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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/094 20060101AFI20241011BHJP
   H03K 19/00 20060101ALI20241011BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241011BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20241011BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H03K19/094 220
H03K19/00 108
H01L27/04 D
H01L29/78 617N
H01L29/78 618B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023166806
(22)【出願日】2023-09-28
(62)【分割の表示】P 2020514792の分割
【原出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2023175881
(43)【公開日】2023-12-12
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2018081075
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018085916
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】石津 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 誠一
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-354970(JP,A)
【文献】特開平10-4196(JP,A)
【文献】特開平9-55652(JP,A)
【文献】特開2003-249829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/094
H03K 19/00
H01L 21/822
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタ乃至第8のトランジスタと、第1の配線及び第2の配線と、を有し、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、第1の出力端子と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタの第1のゲートは、第1の入力端子と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタの第2のゲートは、前記第1の入力端子と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2の配線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタの第1のゲートは、第2の入力端子と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタの第2のゲートは、前記第2の入力端子と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2の配線と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、第2の出力端子と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタの第1のゲートは、第3の入力端子と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタの第2のゲートは、前記第3の入力端子と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2の配線と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第2の出力端子と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタの第1のゲートは、第4の入力端子と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタの第2のゲートは、前記第4の入力端子と電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1の出力端子と電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第1の配線と電気的に接続され、
前記第5のトランジスタの第1のゲートは、前記第3の入力端子と電気的に接続され、
前記第5のトランジスタの第2のゲートは、前記第1の出力端子と電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1の出力端子と電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第1の配線と電気的に接続され、
前記第6のトランジスタの第1のゲートは、前記第4の入力端子と電気的に接続され、
前記第6のトランジスタの第2のゲートは、前記第1の出力端子と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第8のトランジスタのソース又はドレインの他方と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第1の配線と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタの第1のゲートは、前記第1の入力端子と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタの第2のゲートは、前記第2の出力端子と電気的に接続され、
前記第8のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2の出力端子と電気的に接続され、
前記第8のトランジスタの第1のゲートは、前記第2の入力端子と電気的に接続され、
前記第8のトランジスタの第2のゲートは、前記第2の出力端子と電気的に接続される、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の配線に与えられる第1の電位は、前記第2の配線に与えられる第2の電位よりも高い、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のトランジスタ乃至前記第8のトランジスタのそれぞれは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置に関する。
【0002】
また、本発明の一形態は半導体装置に関する。なお、本発明の一形態は上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一形態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。表示装置、発光装置、記憶装置、電気光学装置、蓄電装置、制御システム、半導体回路及び電子機器は、半導体装置を有する場合がある。
【背景技術】
【0004】
チャネル形成領域が金属酸化物(酸化物半導体ともいう)で構成されるトランジスタ(OSトランジスタ)はオフ時に流れるリーク電流(オフ電流)が極めて小さいため、低消費電力向けの論理回路への応用が期待されている。例えば、特許文献1では、nチャネル型トランジスタのOSトランジスタで構成される単極性のインバータ回路が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/84731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
nチャネル型トランジスタのみで論理回路を構成する場合、出力電圧が閾値電圧分、降下するといった問題が生じる。また電源線間に貫通電流が流れる構成となるため、消費電力が増大するといった問題が生じる。
【0007】
また、チャネル形成領域がシリコンで構成されるトランジスタ(Siトランジスタ)では、論理回路を構成するトランジスタが高温にさらされることで電気特性が変動する。電気特性の変動は、トランジスタのオン/オフ比の低下を招くため、正常な回路動作を維持できなくなるといった問題が生じる。
【0008】
上述の諸問題を鑑み、本発明の一態様は、信頼性に優れた半導体装置を提供することを課題の一とする。または本発明の一態様は、低消費電力化に優れた半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1入力端子および第2入力端子と、第1出力端子および第2出力端子と、第1配線および第2配線と、第1乃至第4トランジスタと、を有し、第1トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第1配線に電気的に接続され、ゲートまたはバックゲートの一方が第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方およびゲートまたはバックゲートの他方が第2出力端子に電気的に接続され、第2トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第1配線に電気的に接続され、ゲートまたはバックゲートの一方が第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方およびゲートまたはバックゲートの他方が第1出力端子に電気的に接続され、第3トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第1出力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第2配線に電気的に接続され、第4トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第2出力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第2配線に電気的に接続される、半導体装置である。
【0011】
本発明の一態様は、第1入力端子および第2入力端子と、第1出力端子および第2出力端子と、第1乃至第3配線と、第1乃至第8トランジスタと、を有し、第1トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第1配線に電気的に接続され、ゲートまたはバックゲートの一方が第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方およびゲートまたはバックゲートの他方が第2トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、第2トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第2配線に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第2出力端子に電気的に接続され、第3トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第1配線に電気的に接続され、ゲートまたはバックゲートの一方が第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方およびゲートまたはバックゲートの他方が第4トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、第4トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第2配線に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第1出力端子に電気的に接続され、第5トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第4トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続され、第6トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第1出力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続され、第7トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第2トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続され、第8トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第2出力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続される半導体装置である。
【0012】
本発明の一態様において、第1の配線に与える第1電位は、第2の配線に与える第2電位よりも高い半導体装置が好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、第1乃至第4トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである半導体装置が好ましい。
【0014】
本発明の一態様において、第1乃至第8トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである半導体装置が好ましい。
【0015】
本発明の一態様において、金属酸化物は、少なくともIn(インジウム)またはZn(亜鉛)のいずれか一方を含む半導体装置が好ましい。
【0016】
本発明の一態様において、金属酸化物は、Ga(ガリウム)を含む、半導体装置が好ましい。
【0017】
本発明の一態様は、複数のスイッチ回路と、複数の論理回路と、を有し、論理回路は、第1入力端子および第2入力端子と、第1出力端子および第2出力端子と、第1乃至第3配線と、第1乃至第8トランジスタと、を有し、第1トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第1配線に電気的に接続され、ゲートまたはバックゲートの一方が第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方およびゲートまたはバックゲートの他方が第2トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、第2トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第2配線に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第2出力端子に電気的に接続され、第3トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第1配線に電気的に接続され、ゲートまたはバックゲートの一方が第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方およびゲートまたはバックゲートの他方が第4トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、第4トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が第2配線に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第1出力端子に電気的に接続され、第5トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第4トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続され、第6トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第1入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第1出力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続され、第7トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第2トランジスタのゲートおよびバックゲートに電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続され、第8トランジスタは、ゲートおよびバックゲートが第2入力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方が第2出力端子に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が第3配線に電気的に接続される半導体装置である。
【0018】
本発明の一態様において、第1の配線に与える第1電位は、第2の配線に与える第2電位よりも高い半導体装置が好ましい。
【0019】
本発明の一態様において、第1乃至第8トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである半導体装置が好ましい。
【0020】
本発明の一態様において、スイッチ回路は、トランジスタを有し、トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである半導体装置が好ましい。
【0021】
本発明の一態様において、複数のスイッチ回路のいずれか一は、非導通状態とすることで論理回路内に保持されたデータに応じた電位を保持する機能を有する半導体装置が好ましい。
【0022】
本発明の一態様において、金属酸化物は、少なくともIn(インジウム)またはZn(亜鉛)を含む半導体装置が好ましい。
【0023】
本発明の一態様において、金属酸化物は、Ga(ガリウム)を含む半導体装置が好ましい。
【0024】
なおその他の本発明の一態様については、以下で述べる実施の形態における説明、および図面に記載されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様は、信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。または本発明の一態様は、低消費電力化に優れた半導体装置を提供することができる。
【0026】
なおその他の本発明の一態様については、以下で述べる実施の形態における説明、および図面に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】半導体装置の構成例を説明する(A)ブロック図および(B)回路図。
図2】半導体装置の構成例を説明する(A)回路図、(B)タイミングチャート、および(C)回路記号のシンボルを示す図。
図3】半導体装置の構成例を説明する(A)回路記号および(B)グラフ。
図4】半導体装置の構成例を説明する回路図。
図5】半導体装置の構成例を説明する(A)回路図、および(B)回路図。
図6】半導体装置の構成例を説明する(A)回路図および(B)タイミングチャート。
図7】半導体装置の構成例を説明する回路図。
図8】半導体装置の構成例を説明する(A)斜視図および(B)斜視図。
図9】半導体装置の構成例を説明する(A)ブロック図、(B)回路図および(C)回路図。
図10】半導体装置の構成例を説明する(A)回路記号のシンボルを示す図、(B)回路記号のシンボルを示す図、(C)回路図、および(D)タイミングチャート。
図11】半導体装置の構成例を説明する(A)回路図、(B)回路図、(C)回路図および(D)回路図。
図12】半導体装置の構成例を説明する(A)回路図および(B)回路記号のシンボルを示す図。
図13】半導体装置の構成例を説明する(A)回路図および(B)回路記号のシンボルを示す図。
図14】半導体装置の構成例を説明するタイミングチャート。
図15】半導体装置の構成例を説明する(A)回路図および(B)回路図。
図16】半導体装置の構成例を説明する回路図。
図17】トランジスタの構造例を示す(A)断面図、(B)断面図。
図18】トランジスタの構造例を示す(A)上面図、(B)断面図、および(C)断面図。
図19】トランジスタの構造例を示す(A)上面図、(B)断面図、および(C)断面図。
図20】トランジスタの構造例を示す(A)上面図、(B)断面図、および(C)断面図。
図21】トランジスタの構造例を示す(A)上面図、(B)断面図、および(C)断面図。
図22】トランジスタの構造例を示す(A)上面図、(B)断面図、および(C)断面図。
図23】電子装置の(A)-(D)構成例を示す図。
図24】半導体装置の動作を説明する(A)グラフおよび(B)グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
なお本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
【0030】
なお図面において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0031】
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorともいう)などに分類される。
【0032】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)と呼ぶことができる。すなわち、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタを、「酸化物半導体トランジスタ」、「OSトランジスタ」と呼ぶことができる。同様に、上述した、「酸化物半導体を用いたトランジスタ」も、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである。
【0033】
(実施の形態1)
本発明の一態様である半導体装置の構成について説明する。
【0034】
図1(A)は、本実施の形態の半導体装置のブロック図である。本実施の形態で説明する半導体装置100は、信号生成回路101および論理回路102に大別することができる。
【0035】
なお本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。したがって信号生成回路101および論理回路102をそれぞれ半導体装置と呼ぶ場合がある。
【0036】
信号生成回路101は、端子INおよび端子INBより、入力信号および反転入力信号を出力する機能を有する。信号生成回路101は、Siトランジスタで構成される回路(Si/Cir.と図示)を有する。信号生成回路101は、CMOS回路を用いて、順序回路及び組合せ回路を用いて適宜設計することで構成することができる。
【0037】
論理回路102は、OSトランジスタで構成される回路(OS/Cir.と図示)を有する。論理回路102は、組み合わせ回路である。一例としては、インバータ回路(NOT回路ともいう)である。論理回路102は、入力信号および反転出力信号に応じて、端子OUTおよび端子OUTBより、出力信号および反転出力信号を出力する機能を有する。
【0038】
論理回路102は、OSトランジスタで構成される2線式の組合せ回路である。OSトランジスタは、Siトランジスタと異なり、高温環境下での電気特性の変動が小さい。そのため、高温環境下においても信頼性に優れた動作とすることができる。
【0039】
図1(B)は、論理回路102の具体的な回路構成について示す回路図である。図1(B)に示す論理回路102は、インバータ回路として機能する2線式の論理回路である。
【0040】
図1(B)に図示する論理回路102は、トランジスタ111乃至トランジスタ114を有する。また図1(B)には、高電源電位VDDが与えられる配線VDDL、および低電源電位VSS(例えば、グラウンド電位)が与えられる配線VSSLを図示している。
【0041】
トランジスタ111のゲートまたはバックゲートの一方は、入力信号が与えられる端子INに接続される。トランジスタ111のソースまたはドレインの一方は、配線VDDLに接続される。トランジスタ111のソースまたはドレインの他方は、反転出力信号を出力する端子OUTBに接続される。トランジスタ111のゲートまたはバックゲートの他方は、反転出力信号を出力する端子OUTBに接続される。なお各端子は、配線と読み替えることが可能である。
【0042】
トランジスタ111はゲートに印加される電位に応じて、導通状態(オンともいう)または非導通状態(オフともいう)となり、端子OUTBを電位VDDに基づくハイレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ111はバックゲートに印加される電位に応じて、トランジスタのデプレッション型(ノーマリーオンともいう)あるいはエンハンスメント型(ノーマリーオフともいう)が制御される機能を有する。トランジスタ111は第1トランジスタともいう。
【0043】
トランジスタ112のゲートまたはバックゲートの一方は、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。トランジスタ112のソースまたはドレインの一方は、配線VDDLに接続される。トランジスタ112のソースまたはドレインの他方は、出力信号を出力する端子OUTに接続される。トランジスタ112のゲートまたはバックゲートの他方は、出力信号を出力する端子OUTに接続される。
【0044】
トランジスタ112はゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTを電位VDDに基づくハイレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ112はバックゲートに印加される電位に応じて、トランジスタのノーマリーオンあるいはノーマリーオフが制御される機能を有する。トランジスタ112は第2トランジスタともいう。
【0045】
トランジスタ113のゲートおよびバックゲートは、入力信号が与えられる端子INに接続される。なおトランジスタ113のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INに接続される構成としてもよい。トランジスタ113のソースまたはドレインの一方は、出力信号を出力する端子OUTに接続される。トランジスタ113のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0046】
トランジスタ113はゲートおよびバックゲートに印加される端子INの電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTを電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ113は第3トランジスタともいう。
【0047】
トランジスタ114のゲートおよびバックゲートは、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。なおトランジスタ114のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INBに接続される構成としてもよい。トランジスタ114のソースまたはドレインの一方は、反転出力信号を出力する端子OUTBに接続される。トランジスタ114のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0048】
トランジスタ114はゲートおよびバックゲートに印加される端子INBの電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTBを電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ114は、第4トランジスタ114ともいう。
【0049】
次いで図1(B)に図示する論理回路102の動作について図2(A)乃至(C)を用いて説明する。
【0050】
図2(A)には、図1(B)と同様の回路図を示し、図2(B)には図2(A)の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。
【0051】
図2(B)に図示するタイミングチャートにおいて、時刻T1乃至T2および時刻T3乃至T4では、端子INに与える入力信号をハイレベル、端子INBに与える反転入力信号をローレベルとする。トランジスタ111がノーマリーオン、トランジスタ113がオンとなる。トランジスタ112がノーマリーオフ、トランジスタ114がオフとなる。端子OUTが電位VSSに基づくローレベルの電位となる。端子OUTBが電位VDDに基づくハイレベルの電位となる。
【0052】
当該構成とすることで、トランジスタのバックゲートに印加される電位を切り替えることができる。例えば図3(A)に例示するトランジスタ115の回路記号において、トランジスタのゲートをgとし、トランジスタのバックゲートをbgとし、トランジスタのソースをsとし、トランジスタのドレインをdとしている。図3(B)は、ソースの電位を0Vとした際の、トランジスタのドレインを流れる電流(Id)とゲートの電圧(Vg)との関係を示すグラフである。図示するようにバックゲートでの電圧を電位VSS(Vbg=0)とすることで閾値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリーオフとすることができる。またバックゲートでの電圧を電位VDD(Vbg=VDD)とすることで閾値電圧をマイナスシフトさせ、ノーマリーオンとすることができる。
【0053】
トランジスタ111のバックゲートには、ハイレベルの電位が印加され、トランジスタ112のバックゲートには、ローレベルの電位が印加される。その結果、トランジスタ111がノーマリーオンのトランジスタになり、トランジスタ112がノーマリーオフのトランジスタとなる。トランジスタ111をノーマリーオンのトランジスタとして機能させることができるため、端子OUTBに流れる電流量を増やすことができる。またトランジスタ112をノーマリーオフのトランジスタとして機能させることができるため、配線VDDLと配線VSSL間の貫通電流を確実に低減することができる。
【0054】
図2(B)に図示するタイミングチャートにおいて、時刻T2乃至T3では、端子INに与える入力信号をローレベル、端子INBに与える反転入力信号をハイレベルとする。トランジスタ111がノーマリーオフ、トランジスタ113がオフとなる。トランジスタ112がノーマリーオン、トランジスタ114がオンとなる。端子OUTが電位VDDに基づくハイレベルの電位となる。端子OUTBが電位VSSに基づくローレベルの電位となる。
【0055】
トランジスタ111のバックゲートには、ローレベルの電位が印加され、トランジスタ112のバックゲートには、ハイレベルの電位が印加される。その結果、トランジスタ111がノーマリーオフのトランジスタになり、トランジスタ112がノーマリーオンのトランジスタとなる。トランジスタ111をノーマリーオフのトランジスタとして機能させることができるため、配線VDDLと配線VSSL間の貫通電流を確実に低減することができる。またトランジスタ112をノーマリーオンのトランジスタとして機能させることができるため、端子OUTに流れる電流量を増やすことができる。
【0056】
なお図2(A)に示す論理回路102の回路図は、2線式のインバータ回路としての機能を有する。図2(C)では、2線式の回路記号のシンボルを図示している。
【0057】
なお図1(B)では、トランジスタ111およびトランジスタ112のバックゲート側に、端子INおよび端子INBを接続する構成について図示したが、図4に図示する論理回路102Aの回路図のようにゲート側に端子INおよび端子INBを接続する構成としてもよい。
【0058】
トランジスタでは、ゲート側のゲート絶縁膜の膜厚、またはバックゲート側のゲート絶縁膜の膜厚を異ならせる。そして図1(B)と図4との接続を切り替えることで、チャネル形成領域への電界強度を調節することができる。そのため、閾値電圧のシフト量を調整することができる。なお端子INおよび端子INBを接続する側にあるゲート絶縁膜は、薄いことが好ましい。当該構成とすることで、端子INおよび端子INBに与える入力信号および反転入力信号によるスイッチング特性を優れたものとすることができる。
【0059】
以上説明した構成とすることで、OSトランジスタで構成される論理回路を備えた半導体装置は、信頼性に優れた動作を実現することができるとともに、低消費電力化を図ることができる。
【0060】
次いで、図1(B)とは別の論理回路の構成例について説明する。
【0061】
図5(A)に示す論理回路102Bは、図1(B)と同様にインバータ回路として機能する2線式の論理回路の回路図である。
【0062】
図5(A)に図示する論理回路102Bは、トランジスタ121乃至トランジスタ128を有する。また図5(A)には、高電源電位VDHが与えられる配線VDHL、高電源電位VDDが与えられる配線VDDL、および低電源電位VSSが与えられる配線VSSLを図示している。なお高電源電位VDHは、高電源電位VDDより高い電位である。
【0063】
トランジスタ121のゲートまたはバックゲートの一方は、入力信号が与えられる端子INに接続される。トランジスタ121のソースまたはドレインの一方は、配線VDHLに接続される。トランジスタ121のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ121のゲートまたはバックゲートの他方は、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに接続される。
【0064】
トランジスタ121はゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートの電位を電位VDHに基づく電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ121はバックゲートに印加される電位に応じて、トランジスタのノーマリーオンあるいはノーマリーオフが制御される機能を有する。トランジスタ121は第1トランジスタともいう。
【0065】
トランジスタ122のソースまたはドレインの一方は、配線VDDLに接続される。トランジスタ122のソースまたはドレインの他方は、端子OUTBに接続される。
【0066】
トランジスタ122はゲートおよびバックゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTBを電位VDDに基づくハイレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ122は第2トランジスタともいう。
【0067】
トランジスタ123のゲートまたはバックゲートの一方は、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。トランジスタ123のソースまたはドレインの一方は、配線VDHLに接続される。トランジスタ123のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ123のゲートまたはバックゲートの他方は、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに接続される。
【0068】
トランジスタ123はゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートの電位を電位VDHに基づく電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ123はバックゲートに印加される電位に応じて、トランジスタのノーマリーオンあるいはノーマリーオフが制御される機能を有する。トランジスタ123は第3トランジスタともいう。
【0069】
トランジスタ124のソースまたはドレインの一方は、配線VDDLに接続される。トランジスタ124のソースまたはドレインの他方は、端子OUTに接続される。
【0070】
トランジスタ124はゲートおよびバックゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTを電位VDDに基づくハイレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ124は第4トランジスタともいう。
【0071】
トランジスタ125のゲートおよびバックゲートは、入力信号が与えられる端子INに接続される。なおトランジスタ125のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INに接続される構成としてもよい。トランジスタ125のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ125のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0072】
トランジスタ125はゲートおよびバックゲートに印加される端子INの電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートの電位を電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ125は第5トランジスタともいう。
【0073】
トランジスタ126のゲートおよびバックゲートは、入力信号が与えられる端子INに接続される。なおトランジスタ126のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INに接続される構成としてもよい。トランジスタ126のソースまたはドレインの一方は、出力信号を出力する端子OUTに接続される。トランジスタ126のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0074】
トランジスタ126はゲートおよびバックゲートに印加される端子INの電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTを電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ126は第6トランジスタともいう。
【0075】
トランジスタ127のゲートおよびバックゲートは、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。なおトランジスタ127のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INBに接続される構成としてもよい。トランジスタ127のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ127のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0076】
トランジスタ127はゲートおよびバックゲートに印加される端子INBの電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートの電位を電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ127は第7トランジスタともいう。
【0077】
トランジスタ128のゲートおよびバックゲートは、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。なおトランジスタ128のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INBに接続される構成としてもよい。トランジスタ128のソースまたはドレインの一方は、反転出力信号を出力する端子OUTBに接続される。トランジスタ128のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0078】
トランジスタ128はゲートおよびバックゲートに印加される端子INBの電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTBを電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ128は第8トランジスタともいう。
【0079】
なお図5(A)では、トランジスタ121およびトランジスタ123のバックゲート側に、端子INおよび端子INBを接続する構成について図示したが、図5(B)に図示する論理回路102Cの回路図のようにゲート側に端子INおよび端子INBを接続する構成としてもよい。
【0080】
トランジスタでは、ゲート側のゲート絶縁膜の膜厚、またはバックゲート側のゲート絶縁膜の膜厚を異ならせる。そして図5(A)と図5(B)との接続を切り替えることで、チャネル形成領域への電界強度を調節することができる。そのため、閾値電圧のシフト量を調整することができる。なお端子INおよび端子INBを接続する側にあるゲート絶縁膜は、薄いことが好ましい。当該構成とすることで、端子INおよび端子INBに与える入力信号および反転入力信号によるスイッチング特性を優れたものとすることができる。
【0081】
次いで図5(A)に図示する論理回路102Bの動作について図6(A)乃至(B)を用いて説明する。
【0082】
図6(A)には、図5(A)と同様の回路図を示し、図6(B)には図6(A)の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。なお図6(A)において、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートのノードをノードPとして図示している。また、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートのノードをノードPBとして図示している。
【0083】
図6(B)に図示するタイミングチャートにおいて、時刻T5乃至T6および時刻T7乃至T8では、端子INに与える入力信号をハイレベル、端子INBに与える反転入力信号をローレベルとする。トランジスタ121がノーマリーオン、トランジスタ125およびトランジスタ126がオンとなる。トランジスタ123がノーマリーオフ、トランジスタ127およびトランジスタ128がオフとなる。ノードPが電位VDHに基づくハイレベルの電位となり、トランジスタ122がオンとなる。ノードPBが電位VSSに基づくローレベルの電位となり、トランジスタ124がオフとなる。端子OUTが電位VSSに基づくローレベルの電位となる。端子OUTBが電位VDDに基づくハイレベルの電位となる。
【0084】
トランジスタ121のバックゲートには、ハイレベルの電位が印加され、トランジスタ123のバックゲートには、ローレベルの電位が印加される。その結果、トランジスタ121がノーマリーオンのトランジスタになり、トランジスタ123がノーマリーオフのトランジスタとなる。トランジスタ121をノーマリーオンのトランジスタとして機能させることができるため、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに流れる電流量を増やすことができる。またトランジスタ123をノーマリーオフのトランジスタとして機能させることができるため、配線VDHLと配線VSSL間の貫通電流を確実に低減することができる。
【0085】
加えて図6(A)の構成では、ノードPを電位VDDよりも高い電位VDHに基づく電位とすることができる。そのため、トランジスタ122のゲートとソースの間に印加される電圧を大きくすることができ、閾値電圧分の電圧降下を小さくできるため、より確実に端子OUTBの電位を電位VDDとすることができる。
【0086】
図24(A)、(B)には、回路シミュレーションを用いて入力信号(IN)、反転入力信号(INB)、出力信号(OUT)、反転出力信号(OUTB)の波形図を取得したグラフを示す。図24(A)は電源電圧1.2V、図24(B)は電源電圧2.5Vである。いずれも入力信号の電圧(入力電圧)に応じた出力信号の信号(出力電圧)が得られた。
【0087】
図6(B)に図示するタイミングチャートにおいて、時刻T6乃至T7では、端子INに与える入力信号をローレベル、端子INBに与える反転入力信号をハイレベルとする。トランジスタ121がノーマリーオフ、トランジスタ125およびトランジスタ126がオフとなる。トランジスタ123がノーマリーオン、トランジスタ127およびトランジスタ128がオンとなる。ノードPが電位VSSに基づくローレベルの電位となり、トランジスタ122がオフとなる。ノードPBが電位VDHに基づくハイレベルの電位となり、トランジスタ124がオンとなる。端子OUTが電位VSSに基づくローレベルの電位となる。端子OUTBが電位VDDに基づくハイレベルの電位となる。
【0088】
トランジスタ121のバックゲートには、ローレベルの電位が印加され、トランジスタ123のバックゲートには、ハイレベルの電位が印加される。その結果、トランジスタ121がノーマリーオフのトランジスタになり、トランジスタ123がノーマリーオンのトランジスタとなる。トランジスタ121をノーマリーオフのトランジスタとして機能させることができるため、配線VDHLと配線VSSL間の貫通電流を確実に低減することができる。またトランジスタ123をノーマリーオンのトランジスタとして機能させることができるため、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに流れる電流量を増やすことができる。
【0089】
加えて図6(A)の構成では、ノードPBを電位VDDよりも高い電位VDHに基づく電位とすることができる。そのため、トランジスタ124のゲートとソースの間に印加される電圧を大きくすることができ、閾値電圧分の電圧降下を小さくできるため、より確実に端子OUTBの電位を電位VDDとすることができる。
【0090】
なお図6(A)に示す論理回路102Bの回路図は、2線式のインバータ回路としての機能を有する。そのため、図2(A)と同様に、図2(C)に図示する2線式の回路記号のシンボルを表すことができる。
【0091】
以上説明した構成とすることで、OSトランジスタで構成される論理回路を備えた半導体装置は、信頼性に優れた動作を実現することができるとともに、低消費電力化を図ることができる。加えて、出力される信号の電圧降下を抑制した構成とすることができる。
【0092】
また、上記説明した構成を応用することで、基本的な組み合わせ回路を構成することができる。
【0093】
図7は、図4の構成を応用した論理回路の回路図である。図7に示す論理回路102Dは、トランジスタ131乃至138を有する。また図7には、高電源電位VDDが与えられる配線VDDL、および低電源電位VSSが与えられる配線VSSLを図示している。端子IN1、IN1B、IN2および端子IN2Bは入力信号を与える端子である。端子OUTおよび端子OUTBは出力信号を与える端子である。端子OUTからは、入力信号の否定論理積(反転入力信号の否定論理和)に応じた出力信号が得られ、端子OUTBからは、入力信号の否定論理積(反転入力信号の論理積)に応じた出力信号が得られる。各端子に入力する信号を入れ替えて論理回路の機能を切り替えてもよい。図7に示す論理回路の真理値表は、表1のようになる。
【0094】
【表1】
【0095】
上述した組み合わせ回路を用いることで、カウンタ、シリアルパラレル変換機、プロセッサ等の複雑な回路を実現することができる。これらの回路は、OSトランジスタで構成することができるため、高温環境下においても良好なスイッチング特性を維持することが可能である。また、貫通電流の低減による消費電力の削減、閾値電圧分の電圧降下の抑制等を図ることができる。
【0096】
図8では、半導体装置である上記論理回路を組み込んだICの斜視図の一例を示す。
【0097】
図8(A)に、ICの一例を示す。図8(A)に示すIC7000Aは、リード7001及び回路部7003Aを有する。IC7000Aは、例えばプリント基板7002に実装される。このようなICチップが複数組み合わされて、それぞれがプリント基板7002上で電気的に接続されることで電子部品が実装された基板(実装基板7004)が完成する。回路部7003Aには、上記実施の形態で示した各種の回路が1のダイあるいは複数のダイに分割されて設けられている。回路部7003Aは、OSトランジスタ層7031、配線層7032に大別される。
【0098】
なおOSトランジスタ層は、単層でもよいし、配線層を挟んで積層する構成としてもよい。具体的に図8(B)に、ICの別の例を示す。図8(B)に示すIC7000Bは、リード7001及び回路部7003Bを有する。IC7000Bは、例えばプリント基板7002に実装される。このようなICチップが複数組み合わされて、それぞれがプリント基板7002上で電気的に接続されることで電子部品が実装された基板(実装基板7004)が完成する。回路部7003Bには、上記実施の形態で示した各種の回路が1のダイ、あるいは複数のダイに分割されて設けられている。回路部7003Aは、OSトランジスタ層7031、配線層7032、OSトランジスタ層7033に大別される。OSトランジスタ層7031は、配線層7032を介して、OSトランジスタ層7033に接続される。OSトランジスタ層7033上には、別の配線層を介して、さらに別のOSトランジスタ層を配置する構成とすることも可能である。複数のOSトランジスタ層を積層して設けることができるため、回路部7003Bの小型化が容易である。
【0099】
図8(A)、(B)では、IC7000A、7000BのパッケージにQFP(Quad Flat Package)を適用しているが、パッケージの態様はこれに限定されない。
【0100】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0101】
(実施の形態2)
上記実施の形態1で説明した半導体装置とは異なる、本発明の一態様である半導体装置の構成について説明する。
【0102】
図9(A)は、本実施の形態の半導体装置のブロック図である。本実施の形態で説明する半導体装置100Aは、信号生成回路101および信号処理回路201に大別することができる。
【0103】
なお本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。したがって信号生成回路101および信号処理回路201を別々に、あるいは一体として半導体装置と呼ぶ場合がある。
【0104】
信号生成回路101は、端子Dおよび端子Dbより、入力信号および反転入力信号を出力する機能を有する。信号生成回路101は、Siトランジスタで構成される回路(Si/Cir.と図示)を有する。信号生成回路101は、CMOS回路を用いて、順序回路及び組合せ回路を用いて適宜設計することで構成することができる。
【0105】
信号処理回路201は、OSトランジスタで構成される回路(OS/Cir.と図示)で構成される。信号処理回路201は、順序回路および組み合わせ回路を有する。一例としては、組み合わせ回路は、インバータ回路(NOT回路ともいう)や論理積回路(AND回路)等である。順序回路は、フリップフロップ回路やカウンタ回路等である。信号処理回路201は、入力信号および反転入力信号を内部の回路で信号を処理し、端子Qおよび端子Qbより出力信号および反転出力信号として出力する機能を有する。
【0106】
図9(B)は、信号処理回路201の回路の一例について示す回路図である。図9(B)に示す信号処理回路201は、順序回路として機能する論理回路202(図中Seq.と図示)と、組み合わせ回路として機能する論理回路102(図中、Comb.と図示)をそれぞれ複数組み合わせた回路構成を有する。
【0107】
論理回路202は、OSトランジスタで構成される2線式の順序回路である。OSトランジスタは、Siトランジスタと異なり、高温環境下での電気特性の変動が小さい。そのため、高温環境下においても信頼性に優れた動作とすることができる。
【0108】
図9(C)は、論理回路202の具体的な回路構成について示す回路図である。図9(C)に示す論理回路202は、スイッチと、インバータ回路として機能する論理回路と、を有する2線式のフリップフロップ回路である。
【0109】
図9(C)に図示する論理回路202は、クロック信号CLKまたは反転クロック信号CLKbに応じてオンまたはオフが制御されるスイッチ回路203と、インバータ回路として機能する論理回路102と、を有する。
【0110】
なお図9(C)に示す論理回路102は、図2(A)乃至(C)で説明したように、2線式のインバータ回路を表す。図10(A)では、図2(C)と同様の、2線式の回路記号のシンボルを図示している。論理回路102は、高電源電位VDHが与えられる配線VDHL、高電源電位VDDが与えられる配線VDDL、および低電源電位VSSが与えられる配線VSSLに接続される。そのため、図2(C)および図10(A)の回路記号のシンボルを図10(B)に図示する回路記号のシンボルのように表すことも可能である。なお図10(B)で付した配線名は省略する場合もある。
【0111】
図10(C)は、図6(A)で説明した論理回路102Bで表すことができる、論理回路102の具体的な回路構成の回路図である。図10(C)に示す論理回路102は、トランジスタ121乃至トランジスタ128を有する。また図10(C)には、高電源電位VDHが与えられる配線VDHL、高電源電位VDDが与えられる配線VDDL、および低電源電位VSSが与えられる配線VSSLを図示している。なお高電源電位VDHは、高電源電位VDDより高い電位である。なお図10(C)において、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートのノードをノードPとして図示している。また、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートのノードをノードPBとして図示している。
【0112】
トランジスタ121のゲートまたはバックゲートの一方は、入力信号が与えられる端子INに接続される。トランジスタ121のソースまたはドレインの一方は、配線VDHLに接続される。トランジスタ121のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ121のゲートまたはバックゲートの他方は、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに接続される。
【0113】
トランジスタ121はゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートの電位を電位VDHに基づく電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ121はバックゲートに印加される電位に応じて、トランジスタのノーマリーオンあるいはノーマリーオフが制御される機能を有する。トランジスタ121は第1トランジスタともいう。
【0114】
トランジスタ122のソースまたはドレインの一方は、配線VDDLに接続される。トランジスタ122のソースまたはドレインの他方は、端子OUTBに接続される。
【0115】
トランジスタ122はゲートおよびバックゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTBを電位VDDに基づくハイレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ122は第2トランジスタともいう。
【0116】
トランジスタ123のゲートまたはバックゲートの一方は、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。トランジスタ123のソースまたはドレインの一方は、配線VDHLに接続される。トランジスタ123のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ123のゲートまたはバックゲートの他方は、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに接続される。
【0117】
トランジスタ123はゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートの電位を電位VDHに基づく電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ123はバックゲートに印加される電位に応じて、トランジスタのノーマリーオンあるいはノーマリーオフが制御される機能を有する。トランジスタ123は第3トランジスタともいう。
【0118】
トランジスタ124のソースまたはドレインの一方は、配線VDDLに接続される。トランジスタ124のソースまたはドレインの他方は、端子OUTに接続される。
【0119】
トランジスタ124はゲートおよびバックゲートに印加される電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTを電位VDDに基づくハイレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ124は第4トランジスタともいう。
【0120】
トランジスタ125のゲートおよびバックゲートは、入力信号が与えられる端子INに接続される。なおトランジスタ125のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INに接続される構成としてもよい。トランジスタ125のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ125のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0121】
トランジスタ125はゲートおよびバックゲートに印加される端子INの電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートの電位を電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ125は第5トランジスタともいう。
【0122】
トランジスタ126のゲートおよびバックゲートは、入力信号が与えられる端子INに接続される。なおトランジスタ126のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INに接続される構成としてもよい。トランジスタ126のソースまたはドレインの一方は、出力信号を出力する端子OUTに接続される。トランジスタ126のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0123】
トランジスタ126はゲートおよびバックゲートに印加される端子INの電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTを電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ126は第6トランジスタともいう。
【0124】
トランジスタ127のゲートおよびバックゲートは、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。なおトランジスタ127のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INBに接続される構成としてもよい。トランジスタ127のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに接続される。トランジスタ127のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0125】
トランジスタ127はゲートおよびバックゲートに印加される端子INBの電位に応じて、オンまたはオフとなり、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートの電位を電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ127は第7トランジスタともいう。
【0126】
トランジスタ128のゲートおよびバックゲートは、反転入力信号が与えられる端子INBに接続される。なおトランジスタ128のゲートおよびバックゲートのいずれか一方が端子INBに接続される構成としてもよい。トランジスタ128のソースまたはドレインの一方は、反転出力信号を出力する端子OUTBに接続される。トランジスタ128のソースまたはドレインの他方は、配線VSSLに接続される。
【0127】
トランジスタ128はゲートおよびバックゲートに印加される端子INBの電位に応じて、オンまたはオフとなり、端子OUTBを電位VSSに基づくローレベルの電位にするか否かを制御する機能を有する。トランジスタ128は第8トランジスタともいう。
【0128】
当該構成とすることで、図3(A)、(B)で説明したように、トランジスタのバックゲートに印加される電位を切り替えることができる。
【0129】
次いで図10(C)に図示する論理回路102の動作について図10(D)を用いて説明する。図10(D)には図10(C)に図示する論理回路102の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。図10(D)に示すタイミングチャートは、図6(B)で説明したタイミングチャートと同様である。
【0130】
図10(C)に図示するタイミングチャートにおいて、時刻T11乃至T12および時刻T13乃至T14では、端子INに与える入力信号をハイレベル、端子INBに与える反転入力信号をローレベルとする。トランジスタ121がノーマリーオン、トランジスタ125およびトランジスタ126がオンとなる。トランジスタ123がノーマリーオフ、トランジスタ127およびトランジスタ128がオフとなる。ノードPが電位VDHに基づくハイレベルの電位となり、トランジスタ122がオンとなる。ノードPBが電位VSSに基づくローレベルの電位となり、トランジスタ124がオフとなる。端子OUTが電位VSSに基づくローレベルの電位となる。端子OUTBが電位VDDに基づくハイレベルの電位となる。
【0131】
トランジスタ121のバックゲートには、ハイレベルの電位が印加され、トランジスタ123のバックゲートには、ローレベルの電位が印加される。その結果、トランジスタ121がノーマリーオンのトランジスタになり、トランジスタ123がノーマリーオフのトランジスタとなる。トランジスタ121をノーマリーオンのトランジスタとして機能させることができるため、トランジスタ122のゲートおよびバックゲートに流れる電流量を増やすことができる。またトランジスタ123をノーマリーオフのトランジスタとして機能させることができるため、配線VDHLと配線VSSL間の貫通電流を確実に低減することができる。
【0132】
加えて図10(C)の構成では、ノードPを電位VDDよりも高い電位VDHに基づく電位とすることができる。そのため、トランジスタ122のゲートとソースの間に印加される電圧を大きくすることができ、閾値電圧分の電圧降下を小さくできるため、より確実に端子OUTBの電位を電位VDDとすることができる。
【0133】
図10(D)に図示するタイミングチャートにおいて、時刻T12乃至T13では、端子INに与える入力信号をローレベル、端子INBに与える反転入力信号をハイレベルとする。トランジスタ121がノーマリーオフ、トランジスタ125およびトランジスタ126がオフとなる。トランジスタ123がノーマリーオン、トランジスタ127およびトランジスタ128がオンとなる。ノードPが電位VSSに基づくローレベルの電位となり、トランジスタ122がオフとなる。ノードPBが電位VDHに基づくハイレベルの電位となり、トランジスタ124がオンとなる。端子OUTが電位VSSに基づくローレベルの電位となる。端子OUTBが電位VDDに基づくハイレベルの電位となる。
【0134】
トランジスタ121のバックゲートには、ローレベルの電位が印加され、トランジスタ123のバックゲートには、ハイレベルの電位が印加される。その結果、トランジスタ121がノーマリーオフのトランジスタになり、トランジスタ123がノーマリーオンのトランジスタとなる。トランジスタ121をノーマリーオフのトランジスタとして機能させることができるため、配線VDHLと配線VSSL間の貫通電流を確実に低減することができる。またトランジスタ123をノーマリーオンのトランジスタとして機能させることができるため、トランジスタ124のゲートおよびバックゲートに流れる電流量を増やすことができる。
【0135】
加えて図10(C)の構成では、ノードPBを電位VDDよりも高い電位VDHに基づく電位とすることができる。そのため、トランジスタ124のゲートとソースの間に印加される電圧を大きくすることができ、閾値電圧分の電圧降下を小さくできるため、より確実に端子OUTBの電位を電位VDDとすることができる。
【0136】
また図9(C)に示すスイッチ回路203は、2線式のスイッチを有する。具体的には、端子INと端子OUTの間と、端子INBと端子OUTBの間とで、オンまたはオフを制御する2つのトランジスタを有する。図11(A)では、クロック信号CLKによってオンまたはオフが制御される2線式のスイッチの回路記号のシンボルを図示している。
【0137】
図11(A)に示すスイッチ回路203は、図11(B)に図示するスイッチ回路203Aのように、クロック信号CLKを与える配線と、各トランジスタのゲートと、を接続してオンまたはオフを制御する構成とすることができる。
【0138】
また別の構成として図11(C)に示す構成としてもよい。図11(C)に示すスイッチ回路203Bは、クロック信号CLKを与える配線とは別にバックゲートに信号BGを与える配線を設け、ゲートとバックゲートに与える信号に応じて、オンまたはオフを制御する構成とすることができる。信号BGは、トランジスタのしきい値電圧を制御するための電位を与える信号である。当該構成とすることで、トランジスタのオンまたはオフの制御とともに、トランジスタのしきい値電圧の制御を図ることができる。
【0139】
また別の構成として図11(D)に示す構成としてもよい。図11(D)に示すスイッチ回路203Cは、クロック信号CLKを与える配線と、各トランジスタのゲートおよびバックゲートと、を接続してオンまたはオフを制御する構成とすることができる。当該構成とすることで、トランジスタのスイッチング特性を優れたものとすることができる。
【0140】
以上説明した構成とすることで、OSトランジスタで構成される論理回路を備えた半導体装置は、信頼性に優れた動作を実現することができるとともに、低消費電力化を図ることができる。加えて、出力される信号の電圧降下を抑制した構成とすることができる。
【0141】
次いで上記説明した構成とは異なる構成について説明する。
【0142】
図12(A)は、図10(B)の構成を応用した論理回路の回路図である。図12(A)に示す論理回路102Eは、トランジスタ151乃至165を有する。また図12(A)には、高電源電位VDHが与えられる配線VDHL、高電源電位VDDが与えられる配線VDDL、および低電源電位VSSが与えられる配線VSSLを図示している。端子IN1、IN1B、IN2および端子IN2Bは入力信号を与える端子である。端子OUTおよび端子OUTBは出力信号を与える端子である。端子OUTからは、入力信号の否定論理積(反転入力信号の否定論理和)に応じた出力信号が得られ、端子OUTBからは、入力信号の否定論理積(反転入力信号の論理積)に応じた出力信号が得られる。各端子に入力する信号を入れ替えて論理回路の機能を切り替えてもよい。図12(A)に示す論理回路の真理値表は、上記実施の形態1で説明した表1と同様である。
【0143】
図12(A)に示す論理回路102Dは、2線式のNAND回路を表す。図12(B)では、2線式のNAND回路の回路記号のシンボルを図示している。なお図12(B)で付した配線名は省略する場合もある。
【0144】
上述した組み合わせ回路を用いることで、カウンタ、シリアルパラレル変換機、プロセッサ等の複雑な回路を実現することができる。これらの回路は、OSトランジスタで構成することができるため、高温環境下においても良好なスイッチング特性を維持することが可能である。また、貫通電流の低減による消費電力の削減、閾値電圧分の電圧降下の抑制等を図ることができる。
【0145】
また別の構成例として、図13(A)には電源電圧の供給を停止してもデータの保持を可能とすることで、パワーゲーティング可能な論理回路202Aの回路図を図示する。論理回路202Aは、論理回路102およびスイッチ回路203の他、リセット信号RSTおよび反転リセット信号RSTbが入力される論理回路102E、パワーゲーティング信号PGおよび信号BGが与えられるスイッチ回路203Dを有する。
【0146】
スイッチ回路203Dは、信号PGに応じてオンまたはオフが制御される。信号PGは、パワーゲーティング時にデータを保持するための信号である。スイッチ回路203Dを構成するトランジスタは、他の論理回路と同様にOSトランジスタとする。OSトランジスタはオフ電流が極めて小さい。そのためスイッチ回路203Dが有するトランジスタをオフとすることで、図13(A)に図示するノードSNおよびノードSNbに論理回路202Aに与えられたデータに応じた電荷を保持することができる。
【0147】
図13(A)に示す論理回路202Aは、非同期リセット型で、且つパワーゲーティング機能を有するフリップフロップ回路として機能する。図13(B)では、図13(A)の回路記号のシンボルを図示している。
【0148】
次いで図13(A)に図示する論理回路202Aの動作について図14を用いて説明する。図14には図13(A)に図示する論理回路202Aの動作を説明するためのタイミングチャートを示す。図14では信号処理の実行時(Run)、データバックアップ時(BK)、パワーゲーティング時(PG)、データリカバリー時(Recovery)に分けて図示している。
【0149】
図14に図示するタイミングチャートにおいて、時刻T21乃至T22では、信号処理の実行状態からデータバックアップ状態に移行する。このとき、信号BGをローレベルとしてスイッチ回路203Dが有するトランジスタをノーマリーオフ状態とする。そして時刻T22乃至T23では、信号PGをローレベルにする。ノードSNおよびノードSNbに接続された容量素子には、データに応じた電荷が保持される。
【0150】
時刻T23乃至T24では、電圧VDDおよび電圧VDHをローレベルとし、電源線間に流れる電流をなくすことができる。この間、ノードSNおよびノードSNbに接続された容量素子には、データに応じた電荷が保持される。OSトランジスタは、信号BGがローレベルであるため、ノーマリーオフ状態である。そのため、ノードSNおよびノードSNbに接続された容量素子には、データに応じた電荷が保持され続ける。
【0151】
時刻T24乃至T25では、パワーゲーティングの状態からデータリカバリー状態に移行する。このとき、ローレベルとしていた電圧VDDおよび電圧VDHを与える配線の電位を電圧VDDおよび電圧VDHに戻す。OSトランジスタは、信号BGがローレベルであるため、ノーマリーオフ状態である。そのため、ノードSNおよびノードSNbに接続された容量素子には、データに応じた電荷が保持され続ける。
【0152】
時刻T25乃至T26では、クロック信号CLKをハイレベルにする。そのため、ノードSNおよびノードSNbに保持されたデータに応じた電荷に応じた信号が、ノードSNおよびノードSNbに接続された論理回路102から論理回路102Eに出力される。
【0153】
時刻T26乃至T27では、クロック信号CLKをローレベルにして、信号BGおよび信号PGをハイレベルにする。ノードSNおよびノードSNbにデータを保持した直前の状態に戻る。そして、時刻T27以降、再びクロック信号CLKおよび反転クロック信号CLKbを与えて、信号処理を実行させる。
【0154】
論理回路202Aは、上記説明した論理回路102および論理回路102E等を有する。そのため配線VDHLと配線VSSL間の貫通電流を確実に低減することができる。
【0155】
なお図13(A)で説明した構成は、図15(A)に示す回路図においても実現可能である。すなわち論理回路202Bのように、反転入力信号及び反転出力信号を伝える配線を省略した構成においても実現可能である。同様に図15(B)に図示する論理回路202Cの回路図のように、NAND回路をNOR回路に置き換えた構成としても実現可能である。
【0156】
また別の構成例として、図16に示す論理回路202Dは上記説明した論理回路を応用した2ビットのカウンタ(非同期リセット機能付き)の構成例の回路図である。図16に示す回路構成は、上記説明した異なる機能を有する論理回路を組み合わせることで実現可能である。
【0157】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0158】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に適用可能なOSトランジスタの構成例について説明する。
【0159】
<トランジスタの構造例>
図17(A)乃至(C)は、一例として図示するOSトランジスタであるトランジスタ500の断面図である。図17(A)はトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、図17(B)はトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図である。
【0160】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、200℃といった高温環境下においても、良好なスイッチング特性を取り得ることができるため、高温環境下においても信頼性に優れた半導体装置とすることが可能である。加えて、オフ電流の低減を図ることが可能であるため、高温環境下においても低消費電力化が図られた半導体装置とすることが可能である。
【0161】
図17(A)および(B)に示す断面図では、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0162】
例えば、絶縁体514には、例えば、下層の基板などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0163】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0164】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0165】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0166】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0167】
図17(A)、(B)に示すように、トランジスタ500は、絶縁体516の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、および導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された酸化物530cと、を有する。
【0168】
また、図17(A)、(B)に示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、図17(A)、(B)に示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、図17(A)、(B)に示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0169】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。また、導電体542aおよび導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
【0170】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、図17(A)(B)に示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0171】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0172】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0173】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0174】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0175】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0176】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0177】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。
【0178】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0179】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0180】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0181】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、high-k材料の絶縁体と絶縁体520とを組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0182】
なお、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0183】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0184】
酸化物530においてチャネル形成領域にとして機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0185】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0186】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0187】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0188】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0189】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0190】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0191】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542(導電体542a、および導電体542b)が設けられる。導電体542としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0192】
また、図17(A)に示すように、酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、および領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0193】
酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543に導電体542に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア密度が増加し、領域543は、低抵抗領域となる。
【0194】
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0195】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0196】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542に耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない材料を用いる場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0197】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面および側面)接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、昇温脱離ガス分析(TDS分析)にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
【0198】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0199】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0200】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0201】
ゲート電極として機能する導電体560は、図17(A)、(B)では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0202】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0203】
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0204】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0205】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0206】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0207】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0208】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0209】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0210】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0211】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0212】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540aおよび導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。
【0213】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0214】
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。
【0215】
<トランジスタの構造例1>
図18(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。図18(A)はトランジスタ510Aの上面図である。図18(B)は、図18(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図18(C)は、図18(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図18(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0216】
図18(A)、(B)および(C)では、トランジスタ510Aと、層間膜として機能する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電体546(導電体546a、および導電体546b)を示している。
【0217】
トランジスタ510Aは、ゲート電極として機能する導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体550と、チャネルが形成される領域を有する酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体542aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
【0218】
また、図18(A)、(B)および(C)に示すトランジスタ510Aでは、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560は、導電体542a、および導電体542bとの間に配置される。
【0219】
絶縁体511、および絶縁体512は、層間膜として機能する。
【0220】
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0221】
例えば、絶縁体511は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
【0222】
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0223】
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、ゲート電極として機能する場合がある。
【0224】
絶縁体514、および絶縁体516は、絶縁体511または絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0225】
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0226】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0227】
例えば、絶縁体521は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、high-k材料の絶縁体と絶縁体522とを組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0228】
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物530は、酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の酸化物530cと、を有する。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0229】
なお、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
【0230】
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0231】
導電体542aと、導電体542bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
【0232】
また、図18(A)、(B)および(C)では単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0233】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0234】
また、導電体542上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体574を成膜する際に、導電体542が酸化することを抑制することができる。
【0235】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0236】
バリア層を有することで、導電体542の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542に、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0237】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、および絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
【0238】
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0239】
ゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0240】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0241】
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0242】
導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560は、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0243】
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0244】
絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0245】
絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584は、層間膜として機能する。
【0246】
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水または水素などの不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0247】
また、絶縁体580、および絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0248】
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584に埋め込まれた導電体546などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
【0249】
また、導電体546の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0250】
例えば、導電体546としては、例えば、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0251】
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0252】
<トランジスタの構造例2>
図19(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。図19(A)はトランジスタ510Bの上面図である。図19(B)は、図19(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図19(C)は、図19(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図19(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0253】
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0254】
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0255】
ゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0256】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0257】
また、導電体560の上面および側面、絶縁体550の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0258】
絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
【0259】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0260】
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0261】
<トランジスタの構造例3>
図20(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。図20(A)はトランジスタ510Cの上面図である。図20(B)は、図20(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図20(C)は、図20(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図20(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0262】
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0263】
図20(A)、(B)および(C)に示すトランジスタ510Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面および導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
【0264】
図20(A)、(B)および(C)に示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。または、導電体542aの端部および導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および周波数特性の向上を図ることができる。
【0265】
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0266】
また、図20(A)、(B)および(C)に示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544としては、水または水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0267】
<トランジスタの構造例4>
図21(A)、(B)および(C)を用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。図21(A)はトランジスタ510Dの上面図である。図21(B)は、図21(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図21(C)は、図21(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図21(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0268】
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0269】
図21(A)乃至(C)では、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
【0270】
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
【0271】
なお、金属酸化物552は、ゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0272】
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0273】
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0274】
金属酸化物552を有することで、ゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、および金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、および導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0275】
具体的には、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0276】
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁層である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0277】
絶縁体570は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体560および絶縁体550を介して、酸化物230に混入することを抑制することができる。
【0278】
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0279】
なお、絶縁体571に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
【0280】
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
【0281】
また、トランジスタ510Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0282】
領域531aおよび領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリンまたはボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0283】
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531aおよび領域531bを形成することもできる。
【0284】
酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531aおよび領域531bを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
【0285】
絶縁体571および/または導電体560をマスクとして用いることで、領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531aおよび/または領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531aまたは領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0286】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0287】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0288】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0289】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物230および絶縁体575から水素および水を吸収することで、酸化物230および絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
【0290】
<トランジスタの構造例5>
図22(A)乃至図22(C)を用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。図22(A)はトランジスタ510Eの上面図である。図22(B)は、図22(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図22(C)は、図22(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図22(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0291】
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0292】
図22(A)乃至図22(C)では、導電体542を設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
【0293】
図22(A)乃至図22(C)に示す、領域531(領域531a、および領域531b)は、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0294】
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0295】
なお、酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0296】
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0297】
続いて、酸化物530b、およびダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、酸化物530cおよび絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
【0298】
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、および絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜の一部を除去することで、図22(A)乃至図22(C)に示すトランジスタを形成することができる。
【0299】
なお、絶縁体573、および絶縁体574は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0300】
図22(A)乃至図22(C)に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
【0301】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0302】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置を用いることができる電子装置の一例について説明する。
【0303】
本発明の一形態に係わる半導体装置は、様々な電子装置に搭載することができる。特に、本発明の一形態に係わる半導体装置は、高温環境下での取り扱いが想定される電子装置内の制御プロセッサ用のICとして用いることができる。電子装置の例としては、例えば車両などの移動体の他、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0304】
図23(A)乃至図23(D)に、電子装置の例を示す。
【0305】
図23(A)は移動体の一例である自動車5700を示す図である。上記実施の形態で説明した半導体装置は、自動車5700内のセンサやアクチュエータをいった装置を制御する制御システムに用いることができる。
【0306】
図23(B)は移動体の一例である電動二輪車5800を示す図である。上記実施の形態で説明した半導体装置は、電動二輪車5800内のセンサやアクチュエータをいった装置を制御する制御システム、あるいはバッテリーのマネジメントシステムに用いることができる。
【0307】
なお、上述では、移動体の一例として自動車、電動二輪車について説明しているが、移動体は自動車、電動二輪車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一形態に係わる半導体装置を適用することができる。
【0308】
図23(C)は、電子装置の一例である電子レンジ5900を示している。上記実施の形態で説明した半導体装置は、電子レンジ5900内の電流を流すためのパワーデバイスを制御するための制御用IC等に用いることができる。
【0309】
図23(D)は、電子装置の一例である電気冷凍冷蔵庫6000を示している。上記実施の形態で説明した半導体装置は、電気冷凍冷蔵庫6000内の電流を流すためのパワーデバイスを制御するための制御用IC等に用いることができる。
【0310】
本発明の一形態に係わる半導体装置は、温度の高い環境においても信頼性に優れた動作を可能にするとともに、低消費電力化を図ることができる。また、電子装置の低消費電力化を図ることができる。
【0311】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0312】
(本明細書等の記載に関する付記)
以上の実施の形態、及び実施の形態における各構成の説明について、以下に付記する。
【0313】
各実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて、本発明の一態様とすることができる。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0314】
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことが出来る。
【0315】
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
【0316】
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることが出来る。
【0317】
また本明細書等において、ブロック図では、構成要素を機能毎に分類し、互いに独立したブロックとして示している。しかしながら実際の回路等においては、構成要素を機能毎に切り分けることが難しく、一つの回路に複数の機能が係わる場合や、複数の回路にわたって一つの機能が関わる場合があり得る。そのため、ブロック図のブロックは、明細書で説明した構成要素に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0318】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、説明の便宜上任意の大きさに示したものである。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は明確性を期すために模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
【0319】
本明細書等において、トランジスタの接続関係を説明する際、「ソース又はドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)、「ソース又はドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)という表記を用いる。これは、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造又は動作条件等によって変わるためである。なおトランジスタのソースとドレインの呼称については、ソース(ドレイン)端子や、ソース(ドレイン)電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0320】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0321】
また、本明細書等において、電圧と電位は、適宜言い換えることができる。電圧は、基準となる電位からの電位差のことであり、例えば基準となる電位をグラウンド電圧(接地電圧)とすると、電圧を電位に言い換えることができる。グラウンド電位は必ずしも0Vを意味するとは限らない。なお電位は相対的なものであり、基準となる電位によっては、配線等に与える電位を変化させる場合がある。
【0322】
なお本明細書等において、「膜」、「層」などの語句は、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0323】
本明細書等において、スイッチとは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有するものをいう。または、スイッチとは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有するものをいう。
【0324】
本明細書等において、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲートとが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとの間の距離をいう。
【0325】
本明細書等において、チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。
【0326】
本明細書等において、AとBとが接続されている、とは、AとBとが直接接続されているものの他、電気的に接続されているものを含むものとする。ここで、AとBとが電気的に接続されているとは、AとBとの間で、何らかの電気的作用を有する対象物が存在するとき、AとBとの電気信号の授受を可能とするものをいう。
【符号の説明】
【0327】
IN1:端子、IN2B:端子、L1-L2:一点鎖線、T1:時刻、T2:時刻、T3:時刻、T4:時刻、T5:時刻、T6:時刻、T7:時刻、T8:時刻、T11:時刻、T12:時刻、T13:時刻、T14:時刻、T21:時刻、T22:時刻、T23:時刻、T24:時刻、T25:時刻、T26:時刻、T27:時刻、100:半導体装置、100A:半導体装置、101:信号生成回路、102:論理回路、102B:論理回路、102C:論理回路、102D:論理回路、102E:論理回路、111:トランジスタ、112:トランジスタ、113:トランジスタ、114:トランジスタ、115:トランジスタ、121:トランジスタ、122:トランジスタ、123:トランジスタ、124:トランジスタ、125:トランジスタ、126:トランジスタ、127:トランジスタ、128:トランジスタ、131:トランジスタ、138:トランジスタ、151:トランジスタ、165:トランジスタ、201:信号処理回路、202:論理回路、202A:論理回路、202B:論理回路、202C:論理回路、202D:論理回路、203:スイッチ回路、203A:スイッチ回路、203B:スイッチ回路、203C:スイッチ回路、203D:スイッチ回路、230:酸化物、300:トランジスタ、500:トランジスタ、510A:トランジスタ、510B:トランジスタ、510C:トランジスタ、510D:トランジスタ、510E:トランジスタ、511:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、520:絶縁体、521:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、531:領域、531a:領域、531b:領域、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543:領域、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、545:絶縁体、546:導電体、546a:導電体、546b:導電体、547:導電体、547a:導電体、547b:導電体、550:絶縁体、552:金属酸化物、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、570:絶縁体、571:絶縁体、573:絶縁体、574:絶縁体、575:絶縁体、576:絶縁体、576a:絶縁体、576b:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、584:絶縁体、5700:自動車、5800:電動二輪車、5900:電子レンジ、6000:電気冷凍冷蔵庫、7000A:IC、7000B:IC、7001:リード、7002:プリント基板、7003A:回路部、7003B:回路部、7004:実装基板、7031:OSトランジスタ層、7032:配線層、7033:OSトランジスタ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24