(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】高速可撓性包装ライン用の耐熱性ポリエチレン多層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241011BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241011BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B32B27/28 101
(21)【出願番号】P 2021575906
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 US2020039233
(87)【国際公開番号】W WO2020263887
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-12
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】リー、エドワード エル.
(72)【発明者】
【氏名】タイ、ウィー タツ
(72)【発明者】
【氏名】イー、ウー アイク
(72)【発明者】
【氏名】ゴウ、ウィー ルン
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-270359(JP,A)
【文献】国際公開第2018/045559(WO,A1)
【文献】特表2019-529165(JP,A)
【文献】特表2013-504452(JP,A)
【文献】米国特許第07611770(US,B2)
【文献】特開平10-265751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムであって、
0.945g/cc超の密度を有する第1のポリエチレンを含む外層と、
カチオン源で中和された0.1~10重量%を有する少なくとも1つのエチレン酸コポリマー、0.910g/ccを下回る密度を有するポリエチレンプラストマー、および108℃以下の融点Tm(DSC)を有するエチレン系ポリマーのうちの1つ以上を含む、シーラント層と、
前記外層と前記シーラント層との間に位置決めされた結合層であって、前記結合層が、無水物グラフト化エチレン系ポリマー、エチレン酸コポリマー、およびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択されるポリマーを含む、
前記結合層と、
0.910~0.940g/ccの密度を有する二軸配向ポリエチレンを含むコア層であって、前記結合層が、前記コア層と前記シーラント層との間に配設されている、
前記コア層と、を含
み、
(i)前記多層フィルムが、125℃、40PSI、および0.5秒の滞留時間で、横方向に5%未満の収縮を呈する、かつ/または、(ii)前記多層フィルムが、125℃、40PSI、および0.5秒の滞留時間で、機械方向に10%未満の収縮を呈する、前記多層フィルム。
【請求項2】
前記多層フィルムが、前記コア層と前記外層との間に配設された、第2の結合層をさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記結合層が、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項
1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記第2の結合層が、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記多層フィルムが、ブローフィルムまたはキャストフィルムである、請求項
1~4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記多層フィルムが、熱積層によって、または押出積層およびコーティングによって形成されている、請求項
1~5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記外層が、二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムまたは機械方向配向ポリエチレン(MDO)フィルムを含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記外層が、中密度ポリエチレン(MDPE)を含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記シーラント層の前記エチレン系ポリマーが、70℃超、99℃未満のTm(DSC)を有する、請求項
1~8のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記多層フィルムが、溶媒系接着剤、無溶媒接着剤、および水性積層接着剤を含まない積層体である、請求項
1~9のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記多層フィルムが、ASTM F1921に従って測定される際、125℃で、25N/25mm以上のシール強度を呈する、請求項
1~10のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記多層フィルムが、5Nの負荷で、120℃未満のヒートシール開始温度(HSIT)を呈する、請求項
1~11のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記多層フィルムが、ASTM D2457-08/ASTM D1003-01に従って測定される際、25超の45°における光沢度を呈する、請求項
1~12のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記シーラント層が、前記カチオン源で中和された0.1~10重量%を有する少なくとも1つのエチレン酸コポリマーを含む、請求項
1~13のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項15】
前記カチオン源が、ナトリウム塩、亜鉛塩、またはそれらの組み合わせを含む、請求項
1~14のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項16】
印刷層をさらに含む、請求項
1~15のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項17】
請求項
1~16のいずれか一項に記載の多層フィルムを含む物品であって、前記物品が、パウチである、物品。
【請求項18】
多層フィルムであって、
0.945g/cc超の密度を有する第1のポリエチレンを含む外層と、
カチオン源で中和された0.1~10重量%を有する少なくとも1つのエチレン酸コポリマー、0.910g/ccを下回る密度を有するポリエチレンプラストマー、および108℃以下の融点Tm(DSC)を有するエチレン系ポリマーのうちの1つ以上を含む、シーラント層と、
前記外層と前記シーラント層との間に位置決めされた結合層であって、前記結合層が、無水物グラフト化エチレン系ポリマー、エチレン酸コポリマー、およびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択されるポリマーを含む、前記結合層と、
0.910~0.940g/ccの密度を有する二軸配向ポリエチレンを含むコア層であって、前記結合層が、前記コア層と前記シーラント層との間に配設されている、前記コア層と、を含み、
前記外層が、中密度ポリエチレン(MDPE)を含む、前記多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月28日に出願された、米国仮特許出願第62/867,981号に対する優先権を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、多層フィルムに関し、具体的には、ポリエチレンを含む、多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
多層フィルムは、様々な消費者製品用の小袋またはパウチなどの可撓性包装に好適であり得る、キャストフィルムまたはブローフィルムなどのフィルムを含むことができる。かかる用途で使用される従来型の積層体は、典型的に、ポリエチレンシーラント基材に積層されたポリエチレンテレフタレート(PET)または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の1つ以上の層を含む。かかる構造は印刷可能で、耐熱性があり、良好なシール完全性のための高温シーリングに耐えることができるが、かかる積層体は、再利用することができない。
【0004】
再利用可能性問題に対処するために、単一材料のポリエチレン多層フィルムが導入されたが、それらは、典型的に、高温シーリング高速包装機で使用するために必要な耐熱性に欠け、これにより印刷の歪みがもたらされる可能性がある。追加的または代替的に、かかるフィルムは、限られた剛性、耐擦傷性、引張強度、および/または光沢度を有する場合がある。さらに、包装のインクに対する接着を可能にするために積層接着剤を使用すると、再利用可能性を制限する場合がある。
【0005】
したがって、好適な耐熱性を有する単一材料のポリエチレン多層フィルムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本組成物は、ヒートシール中の収縮または歪みを防ぐための耐熱層と、積層接着剤を必要とせずに、耐熱層をインク、シーラント層、および/または他のポリエチレンフィルムに接着させる結合層と、を有するフィルムを提供することによって、これらのニーズを満たす。
【0007】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、多層フィルムは、外層、シーラント層、および外層とシーラント層との間に位置決めされた結合層を含む。外層は、0.945g/cc超の密度を有する第1のポリエチレン、および0.910~0.940g/ccの密度を有する第2のポリエチレン、のうちの1つ以上を含む。シーラント層は、カチオン源で中和された0.1~10重量%を有する少なくとも1つのエチレン酸コポリマー、0.910g/ccを下回る密度を有するポリエチレンプラストマー、および108℃以下の融点Tm(DSC)を有するエチレン系ポリマーのうちの1つ以上を含む。結合層は、無水物グラフト化エチレン系ポリマー、エチレン酸コポリマー、およびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択される接着性樹脂を含む。
【0008】
本開示の別の実施形態によれば、外層は、第1のポリエチレンを含み、多層フィルムは、0.910~0.940g/ccの密度を有する二軸配向ポリエチレンを含むコア層をさらに含み、結合層は、コア層とシーラント層との間に配設される。
【0009】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態による多層フィルムを含み、多層フィルムは、コア層と外層との間に配設された第2の結合層をさらに含む。
【0010】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、結合層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0011】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、ブローフィルムまたはキャストフィルムである。
【0012】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、熱積層によって、または押出積層およびコーティングによって形成される。
【0013】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、外層は、二軸配向ポリエチレン(BOPE)または機械方向配向ポリエチレン(MDO)を含む。
【0014】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、外層は、中密度ポリエチレン(MDPE)を含む。
【0015】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、シーラント層のエチレン系ポリマーが、70℃超および99℃未満のTm(DSC)を有する。
【0016】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、溶媒系接着剤、無溶媒接着剤、および水性積層接着剤を含まない積層である。
【0017】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、125℃、40PSIのジョー圧力、および0.5秒の滞留時間で、横方向に5%未満の収縮を呈する。
【0018】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、125°、40PSIのジョー圧力、および0.5秒の滞留時間で、機械方向に10%未満の収縮を呈する。
【0019】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、ASTM F1921に従って測定される際、125℃で25N/25mm以上のシール強度を呈する。
【0020】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、5Nで120℃未満のヒートシール開始温度(HSIT)を呈する。
【0021】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、多層フィルムは、ASTM D2457-08/ASTM D1003-01に従って測定される際、多層フィルムは、25超の45°における光沢度を呈する。
【0022】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、シーラント層は、カチオン源で中和された0.1~10重量%を有する少なくとも1つのエチレン酸コポリマーを含み、ナトリウム塩、亜鉛塩、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0023】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルムは、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、さらに印刷層を含む。
【0024】
本開示の別の実施形態によれば、物品は、前述の実施形態のいずれかによる多層フィルムを含み、物品は、パウチである。
【0025】
これらのおよび他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態および図面においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の1つ以上の試料の実施形態を図示するヒートシール強度曲線である。
【
図2】本開示の1つ以上の試料の実施形態を図示する別のヒートシール強度曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、本出願の特定の実施形態について説明する。しかしながら、本開示は、異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的で完全なものとなり、かつ本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0028】
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられる「ホモポリマー」という用語、および2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマーと、ターポリマーなどの3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーとを含む。
【0029】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、50モル%超のエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0030】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」または「高度分岐ポリエチレン」と呼ばれてもよく、ペルオキシドなどのフリーラジカル開始剤を用いて、14,500psi(100MPa)超の圧力でオートクレーブまたは管型反応器中で部分的または完全に、ポリマーがホモポリマー化されるかまたはコポリマー化されることを意味するように定義される(例えば、参照として本明細書に組み込まれるUS4,599,392を参照のこと)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cmの範囲の密度を有する。
【0031】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製される樹脂、ならびに限定されるものではないが、ビス-メタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)および拘束幾何形状触媒を含むシングルサイト触媒を使用して作製される樹脂、およびポスト-メタロセン、分子触媒を使用して作製された樹脂を含む。LLDPEには、直鎖状の、実質的に直鎖状の、または不均一な、ポリエチレンコポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEは、LDPEよりも短い鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号における組成物などの均一分岐直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたポリマーなどの不均一分岐エチレンポリマー、ならびに/またはそれらのブレンド(US3,914,342もしくはUS5,854,045に開示されるものなど)を含む。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0032】
「MDPE」という用語は、0.926~0.945g/ccの密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロムもしくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、または限定されるものではないが、ビス-メタロセン触媒および拘束幾何形状触媒を含むシングルサイト触媒を使用して作製される。
【0033】
「HDPE」という用語は、概して、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、または限定されるものではないが、ビス-メタロセン触媒および拘束幾何形状触媒を含むシングルサイト触媒で調製される、約0.945g/cc超の密度を有するポリエチレンを指す。
【0034】
「ULDPE」という用語は、概して、チーグラー・ナッタ触媒、限定されるものではないが、ビス-メタロセン触媒および拘束幾何形状触媒を含むシングルサイト触媒、ならびにポストメタロセン、分子触媒で調製される、0.880~0.909g/ccの密度を有するポリエチレンを指す。本明細書で使用される場合、「プロピレン系ポリマー」という用語は、プロピレンモノマーに由来する50重量%を超える単位を含むポリマーを指す重合形態で、含むポリマーを指す。これは、プロピレンホモポリマー、ランダムコポリマーポリプロピレン、インパクトコポリマーポリプロピレン、プロピレン/α-オレフィンインターポリマー、およびプロピレン/α-オレフィンコポリマーを含む。これらのポリプロピレン材料は、概して、当業者に既知である。
【0035】
「多層フィルム」とは、複数の層を有する任意の構造を意味する。例えば、多層構造体は、2、3、4、5、またはそれ以上の層を有してもよい。多層フィルムは、文字で示される層を有するものとして説明され得る。例えば、コア層B、ならびに2つの外部層AおよびCを有する3層構造体は、A/B/Cとして示されてもよい。同様に、2つのコア層BおよびC、ならびに2つの外部層AおよびDを有する構造体は、A/B/C/Dとして示され得る。追加的に、当業者は、さらなる層E、F、Gなどもまた、この構造に組み込まれ得ることを既知であろう。
【0036】
ここで、本開示の多層フィルムの実施形態を詳細に参照し、多層フィルムは、少なくとも耐熱性外層、シーラント層、および外層とシーラント層との間に位置決めされた結合層を含む。
【0037】
耐熱性外層
様々な実施形態では、外層は、0.945g/cc超の密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)、および0.910~0.940g/ccの密度を有するポリエチレンのうちの1つ以上を含む。
【0038】
1つ以上の実施形態では、外層は、0.945~0.970g/ccなど、0.945g/cc超の密度を有する第1のポリエチレンを含み得る。さらなる実施形態では、第1のポリエチレンは、エチレンのコポリマーおよびC3-C12コモノマーであってもよい。さらに、第1のエチレンのメルトフローレート(MFR)は、0.3~6.0g/10分、0.3~5.0g/10分、0.3~4.0g/10分、0.3~3.0g/10分、0.3~2.0g/10分、または0.3~1.5g/10分、または0.5~1.0g/10分であり得る。様々な市販の製品は、例えば、The Dow Chemical Company(Midland、MI)製のELITE(商標)5960G、または好適な密度およびMFRを有する他のHDPE製品が好適であると考えられる。他の好適なHDPEとしては、PCT公開第WO2017/099915号に記載のものが挙げられ、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
他の実施形態では、外層は、追加的または代替的に、0.910~0.940g/ccの密度を有する第2のポリエチレンを含む。第1のポリエチレンと同様に、第2のポリエチレンは、エチレンのコポリマーおよびC3-C12コモノマーであってもよい。さらなる実施形態では、ポリエチレンは、0.910~0.940g/cc、0.925~0.945g/cc、または0.925~0.935g/ccの密度を有し得る。さらなる実施形態では、メルトフローレート(MFR)は、0.3~4.0g/10分、0.3~3.0g/10分、0.5~2.0g/10分、1.0~2.0g/10分であり得る。様々な市販の製品は、例えば、The Dow Chemical Company(Midland, MI)製のDOWLEX(商標)2038.68G、または好適な密度およびMFRを有する他のポリエチレン製品が好適であると考えられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、外層は、配向ポリエチレンフィルムであり得る。例えば、外層は、二軸配向ポリエチレン(BOPE)または機械方向配向(MDO)ポリエチレンであり得る。外層がBOPEである実施形態では、BOPEは、テンタフレーム逐次二軸配向プロセスを使用して二軸配向され得、テンタフレーム二軸配向ポリエチレン(TF-BOPE)と称され得る。そのような技術は一般に、当業者に既知である。他の実施形態では、ポリエチレンフィルムは、二重気泡または三重気泡配向プロセスなどの、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知である他の技術を使用して二軸配向され得る。一般に、テンタフレーム逐次二軸配向プロセスでは、テンタフレームは、多層共押出ラインの一部として組み込まれる。フラットダイから押し出された後、フィルムを冷却ロール上で冷却し、室温の水で充填した水浴に浸漬させる。次いで、キャストフィルムを異なる回転速度を有する一連のローラに通して、機械方向における延伸を達成する。製作ラインのMD延伸セグメントには数対のローラがあり、それらはすべて油加熱されている。対のローラは、予熱ローラ、延伸ローラ、ならびに弛緩およびアニーリング用ローラとして逐次作動する。各ローラ対の温度は、別々に制御される。機械方向における延伸後、加熱ゾーンを有するテンタフレーム熱風炉にフィルムウェブを通して、横断方向における延伸を実行する。最初のいくつかのゾーンは予熱用であり、その後に延伸用のゾーン、次いでアニーリング用の最終ゾーンが続く。
【0041】
いくつかの実施形態において、ポリエチレンフィルムは、2:1~6:1の延伸比で、または別の方法では3:1~5:1の延伸比で機械方向に配向され得る。いくつかの実施形態において、ポリエチレンフィルムは、2:1~9:1の延伸比で、または別の方法では3:1~8:1の延伸比で横断方向に配向され得る。いくつかの実施形態において、ポリエチレンフィルムは、2:1~6:1の延伸比で機械方向に、かつ2:1~9:1の延伸比で横断方向に配向される。
【0042】
二軸配向に続いて、二軸配向ポリエチレンフィルムは、多くの物理的特性を呈することができる。例えば、いくつかの実施形態では、二軸配向ポリエチレンフィルムは、ASTM D882に従って測定されたとき、横断方向の最大伸びよりも少なくとも2倍大きい機械方向の最大伸びを呈することができ、または代替的には、少なくとも5倍大きいか、または代替的には、少なくとも8倍大きいか、または代替的には、少なくとも10倍大きい。
【0043】
いくつかの実施形態では、例えば、最終用途に応じて、二軸配向ポリエチレンフィルムは、シーラントフィルムへの積層の前または後に、当業者に既知の技術を使用してコロナ処理または印刷することができる。
【0044】
結合層
外層に加えて、多層フィルムは、少なくとも1つの結合層をさらに含む。結合層は、耐熱性外層をシーラント層および/または他の隣接層に接着させることに役立つ。結合層が外層をシーラント層に接着させることに役立つ場合、結合層は、少なくとも1つのシーラント層および外層に隣接している。換言すると、結合層は、外層とシーラント層との間に挟まれている。
【0045】
結合層は、無水物グラフト化エチレン系ポリマー、エチレン酸コポリマー、およびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択される接着性樹脂を含み得る。無水物グラフト化部分の例としては、限定されるものではないが、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2-メチルマレイン酸無水物、2-クロロマレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]-5-ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、および4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、lo-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-オキサ-1,3-ジケトスピロ(4.4)ノナ-7-エン、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ノルボル-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヒミック酸無水物、メチルヒミック酸無水物、およびx-メチル-ビ-シクロ(2.2.1)ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物を含み得る。一実施形態では、無水物グラフト化部分は、無水マレイン酸を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、無水物グラフト化エチレン系ポリマーは、0.86~0.96g/cc、0.87~0.95g/cc、または0.90~0.95g/ccの密度を有する。いくつかの実施形態では、無水物グラフト化エチレン系ポリマーは、0.1g/10分~50g/10分、または0.5g/10分~20g/10分、または1.0g/10分~10g/10分のメルトフローレートを有する。
【0047】
いくつかの実施形態で使用することができる市販の無水物グラフト化エチレン系ポリマーの例は、The Dow Chemical Company、Midland, MIから入手可能なBYNEL(商標)21E961を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、結合層は、エチレン酸コポリマーを含む。エチレン酸コポリマーは、エチレンおよび1つ以上のモノカルボン酸との重合反応生成物である。モノカルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの組み合わせであり得る。様々な実施形態では、モノカルボン酸は、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、1重量%~25重量%、1重量%~20重量%、または5重量%~15重量%の量で存在する。様々な実施形態では、エチレン酸コポリマーのエチレン含有量は、50重量%超、または60重量%超である。例えば、エチレン酸コポリマーのエチレン含有量は、50重量%~95重量%、50重量%~90重量%、50重量%~85重量%、または60重量%~80重量%である。
【0049】
エチレン酸コポリマーは、いくつかの実施形態では、0.905~0.940g/cc、0.910~0.930g/cc、または0.915~0.925g/ccの密度を有する。実施形態では、エチレン酸コポリマーは、9.0g/10分~15g/10分、10.0g/10分~12g/10分、または10.5g/10分~11.5g/10分のMFRを有する。1つの特定の実施形態では、エチレン酸コポリマーは、エチレン、アクリル酸、およびアクリレートのターポリマーであり、アクリル酸は、メタクリル酸またはアクリル酸を含み得、アクリレートは、イソブチルアクリレートを含み得る。1つ以上の実施形態において、エチレン酸コポリマーは、E/MAAコポリマー(エチレンメタクリル酸)、E/AAコポリマー(エチレンアクリル酸)、またはE/MAA/iBAターポリマー(エチレンメタクリル酸およびイソブチルアクリレート)を含み得る。好適な市販のエチレン酸コポリマーの例は、The Dow Chemical Company、Midland, MIから入手可能なNUCREL(商標)AE、NUCREL(商標)AN4228Cを含む。
【0050】
またさらなる実施形態では、結合層は、エチレン酢酸ビニルを含む。いくつかの実施形態では、エチレン酢酸ビニルは、1および800g/10分、5~400g/10分、または5~150g/10分のMFRを有する。1つ以上の実施形態では、エチレン酢酸ビニルは、0.930g/cc~0.980g/cc、0.940g/cc~0.970g/cc、または0.950g/cc~0.960g/ccの密度を有する。いくつかの実施形態で使用することができる市販のエチレン酢酸ビニルの例は、The Dow Chemical Company、Midland, MIから入手可能なELVAX(商標)3175を含む。
【0051】
またさらなる実施形態では、結合層は、ポリマー骨格中の無水マレイン酸のモノマーまたはその上にグラフト化された無水マレイン酸を含む、ランダムエチレンコポリマーを含む。エチレンコポリマーの比は、無水マレイン酸のモノマーの0.1重量%~2.0重量%、0.5重量%~1.5重量%、0.75重量%~1.25重量%を含み得る。無水マレイン酸のモノマーを含むランダムエチレンポリマーのメルトフローは、1.0g/10分~500g/10分、2.0g/10分~400g/10分、5g/10分~300g/10分、1.0g/10分~200g/10分、100g/10分~500g/10分、または200g/10分~500g/10分であり得る。いくつかの実施形態に対して好適であり得る無水マレイン酸のモノマーを含むランダムエチレンポリマーの市販の樹脂の例は、The Dow Chemical Company、Midland, MIから市販されている、FUSABOND(登録商標)M603およびFUSABOND(登録商標)M623 XFを含む。
【0052】
またさらなる実施形態では、結合層は、エチレン、アクリル酸エステル、および無水マレイン酸のターポリマーを含み得る。ターポリマーは、3重量%~50重量%、3重量%~40重量%、10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、または20重量%~30重量%のアクリル酸エステルを含み得る。ターポリマーは、0.1重量%~5重量%、1重量%~4重量%、または2重量%~3重量%の無水マレイン酸モノマーを含み得る。ターポリマーは、1g/10分~400g/10分、10g/10分~300g/10分、50g/10分~300g/10分、または100g/10分~200g/10分のメルトフローレートを有し得る。いくつかの実施形態に対して好適であり得る市販のターポリマーの例は、Arkemaから市販されている、LOTADER420およびLOTADER4503を含み得る。
【0053】
さらなる実施形態では、結合層は、超低密度ポリエチレン(VLDPE)を含む。VLDPEは、0.880g/cc~0.925g/cc、0.900g/cc~0.920g/cc、または0.900g/cc~0.910g/ccの密度を有する。いくつかの実施形態で使用することができる市販のVLDPEの例は、The Dow Chemical Company、Midland, MIから入手可能なDOW DFDA 1086 NTを含む。
【0054】
さらなる実施形態では、結合層は、エチレンプロピレンジエンターポリマーなどのエラストマー化合物を含む。エラストマー化合物は、1重量%~30重量%、5重量%~25重量%、10重量%~20重量%、または10重量%~15重量%の量で結合層中に存在し得る。いくつかの実施形態で使用することができる市販のエラストマーの例は、The Dow Chemical Company、Midland, MIから市販されているNORDEL IP 3722Pを含む。
【0055】
さらなる実施形態では、結合層は、エチレンアクリレートコポリマーを含み得る。好適なアクリレートコポリマーは、エチルメチルアクリレート(EMA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、およびエチレンブチルアクリレート(EBA)を含み得る。エチレンアクリレートコポリマーは、5.0重量%~50重量%、10重量%~45重量%、15重量%~40重量%、または20重量%~35重量%のコモノマーレベルの無水マレイン酸(MA)、エチルアクリレート(EA)またはブチルアクリレート(BA)重量%を有し得る。エチレンアクリレートコポリマーは、0.1~60g/10分、1~50g/10分、5~40g/10分、または10~30g/10分のメルトフローインデックスを有し得る。いくつかの実施形態で使用され得る市販のコポリマー樹脂の例は、The Dow Chemical Company、Midland, MIからすべて入手可能な、Elvaloy(登録商標)1224AC、Elvaloy(登録商標)1820AC、Elvaloy(登録商標)2618AC、Elvaloy(登録商標)3427AC、Elvaloy(登録商標)34035ACを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、結合層は、HDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、または低密度ポリエチレン(LDPE)のうちの少なくとも1つをさらに含む。HDPE、LLDPE、またはLDPEは、接着性樹脂と配合され得る。LLDPEが含まれる実施形態では、LLDPEは、構造全体の向上した機械的性能(引き裂きまたはダーツなど)を提供するために役立ち得る。HDPEが含まれる実施形態では、HDPEは、向上した剛性を提供するために役立ち得る。LDPEが含まれる実施形態では、LDPEは、改善された配合特性、向上した融解安定性、および改善された気泡安定性を提供するために役立ち得る。かかる実施形態では、結合層は、結合層の総重量に基づいて、1~99%の接着性樹脂、10~60%の接着性樹脂、または20~40%の接着性樹脂を含み得る。結合層は、結合層の総重量に基づいて、0~99%のHDPE、LLDPE、もしくはLDPE、40~90%のHDPE、LLDPE、もしくはLDPE、または60~80%のHDPE、LLDPEからLDPEをさらに含み得る。
【0057】
追加の組成物および添加剤もまた、結合層中に含まれることが企図される。例えば、結合層は、ロジンおよびそれらの誘導体、テルペンおよび変性テルペン、脂肪族、脂環式および芳香族樹脂(C5脂肪族樹脂、C9芳香族樹脂、およびC5/C9脂肪族/芳香族樹脂)、水素化炭化水素樹脂およびその混合物、ならびにテルペン-フェノール樹脂(TPR)などの粘着付与剤を含み得、これらはエチレン-酢酸ビニル接着剤とともに使用されることが多い。1つの好適な水素化炭化水素樹脂は、Eastman Chemicalから入手可能なRegalite R1125である。
【0058】
シーラント層
様々な実施形態の多層フィルムは、内面またはシーラント層をさらに含む。これは、包装された内容物に最も近い包装の内側層であり得る。また、熱成形された包装部品に蓋フィルムをシールするなど、シーラント層の2つの部分を一緒に、またはパッケージの別の部分の表面にヒートシールすることなどによって、パッケージ製品の周囲でパッケージをシールまたは閉鎖するための手段も提供する。シーラント層の組成は、例えば、可能な限り低いシール温度で高いシール接着強度を達成するために、内面層のシール能力に影響を与えるように選択される。
【0059】
シーラント層は、1つ以上のエチレン酸コポリマー、0.910g/ccを下回る密度を有するポリエチレンプラストマー、および108℃以下の融点Tm(DSC)を有するエチレン系ポリマーを含み得る。
【0060】
1つ以上の実施形態では、エチレン酸コポリマーは、カチオン源で中和された0.1~10.0重量%を有するアイオノマーであり得、アイオノマーと称され得る。エチレン酸コポリマーは、エチレン、モノカルボン酸、および軟化コモノマーの重合反応生成物である。モノカルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの組み合わせであり得る。様々な実施形態では、モノカルボン酸は、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、1重量%~25重量%、1重量%~20重量%、または5重量%~15重量%の量で存在する。様々な実施形態では、エチレン酸コポリマーのエチレン含有量は、50重量%超、または60重量%超である。例えば、エチレン酸コポリマーのエチレン含有量は、50重量%~95重量%、50重量%~90重量%、50重量%~85重量%、または60重量%~80重量%である。
【0061】
様々な実施形態では、エチレン酸コポリマーは、ビニルエステル、アルキルビニルエステル、およびアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される軟化コモノマーを含む。軟化コモノマーは、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、1重量%~40重量%、または1重量%~30重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、軟化コモノマーは、アルキルアクリレートである。アルキルアクリレートの好適な例としては、これらに限定されないが、エチルアクリレート、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、またはそれらの組み合わせが挙げられる。様々な実施形態では、アクリル酸アルキルは、1~8個の炭素を有するアルキル基を有する。
【0062】
エチレン酸コポリマーは、高圧を使用し、連続的に操作させる標準的なフリーラジカル共重合法によって調製することができる。モノマーは、モノマーの活性、および組み込まれることが望まれる量に関する割合で反応混合物の中に供給される。このようにして、鎖に沿ったモノマー単位の均一でほぼランダムな分布が達成される。未反応のモノマーは、リサイクルされ得る。軟化コポリマーを含む、エチレン酸コポリマーの調製についての追加情報は、米国特許第3,264,272号および米国特許第4,766,174号において見出すことができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
上述のように、エチレン酸コポリマーは、カチオン源との処理によりアイオノマーを生成するために使用することができる。カチオン源は、限定されるものではないが、ギ酸塩、酢酸塩、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、および重炭酸塩を含む、一価または二価のカチオン源であり得る。様々な実施形態では、エチレン酸コポリマーは、マグネシウム、ナトリウム、亜鉛、またはそれらの組み合わせを含み得る、1つ以上のカチオンまたはカチオン源で処理することができる。1つ以上の実施形態では、アイオノマーは、カチオン源で中和された、0.1~10.0重量%、1.0~10.0重量%、1.0~8.0重量%、または1.0~5.0重量%を有し得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、アイオノマーは、0.930g/cc~0.980g/cc、0.940g/cc~0.970g/cc、または0.950g/cc~0.960g/ccの密度を有する。1つ以上の実施形態では、アイオノマーは、2g/10分~12g/10分、3.5g/10分~10g/10分、または5g/10分~8g/10分のMFRを有する。市販のアイオノマーは、The Dow Chemical Company、Midland, MIから商品名SURLYN(商標)で入手可能なものを含む。
【0065】
本開示に照らして、パーセント中和データは、各カチオンがそのイオン電荷から計算された最大数のカルボン酸基と反応するという仮定を使用して提示される。すなわち、例えば、Mg2+およびZn2+は、2つのカルボン酸基と反応し、Na+は、1つと反応すると仮定される。
【0066】
いくつかの実施形態では、シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンプラストマーを含む。ポリエチレンポリマーは、メタロセンなどのシングルサイト触媒および拘束幾何形状触媒を使用して作製された樹脂を含み得る。ポリエチレンプラストマーは、0.910g/ccを下回る密度を有する。密度は、例えば、0.885~0.910g/cc、0.895~0.910g/cc、0.900~0.910g/cc、0.905~0.910g/ccであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリエチレンプラストマーは、0.885~0.907g/ccの密度を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリエチレンプラストマーは、最大20g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。最大20g/10分のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示される。例えば、ポリエチレンプラストマーは、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20g/10分の上限までのメルトインデックスを有することができる。本発明の特定の態様では、ポリエチレンプラストマーは、下限が0.5g/10分であるMFRを有する。ポリエチレンプラストマーのメルトインデックスを特定する際の1つの要素は、シーラント層がブローフィルムとして製造されるか、またはキャストフィルムとして製造されるかである。
【0068】
シーラント層中で使用することができるポリエチレンプラストマーの例は、例えば、AFFINITY(商標)PF7266、AFFINITY(商標)PL 1881G、およびAFFINITY(商標)PF1140Gを含む、AFFINITY(商標)という名称でThe Dow Chemical Companyから市販されているものを含む。
【0069】
さらに他の実施形態では、シーラント層は、108℃以下の融点Tm(DSC)を有するエチレン系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、0.930g/cc(cm3)以下の密度を有する。0.930g/cc以下のすべての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ、かつ本明細書で開示され、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.928、0.925、0.920、または0.915g/ccの上限からであり得る。いくつかの実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレンは、0.870g/cc以上の密度を有する。0.870~0.930g/ccのすべての個々の値および部分範囲は、本明細書において含まれ、本明細書において開示される。
【0070】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、108℃以下、好ましくは70~108℃、より好ましくは70~99℃のピーク融点を有する。
【0071】
シーラント層中のエチレン系ポリマーのメルトインデックスは、フィルムがブローフィルムまたはキャストフィルムであるかどうかを含む、多くの要素に依存することができる。フィルムがブローフィルムである実施形態では、エチレン系ポリマーは、2.0g/10分以下のMFRを有する。2.0g/10分からのすべての個々の値および部分範囲は、本明細書において含まれ、本明細書において開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、2.0、1.7、1.4、1.1、または0.9g/10分の上限または0.1、0.2、0.3、または0.4g/10分の下限からのメルトインデックスを有することができる。
【0072】
他の実施形態において、フィルムは、キャストフィルムであり得る。かかる実施形態では、エチレン系ポリマーは、2.0g/10分以上のMFRを有する。2.0g/10分を超えるすべての個々の値および部分範囲は、本明細書において含まれ、本明細書において開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、または10g/10分の下限からのメルトインデックスを有することができる。いくつかの実施形態では、キャストフィルム用途のためのエチレン系ポリマーは、上限の15g/10分のメルトインデックスを有することができる。いくつかの実施形態では、多層フィルム中の他の構成要素に応じて、キャストフィルム用途のためのシーラント層中のエチレン系ポリマーは、上限の2.0g/10分未満のMFRを有することができる。いくつかの実施形態では、キャストフィルム用途のためのシーラント層中のエチレン系ポリマーは、0.1~2.0g/10分、または0.5~2.0g/10分のメルトフローレート(MFR)を有することができる。0.1~2.0g/10分のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書において含まれ、本明細書において開示される。
【0073】
シーラント層中で使用することができるエチレン系ポリマーの例は、例えば、ELITE(商標)AT 6101、ELITE(商標)AT 6202、ELITE(商標)AT 6410を含む、ELITE(商標)ATという名称でThe Dow Chemical Companyから市販されているものを含む。
【0074】
多層フィルム
多層フィルムは、あらゆる適切なプロセスによって形成および配向(例えば、二軸配向)されてもよい。これらのプロセスについての情報は、例えば、the Kirk Othmer Encyclopedia、the Modern Plastics Encyclopedia、またはthe Wiley Encyclopedia of Packaging Technology, 2d edition, A.L. Brody and K.S. Marsh, Eds., Wiley-Interscience (Hoboken, 1997)などの参考文献において見出され得る。例えば、多層フィルムは、ディップコーティング、フィルムキャスティング、シートキャスティング、溶液キャスティング、圧縮成形、射出成形、積層、溶融押出、円形ブローフィルムを含むブローフィルム、押出コーティング、タンデム押出コーティング、またはあらゆるその他の適切な手順によって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、フィルムは、溶融押出、溶融共押出、溶融押出コーティング、またはタンデム溶融押出コーティングプロセスによって形成される。いくつかの実施形態では、フィルムは、熱積層または押出積層およびコーティングによって形成される。適切な配向プロセスは、テンタフレーム技術および機械方向配向(MDO)技術を含む。外層などの多層フィルムの層が配向フィルムであるとき、本明細書の教示に基づいて当業者に既知の技術を使用して、結合層によってシーラント層に積層することができる。
【0075】
任意選択的に、いくつかの実施形態では、多層構造は、1つ以上のコア層および1つ以上の追加の結合層などの、1つ以上の追加の層を含み得る。例えば、かかる追加の層は、外層とシーラント層との間に位置決めされ得る。1つの特定の実施形態では、多層構造は、外層、コア層、結合層、およびシーラント層を含み得、結合層は、コア層とシーラント層との間に配設される。いくつかの他の実施形態では、多層構造は、外層、第1の結合層、コア層、第2の結合層、およびシーラント層を含み得、第1の結合層は、外層とコア層との間に配設され、第2の結合層は、コア層とシーラント層との間に配設される。かかる実施形態のいくつかでは、外層は、HDPEを含み得、コア層は、0.910~0.940g/ccの密度を有する、二軸配向ポリエチレン(BOPE)を含み得る。他の構造が、企図される。
【0076】
さらに、さらなる実施形態では、多層フィルム構造は、本質的にエチレン系ポリマーからなる。本明細書で使用される際、「本質的になる」とは、多層フィルム構造が、他の添加剤を含んでもよいが、エチレン系ポリマーに限定されることを意味する。
【0077】
本明細書に記載の様々な実施形態の多層フィルム内の層のうちのいずれかは、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、顔料または着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤、および発泡剤などの当業者に既知の1つ以上の添加剤をさらに含み得ることを理解されたい。
【0078】
本明細書に記載の様々な実施形態では、多層フィルムは、溶媒系接着剤、無溶媒接着剤、および水性積層接着剤を含まない積層体である。上記のように、本明細書に記載の多層フィルムは、接着剤を使用せずに、耐熱性、高剛性、および光沢度の固有の組み合わせを付与される。
【0079】
様々な実施形態では、多層フィルムは、125℃で、横方向に10%、7.5%、もしくはさらに5%未満の収縮、および/または機械方向に15%、12%、もしくはさらに10%の収縮を有し得る。
【0080】
様々な実施形態では、多層フィルムは、125℃で、25N/25mm以上のシール強度を呈する。例えば、多層フィルムは、25N/25mm超、30N/25mm超、32N/25mm超、または35N/25mm超のシール強度を有し得る。多層フィルムは、いくつかの実施形態では、25N/25mm~55N/25mm、25N/25mm~50N/25mm、30N/25mm~55N/25mm、30N/25mm~50N/25mm、32N/25mm~55N/25mm、32N/25mm~50N/25mm、35N/25mm~55N/25mm、またはさらに35N/25mm~50N/25mmのシール強度を有し得る。
【0081】
本明細書に記載の様々な多層フィルムは、5Nの負荷で、120℃未満のヒートシール開始温度(HSIT)をさらに呈する。例えば、多層フィルムは、120℃未満、115℃未満、110℃未満、または100℃未満のHSITを呈し得る。いくつかの実施形態では、多層フィルムは、80℃~120℃、82℃~120℃、85℃~120℃、または85℃~115℃のHSITを呈する。
【0082】
様々な実施形態では、多層フィルムは、ASTM D2457-08/ASTM D1003-01に従って測定される際、25超の45°における光沢度を呈する。例えば、多層フィルムは、25~75、25~70、30~75、30~70、35~75、35~70、40~75、40~70、45~75、または45~70の45°における光沢度を呈し得る。いくつかの他の実施形態では、多層フィルムは、25~65、25~60、25~55、25~50、30~65、30~60、30~55、30~50、35~65、35~60、35~55、または35~50の45°における光沢度を呈し得る。
【0083】
物品
様々な実施形態では、本明細書に開示される多層フィルムは、包装などの物品を形成するために使用され得る。かかる物品は、本明細書に記載の多層フィルムのいずれかから形成することができる。様々な実施形態の多層フィルムから形成することができる包装の例には、可撓性包装、小袋、パウチ、自立型パウチ、および既製の包装またはパウチを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多層フィルムは、肉、チーズ、シリアル、ナッツ、ジュース、ソース、および同様のものに関する包装などの食品包装に使用することができる。かかる包装は、本明細書の教示に基づいて、かつ包装の特定の用途(例えば、食品の種類、食品の量など)に基づいて、当業者に既知である技術を使用して形成することができる。
【0084】
試験方法
試験方法には、以下が含まれる。
メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)を、ASTM D-1238に従って、190℃、2.16kgで測定した。値をg/10分で報告し、これは10分当たりに溶出したグラムに対応する。
【0085】
ヒートシール強度
ヒートシール強度、またはシール強度を、ASTM F1921に従って測定した。値は、N/25mmで報告される。
【0086】
収縮
収縮は、フィルムをともにヒートシールした後、MD方向およびTD方向の両方でシール領域の長さおよび幅を測定し、1mm~15mmであり得る、シールバーの幅と比較した変化の百分率を計算することによって得られた。PULSAインパルスシーラーまたはJ&B Hot Tack試験機を含む、標準的なヒートシール機が使用され得、正確かつ調整可能な温度コントローラを有する機械を提供する。シール条件は、ジョー圧力(40~80psiまたは0.275~0.552N/mm2)、滞留時間(0.1~1.5秒)、およびシール温度(60~150℃)窓を含み、包装速度に依存し、高速包装機に対する典型的な条件は、40psi(0.275N/mm2)のジョー圧力および0.5秒の滞留時間である。
【0087】
光沢度
45°における光沢度を、ASTM D2457-08/ASTM D1003-01に従って測定した。
【0088】
濁度
濁度を、ASTM D1003-01に従って測定した。
【0089】
接合強度
接合強度を、250mm/分の引張速度および25mm幅のストリップを用いて、Zwick引張試験機を使用して測定した。引張試験機は、グリッパ固定器(試料をT字型に保持)が装備されて、部分的に層間剥離した、または部分的に剥離した試料の両端を保持してから引き離す。クロスヘッドに接続されている上部グリッパを引張方向に駆動して、多層試料の2つの隣接する層の間に必要な力または接合強度を測定する。最大力および平均力の結果は、5回の測定から計算され、ニュートン(N/25mmストリップ)単位で記録される。
【0090】
密度
密度測定用の試料は、ASTM D4703に従って調製し、グラム/立方センチメートル(g/ccまたはg/cm3)単位で報告した。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、試料圧縮の1時間以内に行った。
【0091】
融点
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲の温度にわたるポリマーの融解および結晶化挙動を測定する。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを備えるTA Instruments Q1000 DSCを使用して、この分析を実施する。機器は、最初にソフトウェア較正ウィザードを使用して較正される。ベースラインは、アルミニウムDSC皿においていずれの試料無しで、セルを-80℃~280℃に加熱することよって得られる。その後、較正ウィザードの指示に従って、サファイア標準が使用される。次に、1~2ミリグラム(mg)の新鮮なインジウム試料が、標準試料を180℃まで加熱し、10℃/分の冷却速度で、120℃まで冷却し、次いで標準試料を、1分間120℃で等温に保つことにより、分析される。次いで、標準試料は、10℃/分の加熱速度で、120℃~180℃に加熱される。次いで、インジウム標準試料は、融解熱(Hf)=28.71±0.50ジュール/グラム(J/g)、および融解開始=156.6℃±0.5℃を有することが判定される。次いで、試験試料を、DSC機器で分析する。
【0092】
試験中、50ml/分の窒素パージガス流量を使用する。各試料は、約175℃で、融解プレスして薄膜にし、次いで融解した試料は、室温(およそ25℃)に空冷される。フィルム試料は、「0.1~0.2グラム」の試料を175℃、1,500psi、および30秒でプレスすることによって形成されて、「0.1~0.2ミル厚」のフィルムを形成する。冷却されたポリマーから3~10mg、直径6mmの標本を抜き取り、重量を測定し、軽い(約50mg)アルミニウムパンに入れ、圧着して閉じる。次いで、その熱的特性を決定するために分析を行う。
【0093】
試料の熱挙動は、試料温度を昇降して熱流量対温度プロファイルを作成することにより決定する。まず、試料を、180℃に急速に加熱し、5分間等温に保持して熱履歴を除去する。次に、試料を、10℃/分の冷却速度で-40℃に冷却し、-40℃で5分間等温に保持する。次いで、試料を10℃/分の加熱速度で150℃に加熱する(これが「第2の加熱」傾斜である)。冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。結晶化の開始から-20℃までのベースラインエンドポイントを設定することによって、冷却曲線を分析する。-20℃から融解終了までのベースラインエンドポイントを設定することによって、加熱曲線を分析する。判定された値は、ピーク溶融温度(Tm)、ピーク結晶化温度(Tc)、開始結晶化温度(Tc開始)、融解熱(Hf)(ジュール当たりのグラム)、およびPEの結晶化度%=((Hf)/(292J/g))×100を使用してポリエチレン試料について算出された結晶化度%、およびPPの結晶化度%=((Hf)/165J/g))×100を使用して算出されたポリプロピレン試料の結晶化度%である。融解熱(Hf)およびピーク溶解温度は、第2の熱曲線から報告される。ピーク結晶化温度および開始結晶化温度を冷却曲線から決定する。
【0094】
破断点伸び
破断時の伸びに対する引張強度値は、ASTM D882に従って、TestXpertIIソフトウェアを備えたZWICKモデルZ010を用いて、機械方向(MD)において測定される。
【実施例】
【0095】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0096】
使用したポリマー/フィルム
表1に列挙された以下の組成物およびフィルムは、以下で考察される多層の例に含まれた。すべての材料を、The Dow Chemical Company(Midland, MI)から得た。
【表1】
【0097】
以下の表2の多層フィルムは、熱積層を通して生成されたABCBDの5層構造またはABDの3層構造を有した。熱積層は、ChemInstruments#007416熱ロール積層機械で、表2に提供される条件で実行された、ここで、Tは温度であり、Pは圧力である。
【表2】
【0098】
表3を参照すると、追加の多層フィルムを、表4に提供された以下のパラメータに従って、5 Layer Collin Coextrusion Blown Film Line上で生成した。
【表3】
【表4】
【0099】
比較試料1および2ならびに試料1~6に関するヒートシール強度、収縮、ヒートシール開始温度(HSIT)、濁度、および光沢度を測定し、表5に報告する。
【表5】
【0100】
表5のデータに明示されるように、ELITE(商標)5960Gを使用した試料1および2は、BOPPを使用した比較試料と同様に、HSIT性能を実現することができ、最大130℃の収縮はなかった。低Tmシーラント材料、結合層接着性樹脂、およびフィルム構造設計の戦略的選択を含む試料3~6は、比較試料よりも最大25℃低い、HSITの顕著な向上を明示する。HSIT性能の減少により、多層フィルムを高速製袋包装(FFS)ライン速度または包装機に対して好適にする。追加的に、試料1~6は、すべてのポリエチレンフィルムが低温でシールすることができ、フィルム構造中に積層接着剤がないにもかかわらず、層間に層間剥離を有さないことを明示する。
図1および
図2のヒートシール強度曲線は、試料1~6ならびに比較試料1および2のヒートシール性能を図示する。
【0101】
表5のデータは、ヒートシール領域で測定された収縮(<5%)に対する優れた耐性をさらに明示する。さらに、試料1~6の濁度および光沢性能は、BOPP含有の比較試料と比較して優れており、本明細書に記載された多層フィルムが、パウチ成形およびヒートシールプロセス中に、画像の歪みのない印刷、非印刷、および/または高透明度フィルムに適していることを確認する。
【0102】
比較試料1および2ならびに試料1~4の接合強度を測定し、その結果は、表6で報告される。
【表6】
【0103】
表6で示されるように、試料1~4の各々は、外層およびシーラント層に5.4N/25mm超の接着性およびインク層にわずかに低い接着性(3.7N/25mm超)を実現し、これはまだ許容範囲以上である。これらの結果は、フィルム層間で層間剥離が発生せず、したがって、熱積層、押出積層、およびブロー/キャストフィルム共押出は、溶媒、無溶媒、または水性積層接着剤を使用しない、フィルムおよび積層体製造のための効果的な方法であるということを確認する。
【0104】
添付の「特許請求の範囲」に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると認識されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
なお、本発明には、下記態様が含まれることを付記する。
[態様1]
多層フィルムであって、
0.945g/cc超の密度を有する第1のポリエチレン、および0.910~0.940g/ccの密度を有する第2のポリエチレン、のうちの1つ以上を含む、外層と、
カチオン源で中和された0.1~10重量%を有する少なくとも1つのエチレン酸コポリマー、0.910g/ccを下回る密度を有するポリエチレンプラストマー、および108℃以下の融点Tm(DSC)を有するエチレン系ポリマーのうちの1つ以上を含む、シーラント層と、
前記外層と前記シーラント層との間に位置決めされた結合層であって、前記結合層が、無水物グラフト化エチレン系ポリマー、エチレン酸コポリマー、およびエチレン酢酸ビニルからなる群から選択されるポリマーを含む、結合層と、を含む、多層フィルム。
[態様2]
前記外層が、前記第1のポリエチレンを含み、前記多層フィルムが、0.910~0.940g/ccの密度を有する二軸配向ポリエチレンを含むコア層をさらに含み、前記結合層が、前記コア層と前記シーラント層との間に配設されている、態様1に記載の多層フィルム。
[態様3]
前記多層フィルムが、前記コア層と前記外層との間に配設された、第2の結合層をさらに含む、態様2に記載の多層フィルム。
[態様4]
前記結合層が、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)のうちの少なくとも1つをさらに含む、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様5]
前記多層フィルムが、ブローフィルムまたはキャストフィルムである、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様6]
前記多層フィルムが、熱積層によって、または押出積層およびコーティングによって形成されている、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様7]
前記外層が、二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムまたは機械方向配向ポリエチレン(MDO)フィルムを含む、態様1に記載の多層フィルム。
[態様8]
前記外層が、中密度ポリエチレン(MDPE)を含む、態様1に記載の多層フィルム。
[態様9]
前記シーラント層の前記エチレン系ポリマーが、70℃超、99℃未満のTm(DSC)を有する、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様10]
前記多層フィルムが、溶媒系接着剤、無溶媒接着剤、および水性積層接着剤を含まない積層体である、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様11]
前記多層フィルムが、125℃、40PSI、および0.5秒の滞留時間で、横方向に5%未満の収縮を呈する、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様12]
前記多層フィルムが、125℃、40PSI、および0.5秒の滞留時間で、機械方向に10%未満の収縮を呈する、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様13]
前記多層フィルムが、ASTM F1921に従って測定される際、125℃で、25N/25mm以上のシール強度を呈する、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様14]
前記多層フィルムが、5Nの負荷で、120℃未満のヒートシール開始温度(HSIT)を呈する、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様15]
前記多層フィルムが、ASTM D2457-08/ASTM D1003-01に従って測定される際、25超の45°における光沢度を呈する、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様16]
前記シーラント層が、前記カチオン源で中和された0.1~10重量%を有する少なくとも1つのエチレン酸コポリマーを含む、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様17]
前記カチオン源が、ナトリウム塩、亜鉛塩、またはそれらの組み合わせを含む、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様18]
印刷層をさらに含む、先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[態様19]
先行態様のいずれか一項に記載の多層フィルムを含む物品であって、前記物品が、パウチである、物品。