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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】電気加熱式ハイブリッド高温方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20241011BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20241011BHJP
   C01B 3/26 20060101ALI20241011BHJP
   C01B 3/34 20060101ALI20241011BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20241011BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20241011BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241011BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20241011BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20241011BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241011BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241011BHJP
【FI】
C01B3/00 Z
C01B3/02 B
C01B3/26
C01B3/34
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/0606
H01M8/0612
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021572345
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020064779
(87)【国際公開番号】W WO2020245016
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】19178437.0
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】ThyssenKrupp Allee 1 45143 Essen Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】514088943
【氏名又は名称】ティッセンクルップ インダストリアル ソリューションズ アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】thyssenkrupp Industrial Solutions AG
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シャイフ,フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】コリオス,グリゴリオス
(72)【発明者】
【氏名】ボーデ,アンドレアス
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521669(JP,A)
【文献】特表2016-507358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
H01M 8/04537
H01M 8/04746
H01M 8/04858
H01M 8/0606
H01M 8/0612
H01M 8/10
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を得る化学施設の1つ以上の熱消費プロセス(1)を連続的に実行する方法であって、少なくとも1つの熱消費プロセスが電気加熱され、熱消費プロセスの反応ゾーンの最高温度が500℃より高く、少なくとも1つの熱消費プロセスの水素の少なくとも50%が下流プロセス(51)の生成物管路(17)を介してさらに連続的に処理され、管路(7)を介して局所水素ネットワーク(4)に供給され、少なくとも1つの熱消費プロセスに必要な電気エネルギーが外部電力グリッド(16)および少なくとも1種の局所電力源(11)から引き出され、少なくとも1種の局所電力源(11)に、局所水素ネットワーク(4)からその年間エネルギー需要の少なくとも50%の程度までフィードすること、および前記少なくとも1種の局所電力源に、熱消費プロセスから直接もたらされる水素を、その年間エネルギー需要の50%以下の程度までフィードすること、ならびにエネルギーキャリアとしての熱消費プロセス()からの水素を局所水素ネットワーク(4)に貯蔵すること、ならびに局所水素ネットワーク(4)に、少なくとも1つのさらなる化学プロセス(31)からの水素(36)をフィードすることを含み、局所水素ネットワークの全容量が少なくとも5GWhであり、少なくとも1種の追加の局所エネルギーキャリアネットワーク(3,5,6)が使用され、追加のエネルギーキャリアとしての天然ガス、ナフサ、合成ガスまたは水蒸気が少なくとも1種の追加の局所エネルギーキャリアネットワーク(3,5,6)に貯蔵される、方法。
【請求項2】
局所水素ネットワーク(4)中の、エネルギーキャリアとしての熱消費プロセス(1)からの水素が、連結したパイプグリッドおよび貯蔵容器を介して分配される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
局所水素ネットワーク(4)と少なくとも1種の追加の局所エネルギーキャリアネットワーク(3,5,6)が、少なくとも20GWhの全容量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
局所水素ネットワーク(4)が、水蒸気分解、水蒸気改質、メタンの熱分解、スチレン合成、プロパンの脱水素化、合成ガス生産、ホルムアルデヒド合成のプロセスからフィードされる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
使用される局所電力源が、少なくとも1種のガスタービン(GT)および/または水蒸気タービン(ST)および/または燃料電池である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
熱消費プロセスによって必要とされるエネルギーが、少なくとも90%の程度まで電気エネルギーによって提供される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱消費プロセスが統合施設で実行される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
局所電力源の起動時間が15分より短い、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
熱消費プロセスに使用される反応器が、導電性材料の固体粒子のランダム装填物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱消費プロセスが、移動床で固体ストリームおよびガスストリームの向流によって実行され、移動床が300kJ/(mK)~5000kJ/(mK)の体積比熱容量を有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
外部電力グリッドからの引き出しならびに局所電力源のオンおよびオフの切替えが、電力のコストに応じて制御される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
熱消費プロセスが、水蒸気改質、乾式改質、水の加熱分解、炭化水素の熱分解および/または分解である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を、公衆電力グリッドのミニット予備力として使用する方法。
【請求項14】
電気加熱式熱消費プロセス()からの水素および少なくとも1つのさらなる化学プロセス(31)からの水素(36)が局所水素ネットワーク(4)にフィードおよび貯蔵され、局所水素ネットワークが少なくとも5GWhの全容量を有し、少なくとも1種の追加の局所エネルギーキャリアネットワーク(3,5,6)が使用され、追加のエネルギーキャリアとしての天然ガス、ナフサ、合成ガスまたは水蒸気を少なくとも1種の追加の局所エネルギーキャリアネットワーク(3,5,6)に貯蔵される、化学施設の局所水素ネットワーク(4)を電気エネルギーの貯蔵に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の熱消費プロセスを連続的に実行する方法であって、少なくとも1つの熱消費プロセスが電気加熱され、熱消費プロセスの反応ゾーンの最高温度が500℃より高く、少なくとも1つの熱消費プロセスの生成物の少なくとも70%が下流プロセスでさらに連続的に処理されおよび/または局所エネルギーキャリアネットワークにフィードされ、少なくとも1つの熱消費プロセスに必要な電気エネルギーが外部電力グリッドおよび少なくとも1種の局所電力源から引き出され、少なくとも1種の局所電力源に、少なくとも1種の局所エネルギーキャリアネットワークからその年間エネルギー必要量の少なくとも50%の程度までフィードすること、および前記少なくとも1種の局所電力源に、熱消費プロセスからの生成物をその年間エネルギー必要量の50%以下の程度までフィードすること、ならびにエネルギーキャリアとしての天然ガス、ナフサ、水素、合成ガスおよび/または水蒸気を少なくとも1種の局所エネルギーキャリアネットワークに貯蔵すること、ならびに少なくとも1種の局所エネルギーキャリアネットワークに、少なくとも1つのさらなる化学プロセスからの少なくとも1種のさらなる生成物および/または副生成物をフィードすることを含み、局所エネルギーキャリアネットワークの全容量が少なくとも5GWhである、方法に関する。本発明はさらに、この方法を公衆電力グリッドのミニット予備力(minute reserve)として使用する方法、および化学施設の局所エネルギーキャリアネットワークを電気エネルギーの貯蔵に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーを利用可能にする上での最大の問題の1つは、天候の影響に大きく依存することによって常に生じるばらつきを吸収するための貯蔵容量の不足である。
【0003】
再生可能エネルギーの貯蔵の問題は、1980年代から関心の高い話題であった。再生可能エネルギーの使用にもかかわらず、エネルギーユーザ、例えば化学産業に、生成される電力を需要に応じて供給することを可能にするために、エネルギー供給業者は、以下を含む措置を検討した:
【0004】
US4,776,171は、産業からの需要を満たすために、複数の再生可能エネルギー源および複数のエネルギー貯蔵源、さらに複数の制御および分配所からなるエネルギー生成および管理システムについて記載している。
【0005】
US2011/0081586は、再生可能エネルギー源と電気化学または電解セルの組合せであって、電気化学または電解セルが再生可能エネルギー源の変動を均衡化させ、それによりそれを継続的に利用可能にすることができる、組合せについて記載している。US2008/0303348は、再生可能エネルギーのみを利用するにもかかわらず、需要依存制御を可能にする発電プラントについて開示している。US2008/0303348は、風力エネルギー、太陽エネルギーおよびバイオマスの燃焼から得られるエネルギーの組合せについて記載している。発電プラントは、3種のエネルギー源を絶え間なく自発的に切り替え、対応する産業からの需要を常に安価に満たすことができると記載される。
【0006】
これらの開示の焦点は、変動する再生可能エネルギーの使用にもかかわらず、ユーザに需要に応じて電力を供給できるようにすることである。結果として、ユーザが電力生産の量を規定し、天候が再生可能に生成される電力の分量を左右する。
【0007】
US2012/0186252は、外部ユーザからの需要にもっぱら一致するものではない電気の生成および確立方法について記載している。US2012/0186252によると、従来の発電プラントは、化石および/または再生可能燃料によって操作され、生成された電力は、電力に需要がある場合に公衆電力グリッドにフィードされる。電力の需要が低い期間は、生成される電力は内部で水素の生産のために使用され、水素はその後サバティエプロセスで二酸化炭素と反応し、再生可能燃料であるメタンを生じることができる。したがって、水素生成装置は、局所電力源の遅いダイナミクスを生産管路の変化によって減衰させることができる。さらに、余剰電力が利用可能な期間では、公衆グリッドからの電力は内部の水素生成装置を操作するために使用される。したがって、水素生成装置は電力需要および電力供給に応じて操作される。電力の需要が低い場合、生成装置への電力は局所供給源からもたらされ、余剰電力期間中は公衆電力グリッドからもたらされる。この方法の欠点は、水素生成装置が、変動する生産出力を有する熱消費プロセスとして操作されることであり、これは水素生成装置が、従来の発電プラントからの電力出力をグリッドからの需要に合わせて調整するよう働くためである。化学産業用の統合施設で要求されるような、水素生成装置の一定の生産出力を保証する操作モードの開示はない。
【0008】
US4,558,494は、アンモニアの製造に太陽エネルギーを直接利用する方法について記載する。この吸熱プロセスに必要とされる熱は、太陽エネルギーが利用可能な場合太陽エネルギーによって、太陽エネルギーが利用可能でない場合は生産されるアンモニアの燃焼によって加熱される伝熱流体によって提供される。これに対応して、US4,668,494は、2種の別個のエネルギー源、1種は太陽エネルギー、1種は酸化エネルギーを吸熱化学プロセスに使用する方法について開示している。しかし、電気エネルギー源の使用に関する記述はない。
【0009】
電力生成における再生可能エネルギーの割合は、2016年ドイツにおいて設置電力基準で既に50%であり、電力生成基準で30%であったが(日付:2017年2月26日;「Energie fuer Deutschland,Fakten,Perspektiven und Positionen im globalen Kontext」 [Energy for Germany,Facts,Perspectives and Positions in a Global Context]、Weltenergierat - Deutschland e.V.、2017)、再生可能エネルギーに基づく電力生成技術が、第1に化石エネルギーキャリアのコスト上昇のため、第2に市場規制措置のために経済的に魅力的であり、今後も継続することから、今後数年で再び大きく上昇する。
【0010】
近い将来、太陽、風力および水からの再生可能エネルギーのますます多くのシェアが電力グリッドにフィードされ、これは電力のコンシューマによって不完全にしか受容されないため、電力スパイクはこれまで以上に頻発する。余剰電力と呼ばれるこれらの電力ピークは、グリッドの安定性を保証するために、電力消費プロセスの制御された作動によって吸収されなければならない。
【0011】
コンシューマは、負の制御電力と呼ばれるものを提供する。制御電力は、要求される作動時間に応じて二次制御電力およびミニット予備電力と定義される。制御電力予備力と呼ばれる制御電力としての容量の提供は、容量に需要があるか否かにかかわらず有償である。2016年、約定された負の二次制御電力およびミニット予備電力の平均は、それぞれおよそ1900MWであった。2016年ドイツにおいて、一次制御電力、二次制御電力およびミニット予備電力のための制御電力予備力に対する支払いは、およそ2億ユーロであった(the Bundesnetzagentur、ドイツ連邦ネットワーク庁の2017年モニタリングレポート)。
【0012】
制御電力の利用に対する支払いは、均衡エネルギー価格によって決定される。電力市場における均衡エネルギー価格は、その生成コストを大幅に下回る場合があるか、またはそのエネルギー含有量に基づいて同じ発熱量を有する化石燃料より低い価格で、もしくは無償で(すなわち、支払い無しで)、もしくはさらには負の価格で供給される場合がある。2016年の平均均衡化エネルギー価格は、-14.12ユーロ/MWhであった。これは、余剰電力を受容したコンシューマが、追加的にクレジットノートを受け取ったことを意味する。2016年のクレジットノートの総計は、約1078万ユーロであった。
【0013】
ドイツでは、再生可能エネルギー法により、再生可能エネルギーの生産業者の電力グリッドへの優先的なフィードが保証されている。あらゆるグリッド最適化およびグリッド開発措置にもかかわらず、過容量または輸送容量の不足により、再生可能電気生成装置の下方調節が避けられない状況が生じた場合、これは下方調節を生じたグリッドを操作するグリッド操作者によって補償されなければならない。2016年には、3743.2GWhがこれらのいわゆるフィード管理措置による影響を受け、これは約6億4300万ユーロのコストで補償されなければならなかった(the Bundesnetzagenturの2017年モニタリングレポート)。
【0014】
風力および光起電力のフィードは、従来の発電プラントの最小残存電力負荷を顕著に低減させる(18~20GW)ため、ベース負荷発電プラントとして機能する火力発電プラントに対するコスト圧力が高まっている。一方で、技術的制限(最小負荷および起動時間)ならびにシステムの安定性の需要(システムサービスの提供)により、従来の最小限の生成が必要とされる。簡潔な推定によると、システムの安定性を保証するには、現在のところ4~20GWの範囲の従来の発電プラントからの最小限の生成が必要であることが示唆される。これは、風力および光起電力の変動するフィードに反応するのに十分なアイドル電力および有効電力予備力を提供するために必要である(Statusbericht Flexibilitaetsbedarf im Stromsektor[Status Report on Flexibility Requirement in the Power Sector])。
【0015】
これらの問題は、発電プラントの利用可能な負荷範囲および反応時間に高い要求を課す。褐炭および無煙炭発電プラントの起動時間は数時間である。コンバインドサイクル発電プラントの起動時間はほぼ1時間である。ガスタービン発電プラントのみが数分以内に起動することができる。発電プラント効率は、コンバインドサイクル発電プラントで55%~60%、無煙炭発電プラントで42%~47%、褐炭発電プラントで38%~43%、およびガスタービン発電プラントで34%~40%である。火力発電プラントのすべての種類は、最大電力の40%~90%の間の利用可能な負荷範囲を有し、発電プラント効率は全負荷の領域で最大である。これらの特徴を考慮すると、対処される問題は、高い継続的な電力需要を有するコンシューマを電力グリッドにつなげ、ベース負荷発電プラントが高負荷で最大限の継続性で操作できるようにすることである。
【0016】
現在のところ、短期電力変動は、問題の負荷スパイクをグリッド操作者のシステムサービスの範囲内で吸収できる高動的発電プラントと呼ばれるものを利用して補償される。近年では、これは、揚水および加圧貯蔵発電プラント、ならびにガスおよび汽力発電プラントによって実質的に達成される。前者の場合、ドイツにおける設置可能容量は、既に実質的に消耗している。ピーク負荷を補償するためのガスおよび汽力発電プラントの設置および操作は、それらの年間操作時間が極めて短いため、それらの償還期間が長すぎることから、エネルギー供給業者にはほとんど関心が持たれない。さらに、圧縮空気貯蔵発電プラントは、約40%~50%の比較的低い効率を有する。
【0017】
電気グリッドの周波数制御の場合、異なる速度の制御回路:応答時間30秒未満の一次制御、応答時間5分未満の二次制御、最後に、より長い応答時間を許容する三次制御が使用される。一次制御は自動的に誘発され、発電プラントを動かす操作の状態に直接作用する。二次制御も同様に自動的に誘発され、予備容量を待機モードから作動させることができる。三次制御(またはミニット予備力)は、一般的に組織的措置によって作動される。二次制御およびミニット予備力は、正(電力需要増加時)の場合も負(電力需要低下時)の場合もある。正の二次制御およびミニット予備力は、典型的に予備発電プラントをオンに切り替えることによって作動される。負のミニット予備力は、エネルギーコンシューマを必要とする。現行の最新技術によると、揚水発電プラントと同様に、この目的も、大規模発電プラントおよび熱電併給プラント、ならびに最終コンシューマ、例えば光アーク炉または冷蔵倉庫の容量の変化によって果たされる。しかし、その容量の分配は領域的に不均一である(IDOSのレポートを参照されたい)。さらに、再生可能エネルギー源の開発の結果として、負のミニット予備力に対する需要は増加する可能性が高い。2016年、ドイツのグリッド供給業者4社によって要求された負の二次制御電力は約710GWhであり、負のミニット予備力は合計約54GWhであった(Bundesnetzagentur 2017のモニタリングレポート、158頁を参照されたい)。
【0018】
電気動力の需要と供給の差を緩和するさらなる手段は、蓄熱手段である。蓄熱手段は、エネルギーを熱の形態で貯蔵することができる。熱は、例えば燃焼プロセスの煙道ガスから、電気ヒーターから、太陽集熱器から調達されてもよい。電気エネルギーは、熱から電力へのプロセスで貯蔵される熱から生産されてもよい。このため、熱が生成される温度が高いほど熱貯蔵手段の有効性が向上する。熱貯蔵手段は、3つの主要なカテゴリーに分けることができる。顕熱貯蔵手段は、目に見える温度の増加の形態で熱を貯蔵する。潜熱貯蔵手段では、エネルギーは貯蔵媒体の相移行時に貯蔵される。熱化学および収着貯蔵手段は、化学反応または吸着/吸収の熱として熱エネルギーを可逆的に貯蔵する。顕熱貯蔵手段として、高い熱容量を有する液体または固体材料が使用される。標準的な液体は、0℃~100℃の温度範囲で水であり、0℃~400℃の温度範囲で伝熱油であり、250℃~570℃の温度範囲で硝酸塩であり、450℃~850℃の温度範囲で炭酸塩であり、100℃~800℃の温度範囲でナトリウムである。標準的な固体熱貯蔵手段は、0℃~100℃の温度範囲で湿った砂利床であり、0℃~500℃の温度範囲でコンクリートであり、0℃~800℃の温度範囲で砂利もしくは砂、花崗岩または鉄合金であり、0℃~1000℃の温度範囲で煉瓦である。
【0019】
使用される潜熱貯蔵手段は、それらの作業範囲内で、物質の状態が固体と液体の間、または液体と気体の間のいずれかで変化する材料である。
【0020】
標準的な材料は、固液潜熱貯蔵手段として0℃で、かつ気液潜熱貯蔵手段として100℃~350℃の温度範囲で使用される水である。さらなる固液潜熱貯蔵手段は、約34℃で粗パラフィン、約37℃でエイコサン、約44℃でラウリン酸、約54℃でミリスチン酸、約70℃でステアリン酸、約32℃でボウ硝(NaSO・10HO)、約48℃で五水和物(Na・5HO)、約78℃で水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)・8HO)、約450℃で共晶塩化ナトリウム/塩化マグネシウム混合物、または約832℃で共晶塩化ナトリウム/フッ化マグネシウム混合物である。熱化学貯蔵手段は、可逆反応を利用する。そのような反応は、金属水素化物、例えばMgH、MgNiH、MgFeHの脱水、金属水酸化物、例えばMg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)の脱水、金属炭酸塩、例えばMgCO、PbCO、CaCO、BaCOの脱炭酸、多価金属の酸化物、例えばPbO、Sb、MnO、Mn、CuO、Feの部分的還元であってもよい。使用される収着貯蔵手段は、塩水和物、例えばMgSO・7HO、MgCl・6HO、CaCl・6HO、CuSO・5HO、CuSO・HO、または金属塩化物のアンモニア化物、例えばCaCl・8NH、CaCl・4NH、MnCl・6NHである。最後に、水素リッチ生成物を生じる吸熱高温プロセス、例えば天然ガスの水蒸気改質または熱分解が熱化学貯蔵手段として利用されてもよい。水素は、物理的にまたはエネルギー目的のいずれかで利用されてもよい。
【0021】
畜熱媒体の重要な分野は、太陽火力発電プラントの分野である。塩溶融物、熱媒油およびコンクリート貯蔵手段がここで使用される。さらに、発電プラントで使用される熱貯蔵媒体は、最小負荷に関する負荷の融通性および負荷の変化の速度を改善することができる。例えば、水蒸気貯蔵媒体は、制御電力を提供するために使用される。
【0022】
気候保護のためのエネルギー革命およびCO2排出の削減に関する考察では、化学プロセスの電化、特に余剰電力に対する二次制御手段およびミニット予備力としての高度に吸熱性の化学反応の使用は、依然として有意性が低い。
【0023】
電気動力は、現在のところ、大量の熱流が非常に高い温度レベルで導入されなければならない場合に、主に非触媒ガス/固体および固相反応のために選択されるエネルギー源として使用される。典型的な用途は、冶金炉である[Ullmann:Metalurgical Furnaces]。産業規模で確立された唯一の妥当な気相法は、メタンからアセチレンを製造するためのプラズマ法[Baumann、Angewandte Chemie、B号、20巻(1948)、257~259頁、1948]、および鋼産業で還元ガスを製造するための方法であった。文献は、電気エネルギー源を気相法で使用する方法に対するさらなる指示を含むが、それらから産業規模で経済的に使用可能な用途を開発することは現在まで実現していない。
【0024】
電気加熱を用いる方法は、アルカンからの、特にメタンおよびアンモニアからのシアン化水素(HCN)の製造に関して記載されている。特許明細書US2,958,584は、炭素粒子の電気加熱式流動床でのプロパンおよびアンモニアからのHCNの製造について開示しており、一方でUS6,096,173は、コロナ放電を使用したメタンとアンモニアの気相反応としてのシアン化水素の製造について記載している。
【0025】
US7,288,690は、炭化水素の水蒸気分解方法であって、分解管が電気加熱される、方法について記載している。この発明によって達成される改善策は、実質的に、熱電統合を利用し、燃料の燃焼から熱および電気を同時生成することである。燃料は、生成装置を駆動するガスタービンで燃焼されることが好ましい。生成される電気動力は、分解管を加熱するために使用される。燃焼オフガス中に存在する目に見える熱は、フィード混合物を予備加熱するために機能する。この解決策の欠点は、分解管の電気加熱に利用可能なエネルギーストリームと、フィード混合物の予備加熱に利用可能なエネルギーストリームの間の結合である。この結合により、2つのプロセス段階のうちの1つの操作は、強制的に最適未満の状態になる。さらに、発明の適用可能性は、非熱統合方法に制限される。
【0026】
DE 10 2013 209 883は、バッチ式操作モードを用いたシアン化水素の電気化学製造のための統合プラントであって、そのプロセス出力を天候予測によって外部電源に適用することができる、統合プラントについて記載している。同様に、DE 10 2012 023 832は、エチンの電気化学製造のための統合動的プラントについて記載している。外部電力グリッドおよび局所電力源を介して各反応器に電気エネルギーが供給され、局所電力源は、電力生産のための中間貯蔵無しで、シアン化水素またはエチンの生産からの水素リッチオフガスストリームを直接利用する。使用される電力源は、燃料電池およびガスタービン発電プラント、またはコンバインドサイクル発電プラントであってもよい。炭化水素および水素が貯蔵される。これらの貯蔵手段は、このプラントを利用して48時間以内に生産できる水素の容量を有する(約5000MWh)。炭化水素および水素は、貯蔵手段からウォッベ指数を考慮して天然ガスグリッドに供給されるか、または炭化水素が誘導されて反応器に戻る。貯蔵されたガスを局所電力源の操作に使用する方法に関する開示はない。動的な操作モードの結果として、変動する生産量を補償するために、エチンおよびシアン化水素などの分解可能な高度に反応性の物質が貯蔵されなければならないという点で、操作信頼性に欠点が生じる。さらなる欠点は、頻繁な起動および停止操作によって反応器の温度が大幅に変動し、これがそれらの寿命および操作信頼性に悪影響を及ぼすということである。さらなる欠点は、ガスを天然ガスグリッドに導入するための装置が、プロセスの性能には要求されない機械および装置へのかなりの追加的な支出を生じるということである。さらなる欠点は、プロセスのダイナミクス、特に分離段階のもの、および天候予測のための計画間隔が長すぎるため、プロセスを二次または三次予備力として利用できないということである。
【0027】
さらに、プラズマ生成装置を合成ガスの製造に使用する方法(37 L. Kerker、R. Mueller:「Das Plasmareforming-Verfahren zur Erzeugung von Reduktionsgasen」[The Plasma Reforming Process for Generation of Reduction Gases]、Stahl Eisen 104、(1984)no.22、1137)、および炭化水素の分解のための電気的または電磁的方法の利用(Haeussinger、P.、Lohmueller、R. and Watson、A.M.2000.Hydrogen、2.Production.Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)も記載されている。
【0028】
しかし、現在のところ、多くの重要な高温プロセスは、酸化的プロセス(オートサーマル式および/またはアロサーマル式)を介してフィードされるエネルギー源のみを使用して行われる。これらの酸化的プロセスの欠点、すなわち原料依存性および原料の入手可能性の制限、および酸化的プロセスに伴うCO2排出は十分周知である。産業規模では、これらのエネルギー集約型プロセスは連続的に進行するため、継続的な熱供給が必要である。ドイツにおいてこれらのプロセスによって必要とされるエネルギーは、300~600TWhと推定される。これは、ドイツにおける現在の正味電力生成量にほぼ一致する。したがって、吸熱高温プロセスは、余剰電力を吸収するためのかなりの容量を有する。
【0029】
一部の重要な熱消費プロセスは、高温プロセス、すなわち500~2500℃の間の温度で実行されるプロセスである。これらの極めてエネルギー集約型のプロセスの代表例として、水蒸気改質および乾式改質、例えば第一級アルコールからアルデヒドへの、第二級アルコールからケトンへの、アルカンからアルケンへの、およびシクロアルカンからシクロアルケンへの脱水素化、ホルムアミド開裂による、またはメタンおよびアンモニアからのシアン化水素の製造、空気からの一酸化窒素の製造、炭化水素の水蒸気分解または熱分解、および水の加熱分解が挙げられる。水蒸気改質および乾式改質は、炭素含有エネルギーキャリア、例えば天然ガス、軽質ガソリン、メタノール、バイオガスまたはバイオマスから合成ガス、一酸化炭素と水素の混合物、および水または二酸化炭素を製造するプロセスである。炭化水素の水蒸気分解は、炭化水素含有エネルギーキャリア、例えばシェールガス、ナフサ、液化ガスから短鎖オレフィン、特にエチレンおよびプロピレン、ならびに芳香族化合物を製造するための産業的に確立されたプロセスである。このプロセスは、短い反応時間を有する動力学的に制御されたレジームで進行する。熱分解は、炭化水素がそれらの安定な炭素および水素最終生成物に変換されるプロセスである。このプロセスは、より長い滞留時間を有する平衡制御レジームで進行する。
【0030】
先行技術によると、水蒸気分解または水蒸気改質などの吸熱高温プロセスは、吸熱反応によって要求される熱を大幅に上回る入熱を必要とする。典型的に、導入される余剰加熱出力は、吸熱反応によって要求される熱に対して80%~200%である。統合化学施設では、余剰加熱電力は、例えば異なる圧力レベルで水蒸気を生成するために下流段に搬出される。このようにして、そのようなプラントの熱効率を90%以上に増加させることができる。しかし、これらの方法の欠点は、主なエネルギー需要および関連する温室効果ガスの排出が高温反応の実際の必要量よりはるかに高いことである。さらなる欠点は、統合施設における異なるプラント間の強固なエネルギー結合から生じる。これらの結合の影響は、個々のプラントの操作点が狭い範囲内でのみ調整可能であるということである。
【0031】
化学生産を、再生可能エネルギー源からの余剰電力のシンクとしてエネルギー革命の目的で利用可能にするために、エネルギー消費化学プロセスの電気加熱の概念が必要とされる。これらの方法は、一般的に連続的に操作されるため、エネルギー供給は余剰電力の利用可能性の不安定性から切り離されなければならない。したがって、余剰電力の組込みと同様に、少なくとも1種のさらなるエネルギー源が必要とされる。
【0032】
反応器への熱の供給を、ハイブリッド方式、すなわち化石燃料による加熱で、または電気ベースの方式でのいずれかで達成する1つの方法がWO2014/090914に開示される。WO2014/090914は、化学プロセスを、余剰電力を使用するミニット予備力として使用する方法について最初に指示している。熱消費高温プロセスを実行する方法であって、年間平均で必要とされる全エネルギーが、少なくとも2種の異なるエネルギー源:特に余剰電力を使用する、必要とされる全エネルギーの0%~100%を提供する少なくとも1種の電気エネルギー源、および必要とされる残りのエネルギーを提供するさらなる非電気エネルギー源からもたらされる、方法が記載される。この概念の場合の主な課題は、2種のエネルギー源間の転換、さらに最小限の損失を伴う、すなわち転換および選択による損失を伴わない動的な転換時の装置に対する負担である。この解決策のさらなる欠点は、プロセスの領域への熱を生成するために、高温に曝露される2個の別個の装置を設置する必要がある場合があることでありうる。これによって複雑性が増し、方法が失敗しやすくなる。
【0033】
EP3249027は、炭化水素の水蒸気分解によるオレフィンの製造のための、排出量が低減された方法を特許請求している。ここで、分解管は、燃料からの燃焼熱または電気加熱のいずれかによって加熱されてもよい。一定の全体的な出力により、電気加熱の燃焼熱に対する割合を変化させることができる。さらに、もっぱら電気的に、またはもっぱら燃焼熱によって加熱される分解管の並列接続が考えられる。この発明の欠点は、分解炉に2種の異なる熱源が設置されなければならないということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【文献】US4,776,171
【文献】US2011/0081586
【文献】US2008/0303348
【文献】US2012/0186252
【文献】US4,558,494
【文献】US4,668,494
【文献】US2,958,584
【文献】US6,096,173
【文献】US7,288,690
【文献】DE 10 2013 209 883
【文献】DE 10 2012 023 832
【文献】WO2014/090914
【文献】EP3249027
【非特許文献】
【0035】
【文献】2017年2月26日;「Energie fuer Deutschland,Fakten,Perspektiven und Positionen im globalen Kontext」 [Energy for Germany,Facts,Perspectives and Positions in a Global Context]、Weltenergierat - Deutschland e.V.、2017
【文献】the Bundesnetzagentur、ドイツ連邦ネットワーク庁の2017年モニタリングレポート
【文献】Statusbericht Flexibilitaetsbedarf im Stromsektor[Status Report on Flexibility Requirement in the Power Sector]
【文献】IDOSのレポート
【文献】Bundesnetzagentur 2017のモニタリングレポート、158頁
【文献】Ullmann:Metalurgical Furnaces
【文献】Baumann、Angewandte Chemie、B号、20巻(1948)、257~259頁、1948
【文献】37 L. Kerker、R. Mueller:「Das Plasmareforming-Verfahren zur Erzeugung von Reduktionsgasen」[The Plasma Reforming Process for Generation of Reduction Gases]、Stahl Eisen 104、(1984)no.22、1137
【文献】Haeussinger、P.、Lohmueller、R. and Watson、A.M.2000.Hydrogen、2.Production.Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
したがって、本発明の目的は、化学高温プロセスを、再生可能エネルギー源からの余剰電力のシンクとしてエネルギー革命の目的で利用可能にすることである。さらなる目的は、負の二次制御時のエネルギーユーザとしての、および/または電気グリッドの周波数制御のためのミニット予備力としての化学プロセスを提供することである。さらなる目的は、電力の卸売価格に応じて電力源を選択し、それによって経済的最適化を可能にできるように吸熱化学プロセスに融通性を持たせることである。
【0037】
さらなる目的は、生産出力が変化しないように、電力源間の転換時の吸熱プロセスへの電力投入量の目標分散を最小化することである。さらなる目的は、局所電力源が最大限の効率および最小限のCO出力を有することである。
【0038】
さらなる目的は、局所電力源を吸熱プロセスの物質と熱の統合システムに統合することである。急速にオンまたはオフに切替え可能な局所電力源が使用される場合、十分急速に開放または遮断可能なエネルギーキャリアが利用可能である必要がある。
【0039】
本発明のさらなる目的は、先行技術と比較して電気エネルギーの貯蔵および利用に関する融通性を増加させる方法を見出すことであった。
【0040】
さらに、本発明は、余剰電力の使用にもかかわらず、問題の熱消費プロセスの生産率を均質化し、機械および装置に対する負担を最小化することを目的とした。
【0041】
さらに、本発明は、余剰電力の利用可能性とは無関係に、下流プロセスの需要によって上流の熱消費プロセスに対する負荷を制御することにより、下流プロセスの計画可能性を改善することを目的とした。
【0042】
加えて、プラントおよび方法は、最大限の効率を有することを目的とした。さらに、本発明の方法は、従来の広範に利用可能な基盤を使用して実行可能であることを目的とした。さらに、方法は、最小限の方法工程数で実行可能であることを目的とし、これらが簡潔かつ再現可能であることを目的とした。
【0043】
現在のところ、大量のサーマルエネルギーが様々な産業プロセスでオフガスおよび廃熱ストリームの形態で廃棄され、環境を汚染している。これらの廃熱ストリームの再利用および利用は、様々な産業分野における多くのプロセスプラントのエネルギー効率および経済的効率を顕著に改善することができる。化学産業における統合施設では、利用可能なエネルギーキャリアは、施設全体にわたる連結したパイプグリッドおよび貯蔵容器(局所エネルギーキャリアネットワーク)を介して分配される流体媒体である。これらのエネルギーキャリアは、天然ガスまたは液化ガスなどの原料、水素または合成ガスなどの生産物、および水蒸気または圧縮空気などの補助物質であってもよい。これらの局所エネルギーキャリアネットワークは、機械的エネルギー、熱および/または可燃性材料を貯蔵し、要求された場合にこれらを局所電力源の供給のために遅延なく提供するのに十分高い容量をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0044】
方法:
これらの記述された目的は、1つ以上の熱消費化学プロセスを連続的に実行する方法であって、少なくとも1つの熱消費プロセスが電気加熱され、熱消費プロセスの反応ゾーンの最高温度が500℃より高く、少なくとも1つの熱消費プロセスの生成物の少なくとも70%が下流プロセスでさらに連続的に処理されおよび/または局所エネルギーキャリアネットワークにフィードされ、少なくとも1つの熱消費プロセスに必要な電気エネルギーが外部電力グリッドおよび少なくとも1種の局所電力源から引き出され、少なくとも1種の局所電力源に、少なくとも1種の局所エネルギーキャリアネットワークからその年間エネルギー必要量の少なくとも50%の程度までフィードすること、および前記少なくとも1種の局所電力源に、熱消費プロセスからの生成物を中間貯蔵無しでその年間エネルギー必要量の50%以下の程度までフィードすること、ならびにエネルギーキャリアとしての天然ガス、ナフサ、水素、合成ガスおよび/または水蒸気を少なくとも1種の局所エネルギーキャリアネットワークに貯蔵すること、ならびに少なくとも1種の局所エネルギーキャリアネットワークに、少なくとも1つのさらなる化学プロセスからの少なくとも1種のさらなる生成物および/または副生成物をフィードすることを含み、局所エネルギーキャリアネットワークの全容量が少なくとも5GWhである、方法によって本発明に従って達成される。
【0045】
本発明はさらに、化学施設の少なくとも1種の局所エネルギーキャリアネットワークを電気エネルギーの貯蔵のために使用する方法であって、使用されるエネルギーキャリアが、天然ガス、液化ガスまたはナフサ、水素、アンモニア、合成ガス、エチレン、プロピレン、リーンガス、圧縮空気および/または水蒸気であり、エネルギーキャリアグリッドが少なくとも5GWhの全容量を有する、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、統合施設での直接抵抗加熱流動床反応器、誘導加熱固定床反応器、および間接抵抗加熱固定床反応器による本発明の方法の変形の概略を示す図である。各プロセスは、公衆電力グリッドとそれぞれの局所電力源の両方から電気エネルギーをフィードされる。
図2図2は、先行技術による比較プロセスの概略を示す図である。内部電力源は、従来の電力プラントの中で最も効率が高い水蒸気搬出を備えたコンバインドサイクル電力プラントである。水蒸気タービンは、ガスタービン生成装置の廃熱タンクに直接接続される。水蒸気タービンの応答挙動は、ガスタービンの廃熱タンクの不活性によって決定される。
図3図3は、本発明のプロセスの概略を示す図である。内部電力源は、コンバインドサイクル電力プラントと同様に、ガスタービン生成装置および水蒸気タービン生成装置からなる。水蒸気タービンは、ガスタービンの廃熱タンクに直接接続されるのではなく、統合施設の水蒸気グリッドに接続される。結果として、水蒸気タービンは、変化する負荷に実質的に遅延なく反応することができる。
図4図4は、本発明のプロセスの概略を示す図である。熱消費プロセスは、公衆電力グリッドおよび局所電力源からフィードされる。局所電力源は、統合システムネットワークからエネルギーキャリアが供給される。統合システムネットワークは、統合システム内の熱消費プロセスおよび/または他のプロセスで生成されたエネルギーキャリアを貯蔵する。熱消費プロセスの主な生成物は、統合システム内の下流プロセスにフィードされる。
図5図5は、本発明のプロセスの概略を示す図である。熱消費プロセスは、公衆電力グリッドおよび局所電力源からフィードされる。局所電力源は、統合システムネットワークから水蒸気が供給される。熱消費プロセスからの副生成物として得られる水素は、統合システムネットワークに貯蔵される。局所電力源は、水蒸気タービン生成装置によって駆動される。この目的のための水素は、統合システムネットワークから引き出される。熱消費プロセスの主な生成物は、統合システム内の下流プロセスにフィードされる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
局所エネルギーキャリアネットワークは、熱キャリア、例えば水蒸気のためのグリッド/貯蔵手段、中間体、例えば水素および合成ガスのためのグリッド/貯蔵手段、ならびに原料、例えば天然ガスおよびナフサのためのグリッド/貯蔵手段に分けることができる。少なくとも2種の局所エネルギーキャリアネットワークを使用することが好ましい。
【0048】
エネルギーキャリア、好ましくは水蒸気(water vapor)、中間体、好ましくは水素および/または合成ガス、特に水素、ならびに原料、好ましくは天然ガスおよびナフサ、特に天然ガスからなる群から選択されるエネルギーキャリアのために、少なくとも2種の異なる局所エネルギーキャリアネットワークを使用することが好ましい。熱キャリアおよび中間体の2成分の組合せ、または熱キャリア、中間体および原料の3成分の組合せが好ましい。
【0049】
有利には、少なくとも1種の熱消費プロセスの生成物の少なくとも50%、好ましくは70%、特に90%が、下流プロセスでさらに連続的に処理されるおよび/または局所エネルギーキャリアネットワークに供給される。好ましくは、生成物のパーセンテージ範囲は50%~100%、好ましくは70%~100%、特に90%~100%である。下流プロセスは、熱消費プロセスからの生成物のさらなる生成物への下流での変換を意味すると理解される。
【0050】
有利には、少なくとも1種の局所電力源は、局所エネルギーキャリアネットワークからその年間エネルギー需要の少なくとも50%の程度まで、好ましくは少なくとも70%の程度まで、さらに好ましくは少なくとも80%の程度まで、さらに好ましくは少なくとも90%の程度までフィードされる。有利には、パーセンテージ範囲は50~100、好ましくは70~100、さらに好ましくは80~100、特に90~100である。より好ましくは、少なくとも1種の局所電力源は、もっぱら局所エネルギーキャリアネットワークからフィードされる。
【0051】
有利には、少なくとも1種の局所電力源は、熱消費プロセスから直接もたらされる生成物を、その年間エネルギー需要の50%以下の程度まで、好ましくは20%以下の程度まで、より好ましくは10以下%の程度までフィードされる。有利には、パーセンテージ範囲は50~0、好ましくは20~0、特に10~0である。
【0052】
これは、局所電力源のフィードのためのこれらの生成物が、熱消費プロセスから直接かつ中間貯蔵無しで取得され、局所電力源に送られることを意味する。より好ましくは、熱消費プロセスからの生成物ストリームは、局所電力源に直接かつ中間貯蔵無しで送られない。
【0053】
局所エネルギー電力グリッドは、有利には、いずれの場合も少なくとも1つのさらなる化学プロセスから少なくとも1種のさらなる生成物および/または副生成物がフィードされる。これらのさらなる化学プロセスは、例えばオレフィンプロセス、合成ガスプロセス、部分酸化、炭化水素の熱分解、水電解、鋳造プロセスおよび/または水素化である。例えば、水素エネルギーキャリアグリッドは、水蒸気分解、水蒸気改質、メタンの熱分解、スチレン合成、プロパンの脱水素化、合成ガス生産、ホルムアルデヒド合成などのプロセスからフィードされる。例えば、水蒸気エネルギーキャリアグリッドは、水蒸気分解、水蒸気改質、アセチレンプロセス、合成ガス生産、アクリル酸合成、無水フタル酸合成、無水マレイン酸合成、エチレンオキシド合成、ホルムアルデヒド合成などのプロセスからフィードされる。例えば、炭化水素エネルギーキャリアグリッドは、原料ナフサ、天然ガスおよび液化ガスからフィードされる。
【0054】
したがって、吸熱プロセス、例えば水蒸気分解、水蒸気/乾式改質、スチレン合成、プロパンの脱水素化、ブタンの脱水素化、シアン化水素合成、メタンの熱分解は、エネルギーキャリア源およびエネルギーキャリアユーザであるのに対し、発熱プロセス、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、アクロレインおよびアクリル酸、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、TDI/MDIは、もっぱらエネルギーキャリア源である。
【0055】
電力源:
熱消費プロセスに必要とされる電気エネルギーの供給源は、電流電源に応じて1日のうちのいつでも異なる供給源からもたらされてもよい。3つのモードが可能である:(i)もっぱら外部電力源、特に公衆電力グリッドから、(ii)もっぱら少なくとも1種の局所電力源から、または(iii)1種の外部電力源および少なくとも1種の内部局所電力源から共同で。
【0056】
好ましくは、すべての3つのモード(i)、(ii)および(iii)が、少なくとも1つの熱消費プロセスに必要なエネルギー全体を少なくとも一時的に提供することができる。
【0057】
有利には、必要なエネルギーの年間平均10%~90%、好ましくは必要なエネルギーの25%~75%、より好ましくは必要なエネルギーの50%~75%が外部電力源から取得される。有利には、必要なエネルギーの年間平均10%~90%、25%~75%、より好ましくは必要なエネルギーの25%~50%が局所電力源から取得される。
【0058】
有利には、熱消費プロセスによって必要とされるエネルギーは、少なくとも50%の程度まで、好ましくは少なくとも75%の程度まで、さらに好ましくは少なくとも90%の程度まで電気エネルギーによって提供される。特に、必然なエネルギーは、もっぱら電気的に提供される。有利には、パーセンテージ範囲は50~100、好ましくは75~100、特に90~100である。
【0059】
連続実行は、有利には1日より長く、好ましくは1週間より長く、より好ましくは1カ月より長く、より好ましくは2カ月より長く、特に6カ月より長く持続し、この期間中、プロセス出力は、最大プロセス出力に対して50%以下、好ましくは30%以下、好ましくは20%以下、特に10%以下変動する。有利には、パーセンテージ範囲は50~0、好ましくは30~0、さらに好ましくは20~0、特に10~0である。
【0060】
本発明のプロセスのプロセス出力は、有利には下流プロセス、すなわち熱消費プロセスからの生成物のさらなる生成物への下流での変換の反応物需要に一致する。
【0061】
局所エネルギーキャリアネットワークは、有利には5GWhより大きい、好ましくは10GWhより大きい、さらに好ましくは20GWhより大きい、特に50GWhより大きい全容量を有する。有利には、全容量は10GWh~1000GWh、好ましくは20GWh~500GWh、より好ましくは50GWh~200GWhの範囲である。
【0062】
外部電力源:
外部電力源は、電力グリッドを指す。これは、統合システム発電プラント、特に15分より長い起動時間を有する統合システム発電プラントも含む。
【0063】
「電力グリッド」という用語は、グリッドの様々な物理ノードと、グリッドに接続される様々な商業的、私的および大規模コンシューマとの間の電力の輸送および調節を可能にする伝送線、変電所および局所分配グリッドのすべて、またはグリッドの特定の部分を指す。
【0064】
外部電力源と局所内部電力源の違いは、外部電力源によって生成される電力は、多くのユーザがそこから電力を引き出すことができる電力グリッドにフィードされることである。局所内部電力源は、少数の化学熱消費プロセス、好ましくは1~10のプロセス、さらに好ましくは1~5つのプロセス、特に1~3つのプロセスのみに割り当てられる。内部局所電力源で生産される電力は、周波数および電圧に関して公衆電力グリッドとは独立に操作される局所電力線を通して輸送される。したがって、内部局所電力源で生産される電力は、有利には、内部電力源で生産される全電気エネルギーに対して20%未満、好ましくは10%未満の程度まで公衆電力グリッドにフィードされる。有利には、パーセンテージ範囲は20~0、好ましくは10~0である。より好ましくは、内部局所電力源で生産される電力は、公衆電力グリッドにフィードされない。
【0065】
熱消費プロセスの活用が少ないおよび/または外部電力の需要が高いとき、局所電力源は、電力を外部電力グリッドに放出することができる。例えば、局所電力源は、追加的に正の二次制御電力またはミニット予備電力として利用されてもよい。
【0066】
局所電力源から一般的な公衆電力グリッドへの接続が必要とされない場合、複雑な制御デバイスを省略することができる。さらに、局所的に生成される電力は、グリッドの仕様に適合する必要がない。
【0067】
局所電力源:
少なくとも1種の局所電力源の有用な例は、有利には、ガスタービン(GT)および/または水蒸気タービン(ST)および/または燃料電池に基づく電力生成を含む。
【0068】
ガスタービンは当業者に公知であり、例えば(C.Lechner、J.Seume(編):Stationaere Gasturbinen[Stationary Gas Turbines]、Springer、Berlin 2003)に記載される。ガスタービンに有用な燃料は、有利には、可燃性原料および/または各統合施設内のオフガスストリーム、ならびに熱消費プロセスからの各プロセスストリーム、有利には熱消費プロセスの反応物および/または生成物を含む。
【0069】
化学産業における統合施設は、物質とエネルギーの閉回路を有する生産施設であり、ここで生産操作、原料、化学生成物、エネルギーおよび廃ストリーム、物流および廃ストリームが互いにネットワーク化される(www.basf.com/global/en/investors/calendar-and-publications/factbook/basf-group/verbund.html)。統合施設は、カスケード生産鎖を特徴とする。生成物の種類は、このカスケードに沿って増加する。統合発電プラントは、典型的に3つの段階を有する:第1の段階で生産物が、第2の段階で中間体が、および第3の段階で特製品または最終生成物が製造される。このカスケードの各段階は、ひいては1つ以上の段階から構成されてもよい。統合施設は、数千の異なる化学化合物および配合物をそこから生産するために、少数の原料、例えばLPG、ナフサ、軽質ガソリン、減圧蒸留残渣、芳香族物質、硫黄、さらに水および空気および電気エネルギーの導入を必要とする。統合施設で製造される生成物および使用される原料の数値比は、10より大きい、好ましくは100より大きい、より好ましくは500より大きい。
【0070】
可燃性オフガスストリームの中でも、水素リッチオフガスストリームが有利である。例として、水蒸気分解、水蒸気改質、アンモニア合成、メタノール合成、ホルムアルデヒド合成、スチレン生産、コークス生産および鋼生産からのオフガスストリームが挙げられる。これらの可燃性オフガスストリームは組成が異なり、かつそれらの起源に応じて、高炉ガス、コークス炉ガス、カップリングガス、脱水素化ガス、ホルマリンガス(formalin gas)など呼称が異なる(WO2014/095661A1)。これらのガスの共通の特徴は、天然ガスなどの一般的な燃料の発熱量と比較して発熱量が相対的に低いことである。それらの発熱量に応じて、ガスは、リーンガス(発熱量最大およそ1200kcal/Nm3)、貧ガス(発熱量最大3000kcal/Nm3)または濃ガス(発熱量最大6000kcal/Nm3)と称される(G. Wagener. Gas- und Wasserfach 91、73、1950)。
【0071】
燃料電池は、例えば(Hoogers、G.(編).(2002).Fuel cell technology handbook.CRC press.)に記載され、例えば高分子電解質膜燃料電池(PEMFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ燃料電池(AFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)または固体電解質形燃料電池(SOFC)である。
【0072】
局所電力源としてさらに有用なものは、酸素リッチオフガスストリームを利用する酸素燃焼発電プラントである。
【0073】
代替的にまたは追加的に、有用な局所電力源は、水蒸気タービンからの電力生成である。
【0074】
局所電力生成の供給源として水素が使用される場合、以下のプロセス:ガスタービン、SOFCおよび/またはMCFCおよび/またはPEMFCおよび/またはAFCが特に有利である。水素駆動式ガスタービンは、有利には最大1500℃の入口温度で働き、最大41%の効率に達する。SOFCは、有利には650℃~1000℃の間の温度で働き、最大60%の効率に達する。MCFCは、有利には650℃~1000℃の間の温度で働き、最大60%の効率に達する。PEMFCは、有利には50℃~180℃の間の温度で働き、最大50%の効率に達する。AFCは、有利には20℃~80℃の間で働き、最大70%の効率に達する。
【0075】
局所電力生成の供給源として炭化水素が使用される場合、以下のプロセス:ガスタービンおよび/またはSOFCおよび/またはMCFCが特に有利である。天然ガス駆動式ガスタービンは、有利には最大1230℃の入口温度および最大39%の効率を有する。SOFCは、有利には650℃~1000℃の間の温度で働き、最大60%の効率に達する。SOFCは、有利には550℃~700℃の間の温度で働き、最大55%の効率に達する。
【0076】
以下は、好ましい局所電力源の表形式の概要である:
【0077】
【表1】
【0078】
ガスタービン:
(1a):オフ状態からフルパワーまでの起動時間は、有利には30秒~30分、好ましくは60秒~20分、より好ましくは90秒~10分である(例:SIEMENS SGT-A65モデルでは、フルパワーまでの低温始動時間<7分が明記される)。
【0079】
(1b):電力は、有利には公称電力の40%~120%、好ましくは公称電力の50%~110%、より好ましくは公称電力の60%~105%である(参照:C.Lechner、J.Seume(編):Stationaere Gasturbinen、190頁)。
【0080】
(1c)、(5c)、(6c):これらの生成装置からのオフガスは非常に熱いため、その中に存在するエネルギーを水蒸気の上昇に利用することができる。水蒸気は水蒸気タービンを駆動し、さらなる電気動力を生成することができる。このようにして、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換の効率を顕著に増加させることができる(最大20%)。準定常状態操作では、ガスタービンからの流出温度は約650℃であり(参照:C.Lechner、J.Seume(編):Strationaere Gasturbinen、124頁)、SOFCの流出温度は約700℃であり、MCFCの流出温度は約550℃である(参照:Wikipedia「Fuel Cell」、:T(op)-100K)。
【0081】
水蒸気タービン:
(2a):待機状態からの水蒸気タービンの起動時間は、有利には10分~60分である。待機状態で、タービンは、有利には300℃に予備加熱されており、かつ低速で回転されている(約1Hz)(参照:Wikipedia「Dampfturbine」)。
【0082】
(2b):電力は、有利には公称電力の10%~120%、好ましくは公称電力の20%~110%、より好ましくは公称電力の40%~105%である(参照:Statusbericht Flexibilitaetsbedarf im Stromsektor[Status Report on Flexibility Requirement in the Power Sector]、第4章)。水蒸気タービンは、水蒸気供給が保証されていることを前提として、絶対的なアイドリング状態になるまで速度調節の間に下げられてもよい。
【0083】
(2c):水蒸気タービンは、有利には水蒸気生成のためのエネルギーを提供し、水蒸気の過熱をもたらす燃焼から切り離される。統合施設では、水蒸気タービンは、有利には存在する水蒸気グリッドからフィードされてもよい。この構成により、種々の燃料を水蒸気の生成に利用することができる。水蒸気は、体積の大きい、例えば10m3~100000m3の水蒸気グリッドに貯蔵されてもよく、それにより化学エネルギーの利用可能性の分散を緩和することができる。
【0084】
(2d):水蒸気タービン生成装置は、有利には、熱オフガスを生成する種類の生成装置、例えばGT、SOFCまたはMCFCに直接または間接的に結合されてもよい。直接結合は、上流の生成装置からのオフガスストリームが、水蒸気タービン、例えばコンバインドサイクル発電プラントで水蒸気の生成に使用されることを意味する。「間接的に」は、オフガスストリームによって上流の生成装置から水蒸気が生成され、これが統合施設の水蒸気グリッドにフィードされることを意味する。水蒸気タービンはこのグリッドからフィードされてもよい。
【0085】
燃料電池:
(3a)、(4a):PEMFCおよびAFCの起動時間は、有利には10秒~15分、好ましくは20秒~10分、より好ましくは30秒~5分である。PEMFCおよびAFCは、およそ80℃の操作温度を有する。室温での電極反応の動態は、電気動力を生成するために既に十分である。統合施設では、有利には廃熱ストリームを使用し、燃料電池を容易に操作温度に維持することができる。
【0086】
(3b)、(4b):PEMFCおよびAFCの操作によって生じるCO排出は、CO50g/kWel未満、好ましくはCO20g/kWel未満、より好ましくはCO5g/kWel未満である。特に、COは排出されない。PEMFCおよびAFCは、有利には燃料として水素を使用する。
【0087】
(3c)、(4c)、(5b)、(6b):燃料電池生成装置の利用可能な電力範囲は、有利には最大電力の1%~100%、好ましくは最大電力の5%~90%、より好ましくは最大電力の10%~70%である。
【0088】
(3d)、(4d)、(5c)、(6c):燃料電池生成装置の電気効率は、有利には電池の電圧に応じて厳密に単調な方式で上昇し、負荷は、有利には生成される電流に応じて厳密に単調な方式で上昇する。電池の電圧は、アイドリング時に最も高く、電力出力の上昇とともに低下する。これは、燃料電池の効率が、全負荷時より部分負荷時で高いことを意味する。この特性は、全負荷時に最高効率を有するタービン生成装置の特性と逆である。このため、燃料電池生成装置は、より広範な利用可能電力範囲を有し、連続的な電力制御に好適である。
【0089】
局所電力源の起動および停止:
局所電力源の起動または停止に要する時間は、有利には電気動力グリッドにおけるミニット予備力の所要応答時間(<15分)より短く、好ましくは二次制御の所要応答時間(<5分)より短く、より好ましくは一次制御の所要応答時間(<30秒)より短い。
【0090】
以下の電力源:ガスタービン生成装置、PEMFC生成装置およびAFC生成装置は、起動時間15分以内に静止状態から全負荷に達する。さらに、以下の電力源:PEMFCおよびAFCは、起動時間5分以内に静止状態から全負荷に達する。
【0091】
列挙されたすべての電力源が、移行時間15分以内に部分負荷操作から全負荷に達することが可能である。さらに、以下の電力源:GT、PEMFC、AFC、SOFC、MCFCは、移行時間5分以内に部分負荷操作から全負荷に達する。水蒸気タービン生成装置の場合、電力の増加速度は、水蒸気の利用可能性によって制限される。水蒸気タービンが水蒸気グリッドから直接フィードされている場合、水蒸気タービン生成装置は、移行時間5分以内で全負荷に達する。さらに、ガスタービン生成装置または水蒸気タービン生成装置は、有利には80%負荷、好ましくは85%負荷、より好ましくは90%負荷の操作状態から進行して30秒以内に全負荷に達する。さらに、PEMFC生成装置またはAFC生成装置は、60%負荷、好ましくは70%負荷、より好ましくは80%負荷から進行して30秒以内に全負荷に達する。さらに、SOFC生成装置またはMCFC生成装置は、70%負荷、好ましくは80%負荷、より好ましくは90%負荷から進行して30秒以内に全負荷に達する。
【0092】
列挙されたすべての電力源が、任意の操作状態から進行して30秒以内に電気動力をゼロに下げることができる。
【0093】
エネルギーキャリア:
局所電力源の操作に使用されるエネルギーキャリアは、有利には、十分な容量を有する統合施設に貯蔵することができる媒体である。これらの媒体は、有利には、可燃性液体もしくはガス状原料、統合施設で分配グリッドが利用可能な可燃性のガス状もしくは液体生産物、または機械的エネルギー、目に見える熱もしくは潜熱を貯蔵することができ、かつ施設全体に分配可能な非反応性のガス状、液体もしくは固体エネルギーキャリアである。これらの媒体は、好ましくは天然ガス、液化ガスまたはナフサ、水素、アンモニア、合成ガス、圧縮空気、水蒸気または再生可能固体貯蔵媒体である。媒体は、より好ましくは天然ガス、水素および水蒸気である。固体または液体生成物は、有利には、周囲圧力でまたはそれらの自生蒸気圧下で貯蔵される。これは、液体が事実上圧縮不可能であるためである。ガスおよび蒸気とは異なり、これらの媒体は圧縮可能であり、つまりそれらの密度、したがってエネルギー密度も圧力の上昇とともに増加する。
【0094】
例:
1.天然ガスは、有利にはパイプ中50バール未満で輸送される。
2.水素は、有利には2種の圧力レベル、40バールおよび325バールで統合システムネットワークに貯蔵および分配される。高圧の理由は、モル数を低減させる反応である水素化が高い反応圧力によって促進されるためである。
3.水蒸気は、沸騰温度/凝縮温度の圧力依存性を利用するために、有利には異なる圧力レベルで貯蔵される。水蒸気は、沸点の領域で熱キャリアとして働く。相変化の結果として、非常に良好な伝熱とともに、温度変化無しで大量の熱が吸収(蒸発の場合)または放出(凝縮の場合)されうる。このため、水蒸気は異なる圧力レベルで貯蔵される。各圧力レベルは、有効な温度範囲が割り当てられる:
1.5バール→110℃
4バール→140℃
6バール→155℃
11バール→180℃
16バール→200℃
24バール→220℃
40バール→250℃
100バール→310℃
117バール→320℃
【0095】
本発明の方法は、エネルギーキャリアに応じて異なる態様で構成されてもよい。
【0096】
エネルギーキャリアとしての水蒸気
有利には、本発明の方法のこの構成は、1種または2種の局所電力源を有する。本発明の方法が1種の局所電力源を有する場合、これは、有利にはガスタービン生成装置、水蒸気タービン生成装置、PEMFC生成装置、AFC生成装置、SOFC生成装置、またはMCFC生成装置である。1種の電力源は、好ましくは水蒸気タービン生成装置、PEMFC生成装置またはAFC生成装置である。1種の電力源は、より好ましくは水蒸気タービン生成装置である。本発明の方法が2種の局所電力源を有する場合、第1の電力源は、有利にはガスタービン生成装置、PEMFC生成装置、AFC生成装置、SOFC生成装置、またはMCFC生成装置であり、第2の電力源は水蒸気タービン生成装置である。好ましくは、第1の電力源はガスタービン生成装置、SOFC生成装置またはMCFC生成装置であり、第2の電力源は水蒸気タービン生成装置である。より好ましくは、第1の電力源はガスタービン生成装置であり、第2の電力源は水蒸気タービン生成装置である。電力源の各種類のうち、1ユニット~10ユニット、好ましくは1ユニット~5ユニット、より好ましくは1ユニット~2ユニットが熱消費プロセスに割り当てられる。
【0097】
本発明の方法のこの構成では、水蒸気タービン生成装置は特別な役割を果たす。水蒸気タービンは、有利には水蒸気を局所水蒸気タンクから、局所装置の水蒸気管路から、または水蒸気グリッドから供給される。水蒸気タービンは、好ましくは統合施設の水蒸気グリッドから水蒸気を引き出す。結果として、水蒸気タービンを駆動する水蒸気は永続的に利用可能であり、水蒸気ボイラー、または蒸発凝縮器の水蒸気管路などの水蒸気タービン生成装置のダイナミクスをもはや制限しない。水蒸気グリッドは、有利には中心水蒸気生成装置から、または統合施設全体に分配される複数の水蒸気生成装置からフィードされる。水蒸気グリッドは、好ましくは少なくとも2種の水蒸気生成装置からフィードされる。より好ましくは、水蒸気グリッドは、局所熱源を利用する統合施設全体に分配される水蒸気生成装置にフィードされる。水蒸気生成装置は、燃料、可燃性オフガスストリームを用いて、またはそうでなければ電気的に加熱されうる化学反応器の蒸発凝縮器、または水蒸気ボイラーであってもよい。水蒸気グリッドの圧力は、有利には4バール~200バール、好ましくは6バール~150バール、より好ましくは8バール~130バールである。グリッドの温度は、有利には150℃~700℃、好ましくは200℃~650℃、より好ましくは250℃~600℃である。
【0098】
水蒸気グリッドの体積は、有利には1000m3~10000000m3、好ましくは5000m3~5000000m3、より好ましくは10000m3~2000000m3である。水蒸気グリッドに貯蔵される水蒸気の内部エネルギーは、有利には1MWh~150000MWh、好ましくは10MWh~75000MWh、より好ましくは20MWh~50000MWhである。
【0099】
エネルギーキャリアとしての水素
有利には、本発明の方法のこの構成は、1種または2種の局所電力源を有する。本発明の方法が1種の局所電力源を有する場合、これは、有利にはガスタービン生成装置、水蒸気タービン生成装置、PEMFC生成装置、AFC生成装置、SOFC生成装置、またはMCFC生成装置である。1種の電力源は、好ましくはPEMFC生成装置またはAFC生成装置である。1種の電力源は、より好ましくはAFC生成装置である。本発明の方法が2種の電力源を有する場合、第1の電力源は、有利にはガスタービン生成装置、PEMFC生成装置、AFC生成装置、SOFC生成装置、またはMCFC生成装置であり、第2の電力源はPEMFC生成装置またはAFC生成装置である。好ましくは、第1の電力源は、ガスタービン生成装置、SOFC生成装置またはMCFC生成装置であり、第2の電力源はPEMFC生成装置またはAFC生成装置である。より好ましくは、第1の電力源はガスタービン生成装置であり、第2の電力源はAFC生成装置である。電力源の各種類のうち、1ユニット~10ユニット、好ましくは1ユニット~5ユニット、より好ましくは1ユニット~2ユニットが熱消費プロセスに割り当てられる。
【0100】
本発明のこの構成では、低温燃料電池は特別な機能を果たす。燃料電池は、有利には統合施設の水素グリッドから供給される。水素は、石炭ガス化、炭化水素の分解、天然ガス、液化ガスもしくはナフサの部分酸化、水蒸気改質もしくはオートサーマル改質、メタノールの改質、有機化合物の脱水素化、水の水電解、または塩素アルカリ電解によって産業規模で製造される。有利には、水素は、圧力スイング吸着または膜法によって浄化され、圧縮されて水素グリッドに導入される。例えば、LudwigshafenのBASFの統合施設は、水素用の40バールのグリッドおよび325バールのグリッドを有する。このグリッドにより、水素は約80種の操作に分配され、一部は搬出もされる。局所電力源として使用される燃料電池は、2つのモードで操作されてもよい:電力生成装置としての通常モード、または水素生成装置としての逆モードであり、この場合、電気動力は水を水素と酸素に分割するために利用される。
【0101】
水素グリッドの体積は、有利には100m3~100000m3、好ましくは200m3~50000m3、より好ましくは500m3~20000m3である。水素グリッドに貯蔵されるサーマルエネルギーは、有利には250MWh~250000MWh、好ましくは500MWh~120000MWh、より好ましくは1000MWh~50000MWhである。
【0102】
エネルギーキャリアとしての天然ガス
有利には、本発明の方法のこの構成は、1種または2種の局所電力源を有する。本発明の方法が1種の局所電力源を有する場合、これは、有利にはガスタービン生成装置、水蒸気タービン生成装置、SOFC生成装置、またはMCFC生成装置である。単一の電力源は、好ましくはガスタービン生成装置またはSOFC生成装置である。より好ましくは、単一の電力源はガスタービン生成装置である。本発明の方法が2種の電力源を有する場合、第1の電力源は、有利にはガスタービン生成装置、SOFC生成装置、またはMCFC生成装置であり、第2の電力源は、SOFC生成装置またはMCFC生成装置である。好ましくは、第1の電力源はガスタービン生成装置であり、第2の電力源はSOFC生成装置である。電力源の各種類のうち、有利には1ユニット~10ユニット、好ましくは1ユニット~5ユニット、より好ましくは1ユニット~2ユニットが熱消費プロセスに割り当てられることが有利である。
【0103】
天然ガスグリッドの体積は、有利には1000m3~1000000m3、好ましくは2000m3~500000m3、より好ましくは5000m3~200000m3である。天然ガスグリッドに貯蔵されるサーマルエネルギーは、有利には500MWh~500000MWh、好ましくは1000MWh~200000MWh、より好ましくは2000MWh~100000MWhである。
【0104】
負荷スイッチ:
本発明の方法は、有利には、局所電力源と外部電力源の間の切替え、または電力源のうちの1種の増加または抑制を制御する負荷スイッチによって電気エネルギーの供給源を制御する。有利には、電力源の割合は、不連続的におよび/または連続的に調整されてもよい。負荷スイッチは、熟練の電気技師に公知である。
【0105】
有利には、切替えは、特に部分負荷に不適合な局所電力源の場合に不連続工程で実行される。代替的に、切替えは、特に部分負荷に適合性の局所供給源の場合に連続的に実行される。
【0106】
負荷スイッチに使用される制御パラメータは、有利には電力の価格である。好ましくは、必要なエネルギーは、外部電力が、局所電力源から局所的に生成される電力より安い場合、例えば、余剰電力および/または夜間電力と呼ばれるものが利用可能な期間に外部電力源から取得される(夜間電力は、夜間、例えば午後10時~午前6時に供給され、料金が低い電気エネルギーと定義される)。
【0107】
余剰電力は、ドイツ連邦議会のレポートによると、所与の時間に利用可能な容量で生成されうる電気動力と、コンシューマによって使用される電気動力の差と定義される。余剰電力は、その生成コストを大幅に下回って、またはそのエネルギー含有量に基づいて同じ発熱量を有する化石燃料より低い価格で、または無償で(すなわち、支払い無しで)、またはさらには負の価格で電力市場に供給される。
【0108】
好ましくは、電気エネルギーの年間平均少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%が、余剰電力および/または夜間電力、好ましくは余剰電力によって公衆電力グリッドから提供される。
【0109】
好ましくは、外部電力源から必要とされるエネルギーの年間平均25%~100%、より好ましくは50%~100%が余剰電力および/または夜間電力から提供される。しかし、より好ましくは、外部電力源からのすべてのエネルギーが余剰電力および/または夜間電力、好ましくは余剰電力によって提供される。
【0110】
電力源の変更
有利には、電力源は、熱消費プロセスの実行中に変更される。電力源の変更は、1種以上の局所電力源のオンもしくはオフへの切替え、または外部電力源、特に公衆電力グリッドのオンもしくはオフへの切替えを意味すると理解される。さらに、電力源の変更は、電力源のうちの1種の割合の増加または抑制を意味すると理解される。
【0111】
有利には、切替え中にプロセスに供給される電気エネルギーは、全電力の最大10%、好ましくは最大5%、特に最大1%だけ低減されるまたは変化する。有利には、パーセンテージ範囲は10~0、好ましくは5~0、特に1~0である。少ない変動は、局所電力源および負荷スイッチの速い応答時間によって達成されてもよい。これらの応答時間は、有利には30分未満、好ましくは15分未満、より好ましくは5分未満である。
【0112】
有利には、本発明によると、熱消費プロセスは切替え時にその操作状態を維持する。有利には、移行時間中の熱消費プロセスの変換の変化は、2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、特に0.2%以下である。有利には、エネルギー源の変更は、高温プロセスの副生成物の選択性をほんのわずかに変化させる。好ましくは、副生成物の選択性の増加は1%以下、好ましくは0.5%以下、特に0.2%以下(絶対値)である。
【0113】
反応器の概念
本発明の吸熱方法は、有利には装填反応器、管型反応器、または光アーク反応器で実行される(Henkel、K.D.(2000).Reactor types and their industrial applications.Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistryを参照されたい)。
【0114】
加熱:
先行技術には、電気動力を介して熱消費プロセスにサーマルエネルギーを提供するための様々な解決策が存在する。例として、誘導性または抵抗性方法、プラズマ法、導電性加熱素子/接触表面および/またはマイクロ波による加熱がここで言及されるべきである。
【0115】
エネルギーの直接的な電気的供給は、誘導または抵抗のいずれかによって実行されてもよい。いずれの場合でも、反応器壁または反応器空間の装填物は、有利には対応する抵抗を構成する。抵抗変化が特に好ましく、これは、外部電源の供給の終了によって生じるここでのすべての電気損失が、装填物の加熱の直接的な利益になるためである。
【0116】
ここで、装填物は、流動床、移動床または固定床の形態をとってもよい。
【0117】
好ましい実行では、2種以上の電極が装填物に設置され、装填物がそれらの間で電気抵抗として機能し、電流が流れる際に導電損失によって加熱されてもよい。電流の流れは、装填物の流れ方向に対して横方向であってもよく、それに対して長手方向であってもよい。
【0118】
間接的電気エネルギー供給の場合、電気加熱体、例えば加熱棒または加熱カートリッジが反応器壁の円周にわたって配列されるか、または装填物に埋め込まれる。これらの電気加熱体は、それらに電流が流れる際に加熱され、この熱を反応器壁またはそれを囲む装填物へと放出する。
【0119】
電気エネルギー源と同様に、さらなる非電気エネルギー源、例えば煙道ガス、過熱蒸気または溶融物などの熱キャリアが考えられる。熱キャリアに存在する目に見える熱および/または潜熱は、伝熱管または熱パイプなどの内部装置を介して装填物または流体プロセスストリームに伝達されてもよい。
【0120】
移動床反応器:
本発明の方法に使用される反応器は、有利には導電性材料の固体粒子のランダム装填物を含む。装填物は均質であってもよく、または高さに関して構造化されていてもよい。均質な装填物は、有利には固定床、移動床または流動床を形成してもよい。高さに関して構造化された装填物は、有利には下部で固定床を形成し、上部で流動床を形成する。代替的に、構造化された装填物は、有利には下部で移動床を形成し、上部で流動床を形成する。
【0121】
反応器のキャリア材料は、有利には500~2000℃、好ましくは1000~1800℃、さらに好ましくは1300~1800℃、より好ましくは1500~1800℃、特に1600~1800℃の範囲で熱的に安定である。
【0122】
キャリア材料は、有利には10S/cm~10S/cmの範囲で導電性である。
【0123】
キャリア材料は、有利には300~5000kJ/(mK)、好ましくは500~3000kJ/(mK)の体積比熱容量を有する。
【0124】
特にメタンの熱分解のために有用な耐熱キャリア材料は、有利には炭素質材料、例えばコークス、炭化ケイ素および炭化ホウ素である。支持体は、任意に触媒材料でコーティングされている。これらの熱キャリア材料は、その上に堆積する炭素に関して異なる膨張容量を有してもよい。
【0125】
キャリア材料は、有利には規則的および/または不規則的幾何学的形態を有する。規則的形状の粒子は、有利には球状または円筒状である。
【0126】
キャリア材料は、有利には0.05~100mm、好ましくは0.1~50mm、さらに好ましくは0.2~10mm、特に0.5~5mmの粒径、すなわち特定のメッシュサイズでふるい分けすることによって決定可能な相当直径を有する。
【0127】
移動床モード
キャリア材料は、有利には反応物ガスに対して向流で供給される。この目的のために、反応空間は、重力の作用で移動床の移動が生じるように、垂直軸または上から下に向けて広がる軸として感覚的に実行される。しかし、キャリア材料は、流動床として反応空間に誘導されてもよい。いずれの変形も、連続的または準連続的な操作モードを可能にする。
【0128】
伝熱ゾーンでのガスと固体装填物の間の熱交換における伝達抵抗は、有利には0.01~5m、好ましくは0.02~3m、さらに好ましくは0.05~2m、特に0.1~1mの移動単位長さ、または移動単位高さ(HTU)を有する。HTUの定義は、http://elib.uni-stuttgart.de/bitstream/11682/2350/1/docu_FU.pdfの74頁から採用される。
【0129】
熱容量流量は、物質ストリームの質量流量と比熱容量の積である。有利には、熱容量流量の比は0.5~2、好ましくは0.75~1.5、より好ましくは0.85~1.2、特に0.9~1.1である。熱容量流量の比は、フィードストリーム、および任意にサブストリームのサイドフィードまたはサイドドロー除去によって調整される。
【0130】
移動床または流動床を使用すると、反応器への進入時のキャリアの温度は、有利には0~300℃、好ましくは10~150℃、特に50~100℃の間である。反応器への進入時の反応物ガスの温度は、有利には0~100℃、好ましくは10~50℃の間である。
【0131】
この操作モードでは、高温ゾーンで形成された生成物ガスを非常に急速に、有利には>200K/s、好ましくは>300K/s、より好ましくは>500K/s、特に>1000K/sで冷却することができる。
【0132】
反応器:
有利には、本発明の方法のために、電気加熱式装填定格圧力装置が使用され、装置は、有利には上、中間および下装置部に分けられる。中間部では、少なくとも一組の電極が垂直配列で設置されることが有利であり、かつすべての電極が導電性固体装填物に配置されることが有利である。上および下装置部は、有利には10S/m~10S/mの比導電率を有する。中間装置部は、有利には固体装填物から電気的に絶縁される。上および下装置部は、有利には中間装置部から電気的に絶縁される。上電極が、有利には上装置部を介して接続され、下電極が有利には下装置部を介して接続されるか、または電極は、これらの部分と電気的に接触した1種以上の接続素子を介してそれぞれ接続される。
【0133】
上および下電極の断面積のそれぞれの通電接続素子の断面積に対する比、または接続素子を使用しない場合、上および下電極の断面積のそれぞれの通電装置部の断面積に対する比は、有利には0.1~10、好ましくは0.3~3、特に0.5~2である。
【0134】
有利には、電極の断面積(例えば、グリッド形態の電極のすべての電極ランドの断面積)は、0.1cm~10000cm、好ましくは1cm~5000cm、特に10cm~1000cmの範囲である。有利には、通電接続素子の断面積は、0.1cm~10000cm、好ましくは1cm~5000cm、特に10cm~1000cmの範囲である。
【0135】
接続素子(電極と上または下装置部の間)を使用しない場合、上および/または下電極、好ましくは上および下電極の断面積のそれぞれの通電装置部の断面積に対する比は、有利には0.1~10、好ましくは0.3~3、特に0.5~2である。有利には、電極の断面積は、0.1cm~10000cm、好ましくは1cm~5000cm、特に10cm~1000cmの範囲である。有利には、上および/または下装置部の断面積は、0.1cm~10000cm、好ましくは1cm~5000cm、特に10cm~1000cmの範囲である。
【0136】
反応器の装填は、有利には移動床として実行される。これに対応して、反応器は、有利には複数のゾーンに分けられる。底部から上方向への配列は、有利には以下の通りである:キャリア用出口、ガス入口、下伝熱ゾーン、下電極、加熱ゾーン、任意にサイドドローを伴う上電極、上伝熱ゾーン、ガス状生成物ストリーム用出口、およびキャリアストリーム用フィード。
【0137】
下伝熱ゾーンは、ガス入口の上縁と下電極の上縁の間の垂直距離である。
【0138】
上伝熱ゾーンは、上電極の下端と固体装填物の上端の間の垂直距離である。
【0139】
反応器の断面におけるすべての点の加熱ゾーンは、上電極の下端と下電極の上端の間の垂直距離と定義される。
【0140】
有利には、上電極の下側面および下電極の上側面は、反応器の断面全体にわたって水平である。結果として、加熱ゾーンの長さ、特に電極間の距離は、有利には反応器の断面全体にわたって均一である。加熱された反応器の断面は、有利には0.005m~200m、好ましくは0.05m~100m、より好ましくは0.2m~50m、特に1m~20mである。加熱ゾーンの長さは、有利には0.1m~100mの間、好ましくは0.2m~50mの間、より好ましくは0.5m~20mの間、特に1m~10mの間である。加熱ゾーンの長さの相当直径に対する比は、有利には0.01~100、好ましくは0.05~20、より好ましくは0.1~10、最も好ましくは0.2~5である。
【0141】
電極は、有利には固体装填物内に位置する(図1および2を参照されたい)。固体装填物の上縁(勾配の場合は最下点)と電極板の上縁、または電極板を使用しない場合、上電極の電極ランドの下縁との間の垂直距離は、有利には10mm~5000mm、好ましくは100mm~3000mm、さらに好ましくは200mm~2000mmである。この部分は、有利には固体装填物の全高の1%~50%、好ましくは2%~20%、より好ましくは5%~30%である。
【0142】
電極は、当業者に公知のすべての形態をとることができる。例として、電極はグリッドまたは棒の形態をとる。電極は、好ましくはグリッドの形態をとる。グリッド形態では、種々の構成の変形:例えば、有利には正多角形から構成されるハニカム形態のグリッド、平行なランドから形成される長方形のグリッド、スポーク形態のグリッド、または同心円から構成されるグリッドが考えられる。有利には、2~30個のランドが星の形態で配列されたスポーク形態のグリッド、および同心円から構成されるグリッドが特に好ましい。
【0143】
電極の断面閉塞は、有利には1%~50%の間、好ましくは1%~40%の間、より好ましくは1%~30%の間、特に1%~20%の間である。
【0144】
上もしくは下装置部、例えばフードの内部、または接続素子、例えば装置部に固着されたスカートに固定して装着されたグリッド形態の電極が特に好ましい。
【0145】
固定マウントは、その利用によって剛体とその環境の間の相対移動が全方向で妨げられる、剛体のその環境への接続を意味すると理解される。
【0146】
星状およびフラクタル的にスケーリングされたグリッドの場合、電極ランドは、有利にはそれらの外側端が反応器フードまたは反応器フードのスカートに接続される。
【0147】
電極と反応器フードまたはスカートとの間の接触面積は、有利には0.1cm~10000cmの間、好ましくは1cm~5000cmの間、特に10cm~1000cmの間である。
【0148】
通電反応器フードのスカートの断面積の固体装填物の断面に対する比は、有利には0.1%~20%、好ましくは0.2%~10%、より好ましくは0.5%~5%である。
【0149】
フード-電極ユニットでは、有利には、導入される全電気エネルギーの5%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、特に0.1%未満が放散される。好ましくは、放散されるエネルギーの範囲は0%~5%、好ましくは0%~2%、特に0%~1%である。結果として、電気エネルギーは、電極間の装填物の加熱に実質的に完全に利用することができる。
【0150】
電極、すなわちランドおよび電極板の材料は、有利には鉄、鋳鉄もしくは鋼合金、銅もしくは銅基合金、ニッケルもしくはニッケル基合金、耐熱金属もしくは耐熱金属基合金、および/または導電性セラミックである。より詳細には、ランドは、例えばDIN EN10027-2(発行日2015-07)の材料番号1.0401、1.4541、1.4571、1.4841、1.4852、1.4876の鋼合金、例えば材料番号2.4816、2.4642のニッケル基合金、Ti、特に材料番号3.7025、3.7035、3.7164、3.7165、3.7194、3.7235の合金からなる。耐熱金属の中でも、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wまたはそれらの合金が特に有利であり、好ましくはMo、Wおよび/またはNbまたはそれらの合金、特にモリブデンおよびタングステンまたはそれらの合金である。さらに、ランドは、炭化ケイ素などのセラミックおよび/または炭素、例えばグラファイトを含んでもよく、ここでセラミックは、モノリシックまたは繊維強化複合材料(例えば、セラミック基複合材料、CMC、例えば炭素繊維複合体、CFC)であってもよい。
【0151】
吸熱プロセス:
本発明によると、熱消費プロセスは、有利には吸熱高温プロセス、好ましくは反応ゾーンにおけるエネルギー消費が0.5MW/mより大きい、より好ましくは1MW/mより大きい、特に2MW/mより大きいプロセスである。例えば、エネルギー消費は、反応ゾーンにおいて0.5~10MW/mの間であってもよい。
【0152】
熱消費プロセスは、有利には5体積%未満、特に2体積%未満の酸素濃度で、特に酸素を含まずに行われる。
【0153】
反応ゾーンの最高温度は、有利には500℃より大きい、好ましくは800℃より大きい。例えば、反応ゾーンの温度は500~2500℃、好ましくは700~1800℃、例えば脱水素化反応の場合500~800℃、例えば改質反応の場合700~1000℃、例えば水蒸気分解反応の場合800~1100℃、例えば熱分解反応の場合800~1500℃、例えば炭素ガス化反応の場合800~1200℃の範囲内である。
【0154】
有用な熱消費プロセスは、有利には以下のプロセスを含む:合成ガス、水素、スチレン、オレフィン、特にエチレン、プロピレンおよびブテン、プロペン、ベンゼン、アセチレン、ナフタレン、一酸化炭素、青酸、一酸化窒素、シアン化水素および/または熱分解炭素の製造、ならびに水酸化アルミニウムの焼成。以下の方法が好ましい:炭化水素の水蒸気改質および乾式改質、水蒸気分解または乾式分解、特にメタン、エタン、プロパンおよび/またはブタンの熱分解、水の加熱分解、エチルベンゼンのスチレンへの、プロパンのプロペンへの、ブタンのブテンへの、および/またはシクロヘキサンのベンゼンへの脱水素化、ならびにアセチレンの熱分解製造、メタンからのベンゼンの製造、二酸化炭素の一酸化炭素への還元、天然ガスおよび窒素からのシアン化水素の製造、ならびにメタンおよびアンモニアからの青酸の製造、ならびに窒素および酸素からの一酸化窒素の製造。
【0155】
以下の高温反応を、より好ましくは移動床反応器で行うことが好ましい:
- 水蒸気および/または二酸化炭素での炭化水素の改質による合成ガスの製造、炭化水素の熱分解による水素および熱分解炭素の同時生産。好適なキャリア材料は、特に炭素質顆粒、炭化ケイ素含有顆粒、ニッケル含有金属顆粒である。
- メタンおよびアンモニアからの、またはプロパンおよびアンモニアからのシアン化水素の製造。好適なキャリア材料は、特に炭素質顆粒である。
- 炭化水素の水蒸気分解によるオレフィンの製造。好適なキャリア材料は、特に炭素質顆粒、炭化ケイ素含有顆粒である。
- エチレン、アセチレンおよびベンゼンを生じるためのメタンのカップリング。
- アルカンの触媒脱水素化によるオレフィンの製造、例えばプロパンからのプロピレン、またはブタンからのブテン。好適なキャリア材料は、特に脱水素化触媒でコーティングされた炭化ケイ素含有顆粒、または鉄含有成形体である。
- エチルベンゼンの触媒脱水素化によるスチレンの製造。好適なキャリア材料は、特に脱水素化触媒でコーティングされた炭化ケイ素含有顆粒、または鉄含有成形体である。
- アルカンまたはオレフィンの触媒脱水素化によるジオレフィンの製造、例えばブテンまたはブタンからのブタジエン。好適なキャリア材料は、特に脱水素化触媒でコーティングされた炭化ケイ素含有顆粒、または鉄含有成形体である。
- アルコールの触媒脱水素化によるアルデヒド、例えばメタノールからの無水ホルムアルデヒド。好適なキャリア材料は、特に脱水素化触媒でコーティングされた銀含有顆粒もしくは炭化ケイ素含有顆粒、または鉄含有成形体である。
- CO2および炭素からのブードア反応によるCOの製造。好適なキャリア材料は、特に炭素質顆粒である。
- 触媒上での触媒水加熱分解による水素および酸素の製造。好適なキャリア材料は、特に開裂触媒でコーティングされた炭化ケイ素含有または鉄含有顆粒、例えばフェライトである。
【0156】
合成ガスは、有利にはメタノール合成、アンモニア合成、オキソ合成、フィッシャー・トロプシュ合成などの下流プロセスで使用される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Synthesegas」[Synthesis gas]のページ。最終編集日:2020年3月10日、17:41 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Synthesegas&oldid=197642178)。
水素は、有利には石炭の水素化、アンモニア合成、脂質の水素化、アルカンの選択的水素化、ニトロ基のアミンへの水素化などの下流プロセスで使用される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Wasserstoff」[Hydrogen]のページ。最終編集日:2020年3月15日、16:31 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Wasserstoff&oldid=197790800)。
産業的に最も重要なオレフィンは、エチレン、プロピレンおよびブテンを含む。エチレンは、有利には、下流プロセスでポリエチレン、二塩化エチレン、エチレンオキシド、エチルベンゼンなどの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Ethen」[Ethene]のページ。最終編集日:2020年4月23日、09:31 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Ethen&oldid=199192096)。
プロピレンは、有利には、下流プロセスでアセトン、アクロレイン、アクリロニトリル、アクリル酸、アリル化合物、ブタナール、1-ブタノール、ポリプロピレン、プロピレンオキシド、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、チモールなどの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Propen」[Propene]のページ。最終編集日:2019年10月1日、18:51 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Propen&oldid=192770628)。
ブテンは、有利には、下流プロセスで2-ブタノール、2-ブタノン、ブタジエン、メチルtert-ブチルエーテルまたはエチルtert-ブチルエーテルなどの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Butene」[Butenes]のページ。最終編集日:2019年9月3日、07:11 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Butene&oldid=191929887)。
ブタジエンは、下流プロセスで、合成ゴム、アクリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、アジポニトリルなどの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「1,3-Butadien」[1,3-butadiene]のページ。最終編集日:2020年5月2日、13:49 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=1,3-Butadien&oldid=199535563)。
水素は、有利には下流プロセスで変換される、例えば・・・(Haeussinger、P.、Lohmueller、R. and Watson、A.M.2000.Hydrogen,2.Production.Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)。
ベンゼンは、下流プロセスでエチルベンゼン、クメン、シクロヘキサン、ニトロベンゼンなどの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Benzol」[Benzene]のページ。最終編集日:2020年4月20日、18:09 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Benzol&oldid=199100597)。
スチレンは、有利には、下流プロセスでポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステルコポリマー、ポリエステル樹脂などの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Styrol」[Styrene]のページ。最終編集日:2020年4月21日、09:59 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Styrol&oldid=199119904)。
シアン化水素は、有利には、下流プロセスでアジポニトリル、アセトンシアノヒドリン、塩化シアヌルなどの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Cyanwasserstoff」[Hydrogen cyanide]のページ。最終編集日:2020年4月23日、13:21 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Cyanwasserstoff&oldid=199198613)。
一酸化炭素は、有利には、下流プロセスでホスゲン、ギ酸、ギ酸メチル、酢酸、無水酢酸などの変換生成物に変換される。さらに、一酸化炭素は合成ガスの成分である(Wikipedia,the free encyclopedia中「Kohlenstoffmonoxid」[Carbon monoxide]のページ。最終編集日:2020年4月19日、06:01 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Kohlenstoffmonoxid&oldid=199031788)。
ホルムアルデヒドは、有利には、下流プロセスでブタン-1,4-ジオール、メチレンジフェニルイソシアネート、ポリオキシメチレン、フェノール樹脂およびアミノ樹脂などの変換生成物に変換される(Wikipedia,the free encyclopedia中「Formaldehyd」[Formaldehyde]のページ。最終編集日:2020年5月3日、12:08 UTC。URL:https://de.wikipedia.org/w/index.php?title=Formaldehyd&oldid=199572039)。
【0157】
本発明の方法の好ましい変形に関して、最高温度の目標値の範囲を表の形態で要約する:
【0158】
【表2】
【0159】
強力な熱消費プロセス、好ましくは高温プロセス、特に直接電気加熱式装填反応器での高温プロセスは、ここでの電気エネルギーの熱への変換が、高いエクセルギー効率の発生とともに可能であるため、電気エネルギーの利用に特に良好に適合する。エクセルギーは、エントロピーを増加させずに機械的エネルギーに変換可能なシステムの内部エネルギーの割合である。一般的に、電気エネルギーの熱への変換は、エクセルギーの特定の割合を破壊する。この割合は、ヒートシンクの温度レベルの上昇、この場合は高度に吸熱性の高温プロセスの温度上昇とともに低減する。
【0160】
熱消費プロセスの生成物、特に水素、合成ガスおよび/またはオレフィンは、有利には統合施設の供給グリッドにフィードされてもよい。
【0161】
二次調節およびミニット予備力:
本発明はさらに、二次制御のための負荷制限容量および/または公衆電力グリッドのミニット予備力として本発明の方法を使用する方法に関する。本発明の方法は、二次制御のための負荷制限容量および/または電気グリッドでの周波数制御操作におけるミニット予備力としての高温方法の使用を可能にする。本発明の方法により、これらの高温方法は急速にオンに切り替えられることができ、かつ300~600TWhの高量のエネルギーを受容することができる。連続的な形態で操作された場合、これらの方法は、余剰電力、例えば夜間電力のフィードのために永続的に利用可能である。
【0162】
利点
本発明は、連続的に操作される電気加熱式熱消費プロセスにより、余剰電力の持続的な受容を可能にする。したがって、大規模な化学的方法が、二次制御のための負荷制限容量および/またはミニット予備力として利用可能である。これにより、グリッドの安定性を改善させ、再生可能エネルギー源の活用を顕著に増加させることができる。さらに、熱消費プロセスの負荷制限容量がグリッド調節のために使用されるという点で、熱消費プロセスの収益性が改善する。
【0163】
さらに、本発明は、公衆電力グリッドにおける余剰電力の利用可能性にかかわらず、熱消費プロセスの需要制御型負荷活用を可能にする。これにより、下流プロセスでの生産の計画性が改善する。高価値であるが反応性も高く、結果として有害である中間体の貯蔵に対する需要が最小化される。さらに、エネルギーキャリアが高容量の統合システムグリッドから内部電力源にフィードされ、個々のプロセスの摂動が平衡化されるため、内部電力源の供給安全性が改善する。
【0164】
直接電気加熱式移動床反応器は、高い熱容量を有するオーミック負荷として作用する。結果として、反応器は、公衆グリッドへのフィードのための仕様に達しない供給源からフィードされることも可能である。より詳細には、余剰電力を中間貯蔵無しで、すなわち実質的に損失を伴わずに、有利には90%より高い、好ましくは95%より高い、特に98%より高い、すなわち有利には95%~100%、好ましくは98%~100%の範囲内の効率で熱消費プロセスに使用し、それにより大きな制約無しでそのコスト面の利点を利用することができる。
【0165】
加熱出力が供給される温度レベルが高い結果として、本発明の方法の実行におけるエクセルギーの損失は、好ましくは導入される電気エネルギーの60%未満、より好ましくは50%未満、特に好ましくは40%未満、特に25%未満である。
【0166】
したがって、基礎となる発明は、電気駆動式化学プロセスへの移行(エネルギー革命)のための技術プラットフォームとして機能することができる。これにより、余剰電力の経済的に魅力的な利用およびミニット予備力の提供のための基礎がもたらされる。したがって、エネルギーコストの低減が可能である。
【0167】
統合施設は、大量の天然ガス、軽質ガソリン、水素または水蒸気などのエネルギーキャリアを貯蔵し、これらを適切な電力源を駆動するために遅延なく利用するための基盤を有する。
【0168】
水素は、生産物および化学エネルギーの普遍的に使用可能な貯蔵手段として同時に利用可能であるという利点を有する。水素は、タービン生成装置と燃料電池生成装置の両方の駆動に好適である。水素からのエネルギーの生成は、COを排出しない。
【0169】
エネルギーを、水素中に損失を生じることなく長期間貯蔵することができる。40バールの圧縮水素は、500℃および100バールの水蒸気の約11kWh/mと比較して、約57kWh/mの高いエネルギー密度を有する。
【0170】
水蒸気は、エネルギー貯蔵手段として、さらに水蒸気タービンを駆動するための操作媒体として同時に利用可能であるという利点を有する。さらに、化学工学プロセスの供給のために、種々の圧力レベルの水蒸気が利用される。BASFのLudwigshafenの工場では、1時間あたり2000tnの水蒸気が消費される。これは1300MWの電力に相当し、これは平均的な施設の電気エネルギーに対する需要の約2倍の高さである。水蒸気の生産には、すべての燃料:可燃性原料、可燃性生成物、可燃性オフガスストリーム、太陽集熱器からの熱、電気的に生成された熱を利用することができる。水蒸気グリッドにおける圧力レベルの段階的変化は、導入された熱が高効率で水蒸気に変換されることを可能にする。特に、電力がグリッドから搬入され、局所電力源がオフに切り替えられる場合、可燃性オフガスストリームから得られる熱は、水蒸気の形態で水蒸気グリッドに貯蔵可能である。
【0171】
1つは燃料を直接フィードされる水蒸気タービンであり、2つ目は水蒸気グリッドからフィードされる水蒸気タービンである並列接続された電力源の使用により、コンバインドサイクル電力プラントの効率に匹敵する非常に良好な効率が得られる。
【0172】
統合施設の水蒸気グリッドからの水蒸気を水蒸気タービンに直接供給することにより、電力源が電力に対する需要の変化に非常に急速に応答できるようになる。
【実施例
【0173】
比較プロセス1:コンバインドサイクル電力プラント
コンバインドサイクル:CH+2O→CO+2HO+481kJel/mol (1)
このプロセスにより、統合施設で局所電力源において、需要に応じて、原料である天然ガスから電気動力を生成することができる。コンバインドサイクル生成装置は、使用されるメタン1モルあたり481kJの電気エネルギーを生成する。同時に、1モルのCO2を排出する。しかし、このプロセスは、グリッドからの余剰電気エネルギーの貯蔵に好適ではない。
【0174】
比較プロセス2:再生可能エネルギーを電解で水素へ/燃料電池で電気エネルギーに再変換
ReGen+EL:H(l)+(1/75%286)kJel/mol→H (2)
AFC:H→H(l)+(70%237)kJel/mol (3)
ReGen+EL+AFC:381kJel/mol→166kJel/mol (4)
このプロセスにより、電力グリッドからの電気エネルギーを水素の生産に使用することができる。水素は、統合施設のパイプライングリッドにフィードすることができる。水素は物理的に利用することができ、または必要な場合に局所燃料電池中の電気動力に変換して戻すこともできる。このプロセスにフィードされる電気エネルギー1kJあたり約0.44kJの電気エネルギーが回収可能である。この量の電気エネルギーは、COを排出しない。
【0175】
比較プロセス3:コンバインドサイクルと電解/燃料電池の組合せ
ReGen+EL+AFC+CCPP:CH4+2O+92kJel/mol→CO+2HO+521,5kJel/mol (5)
【0176】
本発明のプロセス:メタンの熱分解と水素駆動式電力源の組合せ
ReGen+MePy:CH+(74.8/81.3%)kJel/mol→C(s)+2H (6)
AFC:2H+O→2H2O(l)+(70%474)kJel/mol (7)
GT+ST:2H+O→2HO(g)+(60%484)kJel/mol (8)
ReGen+MePy+AFC:CH+O+(74,8/81,3%)kJel/mol→C(s)+H2O(l)+332kJel/mol (9)
ReGen+MePy+(GT+ST):CH+O+(74,8/81,3%)kJel/mol→C(s)+H2O(g)+290kJel/mol (10)
COPP:C(s)+O→CO+(45%393)kJel/mol (11)
ReGen+MePy+AFC+COPP:CH+2O+(74,8/81,3%)kJel/mol→CO+2HO+509kJel/mol (12)
ReGen+MePy+(GT+ST)+COPP:CH+2O+92kJel/mol→CO+2HO+467kJel/mol (13)
【0177】
外部電力グリッドで利用可能な再生可能供給源からの余剰エネルギーを、メタンの熱分解のためのプラントの操作に利用する(式6)。反応の標準エンタルピーに基づく熱分解の熱効率は、81.3%である。生産される水素を統合施設の供給グリッドにフィードする。水素は、その中で物理的にまたはエネルギー的に利用することができる。生産される炭素は、高度に純粋、不活性かつ自由流動性である。例えば、炭素は、輸送して物理的に利用することができ、または埋立地に堆積させることができる。水素は、需要に応じてその生産と同時にまたは異なる時間に、70%の電圧効率のAFCでの(式7)、または60%の熱効率を有するガスタービンと水蒸気タービン生成装置の組合せでの(式8)電力生成に使用される。メタンの熱分解へとフィードされる外部電力グリッドからの各キロジュールの電気エネルギーは、生産される水素の電力への変換により、局所電力源に応じて約3.1kJ~3.6kJの電気エネルギーになる場合があり(式9、10)、実質的にCOを排出しない。電解燃料電池回路における先行技術による電気エネルギーの貯蔵と比較して、本発明の方法は、メタンを使用することにより、COを排出せずに6~8倍の量の電気エネルギーを生成する。
【0178】
メタン中に存在する化学エネルギーの一部は、炭素共生成物中に貯蔵されたままであり、従来の火力発電プラントでCOの排出を伴って電力に変換することができる(式11)。炭素のエネルギーの目的での使用が可能な場合、外部余剰電力によるメタンの熱分解、ならびに生成される水素および炭素の電力への変換からなるプロセスによって生成される電気エネルギーの量は、同じメタン変換を用いた従来技術によるコンバインドサイクル電力プラントによって生成される電気エネルギーの約97%~106%である(式1、12、13)。本発明の方法で可能な余剰分は、メタンの熱分解において外部グリッドからの電気動力を利用することから生じる。
【0179】
物質およびエネルギーの全投入量を考慮すると、本発明の方法によって生産される電気エネルギーの量は、電解/燃料電池回路からなるプロセスおよびコンバインドサイクル電力プラントによって生産される電気エネルギーの約90%~98%である(式5、12、13)。
【0180】
本発明の本質的な利点は、内部電力源を使用してCOを排出せずに複数の電気エネルギーを生産するために、搬入される電気エネルギーを利用できることである。
【0181】
【表3】
【0182】
(1): 式2、式3および式4における物質およびエネルギーの量は、比較プロセスおよび本発明のプロセスで搬入される電気エネルギーの量が同一になるように調整された。結果的に、数値は互いに直接比較可能である。
(2a): 使用済みの電気エネルギーの量は、外部電力グリッドから統合システムに搬入されるメタン1モルに基づくエネルギーの量を示す。
(2b): 生成済みの電気エネルギーの量は、使用されるメタンおよび事前に使用された電気エネルギー、またはそこから生産された生成物から局所電力グリッドで生成することができる、メタン1モルに基づくエネルギーの量を示す。
(2c): 貯蔵可能な電気エネルギーの量は、事前に使用された電気エネルギーによって統合システムで生産された生成物から局所電力グリッドで生成することができる、メタン1モルに基づくエネルギーの量を示す。
【符号の説明】
【0183】
1 電気加熱式熱消費プロセス
2 熱消費プロセスの主な生成物および副生成物の除去のための分離装置
3 水蒸気用の統合施設ネットワーク
4 水素用の統合施設ネットワーク
5 天然ガス用の統合施設ネットワーク
6 リーンガス用の統合施設ネットワーク
7 水素含有ガスストリーム用管路
8 水蒸気管路
10a 内部電力源に水蒸気を供給するための管路
10b 内部電力源に水素を供給するための管路
10c 内部電力源に天然ガスを供給するための管路
10d 内部電力源にリーンガスを供給するための管路
11a 水蒸気によって駆動される内部電力源
11b 水素によって駆動される内部電力源
11c 天然ガスによって駆動される内部電力源
11d リーンガスによって駆動される内部電力源
12a 水蒸気駆動式電力源から熱消費プロセスへの電力線
12b 水素駆動式電力源から熱消費プロセスへの電力線
12c 天然ガス駆動式電力源から熱消費プロセスへの電力線
12d リーンガス駆動式電力源から熱消費プロセスへの電力線
16 公衆電力グリッド
17 熱消費プロセスから下流プロセスへの主な生成物の輸送のための生成物管路
20 電気動力を公衆グリッドから熱消費プロセスにフィードするための電力線
21 電気動力を内部電力源から熱消費プロセスにフィードするための母線
31 統合システム内のさらなるプロセス
32 エネルギーキャリアを除去し、それらを統合システムネットワークに導入する、統合システム内のさらなるプロセスにおける分離装置
36 統合システム内のさらなるプロセスからの水素含有ガスストリーム用管路
37 統合システム内のさらなるプロセスからの水蒸気管路
51 統合システム内の熱消費プロセスの下流プロセス
AFC:アルカリ燃料電池
CC:燃焼チャンバ
ST:水蒸気タービン
EL:電解
G:生成装置
GT:ガスタービン
CCPP:コンバインドサイクル電力プラント
HP水蒸気:高圧水蒸気
COPP:石炭火力発電プラント
MePy:メタンの熱分解
LP水蒸気:低圧水蒸気
ReGen:再生可能エネルギー源からの電力
TPP:火力発電プラント
CM:圧縮機
DM水:ガスタービンの廃熱ボイラー用の給水
図1
図2
図3
図4
図5