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特許7570354熱暴走時の電気化学的発電装置を消火する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】熱暴走時の電気化学的発電装置を消火する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/202 20210101AFI20241011BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 50/571 20210101ALI20241011BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20241011BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20241011BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20241011BHJP
【FI】
H01M50/202 401F
H01M50/204 401F
H01M50/202 401H
H01M50/204 401H
H01M50/572
H01M50/571
H01M10/6567
A62C3/16 C
H01M10/613
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021568082
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020063207
(87)【国際公開番号】W WO2020229479
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】1905067
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・ビリー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ブラン-ビュイソン
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017085(WO,A1)
【文献】特表2013-540836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106220(US,A1)
【文献】特表2013-500801(JP,A)
【文献】特開2012-033345(JP,A)
【文献】特開2016-225265(JP,A)
【文献】特開2013-135720(JP,A)
【文献】特開2009-219257(JP,A)
【文献】特表2015-534254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
H01M 10/52-10/667
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化学的発電装置(10)を消火するための方法であって、前記電気化学的発電装置(10)は、第1の電極(20)と第2の電極(30)とを備え、前記第1の電極(20)は、第1の端子(22)に接続されており、前記第2の電極(30)は、第2の端子(32)又は前記電気化学的発電装置の接地用導体に接続されており、
前記方法は、前記電気化学的発電装置(10)をイオン液体溶液(100)によって被覆する工程を含み、
前記イオン液体溶液(100)は、イオン液体と消火及び/又は難燃特性を有する活性種とを含み、
前記イオン液体溶液(100)は、前記電気化学的発電装置(10)を冷却及び/又は放電するように、前記第1の端子(22)から前記第2の端子(32)まで、又は前記第1の端子(22)から前記接地用導体まで、前記電気化学的発電装置を連続的に被覆することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記活性種が、場合によってはフッ素化されたアルキルホスフェートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性種が、前記イオン液体溶液の5~80質量%を占めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン液体溶液(100)が、酸化及び/又は還元され得る酸化還元種を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン液体溶液(100)が、酸化剤と呼ばれる酸化還元種と還元剤と呼ばれる酸化還元種とを含む、一対の酸化還元種を含み、前記酸化剤は、場合により、還元され、前記還元剤は、場合により、酸化されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化還元種の対が、金属対、有機分子対、メタロセン対、又はハロゲン化分子対であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン液体溶液(100)が、乾燥剤を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン液体溶液(100)が、物質移動を促進する試剤、例えば有機溶媒を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン液体溶液(100)が、腐食性及び/又は有毒性成分を低減及び/又は安定させることができる保護剤を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン液体溶液(100)が、複数のイオン液体の混合物を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン液体溶液(100)が、深共晶溶媒を形成することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電気化学的発電装置(10)が、前記イオン液体溶液(100)に浸漬されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電気化学的発電装置(10)が、例えば前記イオン液体溶液(100)を入れた消火器によって、前記イオン液体溶液(100)を噴霧されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
噴霧される生成物を含有するタンクと加圧気体カプセルとを備えた、消火器等の消火機器であって、噴霧される前記生成物は、イオン液体溶媒と消火及び/又は難燃特性を有する活性種とを含むイオン液体溶液(100)である、請求項1から11又は請求項13のいずれか一項に記載の電気化学的発電装置(10)を消火する方法に使用するための、消火機器。
【請求項15】
熱暴走時に、前記電気化学的発電装置を消火するための請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性種が、前記イオン液体溶液の10~30質量%を占めることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記金属対が、Mn 2+ /Mn 3+ 、Co 2+ /Co 3+ 、Cr 2+ /Cr 3+ 、Cr 3+ /Cr 6+ 、V 2+ /V 3+ 、V 4+ /V 5+ 、Sn 2+ /Sn 4+ 、Ag /Ag 2+ 、Cu /Cu 2+ 、Ru 4+ /Ru 8+ およびFe 2+ /Fe 3+ から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記メタロセン対がFc/Fc であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
前記ハロゲン化分子対がCl /Cl またはCl /Cl 3- であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱暴走の可能性のある、Liイオン、Naイオン、又はリチウム金属電池又は蓄電装置等の電気化学的発電装置の安全な消火の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、電気化学的発電装置を、イオン液体を含有する溶液によって電気化学的発電装置が冷却及び/又は放電された、安全な状態に置く方法である。
【0003】
安全な状態に置くことは、定置用途での浸液による、電気化学的発電装置の自動消火によって行われ得る。
【0004】
安全な状態に置くことはまた、例えば、消防士の介入時における消火器等の可搬機器によっても行われ得る。
【背景技術】
【0005】
電気化学的発電装置は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する電気発生機器である。例えば、電気化学的発電装置は、電池又は蓄電装置であり得る。
【0006】
蓄電装置、特にLiイオン型のリチウム蓄電装置の市場は、第一に、いわゆるモバイル用途(スマートフォン、携帯電子機器等)により、第二に、モビリティ(電気及びハイブリッド自動車)並びに(配電網に接続される)いわゆる定置用途により、現在、大きく拡大している。
【0007】
Liイオン型リチウム電気化学蓄電装置は、電解質に含浸したセパレーターの両側に位置するアノード(負極)及びカソード(正極)と集電体とを備える、少なくとも1つの電気化学セルを備える。
【0008】
金属イオン電気化学蓄電装置は、少なくとも1つの電極における金属イオンの挿入又は脱離(又は、言い換えると、インターカレーション-デインターカレーション)の原理に従って動作する。充電中、リチウムはカソードの活物質からデインターカレートされ、アノードの活物質、例えばグラファイトに挿入される。このプロセスは放電中は逆になる。
【0009】
蓄電装置が、非常に高い温度への曝露、製造業者の仕様外の電力使用、更には物理的一体性の崩壊等の異常な状態に置かれると、化学分解反応及び/又は内部短絡が起こり得る。これらの現象は、激しい内部熱の放出、ガス又は火炎の発生、更には気体の膨張につながり得る。
【0010】
化学機構は、物質が反応活性化温度より高い温度にさらされたときに開始される。典型的には、グラファイト不動態化層(SEI又は「固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface)」)と電解質との間の反応の場合、分解機構の開始温度は約80℃である。
【0011】
発生した内部熱の放出は、カソード物質と電解質との反応(約160~200℃)又は内部短絡の発生(約120~160℃でのセパレーターの融解)等の他の発熱現象を活性化し得る。これらの発熱機構のそれぞれが、他の機構の活性化の前兆になり得る。そこで、暴走という用語が用いられる。
【0012】
熱暴走を抑制又は停止し、望ましくない現象の発生を防止するために、蓄電装置の効果的冷却によって及び/又は蓄電装置に貯められた電気エネルギーの量の低減(放電)によって、温度上昇が制限されなければならない。内部短絡によって引き起こされた発熱及び分解反応は、蓄電装置が放電されるとき消滅する傾向がある。
【0013】
従来的に、蓄電装置の熱暴走を停止するために、散水ステップ、更には水性消火剤を使用する浸液ステップが、用いられることがある。水には次の2つの利点がある:
良好な冷却特性及び水環境が導電性であり蓄電装置の電位間で連続的である場合の電気エネルギーの放出。
【0014】
ただし、この消火手段は、発火し得る水素ガスが生成されるという欠点を有する。更に、蓄電装置の完全性が保たれない場合、活物質が水と激しく反応し、したがって大量の熱及び水素ガスを生成する。
【0015】
製造業者は自社の蓄電装置のエネルギーを増大させることを常に目指しており、したがって発熱物質を使用することが多くなっているため、この問題は、現時点で、大きな課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の1つの目的は、先行技術の欠点を克服するための方法、特に、水素を一切生成することなく、発電装置の良好な冷却及び/又は放電を実現することにより、電気化学的発電装置を安全な状態に置くための消火方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これを達成するために、本発明は、特に熱暴走時に、電気化学的発電装置を消火するための方法であって、電気化学的発電装置は、第1の電極と第2の電極とを備え、第1の電極は、第1の端子に接続されており、第2の電極は、第2の端子又は電気化学的発電装置の接地用導体に接続されており、
方法は、電気化学的発電装置をイオン液体溶液によって被覆する工程を含み、
イオン液体溶液は、第1の端子から第2の端子まで、又は第1の端子から接地用導体まで、電気化学的発電装置を連続的に被覆し、
イオン液体溶液は、イオン液体と消火及び/又は難燃特性を有する活性種とを含む、
方法を開示する。
【0018】
熱暴走とは、発電装置内での発熱分解反応の活性化を意味する。このような反応は、内部温度の上昇につながり、望ましくない化学反応の連鎖を活性化する。
【0019】
本発明は、電気化学的発電装置がイオン液体溶液によって消火されるという点で、先行技術とは基本的に異なる。
【0020】
本方法は、酸素及び水素の生成を防止するものであり、したがって、水溶液を使用する方法とは異なり、燃焼又は爆発の危険はない。
【0021】
イオン液体は、200℃を超えることがある温度(例えば、200℃~400℃)において、不揮発性、不燃性、且つ化学的に安定であるため、イオン液体溶液を使用することは、水の使用に関連する制約を大幅に低減させる。
【0022】
電気化学的発電装置は、無傷であることも損傷していることもある。
【0023】
包装が破損すると、イオン液体媒体が、空気と電気化学的発電装置の内部構成部品との接触を防止し、したがって、特に爆発性の高い、空気と電解質蒸気との混合物(空気/蒸気比)の形成を防止する。
【0024】
本方法は、蓄電装置を冷却する。
【0025】
その実装は簡単である。
【0026】
有利には、活性種は、アルキルホスフェートであり、場合によってはフッ素化されている。
【0027】
有利には、活性種は、イオン液体溶液の5~80質量%、好ましくは10~30質量%を占める。
【0028】
有利には、イオン液体溶液は、第1の端子及び第2の端子の少なくとも1つにおいて、又は第1の端子及び接地用導体の少なくとも1つにおいて、酸化及び/又は還元され得る、酸化還元種を含む。有利には、酸化還元種の存在は、イオン液体溶媒の分解/転換なしに、発電装置の放電を可能にする。
【0029】
電気化学的発電装置が開けられた場合、イオン液体溶媒及び/又は酸化還元種は、リチウム又はナトリウム等の電極活物質と反応することができ、発電装置を放電することによって発電装置を安全な状態に置くことが可能になる。
【0030】
有利には、溶液は、酸化剤と呼ばれる酸化還元種と還元剤と呼ばれる酸化還元種とを含む、一対の酸化還元種を含み、酸化剤酸化還元種は、場合により、第1又は第2の端子(又は接地用導体)のいずれか上で還元され、還元剤酸化還元種は、場合により、他の第2又は第1の端子(又は接地用導体)上で酸化される。
【0031】
酸化還元対は、酸化還元媒体又は電気化学的シャトル(electrochemical shuttle)とも呼ばれ、電気化学的発電装置の複数の端子上で又は1つの端子若しくは接地用導体上で、酸化剤が還元され得、還元剤が酸化され得る、水溶液中の酸化/還元(Ox/Red)対を意味する。酸化還元対は、酸化還元反応を制御する。
【0032】
酸化還元種は、電極(アノードとカソード)間の電位差を低減することにより、電気化学的発電装置が顕著な又は完全な放電を行うことを可能にする。この放電はまた、電極の化学エネルギー(したがって電位差)を低減し、内部短絡の効果を低減することにより、電気化学的発電装置を安全な状態に置くことにも寄与する。酸化還元種は電極と直接反応し得るため、電気化学的発電装置は、構造的脆化の場合にも安全にされる。
【0033】
溶液中の酸化還元対は、電気化学的発電装置の端子において同時に酸化還元反応を制御するため、本方法は経済的である。試薬の消費はゼロになり、溶液は、複数の電気化学的発電装置を順次的に且つ/又は混合物中で安全な状態に置くために使用することができる。
【0034】
有利には、酸化還元種の対は、好ましくは、Mn2+/Mn3+、Co2+/Co3+、Cr2+/Cr3+、Cr3+/Cr6+、V2+/V3+、V4+/V5+、Sn2+/Sn4+、Ag/Ag2+、Cu/Cu2+、Ru4+/Ru8+若しくはFe2+/Fe3+から選択される金属対、有機分子対、Fc/Fc等のメタロセン対、又は例えばCl/Cl若しくはCl/Cl3-等のハロゲン化分子対である。
【0035】
有利には、イオン液体溶液は、乾燥剤を含む。
【0036】
有利には、イオン液体溶液は、物質移動を促進する試剤、例えば有機溶媒を含む。
【0037】
有利には、イオン液体溶液は、腐食性及び/又は有毒性成分を低減及び/又は安定させることができる保護剤を含む。保護剤は、PF、HF、POF等の有毒性及び腐食性の種の酸の影響を低減する。
【0038】
有利には、イオン液体溶液は、追加のイオン液体を含む。
【0039】
有利には、イオン液体溶液は、深共晶溶媒を形成する。
【0040】
第1の有利な変形例によれば、電気化学的発電装置は、イオン液体溶液に浸漬される。
【0041】
別の有利な変形例によれば、電気化学的発電装置は、例えばイオン液体溶液を入れた消火器によって、イオン液体溶液を噴霧される。
【0042】
本発明はまた、噴霧される生成物を含有するタンクと加圧気体カプセルとを備えた、消火器等の消火機器であって、噴霧される生成物は、イオン液体溶媒を含むイオン液体溶液並びに消火及び/又は難燃特性を有する活性種である、消火機器に関する。
【0043】
噴霧される生成物(又は消火剤)は、水素を生成せず、1.2~2.2Jg-1-1の熱容量、及び約0.2Wm-1-1の熱導電率を有する。噴霧される生成物は、完全に安全な状態で電気化学的発電装置の効果的な消火を可能にする。
【0044】
本発明の他の特性及び利点は、以下に示す残りの記載を読んだ後に明らかになるだろう。
【0045】
残りの記載は、本発明の目的を例示するために与えられたものにすぎず、いかなる意味でも、この目的を限定するものと解釈することはできないと理解すべきである。
【0046】
本発明は、以下の添付図面を参照して、純粋に情報のみを目的として与えられた例示的実施形態の記載を読んだ後に、よりよく理解され、この記載はいかなる意味でも限定を加えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の特定の一実施形態による電気化学的発電装置の断面図を図示する。
図2】本発明の特定の一実施形態による電気化学的発電装置を消火する方法における一工程を図示する。
図3】本発明の特定の別の実施形態による電気化学的発電装置を消火する方法における一工程を図示する。
図4】本発明の特定の一実施形態による異なる酸化還元電位を表す、強度-電位曲線。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図中に示された異なる部品は、図をより容易に理解可能にすることを目的としており、必ずしも同じ縮尺であるわけではない。
【0049】
異なる可能性(変形例及び実施形態)は、相互に排他的であるわけではなく、互いに組み合わせることができると理解されなければならない。
【0050】
以下に示された記載がLiイオン蓄電装置を参照している場合であっても、本発明は、電気化学的発電装置、例えば、公称動作電圧及び/若しくは供給されるエネルギー量に応じて、直列若しくは並列に接続されている複数の蓄電装置を備えた電池(蓄電池とも呼ばれる)、又は電池セルに転置することができる。
【0051】
これらの異なる電気化学的機器は、金属イオン型、例えばリチウムイオン又はナトリウムイオン型のもの、又はLi金属型のものであり得る。
【0052】
電気化学的機器は、Li/MnO等の一次システムであってもよく、又はレドックスフロー電池であってもよい。
【0053】
我々は1.5V超の電位を有する電気化学的発電装置を有利に選択する。
【0054】
以下において、リチウムについて記載するとき、リチウムはナトリウムに置き換え可能である。
【0055】
以下の記載では、まず、リチウムイオン(又はLiイオン)蓄電装置10を表す図1が参照される。単一の電気化学セルが示されているが、発電装置は、複数の電気化学セルから構成されることがあり、各セルは、第1の電極20、この場合、アノードと、第2の電極30、この場合、カソードと、セパレーター40と、電解質50とを備える。別の実施形態では、第1の電極20と第2の電極30は逆にすることができる。
【0056】
アノード(負極)20は、好ましくは、炭素系であり、例えば、PVDF型結合剤と混合されて銅シート上に堆積され得るグラファイトから作製される。アノードはまた、Liイオン蓄電装置ではチタン酸リチウムLiTi12(LTO)等のリチウムの混合酸化物、又はNaイオン蓄電装置ではチタン酸ナトリウム等のナトリウムの混合酸化物であってもよい。アノードは、選択した技術によってリチウム合金又はナトリウム合金であってもよい。
【0057】
カソード(正極)30は、Liイオン蓄電装置ではリチウムイオン挿入物質である。カソードは、LiMO型の層状酸化物、カンラン石構造を有するリン酸塩LiMPO又はスピネル化合物LiMnであってよい。Mは遷移金属を表す。例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiNiMnCoO、又はLiFePOで作製された正極が選択される。
【0058】
カソード(正極)30は、Naイオン蓄電装置ではナトリウムイオン挿入物質である。カソードは、少なくとも1つの遷移金属元素を含むナトリウム型混合酸化物の材料、少なくとも1つの遷移金属元素を含むナトリウム型リン酸塩若しくは混合硫酸塩の材料、ナトリウム型混合フッ化物の材料、又は少なくとも1つの遷移金属元素を含む硫化物型の材料であってよい。
【0059】
挿入物質は、ポリビニリデンフルオリド型結合剤と混合され、アルミニウムホイル上に堆積されてよい。
【0060】
電解質50は、選択される蓄電装置技術に応じて、リチウム塩(例えばLiPF、LiBF、LiClO)又はナトリウム塩(例えばNNa)を含有し、これらは非水性溶媒の混合物中で可溶化される。例えば、溶媒混合物は、二成分又は三成分混合物であってよい。例えば、溶媒は、様々な比率の、環状カーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート)、直鎖状又は分枝鎖状カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン)をベースとする溶媒から選択されてよい。
【0061】
或いは、溶媒混合物は、有機及び/又は無機物質から作製される、ポリマーマトリックスを含むポリマー電解質、1種以上の金属塩を含む液体混合物、並びに場合によっては機械的補強材であってもよい。ポリマーマトリックスは、例えば、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、又はポリ(N-ビニルイミダゾリウム)ビス(トリフルオロメタンスルホニルアミド))、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド型(DEMM-TFSI))のポリ(イオン液体)から選択される、1種以上のポリマー物質を含んでよい。
【0062】
セルは、回旋軸に巻き付けてそれ自体に重ねてもよく、積み重ね構造を有してもよい。
【0063】
ケーシング60、例えばポリマー袋又は金属パッケージング、例えば鋼鉄は、蓄電装置を封止するために使用される。
【0064】
各電極20、30は、それぞれ、ケーシング60を貫通して集電体21、31に接続され、ケーシング60の外部に端子22、32(出力端子又は電気極若しくは電気端子とも呼ばれる)を形成する。集電体21、31は、活物質のための機械的支持の提供及びセル端子への電気の伝導という、2つの機能を果たす。端子は、電気極又は電気端子とも呼ばれ、出力端子を形成し、「エネルギー受容器」に接続することが意図されている。
【0065】
いくつかの構成では、端子22、32の一方(例えば、負極に接続した端子)は、電気化学的発電装置の接地用導体に接続されてよい。そこで、接地用導体は電気化学的発電装置の負電位であり、正端子は電気化学的発電装置の正電位であると言われる。したがって、正電位は、正極/端子及びこの極から電気導通状態によって接続されたすべての金属部品として定義される。
【0066】
場合により、接地用導体に接続された端子と、接地用導体との間に、中間電子機器が設置されてもよい。
【0067】
図2及び図3に示されているように、消火方法は、蓄電装置10を安全な状態に置くために、いわゆる消火液によって、蓄電装置10を少なくとも部分的に被覆する工程を含む。
【0068】
蓄電装置を少なくとも部分的に被覆することは、蓄電装置10について以下のことが可能になることを意味する。
-特に消防士又は任意のその他の者の介入中に、例えば、何らかの好適な手段、例えば消火器により噴霧を行うことで、蓄電装置10を消火液によって部分的に被覆すること(図2)、又は
-特に定置用途において、例えば浸漬により、例えば浸液により自動消火中の蓄電装置10を消化液によって完全に被覆すること(図3)。
【0069】
消火溶液100は、イオン液体溶液(イオン液体の溶液とも呼ばれる)である。言い換えると、消火溶液は、LIで表されイオン液体溶媒と呼ばれる少なくとも1種のイオン液体と、A1で表され熱暴走を防止する消火剤及び/又は難燃剤である活性種とを含む。
【0070】
イオン性流動体は、100℃未満又は付近の融解温度を有する液体を生成する、少なくとも1つのカチオンと1つのアニオンとを含む会合体(association)を指す。これらは溶融塩である。
【0071】
イオン液体溶媒は、熱的に且つ電気化学的に安定であり、放電現象の際に環境悪化の効果を最小限にする、イオン液体である。
【0072】
イオン液体溶液はまた、1種以上(例えば2種又は3種)の追加のイオン液体を含んでもよい。言い換えると、イオン液体溶液は、複数のイオン液体の混合物を含む。
【0073】
LIで表される追加のイオン液体は、安全及び放電工程に有用な1つ以上の特性を改善するイオン液体を指す。特に、イオン液体は、以下の特性:消火、難燃性、酸化還元シャトル、塩安定剤、粘度、溶解度、疎水性、導電率のうちの1つ以上に関係する。
【0074】
有利には、イオン液体、及び場合によっては追加のイオン液体は、室温(20~25℃)で液体である。
【0075】
イオン液体溶媒及び追加のイオン液体について、カチオンは、好ましくは、以下の群:
イミダゾリウム、ピロリジニウム、アンモニウム、ピペリジニウム及びホスホニウム
から選択される。
【0076】
好ましくは、イオン液体の劣化を回避又は最小化するカソード反応を想定するのに十分に広いカチオン領域(cationic window)を有するカチオンが選択される。
【0077】
有利には、LI及びLIは、LI中でのLIの溶解度を高めるために同じカチオンを有する。多くの可能なシステムにおいて、低環境負荷(生分解性)を有し低コストで非毒性の媒体が好ましい。
【0078】
有利には、広い電気化学的帯域、中程度の粘度、低い融解温度(室温で液体)並びにイオン液体及びその他の種の溶液に対する良好な溶解度を同時に得ることができるアニオンが、イオン液体の加水分解(劣化)をもたらすことなく、使用される。
【0079】
TFSIアニオンは、多くの会合体について前述の基準を満足させる一例であり、例えばLIの場合:
[BMIM][TFSI]があり、又は[P66614][TFSI]型イオン液体、1-エチル-2,3-トリメチレンイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([ETMIm][TFSI])イオン液体、N,N-ジエチル-N-メチル-N-2-メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[DEME][TFSA]イオン液体、N-メチル-N-ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([PYR14][TFSI])イオン液体、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13-TFSI)イオン液体の使用である。アニオンはまた、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムFSI(P13-FSI)イオン液体、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムFSI(PP13-FSI)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、FSI等の、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSA又はFSI)型のものであってよい。
【0080】
イオン液体溶媒LI及び/又は追加の液体LIのアニオンは、電気化学的シャトルとの錯体を形成するための錯体形成アニオンであってよい。
【0081】
その他の会合体は、カチオンがアニオンと会合するが、アニオンは有機であるか無機であるか区別せず、好ましくは広いアノード領域(anodic window)を有する、イオン液体に関して想定され得る。
【0082】
イオン液体溶液は、有利には、深共晶溶媒(DES)を形成する。深共晶溶媒は、2種の塩の共融混合物を形成することで得られる、室温での液体混合物であり、以下の一般式を有する
[Cat]・[X]・z[Y]
(式中、
[Cat]は、イオン液体溶媒(例えば、アンモニウム)のカチオンであり、
[X]は、ハロゲン化物アニオン(例えば、Cl)であり、
[Y]は、イオン液体溶媒のXアニオンによって錯体化され得る、ルイス又はブレンステッド酸であり、
zは、分子Yの数である)。
共晶は、Yの性質に応じて3つのカテゴリに分けることができる。
【0083】
第1のカテゴリは、I型共晶:
Y=MCl、例えばM=Fe、Zn、Sn、Fe、Al、Ga
に対応する。
【0084】
第1のカテゴリは、II型共晶:
Y=MCl・YHO、例えばM=Cr、Co、Cu、Ni、Fe
に対応する。
【0085】
第1のカテゴリは、III型共晶:
Y=RZ、例えばZ=CONH、COOH、OH
に対応する。
【0086】
例えば、DESは、非毒性及び非常に低いコストのDESを保証する、グリセロール又は尿素等の非常に低い毒性を有するH結合ドナーと組み合わされた塩化コリンである。
【0087】
別の例示的実施形態によれば、塩化コリンは、ベタインで置き換え可能である。これらのシステムが限定された電気化学的安定領域を有していたとしても、電位的に開放形の蓄電装置の浸液及び失活を保証することに役立つ。
【0088】
有利には、酸化及び/又は還元され得る電気化学的シャトルとして機能することができる化合物「Y」が選択される。例えば、Yは、イオン液体溶液中に溶解して金属イオンを形成することができる金属塩である。例えば、Yは鉄を含有する。
【0089】
実例として、共晶は、塩化物アニオンを有するイオン液体と金属塩FeCl及びFeClとの間で、異なる比率で、異なるカチオンにより、形成され得る。
【0090】
この型の反応はまた、水分子の金属塩に組み込まれるII型の共晶によっても生じ得るが、これにより水の比率が低いときに何らかの危険が生じることはない。低いとは典型的に溶液の10質量%未満、例えば溶液の5~10質量%を意味する。
【0091】
水素結合ドナー種(Y)によりイオン液体と会合するIII型の共晶は、[LI]/[Y]型混合物と共に使用することができ、式中、LIは、四級アンモニウムであってよく、Yは尿素、エチレングリコール、チオ尿素等の錯化分子(水素結合ドナー)であってよい。
【0092】
媒体を放電するために、有利には溶液の特性を改変する混合物も製造され得る。特に、非常に安定しており室温で液体であるが、塩化鉄等の電気化学的シャトル(又は酸化還元介在物質)をわずかに可溶化する、[BMIM][NTF]型のイオン液体溶媒を会合させることが可能である。
【0093】
追加のイオン液体LIは、[BRIM][Cl]型のものであってよく、アニオン[Cl]は、錯化により金属塩(MCl)の可溶化を促進する。このことにより、酸化還元介在物質の良好な移動特性と良好な可溶性を同時に有することが可能になり、したがって放電現象を促進することが可能になる。
【0094】
A1で表される活性種は、特に蓄電装置が開けられた際に熱暴走を防止する消火剤及び/又は難燃剤である。この活性種は、アルキルホスフェートであってよく、場合によってフッ素化されていてよく(フッ素化アルキルホスフェート)、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、又はトリス(2,2,2-トリフルフロエチル)ホスフェートであってよい。活性種の濃度は、80質量%~5質量%、好ましくは30質量%~10質量%の範囲で変動し得る。
【0095】
好ましくは、溶液は、端子のうち少なくとも1つで又は少なくとも接地用導体上で酸化及び/又は還元され得る、A2で表される酸化還元種をも含む。酸化還元種は、蓄電装置を安全な状態に置くことを可能にする。
【0096】
好ましくは、酸化還元種は、酸化還元反応を行うことで媒体の分解を低減するために、電気化学的シャトル(又は酸化還元介在物質)として機能する、酸化還元対である。
【0097】
酸化還元対は、セルの端子上でそれぞれ還元及び酸化され得る、溶液中の酸化剤及び還元剤を意味する。酸化剤及び還元剤は、当モル又は非当モルの比率で導入されてよい。
【0098】
電気化学的発電装置が開けられた場合、酸化還元種のうちの1つが、発電装置自体から由来してもよい。この酸化還元種としては、特にコバルト、ニッケル及び/又はマンガンが挙げられる。
【0099】
酸化還元対は、金属電気化学対又はそれらの会合物:
Mn2+/Mn3+、Co2+/Co3+、Cr2+/Cr3+、Cr3+/Cr6+、V2+/V3+、V4+/V5+、Sn2+/Sn4+、Ag/Ag2+、Cu/Cu2+、Ru4+/Ru8+若しくはFe2+/Fe3+
のうちの1つであり得る。
【0100】
酸化還元種及び酸化還元対はまた、有機分子、特に、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシ、ニトロニルニトロキシド/2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)、テトラシアノエチレン、テトラメチルフェニレンジアミン、ジヒドロフェナジン、メトキシ等の芳香族モジュール、N,N-ジメチルアミノ基(アニソールメトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、及びN,N-ジメチルアニリンN,N-ジメチルアミノベンゼン)から選択されてもよい。その他の例としては、10-メチル-フェノチアジン(MPT)、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジメトキシベンゼン(DDB)、及び2-(ペンタフルオロフェニル)-1,3,2-テトラフルオロジオキサボロール(PFPTFBDB)が挙げられる。
【0101】
酸化還元種及び還元対は、メタロセン族(Fc/Fc+、Fe(bpy)(ClO及びFe(phen)(ClO並びにその誘導体)又はハロゲン化分子群(Cl/Cl、Cl/Cl3-、Br/Br、I/I、I/I )であってもよい。
【0102】
特に、臭化物又は塩化物が選択される。好ましくは、容易に金属を錯体化することができるものは、塩化物である。例えば、塩化物アニオンによって錯体化された鉄は、負極の反応性を低減することができるFeCl を形成する。
【0103】
酸化還元種は、テトラメチルフェニレンジアミンであってもよい。
【0104】
金属イオンの金属は同一であるか又は異なっている複数の酸化還元対が、会合されてもよい。
【0105】
例えば、Fe2+/Fe3+及び/又はCu/Cu2+が選択される。後者は、2つの酸化状態で溶解することができ、毒性ではなく、イオン液体を劣化させず、リチウムを抽出するのに好適な酸化還元電位を有する(図4)。
【0106】
任意に、イオン液体溶液は、A3で表される乾燥剤、並びに/又は物質移動を促進する試剤A4、並びに/又はPF、HF、POF等の腐食性及び毒性種の安定剤/希釈剤である保護剤A5を含んでよい。
【0107】
例えば、A4で表される物質移動を促進する試剤は、粘度を低減するために添加され得る、少量の助溶媒である。
【0108】
試剤A4は、5%の水等の小さな割合の水であり得る。
【0109】
好ましくは、放電又は可燃性のリスクを生じることなく効果的に作用するように有機溶媒が選択される。有機溶媒は、ビニレンカーボネート(VC)、γ-ブチロラクトン(γ-BL)、プロピレンカーボネート(PC)、ポリ(エチレングリコール)、ジメチルエーテルであってよい。有利には、物質移動を促進する試剤の濃度は、1質量%~40質量%、より有利には10質量%~40質量%の範囲である。
【0110】
腐食性及び/又は有毒性成分を希釈及び/又は安定化することができる保護剤A5は、例えば、ブチルアミン型化合物、カルボジイミド(N,ジシクロヘキシルカルボジイミド型)、N,N-ジエチルアミノトリメチルシラン、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト(TTFP)、アミン系化合物、例えば、1-メチル-2-ピロリジノン、フッ素化カルバメート又はヘキサメチルホスホルアミドである。保護剤A5は、ヘキサメトキシシクロトリホスファゼン等のシクロホスファゼン系の化合物であってもよい。
【0111】
有利には、イオン液体溶液は、10質量%未満、好ましくは5質量%未満の水を含有する。
【0112】
更により好ましくは、イオン液体溶液は、水を含有しない。
【0113】
本方法は、0℃~100℃、好ましくは20℃~60℃の範囲の温度で使用されてよく、更により優先的には室温(20~25℃)で実施される。
【0114】
本方法は、空気下又は不活性雰囲気下で、例えばアルゴン下又は窒素下で、使用されてよい。
【0115】
電気化学的発電装置が消火溶液中に浸漬される場合、溶液は、試薬供給を向上させるために撹拌されてよい。例えば、撹拌は、50~2000rpm、好ましくは200~800rpmで行われてよい。
【実施例1】
【0116】
塩化コリン尿素FeCl媒質における放電:
イオン液体溶液は、モル比1~2の塩化コリンと尿素との混合物であり、これに0.3MのFeClを添加した。溶液が乾燥した後、室温にて、800rpmで撹拌しながら、Liイオン型セル18650をこの溶液50mlと接触させた。96時間後、電池を恒温槽から取り出す。セル電圧は0に等しく、これはシステムが放電していることを示す。
【0117】
消火剤を含有しているイオン液体溶液中でのLiイオン蓄電装置の浸漬(浸液)により、蓄電装置の完全放電が可能であり、したがって蓄電装置を電気的に安全にすることができる。
【実施例2】
【0118】
消防士による処置中にLiイオン蓄電装置モジュールを安全な状態に置く:
20Ahの容量及び50Vの電圧、すなわち1kWhの電気エネルギーを有する、Liイオン蓄電装置を備えた蓄電装置モジュール。このモジュールの容量は8Lであり、その重量は12kgである。蓄電装置モジュールの熱容量は、0.9J・kg-1・K-1と推定される。このモジュールが故障したとき、発熱反応及び燃焼により生じる熱エネルギーは、12000kJである(基準値:Liイオン蓄電装置の1000kJ/kg)。
【0119】
故障モジュールを安全な状態に置くために、2.2J・g-1・K-1のCpを有するエタリン(塩化コリン:エチレングリコールの質量比1:2の混合物)を含有する消火用イオン液体溶液及び5質量%のトリメチルホスフェートでモジュールを満杯にする。質量120kg、すなわち容量107Lの消火剤でモジュールを満杯にする。モジュールの質量及び消火剤の質量に関しては、熱力学的系統の総熱容量は、約275kJ・K-1(120000g×2.2J・g-1-1+12000g×0.9J・kg-1・K-1)である。消火剤及び蓄電装置モジュールについて20℃の初期温度を仮定すれば、モジュールの全懸念事象(20℃+12000kJ/275kJ・K-1)の場合に、全系統の温度は、64℃を超えない。この温度は、消火剤の特性が維持されることを確保して、モジュールを安全な状態に置くのに十分低いものである。
【0120】
加えて、蓄電装置を放電するための消火剤の容量は、蓄電装置が完全に放電されているとき、蓄電装置モジュールの燃焼エネルギーを2倍低減する。同時に、この累積的効果は、到達する最高温度を低減することもできる。
【符号の説明】
【0121】
10 蓄電装置
20 第1の電極
21 集電体
22 第1の端子
30 第2の電極
31 集電体
32 第2の端子
40 セパレーター
50 電解質
60 ケーシング
100 消火溶液
図1
図2
図3
図4