(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20241011BHJP
B62J 17/10 20200101ALI20241011BHJP
【FI】
B62J23/00 C
B62J17/10
(21)【出願番号】P 2022205309
(22)【出願日】2022-12-22
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩平
(72)【発明者】
【氏名】高柴 宏明
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/179703(WO,A1)
【文献】特開2013-075585(JP,A)
【文献】特開2014-069772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00
B62J 17/10
B62J 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(29)と、前記燃料タンク(29)に配されるタンクシュラウド(52)と、を有する鞍乗り型車両において、
前記タンクシュラウド(52)には、前記燃料タンク(29)の前端よりも前方内面
(72)側に段差部(74)が設けられ
、
前記段差部(74)は、
前記タンクシュラウド(52)の前端部において、前記前方内面(72)の前端部が車幅方向外側に向かって窪むことで形成され、
前記前方内面(72)の他の部分よりも車幅方向に窪む凹面(75)と、
前記凹面(75)の後縁(75a)から車幅方向の中央側に向かって起立する面である起立面(77)と、
を備える
ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記段差部(74)は、車両側面視でヘッドライトユニット(34)の上下幅の範囲内に少なくとも一部が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ヘッドライトユニット(34)は、正面視でフロントフォーク(14)と幅方向に重なる
ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記段差部(74)は、車幅方向で、前記フロントフォーク(14)よりも外側に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記タンクシュラウド(52)の後方には、サイドパネル(90)が設けられ、
前記タンクシュラウド(52)と前記サイドパネル(90)との間には、ミドルパネル(80)が設けられ、
前記タンクシュラウド(52)と前記ミドルパネル(80)とで排風口(97)が形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記ミドルパネル(80)は、前記タンクシュラウド(52)の下縁(63)の延長線に連なる下縁部(87)と、前記下縁部(87)から上方に立ち上がる立ち上がり部(82)と、前記立ち上がり部(82)から後ろ上方に延びる後ろ斜め部(84)と、前記後ろ斜め部(84)から後方に略水平に延びる略水平部(86)と、からなる形状であり、
前記排風口(97)は、前記後ろ斜め部(84)の前方に設けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両においては、外観品質の向上と、車両走行時における空気抵抗の低減を図る車体カバーの技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、燃料タンクの前部側方を覆うサイドカウルは、燃料タンクの側部前方から燃料タンクの側面に向かって延出するカウル主部を有する第1カウル部材と、少なくとも一部が第1カウル部材の裏面側に重なって配置される第2カウル部材と、を備えている。第2カウル部材は、第1カウル部材の裏面側に重なった状態で、後部領域内の空間を前方から遮蔽する前方遮蔽部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のサイドカウルは、燃料タンクの前部側方を覆うタンクシュラウドとして機能する。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、鞍乗り型車両の走行時に、サイドカウルの内側に入り込む風の風速が十分に低下されない場合があった。
本発明は、タンクシュラウドの内側に入り込む風の風速を低下できる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両は、を有する鞍乗り型車両において、前記タンクシュラウド(52)には、前記燃料タンク(29)の前端よりも前方内面(72)側に段差部(74)が設けられ、前記段差部(74)は、前記タンクシュラウド(52)の前端部において、前記前方内面(72)の前端部が車幅方向外側に向かって窪むことで形成され、前記前方内面(72)の他の部分よりも車幅方向に窪む凹面(75)と、前記凹面(75)の後縁(75a)から車幅方向の中央側に向かって起立する面である起立面(77)と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
タンクシュラウドの内側に入り込む風の風速を低下できる鞍乗り型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】ヘッドライトユニットの周辺を示す鞍乗り型車両の正面図である。
【
図5】インナーカバーと、吸気ダクトとを示す斜視図である。
【
図7】タンクシュラウドとミドルパネルとサイドパネルとを示す側面図である。
【
図9】タンクシュラウドの正面図に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
図2は、ヘッドライトユニット34の周辺を示す鞍乗り型車両10の正面図である。
図1、
図2に示すように、鞍乗り型車両10は、左右一対のフロントフォーク14を備える。左右一対のフロントフォーク14は、トップブリッジ31及びボトムブリッジ32により、車幅方向に連結される。
図1に示すように、トップブリッジ31及びボトムブリッジ32の車幅方向中央部には、ヘッドパイプ18に回動可能に連結されるステムシャフト33が支持される。
【0016】
図2に示すように、フロントフォーク14の上部前方には、ヘッドライトユニット34が支持される。ヘッドライトユニット34は、正面視でヘッドライトユニット34の略中央に配置されるレンズ36と、正面視でレンズ36の周方向全体と、背面とを形成するライトカバー38とを備える。
【0017】
図1、
図2に示すように、本実施の形態では、ヘッドライトユニット34は、上端がトップブリッジ31と略同一の高さに位置し、下端がボトムブリッジ32より下方に位置する。加えて、ヘッドライトユニット34は、正面視で、車幅方向において、フロントフォーク14に重なる位置に配置される。すなわち、ヘッドライトユニット34は、トップブリッジ31とボトムブリッジ32との間に位置するフロントフォーク14の所定箇所を前方から覆う。
【0018】
図1、
図2では、車体の前後方向、及び水平方向に沿って、ヘッドライトユニット34の上端と、下端とを通り、車体の前後方向、及び水平方向に沿って延びる仮想線L1、L2で示す。本実施の形態では、仮想線L1、L2で囲まれる幅寸法を、ヘッドライトユニット34の上下幅とする。
【0019】
ヘッドライトユニット34の上方には、左右に一対のウインカ45が設けられる。左右のウインカ45は、左右対称に形成される。ウインカ45は、ヘッドライトユニット34の後方、且つトップブリッジ31の前方に位置する。
ウインカ45の上方には、後上がりに延びる板状のスクリーン39が設けられる。
【0020】
図3は、本実施の形態の要部を示す鞍乗り型車両10の側面図である。
図3では、アウターシュラウド54と、ミドルパネル80とを省略して示す。
図3では、タンクシュラウド52に入り込んだ走行風Wを一点鎖線で示す。
図4は、
図2のIV-IV線で切断された断面図である。
図1、
図3に示すように、本実施の形態では、フロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びるメインフレーム19aを備える。
燃料タンク29は、フロントフレーム19の上方に設けられる。詳細には、燃料タンク29は、ヘッドパイプ18から後ろ下がりに延びるメインフレーム19aの上方に配置される。
図4に示すように、燃料タンク29の天面には、給油口30が設けられる。給油口30の近傍において、燃料タンク29の上部からは、ブリーザホース49が延びる。
【0021】
図3、
図4に示すように、示すように、燃料タンク29の下方には、エアクリーナケース40が設けられる。エアクリーナケース40は、燃料タンク29の下方のメインフレーム19aよりも下方に配置される。換言すれば、エアクリーナケース40は、メインフレーム19aを挟んで燃料タンク29の反対側に配置される。エアクリーナケース40には、吸気ダクト42が設けられる。吸気ダクト42は、後方に向かって開口する開口43を備える。
【0022】
図3に示すように、メインフレーム19aの車幅方向外側には、インナーカバー120が設けられる。具体的には、
図4に示すように、インナーカバー120は、メインフレーム19aの側方に車幅方向外側から対向し、燃料タンク29の前端と略同一の位置から、シート17まで延びる板状の部材である。インナーカバー120には、メインフレーム19aに対向する平面部120aが形成されている。インナーカバー120は、燃料タンク29の下部と、エアクリーナケース40を車幅方向の外方から覆う。インナーカバー120の前端には、ブリーザホース49の端部が固定される。
【0023】
図3、
図4に示すように、インナーカバー120には、インナーカバー120の板厚方向、換言すれば車幅方向に沿って貫通する貫通孔であるカバー孔121が設けられる。カバー孔121は、エアクリーナケース40の後方に位置する。
【0024】
図5は、インナーカバー120と吸気ダクト42とを示す斜視図である。
図5に示すように、カバー孔121の内周縁のうち、後方側に位置する縁部には、車幅方向の中央側に向かって起立する導風壁122が設けられる。導風壁122は、車体の前方に対向する面を備える。
カバー孔121の内周縁のうち、前方側に位置する縁部には、吸気ダクト42が固定される固定部42aが設けられる。これによって、吸気ダクト42の開口43が導風壁122に対向する位置に配置される。
【0025】
図3に示すように、鞍乗り型車両10が走行する場合、走行風Wが生じる。車両前方から車体内部に流れ込んだ走行風W、すなわち空気の一部は、導風壁122に突き当たることで、当該導風壁122に対向する開口43に案内される。案内された空気は、吸気ダクト42の開口43を介して、エアクリーナケース40に流れ込む。
このように、鞍乗り型車両10では、導風壁122が設けられることで、より効率よく空気をエアクリーナケース40に導入することができる。
【0026】
図3、
図4に示すように、メインフレーム19aと、インナーカバー120の後端120bは、サイドカバー110によって車幅方向の外方から覆われる。サイドカバー110は、シート17の前端側の下方に配置され、鞍乗り型車両10の外観側面を形成するカバーである。サイドカバー110は、インナーカバー120の後端120bと、リアフレーム20に取り付けられて支持される。
【0027】
サイドカバー110には、前端部を車幅方向の外方から覆うサイドパネル90が取り付けられる。サイドパネル90は、サイドカバー110と共に、シート17の前端部の下方に配置され、鞍乗り型車両10の外観側面を形成するカバーである。サイドパネル90は、車体側面視で、上下方向に所定の幅寸法を備え、シート17の下方から前方に向かって延びる。サイドパネル90は、サイドカバー110の前端側と、インナーカバー120の後端とに取り付けられて支持される。
【0028】
図6は、鞍乗り型車両10の側面図である。
図6では、アウターシュラウド54を省略して示す。
図6では、タンクシュラウド52に入り込んだ走行風Wを一点鎖線で示す。
鞍乗り型車両10において、サイドパネル90の前方には、ミドルパネル80が設けられる。
ミドルパネル80は、車体側面視で、下方側から上方に延びるにつれて、前方側に延びた後に、後方側に延びることで湾曲する、略L字に形成される。換言すれば、タンクシュラウド52は、車幅方向から視て、下方側且つ後方側が切り欠かれた形状に形成される。
【0029】
ミドルパネル80は、前端が尖った形状を備える。ミドルパネル80の前端には、突出形状の頂部から上方且つ後方に延びる前端上縁81と、当該頂部から下方且つ後方に延びる前端下縁83とが設けられる。
前端上縁81の後端には、ミドルパネル80の上端に位置する縁部である上縁85が連続する。上縁85は、前端上縁81の後端から後方に向かって延びる。
前端下縁83の後端には、ミドルパネル80の下端に位置する縁部である下縁87が連続する。下縁87は、後方に延びる。下縁87は、上縁85よりも長さ寸法が短く形成される。
【0030】
上縁85の後端には、ミドルパネル80の後端に位置する縁部である後縁89が連続する。後縁89は、シート17に隣接し、上縁85の後端から下方に向かって所定の長さ寸法で延びる。
下縁87と、後縁89とは、湾曲縁91によって連結される。湾曲縁91は、下縁87の後端から、上方且つ前方側に傾斜して延びた後に、上方且つ後方に傾斜して延び、さらに後方に向かって略水平に延びることで後縁89の下端に連結される。
【0031】
ミドルパネル80は、湾曲縁91がサイドパネル90の前縁及び上縁に隣接するようにインナーカバー120に取り付けられる。ミドルパネル80と、サイドパネル90とは、面一となるようにインナーカバー120に取り付けられ、鞍乗り型車両10の側面を形成する。
【0032】
ミドルパネル80は、車体の外方に向かって膨出する形状を備える。ミドルパネル80は、下縁87から車体の上方に立ち上がる立ち上がり部82と、立ち上がり部82から車体の後方且つ上方に延びる後ろ斜め部84と、後ろ斜め部84から車体の後方に略水平に延びる略水平部86とを備える。
【0033】
立ち上がり部82は、下縁87から上方に向かうにつれて、車幅方向外側に傾斜する傾斜面を形成する。
後ろ斜め部84は、車体の上下方向及び前後方向に水平な平面を形成する。
略水平部86は、車体の後方に向かうにつれて、車幅方向の中央側に向かって傾斜する傾斜面を形成する。
立ち上がり部82と後ろ斜め部84との接続箇所には、稜線93が形成され、後ろ斜め部84と、略水平部86との接続箇所には、稜線95が形成される。稜線93と、稜線95とは、車幅方向において、ミドルパネル80の外側面の頂部を形成する。
【0034】
前端下縁83は、立ち上がり部82の前端に位置する縁部を形成する。前端上縁81は、後ろ斜め部84の前端に位置する縁部を形成する。
ミドルパネル80には、前端上縁81、及び上縁85からミドルパネル80の外方に向かって延びる板状の延出部88が設けられる。
前端上縁81には、当該前端上縁81が延びる方向全体に亘って、車幅方向における略中央、及び後方に向かって窪む凹部79が設けられる。
【0035】
図7は、車体の右側に位置するタンクシュラウド52とミドルパネル80とサイドパネル90とを示す側面図である。
図7では、タンクシュラウド52に入り込んだ走行風Wを一点鎖線で示す。
図7に示すように、車幅方向から視て、ミドルパネル80の前方には、タンクシュラウド52が設けられる。
【0036】
図4に示すように、タンクシュラウド52は、インナーカバー120の前端側に取り付けられ、燃料タンク29の車幅方向における外側に配置される。
燃料タンク29は、一対のタンクシュラウド52と、タンクカバー50とによって覆われる。
タンクカバー50は、車幅方向略中央に配置され、燃料タンク29の前面の略中央から、天面を通り、シート17の前端まで延びるパネル状の部材である。燃料タンク29は、このタンクカバー50によって、上部が覆われる。
【0037】
一対のタンクシュラウド52は、タンクカバー50の左右に配置され、燃料タンク29を左右から覆う。タンクシュラウド52は、車体の上下方向において、燃料タンク29の天面から、燃料タンク29の側面を覆うと共に、エアクリーナケース40の側方にまで延び、エアクリーナケース40の上部側を側方から覆う。
【0038】
図7に示すように、タンクシュラウド52は、前端下縁83と、前端上縁81と、上縁85とに沿って、略L字に湾曲して形成されるパネル部材である。タンクシュラウド52は、ミドルパネル80と同様に、車幅方向から視て、下方側から上方に延びるにつれて、前方側に延びた後に、後方側に延びることで湾曲する。換言すれば、タンクシュラウド52は、車幅方向から視て、下方側且つ後方側が切り欠かれた形状に形成される。
【0039】
タンクシュラウド52は、燃料タンク29を挟んで、左右対称に形成される。
図4、
図7に示すように、タンクシュラウド52は、車体の外側面を形成するアウターシュラウド54と、アウターシュラウド54の車幅方向内側に位置し、燃料タンク29の前面側を覆うインナーシュラウド56とを備える。
【0040】
アウターシュラウド54は、車幅方向から視て、前端が楔型に突出する形状を備える。アウターシュラウド54の前端には、突出形状の頂部である先端55と、当該先端55から上方且つ後方に延びる前端上縁57と、先端55から下方且つ後方に延びる前端下縁59とが設けられる。前端上縁57と、前端下縁59とは、アウターシュラウド54の前端側の縁部を形成する。
図1に示すように、先端55は、ボトムブリッジ32の左右にまで延びる。
図4に示すように、アウターシュラウド54において、前端上縁57と、前端下縁59とは、燃料タンク29よりも前方側に位置する。
【0041】
図7に示すように、前端上縁57の後端には、車幅方向中央側に向かって延びる上面縁67が連続する。上面縁67は、タンクカバー50の前端部まで延びる。当該上面縁67は、前端上縁57が連続する端部とは反対側に位置する端部に、アウターシュラウド54の上端及び後端の縁部である上縁61が連続する。上縁61は、タンクカバー50に沿って後方に延びた後、傾斜しながら下方に延び、シート17の前端付近まで延びる。
【0042】
前端下縁59の後端には、アウターシュラウド54の下端の縁部である下縁63が連続する。下縁63は、下縁87に連続すると共に、下縁87と略同一方向に延びる。下縁63は、上縁61よりも長さ寸法が短く形成される。
【0043】
上縁61と、下縁63とは、アウターシュラウド54の後方側の縁部である湾曲縁65によって連結される。湾曲縁65は、下縁63の後端から、上方且つ前方側に傾斜して延びた後に、上方且つ後方に傾斜して延び、さらに後方に向かって略水平に延びることで上縁61の下端に連結される。湾曲縁65は、前端下縁83と、前端上縁81と、上縁85とに沿うように延びる。
【0044】
図7に示すように、ミドルパネル80は、アウターシュラウド54と共に、鞍乗り型車両10の面一の側面を形成するように設けられる。詳述すると、延出部88は、アウターシュラウド54によって覆われる。この場合、前端下縁83と、前端上縁81と、上縁85とが湾曲縁65に当接する。
延出部88は、アウターシュラウド54によって覆われる。
【0045】
図8は、
図7のVIII-VIII断面図である。
上述のように、前端上縁81には、凹部79が設けられるため、前端上縁81と、湾曲縁65との間には、間隙ができる。
詳述すると、
図7、
図8に示すように、ミドルパネル80と、アウターシュラウド54とで形成される面一の側面には、湾曲縁65と、前端上縁81とで囲まれることで形成される排風口97が設けられる。
排風口97は、前後方向に沿って開口し、タンクシュラウド52、及びミドルパネル80の内側と外側とを連通させる。この排風口97は、タンクシュラウド52の内側に入り込んだ空気を排出する排出口として機能する。
【0046】
このように、鞍乗り型車両10では、湾曲縁65と、前端上縁81とで排風口97が形成される。これによって、鞍乗り型車両10では、後方に向かうにつれて上方に延びるように傾斜する長孔状に排風口97が形成されるため、当該排風口97を外部から目立たせることなく設けることができる。このため鞍乗り型車両10では、意匠性を向上できる。
また、上述の通り、鞍乗り型車両10では、車両側面がタンクシュラウド52と、ミドルパネル80と、サイドパネル90との複数のパネル部材によって形成される。すなわち、鞍乗り型車両10では、外装部品同士の間に排風口97が設けられる。これによって、鞍乗り型車両10では、異なる凹部79が設けられたミドルパネル80を交換することで、異なる形状の排風口97を容易に設けることができる。
【0047】
アウターシュラウド54は、車体の外方に向かって膨出する形状を備える。アウターシュラウド54において、車体の外方に位置する側面は、前端上部面60と、前端下部面62と後部面64と、上部面66とを備える。
前端上部面60は、アウターシュラウド54の前端の上方側で、上方に向かうにつれて、車幅方向における中央側に傾斜する傾斜面である。
前端下部面62は、アウターシュラウド54の前端の下方側で、下方に向かうにつれて車体中央側に傾斜する傾斜面である。
【0048】
後部面64は、前端上部面60、及び前端下部面62よりも後方に位置し、湾曲縁65に沿って湾曲する面である。後部面64は、前端上部面60、前端下部面62、及び上縁61から、湾曲縁65に向かって、車幅方向における中央側に傾斜する傾斜面である。
前端上部面60と前端下部面62との接続箇所には、稜線68が形成され、前端上部面60、及び前端下部面62と、後部面64との接続箇所には、稜線69が形成される。稜線68と、稜線69とは、車幅方向において、アウターシュラウド54の外側面の頂部を形成する。
【0049】
図9は、タンクシュラウド52の正面図に対応する図である。
図9に示すように、アウターシュラウド54は、燃料タンク29の上方を覆う上部面66を備える。上部面66は、前端上部面60と、後部面64との上端に連続する。上部面66の前端には、縁部である上面縁67が配置される。上部面66の車幅方向中央側には、縁部である上縁61が配置される。上縁61は、タンクカバー50に当接する。これによって、前端上部面60は、タンクカバー50に連続する。
【0050】
図4に示すように、インナーシュラウド56は、タンクシュラウド52の前端側に設けられ、燃料タンク29よりも前方側に配置される。
図9に示すように、インナーシュラウド56は、燃料タンク29の前面側に位置する流入面部70と、流入面部70とアウターシュラウド54とを連結する連結面部72と、を備える。
【0051】
流入面部70は、燃料タンク29の前面に対向して配置される。流入面部70は、タンクシュラウド52の上部に設けられ、下端がエアクリーナケース40よりも上方に位置する。流入面部70は、下方から上方に向かうにつれて後方に傾斜する傾斜面である。
車体の正面視で、一対の流入面部70は、燃料タンク29を挟んで互いに所定の距離を開けて配置される。車体の前面視で、一対の流入面部70の間、且つ流入面部70の上端側には、タンクカバー50が位置する。
【0052】
流入面部70には、燃料タンク29側に窪んだ箇所から前方に向かってリブ状に膨出することで形成される複数のリブ73が設けられる。
流入面部70には、車体の前後方向に貫通する貫通孔である流入孔71が複数設けられる。流入孔71は、リブ73の各々に設けられる。流入孔71は、車幅方向に延びる長孔状に形成される。流入面部70において、複数の流入孔71は、車幅方向外側に位置し、上下方向に沿って並ぶように設けられる。
流入面部70は、上端に位置する縁部である流入上縁76と、車幅方向の外側に位置する側部である流入側縁78とを備える。
【0053】
連結面部72は、流入上縁76から、流入側縁78に亘って、前方に起立する湾曲面状に形成される。
連結面部72の内、流入上縁76から起立する箇所は、タンクカバー50の前端側に位置する縁部と、上部面66の前端に位置する縁部である上面縁67とに連結される。
連結面部72の内、流入側縁78から起立する箇所は、前端上縁57の全体と、前端下縁59の上部とに連結される。
【0054】
上面縁67と、前端上縁57の全体と、前端下縁59とは、車体の前面視で、流入面部70よりも外方に位置する。このため、連結面部72は、アウターシュラウド54から流入面部70に向かうにつれて、車体の内側に向かって傾斜する傾斜面となる。
また、連結面部72は、タンクシュラウド52において、車幅方向中央側に向かう内面を形成する。
【0055】
図10は、段差部74を示す車幅方向中央部から右側に見た図である。
図10に示すように、連結面部72の前端には、車幅方向外側に向かって窪む凹形状である、段差部74が設けられる。段差部74は、所定の幅寸法で、連結面部72の前端に沿って形成される。
図10に示すように、段差部74は、流入面部70よりも前方に設けられる。
【0056】
図9、
図10に示すように、段差部74は、凹面75と、起立面77とを備える。凹面75は、連結面部72の他の部分に対して凹んだ部分である。凹面75は、上下方向沿って延びている。
図9に示すように、凹面75の前後方向に沿った幅寸法は、連結面部72の前後方向に沿って最も幅寸法が短い箇所の略半分程度の寸法である。
【0057】
凹面75は、前端上縁57から連続し、前端上縁57と凹面後縁75aとで、凹面75の外周周縁が形成される。換言すれば、凹面75は、連結面部72のうち、前端上縁57と凹面後縁75aとで囲まれた範囲である。
凹面後縁75aは、前端上縁57と、凹面後縁とで囲まれる先端55から後方に向かって所定の長さ寸法で略水平に延びた後に、前端上縁57に沿って上方に延び、前端上縁57の後端付近で略垂直に上方に延びて、前端上縁57の後端に連続する。
【0058】
起立面77は、凹面後縁75aから車幅方向の中央側に向かって起立する面である。起立面77は、凹面75から連結面部72の上面に向かうにつれて、還元すれば車体中央に向かうにつれて、後方に向かって傾斜する傾斜面となるように形成される。
【0059】
上述のように、起立面77は、凹面後縁75aから起立する。このため、起立面77の上端側は、後方に進むにつれて下方に傾斜するように延び、起立面77の下端側は、後方に進むにつれて上方に傾斜するように延びる。すなわち、起立面77は、前面視で、長手方向における両端が流入孔71に向かうように形成される。
図2に示すように、段差部74は、正面視で、ヘッドライトユニット34、及びフロントフォーク14よりも車幅方向外側に配置される。
【0060】
鞍乗り型車両10が走行すると、所謂走行風Wが生じ、走行風Wの一部は、ヘッドライトユニット34に当たった後、左右方向に分流しつつ後方に流れる。すなわち、鞍乗り型車両10において、前方から鞍乗り型車両10に向かって流れる空気は、ヘッドライトユニット34に当たると、フロントフォーク14よりも車幅方向外側に流れる。
【0061】
ヘッドライトユニット34の前面を流れた空気は、タンクシュラウド52に向かう。
図1、
図2に示すように、タンクシュラウド52の前端、且つ車幅方向中央側に向かう内面である連結面部72には、段差部74が設けられる。当該段差部74は、上述の通り、正面視で、ヘッドライトユニット34、及びフロントフォーク14よりも車幅方向外側に配置される。
ヘッドライトユニット34の前面からヘッドライトユニット34の側面を流れた空気の少なくとも一部は、段差部74の起立面77に突き当たった後に、当該起立面77を越えて、流入面部70に向かう。
【0062】
これによって、鞍乗り型車両10では、起立面77を越えさせることで、タンクシュラウド52に向かう走行風Wの風速、換言すれば、タンクシュラウド52に流れ込む空気の流速を低減することができる。このため、鞍乗り型車両10では、タンクシュラウド52の内部における圧力を低減できる。
【0063】
また、起立面77は、後方に向かって傾斜し、起立面77の上下の端部は、流入孔71に向かうように正面視で傾斜する。これによって、タンクシュラウド52では、段差部74を前後方向に越える空気を流入孔71に誘導することが可能である。
【0064】
流入面部70に向かう空気の少なくとも一部は、流入孔71からタンクシュラウド52の内部に入り込む。
図6、
図7に示すように、タンクシュラウド52の内部に入り込んだ空気は、車体後方に向かって流れ、少なくとも一部が排風口97を介して、タンクシュラウド52の外部に排出される。
このように、鞍乗り型車両10では、タンクシュラウド52の内部に入り込んだ空気を外部に排出できるため、車体に係る走行風Wの整流効果を向上させることができる。
【0065】
加えて、上述のように、タンクシュラウド52の内部に入り込んだ空気の一部は、導風壁122に突き当たることで、当該導風壁122に対向する開口43に案内され、吸気ダクト42の開口43を介して、エアクリーナケース40に流れ込む。
【0066】
上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0067】
例えば、上述した実施の形態では、ミドルパネル80と、サイドパネル90とは、別体に設けられるとした。しかしながらこれに限らず、ミドルパネル80と、サイドパネル90とは、一体に設けられてもよい。
また例えば、ミドルパネル80は、排風口97を形成可能であれば、複数の部材で形成されてもよい。
【0068】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の形状は、特段の断りがない限り、それら方向や形状と同じ作用効果を奏する所謂均等の範囲を含む。
【0069】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0070】
(構成1)燃料タンクと、前記燃料タンクに配されるタンクシュラウドと、を有する鞍乗り型車両において、前記タンクシュラウドには、前記燃料タンクの前端よりも前方内面側に段差部が設けられることを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、鞍乗り型車両では、走行風の風速を低減させることができる。これにより、鞍乗り型車両では、タンクシュラウドの内面側の圧力を下げることができる。
【0071】
(構成2)前記段差部は、車両側面視でヘッドライトユニットの上下幅の範囲内に少なくとも一部が形成されることを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、鞍乗り型車両では、ヘッドライトユニットの側面を通過した風の流速を低減させることができる。これにより、鞍乗り型車両では、タンクシュラウドの内面側の圧力を下げることができる。
【0072】
(構成3)前記ヘッドライトユニットは、正面視で前記フロントフォークと幅方向に重なることを特徴とする構成2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、鞍乗り型車両では、フロントフォークよりも外側に走行風を流すことができる。これにより、鞍乗り型車両では、段差部により、タンクシュラウド内部に到達する走行風の流速を低下させることができる。
【0073】
(構成4)前記段差部は、前記車幅方向で、前記フロントフォークよりも外側に設けられることを特徴とする構成3に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、フロントフォークよりも外側に流れる走行風を段差部により減速させる。これにより、鞍乗り型車両では、ヘッドライトの側方を通った風の流速を抑えることができる。
【0074】
(構成5)前記タンクシュラウドの後方には、サイドパネルが設けられ、前記タンクシュラウドと前記サイドパネルとの間には、ミドルパネルが設けられ、前記タンクシュラウドと前記ミドルパネルとで排風口が形成されることを特徴とする構成1から構成4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、鞍乗り型車両では、シュラウド内部に入った風を外部に流せるため、整流効果を向上させることができる。さらに、鞍乗り型車両では、外装部品同士の隣接部に排風口を設けるため、パネルを交換するだけで排風口の大きさを変更することができる。
【0075】
(構成6)前記ミドルパネルは、前記タンクシュラウドの下縁の延長線に連なる下縁部と、前記下縁部から上方に立ち上がる立ち上がり部と、前記立ち上がり部から後ろ上方に延びる後ろ斜め部と、前記後ろ斜め部から後方に略水平に延びる略水平部と、からなる形状であり、前記排風口は、前記後ろ斜め部の前方に設けられることを特徴とする構成5に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、鞍乗り型車両では、排風口を斜め部分に形成することにより、外観上目立たせることなく、当該排風口を形成することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム
14 フロントフォーク
29 燃料タンク
34 ヘッドライトユニット
40 エアクリーナケース
42 吸気ダクト
43 開口
50 タンクカバー
52 タンクシュラウド
54 アウターシュラウド
56 インナーシュラウド
71 流入孔
74 段差部
75 凹面
77 起立面
79 凹部
80 ミドルパネル
82 立ち上がり部
84 後ろ斜め部
86 略水平部
87 下縁
90 サイドパネル
97 排風口
110 サイドカバー
120 インナーカバー
122 導風壁