(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20241011BHJP
H01S 5/42 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/42
(21)【出願番号】P 2021563805
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042261
(87)【国際公開番号】W WO2021117411
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019223552
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義彦
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225630(JP,A)
【文献】特開2015-177000(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107273(WO,A1)
【文献】特開平10-209565(JP,A)
【文献】特開平05-110202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0319429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記第1
の多層膜反射鏡の側面の一部が露出するまでエッチングして第1のメサ構造を形成する工程と、
前記第1のメサ構造及び該第1のメサ構造に隣接する領域に絶縁膜を成膜する工程と、
前記隣接する領域に成膜された前記絶縁膜を除去する工程と、
前記隣接する領域から、前記第1のメサ構造の、前記第1
の多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部まで不純物を拡散させる工程と、
さらに前記積層体を少なくとも前記第1の多層膜反射鏡の側面の他部が露出するまでエッチングして前記第1のメサ構造に代わる第2のメサ構造を形成する工程と、
前記第2のメサ構造に隣接する領域上に電極を設ける工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法。
【請求項2】
前記積層体を生成する工程では、前記基板上に前記第1の多層膜反射鏡を積層する前に前記基板上にコンタクト層を積層し、
前記第2のメサ構造を形成する工程では、前記第1のメサ構造が形成された前記積層体を少なくとも前記コンタクト層が露出するまでエッチングする、請求項
1に記載の面発光レーザの製造方法。
【請求項3】
基板上に少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記第1
の多層膜反射鏡の側面の少なくとも一部が露出するまでエッチングしてメサ構造を形成する工程と、
前記メサ構造及び該メサ構造に隣接する領域に絶縁膜を成膜する工程と、
前記隣接する領域に成膜された前記絶縁膜を除去する工程と、
前記隣接する領域から、前記メサ構造の、前記第1の多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部まで不純物を拡散させる工程と、
前記隣接する領域上に電極を設ける工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法。
【請求項4】
前記積層体を生成する工程では、前記基板上に前記第1の多層膜反射鏡を積層する前に前記基板上にコンタクト層を積層し、
前記メサ構造を形成する工程では、前記積層体を少なくとも前記コンタクト層が露出するまでエッチングする、請求項
3に記載の面発光レーザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に係る技術(以下「本技術」とも呼ぶ)は、面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板と該基板上に形成されたメサ構造とを有する面発光レーザが知られている。
例えば特許文献1には、メサ構造に隣接する、電極と接触するコンタクト領域に不純物が高濃度にドーピングされた面発光レーザが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている面発光レーザでは、コンタクト領域の上方の位置(コンタクト領域よりも基板から離れた位置)に積層される層の結晶性の悪化を抑制しつつ活性層に効率良く電流を注入することができなかった。
【0005】
そこで、本技術は、コンタクト領域の上方に積層される層の結晶性の悪化を抑制しつつ活性層に効率良く電流を注入することができる面発光レーザ、該面発光レーザが2次元配列された面発光レーザアレイ及び面発光レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、基板と、
前記基板上に形成されたメサ構造と、
を備え、
前記メサ構造は、
前記基板上に積層された第1の多層膜反射鏡の少なくとも一部と、
前記第1の多層膜反射鏡上に積層された活性層と、
前記活性層上に積層された第2の多層膜反射鏡と、
を含み、
前記メサ構造に隣接する、電極と接触するコンタクト領域と、前記メサ構造の、前記第1の多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部と、に跨って不純物領域が設けられている、面発光レーザを提供する。
前記不純物領域は、前記コンタクト領域から前記側壁部にかけて連続していてもよい。
前記メサ構造は、前記第1の多層膜反射鏡の全体を含み、前記コンタクト領域は、前記基板の一部を含んでいてもよい。
前記メサ構造は、前記第1の多層膜反射鏡の底部以外の部分を含み、前記コンタクト領域は、前記第1の多層膜反射鏡の前記底部の一部を含んでいてもよい。
前記メサ構造は、前記第1の多層膜反射鏡の全体を含み、前記基板と前記第1の多層膜反射鏡との間に配置されたコンタクト層を更に備え、前記コンタクト領域は、前記コンタクト層の一部を含んでいてもよい。
前記コンタクト領域は、前記基板の一部を含んでいてもよい。
前記コンタクト層の厚さが1μm以下であってもよい。
前記不純物領域の不純物濃度は、5x1019cm-3未満であってもよい。
前記メサ構造の、前記コンタクト領域に対して前記電極が配置される側と同じ側の面に別の電極が接触してもよい。
前記基板は、半絶縁性基板又は低ドープ基板であってもよい。
前記面発光レーザは、前記基板の、前記メサ構造側とは反対側へ光を出射するものであってもよい。
前記面発光レーザは、AlGaAs系化合物半導体又はGaN系化合物半導体が用いられていてもよい。
前記面発光レーザは、前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間に配置された電流狭窄層を更に備えていてもよい。
前記第1及び第2の多層膜反射鏡の少なくとも一方は、半導体多層膜反射鏡であってもよい。
前記第1及び第2の多層膜反射鏡の少なくとも一方は、誘電体多層膜反射鏡であってもよい。
本技術は、前記面発光レーザが2次元配列されている面発光レーザアレイも提供する。
本技術は、前記面発光レーザアレイを備える電子機器も提供する。
本技術は、基板上に少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記第1多層膜反射鏡の側面の一部が露出するまでエッチングして第1のメサ構造を形成する工程と、
前記第1のメサ構造及び該第1のメサ構造に隣接する領域に絶縁膜を成膜する工程と、
前記隣接する領域に成膜された前記絶縁膜を除去する工程と、
前記隣接する領域から、前記第1のメサ構造の、前記第1多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部まで不純物を拡散させる工程と、
さらに前記積層体を少なくとも 前記第1の多層膜反射鏡の側面の他部が露出するまでエッチングして前記第1のメサ構造に代わる第2のメサ構造を形成生成する工程と、
前記第2のメサ構造に隣接する領域上に電極を設ける工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法も提供する。
前記積層体を生成する工程では、前記基板上にと前記第1の多層膜反射鏡を積層する前に前記基板上にとの間にコンタクト層を積層し、前記第2のメサ構造を形成する工程では、前記第1のメサ構造が形成された前記積層体を少なくとも前記コンタクト層が露出するまでエッチングしてもよい。
本技術は、基板上に少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記第1多層膜反射鏡の側面の少なくとも一部が露出するまでエッチングしてメサ構造を形成する工程と、
前記メサ構造及び該メサ構造に隣接する領域に絶縁膜を成膜する工程と、
前記隣接する領域に成膜された前記絶縁膜を除去する工程と、
前記隣接する領域から、前記メサ構造の、前記第1の多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部まで不純物を拡散させる工程と、
前記隣接する領域上に電極を設ける工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法も提供する。
前記積層体を生成する工程では、前記基板上にと前記第1の多層膜反射鏡を積層する前に前記基板上にとの間にコンタクト層を積層し、前記メサ構造を形成する工程では、前記積層体を少なくとも前記コンタクト層が露出するまでエッチングしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの構成例を示す断面図である。
【
図2】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例を説明するためのフローチャートの前半である。
【
図3】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例を説明するためのフローチャートの後半である。
【
図4】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その1)である。
【
図5】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その2)である。
【
図6】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その3)である。
【
図7】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その4)である。
【
図8】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その5)である。
【
図9】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その6)である。
【
図10】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その7)である。
【
図11】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その8)である。
【
図12】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その9)である。
【
図13】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その10)である。
【
図14】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その11)である。
【
図15】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その12)である。
【
図16】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その13)である。
【
図17】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その14)である。
【
図18】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その15)である。
【
図19】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その16)である。
【
図20】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その17)である。
【
図21】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その18)である。
【
図22】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その19)である。
【
図23】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その20)である。
【
図24】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例の工程毎の断面図(その21)である。
【
図25】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例を説明するためのフローチャートの前半である。
【
図26】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例を説明するためのフローチャートの後半である。
【
図27】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その1)である。
【
図28】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その2)である。
【
図29】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その3)である。
【
図30】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その4)である。
【
図31】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その5)である。
【
図32】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その6)である。
【
図33】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その7)である。
【
図34】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その8)である。
【
図35】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その9)である。
【
図36】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その10)である。
【
図37】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その11)である。
【
図38】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その12)である。
【
図39】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その13)である。
【
図40】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その14)である。
【
図41】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その15)である。
【
図42】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その16)である。
【
図43】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その17)である。
【
図44】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例の工程毎の断面図(その18)である。
【
図45】本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザの構成例を示す断面図である。
【
図46】本技術の第3の実施形態に係る面発光レーザの構成例を示す断面図である。
【
図47】本技術の第1実施形態の変形例1に係る面発光レーザの構成例を示す断面図である。
【
図48】本技術の第1実施形態の変形例2に係る面発光レーザの構成例を示す断面図である。
【
図49】本技術の第1実施形態の変形例3に係る面発光レーザの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照しながら、本技術の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。本明細書において、本技術に係る面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法の各々が複数の効果を奏することが記載される場合でも、本技術に係る面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法の各々は、少なくとも1つの効果を奏すればよい。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0009】
また、以下の順序で説明を行う。
1.本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザ
(1)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの構成
(2)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例
(3)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例
(4)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの作用
(5)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの効果
2.本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザ
3.本技術の第3の実施形態に係る面発光レーザ
4.本技術に係る面発光レーザの変形例
5.本技術を適用した面発光レーザの使用例
電子機器への応用例
【0010】
1.<本技術の第1実施形態に係る面発光レーザ>
・ 面発光レーザの構成
図1は、本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザ10の構成例を示す断面図である。以下では、便宜上、
図1等の断面図における上方を上、下方を下として説明する。
面発光レーザ10は、
図1に示すように、基板100と、該基板100上に形成されたメサ構造200と、を備えている。なお、
図1上図は、面発光レーザ10のメサ構造200に対応する領域の平面図である。
【0011】
以下では、複数の面発光レーザ10が2次元配列された面発光レーザアレイを構成している場合を例にとって説明する。
この場合には、複数の面発光レーザ10間で少なくとも基板100を共有し、共通の基板100上に複数のメサ構造200が2次元配列された状態となっている。
【0012】
面発光レーザ10は、一例として、基板100の、メサ構造200側とは反対側へ光を出射する。すなわち、面発光レーザ10は、一例として、基板100の裏面側(下面側)へレーザ光を出射する裏面出射型の面発光レーザである。
【0013】
基板100は、一例として、第1導電型(例えばp型)のGaAs基板である。
ここで、基板100は、後述するようにレーザ共振器を構成するメサ構造200の出射側に位置するため、光吸収性の低い基板(光出力の低下を抑制できる基板)、例えば半絶縁性基板又は低ドープ基板(不純物濃度が低い基板)であることが好ましい。
半絶縁性基板とは、ヒ化ガリウムやリン化インジウム等の化合物半導体を材料とする、不純物を含まない(ドーピングされていない)基板であって、高抵抗(比抵抗:数MΩ/□)を示す基板をいう。半絶縁性基板は、高い電子移動度を持っているだけでなく、高抵抗を示すためリーク電流や対地容量を抑えることも可能である。
そこで、基板100として、例えば第1導電型のGaAs基板の中でも、特に、半絶縁半絶縁性基板又は低ドープ基板を用いることが好ましい。
【0014】
メサ構造200は、基板100上に積層された第1の多層膜反射鏡200aと、第1の多層膜反射鏡200a上に積層された活性層200bと、該活性層200b上に積層された第2の多層膜反射鏡200cと、を含む。
第1の多層膜反射鏡200aと活性層200bと第2の多層膜反射鏡200cとを含んで、レーザ共振器が構成される。
メサ構造200は、例えば略円柱形状であるが、例えば略楕円柱形状、多角柱形状等の他の柱形状であってもよい。
【0015】
第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200cは、一例として、いずれも半導体多層反射鏡である。多層膜反射鏡は、分布型ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector)とも呼ばれる。多層膜反射鏡(分布ブラッグ反射鏡)の一種である半導体多層膜反射鏡は、光吸収が少なく、高反射率及び導電性を有する。
【0016】
第1の多層膜反射鏡200aは、一例として、第1導電型(例えばp型)の半導体多層膜反射鏡であり、屈折率が互いに異なる複数種類(例えば2種類)の半導体層が発振波長の1/4波長の光学厚さで交互に積層された構造を有する。第1の多層膜反射鏡200aの各屈折率層は、第1導電型(例えばp型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。
【0017】
活性層200bは、例えばAlGaAs系化合物半導体からなる障壁層及び量子井戸層を含む量子井戸構造を有する。この量子井戸構造は、単一量子井戸構造(QW構造)であってもよいし、多重量子井戸構造(MQW構造)であってもよい。
【0018】
第2の多層膜反射鏡200cは、一例として、第2導電型(例えばn型)の半導体多層膜反射鏡であり、屈折率が互いに異なる複数種類(例えば2種類)の半導体層が発振波長の1/4波長の光学厚さで交互に積層された構造を有する。第2の多層膜反射鏡200cの各屈折率層は、第2導電型(例えばn型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。
【0019】
さらに、メサ構造200は、第1の多層膜反射鏡200aと活性層200bとの間に配置された電流狭窄層200dを含む。
電流狭窄層200dは、一例として、第1導電型(例えばn型)のAlAsからなる非酸化領域200d1と、その周囲を取り囲むAlAsの酸化物(例えばAl2O3)からなる酸化領域200d2を有する。
【0020】
メサ構造200及びメサ構造200に隣接する領域(隣り合うメサ構造200間の領域)は、一部を除いて一連の絶縁膜250で覆われている。絶縁膜250は、例えばSiO2、SiN、SiON等からなる。
メサ構造200の頂部(より詳細には第2の多層膜反射鏡200cの上面)上の絶縁膜250には、コンタクトホールCH2が形成されており、該コンタクトホールCH2にカソード電極300がメサ構造200の頂部に接触するように設けられている。
【0021】
カソード電極300は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
カソード電極300は、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Ni、Ti、V、W、Cr、Al、Cu、Zn、Sn及びInからなる群から選択された少なくとも1種類の金属(合金を含む)によって構成されている。
カソード電極300が積層構造である場合は、例えばTi/Au、Ti/Al、Ti/Al/Au、Ti/Pt/Au、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Pt、Pd/Pt、Ag/Pd等の材料で構成される。
【0022】
さらに、メサ構造200は、一例として、基板100と第1の多層膜反射鏡200aとの間に配置されたGaAs系の材料からなるコンタクト層400を含む。コンタクト層400は、複数の面発光レーザ10間で共有されている。
コンタクト層400は、レーザ共振器を構成するメサ構造200の出射側に位置する。このため、コンタクト層400の厚さは、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。コンタクト層400の厚さが1μm以下であることにより、コンタクト層400での光吸収を低減でき、ひいては光出力の低下を抑制できる。
【0023】
さらに、メサ構造200は、一例として、コンタクト層400と第1の多層膜反射鏡200aとの間に配置されたエッチング停止層500を有する。エッチング停止層500は、複数の面発光レーザ10間で共有されている。
エッチング停止層500の上部は、メサ構造200の底部を構成する。
【0024】
基板100上における隣り合うメサ構造200間の領域(該メサ構造200に隣接する部分)は、絶縁膜250で覆われていない領域であるコンタクトホールCH1の底面を含んで構成され、アノード電極600と接触するコンタクト領域CAを含む。
コンタクト領域CAは、基板100の一部及びコンタクト層400の一部を含む。
【0025】
アノード電極600は、例えばコンタクト領域CA上、すなわちコンタクトホールCH1内にコンタクト層400に接触するように設けられている。
アノード電極600は、複数のメサ構造200に沿ってパターンニングされた金属配線700により、面発光レーザアレイの周辺に配置された電極パッド(不図示)と接続されている。
アノード電極600は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
アノード電極600は、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Ni、Ti、V、W、Cr、Al、Cu、Zn、Sn及びInからなる群から選択された少なくとも1種類の金属(合金を含む)によって構成されている。
アノード電極600が積層構造である場合は、例えばTi/Au、Ti/Al、Ti/Al/Au、Ti/Pt/Au、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Pt、Pd/Pt、Ag/Pd等の材料で構成される。
【0026】
メサ構造200の、コンタクト領域CAに対してアノード電極600が配置される側と同じ側の面にカソード電極300が接触している。
【0027】
コンタクト領域CAと、メサ構造200の、第1の多層膜反射鏡200aで構成される部分の側壁部200a1と、に跨って不純物領域800(
図1における薄い黒塗りの部分)が設けられている。本明細書中、「不純物領域」は、他の領域(少なくとも周辺の領域)よりも不純物濃度が高い領域(高濃度不純物領域)を意味する。
詳述すると、不純物領域800は、コンタクト領域CAと、側壁部200a1と、コンタクト領域CAと側壁部200a1との間の領域とを含む。
【0028】
不純物領域800は、コンタクト領域CAから側壁部200a1にかけて連続している。すなわち、不純物領域800は、アノード電極600から第1の多層膜反射鏡200aまでの電流経路を含む。
不純物領域800は、一例としてメサ構造200の周方向の全域に亘って連続して形成されている。なお、不純物領域800は、メサ構造200の周方向の一部に不連続部分(断続部分)を有していてもよい。
側壁部200a1は、
図1に示すように、メサ構造200の、第1の多層膜反射鏡200aで構成される部分の光導波路を形成する領域(電流狭窄層200dの非酸化領域200d1に対応する領域)の外側の部分であることが好ましい。
【0029】
不純物領域800は、例えばZn等の金属、ベリリウムイオン等のイオンを含んで構成されている。
不純物領域800は、コンタクト領域CAから側壁部200a1にかけて連続している。なお、不純物領域800は、コンタクト領域CAと側壁部200a1との間で不連続部分(断続部分)を有していてもよい。
不純物領域800の不純物濃度は、5x1019cm-3未満であることが好ましく、5x1018cm-3未満であることがより好ましい。
不純物領域800の不純物濃度は、不純物領域800の全域に亘って、ほぼ均一であることが好ましいが、多少ばらつきがあってもよい。
【0030】
(2)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第1の例
以下、
図2~
図24を参照して、面発光レーザ10の製造方法の第1の例について説明する。
図2及び
図3は、面発光レーザ10の製造方法の第1の例を説明するためのフローチャートである。
図4~
図24は、面発光レーザ10の製造方法の第1の例の工程毎の断面図(工程断面図)である。ここでは、一例として、半導体製造方法により、基板100の基材である1枚のウェハ上に複数の面発光レーザアレイを同時に生成する(この際、各面発光レーザアレイの複数の面発光レーザ10も同時に生成される)。次いで、一連一体の複数の面発光レーザアレイを互いに分離して、チップ状の複数の面発光レーザアレイ(面発光レーザアレイチップ)を得る。
【0031】
最初のステップS1では、積層体1000を生成する。
具体的には、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法により、
図4に示すように、基板100上にコンタクト層400、エッチング停止層500、第1の多層膜反射鏡200a、被選択酸化層210、活性層200b及び第2の多層膜反射鏡200cをこの順に順次積層する。
【0032】
次のステップS2では、積層体1000をエッチング(例えばウェットエッチング)して第1のメサ構造150を形成する。
具体的には、
図5に示すように、成長室から取り出した積層体1000上にフォトリソグラフィによりレジストパターンR1を形成する。次いで、
図6に示すように、このレジストパターンR1をマスクとして、例えば硫酸系のエッチャントを用いて第2の多層膜反射鏡200c、活性層200b、被選択酸化層210及び第1の多層膜反射鏡200aの一部を選択的に除去する。これにより、第1のメサ構造150が形成される。ここでのエッチングは、エッチング底面が第1の多層膜反射鏡200a内に位置するまで(エッチング停止層500が露出しない深さまで)行った。その後、
図7に示すように、レジストパターンR1を除去する。
【0033】
次のステップS3では、
図8に示すように、第1のメサ構造150及びこれに隣接する領域350に、例えばSiO
2からなる絶縁膜240を成膜する。
具体的には、第1のメサ構造150が形成された積層体1000の略全域に絶縁膜240を成膜する。以下では、第1のメサ構造150に隣接する領域350を「隣接領域350」とも呼ぶ。ここでは、隣接領域350は、平面視において、隣り合う2つの第1のメサ構造150の間にある。
【0034】
次のステップS4では、隣接する領域350に成膜された絶縁膜240を除去する。
具体的には、
図9に示すように、第1のメサ構造150に隣接する領域350以外の領域にフォトリソグラフィによりレジストパターンR2を形成する。次いで、このレジストパターンR2をマスクとして、
図10に示すように、隣接領域350に成膜された絶縁膜240を例えばフッ酸系のエッチャントを用いてエッチングにより除去する。その後、
図11に示すように、レジストパターンR2を除去する。
【0035】
次のステップS5では、
図12に示すように、第1のメサ構造150に隣接する領域350から不純物を拡散し、不純物領域800を形成する。
具体的には、隣接領域350から例えばZn等の不純物を注入し、拡散させる。例えば、不純物領域800が、第1の多層膜反射鏡200a、エッチング停止層500、コンタクト層400及び基板100まで拡散するように不純物の注入速度及び注入時間を調整する。この際、絶縁膜240が不純物拡散時のマスクとなる。例えば絶縁膜240の材料にSiO
2を用いると、拡散と減圧と加熱によってSiO
2界面のGaから空孔拡散が生じ、不純物が広範囲に拡散しやすくなる。
【0036】
次のステップS6では、
図13に示すように、残りの絶縁膜240を除去する。
具体的には、隣接領域350以外の領域に形成された絶縁膜240を例えばフッ酸系のエチャントを用いて除去する。
【0037】
次のステップS7では、さらに積層体1000をエッチング(例えばウェットエッチング)して第1のメサ構造150に代わる第2のメサ構造であるメサ構造200を形成する。
具体的には、
図14に示すように、隣接領域350以外の領域にフォトリソグラフィによりレジストパターンR3を形成する。次いで、このレジストパターンR3をマスクとして、
図15に示すように、例えば硫酸系のエッチャントを用いて隣接領域350の第1の多層膜反射鏡200aを選択的に除去する。これにより、メサ構造200が形成される。その後、
図16に示すように、レジストパターンR3を除去する。ここでのエッチングは、エッチング停止層500が除去され、コンタクト層400が露出したところでエッチングを止めた。以下では、メサ構造200を「第2のメサ構造200」とも呼ぶ。
【0038】
次のステップS8では、
図17に示すように、被選択酸化層210(
図16参照)の周囲部を酸化して電流狭窄層200dを生成する。
具体的には、第2のメサ構造200を水蒸気雰囲気中にさらし、被選択酸化層210を側面から酸化(選択酸化)して、非酸化領域200d1の周りが酸化領域200d2で取り囲まれた電流狭窄層200dを形成する。
【0039】
次のステップS9では、
図18に示すように、第2のメサ構造200上及びこれに隣接するコンタクト領域CA上に絶縁膜250を成膜する。
具体的には、積層体1000の略全域に絶縁膜250を成膜する。ここでは、コンタクト領域CAは、平面視において、隣り合う2つの第2のメサ構造200の間にある。
【0040】
次のステップS10では、第2のメサ構造200上及び第2のメサ構造200に隣接するコンタクト領域CA上の絶縁膜250を除去してコンタクトホールを形成する。
具体的には、
図19に示すように、第2のメサ構造200に隣接するコンタクト領域CA及び第2のメサ構造200の頂部以外の領域にフォトリソグラフィによりレジストパターンR4を形成する。次いで、このレジストパターンR4をマスクとして、
図20に示すように、コンタクト領域CA上の絶縁膜250及び第2のメサ構造200の頂部上の絶縁膜250をウェットエッチングにより除去して電極コンタクト用のコンタクトホールCH1、CH2を形成する。その後、
図21に示すように、レジストパターンR4を除去する。
【0041】
次のステップS11では、
図22に示すように、第2のメサ構造200に隣接するコンタクト領域CAにアノード電極600を設ける。
具体的には、例えば、EB蒸着法により、コンタクト領域CAに例えばAu/Ti膜を成膜し、レジスト及びレジスト上の例えばAu/Tiをリフトオフすることにより、コンタクトホールCH1にアノード電極600を形成する。
【0042】
次のステップS12では、
図23に示すように、第2のメサ構造200の頂部上にカソード電極300を設ける。
具体的には、例えば、EB蒸着法により、第2のメサ構造200の頂部上にAu/Ti膜を成膜し、レジスト及びレジスト上のAu/Tiをリフトオフすることにより、第2のメサ構造200の頂部上のコンタクトホールCH2にカソード電極300を形成する。
【0043】
最後のステップS13では、
図24に示すように、第2のメサ構造200に隣接するコンタクト領域CAに設けられたアノード電極600と電極パッドとを接続する金属配線700を形成する。その後、アニール、ウェハの裏面(第2のメサ構造200側の面とは反対側の面)を研磨することによる薄膜化、ウェハの裏面に対する無反射コート等の処理がなされ、1枚のウェハ上に複数の面発光レーザ10が2次元配列された面発光レーザアレイが複数形成される。その後、ダイシングにより、複数の面発光レーザアレイチップに分離される。
【0044】
なお、上記ステップS11、S12の順序は、逆でもよい。
【0045】
(2)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の第2の例
以下、
図25~
図44を参照して、面発光レーザ10の製造方法の第2の例について説明する。
図25及び
図26は、面発光レーザ10の製造方法の第2の例を説明するためのフローチャートである。
図27~
図44は、面発光レーザ10の製造方法の第2の例の工程毎の断面図(工程断面図)である。ここでは、一例として、半導体製造方法により、基板100の基材である1枚のウェハ上に複数の面発光レーザアレイを同時に生成する(この際、各面発光レーザアレイの複数の面発光レーザ10も同時に生成される)。次いで、複数の面発光レーザアレイを互いに分離して、チップ状の複数の面発光レーザアレイ(面発光レーザアレイチップ)を生成する。
【0046】
最初のステップS21では、積層体1000を生成する。
具体的には、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法により、
図27に示すように、基板100上にコンタクト層400、エッチング停止層500、第1の多層膜反射鏡200a、被選択酸化層210、活性層200b及び第2の多層膜反射鏡200cをこの順に順次積層する。
【0047】
次のステップS22では、積層体1000をエッチング(例えばウェットエッチング)してメサ構造200を形成する。
具体的には、
図28に示すように、成長室から取り出した積層体1000上にフォトリソグラフィによりレジストパターンR1´を形成する。次いで、
図29に示すように、このレジストパターンR1´をマスクとして、例えば硫酸系のエッチャントを用いて第2の多層膜反射鏡200c、活性層200b、被選択酸化層210及び第1の多層膜反射鏡200aを選択的に除去する。これにより、メサ構造200が形成される。ここでのエッチングは、エッチング停止層500が除去され、コンタクト層400が露出したところでエッチングを止めた。その後、
図30に示すように、レジストパターンR1´を除去する。
【0048】
次のステップS23では、
図31に示すように、メサ構造200上及びこれに隣接するコンタクト領域CA上に、例えばSiO
2からなる絶縁膜240を成膜する。具体的には、積層体1000の略全域に絶縁膜240を成膜する。ここでは、コンタクト領域CAは、平面視において、隣り合う2つのメサ構造200の間にある。
【0049】
次のステップS24では、コンタクト領域CA上に成膜された絶縁膜240を除去する。具体的には、
図32に示すように、メサ構造200に隣接するコンタクト領域CA以外の領域にフォトリソグラフィによりレジストパターンR2´を形成する。次いで、
図33に示すように、このレジストパターンR2´をマスクとして、コンタクト領域CA上に成膜された絶縁膜240をウェットエッチングにより除去する。その後、
図34に示すように、レジストパターンR2´を除去する。
【0050】
次のステップS25では、
図35に示すように、メサ構造200に隣接するコンタクト領域CAから不純物を拡散し、不純物領域800を形成する。
具体的には、コンタクト領域CAから例えばZn等の不純物を注入し、拡散させる。例えば、不純物領域800が、コンタクト層400、基板100、エッチング停止層500及び第1の多層膜反射鏡200aの側壁部200a1まで拡散するように不純物の注入速度及び注入時間を調整する。この際、絶縁膜240が不純物拡散時のマスクとなる。例えば絶縁膜240の材料にSiO
2を用いると、拡散と減圧と加熱によってSiO
2界面のGaから空孔拡散が生じ、不純物が広範囲に拡散しやすくなる。
なお、上記第1の例では、1回目のエッチング後に第1のメサ構造150に隣接する領域350の第1の多層膜反射鏡200aから不純物を拡散しているため、不純物が被選択酸化層210にも拡散される可能性がある。
これに対し、第2の例では、コンタクト層400が露出するまでエッチングし、第2のメサ構造200を形成した後、コンタクト領域CAから不純物を拡散させるため、不純物が被選択酸化層210まで拡散する可能は低い。
【0051】
次のステップS26では、
図36に示すように、残りの絶縁膜240を除去する。具体的には、コンタクト領域CA以外の領域に形成された絶縁膜240を除去する。
【0052】
次のステップS27では、
図37に示すように、被選択酸化層210(
図36参照)の周囲部を酸化して電流狭窄層200dを生成する。具体的には、メサ構造200を水蒸気雰囲気中にさらし、被選択酸化層210を側面から酸化(選択酸化)して、非酸化領域200d1の周りが酸化領域200d2で取り囲まれた電流狭窄層200dを形成する。
【0053】
次のステップS28では、
図38に示すように、メサ構造200上及びこれに隣接するコンタクト領域CA上に絶縁膜250を成膜する。具体的には、メサ構造200が形成された積層体1000の略全域に絶縁膜250を成膜する。ここでは、コンタクト領域CAは、平面視において、隣り合う2つのメサ構造200の間にある。
【0054】
次のステップS29では、メサ構造200上及びメサ構造200に隣接するコンタクト領域CAの絶縁膜250を除去してコンタクトホールを形成する。具体的には、
図39に示すように、メサ構造200に隣接するコンタクト領域CA及びメサ構造200の頂部以外の領域にフォトリソグラフィによりレジストパターンR3´を形成する。次いで、このレジストパターンR3´をマスクとして、
図40に示すように、コンタクト領域CA上の絶縁膜250及びメサ構造200の頂部上の絶縁膜250をウェットエッチングにより除去して電極コンタクト用のコンタクトホールCH1、CH2を形成する。その後、
図41に示すように、レジストパターンR3´を除去する。
【0055】
次のステップS30では、
図42に示すように、メサ構造200に隣接するコンタクト領域CA上にアノード電極600を設ける。具体的には、例えば、EB蒸着法により、コンタクト領域CAにAu/Ti膜を成膜し、レジスト及びレジスト上のAu/Tiをリフトオフすることにより、コンタクトホールCH1にアノード電極600を形成する。
【0056】
次のステップS31では、
図43に示すように、メサ構造200の頂部上にカソード電極300を設ける。具体的には、例えば、EB蒸着法により、メサ構造200の頂部上にAu/Ti膜を成膜し、レジスト及びレジスト上のAu/Tiをリフトオフすることにより、メサ構造200の頂部上のコンタクトホールCH2にカソード電極300を形成する。
【0057】
最後のステップS32では、
図44に示すように、メサ構造200に隣接するコンタクト領域CAに設けられたアノード電極600と電極パッドとを接続する金属配線700を形成する。その後、アニール、基板100の裏面(第2のメサ構造200側の面とは反対側の面)を研磨することによる基板薄膜化、基板100の裏面に対する無反射コート等の処理がなされ、1枚のウェハ上に複数の面発光レーザ10が2次元配列された面発光レーザアレイが複数形成される。その後、ダイシングにより、複数の面発光レーザアレイチップに分離される。
【0058】
なお、上記ステップS30、S31の順序は、逆でもよい。
【0059】
(3)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの作用
面発光レーザ10では、面発光レーザアレイの周辺に配置された電極パッドから金属配線700、アノード電極600を介してコンタクト領域CAに電流が注入される。コンタクト領域CAに注入された電流は、低抵抗な不純物領域800、第1の多層膜反射鏡200aを経て、活性層200bに注入される。これにより、活性層200bが発光し、その光が第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200c間で繰り返し反射しながら増幅して発振条件を満たしたときに、基板100側からレーザ光として射出される。
【0060】
(4)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの効果
本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザ10は、基板100と、基板100上に形成されたメサ構造200とを備える。メサ構造200は、基板100上に積層された第1の多層膜反射鏡200aと、第1の多層膜反射鏡200a上に積層された活性層200bと、活性層200b上に積層された第2の多層膜反射鏡200cとを含む。メサ構造200に隣接する、アノード電極600と接触するコンタクト領域CAと、メサ構造200の、第1の多層膜反射鏡200aで構成される部分の側壁部200a1と、に跨って不純物領域800が設けられている。
これにより、コンタクト領域CAから活性層200bへ至る電流経路のうちコンタクト領域CAから側壁部200a1までの部分が低抵抗化されているので、活性層200bに効率良く電流を注入することができる。
この場合には、不純物領域800の不純物濃度を比較的低くしても、活性層200bに効率良く電流を注入することができる。
結果として、面発光レーザ10によれば、コンタクト領域CAの上方に積層される層の結晶性の悪化を抑制しつつ活性層200bに効率良く電流を注入することができる。
【0061】
一方、例えば特許文献1に開示されている面発光レーザでは、コンタクト領域に高濃度の不純物がドープされているため、コンタクト領域の上方に積層される層の結晶性が悪化していた。また、当該面発光レーザでは、コンタクト領域にのみ不純物がドープされているため、コンタクト領域から活性層へ至る電流経路上において低抵抗化されていない部分が多く、活性層に効率良く電流を注入することができなかった。
【0062】
不純物領域800は、コンタクト領域CAから側壁部200a1にかけて連続している。これにより、コンタクト領域CAと側壁部200a1との間の全域で低抵抗化されているため、活性層200bに電流を更に効率良く注入することができる。
【0063】
メサ構造200は、第1の多層膜反射鏡200aの全体を含み、コンタクト領域CAは、基板100の一部を含む。
【0064】
メサ構造200は、第1の多層膜反射鏡200aの全体を含み、面発光レーザ10は、基板100と第1の多層膜反射鏡200aとの間に配置されたコンタクト層400を更に備え、コンタクト領域CAは、コンタクト層400の一部を含む。さらに、コンタクト領域は、基板100の一部を含む。
【0065】
コンタクト層400の厚さが1μm以下である。この場合、コンタクト層400自体の抵抗は高くなるがコンタクト層400による光吸収を抑えることができる。コンタクト層400自体の抵抗が高くなっても、低抵抗な不純物領域800がコンタクト層400に及んでいるため、電流経路において実質的にコンタクト層400の抵抗はあまり高くならない、もしくは低くなる。
【0066】
不純物領域800の不純物濃度は、5x1019cm-3未満である。これにより、コンタクト領域CAの上方に積層される層(例えば第1の多層膜反射鏡200a、活性層200b及び第2の多層膜反射鏡200c)の結晶性の悪化をより確実に抑制することができる。
【0067】
メサ構造200の、コンタクト領域CAに対してアノード電極600が配置される側と同じ側の面に別のカソード電極300が接触する。これにより、例えば両電極が反対側の面に配置される場合に比べて、面発光レーザ10の大型化を抑制できる。
【0068】
基板100は、半絶縁性基板又は低ドープ基板である。これにより、基板100による光吸収を抑制することができる。
【0069】
面発光レーザ10は、基板100の、メサ構造200側とは反対側へ光を出射する。これにより、例えばメサ構造の頂部から光を出射する面発光レーザに比べて、カソード電極300を大きく配置することができ、メサ構造のより広範囲に電流を流すことができ、結果として光出力の増加を図ることができる。
【0070】
面発光レーザ10には、AlGaAs系化合物半導体が用いられている。
【0071】
面発光レーザ10は、第1の多層膜反射鏡200aと第2の多層膜反射鏡200cとの間に配置された電流狭窄層200dを更に備える。電流狭窄層200dは光及び電子を狭い領域に閉じ込める作用を有するため、面発光レーザ10がレーザ発振の閾値電流の低減を図ることができる。
【0072】
第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200cは、いずれも半導体多層反射鏡である。これにより、少なくともコンタクト領域CAから活性層200bへ至る電流経路の導電性を向上することができる。
【0073】
面発光レーザ10が2次元配列されている面発光レーザアレイによれば、高効率且つ低消費電力の面発光レーザアレイを実現できる。
【0074】
面発光レーザ10の製造方法の第1の例は、基板100上に少なくとも第1の多層膜反射鏡200a、活性層200b及び第2の多層膜反射鏡200cをこの順に積層して積層体1000を生成する工程と、積層体1000を少なくとも第1の多層膜反射鏡200aの側面の一部が露出するまでエッチングして第1のメサ構造150を形成する工程と、第1のメサ構造150及び該第1のメサ構造150に隣接する領域350に絶縁膜240を成膜する工程と、隣接する領域350に成膜された絶縁膜240を除去する工程と、隣接する領域から、第1のメサ構造150の、第1の多層膜反射鏡200aで構成される部分の側壁部200a1まで不純物を拡散させる工程と、さらに積層体1000を第1の多層膜反射鏡200aの側面の他部が露出するまでエッチングして第1のメサ構造150に代わる第2のメサ構造200を生成する工程と、第2のメサ構造200に隣接する領域上にアノード電極600を設ける工程と、を含む。
【0075】
この場合、第1のメサ構造150に隣接する領域350の第1の多層膜反射鏡200aから不純物が注入されるので、第1の多層膜反射鏡200aの第1のメサ構造150を構成する部分の側壁部200a1に不純物を十分に行き渡らせることができる。
【0076】
第1の例において、積層体1000を生成する工程では、基板100上に第1の多層膜反射鏡200aを積層する前に基板100上にコンタクト層400を積層し、第2のメサ構造200を形成する工程では、積層体1000を少なくともコンタクト層400が露出するまでエッチングする。
これにより、コンタクト層400上にアノード電極600を設けることができる。
【0077】
面発光レーザ10の製造方法の第2の例は、基板100上に少なくとも第1の多層膜反射鏡200a、活性層200b及び第2の多層膜反射鏡200cをこの順に積層して積層体1000を生成する工程と、積層体1000を少なくとも第1の多層膜反射鏡200aの側面の少なくとも一部が露出するまでエッチングしてメサ構造200を形成する工程と、メサ構造200及び該メサ構造200に隣接する領域350に絶縁膜240を成膜する工程と、隣接する領域350に成膜された絶縁膜240を除去する工程と、隣接する領域350から、メサ構造200の、第1の多層膜反射鏡200aで構成される部分の側壁部200a1まで不純物を拡散させる工程と、隣接する領域350上にアノード電極600を設ける工程と、を含む。
【0078】
この場合、メサ構造200を1回のエッチングにより形成するので、工数を削減できる。
また、メサ構造200に隣接するコンタクト領域CAから不純物を注入するので、不純物が被選択酸化層210まで拡散するのを抑制することができる。
【0079】
第2の例において、積層体1000を生成する工程では、基板100上に第1の多層膜反射鏡200aを積層する前に基板100上にコンタクト層400を積層し、メサ構造200を形成する工程では、積層体1000をコンタクト層400が露出するまでエッチングする。
これにより、コンタクト層400上にアノード電極600を設けることができる。
【0080】
2.<本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザ>
第2の実施形態に係る面発光レーザ20は、
図45に示すように、コンタクト層400を有していない点を除いて、第1の実施形態に係る面発光レーザ10と同様の構成を有する。
すなわち、面発光レーザ20も、メサ構造220が第1の多層膜反射鏡200aの全体を含み、コンタクト領域CA1が基板100の一部を含む。ここでは、コンタクト領域CA1は、エッチング停止層500の一部も含む。
面発光レーザ20では、メサ構造220に隣接するコンタクト領域CA1(ここでは、平面視において隣り合う2つのメサ構造20間にある)の上面(コンタクトホールCH1の底面)が基板100内に位置している。
面発光レーザ20では、不純物領域820が、基板100の一部、エッチング停止層500の一部及び第1の多層膜反射鏡200aの側壁部200a1を含む。
面発光レーザ20も、面発光レーザ10の製造方法の第1及び第2の例に準じた製造方法(但し、コンタクト層400を積層する工程を除く)で製造することができる。
第2の実施形態に係る面発光レーザ20によれば、面発光レーザ10と同様の効果を奏するとともに、コンタクト層400を積層しない分、製造時の工数を減らすことができる。
3.<本技術の第3の実施形態に係る面発光レーザ>
第3の実施形態に係る面発光レーザ30は、
図46に示すように、第1の実施形態に係る面発光レーザ10と異なり、コンタクト層400及びエッチング停止層500を有していない。
さらに、面発光レーザ30では、メサ構造230は、第1の多層膜反射鏡200aの底部(下部)以外の部分を含み(第1の多層膜反射鏡200aの上部を含み)、コンタクト領域CA2は、第1の多層膜反射鏡200aの底部の一部を含む。メサ構造230は、面発光レーザ10の製造方法の第1の例で説明した第1のメサ構造150と実質的に同一である。
すなわち、面発光レーザ30では、メサ構造230に隣接するコンタクト領域CA2(ここでは、平面視において隣り合う2つのメサ構造230の間にある)の上面(コンタクトホールCH1の底面)が第1の多層膜反射鏡200a内に位置している。ここでは、コンタクト領域CA2は、基板100の一部及び第1の多層膜反射鏡200aの下部の一部を含む。なお、コンタクト領域CA2は、基板100の一部を含まなくてもよい。
面発光レーザ20によれば、面発光レーザ10と同様の効果を奏するとともに、コンタクト層400及びエッチング停止層500を積層しない分、製造時の工数を上記第2の実施形態よりもさらに減らすことができる。
面発光レーザ30では、不純物領域830が、第1の多層膜反射鏡200aの下部及び側壁部200a1、基板100の一部を含む。
面発光レーザ30は、上述した面発光レーザ10の製造方法の第1の例に準じた方法(但し、第1のメサ構造150に隣接する領域350がコンタクト領域CA2となる)により製造することができる。
【0081】
4.<本技術に係る面発光レーザの変形例>
本技術は、上記各実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、
図47に示す第1実施形態の変形例1に係る面発光レーザ10Aでは、コンタクト領域CA3の上面であるコンタクトホールCH1の底面(エッチング底面)がエッチング停止層500内に位置している。
変形例1では、不純物領域850が、エッチング停止層500の一部、コンタクト層400の一部、基板100の一部及び第1の多層膜反射鏡200aの側壁部200a1を含む。
面発光レーザ10Aにおいても、不純物領域850により、コンタクト領域CA3から側壁部200a1までの電流経路の低抵抗化が図られているので、アノード電極600から活性層200bへ電流を効率良く流すことができる。
【0083】
例えば、
図48に示す第1実施形態の変形例2に係る面発光レーザ10Bでは、コンタクト領域CA4の上面であるコンタクトホールCH1の底面(エッチング底面)がコンタクト層400内に位置している。
変形例2では、不純物領域860が、エッチング停止層500の一部、コンタクト層400の一部、基板100の一部及び第1の多層膜反射鏡200aの側壁部200a1を含む。
面発光レーザ10Bにおいても、不純物領域860により、コンタクト領域CA4から側壁部200a1までの電流経路の低抵抗化が図られているので、アノード電極600から活性層200bへ電流を効率良く流すことができる。
【0084】
例えば、
図49に示す第1実施形態の変形例3に係る面発光レーザ10Cでは、コンタクト領域CA5の上面であるコンタクトホールCH1の底面(エッチング底面)が基板100内に位置している。
変形例3では、不純物領域870が、エッチング停止層500の一部、コンタクト層400の一部、基板100の一部及び第1の多層膜反射鏡200aの側壁部200a1を含む。
面発光レーザ10Cにおいても、不純物領域870により、コンタクト領域CA5から側壁部200a1までの電流経路の低抵抗化が図られているので、アノード電極600から活性層200bへ電流を効率良く流すことができる。
【0085】
上記各実施形態及び各変形例では、第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200cのいずれも半導体多層膜反射鏡であるが、これに限らない。
例えば、第1の多層膜反射鏡200aが半導体多層膜反射鏡であり、且つ、第2の多層膜反射鏡200cが誘電体多層膜反射鏡であってもよい。誘電体多層膜反射鏡も、分布ブラッグ反射鏡の一種である。
例えば、第1の多層膜反射鏡200aが誘電体多層膜反射鏡であり、且つ、第2の多層膜反射鏡200cが半導体多層膜反射鏡であってもよい。
例えば、第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200bのいずれも誘電体多層膜反射鏡であってもよい。
半導体多層膜反射鏡は、光吸収が少なく、且つ、導電性を有する。この観点からは、半導体多層膜反射鏡は、出射側(裏面側)にあり、且つ、アノード電極600から活性層200bまでの電流経路上にある第1の多層膜反射鏡200aに好適である。
一方、誘電体多層膜反射鏡は、光吸収が極めて少ない。この観点からは、誘電体多層膜反射鏡は、出射側(裏面側)にある第1の多層膜反射鏡200に好適である。
【0086】
上記各実施形態及び各変形例では、基板側からレーザ光を出射する裏面出射型の面発光レーザを例にとって説明したが、本技術は、メサ構造側からレーザ光を出射する表面出射型の面発光レーザにも適用可能である。
この場合には、例えばメサ構造の頂部上に設けられる電極を環状又は枠状とすることにより該電極の内側に出射口を形成するか、もしくはメサ構造の頂部上に設けられる電極を発振波長に対して透明な電極とすることが好ましい。
【0087】
上記各実施形態及び各変形例では、AlGaAs系化合物半導体を用いた面発光レーザ10を例にとって説明したが、本技術は、例えば、GaN系化合物半導体を用いた面発光レーザにも適用可能である。
具体的には、第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200bの少なくとも一方にGaN系半導体多層膜反射鏡を用いてもよいし、第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200bの少なくとも一方にGaN系誘電体多層膜反射鏡を用いてもよい。
第1及び第2の多層膜反射鏡200a、200bの少なくとも一方に用いられるGaN系化合物半導体としては、例えばGaN/AlGaN等が挙げられる。
【0088】
上記各実施形態及び各変形例では、面発光レーザ10が2次元配列された面発光レーザアレイを例にとって説明したが、これに限らない。本技術は、面発光レーザ10が1次元配列された面発光レーザアレイ、単一の面発光レーザ10等にも適用可能である。
【0089】
5.<本技術を適用した面発光レーザの使用例>
本技術の上記各実施形態及び上記各変形例に係る面発光レーザは、例えば、TOF(Time Of Flight)センサなど、レーザ光を出射する電子機器へ適用することができる。TOFセンサへ適用する場合は、例えば、直接TOF計測法による距離画像センサ、間接TOF計測法による距離画像センサへ適用することが可能である。直接TOF計測法による距離画像センサでは、フォトンの到来タイミングを各画素において直接時間領域で求めるため、短いパルス幅の光パルスを光源から送信し、受光素子で電気的パルスを生成する。その際の光源に本開示を適用することができる。また、間接TOF法では、光で発生したキャリアーの検出と蓄積量が、光の到来タイミングに依存して変化する半導体素子構造を利用して光の飛行時間を計測する。本開示は、そのような間接TFO法を用いる場合の光源としても適用することが可能である。
【0090】
本技術に係る面発光レーザは、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される上記TOFセンサの光源として実現されてもよい。
【0091】
本技術に係る面発光レーザは、レーザ光により画像を形成又は表示する機器(例えばレーザプリンタ、レーザ複写機、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等)の光源として実現されてもよい。
【0092】
また、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
(1)本技術は、基板と、
前記基板上に形成されたメサ構造と、
を備え、
前記メサ構造は、
前記基板上に積層された第1の多層膜反射鏡の少なくとも一部と、
前記第1の多層膜反射鏡上に積層された活性層と、
前記活性層上に積層された第2の多層膜反射鏡と、
を含み、
前記メサ構造に隣接する、電極と接触するコンタクト領域と、前記メサ構造の、前記第1の多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部と、に跨って不純物領域が設けられている、面発光レーザ。
(2)前記不純物領域は、前記コンタクト領域から前記側壁部にかけて連続している、(1)に記載の面発光レーザ。
(3)前記メサ構造は、前記第1の多層膜反射鏡の全体を含み、前記コンタクト領域は、前記基板の一部を含んでいる、(1)又は(2)に記載の面発光レーザ。
(4)前記メサ構造は、前記第1の多層膜反射鏡の底部以外の部分を含み、前記コンタクト領域は、前記第1の多層膜反射鏡の前記底部の一部を含む、(1)又は(2)に記載の面発光レーザ。
(5)前記メサ構造は、前記第1の多層膜反射鏡の全体を含み、前記基板と前記第1の多層膜反射鏡との間に配置されたコンタクト層を更に備え、前記コンタクト領域は、前記コンタクト層の一部を含む、(1)又は(2)に記載の面発光レーザ。
(6)前記コンタクト領域は、前記基板の一部を含んでいる、請求項(5)に記載の面発光レーザ。
(7)前記コンタクト層の厚さが1μm以下である、(5)又は(6)に記載の面発光レーザ。
(8)前記不純物領域の不純物濃度は、5x1019cm-3未満である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(9)前記メサ構造の、前記コンタクト領域に対して前記電極が配置される側と同じ側の面に別の電極が接触している、(1)~(8)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(10)前記基板は、半絶縁性基板又は低ドープ基板である、(1)~(9)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(11)前記面発光レーザは、前記基板の、前記メサ構造側とは反対側へ光を出射する、(1)~(10)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(12)前記面発光レーザは、AlGaAs系化合物半導体又はGaN系化合物半導体が用いられている、(1)~(11)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(13)前記面発光レーザは、前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間に配置された電流狭窄層を更に備えている、(1)~(12)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(14)前記第1及び第2の多層膜反射鏡の少なくとも一方は、半導体多層反射鏡である、(1)~(13)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(15)前記第1及び第2の多層膜反射鏡の少なくとも一方は、誘電体多層膜反射鏡である、(1)~(13)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(16)(1)~(15)のいずれか1つに記載の面発光レーザが2次元配列されている面発光レーザアレイ。
(17)(16)に記載の面発光レーザアレイを備える電子機器。
(18)基板上に少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記第1多層膜反射鏡の側面の一部が露出するまでエッチングして第1のメサ構造を形成する工程と、
前記第1のメサ構造及び該第1のメサ構造に隣接する領域に絶縁膜を成膜する工程と、
前記隣接する領域に成膜された前記絶縁膜を除去する工程と、
前記隣接する領域から、前記第1のメサ構造の、前記第1多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部まで不純物を拡散させる工程と、
さらに前記積層体を少なくとも 前記第1の多層膜反射鏡の側面の他部が露出するまでエッチングして前記第1のメサ構造に代わる第2のメサ構造を形成生成する工程と、
前記第2のメサ構造に隣接する領域上に電極を設ける工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法。
(19)前記積層体を生成する工程では、前記基板上にと前記第1の多層膜反射鏡を積層する前に前記基板上にとの間にコンタクト層を積層し、前記第2のメサ構造を形成する工程では、前記第1のメサ構造が形成された前記積層体を少なくとも前記コンタクト層が露出するまでエッチングする、(18)に記載の面発光レーザの製造方法。
(20)基板上に少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記第1多層膜反射鏡の側面の少なくとも一部が露出するまでエッチングしてメサ構造を形成する工程と、
前記メサ構造及び該メサ構造に隣接する領域に絶縁膜を成膜する工程と、
前記隣接する領域に成膜された前記絶縁膜を除去する工程と、
前記隣接する領域から、前記メサ構造の、前記第1の多層膜反射鏡で構成される部分の側壁部まで不純物を拡散させる工程と、
前記隣接する領域上に電極を設ける工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法。
(21)前記積層体を生成する工程では、前記基板上にと前記第1の多層膜反射鏡を積層する前に前記基板上にとの間にコンタクト層を積層し、前記メサ構造を形成する工程では、前記積層体を少なくとも前記コンタクト層が露出するまでエッチングする、(20)に記載の面発光レーザの製造方法。
【符号の説明】
【0093】
10:面発光レーザ、100:基板、150:第1のメサ構造、200:第2のメサ構造(メサ構造)、200a:第1の多層膜反射鏡、200b:活性層、200c:第2の多層膜反射鏡、200d:電流狭窄層、400:コンタクト層、600:アノード電極(電極)、800:不純物領域、1000:積層体、CA、CA1、CA2、CA3、CA4、CA5:コンタクト領域。