(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】試料を取り扱うためのデバイスおよびそのようなデバイスを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20241011BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241011BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20241011BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20241011BHJP
G01N 1/34 20060101ALI20241011BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G01N35/10 Z
C12M1/00 A
C12M1/42
G01N1/28 J
G01N1/34
G01N35/00 A
(21)【出願番号】P 2022533439
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2020061347
(87)【国際公開番号】W WO2021111309
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-22
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519459399
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ ホールディングス プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】サーレライネン ヤリ
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-501194(JP,A)
【文献】特開2012-132694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0102056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器(1)の試料ウェル(2)内に位置し、かつ磁気応答性粒子を含有する試料を取り扱うためのデバイスであって、前記デバイスが、前記試料を処理することができる試料取り扱い領域(8)と、前記試料ウェル(2)から磁気応答性粒子を取り出すために、または磁気応答性粒子を前記試料ウェル(2)に挿入するために、前記試料ウェル(2)に挿入可能である複数のプローブ(3)と、を備え、
前記デバイスが、前記試料取り扱い領域(8)の下に位置するディスプレイ(13)を備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、前記デバイスのユーザに指示する情報を前記ディスプレイ(13)上に表示するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスが、試料容器(1)を前記デバイスに装填することができるときを前記ディスプレイ(13)上に示すように構成されている、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスが、試料容器(1)を前記デバイスから取り出すことができるときを前記ディスプレイ(13)上に示すように構成されている、請求項1~3のいずれかに一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、前記試料容器(1)が選択された試料取り扱いプロセスにとって正しい/正しくないことを前記ディスプレイ(13)上に示すように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスが、試料容器(1)を前記デバイス内に装填する方法を前記ディスプレイ(13)上に指示するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、前記デバイスのユーザからの特定のアクションを必要とする試料容器(1)または試料ウェル(2)を前記ディスプレイ(13)上で識別するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記デバイスが、試料容器(1)内に位置するコードまたはタグから情報を読み取るためのバーコードもしくはQRコードリーダー(19)またはRFIDタグリーダーを含み、前記デバイスが、読み取られた前記コードまたはタグに基づいて、情報を前記ディスプレイ(13)上に表示するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記試料取り扱い領域(8)が、少なくとも2つの所定の試料取り扱い位置(9、10、11)を含み、前記ディスプレイ(13)が、前記所定の試料取り扱い位置(9、10、11)のうちの1つの下に位置する、先行請求項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスが、前記試料取り扱い位置(9、10、11)間で試料容器(1)を移動させるための回転可能なプラットフォーム(7)を備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ディスプレイ(13)が、試料容器(1)を前記デバイス内に装填することおよび/または試料容器(1)を前記デバイスから取り出すことを可能にするように構成されている試料取り扱い位置(10)の下に位置する、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ディスプレイ(13)は、前記試料容器(1)が前記デバイス内に装填されている、および/または前記デバイスから取り出されている間、前記デバイスのユーザに見えるように構成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
先行請求項のいずれか一項に記載のデバイスを動作させる方法であって、
-前記ディスプレイ(13)上に、前記デバイスがユーザアクション、またはユーザによる選択もしくは入力の準備ができていることを示すステップ(101a、101b)と、
-前記ユーザアクション、選択、または入力を待つステップ(102a、102b)と、
-正しいアクションが達成されているかどうかを判定するか、または前記選択もしくは入力の確認を求めるステップ(103a、103b)と、
-正しいアクションまたは確認された選択もしくは入力の場合は、次の動作ステップに進むステップ(105)と、を含む、方法。
【請求項14】
誤ったアクションまたはキャンセルされた選択もしくは入力が、前記ディスプレイ(13)上に示される(104a、104c)、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に定義されているように、試料容器の試料ウェル内に位置し、かつ磁気応答性粒子を含有する試料を取り扱うためのデバイスに関する。本発明はまた、他の独立請求項に従ってそのようなデバイスを動作させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では磁性粒子とも呼ばれる磁気応答性粒子は、表面上で反応が起こり得る固相表面として、様々な方法またはアッセイで用いられる。磁性粒子は、典型的には、磁場によって引き付けることが可能な鉄でできたコアを備え、典型的には、異なる物質の混合物を含む液体試料中の所与の第2の物質との特定の反応を有する物質でコーティングされる。これにより、この所与の第2の物質を、それが含有されているアッセイ混合物から分離することが可能となる。
【0003】
反応混合物は、典型的には、試料容器の試料ウェル内に配置される。粒子は通常、反応後に反応混合物から分離する必要がある。反応混合物から粒子を分離する1つの方式は、試料ウェルから反応媒体を取り出し、粒子を試料ウェル内に残すことである。
【0004】
代替的に、粒子をウェルから取り出すことができる。これは、シールド内に位置し、シールドに対してシールドの長手方向に移動可能な磁石を含む細長い転移プローブの助けを借りて行うことができる。転移プローブが混合物内に導入され、磁石をより低い位置におかれると、粒子は、転移プローブの表面に付着し、混合物から取り出すことができる。対照的に、磁石がより上の位置に引っ張られると、粒子は、転移プローブの表面から取り外される。磁性粒子を含む試料を取り扱うためのデバイスは、複数の試料の同時処理を可能にするために並行して動作する複数の転移ローブを備え得る。磁石は、磁石の下極のみが粒子を収集するような長さを有することができる。転移プローブの磁石は、互いに同じ方向に向けることができる。つまり、同様の極を常に同じ方向に向けることができるか、または、磁石の一部を逆向きにすることができる。
【0005】
磁性粒子を取り扱うためのデバイスは、デバイスの状態に関する情報を提供するディスプレイを備えていてもよい。ディスプレイは、典型的には、反応混合物および磁性粒子を含む容器が位置する領域の片側にある。デバイスの側面に位置するディスプレイは、デバイスのユーザに確実に指示する限定された機能を有する。代替的に、デバイスは、デバイスに接続された専用のオペレーティングソフトウェアを含むコンピュータを介して操作され得る。
【0006】
市販のデバイスの例は、Thermo Fisher ScientificからのKingFisher(商標)磁性粒子処理機器である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、試料容器の試料ウェル内に位置し、かつ磁気応答性粒子を含有する試料を取り扱うための改良されたデバイスを提供することである。デバイスは、デバイスが、試料を処理することができる試料取り扱い領域と、試料ウェルから磁気応答性粒子を取り出すために、または磁気応答性粒子を試料ウェルに挿入するために、試料ウェルに挿入可能である複数のプローブと、を備える。本発明によるデバイスを特徴付ける特性は、請求項1の特徴部分に与えられている。本発明の別の目的は、そのようなデバイスを動作させる方法を提供することである。本発明による方法を特徴付ける特性は、他の独立請求項に与えられている。
【0008】
本発明によるデバイスは、試料取り扱い領域の下に位置するディスプレイを備える。ディスプレイにより、試料を処理する領域でデバイスのユーザに様々な情報を表示することができる。ユーザは、ディスプレイおよび試料の両方を同時に見ることができるため、デバイスの使用時にミスをするリスクが軽減される。また、デバイスの使用は、より効果的であり、試料に対して実施された分析の結果は、より信頼性がある。
【0009】
本発明による方法は、ディスプレイ上に、デバイスがユーザアクション、またはユーザによる選択もしくは入力の準備ができていることを示すステップと、ユーザアクション、選択、または入力を待つステップと、正しいアクションが達成されたかどうかを判定するか、選択または入力の確認を求めるステップと、正しいアクションまたは確認された選択もしくは入力の場合は、次の動作ステップに進むステップと、を含む。
【0010】
本発明による方法では、ユーザはディスプレイ上で指示され、デバイスは、正しいアクションが実施されたかどうかを判定するか、または選択もしくは入力の確認を求める。したがって、デバイスは、ユーザとインタラクトし、人為的エラーのリスクを低減し、デバイスを使用することのプロセスをより効果的にし、試料で実施されたアッセイの結果の信頼性を改善する。
【0011】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、デバイスのユーザに指示する情報をディスプレイ上に表示するように構成されている。
【0012】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、試料容器をデバイス内に装填することができるとき、またはデバイスから取り出すことができるときに、ディスプレイ上に示すように構成されている。
【0013】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、試料容器が選択された試料取り扱いプロセスにとって正しい/正しくないことをディスプレイ上に示すように構成されている。
【0014】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、ディスプレイ上で、試料容器をデバイス内に装填する方法を指示するように構成されている。
【0015】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、デバイスのユーザからの特定のアクションを必要とする試料容器または試料ウェルをディスプレイ上で識別するように構成されている。
【0016】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、試料容器内に位置するコードまたはタグから情報を読み取るためのバーコードまたはQRコードリーダーまたはRFIDタグリーダーを含み、デバイスは、読み取られたコードまたはタグに基づいて、情報をディスプレイ上に表示するように構成されている。
【0017】
本発明の実施形態によれば、試料取り扱い領域は、少なくとも2つの所定の試料取り扱い位置を含み、ディスプレイは、所定の試料取り扱い位置のうちの1つの下に位置する。
【0018】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、試料取り扱い位置間で試料容器を移動させるための回転可能なプラットフォームを備える。
【0019】
本発明の実施形態によれば、ディスプレイは、試料容器をデバイス内に装填することおよび/または試料容器をデバイスから取り出すことを可能にするように構成されている試料取り扱い位置の下に位置する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、ディスプレイは、試料容器がデバイス内に装填されている間、および/またはデバイスから取り出されている間、デバイスのユーザに見えるように構成されている。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、この方法では、誤ったアクションまたはキャンセルされた選択もしくは入力が、ディスプレイ上に示される。
【0022】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】試料ウェルと、試料ウェル内に位置する試料から磁性粒子を分離するためのプローブと、を示す。
【
図5】複数の試料ウェルを備える試料容器の例を示す。
【
図6】本発明の実施形態によるデバイスの部品をブロック図として示す。
【
図7】本発明の実施形態による方法をフローチャートとして示す。
【
図8】本発明の別の実施形態による方法をフローチャートとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、磁性粒子を含有する試料を取り扱うためのデバイスに関する。磁性粒子は、液体試料から物質を分離する際に利用される。試料は典型的には、生物学的試料であり、分離される物質は、例えば、細胞(例えば、バクテリアもしくはがん細胞)、タンパク質(例えば、抗原または抗体)、酵素、または核酸からなり得る。そのような目的に好適な多種多様な粒子が市販されている。粒子は、分離される物質の親和性試薬でコーティングされているか、または表面が本質的に物質と相互作用する。例えば、シリカ表面は、特定のコーティングなしで核酸と相互作用し得る。磁性粒子のサイズは、例えば、0.5~10μmの範囲、典型的には、1~5μmであり得る。粒子が収集されて放出される試料の容量は、典型的には、20~1000μlの範囲であるが、異なるアッセイで使用される容量はまた、本質的により大きいかより小さい可能性がある。
図1および
図2は、本発明の実施形態によるデバイスを示す。
【0025】
試料は、試料容器内に配置された試料ウェル内に位置する。各試料ウェルは、開いた上端を有する。試料容器は、例えば、試料ウェルのアレイを備えるマイクロプレート1であり得る。マイクロプレートの例を
図5に示す。マイクロプレートは、複数のウェル、すなわち行と列とに配置された穴、を含む平坦なプレートである。ウェルは、試料を受容し、小さい試験管として機能するように構成されている。典型的なマイクロプレートは、6個、24個、96個、384個、または1536個のウェルを備えるが、より大きいマイクロプレートも存在する。ウェルは、辺の比率が典型的には、2:3である矩形マトリックスに配置される。必要とされる異なる試料容量に対して、異なるウェルの深さを有するマイクロプレートが提供される。マイクロプレートの代わりに、試料容器はまた、例えば、複数の試料ウェルを含む別個の試料ウェルまたは試料ウェルモジュールを保持するように構成されているラックまたはフレームである可能性がある。したがって、異なるタイプおよびサイズのウェルが、異なるアッセイステップに対して提供される可能性がある。試料容器はまた、例えば、4個、6個、8個、10個、または12個のウェルを備えるストリップとして提供される可能性がある。
【0026】
デバイスは、磁性粒子を収集するため、かつ粒子を放出するための複数の磁性転移プローブを備える。プローブは、粒子を引き付け、かつ粒子を放出することを可能にするように構成されている。各プローブは、プローブに付着することができる磁気応答性粒子を引き付ける磁場を生成する。各プローブは、磁性粒子を引き付けるための磁石棒を備える。棒はシールドで囲むことができる。プローブの一端を試料ウェルに挿入することができる。シールドは、中空であり、閉鎖した下端および開いた上端を有する。磁石棒は、中空シールドの上端から少なくとも部分的に上下に移動可能である。粒子が収集されると、磁石はシールド内部の低い位置に保たれ、それによって、粒子が集まってシールドの下端に付着する。粒子を放出するために、磁石は、上部位置に持ち上げられ、磁石は、シールドに付着した粒子をもはや保持せず、粒子は、試料液体内に放出することができる。プローブを使用すると、磁性粒子を試料ウェルから別の試料ウェルまたは収集面上に転移させることができる。
【0027】
プローブにシールドを提供する必要はない。ただし、プローブにシールドが備えられていない場合は、アッセイに使用された後、磁石棒を精製しなければならない。したがって、シールドを使用することは有利である。シールドの数は通常、試料容器内の試料ウェルの数に対応するが、容器のいくつかのウェルを未使用のままにしておくことも可能であろう。その場合、シールドは必要とされないであろう。
【0028】
異なるアッセイの必要性を満たすために、異なるサイズおよび形状の磁石棒、容器、シールドが利用可能である。
【0029】
磁石は、永久磁石であり得る。磁石の長さは、好ましくは、粒子がシールドの先端上に、集中したスポットまたはリングとして集められる、磁石の直径よりもはるかに長い。最も好ましくは、磁石は非常に長いので、磁石の上部極は、粒子が分離される液体の表面より上に保たれる。粒子が大容量の液体(例えば最大50ml)から収集される場合、最初に粒子を試料ウェルの側壁または底に濃縮することが好ましい場合がある。
【0030】
図3は、マイクロプレート1の試料ウェル2に挿入されたプローブ3の例を示す。試料ウェル2は、所望の物質が分離されることになる液体試料を含有する。したがって、物質と選択的に相互作用する磁気応答性粒子は、試料に懸濁されている。粒子は、物質と相互作用し、それによって物質は、粒子の表面に固定される。その後、粒子を収集するために、磁性プローブ3が試料ウェル2内に導入される。プローブ3は、中空シールド5で覆われた細長い永久磁石4を備える。磁石4は、シールド5内で上下に移動可能であり、粒子は、磁石をその低い位置に保ちながら収集される。磁石4は、例えば、ネオジム磁石(NdFeB)であり得る。磁石4の上端は、試料ウェル2内の液面のかなり上まで延びる。シールド5の下端は、鋭い先端を有する先細の凹面を有し、その結果、粒子は、先端の凹面領域上にリングとして集中する。粒子を収集するとき、プローブ3は、ゆっくりと上下に数回移動される。
【0031】
粒子がプローブ3に収集された後、プローブ3は、試料ウェル2から持ち上げられ、磁石4をより低い位置に依然として保ち、それによって、粒子は、プローブ3に確実に付着し続ける。実際には、磁石4が下の位置から持ち上げられたとしても、粒子は、試料ウェル2から持ち上げられた後、プローブ3に付着されたままであろう。試料ウェル2から取り出した後、粒子は通常、少なくとも1つのステップで、好ましくはいくつかのステップで洗浄される。洗浄は、好ましくは、プローブ3の端部が洗浄液内に置かれ、磁石4が持ち上げられ、それによって、粒子が液体内に放出されるように行われる。
図4は、上の位置にある磁石4を示す。洗浄後、粒子は、再びプローブ3によって収集される。少量の液体が粒子の表面に付着する。つまり、粒子は濡れている。洗浄後、プローブ3を試料ウェルに挿入し、磁石4を
図4に示される位置に持ち上げることによって、粒子を別の試料ウェル内に放出することができる。
【0032】
代替的に、プローブ3は、放出位置で水平プレートと垂直に接触させる可能性があり、その下に放出磁石が配置される。プローブ3の磁石4を上向きに移動させることにより、磁性粒子が放出され、放出磁石によって引き付けられるであろう。磁性粒子は、放出位置上に、集中したスポットを形成するであろう。
【0033】
デバイスのプローブ3の数は、好ましくは、試料容器1内の試料ウェル2の数に対応する。デバイスは、特定のサイズのマイクロプレートで使用するように構成することができ、したがって、プローブ3の数は、マイクロプレート内のウェルの数に対応することができる。プローブ3は、マイクロプレートのウェルと同様のマトリックス内に配置される。
【0034】
シールド5は、シールドモジュール内に配置され得る。磁石は、磁石モジュール内に配置され得る。シールドモジュールおよび磁石モジュールの両方は、取り外し可能であり得る。異なる試料容器に対して、異なるモジュールを提供することができる。例えば、異なる試料容器は、異なる数のプローブ、ならびに異なるシールド/磁石の寸法および形状を必要とし得る。取り外し可能なモジュールを使用すると、デバイスを様々な試料容器での使用に容易に適合させることができる。
【0035】
プローブ3は、リフトデバイス6に取り付けられている。リフトデバイス6は、プローブ3を垂直方向に移動させるように構成されており、したがって、プローブ3は、試料ウェル2の開いた上端を介して試料ウェル2に挿入することができる。リフトデバイス6はまた、磁石4がシールド5に対して垂直方向に移動することを可能にするように構成されている。したがって、磁石4は、シールド5が試料ウェル2に挿入されたままで持ち上げることができる。これにより、磁性粒子を試料ウェル2に放出することを可能にする。
【0036】
デバイスは、回転可能なプラットフォーム7を備える。回転可能なプラットフォーム7は、試料ウェル内に位置する試料を処理することができる試料取り扱い領域8を覆う。プラットフォーム7を使用して、試料容器を所定の試料取り扱い場所の間で移動することができる。デバイスは、所定の手順に従ってプラットフォーム7を自動的に回転させるように構成されている。試料取り扱い場所9のうちの1つは、リフトデバイス6の下に位置する。リフトデバイス6の下に位置する試料取り扱い場所9では、磁性粒子を試料から分離するか、または試料ウェルに挿入することができる。
【0037】
試料取り扱い場所のうちの1つは、試料容器をデバイスに装填してデバイスから取り出すことができる装填場所10である。試料取り扱い領域8はまた、試料の加熱もしくは冷却または試薬の分配などの異なる目的のために専用にすることができるさらなる試料取り扱い場所11を含む。一部の試料取り扱い場所は、後続のプロセスステップで利用される試料容器を保持するために確保することができる。したがって、1つ以上の試料取り扱い場所11は、試料ウェル内の試料を加熱するための加熱要素、冷却要素、または試料ウェル2内に液体を分配するための分配手段を備えることができる。試料の取り扱い場所は、プラットフォーム7の下に配置された磁石を備えている可能性がある。
【0038】
プラットフォーム7は、複数の保持領域12を備える。各保持領域は、試料容器を把持するように構成されている。
図1および
図2の実施形態では、保持領域12は、プラットフォーム7の開口部として実装されている。各開口部は、開口部の縁部に対して支持されている試料容器を受容することができる。しかしながら、開口部の代わりに、保持領域は、試料容器を位置および保持するための保持要素を含む可能性がある。
【0039】
デバイスは、バーコードリーダー19を備える。バーコードリーダー19は、試料容器が装填位置10でデバイス内に装填されたときに、試料容器1内のバーコードを読み取ることができるように位置する。バーコードリーダー19はまた、シールドモジュールおよび磁石モジュールのバーコードを読み取るために使用することができる。リーダーは、バーコードの代わりに、またはバーコードに加えて、QRコードまたは同様のコードを読み取るように構成される可能性がある。リーダーはまた、RFIDタグを読み取るように構成される可能性がある。したがって、試料容器とシールドモジュールおよび磁石モジュールとは、RFIDタグを備えている可能性がある。
【0040】
少なくとも1つのディスプレイ13は、試料取り扱い領域8の下に位置する。
図1および
図2の実施形態では、ディスプレイ13は、装填位置10に位置する。しかしながら、装填場所10の代わりに、またはそれに加えて、他の試料取り扱い場所9、11はまた、ディスプレイを備える可能性がある。ディスプレイ13は、デバイスの使用中に見ることができる。デバイスは、試料がデバイスによって処理されているときに閉鎖することができるドア14を備える。ドア14は、ウィンドウ15を備えており、それを通して、ディスプレイ13はまた、試料の処理中に見られることができる。ディスプレイ13は、プラットフォーム7の開口部12を通して見られることができるように位置する。プラットフォームの保持領域が開口部なしで実装された場合、ディスプレイ13がプラットフォーム7を通して見られることを可能にするように、プラットフォーム7のうちの少なくとも一部を透明にする可能性がある。
【0041】
様々な情報をディスプレイ13上に表示することができる。デバイスは、デバイスのユーザに指示する情報をディスプレイ上に表示するように構成され得る。情報は、例えば、カラーコード、テキスト、画像、アニメーション、またはビデオの形式にすることができる。例えば、デバイスは、試料容器をデバイス内に装填することができるときにディスプレイ13上に示すように構成され得る。代替的に、またはそれに加えて、デバイスは、試料容器をデバイスから取り出すことができるときにディスプレイ13上に示すように構成され得る。指示は、例えば、カラーコード、テキスト、画像、またはアニメーションとして与えることができる。
【0042】
デバイスはまた、試料容器が選択された試料取り扱いプロセス(アッセイ)にとって正しいかまたは正しくないことをディスプレイ13上に示すように構成され得る。例えば、試料容器は、バーコードまたはQRコードまたはRFIDタグを備えることができ、デバイスは、バーコードまたはQRコードリーダー19またはRFIDリーダーを備えることができる。読み取られたコードまたはタグに基づいて、デバイスは、選択されたプロセスに試料容器を使用することができるかどうかを判定することができる。結果は、例えば、カラーコード、テキスト、または画像として、ディスプレイ13上に表示され得る。また、プローブモジュールおよび磁石モジュールは、リーダーによって読み取ることができる、バーコード、QRコード、またはRFIDタグを備えることができる。デバイスは、選択されたプロセスでモジュールが使用することができるかどうかを判定するように構成することができ、また、この情報をディスプレイ13上に表示することができる。
【0043】
デバイスはまた、試料容器をデバイス内に装填する方法をユーザに指示する可能性がある。デバイスはまた、特定のプロセスに使用するべきである特定のタイプの試料容器の画像をディスプレイ上に表示する可能性がある。
【0044】
デバイスはまた、ユーザからの特定のアクションを必要とする試料ウェルを識別するように構成される可能性がある。例えば、ディスプレイ13は、ユーザからの何らかのアクションを必要とする試料ウェルの下に光を表示する可能性がある。
【0045】
ディスプレイ13は、様々な技術を使用して実装することができる。例えば、ディスプレイ13は、液晶ディスプレイ(LCD)、LEDディスプレイ、またはOLEDディスプレイであり得る。そのようなディスプレイにより、詳細な画像、テキストの一節、または例えば、アニメーションもしくはビデオを表示することを可能にするであろう。しかしながら、場合によっては、異なる色、個々の単語、単純なアイコン、または同様の情報を表示するだけで十分な場合がある。そのような場合、ディスプレイは、例えば、LEDマトリックスであり得る。LEDマトリックスは、ここではLEDのグループを指し、個々のLEDは肉眼で区別することができる。
【0046】
このデバイスはまた、別のディスプレイ16を備える。もう一方のディスプレイ16は、試料取り扱い領域8に隣接して配置される。ディスプレイ16は、デバイスのメインディスプレイとして機能する。試料取り扱い領域の下のディスプレイ13は、補助ディスプレイとして機能する。補助ディスプレイ13は、試料取り扱い領域8の下に位置するので、デバイスのユーザは、試料およびディスプレイ13を同時に見ることができる。これにより、デバイスの使用がより効果的になり、人的エラーのリスクが軽減される。
【0047】
図6は、本発明の実施形態によるデバイスをブロック図として示す。デバイスは、制御ユニット17を備える。制御ユニット17は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えることができる。制御ユニット17は、CPUと通信する、揮発性メモリおよび不揮発性メモリの両方を備えることができる。制御ユニット17は、回転可能なプラットフォーム7およびリフトデバイス6の動作を制御する。制御ユニット17は、試料の加熱もしくは冷却、または試料ウェル2への試薬の分配など、デバイスの任意の他の機能をさらに制御することができる。制御ユニット17はまた、バーコードリーダー19を制御し、バーコードリーダー19からデータを受信する。デバイスは、入力手段18を備える。入力手段18は、デバイスのユーザインターフェイスの一部として機能する。入力手段18を介して、ユーザは、デバイスを操作し、例えば、試料を処理するための特定のプロセス(アッセイ)を選択することができる。
図1および
図2の実施形態では、メインディスプレイ16は、入力手段18としても機能するタッチディスプレイである。しかしながら、デバイスはまた、入力手段として機能するキーボードおよび/またはボタンを備える可能性がある。また、補助ディスプレイ13は、入力手段として機能するタッチディスプレイである可能性がある。これにより、ユーザにより実施されたアクションの肯定応答を入力する(例えば、ユーザは、「はい」に対応するテキストまたは記号にタッチする)ことを可能にするであろう。同様に、「キャンセル」に対応するテキストまたは記号にタッチすることによって、ステップはキャンセルされる可能性がある。制御ユニット17は、メインディスプレイ16および補助ディスプレイ13の両方と通信する。デバイスは、メインディスプレイ15上に特定の情報を示し、補助ディスプレイ13上に特定の他の情報を表示するように構成することができる。デバイスはまた、両方のディスプレイ上に同じ情報を表示する可能性がある。補助ディスプレイ13およびメインディスプレイ16上に表示される情報は、相互に関連付けることができる。例えば、特定の情報を補助ディスプレイ13上に表示することができ、上記情報に関連する詳細またはさらなる情報をメインディスプレイ16上に表示することができる。詳細情報は、例えば、追加のテキスト、またはファイルへのリンクであり得る。デバイスは、補助ディスプレイ13さえなしに、完全に操作可能であるように構成することができる。デバイスは外部コンピュータに接続することができる。
【0048】
一例によれば、デバイスは、デバイスが新しい試料容器を装填する準備ができていること、またはデバイスから試料容器を取り出す準備ができていることを補助ディスプレイ13上に示すように構成されている。これは、例えば、ディスプレイ13上に特定の色を表示することによって示すことができる。指示に基づいて、ユーザは、デバイスから試料容器を取り出し、および/または新しい試料容器をデバイス内に装填する。新しい試料容器を受容した後、デバイスは、試料容器に位置するコードを読み取る。読み取られたコードに基づいて、デバイスは、選択されたプロセスに試料容器が好適であるかどうかを判定する。結果が正の場合、それはディスプレイ上に示される。
【0049】
図7は、本発明によるデバイスを動作させる方法をフローチャートとして示す。本方法の第1のステップ101aでは、デバイスが特定のユーザアクションの準備ができていることが補助ディスプレイ13上に示される。必要とされるユーザアクションは、例えば、特定の種類の試料プレートをデバイス内に装填することであり得る。必要とされるアクションは、例えば、試料プレートのカラーコード、テキスト、画像、または任意の他の好適な方式で示すことができる。本方法の第2のステップ102aでは、ユーザアクションを待つ。デバイスは、アクションが完了していない限り、必要とされるアクションをディスプレイ13上に表示するように構成され得る。本方法の第3のステップ103aでは、完了したユーザアクションが正しいかどうかが判定される。例えば、必要とされるユーザアクションが試料プレートをデバイス内に装填した場合、試料プレート内のバーコードまたはQRコードを読み取って、試料プレートが選択されたアッセイに好適であるかどうかを判定することができる。達成されたユーザアクションが正しくなかった場合、それは、次のステップ104aにおいてディスプレイ13上に示される。また、達成されたユーザアクションが正しかった場合、それは、ディスプレイ上に示され得る104b。結果は、例えば、カラーコード、テキスト、または画像として示され得る。ユーザアクションが正しかったことを示した後、デバイスは、後続のアクション105を実施することに進むことができる。または、ユーザアクションが正しかったと判定した後、デバイスは、プロセスの次のステップに直接進むことができる。任意選択的に、後続のアクションに進む前に、またはそれと同時に、デバイスは、後続のアクションを実施することになることを補助ディスプレイ13上に示すことができる。後続のアクションに進む代わりに、さらなるユーザアクションが必要とされる場合、デバイスは、第2のユーザアクションが必要とされることを補助ディスプレイ13上に示すことができる。次いで、
図7と同様のプロセスが続く。第1のユーザアクションが正しくなかった場合、デバイスは、ミスを修正するように補助ディスプレイ13上で指示することができる。例えば、デバイスは、どのタイプの試料プレートをデバイス内に装填すべきかをユーザに指示することができる。したがって、デバイスは、ユーザとインタラクトして動作する。
【0050】
図8は、本発明の別の実施形態による方法を示す。本方法の第1のステップでは、デバイスがユーザによる選択の準備ができていることがディスプレイ13上に示される101b。本方法の第2のステップでは、デバイスは、選択を待つ102b。デバイスは、補助ディスプレイ13を入力手段として使用して、選択を可能にするように構成することができる。代替的に、他の入力手段を介して選択を行うことができる。ユーザが選択を行った後、デバイスは選択の確認を求める103b。次いで、ユーザは、選択を確認するか、または選択をキャンセルするかのいずれかをすることができる。オプションは、例えば、「確認」および「キャンセル」というテキストとして補助ディスプレイ13上に示すことができる。したがって、ユーザは、確認またはキャンセルのいずれかの選択のための入力手段としてディスプレイ13を使用することができる。ユーザが選択をキャンセルした場合は、それは、補助ディスプレイ13上に示される104c。選択が確認された場合、デバイスは、次のステップ105に進む。任意選択的に、次のステップに進む前に、確認された選択をディスプレイ13上に示すことができる。ユーザの選択は、2つ以上の所定のオプションから行うことができる。代替的に、ユーザ選択は、例えば、数値の入力など、別の種類の入力であり得る。ユーザに確認を要請することで、人為的エラーのリスクを軽減する。
【0051】
このデバイスは、異なる種類のアッセイおよび異なる液体容量範囲に使用され得る。異なる試料容器およびプローブをデバイスにおいて使用することができる。様々な異なる利用可能なオプションは、ユーザがデバイスの使用中に様々な段階でミスを犯し得ることを意味する。補助ディスプレイにより、ユーザを確実な方式でガイドする情報を提示することが可能になり、したがって、ミスを犯すリスクが低くなる。これは、品質の目的のためにすべてのプロセスを綿密に監視するべきであるIVD(インビトロ診断)では特に重要である。したがって、さらなる肯定応答またはキャンセルステップは、デバイスの品質、その使用、およびデバイスを使用する方法を改善することができる。
【0052】
本発明は上に記載される実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲の範囲内で変化し得ることを当業者は理解するであろう。