(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】流体研磨機、ワークピースの材料除去を確認する方法、および粉砕媒体の切削力を決定する方法
(51)【国際特許分類】
B24B 31/00 20060101AFI20241011BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B24B31/00 C
B24B49/10
(21)【出願番号】P 2022506454
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071527
(87)【国際公開番号】W WO2021019024
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】102019120753.3
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522041293
【氏名又は名称】イクストゥルゥードゥ ホーネ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォズニアック、ファビオ アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】マット、パトリック
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-518444(JP,A)
【文献】特開昭59-175942(JP,A)
【文献】実開昭58-031945(JP,U)
【文献】国際公開第2018/199312(WO,A1)
【文献】特開平05-154833(JP,A)
【文献】特開昭52-016095(JP,A)
【文献】特開昭53-004290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0234606(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-51/00
B23Q17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(12)の表面全域にわたっておよび/または前記ワークピース(12)の開口部(16)を通って研磨媒体(14)を移動させるための流体研磨機(10)であって、
前記ワークピース(12)の前記表面全域にわたっておよび/または前記ワークピース(12)の前記開口部(16)を通って流れ方向に前記研磨媒体(14)を移動させるように適合された媒体駆動装置(24)と、
前記ワークピース(12)の両側に配置されるように適合された2つの部品(20、22)を有する、前記ワークピース(12)を取り付けるためのワークピースホルダー(18)と、
前記ワークピース(12)が研磨媒体(14)で機械加工されたときに前記ワークピース(12)で発生する構造物由来の音を測定するための構造物由来の音センサ(36)と、
時間の経過とともに前記構造物由来の音センサによって測定された構造物由来の音の二乗平均平方根の積分測定値に基づいて、前記研磨媒体(14)の切削力および/または前記ワークピース(12)の材料除去率を推測するように適合された評価ユニット(38)と
を備え、
前記評価ユニット(38)は、内部に格納されたルックアップテーブル(39)を有し、前記ルックアップテーブル(39)から前記ワークピース(12)の材料除去および/または前記研磨媒体(14)の切削力が、時間の経過とともに測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根の積分測定値に基づいて読み取られ得るようになっており、前記材料除去率は、前記材料除去の値を機械加工時間で除して得られる、流体研磨機(10)。
【請求項2】
前記評価ユニット(38)は、前記構造物由来の音センサ(36)によって測定された信号を増幅するための増幅器(48)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の流体研磨機(10)。
【請求項3】
前記評価ユニット(38)は、前記構造物由来の音センサ(36)によって測定された信号から機械周波数をフィルタリング除去するための少なくとも1つのフィルタ(52)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体研磨機(10)。
【請求項4】
前記構造物由来の音センサ(36)は、流体研磨機(10)の動作中に前記ワークピース(12)と直接または間接的に接触することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の流体研磨機(10)。
【請求項5】
前記流体研磨機(10)は、流体メインチャネル(15)に平行に延在するバイパスダクト(46)を備え、前記ワークピース(12)は、前記バイパスダクト(46)に配置されたダミーワークピース(12a)であり、前記流体メインチャネル(15)は、機械加工される追加のワークピース(12b)の、表面全域にわたっておよび/または開口部(16)を通って延在することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の流体研磨機(10)。
【請求項6】
前記流体研磨機(10)は、2つの構造物由来の音センサ(36)を備え、前記流体研磨機(10)の動作中に、それぞれの構造物由来の音センサ(36)は、前記バイパスダクト(46)の前記ダミーワークピース(12a)に、および前記機械加工される追加のワークピース(12b)にも配置されることを特徴とする、請求項5に記載の流体研磨機(10)。
【請求項7】
前記流体研磨機(10)は、特に前記ワークピース(12)の加工中に、評価ユニット(38)によって確認された切削力および/または材料除去率に基づいて、少なくとも1つのプロセスパラメータを調整するように適合されたチェックユニット(40)を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の流体研磨機(10)。
【請求項8】
前記チェックユニット(40)によって調整することのできるプロセスパラメータは、前記研磨媒体(14)の流速、前記研磨媒体(14)の流体圧力、前記研磨媒体(14)への背圧、および/または前記研磨媒体(14)の温度であることを特徴とする、請求項7に記載の流体研磨機(10)。
【請求項9】
前記流体研磨機(10)は、摩耗した研磨媒体を流体研磨機(10)から排出し、未使用の研磨媒体を供給するように適合された流体運搬装置を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の流体研磨機(10)。
【請求項10】
ワークピース(12)の材料除去および/または材料除去率を、前記ワークピース(12)が流体研磨機(10)で機械加工されるときに確認する方法であって、
機械加工される前記ワークピース(12)の、表面全域にわたっておよび/または開口部(16)を通して研磨媒体(14)を通過させるステップと、
機械加工中に前記ワークピース(12)で発生する構造物由来の音を測定するステップと、
前記測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根を形成するステップと、
加工時間全体にわたって前記二乗平均平方根を積分するステップと、
加工時間全体にわたっての前記測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根の積分値に基づいて前記ワークピース(12)の材料除去をルックアップテーブルから読み取ることによって、前記ワークピース(12)の前記材料除去および/または前記材料除去率を決定するステップであって、前記材料除去率は、前記材料除去の値を機械加工時間で除して得られる、ステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記研磨媒体(14)の切削力は、前記研磨媒体の流量で除算された、前記構造物由来の音信号の前記積分された二乗平均平方根に基づいて決定された前記材料除去に基づいて決定されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記材料除去率に基づいて、以下のプロセスパラメータ、すなわち、前記研磨媒体(14)の流速、前記研磨媒体(14)の流体圧力、前記研磨媒体(14)への背圧、および/または前記研磨媒体(14)の温度のうちの少なくとも1つが設定されることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記ワークピース(12)の機械加工中に測定された前記材料除去率が、定義された許容値を超えて所望の材料除去率から逸脱する場合、少なくとも1つのプロセスパラメータが調整されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
機械加工されたワークピース(12)の前記材料除去率のプロファイルを評価ユニット(38)に格納することにより、前記材料除去率の所望のプロファイルを表す基準曲線が確立され、前記材料除去率が中にあるべき前記基準曲線の周りの許容範囲が定義されることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記材料除去率の実際のプロファイルが前記許容範囲の外側である場合、前記ワークピース(12)の前記機械加工中に少なくとも1つのプロセスパラメータが調整されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記材料除去率に基づいて、前記研磨媒体(14)の少なくとも一部を交換する要求がなされることを特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ダミーワークピース(12a)上でさらなる構造物由来の音信号がさらに測定され、前記ワークピース(12)の表面仕上げの改善を監視するために2つの前記構造物由来の音信号の差が形成されることを特徴とする、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体研磨機、ワークピースが流体研磨機で機械加工されるときのワークピース上の材料除去および/または材料除去率を確認する方法、および研磨媒体または粉砕媒体の切削力を決定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体研磨機は、圧力下でワークピース全域にわたってまたはワークピースを通って延在する開口部を通して研磨媒体を通過させることによって、研磨媒体がプロセス中にワークピースから材料を除去することにより、ワークピースの研磨加工および研磨仕上げに使用される。研磨媒体は、典型的には、研磨粒子を含む粘性媒体、特にシリコーン系のものである。
【0003】
ワークピースが機械加工されると、研磨媒体の研磨粒子が摩耗し、その結果、研磨媒体の切削力と材料除去率が低下する。また、除去された粒子は研磨媒体に残る。したがって、ワークピースの機械加工は効果が低くなり、予測不可能になる。
【0004】
まだ使用されていない研磨媒体の切削力は一般的に知られている。しかしながら、すでに一定時間使用されている研磨媒体の切削力を決定することは困難である。これは、研磨媒体が摩耗したときに、流体研磨機に存在する研磨媒体の全量が交換されるのではなく、摩耗した研磨媒体の特定の部分だけが取り出されて未使用の研磨媒体に交換されるという事実によってさらに複雑になるため、研磨媒体の切削力に関する正確な情報はいつでも入手できない。
【0005】
経験豊富な使用者は、研磨媒体がまだ十分な切削力を持っているかどうか、または少なくとも部分的に未使用の研磨媒体と交換する必要があるかどうかを手動で感じることができる。しかしながら、そのような切削力の決定は非常に不正確であり、経験の浅い使用者が行うことはほとんどできない。流体研磨機の操作中は、研磨媒体を評価することはできない。
【0006】
研磨媒体の交換が早すぎると、まだ使用可能な研磨媒体が廃棄されるため、コストが増加する。研磨媒体の交換が遅すぎると、ワークピースが十分に研磨されない程度まで材料除去率が低下する可能性があり、これによって品質の悪い部品が製造される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ワークピースの特に効率的な機械加工を可能にする流体研磨機を提供することである。さらに、本発明の目的は、ワークピース上の材料除去および/または材料除去率を確認する方法、ならびに研磨媒体の切削力を決定する方法を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によれば、ワークピースの表面全域にわたっておよび/またはワークピースの開口部を通して研磨媒体を移動させるための流体研磨機であって、ワークピースの表面全域にわたっておよび/またはワークピースの開口部を通して流れ方向に沿って研磨媒体を移動させるように適合された媒体駆動装置を含み、ワークピースの両側に配置されるように適合された2つの部品を有する、ワークピースを取り付けるためのワークピースホルダーを含み、ワークピースが研磨媒体で機械加工されたときにワークピースで発生する構造物由来の音を測定するための構造物由来の音センサを含み、時間の経過とともに構造物由来の音センサによって測定された構造物由来の音の二乗平均平方根の積分測定値に基づいて、研磨媒体の切削力および/またはワークピースの材料除去率を推測するように適合された評価ユニットを含む、流体研磨機によって達成される。
【0009】
構造物由来の音は、例えば、経年変化または温度勾配に起因するのみならず固体が動かされるまたは機械加工されるときに対象となる外部の機械的な力に起因する亀裂の形成または塑性変形の結果として、材料がその内部構造に不可逆的な変化を経験したときに、固体内の音響波および/または弾性波の形で発生する。したがって、機械加工プロセスは、構造物由来の音センサを使用して構造物由来の音信号を測定することによって監視できる。構造物由来の音波の周波数は、特にここでは50kHz~1MHzである。
【0010】
切削力または材料除去率が大きいほど、構造物由来の音信号は強くなる。これは、構造物由来の音信号に基づいて、ワークピースの機械加工が効果的であるかどうかを判断できることを意味する。ここで、構造物由来の音信号の二乗平均平方根と材料除去率との間に高い相関関係がある。特に、構造物由来の音センサによって測定された構造物由来の音の二乗平均平方根は、ワークピースの機械加工中の摩擦エネルギー散逸に関連している。
【0011】
構造物由来の音センサによって時間の経過とともに測定された構造物由来の音の二乗平均平方根の積分測定値は、特定の材料除去に固有のものである。これは、得られた積分測定値を使用して、ワークピースの重量損失を間接的に決定できることを意味する。このようにして、ワークピースの加工中にすでに絶対的な材料除去が決定され得る。積分測定値は、例えば、ミリボルト秒[mV・s]の単位で与えられる。あるいはまた、積分測定値は、ミリアンペア秒[mA・s]の単位でも与えられ得る。
【0012】
重量損失によって、研磨媒体の切削力および/または材料除去率を次いで決定することができる。これにより、特に信頼性の高いプロセス監視とワークピースの特に正確な機械加工が可能になる。二乗平均平方根の積分測定値による材料除去の計算は、材料除去率および切削力について特に正確な値を確認することを可能にすることが見出された。
【0013】
積分は、例えば、構造物由来の音信号の二乗平均平方根の連続値全体にわたって形成される。
【0014】
材料除去率は、特に材料除去の値を加工時間で除算することによって計算される。
【0015】
切削力は、材料除去を媒体の流量で除算することによって確認できる。媒体の流量は、ワークピースの表面全域にわたっておよび/またはワークピースの開口部を通って移動する流体の量に対応する。
【0016】
流量は、研磨媒体の流れ断面積および流速に依存するため、簡単に確認できる。特に、評価ユニットは、設定されたプロセスパラメータに基づいて媒体流量を確認するように構成することができる。流れの断面は既知であり、例えば、機械加工されたワークピースの開口部の断面に対応する。
【0017】
積分測定値を計算するために、適切なソフトウェアが評価ユニットに格納されていることが好ましい。
【0018】
本発明の意味の中での機械加工は、最終製品として製造されるワークピースの意図的な機械加工と、代替としてまたは実際に製造されるワークピースに加えて、試験目的のダミーワークピースの機械加工の両方を指す。例えば、基準値は、所定のダミーワークピースの機械加工を利用して決定される。ここでのダミーワークピースの機械加工は、構造物由来の音信号を測定するためだけに役に立つ。ダミーワークピースは、多数の機械加工操作のために流体研磨機に取り付けられたままになる場合がある。
【0019】
構造物由来の音センサによって測定された構造物由来の音信号をよりよく評価できるようにするために、信号は、さらなる評価の前に整流することができる。そして、整流された信号を使用して、二乗平均平方根を計算できる。
【0020】
ワークピースホルダーは、好ましくは、研磨媒体が移動する流体メインチャネルをシールするための適切なシールを含み、ワークピースの表面の機械加工される部分および/またはワークピースの開口部は、流体メインチャネルの一部である。
【0021】
媒体駆動装置は、例えば、流体メインチャネルを通して研磨媒体を押し出すように適合された少なくとも1つの容積式ポンプを含む。
【0022】
一実施形態によれば、評価ユニットは、内部に格納されたルックアップテーブルを有し、そこから、ワークピースの材料除去および/または研磨媒体の切削力を、時間の経過とともに測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根の積分測定値に基づいて読み取ることができる。ルックアップテーブルに格納されている値は、ワークピースの材料および/または使用されている研磨媒体に固有のものである。したがって、ルックアップテーブルを使用して、材料の除去、特に材料除去率および/または切削力を、特に迅速かつ信頼できる方法で、確認することができる。ルックアップテーブルに格納されている値は、例えば、ハードウェアテストおよび/またはシミュレーションによって決定されたものである。
【0023】
評価ユニットは、構造物由来の音センサによって測定された信号を増幅するための増幅器を含むことができる。このようにして、構造物由来の音信号の信頼できる評価は、構造物由来の音信号が弱い場合、例えば、材料の除去が少量しかない場合でも行うことができる。これにより、研磨媒体の切削力および/または材料除去率を特に高い精度で確認することができる。
【0024】
例えば、評価ユニットには、構造物由来の音センサによって測定された信号から機械周波数をフィルタリング除去するためのフィルタが少なくとも1つ含まれている。したがって、フィルタは、研磨媒体の切削力および/または材料除去率を特に高い精度で確認することができるという事実にも寄与する。
【0025】
フィルタは、好ましくはアナログフィルタである。特に、このフィルタは、構造物由来の音信号から50kHz未満の範囲の低周波数および/または1MHzを超える範囲の高周波数をフィルタリング除去するのに適している。この目的のために、フィルタは、HPフィルタまたはBPフィルタとすることができる。
【0026】
フィルタはすでにアンプに組み込まれている場合もあり、これにより、評価ユニットを特にコンパクトにすることができる。
【0027】
構造物由来の音センサは、流体研磨機の操作中にワークピースと直接または間接的に接触する可能性がある。間接的な接触は、例えば、ワークピースと直接接触している追加の構成要素を介してもたらされ得る。追加の構成要素は、ワークピースの構造物由来の音を構造物由来の音センサに伝達するのに適した材料で作製する必要がある。例えば、アルミニウム製のディスクまたはストリップがこの目的に適している。
【0028】
直接接触には、追加の伝送損失なしに、構造物由来の音信号をワークピースから構造物由来の音センサに伝達できるという利点がある。間接接触は、ワークピースのサイズまたは形状のためにワークピースの直接接触が困難な場合に有利である。
【0029】
一実施形態によれば、流体研磨機は、流体メインチャネルに平行に延在するバイパスダクトを含み、ワークピースは、バイパスダクト内に配置されたダミーワークピースであり、流体メインチャネルは、加工される追加のワークピースの、表面全域にわたっておよび/または開口部を通って延在する。間接接触と同様に、この実施形態は、機械加工されるワークピースが比較的小さく、構造物由来の音センサを機械加工されるワークピース自体に配置することができない場合に適している。
【0030】
さらに、この実施形態は、研磨媒体の切削力が、材料除去率とは無関係に、ダミーワークピース上で測定された構造物由来の音信号に基づいて決定できるという追加の利点を提供する。実際、ダミーワークピースの材料は、ダミーワークピースで材料の除去が全くまたはほとんど起こらないように選択されることが好ましい。その結果、ダミーワークピースは、流体研磨機の動作中にほとんど摩耗せず、追加で加工され得る多数のワークピースを加工するために流体研磨機に取り付けられたままにすることができる。したがって、ダミーワークピースで測定された構造物由来の音信号は、ほぼ例外なく、ダミーワークピース上での研磨媒体の摩擦によって引き起こされ、摩擦は、研磨媒体内の研磨粒子のエッジが鋭いほど、つまり研磨媒体の切削力が優れているほど大きくなる。
【0031】
ダミーワークピースから除去される材料がないか、ごくわずかであっても、本発明の目的では、ダミーワークピースを通る研磨媒体の移動は、ワークピースの機械加工として理解される。
【0032】
流体研磨機はまた、2つの構造物由来の音センサを含むこともでき、流体研磨機の動作中、それぞれの構造物由来の音センサは、バイパスダクト内のダミーワークピースおよび機械加工される追加のワークピースにも配置される。これにより、前述のように、研磨媒体の切削力が、材料の除去とは別にバイパスダクトで分析できる、一方、追加のワークピースで測定される構造物由来の音信号も材料除去率によって影響を受けるので、さらにより正確な評価が可能になる。特に、この実施形態では、2つの異なる信号を測定することができ、2つの信号間の差は、表面の改善と相関している。一定の機械設定が与えられると、それによって媒体の状態または品質と表面の改善の両方を監視できる。
【0033】
好ましくは、流体研磨機は、特にワークピースの機械加工中に、評価ユニットによって確認された切削力および/または材料除去率に基づいて少なくとも1つのプロセスパラメータを調整するように適合されたチェックユニットを含む。このようにして、研磨媒体の切削能力の低下を少なくともある程度補償することができるので、研磨媒体をより長期間利用することができ、またはワークピースは、より効果的に機械加工される。
【0034】
チェックユニットによって調整することができるプロセスパラメータは、例えば、ワークピースの開口部を通る研磨媒体の流速、研磨媒体の流体圧力、研磨媒体への背圧、および/または研磨媒体の温度である。流速を上げることにより、特に研磨媒体の品質が一定のままである場合、材料除去率を上げることができる。研磨媒体の流体圧力および/または研磨媒体への背圧を使用して、ワークピースの表面に対する研磨媒体、特に研磨粒子の接触圧力を調整することができる。温度は研磨媒体の粘度に影響を及ぼし、それが次に研磨媒体の流速に影響を与える可能性がある。
【0035】
任意選択で、流体研磨機は、摩耗した研磨媒体を流体研磨機から排出し、未使用の研磨媒体を供給するように適合された流体輸送装置を含む。そのような流体輸送装置は、研磨媒体が摩耗したときに研磨媒体の自動交換がなされることを可能にする。
【0036】
この目的は、本発明によれば、
機械加工されるワークピースの、表面全域にわたっておよび/または開口部を通して研磨媒体を通過させるステップと、
機械加工中にワークピースで発生する構造物由来の音を測定するステップと、
測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根を形成するステップと、
加工時間全体にわたって二乗平均平方根を積分するステップと、
形成された積分に基づいて、ワークピースの材料除去および/または材料除去率を決定するステップとを含む、ワークピースが流体研磨機で機械加工されるときのワークピースの材料除去および/または材料除去率を確認する方法によってさらに達成される。
【0037】
本発明に係る方法は、流体研磨機でのワークピースの機械加工中に、ワークピースを流体研磨機から取り外す必要なしに、十分な材料除去が行われたかどうかをすでに決定することを可能にする。構造物由来の音信号の二乗平均平方根のみが形成される既知の方法と比較して、構造物由来の音信号の二乗平均平方根の積分を形成することは、行われた絶対的な材料除去が機械加工中の任意の時点で確認できるという利点を有する。除去される材料の量は通常非常に少なく、ワークピースを計量するときに測定誤差が発生するため、本発明に係る方法は、機械加工の前後にワークピースを計量するよりもさらに正確に材料除去を確認するために使用することができる。
【0038】
材料除去率は、特にワークピースの機械加工開始直後の方が後の時点よりも高くなる。ワークピースの表面粗さが小さいほど、除去される材料は少なくなる。材料除去率が一定の場合、これは、ワークピースの機械加工が完了しているか、または流体研磨機に使用されている研磨媒体でワークピースの表面粗さがさらに改善できないことを示している。材料除去率に加えて、構造物由来の音信号の積分された二乗平均平方根を使用して、研磨媒体の切削力を決定することもできる。これにより、研磨媒体の摩耗の程度について結論を導き出すことができる。
【0039】
例えば、材料除去率に基づいて、以下のプロセスパラメータ:研磨媒体の流速、研磨媒体の流体圧力、研磨媒体への背圧、および/または研磨媒体の温度のうちの少なくとも1つが設定される。プロセスパラメータを適切に設定することで、ワークピースを特に効率的に機械加工できる。
【0040】
一実施形態によれば、ワークピースの機械加工中に測定された材料除去率が、定義された許容値を超えて所望の材料除去率から逸脱する場合、少なくとも1つのプロセスパラメータが調整される。これにより、ワークピースの機械加工を特に制御された方法で行うことができる。また、プロセスパラメータを調整することで、機械加工される個々のワークピースの加工時間を一定に保つことができる。これは、プロセスパラメータを調整することにより、研磨媒体の切削能力が低下した場合でも、定義された加工時間内に個々のワークピースを十分に研磨できることを意味する。
【0041】
例えば、材料除去率の所望のプロファイルを説明する基準曲線は、機械加工されたワークピースの材料除去率のプロファイルを評価ユニットに格納することによって確立され、評価ユニットでは、好ましくは材料除去率があるべきである基準曲線に関する許容範囲が定義される。このような基準曲線の構築は、非常に簡単である。このような基準曲線または許容範囲に基づいて、材料除去率が妥当な範囲内にあるかどうか、またはワークピースの効果的な機械加工が実行されているかどうかを監視するのは特に簡単である。
【0042】
基準曲線を確立するのに役立つワークピースは、機械加工プロセスの後に測定されることが好ましい。基準ワークピースが高品質であることが判明した場合、基準曲線が格納される。ワークピースの品質が正常でない場合は、さらなるワークピースを使用してこのプロセスを繰り返す。
【0043】
基準曲線は、例えば、特定の研磨媒体を使用した特定のワークピースの機械加工に固有のものである。異なる形状のワークピースの場合、および/または異なる研磨媒体を使用して機械加工する場合は、それぞれの場合に別個の基準曲線を準備することが好ましい。
【0044】
材料除去率の実際のプロファイルが許容範囲外である場合、好ましくは、ワークピースの機械加工中に少なくとも1つのプロセスパラメータが調整される。このようにして、機械加工プロセスの不規則性に特に迅速に対応することが可能である。
【0045】
基準曲線を格納すること、および/または材料除去率を基準曲線と一致させることは、好ましくは、チェックユニットまたは評価ユニットに格納することができるソフトウェアによって実行される。
【0046】
材料除去率に基づいて、研磨媒体の少なくとも一部を交換するように要求することができる。したがって、使用者は、研磨媒体の切削力がまだ十分であるかどうかを手動でチェックする必要がもはやなくなる。
【0047】
交換の要求は、特に、使用される研磨材料で許容可能な加工時間内にワークピースの所望の表面仕上げを達成できない場合に発生する。
【0048】
前述の構造物由来の音信号に加えて、ダミーワークピース上でさらなる構造物由来の音信号を測定し、ワークピースの表面仕上げの改善を監視するために、2つの構造物由来の音信号の差を形成することができる。これが可能なのは、2つの信号の差が表面の改善と相関しているためである。このようにして、表面の改善をさらにより正確に監視することができる。
【0049】
しかしながら、表面の改善を監視するために、必ずしも2番目の構造物由来の音センサまたはダミーワークピースは必要ない。表面の改善は、機械加工プロセスの開始時に発生する構造物由来の音信号と、機械加工プロセスの終了時に発生する構造物由来の音信号を比較することによって、特に2つの信号の差を形成することによって監視することもできる。
【0050】
さらに、特に2つの構造物由来の音信号の差に基づいて、必要な表面改善を決定するために、ワークピースの機械加工プロセスの開始時に発生する構造物由来の音信号を、直前に製造されたワークピースの終了時に発生する構造物由来の音信号と比較することができる。必要な表面改善に基づいて、材料除去率を考慮して、評価ユニットは、所望の表面改善が達成されるまでの最適な加工時間を確認することができる。このようにして、機械加工プロセスは、特に時間最適化された方法で進行することができる。もちろん、これは、次々に加工される2つのワークピースが同じタイプである場合にのみ適用される。
【0051】
研磨媒体の交換は、手動または自動で行うことができる。例えば、使用者は、研磨媒体の所定の部分を手動で交換する要求を受け取ることができる。あるいはまた、自動交換が行われている間、研磨媒体の交換が行われているという表示のみが提供することができる。
【0052】
自動交換は、例えば、摩耗した研磨媒体を流体研磨機から排出し、未使用の研磨媒体を供給するのに適した流体輸送装置によって行われる。
【0053】
この目的は、本発明によれば、
基準ワークピースの、表面全域にわたっておよび/または開口部を通して研磨媒体を通過させるステップと、
機械加工中にワークピースで発生する構造物由来の音を測定するステップと、
測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根を形成するステップと、
加工時間全体にわたって二乗平均平方根を積分するステップと、
積分された測定値を媒体の流量で除算するステップと、
除算された積分された測定値を使用して研磨媒体の切削力を決定するステップとを含む、研磨媒体の切削力を決定する方法によってさらに達成される。
【0054】
このタイプの方法は、例えば、新しい研磨媒体を開発するときに、それらの切削力について様々な研磨媒体を調べるために使用することができる。
【0055】
本発明のさらなる利点および構成は、以下の説明および参照が行われる添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1A】本発明に係る流体研磨機の一部を示している。
【
図1B】本発明に係る流体研磨機の一部を示している。
【
図2】構造物由来の音信号の二乗平均平方根のプロファイルを示している。
【
図3】ワークピースホルダーの領域における本発明に係るさらなる流体研磨機の部分領域を示している。
【
図4】本発明に係るさらなる流体研磨機を示している。
【
図5】構造物由来の音信号を処理するためのフローチャートを示している。
【
図6】材料除去率の望ましいプロファイルを説明する基準曲線を示している。
【
図7】ワークピースの加工中の材料除去率のプロファイルを示している。
【
図8A】直接測定された材料除去率と間接的に確認された材料除去率のプロファイルを示している。
【
図8B】直接測定された材料除去率と間接的に確認された材料除去率のプロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1Aおよび
図1Bはそれぞれ、粘性研磨媒体14を用いてワークピース12を機械加工するための流体研磨機10の断面図を示している。ワークピース12を機械加工するために、研磨媒体14は、機械加工されるワークピース12の開口部16を通って移動することができる。
【0058】
特に、研磨媒体14は、ワークピース12の開口部16を通って延在する流体メインチャネル15内を移動する。
【0059】
代替的または追加的に、研磨媒体14は、開口部16の外側にあるワークピース12の表面を横切って移動することができ、流体メインチャネル15は、ワークピース12の表面によって少なくとも部分的に画定される。
【0060】
図1Aおよび
図1Bは、矢印で示されるように、研磨媒体14が反対方向に移動される、すなわち、前後に圧送される、それぞれの異なる状態にある流体研磨機10を示している。
【0061】
ワークピース12を取り付けるために、流体研磨機10は、ワークピース12の両側に配置されるように適合された2つの部品20、22を含むワークピースホルダー18を含む。機械加工中、ワークピース12は、ワークピースホルダー18の2つの部品20、22の間に、例えば軸方向にクランプされる。
【0062】
特に良好なシールを得るために、部品20、22は、それらに取り付けられたシールを有することができ、シールは、機械加工中にワークピース12に支えられている。シールは、好ましくは金属シールまたはセラミックスシールであり、ゴム製のシールは、実際には構造物からの音信号を減衰させる。
【0063】
流体研磨機10は、ワークピースの表面全域にわたっておよび/またはワークピース12の開口部16を通って研磨媒体14を移動させるように適合された媒体駆動装置24をさらに含む。このプロセスは、ワークピース12から材料を除去し、それにより、ワークピース12の表面を仕上げおよび研磨する。
【0064】
図示される例示的な実施形態では、媒体駆動装置24は、2つの容積式ポンプ26、28を含み、研磨媒体14の流れの方向に応じて、2つの容積式ポンプ26、28のうちの1つは、研磨媒体14を開口部16に強制的に通し、それぞれの他の容積式ポンプ26、28は、研磨媒体14に対抗する装置を構成し、これは、研磨媒体14の流れに対抗する。容積式ポンプ26、28は、各々がシリンダ32内に案内されるピストン30を有する。
【0065】
媒体駆動装置24はさらに、各々の容積式ポンプ26、28用の駆動要素34を備え、駆動要素は、例えば、油圧作動要素またはリニアモータ作動要素である。
【0066】
ワークピース12が研磨媒体14を使用して機械加工されるとき、構造物由来の音波、特に音響波および/または弾性波がその中で生成される。構造物由来の音波の強度に基づいて、ワークピース12の機械加工の有効性および程度について結論を導き出すことができる。特に、構造物由来の音波の強度は、ワークピース12の材料除去率および/または研磨媒体14の切削力と相関している。
【0067】
研磨媒体14の切削力は、ミリボルト・秒/リットル[mV・s/l]の単位で与えられる。
【0068】
切削力は、ワークピース12全域にわたって移動する研磨媒体14の1リットル当たりに材料がどのくらい除去されるかを示す。
【0069】
構造物由来の音波を測定するために、流体研磨機10は、機械加工されるワークピース12と接触している構造物由来の音センサ36を含む。
【0070】
さらに、流体研磨機10は、評価ユニット38、特に電子評価ユニット38を含む。評価ユニット38は、構造物由来の音センサ36によって測定された構造物由来の音信号を受信することができ、特にソフトウェアによって、構造物由来の音信号の二乗平均平方根を形成し、それを時間の経過とともに積分することができる。あるいはまた、評価ユニット38は、例えば、増幅器から構造物由来の音信号の二乗平均平方根をすでに受信していてもよい。構造物由来の音信号は、例えばミリボルトまたはミリアンペアで測定される。
【0071】
構造物由来の音信号の評価では、二乗平均平方根が形成される前に整流されることが好ましい。
【0072】
図2の例として、機械加工操作に対して、時間の経過に伴うミリボルト単位の構造物由来の音信号の二乗平均平方根のプロファイルが示される。
【0073】
また、評価ユニット38は、時間の経過とともに構造物由来の音センサ36によって測定された構造物由来の音の二乗平均平方根の積分された測定値に基づいて、研磨媒体14の切削力および/またはワークピース12の材料除去率を推測するのに適している。
【0074】
材料除去率または切削力について結論を出すために、特に材料除去は、形成された積分に基づいて評価ユニット38で最初に決定される。実際、積分された測定値は、特定の材料除去に固有のものである。
【0075】
材料除去率を決定するために、評価ユニット38は、材料除去を加工時間に関連付けるように構成される。
【0076】
切削力を決定するために、評価ユニット38は、積分された測定値を媒体の流量で除算するように構成される。
【0077】
構造物由来の音信号を評価するために、評価ユニット38は、内部にルックアップテーブル39を格納することができ、そこから、時間の経過とともに測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根の積分された測定値に基づいて、ワークピース12の材料除去および/または研磨媒体14の切削力を読み取ることができる。このようなルックアップテーブル39は、以下の
図5に示されている。
【0078】
流体研磨機10は、特にワークピース12の機械加工中に、少なくとも1つのプロセスパラメータを調整するために、評価ユニット38によって確認された切削力および/または材料除去率に基づいて適合されるチェックユニット40をさらに含む。このようにして、研磨媒体14の切削力の変化および/または機械加工プロセスの他の変動、例えば温度変動に反応することが可能となる。
【0079】
チェックユニット40によって適合させることができるプロセスパラメータは、例えば、研磨媒体14の流速、研磨媒体14の流体圧力、研磨媒体14への背圧、および/または研磨媒体14の温度を含む。
【0080】
研磨媒体14の温度を除いて、前述のプロセスパラメータは、媒体駆動装置24によって設定することができる。この目的のために、2つの容積式ポンプ26、28の互いに対する位置、および/または個々の容積式ポンプ26、28の移動速度を調整することができる。
【0081】
例えば、容積式ポンプ26、28またはピストン30の相互の距離が減少すると、研磨媒体14の流体圧力が増加する。結果として、研磨媒体14の研磨粒子は、より高い接触力でワークピース12の被加工面に押し付けられ、材料除去率を高めることができる。
【0082】
流速を増加させることによって、より多くの研磨粒子が同じ時間内にワークピース12の表面全域にわたって移動するので、材料除去率も増加させることができる。
【0083】
2つの容積式ポンプ26、28のピストン30が異なる速度で動かされる場合、特に、流れの方向に上流に取り付けられたピストン30が下流に取り付けられたピストン30よりもゆっくりと動かされるか、またはその動きがより大きな抵抗を受ける場合、研磨媒体14への逆圧を増加させることができる。ピストン30が上流に取り付けられるか下流に取り付けられるかは、研磨媒体14のそれぞれの流れの方向に依存し、それは各々の機械加工サイクルの後に変化する。
【0084】
研磨媒体14の温度を調整するために、加熱および/または冷却スリーブなどを追加的に提供することができる。加熱および/または冷却スリーブは、例えば、シリンダ32の周りに配置される。
【0085】
図1Aおよび
図1Bに示される例示的な実施形態では、構造物由来の音センサ36は、ワークピース12と直接接触している。
【0086】
しかしながら、構造物由来の音センサ36が、特にアルミニウムディスクなどの追加の構成要素42を介して、ワークピース12と間接的に接触していることも考えられる。これは、
図3に概略的に示されており、ここでは、簡単にするために、ワークピース12の周りの領域のみが示されている。追加の構成要素42は、ここでは、ワークピースホルダー18の一部とすることができる。
【0087】
図4は、本発明に係るさらなる流体研磨機10を示している。以下では、上記の実施形態から知られている同一の機能を有する同一の構造に対して同じ符号が使用され、この点に関して前述の議論が参照され、以下では、繰り返しを避けるために、それぞれの実施形態の違いについて説明する。
【0088】
図4に示される実施形態では、流体研磨機10は、
図4には見えない流体メインチャネル15に平行に延在するバイパスダクト46を含む。
【0089】
この場合、ワークピース12は、バイパスダクト46内に配置されたダミーワークピース12aである。
【0090】
図示の例示的な実施形態では、流体メインチャネル15は、機械加工される追加のワークピース12bの開口部16を通って延在する。
【0091】
あるいはまた、すでに前述したように、流体メインチャネル15は、機械加工されるワークピース12bの表面全域にわたって延在することができる。
【0092】
この場合、流体研磨機10は、2つの構造物由来の音センサ36を含むことができ、流体研磨機10の動作中、それぞれの構造物支持音センサ36は、バイパスダクト46内のダミーワークピース12aと、機械加工される追加のワークピース12bにも配置される。これにより、機械加工プロセスをさらにより綿密に監視できる。
【0093】
流体研磨機のそのような構造は、特に、機械加工されるワークピース12bが、構造物支持音センサ36をワークピース12bに適切に取り付けることができないような形状である場合、特にワークピース12bが比較的小さい場合に有利である。
【0094】
流体研磨機のそのような構造のさらなる利点は、研磨媒体14の切削力が、材料除去率とは無関係に、ダミーワークピース12aで測定された構造物由来の音信号に基づいて決定できることである。また、そのような設定は、ダミーワークピース12aで測定された構造物由来の音信号と機械加工されるワークピース12bで測定された構造物由来の音信号との差を形成することによって、表面改善を特に正確に監視するために使用することができる。この差は、表面の改善と相関している。
【0095】
ダミーワークピース12aは、好ましくは、ワークピース12bよりも硬い材料でできている。結果として、ダミーワークピース12aから材料が除去されないか、またはわずかしか除去されず、それは、多数の機械加工プロセスの間、流体研磨機10内に留まることができる。
【0096】
ダミーワークピース12aを保持するために、好ましくは、簡単にするために図示されない、ワークピースホルダー18のように構成されたワークピースホルダーが提供される。
【0097】
図示されないさらなる一実施形態では、構造物由来の音センサ36は、ダミーワークピース12aにのみ配置することができる。これは、特に、追加的に機械加工されるワークピース12bが小さすぎるか、または構造物支持音センサ36がワークピース12bに適切に配置することができないような形状である場合である。
【0098】
図5は、構造物由来の音センサ36によって測定された構造物由来の音信号の処理を示している。
【0099】
構造物由来の音信号は、最初に、構造物由来の音センサ36によって生信号37として出力される。
【0100】
続いて、生信号37は、評価ユニット38の一部とすることができる整流器41で整流される。
【0101】
図5はさらに、評価ユニット38が、構造物由来の音センサ36によって測定された構造物由来の音信号を増幅するための増幅器48を含むことができることを示している。
【0102】
さらに、評価ユニット38は、任意選択で、フィルタ、特に構造物由来の音センサ36によって測定された信号から機械周波数をフィルタリング除去するためのHPフィルタ50および/またはバンドパスフィルタ52を含む。
【0103】
整流器41、HPフィルタ50、増幅器48、およびバンドパスフィルタ52は、例えば、いわゆるアコースティックエミッションカプラに含まれており、これらは、例えば、Piezotron(登録商標)カプラの商標のもとで流通している。このようなアコースティックエミッションカプラには、構造物由来の音信号を評価するためのRMSコンバータがすでに組み込まれている。すなわち、そのようなアコースティックエミッションカプラは、構造物由来の音信号の二乗平均平方根をすでに決定し、それを評価ユニット38でのさらなる評価に利用可能にすることができる。また、構造物由来の音信号の生信号を利用可能にすることができる。
【0104】
以下において、ワークピース12、12a、12bが流体研磨機10で機械加工されたときに、ワークピース12、12a、12bの材料除去および/または材料除去率を確認する、および/または研磨媒体14の切削力を決定する、本発明に係る方法が、
図1~
図4に関連して説明されるように、特に流体研磨機10でワークピース12、12a、12bを機械加工する場合において議論される。
【0105】
ワークピース12を機械加工するとき、研磨媒体14は、機械加工されるワークピース12、12a、12bの、表面全域にわたっておよび/または開口部16を通して向けられる。これは、特に、上記の媒体駆動装置24によって実行される。
【0106】
このプロセスでは、特に構造物由来の音センサ36を使用して、機械加工中にワークピース12、12a、12bで生成される構造物由来の音が測定される。
【0107】
続いて、測定された構造物由来の音信号τRMSの二乗平均平方根が、評価ユニット38、特にアコースティックエミッションカプラで確認される。
【0108】
これに続いて、二乗平均平方根が加工時間にわたって積分される。
【0109】
そして、ワークピース12、12a、12bの材料除去および/または材料除去率が、形成された積分を使用して決定され得る。
【0110】
材料除去および/または材料除去率に代替的または追加的に、研磨媒体14の切削力が、形成された積分に基づいて決定され得る。
【0111】
積分された測定値に加えて、構造物由来の音信号の生信号37も出力することができる。
【0112】
ワークピース12、12a、12bの機械加工中に測定された材料除去率が、定義された許容値を超えて所望の材料除去率から逸脱する場合、好ましくは、少なくとも1つのプロセスパラメータが適合される。
【0113】
特に、以下のプロセスパラメータ:研磨媒体14の流速、研磨媒体14の流体圧力、研磨媒体14への背圧、および/または研磨媒体14の温度のうちの少なくとも1つは、材料除去率に基づいて調整される。
【0114】
材料除去率が所望の範囲内にあるかどうかを特に簡単な方法で決定できるようにするために、材料除去率の所望のプロファイルを説明する基準曲線が好ましくは確立される。
【0115】
基準曲線は、例えば、機械加工中に、機械加工されたワークピース12、12a、12bの材料除去率のプロファイルをプロットすることによって確立される。機械加工されたワークピース12、12a、12bは、続いて、品質検査および材料除去の測定にかけられる。ワークピース12、12a、12bが正常であることが判明した場合、プロットされた材料除去率は、評価ユニット38に基準曲線として格納される。
【0116】
このような基準曲線を
図6に示す。ここでは、材料除去率のプロファイルが時間の経過とともにプロットされている。
【0117】
また、基準曲線に関する許容範囲が定義されており、材料除去率は、この許容範囲内にあるべきである。許容範囲は、基準曲線の周りの破線で
図6に示されている。
【0118】
ワークピース12、12a、12bの加工中に、材料除去率の実際のプロファイルが許容範囲外であることが判明した場合、例えば、少なくとも1つのプロセスパラメータが、ワークピース12、12a、12bの機械加工中に調整される。これは、材料除去率が再び基準曲線のプロファイルに従うことを実現するためである。より正確には、機械加工されたワークピース12、12a、12bは、機械加工が完了した後、良好な品質であることが達成されるべきである。
【0119】
しかしながら、研磨媒体14がある程度を超えて摩耗した場合、すなわち、研磨媒体14の切削性能が著しく低下した場合、材料除去率のプロファイルは、プロセスパラメータの変化によってわずかに影響を受けるだけである可能性がある。その場合、品質の点で許容可能な結果をもたらすワークピース12、12a、12bの効果的な機械加工はもはや不可能である。
【0120】
したがって、好ましくは、材料除去率に基づいて、特に、例えば
図7に示されるように、実際の材料除去率が許容範囲を下回る場合、研磨媒体14の少なくとも一部を交換することが要求されるであろう。
【0121】
さらに、
図6および
図7から、材料除去率が加工時間の終わりに向かって一定値に近づくことが明らかである。加工時間の開始時に発生する最大値と加工時間の終了時の最終値の差が、得られた表面改善を表している。
【0122】
ワークピース12、12bの最適な機械加工時間を確認するために、機械加工プロセスの開始時に、すでに機械加工されたワークピース12、12bの材料除去率の最終値を、その後に製造されるワークピースの最大値と比較することができ、特に差を形成することができる。この場合、その差は、所望の表面改善と相関関係がある。
【0123】
本発明に係るさらなる方法によれば、研磨媒体14の切削力は、基準ワークピース12の、表面全域にわたっておよび/または開口部を通して研磨媒体14を通過させ、基準ワークピース12内で生成された構造物由来の音を測定し、測定された構造物由来の音信号の二乗平均平方根を測定することによって決定することができる。続いて、積分が二乗平均平方根にわたって形成され、積分された測定値が切削媒体14の媒体流量で除算される。除算された積分された測定値は、研磨媒体14の切削力を決定するために使用することができる。これにより、本発明に係る方法は、新規の研磨媒体を検査または開発するのに適したものになる。
【0124】
ワークピースを製造することを目的とせずに研磨媒体14の切削力を検査することのみを目的とする場合、通常、ダミーワークピース12aまたは基準ワークピースのみが流体研磨機10に配置される。
【0125】
図8Aおよび
図8Bは、いくつかの機械加工サイクルにわたって直接測定された材料除去率のプロファイル(
図8A)と、間接的に確認された材料除去率のプロファイル、つまり機械加工サイクル数にわたる構造物由来の音信号の二乗平均平方根の積分された測定値のプロファイル(
図8B)をグラフで示している。
【0126】
直接測定された材料除去率は、ここではmg/Lで与えられる。間接的に測定された材料除去率は、mV・s/Lで与えられる。
【0127】
ここでは、材料除去率または積分された測定値が、加工サイクルごとに個別に確認される。特に、機械加工サイクルは、研磨媒体14が媒体駆動装置24によって流れ方向に移動されるサイクルに対応する。
【0128】
図8Aおよび
図8Bから、直接測定された材料除去率のプロファイルは、機械加工サイクル全体にわたる積分された測定値のプロファイルと強く相関していることが明らかである。これは、時間の経過とともに構造物由来の音センサ36によって測定された構造物由来の音の二乗平均平方根の積分された測定値を使用して、研磨媒体14の切削力および/またはワークピース12の材料除去率について結論を引き出すことができることを明確に示している。