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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】バルクフィーダ
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20241011BHJP
   B65G 47/14 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H05K13/02 D
B65G47/14 101C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022577988
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003421
(87)【国際公開番号】W WO2022162916
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英之
(72)【発明者】
【氏名】川崎 裕司
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-238998(JP,A)
【文献】特開2011-066222(JP,A)
【文献】特開2013-168584(JP,A)
【文献】特開2009-105363(JP,A)
【文献】特開2013-165185(JP,A)
【文献】特開平11-238999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30,13/00-13/08
B65G 47/00-47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーダ本体と、
前記フィーダ本体に設けられ、複数の部品を収容する部品ケースから排出された前記部品を受容する受容領域を形成された受容部材と、
前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられ、複数の前記部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、
複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、
可撓性を有し、前記受容領域と前記搬送路との間を複数の前記部品を流通可能に連結する連結部材と、
を備えるバルクフィーダ。
【請求項2】
前記連結部材は、複数の前記部品が内部を流通可能な管状をなす密着コイルばねであり、
前記受容領域から前記搬送路へ前記部品を流通させる動作時に、前記加振装置を停止した状態とする、請求項1に記載のバルクフィーダ。
【請求項3】
フィーダ本体と、
前記フィーダ本体に設けられ、複数の部品を収容する部品ケースから排出された前記部品を受容する受容領域を形成された受容部材と、
前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられ、複数の前記部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、
複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、
可撓性を有し、前記受容領域と前記搬送路との間を複数の前記部品を流通可能に連結する連結部材と、
備え、
前記受容部材は、前記軌道部材の下方に配置され、
前記連結部材は、複数の前記部品が内部を流通可能な管状をなし、
前記受容領域の下方から正圧エアを供給して、前記受容部材から前記連結部材を介して前記軌道部材まで複数の前記部品を流通させるエア供給装置をさらに備えるバルクフィーダ。
【請求項4】
フィーダ本体と、
前記フィーダ本体に設けられ、複数の部品を収容する部品ケースから排出された前記部品を受容する受容領域を形成された受容部材と、
前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられ、複数の前記部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、
複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、
可撓性を有し、前記受容領域と前記搬送路との間を複数の前記部品を流通可能に連結する連結部材と、
を備え、
前記受容部材は、前記受容領域の少なくとも一部において水平面に対して傾斜した傾斜部を有し、
前記傾斜部は、前記部品ケースの排出口の下方に位置し、且つ平面状をなすバルクフィーダ。
【請求項5】
前記連結部材は、複数の前記部品が内部を流通可能な管状をなす密着コイルばねである、請求項1,3-4の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項6】
前記連結部材は、金属を材料として形成される、請求項に記載のバルクフィーダ。
【請求項7】
前記連結部材は、樹脂またはゴムを材料として形成される、請求項1-5の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【請求項8】
前記連結部材は、前記軌道部材が前記加振装置により加振されたときに前記軌道部材の振動に応じて変形することにより振動を吸収し、前記受容部材に伝達される振動を軽減または遮断する、請求項1-7の何れか一項に記載のバルクフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクフィーダ
【背景技術】
【0002】
バルクフィーダは、基板に部品を装着する部品装着機に装備され、バルク状態の部品の供給に用いられる。バルクフィーダは、部品ケースから排出された複数の部品を搬送し、吸着ノズルが部品を採取できるように上方に開口した供給領域において部品を供給する。特許文献1には、搬送路に振動を付与して複数の部品を搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-114084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなバルクフィーダにおいて、搬送路を形成される部材は、部品ケースなどの固定部材に対して振動可能に構成される振動部材である。振動部材および固定部材は、バルク状態の部品を流通可能に連結される。振動部材および固定部材を連結する連結部材には、流通する部品の流出を防止しつつ、且つ振動部材の振動特性に影響しないことが要求される。
【0005】
本明細書は、バルク状態の部品の搬送過程における流出を防止するとともに、振動を用いた部品の搬送動作を適切に行うことができるバルクフィーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、フィーダ本体と、前記フィーダ本体に設けられ、複数の部品を収容する部品ケースから排出された前記部品を受容する受容領域を形成された受容部材と、前記フィーダ本体に対して振動可能に設けられ、複数の前記部品が搬送される搬送路、および前記搬送路に連通して複数の前記部品を採取可能に上方に開口する供給領域を形成された軌道部材と、複数の前記部品が前記搬送路に沿って搬送されるように前記軌道部材に振動を付与する加振装置と、可撓性を有し、前記受容領域と前記搬送路との間を複数の前記部品を流通可能に連結する連結部材と、を備えるバルクフィーダを開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、可撓性を有する連結部材が軌道部材と受容部材との間での振動の伝達を抑制するので、固定側の受容部材が軌道部材の振動特性に影響することを防止できる。よって、バルクフィーダは、連結部材を介してバルク状態の部品を軌道部材に導入する構成とすることによって、振動を用いた部品の搬送動作を適切に行うことができる。また、連結部材が可撓性を有することから、軌道部材と連結部材との間に振動を許容するための隙間が不要となり、部品の流出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】バルクフィーダの外観を示す斜視図である。
図2】バルクフィーダの要部を模式的に示す側面図である。
図3図1のIII方向から見た平面図である。
図4】受容領域Arから搬送路Rまでの部品の流通動作を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.バルクフィーダ30の構成
バルクフィーダ30は、図略の部品装着機に装備されて部品供給装置の一部として機能する。バルクフィーダ30は、キャリアテープのように整列されていないバルク状態で収容された部品92を供給する。そのため、バルクフィーダ30は、テープフィーダと異なりキャリアテープを用いないため、キャリアテープの装填や使用済みテープの回収などを省略できる点でメリットがある。
【0010】
バルクフィーダ30には、例えば平面状の供給領域Asに不規則な姿勢で部品92を供給するタイプがある。しかしながら、バルクフィーダ30は、供給領域Asにおいて部品92同士が接触するほど接近していたり堆積(上下方向に重なり合っている状態)していたり、部品92の幅方向が上下方向となるような横立ち姿勢であったりすると、採取対象にすることができない。そこで、採取可能な部品92の割合を増加すべく、バルクフィーダ30には、供給領域Asにおいて部品92を整列させた状態で供給するタイプがある。本実施形態では、部品92を整列させるタイプのバルクフィーダ30を例示して説明する。
【0011】
1-1.フィーダ本体31
バルクフィーダ30は、図1に示すように、扁平な箱状に形成されたフィーダ本体31を備える。フィーダ本体31の前部には、コネクタ311および2つのピン312が設けられる。フィーダ本体31は、部品供給装置のスロットにセットされると、コネクタ311を介して給電されるとともに、部品装着機の制御装置と通信可能な状態となる。2つのピン312は、スロットに設けられたガイド穴に挿入され、フィーダ本体31がスロットにセットされる際の位置決めに用いられる。
【0012】
1-2.部品ケース32および受容部材33
フィーダ本体31には、複数の部品92をバルク状態で収容する部品ケース32が受容部材33を介して着脱可能に取り付けられる。部品ケース32は、バルクフィーダ30の外部機器である。フィーダ本体31には、種々のタイプの部品ケース32から装着処理に適合する1つが選択されて取り付けられる。部品ケース32の前部には、外部へ部品92を排出する排出口321が形成される。
【0013】
受容部材33は、フィーダ本体31に対して振動可能に設けられ、取り付けられた部品ケース32を支持する。受容部材33は、部品ケース32から排出された部品92を受容する受容領域Arを形成される。本実施形態において、受容部材33は、受容領域Arの少なくとも一部において水平面に対して前側に傾斜した傾斜部331を有する。この傾斜部331は、部品ケース32の排出口321の下方に位置し、且つ平面状をなす。受容部材33は、受容領域Arの上方に延伸する部品92の流路を形成され、この流路が上方に開口する送出部332を形成される。
【0014】
1-3.ブラケット34、軌道部材35、ロックユニット36
バルクフィーダ30は、ブラケット34および軌道部材35を備える。ブラケット34は、フィーダ本体31に対して振動可能に設けられる。ブラケット34は、フィーダ本体31の前後方向に延伸するブロック状に形成され、上面に軌道部材35を取り付けられる。ブラケット34は、後述する加振装置40の支持部材41により支持される。軌道部材35は、複数の部品92が搬送される搬送路R、および搬送路Rに連通して複数の部品92を採取可能に上方に開口する供給領域Asを形成される。
【0015】
バルクフィーダ30は、ロックユニット36を備える。ロックユニット36は、軌道部材35がブラケット34に取り付けられた状態で、軌道部材35をロックする。軌道部材35は、ロックユニット36によりロックされると、フィーダ本体31に対してブラケット34と一体的に振動する状態となる。軌道部材35は、ロックユニット36のアンロックによりブラケット34から取り外し可能な状態となる。
【0016】
1-4.軌道部材35の詳細構成、カバー37、連結部材38
軌道部材35は、フィーダ本体31の前後方向(図3の左右方向)に延伸するように形成される。軌道部材35の幅方向(図3の上下方向)の両縁には、上方に突出する一対の側壁351が形成される。一対の側壁351は、軌道部材35の先端部352とともに搬送路Rの周縁を囲い、搬送路Rを搬送される部品92の漏出を防止する。先端部352の上面には、供給領域Asの基準位置を示す円形の基準マーク356が左右一対で付される。
【0017】
本実施形態において、軌道部材35には、整列部材353が交換可能に取り付けられる。整列部材353は、複数の部品92を個々に収容する複数のキャビティ354を有する。詳細には、複数のキャビティ354は、供給領域Asにおいてマトリックス状に配列される。例えば、整列部材353は、規則的に搬送方向に8個、搬送路Rの幅方向に10個それぞれ配列された計80個のキャビティ354を有する。複数のキャビティ354のそれぞれは、上方に開口し、部品92の厚み方向が上下方向となる姿勢で部品92を収容する。
【0018】
キャビティ354の開口は、上方視における部品92の外形状よりも僅かに大きくなる寸法に設定される。キャビティ354の深さは、部品92の種類(形状、質量など)に応じて設定される。軌道部材35には、種々のタイプの軌道部材35から、部品92の種類や、キャビティ354の必要数、機能性に基づいて選択された1つが取り付けられる。
【0019】
ここで、軌道部材35の「供給領域As」とは、部品92をバルク状態で供給する領域であって、部品装着機の装着ヘッドに支持された保持部材(例えば、負圧エアにより部品を吸着する吸着ノズル)により部品92を採取可能な領域である。また、軌道部材35の「搬送路R」とは、受容領域Arから軌道部材35へと流通した部品92が供給領域Asへと搬送される部品92の通り道である。
【0020】
バルクフィーダ30は、カバー37を備える。カバー37は、軌道部材35に固定され、搬送路Rの上方を覆う。カバー37は、上面に複数の排気口371が形成されている。排気口371には、目地が部品92の外形寸法より小さいメッシュが張られている。このような構成により、カバー37は、搬送路Rからの部品92の飛び出しを防止しつつ、排気口371からエアを外部に排出することができるように構成されている。
【0021】
軌道部材35は、後部において下方に延伸する部品92の流路を形成され、この流路が下方に開口する導入部355を有する。導入部355は、軌道部材35の下方に配置された受容部材33の送出部332と上下方向に対向する。バルクフィーダ30は、受容領域Arと搬送路Rとの間を複数の部品92を流通可能に連結する連結部材38を備える。具体的には、連結部材38は、複数の部品92が内部を流通可能な管状をなし、受容部材33の送出部332および軌道部材35の導入部355を連結する。
【0022】
上記の連結部材38は、可撓性を有する。また、連結部材38は、フィーダ本体31に対する受容部材33の振動および軌道部材35の振動に応じて変形することにより振動を吸収する。連結部材38は、互いに独立して振動する受容部材33および軌道部材35の間で伝達される振動を軽減または遮断する。本実施形態において、連結部材38は、密着コイルばねであり、これにより全体として可撓性を有する。
【0023】
密着コイルばねは、引っ張り方向の外力を加えられていない初期状態において、隣り合う環状の巻線同士が密着する。これにより、密着コイルばねは、変形していない初期状態では、エア流路を形成する部材として適用することができる。また、連結部材38の下端は、送出部332を形成された円筒部の外周に嵌め込まれる。同様に、連結部材38の上端は、導入部355を形成された円筒部の外周に嵌め込まれる。これにより、連結部材38の両端部の内周面は、各円筒部の外周面と密着する。
【0024】
このような構成により、連結部材38の内周面と各円筒部の外周面との間からエアおよび部品92の流出が防止される。なお、連結部材38の両端部の内周面は、各円筒部の外周面との間に僅かな隙間(部品92の最小寸法(例えば、部品92の厚み)よりも小さく設定される)を形成されてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。
【0025】
1-5.エア供給装置39
バルクフィーダ30は、エア供給装置39を備える。エア供給装置39は、受容領域Arの下方から正圧エアを供給して、受容部材33から連結部材38を介して軌道部材35まで複数の部品92を流通させる。本実施形態において、エア供給装置39は、外部から供給される正圧エアを、後述するフィーダ制御装置70の指令に基づいて受容領域Arの下方から供給または遮断する。このエア供給装置39の動作を含む部品92の供給動作の詳細については後述する。
【0026】
1-6.加振装置40
バルクフィーダ30は、フィーダ本体31に設けられる加振装置40を備える。加振装置40は、複数の部品92が搬送路Rに沿って搬送されるように軌道部材35に振動を付与する。具体的には、加振装置40は、複数の支持部材41、複数の圧電素子42、振動センサ43、および給電装置44を有する。複数の支持部材41は、フィーダ本体31とブラケット34を直接的または間接的に連結して、ブラケット34を支持する。
【0027】
本実施形態において、複数の支持部材41には、部品92の前側搬送に用いられる前進用支持部材41Aと、後側搬送に用いられる後退用支持部材41Bとがある。前進用支持部材41Aおよび後退用支持部材41Bは、それぞれ鉛直方向に対する傾斜方向が互いに相違する。複数の圧電素子42は、給電装置44から給電される電力に応じた周波数で振動する振動子である。複数の圧電素子42は、複数の支持部材41のそれぞれに貼付されている。
【0028】
複数の圧電素子42の少なくとも一部が振動すると、ブラケット34を介して軌道部材35に振動が付与される。また、圧電素子42に印加する電圧に応じて、軌道部材35の振幅が変動する。振動センサ43は、圧電素子42が給電されて振動したときに、軌道部材35の実際の振動の周波数または振幅を検出する。本実施形態において、振動センサ43は、軌道部材35と一体的に振動するブラケット34を支持する複数の支持部材41に設けられている。
【0029】
ここで、加振装置40が軌道部材35に振動を付与すると、軌道部材35は、側方視において楕円運動する。これにより、搬送路Rにある複数の部品92は、軌道部材35の楕円運動の回転方向に応じて前方且つ上方の外力、または後方且つ上方の外力を加えられる。これにより、複数の部品92は、軌道部材35の前側に搬送されたり、後側に搬送されたりすることになる。
【0030】
給電装置44は、後述するフィーダ制御装置70の指令に基づいて、圧電素子42に供給する電力の周波数、および印加電圧を変動させる。これにより、軌道部材35に付与される振動の周波数および振幅が調整され、軌道部材35の楕円運動の回転方向が定まる。軌道部材35の振動の周波数や振幅、振動による楕円運動の回転方向が変動すると、搬送される部品92の搬送速度、部品92の分散度合い、および搬送方向などが変動する。
【0031】
そこで、加振装置40は、搬送効率を向上させるために、個体差のある振動特性(固有振動数を含む)に対応した電力供給(周波数、印加電圧)を予め設定される。例えば、バルクフィーダ30は、実行予定の供給動作に用いられる軌道部材35が取り付けられた状態、即ちブラケット34に対して軌道部材35がロックユニット36によりロックされた状態において、校正処理を実行される。
【0032】
この校正処理は、先ず振動センサ43による検出値に基づいて軌道部材35の実際の振動の周波数および振幅の少なくとも一方を測定する。そして、校正処理は、振動に関する測定結果に基づいて、給電装置44による圧電素子42への電力を調整する。校正処理は、これを繰り返すことにより、ブラケット34および軌道部材35が一体的に固有振動数で振動する際に圧電素子42に供給される電力を取得する。
【0033】
1-7.シャッタ51
バルクフィーダ30は、軌道部材35の上部に設けられ、供給領域Asの開口を閉塞可能なシャッタ51を有する。バルクフィーダ30は、シャッタ51を開閉することによって部品92の飛び出しや供給領域Asへの異物混入を防止することができる。本実施形態において、シャッタ51は、開閉動作により開状態、閉状態、および中間状態を切り換えられる。シャッタ51の閉状態とは、シャッタ51が軌道部材35に接触し、供給領域Asの開口が完全に閉塞された状態である。このとき、シャッタ51は、図3の破線で示すように、軌道部材35の一対の基準マーク356よりもフィーダ本体31の後側に位置し、上方視において一対の基準マーク356を視認および撮像可能とする。
【0034】
また、シャッタ51の開状態とは、供給領域Asの開口が閉塞されておらず、且つ供給領域Asの主要範囲(本実施形態において複数のキャビティ354が設けられた範囲)を露出させた状態である。このとき、吸着ノズル134は、何れのキャビティ354に対して部品92の採取動作を実行することができる。シャッタ51の中間状態とは、閉状態と開状態の間の状態であって、シャッタ51が軌道部材35から少なくとも加振装置40の加振により振動する軌道部材35の振幅よりも離間し且つ供給領域Asの開口から部品92の飛び出しを規制する状態である。シャッタ51は、図略の駆動装置により開閉動作を行い、駆動装置の駆動状態に応じて閉状態、開状態、および中間状態とされる。
【0035】
1-8.フィーダ制御装置70
バルクフィーダ30は、フィーダ制御装置70を備える。フィーダ制御装置70は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。フィーダ制御装置70は、バルクフィーダ30がスロットにセットされた状態において、コネクタ311を介して給電され、また部品装着機の部品装着機の制御装置と通信可能な状態となる。
【0036】
フィーダ制御装置70は、図1に示すように、記憶部71を有する。記憶部71は、フラッシュメモリなどにより構成される。記憶部71には、部品供給処理の制御に用いられるプログラムや搬送パラメータなどの各種データが記憶される。上記の「搬送パラメータ」は、部品供給処理において部品92を搬送する際に、軌道部材35に付与する振動が適正となるように加振装置40の動作を制御するためのパラメータであり、例えば部品92の種類ごとに関連付けて予め設定される。
【0037】
フィーダ制御装置70は、搬送制御部72を有する。搬送制御部72は、加振装置40の動作を制御して、部品92の搬送動作を実行する。詳細には、搬送制御部72は、搬送動作を実行する場合に、加振装置40の給電装置44に対して指令を送出する。これにより、給電装置44が圧電素子42に所定の電力を供給することにより、ブラケット34を介して軌道部材35に振動が付与される。そして、搬送路R上の部品92が搬送方向に移動するように外力を受けて搬送される。
【0038】
2.部品92の供給動作
上記のような構成からなるバルクフィーダ30による部品92の供給動作について、図4を参照して説明する。先ず、フィーダ制御装置70は、例えば外部から供給指令に基づいて、部品ケース32から部品92の排出を行う。具体的には、フィーダ制御装置70は、部品ケース32が取り付けられた受容部材33に振動を付与する。この振動は、ブラケット34および軌道部材35を加振する加振装置40とは別の部品排出用の加振装置(図略)により付与される。
【0039】
部品ケース32が振動すると、開口している排出口321から部品92が排出される。排出された92は、図4の破線矢印に示すように、排出口321の下方に位置する受容部材33の傾斜部331に落下し、傾斜部331の傾斜面に沿って前側に滑り移動する。これにより、部品92は、受容領域Arにおいて傾斜部331の前方の下端部に滞留する。この状態において、フィーダ制御装置70は、エア供給装置39に正圧エアを供給するように指令する。
【0040】
エア供給装置39により供給された正圧エアは、受容領域Arに滞留していた複数の部品92を吹き上げ、受容部材33に形成された流路を部品92とともに流通する。図4の太線矢印は、正圧エアの流れを示す。これにより、正圧エアおよび複数の部品92は、受容部材33の送出部332、連結部材38、および軌道部材35の順に流通し、軌道部材35の搬送路Rに到達する。ここで、正圧エアは、カバー37の排気口371から外部に排気される。また、複数の部品92は、自重により軌道部材35の搬送路Rに落下する。
【0041】
なお、上記のように、エア供給装置39により部品92を吹き上げて、受容領域Arから搬送路Rへ部品92を流通させる動作時には、部品搬送用の加振装置40および部品排出用の加振装置(図略)は、停止した状態を維持される。つまり、受容部材33および軌道部材35は、互いの位置関係が固定された状態にある。これにより、受容部材33と軌道部材35を連結する連結部材38は、初期状態の形状を維持される。
【0042】
結果として、本実施形態のように、連結部材38に密着コイルばねを適用した場合であっても、隣り合う巻線同士が密着した状態が維持される。よって、隣り合う巻線の間から正圧エアおよび部品92に流出が防止される。その後に、部品搬送用の加振装置40が軌道部材35に振動を付与すると、複数の部品92が供給領域As側へと搬送される。また、軌道部材35には、供給領域Asにおける部品92の供給量などに応じて、部品92を前進させる振動または後退させる振動が付与される。
【0043】
上記のように軌道部材35が加振された際に、連結部材38は、下端を受容部材33に支持された状態で、軌道部材35の振動に伴って撓み、全体として変形する。これにより、連結部材38は、軌道部材35の振動を吸収し、受容部材33に振動が伝達されることを防止する。結果として、連結部材38および受容部材33が軌道部材35の振動特性に影響することを防止できる。よって、バルクフィーダ30は、振動を用いた部品92の搬送動作を適切に行うことができる。
【0044】
なお、軌道部材35の振動に伴って密着コイルばねである連結部材38が変形すると、隣り合う巻線同士が離間して隙間が生じ得る。しかしながら、加振装置40が軌道部材35に振動を付与する搬送動作においては、エア供給装置39を用いた部品92の吹き上げ(受容領域Arから搬送路Rへの流通動作)を行っていないので、上記の隙間が生じたとしても部品92の供給動作に問題は発生しない。
【0045】
3.実施形態の構成による効果
このような構成によると、可撓性を有する連結部材38が軌道部材35と受容部材33との間での振動の伝達を抑制するので、固定側の受容部材33が軌道部材35の振動特性に影響することを防止できる。よって、バルクフィーダ30は、連結部材38を介してバルク状態の部品92を軌道部材35に導入する構成とすることによって、振動を用いた部品92の搬送動作を適切に行うことができる。
【0046】
また、連結部材38が可撓性を有することから、軌道部材35と連結部材38との間に振動を許容するための隙間が不要となり、部品92の流出を防止できる。なお、上記の隙間を要するタイプでは、隙間を軌道部材35の振動の振幅よりも大きく、且つ部品92の最小寸法より小さく設定する必要があり、また組み付けに要求される精度も高い。これに対して、本実施形態の構成によると、連結部材38を低廉にでき、組み付け性を向上できるためバルクフィーダ30の製造コストを低減することができる。
【0047】
4.実施形態の変形態様
4-1.連結部材38について
実施形態において、連結部材38は、金属を材料として形成された密着コイルばねであるものとした。これに対して、連結部材38は、少なくとも一部に可撓性を有するのであれば、樹脂またはゴムを材料として形成されてもよい。また、連結部材38は、密着コイルばねである他に、例えば樹脂製またはゴム製の薄肉チューブとしてもよい。さらに、連結部材38は、両端部の間に蛇腹部を有する構成としてもよい。
【0048】
上記のような構成としても実施形態と同様の効果を奏する。但し、搬送動作における軌道部材35の振動特性への影響の低減、および経年劣化に対する耐性などの観点からは、実施形態にて例示したように、連結部材38を金属製とすることが好適である。また、流通動作における正圧エアを用いた部品92の流通性向上の観点からは、円筒内面である方が好ましく、連結部材38を密着コイルばねや薄肉チューブとする態様が好適である。
【0049】
4-2.受容部材33について
実施形態において、受容部材33は、受容領域Arの後側に形成された傾斜部331を有するものとした。これに対して、傾斜部331は、受容領域Arの全域に亘って形成されてもよい。また、傾斜部331は、部品ケース32から排出された複数の部品92の前方移動を促進する機能を有し、これにより排出口321の付近で複数の部品92が滞留することを防止する。
【0050】
よって、傾斜部331は、受容部材33に取り付けられる部品ケース32の排出口321の位置や形状に合わせて、種々の態様を採用し得る。例えば、傾斜部331は、フィーダ本体31の側方視において、平面状である他に曲面状に形成されてもよい。また、傾斜部331は、前後方向の長さ、および水平面に対する傾斜角度を適宜設定される。具体的には、傾斜部331の長さおよび角度は、排出口321とエア供給装置39のエア吐出口との位置関係、部品92の寸法や形状、部品排出用の加振装置の動作特性に基づいて設定される。
【0051】
これにより、排出口321の下方部からエア吐出口まで複数の部品92が好適に移動される。よって、複数の部品92の排出動作、エア吐出口までの移動、および正圧エアを用いた吹き上げによる流通動作を好適に行うことができる。なお、受容部材33に要求される機能および製造コストの観点からは、実施形態にて例示した態様が好適である。
【0052】
4-3.軌道部材35について
実施形態において、バルクフィーダ30の軌道部材35は、複数のキャビティ354を形成された整列部材353を備える構成とした。これに対して、整列部材353を省略した構成としてもよい。つまり、軌道部材35の供給領域Asには、搬送路Rの上面より低い位置で部品92が分散される凹状部や、搬送路Rの上面と均一な平面状部が形成され、バルク状態で部品92が供給されるようにしてもよい。但し、部品供給処理の効率化や、供給領域Asにおける供給状態の認識処理における画像処理の負荷を軽減する観点からは、実施形態にて例示した構成が好適である。
【符号の説明】
【0053】
30:バルクフィーダ、 31:フィーダ本体、 32:部品ケース、 321:排出口、 33:受容部材、 331:傾斜部、 332:送出部、 34:ブラケット、 35:軌道部材、 355:導入部、 37:カバー、 371:排気口、 38:連結部材、 39:エア供給装置、 40:加振装置、 70:フィーダ制御装置、 92:部品、 Ar:受容領域、 As:供給領域、 R:搬送路
図1
図2
図3
図4