(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法及びそれにより活性が向上した金属触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/42 20060101AFI20241011BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241011BHJP
B01J 37/12 20060101ALI20241011BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
B01J23/42 A
B01J37/02 301P
B01J37/12 ZAB
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022561658
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 KR2021003977
(87)【国際公開番号】W WO2021206357
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0042648
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】515162224
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ド フン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ウン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウォン テ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、コン ウ
(72)【発明者】
【氏名】イム、ソン ガプ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0256966(US,A1)
【文献】The Journal of Physical Chemistry C,2016年,vol.120,p.478-486,Supporting Information,DOI:10.1021/acs.jpcc.5b11047
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)原子層堆積法(ALD)を用いて、金属触媒が担持された担持触媒に前駆体を注入して、触媒表面の低い配位数を有する部分に前駆体の吸着を誘導するステップと;
(b)パージ(purge)するステップ;
(c)酸化剤を注入し、これを触媒表面で吸着された前駆体と反応して無機膜を蒸着させるステップ;及び、
(d)パージ(purge)するステップ;を含み、
前記(a)ステップの触媒は白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)から選択される少なくともいずれか1つであり、
前記(a)ステップの担持はアルファ-アルミナ(α-Al
2O
3)、ゼオライト、チタニア、ジルコニア及び炭素から選択される少なくともいずれか1つを担体として提供し、
前記(a)ステップの前駆体はチタニウム(Ti
)であり、
前記(a)ステップの吸着を誘導することは注入時間、基板温度及び工程サイクルを調節して制御し、
前記(a)ステップの吸着を誘導するには、注入時間が0.5秒乃至30秒であり、基板温度が100乃至200℃であり、工程サイクルが1乃至100サイクルであり、
前記(b)ステップのパージ(purge)は0.001乃至1torrの圧力で行われ、前記無機膜が蒸着された金属触媒は一酸化炭素酸化反応に提供される
ことを特徴とするALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項2】
前記(c)ステップの酸化剤は超純水精製水、アルコール、オゾン、亜酸化窒素及び酸素から選択される少なくともいずれか1つである
請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項3】
前記(c)ステップの注入は注入時間が0.5秒乃至30秒である
請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(a)及び(c)ステップの注入は不活性ガスをキャリアガスとして注入して行う
請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項5】
前記(b)及び(d)ステップのパージ(purge)は不活性ガスを注入して行う
請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項6】
前記(d)ステップのパージ(purge)は0.001乃至1torrの圧力で行われる
請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項7】
前記無機膜の厚さは0.1nm乃至2nmである
請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項8】
前記工程サイクルが30乃至100サイクル行われる
請求項1に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【請求項9】
前記工程サイクルが50サイクル行われる
請求項8に記載のALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法及びそれにより活性が向上した金属触媒に関する。さらに詳しくは、ALD工程で触媒の表面で低い配位数を有する部分に反応物の選択的吸着を誘導するステップを含むことで、無機膜層との触媒間の相互作用を誘導して触媒の活性点を最大限確保しようとする。
【背景技術】
【0002】
原子層堆積法(atomic layer deposition、ALD)とは、薄い薄膜を原子層単位で成長するための蒸着方法を意味する。一般的な化学的蒸着法の場合、各前駆体が同時に注入されて気相反応とともに表面反応が共に行われるが、それとは対照的に、原子層堆積の場合は順次的な反応体の注入によって気相反応を抑制し蒸着対象の表面に自己制限型吸着過程(self-limited adsorption)による表面反応によって蒸着が行われる。全体蒸着される膜の厚さは蒸着サイクルの数によって調節されるので、原子層単位での厚さ調節が容易な長所がある。また、多様な種類と良好な薄膜特性と比較的低い温度でも工程などの優れた特性によって、主に半導体誘電体、磁性体などに適用されて発展してきた。しかし、最近ではナノ技術の発展に伴い酸化物の原子層堆積は既存の伝統的な集積回路素子を中心に研究されてきた傾向から脱脚し、多様な分野への応用が最近研究されており、特に、触媒の金属薄膜コーティングにも適用しようとする具体的な研究が現在活発に進められている。
【0003】
例えば、特許文献1は排ガスに含まれた一酸化炭素の除去方法に使用される酸化触媒に関し、排ガスを粉末活性炭と接触させて排ガス中のアルカリ成分を除去するステップ及び上記アルカリ成分が除去された排ガスをCO酸化触媒と接触させてCOを除去するステップを含む。これにより排ガス中に含まれた硫黄酸化物やアルカリ物質による触媒被毒の問題がなく一酸化炭素をより效果的に除去できることを言及している。
【0004】
次に、非特許文献1の論文であるJ.Phys.Chem.C 2016.120.No.1で言及する内容を見てみると、ALD工程によってAu触媒にTiO2薄膜を蒸着して活性度を向上させた技術に関する。AuとTiO2の接触面積(interface)が増えるほど活性度が増加すると言及している。20cycleまではinterfaceが増えるとともに活性度が増加し、さらに高いcycleではAuの活性度を抑えつつ減少する結果を言及している。
【0005】
最後に、非特許文献2の論文であるACS Catal.2015.5.で言及する内容はPt触媒に担持体としてAl2O3/TiO2を混合して使用している。Al2O3は熱安全性と高い表面積を提供し、TiO2はSMSI(Strong-metal-support-interaction)によって分散性を上げると説明している。また、TiO2がPtとSMSIを形成してPtの電子密度(electron density)を増加させてプロパン(Propane)の脱着を容易にし、コーキング問題(coking issue)を減少させると説明する。しかし、TiO2の比率が20%を超えると、逆にプロパン(propane)の吸着量が減少し、活性度と安全性がいずれも減少することを示す点を確認した。
【0006】
上述のように、ALD工程を用いて薄膜コーティングされた金属触媒は多様に研究開発されており、かかる研究の一環として本発明ではALD工程で触媒の低い配位数を有する部分に反応物の選択的吸着を誘導して触媒活性度を増加させるために研究した結果、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2008-0057542号(2012.12.06)
【非特許文献】
【0008】
【文献】J.Phys.Chem.C 2016,120,no.1,478-486
【文献】ACS Catal.2015,5,438-447 571-577
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題点をすべて解決することを目的とする。
【0010】
本発明の目的は、原子層堆積(ALD)工程によって触媒表面の配位数が低い部分に選択的に無機膜を蒸着して、触媒活性度を向上させることにある。
【0011】
本発明の目的は、特に、触媒の活性点を最大限確保しながら触媒と無機膜層の相互作用を誘導する工程条件を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0013】
本発明の一実施例によれば、(a)原子層堆積法(ALD)を用いて担持触媒に前駆体を注入して、触媒表面の低い配位数を有する部分に前駆体の選択的吸着を誘導するステップ;(b)パージ(purge)するステップ;(c)酸化剤を注入し、これを触媒表面で選択的に吸着にされた前駆体と反応して無機膜を蒸着させるステップ;及び(d)パージ(purge)するステップ;を含むALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップの触媒は白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)から選択される少なくともいずれか1つが提供される。
【0015】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップの担持はアルミナ、シリカ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア及び炭素から選択される少なくともいずれか1つを担体として提供する。
【0016】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップの前駆体はチタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、ジンク(Zn)、ジルコニウム(Zr)及び セリウム(Ce)から選択される少なくともいずれか1つの前駆体が提供され得る。
【0017】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップの選択的吸着を誘導することは注入時間、基板温度及び工程サイクルを調節して制御することを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施例によれば、上記(c)ステップの酸化剤は超純水精製水、アルコール、オゾン、亜酸化窒素及び酸素から選択される少なくともいずれか1つが提供され得る。
【0019】
本発明の一実施例によれば、上記(c)ステップの酸化剤注入に所要する時間は0.5秒乃至30秒で提供される。
【0020】
本発明の一実施例によれば、上記(a)及び(c)ステップの注入は注入時間が0.5秒乃至30秒で提供される。
【0021】
本発明の一実施例によれば、上記(a)及び(c)ステップの注入は不活性ガスをキャリアガスとして注入して行われる。
【0022】
本発明の一実施例によれば、上記(b)及び(d)ステップのパージ(purge)は不活性ガスを注入して行う。
【0023】
本発明の一実施例によれば、上記(b)及び(d)ステップのパージ(purge)は0.001乃至1torrの圧力で提供される。
【0024】
本発明の一実施例によれば、上記金属触媒の製造方法は1乃至100サイクル行って、原子層を蒸着できる。
【0025】
本発明の一実施例によれば、上記製造方法によって製造されたALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒が提供され、この場合、無機膜の厚さは0.1nm乃至2nmで提供され得る。
【0026】
本発明の一実施例によれば、上記金属触媒は一酸化炭素酸化反応に提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、原子層堆積(ALD)工程によって無機膜を蒸着して、触媒の活性度を向上させることができる。
【0028】
特に、触媒で低い配位数を有する部分に前駆体の選択的吸着を誘導して、触媒表面との接触面積を向上させることができ、これにより活性度を向上させることができる。
【0029】
本発明によれば、ALD工程条件によって活性度の向上程度が異なるように提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による原子層堆積(ALD)行程のうちの(a)ステップ及び(c)ステップを示す図である。
【
図2】本発明の実施例1乃至2と比較例によって150℃で触媒活性を測定した結果を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1乃至2と比較例によって160℃で触媒活性を測定した結果を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1乃至2と比較例によってγ-Al
2O
3を担持体として使用した金属触媒の温度による触媒活性を測定した結果を示す図である。
【
図5】本発明の実施例4乃至7と比較例によってα-Al
2O
3を担持体として使用した金属触媒の温度による触媒活性を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はない。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、各々の開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得る。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0032】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0033】
本発明の一実施例によれば、原子層堆積法(ALD)は触媒表面に薄い薄膜を原子層単位で成長するための蒸着方法を意味する。よって、原子層堆積法(ALD)によって製造される無機膜がコーティングされた触媒の製造方法が提供される。
【0034】
本発明の一実施例によれば、(a)原子層堆積法(ALD)を用いて担持触媒に前駆体を注入して、触媒表面の低い配位数を有する部分に前駆体の選択的吸着を誘導するステップ;(b)パージ(purge)するステップ;(c)酸化剤を注入し、これを触媒表面で選択的に吸着にされた前駆体と反応して無機膜を蒸着させるステップ;及び(d)パージ(purge)するステップ;を含むALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒の製造方法が提供される。
【0035】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップの触媒は白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)から選択される少なくともいずれか1つが提供されることができ、好ましくは白金(Pt)が提供され得る。
【0036】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップの担持に提供される担体はアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、ゼオライト及び炭素から選択される少なくともいずれか1つが担体として提供されることができ、好ましくはアルミナ(Al2O3)担体に担持され得る。この場合、提供されるアルミナ(Al2O3)担体はアルファ-アルミナ(α-Al2O3)又はガンマ-アルミナ(γ-Al2O3)が提供されることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
上記炭素担体の場合は特に限定されないが、活性炭素、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)及び炭素ナノチューブから選択された少なくとも1つを使用することができる。
【0038】
上記担持の場合、含浸又は浸漬を含む。提供される担体の比表面積は通常使用されるBET法によって測定されることができ、比表面積は5乃至300m2/gで提供され得る。これにより熱安定性を確保することができ、十分な分散と触媒活性を提供できる。
【0039】
本発明の一実施例によれば、上記前駆体はチタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)、ジンク(Zn)、ジルコニウム(Zr)及び セリウム(Ce)から選択される少なくともいずれか1つの前駆体が提供されることができ、好ましくはチタニウム(Ti)前駆体が提供され得る。
【0040】
例えば、上記チタニウム前駆体はテトラキス(ジメチルアミド)チタン(tetrakis dimethylamido titanium)、テトラキス(ジエチルアミド)チタン(tetrakis diethylamido titanium)、 チタンテトライソプロポキシド(titanium tetraisopropoxide)、チタンテトラクロライド(titanium Tetrachloride)、チタンニトラート(titanium nitrate)、チタンサルフェート(titanium sulfate)等が提供されることができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
他の例として、アルミナ前駆体の場合、有機アルミニウム化合物が提供されることができ、例えば、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムハイドライド、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウムなどが提供されることができ、アルミニウム前駆体が水素化物と錯塩の形態で提供されることができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップの選択的吸着を誘導することは注入時間、基板温度及び工程サイクルを調節して制御することを特徴とする。
【0043】
本発明の一実施例によれば、選択的吸着を誘導するために、上記(a)ステップの注入は0.5秒乃至30秒で提供されることを特徴とする。好ましくは10秒乃至20秒で提供して注入される前駆体と触媒との反応時間を十分に提供でき、選択的に吸着される効果を提供できる。
【0044】
上記注入以降、触媒表面の低い配位数を有する部分に前駆体の選択的吸着を誘導するステップが行われる。ここで、低い配位数(low coordination number)とは、金属触媒で吸着がよく起こる部分を意味する。例えば、担体(support)に担持された白金(Pt)触媒で低い配位数を有する部分にのみチタニア前駆体の選択的吸着を誘導して接触面積(interface)を増加させることができ、これにより触媒の活性度を向上させることができる。これは[
図1]を参照できる。
【0045】
本発明の一実施例によれば、選択的吸着を誘導するために、基板の温度は100乃至200℃で提供される。ここで、基板とは蒸着しようとする触媒が載せられた反応基板を意味する。上記温度を提供して選択的吸着が起こるように低い配位数に吸着するように誘導し、これにより接触面積(interface)を十分に確保することができ、十分な活性点を確保することができる。工程のサイクルについては後述することとする。
【0046】
本発明の一実施例によれば、上記(a)及び(c)ステップの注入は不活性ガスをキャリアガスとして注入して行うことを特徴とする。提供される不活性ガスは例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどが提供されることができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
本発明の一実施例によれば、上記(a)ステップ以降、(b)パージ(purge)するステップが提供される。パージ(purge)の場合、浄化又は除去を意味する。例えば、不活性ガスを注入して内部圧力を0.001乃至1torrで提供され得る。圧力が1torrを超える場合、反応前駆体やパージング気体が残存することを意味する場合があるので提供されるガスの圧力を調節して付加的な反応物の吸着を防止できる。上記不活性ガスは例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどが提供されることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明の一実施例によれば、(c)酸化剤を注入し、これを触媒表面で選択的に吸着された前駆体と反応して無機膜を蒸着させるステップが提供される。これは[
図1]を参照できる。この場合、提供される酸化剤は超純水精製水、アルコール、オゾン、亜酸化窒素及び酸素から選択される少なくともいずれか1つが提供されることができ、好ましくは超純水精製水が提供され得る。
【0049】
本発明の一実施例によれば、上記(c)ステップの酸化剤注入に所要する時間は0.5秒乃至30秒で提供される。注入時間を上記範囲で提供して、触媒表面で選択的に吸着された前駆体と反応して最終的に触媒表面に選択的に無機膜を蒸着させて触媒の活性を向上させることができる。
【0050】
本発明の一実施例によれば、上記(c)ステップ以降、(d)パージ(purge)するステップが提供される。この場合は前述した(b)で提供される内容と同一である。
【0051】
本発明の一実施例によれば、上記金属触媒の製造方法は1乃至100サイクル行って、原子層を蒸着できる。好ましくは10乃至50サイクルで提供され得る。ここで、1サイクルとは上記(a)乃至(d)工程の一連の流れを意味する。
【0052】
サイクル工程の場合、担持触媒の種類によって若干異なる場合がある。例えば、Pt/γ-Al
2O
3の場合、10サイクルで提供される場合に高い活性度を示し、Pt/α-Al
2O
3の場合、50サイクルで提供される場合に高い活性度を示すことができる。したがって、担持触媒によって工程条件は適切に調節でき、また、これにより選択的吸着を誘導して活性度の向上効果が変わるので必要に応じて活性度の調節が可能である。これは[
図4]及び[
図5]から確認できる。
【0053】
一方、本発明の一実施例によれば、上記製造方法によって製造されたALD工程による無機膜が蒸着された金属触媒が提供される。以下では、前述した触媒の製造方法と同じ内容が適用されることができ、重複する範囲内で説明は省略することとする。
【0054】
本発明の一実施例によれば、上記無機膜の厚さは0.1nm乃至2nmで蒸着され得る。さらに詳しくは1サイクルによって蒸着される厚さは0.02乃至0.1nmで提供され得る。したがって、サイクル数を調節するか、又は繰り返して必要に応じて無機膜の厚さは当業者水準で自由かつ適切に変形できる。
【0055】
本発明の一実施例によれば、本発明による触媒は粉末、粒子及びペレット形態であることができ、好ましくは粉末又は粒子の形態で提供され得る。
【0056】
本発明の一実施例によれば、上記金属触媒は一酸化炭素酸化反応に適用され得る。特に、100℃乃至300℃の高温で行う一酸化炭素酸化反応において触媒の高い触媒活性と焼結現象防止などの効果を提供できる。
【0057】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されない。ここに記載していない内容は当該技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【実施例】
【0058】
実施例1
【0059】
触媒の表面蒸着のために150℃の基板に担持触媒を載せた。上記担持触媒はガンマ-アルミナ(γ-Al2O3)担持白金(Pt)触媒を使用した。ここに、前駆体であるチタンテトライソプロポキシド(titanium tetraisopropoxide(TTIP)、99.999%、EG Chem,Co.Ltd.)を提供して、触媒表面の低い配位数を有する部分に選択的吸着を誘導した後、150℃、1torrの条件で600秒間パージ(purge)した。
【0060】
以降、酸化剤である超純度精製水を150℃、1torrで15秒間注入した。150℃、1torrの条件で600秒間パージ(purge)して担持触媒表面にTiO2を0.1nmの厚さに蒸着した。これをALD工程の1サイクルと定義した。
【0061】
上記過程を4サイクルさらに繰り返して最終的にTiO2でコーティングされた無機膜が蒸着された白金触媒(5 cycle TiO2 coated Pt/γ-Al2O3)を製造した。
【0062】
実施例2
【0063】
ALD工程を10サイクル行ってTiO2でコーティングされた無機膜が蒸着された白金触媒(10 cycle TiO2 coated Pt/γ-Al2O3)を製造した点を除いては実施例1と同様に製造した。
【0064】
実施例3
【0065】
ALD工程を50サイクル行ってTiO2でコーティングされた無機膜が蒸着された白金触媒(50 cycle TiO2 coated Pt/γ-Al2O3)を製造した点を除いては実施例1と同様に製造した。
【0066】
実施例4
【0067】
触媒の表面蒸着のために150℃の基板に担持触媒を載せた。上記担持触媒はアルファ-アルミナ(α-Al2O3)担持白金(Pt)触媒を使用した。ここに、TTIPのみを提供した。触媒表面の低い配位数を有する部分に選択的吸着を誘導した後、150℃、1torrの条件で600秒間パージ(purge)した。
【0068】
以降、酸化剤である超純度精製水を150℃、1torrで15秒間注入した。150℃、1torrの条件で600秒間パージ(purge)して担持触媒表面にTiO2を0.1nmの厚さに蒸着した。これをALD工程の1サイクルと定義した。
【0069】
上記過程を9サイクルさらに繰り返して最終的にTiO2でコーティングされた無機膜が蒸着された白金触媒(10 cycle TiO2 coated Pt/α-Al2O3)を製造した。
【0070】
実施例5
【0071】
ALD工程を30サイクル行ってTiO2でコーティングされた無機膜が蒸着された白金触媒(30 cycle TiO2 coated Pt/α-Al2O3)を製造した点を除いては実施例4と同様に製造した。
【0072】
実施例6
【0073】
ALD工程を50サイクル行ってTiO2でコーティングされた無機膜が蒸着された白金触媒(50 cycle TiO2 coated Pt/α-Al2O3)を製造した点を除いては実施例4と同様に製造した。
【0074】
実施例7
【0075】
ALD工程を100サイクル行ってTiO2でコーティングされた無機膜が蒸着された白金触媒(100 cycle TiO2 coated Pt/α-Al2O3)を製造した点を除いては実施例4と同様に製造した。
【0076】
比較例
【0077】
ALD工程を行わずアルミナ担持体に担持された白金触媒(Bare Pt/γ-Al2O3)を準備した。
【0078】
実験例1-1:触媒の活性度評価
【0079】
実施例1乃至2と比較例による触媒の活性度を確認するために、CO oxidationを150℃で行って、時間によるCO conversion(%)をそれぞれ測定して比較した。反応気体は5%CO(バランスガス空気)を40ml/minの量で反応器に流した。また、反応前に3.9%H
2(バランスガスN
2)を使用して500℃で3時間還元を行った後、CO oxidation反応を進めた。これに対する結果を[
図2]に示した。
【0080】
実験例1-2:触媒の活性度評価
【0081】
実施例1乃至2と比較例による触媒の活性度を確認するために、CO oxidation(%)を160℃で行って、時間によるCO conversion(%)をそれぞれ測定して比較した。これに対する結果を[
図3]に示した。
【0082】
実験例1-3:触媒の活性度評価
【0083】
実施例2乃至3と比較例による触媒の活性度を確認するために、温度によるCO conversion(%)を測定した。これに対する結果を[
図4]に示した。
【0084】
実験例1-4:触媒の活性度評価
【0085】
実施例4乃至7と比較例による触媒の活性度を確認するために、温度によるCO conversion(%)を測定した。これに対する結果を[
図5]に示した。
【0086】
本発明による[
図2]の結果を見てみると、10サイクルのTiO
2無機膜を適用した実施例2の場合、150℃で活性度も確認した結果、活性度が向上したことを確認した。
【0087】
また、160℃である[
図3]の結果を見てみると、同様に活性度が向上したことを確認した。すなわち、Bare Pt/γ-Al
2O
3である比較例に比べて活性度が顕著に向上したことを確認した。
【0088】
本発明による[
図4]の結果を見てみると、10サイクルのTiO
2無機膜を適用した実施例2の場合、比較例に比べて高い活性度を示し、50サイクルを超えると比較例水準の活性度を提供することがわかる。
【0089】
本発明による[
図5]の結果を見てみると、10サイクル乃至100サイクルのTiO
2無機膜を適用した場合、比較的高い活性度を示すことを確認した。特に、Pt/α-Al
2O
3の場合、50サイクルで活性度が最も高いことを確認した。
【0090】
したがって、本発明の金属触媒によれば、原子層堆積(ALD)工程を調節して無機膜を蒸着することによって向上した触媒の活性度を提供できる。特に、触媒の表面で低い配位数を有する部分に反応物の選択的吸着を誘導するステップを含むことで、触媒と反応物の接触面積を最大限確保することができ、これにより活性度の向上を期待できる。
【0091】
すなわち、白金(Pt)触媒の活性点を最大限確保しながら蒸着された無機膜であるチタニア(TiO2)との相互作用を誘導するALD工程条件によって、高い触媒活性を提供できる。加えて、ALD工程条件を必要に応じて調節して触媒活性度の向上程度を異なるように提供できる効果も提供できる。
【0092】
以上、本発明が具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されるわけではなく、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば、かかる記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
【0093】
よって、本発明の思想は上記説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、その特許請求の範囲と均等又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範疇に属すると言える。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、原子層堆積(ALD)工程によって無機膜を蒸着して、触媒の活性度を向上させることができる。
【0095】
特に、触媒で低い配位数を有する部分に前駆体の選択的吸着を誘導して、触媒表面との接触面積を向上させることができ、これにより活性度を向上させることができる。
【0096】
本発明によれば、ALD工程条件によって活性度の向上程度が異なるように提供できる。