(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】スピーカ単体
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
H04R9/02 101C
H04R9/02 102A
(21)【出願番号】P 2022576563
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 CN2022114908
(87)【国際公開番号】W WO2024000774
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】202221693068.9
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517409583
【氏名又は名称】エーエーシー マイクロテック(チャンヂョウ)カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.3 changcao road, Hi-TECH Industrial Zone, Wujin District, Changzhou City, Jiangsu Province, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲時▼ ▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】周 家盛
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第212034341(CN,U)
【文献】中国実用新案第209982717(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2022/0174384(US,A1)
【文献】中国実用新案第213462288(CN,U)
【文献】中国実用新案第214101775(CN,U)
【文献】中国実用新案第212588508(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/00-9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ単体であって、
フレームと、前記フレームに固定された振動システム及び磁気回路システムとを含み、前記振動システムは、振動膜と、前記振動膜が振動発音するように駆動するボイスコイルとを含み、前記スピーカ単体は、前記フレームに固定されて前記ボイスコイルのBL値を向上させるための磁性フロントカバーをさらに含
み、前記磁気回路システムは底板を含み、
前記振動システムは、前記振動膜と間隔を隔てて設置された弾性支持部材をさらに含み、前記弾性支持部材の外固定部は、前記フレームに固定され、前記弾性支持部材の内固定部は、前記ボイスコイルに固定され、
前記弾性支持部材は、前記ボイスコイルに固定されたフレキシブル回路板と、前記フレキシブル回路板の前記振動膜から離れる底面に固定された補助振動膜とを含み、前記底板の前記補助振動膜に対応する位置に貫通孔が設けられ、前記底板の前記補助振動膜から離れる底面には、さらに前記貫通孔を覆うダンピングメッシュ布が貼り付けられていることを特徴とするスピーカ単体。
【請求項2】
前記磁気回路システムは
、前記底板に固定されかつ間隔を隔てて設置された主磁性鋼及び副磁性鋼と、前記主磁性鋼に貼り付けられた主ポールプレートと、前記副磁性鋼に貼り付けられた副ポールプレートとを
さらに含み、前記副ポールプレートは、前記底板に近づく方向に向かって折り曲げられた第1バーリングが設けられ、前記第1バーリングは、前記フレーム内に嵌設されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ単体。
【請求項3】
前記フレームは、4つのコーナーに位置する第1側壁と、隣接する2つの第1側壁の間に位置する第2側壁とを含み、前記底板は、前記振動膜に近づく方向に向かって折り曲げられた第2バーリングが設けられ、前記第2バーリングは、隣接する第1側壁と第2側壁との間に挿設されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカ単体。
【請求項4】
前記磁性フロントカバーは、軟磁性フロントカバー又は硬磁性フロントカバーであることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ単体。
【請求項5】
前記磁性フロントカバーは、前記フレームに接着固定されているか又は前記フレームに溶接固定されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ単体。
【請求項6】
前記磁性フロントカバーは、少なくとも部分的に前記振動膜の上方まで延在することを特徴とする請求項1に記載のスピーカ単体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気音響変換の分野に関し、特にスピーカ単体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカ単体は、通常、フレームと、フレームに固定された振動システム及び磁気回路システムと、フレームに固定され振動システムを保護するフロントカバーとを含み、振動システムは、振動膜と、振動膜が振動発音するように駆動するボイスコイルとを含み、フロントカバーは、通常、ステンレス鋼、銅、プラスチック等の非磁性の材質で製造される。
【0003】
スピーカ単体の1つの重要な性能指標は、ボイスコイルのBL値(即ち磁力値であり、磁束密度Bとボイスコイル線長Lとの積である)である。ボイスコイルのBL値が高いほど、同等電圧で振動膜の変位が大きくなり、それによりスピーカ単体の音圧レベル及び感度が高くなる。スピーカ単体で高い音圧レベル及び感度を得るために、どのようにボイスコイルのBL値を向上させるかは業界の研究の重点となっている。現在、業界での一般的な方法は、磁気回路システムを改善することであり、例えば高性能な磁性鋼及び高透磁性の材料を選択することである。しかしながら、高性能な磁性鋼及び高透磁性の材料を選択することによる材料コストの問題は、顕著であり、製品の市場競争力を大幅に低下させる。さらに例えば特殊構造の磁気回路システムを設計し、これは常に磁気回路システムの構造を非常に複雑にし、製造に不利である。
【0004】
したがって、新たなスピーカ単体を提供して上記技術課題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記技術課題を解決し、ボイスコイルのBL値を向上させるスピーカ単体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、スピーカ単体を提供し、当該スピーカ単体は、フレーム、前記フレームに固定された振動システム及び磁気回路システムを含み、前記振動システムは、振動膜と、前記振動膜が振動発音するように駆動するボイスコイルとを含み、前記スピーカ単体は、前記フレームに固定されて前記ボイスコイルのBL値を向上させるための磁性フロントカバーをさらに含む。
【0007】
好ましくは、前記磁気回路システムは、底板と、前記底板に固定されかつ間隔を隔てて設置された主磁性鋼及び副磁性鋼と、前記主磁性鋼に貼り付けられた主ポールプレートと、前記副磁性鋼に貼り付けられた副ポールプレートとを含み、前記副ポールプレートは、前記底板に近づく方向に向かって折り曲げられた第1バーリングが設けられ、前記第1バーリングは、前記フレーム内に嵌設されている。
【0008】
好ましくは、前記フレームは、4つのコーナーに位置する第1側壁と、隣接する2つの第1側壁の間に位置する第2側壁とを含み、前記底板は、前記振動膜に近づく方向に向かって折り曲げられた第2バーリングが設けられ、前記第2バーリングは、隣接する第1側壁と第2側壁との間に挿設されている。
【0009】
好ましくは、前記振動システムは、前記振動膜と間隔を隔てて設置された弾性支持部材をさらに含み、前記弾性支持部材の外固定部は、前記フレームに固定され、前記弾性支持部材の内固定部は、前記ボイスコイルに固定されている。
【0010】
好ましくは、前記弾性支持部材は、前記ボイスコイルに固定されたフレキシブル回路板と、前記フレキシブル回路板の前記振動膜から離れる底面に固定された補助振動膜とを含み、前記底板の前記補助振動膜に対応する位置に貫通孔が設けられ、前記底板の前記補助振動膜から離れる底面には、さらに前記貫通孔を覆うダンピングメッシュ布が貼り付けられている。
【0011】
好ましくは、前記磁性フロントカバーは、軟磁性フロントカバー又は硬磁性フロントカバーである。
【0012】
好ましくは、前記磁性フロントカバーは、前記フレームに接着固定されているか又は前記フレームに溶接固定される。
【0013】
好ましくは、前記磁性フロントカバーは、少なくとも部分的に前記振動膜の上方まで延在する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスピーカ単体は、磁性フロントカバーを採用し、磁性フロントカバーは、磁気回路システムの磁気誘導線分布を最適化し、ボイスコイルが動作する時により多くの磁気誘導線がボイスコイルを通り抜けることができ、それによりボイスコイルのBL値を向上させる。該磁性フロントカバーは、同時に従来のフロントカバーが振動システムを保護する機能とボイスコイルのBL値を向上させる機能を兼備し、一挙両得であり、かつ実現しやすい。また、通常フロントカバーは、振動システムを保護するためのみに用いられる一般的な認知の下で、磁性フロントカバーによりボイスコイルのBL値を向上させるための技術手段は、当業者が考えたこともなく、予期しなかったものであり、予想外の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下に実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図2】本発明に係るスピーカ単体の斜視分解図である。
【
図3】
図1におけるA―A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例だけであり、全ての実施例ではない。本発明の実施形態に基づいて、当該分野の当業者が創造的な労働をしない前提で得られた全ての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0017】
図1~3に示すように、本発明は、スピーカ単体100を提供し、前記スピーカ単体100は、フレーム1と、前記フレーム1に固定された振動システム2及び磁気回路システム3と、前記フレーム1に固定された磁性フロントカバー4とを含む。前記磁性フロントカバー4は、軟磁性フロントカバー(例えば、ポールプレート)又は硬磁性フロントカバー(例えば、磁性鋼)であり、前記磁性フロントカバー4は、前記フレーム1に接着固定されているか又は前記フレーム1に溶接固定されている。
【0018】
前記振動システム2は、振動膜21と、前記振動膜21が振動発音するように駆動するボイスコイル22と、前記振動膜21と間隔を隔てて設置された弾性支持部材23とを含む。前記弾性支持部材23の外固定部23aは、前記フレーム1に固定され、前記弾性支持部材23の内固定部23bは、前記ボイスコイル22に固定され、それにより前記ボイスコイル22を支持する。前記磁性フロントカバー4は、少なくとも部分的に前記振動膜21の上方まで延在する、それにより前記振動システム2を保護する。
【0019】
前記磁気回路システム3は、底板31と、前記底板31に固定されかつ間隔を隔てて設置された主磁性鋼32及び副磁性鋼33と、前記主磁性鋼32に貼り付けられた主ポールプレート34と、前記副磁性鋼33に貼り付けられた副ポールプレート35とを含み、前記副ポールプレート35は、前記底板31に近づく方向に向かって折り曲げられた第1バーリング351が設けられ、前記第1バーリング351は、前記フレーム1内に嵌設されている。
【0020】
前記フレーム1は、4つのコーナーに位置する第1側壁11と、隣接する2つの第1側壁11の間に位置する第2側壁12とを含み、前記底板31は、前記振動膜21に近づく方向に向かって折り曲げられた第2バーリング311が設けられ、前記第2バーリング311は、隣接する第1側壁11と第2側壁12との間に挿設されている。
【0021】
前記弾性支持部材23は、前記ボイスコイル22に固定されたフレキシブル回路板231と、前記フレキシブル回路板231の前記振動膜21から離れる底面に固定された補助振動膜232とを含み。前記ボイスコイル22は、前記フレキシブル回路板231を介して外部電源と電気的に接続され、前記補助振動膜232は、前記弾性支持部材23の振動ダンピングを調整することができる。
【0022】
前記底板31の前記補助振動膜232に対応する位置に貫通孔310が設けられ、前記貫通孔310は、前記補助振動膜232に振動空間を提供することができ、同時にスピーカ単体100の内外空間を連通することができる。前記底板31の前記補助振動膜232から離れる底面には、さらに前記貫通孔310を覆うダンピングメッシュ布5が貼り付けられ、前記ダンピングメッシュ布5は、異物がスピーカ単体100の内部に入ることを防止することができ、同時に前記貫通孔310での気流ダンピングを調整することができる。
【0023】
本発明のスピーカ単体は、磁性フロントカバーを採用し、磁性フロントカバーは、磁気回路システムの磁気誘導線の分布を最適化し、ボイスコイルが動作する時により多くの磁気誘導線がボイスコイルを通り抜けることができ、それによりボイスコイルのBL値を向上させる。該磁性フロントカバーは、同時に従来のフロントカバーが振動システムを保護する機能とボイスコイルのBL値を向上させる機能を兼備し、一挙両得であり、かつ実現しやすい。また、通常フロントカバーは、振動システムを保護するためのみに用いられる一般的な認知の下で、磁性フロントカバーによりボイスコイルのBL値を向上させるための技術手段は、当業者が考えたこともなく、予期しなかったものであrい、予想外の効果を奏する。
【0024】
上述したのは本発明の実施形態だけであり、ここで指摘すべきことは、当業者にとって、本発明の創造的構想から逸脱することなく、更に改善することができるが、これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。