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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】殺生物剤を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20230101AFI20241011BHJP
【FI】
C02F1/50 531P
C02F1/50 510E
C02F1/50 520J
C02F1/50 540B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021569570
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 IL2020050669
(87)【国際公開番号】W WO2021001816
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】62/869,273
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515217085
【氏名又は名称】エー.ワイ. ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バラク,アヤラ
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514034(JP,A)
【文献】特開2014-176801(JP,A)
【文献】特表2014-534954(JP,A)
【文献】特開2007-21495(JP,A)
【文献】特表平10-506835(JP,A)
【文献】特開2008-43836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺生物剤を生成するための方法であって、
次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を提供することと、
アンモニウム塩の溶液を提供することと、
前記殺生物剤の導電率を監視しながら、前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を前記アンモニウム塩の溶液と混合することと、
前記導電率の極小値が観察されるまでアンモニウム対次亜塩素酸塩のモル比を減少させ、次いで前記導電率の極大値が観察されるまでアンモニウム対次亜塩素酸塩の前記比をさらに減少させることと、
を含み、前記アンモニウム対前記次亜塩素酸塩酸化剤の最終モル比が、1:1未満である、方法。
【請求項2】
前記次亜塩素酸塩酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を前記提供することが、8~18%の濃縮溶液を使用直前に水で希釈することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液が、1000~20,000ppmの濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液が、3000~10,000ppmの濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液が、3500~7000ppmの濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アンモニウム塩が、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、および硫酸アンモニウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アンモニウム塩が、カルバミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、水酸化アンモニウム、および硫酸アンモニウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アンモニウム塩が、カルバミン酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アンモニウム塩が、2つ以上のアンモニウム塩の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アンモニウム塩の溶液を前記提供することが、15~50%の濃縮溶液を、使用直前に、水または前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液で希釈することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アンモニウム塩の溶液が、1,000~50,000ppmの濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アンモニウム塩の溶液が、12,000~30,000ppmの濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アンモニウム塩の溶液が、塩基をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基が、水酸化ナトリウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を前記アンモニウム塩の溶液と前記混合することが、
ある量の前記アンモニウム塩の溶液を提供し、前記ある量の前記アンモニウム塩の溶液に第一の量の前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を添加すること、を含み、
アンモニウム対次亜塩素酸塩のモル比を前記減少させることが、
混合条件下で、複数の量の前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を、前記ある量の前記アンモニウム塩の溶液に添加することと、
各量の前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液の添加後の導電率を測定することと、
前記導電率の前記極大値が、前記導電率の前記極小値の観察後に観察されたとき、複数の量の前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を添加することを停止することと、を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。

【請求項17】
前記次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を前記アンモニウム塩の溶液と前記混合することが、
混合チャンバ内において、1:1超のアンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比で、次亜塩素酸塩溶液の流れを、アンモニウム塩溶液の流れと混合すること、を含み、
アンモニウム対次亜塩素酸塩のモル比を前記減少させることが、
前記アンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比を減少させるために、次亜塩素酸塩酸化剤の前記流れの流量を一定に保持し、アンモニウム塩の前記流れの流量を徐々に減少させるか、またはアンモニウム塩の前記流れの流量を一定に保持し、次亜塩素酸塩酸化剤の前記流れの流量を徐々に増加させることと、
前記混合チャンバを出る流れにおける導電率の値を監視することと、
アンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比が、前記導電率の値が極大値を有する、前記アンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比に等しくなるように選択することと、を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記監視することが、連続的である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記監視することが、前記混合チャンバを出る前記流れの試料中の導電率を測定することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2019年7月1日に出願され、「METHOD FOR PRODUCING A BIOCIDE」と題された米国仮特許出願第62/869,273号が参照され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれ、その優先権は、米国特許法施行規則1.78(a)(4)および(5)(i)に従って本明細書に主張される。
【0002】
1992年6月1日に出願され、PROCESS AND COMPOSITIONS FOR THE DISINFECTION OF WATERSと題された米国仮特許出願第07/892,533号、1998年1月27日に出願され、METHOD AND APPARATUS FOR TREATING LIQUIDS TO INHIBIT GROWTH OF LIVING ORGANISMSと題された米国仮特許出願第08/809,346号、2006年7月14日に出願され、BIOCIDES AND APPARATUSと題された米国仮特許出願第10/586,349号、および2015年8月1日に出願され、METHOD FOR CONTROLLING THE PRODUCTION OF A BIOCIDEと題された米国仮特許出願第14/765,335号が参照され、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、殺生物剤の生成方法に関する。
【背景技術】
【0004】
殺生物剤を生成および使用するための様々な技術が知られている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、殺生物剤を生成するための方法を提供することを試みる。
【0006】
それゆえ、本発明の好ましい実施形態によれば、次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を提供することと、アンモニウム塩の溶液を提供することと、次亜塩素酸塩酸化剤の溶液をアンモニウム塩の溶液と混合することと、を含む、殺生物剤を生成するための方法が提供され、アンモニウム対次亜塩素酸塩酸化剤のモル比は、1:1未満である。好ましくは、次亜塩素酸塩酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムである。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、次亜塩素酸塩酸化剤の溶液は、使用直前に約8~18%の濃縮溶液を水で希釈することによって調製される。好ましくは、次亜塩素酸塩酸化剤の溶液は、約1000~約20,000ppm、より好ましくは約3000~約10,000ppm、および最も好ましくは約3500~約7000ppmの濃度を有する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、アンモニウム塩は、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、および硫酸アンモニウムから選択される。好ましくは、アンモニウム塩は、カルバミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、水酸化アンモニウム、および硫酸アンモニウムから選択される。最も好ましくは、アンモニウム塩は、カルバミン酸アンモニウムである。別の好ましい実施形態によれば、アンモニウム塩は、2つ以上のアンモニウム塩の混合物である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、アンモニウム塩の溶液は、使用直前に、約15~50%の濃縮溶液を水または次亜塩素酸塩酸化剤の溶液で希釈することによって調製される。好ましくは、アンモニウム塩の溶液は、約1,000~約50,000ppm、より好ましくは、約12,000~約30,000ppmの濃度を有する。本発明の好ましい実施形態によれば、アンモニウム塩の溶液は、さらに塩基を含む。好ましくは、塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0010】
好ましくは、本方法は、殺生物剤の導電率を監視することをさらに含む。本発明の好ましい実施形態によれば、本方法は、ある量のアンモニウム塩の溶液を提供することと、混合条件下で、複数の量の次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を、ある量のアンモニウム塩の溶液に添加することと、各別個の量の次亜塩素酸塩酸化剤の溶液の添加後に、制御パラメータを測定することと、導電率の最小値の観察後に導電率の最大値が観察されたとき、次亜塩素酸塩酸化剤の該溶液の量を添加することを停止することと、を含む。
【0011】
代替的な実施形態では、本方法は、1:1を超えるアンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比で、混合チャンバにおいて、次亜塩素酸塩溶液の流れをアンモニウム塩溶液の流れと混合することと、アンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比を減少させるために、流れのうちの一方の流量を一定に保持し、他方の流れの流量を徐々に増加または減少させることと、混合チャンバを出る流れの導電率の値を監視することと、導電率の値が極大値を有する、アンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比に等しくなるように、アンモニウム:次亜塩素酸塩のモル比を選択することと、を含む。一実施形態では、監視は、連続的である。代替的な実施形態では、監視は、混合チャンバを出る流れの別個の試料における、制御パラメータを測定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、以下の詳細な説明を図面と併せることでより完全に理解され、認識されるであろう。
【0013】
図1】殺生物剤生成中の導電率の変化、および殺生物剤を使用する微生物死滅試験の結果を示すグラフである。
図2】殺生物剤生成中の導電率の変化、および殺生物剤を使用する微生物死滅試験の結果を示すグラフである。
図3】殺生物剤生成中の導電率の変化、および殺生物剤を使用する微生物死滅試験の結果を示すグラフである。
図4】包装機用殺生物剤を生成するために使用される次亜塩素酸塩:アンモニウム塩の比、および包装機内の微生物によって生成される揮発性脂肪酸のレベルを経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
公開された欧州特許公開第0517102号に記載されているように、その内容は、参照により本明細書に組み込まれ、循環水の生物付着は、循環水中に見られる藻類、真菌、細菌、および他の単純な生物によって引き起こされる周知の問題である。その特許公開は、一方が酸化剤であり、もう一方がアンモニウム塩である2つの構成成分を混合し、その混合物を処理される水系に実質的に直ちに添加することによって、高塩素需要水中の生物汚染を制御することを記載している。これは、そこに記載されているように、活性殺生物性成分を生成する。酸化剤およびアンモニウム塩の多数の例がその特許公開に記載されている。
【0015】
しかしながら、液体を処理して生物の成長を阻害するこの方法で遭遇する問題は、濃縮された活性殺生物成分が化学的に非常に不安定であり、形成時に迅速に分解し、その結果、pHが急速に低下することである。これは、分解がHOBrの望ましくない形成をもたらす、臭化アンモニウムに由来する活性殺生物性成分に特に当てはまる。したがって、従来の投薬ポンプおよび混合器が使用されるとき、形成された活性殺生物性成分は、急速に分解し、その効力を失う。また、かかる濃縮された活性殺生物剤のpH範囲は、理論的には8.0~12.5でありながら、実際には、早い分解のため、pHが8.0を超えることはない。加えて、分解速度を減少させるために、アンモニウム塩を、過剰に供給する必要があった。
【0016】
US5,976,386では、その内容が参照により本明細書に組み込まれ、反応生成物を安定化し、かつ分解生成物をほとんど含有しない再現性のある生成物を維持するために、酸化剤/アミン源の一定の比率を維持することを可能にし、それにより、過剰なアミン源を使用する必要性を回避することを可能にする殺生物剤を生成するための方法および装置が開示される。本明細書に記載の新規な方法は、酸化剤およびアミン源の両方の効率的なインサイチュ希釈物を生成することと、2つの希釈物を導管に同期して計量して、所定の比率に従ってその中で連続的に混合して活性殺生物性成分を生成することと、を含む。所定の比は、少なくとも1:1のアミン対酸化剤の比であった。つまり、過剰な酸化剤は、不可能であり、過剰なアンモニウムの存在によって防止された。
【0017】
US5,976,386にすでに記載されているように、殺生物剤形成の注意深い制御が必要である。殺生物剤生成プロセスは、複数の供給ポイントシステムを使用し、これは、ポンプが異なれば圧力変化に対する応答も異なり、かつポンプの供給速度が水流の圧力に依存するため、供給ラインごとに個別の制御を必要とする。任意の現場プロセスに関しては、適正な生成物を高収率で、かつ最小限の副生成物で確実に生成するために、オンライン制御が必要である。さらに、上記の参照された特許は、最適な性能のためには、等モル量のアンモニウムおよび次亜塩素酸塩が必要であることを開示する。過剰な次亜塩素酸塩は、局所的に過剰であっても、多塩素化クロラミンの生成および殺生物性生成物のモノクロラミン(MCA)の分解をもたらして、NO種および無機酸を形成することが示された。次亜塩素酸塩が不十分な場合、アンモニウムは、完全に反応せず、より低い殺生物剤濃度、化学物質の過剰使用、より高い処理コストなどをもたらす。その内容が参照により本明細書に組み込まれる、US7,837,883に開示された、次亜塩素酸ナトリウムおよびカルバミン酸アンモニウムなどの殺生物剤を作製するために使用される成分は、不安定な化学物質であり、使用中に時間とともに分解する。結果として、2つの試薬の所定の一定の供給率の下で供給ユニットを動作させることが、可変生成物を生成する。加えて、水温、高濃度の生成された殺生物剤、水質などの他のパラメータは、殺生物剤の分解を増進することができる。
【0018】
US5,976,386では、アンモニウム塩と次亜塩素酸ナトリウムとの間の反応の終点の指標としてのpHの使用が開示されている。次亜塩素酸塩をアンモニウム塩溶液に添加すると、pHが上昇する。しかしながら、等モル点後、次亜塩素酸塩は、殺生物性MCAを分解し始め、無機酸を形成し、これはpHを低下させる。したがって、pHは、終点の指標として使用することができる。しかしながら、pHは、比較的低いpH値でのみ正確な指標であることが見出された。殺生物剤の生成は、比較的高いpHで実施されるため、他の指標に対する必要性があった。
【0019】
それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US9,801,384は、アンモニウム塩と次亜塩素酸塩酸化剤との間の反応の終点を示すために使用することができる、追加のパラメータを開示する。具体的には、酸化還元電位(ORP)、導電率、および誘導は、すべて、終点で比較的最小値を有することが示された。溶存酸素は、反応中に一定の値を有し、終点で急速に減少することが示された。これらのパラメータは、終点を見逃して過剰な次亜塩素酸塩を添加する場合、結果は、殺生物剤の分解および効力の損失であるという想定を伴い、反応の終点を識別することに効果的であることが示された。それゆえ、終点が識別されるときでも、過剰な次亜塩素酸塩による分解を回避するために、1:1のアンモニウム対次亜塩素酸塩の比をわずかに上回って作業することが通例である。
【0020】
要約すると、本発明の前に、アンモニウム塩および次亜塩素酸塩酸化剤から殺生物剤を調製するとき、過剰の次亜塩素酸塩を回避する必要があり、実際には、わずかに過剰のアンモニウム塩を使用する必要があることが十分に確立された。現在、過剰なアンモニウムは、殺生物活性に有害であり、見かけの等モル点の後の追加の次亜塩素酸塩の添加は、より効果的な殺生物剤をもたらすことが見出されている。
【0021】
本発明の第1の実施形態によれば、次亜塩素酸塩酸化剤の溶液を、アンモニウム対次亜塩素酸塩のモル比が1:1未満である、アンモニウム塩の溶液と混合することを含む、殺生物剤を生成するための方法が提供される。
【0022】
一実施形態では、殺生物剤は、バッチプロセスで生成される。バッチプロセスは、混合および導電率を監視しながら、次亜塩素酸塩酸化剤の溶液をアンモニウム塩の溶液に添加することを含む。導電率における極小値が観察された後、導電率の極大値が観察されるまで、追加の次亜塩素酸塩が添加される。導電率における極大値は、過剰なアンモニウムが存在しないことを表すと考えられる。そのように生成された殺生物剤は、すぐに使用することができ、または後で使用するために貯蔵することができる。
【0023】
代替的な実施形態では、殺生物剤は、連続プロセスで生成される。連続プロセスでは、次亜塩素酸塩の溶液およびアンモニウム塩の溶液は、混合器内で連続的に混合され、導電率は、混合器内もしくは混合器の下流の導管内で、オンラインで監視されるか、または混合器から取り出された別個の試料で測定される。溶液のうちの一方の流量は、一定に保たれ、他方の溶液の流量は、導電率の極小値が観察されるまで、アンモニウム対次亜塩素酸塩の比を減少させるように変化させる。比は、さらに導電率における極大値が観察されるまで、減少する。典型的に、溶液のうちの一方または両方の濃度における変化の結果として、流量を調整する必要性を識別するために、導電率制御パラメータの監視が継続される。連続プロセスにおいて生成された殺生物剤は、生成された際に培地に適用され得るか、または後で使用するために貯蔵することができる。
【0024】
上記のように、導電率における極大値が観察されるまで、次亜塩素酸塩が、アンモニウム塩に添加される。最大導電率の点を超えて、追加の次亜塩素酸塩が、添加されてもよい。例えば、追加の次亜塩素酸塩は、最大導電率まで合計された次亜塩素酸塩の2%、5%、10%、15%、または20%であり得る。しかしながら、プロセス制御の理由から、最大導電率は、これが容易に識別可能な点であるため使用され得る。
【0025】
次亜塩素酸塩酸化剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の次亜塩素酸塩などの任意の次亜塩素酸塩酸化剤であり得る。好ましくは、次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムまたは次亜塩素酸カルシウムである。最も好ましくは、次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸ナトリウムである。
【0026】
次亜塩素酸塩溶液は、好ましくは、次亜塩素酸塩の濃縮原液を水と混合して、次亜塩素酸塩希釈液を形成することによって調製される。アンモニウム塩溶液は、好ましくは、アンモニウム塩の濃縮原液を水または次亜塩素酸塩希釈液と混合して、アンモニウム塩希釈液を形成することによって調製される。アンモニウム原液を水で希釈して、次亜塩素酸塩希釈液と等モルのアンモニウム塩希釈液を調製するとき、殺生物剤の最終濃度は、次亜塩素酸塩希釈液の濃度の半分になる。一方、アンモニウム原液を次亜塩素酸塩希釈液で希釈するとき、殺生物剤の最終濃度は、次亜塩素酸塩希釈液の濃度に等しくなる。
【0027】
次亜塩素酸塩希釈液の濃度は、好ましくは、約1000~約20,000ppmである。より好ましくは、次亜塩素酸塩溶液の濃度は、約3000~約10,000ppmである。最も好ましくは、次亜塩素酸塩溶液の濃度は、約3500~約7000ppmである。次亜塩素酸塩溶液は、好ましくは、使用直前に約8~18%の原液を水で希釈することによって調製される。好ましくは、次亜塩素酸塩希釈液は、使用直前に調製される。殺生物剤が連続プロセスで形成されるとき、次亜塩素酸塩希釈液は、好ましくは、必要とされる際にオンラインで調製される。
【0028】
任意のアンモニウム塩が、本発明の方法において使用され得る。好ましくは、アンモニウム塩は、重炭酸アンモニウム、臭化アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、および硫酸アンモニウムから選択される。より好ましくは、アンモニウム塩は、臭化アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、および硫酸アンモニウムから選択される。さらにより好ましくは、アンモニウム塩は、臭化アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、および硫酸アンモニウムから選択される。最も好ましくは、アンモニウム塩は、カルバミン酸アンモニウムである。一実施形態では、アンモニウム塩は、2つ以上のアンモニウム塩の混合物を含む。
【0029】
一実施形態では、アンモニウム塩希釈液は、水中のアンモニウム塩の15~50%原液を、約1,000~約50,000ppm、より好ましくは約12,000~約30,000ppmの濃度に希釈することによって調製される。好ましくは、アンモニウム塩希釈液は、使用直前に調製される。殺生物剤が連続プロセスで形成されるとき、アンモニウム塩希釈液は、好ましくは、必要とされる際にオンラインで調製される。
【0030】
代替的な実施形態では、アンモニウム塩希釈液は、アンモニウム塩の原液を希釈された次亜塩素酸塩溶液の一部分で希釈することによって調製される。この方法は、次亜塩素酸塩溶液が塩基性であるため、より高いpHを有するアンモニウム塩希釈液を生成する。これは、高pHでより安定している、カルバミン酸アンモニウムなどのいくつかの塩に有利である。
【0031】
いくつかの実施形態では、アンモニウム塩希釈液の初期pHは、好ましくは、少なくとも9.0、より好ましくは少なくとも10.0、さらにより好ましくは少なくとも10.4、および最も好ましくは少なくとも10.8である。1つの好ましい実施形態では、アンモニウム塩希釈液は、水酸化ナトリウムを含む。特に、アンモニウム塩が臭化アンモニウムまたは硫酸アンモニウムであるとき、導電率を最大に観察可能にするために、水酸化ナトリウムをアンモニウム塩希釈液に添加して、pHを少なくとも10.0、好ましくは少なくとも10.4まで上げる。
【実施例
【0032】
実施例1
カルバミン酸アンモニウムの溶液を、100gのカルバミン酸アンモニウムを400gの水に溶解して、20%溶液を形成することによって形成した。次亜塩素酸ナトリウムの濃縮溶液を、5000ppmの濃度に希釈した。2.6mlのカルバミン酸アンモニウム溶液を、30mlの希釈次亜塩素酸塩と混合し、得られた溶液を、希釈次亜塩素酸塩で滴定した。次亜塩素酸塩を、10mlの一定分量ずつ添加し、滴定中、溶液の導電率を監視した。
【0033】
導電率の最小値は、3.89のN:Cl比であることが見出された。窒素量は、アンモニア性窒素およびカルバミン酸窒素の両方を含む。それゆえ、アンモニア性窒素のみが、次亜塩素酸塩と反応すると仮定すると、等モル点は、2:1の比である。予想される等モル点の前に発生する導電率の最小値は、アンモニアを失う傾向があるカルバミン酸アンモニウムの不安定な性質を反映しているため、実際のN:Cl比は、計算された比よりも低い。溶液のpHもまた、導電率の最小値に影響を有し得る。これは、殺生物剤の生成における制御パラメータの必要性を強調する。次亜塩素酸塩の添加は、最小点を超えて継続し、導電率の最大値は、1.49(130mlの次亜塩素酸塩)のN:Cl比で発生した。
【0034】
50、100、150、および200mlの次亜塩素酸塩を添加した後の殺生物剤の試料を、微生物死滅試験のために採取した。殺生物剤を、シュードモナスまたは大腸菌を含有する試料に様々な濃度で添加した。微生物の低減を測定し、表1および表2に示した。
【0035】
各試験の開始時に、アンモニウム塩が過剰であるため、殺生物剤の濃度は、次亜塩素酸塩の濃度と等しい。より多くの次亜塩素酸塩を添加した際、過剰なアンモニウムの量が減少する。各試験の組では、過剰なアンモニアの量だけが変化しながら、一定の殺生物剤濃度が存在する。すべての試験で、過剰なアンモニアの量が減少するにつれて、殺生物剤の濃度を変えることなく、殺生物剤の効力が増加する。これは、これまで考えられていたこととは反対に、過剰なアンモニアが、殺生物活性に有害であることを示す。
【表1】
【表2】
【0036】
実施例2
8%水酸化ナトリウムを含有する、5.1mlの20%カルバミン酸アンモニウム溶液を、60mlの5000ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液で希釈した。次亜塩素酸ナトリウムを、20mlずつ添加し、各工程において、導電率を測定した。いくつかの時点で、殺生物剤の試料を、採取し、シュードモナスの死滅試験において1.0ppmの濃度で使用した。結果を図1に示す。導電率における極小値とそれに続く極大値を、はっきりと見ることができる。導電率の最小値は次亜塩素酸塩とアンモニウムの理想的な比を表すとこれまで考えられていたが、殺生物剤の活性は、最小値を超えて、最大値に向かって改善し続けていることが見られ得る。
【0037】
実施例3
殺生物剤を、アンモニウム塩が、90%のカルバミン酸アンモニウムおよび10%の臭化アンモニウムまたは水酸化アンモニウムからなることを除いて、実施例2のように調製した。1.0ppmの濃度のシュードモナスの死滅試験を、いくつかの点で実施した。結果は、図2(臭化アンモニウム)および図3(水酸化アンモニウム)で示される。これらの試験でも、殺生物剤の活性は、導電率の最小値をはるかに超えて、導電率の最大値まで改善することが見られ得る。
【0038】
実施例4
殺生物剤を、様々な量の炭酸ナトリウムを含有するカルバミン酸アンモニウムの溶液から始めて、実施例1のように調製した。130mlの次亜塩素酸塩(1.297のN:Cl比)の添加後、殺生物剤を、シュードモナスによる死滅試験のために採取した。結果は、表3に示される。
【表3】
【0039】
殺生物剤の調製前のアンモニウム塩への炭酸塩の添加は、殺生物剤の効力を低減させた。炭酸イオンは塩素の捕捉剤として機能し、それゆえアンモニウムの塩素化およびモノクロラミン殺生物剤の有効濃度を低減させ、過剰なアンモニウムの量を増加させると仮定される。炭酸塩がすでに生成された殺生物剤の活性を妨害しないことは、別の実験で示された。殺生物剤を、炭酸塩を含まないカルバミン酸アンモニウムから生成した。炭酸ナトリウムを、殺生物剤の添加前に、処理される培地に添加した。カルバミン酸濃度と等モルの炭酸塩レベルでさえ、効力における低減は観察されなかった。
【0040】
実施例5
殺生物剤を、実施例1のように調製した。80mlおよび170mlの次亜塩素酸塩(N:Cl比はそれぞれ2.43および1.14)の添加後の殺生物剤の試料を、微生物の混合物を有する包装工場からの白水を処理するために使用した。殺生物剤を、1、5、および10ppmの濃度で、異なる試料に添加し、対数低減を、24時間にわたって経時的に測定した。結果は、表4に示される。
【表4】
【0041】
殺生物剤は、より多くの次亜塩素酸塩を使用して作製された殺生物剤がより効果的であるという状態で、細菌数を低減させるために効果的であった。
【0042】
実施例6
殺生物剤を、実施例1のように調製した。50mlおよび200mlの次亜塩素酸塩(それぞれ、2.05および0.63のN:Cl比)の添加後の殺生物剤の試料を採取し、試料のUV-visスペクトルを測定した。両方の試料は、245nmでモノクロラミンピークを含む同じスペクトルを有し、より高い塩素化アミンに関連する追加のピークはなかった。これは、見かけの等モル点を通過した後でも、活性殺生物剤がモノクロラミンであることを示す。この結果は、殺生物剤の生成を注意深く制御する必要があることを明示し、過剰な次亜塩素酸塩が、必ずしも高塩素化アミンおよびモノクロラミン殺生物剤の分解につながるとは限らないことを示す。
【0043】
実施例7
Clとして、6,000ppmの次亜塩素酸ナトリウムと等モルの硫酸アンモニウムの溶液(約5600ppmの硫酸アンモニウム)を、調製した。100mlの硫酸アンモニウム溶液を、次亜塩素酸ナトリウムの6,000ppm溶液で滴定した。溶液のpHを、滴定を通して監視した。10、50、100ml(最大pH)を添加した後に試料を採取し、生成された殺生物剤の死滅効率を、大腸菌の培養物に対して確認した。確認された殺生物剤の供給率は、0.4および0.6ppmであった。結果は、表5に示される。
【表5】
【0044】
殺生物剤が過剰なアンモニウム塩を含有するとき、殺生物剤の効率は、はるかに低かった。過剰なアンモニウムの良性についてこれまで考えられていたこととは異なり、過剰なアンモニウムは、殺生物剤の活性を妨害するということが明らかである。さらに、過剰な次亜塩素酸塩による分解の恐れから過去に回避されていた等モル点に到達することは、実際に殺生物剤の効力を改善する。
【0045】
実施例8
包装機には、カルバミン酸アンモニウムおよび次亜塩素酸ナトリウムから生成された殺生物剤が、最初に等モルであるように計算された重量比で供給された。細菌によって生成された揮発性脂肪酸(VFA)のレベルが、監視された。VFAレベルは、初期は安定していたが、システムに対するいくつかの混乱に起因して、VFAレベルが増加した。カルバミン酸アンモニウム対次亜塩素酸塩の比が、減少し、VFAが低下し始めた。比が見かけの等モル比に戻ったとき、VFAは、再び上昇し始め、比が再び低下するとき、低下し始めた。結果を図4に示す。これは、カルバミン酸アンモニウム対次亜塩素酸塩の比を1:1に設定するだけでは、効果的な制御には不十分であることを示す。むしろ、いくつかのパラメータは、監視され、かつ過剰なアンモニウムを回避するように2つの成分の比を調整しなければならない。
【0046】
本発明が、上で特に示され、説明されたものに限定されないことが当業者には理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよび副組み合わせの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者が思いつき、先行技術にはないそれらの修正を含む。

図1
図2
図3
図4