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特許7570362部分的に阻止された椎弓根スクリューII
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】部分的に阻止された椎弓根スクリューII
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021575497
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2020066476
(87)【国際公開番号】W WO2020254243
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】102019116374.9
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ヴェンツェル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン バッカス
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0343617(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0282844(US,A1)
【文献】特開2008-126066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68 - A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューシャフトを備えた多軸タイプの椎弓根スクリューにおいて、前記スクリューシャフトの近位端には、実質的に球形の基本的形状を有するスクリューヘッドが1つの部品で形成されており、前記スクリューヘッドが受容スリーブ又はチューリップ内に装着されており、挿入スリーブが前記受容スリーブ又はチューリップ内に挿入されており、前記挿入スリーブが前記スクリューヘッドに押圧されて、前記受容スリーブ又はチューリップと前記スクリューシャフトとの間の相対旋回位置を固定する、前記椎弓根スクリューであって、
直径に沿って対向する2つの旋回案内ユニット又は旋回制限ユニットによって特徴付けられており、
前記旋回案内ユニット又は旋回制限ユニットはそれぞれ、前記スクリューヘッドの前記球形の基本的形状を越えて、径方向に、且つ長手スクリュー方向に突出する少なくとも1つの延長部を有しており、
前記延長部は、それぞれの径方向外側表面上に、止め部を形成しており、
前記延長部は、前記スクリューシャフトと前記チューリップ又は受容スリーブとの相対旋回を1つの旋回面内でのみ許容し、別の旋回面内で相対旋回する場合には、前記延長部が前記チューリップ又は受容スリーブの径方向内周側面で止められるように支持される、ような方式で、位置決めされており、
前記延長部は、前記旋回面内での前記スクリューシャフトと前記チューリップ又は受容スリーブとの前記相対旋回を案内する、部分的な円筒形のベアリング表面を近位に形成しており、
前記ベアリング表面は、プレーンベアリングの様式で相互作用するために、前記挿入スリーブの正面又は遠位であって、対応する部分的な円筒形の凹部上で近位方向に案内されおり、
前記スクリューヘッドは、前記延長部を基準としてスクリュー直径に沿って内向きにオフセットされており、前記近位方向に前記延長部を越えて突出している、付加的な支持ラグを有している、
椎弓根スクリュー。
【請求項2】
前記チューリップ又は受容スリーブは、内周表面上に、直径に沿って対向する少なくとも2つの空隙を有しており、
前記空隙は、任意の旋回位置で前記延長部を収容するほど十分に大きい、請求項1に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項3】
前記1つの旋回面内での前記受容スリーブ又はチューリップに対する前記スクリューシャフトの旋回は、少なくとも±22度だけ許容されている、請求項1または2に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項4】
前記受容スリーブ又はチューリップは、前記延長部を基準として円周方向に90度だけオフセットされており、接続ロッドを受け入れるためにスロットを有しており、
複数の椎弓根スクリューは、前記接続ロッドを介して、互いに接続され得る、請求項1からのうちの1つに記載の椎弓根スクリュー。
【請求項5】
前記延長部の近位に形成されているベアリング表面の直径は、前記スクリューヘッドの前記球形の基本的形状の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項からのうちの1つに記載の椎弓根スクリュー。
【請求項6】
前記支持ラグは、プレーンベアリングの前記様式で、前記挿入スリーブの正面であって、対応する部分的な円筒形のスロットと相互作用するために、近位に部分的な円筒形の第2のベアリング表面を形成している、請求項に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項7】
前記支持ラグは、前記スロットの対応する側表面上に自身を支持して前記別の旋回面内の旋回を阻止するために、外側においてスクリュー径方向に平坦である、請求項に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項8】
前記延長部は、前記スクリューヘッドの前記球形の基部本体の外径を越えて、スクリュー径方向に外向きに突出している、請求項1からのうちの1つに記載の椎弓根スクリュー。
【請求項9】
前記空隙は、前記受容スリーブ又はチューリップの内周壁で凹んだアンダーカットにより形成されており、
前記延長部は、前記スクリューヘッドの前記球形の基部本体の外径を越えて、スクリュー径方向に外向きに突出している、請求項に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項10】
前記延長部は、スクリュー直径に沿って外向きに、及び、前記長手スクリュー方向に、の両方において、前記受容スリーブ又はチューリップ内の前記空隙により形成された前記アンダーカット内で支持されている、請求項に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項11】
前記止め部を形成する前記延長部の前記径方向外側表面は、部分的な円筒形である、請求項1に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項12】
前記支持ラグは、前記スロットの前記対応する側表面上に自身を支持して前記別の旋回面内の旋回を阻止するために、内側において、スクリュー径方向に平坦である、請求項に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項13】
前記延長部は、前記スクリューヘッドの前記球形の基部本体の外径を越えて、近位に突出している、請求項に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項14】
前記空隙を形成する前記アンダーカットは、矩形である、請求項に記載の椎弓根スクリュー。
【請求項15】
スクリューシャフトを備えた多軸タイプの椎弓根スクリューにおいて、前記スクリューシャフトの近位端には、実質的に球形の基本的形状を有するスクリューヘッドが1つの部品で形成されており、前記スクリューヘッドが受容スリーブ又はチューリップ内に装着されており、挿入スリーブが前記受容スリーブ又はチューリップ内に挿入されており、前記挿入スリーブが前記スクリューヘッドに押圧されて、前記受容スリーブ又はチューリップと前記スクリューシャフトとの間の相対旋回位置を固定する、前記椎弓根スクリューであって、
直径に沿って対向する2つの旋回案内ユニット又は旋回制限ユニットによって特徴付けられており、
前記旋回案内ユニット又は旋回制限ユニットはそれぞれ、前記スクリューヘッドの前記球形の基本的形状を越えて、径方向に、且つ長手スクリュー方向に突出する少なくとも1つの延長部を有しており、
前記延長部は、それぞれの径方向外側表面上に、止め部を形成しており、
前記延長部は、前記スクリューシャフトと前記チューリップ又は受容スリーブとの相対旋回を1つの旋回面内でのみ許容し、別の旋回面内で相対旋回する場合には、前記延長部が前記チューリップ又は受容スリーブの径方向内周側面で止められるように支持される、ような方式で、位置決めされており、
前記延長部は、前記旋回面内での前記スクリューシャフトと前記チューリップ又は受容スリーブとの前記相対旋回を案内する、部分的な円筒形のベアリング表面を近位に形成しており、
前記ベアリング表面は、プレーンベアリングの様式で相互作用するために、前記挿入スリーブの正面又は遠位であって、対応する部分的な円筒形の凹部上で近位方向に案内されおり、
前記延長部の各々は、前記延長部の内側においてスクリュー径方向に平坦であり、前記凹部の対応する表面上で案内されている、
椎弓根スクリュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多軸タイプであって、スクリューシャフトと、それに一体的に接続されるとともに受容スリーブ(チューリップ)内において回転可能に及び/又は旋回可能に支持又は受容されるスクリューヘッドと、を有する、部分的に阻止された椎弓根スクリュー(短縮して、スクリュー)に関する。
【背景技術】
【0002】
椎弓根スクリュー、特に多軸タイプのものは、いくつかの椎骨の位置を互いに対して固定するために、脊柱に対する外科的処置において使用される。これらのスクリューの各々は、椎骨の椎弓根にねじ込まれ、スクリューヘッド内に、又はスクリューヘッドに接続されたチューリップ内に挿入されている接続ロッドを介して接続される。用途により、チューリップとスクリューシャフトとの間の相対運動に関して自由度が異なるスクリューが使用される。例えば、変形した脊柱の減捻用には、チューリップとスクリューシャフトとの間の旋回運動が、内外側(ないがいそく)(medial-lateral)方向において(即ち、脊柱又は関連する人体を基準として側方(lateral)方向において)阻止されるものの、頭尾方向において(即ち、脊柱を基準として長手方向又は高さ方向において)外科手術中の位置決めのために許容される、スクリューが提供される。これは、スクリューヘッドを非円形にすること、例えば側方平坦部を設けることによって達成される。また、スクリューヘッドに圧力を軸方向に印加するためにチューリップ内に挿入されて、スクリューとチューリップとの間の相対位置を固定するためのインレイ又はインサートは、スクリューヘッドの平坦部に接触している対応する側方内側表面とともに設計される。
【0003】
このような椎弓根スクリューは、特別な器具又は器具セットを使用して埋植され、この器具又は器具セットは通常、複数個の異なる椎弓根スクリュー用に標準化されている。
【0004】
先行技術、例えばUS2010/0305621 A1及びUS9,138,261 B2の先行技術から、多軸椎弓根スクリューが公知であり、各ケースにおいて、この多軸椎弓根スクリューの受容本体に挿入されたその丸いヘッドは、2つの対向する側において、少なくとも部分的に平坦化されており、それにより、このヘッドに対して近位に配置されたブッシュ(チューリップ内に軸方向に挿入するためのインレイ/インサート)は、2つの耳形状の軸方向突部を有しており、これらの突部は、平坦な内側表面を形成しており、ヘッドの平坦化された側面上にこれらの内側表面が存在する状態で案内され、これらの平坦な内側表面に平行な面内においてのみ、ブッシュに対するスクリューシャフト及びスクリューヘッドの旋回を許容する。椎弓根スクリューのヘッドの一部は、平坦化された側面を越えて径方向に突出して、受容本体上におけるスクリューヘッドのスクリュー直径に沿った付加的な支持をもたらし得る。しかしながら、これは、達成可能な旋回角を制限し、案内表面を減少させる。さらに、フランジが僅かに弾性変形可能である。そのため、大きな側方力が満足に支持されないことがある。
【0005】
US8,048,133 B2は、多軸椎弓根スクリューを開示しており、この多軸椎弓根スクリューの丸いヘッドは、スクリュー直径に沿って延在する円筒を形成するために、スクリュー直径に沿って対向する2つの側において機械加工されており、この円筒は、圧力要素(インレイ/インサート)の対応する表面に近位に接触し、この表面と共に、一種の滑りベアリングを形成しており、この滑りベアリングは、円筒軸の周りの回転を許容するとともに他の軸の周りの回転/旋回運動を阻止する。しかしながら、他の軸の周りの回転又は旋回の阻止は、大きな側方力において安定性が不十分である可能性があり、接続の急速な摩耗又は劣化を招く。
【0006】
さらなる文献であるUS5,989,254 Aは、球形のヘッドを備えた多軸椎弓根スクリューを示しており、このヘッドにおいて、円筒形のサドル表面、又は長手方向に湾曲したサドル形状のスロット底面を備えた横スロットは、接続ロッドを受け入れるように凹んでおり、この接続ロッドを介していくつかの椎弓根スクリューが接続可能である。チューリップが椎弓根スクリューのスクリューヘッドの上方に置かれるとともに接続ロッドがチューリップ内に横方向に挿入されるケースでは、スクリューヘッドがチューリップ内で、スクリュー直径に沿って伸びる軸の周りに旋回されると、サドル表面は、回って接続ロッドから外れる。横力は、接続ロッドの外側表面と、サドル表面のための凹部の側表面とを介して、即ち、相対的に短い線接触を介して、主に伝達される。この構成は、大きな横力に対して十分に安定性を有さないことが予想される。
【0007】
要約すると、多くの用途の状況における公知の解決策は、横旋回が阻止される(即ち、許容される横力が低すぎる)と、大きな横荷重を十分に吸収することができない。さらに、これらの解決策は、多軸椎弓根スクリューの個々の部品が多すぎ、及び/又は、継手を含んでおり、したがって、製造及び組み付けを行うには複雑である。特に、チューリップ内においてスクリューヘッドに近位に挿入されたインサート、挿入ピース、又は保留ピースの内部幾何学的形態は、往々にして複雑である。これにより、とりわけ製造コストが増大する。これらのスクリューの埋植は、別個の器具のセットも必要とすることがあり得、この別個の器具のセットは、数量が少ないために、それに関連する製造コストをさらに増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
開示は、先行技術の不利益を減少又は回避する目的に基づく。特に、スクリューヘッドを有する簡素で安定性を有する椎弓根スクリューであって、受容スリーブ又はチューリップ内で1つの(単一の)スクリュー直径の方向(特に頭尾方向)に旋回可能であり、少なくとも500Nの大きな横力/側面荷重を受けても、別のスクリュー直径の方向(特に内外側(ないがいそく)の方向)において定位置に固定されている椎弓根スクリューが提供され得る。さらに、本椎弓根スクリューを用いると、特に、好ましくは複数回にわたって緩めること及び締めることが可能であるべきである同じシステムのスクリューを固定するための、器械類及びセットスクリューが使用可能になるはずである。換言すると、「通例の」(同じシステムの)多軸椎弓根スクリューの基本的な機能及び外部幾何学的形態は、保留され得る。
【0009】
本開示の根底をなす目的は、請求項1の特徴を有する椎弓根スクリューによって解決される。本開示の有利なさらなる展開は、従属請求項の主題であり、より詳細に後に説明する。
【0010】
開示の基本的な着想は、本質的に、本開示による椎弓根スクリューにおいて、受容スリーブ又はチューリップとその中に装着されたスクリューヘッドとの間に、付加的な支持/ベアリング/案内エリアを提供することであり、これらのエリアは、横荷重の発生時に、スクリューヘッドに遠位に且つ一体的に接続されたスクリューシャフトに対する受容スリーブ又はチューリップの横旋回を防止する。一方で、これらの付加的な支持エリアは、旋回軸の周りにおける椎弓根スクリューの受容スリーブ又はチューリップに対するスクリューヘッドの運動性を妨げるべきではない。本開示によると、好ましくは球形のスクリューヘッドを越えて突出する延長部が設けられ、これらの延長部は、これらの付加的な支持表面を形成し、受容スリーブと直接的に支持/ベアリング/案内接触している状態であることが可能であり、又は、受容スリーブと直接的に支持/支承/案内接触される。この方式では、スクリューヘッドは、多軸椎弓根スクリューでは通常のことであるように、スクリューヘッドと、受容スリーブ又はチューリップ内でスクリューヘッドに対して近位に配置された挿入スリーブ/インレイ/インサートと、の間の支持エリアを介して、横回転から守られるだけでなく、前記挿入スリーブ/インレイ/インサートがスクリューヘッドを押圧し、それによって受容スリーブ/チューリップ内におけるその相対位置が固定される。むしろ、延長部は、このような横旋回を防止するために、受容スリーブ/チューリップと付加的な支持エリアを形成するために設けられる。常にできる限り最適に横荷重を吸収するために、好ましくは、スクリューの長手軸に対して横方向に延在する円筒表面といった、異なる方向に配向されたさらなる支持エリアが提供されてもよい。
【0011】
より明確には、本開示の目的は、スクリューシャフトを有する多軸タイプの椎弓根スクリューにより解決される。スクリューシャフトの近位端には、実質的に球形の基本的形状を有するスクリューヘッドが1つの部品で形成されており、スクリューヘッドは、受容スリーブ又はチューリップ内に装着されており、受容スリーブ又はチューリップ内には、挿入スリーブが挿入されており、挿入スリーブは、スクリューヘッドに押圧されて、受容スリーブ又はチューリップとスクリューシャフトとの間の相対旋回位置を固定することができる。直径に沿って対向する2つの旋回案内ユニット又は旋回制限ユニットが提供され、それぞれは、スクリューヘッドの球形の基本的形状を越えて、径方向に、且つ長手スクリュー方向に突出する少なくとも1つの延長部を有しており、延長部は、それぞれ上、好ましくは部分的に円筒形の径方向外側表面上に、止め部を形成している。延長部は、延長部がスクリューシャフトとチューリップ又は受容スリーブとの相対旋回を旋回面内でのみ許容し、別の旋回面内で相対旋回(横旋回)する場合には、延長部がチューリップ又は受容スリーブの径方向内周側面に支持的な様式で当接する、ような方式で位置決めされている。スクリューヘッドと受容スリーブ/チューリップとの間にこの方式で生成された支持エリア/止め部は、非常に大きな側方荷重(少なくとも500N)が伝達され、側方旋回が効果的に阻止され得ることを意味する。結果的に、高い側方安定性が、厚い延長部又は案内タブによって達成される。
【0012】
さらに、スクリュー全体の外側幾何学的形態に変化のないことが必要であり、このような理由で、同じシステムの標準的な器具が、椎弓根スクリュー又は骨スクリューの埋植に使用され得る。これにより、このような椎弓根スクリューについて、同じシステムの標準的なスクリューと比較して、インサート側の複雑な内部幾何学的形態を必要とせずに、スクリュー構成の内部変化のみが生じる。一平面(uniplanar)スクリュー及び多軸スクリューの両方のために、挿入スリーブ(インサート/インレイ)は、本質的に幾何学的形態上変化することなく、又は相対的に軽微な変化のみを伴った状態で使用されてもよく、このような理由で、より多くの数量及びより低いコストが達成されてもよい。さらに、組み付けプロセスに必要な変化が最小限であるか、又は全くなくてもよく、このような理由で、組み付けを変化させる必要がない。必要とされる部品(受容スリーブ/チューリップ/本体、挿入スリーブ/インサート/インレイ、スクリューヘッド、及びスクリューシャフト)の数も少ない。さらに、個々の構成要素、即ち、スクリューヘッド、挿入スリーブ(インレイ/インサート)、及び受容スリーブ(チューリップ)は簡素な形状を有しており、これによって椎弓根スクリューの製造が容易になっている。
【0013】
好ましくは、延長部は、旋回面内でスクリューシャフトとチューリップ又は受容スリーブとの相対旋回を案内する部分的な円筒形のベアリング表面を近位に形成しており、これらのベアリング表面は、プレーンベアリングの様式で相互作用するために、挿入スリーブの正面又は遠位であって対応する部分的な円筒形の凹部上で近位方向に案内される。この方式で形成された一対の作用表面は、旋回軸の周りの旋回を、均一、且つできるだけ摩擦の少ない状態で案内するように、特に旋回軸に対する横方向の軸の周りの横旋回を支持又は阻止するように働く。延長部は、互いに直径に沿って対向しているため、少なくとも2つの延長部の間、又は対応するベアリング表面の間には、レバーも生成され、このレバーを介し、スクリューに作用する横力が特に良く伝達され得る。これにより、旋回軸に対して横方向の軸の周りにおける受容スリーブ/チューリップに対するスクリューヘッドの旋回が、効果的に阻止され得る。
【0014】
チューリップ又は受容スリーブが、内周表面上において、直径に沿って対向する少なくとも2つの空隙を有しており、これらの空隙が、いずれの旋回位置においても延長部を収容するほど十分に大きいことが、好都合であることが分かっている。これらの空隙がないとき、受容スリーブ/チューリップに対するスクリューヘッドの旋回は、延長部により、可能にならないか、又は軽微な程度でのみ可能になるであろう。そのため、受容スリーブ/チューリップ内におけるスクリューヘッドの旋回の可能性は、特にこれらの空隙によって確保される。好ましくは、空隙と延長部との寸法決め及び位置決めは、延長部がいずれの旋回位置においてもチューリップ又は受容スリーブの径方向内周側面に当接することができるような方式で行われる。これは、例えば、空隙が本質的に矩形であることにおいて達成され得る。これにより、スクリューヘッドの延長部のために、受容スリーブ/チューリップにおける大きな止め表面又は接触表面、特に、長手スクリュー方向に延在するもの、がもたらされ、これにより、大きな横力(少なくとも500N)を受容スリーブ/チューリップに直接的に、且つ安定的に伝達することができる。そのため、スクリューヘッドの延長部と受容スリーブとの間の相互作用、及び、上記のような、スクリューヘッドの延長部と挿入スリーブとの間の相互作用が、旋回軸に対して横方向の軸の周りの旋回を効果的に防止することができる。
【0015】
延長部が内外側(ないがいそく)方向のスクリューヘッドの旋回を、阻止し、頭尾方向の旋回を許容するならば有利である。これは特に、脊柱回転の分野で有利である。構成の観点から、これは、受容スリーブ又はチューリップ、及び、好ましくは挿入スリーブが、組み付け状態において中に配置された延長部を基準として円周方向に90度だけオフセットされており、接続ロッドを受け入れるための好ましくはU字形状のスロットを有しているということにより達成され、この接続ロッドを介して、複数の椎弓根スクリューが互いに接続され得る。原理的に、これは、他の用途の目的のために逆にして提供されることもできる。これは、受容スリーブ/チューリップに対するスクリューヘッドの様々な配向を可能とすることを意味する。さらに、椎弓根スクリューにおいて、好ましくは、1つの旋回面内において、受容スリーブ又はチューリップに対して、スクリューシャフトを少なくとも±22°、好ましくは少なくとも±30°だけ、旋回させることが可能であるべきである。この範囲もまた、脊柱回転に有利な値に基づいている。
【0016】
本開示の有利な一実施形態によると、延長部の近位ベアリング表面の直径は、スクリューヘッドの球形の基本的形状の直径よりも小さい。即ち、延長部は、スクリューヘッドの球形の基本的形状上(特に、そのスクリュー直径に沿った外周の近傍)に、実質的に三日月形状又は耳形状で配置されており、三日月又は耳の丸い部分が、近位方向に配向されている。スクリューヘッドの球形の基本的形状、特に全スクリューヘッドの外側輪郭の直径は、このケースにおいて好ましくは、受容スリーブ/チューリップの内径以下である。その結果、スクリューヘッド上に形成される角及び縁の数がごく少数となり、これにより、スクリューヘッドの製造と、該当する場合には滅菌が簡素化される。さらに、受容スリーブ/チューリップに必要とされる機械仕上げの量が最小化される。
【0017】
好ましくは、付加的な支持ラグは、スクリューヘッド上に形成されており、延長部を基準としてスクリュー直径に沿って内向きにオフセットされており、延長部を越えて近位方向に突出している。特に、これらの支持ラグは、プレーンベアリングの様式で、挿入スリーブの部分的な円筒形のスロットに対応する正面と相互作用するために、近位に部分的な円筒形の第2のベアリング表面を形成するように意図されている。第2のベアリング表面の直径は、延長部の上記の第1のベアリング表面の直径よりも大きい。これは、意図される旋回運動中における案内及び力の伝達のために、付加的な表面が設けられ得ること、および、横荷重がより良好に支持されること、を意味する。
【0018】
例えば、支持ラグは、スロットの対応する表面上において自身を支持して他の旋回面内の旋回又は横旋回を阻止するために、外側において、及び、可能性として内側においても、スクリュー径方向に平坦であるならば有利であり得る。即ち、支持ラグは、側方荷重を伝達するための付加的な径方向支持エリア又は案内エリアを設けるために、スクリューヘッド上にスクリュー直径に沿った平坦な表面を形成する。
【0019】
本開示のさらなる有利な一実施形態によると、延長部は、スクリューヘッドの球形の基部本体の外径を越えて、スクリュー径方向に外向きに、好ましくは近位に、突出し得る。換言すると、スクリューヘッドのスクリュー直径への広がりは、2つの延長部の間又はそれらにより形成されたベアリング表面の間に、レバーを提供する。これにより、より大きな横荷重でさえも、上記の第1の有利な実施形態に従ったものよりも、スクリューヘッドの延長部のベアリング表面を介して支持されることができる。
【0020】
さらに、全体のスクリューヘッド(即ち、球形の基部本体、及び、それを越えてスクリュー直径に沿って突出する延長部)の外側輪郭は、チューリップ又は受容スリーブの内径よりも大きいことがあり得る。これにより、空隙が、延長部の収容を可能にするために、受容スリーブ/チューリップの内周壁にアンダーカット、好ましくは矩形の、さらに好ましくは正方形のアンダーカットにより形成されているならば有用である。原理的に、他の構成も可能である。しかしながら、正方形のアンダーカットのケースでは、スリーブが、90度だけ回転されて装着されて、同じ受容スリーブ/チューリップ内でスクリューヘッドが異なる(旋回)方向に運動することを許容することは有利であり得る。
【0021】
特に、延長部は、スクリュー直径に沿った方向の外向き、及び、長手スクリュー方向の両方において、受容スリーブ又はチューリップ内の空隙により形成されたアンダーカット内で支持されている。換言すると、空隙は、スクリュー直径に沿った方向及び長手スクリュー方向の両方において自身が止め部又は支持表面を形成するような方式で、受容スリーブ/チューリップの内周表面に埋設されている。これにより、この実施形態において、空隙は、スクリューヘッドの延長部をスクリュー直径に沿った方向に案内又は支持するだけではなく、長手スクリュー方向にも案内又は支持する。これは、スクリューヘッドの全ての相対運動が、挿入スリーブ(インレイ/インサート)を介して、及び、受容スリーブ/チューリップを介して、の両方で案内又は支持されること、および、伝達されるべき荷重が分散されること、を意味する。そのため、スクリューヘッドの支持の剛性は、横荷重のケースにおいてさらに増大する。
【0022】
好ましくは、延長部のそれぞれは、内側においてスクリュー径方向に平坦であり、凹部の対向する表面上で案内されている。これは、この構成において、延長部が、径方向に又はスクリュー直径に沿って外向きに向けられた止め部と、径方向又はスクリュー直径に沿って内向きに向けられた案内表面と、の両方を形成することを意味する。必要な場合、これらは付加的な支持機能を担ってもよい。したがって、延長部は、上記の、三日月形状の延長部の利益と、支持ラグの利益と、の両方を提供するように設計されている。その結果、横荷重下におけるスクリューヘッドの支持の剛性は、さらに増大し得る。
【0023】
代替的に又は付加的に、本開示の上述の実施形態のいずれにおいても、スクリューヘッドの一部は、スクリューヘッド上にさらなるベアリング表面を設けるために、円筒状にミリング除去されてもよく、このさらなるベアリング表面は、挿入スリーブ又はインサート/インレイの前側面上に形成された、対応するベアリング表面と、滑りベアリングとして相互作用する。
【0024】
要約すると、本開示の根底をなす目的は、側方ラグを骨スクリュー/椎弓根スクリューのヘッド端に取り付け、内部空間を受容スリーブ、本体、又はチューリップに対応させることにより、及び、空隙をインサートにも対応させることにより、達成され得る。ラグは、インサート上及び本体上の両方において、側方方向に支持され、側方方向における運動を阻止し、それと同時に、頭尾方向における自由運動を許容する。スクリューヘッド及びラグは、ユニットを形成し、外側において円筒形の輪郭を有している。本開示に従った設計により、ピン及び軸などといった付加的な接続要素が必要ではなくなる。全体の椎弓根スクリューを組み付けるために(1つの実施形態に従ったものであり、以下に記載の第3の実施形態を参照)、骨スクリューは、ラグの外径が本体の内径よりも大きいにもかかわらず、本体に対するスクリューの回転運動を介して、ツールを用いることなく組み付けられ得る。より大きなラグ直径により、スクリューは、使用中に本体上において径方向に支持されるだけではなく、ラグの端面を介して軸方向にも支持される。
【0025】
例示により以下に説明する好ましい実施形態に基づいて、本開示について以下に説明する。注記されるべきこととして、異なる実施形態の特徴は組み合わされてよく、また、様々な変更が本開示の保護の範囲から逸脱することなく行われてよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1本開示の第1の実施形態に従った椎弓根スクリューにおいて、部分的に断面図が示された斜視図を示す。
図2】第1の実施形態に従った受容スリーブ又はチューリップの長手方向の断面図を示す。
図3本開示の第2の実施形態に従ったスクリューヘッドを示す。
図4本開示の第2の実施形態に従った挿入スリーブを示す。
図5本開示の第2の実施形態に従った、組み付けられた椎弓根スクリューの長手方向の断面図である。
図6】第2の実施形態に従った受容スリーブの、空隙の領域における断面図である。
図7本開示の第3の実施形態に従ったスクリューヘッドの側面図である。
図8本開示の第3の実施形態に従った挿入スリーブを示す。
図9】第3の実施形態に従った椎弓根スクリューの部分斜視断面図を示す。
図10本開示の第3の実施形態に従った椎弓根スクリューの長手方向の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、角度を付けた状態の本開示に従った椎弓根スクリュー1において、部分的に断面図が示された斜視図を示す。椎弓根スクリュー1は、チューリップ又は受容スリーブ2を有しており、チューリップ又は受容スリーブ2は、この図示において長手方向に切断されており、その内周は、遠位端において円錐状に狭められて、椎弓根スクリュー1の球形のスクリューヘッド4のための接触表面3を形成している。椎弓根スクリュー1は、球形のスクリューヘッド4が接触表面3に対して遠位に載置され、スクリューヘッド4と一体的に形成されたスクリューシャフト5が受容スリーブ2から遠位に突出するような方式で、受容スリーブ2内に近位方向から挿入されており、それにより、スクリューヘッド4及びスクリューシャフト5は、受容スリーブ2に対して旋回することができる。
【0028】
スクリューヘッド4は、近位に少なくとも部分的に球形であるようにも設計されており、スクリュー直径に沿って対向する側に2つの延長部6も有しており、これらの延長部6は、スクリューヘッド4の外周から、三日月形状で近位方向に延在している。即ち、延長部6の、位に配向された表面は、ベアリング表面6aを形成しており、ベアリング表面6aは、挿入スリーブ8(インレイ/インサート)上でスクリューヘッド4を支持するように働く。椎弓根スクリュー1では、これらのベアリング表面6a又はそれらの直径が旋回軸Sを画定しており、スクリューヘッド4を受容スリーブ2に対して旋回軸Sの周りを旋回させることができる。これを例示するため、図1の椎弓根スクリュー1は、旋回状態で示されており、これは、スクリューシャフトの長手方向軸Aと、旋回軸、即ち、ベアリング表面6aの中心軸において交差する受容スリーブの長手方向軸Bと、によって明瞭になっている。加えて、延長部6は、好ましくは半円筒形の径方向外側表面又は好ましくは半円筒形の径方向止め部6bを形成しており、径方向止め部6bは、受容スリーブ2上でスクリューヘッド4を支持するための支持表面として働く。
【0029】
挿入スリーブ8は、その遠位側において、丸いスクリューヘッド4を受け入れるための中空球形の受容表面9を部分的に形成しており、受容表面9は、ここでは示されていないが、本質的に、図4及び図8の対応する受容表面9に対応する。さらに、挿入スリーブ8の正面かつ遠位の縁端は、連続的ではなく、しかしながら、直径に沿って対向する2つの凹部10を有しており、これらの凹部10は、三日月形状又は耳形状の延長部6に、または、より明確には、それらのベアリング表面6aに対応する。凹部10は、プレーンべアリングの様式でベアリング表面6aと相互作用して、受容スリーブ2及びスクリューヘッド4の旋回可能性を確保する。
【0030】
挿入スリーブ8の近位領域において、挿入スリーブ8は、凹部10に対して90度だけオフセットされた2つの側方バルジ11を有しており、これらの側方バルジ11は、受容スリーブ2内の対応するサドル表面12において、所定の位置に受け入れられる。挿入スリーブ8はさらに、半円筒形の開口部13を有しており、開口部13は、接続ロッドを受け入れるためにバルジ11を通って延在し、2つの椎弓根スクリュー1は、この接続ロッドを介して、埋植又は外科手術中に互いに接続されることができる。受容スリーブ2はさらに、サドル表面12と同じ角度位置において、近位側から導入された2つのU字形状のスロット14を有しており、スロット14には接続ロッドが挿入可能である。ねじ部15が、受容スリーブ2内の近位エリアに設けられており、受容スリーブ2には、椎弓根スクリュー1及び接続ロッドに張力をかけるために、セットスクリューが螺合されることができる。
【0031】
図2は、本開示の第1の実施形態に従った受容スリーブ2の長手方向の断面図を示す。既に上記の特徴に加え、この図から明らかであることとして、スクリューヘッド4を受容する受容スリーブ2の内周領域には、2つの空隙16(ここでは一方のみを図示)が互いに直径に沿って対向して設けられている。これらの空隙16は、スクリューヘッドの旋回軸Sの周りの運動性又は旋回可能性を確保するために、延長部6を受け入れるように働く。それと同時に、空隙16は、延長部6を介して、又はより明確には、径方向止め部6bを介して、受容スリーブ2の直上でスクリューヘッド4を支持するために、支持表面又は止め表面16aを形成している。
【0032】
図3から図6に示された本開示の第2の実施形態は、第1の実施形態のものに大いに対応しており、このような理由で、それらの差異のみを以下に論じ、同じ参照符号を同様の特徴について使用する。
【0033】
図3は、本開示の第2の実施形態に従ったスクリューヘッド4の斜視図である。ここで認められることとして、スクリューヘッド4は、近位前表面17を有しており、近位前表面17には、例えば、骨セメントを押し込むためのツール受け又はチャネルが埋設され得る。このような前表面17は、第1の実施形態において設けられてもよい。さらに、スクリューヘッド4は、延長部6に加えて、径方向の内向きにオフセットされた支持ラグ18を有している。これらの支持ラグ18は、スクリューヘッド4の近位前表面17を越えて近位に延在している。また、これらの支持ラグ18は、挿入スリーブ8上における、案内、支持、又はベアリングのためのさらなる案内表面、支持表面、又はベアリング表面を形成するために、それらの近位端において、円筒の側方表面又は第2のベアリング表面19も形成している。スクリュー直径に沿った方向において、支持ラグ18は、両側面に平坦な面を形成している。
【0034】
図4は、本開示の第2の実施形態に従った挿入スリーブ8を示す。この挿入スリーブは、受容表面9及び凹部10に加え、凹部10に対して径方向の内向きにオフセットされた埋設スロット20を遠位に有する。これは、スロット20の位置が支持ラグ18の位置に対応することを意味する。これにより、スロット20は、遠位方向において、内側円筒表面を形成しており、この内側円筒表面は、支持ラグ18と、より明確には、支持ラグ18の側方円筒表面又は第2のベアリング表面19と、プレーンベアリングの様式で相互作用する。
【0035】
図5は、第2の実施形態に従った組み付けられた椎弓根スクリュー1の長手方向の断面図を示す。スクリューヘッド4の延長部6が、スクリュー直径に沿った方向に支持されるために、いかに受容スリーブ2上に、より明確には、空隙16の支持表面又は止め表面16a上に、スクリュー直径に沿って載置されているかが認められる。さらに、認められることとして、スクリューヘッド4を挿入スリーブ8に対して長手スクリュー方向に支持及び案内するために、スクリューヘッド4の延長部6のベアリング表面6aと挿入スリーブ8の凹部10が、及び、支持ラグ18の第2のベアリング表面19と挿入スリーブ8のスロット20が、互いに当接している。さらに、認められることとして、意図された旋回軸Sに対する横方向の旋回(横旋回)に対して、椎弓根スクリュー1の安定性を増大させるために、支持ラグ18は、少なくとも、径方向の外側に平坦な側面21がスロット20の対応する側壁に接する状態で、支持されている。さらに、この実施形態によると、直径に沿って対向する2つの止め突部22が、スロット14に対して90度だけオフセットされており、受容スリーブ2に設けられており、止め突部22は、暫定的に(即ち、接続ロッドがまだ挿入されておらず、セットスクリューがまだ螺合されていない限りにおいて)受容スリーブ2内に挿入スリーブ8を保持するように働く。
【0036】
図6は、スクリューヘッド4が受け入れられるエリアでの受容スリーブ2の断面図を示す。特に、この例示は、スクリューヘッド4の延長部6が旋回可能に受け入れられる空隙16の形状を示す。空隙16は、断面図において実質的に矩形であり、これにより、スクリューヘッドの延長部6の径方向止め部6bは、いずれの旋回位置においても、空隙16により形成された支持表面又は止め表面16aに当接する。第1の実施形態における空隙16もこのような形状を有するが、より小さく形成され得る。
【0037】
図7は、本開示の第3の実施形態に従ったスクリューヘッド4の側面図を示す。この実施形態に従った椎弓根スクリュー1は、第1及び第2の実施形態に従った椎弓根スクリューと比較して、特に大きな力を伝達するように設計されており、したがって、特に安定性を有するように設計されている。以下においては、他の2つの実施形態、特に第1の実施形態と比較した、この実施形態の特別な特徴及び差異について論じ、ここでは、同じ参照符号が同様の特徴について使用される。
【0038】
このスクリューヘッド4もまた、本質的にボール形状/球形であり、近位前表面17を形成しており、近位前表面17に、ツール受け又はチャネルが埋設され得る。さらに、スクリューヘッド4の球形表面の近位の半分には、溝(cannelure)又はリブ23が設けられている。これらの形態により、スクリューヘッド4は、挿入スリーブ8に対して旋回軸Sの周りを自由に旋回可能なのではなく、リブ23を介して特定の位置又は旋回位置にロックされ得る。さらに、延長部6が非常に大きい。即ち、延長部6は、スクリューヘッド4の球形の基部本体の外周を越えて、スクリュー直径に沿った方向に突出しており、それにより、延長部6のスクリュー直径に沿った延在は、スクリューヘッド4の球形の基部本体の直径よりも大きい。加えて、延長部6は、スクリューヘッド4の近位前表面17を越えて長手スクリュー方向に突出している。この方式では、延長部6は、それらの径方向の内側に付加的な支持表面を形成し得る。これらの支持表面は、第2の実施形態の支持ラグ18と同様に、横旋回に対する椎弓根スクリューの付加的な安定性を達成するために、挿入スリーブ8の対応する表面上で支持されている。必要な場合、延長部6は、それらの間に、挿入スリーブ8を挟む/架け渡すために使用されてもよい。
【0039】
球形のスクリューヘッド4は、スクリューヘッド4の延長部6の間で受容スリーブ2の旋回運動を妨げないように、延長部6の径方向内側に、例えばミリングによって、円筒状に凹んでいる。必要な場合、これは、延長部6により形成されたベアリング表面6aに加え、さらなるベアリング表面24を設け得る。要約すると、第3の実施形態は本質的に、第1及び第2の実施形態の組み合わせであり、この組み合わせは、横旋回に対する、特に高い程度の安定性をもたらす。
【0040】
図8は、本開示の第3の実施形態に従った挿入スリーブ8の斜視図を示す。明瞭に視認可能なこととして、挿入スリーブ8の凹部10は、第1及び第2の実施形態のものよりも著しく深く、それにより、大きな延長部6が入る余地を有する。さらに、凹部10は、径方向の外向きにオフセットされており、各ケースにおいて段部を生成する。各段部の径方向の内側であってより遠位の部分もまた、スクリューヘッド4の延長部6の間において受容スリーブ2の旋回運動を妨げないように、円筒状に凹んでいる。加えて、必要な場合、段部のこれらのより遠位部分により、付加的なベアリング表面25が形成されてよく、付加的なベアリング表面25は、スクリューヘッド4のベアリング表面24とプレーンベアリングの様式で相互作用するように適合されている。
【0041】
図9は、本開示の第3の実施形態に従った組み付けられた椎弓根スクリュー1において部分的な断面図が示された斜視図を示す。挿入スリーブ8の受容表面9がどのようにスクリューヘッド4のリブ23上に位置しているのか、及び、延長部6がどのように挿入スリーブ8の凹部10に係合して、長手スクリュー方向において延長部6のベアリング表面6aと挿入スリーブ8の凹部10とを介して、及び、スクリュー直径に沿った方向において延長部6の径方向の内側の支持表面と凹部10により形成された段部を介して、の両方において、作用表面の対を形成しているのか、が明瞭に視認可能である。
【0042】
図10は、第3の実施形態に従った組み付けられた椎弓根スクリューの長手方向の断面図を示し、この断面図は、本実施形態のさらなる特異点を明らかにしている。空隙16が受容スリーブ2にアンダーカットを形成していることが認められる。即ち、空隙16は、スクリュー直径に沿って配向された支持表面又は止め表面16aだけではなく、近位にありスクリュー長手方向に配向された付加的な支持表面16bも設けており、スクリューヘッド4の延長部6のベアリング表面6aが、付加的な支持表面16bに対して接触している。これにより、スクリューヘッド4が挿入スリーブ8上だけではなく、受容スリーブ2の直上においても、やはり長手スクリュー方向に支持されることが確保される。これは、この実施形態によると、スクリューヘッド4が受容スリーブ2及び挿入スリーブ8によって、近位方向及びスクリュー直径に沿った方向の両方において、直接的に支持されて、横旋回に対する最大の安定性が達成されることを意味する。空隙16は、スクリューヘッドを横方向にも使用することができるように、且つ、同じ受容スリーブを、異なる態様で配向された多軸椎弓根スクリューに使用することができるように、断面図において、正方形であってよい。
以下の項目は、出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
スクリューシャフト(5)を備えた多軸タイプの椎弓根スクリュー(1)において、前記スクリューシャフト(5)の近位端には、実質的に球形の基本的形状を有するスクリューヘッド(4)が1つの部品で形成されており、前記スクリューヘッド(4)が受容スリーブ又はチューリップ(2)内に装着されており、挿入スリーブ(8)が前記受容スリーブ又はチューリップ(2)内に挿入されており、前記挿入スリーブ(8)が前記スクリューヘッド(4)に押圧されて、前記受容スリーブ又はチューリップ(2)と前記スクリューシャフト(5)との間の相対旋回位置を固定する、前記椎弓根スクリュー(1)であって、
直径に沿って対向する2つの旋回案内ユニット又は旋回制限ユニットによって特徴付けられており、
前記旋回案内ユニット又は旋回制限ユニットはそれぞれ、前記スクリューヘッド(4)の前記球形の基本的形状を越えて、径方向に、且つ長手スクリュー方向に突出する少なくとも1つの延長部(6)を有しており、
前記延長部は、それぞれに、好ましくは部分的な円筒形の径方向外側表面上に、止め部(6b)を形成しており、
前記延長部は、前記スクリューシャフト(5)と前記チューリップ又は受容スリーブ(2)との相対旋回を1つの旋回面内でのみ許容し、別の旋回面内で相対旋回する場合には、前記延長部が前記チューリップ又は受容スリーブ(2)の径方向内周側面で止められるように支持される、ような方式で、位置決めされている、椎弓根スクリュー(1)。
(項目2)
前記延長部(6)は、前記旋回面内での前記スクリューシャフト(5)と前記チューリップ又は受容スリーブ(2)との前記相対旋回を案内する、部分的な円筒形のベアリング表面(6a)を近位に形成しており、
前記ベアリング表面(6a)は、プレーンベアリングの様式で相互作用するために、前記挿入スリーブ(8)の正面又は遠位であって、対応する部分的な円筒形の凹部(10)上で近位方向に案内される、項目1に記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目3)
前記チューリップ又は受容スリーブ(2)は、内周表面上に、直径に沿って対向する少なくとも2つの空隙(16)を有しており、
前記空隙(16)は、任意の旋回位置で前記延長部(6)を収容するほど十分に大きい、項目1及び2のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目4)
前記1つの旋回面内での前記受容スリーブ又はチューリップ(2)に対する前記スクリューシャフト(5)の旋回は、少なくとも±22度だけ、好ましくは少なくとも±30度だけ、許容されている、項目1から3のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目5)
前記受容スリーブ又はチューリップ(2)は、前記延長部(6)を基準として円周方向に90度だけオフセットされており、接続ロッドを受け入れるために好ましくはU字形状のスロット(14)を有しており、
複数の椎弓根スクリュー(1)は、前記接続ロッドを介して、互いに接続され得る、項目1から4のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目6)
前記延長部(6)の前記近位ベアリング表面(6a)の直径は、前記スクリューヘッド(4)の前記球形の基本的形状の直径よりも小さいことを特徴とする、項目2から5のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目7)
前記スクリューヘッド(4)は、前記延長部(6)を基準としてスクリュー直径に沿って内向きにオフセットされており、前記近位方向に前記延長部(6)を越えて突出している、付加的な支持ラグ(18)を有している、項目1から6のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目8)
前記支持ラグ(18)は、プレーンベアリングの前記様式で、前記挿入スリーブ(8)の正面であって、対応する部分的な円筒形のスロット(20)と相互作用するために、近位に部分的な円筒形の第2のベアリング表面(19)を形成している、項目7に記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目9)
前記支持ラグ(18)は、前記スロット(20)の対応する側表面上に自身を支持して前記他の旋回面内の旋回を阻止するために、外側において、及び、好ましくは内側において、スクリュー径方向に平坦である、項目7及び8のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目10)
前記延長部(6)は、前記スクリューヘッド(4)の前記球形の基部本体の外径を越えて、スクリュー径方向に外向きに、及び、好ましくは近位に、突出している、項目1から9のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目11)
前記空隙(16)は、前記受容スリーブ又はチューリップ(2)の内周壁で凹んだ、好ましくは矩形のアンダーカットにより形成されている、項目10に記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目12)
前記延長部(6)は、スクリュー直径に沿って外向きに、及び、前記長手スクリュー方向に、の両方において、前記受容スリーブ又はチューリップ(2)内の前記空隙(16)により形成された前記アンダーカット内で支持されている、項目11に記載の椎弓根スクリュー(1)。
(項目13)
前記延長部(6)の各々は、前記内側においてスクリュー径方向に平坦であり、前記凹部(10)の対応する表面上で案内されている、項目10から12のうちの1つに記載の椎弓根スクリュー(1)。
【符号の説明】
【0043】
1 :椎弓根スクリュー1
2 :受容スリーブ/チューリップ
3 :受容スリーブの接触表面
4 :スクリューヘッド
5 :スクリューシャフト
6 :スクリューヘッドの延長部
6a :スクリューヘッドのベアリング表面
6b :スクリューヘッドの径方向止め部
7 :
8 :挿入スリーブ/インサート/インレイ
9 :挿入スリーブの受容表面
10 :挿入スリーブの凹部
11 :バルジ挿入スリーブの
12 :受容スリーブのサドル表面
13 :挿入スリーブの半円筒形の開口部
14 :受容スリーブのU字形状のスロット
15 :受容スリーブのねじ部
16 :受容スリーブの空隙
16a :空隙の螺合直径方向のベアリング表面または止め表面
16b :空隙の近位支持表面
17 :スクリューヘッドの近位前表面
18 :スクリューヘッドの支持ラグ
19 :支持ラグの第2のベアリング表面
20 :挿入スリーブのスロット
21 :支持ラグの平坦な側面
22 :受容スリーブの止め突部
23 :スクリューヘッドのリブ
24 :スクリューヘッドのベアリング表面(または空隙)
25 :挿入スリーブのベアリング表面(または段部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10