(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】改良された略等角タイトフレーム(NETF)行列を用いて高データレートを実現する通信システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0456 20170101AFI20241011BHJP
【FI】
H04B7/0456 100
(21)【出願番号】P 2022509702
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 US2020049031
(87)【国際公開番号】W WO2021046104
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519169742
【氏名又は名称】ランパート コミュニケーションズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,マシュー ブランドン
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-518763(JP,A)
【文献】特表2009-516942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0277083(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0138939(US,A1)
【文献】国際公開第2018/089985(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04L 1/02-1/06
3GPP TSG RAN WG1-4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データベクトルに基づいて第1の計算装置のプロセッサを介して、複数のシンボルを生成することであって、前記複数のシンボルはK個のシンボルを含み、Kは正整数である、ことと、
第1の変換行列を生成することであって、前記第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含み、前記第1の変換行列はN×K次元を有し、NはKより小さい値を有する正整数である、ことと、
前記第1の変換行列に
K-N行を追加することによって第2の変換行列を生成することであって、前記第2の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列を生成することであって、前記第3の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第3の変換行列及び前記複数のシンボルに基づいて第1のデータベクトルを長さNの第2のデータベクトルに変換することと、
前記第2のデータベクトルを表す信号を送信機から受信機へ送信すべく前記第2のデータベクトルを表す信号を前記送信機に渡すことと、を含む方法。
【請求項2】
前記複数のシンボルを前記受信機で復元すべく、前記第2のデータベクトルを表す前記信号を前記送信機から前記受信機に送信する前に、前記第3の変換行列を表す信号を第2の計算装置に渡すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の変換行列を複数の層に分解することを更に含み、前記複数の層からの各層が置換及びM×M次元を有するプリミティブ変換行列を含み、MはNよりも小さい値を有する正整数であり、
前記第3の変換行列及び前記複数のシンボルに基づいて第1のデータベクトルを長さNの第2のデータベクトルに変換することは、前記第1のデータベクトルに前記複数の
層からの少なくとも1個の層
の前記置換及び前記プリミティブ変換行列を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の変換行列又は前記第3の変換行列の少なくとも一方が、ユニタリ変換を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記一連のユニタリ変換が、計算コストがO(N)の算術演算を伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記受信機が複数のアンテナアレイを含み、前記受信機及び前記送信機が多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
送信機と、
前記送信機に動作可能に結合されたプロセッサであって、
複数のシンボルを生成することであって、前記複数のシンボルはK個のシンボルを含み、Kは正整数である、ことと、
第1の変換行列を生成することであって、前記第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含み、前記第1の変換行列は、N×K次元を有し、NはKより小さい値を有する正整数である、ことと、
前記第1の変換行列に
K-N行を追加することによって第2の変換行列を生成することであって、前記第2の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列を生成することであって、前記第3の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第3の変換行列及び前記複数のシンボルに基づいて複数の変換済みシンボルを生成することと、を行うように構成されたプロセッサと、を含むシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1個のプロセッサが更に、
前記第3の変換行列を複数の層に分解することであって、前記複数の層からの各層が置換及びM×M次元を有するプリミティブ変換行列を含み、MはNよりも小さい値を有する正整数である、ことと、
前記複数の層からの少なくとも1個の層
の前記置換及び前記プリミティブ変換行列を前記複数のシンボルからの各シンボル
に適用することにより前記複数の変換済みシンボルを生成することと、を行うように構成されている、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記送信機が複数のアンテナアレイを含み、前記送信機が多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている、請求項
7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の変換行列又は前記第3の変換行列の少なくとも一方が、ユニタリ変換を含む、請求項
7に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の変換行列に対する前記一連のユニタリ変換が、計算コストがO(N)の算術演算を伴う、請求項
7に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の変換済みシンボルを生成することが、計算の複雑度がO(Nlog
2N)の算術演算を有する、請求項
7に記載のシステム。
【請求項13】
受信機を介して、複数のシンボルを受信することであって、前記複数のシンボルはK個のシンボルを含み、Kは正整数である、ことと、
送信機に動作可能に結合された計算装置のプロセッサを介して、第1の変換行列を生成することであって、前記第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含み、前記第1の変換行列はN×K次元を有し、KはNより小さい値を有する正整数である、ことと、
前記第1の変換行列に
K-N行を追加することによって第2の変換行列を生成することであって、前記第2の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することによ
り第3の変換行列を生成すること
であって、前記第3の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第3の変換行列及び前記複数のシンボルに基づいて第1の複数の変換済みシンボルを生成することと、
前記第1の複数の変換済みシンボルに基づいて第2の複数の変換済みシンボルを生成することであって、前記第2の複数の変換済みシンボルを生成することが反復的処理を含み、前記反復的処理の各反復が、
(a)置換に続いて(b)M×M次元を有する少なくとも1個のプリミティブ変換行列を適用する、生成することであって、Mは正整数である、ことと、
前記送信機から、前記第2の複数の変換済みシンボルを表す信号を送信することと、を含
む方法。
【請求項14】
前記送信機が複数のアンテナアレイを含み、前記送信機が多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の複数の変換済みシンボルを生成すること、又は前記第2の複数の変換済みシンボルを生成することの少なくとも一方が、計算の複雑度がO(Nlog
2N)の算術演算を伴う、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
第1の計算装置のプロセッサを介して、複数のシンボルを生成すること
であって、前記複数のシンボルはK個のシンボルを含み、Kは正整数である、ことと、
第1の変換行列を生成することであって、前記第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含
み、前記第1の変換行列はN×K次元を有し、NはKより小さい値を有する正整数である、ことと、
前記第1の変換行列に
複数の行を追加することによって第2の変換行列を生成することであって、前記第2の変換行列は
K×K次元を有する、ことと、
前記第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列を生成すること
であって、前記第3の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第3の変換行列及び前記複数のシンボルに基づいて
長さNのデータベクトルを生成することと、
前記データベクトルを表す信号を送信機から受信機へ送信すべく前記データベクトルを表す信号を前記送信機に渡すことと、を含む方法。
【請求項17】
前記複数のシンボルを前記受信機で復元すべく、前記データベクトルを表す前記信号を前記送信機から前記受信機に送信する前に、前記第3の変換行列を表す信号を第2の計算装置に渡すことを更に含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の変換行列を複数の層に分解することを更に含み、前記複数の層からの各層が置換及びプリミティブ変換行列を含み、
前記複数の層からの少なくとも1個の層の前記置換及び前記プリミティブ変換行列を前記複数のシンボルからの各シンボルに適用することにより、前記データベクトル
が生成される、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の変換行列を生成することがユニタリ変換を実行することを含む、請求項
16の方法。
【請求項20】
前記一連のユニタリ変換が、計算コストがO(N)の算術演算を伴い、Nは正整数である、請求項
16に記載の方法。
【請求項21】
前記受信機が複数のアンテナアレイを含み、前記受信機及び前記送信機が多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている、請求項
16に記載の方法。
【請求項22】
送信機と、
前記送信機に動作可能に結合されたプロセッサであって、
複数のシンボルを生成すること
であって、前記複数のシンボルはK個のシンボルを含み、Kは正整数である、ことと、
第1の変換行列を生成することであって、前記第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含
み、前記第1の変換行列はN×K次元を有し、NはKより小さい値を有する正整数である、ことと、
前記第1の変換行列に
複数の行を追加することによって第2の変換行列を生成することであって、前記第2の変換行列は
K×K次元を有する、ことと、
前記第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列を生成すること
であって、前記第3の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第3の変換行列及び前記複数のシンボルに基づいて複数の変換済みシンボルを生成することと、を行うように構成されたプロセッサと、を含むシステム。
【請求項23】
前記少なくとも1個のプロセッサは更に、
前記第3の変換行列を複数の層に分解することであって、前記複数の層からの各層が置換及びプリミティブ変換行列を含む、ことと、
前記複数の層からの少なくとも1個の層
の前記置換及び前記プリミティブ変換行列を前記複数のシンボルからの各シンボル
に適用することにより前記複数の変換済みシンボルを生成することと、を行うように構成されている、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
前記送信機が複数のアンテナアレイを含み、前記送信機が多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている、請求項
22に記載のシステム。
【請求項25】
前記プロセッサが、ユニタリ変換を実行することにより前記第2の変換行列を生成すべく構成されている、請求項
22に記載のシステム。
【請求項26】
前記第2の変換行列に対する前記一連のユニタリ変換が、計算コストがO(N)の算術演算を伴い、Nは正整数である、請求項
22に記載のシステム。
【請求項27】
前記プロセッサが、計算の複雑度がO(Nlog
2N)の算術演算を有して前記複数の変換済みシンボルを生成すべく更に構成されており、Nは正整数である、請求項
22に記載のシステム。
【請求項28】
前記プロセッサが、
前記複数の変換済みシンボルを表す信号を前記送信機から受信機へ送信すべく前記複数の変換済みシンボルを表す前記信号を前記送信機に渡すことを行うように更に構成されている、請求項
22に記載のシステム。
【請求項29】
前記プロセッサが、
前記複数のシンボルを前記受信機で復元すべく、前記複数の変換済みシンボルを表す前記信号を前記送信機から前記受信機に送信する前に、前記第3の変換行列を表す信号を遠隔計算装置に渡すことを行うように更に構成されている、請求項
28に記載のシステム。
【請求項30】
受信機を介して、複数のシンボルを受信することであって、前記複数のシンボルはK個のシンボルを含み、Kは正整数である、ことと、
送信機に動作可能に結合された計算装置のプロセッサを介して、第1の変換行列を生成することであって、前記第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含
み、前記第1の変換行列はN×K次元を有し、NはKより小さい値を有する正整数である、ことと、
前記第1の変換行列に
複数の行を追加することによって第2の変換行列を生成すること
であって、前記第2の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することによ
り第3の変換行列を生成すること
であって、前記第3の変換行列はK×K次元を有する、ことと、
前記第3の変換行列及び前記複数のシンボルに基づいて第1の複数の変換済みシンボルを生成することと、
前記第1の複数の変換済みシンボルに基づいて第2の複数の変換済みシンボルを生成することであって、前記第2の複数の変換済みシンボルを生成することが反復的処理を含み、前記反復的処理の各反復が、
(a)置換に続いて(b)少なくとも1個のプリミティブ変換行列を適用する、生成することと、
前記送信機から、前記第2の複数の変換済みシンボルを表す信号を送信することと、を含
む方法。
【請求項31】
前記送信機が複数のアンテナアレイを含み、前記送信機が多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の複数の変換済みシンボルを生成すること、又は前記第2の複数の変換済みシンボルを生成することの少なくとも一方が、計算の複雑度がO(Nlog
2N)の算術演算を伴い、Nは正整数である、請求項
30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の関心事項に関する宣言
[0001] 合衆国政府は、合衆国政府のあらゆる目的に沿ってライセンス供与する権限により、本発明の非排他的、不可逆的、無償ライセンスを保持している。
【0002】
関連出願の相互参照
[0002] 本出願は、2020年6月23日出願の米国特許出願第16/909,175号「Communication System and Method for Achieving High Data Rates Using Modified Nearly-Equiangular Tight Frame(NETF) Matrices」の優先権を主張すると共にその継続出願であり、当出願は2019年9月4日出願の米国特許出願第16/560,447号「Communication System and Method for Achieving High Data Rates Using Modified Nearly-Equiangular Tight Frame(NETF) Matrices」の継続出願であり、当出願も2019年9月4日出願の米国特許出願第16/560,447号「Communication System and Method for Achieving High Data Rates Using Modified Nearly-Equiangular Tight Frame(NETF) Matrices」の優先権を主張すると共にその継続出願であり、各々の内容全体はあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
[0003] 本出願は、2018年7月10日発行の米国特許第10,020,839号「RELIABLE ORTHOGONAL SPREADING CODES IN WIRELESS COMMUNICATIONS」、2019年7月1日出願の米国特許出願第16/459,262号「COMMUNICATION SYSTEM AND METHOD USING LAYERED CONSTRUCTION OF ARBITRARY UNITARY MATRICES」、2019年7月1日出願の米国特許出願第16/459,245号「Systems,Methods and Apparatus for Secure and Efficient Wireless Communication of Signals using a Generalized Approach within Unitary Braid Division Multiplexing」、及び2019年7月1日出願の米国特許出願第16/459,254号「Communication System and Method using Orthogonal Frequency Division Multiplexing (OFDM) with Non-Linear Transformation」に関連し、各々の開示はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
技術分野
[0004] 以下の記述は、電子通信のため無線信号を送信するシステム及び方法に関し、特に、無線通信のデータレートを向上させ、計算の複雑度を低下させることに関する。
【背景技術】
【0005】
背景
[0005] 多重アクセス通信において、複数のユーザー機器が、所与の通信チャネルを介して受信機に信号を送信する。これらの信号は重ね合わされて、そのチャネルを介して伝播する合成信号を形成する。受信機は次いで、合成信号に対して分離動作を実行して合成信号から1個以上の個別信号を復元する。例えば、各ユーザー機器は、異なるユーザーが所有する携帯電話であってよく、受信機は中継塔であってよい。異なるユーザー機器により送信された信号を分離することにより、異なるユーザー機器は同一通信チャネルを干渉無しに共有することができる。
【0006】
[0006] 送信機は、搬送波又は副搬送波の状態を変化させることにより、例えば搬送波の振幅、位相及び/又は周波数を変化させることにより、異なるシンボルを送信することができる。各シンボルは1個以上のビットを表していてよい。これらのシンボルは各々複素平面の離散的な値にマッピングされて直交振幅変調を生起させるか、又は各シンボルを離散的な周波数に割り当てることにより周波数偏移キーイングを生起させることができる。これらのシンボルは次いで、シンボル送信レートの少なくとも2倍であるナイキストレートでサンプリングされる。結果的に得られた信号は、デジタル/アナログ変換器を介してアナログに変換され、次いで、送信用の搬送波周波数に上方変換される。異なるユーザー機器が通信チャネルを介して同時にシンボルを渡す場合、これらのシンボルが表す正弦波が重ね合わされて受信機で受信される合成信号を形成する。
【発明の概要】
【0007】
概要
[0007] 高データレートを実現する方法は、入力データベクトルに基づいてシンボルの組を生成することを含む。シンボルの組はK個のシンボルを含み、Kは正整数である。等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換を含む、N×K次元を有する第1の変換行列が生成され、ここにNはKより小さい値を有する正整数である。第1の変換行列に基づいて、K×K次元を有する第2の変換行列が生成される。第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することにより、K×K次元を有する第3の変換行列が生成される。第1のデータベクトルは、第3の変換行列及びシンボルの組に基づいて長さNの第2のデータベクトルに変換される。第2のデータベクトルを表す信号を受信機に送信すべく、第2のデータベクトルを表す信号が送信機に渡される。
【0008】
[0008] 1個以上の実装の詳細事項が添付の図面及び以下の記述により開示される。他の特徴も記述及び図面から、並びに請求項から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
【
図1】[0009]一実施形態による、例示的電子通信システムを示すブロック図である。
【
図2A】[0010]一実施形態による、変換済みシンボルを生成及び送信する第1の例示的方法を示すフロー図である。
【
図2B】[0011]変換済みシンボルを生成及び送信する第1の例示的方法の代替的実装を示すフロー図である。
【
図3】[0012]一実施形態による、変換済みシンボルを生成及び送信する第2の例示的方法を示すフロー図である。
【
図4】[0013]一実施形態による、高速ETFを生起させる例示的方法の実行中に生成された線図である。
【
図5A】[0014]一実施形態による、任意の行列の階層構造を用いる通信方法を示すフロー図である。
【
図5B】[0015]任意の行列の階層構造を用いる通信方法の代替的実装を示すフロー図である。
【数1】
の離散的フーリエ変換(DFT)を示す図である。
【
図7】[0017]一実施形態による、ユニタリ行列の階層構造を用いる通信システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
[0018] 無線信号通信を行ういくつかの公知の方式として、複数の搬送波周波数上でデジタルデータを符号化する方法である直交周波数分割多重化(OFDM)が含まれる。OFDM方式は、減衰、干渉、及び周波数選択的減衰等の通信チャネルの条件に合致する信号通信を可能にすべく適合されている。しかし、(OFDMシステム等の)通信システム内の送信機の個数が増大するにつれて、帯域幅への負荷が過剰になって送信速度が低下し得る。従って、(例えばOFDMシステム内の)通信チャネルの所与の個数の副搬送波における信号の「速い」(すなわち高速の)無線通信を実現する改良されたシステム、装置及び方法に対するニーズがある。
【0011】
[0019] 本明細書に記述するいくつかの実施形態は、等角タイトフレーム(ETF)又は略等角タイトフレーム(NETF)を生成して当該ETF又はNETFをユニタリ的に等価及び充分に疎な行列に転換/変換することにより、高速で適用可能なように(例:入力ベクトル及び/又は送信対象のシンボルを変換する符号として)前述の課題に対処する。ここで用いるETFは、ペア単位の内積がウェルチ境界において等価となり、従って射影空間内で最適パッキングが得られる単位ベクトルのシーケンス又は組を指す。ETFは、射影空間の次元よりも多くの単位ベクトルを含んでよく、当該単位ベクトルは、互いになるべく直角に交わるように(すなわち全てのペア単位の内積の大きさの最大値がなるべく小さくなるように)選択することができる。NETFはETFの近似であって、ETFが存在しないか又は所与の次元のペアに対してETFを厳密に構築できない場合に、ETFの代わりに用いることができる。本明細書に記載のシステム及び方法は、ETF/NETFを、疎分解された単一に等価な形式に変換することにより高速ETF及び高速NETFの適用を容易にし、従って高速に適用することができる。
【0012】
[0020] いくつかの実施形態においてN×Nユニタリ行列の代わりに、K個のシンボルはN個の副搬送波に収容されるようにN×K(K>N)のETF又はNETFを用いる。N×KのETF又はNETFを用いることでマルチユーザー干渉を、効果的に緩和できる極めて予測可能且つ制御可能な仕方で生起させることができる。N×K行列を長さKのベクトルに適用することはO(KN)の乗算(すなわち計算の複雑度が高い)を含み得るため、本明細書に開示する複数の実施形態は、ETF又はNETFを高速で適用可能な充分に疎なユニタリ行列に、例えばO(N)の計算の複雑度で変換することを含む。
【0013】
[0021] いくつかの実施形態において、ETF/NETFが画定されたならば、ETF/NETFはユニタリ行列を形成すべく「補完」されている。本明細書で定義する「補完」は、結果的に生じるK×K行列がユニタリであるように(K-N)行をN×KのETF/NETFに追加することを指す。次いで一連のユニタリ変換が補完した行列に対して実行されて当該行列を疎にできるが、依然としてユニタリ的な等価なETF/NETFである。換言すれば、その結果はユニタリ行列であり、K列のうちN列が疎なETF/NETF(本明細書では高速ETF又は高速NETFとも称する)を形成している。このETF/NETFは疎であるため、少数の動作に分解することができる。このようないくつかの実装において、K個のシンボルのブロックがシステムで受信されるか又はシステムに導入され、高速ETF/NETFの使用に作用する結果、長さNのベクトルが得られる。次いで高速N×Nユニタリ変換(例:以下で
図5~9を参照しながら議論する)を、例えば通信の安全性を強化すべく長さNのベクトルに適用することができる。本明細書で用いる「速い」又は「高速」変換は、O(NlogN)又はO(KlogK)の浮動小数点演算よりも悪くないオーダーである演算を用いて実行可能なもの、及び/又は(1)開始行列を補完させることにより、及び(2)一連のユニタリ変換を通じて補完された行列を疎にすることにより生成されている行列を指す。上において、式O(NlogN)及びO(KlogK)における「O」は「ビッグオー」と呼ばれる数学的表記であり、関連機能/動作が接近する近似値を示している。
【0014】
[0022] いくつかの実施形態において、K個のシンボルのブロックがシステムで受信されるか又はシステムに導入され、最初に非線形変換が作用し(例:2019年7月1日出願の米国特許出願第16/459,254号「Communication System and Method using Orthogonal Frequency Division Multiplexing(OFDM) with Non-Linear Transformation」に図示及び記述されており、その全内容はあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、続いて高速ETF/NETFにより長さNのベクトルを生成し、続いて高速N×Nユニタリ変換(例:以下で
図5~9を参照しながら議論するように)が長さNのベクトルに適用されて、例えば通信の安全性を強化する。他の複数の実施形態において、入力ベクトルに高速ETF/NETFが適用されて長さNのベクトルが生成された後で、完全な「速い」すなわち高速ユニタリ組み紐分割多重化(UBDM)変換(非線形成分を含む)が適用される。例示的なUBDM実装が、一例として、上述の米国特許出願第16/459,254号に見られる。
【0015】
[0023] 本明細書に開示するいくつかの実施形態は、1個以上のETF及び/又はNETFを用いて、帯域幅、変調、又は使用する副搬送波の個数を増やすことなく、デジタル通信のデータレートの増大を容易にする。例示的方法は、入力データベクトルは
【数2】
(ここに
【数3】
はK次元複素空間である)であるように、長さK>Nのデータベクトルを受信又は生成することを含む。換言すれば、
【数4】
はK個の複素数を含むベクトルである。N×K行列
【数5】
を含む生成行列が識別される。次いで「圧縮」されたデータベクトルを次式のように生成することができる。
【数6】
ここに
【数7】
である。これにより、
【数8】
内の値がより低い次元の空間まで下がる。AをNETFとなるように選択することにより、ベクトル間の重なりを最小化することができる。上述の圧縮方式の結果、Aの列間の非直交重なりにより生じた誤差が含まれてしまうが、このような重なりは最小化/極力小さくすることができるため、データを復元する可能性が最大化される。
【0016】
[0024] N×KのNETF行列Aを適用する計算の複雑度はO(NK)である。しかし、計算の複雑度を下げるべく、大きなクラスの高速NETFを識別することができる。例えば、以下が真であるように行列
【数9】
を識別することができる。
・Aは「速い」又は高速(O(NlogN)又はO(KlogK)よりも悪くないオーダーの動作を用いる)仕方で適用でき、
・その結果、次式が得られる(ここにA
†はAの共役転置)。
【数10】
【0017】
[0025] 例示的行列(0.02)の対角要素は厳密に1であり、非対角要素の大きさはμであってウェルチ境界に等しい。
【数11】
【0018】
[0026] 例示的行列(0.02)の行は、AA†∝IIN(ここにIINはN×N単位行列で)となるように正規化できる。換言すれば、行列は、NETF及び「速く」動作させることができる(すなわち計算の複雑度がO(NlogN)又はO(KlogK)よりも悪くない)行列の両方であると識別される場合がある。
【0019】
NETFを補完させること
[0027] いくつかの実施形態において、NETFが与えられ、NETFに行を追加することにより補完させて、ユニタリ行列に変換することができる。換言すれば、所与のNETF行列
【数12】
に関して、
【数13】
を発見することにより補完された行列
【数14】
が次式のように定義されることが望ましく、N×Kの「A」行列が(K-N)×K「B」行列の上に積層されてより大きい結合行列を形成する。
【数15】
【0020】
[0028] 再び行列A
†A(上述の0.02)を考える。行列A
†Aの固有値は、多重度Nで
【数16】
、多重度K-Nで0である。従って以下の行列を考える。
【数17】
【0021】
[0029]
【数18】
がA
†Aの固有ベクトル且つ固有値がλ(ここにλは0又はK/N)であるため、
【数19】
ここに
【数20】
は上の新たな行列の固有ベクトル且つ固有値が0(λ=K/Nのとき)又はK/N(λ=0のとき)、上の新たな行列のランクがK-Nであることが分かる。このように、
【数21】
が存在し、次式が成り立つ。
【数22】
【0022】
[0030] この行列を発見すべく、B
†Bの固有値分解を最初に計算する。
【数23】
【0023】
[0031] 次いで、次式が得られる。
【数24】
ここにD
†は、非ゼロ固有値を有する列だけを含むように切り捨てられたDである。ここで、(0.0.4)の行列
【数25】
は次式を満たす。
【数26】
【0024】
[0032] このように、次式を再定義することで、
【数27】
【数28】
がNETF行列Aのユニタリ補完であることが分かる。
【0025】
補完NETFを速く生成すること
[0033] いくつかの実施形態において、NETF行列
【数29】
のユニタリ補完の速いバージョンを、先頭のN行内の列が依然としてNETFを形成するように識別することができる。例えば、先頭のN行が(その列で)(換言すれば、各列の先頭のN個の成分がNETFを形成する)ETFを形成する任意のK×Kユニタリ行列をとれば、形式
【数30】
のユニタリ変換を実行することができ、ここにWはU(K-N)の任意の要素であり、その結果は先頭のN行が列NETFを形成する特性を有している。
【0026】
[0034] 例えば、以下の形式の補完されたNETFが与えられると、
【数31】
ここにAはNETFであり、補完されたNETFを以下の形式のユニタリに作用させることができる。
【数32】
ここにUはN×Nユニタリ行列、Wは(K-N)×(K-N)ユニタリ行列である。結果的に得られる行列
【数33】
は依然としてユニタリであり、先頭のN行だけをとれば、N×K行列UAが得られる特性を有し、従って次式が成り立つため、
A
†A→A
†U
†UA=A
†A (0.0.15)
((0.0.2)参照)、先頭のN行のNETF特性は維持されている。
【0027】
[0035] このように、NETF行列Aが与えられ、これを補完して
【数34】
を生成することにより、例えば先頭のN行だけに作用するユニタリ行列を用いて、任意の所望の変換を適用することができ、その結果は依然として先頭のN行にNETFを含む。
【0028】
[0036] 次に、任意のベクトルが与えられると、次式が成り立つことが分かる。
【数35】
ここに
【数36】
であり、以下の形式の行列を構築することができる。
【数37】
【0029】
[0037] 上の行列はユニタリであって、次式のように
【数38】
に作用する。
【数39】
【0030】
[0038] (0.0.17)の形式の行列を用いて、初期行列
【数40】
の成分を1個ずつ、以下の形式になるまでゼロクリアすることができる。
【数41】
【0031】
[0039] 行列(0.0.19)は、先頭のN行のうち第n行が(n-1)個のゼロの並びから始まり、他の全ての成分が非ゼロのままであり得る行列である。行列(0.0.19)を生成することは、例えばO(N
2)の計算の複雑度に対応する
【数42】
回のユニタリ演算を含む。行列(0.0.19)の生成は1回だけ実行される動作あるため、多項式であり得る。先頭のN行に対する作用にユニタリ行列だけが用いられるため、先頭のN行の列は依然としてNETFを形成することに注意されたい。次いでこのNETFを「速い」又は高速NETFとして用いることができる。
【0032】
[0040] 上述の新たな(ユニタリ)補完された(上に示すようにゼロが三角形に配置さている)
【数43】
行列から始めて、補完された
【数44】
行列は、最後のK-N行の非ゼロ成分の1個をゼロクリアするユニタリ(0.0.17の形式の)に作用することができる。換言すれば、行列J
1∈U(K)を補完された
【数45】
行列に以下のように適用することができる。
【数46】
【0033】
[0041] 上述の新たな行列は従って、最後のK-N行の別の非ゼロ成分をゼロクリアする別のユニタリ行列J
2により作用を受けることができる。
【数47】
【0034】
[0042] 上述の処理は
【数48】
の下側の非対角要素の全てがゼロになるまで進むことができる。
【数49】
がユニタリであり、従って下側の非対角要素をゼロクリアすることにより上側の非対角要素が自動的にゼロクリアされるため、対角要素より上の要素を別々にゼロにする必要は無い。下側の非対角要素の全てをゼロクリアすることは、
【数50】
回のユニタリ演算を含む。Δ≡K-Nならば、これは
【数51】
であり、計算の複雑度はO(N)である。
【0035】
[0043] 上述の処理の結果、
【数52】
は、J
1,J
2,...,J
ΔN+1Δ(Δ-1)を用いて単位行列に変換されているであろう。換言すれば、
【数53】
を(0.0.19)のようにゼロが三角形に配置されたユニタリ行列として表記すれば、次式が得られる。
【数54】
【0036】
[0044] 従って、次式が得られる。
【数55】
【0037】
[0045]
【数56】
が補完されたNETF(すなわち、先頭のN行の列がNETFを形成する)であり、
【数57】
は各々が疎であるO(N)のユニタリ行列の積により形成することができ、高速NETFが識別されている。この段階において、O(N)の演算だけ(すなわち計算の複雑度がO(N))が実行されている。追加的な計算リソースが利用できる(例:演算又は計算の複雑度を減らすことが優先されない)場合、
【数58】
内の三角形に配置されたゼロの追加的な値を非ゼロのままに残し、これらをJ
i行列として含めることが可能である。いくつかの実装において、長さKのデータのブロックがシステムに入り、第1のステップとして、高速NETFが適用されて、O(N)の演算でブロックのデータをサイズN<Kまで小さくし、次いで例えば複雑度がO(NlogN+N)=O(NlogN)が付随するセキュリティ特性を追加すべく、O(NlogN)の演算で高速ユニタリが適用される。
【0038】
システム概要
[0046]
図1は、一実施形態による、例示的電子通信システムを示すブロック図である。
図1に示すように、システム100は、1つ又は複数の信号送信機120及び1つ又は複数の信号受信機150を含む。各信号送信機120は、処理回路124、トランシーバ回路140(すなわち、信号送信回路及び信号受信回路)、及び非一時的プロセッサ可読メモリ126のうち1個以上を含んでよい。メモリ126は、シンボル128、変換行列130、変換済みシンボル132、データベクトル134、置換136、又はプリミティブ変換行列138を保存することができる。データ(例:シンボル128)は、例えば1個以上の遠隔計算装置から、及び/又は信号送信機120に動作可能に結合されたローカルインターフェース(例:グラフィカルユーザーインターフェース(GUI))を介して信号送信機120で受信することができる。同様に、各信号受信機150は、処理回路152、トランシーバ回路168(すなわち信号送信回路及び信号受信回路)、及び非一時的プロセッサ可読メモリ154のうち1個以上を含んでよい。メモリ154は、シンボル156、変換行列158、変換済みシンボル160、データベクトル162、置換164、又はプリミティブ変換行列166を保存することができる。信号送信機120は、送信媒体の1個以上の通信チャネル(例:自由空間、無線又は有線ローカルエリアネットワーク、無線又は有線ワイドエリアネットワーク等)を介して信号受信機150に信号を送信することができる。
【0039】
[0047] 1個以上の信号送信機120及び1個以上の信号受信機150の各メモリ126、154は各々、方法ステップを実行すべく関連付けられた処理回路(各々124、152)により読み出し可能な命令を保存することができる。代替的又は追加的に、命令及び/又はデータ(例:シンボル156、変換行列158、変換済みシンボル160、データベクトル162、置換164、及び/又はプリミティブ変換行列166)は記憶媒体112及び/又は114(例:遠隔計算装置のメモリ)に保存して、各々が例えば無線又は有線通信を介して、信号送信機120及び/又は信号受信機150からアクセス可能である。例えば、1個以上の信号送信機120が、K個のシンボル(Kは正整数)を含むシンボルの組を生成する旨の命令を保存及び/又はアクセスして、第1の変換行列を生成することができる。第1の変換行列は、N×K次元を有する等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換を含んでよく、Nは正整数であってK未満の値を有している。1個以上の信号送信機120はまた、第1の変換行列に基づいて(例:第1の変換行列にK-N行を追加することにより)第2の変換行列を生成する旨の命令を保存及び/又はアクセスすることができ、第2の変換行列はK×K次元を有する。1個以上の信号送信機120はまた、第2の変換行列(例:計算複雑度又はコストがO(Nlog2N)の算術演算又はO(N)の算術演算を有する)に対して一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列であってK×K次元を有する第3の変換行列を生成する旨の命令を保存及び/又はアクセスして、第3の変換行列及びシンボルの組に基づいて(例:層の組からの少なくとも1個の層に基づいてシンボルの組からの各シンボルを符号化することにより)変換済みシンボルの組を生成することができる。第2の変換行列及び/又は第3の変換行列はユニタリ変換を含んでよい。変換済みシンボルの組を生成することは、計算の複雑度がO(Nlog2N)の算術演算を有する場合がある。1個以上の信号送信機120は、多入力多出力(MIMO)演算を実行すべく構成されたアンテナアレイ(図示せず)の組を含んでよい。いくつかの実施形態において、1個以上の信号送信機120はまた、第3の変換行列を層の組に分解する命令を保存しており、当該層の組からの各層は置換を含み、プリミティブ変換行列は次元M×Mを有し、MはNよりも小さい値を有する正整数である。
【0040】
[0048]
図2Aは、一実施形態による、変換済みシンボルを生成及び送信する第1の例示的方法を示すフロー図である。
図2Aに示すように、方法200Aは、210において、第1の計算装置のプロセッサを介して入力データベクトルに基づいてシンボルの組を生成することを含む。シンボルの組はK個のシンボルを含み、Kは正整数である。次いで212において第1の変換行列が生成され、第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含む。第1の変換行列はN×K次元を有し、NはK未満の値を有する正整数である。方法200はまた、214において第1の変換行列に基づいて第2の変換行列を(例:第1の変換行列にK-N行を追加することにより)生成することを含む。第2の変換行列はK×K次元を有する。216において、第2の変換行列に対して(例えば計算コストがO(N)の算術演算を伴う)一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列が生成される。第3の変換行列はK×K次元を有する。第2の変換行列及び/又は第3の変換行列はユニタリ変換を含んでよい。第1のデータベクトルが、218において、第3の変換行列及びシンボルの組に基づいて長さNの第2のデータベクトルに変換される。220において、送信されたメッセージを復元する受信機に第2のデータベクトルを表す信号を送信機から送信すべく、第2のデータベクトルを表す信号が送信機に渡される。受信機はアンテナアレイの組を含んでよい。受信機及び送信機は、多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されていてよい。
【0041】
[0049]
図2Aには示していないが、いくつかの実施形態において、方法200はまた、シンボルの組を受信機で復元(すなわちメッセージを復元)すべく、第2のデータベクトルを表す信号を送信機から受信機に送信する前に、第3の変換行列を表す信号を第2の計算装置に渡すことを含む。代替的又は追加的に、いくつかの実施形態において、方法200はまた、第3の変換行列を層の組に分解することを含み、当該層の組からの各層は置換及びM×M次元を有するプリミティブ変換行列を含み、MはNよりも小さい値を有する正整数である。第2のデータベクトルは、当該層の組からの少なくとも1個の層に基づいていてよい。
【0042】
[0050]
図2Bは、一実施形態による、変換済みシンボルを生成及び送信する第1の例示的方法の代替的実装を示すフロー図である。
図2Bに示すように、方法200Bは、210において第1の計算装置のプロセッサを介して、入力データベクトルに基づいてシンボルの組を生成することを含む。シンボルの組はK個のシンボルを含み、Kは正整数である。211において、非線形変換が当該シンボルの組に適用されて、変換済みシンボルの組を生成する。次いで212において第1の変換行列が生成され、第1の変換行列は等角タイトフレーム(ETF)変換又は略等角タイトフレーム(NETF)変換の一方を含む。第1の変換行列はN×K次元を有し、NはK未満の値を有する正整数である。方法200はまた、214において、第1の変換行列に基づいて第2の変換行列を(例:第1の変換行列にK-N行を追加することにより)生成することを含む。第2の変換行列はK×K次元を有する。216において、第2の変換行列に対して(例えば計算コストがO(N)の算術演算を伴う)一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列が生成される。第3の変換行列はK×K次元を有する。第2の変換行列及び/又は第3の変換行列はユニタリ変換を含む。第1のデータベクトルが、218において、第3の変換行列及びシンボルの組に基づいて、長さNの第2のデータベクトルに変換される。219において、高速ユニタリ変換が第2のデータベクトルに適用されて第3のデータベクトルを生成する。送信されたメッセージを復元する受信機に第3のデータベクトルを表す信号を送信機から送信すべく、第3のデータベクトルを表す信号が、220において、送信機に渡される。受信機はアンテナアレイの組を含んでよい。受信機及び送信機は多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されていてよい。
【0043】
[0051]
図3は、一実施形態による、変換済みシンボルを生成及び送信する第2の例示的方法を示すフロー図である。
図3に示すように、方法300は、310において、受信機を介してシンボルの組を受信することを含む。シンボルの組はK個のシンボルを含み、Kは正整数である。第1の変換済みシンボルの組が、312において、K×K次元を有する疎変換行列及びシンボルの組(例:上述の高速ETFの適用)に基づいて生成される。第1の変換済みシンボルの組の生成は計算の複雑度がO(Nlog
2N)の算術演算を伴う場合がある。第2の変換済みシンボルの組が、314において、第1の変換済みシンボルの組に基づいて生成される。314における第2の変換済みシンボルの組の生成は反復的処理を含んでよく、当該反復的処理の各反復は、(a)置換に続き、(b)次元M×M(Mは正整数)を有する少なくとも1個のプリミティブ変換行列の適用を含む。第2の変換済みシンボルの組の生成は、計算の複雑度がO(Nlog
2N)の算術演算を伴う場合がある。方法300はまた、316において送信機から、第2の変換済みシンボル組を表す信号を(例えば既知の受信機技術を用いて実現できるよりも速いレートで、元のシンボルの組を後で復元する受信機に)送信することを含む。送信機はアンテナアレイの組を含んでよく、且つMIMO動作を実行すべく構成されていてよい。
【0044】
[0052] いくつかの実施形態において、方法300の疎変換行列は第3の変換行列であり、方法300はまた、送信機に動作可能に結合された計算装置のプロセッサを介して第1の変換行列を生成することを含む。第1の変換行列はETF変換又はNETF変換を含み、第1の変換行列はN×K次元を有し、Kは正整数であって、KはNよりも大きい値を有している。第1の変換行列に基づいて、K×K次元を有する第2の変換行列を生成することができる。第2の変換行列に対して一連のユニタリ変換を実行することにより第3の変換行列を生成することができる。
【0045】
高速ETF構築の例
[0053] 高速ETFを生起させる例示的アルゴリズムを当該段落に開示する。ウェルチ境界が次式であるベクトル(N,K)=(3,4)を仮定する。
【数59】
【0046】
[0054] 次に、ベクトル(N,K)に基づいて次式のNETFが生成された(小数点以下2桁を丸めて)と仮定する。
【数60】
【0047】
[0055] 各項の絶対値を取ることにより直ちに次式が得られる。
【数61】
【0048】
[0056] 次に、次式のようにB
†Bを構築することができる。
【数62】
【0049】
[0057] 行列(0.0.29)の固有値分解(B
†B=UDU
†)が得られ、ここに
【数63】
且つ
【数64】
である。
【0050】
[0058] これらを乗算してB
†が得られる。
【数65】
【0051】
[0059] 従って
【数66】
を次式のよう構築することができる。
【数67】
【0052】
[0060] 行列
【数68】
ユニタリである。次に、上側のN×Nブロック内の下側の非対角三角行列をゼロクリアすることができる。例えば、(1,1)成分を用いて(2、1)成分をゼロクリアすることができる。これを行うための単位ユニタリ行列は次式である。
【数69】
【0053】
[0061] (2、1)成分は
【数70】
に作用することにより除去でき、当該行列は適当な4×4に拡張される。換言すれば、
【数71】
である。
【0054】
[0062] 次に、(3,1)成分は、(1,1)及び(3,1)成分から同一行列を構築することにより除去できる。この乗算は次式の通りである。
【数72】
【0055】
[0063] 次式に達するまで追加的な行列演算を同様に実行することができる。
【数73】
【0056】
[0064] 行列(0.0.37)は事前処理ステップの一部として得られるゼロのパターンである。
【数74】
の先頭3行は、使用する3×4ETFになる。
【0057】
[0065] 次に、
【数75】
の疎分解を構築することができる。除去すべき3項すなわち(4,1)成分、(4,2)成分、及び(4,3)成分があることに注意されたい。これを実現すべく、(1,1)、(4,1)成分からユニタリを構築する。
【数76】
【0058】
[0066] この結果、
【数77】
は次式になる。
【数78】
【0059】
[0067] 上の処理を続けて、以下の行列により、2,2成分を用いて(4,2)成分を除去する。
【数79】
【0060】
[0068]
【数80】
にJ
2を乗じた結果、次式が得られる。
【数81】
【0061】
[0069] 次に、(4,3)成分は、次式を用いて(3,3)成分により除去することができる。
【数82】
【0062】
[0070] これにより次式が得られる。
【数83】
【0063】
[0071] 次いで、最後の項に正しい位相を設定すべく、行列(0.0.43)に最後の項J
4を乗算することができる。
【数84】
【0064】
[0072] このような乗算の結果次式が得られ、
【数85】
但し
【数86】
且つ乗算(0.0.46)は、(0.0.37)に合致することを確認すべく実行することができる。
【0065】
[0073] 上述の例示的実装において、及び4個のデータシンボルのベクトル
【数87】
を与えられて、
図4に示すような線図を構築することができる。
図4の線及び番号は、所与の値にその入力線の次の数値を乗算し、次いでこれらの値を当該ノードで加算するという点で、
図6に関して以下に図示及び記述するような離散的フーリエ変換(DFT)図と同様に、又は高速フーリエ変換(FFT)図と同様に理解することができる。例えば、Xと印を付けたノードは、最も上の線に入力する値に-.59の+.39iを乗算して、最も下の時点から入力される数.58-.41iに加算した値であると理解されたい。
図4に示す演算の出力が得られたならば、最後のK-N=4-3=1個の値を切り捨て、先頭のN=3個だけを残す(すなわちベクトル「N」)ことができる。このベクトルNは従って送信可能なシンボルの「負荷が掛かり過ぎた」リストである。いくつかの実施形態において、ベクトルNは、例えば参照により本明細書で引用する米国特許出願第16/459,262号に記述されている、後述するような形式の任意の速い一般ユニタリにより更に演算することができる。受信機で受信されたならば、速い一般ユニタリがあればベクトルNから除去され、受信機は受信した(長さN)ベクトルを長さKまで「0パッド」(すなわちゼロを追加/補足)して、
【数88】
の(高速)逆変換を適用することができる。
【0066】
例示的高速ユニタリ変換-システム及び方法
[0074]
図5Aは、一実施形態による、(例えば、上述のようにETF/NETF変換から生じた長さNのベクトルに作用する)任意の行列の階層構造を用いる通信方法を示すフロー図である。方法500Aは、510において、第1の計算装置の第1のプロセッサを介して複数のシンボルを生成することを含む。方法500はまた、520において、サイズN×Nの任意の変換を複数のシンボルからの各シンボルに適用して複数の変換済みシンボルを生成することを含み、Nは正整数である。任意の変換は反復的処理(例えば複数の層を含む)を含み、各反復は、1)置換に続いて、2)サイズM×Mの少なくとも1個のプリミティブ変換行列の適用を含み、MはN以下の値を有する正整数である。
【0067】
[0075] 530において、複数の変換済みシンボルを表す信号が複数の送信機に渡され、当該送信機は複数の変換済みシンボルを表す信号を複数の受信機に送信する。方法500Aはまた、540において、複数の信号受信機で複数のシンボルを復元すべく、複数の変換済みシンボルを送信する前に任意の変換を複数の信号受信機に送信すべく任意の変換を表す信号を第2の計算装置に渡すことを含む。
【0068】
[0076]
図5Bは、
図5Aの方法500Aの代替的実装を示すフロー図である。方法500Bは、510において、第1の計算装置の第1のプロセッサを介して、複数のシンボルを生成することを含む。515において、複数のシンボルに非線形変換が適用されて第1の複数の変換済み信号を生成する。方法500Bはまた、520において、サイズN×Nの任意の変換を第1の複数の変換済みシンボルからの各変換済みシンボルに適用して第2の複数の変換済みシンボルを生成することを含み、Nは正整数である。任意の変換は、反復的処理(例えば複数の層を含む)を含み、各反復は1)置換に続いて、2)サイズM×Mの少なくとも1個のプリミティブ変換行列の適用を含み、MはN以下の値を有する正整数である。
【0069】
[0077] 530において、第2の複数の変換済みシンボルを表す信号が複数の送信機に渡され、当該送信機が第2の複数の変換済みシンボルを表す信号を複数の受信機に送信する。方法500Bはまた、540において、複数の信号受信機で複数のシンボルを復元すべく、第2の複数の変換済みシンボルを送信する前に任意の変換を複数の信号受信機に送信すべく任意の変換を表す信号を第2の計算装置に渡すことを含む。
【0070】
[0078] いくつかの実施形態において、複数の信号受信機は、複数のアンテナアレイを含み、複数の信号受信機及び複数の信号送信機は多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている。いくつかの実施形態において、任意の変換はユニタリ変換を含む。いくつかの実施形態において、任意の変換は、フーリエ変換、ウォルシュ変換、ハー変換、傾斜変換、又はテプリッツ変換のうち一つを含む。
【0071】
[0079] いくつかの実施形態において、少なくとも1個のプリミティブ変換行列からの各プリミティブ変換行列は、大きさが2の次元(例:長さ)を有し、反復的処理の反復回数はlog2Nである。いくつかの実施形態において、プリミティブ変換行列に他の任意の適当な長さを用いてもよい。例えば、プリミティブ変換行列は、2を超える(例:3、4、5等)長さを有していてよい。いくつかの実施形態において、プリミティブ変換行列は、様々な次元の複数のより小さい行列を含む。例えば、プリミティブ変換行列はブロックU(m)行列を含んでよく、mは単一層内で又は異なる層間で異なる値であってよい。
【0072】
[0080] 方法500A及び500Bの高速行列演算(例:520)は離散的フーリエ変換(DFT)に関してより詳細に調べることができる。いかなる特定の理論も又は動作モードに縛られることなく、ベクトル
【数89】
の成分B
kを有する
【数90】
と表記されるDFTは次式で与えられる。
【数91】
ここに
【数92】
である。
【0073】
[0081] 一般にDFTは、式(18)で示すように、簡単な行列乗算を用いて実行された場合、N
2回の乗算を行う。しかし、単位根は乗算の回数を減らすことができる対称性の組を有している。この目的のため、式(18)における和を(Nが2の倍数であると仮定して)次式のように偶数及び奇数の項に分けることができる。
【数93】
【0074】
[0082] また、
【数94】
であるため、B
kは次式のように書くことができる。
【数95】
ここでkはnの2倍の範囲にわたる。しかし次式を考える。
【数96】
その結果、(N/2)点フーリエ変換におけるk値の「後半」を容易に計算することができる。
【0075】
[0083] DFTにおいて、Bkを求める当初の和はN回の乗算を含む。上述の解析は当初の和を各々が(N/2)回の乗算を含む2組の和に分解する。ここで、nにわたる和は、偶数又は奇数にわたるのではなく0~(N/2)-1である。これにより、(N/2もまた2の倍数であると仮定して)上で述べたのと全く同じ仕方で、これらの和を再びで偶数又は奇数の項に分割することができる。この結果各々が(N/4)個の項を有する4個の和が得られる。Nが2のべき乗である場合、分割処理は2点DFT乗算まで継続することができる。
【0076】
[0084]
図6は、ベクトル
【数97】
の離散的フーリエ変換(DFT)を示す図である。ω
N値に各ノードへ下側入力線上の数が乗算される。
図6の3列の各々でN回の乗算があり、列の個数を2、すなわちlog(N)に達する前に2で除算することができる。従って、当該DFTの複雑度はO(N
*logN)である。
【0077】
[0085] 上の解析は次式のようにDFTの範囲を超えて拡張することができる。最初に、ベクトルへの入力値に置換が実行されて置換済みベクトルを生成する。置換は通常O(1)の演算である。次いで、置換済みベクトルの要素のペアに対して一連のU(2)行列乗算が実行される。上のDFT例の第1列におけるU(2)値は全て次式で与えられる。
【数98】
【0078】
[0086] U(2)行列乗算は((23)に示すもの以外の)他の行列を用いても実行できる。例えば、任意の行列
【数99】
を用いてよく、ここに
【数100】
は直和を示し、当該行列がブロック対角構造を与える。
【0079】
[0087] 本明細書に記述するように、1個の置換と1シリーズのU(2)行列乗算の組み合わせは1個の層と見なすことができる。当該処理は、追加的な層において継続することができ、その各々が
【数101】
における更に別の行列による1個の置換及び複数の乗算を含む。いくつかの実施形態において、階層的計算は約log(N)回反復することができる。いくつかの実施形態において、層の個数は他の任意の値(例:利用可能な計算能力の範囲内で)であってよい。
【0080】
[0088] 上述の階層的計算の結果は、以下の形式の行列を含む。
【数102】
ここにA
iはi番目の層における行列乗算のi番目のシリーズを表し、P
iはi番目の置換を表す。
【0081】
[0089] 置換及びA行列が全てユニタリであるため、逆変換も容易に計算することができる。上述の階層的計算において、置換は計算が自由であり、計算コストはAi行列の乗算から生じる。より具体的には、計算は合わせて各Aiにおける2N回の乗算を含み、Ai行列のlog(N)がある。従って、計算は合わせて2N*log(N)、又はO(N*log(N))回の演算を含み、これはOFDMの複雑度と同等である。
【0082】
[0090] 階層的計算は、他の任意のブロックU(m)行列にも適用することができる。例えば、A
i行列は
【数103】
又は
【数104】
であってよい。他の任意の個数mを用いてよい。また、置換とブロックU(m)行列の任意の組み合わせも許容可能な当該階層的計算に用いることができる。
【0083】
[0091] いくつかの実施形態において、1層内での置換及びブロックU(m)変換は非連続的に実行することができる。例えば、置換の後で、ブロックU(m)変換の前に、他の任意の動作を次に実行することができる。いくつかの実施形態において、置換はユニタリ群の閉部分群であるため、ある置換の後に別の置換が続くことはない。いくつかの実施形態において、ブロックU(m)変換もユニタリ群の閉部分群を形成するため、その後に別のブロックU(m)変換が続くことはない。換言すれば、B
nをブロックU(n)とし、Pを置換とすれば、
【数105】
及び
【数106】
のような演算を実行することができる。対照的に、2個の置換又は2個のブロックU(m)変換はここでは連続的であるため、
【数107】
及び
【数108】
のような演算は冗長であり得る。
【0084】
[0092] ユニタリ行列を構築する階層的アプローチもまた、結果的に得られる通信システムの安全性を保障することができる。結果的に得られる通信の安全性は、全グループU(N)と比較して高速ユニタリ行列の行列空間のサイズに依存し得る。
【0085】
[0093]
図7は、一実施形態による、ユニタリ行列の階層構造を用いる通信システムの模式図である。システム700は、複数の信号送信機710(1)~710(i)(包括的に送信機710と称する)及び複数の信号受信機720(1)~720(j)(包括的に受信機720と称する)を含み、i及びjは共に正整数である。いくつかの実施形態において、iとjは等しくてよい。他のいくつかの実施形態において、iはjと異なっていてよい。いくつかの実施形態において、送信機710及び受信機720は多入力多出力(MIMO)動作を実行すべく構成されている。
【0086】
[0094] いくつかの実施形態において、送信機710は
図7に示すと共に上で述べた信号送信機720と実質的に同一であってよい。いくつかの実施形態において、受信機720は
図7に示すと共に上で述べた信号受信機730と実質的に同一であってよい。いくつかの実施形態において、各送信機710はアンテナを含み、送信機710はアンテナアレイを形成することができる。いくつかの実施形態において、各受信機はアンテナを含み、受信機720もまたアンテナアレイを形成することができる。
【0087】
[0095] システム700はまた、信号送信機710に動作可能に結合されたプロセッサ730を含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ730は単一のプロセッサを含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ730はプロセッサのグループを含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ730は1個以上の送信機710に含まれていてよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ720は送信機710とは別個であってよい。例えば、プロセッサ730は、入力データ701を処理し、次いで入力データ701を表す信号を送信機710に送信させるべく構成された計算装置に含まれていてよい。
【0088】
[0096] プロセッサ730は、入力データ701に基づいて複数のシンボルを生成して、サイズN×Nのユニタリ変換行列を層の組に分解すべく構成されていて、Nは正整数である。各層は、置換及びサイズM×Mの少なくとも1個のプリミティブ変換行列を含み、MはN以下の正整数である。
【0089】
[0097] プロセッサ730はまた、層の組から少なくとも1個の層を用いて複数のシンボルからの各シンボルを符号化して複数の変換済みシンボルを生成すべく構成されている。複数の変換済みシンボルを表す信号は次いで、複数の信号受信機720に送信すべく複数の送信機710に渡される。いくつかの実施形態において、複数の送信機710の各送信機は複数の受信機720の任意の受信機と通信することができる。
【0090】
[0098] いくつかの実施形態において、プロセッサ730は更に、変換済みシンボルを表す信号を受信機720に送信する前に、(1)ユニタリ変換行列、又は(2)ユニタリ変換行列の逆変換の一方を表す信号を信号受信機720に送信すべく構成されている。信号受信機720が当該信号を用いて、入力データ701から生成されたシンボルを復元することができる。いくつかの実施形態において、シンボル復元のためにユニタリ変換行列を用いることができる。いくつかの実施形態において、復元はユニタリ変換行列の逆変換を用いて実現することができる。
【0091】
[0099] いくつかの実施形態において、高速ユニタリ変換行列は、フーリエ行列、ウォルシュ行列、ハー行列、傾斜行列、又はテプリッツ行列のうち一つを含む。いくつかの実施形態において、プリミティブ変換行列は、大きさが2の次元(例:長さ)を有し、層の組はlog2N個の層を含む。いくつかの実施形態において、上記のように他の任意の長さを用いてよい。いくつかの実施形態において、信号受信機720は、複数の変換済みシンボルを表す信号を目標装置に送信すべく構成されている。
【0092】
[0100] 上述のように、いくつかの実施形態において、送信の前にETF(直交行列よりも一般的なの変換)をシンボル変換に用いる。ETFは、全てのドット積が「ウェルチ境界」に等しいN<K個のベクトルにおける絶対値を有するK個の単位ベクトルの組である。ウェルチ境界はベクトルのペア毎のドット積の最大絶対値に上限を課す。換言すれば、N次元を与えられて、N個のよりも多くの単位ベクトルを用いる場合、それら全てが互いに直交するのは可能でない。ETF(又はNETF)は、全てが互いに直交すべく可能な限り近いN次元におけるN>K個の単位ベクトルの選択である。NETFは任意の個数のベクトルに対して、全ての次元に存在する。
【0093】
[0101] ETF又はNETFにより直接シーケンススペクトル拡散(DSSS)及び/又は符号分割多重アクセス(CDMA)を実行することにより、完全な直交性を阻害し得るが、逆にマルチユーザー又は符号間干渉をもたらすことができる。しかしETF又はNETFに基づくDSSS/CDMAは、エンジニアがシステム設計に使用可能なパラメータを提供する。例えば、複数のユーザーがいるシステムにおいて、ユーザーが特定の時間配分でのみ送信する場合、マルチユーザー干渉が大幅に減少し得る。このような状況下で、システム設計者は性能を犠牲にすることなくユーザーを追加することができる。システム設計者はまた、他の形式の冗長性(例:順方向誤り訂正(FEC))で設計を行って干渉に対する送信の耐性を高める、又は信号完全性に対する干渉の影響を低下させることができる。
【0094】
[0102] 本明細書に開示するコードマップは、いくつかの実施形態において、複素空間CN内で実行可能な拡散符号の構築を容易にする。疑似ノイズ(PN)に符号(例:公知のDSSS/CDMAシステムで用いるPN符号)基づいてETF又はNETFを構築することは困難であるが、本明細書に開示するようにCNで符号を構築することにより、複素線形代数の極めて多岐にわたる数値的方法が使用できる。いくつかの実装において、公知のアルゴリズムを用いてCN内でETF及びNETFを構築し、次いで、依然として結果はETF又はNETFであるにせよ、符号の拡散の有効な組を構成するようにコードマップが適用される。
【0095】
[0103] 本明細書に記述する各種の技術の実装は、デジタル電子回路、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、或いはこれらを組み合わせて実装することができる。実装は、コンピュータプログラム製品、すなわち、情報担持体、例えば、機械可読記憶装置(コンピュータ可読媒体、非一時的コンピュータ可読記憶媒体、有形のコンピュータ可読記憶媒体、例えば
図1の記憶媒体112、114を参照)内に、又はデータ処理装置、例えば、プログラム可能プロセッサ、1個のコンピュータ、又は複数のコンピュータによる処理のための、又はその動作を制御すべく伝播される信号内に有形に実装されたコンピュータプログラムとして実装されていてよい。上述のコンピュータプログラム等のコンピュータプログラムは、コンパイラ又はインタープリタ言語を含む任意の形状のプログラミング言語で書かれていてよく、スタンドアローンプログラム、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、或いはコンピューティング環境での使用に適した他の装置を含む任意の形式で展開可能である。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータ、又は1サイトに配置された、或いは複数サイトに跨って分散されて通信ネットワークにより相互接続された複数のコンピュータで処理されるべく展開することができる。
【0096】
[0104] 方法ステップは、入力データに作用して出力を生成することにより機能を実行すべくコンピュータプログラムを実行する1個以上のプログラム可能プロセッサにより実行されてよい。方法ステップはまた、専用論理回路、例えばFPGA(フィールドプログラム可能ゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)により実行されてよく、且つ装置をこれらの回路として実装することができる。
【0097】
[0105] コンピュータプログラムの処理に適したプロセッサは、一例として、汎用及び専用マイクロプロセッサの両方、及び任意の種類のデジタルコンピュータの1個以上の任意のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは読出専用メモリ又はランダムアクセスメモリから或いは両方から命令及びデータを受信する。コンピュータの要素は、命令を実行する少なくとも1個のプロセッサ、及び命令及びデータを保存するための1個以上のメモリ装置を含んでよい。一般に、コンピュータはまた、例えば、磁気、光磁気ディスク、又は光ディスク等、データ保存用の1個以上の大量記憶装置を含むか、又はデータ受信又はデータ転送或いはその両方を行うべくこれらに動作可能に結合されていてよい。コンピュータプログラム命令及びデータの実装に適した情報担持体は、一例として半導体メモリ素子、例えば、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリ素子、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク又は着脱可能ディスク、光磁気ディスク、及びCD-ROM並びにDVD-ROMディスクを含むあらゆる形式の不揮発性メモリを含む。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路により補完されるか、又はこれに組み込まれていてよい。
【0098】
[0106] ユーザーとの対話を提供すべく、実装は、ユーザーに情報を提示するための表示装置、例えば液晶ディスプレイ(LCD又はLED)モニタ、タッチスクリーンディスプレイ、及びユーザーがコンピュータへの入力を提供できるキーボード及びポインティング機器、例えばマウス又はトラックボールを有するコンピュータ上で実装することができる。他の種類の機器を用いて同じくユーザーとの対話を提供することができ、例えば、ユーザーに提供されるフィードバックは、知覚フィードバック、例えば視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバック等、任意の形式であってよく、ユーザーからの入力は、音響、音声、又は触覚入力を含む任意の形式で受信することができる。
【0099】
[0107] 実装は、例えばデータサーバとしてのバックエンド要素を含む、又はミドルウェア要素、例えばアプリケーションサーバを含む、或いはフロントエンド要素、例えばユーザーと実装との対話を仲介できるグラフィカルユーザーインターフェース又はウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ、若しくはこのようなバックエンド、ミドルウェア、又はフロントエンド要素の任意の組み合わせを含むコンピュータシステムに実装することができる。要素は、デジタルデータ通信の任意の形式又は媒体、例えば通信ネットワークにより相互接続されていてよい。通信ネットワークの複数の例として、ローカルエリアネットワーク(LAN)及びワイドエリアネットワーク(WAN)、例えばインターネットが含まれる。
【0100】
[0108] 上述の実装の特定の特徴を本明細書の記述に従い説明してきたが、当業者には多くの改良、代替、変更及び等価物が想起されよう。従って、添付の請求項が、実装の範囲内にあるような全てのそのような改良及び変更をカバーすることを意図していることを理解されたい。これらが限定目的ではなく例示目的でのみ提示されており、形式及び詳細事項に各種の変更がなされ得ることを理解されたい。本明細書に記述する装置及び/又は方法の任意の部分を、互いに排他的な組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせてよい。本明細書に記述する実装は、記述する異なる実装の各種の機能、要素及び/又は特徴の組み合わせ及び/又は副次的組み合わせを含んでよい。