IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

<>
  • 特許-制御弁 図1
  • 特許-制御弁 図2
  • 特許-制御弁 図3
  • 特許-制御弁 図4
  • 特許-制御弁 図5
  • 特許-制御弁 図6
  • 特許-制御弁 図7
  • 特許-制御弁 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20241011BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K31/06 305A
F16K31/06 305K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022070946
(22)【出願日】2022-04-22
(65)【公開番号】P2023160528
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠一
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-074245(JP,A)
【文献】特開2018-071560(JP,A)
【文献】実開昭63-043056(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0148686(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体および作動子を内蔵する弁本体と、前記弁本体の外部に固定されるコイルユニットと、を備え、前記コイルユニットの電磁力により前記作動子を駆動して前記弁体を移動させる制御弁であって、
前記弁本体は、前記作動子を内蔵するケースを有し、前記弁本体または前記ケースの外周面には、少なくとも1つの凹部が形成され、
前記コイルユニットは、コイル、継鉄、および収容部を有した本体部と、前記本体部を前記弁本体に固定するためのブラケットと、を備え、
前記本体部には、前記ケースの先端側から基端側に向かう軸線方向に貫通する嵌挿孔が設けられ、
前記嵌挿孔に、前記ケースを基端側から先端側に向かう方向に挿通させることで前記コイルユニットが前記弁本体に取り付けられ、
前記ブラケットは、前記軸線方向と交差する径方向に延びる基板部と、前記基板部から前記軸線方向に延びる接続部と、前記接続部に連続して前記径方向内方に延びる押圧部と、前記基板部から前記径方向内方に突出する突出部と、を備え、
前記ケースの外面に前記押圧部が押圧状態で当接するとともに、前記凹部の窪み面に前記突出部の先端が押圧状態で当接することで、前記コイルユニットが前記弁本体に固定されることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記押圧部は、前記軸線方向の一方側に配置され、前記突出部は、前記軸線方向の他方側に配置され、
前記コイルユニットにおける前記コイルは、前記押圧部と前記突出部とで、前記軸線方向に挟まれる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記突出部は、前記基板部から切り起された板状であり、前記ケースの先端側に向かう方向に傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項4】
前記突出部は、前記基板部と平行に前記径方向内方に延びる延在部と、前記延在部の先端に連続し前記基板部に対して傾斜して延びる立設部と、を有し、前記立設部の先端が前記窪み面に当接することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項5】
前記窪み面は、正面視略円形かつ断面視円弧状であり、前記突出部の先端は、前記窪み面のうち前記ケースの先端側の半円部に当接することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項6】
前記突出部の先端側は、前記突出部の基端側に比べて幅寸法が小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項7】
前記立設部の先端には、前記突出部の基端側に比べて幅寸法が小さく、かつ角が面取りされた最先端部が形成され、前記最先端部の先端縁が前記窪み面に当接することを特徴とする請求項に記載の制御弁。
【請求項8】
前記基板部には、前記ケースを挿通させる開口部が設けられ、前記突出部は、前記開口部の開口端縁よりも前記径方向内方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項9】
前記基板部には、前記開口部の開口端縁よりも前記径方向外方に延びる一対の切り欠きが形成され、一対の切り欠き間に前記突出部の基端部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の制御弁。
【請求項10】
前記接続部は、少なくとも4個で構成され、隣り合う一対の接続部と、これら一対の接続部に亘って設けられた前記押圧部と、前記基板部と、で囲まれた窓部が構成され、
前記本体部の一部が前記窓部を貫通して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項11】
前記突出部は、複数設けられ、複数の前記突出部のうち少なくとも1個の突出部と、前記押圧部と、は前記ケースの軸線回りの周方向でずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項12】
前記押圧部は、弾性片を有し、前記弾性片は、前記接続部から前記径方向内方に延びる連結部と、前記連結部に連続して前記径方向外方に折り返す折返部と、を有し、
前記折返部が前記ケースの外面に押圧状態で当接することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項13】
前記折返部の前記径方向外方側の先端が前記コイルユニットの前記継鉄に当接し、
前記折返部において、前記ケースに当接する当接部と、前記径方向外方側の先端と、の間の部位が弾性変形し、その反力によって前記当接部が前記ケースに押圧状態で当接することを特徴とする請求項12に記載の制御弁。
【請求項14】
前記折返部は、円弧状に形成され、前記折返部における円弧の頂点部によって前記当接部が構成され、前記折返部における円弧の端面が前記継鉄に押圧状態で当接することを特徴とする請求項13に記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁体および作動子を内蔵する弁本体と、弁本体の外部に固定されるコイルユニットと、を備え、コイルユニットの磁力により作動子を駆動して弁体を移動させる制御弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。この制御弁としては、作動子としてのマグネットロータを回転駆動する電動弁や、作動子としてのプランジャを進退駆動する電磁弁等がある。従来の制御弁では、コイルユニットにブラケットが設けられ、このブラケットの弾性片に形成された凸部と、弁本体の外周面に形成された凹部と、を係合させることで弁本体にコイルユニットが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-71560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような制御弁では、凸部は半球状に形成され、弁本体の凹部はディンプル状に形成されており、凸部および凹部の形状、寸法を合致させることが難しく、コイルユニットの保持力を高めにくいという問題がある。すなわち、凸部の曲率が凹部の曲率よりも大きい(半径が小さい)と、がたが生じてしまい、逆に凸部の曲率が凹部の曲率よりも小さい(半径が大きい)と凹部の周縁にのみ凸部が当接することとなり、保持力が低下してしまうこととなる。また、上述のディンプル状の凹部は、プレス加工により形成されることが一般的であり、この場合凹部の開口端縁は、鋭角状とならず湾曲状となることから、凸部の曲率が凹部の曲率よりも小さいことで凹部の周縁にのみ凸部が当接する構成では、凹部と凸部の当接部分の摩擦抵抗が小さくなりやすく、凸部と凹部とが互いに滑りやすくなって保持力が高められない。
【0005】
本発明は、弁本体に対するコイルユニットの保持力を高めることができる制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の制御弁は、弁体および作動子を内蔵する弁本体と、前記弁本体の外部に固定されるコイルユニットと、を備え、前記コイルユニットの電磁力により前記作動子を駆動して前記弁体を移動させる制御弁であって、前記弁本体は、前記作動子を内蔵するケースを有し、前記弁本体または前記ケースの外周面には、少なくとも1つの凹部が形成され、前記コイルユニットは、コイル、継鉄、および収容部を有した本体部と、前記本体部を前記弁本体に固定するためのブラケットと、を備え、前記本体部には、前記ケースの先端側から基端側に向かう軸線方向に貫通する嵌挿孔が設けられ、前記嵌挿孔に、前記ケースを基端側から先端側に向かう方向に挿通させることで前記コイルユニットが前記弁本体に取り付けられ、前記ブラケットは、前記軸線方向と交差する径方向に延びる基板部と、前記基板部から前記軸線方向に延びる接続部と、前記接続部に連続して前記径方向内方に延びる押圧部と、前記基板部から前記径方向内方に突出する突出部と、を備え、前記ケースの外面に前記押圧部が押圧状態で当接するとともに、前記凹部の窪み面に前記突出部の先端が押圧状態で当接することで、前記コイルユニットが前記弁本体に固定されることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、コイルユニットの嵌挿孔に、弁本体のケースを基端側から先端側に向かって挿通させることでコイルユニットが弁本体に取り付けられる。この際、
コイルユニットを構成するブラケットの押圧部がケースの外面に押圧状態で当接するとともに、ブラケットの突出部の先端が、ケースの外周面に形成された凹部に押圧状態で当接することとなる。すなわち、コイルユニットが弁本体に取り付けられた状態では、押圧部および突出部のそれぞれが、異なった個所でケースを押圧することとなり、コイルユニットと弁本体との摩擦抵抗を向上させることができる。このため、コイルユニットが弁本体に対し、ケースの軸線方向、径方向、および周方向に移動することを抑制することができる。また、このように複数の個所でケースを押圧することで、制御弁に振動等が加わったとしても、その振動が各押圧部および突出部に分散されることとなり、コイルユニットの保持状態を良好に維持することができる。また、押圧部と突出部はブラケットに設けることができるので、コイルユニットの本体部を弁本体に固定するための部品を一部品で構成することができる。このため、弁本体に対するコイルユニットの相対位置を均一化しやすく、これにより、個々のスライド式切換弁の作動性のばらつきを低減することができる。また、上述のとおり突出部の先端を凹部に押圧状態で当接させることができるので、従来のように半球状の凸部の全面を凹部に合致させる構成と比較して、コイルユニットと弁本体との間に生じるがたを抑制しやすくすることができる。したがって、弁本体に対するコイルユニットの保持力を高めることができる制御弁を提供することができる。そして、弁本体に対するコイルユニットの保持力を高めることができるので、例えば、振動、衝撃が生じやすい車載機等のモビリティ用途に制御弁を使用した場合でも、コイルユニットの位置ずれや脱落を抑制し、安定した作動性を得ることができる。
【0008】
また、この際、前記押圧部は、前記軸線方向の一方側に配置され、前記突出部は、前記軸線方向の他方側に配置され、前記コイルユニットにおける前記コイルは、前記押圧部と前記突出部とで、前記軸線方向に挟まれる位置に配置されていることが好ましい。このような構成によれば、押圧部と突出部は、コイルを挟んで一方がケースの軸線方向の一方側に、もう一方がケースの軸線方向の他方側に配置されることとなる。このためコイルの軸線方向よりも長い距離をあけて、ケースの先端側と基端側とをそれぞれ押圧部と突出部とによって押圧できるので、ケースの広範囲に亘って押圧部と突出部の押圧力を伝達することができる。したがって、弁本体に対するコイルユニットの保持力をより一層向上させることができる。
【0009】
また、前記突出部は、前記基板部から切り起された板状であり、前記ケースの先端側に向かう方向に傾斜して設けられていることが好ましい。上述のとおり、コイルユニットが弁本体に取り付けられる際には、弁本体のケースは、コイルユニットの嵌挿孔に、基端側から先端側に向かって挿通する。このため、このケースの基端側から先端側に向かう方向は、換言するとコイルユニットが弁本体から離脱する際の抜け方向となる。そして、本構成によれば、突出部は、ケースの先端側に向かう方向に傾斜して設けられているので、突出部がコイルユニットの抜け方向に沿って配置されていることとなる。このため、突出部の先端が、凹部に押圧状態で当接した際には、コイルユニットの抜け方向に抗する力がコイルユニットに加わることとなり、弁本体に対するコイルユニットの保持力をより一層向上させることができる。
【0010】
また、前記突出部は、前記基板部と平行に前記径方向内方に延びる延在部と、前記延在部の先端に連続し前記基板部に対して傾斜して延びる立設部と、を有し、前記立設部の先端が前記窪み面に当接することが好ましい。このような構成によれば、突出部が凹部を押圧した際の反力を延在部と立設部とに分散させ、延在部および立設部の弾性変形により押圧力を得ることができるので、当該突出部の耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、前記窪み面は、正面視略円形かつ断面視円弧状であり、前記突出部の先端は、前記窪み面のうち前記ケースの先端側の半円部に当接することが好ましい。このような構成によれば、突出部の先端が、窪み面のうちケースの先端側の半円部に当接しているので、突出部の先端が、窪み面のうちケースの基端側の半円部に当接している場合と比較して、上述の抜け方向へのコイルユニットの変位をより一層規制しやすくなる。このため、コイルユニットと弁本体との間に生じるがたを抑制することができる。
【0012】
また、前記突出部の先端側は、前記突出部の基端側に比べて幅寸法が小さく形成されていることが好ましい。このような構成によれば、突出部の先端側以外の部分の幅寸法が先端側よりも大きくなるので、突出部の押圧方向に対する弾性力を向上させることができる。
【0013】
また、前記立設部の先端には、前記突出部の基端側に比べて幅寸法が小さく、かつ角が面取りされた最先端部が形成され、前記最先端部の先端縁が前記窪み面に当接することが好ましい。このような構成によれば、角が面取りされた最先端部を設けたことで、突出部の先端を凹部の底部付近まで挿入することが可能となる。すなわち、最先端部を有しない構成と比較して、より凹部の深い部分で突出部を凹部に当接させることができる。したがって、突出部が凹部から抜け出すことを抑制することができる。
【0014】
また、前記基板部には、前記ケースを挿通させる開口部が設けられ、前記突出部は、前記開口部の開口端縁よりも前記径方向内方に突出して設けられていることが好ましい。このような構成によれば、ケースを挿通させる開口部の開口端縁から径方向内方に突出するように突出部を設けることが可能となるので、ケースの周方向の任意の位置に容易に突出部を配置することができる。
【0015】
また、前記基板部には、前記開口部の開口端縁よりも前記径方向外方に延びる一対の切り欠きが形成され、一対の切り欠き間に前記突出部の基端部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、開口部の開口端縁よりも径方向内方に突出部の基端部を設ける必要がなくなるので、開口部の内径寸法を、ケースの外径寸法とほぼ同じにすることができる。すなわち、開口部の内径寸法をケースが挿入可能な最小の寸法とすることができる。したがって、基板部の小型化を図ることで、コイルユニットを小型化することができる。
【0016】
また、前記接続部は、少なくとも4個で構成され、隣り合う一対の接続部と、これら一対の接続部に亘って設けられた前記押圧部と、前記基板部と、で囲まれた窓部が構成され、前記本体部の一部が前記窓部を貫通して設けられているとが好ましい。このような構成によれば、本体部の一部を窓部を貫通するように設けることができるので、窓部を有さない構成と比較して、ブラケットを本体部に干渉させないようにするためのスペースを設ける必要がなく、その分ブラケットを小型化することができる。
【0017】
また、前記突出部は、複数設けられ、複数の前記突出部のうち少なくとも1個の突出部と、前記押圧部と、は前記ケースの軸線回りの周方向でずれた位置に設けられていることが好ましい。このような構成によれば、ケースにおける軸線回りの周方向の異なる個所を、突出部と押圧部とで押圧することができるので、ケースの広範囲に亘って押圧部と突出部の押圧力を伝達することができる。したがって、弁本体に対するコイルユニットの保持力をより一層向上させることができる。
【0018】
また、前記押圧部は、弾性片を有し、前記弾性片は、前記接続部から前記径方向内方に延びる連結部と、前記連結部に連続して前記径方向外方に折り返す折返部と、を有し、前記折返部が前記ケースの外面に押圧状態で当接することが好ましい。このような構成によれば、例えばコイルユニットや弁本体に振動が加わるなど、コイルユニットおよび弁本体の一方が他方に対して変位するような場合に、その変位を弾性片が弾性変形することで吸収することができる。したがって、弁本体に対するコイルユニットの保持力をより一層高めることができる。
【0019】
また、前記折返部の前記径方向外方側の先端が前記コイルユニットの前記継鉄に当接し、前記折返部において、前記ケースに当接する当接部と、前記径方向外方側の先端と、の間の部位が弾性変形し、その反力によって前記当接部が前記ケースに押圧状態で当接することが好ましい。このような構成によれば、押圧部は、折返部の先端にてコイルユニットの継鉄に当接するので、押圧部は、コイルユニットと弁本体とを保持する機能に加えて、継鉄と弁本体とを電気的に接地する機能を有することとなる。これにより、コイルユニットと弁本体との間に生じる電気的ノイズをキャンセルすることができる。
【0020】
また、前記折返部は、円弧状に形成され、前記折返部における円弧の頂点部によって前記当接部が構成され、前記折返部における円弧の端面が前記継鉄に押圧状態で当接することが好ましい。このような構成によれば、折返部の円弧の頂点部と、円弧の端面と、によって当接部と、上述の先端と、を構成することができるので、押圧部の形状をシンプルにすることができ、当該押圧部の成形を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、弁本体に対するコイルユニットの保持力を高めることができる制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る制御弁を組み立てた状態を示す縦断面図。
図2図1における駆動部の拡大図。
図3】コイルユニットとブラケットとを組み合わせた状態を示す側面図および断面図。
図4】キャンの側面図。
図5】ブラケットの斜視図
図6】(A)はブラケットの平面図であり、(B)は、ブラケットの側面図。
図7】キャンとブラケットの係合した状態を示す断面図。
図8】キャンとブラケットの係合した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図1~8に基づいて説明する。本実施形態に係る制御弁は、冷凍サイクルなどにおいて圧縮機、蒸発器、凝縮器と接続され、これらの機器に流れる冷媒の流路を切り換えるスライド式切換弁1である。図1に示すように、スライド式切換弁1は、中空筒状の弁本体2と、弁本体2の内部にて軸線L方向にスライド自在に設けられる弁体3と、弁体3をスライド駆動する駆動部4と、を備えている。
【0024】
弁本体2は、弁体3および後述する作動子としてのマグネットロータ41を内蔵するように設けられており、本体20と、弁座部21と、第一蓋部22と、第二蓋部23と、キャン24(ケース)と、を備えている。本体20は、円形の底壁20Aと、底壁20Aの周縁部から図1における上側に延びる側壁20Bと、を備え、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料を用いて樹脂成形により有底筒状に形成されている。本体20の内部は、弁室20aを構成している。なお、本実施形態で本体20は、材質をポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂としたが、この他真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属等、適宜な材質で構成してもよい。底壁20Aには、弁室20aの内外に連通する第一ポートP1が形成されている。第一ポートP1は、軸線L方向に延びる第一接続流路20Cに連通するポートであり、例えば不図示の圧縮機の吐出口と連通し、圧縮機から送られる高圧の冷媒が弁室20a内に流入するように構成されている。
【0025】
本体20の側壁20Bには、弁室20aの内外に連通する複数の円筒状の流路として、第二接続流路20D、第三接続流路20E、および第四接続流路20Fが、図1における上側からこの順に軸線L方向に沿ってそれぞれ並んで形成されている。第二接続流路20Dは、後述する第二ポートP2と連通する流路である。この第二接続流路20Dは、例えば不図示の室外熱交換器と接続されて弁室20aと室外熱交換器との間に流れる流体の流路を構成している。
【0026】
第三接続流路20Eは、後述する第三ポートP3と連通する流路である。この第三接続流路20Eは、例えば圧縮機の吸入口と連通し、室外熱交換器(室内熱交換器)から送られた低圧の冷媒が弁室20a外に流出するように構成されている。第四接続流路20Fは、後述する第四ポートP4と連通する流路である。この第四接続流路20Fは、例えば不図示の室内熱交換器と接続されて弁室20aと室内熱交換器との間に流れる流体の流路を構成している。
【0027】
弁座部21は、薄型金属板で形成され、インサート成形や接着、溶着等により本体20の側壁に固定されている。弁座部21の板面には、上述の第二接続流路20D、第三接続流路20E、および第四接続流路20Fにそれぞれ連通する、第二ポートP2、第三ポートP3、および第四ポートP4が、図1における上側からこの順に軸線L方向に沿って並んで形成されている。第一蓋部22は、金属製の材料を用いて筒状に形成され、本体20の図1における上側の端部にインサート成形により固定されている。第二蓋部23は、第一蓋部22の開口端縁に接続される円板状の平坦部23Aと、平坦部23Aの中央部から図1における上側に延びる円筒状の縮径部23Bと、を備えている。
【0028】
キャン24は、後述する作動子としてのマグネットロータ41を内蔵する部材である。キャン24は、金属製の材料を用いて、図1における上側に底部を有するよう有底筒状に形成されている。キャン24は、中心軸が軸線Lと同軸になるように配置され、底部の反対側(図1における下側)の開口端縁を、第二蓋部23の縮径部23Bの開口端縁に溶接することで第二蓋部23に固定されており、これによって、弁本体2は、気密容器として構成されている。
【0029】
このように構成された弁本体2は、有底筒状のハウジング25に収容されている。図1に示す符号Gは、弁本体2の外周壁およびハウジング25の内周壁のいずれかに、所定間隔で軸線L方向の複数の位置に形成された溝部であり、符号26は、溝部Gに配置されたOリングである。このOリング26により、弁本体2とハウジング25との間はシールされている。また、ハウジング25の開口部には、抜け止めリング27が取り付けられており、この抜け止めリング27が弁本体2の第二蓋部23を軸線L方向に押さえることで、弁本体2におけるハウジング25からの脱落が抑制されている。
【0030】
ハウジング25の底壁には、第一接続流路20Cに連通する第一接続孔20C1が軸線L方向に貫通形成され、第一接続孔20C1には、第一継手管20C2が接続されている。第一継手管20C2は、例えば、圧縮機の吐出口に接続される高圧配管である。ハウジング25の側壁には、第二接続流路20D、第三接続流路20E、および第四接続流路20Fに連通する、第二接続孔20D1、第三接続孔20E1、および第四接続孔20F1がそれぞれ形成されている。第二接続孔20D1には第二継手管20D2が、第三接続孔20E1には第三継手管20E2が、第四接続孔20F1には第四継手管20F2が、それぞれ接続されている。第二継手管20D2および第四継手管20F2は、例えば、室外熱交換器(室内熱交換器)に接続される導管である。第三継手管20E2は、例えば、圧縮機の吸入口に接続される低圧配管である。
【0031】
弁体3は、主にポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製であり、弁本体2の内部にて弁座部21上を軸線L方向にスライド自在に設けられている。この弁体3は、第一ポートP1、第二ポートP2、第三ポートP3、および第四ポートP4の連通状態を切り換えるように構成されており、図1に示す状態では、第一ポートP1と第四ポートP4とを連通させるとともに、第二ポートP2と第三ポートP3とを連通させている。そして、この状態から図1における下側にスライド移動した状態では、第一ポートP1と第二ポートP2とを連通させるとともに、第三ポートP3と第四ポートP4とを連通させるようになっている。弁体3には、後述する雌ねじ部材に固定される固定部31が設けられている。このように、弁体3は固定部31を介して駆動部4に固定され、駆動部4の駆動力を受けて軸線L方向にスライド移動可能となっている。
【0032】
駆動部4は、弁体3をスライド駆動する部分であり、回転可能なロータを有する電動モータとしてのステッピングモータ40と、ステッピングモータ40の回転を直線運動に変換して弁体3に伝達する直動機構50と、を備えている。図2に示すように、ステッピングモータ40は、キャン24に内蔵されるマグネットロータ41と、キャン24を挟んでマグネットロータ41の外周を軸線L回りに囲むように配置されるコイルユニット60と、を備えている。マグネットロータ41は、本発明における作動子であり、軸線L回りに回転可能に設けられている。コイルユニット60は、電磁力によりマグネットロータ41を駆動するユニットであり、弁本体2の外部に固定されている。
【0033】
直動機構50は、キャン24の底側(図1における上側)の内部に配置される軸受け部材51と、第二蓋部23に固定されるガイド部材52と、マグネットロータ41の中心に固定されたロータ軸としての雄ねじ53と、雄ねじ53の外周面に形成された雄ねじ部53aに螺合する雌ねじ部54aを有する雌ねじ部材54と、を備えている。すなわち、直動機構50は、互いに螺合する雄ねじ部53aおよび雌ねじ部54aを有したねじ送り機構として構成されている。
【0034】
軸受け部材51は、雄ねじ53を軸線L回りに回転可能に支持する部材であり、円柱状に形成されている。軸受け部材51は、中心軸が軸線Lと同軸になるように配置され、雄ねじ53の軸心位置である中心には、雄ねじ53の軸線L方向一端部が、軸線L回りに回転可能に支持されている。ガイド部材52は、図1における上側に開口する有底円筒状の部材であり、中心軸が軸線Lと同軸になるように、第二蓋部23の縮径部23B内方に固定されている。ガイド部材52において雄ねじ53の軸心位置である中心には、雄ねじ53の軸線L方向他端部が、軸線L回りに回転可能に支持されている。
【0035】
ガイド部材52の底壁には、雌ねじ部材54を軸線L方向に進退可能に挿通させる不図示のガイド孔が形成されており、このガイド孔によって、雌ねじ部材54が軸線L回りに回転不能かつ軸線L方向に進退ガイドされるように構成されている。
【0036】
雄ねじ53は、マグネットロータ41の中心部に固定され、軸線L方向に延び、マグネットロータ41と一体に軸線L回りに回転するように構成されている。雌ねじ部材54は、ガイド部材52内に収容され、軸線L方向に進退可能に支持されている。雌ねじ部材54の一端部は、ガイド部材52のガイド孔を通って弁室20a内に延びており、その一端部が弁体3の固定部31に固定されている。雌ねじ部材54の中心には、軸線Lに沿って雌ねじ部54aが形成されている。この雌ねじ部54aは、雄ねじ部53aに螺合するように構成されている。この構成により、雌ねじ部材54は弁体3とともに、雄ねじ53の回転に伴って中心軸と同軸で軸線L方向に進退可能となっている。
【0037】
このように、本発明の制御弁としてのスライド式切換弁1は、弁体3および作動子としてのマグネットロータ41を内蔵する弁本体2と、弁本体2の外部に固定されるコイルユニット60と、を備え、コイルユニット60の電磁力によりマグネットロータ41を駆動して弁体3を移動させる制御弁であって、弁本体2は、マグネットロータ41を内蔵するケースとしてのキャン24を有している。
【0038】
次に、本発明におけるキャン24とコイルユニット60の詳細な構造について説明する。なお、以降の説明では、軸線L方向においてキャン24の第二蓋部23に固定される側が位置する側を基端側とし、基端側の反対側を先端側とし、先端側を「先端側Z1」、基端側を「基端側Z2」と記す場合がある。また、軸線L方向に直交する方向、すなわち軸線L方向と交差する方向を径方向とする。また図5、6に示すように、同一平面上で直交する2つの径方向の一方を、特に前後方向、他方を特に左右方向とし、それぞれ「前後方向X」、「左右方向Y」と記す場合がある。また、この場合、前後方向Xの一方を「前側X1」、他方を「後側X2」、左右方向Yの一方を「左側Y1」、他方を「右側Y2」と記す場合がある。これはあくまでも説明の便宜のためであり、必ずしもスライド式切換弁1の実際の使用状態における前後方向、左右方向と一致するとは限らず、スライド式切換弁1の実際の使用状態における各方向を限定するものではない。
【0039】
キャン24の基端側Z2には、図4に示すように、先端側Z1よりも大径の拡径部24Aが形成されており、拡径部24Aの外周面には、周方向に間隔をあけて複数の凹部24aが形成されている。この凹部24aは、プレス加工により、いわゆるディンプル状となっており、図4に示すように正面視略円形に形成されている。凹部24aの形成により、キャン24の内周面には、径方向Y内方に突出する突出部分(図2参照)が生じることとなるが、拡径部24Aに凹部24aを形成したことで、当該突出部分の先端を、キャン24の拡径部24A以外の部分の内周面よりも径方向Y内方に突出しないように調整することができる。
これにより、マグネットロータ41の外径寸法をキャン24の内径寸法とほぼ同じに設定しても、マグネットロータ41をキャン24に対して軸線L方向に挿入する際に、上述の突出部分がマグネットロータ41に当接してその挿入を邪魔することを防ぐことができる。すなわち、拡径部マグネットロータ41の外径寸法をキャン24に挿入可能な範囲で最大化することができる。これにより、マグネットロータ41とキャン24とのクリアランスを最小にすることができ、コイルユニット60の電磁力を効果的にマグネットロータ41に伝達することができる。
また、凹部24aは、図7に示すように断面視略円弧状の窪み面24bを有している。窪み面24bは、図7における断面視で、軸線Lに直交し凹部24aの最深部を通る仮想線L2を基準として、仮想線L2よりも先端側Z1の第一半円部24b1と、仮想線L2よりも基端側Z2の第二半円部24b2と、で構成されている。なお、本実施形態では、マグネットロータ41とキャン24とのクリアランスを最小にし、コイルユニット60の電磁力を効果的にマグネットロータ41に伝達するする観点から、凹部24aは、拡径部24Aの外周面に形成したが、この凹部24aは、拡径部24A以外の部分に1つだけ形成してもよい。また、凹部24aは、必ずしもキャン24に形成する必要はなく、弁本体2のいずれかの部分に凹部24aを形成してもよい。すなわち、弁本体2またはキャン24の外周面に、少なくとも1つの凹部24aが形成されていればよい。
【0040】
コイルユニット60は、図2、3に示すように、略円筒状に形成された本体部70と、本体部70を弁本体2に固定するためのブラケット80と、を備えている。本体部70は、上述の電磁力を発生させる部分であり、カップ形状の収容部71と、収容部71に収容されるコイル72と、ヨーク73(継鉄)と、を有している。本体部70の中央部には、軸線L方向に貫通する嵌挿孔70aが形成されており、この嵌挿孔70aにキャン24を基端側Z2から先端側Z1に向かう方向に挿通させることでコイルユニット60が弁本体2に取り付けられるようになっている。換言すると、嵌挿孔70aの中心軸とキャン24の中心軸とを同軸とした状態で、コイルユニット60をキャン24の先端側Z1から基端側Z2に移動させることで、コイルユニット60が弁本体2に取り付けられるようになっている。コイル72は、収容部71内に配置された樹脂製のボビン74に導線を巻き付けて構成されている。本実施形態では、ボビン74を軸線L方向に一対積層させることで、コイル72は、軸線L方向に隣接するように一対設けられている。
【0041】
ヨーク73は各ボビン74に対応するように一対設けられ、各ボビン74の径方向内方を向く外周面と、軸線L方向を向く外周面と、を覆うように、各ボビン74と一体に組み付けられている。一対のヨーク73のうち図における上側に配置されたヨーク73には、図における上側に突出する突出端部73aが設けられており、この突出端部73aが後述の押圧部83と当接することで、弁本体2とコイルユニット60とが電気的に接地し、コイルユニット60と弁本体2との間に生じる電気的ノイズがキャンセルされるようになっている。ヨーク73の径方向外方側の端部には、ボビン74、コイル72が設けられた空間を封止する樹脂板75が固定されており、この樹脂板75で当該空間が封止された状態で、ボビン74、コイル72、およびヨーク73が収容部71に収容されている。
【0042】
ブラケット80は、図5に示すように、基板部81と、接続部82と、押圧部83と、突出部86と、窓部87を備え、枠状に形成されている。このブラケット80は、金属製の板部材をプレス加工や曲げ加工等することで形成してもよいし、基板部81と、接続部82と、押圧部83と、突出部86とを別々に形成した上で、これらを溶接などで一体としてもよい。いずれの場合も、基板部81、接続部82、押圧部83、突出部86が一体とされた一部品で、ブラケット80(コイルユニット60の本体部70を弁本体2に固定するための部品)を構成することができることから、弁本体2に対するコイルユニット60の相対位置を均一化しやすく、これにより、個々のスライド式切換弁1の作動性のばらつきを低減することができる。
【0043】
基板部81は、前後方向Xおよび左右方向Y、すなわち径方向に延びるように形成されている。基板部81の中央部には、中心軸が軸線Lと同軸の円形の開口部81aが貫通形成されている。この開口部81aは、上述の嵌挿孔70aと同様にキャン24を挿通させる部分であり、その内径寸法は、嵌挿孔70aの内径寸法と略同じに設定されている。また、基板部81には、開口部81aの開口端縁から当該径方向外方に延びる一対の切り欠き81bが形成されている。すなわち、基板部81には、開口部81aの開口端縁よりも径方向外方に延びる一対の切り欠き81bが形成されている。一対の切り欠き81bは、開口部81aの周方向に間隔をあけて形成されており、この一対の切り欠き81bが、開口部81aの周方向に間隔をあけて複数組、本実施形態では、4組形成されている。4組の切り欠き81bは、後述の押圧部83と、軸線L回りの周方向にそれぞれずれた位置に形成されている。
【0044】
接続部82は、基板部81の左右両端縁からそれぞれ先端側Z1、すなわち軸線L方向に延びて板状に形成されている。接続部82は、その軸線L方向の寸法が、コイルユニット60の本体部70の軸線L方向の寸法よりも大きく設定されている。本実施形態では、基板部81の左右両端縁からそれぞれ立ち上る板部材の前後方向X中央部に、左右方向Yに貫通する後述の窓部87が形成されることで、少なくとも4個の接続部82が設けられている。なお、接続部82が設けられる位置やその個数は、これに限られず、基板部81のいずれかの部分から軸線L方向に延びる接続部82が設けられていればよいが、弁本体2に対するコイルユニット60の保持力を高める観点から、キャン24を径方向に挟むように少なくとも一対設けることが好適である。
また、本実施形態では、図2、3に示すように、基板部81の左右方向Y(径方向)の寸法は、コイルユニット60の本体部70の左右方向Y(径方向)の寸法よりも小さく設定されており、接続部82は、基板部81の左右両端縁から立ち上がるように形成されているが、基板部81の寸法および接続部82の立ち上がる位置は、これに限られない。すなわち、基板部81の左右方向Yの寸法をコイルユニット60の本体部70の左右方向Yよりも大きく設定し、接続部82をコイルユニット60の任意の位置に溶接等することで、基板部81のいずれかの位置から接続部82が立ち上がるようにしてもよい。
【0045】
押圧部83は、キャン24の外面に径方向内方に向かう押圧力により押圧状態で当接する部分である。この押圧部83は、平板部84と、弾性片85と、を備えている。平板部84は、接続部82の先端側Z1の端部から径方向内方に延びて板状に形成されている。本実施形態では、平板部84は、左右の接続部82のそれぞれに接続されるように形成されており、左側Y1の平板部84は、前側X1の端部が左前側の接続部82に接続されるとともに、後側X2の端部が左後側の接続部82に接続されている。一方、右側Y2の平板部84は、前側X1の端部が右前側の接続部82に接続されるとともに、後側X2の端部が右後側の接続部82に接続されている。すなわち、平板部84(押圧部83)は、前後方向Xに隣り合う一対の接続部82に亘って設けられている。左側Y1の平板部84の径方向内方側の端縁から右側Y2の平板部84の径方向内方側の端縁までの左右方向Yの寸法は、キャン24の左右方向Yの寸法と略同じに設定されている。
【0046】
弾性片85は、各平板部84の径方向内方の端縁(接続部82)の前後方向X中央部から、それぞれ径方向内方に延びる連結部85Aと、連結部85Aに連続して径方向外側に折り返す折返部85Bと、を備えている。折返部85Bは、図6(B)に示すブラケット80の側面視で円弧状に形成されており、その円弧の頂点部である当接部85B1がキャン24の外面に当接する当接部を構成するとともに、その円弧の端面85B2が、上述のヨーク73の突出端部73aに当接するようになっている。すなわち、折返部85Bの径方向外方側の先端がコイルユニット60のヨーク73に当接するようになっている。
【0047】
なお、上述のとおり、左側Y1の平板部84の径方向内方側の端縁から右側Y2の平板部84の径方向内方側の端縁までの左右方向Yの寸法は、キャン24の左右方向Yの寸法と略同じに設定されていることから、左側Y1の当接部85B1から右側Y2の当接部85B1までの左右方向Yの寸法は、キャン24の左右方向Yの寸法よりも小さくなっている。これにより、キャン24が嵌挿孔70aおよび開口部81aに挿通されてコイルユニット60が弁本体2に取り付けられる際には、キャン24によって折返部85Bが径方向外方に押圧されることで、折返部85Bにおいて当接部85B1と端面85B2(径方向外方側の先端)との間の部位が径方向外方に弾性変形し、その反力によって当接部85B1がキャン24に押圧状態で当接するようになっている。また、折返部85Bにおける円弧の端面85B2がヨーク73に押圧状態で当接する。すなわち、押圧部83は、キャン24の外面およびヨーク73に、押圧状態で当接するように設けられている。
【0048】
突出部86は、基板部81から先端側Z1に切り起された板状の部分であり、上述の一対の切り欠き81b間に、先端側Z1に向かう方向に傾斜して設けられている。突出部86は、押圧部83と同様に、キャン24の外面に径方向内方に向かう押圧力により押圧状態で当接する部分である。本実施形態では、4組の切り欠き81bが、押圧部83と、軸線L回りの周方向にそれぞれずれた位置に形成されていることから、複数の突出部86が押圧部83とは軸線L周りの周方向でずれた位置に設けられていることとなる。なお、突出部86は、全てが押圧部83と軸線L回りの異なる位置に配置されている必要はなく、少なくとも1個の突出部86と、押圧部83とがキャン24の軸線L回りの周方向でずれた位置に設けられていればよい。
【0049】
突出部86は、延在部86Aと、立設部86Bと、を有している。延在部86Aは、突出部86の基端部を構成し、切り欠き81bの径方向外方側の端部から径方向内方に向かって基板部81と平行に延びている。すなわち、一対の切り欠き81b間に突出部86の基端部が設けられている。立設部86Bは、延在部86Aの先端に連続し、基板部81と傾斜して先端側Z1に向かう方向に延びており、コイルユニット60が弁本体2に取り付けられた状態では、立設部86Bの径方向内方の端部(先端)が凹部24aに当接するようになっている。立設部86Bは、嵌挿孔70aおよび開口部81aの開口端縁よりも径方向内方に突出して設けられている。
【0050】
立設部86Bの径方向内方の端部には、立設部86Bの他の部分および延在部86Aと比べて幅寸法が小さく、かつ角が面取りされた最先端部86B1が形成されている。すなわち、突出部86の先端(先端側)は、突出部86の基端側に比べて幅寸法が小さく、かつ角が面取りされている。図7に示すように、コイルユニット60が弁本体2に取り付けられた状態では、最先端部86B1の先端縁は、上述の窪み面24bのうち、第一半円部24b1に当接するようになっている。なお、この際、上述のとおり立設部86Bは、嵌挿孔70aおよび開口部81aの開口端縁よりも径方向内方に突出して設けられている。これにより、キャン24が嵌挿孔70aおよび開口部81aに挿通されてコイルユニット60が弁本体2に取り付けられる際には、キャン24によって突出部86が径方向外方に押圧され、その反力によって最先端部86B1の先端縁がキャン24に押圧状態で当接するようになっている。すなわち、凹部24aに突出部86の先端が押圧状態で当接するようになっている。
【0051】
このように、コイルユニット60が弁本体2に取り付けられる際には、キャン24の外面に押圧部83が押圧状態で当接するとともに、凹部24aに突出部86の先端が押圧状態で当接することで、コイルユニット60が弁本体2に固定されることとなる。この際、押圧部83は、軸線L方向の寸法がコイルユニット60の軸線L方向の寸法よりも大きく設定された接続部82の先端側Z1に設けられており、突出部86は、基板部81(すなわち、接続部82の基端側Z2)から切り起こされて形成されることから、コイルユニット60において、押圧部83は、軸線L方向の一方側に配置され、突出部86は、軸線L方向の他方側に配置されていることとなる。そして、コイルユニット60におけるコイル72は、押圧部83と突出部86とで、軸線L方向に挟まれる位置に配置されていることなる。
【0052】
窓部87は、上述のように、基板部81の左右両端縁からそれぞれ立ち上る板部材の前後方向X中央部に、左右方向Yに貫通するように形成されており、前後方向Xに隣り合う一対の接続部82と、これら一対の接続部82に亘って設けられた押圧部83と、基板部81と、で囲まれて構成されている。そして、本実施形態では、上述の通り接続部82の軸線L方向の寸法が、コイルユニット60の本体部70の軸線L方向の寸法よりも大きく設定されていることから、窓部87の軸線L方向の寸法もコイルユニット60の本体部70の軸線L方向の寸法より大きくなっており、これによって、コイルユニット60の本体部70の一部が窓部87を左右方向Yに貫通可能となっている。そして、本実施形態では、図2、3に示すように、コイルユニット60の本体部70の左右両端部(本体部70の一部)が窓部87を左右方向Yに貫通して設けられている。
【0053】
以上、このような本実施形態によれば、コイルユニット60の嵌挿孔70aに、弁本体2のキャン24(ケース)を基端側Z2から先端側Z1に向かって挿通させることでコイルユニット60が弁本体2に取り付けられる。この際、コイルユニット60を構成するブラケット80の押圧部83がキャン24の外面に押圧状態で当接するとともに、ブラケット80の突出部86の最先端部86B1(先端)が、キャン24の外周面に形成された凹部24aに押圧状態で当接することとなる。すなわち、コイルユニット60が弁本体2に取り付けられた状態では、押圧部83および突出部86のそれぞれが、異なった個所でキャン24を押圧することとなり、コイルユニット60と弁本体2との摩擦抵抗を向上させることができる。このため、コイルユニット60が弁本体2に対し、キャン24の軸線L方向、径方向、および周方向に移動することを抑制することができる。また、このように複数の個所でキャン24を押圧することで、スライド式切換弁1(制御弁)に振動等が加わったとしても、その振動が各押圧部83および突出部86に分散されることとなり、コイルユニット60の保持状態を良好に維持することができる。また、押圧部83と突出部86はブラケット80に設けることができるので、コイルユニット60の本体部70を弁本体2に固定するための部品を一部品で構成することができる。このため、弁本体2に対するコイルユニット60の相対位置を均一化しやすく、これにより、個々のスライド式切換弁1の作動性のばらつきを低減することができる。また、上述のとおり突出部86の最先端部86B1を凹部24aに押圧状態で当接させることができるので、従来のように半球状の凸部の全面を凹部に合致させる構成と比較して、コイルユニット60と弁本体2との間に生じるがたを抑制しやすくすることができる。したがって、弁本体2に対するコイルユニット60の保持力を高めることができるスライド式切換弁1を提供することができる。そして、弁本体2に対するコイルユニット60の保持力を高めることができるので、例えば、振動、衝撃が生じやすい車載機等のモビリティ用途にスライド式切換弁1を使用した場合でも、コイルユニット60の位置ずれや脱落を抑制し、安定した作動性を得ることができる。
【0054】
また、押圧部83と突出部86は、コイル72を挟んで一方がキャン24の軸線L方向の先端側Z1(一方側)に、もう一方がキャン24の軸線L方向の基端側Z2(他方側)に配置されることとなる。このためコイル72の軸線L方向よりも長い距離をあけて、キャン24の先端側Z1と基端側Z2とをそれぞれ押圧部83と突出部86とによって押圧できるので、このような構成以外の構成と比較して、キャン24の広範囲に亘って押圧部83と突出部86の押圧力を伝達することができる。したがって、弁本体2に対するコイルユニット60の保持力をより一層向上させることができる。なお、本実施形態では、キャン24の軸線L方向の先端側Z1を一方側とし、キャン24の軸線L方向の基端側Z2を他方側とし、一方側に押圧部83を設け、他方側に突出部86を設けたが、この配置は逆になってもよい。すなわち、キャン24の先端側Z1に突出部86を設け、キャン24の基端側Z2に押圧部83を設けてもよい。
【0055】
また、上述のとおり、嵌挿孔70aの中心軸とキャン24の中心軸とを同軸とした状態で、コイルユニット60をキャン24の先端側Z1から基端側Z2に移動させることで、コイルユニット60が弁本体2に取り付けられるようになっている。このため、逆にキャン24の基端側Z2から先端側Z1に向かう方向は、コイルユニット60が弁本体2から離脱する際の抜け方向となる。そして、本構成によれば、突出部86は、キャン24の先端側Z1に向かう方向に傾斜して設けられているので、突出部86がコイルユニット60の抜け方向に沿って配置されていることとなる。このため、突出部86の先端が、凹部24aに押圧状態で当接した際には、コイルユニット60の抜け方向に抗する力がコイルユニット60に加わることとなり、弁本体2に対するコイルユニット60の保持力をより一層向上させることができる。
【0056】
また、突出部86が凹部24aを押圧した際の反力を、延在部86Aと立設部86Bとに分散させ、延在部86Aおよび立設部86Bの弾性変形により押圧力を得ることができるので、当該突出部86の耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、突出部86の先端が、窪み面24bのうち第一半円部24b1(キャン24の先端側Z1の半円部)に当接しているので、突出部86の先端が、窪み面24bのうち第二半円部24b2(キャン24の基端側Z2の半円部)に当接している場合と比較して、上述の抜け方向へのコイルユニット60の変位をより一層規制しやすくなる。このため、コイルユニット60と弁本体2との間に生じるがたを抑制することができる。
【0058】
また、突出部86の先端側Z1以外の部分の幅寸法が先端側Z1よりも大きくなるので、突出部86の押圧方向に対する弾性力を向上させることができる。
【0059】
また、角が面取りされた最先端部86B1を設けたことで、突出部86の先端を凹部24aの底部付近まで挿入することが可能となる。すなわち、最先端部86B1を有しない構成と比較して、より凹部24aの深い部分で突出部86を凹部24aに当接させることができる。したがって、突出部86が凹部24aから抜け出すことを抑制することができる。
【0060】
また、キャン24を挿通させる開口部81aの開口端縁から径方向内方に突出するように突出部86を設けることが可能となるので、キャン24の周方向の任意の位置に容易に突出部86を配置することができる。
【0061】
また基板部81には、開口部81aの開口端縁よりも径方向外方に延びる一対の切り欠き81bが形成され、一対の切り欠き81b間に突出部86の延在部86A(基端部)を設けることができるので、開口部81aの開口端縁よりも径方向内方に突出部86の基端部を設ける必要がなくなり、開口部81aの内径寸法を、キャン24の外径寸法とほぼ同じにすることができる。すなわち、開口部の内径寸法をキャン24が挿入可能な最小の寸法とすることができる。したがって、基板部の小型化を図ることで、コイルユニット60を小型化することができる。
【0062】
また、隣り合う一対の接続部82と、これら一対の接続部82に亘って設けられた押圧部83と、基板部81と、で囲まれた窓部87を設け、本体部70の一部が窓部87を貫通して設けられることとしたので、窓部87を有さない構成と比較して、ブラケット80を本体部70に干渉させないようにするためのスペースを設ける必要がなく、その分ブラケット80を小型化することができる。
【0063】
また、複数の突出部86のうち少なくとも1個の突出部86と、押圧部83と、をキャン24の軸線L回りの周方向でずれた位置に設けたので、キャン24における軸線L回りの周方向の異なる個所を、突出部86と押圧部83とで押圧することができ、このような構成以外の構成と比較して、キャン24の広範囲に亘って押圧部83と突出部86の押圧力を伝達することができる。したがって、弁本体2に対するコイルユニット60の保持力をより一層向上させることができる。
【0064】
また、押圧部83は、弾性片85を有しているので、例えばコイルユニット60や弁本体2に振動が加わるなど、コイルユニット60および弁本体2の一方が他方に対して変位するような場合に、その変位を弾性片85が弾性変形することで吸収することができる。したがって、弁本体2に対するコイルユニット60の保持力をより一層高めることができる。
【0065】
また、押圧部83は、折返部85Bの先端にてコイルユニット60のヨーク73に当接するので、押圧部83は、コイルユニット60と弁本体2とを保持する機能に加えて、ヨーク73と弁本体2とを電気的に接地する機能を有することとなる。これにより、コイルユニット60と弁本体2との間に生じる電気的ノイズをキャンセルすることができる。
【0066】
また、折返部85Bの円弧の頂点部によって当接部85B1を構成し、円弧の端面85B2によって折返部85Bの先端を構成することができるので、押圧部83の形状をシンプルにすることができ、当該押圧部83の成形を容易に行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。本実施形態のスライド式切換弁1は、弁体3によって第一ポートP1、第二ポートP2、第三ポートP3、および第四ポートP4の連通状態を切換えるように構成した。すなわち、本実施形態で例示したスライド式切換弁1は、いわゆる四方弁であるが、スライド式切換弁1は、これら四方弁に限られない。
スライド式切換弁1は、弁本体に少なくとも一対の配管が接続されたものであれば、例えば3本の配管のうちの一対の配管を連通させるときの連通対象の配管を、弁体を用いて切換える三方弁であってもよい。または、2本の配管の相互間を、弁体を用いて開閉する二方弁であってもよい。もしくは、連通対象の配管の数をさらに増やして多方弁としてもよい。このように、スライド式切換弁における配管の数や、連通状態の切換え方等については、スライド式切換弁の適用対象等に応じて変更してよい。
また、本発明の制御弁として例示したスライド式切換弁1は、コイルユニット60の電磁力により、作動子としてのマグネットロータ41を回転させて弁体3を移動させる、いわゆる電動弁であるが、これに限られず、本発明の制御弁は、電磁弁であってもよい。すなわち、駆動部を、コイルユニットと、プランジャと、吸引子と、で構成し、コイルユニットの電磁力により作動子としてのプランジャを進退駆動するような弁装置に本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0067】
L 軸線
Z1 先端側
Z2 基端側
1 スライド式切換弁(制御弁)
2 弁本体
24 キャン(ケース)
24a 凹部
3 弁体
41 マグネットロータ(作動子)
60 コイルユニット
70 本体部
70a 嵌挿孔
71 収容部
72 コイル
73 ヨーク(継鉄)
80 ブラケット
81 基板部
82 接続部
83 押圧部
86 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8