(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ポリアセタールを含む再剥離性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20241011BHJP
C08G 2/30 20060101ALI20241011BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241011BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20241011BHJP
C09J 159/00 20060101ALI20241011BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20241011BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20241011BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
C08L59/00
C08G2/30
C08L63/00 A
C08F290/06
C09J159/00
C09J163/00
C09J4/02
B32B27/00 L
(21)【出願番号】P 2023502834
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021068572
(87)【国際公開番号】W WO2022012996
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】102020118813.7
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521251903
【氏名又は名称】デロ・インドゥストリー・クレープシュトッフェ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】DELO Industrie Klebstoffe GmbH & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】ズヴェゲス,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ボルン,ローベルト
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108183(JP,A)
【文献】特開2010-248387(JP,A)
【文献】特開2012-153853(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08F 2/00- 2/60
283/01
290/00-290/14
299/00-299/08
C08G 2/00- 2/38
59/00- 61/12
65/00- 67/04
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
C09J 1/00- 5/10
9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温において液状であって、以下:
(A)エポキシ基含有化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、(メタ)アクリレート化合物、シラン化合物、及び、これらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂成分と;
(B)前記硬化性樹脂成分の、少なくとも1種の硬化剤及び/又は少なくとも1種の重合開始剤と;
(C)少なくとも1種の2官能以上のビニルエーテル(c1)と、少なくとも1種の2官能以上のアルコール(c2)とを反応させて、2超の末端ビニルエーテル基又は2超の末端ヒドロキシ基を有するポリアセタール中間体を得ること、及び、
a)2超の末端ビニルエーテル基を有するポリアセタール中間体と、1以上のヒドロキシ基及び/又は1以上のアミノ基、並びに、前記樹脂成分(A)における別の官能基又は該官能基と重合し得る基を1以上有する混合官能性化合物(c3)の少なくとも1種と、を反応させること;又は、
b)2超の末端ヒドロキシ基を有するポリアセタール中間体と、ヒドロキシ基反応性架橋剤とを反応させ、さらに、これと、前記混合官能性化合物(c3)又は2官能の樹脂成分(A)と、を反応させること、又は、
c)2超の末端ヒドロキシ基を有するポリアセタール中間生成物と、1以上のイソシアネート基、及び、前記樹脂成分(A)における別の官能基又は該官能基と重合し得る基を少なくとも1以上有する混合官能性化合物(c3)と、を反応させること、
により製造された、少なくとも1種のポリアセタール架橋樹脂成分と、
を含み、
前記ポリアセタール架橋樹脂成分(C)は、硬化性組成物の総量を基準として、20質量%以上の割合で含まれ、
前記2官能以上のビニルエーテル(c1)及び前記アルコール(c2)の少なくとも1つが、3官能以上である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記2官能以上のビニルエーテル(c1)と、前記2官能以上のアルコール(c2)及び前記混合官能性化合物(c3)の少なくとも1種との反応が、一段階合成で行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記樹脂成分(A)が、エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン化合物を含み、アミン化合物及び/又は無水物からなる群より選ばれる硬化剤(B1)を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分(A)が、エポキシ基含有化合物、オキセタン化合物及び/又はビニルエーテル化合物を含み、カチオン重合開始剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分(A)がラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物を含み、ラジカル重合開始剤を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記樹脂成分(A)が、エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン化合物と、放射線硬化性化合物とを含むか、又は、エポキシ基と放射線硬化性基を有するハイブリッド化合物を含み、アミン化合物及び/又は無水物からなる群より選ばれる硬化剤と、さらにラジカル重合開始剤とを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記2官能以上のビニルエーテル(c1)が、脂肪族、脂環式、芳香族ビニルエーテル及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記2官能以上のアルコールが、1級及び2級脂肪族、脂環式及び芳香族アルコール並びにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記混合官能性化合物(c3)における前記別の官能基が、エポキシ基、(メタ)アクリレート基及びそれらの組合せを含む、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記混合官能性化合物(c3)が、グリシドール、予備架橋エポキシ樹脂、1-(オキシラン-2-イル)エタン-1-オール、2-(オキシラン-2-イル)エタン-1-オール、2-(オキシラン-2-イル)-1-フェニルエタン-1-オール、2-[(オキシラン-2-イル)メトキシ]エタン-1-オール、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシイソブチルアクリレート、2-ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル(APVE)及びこれらの組合せから選ばれる、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリアセタール架橋樹脂成分(C)が、2,000~20,000g/mo
lの範囲の分子量を有し、
前記分子量は、ISO 16014-2に準じて測定される、請求項1~10のいずれかに記載された組成物。
【請求項12】
組成物の総量を基準として、それぞれ以下の成分を含むか、又は、以下の成分からなる、請求項1~
11のいずれかに記載の組成物:
少なくとも1種の硬化性樹脂成分(A)1~70質量%;
硬化性樹脂成分の、少なくとも1種の硬化剤及び/又は少なくとも1種の重合開始剤(B)0.001~70質量%;
少なくとも1種のポリアセタール架橋樹脂成分(C)20~95質量%;
ポリアセタールの加水分解促進剤(D)0~15質量%;
充填剤、染料、顔料、老化防止剤、蛍光剤、安定剤、重合促進剤、増感剤、接着剤、乾燥剤、架橋剤、流動性向上剤、湿潤剤、チクソトロピック剤、反応性及び非反応性の希釈剤、柔軟剤、ポリマー増粘剤、難燃剤、腐食防止剤、可塑剤、粘着剤及びこれらの組合せからなる群より選ばれる添加剤(E)0~70質量%。
【請求項13】
接合部を形成し、再溶解する方法であって
a)請求項1~
12のいずれかに記載の組成物を、第1の基材に塗布し、該組成物を少なくとも1つ他の基材と接触させ、接着部を形成すること;
b)前記接着部は、熱及び光への曝露により硬化され、それにより硬化した接合部が形成されること;及び
c)前記硬化した接合部を所定時間及び所定温度で湿気に暴露し、それにより硬化した接合部を基材から溶解及び/又は剥離させること、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれかに記載の組成物の、積層造形構造物のための仮支持体としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化後、水及び/又は湿気に曝露することにより、剥離及び/又は溶解し得るポリアセタール系硬化性組成物に関する。
さらに、本発明は、かかる組成物から得られる接合部、封止部及び塗膜を剥離及び/又は溶解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野では、接合部を剥離するための様々な可能性が知られている。特に高価な部品では、接合部を剥離又は溶解することで、その後の処理が可能となるため有用である。
【0003】
3Dプリント等の用途では、より複雑な積層造形構造物を製造するために、しばしば支持構造物が必要となる。それらは、硬化性組成物を塗布することにより得られ、その後、洗浄又は剥離により除去され得る。かかる支持構造物の材料として、特に、水溶性ポリマー、ワックス又は熱可塑性樹脂組成物を使用できる。これらの材料は、架橋度が低いため、不利な機械的特性、特に凝集力が低くなるとの欠点を有する。
【0004】
支持構造物は、様々な物理的又は化学的方法により剥離され得る。例えば、接合部は、溶媒、酸又は塩基によって化学的に再溶解し得る。かかる方法は、部材と環境及び作業安全性の両面で不利になり得る。
【0005】
また、接着剤の結合を剥離する物理的方法も存在する。例えば、熱可塑性樹脂を多く含む組成物は、組成物のガラス転移温度以上に加熱することで、接合した部材を組成物から剥離できる状態に移行させ得る。かかる方法では、残留物が残りやすく、より複雑な形状の部材に使用した場合、うまくいかない場合がある。
【0006】
特許文献1(米国特許公開第6288170号公報)には、硬化剤とは別に、高温でガスを放出する熱膨張性微小球を含むエポキシ含有製剤が記載されており、これにより接合部を剥離し得ることが記載されている。高い剥離性を得るためには膨張性微小球を多く含む必要があるという欠点を有する。同時に、微小球により、剪断安定性が低くなり、組成物の加工性に悪影響を及ぼし得る。
【0007】
特許文献2(欧州特許第1914285号公報)には、電圧を印加することによって基材から剥離し得る接着製剤が記載されている。かかる製剤は、再溶解するためにイオン液体を多く含む必要があり、組成範囲が大きく限定されるという欠点を有する。また、接着剤を再溶解させるために、導電性の基材を使用する必要がある。
【0008】
特許文献3(国際公開第2017/132497号)には、蛍光性光スイッチングが可能なクマリン系エポキシ組成物が開示されている。300nm未満の波長で照射することにより、重合後の組成物を、剥離可能な架橋の少ない状態に移行させることができる。かかる方法は、特定の市販されていない原料を必要とし、限られた組成範囲で調製することしかできない。また、合成法上、必須原料における塩素含有量が高く、電子分野での使用には適さない。さらに、組成物を剥離するため、放射線透過性の基板が必須である。
【0009】
例えば、特許文献(米国特許第5932682号公報)には、アセタール結合を有するエポキシ樹脂を含む組成物が記載されている。この組成物は、硬化剤として無水物を含み、電子部品の封止を目的としている。ある温度及び湿度条件下で1週間保持した後でも、アセタール含有エポキシ化合物とアセタールを含まない脂環式エポキシ化合物との混合物は、溶解せず、ガラス転移温度もあまり低下しない。そのため、部品の後処理に非常に時間と労力が必要となる。組成物を溶解させるために有機溶剤が必須となる。
【0010】
特許文献5(米国特許公開第2017/0298163公報)には、(メタ)アクリレート基を有するアセタール官能基を有する架橋剤を含む製剤が記載されている。直鎖状の架橋剤のみが記載されている。一般に、かかる組成物のガラス転移温度は50℃未満であり、感圧接着剤として使用されることを意図している。かかるアセタール含有(メタ)アクリレートは、多く見積もっても2官能程度であり、これを用いても、高耐久性及び/又は高いガラス転移温度を有する組成物を調製することは不可能である。したがって、感圧性重合体は、半導体分野における加工には適していない。
【0011】
非特許文献1(M. Ionescu, S. Sinharoy and Z. S. Petrovic, "Polyacetal Polyols for Polyurethanes", Journal of Polymers and the Environment 2009, 17, 123-130)は学術文献であり、ポリウレタン形成用の硬化剤として、ヒドロキシ官能性ポリアセタールの構造を記載している。かかるポリアセタールは、生分解性であるか、及び/又は、酸の存在下で分解可能であることが記載されている。かかる刊行物には、アルコール以外の官能基を有し、例えば、ラジカル重合性又はカチオン重合性の組成物に適用され得るポリアセタールの合成法は記載されていない。さらに、具体的な条件について記載されておらず、基材からの剥離を達成するための、接着剤組成物中における上記化合物の量も特定されていない。さらに、かかる合成法により得られたポリアセタールは、アミン系触媒を含むため、貯蔵安定性を目的とする組成物の配合に使用することはできない。
【0012】
特許文献6(米国特許公開第2019/119534号公報)には、ビニルエーテルと一価のカルボン酸又はアルコールとの反応によってポリアセタールを製造することが記載されている。ここでは、熱可塑性材料を添加することにより、熱分解性組成物を調製することができる。かかる組成物は、軟化点が100℃以上であるものの、例外なく熱硬化性であり、しかも凝集性に乏しい。水分への曝露による剥離は意図されていない。
【0013】
これらの文献に記載された剥離性組成物は、再溶解に過酷な条件及び/又は長時間のいずれかを要する、残留物なく剥離できない、又は、重合せず架橋に寄与しない化合物を組成物中に多く含む、といった欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第6288170号公報
【文献】欧州特許公開第1914285号公報
【文献】国際公開第2017/132497号
【文献】米国特許5932682号公報
【文献】米国特許公開第2017/298163号公報
【文献】米国特許公開第2019/119534号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】M. Ionescu, S. Sinharoy and Z. S. Petrovic, "Polyacetal Polyols for Polyurethanes", Journal of Polymers and the Environment 2009, 17, 123-130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、現在知られている組成物の欠点を克服し、硬化後、残留物を残すことなく、水性媒体中において、低温で、剥離又は再溶解し得る硬化性組成物を提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の組成物は、硬化後に幅広い機械的特性を有することを意図している。特に、上記組成物によれば、可変なガラス転移温度を達成し得る。
【0018】
本発明によれば、これらの目的は、請求項1に記載の硬化性組成物によって達成され得る。
【0019】
本発明の組成物の有利な実施形態は、下位の請求項に規定されており、これらの実施形態は、適宜相互に組み合わせてよい。
【0020】
本発明は、さらに、本発明の組成物から得られる接合部、封止部及び塗膜を剥離及び/又は溶解する方法に関する。
【0021】
本発明の別の目的は、再剥離基材の接着、カプセル化、封止又はコーティングのための接着材又は封止材としての、本発明の組成物の使用である。
【0022】
本発明の組成物は、特に仮接合用途に好適である。
【0023】
本発明の硬化性組成物は、室温で液状であり、光照射及び/又は熱などの種々の硬化機構により硬化させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の組成物は、少なくとも以下の成分:
A)エポキシ基含有化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、(メタ)アクリレート化合物、及び、これらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂成分と;
B)前記硬化性樹脂成分の、少なくとも1種の硬化剤及び/又は少なくとも1種の重合開始剤と;
C)少なくとも1種の2官能以上のビニルエーテル(c1)と、少なくとも1種の2官能以上のアルコール(c2)とを反応させて、2超の末端ビニルエーテル基又は2超の末端ヒドロキシ基を有するポリアセタール中間体を得ること、及び、
a)2超の末端ビニルエーテル基を有する前記ポリアセタール中間体と、1以上のヒドロキシ基又は1以上のアミノ基、及び、前記樹脂成分(A)における別の官能基又は該官能基と重合し得る基を1以上有する混合官能性化合物(c3)の少なくとも1種と、を反応させること;又は、
b)2超の末端ヒドロキシ基を有する前記ポリアセタール中間体と、ヒドロキシ基反応性架橋剤とを反応させ、さらに、これと、前記混合官能性化合物(c3)又は2官能以上の樹脂成分(A)と、を反応させること、又は、
c)2超の末端ヒドロキシ基を有する前記ポリアセタール中間体と、1以上のイソシアネート基、及び、前記樹脂成分(A)における別の官能基又は該官能基と重合し得る基を1以上有する混合官能性化合物(c3)と、を反応させること、
により製造された、少なくとも1種のポリアセタール架橋樹脂成分と、
を含む。
【0025】
好ましい態様において、上記組成物は、上記エポキシ基含有化合物及び/又は上記オキセタン化合物を含む樹脂成分(A)と、アミン化合物及び/又は無水物から選ばれる硬化剤(B1)とを含む。
【0026】
別の態様において、上記組成物は、樹脂成分(A)として、エポキシ基含有化合物、オキセタン化合物及び/又はビニルエーテル化合物と、カチオン重合開始剤と、を含み得る。
【0027】
一実施形態において、上記組成物は、樹脂成分(A)としてラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物と、ラジカル重合開始剤とを、単独で、あるいは、上記樹脂成分及び硬化剤と組み合わせて含み得る。
【0028】
別の実施形態において、上記樹脂成分(A)は、て、エポキシ基含有化合物及び/又はオキセタン化合物と、放射線によりラジカル硬化し得る化合物、もしくは、エポキシ基及び放射線によりラジカル硬化し得る基を有するハイブリッド化合物と、を含み得る。さらに、上記組成物は、アミン化合物及び/又は無水物から選ばれる硬化剤と、必要に応じてラジカル重合開始剤とを含み得る。
【0029】
前記ポリアセタール架橋樹脂成分(C)の分子量は、好ましくは2,000~20,000g/mol、好ましくは2,000~8,000g/molの範囲内である。分子量は、ISO 16014-2に準じて測定することができる。
【0030】
より好ましい態様において、前記組成物中、前記ポリアセタール架橋樹脂成分(C)は、組成物の総量を基準として、少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも40質量%、特に好ましくは少なくとも50質量%の割合で、含まれ得る。
【0031】
さらに、前記組成物は、湿気及び温度に曝露された場合に、組成物の剥離性及び溶解性を促進する促進剤として、発泡剤及び有機酸から選ばれる1を含有することができる。
【0032】
また、本発明は、以下の工程:
本発明の組成物を第一の基材に塗布し、必要に応じて他の基材と接触させながら接着部を形成すること;
熱、光、及び/又は水分に曝露して組成物を硬化させて、硬化した接合部、封止部、支持構造部、又は、塗膜を形成すること;及び、
硬化した組成物を、所定の温度で所定の時間、湿気と接触させて、該組成物を、前記第1の基材及び必要に応じて用いられる第2の基材から溶解及び/又は剥離させること
を含む、接合部、封止部、支持構造部又は塗膜を形成及び再溶解する方法を含む。
【0033】
本発明の他の目的は、本発明の組成物を、積層造形構造物の仮支持部として使用することである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらに限定して解釈されない。
【0035】
本発明において、「液体」とは、粘度測定により求められる、23℃における損失弾性率G”が、該組成物の貯蔵弾性率G’よりも大きいことを意味する。
【0036】
上記組成物は、硬化後、湿気や温度にさらされても残留物を残すことなく基材から剥離できる場合、剥離可能であるとする。
【0037】
上記組成物は、硬化後、湿気や温度にさらされることで完全に溶解する場合、溶解可能であるとする。
【0038】
不定冠詞「a」又は「an」が用いられる場合、明示的に除外されていない限り、「1以上」の複数形も含まれる。
【0039】
「2官能以上」とは、官能基が1分子あたり2以上含まれることを意味する。
【0040】
「混合官能性」とは、1分子に少なくとも2種類の官能基が含まれていることを意味する。
【0041】
以下に記載する質量部は、断りのない限り、すべて組成物の総量に基づく。
【0042】
成分(A):樹脂
本発明によれば、樹脂成分(A)は、エポキシ基含有化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、(メタ)アクリレート化合物、及び、これらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の硬化性、好ましくは2官能以上樹脂成分を含む。
【0043】
エポキシ基含有化合物(A1)
本発明の組成物におけるエポキシ含有化合物(A1)は、好ましくは、1種以上の2官能以上のエポキシ基含有化合物を含む。ここで、「2官能以上」とは、エポキシ基含有化合物が、少なくとも2つのエポキシ基を有することを意味する。例えば、成分(A1)は、脂環式エポキシ化合物、芳香族及び脂肪族の、グリシジルエーテル、グリシジルエステル又はグリシジルアミン、ならびに、これらの混合物を含み得る。
【0044】
2官能の脂環式エポキシ樹脂は、当該技術分野において知られており、脂環式基と少なくとも2つのオキシラン環の両方を有する化合物を含む。代表的には、3-シクロヘキセニルメチル-3-シクロヘキシルカルボキシレートジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2-エポキシ-6-(2,3-エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ-4,7-メタンインダン及びこれらの混合物が例示される。
【0045】
本発明の組成物には、芳香族エポキシ樹脂を用いることができる。芳香族エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、4,4’-ビフェニルエポキシ樹脂、ジビニルベンゼンジオキシド、2-グリシジルフェニルグリシジルエーテル、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)エタンのグリシジルエーテル、及び、これらの混合物などがあげられる。さらに、芳香族エポキシ樹脂の完全又は部分的に水素化された類縁化合物の全てを用いることができる。
【0046】
また、エポキシ基含有基や他の複素環化合物で置換されたイソシアヌレート化合物も本発明の組成物に用いることができる。その例として、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0047】
さらに、本発明の組成物には、存在する全ての樹脂種の多官能エポキシ樹脂、粘弾性エポキシ樹脂及び種々のエポキシ樹脂の混合物を用いることができる。
【0048】
本発明において、少なくとも1つのエポキシ基含有化合物が2官能又はそれ以上である、複数のエポキシ含有化合物の組合せも本発明の趣旨に含まれる。
【0049】
反応性希釈剤として、2官能以上のエポキシ基含有化合物に加えて、1官能のエポキシ化合物を用いることができる。
【0050】
市販のエポキシ含有化合物の例として、日本のダイセル社製CELLOXIDE(登録商標) 2021P、CELLOXIDE(登録商標) 8000、オランダのモメンティブ・スペシャルティー・ケミカルズ社製EPIKOTE(登録商標) RESIN 828 LVEL、EPIKOTE(登録商標) RESIN 166、EPIKOTE(登録商標) RESIN 169、ドイツのLeuna Harze社製Epilox(登録商標)のA、T、AFシリーズの樹脂、又は、日本のDIC社製EPICLON(登録商標) 840、840-S、850、850-S、EXA850CRP、850-LC、IGM Resins社製のOmnilane 1005、Omnilane 2005、Synasia社製Syna Epoxy 21、Syna Epoxy 06、Jiangsu Tetra New Material Technology社製TTA21、TTA26、TTA60、TTA128が挙げられる。
【0051】
オキセタン化合物(A2)
エポキシ基含有化合物(A1)の代わりに、又はこれに加えて、上記組成物におけるカチオン硬化性成分(A)として、好ましくは、2官能以上のオキセタン含有化合物(A2)を用いることができる。オキセタン化合物を製造する方法は、特に米国特許公開第2017/0198093号公報に記載されている。
【0052】
市販のオキセタン化合物の例として、ビス(1-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(DOX)、3-アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン(AQX)、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチルオキセタン(POX)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(XDO)、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン(EHOX)等が挙げられる。これらのオキセタン化合物は、東亞合成株式会社から市販されている。
【0053】
ビニルエーテル化合物(A3)
化合物(A1)及び(A2)の代わりに、又はこれらに加えて、本発明の組成物におけるカチオン硬化性成分として、ビニルエーテル化合物(A3)を用いることができる。好ましくは、2官能以上のビニルエーテル化合物を用いることができる。好ましいビニルエーテル化合物としては、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(DVE-3)、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(BDDVE)、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDM-di)、1,2,3-トリス(ビニルオキシ)プロパン、1,3,5-トリス[(2-ビニルオキシ)エトキシ]ベンゼン、トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]1,2,4-ベンゼントリカルボン酸塩、1,3,5-トリス(2-ビニルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-シクロヘキサントリメタノールトリビニルエーテル、1,1,1-トリス-4-[2-(ビニルオキシ)エトキシ]フェニルエタン、テトラキス(ビニルオキシメチル)メタン、環状ビニルエーテル、及び、これらの混合物等があげられる。さらに、多官能アルコールのビニルエーテルも用いることができる。
【0054】
ラジカル硬化性化合物(A4)
化合物(A1)~(A3)に代えて、又は、これらに加えて、組成物における樹脂成分として、ラジカル硬化性化合物(A4)をさらに用いることができる。その化学構造は、特に制限されない。例えば、脂肪族及び芳香族(メタ)アクリレート化合物のいずれも用いることができる。以下では、アクリル酸及びメタクリル酸の両方の誘導体、及び、それらの組合せや混合物を(メタ)アクリレートという。ラジカル硬化性化合物(A4)は、好ましくは放射線硬化性である。
【0055】
(メタ)アクリレート化合物は、1官能であってもよく、2官能以上であってもよい。好ましくは、熱又は放射線への曝露よってラジカル硬化し得る(メタ)アクリレート化合物であり、かかる(メタ)アクリレート化合物は、2官能以上である。例えば、以下のラジカル硬化性化合物が好ましい:イソボルニルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、ベヘニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート及び他の1官能又は多官能のアルコキシ化アルキルアクリレート化合物、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアクリルアミド、4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジオールのモノマー、オリゴマー又はポリマー、もしくは、ポリオールのジウレタンアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ならびにこれらの組合せが挙げられる。さらに、多分岐又はデンドリマーアルコールから誘導されるより高い官能性のアクリレート化合物を好ましく用いることができる。
【0056】
該当するメタクリレート化合物も本発明の趣旨に含まれる。
【0057】
アリル基を有する放射線硬化性化合物(A4)、例えばTAICROSとして市販されている1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオンも好ましい。遊離二重結合を有する非水素化ポリブタジエン、例えばポリBDタイプも放射線硬化性化合物(A4)として用いることができる。
【0058】
より高分子量である放射線硬化性化合物(A4)として、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートジオール及び/又は(水添)ポリブタジエンジオールを用いたウレタンアクリレートを用いることもできる。
【0059】
成分(B):硬化剤及び/又は開始剤
上記組成物は、硬化性樹脂成分(A)とは別に、成分(A)を重合するため、硬化剤及び/又は開始剤を含む。ここで、「重合」の意味には、成分(A)の架橋も含まれる。硬化剤の化学的性質は制限されず、例えば、以下に示す化合物の1種又は2種以上を含む。
【0060】
含窒素化合物(B1)
エポキシ基含有化合物(A1)の硬化剤(B)としては、例えば、含窒素化合物(B1)を用いることができる。
【0061】
好ましい含窒素化合物の例として、アミン、特に脂肪族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン及び複素環式ポリアミン、ならびに、イミダゾール、シアナミド、ポリ尿素、マンニッヒ塩基、ポリエーテルポリアミン、ポリアミノアミド、フェナルカミン、スルホンアミド、アミノカルボン酸、あるいは、これらの組合せが挙げられる。エポキシ化合物及び/又は無水物と上記の含窒素化合物との反応生成物も硬化剤(B)として用いることができる。
【0062】
カルボン酸無水物(B2)
エポキシ基含有化合物(A1)の硬化剤(B)として、例えば、カルボン酸無水物(B2)を用いることができる。
【0063】
特に、二塩基酸及び芳香族四塩基酸の無水物、及びそれらの混合物が好ましい。
【0064】
本発明の組成物において、硬化剤として用いられる無水物の具体例としては、例えば、無水フタル酸(PSA)、無水コハク酸、無水オクテニルコハク酸(OSA)、ペンタドデセニルコハク酸無水物、その他のアルケニルコハク酸無水物、無水マレイン酸(MA)、無水イタコン酸(ISA)、無水テトラヒドロフタル酸(THPA)、無水ヘキサヒドロフタル酸(HHPA)、無水メチルテトラヒドロフタル酸(MTHPA)、無水メチルヘキサヒドロフタル酸(MHHPA)、無水ナジン酸、無水3,6-エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(METH、NMA)、無水テトラブロモフタル酸、無水トリメリット酸等の二塩基酸の無水物や、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族四塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
例えば、硬化剤(B2)として好ましく用いられる無水物としては、以下の商標名のものが挙げられる。MHHPA:製品名HN-5500(日立化成工業株式会社)、MHHPA(Dixie Chemical Company社)、METH:製品名NMA(Dixie Chemical Company社)、METH/ES(Polynt S.p.A.)、MHAC(日立化成工業株式会社)
【0066】
チオール化合物(B3)
また、分子内に少なくとも2つのチオール基(-SH)を有するチオール基含有化合物(B3)も、エポキシ含有化合物(A1)の硬化剤(B)として用いることができる。
【0067】
チオール化合物の構造は、特に限定されない。好ましくは、脂肪族又は芳香族化合物をベースとする第1級又は第2級チオール化合物が用いられる。国際公開第2019/082962号に記載されるポリチオエーテルアセタール化合物も好ましい。
【0068】
好ましくは、2官能以上のチオール化合物は、反応性チオール基を有するエステルベースのチオール化合物、ポリチオエーテル化合物、ポリチオエーテルアセタール化合物、ポリチオエーテルチオアセタール化合物、ポリスルフィド化合物、チオール末端ウレタン化合物、イソシアヌレート及びグリコールウリルのチオール誘導体、ならびに、これらの組合せからなる群から選択される。
【0069】
2-メルカプト酢酸をベースとする市販のエステル系チオール化合物の例としては、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート、グリコールジメルカプトアセテートが挙げられ、Bruno Bock社製Thiocure(登録商標) TMPMA、PETMA and GDMAの商品名で入手できる。
【0070】
さらに、市販のエステル系チオール化合物の例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、グリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)及びトリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレートが挙げられ、Bruno Bock社製Thiocure(登録商標) TMPMP、PETMP、GDMP、TEMPICの商品名で入手できる。
【0071】
市販のチオエーテル化合物の例としては、Arkema S.A.社から入手可能なDMDO(1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン)、DMDS(ジメルカプトジエチルスルフィド)及びDMPT(2,3-ジ(2-メルカプトエチル)チオ)-1-プロパンチオール)が挙げられ、いずれもBrunobock社から入手可能である。
【0072】
本発明の組成物において、3官能のエステルを含まないチオール化合物として、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート(TMPI)を用いることが特に好ましい。
【0073】
好ましくは、2官能以上のチオール化合物(B3)は、本発明の組成物中、全成分の総量に基づいて、それぞれ10~80質量%、好ましくは15~70質量%の割合で存在する。
【0074】
カチオン重合用光重合開始剤(B4)
本発明の組成物は、カチオン重合のための光開始剤(B4)を含み得る。かかる光開始剤は、化学線によって活性化され得、例えば、メタロセニウム系及び/又はオニウム系の開始剤を含む。
【0075】
メタロセニウム塩の概要は、欧州特許第0542716号公報に記載されている。メタロセニウム塩におけるアニオンの例として、、HSO4
-、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、PO4
-、SO3CF3
-、OTs-(トシレート)、アルミネート、BF4
-及びB(C6F5)4
-等のボレートアニオンが挙げられる。
【0076】
好ましくは、メタロセニウム系光重合開始剤は、フェロセニウム塩から選択される。
【0077】
好ましいオニウム化合物は、当該技術分野で知られアリールスルホニウム塩及びアリールヨードニウム塩、及び、それらの組合せからなる群より選択される。
【0078】
光潜在性酸として市販されているトリアリールスルホニウム系光重合開始剤として、Chitech社製Chivacure 1176、Chivacure 1190、BASF社製Irgacure 290、Irgacure 270、Irgacure GSID 26-1、Lambson社製Speedcure 976、Speedcure 992、Jiangsu Tetra New Material Technology社製TTA UV-692、TTA UV-694、Dow Chemical社製UVI-6976、UVI-6974が挙げられる。
【0079】
光潜在性酸として市販されているジアリールヨードニウム系光重合開始剤は、例えば、Deuteron社製UV1242、UV2257、Bluestar社製Bluesil 2074の製品名で入手可能である。
【0080】
本発明の組成物に用いられる光重合開始剤(C)は、好ましくは、波長200~480nmの光線を照射することにより活性化させることができる。
【0081】
カチオン重合用熱重合開始剤(B5)
光重合開始剤(B4)に加えて、又は、その代わりに、本発明の組成物は、カチオン重合用の熱開始剤を含み得る。例えば、欧州特許第0343690号公報又は国際公開第2005/097883に記載される第4級N-ベンジルピリジニウム塩及びN-ベンジルアンモニウム塩が、熱酸化剤として好適である。加えて、国際公開第2019/043778号公報に記載される熱潜在性スルホニウム塩も酸化剤として用いることができる。
【0082】
例えば、市販品としては、キング工業社製K-PURE CXC-1614、K-PURE CXC-1733、三信化学工業社製AN-AID SI-80L、SAN-AID SI-100Lが入手可能である。
【0083】
また、熱潜在性酸として、各種チタン系又はアルミニウム系の金属キレート錯体を用いることができる。
【0084】
ラジカル重合用光重合開始剤(B6)
本発明の組成物は、さらにラジカル重合用光重合開始剤(B6)を含み得る。
【0085】
光重合開始剤としては、一般的に入手可能な化合物を用いることができ、例えば、α-ヒドロキシケトン、ベンゾフェノン、α,α’-ジエトキシアセトフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-イソプロピルフェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソアミル-p-ジメチルアミノベンゾエート、メチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシドが挙げられ、これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0086】
紫外線光重合開始剤としては、例えば、BASF SE社製IRGACURE(登録商標)シリーズ、具体的に、IRGACURE 184、IRGACURE 500、IRGACURE 1179、IRGACURE 2959、IRGACURE 745、IRGACURE 651、IRGACURE 369、IRGACURE 907、IRGACURE 1300、IRGACURE 819、IRGACURE 819DW、IRGACURE 2022、IRGACURE 2100、IRGACURE 784、IRGACURE 250、IRGACURE TPO、IRGACURE TPO-L等を用いることができる。
【0087】
さらに、BASF SE社製DAROCURシリーズ、具体的に、DAROCUR MBF、DAROCUR 1173、DAROCUR TPO及びDAROCUR 4265等を用いることができる。
【0088】
本発明の組成物において成分(B5)として使用できる光重合開始剤は、好ましくは200~400nm、特に好ましくは250~365nmの波長の光線により活性化され得る。
【0089】
ラジカル重合用熱重合開始剤(B7)
特に、ペルエステル系、ジアシルペルオキシド系、ペルオキシ(ジ)カーボネート系及び/又はヒドロペルオキシド系の過酸化物を本発明の組成物の熱開始剤として使用できる。ヒドロペルオキシドを用いることが好ましい。特に好ましく使用される過酸化物として、クメンヒドロペルオキシド、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート及びジ-(4-tert-ブチル-シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートが挙げられる。
【0090】
組成物の全重量を基準として、過酸化物(B7)は、0.1~10、好ましくは0.5~5、特に好ましくは1~3質量%の割合で含まれ得る。
【0091】
成分(C):ポリアセタール架橋型樹脂成分
樹脂(A)、硬化剤及び/又は重合開始剤(B)に加えて、本発明の組成物は、少なくとも1種のポリアセタール架橋樹脂成分を含む成分(C)を含む。該成分は、本発明の組成物において必須であり、硬化した組成物を水分の存在下で剥離及び/又は溶解させることができる。同時に、成分(C)により、硬化性組成物が幅広い機械的特性を有することが可能となり、例えば、硬化性組成物の凝集及び/又は液体硬化性組成物の高い粘度に起因する不利益を回避することが可能となる。
【0092】
本発明によれば、成分(C)は、少なくとも1種の2官能以上のビニルエーテル(c1)と、少なくとも1種の2官能以上のアルコール(c2)とを反応させて、2超の末端ビニルエーテル基又は2超の末端ヒドロキシ基を有するポリアセタール中間体を得ること、及び、
(a)2超の末端ビニルエーテル基を有する上記ポリアセタール中間体と、1以上のヒドロキシ基又は1以上のアミノ基、及び、上記樹脂成分(A)における別の官能基又は該官能基と重合し得る基を1以上有する混合官能性化合物(c3)の少なくとも1種とを反応させること;又は、
(b)2超の末端ヒドロキシ基を有する上記ポリアセタール中間体と、必要に応じて、2官能以上のヒドロキシ基反応性架橋剤、例えば、カルボン酸無水物、2官能以上のカルボン酸無水物及び2官能以上のイソシアネートからなる群より選ばれる架橋剤と反応させ、さらに、これと、上記混合官能性化合物(c3)又は2官能の樹脂成分(A)とを反応させること;又は
(c)2超の末端ヒドロキシ基を有する上記ポリアセタール中間体と、1以上のイソシアネート基、及び、上記樹脂成分(A)における別の官能基又は該官能基と重合し得る基を1以上有する混合官能性化合物(c3)と、を反応させること、
により製造された、非線形のポリアセタール架橋樹脂成分であり得る。
【0093】
例えば、樹脂成分(A)として、エポキシ樹脂やオキセタン樹脂を用いた場合、成分(C)は、同様にエポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する。樹脂成分(A)に放射線硬化型(メタ)アクリレート基が含まれる場合、成分(C)もかかる(メタ)アクリレート基を有し得る。また、ビニルエーテル系樹脂成分(A)を用いる場合、成分(C)として、ビニルエーテル基の他、エポキシ基やオキセタニル基等のカチオン重合性基を含むものを用いることができる。このように、成分(C)は、硬化性組成物中に存在する樹脂成分(A)と相溶し、重合時に反応して、樹脂マトリックス中に取り込まれる。2超の末端ビニルエーテル基や他の反応性末端基を有する非線形ポリアセタール中間体を用いることで、成分(C)におけるポリアセタール官能基数が多くなり、硬化した組成物が、確実かつ迅速に剥離又は溶解し得る。
【0094】
好ましくは、2官能以上のビニルエーテル(c1)と2官能以上のアルコール(c2)及び混合官能性化合物(c3)の少なくとも1種との反応による成分(C)の形成は、一段階反応で実施できる。
【0095】
ポリアセタール架橋樹脂成分(C)が、用いる樹脂(A)の少なくとも1つと樹脂マトリックスを形成し得る官能基を有するように、混合官能性成分(c3)を選択する限り、複数の異なる構造のポリアセタール架橋型樹脂成分(C)を用いることも本発明の趣旨に含まれる。
【0096】
互いに異なる混合官能性化合物(c3)をさらに使用することで、ハイブリッド化合物を得ることができる。例えば、成分(c3)として、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート化合物とヒドロキシ官能性オキセタン化合物及び/又はエポキシ化合物との混合物を用いることにより、(メタ)アクリレート末端基に加えて、エポキシ基及び/又はオキセタニル末端基を有し、ラジカル重合とカチオン重合の両方が可能なポリアセタール架橋樹脂成分(C)を得ることができる。例えば、かかるポリアセタール架橋樹脂成分(C)は、エポキシアクリレートハイブリッド型組成物に用いることができる。
【0097】
成分(A)に用いられる樹脂に対応する基や、これと重合可能な基を有しない化合物(c3)の使用は好ましくない。このようなポリアセタール化合物は、硬化性組成物と共重合できず、硬化性組成物における凝集性に劣るなるため、本発明の組成物を調製することができない。
【0098】
2超の末端ビニルエーテル基又はヒドロキシ基を有する分岐型ポリアセタール中間体は、化合物(c1)又は(c2)の少なくとも一方が3官能又はそれ以上の官能性を有することによって製造され得る。2官能ビニルエーテル(c1)と2官能アルコール(c2)のみを反応させた場合、直鎖状ポリアセタール化合物のみが生成し、ガラス転移温度が低く、架橋密度が低い組成物となり、本発明の趣旨に適合しない。
【0099】
ポリアセタール架橋化合物(C)は、2,000~20,000g/mol、好ましくは2,000~80,00g/molの範囲内のモル質量を有し得る。
【0100】
化合物(c1)又は(c2)の少なくとも1つが3官能又はそれ以上の官能性である限り、複数の異なる構造のポリアセタール化合物(C)の使用も本発明の趣旨に含まれる。
【0101】
以下、混合官能性のポリアセタール架橋化合物(C)を製造するために用いられる化合物c1、c2、c3の詳細について説明する。
【0102】
化合物(c1):2官能以上のビニルエーテル
化合物(c1)としては、脂肪族、脂環式及び芳香族ビニルエーテルを用いることができる。好ましくは、極性、2官能、3官能及び4官能のビニルエーテル、より好ましくは、2官能及び3官能のビニルエーテルを用いることができ、その例として、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DVE-2)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(DVE-3)、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(BDDVE)、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDM-di)、1,2,3-トリス(ビニルオキシ)プロパン、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,3,5-トリス[(2-ビニルオキシ)エトキシ]ベンゼン、トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-トリス(2-ビニルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-シクロヘキサントリメタノールトリビニルエーテル、1,1,1-トリス-4-[2-(ビニルオキシ)エトキシ]フェニルエタン、テトラキス(ビニルオキシメチル)メタン等が挙げられる
【0103】
化合物(c2):2官能以上のアルコール
化合物(c2)としては、2官能又は多官能の1級及び2級脂肪族、脂環式ならびに芳香族アルコールを用いることができる。好ましくは、2官能、3官能、4官能及び5官能のアルコールを用いることができ、より好ましくは、3官能及び4官能のアルコール用いることができる。好ましいアルコールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-ベンジルジメタノール、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]2,6デカン、ジプロピレングリコール、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、ピロガロール、フロログルシノール、ペンタエリスリット、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、リブロース、キシルロース等が挙げられる。特に、ジプロピレングリコール及び1,1,1-トリメチロールプロパンの混合物が好ましい。
【0104】
混合官能性化合物(c3)
一実施形態において、化合物(c3)は、少なくとも1つのヒドロキシ-及び/又はアミン-官能基と、樹脂(A)における1以上の別の官能基を有し、該別の官能基は、樹脂(A)における官能基又は該官能基と重合し得る官能基から選ばれる。化合物(c3)の構造は、特に限定されない。
【0105】
例えば、前記別の官能基は、エポキシ、オキセタニン、ビニルエーテル及び/又は(メタ)アクリレートの官能基を含み得る。好ましくは、混合官能性化合物の別の官能基は、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、及び、それらの組合せである。
【0106】
エポキシ官能基を有する化合物(c3)の例としては、予備架橋エポキシ樹脂が挙げられる。
【0107】
オキセタン官能基を有する化合物(c3)の例としては、1-(オキシラン-2-イル)エタン-1-オール、2-(オキシラン-2-イル)エタン-1-オール、2-(オキシラン-2-イル)-1-フェニルエタン-1-オール、2-[(オキシラン-2-イル)メトキシ]エタン-1-オール、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン(Aron Oxetan OXT-101)等が挙げられる。
【0108】
(メタ)アクリレート官能基を有する化合物(c3)の例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシイソブチルアクリレート、2-ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0109】
ビニル官能基含有化合物(c3)の例としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル(APVE)等が挙げられる。
【0110】
なお、記載された例示は、最終的又は限定的なものとして解釈されない。
【0111】
本発明の組成物において、成分(C)は、少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも40質量%以上、特に好ましくは少なくとも50質量%の割合で含有される。水分の存在下で完全に溶解させるためには、50質量%以上の割合で含有させることが好ましい。
【0112】
ポリアセタール架橋化合物(C)の合成
化合物(C)の合成は、1段階又は2段階で行うことができる。1段階合成の場合、全ての反応成分(c1、c2、c3)を混合し、触媒である酸の存在下、撹拌しながら、20~100℃、好ましくは20~80℃の温度で、1~24時間、好ましくは1~6時間保持する。反応終了後、アミン、好ましくは第2級アミンを加えて触媒を中和する。得られた塩及び過剰のアミンは、例えば、濾過により除去できる。
【0113】
2段階合成の場合、化合物(c1)及び(c2)を反応させることにより、第一段階で2つ以上のヒドロキシ基を有するポリアセタール中間生成物を形成することができ、その後、当業者に公知の方法により、2官能性イソシアナート(HDI.IPDI)、ジカルボン酸ハロゲン化物(塩化オキサリル)又はジカルボン酸無水物(MHTPA、MHHPA、グルタル酸無水物)及び混合官能性の適切な化合物(c3)である。さらに、2個以上の水酸基を有するポリアセタール中間生成物を、水酸基と反応する官能基、例えばイソシアネート基と、樹脂成分(A)の別の官能基又はそれと重合可能な基を有する混合官能性の化合物と反応させて成分(C)を形成させることも可能である。
【0114】
(D)促進剤
水分の存在下で剥離及び/又は溶解する時間の短縮のために、組成物に促進剤をさらに添加することができる。特に、例えば無機炭酸塩、酒石酸塩、ポリリン酸塩、アゾ化合物、アジ化物及び膨張性微小球等の発泡剤(D1)が用いられる。
【0115】
促進剤として、さらに、酸(D2)を用いることができる。特に、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸又はp-トルエンスルホン酸等の有機酸が好ましい。
【0116】
また、光照射により酸を放出し得る光潜在性酸の使用も可能である。
【0117】
本発明の組成物において、促進剤(D)は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0118】
本発明の組成物において、成分(D)は、0~15質量%、好ましくは0~10質量%、特に好ましくは1~5質量%の割合で含有される。
【0119】
成分(E):添加剤
さらに、上記組成物は、添加剤(E)として任意の成分を含み得る。好ましくは、添加剤(E)は、充填剤、染料、顔料、老化防止剤、蛍光剤、安定剤、重合促進剤、増感剤、接着剤、乾燥剤、架橋剤、流動性向上剤、湿潤剤、チクソトロピック剤、希釈剤、柔軟剤、ポリマー増粘剤、難燃剤、腐食防止剤、可塑剤及び粘着剤からなる群より選択される。
【0120】
上記添加剤は例示であり、これらに限定されない。
【0121】
組成物の組成
本発明の組成物の組成は、少なくとも成分(A)~(C)を含む。さらに、促進剤(D)及び添加剤(E)を含んでよい。
【0122】
第1の実施形態において、組成物は、組成物の総量を基準として、それぞれ以下の成分を含むか、又は以下の成分からなる:
(A)少なくとも1種の硬化性樹脂成分(A)1~70質量%;
(B)硬化性樹脂成分の、少なくとも1種の硬化剤及び/又は少なくとも1種の開始剤0.001~70質量%;
(C)少なくとも1種のポリアセタール架橋樹脂成分を20~95質量%;
(D)促進剤0~15質量%;
(E)充填剤、染料、顔料、老化防止剤、蛍光剤、安定剤、重合促進剤、増感剤、接着剤、乾燥剤、架橋剤、流動性向上剤、湿潤剤、チクソトロピック剤、希釈剤、柔軟剤、ポリマー増粘剤、難燃剤、腐食防止剤、可塑剤、粘着剤及びこれらの組合せからなる群より選ばれる追加の添加剤0~70質量%。
【0123】
本発明の組成物は、一液型組成物として提供されることが好ましい。
【0124】
本発明の組成物の使用
本発明の組成物は、再溶解及び剥離が可能な接合部、塗膜及び封止部の形成に特に好適である。高価な部品では、例えば、製造工程中に保護層として塗布し、その後、マイルドな条件で除去することができる。また、エレクトロニクス用途の接合手段として、デバイス使用終了後、部品回収のためのリサイクルとの組合せで使用することも考えられる。
【0125】
特に、この組成物は、積層造形部品の製造のための支持体材料として好適である。この組成物は、他の材料と比較して、マイルドな条件下で本質的に残留物を残さず部品から除去できるという利点を有する。ポリアセタール架橋樹脂成分(C)が樹脂マトリックスに組み込まれているため、硬化した組成物は、剥離し得る条件に置かれない限り、良好な凝集力と信頼性の高い機械的特性の両方により特徴付けられる。
【0126】
さらに、上記組成物は、いわゆるファンアウトウエハーレベルパッケージ(FOWLP)の製造のための仮固定材料として使用することができる。特に、上記組成物は、T. Braun、M. Topper及びK.-D. Langによる学術文献“Opportunities of Fan-out Wafer Level Packaging (FOWLP) for RF applications”, IEEE, 16th Topical Meeting on Silicon Monolithic Integrated Circuits in RF Systems (SiRF) 2016に記載されるプロセスにおいて、一時的固定手段に適している。
【0127】
本発明の組成物の硬化
本発明の組成物は、熱及び/又は光線、特にUV照射によって硬化させることができる。ポリアセタール架橋樹脂成分(C)は、重合してして樹脂マトリックス中に取り込まれるため、典型的には硬化条件には影響を与えない。
【0128】
測定方法、装置及び定義
以下、表1に示した組成物と実験結果に関し、測定方法とその定義を説明する。
【0129】
照射
光開始剤(B)を活性化するために、本発明の組成物を、発光極大を365nmに有するDELO Industrie Klebstoffe社製DELOLUX 20/365 LEDランプを用い、200±20mW/cm2の強度で60秒間照射した。
【0130】
硬化
「架橋」又は「硬化」とは、ゲル化点を超える重合反応又は付加反応と定義される。ゲル化点とは、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”と等しくなる点である。試験片の硬化は、室温で7日間行う。
【0131】
室温
室温は23±2℃と定義する。
【0132】
成分(C)の合成反応の進行状況の確認
ポリアセタール中間体の合成反応と、その後の混合官能性化合物(c3)との反応の進行は、赤外分光法で評価した。この目的のために、Bruker社製ALPHA赤外分光計を使用し、以下に示す振動バンドの変化を追跡した。該当するバンドが消滅し、かつ/又はバンドがそれ以上変化しなくなった時点で、反応は完了とする。
【0133】
組成物の剥離性及び溶解性の試験
本発明の組成物の剥離性評価のため、ガラスとアルミニウムからなる2つの試料(寸法20mm×20mm×5mm)を、それぞれの組成物を用いて、重なり部分5mm、層厚0.1mmで互いに接着させる。
【0134】
硬化後、試験片をクランプでおもりに取り付け、80℃(pH7)の水浴中に置く。接合部が破壊されるまでの経過時間を測定する。接合部の破壊後、試験片を取り出し、硬化した組成物の残留物が残っているか否かを確認する。
【0135】
本発明の組成物の溶解性評価のため、サイズ3×3cm、厚さ200μmの試験対象となる組成物のフィルムを、365nmで60秒間硬化させた。その後、該フィルムを80℃のpH3の水浴中に置いた。フィルムの残留物が目視で確認できなくなった時点の時間を記録した。
【0136】
ガラス転移温度の測定
反応性とガラス転移のDSC測定は、Mettler Toledo社のDSC 822e又はDSC 823e型示差走査熱量計(DSC)を用いて行った。
【0137】
その際、液体試料16~20mgをアルミるつぼ(40μL)中にピンを用いて秤量し、孔を有する蓋でるつぼに蓋をする。そして、以下の温度セグメントで測定を実施する:(1)等温、0℃、2分間;(2)動的0~250℃、10oK/分;(3)動的250~0℃、-10oK/分;(4)等温、0℃、3分間;(5)動的0~250℃、20oK/分。すべての温度セグメントで、プロセスガスは空気(体積流量30mL/分)である。
【0138】
加熱セグメント(2)及び(5)は、それぞれ、反応性とガラス転移の評価に関する。反応エンタルピーは、スプライン曲線を母線として、試料重量で規格化し、その量を発熱エネルギーとして算出される。ガラス転移は損失正接法を用いて解析される。
【0139】
破断伸度の測定
上記組成物から、所定の大きさのダンベル試験片(寸法25×5.5×2mm、測定距離10×2×2mm)を鋳造した。該ダンベル試験片を片側から60秒間照射した(DELOLUX 20/365;強度200mW/cm2)。その後、Zwick社製引張試験機で30mm/分の速度でダンベル試験片を引張り、DIN EN ISO 527に準拠して凝集力及び破断伸びを測定した。
【0140】
調製例
成分(A):カチオン重合性成分
(A1)エポキシ基含有化合物
(A1-1):3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル社製、商品名「セロキサイド2021P」として入手可能
(A2)オキセタン含有化合物
(A2-1):OXT-221=ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、東亞合成社より入手可能
(A4)ラジカル硬化性(放射線硬化性)化合物
(A4-1):アクリル酸、シグマアルドリッチ社から入手可能
(A4-2):SR256=2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、Sartomer社から入手可能
(A4-3):SR495B=カプロラクトンアクリレート、Sartomer社から入手可能
(A4-4):DMAA=N,N-ジメチルアクリルアミド
【0141】
成分(B):硬化剤及び/又は開始剤
(B4)カチオン性光重合開始剤
(B4-1):Irgacure 290=トリス(4-((4-アセチルフェニル)チオ)フェニル)スルホニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート、IGM Resins社から入手可能
(B6)ラジカル光重合開始剤
(B6-1):Irgacure 819=ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、IGMレジン社から入手可能
【0142】
ポリアセタール化合物(C)の合成例
(c1)2官能以上のビニルエーテル化合物
(c1-1):トリエチレングリコールジビニルエーテル、BASF SE社から入手可能
(c2)2官能以上のアルコール化合物
(c2-1)ジプロピレングリコール
(c2-2)1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン
(c3)混合官能性化合物
(c3-1)OXT-101=3-エチルオキセタン-3-メタノール、東亞合成社から入手可能
(c3-2)4-ヒドロキシブチルアクリレート
(c3-3)Karenz AOI=2-イソシアナトエチルアクリレート、昭和電工社から入手可能
【0143】
成分(D):促進剤
(D1)酸性促進剤
(D1-1):シュウ酸
(D2)膨張性微小球
(D2-1):Expancel Partikel 031 DUX 40、Nouryon社から入手可能
【0144】
成分(E):添加剤
(E1-1):チキソトロピック剤HDK N 20、会社Wackerから入手可能
【0145】
(C1):オキセタン官能基を有するポリアセタールの製造
乾燥させた容器に、窒素雰囲気下、トリエチレングリコールジビニルエーテル(c1-1)80.0g(0.388mol、11当量)、ジプロピレングリコール(c2-1)38.2g(0.282mol、8当量)、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(c2-2)4.73g(0.035mol、1当量)、アロンOXT-101(c3-1)13.3g(115mol、3,25当量、及び、シュウ酸(D1-1)222mg(2.47mmol、0.07当量)を投入する。次いで、IRで観察される3405cm-1のOH振動バンドに変化が見られなくなるまで、80℃において、反応混合物を連続撹拌下に保持する。
【0146】
その後、反応混合物に酢酸エチル260mLを加え、激しく撹拌しながら活性炭6.8gを添加する。次いで、固形分を濾別し、上澄み溶液を減圧下で留去する。粘度1,461mPa・sのオキセタン官能基化ポリアセタール(C1)100g(74%)が得られた。
【0147】
(C2)エポキシ官能基を有するポリアセタールの製造
乾燥させた容器に、窒素雰囲気下、トリエチレングリコールジビニルエーテル(c1-1)175g(0.865モル、8.5当量)、ジプロピレングリコール(c2-1)117g(0.865モル、8.5当量)、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(c2-2)13.7g、(0.102mol、1当量)、及び、シュウ酸(D1-1)640mg(7.13mmol、0.07当量)を投入する。次いで、反応混合物を連続的に撹拌しながら85℃で4時間加熱する。その後、反応混合物に1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン220mg(1.95mmol、0.077当量)を加え、均一化する。
【0148】
次いで、酢酸エチル300mLを反応混合物に添加し、激しく撹拌しながら活性炭15.3gを添加する。その後、固形分を濾別し、上澄み溶液を減圧下で除去する。のポリアセタール中間体I275g(96%)が油として得られた。
【0149】
ポリアセタール中間体I 100g(0.063モル、1当量)を乾燥空気下で55℃に加熱し、グルタル酸無水物14.0g(0.120モル、1.9当量)を加える。その後、1,8-ジアザビシクロウンデセン680mg(4.43mmol、0.07当量)を加え、反応混合物を80℃で4時間撹拌する。
【0150】
7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イルメチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート(A1-1)133g(0.528モル、8.35当量)を加え、IRにおいて、3070cm-1から3290cm-1のCOOH振動バンド変化がなくなるまで撹拌する。反応完了後、粘度3,386mPa・sのエポキシ官能性ポリアセタール(C2)240g(97%)が得られる。
【0151】
(C3)アクリレート官能性ポリアセタールの製造
乾燥させた容器に、トリエチレングリコールジビニルエーテル(c1-1)30.0g(0.145mol、18当量)、ジプロピレングリコール(c2-1)18.6g(0.137mol、17当量)、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(c2-2)1.08g(8.08mmol、1当量)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(c3-2)2.33g(0.016mmol、2当量)、シュウ酸(D1-1)102mg(1.13mmol、0.14当量)、ブチルヒドロキシトルエン10.7mg(0.05mmol、6m当量)及び4-メトキシフェノール12.3mg(0.10mmol、0.012当量)を投入する。次いで、IRにおいて、3488cm-1のOH振動バンドに変化が観察されなくなるまで、反応混合物を連続的に撹拌しながら80℃に保持する。
【0152】
粘度1,812mPa・sのアクリレート官能化ポリアセタール(C3)45g(88%)が得られた。
【0153】
(C4)ジイソシアネート架橋アクリレート官能性ポリアセタールの製造
乾燥空気下、イソホロンジイソシアネート8.44g(0.038モル、2当量)を、ポリアセタール中間体I 30g(0.019モル、1当量)に加える。次いで、ネオデカン酸ビスマス26.5mg(0.02mmol、1.1m当量)を2回加え、反応混合物を80℃で5時間撹拌する。
【0154】
その後、4-ヒドロキシブチルアクリレート(c3-2)5.47g(0.038mol、2当量)を添加し、IRにおいて2262cm-1のNCO振動バンドの変化が観察されなくなるまで、反応物を撹拌する。粘度169,670mPa・sのアクリレート官能化ポリアセタール(C4)39g(98%)のが得られた。
【0155】
モノイソシアネート架橋アクリレート官能性ポリアセタール(C5-C9)の製造
まず、シュウ酸(D1-1)の存在下、表1に示す当量に従ってビニルエーテル(c1-1)とポリオール(c2-1)及び(c2-2)を用い、ポリアセタール中間体Iの製造法に従って、ポリアセタール中間体II~Vを製造した。
【0156】
その後、乾燥させた容器に、窒素雰囲気下、1当量のポリアセタール中間体I~Vを入れ、7m当量のブチルヒドロキシトルエン(BHT)及び14m当量の4-メトキシフェノール(HQMME)を投入する。次に、2当量の混合官能性化合物(c3-3;Karenz AOI)及び3.5m当量のネオデカン酸ビスマスを加える。IRにおいて、NCO振動バンド(2239~2275cm-1)の変化が検出されなくなるまで、反応混合物を連続的に撹拌しながら70℃に保持する。
【0157】
アクリレート官能性ポリアセタール(C5~C9)は、ポリアセタール中間体I~Vから、90%>の収率でオイルとして得られる。
【0158】
表1:ポリアセタール架橋樹脂成分C5~C9の合成
【0159】
【0160】
*アセタール基の理想個数Pi=[ポリアセタール架橋の理論個数];(c1-x)の各ビニル基が(c2-x)のヒドロキシ官能基と反応してポリアセタール基を形成すると仮定する。
【0161】
表2:本発明の組成物の例(割合は、質量%であり、組成物の総量を基準とする)
【0162】
【0163】
表2:続き
【0164】
【0165】
(C10)無官能性のポリアセタールの製造
乾燥させた容器に、窒素雰囲気下、トリエチレングリコールジビニルエーテル(c1-1)60.0g(0.300mol、8.5当量)、ジプロピレングリコール(c2-1)40.2g(0.300mol、8.5当量)、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(c2-2)4.68g(0.025mol、1当量)1-ブタノール7.76g(0.105mol、3当量)及びシュウ酸(D1-1)220mg(2.40mmol、0.07当量)を投入する。次いで、IRにおける1618cm-1のビニル振動バンドが観察されなくなるまで、反応混合物を連続的に撹拌しながら85℃に加熱する。
【0166】
粘度223mPa・sの、樹脂成分(A)に対する官能基を有しない無官能性ポリアセタール(C10)110g(98%)が得られた。
【0167】
表3:比較例(割合は、質量%であり、組成物の総量を基準とする)
【0168】
【0169】
本発明の組成物1~3は、オキセタン官能性ポリアセタール架橋樹脂成分(C1)又はエポキシ官能性ポリアセタール架橋樹脂成分(C2)をそれぞれ含有するカチオン硬化系を含む。オキセタン官能性ポリアセタール架橋樹脂成分(C2)にを用いた実施例2の組成物は、(C2)を用いた実施例1の組成物のほぼ3倍の速さで剥離する。0.2質量部の酸性促進剤を添加することにより(本発明の実施例3)、剥離時間はさらに12分短縮される。
【0170】
実施例4および5は、本発明のアクリレート基含有組成物であり、膨張性微小球(D2-1)を添加することで、剥離時間をほぼ3分の1に加速することもできる。本発明の実施例5の組成物は、残留物を残さずに24時間以内で溶解し得る。
【0171】
成分(C)中のアセタール官能基の個数の尺度であるアセタール基数の影響は、本発明の実施例6~9で明らかにされている。アセタール基の数が多いほど、剥離までの時間も短縮される。本発明の実施例6の組成物(アセタールの理論個数:17)は14分以内に剥離する一方、アセタールの個数13個の実施例9の組成物は24分以内に剥離する。
【0172】
本発明の実施例10~12の組成物は、比較例14とともに、ポリアセタール架橋樹脂成分(C)の比率の下限を示している。比較例14では、ポリアセタールの割合は20質量%未満である。剥離までの時間は1日以上である。本発明の実施例10~12では、ポリアセタール(C)の割合が増加するにつれて、分離時間が短縮されることを示されている。
【0173】
比較例13は、無官能性のポリアセタール(C10)を70質量%の割合で含む。含有率が高いにもかかわらず、硬化した組成物を基材から剥離するには1週間以上を要する。ポリアセタール(C10)がポリマーネットワークに組み込まれていないため、比較例13は本発明と合致しない。