(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/47 20060101AFI20241011BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241011BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241011BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20241011BHJP
H04N 1/113 20060101ALI20241011BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B41J2/47 101M
G03G15/00 303
G03G21/00 510
G03G15/04
H04N1/113
G02B26/10 Z
(21)【出願番号】P 2022111979
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2018006690の分割
【原出願日】2018-01-18
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋月 智雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健一
(72)【発明者】
【氏名】長田 光
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150581(JP,A)
【文献】特開2015-008447(JP,A)
【文献】特開平11-194553(JP,A)
【文献】特開2010-002607(JP,A)
【文献】特開2016-150580(JP,A)
【文献】特開2011-164609(JP,A)
【文献】特開2016-150582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/47
G02B 26/10 - 26/12
G03G 15/00
G03G 15/04 - 15/043
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
画像濃度を表す画像データに応じて、レーザ光を主走査方向の複数の区間に対して一定ではない走査速度で走査することで、前記感光体に潜像を形成する走査手段と、
トナーを格納する格納容器を有し、前記感光体に形成された前記潜像に前記トナーを付着させることにより前記感光体に画像を形成する現像手段と、
前記画像データのうち、前記主走査方向のいずれの領域に対応するデータであるかに応じて、濃度を変更するために前記画像データの階調値を変更する濃度変更手段と、を備え、
前記濃度変更手段は、前記画像データが表す画像濃度が最大濃度である場合において、前記格納容器に格納されているトナーの量が閾値より多いときは、第1走査速度で走査される前記主走査方向における
端部の領域である第1領域に対応する画像データを第1階調値とし、前記第1走査速度よりも
遅い第2走査速度で走査される、前記主走査方向における
中央部の領域である第2領域に対応する画像データを前記第1階調値より小さい第2階調値とし、前記格納容器に格納されているトナーの量が前記閾値より少ないときは、前記第1領域に対応する画像データを前記第1階調値とし、前記第2領域に対応する画像データを前記第2階調値より小さい第3階調値とする様に前記画像データを補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像データに対して中間調処理を行う中間調処理手段を備え、
前記中間調処理手段は、前記濃度変更手段による補正後の画像データに対して前記中間調処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像手段は、前記感光体の潜像に前記トナーを付着させる現像スリーブと、前記感光体とが接触しない構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記濃度変更手段は、像高と前記階調値の補正量との関係を示す補正情報に基づき前記画像データを補正することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記濃度変更手段は、像高と前記階調値の補正量との関係を示す複数の補正情報を有し、前記格納容器に格納されているトナーの量に応じて前記複数の補正情報から選択した補正情報に基づき前記画像データを補正することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームプリンタ、デジタル複写機、デジタルFAX等の電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、種々の理由により主走査方向における画像濃度の均一性が崩れる。例えば、画像形成装置において静電潜像にトナーを付着させて現像する現像装置は、現像スリーブとトナー粒子との摩擦によりトナーに電荷を与える。主走査方向における画像濃度を均一にするには、トナーを過剰に帯電させることなく、かつ、現像スリーブの長手方向(主走査方向)においてトナーを均一に帯電させなければならない。ここで、現像スリーブの主走査方向の端部側では、側壁の抵抗によりトナーの流動性が阻害され、現像スリーブの中央側に比べてトナーの流動速度は小さくなる。よって、端部側のトナーは、中央部のトナーよりも現像スリーブとの接触時間が長くなり、中央部よりも電荷が高くなり易い。結果、主走査方向の端部の濃度は、中央部に比べて低くなる。
【0003】
特許文献1は、現像スリーブの被覆層の中央部と端部で導電性微粒子の含有割合を変えることで、或いは、被覆層の磨き処理に差をつけることで、トナーを均一に帯電させる構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、現像スリーブの構造・構成が複雑になり、画像形成装置のコストアップにつながる。
【0006】
上記例に示す様に、画像形成装置では、種々の要因により、主走査方向における画像濃度の均一性が崩れる、つまり、主走査方向における濃度変化が生じ得る。
【0007】
本発明は、主走査方向における画像濃度の変化を抑えることができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、画像形成装置は、感光体と、画像濃度を表す画像データに応じて、レーザ光を主走査方向の複数の区間に対して一定ではない走査速度で走査することで、前記感光体に潜像を形成する走査手段と、トナーを格納する格納容器を有し、前記感光体に形成された前記潜像に前記トナーを付着させることにより前記感光体に画像を形成する現像手段と、前記画像データのうち、前記主走査方向のいずれの領域に対応するデータであるかに応じて、濃度を変更するために前記画像データの階調値を変更する濃度変更手段と、を備え、前記濃度変更手段は、前記画像データが表す画像濃度が最大濃度である場合において、前記格納容器に格納されているトナーの量が閾値より多いときは、第1走査速度で走査される前記主走査方向における端部の領域である第1領域に対応する画像データを第1階調値とし、前記第1走査速度よりも遅い第2走査速度で走査される、前記主走査方向における中央部の領域である第2領域に対応する画像データを前記第1階調値より小さい第2階調値とし、前記格納容器に格納されているトナーの量が前記閾値より少ないときは、前記第1領域に対応する画像データを前記第1階調値とし、前記第2領域に対応する画像データを前記第2階調値より小さい第3階調値とする様に前記画像データを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、主走査方向における画像濃度の変化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】一実施形態による像高と部分倍率との関係を示す図。
【
図5】一実施形態による各信号の関係と、像高と潜像の関係を示す図。
【
図6】一実施形態による部分倍率補正、輝度補正及び濃度補正の説明図。
【
図7】一実施形態による画像処理部101の機能ブロック図。
【
図8】一実施形態によるディザマトリクスを示す図。
【
図10】一実施形態による位置制御マトリクスを示す図。
【
図11】一実施形態によるレベルとパルス信号との関係を示す図。
【
図13】一実施形態によるスポット径と光量分布との関係を示す図。
【
図14】一実施形態による、スポット径と連続発光時の光量分布との関係を示す図。
【
図15】一実施形態による感光体の露光量と、露光電位との関係を示す図。
【
図16】一実施形態による感光体の主走査方向における露光電位分布を示す図。
【
図17】一実施形態によるベタ画像の処理例を示す図。
【
図18】第一実施形態と比較例1について、印刷画像の主走査方向の濃度変化を示す図。
【
図20】第三実施形態と比較例2について、印刷画像の主走査方向の濃度変化を示す図。
【
図21】第四実施形態と比較例3について、印刷画像の主走査方向の濃度変化を示す図。
【
図22】第五実施形態と比較例4及び5について、印刷画像の主走査方向の濃度変化を示す図。
【
図24】一実施形態による部分倍率補正及び濃度補正の説明図。
【
図26】一実施形態による部分倍率補正、輝度補正及び濃度補正の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0012】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による画像形成装置9の概略的な構成図である。光走査装置400のレーザ駆動部300は、画像信号生成部100から出力される画像信号に基づき、光ビーム410を射出する。この光ビーム410は、図示しない帯電部により帯電された感光体4を走査・露光し、感光体4の表面に潜像を形成する。不図示の現像部は、この潜像をトナーで現像してトナー像を形成する。また、給紙ユニット8から給紙された記録媒体は、搬送ローラ5により感光体4と転写ローラ41とのニップ領域に搬送される。転写ローラ41は、感光体4に形成されたトナー像をこの記録媒体に転写する。記録媒体は、その後、定着部6に搬送される。定着部6は、記録媒体を加熱・加圧してトナー像を記録媒体に定着させる。トナー像が定着された記録媒体は、排紙ローラ7により画像形成装置9の外部に排出される。
【0013】
図2は、本実施形態による光走査装置400の構成図であり、
図2(A)は、主走査方向の断面図を、
図2(B)は、副走査方向の断面図を示している。光源401が射出した光ビーム(光束)410は、開口絞り402によって楕円形状に整形されてカップリングレンズ403に入射する。カップリングレンズ403を通過した光ビーム410は、略平行光に変換されて、アナモフィックレンズ404に入射する。なお、略平行光とは、弱収束光及び弱発散光を含む。アナモフィックレンズ404は、主走査断面内において正の屈折力を有しており、入射する光束を主走査断面内においては収束光に変換する。また、アナモフィックレンズ404は、副走査断面内において偏向器405の反射面405aの近傍に光束を集光しており、主走査方向に長い線像を形成する。
【0014】
そして、アナモフィックレンズ404を通過した光束は、偏向器(ポリゴンミラー)405の反射面405aにて反射される。反射面405aで反射した光ビーム410は、結像レンズ406を透過し、感光体4の表面で結像し、所定のスポット状の像(以降、スポットと表記する)を形成することで感光体4を照射・露光する。偏向器405を不図示の駆動部により矢印Ao方向に一定の角速度で回転させることにより、感光体4の被走査面407上でスポットが主走査方向に移動し、被走査面407上に潜像を形成する。なお、主走査方向とは、感光体4の回転軸と平行な方向である。また、副走査方向とは、感光体4の周方向である。
【0015】
ビームディテクト(以降、BDと記述する)センサ409とBDレンズ408は、被走査面407上に潜像を書き込むタイミングを決定する同期用光学系である。BDレンズ408を通過した光ビーム410は、フォトダイオードを含むBDセンサ409に入射し検知される。BDセンサ409により光ビーム410を検知したタイミングに基づいて、感光体4への書き込みタイミング(潜像の形成タイミング)の制御が行われる。本実施形態の光源401は1つの発光部を有するものであるが、光源401として、独立して発光制御可能な複数の発光部を備えるものであっても良い。
【0016】
図2に示すように、結像レンズ406は、入射面406a及び出射面406bの2つの光学面(レンズ面)を有する。結像レンズ406は、主走査断面内において、反射面405aにて偏向された光束が被走査面407上を所望の走査特性で走査する構成となっている。また、結像レンズ406は、被走査面407上でのレーザ光410のスポットを所望の形状にする構成となっている。
【0017】
本実施形態において、結像レンズ406は、所謂、fθ特性を有していない。つまり、偏向器405が等角速度で回転しているときに、スポットは、被走査面407上を等速に移動しない。fθ特性を有さない結像レンズ406を用いることにより、結像レンズ406を偏向器405に近接して(距離D1が小さい位置に)配置することが可能となる。また、fθ特性を有さない結像レンズ406はfθ特性を有する結像レンズよりも、主走査方向の長さ(幅LW)及び光軸方向の長さ(厚みLT)を小さくできる。よって、光走査装置400の小型化が実現される。また、fθ特性を有するレンズの場合、主走査断面で見た時のレンズの入射面、出射面の形状に急峻な変化がある場合があり、そのような形状の制約がある場合、良好な結像性能を得られない可能性がある。これに対して、結像レンズ406はfθ特性を有していないため、主走査断面で見た時のレンズの入射面、出射面の形状に急峻な変化が少なく良好な結像性能を得ることができる。なお、結像レンズ406は、主走査方向の一部の領域にfθ特性を有し、その他の領域にはfθ特性を有さないようなレンズでもよい。
【0018】
なお、以下の説明において、図示しない帯電部により帯電された感光体4の表面電位(帯電電位)(Vd)は、-450Vであり、
図1では不図示の現像部が現像のために出力する現像電位(Vdc)は-250Vであるものとする。また、光ビーム410により1画素内の全領域を露光した際の感光体4の表面電位(露光電位)(Vl)は-150Vであるものとする。さらに、画像形成装置内には、画像形成装置の雰囲気環境を検出するための不図示の温湿度センサが設けられているものとする。
【0019】
図3は、本実施形態による像高と部分倍率との関係を示している。なお、像高が0とは、スポットが結像レンズ406の光軸上にある場合であり、以下では軸上像高と呼ぶものとする。また、軸上像高以外の像高を以下では、軸外像高と呼ぶものとする。さらに、絶対値が最大の像高を最軸外像高と呼ぶものとする。
図2(A)に示す様に、被走査面407における最軸外像高はW/2である。
図3において、例えば、像高の部分倍率が130%とは、当該像高における走査速度が、部分倍率が100%の像高における走査速度の1.3倍であることを意味している。
図3の例では、軸上像高における走査速度が最も低く、像高の絶対値が大きくなる程、走査速度が速くなっている。従って、クロックの周期によって決めた一定の時間間隔で主走査方向の画素幅を決めてしまうと、軸上像高と軸外像高とで画素幅が異なってしまう。したがって、本実施形態では、部分倍率補正を行う。具体的には、像高に拘らず画素幅が略一定となる様に像高に応じて画像クロックの周波数を補正する(画像クロック補正)ことで、部分倍率補正を行う。
【0020】
また、被走査面407上の像高が軸上像高付近のときに単位長さを走査するのにかかる時間よりも、像高が最軸外像高付近の時に単位長さを走査するのにかかる時間の方が短くなる。これは、光源401の発光輝度が一定の場合、像高が軸上像高付近の時の単位長さ辺りの総露光量(以下、単に、単位長さ当たりの露光量と記載する。)よりも、像高が最軸外像高付近の時の単位長さ辺りの露光量の方が少なくなることを意味する。したがって、本実施形態では、良好な画質を得る為に、上述した部分倍率補正に加えて輝度補正を行う。
【0021】
図4は、画像形成装置9の露光制御構成を示している。画像信号生成部100は、不図示のホストコンピュータから画像データを受け取り、画像信号であるVDO信号110を生成する。また、画像信号生成部100は、画像濃度を補正する機能を有する。制御部1は、画像形成装置9全体の制御を行う。レーザ駆動部300は、レーザドライバ307を有する。レーザドライバ307は、VDO信号110に基づき光源401の発光部11の発光のON/OFFを制御する。画像信号生成部100は、画像形成のための画像信号の出力の準備が整ったら、制御部1に印刷開始を指示する。制御部1は、CPU2を有し、印刷準備が整うと、副走査同期信号であるTOP信号112と主走査同期信号であるBD信号111を画像信号生成部100に送信する。画像信号生成部100は、これら同期信号を受信すると、所定タイミングで画像信号であるVDO信号110をレーザ駆動部300に出力する。画像信号生成部100と制御部1とレーザ駆動部300の詳細については後述する。
【0022】
図5(A)は、各信号の関係を示す図である。なお、図の左から右に向かって時間が経過する。TOP信号112の「HIGH」は、記録媒体の先端が所定の位置に到達したことを示す。画像信号生成部100は、TOP信号112の「HIGH」を受信したら、BD信号111に同期して、VDO信号110を送信する。レーザ駆動部300は、このVDO信号110に基づいて光源401を発光させて感光体4に潜像を形成する。なお、図の簡略化のため、
図5(A)では、VDO信号110が複数のBD信号111を跨いで連続的に出力されているように記載している。しかしながら、実際には、VDO信号110はBD信号111が出力されてから次のBD信号111が出力されるまでの間のうちの所定の期間に出力される。
【0023】
<部分倍率補正>
次に部分倍率補正について説明する。その説明に先立って部分倍率補正が必要な理由と、補正原理について
図5(B)を用いて説明する。画像信号生成部100は、BD信号111の立ち上がりエッジを受信したら、感光体4の左端から所望の距離だけ離れた位置に潜像を形成できるよう、所定タイミング後にVDO信号110を送信する。光走査装置400は、上述したように、被走査面407上の中央部(軸上像高)に比べて、端部(最軸外像高)の走査速度が速い光学構成である。したがって、潜像Aに示すように、軸上像高の潜像dot2に比べて、最軸外像高の潜像dot1は主走査方向に肥大する。潜像dot1及びdоt2は、軸上像高で600dpiの1ドット(主走査方向42.3μmの幅)に相当する時間だけ光源401を発光させた際に形成されるものである。そのため、本実施形態では部分倍率補正として、主走査方向の位置に応じてVDO信号110の周期と時間幅を補正する。即ち、部分倍率補正により、最軸外像高の発光時間間隔を軸上像高の発光時間間隔と比べて短くし、潜像Bに示すように最軸外像高の潜像dot3と軸上像高の潜像dot4とを同等のサイズにする。このような補正によって、主走査方向に関して、実質的に等間隔、そして等サイズで、各画素に対応する潜像ドットを形成できるようにする。
【0024】
制御部1のCPU2は、画像信号生成部100の画像処理部101に対し、VDO信号110の周期や時間幅を補正するため、主走査方向の位置に応じてクロック信号VCLK113の周波数を変更する。これにより部分倍率補正が行われる。
【0025】
図6は、部分倍率補正の一例を示している。
図6は、軸上像高に比べて最軸外像高での走査速度が135%となる場合の部分倍率補正を示している。
図4のROM3には、部分倍率補正情報が格納されている。部分倍率補正情報は、主走査方向における、クロック信号VCLK113のクロック周波数比を示している。CPU2は、部分倍率補正情報に基づき、クロック信号VCLK113を画像処理部101に送信し、クロック周波数を制御する。つまり、画像処理部101から出力されるVDO信号110のクロック周波数比は、軸上像高を100%としたとき最軸外像高で135%になる。このとき、最軸外像高において、光ビーム410のスポットが走査面407上を1画素の幅(42.3μm)だけ移動する期間は、軸上像高での0.74倍になる。このような補正により、画素幅を補正し、主走査方向に関して実質的に等間隔、そして等サイズで、各画素に対応する潜像を形成できるようになる。
【0026】
なお、部分倍率補正は、上述したクロック信号VCLK113のクロック周波数比を部分倍率に応じて変化させることに限定されない。例えば、1画素を複数に分割した画素片を単位として露光する構成においては、部分倍率(像高)に応じて画素片を挿抜することにより部分倍率補正を行うことができる。
【0027】
<輝度補正>
続いて、輝度補正について説明する。上述した部分倍率補正により、像高の絶対値が大きくなる程、1画素の露光時間を短くする補正を行う。したがって、1画素の総露光量(積分光量)は、像高の絶対値が大きくなる程、低下する。輝度補正は、この低下を補償するために行う。具体的には、光源401の輝度(発光強度)を補正することで、1画素への総露光量(積分光量)が各像高で一定となるように補正する。
図4の制御部1は、CPU2と不図示のDAコンバータと不図示のレギュレータを有しており、レーザ駆動部300と合わせて輝度補正部を構成する。レーザ駆動部300は、電圧を電流に変換するVI変換回路306と、レーザドライバ307を有し、光源401の発光部11へ駆動電流を供給する。ROM3には、輝度補正情報も格納されている。輝度補正情報は、主走査方向の位置と、発光部11に供給する補正電流との関係を示す情報である。
【0028】
制御部1は、輝度補正情報に基づき、BD信号111に同期して、1走査線内で変化する輝度補正アナログ電圧312を出力する。輝度補正アナログ電圧312は、VI変換回路306で電流値に変換され、レーザドライバ307に出力される。レーザドライバ307は、所謂APC(Auto Power Control)を実行して、発光部11の輝度が所望の輝度となるように自動調整する。なお、
図6に示す様に、APCは、主走査毎の印刷領域外でBD信号を検知するために発光部11を発光させている間に実施される。このAPCでは、最軸外像高において使用する輝度を得るために発光部11に流す駆動電流を求める。以下では、このときの駆動電流を基準電流と呼び、そのときの発光部11の輝度を基準輝度と呼ぶ。CPU2は、ROM3に格納された輝度補正情報をもとに、像高に応じて輝度補正アナログ電圧312を制御する。VI変換部306は、輝度補正アナログ電圧312を電流に変換して補正電流をレーザドライバ307に出力する。レーザドライバ307は、基準電流から補正電流を減ずることで、
図6に示す様に、像高の絶対値が小さくなる程、輝度が小さくなる様に、輝度を補正する。結果、軸上像高における輝度は、最軸外像高の74%となり、1画素への総露光量(積分光量)が各像高で一定となるように補正できる。
【0029】
上述の構成においては、特に濃度の高い(ベタ側)領域においては、像高が大きくなる程濃度が大きくなり、その結果、中間階調含めて画像濃度が主走査方向において一定にはならないことが分かった。以下に、部分倍率補正及び輝度補正のみを行う構成を比較例1として、主走査方向において濃度が一定とならない理由について説明する。なお、本実施形態において、軸上像高におけるスポット径は60μmであり、最軸外像高でのスポット径は90μmであるものとする。
【0030】
比較例1は、輝度補正で1画素への総露光量(積分光量)が各像高で一定となるように補正する構成である。
図18(B)は、比較例1の構成における、主走査方向の濃度変化を、各階調について示している。
図18(B)に示す様に、階調値が高い領域においては、像高が大きい領域において濃度が大きくなっている。比較例1の構成において、像高が高い領域において濃度が大きくなる理由について説明する。ベタ画像を形成するため、主走査方向において総ての画素を露光する際の感光体4の露光量について考える。
図13(A)は、軸上像高のスポット径が60μmの場合の被走査面407上の光量分布を示し、
図13(B)は、最軸外像高のスポット径が90μmの場合の被走査面407上の光量分布を示している。光量分布は、ガウス分布で近似している。
図13のスポット径に対応した光量分布を画素ピッチ毎に重ね合わせることで、ベタ画像を形成する際の感光体4の光量分布を得ることができる。
図14(A)は、スポット径が60μmの場合の光量分布であり、
図14(B)は、スポット径が90μmの場合の光量分布である。
図14に示す様に、スポット径が60μmの場合、画素間隔とスポット径との関係により約±20%の露光量差が生じる。一方でスポット径が90μmの場合、露光量差は約±2%となる。
【0031】
次に、露光量差があるときの感光体4の感光体電位(露光電位)について考える。
図15は、感光体4の露光量と感光体電位との関係(E-V曲線)を示している。感光体4の露光量は、約0.2μJ/cm
2であるため、感光体4の電位は、約-150Vを示すが、スポット径によって、値は若干異なる。
図16(A)は、スポット径が60μmの場合の感光体4の電位分布を示し、
図16(B)はスポット径が90μmの場合の感光体4の電位分布を示している。
【0032】
スポット径が60μmであると、感光体電位は、約-130~-180Vの間で変化し、その平均電位は-152.7Vである。一方、スポット径が90μmであると、感光体電位は、約-147~-150Vの間で変位し、その平均電位は-148.7Vである。よって、スポット径が90μmとスポット径60μmでは、平均電位が約4V異なる。本実施形態の現像電位(Vdc)は-250Vであり、現像コントラストは約100Vであることから、スポット径が90μmのときと、スポット径が60μmのときでは、約4%(4V)のコントラスト差を持ってしまう。結果、このコントラスト差により、主走査方向の濃度差が生じる。
【0033】
本実施形態で、上述の濃度差を抑制するために、以下に説明する濃度補正処理を行う。
図7は、画像処理部101の機能ブロック図である。不図示のホストコンピュータからの画像データは、一旦、メモリ110に蓄えられる。濃度補正処理部101zは、画像データに対して濃度補正処理(階調補正処理)を行い、処理後の画像データを中間調処理部101aに出力する。中間調処理部101aは、各画素8ビット(256階調)の画像データに対して多値ディザ処理(中間調処理)を行い、5ビット(32階調)の画像データに変換する。位置制御部101bは、位置制御マトリクスを用いて、ドットの成長方向を表す2ビットの位置制御データを、中間調処理部101aが出力する画像データに付加する。PWM制御部101cは、位置制御データが付加された7ビットの画像データに基づきパルス信号であるVDO信号110を生成してレーザ駆動部300へ出力する。
【0034】
中間調処理部101aにおける中間調処理について説明する。中間調処理部101aは、
図8に示す、主走査方向(図の左右方向)に3画素、副走査方向(図の上下方向)に3画素の計9個の画素(画素a~i)から構成されるディザマトリクスを使用する。
図9は、
図8に示すディザマトリクスを構成する各画素について、入力される階調値(画素値)と出力するレベルとの関係を示すテーブルである。
図9の各画素に対応するテーブルは、
図8に示した画素と同じ配置で示されている。
【0035】
中間調処理部101aは、各画素a~iの階調値と閾値とを比較することで、対応するレベル(0~31:5ビット)を出力する。具体的には、画素aについては、階調値が144以上、かつ、147未満であると、レベル1を出力し、147以上、かつ、150未満であると、レベル2を出力する。つまり、階調値が、あるレベルに対応する閾値以上、かつ、1つ上のレベルに対応する閾値未満であると、当該レベルの値を出力する。また、階調値がレベル1の閾値未満であると、中間調処理部101aは、レベル0を出力する。また、
図9の画素aについて、レベル17~31の閾値はいずれも181である。この場合、画素aの階調値が181以上であると、最も大きいレベル31を中間調処理部101aは出力する。
【0036】
位置制御部101bは、
図10示す位置制御マトリクスを有する。位置制御マトリクスは、ディザマトリクスを構成する各画素(画素a~i)のそれぞれに対応して設定された位置制御データのテーブルである。位置制御データは、「R」「C」「L」の3つの値のいずれかであり、2ビットで表現される。例えば、R='01'、C='00'、L='10'のように設定される。「R」「C」「L」は、画素内でのドットの位置及びその成長方向を表す。「R」は画素の右端に配置され、左端に向う成長を行い、「C」は画素の中央に配置され、両端に向かう成長を行い、「L」は画素の左端に配置され、右端に向かう成長を行うこと意味する。位置制御部101bは、中間調処理後の画像データの各ディザマトリクスを構成する各画素(5ビットのデータ)に、位置制御データのテーブルに基づき2ビットの位置制御データを付加して、各画素について7ビットのデータを出力する。
【0037】
PWM制御部101cは、各画素について7ビットのデータから各画素に対応するパルス信号(VDO信号110)を生成する。
図11は、7ビットのデータに含まれる2ビットの位置制御データと、7ビットのデータに含まれる5ビットのレベルと、PWM制御部101cが生成するパルス波形との関係を示している。
図11のPWM値とは、パルス信号の幅に対応し、各レベル0~31に対し、それぞれ、0~255の間の整数値が割り当てられる。
図11に示すテーブルでは、レベル0(非発光)からレベルが上がると共にパルスの幅が太くなるように設定されている。そして、レベル17に到達すると、PWM値が255となり、全画素幅で発光する。一方、レベル17から更にレベルが上がると、パルスの幅が細くなるように設定されている。そして、レベル24に到達すると、PWM値が150になる。また、レベル24から更にレベルが上がると、パルスの幅が再び太くなるように設定されている。そして、レベル31に到達すると、PWM値が255となり、全画素幅で発光する。なお、上述した画像処理に用いられる、
図8、
図9、
図10、
図11に示す各テーブルは、階調毎に設けられるディザマトリクスに関する情報であり、画像処理部101のROM102に保持されている。
【0038】
図12は、幾つかの階調値について、ディザマトリクスの発光パターンを示している。図中の1マスは1画素である。
図12の各画素の黒塗り部分は、露光される領域を示している。階調値0では、全画素がレベル0で、非発光である。階調値0から階調値143にかけては、画素a、c、g、iがレベル0に留まる。一方で、画素b、d、e、f、hのレベルは進行し、発光幅(露光領域)が単調に増大する。階調値143では、画素b、d、e、f、hがレベル17に到達し、PWM値が255となり、全発光となる。階調値143から階調値171にかけては、画素a、c、g、iのレベルが進行し、発光幅が単調に増大する。一方で、画素b、d、e、f、hについては、発光幅が単調に減少する。
【0039】
階調値171では、画素a、c、g、iがレベル10に到達し、PWM値が150となり、各画素が発光している。また、画素b、d、e、f、hはレベル24に到達し、PWM値が150まで低下し、各画素が発光している。つまり、全画素がPWM値150で発光している。階調値171から階調値255にかけては、全画素のレベルが進行し、発光幅が単調に増大する。階調値255では、全画素がレベル31に到達し、PWM値が255となり、全発光となる。
【0040】
続いて、濃度補正処理部101zでの濃度補正について説明する。本実施形態において、ROM102には、濃度補正処理部101zが使用する濃度補正情報が格納されている。濃度補正処理部101zは、
図18(B)に示す主走査方向における画像濃度の変化を抑制する様に、画素の主走査方向の位置に応じて階調値を補正する。なお、ここでの画像濃度とは、記録材への印刷後(定着後)の濃度を意味する。
【0041】
濃度補正処理の具体例について説明する。
図6の補正前階調値は、濃度補正処理部101zに入力される画像データが示す各画素の階調値を示している。
図6において、1つ走査線の全画素の補正前階調値は255(ベタ画像)である。補正後階調値は、濃度補正処理部101zによる補正後の階調値を示している。本実施形態では、1つの走査線を主走査方向に沿って(ア)~(キ)の7つの領域に分割し、各領域それぞれについて階調値の補正値を割り当てて濃度補正情報としている。ここで、領域(ア)と(キ)は、最軸外像高を含む主走査方向の端部の領域である。領域(イ)と(カ)は、それぞれ、領域(ア)と(キ)に隣接し、領域(ア)と(キ)より軸上像高に近い領域である。領域(ウ)と(オ)は、それぞれ、領域(イ)と(カ)に隣接し、領域(イ)と(カ)より軸上像高に近い領域である。領域(エ)は、軸上像高を含む領域である。なお、領域(エ)は、画像データを変更しない領域、つまり、補正値が0の領域である。
【0042】
濃度補正情報は、濃度を低下させる領域それぞれについて、階調値の低下量を示す情報である。なお、濃度を変更するか否かに関わりなく、階調値の補正量(変化量)を示す情報とすることもできる。この場合、濃度を変更しない領域についての補正量は0となる。補正量を示す情報は、例えば、階調値を変化させる値や、階調値を変化させる割合を示している。また、補正前の階調値ごとに、濃度補正情報を設ける構成とすることができる。
図6の例においては、領域(ウ)と(オ)については階調値を2だけ減少させて253としている。領域(イ)と(カ)については階調値を3だけ減少させて252としている。領域(ア)と(キ)については階調値を10だけ減少させて245としている。このように、軸上像高から最軸外像高にかけて階調値の低下量を大きくして濃度を下げる。このような濃度補正処理を行うことにより、
図6の印刷画像濃度として示す様に、主走査方向における画像濃度を一定にすることができる。
【0043】
図17は、全画素の階調値が255である、いわゆるベタ画像を印刷する場合の処理の説明図である。図の1マスは、1画素であり、本例においてそのサイズは、42.3μm×42.3μmである。
図17は、ディザマトリクス9個分の範囲を示している。
図17(A)に示す様に、全画素について補正前の階調値は255である。
図17(B)は、濃度補正処理後の階調値であり、領域に応じて、図に示す様に階調値が変更される。
図17(C)は、補正後の階調値に基づき得られる各画素の露光領域(発光パターン)を示している。
図17(C)に示す様に、領域(エ)については、各画素それぞれがPWM値255(全幅)で露光される。領域(ウ)、(オ)は、一部の画素がPWM値225で露光され、残りの画素がPWM値255で露光される。領域(イ)、(カ)は、一部の画素がPWM値240で露光され、残りの画素がPWM値255で露光される。領域(ア)、(キ)は、一部の画素がPWM値240で露光され、他の一部の画素がPWM値150で露光され、残りの画素がPWM値255(全幅)で露光される。
【0044】
図18(A)は、本実施形態による濃度補正処理を行った場合の主走査方向の濃度変化を各階調値について示している。比較例である
図18(B)においては、部分倍率補正及び輝度補正のみを行うため、上述した様に、階調値の大きい領域では、主走査方向の端部において濃度が高くなる。本実施形態では、部分倍率補正及び輝度補正に加えて、階調値を変換する濃度補正を行うため、階調値の大きい領域においても、主走査方向の濃度変化を小さくすることができる。
【0045】
以上、本実施形態において、光走査装置400は、像高に応じて走査速度が変化する光で感光体4を走査する構成である。このため、制御部1は、部分倍率補正及び輝度補正を行う。さらに、濃度補正処理部101zは、感光体4における走査光のスポット径の像高に応じた変化に起因する濃度変化を抑えるため濃度補正情報に基づき階調値の補正を行う。この構成により、光走査装置400の構成に起因する主走査方向の濃度変化を低減させることができる。なお、濃度補正情報は、予め作成してROM101に格納しておく。
【0046】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、輝度補正を行わない。したがって、APCで決定した基準電流を輝度補正アナログ電圧312で補正する必要はなく、露光制御構成を簡略化することができる。輝度補正を行わないため、第一実施形態で述べた様に、1画素への総露光量(積分光量)は、軸上像高を100%としたときに最軸外像高では74%となる。本実施形態では、総露光量の変化についても濃度補正処理で相殺させる。つまり、第一実施形態における輝度補正も、第一実施形態における濃度補正に組み込む。
図24は、本実施形態における濃度補正を示している。なお、上述した様に、輝度補正を行わないため、光源輝度は、基準輝度で一定である。本実施形態では、領域(ア)と(カ)については階調値を変更しない。一方、他の領域については階調値を小さくし画像濃度を低下させる。
図24では、領域(イ)と(カ)は240とし、領域(ウ)と(オ)は225とし、領域(エ)は210としている。領域(エ)の階調値は、領域(ア)の階調値の82%であり、輝度補正を行う場合の露光量の低下量である74%より大きくしている。これは、第一実施形態で説明した様に、スポット径の変化による主走査方向の端部における濃度の増加を考慮したものである。
【0047】
以上、本実施形態において、光走査装置400は、像高に応じて走査速度が変化する光で感光体4を走査する構成である。ここで、本実施形態では、第一実施形態とは異なり、制御部1は、部分倍率補正を行うが、輝度補正を行わない。このため、本実施形態では、走査速度の変化による感光体4の露光量の変化に起因する主走査方向の濃度変化と、感光体4における走査光のスポット径の像高に応じた変化に起因する濃度変化とを合わせた濃度変化が生じる。このため、この濃度変化を抑制する様に濃度補正情報を作成し、予めROM101に格納しておく。そして、濃度補正処理部101zは、濃度補正情報に基づき階調値の補正を行う。この構成により、光走査装置400の構成に起因する主走査方向の濃度変化を低減させることができる。なお、本実施形態は、走査速度の変化による感光体4の露光量の変化と、感光体4における走査光のスポット径の像高に応じた変化に起因する感光体4の露光量の変化の両方を階調値の補正により抑えるものである。しかしながら、この2つの要因による感光体4の露光量の変化を輝度補正により抑える構成とすることもできる。この場合、濃度補正処理部101zを省略することができる。
【0048】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、現像方式としてジャンピング現像方式を使用する。本実施形態の光走査装置400の結像レンズ406は、fθ特性を有している。つまり、偏向器405が等角速度で回転しているときに、スポットは被走査面407上で等速に移動する。このため、本実施形態では、部分倍率補正及び輝度補正は必要ではない。
【0049】
図19(A)は、本実施形態による現像部208の構成図である。現像部208は、現像剤として磁性一成分トナーを用いたジャンピング現像方式を使用する。現像部208は、その枠体としてトナーの格納容器206を有する。格納容器206の内部にはトナーTが収容される。また格納容器206は、現像部208の各部材を支持する。現像スリーブ203は、格納容器206に回転可能に支持され、図の反時計方向へ回転駆動される。格納容器206に支持される規制ブレード204は、現像スリーブ203上のトナーの層厚を規制し、現像スリーブ203に担持されるトナーを帯電させる。さらに格納容器206には、現像スリーブ203とトナー容器206の隙間からトナーTが飛散することを防ぐためのシート部材207が設けられる。
【0050】
格納容器206内のトナーTは、現像スリーブ203内のマグネットローラ(不図示)の磁気力により現像スリーブ203に引き寄せられ坦持される。現像スリーブ203上に坦持されたトナーTは、規制ブレード204に運ばれ、規制ブレード204と現像スリーブ203の摺擦により電荷付与され、現像スリーブ203上に坦持される。現像スリーブ203と感光体4との距離が所定の距離で一定になるように、現像スリーブ203の両端部に距離規制部材209が設けられる。現像スリーブ203と感光体4との近接領域に、不図示の高圧電源により現像バイアスを印加することにより、現像スリーブ203上のトナーTは感光体4の潜像に現像される。また、現像部208は、結合部材210を中心として回動可能である。そして、不図示の付勢部材と、現像部208の自重により、現像スリーブ203は距離規制部材209を挟んで感光体4の方向に押される様になっている。
【0051】
図19(B)は、現像スリーブ203と感光体4との近接部における、現像スリーブ203にかかる力と変形方向を示す図である。現像スリーブ203には、規制ブレード204が感光体4の方向に向けて押す力(図中の点線矢印で示す。)と、感光体4が距離規制部材209を介して感光体4とは反対方向に向けて押す力(図中の一点鎖線で示す)と、がかかる。規制ブレード204が押す力は、現像スリーブ203の中央部を感光体4の方に変形させる様に働き(図中の点線で示す)、感光体4が押す力は、現像スリーブ203の端部を感光体4とは逆側に変形させる様に働く(図中の一点鎖線で示す)。これらの力がかかる結果、現像スリーブ203の中央部は、全体としては、感光体4の方向に押されて変形する。この変形は、現像スリーブ203の径が小さい等、その強度が弱い程、大きくなる。画像形成装置の小型化への要望に応えるため、現像スリーブ203の径は小さく、結果、感光体4と現像スリーブ203との距離は、主走査方向において一定ではない。つまり、主走査方向の中央部における距離は、端部より近くなり、中央部の濃度が端部より濃くなる。
【0052】
本実施形態でも、第一実施形態と同様に、主走査方向を7つの領域に分割し、各領域に対する補正量を割り当てる。これにより、現像スリーブ203と、感光体4との距離が主走査方向において一定ではないことにより生じる濃度変化を補正する。
図25は、本実施形態による濃度補正の説明図であり、前述の実施形態と同様に、補正前階調値が総て255の場合を示している。なお、上述した様に、本実施形態では、部分倍率補正及び輝度補正を行う必要はなく、よって、クロック周波数及び光源輝度は一定である。本実施形態では、領域(ア)と(キ)の補正後の階調値は255である。また、領域(イ)と(カ)の補正後の階調値は、248であり、領域(ウ)と(オ)の補正後の階調値は、239であり、領域(エ)の補正後の階調値は、235である。この様に、主走査方向の中央部に向かうほど、補正量を大きくして、階調値を下げることで、主走査方向における濃度変化を小さくすることができる。
【0053】
図20(A)は、本実施形態による構成における主走査方向の濃度変化を、各階調について示したものである。上述した濃度補正により、現像スリーブ203と感光体4との距離の主走査方向における不均一性に起因する現像性の差を抑制し、主走査方向の濃度変化を抑えることができる。
図20(B)は、比較例2であり、濃度補正処理を行わず、入力される階調値そのままで印刷を行った場合の濃度変化を、各階調について示したものである。現像スリーブ203と感光体4との距離の主走査方向における変化により、主走査方向の端部において、濃度が低くなっている。
【0054】
以上、本実施形態において、光走査装置400は、像高に拘わらず一定の速度で感光体4を走査する構成である。一方、現像部208は、現像スリーブ203と、感光体4とが接触しない構成である。この構成では、上述した様に、現像スリーブ203と感光体4との距離の主走査方向における不均一性が生じ得る。そして、この不均一性に起因して主走査方向の濃度変化が生じる。このため、この濃度変化を抑制する様に濃度補正情報を作成し、予めROM101に格納しておく。そして、濃度補正処理部101zは、濃度補正情報に基づき階調値の補正を行う。この構成により、現像部208の構成に起因する主走査方向の濃度変化を低減させることができる。なお、本実施形態でも、現像スリーブ203と感光体4との距離の主走査方向の不均一性に起因する主走査方向の濃度変化を輝度補正により抑える構成とすることもできる。この場合、濃度補正処理部101zを省略することができる。
【0055】
なお、本実施形態は、第一実施形態又は第二実施形態と組み合わせることもできる。つまり、fθ特性を有さない光走査装置400を使用する場合にも適用することができる。例えば、第一実施形態と組み合わせた構成では、像高による走査光のスポット径の変化に起因する主走査方向の濃度変化と、現像スリーブ203と感光体4との距離の主走査方向における不均一性に起因する主走査方向の濃度変化との両方を合わせた濃度変化を抑制する様に濃度補正情報を作成し、予めROM101に格納する。また、第二実施形態と組み合わせた構成では、さらに、主走査方向における露光量の変化に起因する主走査方向の濃度変化も考慮した濃度補正情報を作成し、予めROM101に格納する。輝度補正のみにより行う場合についても、同様の考え方を適用できる。
【0056】
<第四実施形態>
続いて、第四実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。現像部208は、その方式に拘わらず。種々の要因により、主走査方向における現像特性が一定にならない場合がある。例えば、格納容器208の主走査方向の端部側ではトナーの流動性が中央部に比べて低くなり易く、主走査方向の端部の濃度が中央部に比べて低くなり得る。第一実施形態では、光走査装置400の構成(特性)及びそれを使用しての露光制御特性を補償するための部分倍率補正及び輝度補正に加えて、濃度補正を行っていた。本実施形態では、この濃度補正において、現像部の構成による濃度の不均一も補正する。この場合、主走査方向の端部で濃度が高くなる特性(第一実施形態)と、主走査方向の中央部で濃度が高くなる特性とが合わさって、複雑な特性になる。しかしながら、その特性に合わせて、濃度補正情報設定することができる。
【0057】
図26は、本実施形態による濃度補正の説明図であり、前述の実施形態と同様に、補正前の階調値は255である。
図26に示す様に、本実施形態では、領域(ア)と(キ)の補正後の階調値は247である。また、領域(イ)と(カ)の補正後の階調値は240である。さらに、領域(ウ)と(オ)の補正後の階調値は245であり、領域(エ)の補正後の階調値は255である。
【0058】
図21(B)は、比較例3であり、濃度補正処理を行わず、入力される階調値そのままで印刷を行った場合の濃度変化を、各階調について示したものである。上述した様に、光走査装置400の特性及びそれを使用しての露光制御特性による濃度変化と、現像部の特性による濃度変化とが合わさった濃度変化が生じている。一方、
図21(A)は、本実施形態による構成における主走査方向の濃度変化を、各階調について示したものである。上述した濃度補正により、光走査装置400の特性及びそれを使用しての露光制御特性による濃度変化と、現像部の特性による濃度変化の合成濃度変化を抑制することができる。
【0059】
なお、本実施形態は、第一実施形態で説明した主走査方向における濃度変化と現像部の構成による主走査方向における濃度変化とを合わせた濃度変化を濃度補正処理部101zで補正するものである。しかしながら、第二実施形態で説明した主走査方向における濃度変化と現像部の構成による主走査方向における濃度変化とを合わせた濃度変化を濃度補正処理部101zで補正する構成とすることもできる。さらに、例えば、現像部208が、第三実施形態で説明したジャンピング方式である場合、現像スリーブ203と感光体4との距離の変化に起因する濃度変化と、現像部208の構成の他の要因に起因する濃度変化とを合わせた濃度変化を濃度補正処理部101zで補正する構成とすることもできる。なお、現像部208の構成の他の要因に起因する濃度変化とは、例えば、格納容器206内での主走査方向におけるトナーの流動性の変化に起因する濃度変化である。さらに、本実施形態でも、濃度補正処理部101zでの階調補正に変えて、輝度補正により主走査方向の濃度変化を抑える構成とすることもできる。
【0060】
<第五実施形態>
続いて、第五実施形態について第三実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、現像部208の使用状況に応じて使用する濃度補正情報を切り替える。
図19(A)に示す様に、現像部208は、結合部材210を中心として回動可能に構成され、不図示の付勢部材と、現像部208の自重により、現像スリーブ203は感光体4に向けて押される。したがって、現像部208の格納容器206に格納されているトナー量により自重は変化し、現像スリーブ203の中央部が感光体4の方に変形する量も変化する。このため、格納容器206に格納されているトナー量(以下、単にトナー残量と呼ぶ。)に応じて、主走査方向における現像特性も変化する。例えば、
図19に示す構成においては、トナー残量が少なくなると、主走査方向の中央部における現像スリーブ203と感光体4との距離は短くなり、中央部における画像濃度が高くなる。
【0061】
本実施形態では、複数の濃度補正情報をROM102に格納しておき、トナー残量に応じて使用する濃度補正情報を選択する。一例として、トナー残量が25%以上あるときの第1濃度補正情報と、トナー残量が25%未満であるときの第2濃度補正情報の2つの濃度補正情報を使用する。トナー残量が25%以上あるときには、
図25を用いて説明した第1濃度補正情報を使用する。そして、トナー残量が25%を下回ると、第2濃度補正情報を使用する。例えば、補正前の階調値が255であると、第2濃度補正情報による補正後の階調値は、領域(ア)と(キ)は255であり、領域(イ)と(カ)は240であり、領域(ウ)と(オ)は235であり、領域(エ)は225である。この様に、領域(ア)と(キ)を除き、階調値の低下量を第1濃度補正情報より大きくする。
【0062】
図22(A)は、本実施形態の構成において、トナー残量が20%での、各階調における主走査方向の濃度変化を示している。トナーの使用状態が進むと、現像スリーブ203と感光体4との距離がより小さくなったとして、第2濃度補正情報を使用する。結果、現像スリーブ203と感光体4との距離の部分的な変化による現像性の差を抑制し、主走査方向における濃度変化を小さくすることができる。
【0063】
図22(B)は、比較例4であり、濃度補正処理を行わない場合の、各階調における主走査方向の濃度変化を示している。
図22(C)は、比較例5であり、第三実施形態の様に、トナー残量が少なくなっても濃度補正情報を切り換えることなく同じとした場合の、各階調における主走査方向の濃度変化を示している。比較例4、5共に、主走査方向の中央部の濃度が端部の濃度より高くなっている。これは、上述した様に、現像スリーブ203の変形による現像特性の変化による。なお、本実施形態では、1つのトナー残量閾値(25%)により、2つの濃度補正情報の切替を行うものとしたが、複数のトナー残量閾値により、複数(3つ以上)の濃度補正情報の切替を行うものとすることもできる。
【0064】
<第六実施形態>
続いて、第六実施形態について、第五実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態において、現像部は、現像剤として非磁性一成分トナーを使用する接触現像方式を使用する構成である。接触現像方式においても、主走査方向において濃度差が生じる。これは、摩擦によるトナーの電荷が中央部よりも端部の方が高くなり易いからである。結果、主走査方向の中央部に比べて端部の画像濃度が低くなり易い。
【0065】
さらに、接触現像方式では、現像部の使用状況に応じて主走査方向における濃度差は変化する。接触現像方式では、感光体4と現像スリーブ203とを接触させ、かつ、現像スリーブ203と感光体4の回転速度には差を設ける。したがって、使用により、感光体4の表層が削れてゆく。ここで、感光体4は、薄層のアルミニウム材を基材としており、若干、撓むことから、主走査方向の中央に比べて端部の削れる量が多くなる。削れる量の多い部分は、感光体4の静電容量が増加し、帯電部による帯電電位の絶対値が高くなる(本例では、帯電電位は負の値)。帯電電位が高くなると、露光電位の絶対値も高くなる(本実施例では、露光電位は負の値)。結果、削れた部分は現像電位とのコントラストが小さくなり、画像濃度は薄くなる。
【0066】
つまり、接触現像方式の現像部では、現像スリーブ203と感光体4の回転時間が長くなると、主走査方向の中央部に比べて端部の画像濃度は減少する。よって、本実施形態では、現像スリーブ203の回転時間による現像特性の変化を考慮した上で、画像濃度が主走査方向で一定となるように、濃度補正条件を設定する。具体的には、現像スリーブ203の累積回転時間が所定時間となるまでの間に使用する第1濃度補正条件と、現像スリーブ203の累積回転時間が所定時間を超えると使用する第2濃度補正条件を予め決定する。第2濃度補正条件は、第1濃度補正条件と比較して、中央部の補正後の階調値が低くなるようにする。なお、累積回転時間の閾値を複数設け、3つ以上の濃度補正条件から累積回転時間に応じて選択した1つの濃度補正条件を使用する構成とすることもできる。
【0067】
<第七実施形態>
続いて、第六実施形態について第七実施形態との相違点を中心に説明する。第六実施形態で説明した様に、接触現像方式の現像部では、トナーの摩擦による帯電電荷は中央部よりも端部の方が多くなり、よって、中央部に比べて端部の画像濃度が低くなり易い。これは、トナー容器206内において、現像スリーブ203の端部付近のトナーは、中央側に比べて流動速度が小さくならかである。ここで、トナーの流動性は、温度特性をもっている。具体的には、画像形成装置の使用雰囲気環境が高温環境下にある場合や、画像形成装置の使用が続いて機内の温度が高くなると、トナーの流動性は低下する。結果、中央部に比べて端部の画像濃度が低くなる。
【0068】
よって、本実施形態では、トナーの使用温度状態を考慮した上で、印刷される画像濃度が主走査方向で一定となるように濃度補正条件を設定する。例えば、温湿度センサの検知温度が27度を上回ると、濃度補正条件を切り換えて、中央部の画像濃度が薄くなるようにする。また、第六実施形態と第七実施形態とを合わせて、温度と累積回転時間に基づき、使用する濃度補正条件を複数の濃度補正条件から選択する構成とすることもできる。
【0069】
<その他の実施例>
本発明の種々の実施形態について、モノクロ画像形成装置を用いて説明した。しかしながら、中間転写方式やタンデム転写方式のカラー画像形成装置などに対しても本発明を適用できる。
【0070】
また、第一実施形態では、輝度補正と濃度補正を合わせて、スポット径の差による感光体4の電位差を抑制していた。ここで、スポット径の変化は、光走査装置400の構成に依存し、主走査方向の端部において最大になるとは限らない。
図23にスポット径の像高依存性を示す。典型的には、スポット径の像高依存性は、
図23(A)に示す様に、主走査方向の端部において最大となる。しかしながら、光走査装置400を構成する部材のアライメントによっては、
図23(B)に示す様に、主走査方向の中央から端部に向けて一旦増加し、その後、減少する場合もあり得る。このような場合には、スポット径が大きい像高で光量を小さくするような補正を行えばよい。
【0071】
また、第三実施形態については、ジャンピング現像方式の現像部208を例にして説明を行った。しかしながら、接触現像等の類似の現像方式においても同様の効果が得られ、本発明を適用できる。また、上述した各実施形態では、走査線を主走査方向に沿った7つの領域に分割し、濃度補正情報は、各領域の階調値の補正量を示すものであった。しかしながら、分割する領域数は、7つに限定されず、2つ以上の任意の数を使用することができる。なお、上記各実施形態の任意の組み合わせの可能であり得る。
【0072】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0073】
4:感光体、101z:濃度補正処理部、101a:中間調処理部、400:光走査装置、208:現像部