、濃度および温度、ならびに各溶質に対する膜の透過性に依存する。膜および溶質に応じて、透過性は、溶質のサイズ、溶解性、特性および化学的性質に依存し得る。「半透膜」および「膜」という用語は、本開示全体を通して交換可能に使用され、各々が、本開示の目的のために同じ意味を有する。膜の孔径に応じて、精密濾過および限外濾過のために使用される膜を区別することができる。精密濾過のための膜は典型的に0.1μmから10μmの間の孔径を有する。限外濾過のために使用される膜は典型的に0.1μm未満の孔径を有する(例えば、10kDおよび50kDの膜)。
【0042】
一部の実施形態では、膜は、例えば、第1の濾過工程(a)において、40kDaから100kDaの間、好ましくは40kDaから80kDaの間、さらにより好ましくは50kDaの公称分画分子量(NMWCO)の孔径を有する。
【0043】
一部の実施形態では、膜は、例えば、第2の濾過工程(b)またはUF/DF工程(d)において、4kDaから40kDaの間、6kDaから30kDaの間、8kDaから20kDaの間のような、2kDaから50kDaの間、より好ましくは10kDaまたは15kDaのNMWCOの孔径を有する。
【0044】
実施形態では、膜は、例えば、沈殿、洗浄および再懸濁工程(c)において、0.1~0.3μmのような0.05~0.35μmの間または0.2μmのような0.15~0.25μmの間の孔径を有する。
【0045】
本発明の方法において利用することができる代表的な適切な膜には、再生セルロース、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリ乳酸、セラミック、ポリエーテル-スルホン、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)などから形成されるものが含まれる。これらの膜は、例えば、カートリッジ(例えば、NFF)形態で、またはカセット(例えば、TFF用)として供給することができる。ある特定の実施形態では、膜は、Satorius STIC(登録商標)膜、Sartorius Q膜(Sartobind(登録商標))、またはSartorius Hydrosart(登録商標)膜である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「限外濾過」または「UF」とは、UF膜中の粒径および細孔のサイズに基づいて溶液から粒子および/またはイオンを物理的および選択的に除去するために半透膜を使用する濾過技法を指す。一般に、半透膜は、膜を横切る圧力差を使用して供給ストリームにおける分子を選別または濃縮するために非常に小さい(0.001μm~0.1μm)細孔を有する。UF膜は、時々、孔径よりもむしろ分画分子量(MWCO)に基づいて分類される。
【0047】
限外濾過はまた、目的のタンパク質を濃縮するために使用することができる。UFによる濃縮は、溶質分子を保持しながら、溶液から流体を除去することを含む単純なプロセスである。溶質の濃度は溶液体積の減少に正比例して増加する、すなわち、体積を半分にすると、濃度は効果的に2倍になる。サンプルを濃縮するために、保持されるタンパク質の分子量より実質的に低いMWCOを用いてUF膜を選択し、これは目的のタンパク質の保持および高回収率を確実にする(本発明の第2の濾過工程(b)およびUF/DF工程(d)を参照のこと)。
【0048】
限外濾過はまた、膜を通過できない、宿主細胞およびプロセス関連不純物のような、より大きな不純物から、目的のタンパク質のような、より小さな分子を精製するために使用することができる(本発明の第1の濾過工程(a)を参照のこと)。
【0049】
時々、公称分子量限界(NMWL)または公称分画分子量(NMWCO)と呼ばれる膜の分画分子量(MWCO)は、規定された分子量の所与のパーセンテージの球状溶質を保持するその能力によって規定される。溶質保持は、分子形状、構造、溶質濃度、他の溶質の存在およびイオン条件に起因して変化することがある。したがって、当業者はMWCO定格が球状分子に基づき、一方で、3次元のうちの2次元において小さな直径を有し得る、より線状の分子が、記載されたMWCOを超える分子量を有するにもかかわらず、細孔をより自由に通過することができることがあることを理解するであろう。目的のタンパク質の適切な保持を確実にするために、当業者は、いくつかの慣例的な実験を実行することによって、必要とされる特性を有する膜を選択することができる。良好な一般規則は、保持される目的のタンパク質の分子量の3~6分の1のMWCOを有する膜を選択することである。
【0050】
従来、膜のMWCOとは、膜を横切って効果的に拡散しない標準分子の最小平均分子質量を指す。本明細書で使用される場合、「分画分子量」または「MWCO」とは、溶質の90%が膜によって保持される最低分子量溶質(ダルトン)、または膜によって90%保持される分子(例えば、球状タンパク質)の分子量を指す。2kDa、3.5kDa、5kDa、7kDa、10kDa、15kDaおよび20kDa、さらにより好ましくは10kDaの公称MWCO定格を有する好ましいUF膜。例えば、UFは本発明の工程(b)および工程(d)において使用される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「濃縮」部分の間、初期体積Vは最終保持体積(「V」)に濃縮され、したがって、体積濃度係数(VCF)は、VCF=V/Vとして定義することができる。(透析)濾過の間、透析体積(diavolume)(DV)は、(透析)濾過工程の間に実行された緩衝液交換の程度の尺度である。一定体積の(透析)濾過が実行されており、保持液体積(V)が一定に保たれ、(透析)濾過体積Vが、濾液が出るのと同じ速度で入る場合、DVはDV=V/Vとして計算される。工程性能に影響を及ぼし得る他の動作パラメータには、フィルター設計(チャネルサイズおよび形状など)、ならびに材料および構造が含まれ、これらの全ては当業者に公知であり、これらの全ては定期的に分析され、例えば、適切な膜についてのスクリーニングの間に評価される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「膜間圧」または「TMP」は、膜を通る液体輸送のための駆動力に関する。それは、膜に加えられた平均圧力から任意の濾過圧を引いたものとして計算される。ほとんどの場合、濾液ポートにおける圧力はゼロに等しい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「透析濾過」または「DF」とは、膜を通過することができない、より大きな分子(保持液)を、膜を通過することができる、より小さな分子(透過液)から分離する半透膜を使用する技法を指す。DFは、半透膜を通る、より小さな分子(透過液)を洗浄し、保持液中により大きな分子を残す。DFは、溶液から塩または溶媒の濃度を完全に除去する、置き換える、または低下させるために使用することができる(本発明の工程(a)、(c)および(d)を参照のこと)。DFは、連続的または不連続的のいずれかで実行することができる。
【0054】
連続透析濾過では、DF溶液は、濾液が生成されるのと同じ速度でサンプル供給リザーバに添加される。その結果、サンプルリザーバ内の体積は一定のままであるが、膜を透過する、より小さな分子は洗い流される。
【0055】
不連続透析濾過では、DF溶液は初期体積を増加させるために最初に希釈され、次いで濾液が生成されると濃縮される。次いでこのプロセスは、サンプルリザーバ中に残存する小分子の所望の濃度が達成されるまで繰り返される。
【0056】
不連続透析濾過は、連続透析濾過と同程度または小さい分子の透過液減少を達成するために、より多くの濾液体積を必要とする。
【0057】
DFプロセスは、時々、DF溶液が添加される前の溶液の体積を指す、透析濾過体積を使用する。各々のさらなる透析濾過体積(DV)は塩濃度をさらに減少させる。一般に、5透析濾過体積を使用すると、連続透析濾過でイオン強度が約99%減少する。
【0058】
本明細書で使用される濾過に関して、「保持液」という用語は、膜の保持液側に保持され、本発明の工程(a)における不純物、または本発明の工程(b)における目的のタンパク質のような、膜を通過するには大きすぎる分子を含有する溶液を指す。
【0059】
簡潔さのために、「UF」、「DF」および「UF/DF」(または「UFDF」)という頭文字を、説明全体にわたって使用することができ、以下のように理解されるべきである:「UF」は「限外濾過」を意味し、「DF」は「透析濾過」を意味し、「UF/DF」(または「UFDF」)は「限外濾過/透析濾過」を意味する。
【0060】
「タンジェンシャルフロー濾過」(「TFF」)または「クロスフロー濾過」とは、一部が膜(透過液)を通過する際に供給流が膜面に平行して通過し、一方で、残り(保持液)が供給リザーバに再循環されて戻される濾過を指す。それは、多くの場合、供給流が膜に垂直に適用される、「ノーマルフロー濾過」、(「NFF」)の代わりに使用される。NFFは膜において混合物の圧縮を引き起こし、不十分な分離を引き起こすことがあるので、TFFが好ましい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「濾液」(本明細書では、時々、「透過液」としても指定される)は、膜を通って流れたサンプルである。
【0062】
本明細書で使用される場合、「回収率」は、例えば、濾過前の出発サンプル中の量と比較した、処理後、例えば、濾過後に回収されたタンパク質の量(量、質量または活性)に関する。回収率は通常、本明細書では出発材料のパーセンテージとして表される。
【0063】
本発明者らは、2L、10L、100Lおよびさらに2000Lの出発材料を使用することによって本発明の方法のスケーラビリティを実証した(実施例を参照のこと)。当業者は、本発明の方法を、必要に応じてさらにスケールアップまたはスケールダウンすることができることを理解するであろう。本明細書で使用される場合、「膜ローディング」は、濾過工程においてロードされる目的のタンパク質の量をフィルター(膜)の面積で割ったものとして定義される。このパラメータは濾過工程のスケールアップおよびスケールダウンのために使用することができ、それによって、スケーリングアプローチは膜ローディングを同一に維持することを含む。
【0064】
本発明は、夾雑物をさらに減少させるために沈殿および洗浄工程を使用する(本発明の工程(c)を参照のこと)。
【0065】
当業者は、沈殿の基礎となる機構に精通しており、その機構は、より具体的には、沈殿薬の添加によって、溶質、すなわち、目的のタンパク質の溶解度を低下させることによって溶媒の溶媒和ポテンシャルを変化させることである。
【0066】
一般に、タンパク質沈殿物の形成(「沈殿」)は段階的なプロセスで発生する。最初に、沈殿剤(「沈殿薬」)を含有する沈殿溶液を加え、溶液を安定に混合する。混合により、沈殿薬およびタンパク質を衝突させる。次に、タンパク質は核形成相に入り、そこで超顕微鏡的サイズのタンパク質凝集体または粒子が生成される。最後の工程の間、タンパク質沈殿粒子は繰り返し衝突し、接着し、次いで、安定な平均タンパク質粒径に達するまでばらばらにされる(「エージング」)。タンパク質粒子の機械的強度は、平均剪断速度と、Camp数として知られるエージング時間との積と相関する。エージングは、不溶性固体タンパク質粒子(沈殿物)が、サイズを減少させることなく、ポンプおよび遠心分離供給ゾーンにおいて遭遇する流体剪断力に耐えるのに役立つ。
【0067】
本明細書で使用される場合、「沈殿物」とは、標的タンパク質を含む不溶性固体を指す。沈殿物は懸濁物として現れ得る。本明細書で使用される場合、「沈殿薬」とは、固体を液体溶液中で形成させる任意の化学物質を指す。
【0068】
等電沈殿、混和性溶媒による沈殿、非イオン性親水性ポリマーを介する沈殿、Ca2+、Mg2+、Mn2+またはFe2+のような多価金属イオンを介する沈殿、および塩析を介する沈殿のような、沈殿のための任意の適切な方法、好ましくは塩析を介する沈殿を本発明の方法において使用することができる。
【0069】
本発明のタンパク質は、タンパク質を沈殿させるために使用される最も一般的な方法である塩誘導沈殿(「塩析」)によって沈殿させることができる。中性塩の添加は溶媒和層を圧縮し、タンパク質間相互作用を増加させる。溶液の塩濃度が増加するにつれて、タンパク質の表面上の電荷は水ではなく、塩と相互作用し、それによって、タンパク質表面上の疎水性パッチを露出させ、タンパク質を溶液から抽出させる(凝集および沈殿させる)。好ましい中性塩はコスモトロープまたは「水構造安定剤」であり、これはタンパク質周囲の溶媒和層からの水の散逸/分散を促進する。好ましい中性塩は、(PO3-、(SO2-、SOO、およびClと、(NH、K、およびNaとの組合せであり、最も好ましくは、塩は((NH(SO2-である。
【0070】
本発明のタンパク質はまた、例えば、トリクロロ酢酸を用いた等電沈殿によって沈殿させることもできる。例えば、沈殿は、媒体のpHを変化させることによって達成することができる。低いpHでは、アミドが余分なプロトンを獲得するので、タンパク質は正味の正電荷を有する。高いpHでは、それらは、タンパク質骨格上のカルボキシルがそのプロトンを失うことに起因して、正味の負電荷を有する。それらのpI値では、タンパク質は正味の電荷を有さない。これは、タンパク質が媒体と相互作用することができず、次いで溶液から抽出するので、溶解度の低下をもたらす。トリクロロ酢酸(TCA)は、比較的低い濃度(典型的に約15%周囲)で大きな結果を見るので、沈殿のために一般に使用される。アセトンのような有機溶媒もまた、多くの場合、TCAと併用してタンパク質沈殿のために使用することができる。有機溶媒は、有機溶媒の誘電率を低下させ、その結果、溶解性を喪失し、したがって沈殿が生じる。
【0071】
不純物の量をさらに減少させるために、沈殿物を「洗浄溶液」で洗浄することができる。収率を最大にするために、この洗浄工程は、沈殿物が沈殿したままであること、例えば、沈殿物が再懸濁されないか、または実質的に再懸濁されないことのみを必要とする。他方で、洗浄工程は、不純物のようなさらなる化合物を凝集させないことが好ましい。当業者は、例えば、イオン強度、モル濃度などを分析することを含む、この洗浄工程のための適切な洗浄溶液を選択することができる。好ましい洗浄溶液は、例えば、混和性溶媒、非イオン性親水性ポリマー、多価金属イオン、または中性塩、好ましくは中性塩を含む溶液のような沈殿のために使用される溶液と同一または類似である。
【0072】
好ましくは、洗浄溶液は、好ましくは1.6~2.0Mの間、さらにより好ましくは1.8Mの濃度で、中性塩、より好ましくは((NH(SO2-含む。
【0073】
目的のタンパク質のさらなる操作のために、タンパク質を溶解するか、またはタンパク質を溶液に入れることが好ましい。本明細書で使用される場合、「再懸濁」とは、溶質、すなわち、目的のタンパク質を溶媒、すなわち、再懸濁溶液に溶解することを指す。得られた溶液は再懸濁された製品を含む。再び、当業者は、適切な再懸濁溶液およびそれらを適用する方法について完全に精通している。例えば、精製水を添加することによって洗浄工程に使用される洗浄溶液の濃度を低下させると、沈殿したタンパク質を既に溶解させることができる。好ましい実施形態では、例えば、((NH(SO2-のような中性塩の濃度は、約0.4M~約0.8M、好ましくは約0.6Mに低下される。
【0074】
「タンパク質」、「ペプチド」、「タンパク質/ペプチド」、および「ポリペプチド」という用語は、本開示全体を通して交換可能に使用され、各々は本開示の目的のために同じ意味を有する。各用語は、2つまたはそれ以上のアミノ酸の直鎖からなる有機化合物を指す。その化合物は、10個またはそれ以上のアミノ酸;25個またはそれ以上のアミノ酸;50個またはそれ以上のアミノ酸;100個またはそれ以上のアミノ酸、200個またはそれ以上のアミノ酸、さらに300個またはそれ以上のアミノ酸を有することができる。当業者は、ポリペプチドが一般に、タンパク質よりも少ないアミノ酸を含むが、ポリペプチドとタンパク質を区別するアミノ酸の数の当該技術分野で認識されているカットオフポイントは存在しないこと;ポリペプチドは化学合成または組換え方法によって作製することができること;およびタンパク質が一般に、当該技術分野で公知の組換え方法によってin vitroまたはin vivoで作製されることを理解するであろう。本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、天然タンパク質の配列を有する分子、すなわち、天然に存在する、特に非組換え細胞、または遺伝子操作された細胞もしくは組換え細胞によって産生されるタンパク質を指し、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然配列の1つもしくはそれ以上のアミノ酸からの欠失、それらへの付加および/もしくはそれらの置換を有する分子を含む。ある特定の態様では、精製されるタンパク質は抗体である。本明細書で意図されるように、「タンパク質」という用語は、「ポリペプチド」、「免疫グロブリン」、「抗体」および「抗体断片」の両方を含む。
【0075】
別段の指示がない限り、「免疫グロブリン」および「免疫グロブリン配列」という用語は、重鎖抗体または従来の4本鎖抗体を指すために本明細書で使用されるかどうかにかかわらず、フルサイズ抗体、その個々の鎖、およびその全ての部分、ドメインまたは断片(限定されないが、それぞれ、VHHドメインまたはV/Vドメインのような抗原結合ドメインまたは断片を含む)の両方を含む一般的な用語として使用される。
【0076】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトな抗体、または特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその結合断片を指す。結合断片には、限定されないが、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、および一本鎖抗体が含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合、(ポリペプチドまたはタンパク質の)「ドメイン」という用語は、タンパク質の残りとは独立して、その三次構造を保持する能力を有する折り畳まれたタンパク質構造を指す。一般に、ドメインはタンパク質の別個の機能特性に関与し、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残りの機能を失うことなく、他のタンパク質に付加、除去または転移される。
【0078】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリンドメイン」という用語は、抗体鎖の球状領域(例えば、従来の4本鎖抗体または重鎖抗体の鎖など)、またはそのような球状領域から本質的になるポリペプチドを指す。免疫グロブリンドメインは、それらが抗体分子の免疫グロブリン折り畳み特性を保持することを特徴とし、その抗体分子は、場合により、保存されたジスルフィド結合によって安定化された、2つのベータシートとして配置された約7個の逆平行ベータ鎖の2層サンドイッチからなる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン可変ドメイン」という用語は、当該技術分野および本明細書以下において、それぞれ、「フレームワーク領域1」または「FR1」;「フレームワーク領域2」または「FR2」;「フレームワーク領域3」または「FR3」;および「フレームワーク領域4」または「FR4」と称される4つの「フレームワーク領域」から本質的になる免疫グロブリンドメインを意味し;それらのフレームワーク領域は、当該技術分野および本明細書以下において、それぞれ、「相補性決定領域1」または「CDR1」;「相補性決定領域2」または「CDR2」;および「相補性決定領域3」または「CDR3」と称される3つの「相補性決定領域」または「CDR」によって中断される。したがって、免疫グロブリン可変ドメインの一般的な構造または配列は、以下のように示すことができる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。それは、抗原結合部位、特にCDR1、CDR2および/またはCDR3を担持することによって、抗原に対する抗体に特異性を付与するISVDである。
【0080】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(「ISV」または「ISVD」)という用語は、「単一可変ドメイン」と交換可能に使用され、抗原結合部位が、単一免疫グロブリンドメイン上に存在し、単一免疫グロブリンドメインによって形成される分子を定義する。これは「従来の」免疫グロブリンまたはそれらの断片とは別にISVを設定し、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインは相互作用して抗原結合部位を形成する。典型的に、従来の免疫グロブリンにおいて、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)は相互作用して抗原結合部位を形成する。この場合、VHおよびVLの両方の相補性決定領域(CDR)は抗原結合部位に寄与し、すなわち、合計6個のCDRが抗原結合部位形成に関与する。
【0081】
上記の定義を考慮すると、従来の4本鎖抗体(IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE分子など;当該技術分野で公知)またはFab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド連結FvもしくはscFv断片のようなFv断片、またはこのような従来の4本鎖抗体に由来するダイアボディ(全て、当該技術分野で公知)の抗原結合ドメインは、通常、ISVとはみなされず、なぜなら、これらの場合、抗原のそれぞれのエピトープへの結合は通常、1つ(単一)の免疫グロブリンドメインによって生じるのではなく、軽鎖および重鎖可変ドメインのような1対の(会合する)免疫グロブリンドメインによって、すなわち、それぞれの抗原のエピトープに一緒に結合する免疫グロブリンドメインのVH-VL対によって生じるからである。
【0082】
対照的に、ISVは、さらなる免疫グロブリン可変ドメインと対合することなく、抗原のエピトープに特異的に結合することができる。ISVの結合部位は、単一VH、単一VHHまたは単一VLドメインによって形成される。したがって、ISVの抗原結合部位は3つ以下のCDRによって形成される。
【0083】
したがって、単一可変ドメインは、単一抗原結合単位(すなわち、単一抗原結合ドメインが機能抗原結合単位を形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要がないように、単一可変ドメインから本質的になる機能抗原結合単位)を形成することができる限り;軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VL配列)もしくはその適切な断片;または重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列またはVHH配列)もしくはその適切な断片であってもよい。
【0084】
本発明の一実施形態では、ISVは重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列)であり;より具体的には、ISVは、従来の4本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列または重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。
【0085】
例えば、ISVは、(単一)ドメイン抗体、(単一)ドメイン抗体として使用するのに適したアミノ酸、(単一)ドメイン抗体として使用するのに適した免疫グロブリン、「dAb」もしくはdAb、またはdAbとして使用するのに適したアミノ酸、またはNanobody(本明細書で定義され、限定されないが、VHHを含む);ヒト化VHH配列、ラクダ化VH配列、親和性成熟によって得られたVHH配列、他の単一可変ドメイン、免疫グロブリン単一重鎖可変ドメインまたはそれらのいずれか1つの任意の適切な断片であってもよい。
【0086】
特に、ISVは、Nanobody(登録商標)(本明細書で定義される)またはその適切な断片であってもよい。[注記:Nanobody(登録商標)およびNanobodies(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である。]Nanobodiesの一般的な説明については、以下のさらなる説明、および例えば、WO08/020079(16ページ)に記載されているような、本明細書に引用される先行技術を参照のこと。
【0087】
VHH、VHドメイン、VHH抗体断片、およびVHH抗体としても知られる「VHHドメイン」は、「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖を欠く抗体」;Hamers-Castermanら、Nature 363:446~448、1993)の抗原結合免疫グロブリン(可変)ドメインとして最初に記載されている。「VHHドメイン」という用語は、これらの可変ドメインを、従来の4本鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」または「VHドメイン」と称する)および従来の4本鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」または「VLドメイン」と称する)と区別するために選択されている。VHHおよびNanobodiesのさらなる説明については、例えば、Muyldermansによる総説(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277~302、2001)ならびにAblynx N.V.によるWO04/041867、WO04/041862、WO04/041865、WO04/041863、WO04/062551、WO05/044858、WO06/40153、WO06/079372、WO06/122786、WO06/122787およびWO06/122825、ならびにAblynx N.V.によるさらなる公開された特許出願を参照のこと。これらの出願において述べられているさらなる先行技術、特に国際出願WO06/040153の41~43ページに述べられている参考文献のリストも参照のこと。それらのリストおよび参考文献は参照によって本明細書に組み入れる。これらの参考文献に記載されているように、ISV、Nanobodies(特に、VHH配列および部分的にヒト化されたNanobodies)は特に、フレームワーク配列の1つまたはそれ以上における1つまたはそれ以上の「ホールマーク残基」の存在によって特徴付けることができる。Nanobodiesのヒト化および/またはラクダ化、ならびに他の修飾、部分または断片、誘導体または「Nanobody融合物」、多価構築物(リンカー配列の一部の非限定的な例を含む)、ならびにISV、Nanobodiesおよびそれらの調製物の半減期を増加させるための異なる修飾を含む、ISV、Nanobodiesのさらなる説明は、例えば、WO08/101985およびWO08/142164に見出すことができる。Nanobodiesのさらなる一般的な説明については、例えば、WO08/020079(16ページ)に記載されているような、本明細書に引用されている先行技術を参照のこと。
【0088】
「Dab」(複数も含む)、「ドメイン抗体」および「dAb」としても知られている「ドメイン抗体」(「ドメイン抗体」および「dAb」という用語は、GlaxoSmithKline企業グループによって商標として使用されている)は、例えば、EP0368684、Wardら(Nature 341:544~546、1989)、Holtら(Tends in Biotechnology 21:484~490、2003)およびWO03/002609および例えばWO04/068820、WO06/030220、WO06/003388ならびにDomantis Ltdの他の公開特許出願に記載されている。ドメイン抗体は、本質的には、非ラクダ科哺乳動物、特にヒトの4本鎖抗体のVHまたはVLドメインに対応する。単一抗原結合ドメインとして、すなわち、それぞれVLまたはVHドメインと対合せずに、エピトープに結合するために、例えば、ヒト単一VHまたはVLドメイン配列のライブラリーを使用することによって、このような抗原結合特性についての特異的選択が必要とされる。ドメイン抗体は、VHHのようにおよそ13~およそ16kDaの分子量を有し、完全ヒト配列に由来する場合、例えば、ヒトにおける治療的使用のためにヒト化する必要はない。
【0089】
例えば、限定されないが、1つまたはそれ以上のISVは、ポリペプチドを製造するための「結合単位」、「結合ドメイン」または「ビルディングブロック」(これらの用語は交換可能に使用される)として使用することができ、それらは場合により、結合単位として機能することができる(すなわち、同じもしくは別のエピトープに対する、および/または1つもしくはそれ以上の他の抗原、タンパク質もしくは標的に対する)1つまたはそれ以上のさらなるISVを含有することができる。
【0090】
1つより多いISVを含む多価ポリペプチドを製造するための方法は、本発明の2つまたはそれ以上のISVおよび例えば1つまたはそれ以上のリンカーを適切な様式で互いに連結する工程を少なくとも含んでもよい。本発明のISV(およびリンカー)は、当該技術分野で公知の任意の方法によって、および本明細書にさらに記載されるようにカップリングすることができる。好ましい技法は、本発明のISV(およびリンカー)をコードする核酸配列を連結して、多価ポリペプチドを発現する遺伝子構築物を製造することを含む。アミノ酸または核酸を連結するための技法は当業者には明らかであり、上述のSambrookらおよびAusubelらのような標準的なハンドブック、ならびに以下の実施例を再度参照のこと。
【0091】
好ましい実施形態では、目的のタンパク質は、2つまたは3つのような1つまたはそれ以上のVHHを含むポリペプチドである。
【0092】
目的のタンパク質は任意の適切な宿主細胞において発現し、分泌することができる。適切な宿主または宿主細胞は当業者には明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核もしくは真核細胞もしくは細胞株または任意の適切な真菌、原核もしくは(非ヒト)真核生物、例えば:
- 限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)の株;プロテウス(Proteus)の株、例えばプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)の株;シュードモナス(Pseudomonas)の株、例えばシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)の株のようなグラム陰性株;ならびにバシラス(Bacillus)の株、例えばバシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)の株またはバシラス・ブレビス(Bacillus brevis)の株;ストレプトマイセス(Streptomyces)の株、例えばストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の株;スタフィロコッカス(Staphylococcus)の株、例えばスタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)の株;およびラクトコッカス(Lactococcus)の株、例えばラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)の株のようなグラム陽性株を含む、細菌株;
- 限定されないが、トリコデルマ(Trichoderma)の種、例えばトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)由来;ニューロスポラ(Neurospora)の種、例えばニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)由来;ソルダリア(Sordaria)の種、例えばソルダリア・マクロスポラ(Sordaria macrospora)由来;アスペルギルス(Aspergillus)の種、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来もしくはアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)由来;または他の糸状菌由来の細胞を含む、真菌細胞;
- 限定されないが、サッカロマイセス(Saccharomyces)の種、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の種;シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)の種、例えばシゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)の種;ピキア(Pichia)の種、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)の種またはピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)の種;ハンゼヌラ(Hansenula)の種、例えばハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)の種;クルイウェロマイセス(Kluyveromyces)の種、例えばクルイウェロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)の種;アルクスラ(Arxula)の種、例えばアルクスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)の種;ヤロウイア(Yarrowia)の種、例えばヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の種由来の細胞を含む、酵母細胞;
- アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞のような両生類細胞または細胞株;
- 限定されないが、スポドプテラ(Spodoptera)SF9およびSf21細胞またはシュナイダー(Schneider)およびKc細胞のようなショウジョウバエ(Drosophila)に由来する細胞/細胞株を含む、鱗翅目に由来する細胞/細胞株のような昆虫由来の細胞または細胞株;
- 植物または植物細胞、例えばタバコ植物;ならびに/または
- 哺乳動物細胞または細胞株、例えばヒトに由来する細胞または細胞株、限定されないが、CHO細胞(例えばCHO-K1細胞)、BHK細胞を含む哺乳動物由来の細胞または細胞株、およびHeLa、COS、CakiおよびHEK293H細胞のようなヒト細胞または細胞株;
ならびに抗体および抗体断片(限定されないが、(単一)ドメイン抗体およびScFv断片を含む)の発現および産生のためのそれ自体が公知の全ての他の宿主細胞または(非ヒト)宿主であってもよく、これらは当業者には明らかであろう。本明細書上記に引用されている一般的な背景技術、ならびに例えば、WO94/29457;WO96/34103;WO99/42077;Frenkenら(Res Immunol.149:589~99、1998);RiechmannおよびMuyldermans(1999)、前出;van der Linden(J.Biotechnol.80:261~70、2000);Joostenら(Microb. Cell Fact.2:1、2003);Joostenら(Appl.Microbiol.Biotechnol.66:384~92、2005);ならびにそれらに引用されているさらなる参考文献も参照のこと。
【0093】
本発明のタンパク質の発現を産生/得るために、宿主細胞または宿主生物は一般に、本発明の(所望の)ポリペプチドが発現/産生されるような条件下で維持、持続および/または培養される。適切な条件は当業者には明らかであり、通常、使用される宿主細胞/宿主生物、および本発明のタンパク質の発現を制御する調節要素に依存するであろう。
【0094】
溶液からタンパク質を精製するための本発明の方法は、とりわけ、目的のタンパク質が、より大きな不純物から分離され(方法の工程(a))、目的のタンパク質が、より小さな不純物から分離される;(方法の工程(b))、種々の濾過工程に依存する。当業者は、タンパク質の公称サイズが、種々の工程において使用される膜のMWCOの調整を必要とし得ることを理解するであろう。例えば、約150kDaのサイズを有するインタクトなIgG抗体は、10分の1小さいサイズを有するVHHと異なる第1および第2の膜を必要とし得る。本発明の教示を考慮して、当業者は、目的のタンパク質に応じて膜の孔径を即時に調整することができる。
【0095】
好ましくは、目的のタンパク質は、50kDaより小さく、例えば、それぞれ、約13~16kDa、26~32kDaまたは39~48kDaのサイズを有する、1、2または3個のVHHを含むポリペプチド、さらにより好ましくは、約20kDaまで、より好ましくは約13~16kDaのサイズを有する、1個のVHHを含むポリペプチドである。
【0096】
本明細書に開示される方法は溶液からタンパク質を精製することを意図する。本明細書で使用される場合、「精製された」および「精製すること」とは、in vitro、ex vivo、またはin vivoでタンパク質の効果的な使用を可能にする最終的な純度を指す。in vitro、ex vivo、またはin vivoでの適用において有用なタンパク質に関して、例えば、そのような適用においてそのタンパク質の使用を妨げる可能性があるか、または少なくとも目的のタンパク質と共に含めることが望ましくない、夾雑物、他のタンパク質、宿主細胞、製品関連バリアントおよび/または化学物質のような、不純物を実質的に含むべきではない。そのような適用には、治療用組成物の製造、治療用組成物でのタンパク質の投与、および本明細書に開示される他の方法が含まれる。好ましくは、本明細書で参照される場合、「精製された」タンパク質は、目的のタンパク質が、所与の組成物中に少なくとも約80%重量/総タンパク質の重量、所与の組成物中に、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約91%、より好ましくは少なくとも約92%、より好ましくは少なくとも約93%、より好ましくは少なくとも約94%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、より好ましくは少なくとも約99%重量/総タンパク質の重量を含むように、不純物または他のタンパク質成分から精製されているタンパク質である。
【0097】
標的タンパク質、およびサンプル中に存在し得る夾雑タンパク質は任意の適切な手段によってモニターすることができる。したがって、純度は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)のような、当該技術分野で公知であるか、または実施例の節に記載される慣例の方法によって決定することができる。タンパク質純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatmanら、J.Chromatogr.B 848:79~87(2007)を参照のこと。好ましくは、技法は、約2百万分率(ppm)(精製するタンパク質1ミリグラムあたりのナノグラムとして計算)から500ppmの間の範囲で夾雑物を検出するのに十分な感度であるべきである。例えば、当該技術分野で周知の方法である、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、第2のタンパク質によるタンパク質の夾雑を検出することができる。例えば、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Reen(1994)、Enzyme-Linked Immunosorbent Assay(ELISA)、Basic Protein and Peptide Protocols、Methods Mol.Biol.32:461~466を参照のこと。一態様では、そのような他のタンパク質によるタンパク質の夾雑は、本明細書に記載される方法の後に、好ましくは約2分の1以下、より好ましくは約3分の1以下、より好ましくは約5分の1以下、より好ましくは約10分の1以下、より好ましくは約20分の1以下、より好ましくは約30分の1以下、より好ましくは約40分の1以下、より好ましくは約50分の1以下、より好ましくは約60分の1以下、より好ましくは約70分の1以下、より好ましくは約80分の1以下、より好ましくは約90分の1以下、最も好ましくは約100分の1以下に減少させることができる。
【0098】
別の態様では、本明細書に記載される方法の後のそのような他のタンパク質によるタンパク質の夾雑は、約10,000ppm以下、好ましくは約2500ppm以下、より好ましくは約400ppm以下、より好ましくは約360ppm以下、より好ましくは約320ppm以下、より好ましくは約280ppm以下、より好ましくは約250ppm以下である。そのような夾雑は、検出不可能なレベルから約10ppmまたは約10ppmから約10,000ppmの範囲とすることができる。目的のタンパク質を薬理学的使用のために精製する場合、当業者は、第2の夾雑タンパク質の好ましいレベルは患者あたりに投与される目的のタンパク質の1週間用量に依存する場合があり、患者が1週間あたりにある特定の量を超える夾雑タンパク質を受容しないことを目的とすることを理解するであろう。
【0099】
精製するタンパク質のサンプル中に存在し得るDNAの量は、任意の適切な方法によって決定することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を利用したアッセイを使用することができる(実施例の節を参照のこと)。場合により、この技法はタンパク質1ミリグラムあたり10ピコグラムおよびそれ以上のレベルのDNA夾雑を検出することができる。DNAレベルは、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)によって、場合により約2分の1、好ましくは約5分の1、より好ましくは約10分の1、より好ましくは約15分の1、最も好ましくは約20分の1に減少させることができる。場合により、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのようなHIC後のDNAのレベルは、タンパク質1ミリグラムあたり約20ピコグラム未満、好ましくはタンパク質1ミリグラムあたり15ピコグラム未満、より好ましくはタンパク質1ミリグラムあたり10ピコグラム未満、最も好ましくはタンパク質1ミリグラムあたり5ピコグラム未満である。
【0100】
「タンパク質製剤」(本明細書では「製剤」としても示される)という用語は、目的のタンパク質、一次緩衝液および場合により賦形剤を含む最終製品を指定する。治療的使用を意図するタンパク質を指す場合、「原薬」という用語を「タンパク質製剤」の代わりに使用することができ、目的のタンパク質を「有効成分」または「製品」という用語として指定することができる。本明細書で使用される場合、「一次緩衝液」は、賦形剤が添加されるか否かにかかわらず、さらなる処理または使用に適した任意の緩衝液である。一般に、一次緩衝液は5.0~7.5のpHを有し、投与に適している。「賦形剤」は、「タンパク質」または「有効成分」ではない、「タンパク質製剤」の構成要素全てによって定義される。賦形剤は典型的に、リオプロテクタント(lyoprotectant);界面活性剤;充填剤;等張化剤;安定剤;および保存剤を含む。
【0101】
好ましい実施形態では、一次緩衝液には、限定されないが、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、HEPES緩衝液および/またはクエン酸緩衝液が含まれ、好ましくはクエン酸緩衝液である。許容される塩には、限定されないが、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ならびにそれらのカリウム、マグネシウムおよびカルシウム塩、ならびにそれらの塩の組合せを含むことができる。リン酸緩衝液、Tris緩衝液、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、HEPES緩衝液および/またはクエン酸緩衝液の濃度は、約5mM~約50mM、約5mM~約40mM、約5mM~約30mM、約10mM~約20mM、または約10mM、約20mM、もしくは約30mMである。他の実施形態では、製剤中の緩衝液は、約5mM~約50mM未満、約5mM~約40mM未満、約5mM~約30mM未満、約10mM~約20mM未満、または約10mM未満、約20mM未満、もしくは約30mM未満の濃度で存在するTris緩衝液である。製剤の緩衝液のpHは一般に約5から7の間である。一部の特定の実施形態では、製剤の緩衝液のpHは、約5~約7.5、約5.5~約7.2である。例えば、緩衝液のpHは、約5、5.5、5.8~6.1、6、6.1、6.5または7であってもよい。好ましくは、一次緩衝液は、20mMクエン酸緩衝液、pH6.0である。
【0102】
ある特定の実施形態では、タンパク質、例えば、「タンパク質製剤」中に1、2または3個のVHHを含むNanobodyまたはポリペプチドは、約0.5mg/mL~約350mg/mL、約0.5mg/mL~約300mg/mL、約0.5mg/mL~約250mg/mL、約0.5mg/mL~約150mg/mL、約1mg/ml~約130mg/mL、約10mg/ml~約130mg/mL、約50mg/ml~約120mg/mL、約80mg/ml~約120mg/mL、約88mg/ml~約100mg/mLまたは約10mg/ml、約25mg/ml、約50mg/ml、約80mg/ml、約100mg/mL、約130mg/ml、約150mg/ml、約200mg/ml、約250mg/mlもしくは約300mg/mlの濃度である。
【0103】
他の実施形態では、製剤のリオプロテクタントは、糖、例えば、スクロース、ソルビトールまたはトレハロースである。例えば、リオプロテクタントは、約2.5%~約10%、約5%~約10%、約5%~約8%、または約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%もしくは約9%(重量/体積)の濃度のスクロース、ソルビトールまたはトレハロースであってもよい。
【0104】
一部の実施形態では、製剤は、約0.001%~0.6%、例えば、約0.01%~0.6%、約0.1%~0.6%、約0.1%~0.5%、約0.1%~0.4%、約0.1%~0.3%、約0.1%~0.2%、または約0.01%~0.02%の濃度で界面活性剤を含む。一部の場合、製剤は、0%より大きく約0.6%以下{例えば、約0.1%~0.2%}のポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80、ポリソルベート-85、ポロキサマー-188、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、またはそれらの組合せを含有する。特定の実施形態では、製剤は、約0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%~0.02%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.1%~0.2%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%または0.2%のポリソルベート-80を含有する。あるいは、製剤は、約0.01%~0.6%、約0.1%~0.6%、約0.1%~0.5%、約0.1%~0.4%、約0.1%~0.3%、または約0.1%~0.2%でポロキサマー-188を含んでもよい。
【0105】
ある特定の実施形態では、製剤は、約10~約200mM、約25~約175mM、約50~約150mM、約75~約125mM、または約100mMの濃度で充填剤、例えば、グリシンを含む。
【0106】
他の実施形態では、製剤は、等張化剤、例えば、製剤をヒト血液と実質的に等張または等浸透圧にする分子をさらに含む。例示的な等張化剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、メチオニン、マンニトール、デキストロース、イノシトール、塩化ナトリウム、アルギニンおよび塩酸アルギニンが含まれる。
【0107】
さらに他の実施形態では、製剤は、安定剤、例えば、目的のタンパク質と組み合わせると、凍結乾燥、液体または保存形態で目的のタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を実質的に阻止または減少させる分子をさらに含む。例示的な安定剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニンおよび塩酸アルギニンが含まれる。ある特定の実施形態では、製剤は、以下の範囲:約1%~約12%(例えば、約5%、約7.5%、約8%または約10%)のスクロース;約1%~約7%(例えば、約3%、約4%、約5%)のソルビトール;約1%~約5%のイノシトール;約10mM~約125mM(例えば、約25mM~100mM、約80mM、約90mMまたは約100mM)のグリシン;約10mM~150mM(例えば、約25mM~100mM、約55mM)の塩化ナトリウム;約10mM~約100mM(例えば、約10mM、約20mM、約100mM)のメチオニン;約10mM~約125mM(例えば、約25mM~約120mMまたは約100mM)のアルギニン;約10mM~約70mM(例えば、約10mM~約65mMまたは約55mM)の塩酸アルギニンのうちの1つまたはそれ以上で安定剤を含む。
【0108】
他の実施形態では、製剤は、約10~約200mM、約25~約175mM、約50~約150mM、約75~約125mMまたは約100mMの濃度でメチオニンをさらに含んでもよい。
【0109】
一実施形態では、製剤の成分は、リオプロテクタント、等張化剤および/または安定剤のうちの1つまたはそれ以上として機能することができる。例えば、成分、例えば、スクロースの濃度に応じて、それは、リオプロテクタント、等張化剤および/または安定剤のうちの1つまたはそれ以上として役立つことができる。他の実施形態では、成分のいくつかが製剤中に必要とされる場合、異なる成分が使用される。例えば、製剤が、リオプロテクタント、等張化剤および安定剤を必要とする場合、異なる成分が使用される(例えば、スクロース、グリシンおよびイノシトールを組み合わせて使用して、それぞれ、リオプロテクタント、等張化剤および安定化剤の組合せをもたらすことができる)。
【0110】
好ましくは、タンパク質製剤は安定である。「安定な」製剤は、その中のタンパク質が、保存時にその物理的および化学的安定性ならびに完全性を本質的に保持する製剤である。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技術が当該技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery、247~301、Vincent Lee Ed.、Marcel Dekker,Inc.、New York、N.Y.、Pubs.(1991)、およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29~90(1993)において概説されている。安定性は、選択した期間、選択した温度で測定することができる。迅速なスクリーニングのために、製剤は、2週間~1ヵ月間、40℃で維持することができ、その時に安定性が測定される。製剤が2~8℃で保存される場合、一般に、製剤は、少なくとも1ヵ月間、30℃もしくは40℃で安定であるべきであるか、および/または少なくとも2年間、2~8℃で安定であるべきである。他の実施形態では、タンパク質製剤の安定性は、生物活性アッセイを使用して測定することができる。
【0111】
本発明のプロセスは、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、または任意の他の一般的に使用されるタンパク質精製技術のような、他のタンパク質精製方法と組み合わせて使用することができる。しかしながら、本発明のプロセスは、他の精製工程についての必要性を取り除くか、またはかなり減少させることが企図される。
【0112】
特定の実施形態では、本発明は、溶液からタンパク質を精製するための方法であって:
(a)第1の濾過工程と;
(b)第2の濾過工程と;
(c)沈殿、洗浄および再懸濁工程と;
(d)限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程と;
(e)場合により、製剤化および最終濾過工程と
を含み、前記タンパク質は5kDa~200kDaの間の分子量(MW)を有し、好ましくは前記タンパク質は、10kDaから150kDaの間、好ましくは12kDaから100kDaの間、さらにより好ましくは約12~15kDaのような12から30kDaの間のような12から45kDaの間、24~30kDa、36~45kDaまたは約20kDaのMWを有する、方法に関する。
【0113】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の濾過工程(a)は:(i)前記溶液を第1の膜に通して、前記タンパク質を含む第1の透過液を得る工程と;(ii)場合により、前記タンパク質を含む第1の透過液を濾過する工程であって、好ましくは前記第1の膜は、40kDaから100kDaの間、好ましくは40kDaから80kDaの間、さらにより好ましくは50kDaの公称分画分子量(NMWCO)の孔径を有する、第1の透過液を濾過する工程とを含む、方法に関する。第1の濾過工程において、第1の膜のNMWCOは、精製するタンパク質の公称分子量(NMW)より大きいことは理解されるであろう。
【0114】
目的のタンパク質を含む溶液は、第1の濾過工程に適用される場合、4~15g/Lのような好ましくは3~20g/L細胞培養液、または5~12g/Lもしくは6~10g/L、または7g/Lもしくは8g/Lもしくは9g/Lの細胞培養液である。
【0115】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の膜は、再生セルロース、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリ乳酸、セラミック、ポリエーテル-スルホン、修飾ポリエーテル-スルホン(mPES)、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含む、方法に関する。
【0116】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の濾過工程は、好ましくは、2または3透析濾過体積(DV)のような2~4DVの間で濾過することを含む、好ましくは、0.5~1.5bar、0.75~1.25barまたは約1.0barのような0.25~1.75barの間の膜間圧(TMP)で、好ましくは精製水を使用して、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)またはノーマルフロー濾過(NFF)、好ましくはTFFによって行われる、方法に関する。
【0117】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、60%~100%の間、またはさらに80%~100%の間のような、前記タンパク質の50%~100%の間が第1の透過液中に回収される、方法に関する。
【0118】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む前記第1の透過液は、前記溶液より85%少ない不純物のような、前記溶液より20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%またはさらに80%~100%少ない不純物のような、前記溶液より10%~100%少ない不純物を含む、方法に関する。
【0119】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質は、前記溶液と比較して前記第1の透過液中に20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%またはさらに80%~100%の間のような10%~100%の間で精製される、方法に関する。
【0120】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む前記第1の透過液は、好ましくは、1500L/mのような1000L~2000Lの間の第1の透過液体積/mで0.2μmフィルターを通して濾過され、場合により、72時間まで、室温(RT)で保存される、方法に関する。
【0121】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の濾過工程(a)は:(i)精製水を使用して約1barのTMPにてTFFにより2DVで前記溶液を第1の膜に通し、前記第1の膜は約50kDaのNMWCOの孔径を有し、mPESから作製され;前記タンパク質を含む第1の透過液を得る工程と;(ii)場合により、約1500Lの第1の透過液体積/mで、0.2μmフィルターを通して前記タンパク質を含む第1の透過液を濾過する工程とを含む、方法に関する。
【0122】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第2の濾過工程(b)は:(i)第2の膜を使用して工程(a)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の透過液を濃縮して、前記タンパク質を含む第1の保持液を得る工程と;(ii)場合により、前記タンパク質を含む第1の保持液を濾過する工程であって、好ましくは前記第2の膜は、4kDaから40kDaの間、6kDaから30kDaの間、8kDaから20kDaの間のような2kDaから50kDaの間、より好ましくは10kDaまたは15kDaの公称分画分子量(NMWCO)の孔径を有する、第1の保持液を濾過する工程とを含む、方法に関する。第2の濾過工程において、第2の膜のNMWCOは精製するタンパク質のNMWより小さいことは理解されるであろう。
【0123】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第2の膜は、再生セルロース、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリ乳酸、セラミック、ポリエーテル-スルホン、修飾ポリエーテル-スルホン(mPES)、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含む、方法に関する。
【0124】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第2の濾過工程は、好ましくは、1.0~1.5barのような0.75~1.75barの間または約1.25barの膜間圧(TMP)で、好ましくは精製水を使用してTFFまたはNFF、好ましくはTFFによって行われる、方法に関する。
【0125】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第1の保持液中のタンパク質は、75~175mg/mlのような50~200mg/mlの間、または約120~125mg/mlのような100~150mg/mlの間の濃度に濃縮される、方法に関する。
【0126】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、60%~100%の間、またはさらに80%~100%の間のような、前記タンパク質の50%~100%の間が第1の保持液中に回収される、方法に関する。
【0127】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む前記第1の保持液は、前記タンパク質を含む前記第1の透過液より20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、またはさらに80%~100%少ない不純物のような、前記タンパク質を含む前記1の透過液より10%~100%少ない不純物を含む、方法に関する。
【0128】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質は、前記第1の透過液中のタンパク質と比較して前記第1の保持液中に20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%のような10%~100%の間、またはさらに80%~100%の間で精製される、方法に関する。
【0129】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む前記第1の保持液は、好ましくは、10~75kgタンパク質/mの間、約25kg/mのような15~50kg/mで、0.2μmフィルターを通して濾過され、場合により、72時間まで室温(RT)で保存される、方法に関する。
【0130】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第2の濾過工程(b)は:(i)工程(a)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の透過液を、精製水を用いて約1.25barでTFFにより第2の膜を使用して約120~125mg/mlに濃縮し、前記第2の膜は約10kDaのNMWCOの孔径を有し、mPESから作製され、前記タンパク質を含む第1の保持液を得る工程と;(ii)場合により、約25kgタンパク質/mで0.2μmフィルターを通して前記タンパク質を含む第1の保持液を濾過する工程とを含む、方法に関する。
【0131】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記沈殿、洗浄および再懸濁工程(c)は:
(i)前記タンパク質を含む沈殿物が形成されるまで、工程(b)の終わりに得られた前記第1の保持液中に前記タンパク質を沈殿させる工程と;
(ii)前記タンパク質を含む前記沈殿物を洗浄する工程と;
(iii)工程(c)(ii)の終わりに得られた洗浄した沈殿物を再懸濁して、前記タンパク質を含む第2の保持液を得る工程と;
(iv)場合により、第3の膜を通して工程(c)(iii)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の保持液を濾過して、前記タンパク質を含む第2の透過液を得る工程と;
(v)場合により、前記タンパク質を含む第2の透過液を濾過する工程と
を含む、方法に関する。
【0132】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記沈殿させる工程(c)(i)、および/または前記洗浄する工程(c)(ii)、および/または前記再懸濁する工程(c)(iii)、および/または前記濾過する工程(c)(iv)は、TFFデバイスにおいて行われ、好ましくは全ての工程(c)(i)、(c)(ii)、(c)(iii)および(c)(iv)は、1つおよび同じデバイスにおいて行われ、前記TFFデバイスおよび前記NFFデバイスは前記第3の膜を含み、好ましくは第3の膜は、再生セルロース、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリ乳酸、セラミック、ポリエーテル-スルホン、mPES、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含み、より好ましくは前記第3の膜は、0.1~0.3μmのような0.05~0.35μmの間、または0.2μmのような0.15~0.25μmの間、好ましくは10~75kgタンパク質/mの間、約20または25kg/mのような15~50kg/mの孔径を有する、方法に関する。
【0133】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記沈殿させる工程は、混和性溶媒、非イオン性親水性ポリマー、Ca2+、Mg2+、Mn2+またはFe2+のような多価金属イオン、および中性塩、好ましくはコスモトロープ、最も好ましくは((NH(SO2-からなる群から選択される沈殿剤を含む沈殿溶液によって行われ、好ましくは前記沈殿させる工程は、1.6~2.0Mのような1.4~2.2M、好ましくは約1.8Mの((NH(SO2-で行われる、方法に関する。
【0134】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記沈殿させる工程は、沈殿物が形成されるまで、工程(b)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の保持液を溶液と混合することによって行われ、好ましくは前記溶液は前記第1の保持液に徐々に添加され、より好ましくは前記溶液は撹拌することによって前記第1の保持液と混合され、より好ましくは前記溶液は、3.0~3.2Mのような2.8~3.4Mの間、好ましくは約3.1Mの((NH(SO2-を含む、方法に関する。
【0135】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、沈殿物は、25~70mg/mlのような20~80mg/mlの間、または約50mg/mlのような30~60mg/mlの間の濃度を有する、方法に関する。
【0136】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(c)(ii)の前記タンパク質を含む前記沈殿物の洗浄は、沈殿溶液を洗浄溶液と置き換えることを含み、好ましくは4~6DVのような2~8DV、または5DVの洗浄溶液を用いて前記沈殿物を洗浄することを含む、方法に関する。
【0137】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記洗浄する工程(c)(ii)は、0.2~1.0bar、0.3~0.75barまたは約0.5barのような0.1~1.5barの間の膜間圧(TMP)で行われる、方法に関する。
【0138】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記洗浄溶液は、1.6~2.0Mのような1.4~2.2Mの間、好ましくは約1.8Mの濃度で沈殿剤を含み、好ましくは前記沈殿剤は((NH(SO2-であり、より好ましくは前記洗浄溶液は1.8Mの((NH(SO2-である、方法に関する。
【0139】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(c)(ii)の終わりに得られた洗浄した沈殿物は、0.7~0.5Mのような0.8~0.4Mの間、好ましくは約0.6Mの濃度で沈殿剤を含む再懸濁溶液中で再懸濁され、好ましくは前記沈殿剤は((NH(SO2-であり、より好ましくは前記再懸濁溶液は0.6Mの((NH(SO2-である、方法に関する。
【0140】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、60%~100%の間、またはさらに80%~100%の間のような、前記タンパク質の50%~100%の間が第2の透過液中に回収される、方法に関する。
【0141】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む前記第2の透過液は、前記第1の保持液より20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、またはさらに80%~100%少ない不純物のような、前記第1の保持液より10%~100%少ない不純物を含む、方法に関する。
【0142】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質は、前記第1の保持液と比較して前記第2の透過液中に20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%のような10%~100%の間、またはさらに80%~100%の間で精製される、方法に関する。
【0143】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記沈殿、洗浄および再懸濁工程(c)は、約20~25kg/mの孔径を有するmPESを含む第3の膜を含むTFFデバイスにおいて行われ、前記方法は:
(i)前記タンパク質を含む沈殿物が形成されるまで、工程(b)の終わりに得られた前記第1の保持液中に前記タンパク質を沈殿させる工程であって;前記沈殿させる工程は、沈殿物が形成されるまで、工程(b)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の保持液を3.1Mの((NH(SO2-と混合することによって行われ、前記((NH(SO2-は前記第1の保持液に徐々に添加され、約1.8Mの((NH(SO2-および50mg/mlのタンパク質の最終濃度が得られるまで、撹拌することによって前記第1の保持液と混合される、沈殿させる工程と;
(ii)約0.5barのTMPで約1.8Mの((NH(SO2-を含む5DVの洗浄溶液を用いて前記タンパク質を含む前記沈殿物を洗浄する工程と;
(iii)約0.6Mの((NH(SO2-の最終濃度(再懸濁溶液)まで精製水を添加することによって工程(c)(ii)の終わりに得られた洗浄した沈殿物を再懸濁して、前記タンパク質を含む第2の保持液を得る工程と;
(iv)場合により、前記第3の膜を通して工程(c)(iii)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の保持液を濾過して、前記タンパク質を含む第2の透過液を得る工程と
を含む、方法に関する。
【0144】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記(d)限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程は:
(i)工程(c)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の透過液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を得る工程と;
(ii)工程(d)(i)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を濃縮して、前記タンパク質を含む第3の保持液を得る工程と;
(iii)工程(d)(ii)の前記タンパク質を含む第3の保持液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第2の透析濾過液を得る工程と;
(iv)場合により、前記タンパク質を含む前記第2の透析濾過液を濾過する工程と
を含む、方法に関する。
【0145】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記透析濾過する工程(d)(i)、および/または濃縮する工程(d)(ii)、および/または前記透析濾過する工程(d)(iii)はTFFデバイスにおいて行われ、好ましくは全ての工程(d)(i)、(d)(ii)および(d)(iii)は1つおよび同じデバイスにおいて行われ、前記TFFデバイスおよび前記NFFデバイスは、第4の(UF)膜を含み、好ましくは前記透析濾過する工程(d)(i)、および/または濃縮する工程(d)(ii)、および/または前記透析濾過する工程(d)(iii)は、好ましくは、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、HEPES緩衝液のような一次緩衝液を用いて1.0~1.5barのような0.75~1.75barの間、または約1.2barの膜間圧(TMP)で行われ、好ましくは、一次緩衝液のpHは、約5、5.5、5.8~6.1、6、6.1、6.5または7のpHのような、約5~約7.5、約5.5~約7.2であり、好ましくは、一次緩衝液の濃度は、約5mM~約50mM、約5mM~約40mM、約5mM~約30mM、約10mM~約20mM、または約10mM、約20mM、もしくは約30mMである、方法に関する。他の実施形態では、製剤中の緩衝液は、約5mM~約50mM未満、約5mM~約40mM未満、約5mM~約30mM未満、約10mM~約20mM未満、または約10mM未満、約20mM未満、もしくは約30mM未満の濃度で存在するTris緩衝液であり、より好ましくは、一次緩衝液は20mMのクエン酸緩衝液、pH6.0である。
【0146】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記第4の(UF)膜は、再生セルロース、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリ乳酸、セラミック、ポリエーテル-スルホン、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、mPES、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含み、より好ましくは、前記第4の(UF)膜は、4kDaから40kDaの間、6kDaから30kDaの間、8kDaから20kDaの間のような2kDaから50kDaの間、より好ましくは10kDaまたは15kDaの公称分画分子量(NMWCO)の孔径を有する、方法に関する。UF/DF工程において、第4の(UF)膜のNMWCOは精製するタンパク質のNMWより小さいことは理解されるであろう。
【0147】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(c)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の透過液は、好ましくは一次緩衝液を用いて1透析濾過体積(DV)のような1~4DVの間で透析濾過される、方法に関する。
【0148】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記濃縮する工程(d)(ii)は、工程(d)(i)の終わりに得られた前記タンパク質を含む前記第1の透析濾過液を、前記一次緩衝液中で25~80mg/mlのような10~100mg/mlの間、または約50mg/mlもしくは55mg/mlのような40~60mg/mlの間の濃度で前記タンパク質を含む第3の保持液に濃縮することを含む、方法に関する。
【0149】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、工程(d)(ii)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第3の保持液は、好ましくは前記一次緩衝液を用いて、3~6のような1~8透析濾過体積(DV)、または4DVもしくは5DVで透析濾過される、方法に関する。
【0150】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む第3の保持液と比較して、60%~100%の間、またはさらに80%~100%の間、好ましくは、95%超のような90%超のような、前記タンパク質の50%~100%の間が前記第2の透析濾過液中に回収される、方法に関する。
【0151】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質を含む前記第2の透析濾過液は、好ましくは、15~60kg/m、20~50kg/mのような10~75kg/mの間、または約30kg/mもしくは40kg/mで0.2μmフィルターを通して濾過され、場合により、72時間まで室温(RT)で保存される、方法に関する。
【0152】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記UF/DF工程(d)は、一次緩衝液を用いて約1.2barのTMPにて約10kDaのNMWCOでmPESを含む第4の(UF)膜を含むTFFデバイスにおいて行われ、
(i)1DVの一次緩衝液を用いて、工程(c)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第2の透過液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を得;
(ii)前記一次緩衝液中で約50~55mg/mlまで、工程(d)(i)の終わりに得られた前記タンパク質を含む第1の透析濾過液を濃縮して、前記タンパク質を含む第3の保持液を得;
(iii)4または5DVの一次緩衝液を用いて工程(d)(ii)の前記タンパク質を含む第3の保持液を透析濾過して、前記タンパク質を含む第2の透析濾過液を得;
(iv)場合により、約30~40kg/mで0.2μmフィルターを通して前記タンパク質を含む前記第2の透析濾過液を濾過する、方法に関する。
【0153】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記製剤および最終濾過工程(e)は:
(i)工程(d)の終わりに得られた前記タンパク質を含む前記第2の透析濾過液を製剤化して、タンパク質製剤を得る工程と;
(ii)場合により、タンパク質製剤を濾過する工程と
を含む、方法に関する。
【0154】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記製剤化する工程(e)(i)は、前記タンパク質を含む前記第2の透析濾過液に賦形剤を添加する工程を含む、方法に関する。
【0155】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記賦形剤は、リオプロテクタント、界面活性剤、充填剤、等張化剤、安定剤および保存剤から選択される、方法に関する。
【0156】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質製剤は、
- 25~80mg/mlのような10~100mg/ml、または約50mg/mlもしくは55mg/mlタンパク質のような40~60mg/mlの間の濃度のタンパク質と;
- リン酸緩衝液、Tris緩衝液、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、HEPES緩衝液のような一次緩衝液であって、好ましくは一次緩衝液のpHは約5~約7.5であり、好ましくは一次緩衝液の濃度は約5mM~約50mMであり、より好ましくは一次緩衝液は20mMのクエン酸塩、pH6.0である、一次緩衝液と;
- 場合により、約1~12%の、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニンおよび塩酸アルギニンからなる群から選択される安定剤であって、好ましくはマンニトール、好ましくは10mg/mlである、安定剤と;
- 場合により、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80、ポリソルベート-85、ポロキサマー-188、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエートからなる群から選択される、約0.001%~0.6%の濃度の界面活性剤と
を含む、方法に関する。
【0157】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質製剤は、好ましくは、15~60kg/m、20~50kg/mのような10~75kg/mの間、または約30kg/mもしくは40kg/mで0.2μmフィルターを通して濾過される、方法に関する。
【0158】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質製剤は安定であり、168時間まで室温(RT)で、または-20℃で2年間まで、またはさらにより長い時間、保存することができる、方法に関する。
【0159】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質製剤は患者に投与される、方法に関する。
【0160】
ある特定の実施形態では、タンパク質製剤は、注射によって(例えば、皮下、血管内、筋肉内または腹腔内)、吸入によって、経口的に、または直腸的に対象に投与される。
【0161】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される溶液からタンパク質を精製するための方法であって、前記タンパク質製剤は凍結乾燥される、方法に関する。
【0162】
一実施形態では、本発明は、本発明のタンパク質製剤および場合により、使用するためのリーフレットを含むキットに関する。
【0163】
以下の実施例は、開示される方法およびその種々の使用の特定の実施形態の例示である。それらは例示目的のみのために示され、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0164】
6 実施例
この目的は、適切な品質を保持しながら、標準的なプロセスと比較してCoGが減少した、組換えにより発現され、分泌されたNanobodiesのための代替的およびロバストな精製プロセスを開発することであった。さらなる目的はプロセスのスケーラビリティであった。
【0165】
6.1 材料および方法
全てのタンジェンシャルフロー濾過(TFF)工程に関して、Sartorius製のSartoflow(登録商標)SMARTシステム(2L発酵槽相当)およびSartoJet(登録商標)ポンプセットアップ(10Lおよび100L発酵槽相当)を使用した。
【0166】
特に明記しない限り、全ての工程は室温(RT)で実行した。
【0167】
全ての分析は、以下を含む、当業者によって公知の慣例的な方法を使用して社内で実行した:
- OD280測定:NanoDrop ND-1000分光光度計(NanoDrop(商標)1000)での280nm吸光度測定によるタンパク質濃度決定。
- DNA測定は、精製サンプル中の残留宿主細胞DNAの検出および定量のためのqPCRベースのアッセイによって行った。
- SE-HPLC:サイズ排除高速液体クロマトグラフィーによるALX-Nanobody(登録商標)の純度アッセイ。
- PA-HPLC:ALX-Nanobody(登録商標)の濃度決定のためのプロテインAアフィニティー高速液体クロマトグラフィー(PA-HPLC)アッセイ。
【0168】
6.2 出発材料
出発材料は、本質的にいずれかに記載されているピキア・パストリスによって発現され、分泌されたALX-Nanobodyを含有する細胞培養液であった(Joostenら、2003 Microb Cell Fact.30:1、Rahbarizadehら、2006 Mol Immunol.43:426~435)。標的最終濃度は9g/L細胞培養液であった(PA-HPLCにより測定した)。ALX-Nanobodyは、1つのVHHを含み、13.4kDaの分子量を有する一価ポリペプチドであった(非還元状態)。
【0169】
6.3 第1の濾過工程(清澄化)
第1の濾過工程(透析濾過)の目的は、分泌された標的製品からピキア・パストリス宿主細胞を分離し、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNAおよび色のようなプロセス関連不純物ならびに高分子量(HMW)夾雑物のような製品関連バリアントのレベルを減少させることであった(清澄化)。
【0170】
Sartorius製のSartoflow SMARTシステム(2L発酵槽相当)およびSartoJetポンプセットアップ(10Lおよび100L発酵槽相当)を使用した。TFF膜は、50kDaのNMWCOの孔径を有するmPES中空繊維フィルターモジュール(Spectrum Labs)であった。精製水を、出発材料のpH調整または伝導率調整をせずに、第1の濾過工程に使用した。
【0171】
膜を精製水、続いて細胞培養液でプライミングした後、透過液バルブを開き、膜間圧(TMP)を1barに調整した。第1の濾過工程を、2DV(透析濾過体積)の精製水を用いて実行した。
【0172】
通常、PA-HPLCによって測定して、製品の80%超を(第1の)透過液中に回収した。
【0173】
ALX-Nanobodyを保存する場合、0.45/0.2μmのSartopore(登録商標)2フィルター(Sartorius)を使用して、濾過工程を実行した。この濾過工程の後、濾液をRTで72時間まで保存した。
【0174】
6.4 第2の濾過工程(濃縮工程)
第2の濾過工程(限外濾過)の目的は2つあった。第1に、この工程を使用して透過液を120±10mg/mlの標的濃度まで濃縮した。第2に、この工程を使用して種々の小さな不純物の量を減少させた。
【0175】
Sartorius製のSartoflow SMARTシステム(2L発酵槽相当)およびSartoJetポンプセットアップ(10Lおよび100L発酵槽相当)を操作した。第2の濾過工程に関して、TFF膜は、10kDaの孔径(Sartocon(登録商標)Sliceカセット;Sartorius Stedim)を有する中空繊維フィルターモジュール(Hydrosart(登録商標))であった。また、精製水を、再び、出発材料のpH調整または伝導率調整をせずに、第2の濾過工程に使用した。ロード量は、膜表面積1mあたり0.7~1kgのALX-Nanobodyであった。
【0176】
膜を水、続いて第1の透過液でプライミングした後、透過液バルブを開き、TMPを1.25barに調整した。120±10mg/ml(総タンパク質)の濃度に達したとき、ALX-Nanobodyを含む第1の保持液を収集した。
【0177】
概して、PA-HPLCによって測定して、製品の100%を第1の保持液中に回収した。
【0178】
ALX-Nanobodyを保存する場合、0.45/0.2μmのSartopore 2フィルター(Sartorius)を使用して濾過工程を実行した。この濾過工程の後、濾液を室温で72時間まで保存した。
【0179】
6.5 沈殿、洗浄および再懸濁工程
沈殿、洗浄および再懸濁工程の目的は、ALX-Nanobodyを沈殿させ、沈殿物を洗浄し、プロセス関連不純物(例えば、細胞壁由来成分)を再懸濁し、0.2μmの孔径を有する膜を通した濾過により減少させながら、ALX-Nanobody(登録商標)を沈殿させたままにすることであった。特に、沈殿物は膜を通過することができなかった。次に、ALX-Nanobodyの再懸濁を精製水での希釈によって実行し、その後、可溶性ALX-Nanobodyを、全ての残存する固体不純物を保持しながら、前記膜を通して濾過した。
【0180】
沈殿、洗浄および再懸濁工程は全て、Sartorius製のSartoflow SMARTシステム(2L発酵槽相当)およびSartoJetポンプセットアップ(10Lまたは410L発酵槽相当)において実行した。
【0181】
沈殿は、1.8Mの硫酸アンモニウムおよび約50mg/mLのタンパク質濃度の最終濃度を目標とする3.1Mの硫酸アンモニウム((NHSO)のストック溶液の添加によって実行した。3.1Mの硫酸アンモニウムストック溶液を、沈殿が形成されるまで、RTで穏やかに撹拌しながら徐々に添加した。
【0182】
沈殿後、沈殿物を室温で2時間~24時間まで保存した。
【0183】
TFF膜、すなわち、0.2μmの孔径(Sartocon Sliceカセット;Sartorius Stedim)を有するカセットフィルターモジュール(Hydrosart)、および膜表面積1mあたり0.6~0.8kgのALX-Nanobodyのロード量を使用して洗浄工程を実行した。
【0184】
5DVの1.8Mの硫酸アンモニウムを用いて透析濾過を行った。
【0185】
ALX-Nanobody沈殿物(第2の保持液)を再懸濁するために、精製水を添加して0.6Mの硫酸アンモニウムの最終濃度に到達させた。続いて、再懸濁した可溶性ALX-Nanobodyを含む第2の保持液を、膜(孔径0.2μm)を通して濾過し、第2の透過液を得た。
【0186】
概して、沈殿、洗浄、再懸濁および濾過(第2の透過物)後、PA-HPLCによって測定して、タンパク質の75%~80%超を回収した。
【0187】
直ちに処理を計画しなかったとき、0.6Mの硫酸アンモニウムの第2の透過液サンプルを、0.45/0.2μmのSartopore 2フィルター(Sartorius)を通して濾過した。この濾過工程の後、濾液をRTで72時間まで保存した。
【0188】
6.6 限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程
UF/DF工程の目的は製品を濃縮し、0.6Mの硫酸アンモニウム緩衝液を一次緩衝液と交換することであった。
【0189】
UF/DF工程は、上記のSartorius製のSartoflow SMARTシステム(2L発酵槽相当)およびSartoJetポンプセットアップ(10Lおよび100L発酵槽相当)で行った。TFF膜は、10kDaのカットオフ(HydroSart)を有するカセットフィルターモジュール(Sartocon Sliceカセット、Sartorius Stedim製)であった。一次緩衝液は20mMのクエン酸塩、pH6.0であった。
【0190】
膜を水、続いて工程6.5の第2の透過液でプライミングした後、透過液バルブを開き、膜間圧(TMP)を1.2barに調整した。第1のDF工程は、1DVの一次緩衝液(ALX-Nanobodyを含む第1の透析濾過液)を用いて実行した。次に、ALX-Nanobodyが55mg/mlの濃度(第3の保持液)に達するまでUF工程を完了した。続いて、第2のDF工程を、4DVの一次緩衝液(ALX-Nanobodyを含む第2の透析濾過液)を用いて実行した。
【0191】
通常、PA-HPLCによって測定して、少なくとも50mg/mlの濃度でALX-Nanobodyの98%超を回収した。
【0192】
ALX-Nanobodyを保存する場合、0.45/0.2μmのSartopore 2フィルター(Sartorius)を使用して濾過工程を実行した。この濾過工程の後、濾液をRTで72時間まで保存した。
【0193】
6.7 製剤化および最終濾過工程
沈殿および濾過工程のみを必要とする、一般的および単純化された精製プロセスは上記されており、それらは全て同じ装置で行った。最終製品は一次緩衝液中の精製タンパク質であったが、さらなる賦形剤は含まなかった。
【0194】
しかしながら、例えば、保存、投与の容易さ、凍結乾燥などのような種々の理由のために、最終製剤は、UF/DF工程に影響を及ぼしてもよいか、または及ぼさなくてもよい賦形剤を必要とし得る。製剤化および最終濾過工程は本発明の精製方法の明確な部分ではないが、本発明の精製プロセスに別の製剤化工程を加えることは、一方で、前述の精製プロセス方法の一般性を促進し、他方で、最終製剤を調整する可能性を開く。
【0195】
この場合、ALX-Nanobody20mg/mlが得られるまで、20mMのクエン酸緩衝液、pH6.0中のALX-Nanobody50mg/mlを、RTでの連続撹拌下でマンニトール16.6mg/ml(pH6.0の20mMのクエン酸緩衝液中)で希釈した。
【0196】
Sartopore 2フィルター(Sartorius)での0.45/0.2μmの無菌濾過工程を標準条件下で実行した。バルク液体精製ALX-Nanobodyを-20℃以下で保存した。さらに、液体精製ALX-Nanobodyは、濾過後、RTで168時間より長い間、活性を喪失することなく保存できることが示された。
【0197】
通常、PA-HPLCによって測定して、製品の96%超を回収した。
【0198】
6.8 クロマトグラフィーを含まないDSPのケーススタディーの結論
上記は、記載される一般的および単純化された精製手順であり、クロマトグラフィー工程を使用する従来のDSPプロセスに匹敵する製品の品質で、溶液中のタンパク質の出発量と比較して少なくとも62%の最終プロセス回収率を得た。HCP含有量のみがわずかに高いが、種々の目的について許容される基準内である。
【0199】
6.9 スケーラビリティ(MIP試行)
上記の精製プロセスは10Lスケールで実行した。精製プロセスのスケーラビリティを評価し、CMOへの効率的かつ首尾よい移行を確実にするために、100L発酵スケールでのMan-in-Plant(MIP)試行を行った。さらに、2000Lの試行を実行した。
【0200】
本質的に、上記の精製プロセスを、より大きなスケールではあるが、繰り返した。
【0201】
6.9.1 出発材料
清澄化のための出発材料はALX-Nanobodyを含有するおよそ109Lの細胞培養液であり、これは最小培地中でピキア・パストリスによって発現され、分泌された。発酵槽の最終濃度は9.1g/L細胞培養液(11.9g/L無細胞)であった(PA-HPLC法により測定した)。
【0202】
出発材料のpHまたは伝導率の調整は実行しなかった。
【0203】
6.9.2 第1の濾過工程
第1の濾過工程は上記の通りであったが、ここで、MIP試行の清澄化工程のために使用した中空繊維は、フィルター高さ65cmを有するSpectrumLabs製の表面積5100cmを有するMiniKros膜NO6-EO50-10-Nであった。
【0204】
透析濾過体積の有効性を評価するために、(i)2DV、すなわち以前に記載した通り;および(ii)3DVを使用して2つのモードを試験した。
【0205】
2DVおよび3DVの両方は本質的に同じ結果をもたらした。
【0206】
6.9.3 第2の濾過工程
第2の濾過工程は、使用したフィルターを含めて、本質的に上記の通りであった。
【0207】
6.9.4 沈殿、洗浄および再懸濁工程
沈殿、洗浄および再懸濁工程は、使用したフィルターを含めて、本質的に上記の通りであった。
【0208】
6.9.5 UF/DF工程
UF/DF工程は、使用したフィルターを含めて、本質的に上記の通りであった。得られたALX-Nanobodyの濃度は52mg/mLであった。
【0209】
6.9.6 製剤化および最終濾過工程
製剤化工程は、マンニトール10mg/mLの最終濃度に達するようにマンニトール16.3mg/mlのストック濃度を使用したことを除いて本質的に上記の通り実行した。
【0210】
6.10 品質分析
MIP試行の間、液体精製ALX-Nanobody(登録商標)(「第2の透析濾過液」)の最終的に得られた濃度は19.4mg/mLであった。異なるプロセス工程の回収率は77~100%の範囲であり、63%の全体のプロセス回収率を得た。
【0211】
6.10.1 RP-UHPLC
RP-UHPLCを、MIP試行から得た中間体および最終サンプルの特徴付けのために使用した。この方法は、存在する場合、製品関連バリアント、対になっていないシステインバリアントおよびカルバミル化バリアントについての限界試験として適格とされている。S-Sを欠くバリアント(missing S-S variant)およびカルバミル化バリアントの相対量は、全表面積のものに対してRP-UHPLCカラムから溶出したそれぞれのピークのピーク後表面積を測定することによって決定した(%として表す)。
【0212】
逆相超高速液体クロマトグラフィー(RP-UHPLC)分析により、液体精製ALX-Nanobodyが0.6%のS-Sを欠くバリアントおよび1.8%のカルバミル化バリアントを含有することが示された。
【0213】
6.10.2 SE-HPLC
SE-HPLCを使用して、精製プロセスの異なる中間工程および最終製品についてALX-Nanobodyの高分子量(HMW)種のレベルをモニターした(図1)。さらに、インタクトなALX-Nanobody(主ピーク)および低分子量(LMW、タンパク質分解、ピーク後として存在する)も検出することができた。
【0214】
MIP試行からの中間体および最終サンプルのSE-HPLC分析により、精製プロセスの間に、濾過された10kDの限外濾過保持液についての5.1%から最終的な液体精製ALX-Nanobodyについての3.1%へのHMW種の減少(プレピーク%)が示された。MIP試行の異なるサンプルの異なるSE-HPLC分析のオーバーレイを図1に示す。
【0215】
6.10.3 CE-IEF製品分析
MIP試行からの異なる中間体サンプルおよび最終的な液体精製ALX-Nanobodyを、キャピラリー等電点電気泳動(CE-IEF)によって分析して、酸性バリアントおよび塩基性バリアントのような製品関連バリアントのレベルを決定した。
【0216】
MIP試行の中間体サンプルのCE-IEF分析により、精製プロセスの間に酸性バリアントのパーセンテージの減少が示された。塩基性バリアントのパーセンテージは既に低く(1~1.2%)、限界クリアランス(0.6%)のみを示した。他方で酸性バリアントのパーセンテージは、液体精製ALX-Nanobodyにおいて19.8~22.7%から3.4%に低下した。
【0217】
6.10.4 有効性分析
MIP試行の液体精製ALX-Nanobodyの有効性を、適格な細胞ベースの機能的有効性アッセイにおいて評価した。
【0218】
最終的な液体精製ALX-Nanobodyは108%の相対有効性を有した。
【0219】
6.10.5 還元CGEによる純度
MIP試行からの異なる中間体および最終液体精製ALX-Nanobodyサンプルの純度を、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)によって分析した。この方法は電荷を帯びた製品関連バリアントの存在について試験した。
【0220】
異なるサンプルについてのCGE積分データ(主ピーク%)の概要を表1に示す。
【0221】
【表1】
【0222】
6.11 一般的結論
この精製プロセス(10L、100Lおよび2000L発酵スケール)によって得られた結果は、これに関してロバスト性を実証した(特に、プロセスは本質的に同じ結果で既に何度も繰り返されている)。これらの結果に基づいて、プロセスをロックし、GMP準拠の原薬(DS)製造に適しているとみなした。
【0223】
記載される精製プロセスは、63%の下流のプロセス回収率範囲をもたらし、HCP、マンナン、DNA、色のようなプロセス関連不純物、およびHMW種のような製品関連バリアントを減少させた。
【0224】
表2に、クロマトグラフィーを含む標準的な従来の下流プロセス(DSP)精製方法および本発明のクロマトグラフィーを含まないDSP精製方法を使用したタンパク質品質の比較を提供する。
【0225】
本発明の精製プロセスは一価Nanobodies(12~15kDaの間の分子量)について広範に試験されているが、二価Nanobodies(24~30kDaの間の分子量を含む)および三価Nanobodies(36~45kDaの間の分子量を含む)について同様に使用することができる。一価Nanobodiesについてと同様の条件を二価および三価Nanobodiesについて使用することができる。それにもかかわらず、必要と考えられる場合、二価および三価Nanobodiesについて本発明のプロセスをさらに最適化するための適合は標準的な実務である。
【0226】
本発明のプロセスは、従来のクロマトグラフィープロセスより高いプロセス回収率および有意に低い商品原価を有する。100Lスケールで従来のDSPを本発明の精製プロセスと比較すると、コストの86%の減少が達成されたが、品質は適正であった。
【0227】
【表2】
図1