(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】微生物を含む炎症性疾患の診断または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20241011BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241011BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241011BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20241011BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241011BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P1/04
C12N15/11 Z ZNA
C12N1/20 E
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/02
A61K9/10
A61K45/00
A61P1/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2023519442
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2021013152
(87)【国際公開番号】W WO2022065957
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0126243
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13783BP
(73)【特許権者】
【識別番号】521440334
【氏名又は名称】シージェイ バイオサイエンス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホン, サン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジェ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ギョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ソクファン
(72)【発明者】
【氏名】オ, ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ダヘ
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511272(JP,A)
【文献】Molecular Medicine Reports,2019年,20,25-32
【文献】Accession No. MF185398.1,GenBank[online](retrieved on 2024 May 23),2017年,retrieved from the Internet<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucleotide/MF185398.1?>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のヌクレオチド配
列を有する16S rRNA配列を含むバクテリア菌株(bacteria srain)の菌体
および前記微生物の培養
物からなる群より選択された1種以上を含
み、
前記バクテリア菌株は、受託番号KCTC 13783BPで寄託されたフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスである、
炎症性疾患の予防または治療用組成物。
【請求項2】
前記炎症性疾患は、炎症性胃腸管疾患である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炎症性胃腸管疾患は、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis、UC)またはクローン病(Crohn’s disease、CD)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記バクテリア菌株は、免疫調節能または抗炎
症活性を有するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記バクテリア菌株は、サイトカインの調節による免疫調節能を有するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記サイトカインは、TNF-α、IL-6、IL-8およびIL-10からなる群より選択された1種以上である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記バクテリア菌株は、組成物の総重量を基準として1×10
3~1×10
15CFU/g含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記バクテリアは、生きているバクテリ
アである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、抗-炎症剤、副腎皮質ホルモン剤、免疫調節剤、抗生剤、腫瘍壊死因子抑制剤、ヤーヌスキナーゼ抑制剤、抗インテグリン製剤、およびインターロイキン抑制剤からなる群より選択された1種以上の薬物を追加的に含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記バクテリアは、下記の特性の中から選択された1種以上を有するものである、請求項1に記載の組成物:
前記微生物は、17:0 iso 3OH脂肪酸を含まないもの、
前記微生物は、腫瘍の成長抑制活性または癌細胞のアポトーシス(apoptosis)を誘発する抗癌活性を有するもの、
前記微生物を癌細胞株を移植した動物モデルに投与した時、微生物を投与しない対照群に比べて相対的な腫瘍体積の減少率は5%以上、
前記微生物を癌細胞株を移植した動物モデルに投与した時、微生物を投与しない対照群に比べて腫瘍の重量に応じた腫瘍成長抑制率が5%以上、および
前記微生物は、25~40℃の温度および嫌気条件下で培養されるもの。
【請求項11】
前記組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤を追加的に含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、粉末、トローチ、座薬、または懸濁液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、プロバイオティクスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、プロバイオティクスとプレバイオティクスを含むものである、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィーカリバクテリウム属微生物を含む炎症性疾患の診断または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は個体の免疫系が侵入病原菌のような有害成分に対応しようとする時に発生する。免疫調節細胞、サイトカインおよびアポトーシスが含まれている免疫調節機序は、病原菌を防ぐための過度の反応で発生する免疫反応を調節する。このようなメカニズムが欠乏する場合、炎症性腸疾患(inflammatory bowl disease、IBD)をはじめとする多様な炎症疾患として現れる。前記炎症性疾患は、例えば、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、過敏性大腸症候群、慢性消化障害(coeliac disease)、伝染性大腸炎(例えば、C.ディフィシル(C.difficile)によって起因する)、ベーチェット病(Behcet’s disease)、その他の胃腸管-関連の疾病、およびそれらの何らかの組み合わせからなる群より選択された、炎症性胃腸管疾患を含む。
【0003】
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、IBD)は、胃腸管の慢性的な炎症状態で崩れた粘膜構造、腸内微生物の組成変化および全身生化学的異常が特徴的である。IBDは、炎症の臨床様相と腸内局所化により潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis、UC)とクローン病(Crohn’s disease、CD)とに分けられる。IBDの正確な病因は知られていないが、腸内細菌叢の変化や病原性微生物による環境的要因によって引き起こされた過度の免疫反応が主要病因として知られている。
【0004】
IBDは複合的でよく知られていない病因による疾病であるため、IBDの治療は非常に制限的であり、治療よりは症状を好転させて寛解を誘導し、寛解維持に焦点を合わせている。病変の範囲、重症度および臨床様相、合併症などを考慮して最適な治療方法を選択する。
【0005】
炎症性腸疾患の治療剤は、多様な作用機序により効果を示すため、精巧な臨床指針に従って段階的に使用されており、5-aminosalicylateとcorticosteroidは、軽症乃至中等症のIBDに一次療法としてよく使用され、TNF-α抑制剤(例、infliximab、adalimumab and golimumabなど)のような生物学的製剤は、一次薬剤に反応がなかったり失敗した患者に二次薬剤として使用されるように推奨されている。しかし、疾病初期に高濃度のTNF-α抑制剤を投与する患者が幾何級数的に増加している。強力な免疫抑制剤の長期使用による深刻な副作用の問題があり、代替治療剤に対する持続的な臨床的必要性(clinical needs)が求められている。
【0006】
IBDと腸内細菌叢との間の関連性は世界的に多くの研究から確認されているが、IBD患者における善玉菌(beneficial bacteria)の欠乏が特徴的な微生物群集不均衡(microbiota dysbiosis)が現れることが報告されており、微生物群集不均衡がIBDの免疫病因(immunopathogenesis)として考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一例は、フィーカリバクテリウム属微生物を用いた、炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患の発病危険度の予測または炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患を診断したり、前記微生物を用いて炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の予防、改善または治療反応性を予測または評価する組成物、キットまたは方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一例は、フィーカリバクテリウム属微生物の菌体;前記微生物の培養物;前記微生物の破砕物;および前記微生物、培養物および破砕物からなる群より選択された1種以上の抽出物;からなる群より選択された1種以上を含む、炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の予防、改善または治療用組成物を提供する。前記組成物は、医薬または食品であってもよい。
【0009】
また、本発明は、炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の診断、例えば、投与する対象を選択または炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の予防、改善または治療効能の評価に関する。
【0010】
本発明の一例は、フィーカリバクテリウム属微生物の菌体;前記微生物の培養物;前記微生物の破砕物;および前記微生物、培養物および破砕物からなる群より選択された1種以上の抽出物;からなる群より選択された1種以上を含む腸疾患の診断方法、組成物またはキット、フィーカリバクテリウム属微生物の菌体などを投与する対象を選択する方法、組成物またはキット、または対象にフィーカリバクテリウム属微生物の菌体などを投与して炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の予防、改善または治療効能を評価する方法、組成物またはキットを提供する。
【0011】
本発明の一例は、本発明によるフィーカリバクテリウム属微生物の菌体;前記微生物の培養物;前記微生物の破砕物;および前記微生物、培養物および破砕物からなる群より選択された1種以上の抽出物;からなる群より選択された1種以上とともに、抗-炎症剤、副腎皮質ホルモン剤(corticosteroid)、免疫調節剤(immunomodulator)、抗生剤(antibiotics)、腫瘍壊死因子抑制剤(tumor necrosis factor-α agent inhibitor、TNF-α inhibitor)、ヤーヌスキナーゼ抑制剤(例、トファシチニブなど)、抗インテグリン製剤(例、ベドリズマブなど)、インターロイキン抑制剤(例、ウステキヌマブなど)などから構成された群より選択された1種以上を含む、炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患または炎症性腸疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。抗-炎症剤の例は、5-アミノサリチル酸、スルファサラジンおよびオルサラジンを含む。ステロイド類の例は、コルチコステロイド類、グルココルチコステロイド類、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンおよびアドレノコルチコトロピックホルモン(Adrenocorticotropic hormone)(以下、「ACTH」と略称する。)を含む。免疫調節剤の例は、脱糖脂質化された、脱糖脂質化されたマイコバクテリウムバッカエ)(deglycolipidated、deglycolipidated Mycobacterium vaccae)(以下、「PVAC」と略称する。)、抗-腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5(Tumor Necrosis Factor receptor superfamily member5)(以下、「抗-CD40」と略称する。)リガンド、抗-CD40、ナタリズマブ(natalizumab)(AntegrenTM)、抗-脈管接着分子-1(Vascular Adhesion Molecule-1)(以下、「抗-VCAM1」と略称する。)および抗-細胞間接着分子-1(Intercellular Adhesion Molecule-1)(以下、「抗-ICAM1」と略称する。)を含む。サイトカインの例は、インターロイキン-10(Interleukin-10)(以下、「IL-10」と略称する。)を含む。TNF拮抗体の例は、インフリキシマブ(infliximab)(Remicade0)、エタネルセプト(etanercept)(EnbrelOO)、アダリムマブ(adalimumab)(Humira)、およびセルトリズマブペゴル(Certolizumab Pegol)(以下、「CDP870」と略称する。)を含む。ヤーヌスキナーゼ抑制剤の例は、トファシチニブ(Tofacitinib)(Xeljanz)、抗インテグリン製剤の例は、ベドリズマブ(vedolizumab)(KyntelesR)、インターロイキン抑制剤の例は、ウステキヌマブ(ustekinumab)(Stelara pfs)を含む。
【0012】
本発明の一例は、フィーカリバクテリウム属微生物を用いて、フィーカリバクテリウム属微生物の投与対象を選別する組成物、キットまたは方法を提供する。具体的には、本発明は、試験対象の試料からフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスを検出して、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の発病危険度の予測または胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患を診断したり、前記微生物の投与による炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の予防、改善または治療反応性を予測または評価するものであり、これによって前記対象が胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の改善または治療を受けられるかを決定することができる。
【0013】
本発明の一例は、フィーカリバクテリウム属微生物を用いて、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス(Faecalibacterium cancerinhibens)が投与された対象においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの効能または反応性を評価する組成物、キットまたは方法を提供する。具体的には、本発明の一例は、試験対象の生物学的試料においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス(Faecalibacterium cancerinhibens)微生物を検出する製剤を含む、胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の発病危険度の予測または胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患を診断したり、胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の予防、改善または治療反応性を予測または評価するための組成物またはキットに関する。
【0014】
本発明のさらなる一例は、試験対象の生物学的試料においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス微生物を検出する段階を含む、炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の発病危険度の予測または炎症性疾患、具体的には、炎症性胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患を診断したり、胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患の予防、改善または治療反応性を予測または評価するための方法に関する。
【0015】
本発明は、健康な対照群においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのレベルに比べて減少したフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのレベルに関連する疾患または障害の予防、改善または治療方法を提供し、ここで、方法は、対象をフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの減少したレベルを有するものとして決定する段階、およびフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの減少したレベルが存在するものと決定されると、前記フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスを含む組成物を対象に投与する段階を含む。
【0016】
本発明の一例は、フィーカリバクテリウム属微生物の菌体;前記微生物の培養物;前記微生物の破砕物;および前記微生物、培養物および破砕物からなる群より選択された1種以上の抽出物;からなる群より選択された1種以上を含む、抗炎症剤に関する。前記フィーカリバクテリウム属微生物は、抗炎症活性を有するものであってもよい。
【0017】
前記組成物は、薬学的組成物または食品組成物であってもよく、プロバイオティクス単独、またはプロバイオティクスとプレバイオティクスをともに含むことができる。
【0018】
本明細書において、炎症性疾患は、各種炎症を含むことができ、例えば、炎症性胃腸管疾患、好ましくは、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、過敏性大腸症候群、慢性消化障害(coeliac disease)、伝染性大腸炎(例えば、C.ディフィシル(C.difficile)によって起因する)、ベーチェット病(Behcet’s disease)、その他の胃腸管-関連の疾病、およびそれらの何らかの組み合わせからなる群より選択された、炎症性胃腸管疾患である。あるいは、前記炎症性疾患は、炎症性自己免疫疾患であり、ここで、バランスの悪い微生物叢(dys-balanced microbiota)および低級粘膜炎症(low grade mucosal inflammation)は、糖尿病(タイプ1および2)、喘息およびアトピー疾患のような、疾患の病因に関連するものであってもよい。
本発明において、菌株によって発揮される免疫調節または炎症性疾患の改善、治療または予防の効果は、炎症抑制および免疫調節に関与するサイトカインの増加または減少、具体的には、IFN-γ、IL-8、IL-6およびTNF-αなどの分泌減少およびIL-10の分泌増加のいずれか1つ以上の機序によって誘導されることを特徴とする。
【0019】
IFN-γの役割は、代表的に、NK細胞活性化、マクロファージ活性化、MHC発現増加などがあり、IFN-γに対する慢性露出は自己免疫疾患および炎症性疾患のような様々な非感染性病理に関与することが知られている。
【0020】
炎症発生時、Neutrophilは、腸上皮細胞間の間隔(tight junction)により腸の内腔まで移動したりもして炎症をさらに悪化させる役割を果たすことができ、この時、炎症性サイトカインに相当するIL-8は、当該Neutrophilを炎症部位に引き寄せるのに重要な役割を果たす因子であって、Neutrophilを腸粘膜の固有層内に浸潤させて炎症媒介物質を分泌させることによって、組織の損傷をもたらす役割を果たすことが知られている。
【0021】
IL-6は、Tリンパ球や大食細胞など多様な細胞から分泌されて免疫反応を促進し、この場合は、感染、外傷、特に火傷や炎症につながる組織損傷をもたらすことがある。また、IL-6は、Th17細胞分化を誘導することでRORγtやIL-17の分泌を促進することによって、炎症をさらに促進させる役割を果たすことが知られている。
【0022】
炎症を誘発する主要因子の1つであるTNF-αは、主に活性化された大食細胞から分泌され、補助T細胞、ナチュラルキラー細胞、そして損傷したニューロンなどの多様な細胞から分泌される。そして、最も重要な役割は免疫細胞の調節で、IL-1とIL-6の生産を誘発することができ、リウマチ関節炎やクローン病、潰瘍性大腸炎などの多様な炎症性疾患において炎症反応を促進する役割を果たすことが知られている。
【0023】
また、IL-10は、補助T細胞、B細胞、単核細胞など多様な細胞で生成される重要な免疫調節サイトカインで、主要機能は炎症反応の抑制であって、IL-6、TNF-αを含む前炎症性サイトカインの生成を抑制するなどの免疫抑制および抗炎症特性を有している。
【0024】
炎症性腸疾患(IBD)は、下痢、血便、腹痛および体重損失によって特徴づけられる胃腸管の慢性炎症性疾患であり、原因不明の慢性、再発する炎症である。IBDは、2つの主な疾患状態、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン疾病(CD)を含み、さらに詳しくは、慢性または急性潰瘍性大腸炎およびクローン疾患を含む。UCは、主に大腸または結腸の粘膜の層に影響を及ぼす。これに対し、CDは、小腸および大腸の部分(segments)を含むことができる貫壁性肉芽腫性炎症(transmural granulomatous inflammation)として定義されたものである。
【0025】
本発明において、プロバイオティクスバクテリア(probiotic bacteria)は、抗-炎症性(プロバイオティクス)組成物、例えば、機能性食品、ニュートラシューティカルズ(neutraceuticals)または薬剤学的組成物に含まれてもよいし、胃腸管においてプロバイオティクスの生存を促進するための方法が提供される。
【0026】
本発明において、前記フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属微生物は、例えば、配列番号1のポリヌクレオチド配列と98%以上、98.5%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上、または99.9%以上の配列同一性(sequence identity)を有する16S rDNA配列を含むバクテリア菌株(bacteria srain)であってもよいし、配列番号1のヌクレオチド配列を含む16S rDNA遺伝子を含むバクテリア菌株、好ましくは、受託番号KCTC 13783BPを有するフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1菌株であってもよい。前記微生物またはバクテリア菌株(bacterial strain)は、下記の特性からなる群より選択された1種以上の特性を有するものである:
(1)配列番号1のヌクレオチド配列を有する16S rRNAまたはこれとヌクレオチド配列同一性が98%以上、98.5%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上、または99.9%以上のヌクレオチド配列を含む16S rRNAを有する;
(2)脂質生産パターン、詳しくは、17:0 iso 3OH脂肪酸を含まないものであり、さらに詳しくは、15:1 w8c脂肪酸、19:0 cyclo w10c/19w6脂肪酸、20:1 w9c脂肪酸、14:0 3OH/16:1 iso I脂肪酸、15:0 3OH脂肪酸、16:0 iso脂肪酸および16:0 iso 3OH脂肪酸からなる群より選択される1つ以上の脂肪酸を含み、Faecalibacterium prausnitziiにはないPL3を含む;
(3)フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1菌株の遺伝体配列に比べて、平均ヌクレオチド一致度(average nucleotide identity、ANI)値が95%以下である;
(4)免疫調節能および/または抗炎活性、例えば、IFN-γ、IL-6、IL-8およびTNF-αからなる群より選択された1種以上の炎症性サイトカインのレベルを減少させるものであるか、および/またはIL-10およびTNF-βからなる群より選択された1種以上の抗炎症性サイトカインのレベルを増加させるものであって、抗炎活性と免疫調節活性、例えば、免疫抑制能を有する;
(5)抗癌活性、具体的には、癌の発生を防止、腫瘍の成長速度を遅延または阻害したり、腫瘍の大きさまたは体積を減少させたり、または癌の転移を抑制または遅延させる活性であり、一例として、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスは、癌細胞株を皮下移植したマウスに投与した時、前記微生物を投与しない対照群に比べて腫瘍の体積を10~90%に減少させる活性を有し、
さらに詳しくは、腫瘍の成長抑制活性または癌細胞のアポトーシス(apoptosis)を誘発する抗癌活性を有するもの;
癌細胞株を移植した動物モデルに投与した時、微生物を投与しない対照群に比べて相対的な腫瘍体積の減少率は5%以上;または
癌細胞株を移植した動物モデルに投与した時、微生物を投与しない対照群に比べて腫瘍の重量に応じた腫瘍成長抑制率が5%以上を有する;
(6)培養温度20~40℃であるか、嫌気条件下で培養され、具体的には、20~40℃の温度、25~40℃の温度、30~40℃の温度、35~40℃または37℃の温度で培養できる;および
(7)高い酪酸含有量、詳しくは、Faecalibacterium prausnitzii ATCC 27768菌株に比べて2倍~50倍を有する。
【0027】
本発明の具体的なFaecalibacterium cancerinhibensは、前記特性の中から選択された少なくとも1つ以上の特性を有することができる。例えば、前記(1)~(7)の特性をすべて有する菌株(strain)をFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1は、かつて分離および報告されていない新規な種(species)であることが分かる。前記方法で同定されたFaecalibacterium属菌株をフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1と名付け、2019年1月3日付で韓国生命工学研究院生物資源センターに寄託して受託番号KCTC 13783BPを与えられた。
さらに詳しくは、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1菌株の遺伝体解読および近縁種との比較結果、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1菌株は、全体遺伝体レベルにおいて最も近い近縁種のFaecalibacterium prausnitziiと遺伝体レベルにおいて85.99%の平均ヌクレオチド一致度(average nucleotide identity、ANI)値を示して、かつて分離および報告されていない新規な種(species)であることが分かる。
【0028】
さらに詳しくは、本発明による抗癌活性は、大腸癌および/または肝癌に対する抗癌活性であってもよいし、例えば、肝癌および/または大腸癌の発生または進行を抑制する活性であってもよい。具体的には、腫瘍の発生を遅延または腫瘍の成長速度を阻害するものであってもよいし、腫瘍の成長速度の阻害による癌の転移予防活性を追加的に有することができる。
【0029】
本発明によるFaecalibacterium属微生物は、健康な成人男性の糞便から分離して、ヒト癌細胞株、癌細胞株を皮下移植したマウスモデル、または癌細胞株を当該組織に移植したマウスモデルにおいて癌発生の抑制、癌腫の成長を抑制、または癌の転移を抑制または遅延させる活性を有する。具体的には、本発明の一実施例において、健康な成人男性の糞便からFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1微生物を分離して、大腸癌または肝癌を誘導または移植したマウスにおいて腫瘍の成長を抑制する効果を確認した。前記腫瘍成長抑制活性は、例えば、腫瘍の体積/大きさまたは腫瘍の重量を用いて測定できる。
【0030】
本発明が提供するFaecalibacterium cancerinhibensは、癌細胞株を皮下移植した動物モデルに投与した時、微生物を投与しない対照群に比べて、腫瘍の重量に応じた腫瘍成長抑制率が5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、または30%以上であってもよいし、前記腫瘍の重量に応じた腫瘍成長抑制率は、下記数式1によって計算される。
【数1】
【0031】
前記数式1中、IRは腫瘍の重量に応じた腫瘍の成長抑制率(Tumor growth inhibition rate、IR)、T1は各実験群グループにおける平均腫瘍重量であり、C1は陰性対照群における平均腫瘍重量である。
【0032】
本発明が提供するFaecalibacterium cancerinhibensは、癌細胞株を皮下移植した動物モデルに投与した時、微生物を投与しない対照群に比べて、腫瘍の体積に応じた相対的な腫瘍体積の減少率は5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、または30%以上であってもよいし、前記腫瘍の体積に応じた腫瘍成長抑制率は、下記数式2によって計算される。
【数2】
【0033】
前記数式2中、T2は各実験群グループにおける平均腫瘍体積であり、C2は陰性対照群における平均腫瘍体積である。
【0034】
本発明の一例により、癌細胞株を移植した腫瘍動物モデルにFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1を投与した時、前記微生物を投与しない陰性対照群の腫瘍体積100%を基準として、腫瘍体積が90%以下、85%以下、80%以下、77%以下、70%以下、67%以下であってもよいし、腫瘍体積が下限値10%以上、15%以上、18%以上、および20%以上から選択された数値と、上限値90%以下、85%以下、80%以下、77%以下、70%以下、および67%以下から選択された数値と組み合わせた数値範囲を有するものであってもよい。
【0035】
前記癌が大腸癌の場合、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1微生物は、前記微生物を投与した時、前記微生物を投与しない陰性対照群の腫瘍体積100%を基準として、腫瘍体積が10~90%、10~85%、10~80%、10~77%、10~70%、10~67%、20~90%、20~80%、20~70%、20~67%、30~90%、30~80%、30~70%、30~67%、40~90%、40~80%、40~70%、40~67%、50~90%、50~80%、50~70%、50~67%または60~67%のレベルに減少する活性を有するものであってもよい。
【0036】
具体的には、ヒト大腸癌細胞株を用いたマウス皮下腫瘍モデルに微生物の投与を開始した当日(1日)の平均腫瘍サイズは、微生物を投与しない陰性対照群対比約60~67%の腫瘍体積を有することが確認されたことから、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの大腸癌成長抑制効果を確認した。
【0037】
前記癌が肝癌の場合、本発明が提供するFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1微生物は、前記微生物を投与した時、前記微生物を投与しない対照群の肝癌腫瘍体積100%を基準として、腫瘍体積が90%以下、85%以下、80%以下、77%以下、10~90%、10~85%、10~80%、10~77%、15~90%、15~85%、15~80%、15~77%、18~90%、18~85%、18~80%、または18~77%のレベルに減少する活性を有するものであってもよい。
【0038】
本発明による肝癌の腫瘍体積の減少は、平均的に、対照群に比べて、CLCC1を経口投与した実験群において肝癌腫瘍の体積が19.5%~75.3%、平均32.9%程度低い数値を示した。したがって、経口投与されたCLCC1微生物が肝癌において腫瘍の発生および進行を抑制する活性を有することが分かる。
【0039】
本発明によるFaecalibacterium cancerinhibensは、既存のフィーカリバクテリウム属微生物であるフィーカリバクテリウムプラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)とは異なる脂質生産パターンを示す特性がある。
【0040】
本発明によるFaecalibacterium cancerinhibensは、17:0 iso 3OH脂肪酸を含まない。本発明の一実施例において、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1微生物とFaecalibacterium prausnitzii種の極性脂質含有量を分析した結果、CLCC1は、Faecalibacterium prausnitziiにはないPL3を追加的に有していることを確認した(
図3B)。本発明によるFaecalibacterium cancerinhibensは、15:1 w8c脂肪酸、19:0 cyclo w10c/19w6脂肪酸、20:1 w9c脂肪酸、14:0 3OH/16:1 iso I脂肪酸、15:0 3OH脂肪酸、16:0 iso脂肪酸および16:0 iso 3OH脂肪酸からなる群より選択される1つ以上の脂肪酸を含むものであってもよい。
【0041】
本発明の一実施例において、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1微生物と、Faecalibacterium prausnitzii種の脂肪酸の構成をガスクロマトグラフィー分析を行って比較した結果、2つの微生物間で主要脂肪酸の構成に差があることが分かった。具体的には、15:1 w8c脂肪酸、19:0 cyclo w10c/19w6脂肪酸、20:1 w9c脂肪酸、14:0 3OH/16:1 iso I脂肪酸、15:0 3OH脂肪酸、16:0 iso脂肪酸および16:0 iso 3OH脂肪酸はCLCC1微生物でのみ検出され、17:0 iso 3OH脂肪酸はFaecalibacterium prausnitzii ATCC 27768でのみ検出された。
【0042】
本発明によるFaecalibacterium cancerinhibensは、短鎖脂肪酸(short chain fatty acid;SCFA)のうち酪酸の生産量が高い。具体的には、本発明のFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の酪酸生産量は、Faecalibacterium prausnitzii種に比べて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、または7倍以上であってもよいし、具体的には、2~50倍、2~40倍、2~30倍、2~20倍、2~15倍、2~10倍、5~50倍、5~40倍、5~30倍、5~20倍、5~15倍、5~10倍、6~30倍、6~20倍、6~15倍、6~10倍、7~30倍、7~20倍、7~15倍、または7~10倍であってもよい。具体的な一例において、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株およびFaecalibacterium prausnitzii種の培養上澄液のSCFA分析結果、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株は、Faecalibacterium prausnitzii種に比べて7.8倍高い酪酸含有量を示した(
図3C~3D)。
【0043】
本発明によるFaecalibacterium cancerinhibens菌株は、寒天培地に塗抹して培養する場合、3mm以内または2mm以内のコロニーを形成し、光学顕微鏡で観察した時、長い棒状の細胞形状を有する。本発明の一実施例において、Faecalibacterium cancerinhibensは、2.9Mbpの遺伝体サイズを有し、タンパク質暗号化部位(CDS)の数は2695個であり、GC比率は56.1%、rRNA遺伝子の数は21個、全体tRNA遺伝子の数は69個となった。本発明によるFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1は、Faecalibacterium prausnitziiに比べて7.8倍高い含有量の酪酸(butanoic acid)が検出された(
図3C~3D)。
【0044】
本発明の具体的な一例において、DSSで誘導される大腸炎モデルは、組織学的に腺窩(crypt)形態の変化および喪失、潰瘍、炎症細胞の浸潤などがヒトの潰瘍性大腸炎(UC;Ulcerative colitis)と類似し、大腸炎モデルに多く使用されている。本発明によるフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1を2x107cells/headおよび2x108cells/headの用量で1回/日の頻度で24日間投与して用量に応じた差、2x108cells/headの用量で1回/日の頻度で10日間投与して投与期間に応じた差、死滅菌2x108cells/headの用量で1回/日の頻度で24日間投与して生菌と死菌による大腸炎の改善効果を確認した。
【0045】
その結果、3%DSSで大腸炎を誘発した陰性対照群の体重は急激に減少し、血便を含む軟便および下痢が観察され、大腸の長さは減少し、組織病理学的に腺窩構造が崩れ、粘膜の生成に関与するGoblet細胞が無くなり、全層炎症が発生し、炎症細胞が観察された。また、陰性対照群において炎症性サイトカインであるIFN-γ、TNF-αおよびIL-6の発現は増加する。
【0046】
DSSで誘発されたBALB/c mouse大腸炎の動物モデルにフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1生菌の繰り返し投与は、大腸炎による体重減少を低くし、大腸の長さが減少することを改善させ、大腸粘膜の組織損傷を低減し、炎症性サイトカインIFN-γ、TNF-α、IL-6の発現を抑制することによって、大腸炎の改善に効果がある。具体的には、炎症性サイトカインIFN-γおよびIL-6の発現は、陰性対照群に比べて統計学的に有意に減少し、TNF-αも減少する傾向を示した。菌数および投与期間による大きな変化なくすべての測定項目で類似の結果が導出された。死滅菌2x108cells/head24回投与群の体重減少および大腸の長さは、陰性対照群と類似していた。また、炎症性サイトカインIFN-γおよびIL-6は、陰性対照群に比べて減少した。
【0047】
本発明による炎症性胃腸管、例えば、IBDの予防、改善または治療用組成物は、フィーカリバクテリウム属微生物が菌体自体を含むか、または菌体を含まないcell-free形態であってもよい。前記破砕物は、前記フィーカリバクテリウム属微生物菌体を破砕した破砕物または前記破砕物を遠心分離して得られた上澄液を意味するものである。本明細書において、別途の言及がない限り、フィーカリバクテリウム属微生物は、前記微生物の菌体;前記微生物の培養物;前記微生物の破砕物;および前記微生物、培養物および破砕物からなる群より選択された1種以上の抽出物;からなる群より選択された1種以上を意味するものとして使用される。
【0048】
本発明による組成物は、凍結乾燥した菌体を含むことができる。微生物菌体の凍結乾燥は、通常の技術者が当業界にて公知の方法で行うことができる。代案的に、本発明の組成物は、生きている微生物の培養物を含むことができる。一例において、本発明による微生物は、前記フィーカリバクテリウム属微生物が菌体自体を含む場合、生菌、死菌、またはこれらの混合物であってもよい。
【0049】
本発明によるIBDの予防、改善または治療用組成物は、治療有効量の本発明の微生物を含む。治療有効量の微生物は、患者に有用な効果を発揮するのに十分である。バクテリア性菌株の治療学的有効量は、患者の腸内輸送および/または部分的または全体コロニー化をきたすのに十分であり得る。前記バクテリアまたは抽出物は、例えば、対象の類型、疾病の深刻性および投与の経路に応じて異なる、治療学的有効量で対象に投与されるように剤形化される。例えば、成人ヒトに対するバクテリアの適した1日投与量は、約1x103~約1x1015コロニー形成単位(CFU)であってもよく、例えば、約1x103~約1x1015CFU、約1x103~約1x1014CFU、約1x103~約1x1013CFU、約1x103~約1x1012CFU、約1x103~約1x1011CFU、約1x105~約1x1015CFU、約1x105~約1x1014CFU、約1x105~約1x1013CFU、約1x105~約1x1012CFU、約1x105~約1x1011CFU、約1x107~約1x1015CFU、約1x107~約1x1014CFU、約1x107~約1x1013CFU、約1x107~約1x1012CFU、約1x107~約1x1011CFUであってもよいし、前記バクテリア菌株投与量の単位は、前記炎症性胃腸管、例えば、IBDの予防、改善または治療用組成物の総重量を基準として、/gコロニー形成単位(CFU)、つまり、CFU/gであってもよい。
【0050】
前記バクテリアの投与は、何らかの適切な経路を通して投与される。例えば、本発明の前記特定のフィーカリバクテリウム属微生物は、経口的に消化可能な形態で動物(ヒトを含む)に投与されてもよい。食品組成物またはニュートラシューティカルズの場合に、前記バクテリアは、通常の食品物品または食品補充物に単純に含まれてもよい。代表的な薬剤学的剤形は、カプセル、マイクロカプセル、錠剤、顆粒、粉末、トローチ、丸薬、座薬、懸濁液およびシロップを含む。他の実施形態において、前記組成物は、例えば、直腸の座薬または浣腸のような動物(ヒトを含む)に対する直腸投与のための形態である。適切な剤形は、通常の有機および無機添加剤を用いて通常適用された方法によって製造されてもよい。医学組成物における有効成分の量は、所望の治療学的効果を達成するレベルであってもよい。
【0051】
本発明の組成物は、フィーカリバクテリウム属微生物を腸内に輸送できるようにカプセル化される。カプセル化は、例えば、圧力、酵素活性またはpHの変化によって誘発されうる物理的崩壊のような化学的または物理的刺激による破裂により標的位置に輸送されるまで組成物が分解されないように保護する。任意の適切なカプセル化方法が使用できる。例示的なカプセル化技術は、多孔性マトリックス内の捕捉、固体担体表面上の付着または吸着、凝集または架橋結合剤による自己凝集および微細多孔性膜またはマイクロカプセル後の機械的封鎖を含む。
【0052】
本発明による炎症性疾患、例えば、炎症性胃腸管疾患の予防、改善または治療用薬学組成物は、フィーカリバクテリウム属微生物の菌体;前記微生物の培養物;前記微生物の破砕物;および前記微生物、培養物および破砕物からなる群より選択された1種以上の抽出物;からなる群より選択された1種以上を有効成分として含み、および許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含むことができる。治療的使用のための許容可能な担体または希釈剤は、薬学分野にてよく知られている。
【0053】
本発明の薬学組成物の投与用量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態および疾患程度に応じて異なっていてもよいし、医師または薬剤師の判断により一定時間間隔で1日1回~数回に分割投与してもよい。例えば、有効成分の含有量を基準として1日投与量が0.1~500mg/kg、好ましくは0.5~300mg/kgであってもよい。前記投与量は、平均的な場合を例示したものであって、個人的な差によりその投与量が高かったり低くてもよい。
【0054】
本発明の組成物は、プロバイオティクスであってもよいし、プロバイオティクスは、少なくとも1つの適したプレバイオティクス化合物と配合される。前記プレバイオティクス化合物は、一般に、オリゴ-またはポリサッカライドまたは砂糖アルコールのような非-消化性炭水化物であり、これは上部消化管で分解または吸収されない。公知のプレバイオティクスは、イヌリンおよびトランスガラクト-オリゴサッカライドのような市販中の製品を含む。シンバイオティクス(Synbiotics)は、相乗作用の形態でプロバイオティクスおよびプレバイオティクスを結合した栄養上の補充物(nutritional supplements)を示す。
【0055】
本発明の一例は、抗炎症活性を有するフィーカリバクテリウム属微生物の菌体;前記微生物の培養物;前記微生物の破砕物;および前記微生物、培養物および破砕物からなる群より選択された1種以上の抽出物;からなる群より選択された1種以上を含む炎症性腸疾患の予防または改善のための食品組成物、例えば、炎症性腸疾患の予防または改善用食品組成物または抗癌機能性食品組成物に関する。
【0056】
通常の意味としての食品、食品添加剤、健康機能性食品、飲料および飲料添加剤などをすべて含む意図である。本発明において、飲料とは、渇きを解消したり味を楽しむために飲むものの総称を意味し、機能性飲料を含む意図である。前記飲料は、液状、シロップおよび/またはゲル形態であってもよい。
【0057】
前記食品組成物に含有された有効成分としてのフィーカリバクテリウム属微生物の含有量は、食品の形態、所望する用途などに応じて適切に特別な制限がなく、例えば、全体食品重量の有効成分であるフィーカリバクテリウム属微生物の菌体、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物および前記微生物の抽出物からなる群より選択された1種以上は、0.00001重量%~100重量%、0.001重量%~99.9重量%、0.1重量%~99重量%、さらに好ましくは、1重量%~50重量%、0.01~15重量%加えられる。例えば、食品組成物は、100mlを基準として0.02~10g、好ましくは0.3~1gの比率で加えられる。
【0058】
本発明の組成物は、食品として剤形化されてもよい。例えば、食品は、栄養補充剤のように、本発明の治療効果以外に栄養的な利益を提供することができる。
【0059】
本願において、用語、「危険度の予測」または「発病可能性の予測」とは、対象が特定疾患が発病する可能性があるかを判別することをいい、特定疾病の発病危険性の高い患者を特別かつ適切な管理により発病時期を遅らせたり発病しないようにしたり、最も適切な治療方式を選択することによって治療決定をするために臨床的に使用できる。また、「診断」とは、病理状態の存在または特徴を確認することを意味し、本発明の目的上、診断は、疾病の発病の有無を確認することを意味することができる。
【0060】
前記「対象」は、炎症性腸疾患の発病危険度の予測または癌診断、フィーカリバクテリウム属微生物の治療反応性を予測または評価、前記微生物の投与可能性がある対象、または前記微生物の投与を受けて微生物効能のモニタリングが必要な対象であってもよいし、例えば、炎症性腸疾患の発病危険が疑われる対象、炎症性腸疾患の診断を受けた対象、または抗炎症性腸疾患治療を受ける対象であってもよい。前記対象は、好ましくは、ヒトである。
【0061】
本明細書において、対象の生物学的試料は、炎症性腸疾患を有したりまたは炎症性腸疾患を有するものと疑われる哺乳類から分離された試料のような、被検者から分離された細胞抽出物、何らかの器官、組織、細胞、唾液、または大便などが含まれてもよい。例えば、前記試料は、非制限的に、胃腸管のある部分(非限定的に、結腸、胃、大便、肛門、直腸、十二指腸を含む)からの細胞または組織(例えば、生体検査または剖検(autopsy)からの)、患者(ヒトまたは動物)、実験対象や実験的動物から得た胃腸の細胞溶解物(lysate)、または被検者の排出物を含むことができる。好ましくは、試料は、大便であってもよい。
【0062】
本発明の一例において、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス微生物の検出は、試料中の微生物の存否の確認、微生物の同定、微生物のレベル測定、および相対的占有率の分析を含む。具体的には、試験対象の試料からフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス微生物を検出したり微生物のレベルを測定することは、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス微生物に特異的なバイオマーカとして、核酸配列、アミノ酸配列、代謝産物、または微生物自体を用いて行ったり、試料中に存在する微生物群集の全体遺伝体、または少なくとも1つ以上の特定遺伝子の塩基配列情報を取得して微生物レベルを評価することを含むことができる。
【0063】
具体的には、PacBioシーケンシングライブラリーキットを用いてシーケンシングライブラリーの作製後、PacBio RS IIプラットフォームを用いて全体遺伝体シーケンシングを行い、自社の遺伝体データ分析プラットフォームであるBIOiPLUGのWhole Genome分析パイプラインを用いて遺伝体シーケンシング情報を分析することができ、その結果、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の全体遺伝体サイズは約2.9Mbpであり、タンパク質暗号化部位(CDS)の数は2695個であり、CDS部位またはIntron部位などフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスに特異的な部位を選択してバイオマーカとして活用することができる。
【0064】
例えば、前記微生物の検出は、試験対象の腸内微生物群集に関する属(genus)または種(species)レベルで区別される微生物とこれらの微生物においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの相対的な占有比率(relative abundance)を求めて、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのレベルを測定して行われる。
【0065】
前記微生物のレベル測定は、対象の試料、例えば、腸パイオプシスまたは大便試料からフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス菌株の比率を測定するものであってもよい。前記菌株の比率測定方法は、通常の技術者が当業界の技術常識により適切に選択して使用可能であり、例えば、定量的重合酵素連鎖反応(qPCR)、大容量塩基配列分析法(massively parallel sequencing)、蛍光インサイチュー混成化(FISH)、マイクロアレイおよびPCR-ELISAからなる群より選択される分子的方法を用いて行われるが、これに制限されない。
【0066】
例えば、前記試験対象の試料中のフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの微生物レベルを測定し、参照対象の微生物レベルと比較して、前記試験対象の微生物レベルが参照対象の微生物レベルに比べて低い場合、前記試験対象が腸疾患の発病の危険性を有すると決定するものであってもよい。
【0067】
前記方法は、前記試験対象の試料中のフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの微生物レベルを測定し、参照対象の微生物レベルと比較して、前記試験対象の微生物レベルが参照対象の微生物レベルに比べて低い場合、前記試験対象が腸疾患の発病の危険性を有すると決定する段階を追加的に含むことができる。
【0068】
本発明による人体由来試料を用いたメタゲノム分析により癌発病の危険度を予め予測することによって、癌の危険群を早期に診断および予測して適切な管理により発病時期を遅らせたり発病を予防することができ、発病後にも早期診断が可能で癌の発病率を低くし、治療効果を高めることができる。また、癌と診断された患者におけるメタゲノム分析により原因因子の露出を避けることによって、癌の経過を良くしたり、再発を防ぐことができる。
【0069】
試験対象の試料からフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスを検出したり微生物のレベルを測定する方法を、以下にさらに詳しく説明する。
【0070】
本発明の一例として、特定遺伝子、例えば、16S rRNA遺伝子配列を利用して前記微生物の検出またはレベルを測定する方法を提供することができる。
【0071】
具体的には、前記微生物のレベルは、好ましくは、前記試料における特定核酸配列のレベルを決定することによって測定可能であり、前記核酸配列は、好ましくは、前記1つ以上のバクテリアの16S rRNA遺伝子配列、さらに好ましくは、前記16S rRNA遺伝子配列の領域、例えば、前記16S rRNA遺伝子配列の可変領域V1および/またはV6のうちの1つ以上であってもよい。
【0072】
このため、前記微生物の検出は、試験対象の腸内微生物群集に関する種(species)レベルで区別される菌種とこれらの菌種においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの占有比率を得て、相対的なフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのレベルを測定して行われるものであってもよい。前記腸内微生物の遺伝体情報から16S rRNA遺伝情報を得る段階;および前記腸内微生物の16S rRNA情報を分析して試験対象の腸内微生物群集に含まれている菌種の占有比率を得る段階を含むものであってもよい。
【0073】
試験対象の遺伝体情報は、格納媒体に格納された遺伝情報であるか、試験対象の試料から分離された微生物の遺伝体情報であってもよい。前記16S rRNA遺伝情報を得る段階は、次世代遺伝体塩基配列分析(NGS)プラットフォームを用いて、前記抽出されたDNAの16S rRNA遺伝子配列を分析する段階であってもよい。
【0074】
前記抽出されたDNAの16S rRNA遺伝子配列を分析する段階は、16S rRNAの可変領域(variable region)を特異的に増幅できるプライマーセットを用いてPCRを行う段階、好ましくは、16S rRNAのV3~V4領域を特異的に増幅できるプライマーセットを用いてPCRを行う段階、さらに好ましくは、下記の配列を有するuniversal primerを用いてPCRを行ってアンプリコンを生成する段階を含むことができる。
【0075】
前記腸内微生物の16S rRNA情報を分析して試験対象の腸内微生物群集に関する種(species)レベルで区別される菌種とこれらの菌種の占有比率を得る腸内微生物群集情報を分析することができる。
前記微生物群集を分析する段階は、16S rRNAデータベースを用いて微生物を属または種レベルで同定および分類する段階、および/または各微生物群集規模(population)を分析する段階を含むものであってもよい。前記微生物の同定および分類に用いられるデータベースは、必要に応じて当業者が適切に選択して使用可能であり、例えば、EzBioCloud、SILVA、RDPおよびGreengeneからなる群より選択される1つ以上のデータベースであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0076】
前記微生物群集規模は、全体腸内微生物菌叢において特定微生物群集が占める比率(%)で表される。前記微生物群集の占める比率(%)は、全体シーケンシングリード数のうち特定微生物の16S rRNAリード数の頻度(frequency)の百分率で表される。前記特定微生物は、本発明が提供するフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス(Faecalibacterium cancerinhibens)である。
【0077】
微生物群集分析をしてどのような微生物が存在するかを知ろうとする場合、種同定のための標識遺伝子(marker gene)だけを選択的に増幅した後、その増幅産物の塩基配列を分析するアンプリコンシーケンシング(amplicon sequencing)方法を用いることによって、分析に必要な費用と時間を低減することができる。細菌群集分析をするためには、16S rRNA遺伝子を標識遺伝子として使用するが、この遺伝子はすべての細菌に存在し、保存領域と変異領域(v1-v9)を適切に含んでいて、系統分析と生態研究に適合する。
【0078】
本発明のさらなる一例として、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスに特異的なバイオマーカーを用いて前記微生物の検出またはレベルを測定する方法を提供する。
【0079】
本発明において、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス微生物に特異的なバイオマーカーとして、核酸配列、アミノ酸配列、および代謝産物を含むことができる。このため、本発明のバイオマーカーを検出できる製剤は、試料中の当該微生物に特異的に存在するタンパク質、核酸、脂質、糖脂質、糖タンパク質または糖(単糖類、二糖類、オリゴ糖類など)などのような有機生体分子を特異的に検出できるプライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、および抗体などを使用することができる。
一例として、本発明において、前記微生物を検出できる製剤は、当該微生物を検出できるプローブ、または前記プローブを増幅するためのプライマーであってもよい。前記プライマーは、当該微生物の特定プローブ遺伝子を特異的に検出し、他の微生物の遺伝体配列には特異的な結合をしないことが好ましい。
【0080】
本発明の具体的な一例は、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスを他の微生物種または亜種と区別して特異的に検出することができ、試料中に少量存在するフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスを敏感に検出できるフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス検出用プローブ、プライマーセット、キット、組成物、および検出方法に関する。前記フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス検出用プローブの一例は、Site-specific DNA-methyltransferase(dam)であってもよいが、これに限定されるものではない。また、前記プローブは、検出標識と連結可能である。前記検出標識は、本技術分野にて知られたいかなる方法によって検出できるいかなる化学的モイエティであってもよい。本発明のプライマーはまた、検出可能なシグナルを直接的または間接的に提供できる標識を用いて変形させることができる。標識の例としては、放射性同位元素、蛍光性分子、ビオチンなどがある。プライマーを用いた配列増幅方法は、当業界にて知られた多様な方法を使用することができる。
本発明の一例において、前記分析する段階は、ゲル電気泳動、毛細管電気泳動、塩基配列分析、DNAチップ、放射性測定、蛍光測定、および燐光測定からなる群より選択された1種以上の方法を行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0081】
本発明は、フィーカリバクテリウム属微生物を含む炎症性疾患、例えば、炎症性胃腸管疾患の診断または治療用組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1A】
図1Aは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1をReinforced clostridial media(RCM)培地に3日間培養した後に形成されたコロニー形態を示す写真と、液体培養時に対数期状態(exponenetial growth phase)で細胞の外形を光学顕微鏡で観察した写真である。
【
図1B】
図1Bは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1の液体培養時に対数期状態(exponenetial growth phase)で細胞を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
【
図2A】
図2Aは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1の16S rRNA分析により得られた系統分類学的位置を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1の遺伝体に存在する92個の核心遺伝子を用いて系統分類学的位置を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、平均ヌクレオチド一致度(ANI)値に基づいたFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株および近縁種の類縁関係図である。
【
図2D】
図2Dは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1および近縁種のANI値を比較した表である。
【
図3A】
図3Aは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の脂肪酸の構成を示すガスクロマトグラフィー分析の結果グラフである。
【
図3B】
図3Bは、Faecalibacterium prausnitzii菌株の脂肪酸の構成を示すガスクロマトグラフィー分析の結果グラフである。
【
図3C】
図3Cは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の極性脂質の比較のために行った2次元クロマトグラフィー分析の結果を示す写真である。
【
図3D】
図3Dは、Faecalibacterium prausnitzii菌株の極性脂質の比較のために行った2次元クロマトグラフィー分析の結果を示す写真である。
【
図3E】
図3Eは、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1の短鎖脂肪酸分析を行ったGC-MS分析グラフである。
【
図3F】
図3Fは、Faecalibacterium prausnitziiの短鎖脂肪酸分析を行ったGC-MS分析グラフである。
【
図4A-4C】
図4A~4Cは、実施例3-1により肝癌を誘導したマウスにおいてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1の癌発生抑制効果を測定するために肝癌誘導後、時間に応じた腫瘍の体積変化を示すグラフである。
図4Aは、各個体を点で示した点グラフ、
図4Bは、実験群と対照群の平均値を比較したグラフ、
図4Cは、各個体別腫瘍の体積変化をそれぞれ示した折れ線グラフである。
【
図5A-5C】
図5A~
図5Cは、実施例3-2により肝移植モデルにおけるFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の癌発生抑制効果試験の結果および各結果の点グラフと折れ線グラフである。
図5Aは、腫瘍の大きさを直接比較した結果、
図5Bは、腫瘍の大きさ変化を倍数(fold)で表現した結果、
図5Cは、デルタ値を意味する。
【
図6A-6C】
図6Aは、実施例4-1によりヒト大腸癌細胞株を皮下移植したマウスにおいてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の投与量に応じた腫瘍の体積変化を示し、
図6Bは、腫瘍の重量変化を示し、
図6Cは、腫瘍の大きさ変化を肉眼観察した結果である。
【
図6D】
図6Dは、実施例4-1によりヒト大腸癌細胞株を皮下移植したマウスにおいてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の投与期間終了後、陰性対照群(G1)および各実験群(G2~G4)における腫瘍組織を分離して肉眼観察した結果である。
【
図6E】
図6Eは、ヒト大腸癌細胞株を皮下移植したマウスの腫瘍組織においてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の投与による細胞壊死を確認するためにH&E染色を行った結果である。
【
図6F】
図6Fは、ヒト大腸癌細胞株を皮下移植したマウスの腫瘍組織においてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の投与による細胞自滅死(apoptosis)を確認するためにTUNEL染色を行った結果である。
【
図7】
図7は、マウス大腸癌細胞株を皮下移植したマウスの腫瘍組織においてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の投与による腫瘍の大きさ変化を観察した結果である。
【
図8】
図8は、実施例5
及び6によりAcute DSS-colitisを有する動物モデルを用いた大腸炎の予防および治療効果実験において動物モデルの体重変化を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例5
及び6によりAcute DSS-colitisを有する動物モデルを用いた大腸炎の予防および治療効果実験においてDAI(disease activity index)を測定した結果を示す。
【
図10】
図10は、実施例5
及び6によりAcute DSS-colitisを有する動物モデルを用いた大腸炎の予防および治療効果実験を終了した後に摘出した大腸の長さを示す。
【
図11A-11C】
図11A~
図11Cは、実施例5
及び6によりAcute DSS-colitisを有する動物モデルを用いた大腸炎の予防および治療効果実験においてサイトカインの発現レベルを測定した結果である。
【
図12】
図12は、実施例5
及び6によりAcute DSS-colitisを有する動物モデルを用いた大腸炎の予防および治療効果実験を終了した後に摘出した大腸組織に対する病理学的検査結果を示す写真である。
【
図13】
図13は、実施例7によりELISAで分析したHT-29細胞においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのヒトIL-8に対する効果を示す。
【
図14】
図14は、実施例7によりELISAで分析したRAW 264.7細胞においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのマウスIL-6に対する効果を示す。
【
図15】
図15は、実施例7によりELISAで分析したRAW 264.7細胞においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのマウスTNF-αに対する効果を示す。
【
図16】
図16は、実施例8により分析したHPBMCにおけるフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのヒトIL-10に対する効果を示す。
【
図17】
図17は、実施例8により分析したHPBMCにおけるフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスのヒトIL-6に対する効果を示す。
【
図18】
図18は、本発明の一例により正常対照群、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病患者の腸内微生物試料においてフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの相対的な豊富度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明は、下記の例示的な実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例に限定される意図ではない。
【0084】
実施例1.微生物の分離および同定
1-1:微生物分離
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株は、健康な20代成人男性の糞便をReinforced clostridial media(RCM)培地に稀釈塗抹した後、37℃の常温嫌気培養条件で培養して分離した。
具体的には、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1は、RCM寒天培地で3日間培養すれば、最大2~3mmのコロニーを形成し、光学顕微鏡で観察した時、長い棒状の細胞形状を示す特性がある。
図1Aは、前記コロニー形態および光学顕微鏡を用いた細胞の形態の観察結果を示し、
図1Bは、走査電子顕微鏡を用いて細胞の形態を撮影した写真を示した。
【0085】
1-2:16S rRNA分析を用いた系統分類学的分析
実施例1の方法で分離されたFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株をRCM液体培地で37℃の常温嫌気培養条件で1日間培養後、遠心分離して微生物を得た。FastDNA SPIN Kit for Soil(MP Biomedicals)を用いて得られた微生物から全体遺伝体を分離した。
【0086】
PacBioシーケンシングライブラリーキットを用いてシーケンシングライブラリーの作製後、PacBio RS IIプラットフォームを用いて全体遺伝体シーケンシングを行い、自社の遺伝体データ分析プラットフォームであるBIOiPLUGのWhole Genome分析パイプラインを用いて遺伝体シーケンシング情報を分析した。
【0087】
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の遺伝体特性を示した。Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の全体遺伝体サイズは約2.9Mbpであり、タンパク質暗号化部位(CDS)の数は2695個であり、GC比率(GC ratio、%)は56.1%となった。全体rRNA遺伝子は21個、全体tRNA遺伝子は69個となった。
【0088】
前記方法で配列分析されたFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株のrRNAを分析して系統分類学的分析を行った。Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の16S rRNA配列は配列番号1に表した。
【0089】
具体的には、EzBioCloudデータベースの16S-based identification for prokaryoteパイプラインを用いて16S rRNAの類似性分析を行い、MEGAプログラムを用いて系統分類学的分析を行った。
図2Aに16S rRNA遺伝子ヌクレオチド配列を分析して同定したFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の系統分類学的位置を表示した。
【0090】
1-3:核心遺伝子を用いた系統分類学分析
実施例1-2の方法で得られた遺伝体配列データを用いて遺伝子配列間の分析による系統分類学分析を行った。具体的には、バクテリアのtaxonomic markerとして使用できる92個の遺伝子(up-to-date bacterial core gene(UBCG))の類似性を用いて系統分類学分析を行った。前記92個の遺伝子はUBCG(up-to-date bacterial core gene)パイプラインで提供する遺伝子を意味する(Na,S.I.,Kim,Y.O.,Yoon,S.H.,Ha,S.M.,Baek,I.&Chun,J.(2018))。
図2Bに92個の核心遺伝子を分析して得た近縁種との系統分類学的位置を示す図を示した。
【0091】
1-4:平均ヌクレオチド一致度(Average Nucleotide Identity、ANI)を用いた類縁関係の分析
実施例1-2の方法で得た遺伝体分析データを用いて、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株と近縁種との間のANI値を比較して類縁関係を分析した。
【0092】
具体的には、(株)Chun Labで提供する分析プラットフォームであるGenome-based identification for prokaryote(TrueBAC ID)パイプラインを用いてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株と他の近縁種との間の全体遺伝体配列を比較して遺伝体の類似度値を分析した。
【0093】
図2CにANI値に基づいたFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株および近縁種の類縁関係図を示した。
図2DにFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株および近縁種のANI値の比較表を示した。各行と列は、1はFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1、2はFaecalibacterium prausnitzii ATCC 27768(T)、3はFournierella massiliensis AT2(T)、4はIntestinimonas butyriciproducens DSM 26588(T)、5はIntestinimonas massiliensis GD2(T)、6はPseudoflavonifractor capillosus ATCC 29799(T)、7はRuthenibacterium lactatiformans 585-1(T)、8はSubdoligranulum variabile DSM 15176(T)、9はGemmiger formicilis ATCC 27749(T)を意味する。各種名の後の(T)はtype strainを意味する。
【0094】
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の遺伝体解読および近縁種との比較結果、CLCC1菌株は全体遺伝体レベルにおいて最も近い近縁種のFaecalibacterium prausnitzilと遺伝体レベルにおいて85.99%の平均ヌクレオチド一致度(average nucleotide identity、ANI)値を示して、かつて分離および報告されていない新規な種(species)であることが分かる。上記の方法で同定されたFaecalibacterium属菌株をFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1と名付けた。
【0095】
実施例2.微生物の理化学的特性分析
2-1:脂肪酸の含有量分析
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の分子生物学的特性を分析するために、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株とFaecalibacterium prausnitziiの脂肪酸(fatty acid)の構成を比較した。
【0096】
具体的には、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株とFaecalibacterium prausnitzii菌株をそれぞれRCM培地で37℃の温度および嫌気条件で培養後、約40mgの菌体を用いてMillerの方法(Miller,L.T.(1982)J.Clin.Microbiol.18,861-867)により脂肪酸を得た。
【0097】
前記抽出された脂肪酸の分析にはAgilent technologies 6890 Gas chromatographyが用いられ、separation columnはA30mX0.320mmX0.25μm Crosslinked Methyl siloxane column(HP-1)を使用した。
図3AにFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株とFaecalibacterium prausnitzii菌株(ATCC 27768)の脂肪酸の構成を比較したガスクロマトグラフィー分析の結果グラフを示した。
図3Aのグラフにて各ピーク(peak)が意味する脂肪酸の名前とその数値(%、w/v)を下記表1に示した。
【0098】
【0099】
前記表1に示したように、15:1 ω8c脂肪酸、19:0 cyclo ω10c/19ω6脂肪酸、20:1 ω9c脂肪酸、14:0 3OH/16:1 iso I脂肪酸、15:0 3OH脂肪酸、16:0 iso脂肪酸および16:0 iso 3OH脂肪酸はCLCC1菌株でのみ検出され、17:0 iso 3OH脂肪酸はFaecalibacterium prausnitzii ATCC 27768菌株でのみ検出された。
【0100】
前記分子生物学的特徴の比較分析結果、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株はFaecalibacterium cancerinhibensに含まれると知られた種であるFaecalibacterium prausnitziiとは異なる種であることを確認できた。2つの微生物の脂肪酸(fatty acid)の構成を比較した時、2つの微生物間で主要脂肪酸の構成に差があることが分かり、当該結果は
図3Aと表
1に示した。
【0101】
2-2:極性脂質(Polar lipid)分析
極性脂質(polar lipid)の構成を比較するために、薄層クロマトグラフィー(Thin layer chromatography、TLC)分析を行った。
具体的には、50mgの微生物凍結乾燥試料からMinikinの方法(Minikin,D.E.,et al.(1984).J Microbial Meth2,233-241.)を用いて極性脂質を抽出した。そして、クロロホルム、メタノールおよび水65:25:3.8(v/v)の比率である溶媒(chloroform:methanol:water=65:25:3.8(v/v))で一次展開を行った。以後、クロロホルム、メタノール、酢酸および水の比率40:7.5:6:1.8(v/v)である溶媒(chloroform:methanol:acetic acid:water=40:7.5:6:1.8(v/v))下で二次展開を行った。二次展開後、5%(w/v)エタノーリックモリブデンリン酸(ethanolic molybdatophosphoric acid)を用いて染色した。
【0102】
また、極性脂質(Polar lipid)の組成を比較した時、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1とFaecalibacterium prausnitziiは、1個のホスファチジルグリセロール(phosphatidylglycerol、PG)、2個の未確認のリン脂質(unidentified phospholipids:PL1、PL2)、そして多数の未確認の脂質(unidentified lipid、L)を有していることを確認した。また、CLCC1はFaecalibacterium prausnitziiにはないunidentified phospholipids(PL3)を追加的に有していることを確認し、当該結果は
図3Bに示した。前記結果から確認できるように、本発明によるFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1とFaecalibacterium prausnitziiの極性脂質生産パターンが異なることが分かる。
【0103】
2-3:短鎖脂肪酸(short chain fatty acid;SCFA)分析
Faecalibacterium prausnitziiとFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1微生物の短鎖脂肪酸生産パターンの差異点を調べるために、韓国医科学研究院に分析依頼をして短鎖脂肪酸の分布分析を行った。
【0104】
具体的には、Faecalibacterium prausnitziiと、本発明のFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株をRCM培地で16時間培養後、遠心分離(4℃、4,000rpm、10min)により細胞を沈殿させて上澄液を収集した。前記収集された上澄液は0.22umのフィルタを用いてフィルタリング後、冷蔵保管した。前記上澄液からSCFA分析のためのGC-MS用試料はTakeshi Furuhashiの方法(Takeshi Furuhashi,et al.,Analytical Biochemistry,Volume543,2018,Pages51-54)を用いて用意し、GC-MSを用いた短鎖脂肪酸の分析にはAgilent社の6890シリーズ装置を用いた。
【0105】
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1と、Faecalibacterium属の知られた他の種であるFaecalibacterium prausnitziiの培養上澄液に存在する短鎖脂肪酸(Short chain fatty acid、SCFA)を比較分析した結果、2つの試料とも、SCFAは酪酸(butanoic acid)のみ検出された。また、Faecalibacterium prausnitzii試料に比べてFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1試料から7.8倍高い含有量の酪酸(butanoic acid)が検出された。
図3C~3DにGC-MS分析の結果グラフを示した。
【0106】
また、各試料中の酪酸の比率でみた時、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1培養上澄液では91.64%が酪酸となり、Faecalibacterium prausnitziiの培養上澄液では76.40%が酪酸であった。表2にFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の短鎖脂肪酸分析の結果を、表3にFaecalibacterium prausnitziiの短鎖脂肪酸分析の結果を示した。下記表2~表3に記されたその他の物質は物質ライブラリーデータベース上で探知されたものの、マッチング率(quality)が非常に低くて正確に物質を特定できないノイズシグナルとして分類された。
【0107】
下記表2および表3にて、RTは滞留時間(retention time)を意味する。
【表2】
【表3】
【0108】
本発明のFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株は、Faecalibacterium prausnitziiに比べて短鎖脂肪酸中の酪酸の生産量が高くて、優れた抗癌活性を示すことを予測できる。
【0109】
実施例3.肝癌に対する効能評価
3-1:皮下腫瘍モデルにおける癌発生抑制効能試験
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の癌発生抑制能を確認するために、マウス肝癌細胞株を用いた皮下腫瘍モデルにおける癌発生抑制効能試験を行った。6週齢雄C57BL/6マウス10個体で肝癌細胞株(Hep55.1c)の皮下腫瘍移植実験により肝癌を発生させ、55日間の肝癌発生過程でFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の経口投与が肝癌細胞の成長に及ぼす影響を調べた。前記肝癌細胞株Hep55.1cはマウス由来肝細胞癌(hepatoma)である。
【0110】
具体的には、マウス肝癌細胞株をマウス皮下組織に移植する4日前からFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1を経口投与した。経口投与4日目にマウス肝癌細胞株(Hep55.1c)を2.0x106cellsとなるようにして右脇腹皮下組織に移植した。
【0111】
前記マウス肝癌細胞株を用いた皮下腫瘍モデルに対して、55日間1日1回、週5回Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株を経口投与した。以後、移植当日(0日)から55日になるまで7日間隔でMagnetic Resonance(MR)撮影を用いて肝癌腫瘍の大きさ(tumor volume)を測定した。
【0112】
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株はRCM培地で培養後、濃縮してPBSバッファーとグリセロールを用いて最終グリセロール濃度15%(v/v)となるようにして冷凍保管した。そして、マウスに投与直前に解凍後、1匹あたり200ul(2x108cells)となるように経口投与した。対照群としてはCLCC1菌株を投与しないマウス10個体を用いた。対照群は菌株が含まれていないPBSおよびグリセロール(15%、v/v)溶液を200ulずつ経口投与した。
【0113】
下記表4および表5に皮下腫瘍モデルにおける分離菌株の肝癌発生抑制効能試験で対照群と試験菌の腫瘍サイズの結果を示す。表
4には対照群に関する腫瘍の体積(volume)変化の結果であり、表
5は、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株を投与した実験群の腫瘍の大きさ(volume)変化の結果である。表にてS.Dは標準偏差を意味する。
【表4】
【表5】
【0114】
図4は、マウスに癌を誘導した後、時間の変化に応じた腫瘍の体積(tumor volume)を測定してグラフに示し、前記表
4~表
5に腫瘍の大きさ変化を数値で表した。
実験結果、CLCC1を経口投与した実験群で対照群に比べて統計的に有意に肝癌の発生および進行が抑制されることが確認された。平均的に、対照群に比べてCLCC1を経口投与した実験群で腫瘍の体積が19.5%から75.3%程度、平均32.9%低い数値を示して、Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株が投与された実験群における肝癌の発生が遅れ、腫瘍の成長進行速度が阻害されることが確認された。手術後初の腫瘍サイズ測定日の4日で、Faecalibacterium canceerinhibens CLCC1菌株を投与した実験群で腫瘍の大きさが対照群に比べて明確に小さくて、癌発生抑制効果があることを確認できる。したがって、経口投与されたCLCC1菌株が肝癌の発生および進行を抑制する活性を有することが分かる。
【0115】
3-2:肝移植動物モデルにおける癌発生抑制効能試験
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株が肝癌細胞の成長に及ぼす影響を調べるために、8週齢雄C57BL/6マウス4個体で肝癌細胞株の肝移植実験により肝癌を発生させ、39日間の肝癌発生過程でFaecalibacterium cancerinhibens細菌CLCC1の経口投与が肝癌細胞の成長に及ぼす影響を調べた。
【0116】
具体的には、肝癌細胞株はHep55.1cを用い、8週齢の雄C57BL/6マウスの上腹部を開腹して、肝の左葉に5.0x105cellsとなるように肝癌細胞株を移植した。肝に腫瘍細胞株を移植後、4日間の回復期間を経た後、MRI撮影により腫瘍の大きさを確認し、腫瘍がよく形成された4匹を選別して後の実験に用いた。
【0117】
移植手術当日(0日)から39日間CLCC1菌株を実施例4と同様の方法で用意して、移植手術を完了したマウス4匹に経口投与し、対照群の4匹にはCLCC1菌株を投与しなかった。対照群は菌株が含まれていないPBSおよびグリセロール(15%、v/v)溶液を200ulずつ経口投与した。以後、周期的に腫瘍の大きさと相対的な大きさおよび成長の相対数値を測定した。
【0118】
腫瘍の大きさは7日間隔で磁気共鳴(Magnetic Resonance、MR)撮影により測定され、腫瘍サイズの相対数値は移植当日の腫瘍サイズに対する相対的な大きさを計算して導出した。
図5A~
図5Cに肝移植モデルにおけるCLCC1菌株の癌発生抑制効果試験の結果とグラフを示した。
【0119】
図5Aは、腫瘍の大きさを直接比較した点グラフおよび折れ線グラフ、
図5Bは、腫瘍の大きさ変化を倍数(fold)で表現した点および折れ線グラフ、
図5Cは、腫瘍の大きさ変化量(測定日の腫瘍サイズと前の測定日の腫瘍サイズとの差)値を示した点および折れ線グラフである。
【0120】
その結果、CLCC1を経口投与した実験群で分離株を投与しない対照群に比べて統計的に有意に肝癌の発生と進行が抑制されることを確認した。肝癌の発生抑制に対する結果および腫瘍の大きさ変化データは、
図5A~5Cに示した。
表6に腫瘍サイズの相対数値表(Relative growth;Fold)および表7には腫瘍成長の相対数値表(Relative growth;Delta)を示す。
【表6】
【表7】
【0121】
表6および表7と
図5A~5Bから確認できるように、CLCC1菌株を経口投与したマウスの腫瘍成長が対照群に比べて際立って抑制されることを確認できた。したがって、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1菌株が腫瘍の成長抑制能に優れていることを確認できる。
【0122】
実施例4.大腸癌に対する効能評価
4-1.皮下腫瘍モデルにおける抗癌効果の確認
Faecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の癌発生抑制能を確認するために、ヒト大腸癌細胞株を用いた皮下腫瘍モデルにおける癌発生抑制効能試験を行った。前記大腸癌細胞株はHCT-116細胞を用い、マウスはヌードマウス(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlOri、SPF)を用いた。前記HCT-116はヒト由来結直腸癌(colorectal carcinoma)に相当する癌細胞株である。
【0123】
具体的には、1週間の順化期間を経たマウスに大腸癌細胞株HCT-116(2.5x10
7cells/mL)を使い捨て注射器を用いてマウスの右背皮下に0.2mL/headずつ投与して移植した。癌細胞移植後、癌細胞の大きさが約85~119mm
3まで成長した時、CLCC1を投与しない陰性対照群とCLCC1を濃度別に投与する実験群の3グループに相当するマウスを1群あたり10匹ずつ分類した。具体的には、実験群はCLCC1の濃度に応じて低、中、高の3グループに分け、低濃度は2x10
6cells/head、中農度は2x10
7cells/head、高濃度は2x10
8cells/headの濃度でF.cancerinhibens CLCC1菌株を投与した。菌株の投与は36日間毎日1回注射器で経口投与した。陰性対照群は賦形剤(グリセロールが15%(v/v)含まれているPBS溶液)だけを投与した。下記表8に陰性対照群と各実験群の情報を示した。
【表8】
【0124】
(1)腫瘍の大きさ変化および成長抑制率
F.cancerinhibens CLCC1菌株の抗大腸癌効果を確認するために、腫瘍の大きさ変化を確認した。具体的には、前記菌株投与試験開始後、毎日1回ずつ外観、行動、排泄物などの一般症状を観察し、週1回体重を測定し、週2回腫瘍の大きさを測定し、体積を計算した。
図6Cおよび6Dに腫瘍の大きさを肉眼観察した結果を示した。
【0125】
前記腫瘍の体積(Tv)は腫瘍の短軸(perpendicular width、W)と長軸(maximum length、L)をそれぞれ測定して、下記数式3の方法で計算された。
【数3】
【0126】
36日かけて腫瘍の体積変化を確認した結果を下記表9および
図6Aに示した。陰性対照群(G1)に比べて、CLCC1菌株を投与した実験群ですべて統計的に有意に腫瘍の大きさが減少したことを確認した。下記表9にて、Meanは平均体積を、S.D.は標準偏差(standard deviataion)を意味する。
【表9】
* p<0.05, Dunnett's t-testによる陰性対照群(G1)との有意差。
** p<0.01, Dunnett's t-testによる陰性対照群(G1)との有意差。
【0127】
具体的には、微生物の投与を開始した当日(1日)の平均腫瘍サイズは4グループでいずれも105mm3と同一であったが、36日経過後には、陰性対照群で平均腫瘍体積が4330mm3となったのに対し、CLCC1菌株が投与された実験群ではいずれも3000mm3以下の体積を示して、対照群対比約60~67%の腫瘍体積を有することが確認されたことから、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス微生物の大腸癌成長抑制効果を確認した。
【0128】
また、腫瘍の重量測定結果に基づいて各実験群における腫瘍成長抑制率(Tumor growth inhibition rate、IR)を下記数式1の方法で計算した。
【数1】
【0129】
前記数式1中、Tは各実験群グループにおける平均腫瘍重量であり、Cは陰性対照群における平均腫瘍重量である。
【0130】
下記表10および
図6Bに菌株投与実験の終了後、各グループにおける腫瘍重量の測定結果を示し、下記表11に実験の進行による各グループマウスの平均体重の測定結果を示した。
【表10】
** p<0.01, Dunnett's t-testによる陰性対照群(G1)との有意差
【表11】
【0131】
陰性対照群(G1)では剖検後に摘出された腫瘍重量が約3.21gとなったが、実験群では低、中、高濃度でそれぞれ1.94、2.17および1.95gとなり、腫瘍の重量が統計的に有意に減少したのに対し、各グループにおける全体体重は対照群と実験群との間で大差を示さなかった。
【0132】
低濃度の実験群では腫瘍成長抑制率が39.6%、中濃度の実験群では腫瘍成長抑制率が32.4%、高濃度の実験群では腫瘍成長抑制率が39.3%となり、すべての実験群で腫瘍の成長が30%以上抑制されたことを確認した。
【0133】
(2)腫瘍細胞の壊死(Necrosis)および細胞自滅死(Apoptosis)
36日間のCLCC1菌株の投与終了後に剖検して、腫瘍組織中の腫瘍細胞の壊死(necrosis)をみるためのH&E染色(Hematoxylin&Eosin staining)と、細胞自滅死(apotosis)をみるためのTUNEL assayを行った。
【0134】
図6Eに腫瘍細胞の壊死分析のためのH&E染色結果の写真を示した。陰性対照群と試験群との間の腫瘍細胞の壊死レベルには大差が見つからなかった。したがって、本願のフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス細胞株は、腫瘍の壊死による炎症反応を誘発しないことが分かる。
【0135】
図6Fに腫瘍細胞の自滅死分析のためのTUNEL染色分析結果の写真を示した。陰性対照群に比べてフィーカリバクテリウム投与実験群で腫瘍細胞の自滅死が統計的に有意に増加したことが確認された。したがって、各フィーカリバクテリウム投与群における腫瘍体積の減少が腫瘍の壊死によるものではない、腫瘍の細胞自滅死によるものであって、炎症反応を誘発しないことを確認した。
【0136】
下記表12に腫瘍細胞の壊死と自滅死を比較した結果を示した。下記表にて、細胞死滅の程度に応じて、±は最小(minimal)、+は弱い(mild)、++は普通(moderate)、+++は顕著(marked)、++++は激しい(severe)を示す。各記号の下に当該段階に相当する死滅細胞の個数を示した。
【表12】
## p<0.01, Steel's t-testによる陰性対照群(G1)との有意差。
【0137】
前記表12から確認できるように、対照群(Control、G1)では約10.33%の細胞死滅比率を示し、低濃度の実験群(G2)では対照群と類似の細胞死滅比率を示したが、中農度(G3)および高濃度(G4)実験群では12.4%以上の細胞死滅が観察された。したがって、フィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンス微生物の投与によって腫瘍細胞の自滅が増加することが確認された。
【0138】
4-2:大腸癌皮下腫瘍モデルを用いた効能評価
CLCC1菌株の投与時に大腸癌に対する抗癌効能を確認するために、大腸癌細胞を皮下移植したマウスを用い、米国の非臨床委託試験機関であるChampion’s oncologyで試験を行った。大腸癌細胞はマウス由来大腸癌細胞株のMC38細胞を用い、マウスstrainはC57BL/6を用いた。前記MC38細胞はマウス由来結直腸癌(colorectal carcinoma)に相当する癌細胞株である。試験グループは以下の通りであり、グループあたり10匹のマウスが含まれている。
【0139】
具体的には、6週齢雄C57BL/6マウスにおいて大腸癌細胞株のMC38細胞株の皮下腫瘍移植実験により大腸癌を発生させ、大腸癌の発生過程でFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株の経口投与が大腸癌細胞の成長に及ぼす影響を調べた。
【0140】
実施例4-1の対照群および実験群の試験製剤の製造方法と実質的に同様の方法で、実施例1のFaecalibacterium cancerinhibens CLCC1菌株はRCM培地で培養後、濃縮してPBSバッファーとグリセロールを用いて最終グリセロール濃度15%(v/v)となるようにして冷凍保管した。そして、マウスに投与直前に解凍後、1匹あたり200ulの含有量で低濃度生菌(2x107cells/dose)(試料1は実施例4-1のG3に相応)と高濃度生菌(2x108cells/dose)1匹あたり200ul(2x108cells)(試料2は実施例4-1のG4に相応)となるように経口投与した。対照群としてはCLCC1菌株を投与しないマウス10個体を用いた。
【0141】
試料3は前記製造された試料2を100℃の温度のオーブンで2時間処理して高濃度死菌(2x108cells/dose)として用いた。
【0142】
具体的には、対照群と試料1~3の試験製剤を癌細胞接種する2週前から投与を開始して、計40日間1日1回投与した。具体的には、対照群と試料1~3の試験製剤を40日間1日1回ずつ経口投与し、投与開始日から14日経過後に、大腸癌細胞(5x10
5 MC38 cells in 0.1ml PBS)を左横腹の皮下組織に接種し、1週間の生着期間を経た後、腫瘍の大きさを観察22日目から開始して40日目まで18日間行った。腫瘍観察の開始日である22日を0日と見なして、18日間Magnetic Resonance(MR)撮影を用いて大腸癌腫瘍の大きさ(tumor volume)を測定した。腫瘍の大きさ変化は、癌細胞の生着後22日間腫瘍の長軸(maximum length、L)と短軸(perpendicular width、W)を測定し、下記数式3に代入して腫瘍の体積(tumor volume、TV)を計算した。前記18日間測定された腫瘍体積を下記表13と
図7に示した。
【数3】
【数2】
【0143】
下記表13にて、Meanは平均腫瘍体積を、S.D.は標準偏差(standard deviataion)を意味する。表13は対照群、試料1~3による分離菌株の大腸癌細胞株を移植した皮下腫瘍モデルにおける腫瘍の体積(volume、mm3)変化の結果である。
【表13】
【0144】
前記結果、対照群に比べて試料1~3の菌株を投与したグループで得られた腫瘍の体積変化を
図7にそれぞれ示した。測定最終日を基準として、対照群の腫瘍体積を100%に設定して試料1~試料3の腫瘍体積をパーセントで計算した結果、試料1は89.9%(10.1%減少)、試料2は74.2%(25.8%減少)、試料3は75.9%(24.1減少)であって、試験結果、対照群に比べてCLCC1を投与した大腸癌モデルマウスにおいて統計的に有意に腫瘍の成長が抑制されることを確認した。
【0145】
CLCC1の死菌体を投与した時も、統計的に有意に腫瘍の成長が抑制されることを確認した。また、CLCC1菌株の生菌を使用するが、濃度を異なって設定した試料1と試料2の腫瘍体積の減少を調べると、同一の実験条件で濃度依存的方式で抗癌活性が増加することを確認できた。
【0146】
また、試験製剤を投与した日の後、1~3日間隔で外観、体重、行動、排泄物などの一般症状を観察した。試験は試験製剤の投与後から計40日間行われ、癌細胞の生着後18日間観察した。前記測定された実験動物の体重(Kg)を下記表14に示した。
【表14】
【0147】
実験動物の全体体重は、癌細胞の生着後、対照群グループに相当するマウスの体重が試験群より低い傾向を示すが、全体的には対照群と試験群との間で大差がなかった。
【0148】
実施例5:Acute DSS-colitisを有する動物モデルに対する予防効能評価
5-1:モデル動物の製造および試料投与
雌BALB/cマウス(約6週齢)を供給業者から受けて、順応期間(約7日)を経て実験を進行させた。順応期間の後に、試験物質投与開始3週目に7日間、正常対照群は正常な飲水を供給し、正常対照群を除いたすべての群は3%DSSを飲水瓶に入れて自由給水して大腸炎を誘発した。雌BALB/cマウス(6週齢)を6日間の順化期間を経て、1群あたり6匹(7週齢)で本実験を進行させた。試験動物は計6群で進行させ、群の構成は次の通りである。
【表15】
【0149】
対照群は正常対照群(G1)、陰性対照群(G2)および陽性対照群(G3)に設定した。G1およびG2は試験開始日から賦形剤の15%glycerolを投与し、G3はSalicylazosulfapyridine(SASP)を200mg/kg投与した。試験物質投与群は生菌群(G4、G5)と死菌群(G7)とに分けて進行させた。生菌群G4とG5、および死菌群(G7)は試験開始日から終了日まで1日1回24日間CLCC1を投与してCLCC1の予防効果を確認しようとした。大腸炎は試験物質投与開始3週目に7日間3%DSSを飲水瓶に入れて自由給水して誘発した。
【0150】
本実験において体重減少評価、疾病活性指数(Disease Activity Index、DAI)、大腸の長さを測定し、大腸組織の組織病理学的検査を行った。
【0151】
5-2:体重減少評価
体重は投与開始日から試験終了日まで2回/週の間隔で測定し、各投与日の投与前に測定した。3%DSS給水前に測定された体重を基準として体重の変化を百分率で計算し、その結果を
図8に示す。
【0152】
DSSを給水した場合、6日後からすべての群(G2~G7)において給水前に比べて体重が減少し始めて試験終了日まで減少率が増加する傾向が現れた。体重減少は炎症性腸疾患が重要であり潜在的に危険な副作用である。G2に比べて、G4、およびG5群において体重減少率が統計的に有意に減少した。(*p<0.05 and **p<0.01、Independent t-test)G7はG2と差を示さなかった。したがって、CLCC1生菌の投与は大腸炎による体重減少を改善させることが確認された。
【0153】
5-3:DAI(disease activity index)
DAIは3%DSS投与日から体重(body weight)、便の状態(stool consistency)および糞便内の血液の有無(presence of fecal blood)により点数化して合計で表した。具体的には、疾病活性指数は体重減量(例えば、体重増加またはベースライン対比1%以内維持(点数0);1.5%体重減少(点数1);5~10%体重減少(点数2);10~15%体重減少(点数3);>15%体重減少(点数4));大便一貫性(例えば、正常(点数0);柔らかい大便(点数2);下痢(点数4));および出血(例えば、出血なし(点数0)、中等度出血(点数2)、激しい出血(点数4))に基づいて点数を付ける。
【0154】
前記評価結果を
図9に示す。G3~G6はDSS投与後にDAI点数が増加したが、試験終了時点ではG2に比べて低い点数を示した。試験終了時点でG3、およびG4およびG6の平均点数は7.0点、および6.7点で、G2に比べて統計学的に有意に低かった。(*p<0.05 and **p<0.01、Independent t-test)G5のDAI点数は試験終了時点で平均7.3点で、G2に比べて低かったが、統計学的に有意な差ではなかった。G7のDAI点数は試験終了時点で平均11.3点で、G2と差を示さなかった。
【0155】
したがって、CLCC1生菌の投与でG2に比べてDAI点数が統計的に有意に減少することを確認し、これは体重、便の状態および糞便内の血液の有無のような症状が改善されたことを意味した。
【0156】
5-4:大腸の長さ測定
試験終了後、動物は麻酔し、開腹して放血した後、個体別に大腸組織を摘出した。摘出した大腸は写真撮影をし、長さを測定した。前記測定された結果を
図10に示す。
【0157】
DSSで大腸炎を誘発すれば、大腸の長さが減少する。G2の大腸長さはG1に比べて統計学的に有意に減少した。(††p<0.01、Independent t-test)生菌投与群G4、およびG5の大腸の長さはG2に比べて統計学的に有意に少なく減少した。(*p<0.05、Independent t-test)これは生菌投与群がG2に比べて大腸の萎縮を阻害して大腸の長さが減少するのを防止または改善することを意味した。
【0158】
したがって、CLCC1生菌の投与は結腸の萎縮を阻害して大腸の長さが減少するのを改善することが確認された。
【0159】
5-5:Cytokines分析
大腸からRNAを抽出して、IL-6、TNF-αおよびIFN-γの遺伝子発現をRT-qPCRにより分析した。
【0160】
摘出した大腸組織はPBSに水洗後、RNAlater(Lot No.:00833281、Invitrogen、MA、U.S.A.)に入れて保管した。Total RNA extraction kit(Lot No.:157031929、QIAGEN、Germany)のマニュアルによりtotal RNAを抽出した。抽出されたtotal RNAは核酸定量器(IFNinite M200 pro、Tecan、Austria)を用いて260nmおよび280nmにおける吸光度を測定して定量した。Real time PCR machine(CFX384、BIO-RAD、CA、U.S.A.)を用いてTNF-α、IFN-γおよびIL-6のRT-qPCRを次の条件で実施した。
【0161】
RT-qPCR mixtureの組成は下記表16に示し、RT-qPCRの条件は下記表17に示す。RT-qPCRの結果は2
-ΔΔCt方法を用いて遺伝子発現量を比較した。
【表16】
【表17】
【0162】
前記測定された結果を
図11A~
図11Cに示す。
DSSで大腸炎誘発時、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-17、IL-1β、IL-2、IFN-γ、IL-6、IL-12、IL-25、IL-33、IL-8、MCP-1、MIP-3α、CXCL1およびIL-23など)は発現が増加し、抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-13、IFN-α、TGF-βなど)は発現が減少する。このうち、本実験では、炎症性サイトカインとしてIFN-γ、IL-6、およびTNF-αの発現レベルを測定した。
【0163】
生菌投与群(G4~G5)でいずれも陰性対照群(G2)に比べてIFN-γ、およびIL-6のレベルが統計的に有意に低かった。TNF-αのレベルはCLCC1高濃度生菌投与群(G5)でG2に比べて統計的に有意に低かった。(*p<0.05、Independent t-test)したがって、CLCC1生菌の投与はIFN-γ、IL-6およびTNF-αのような炎症性サイトカインのレベルを低くすることが確認された。
【0164】
5-6:組織病理学的検査
摘出された組織を10%中性ホルマリンに固定した。摘出して固定させた大腸組織は4~5μmの厚さに組織切片を作製して薄切してスライドに付着させた。H&E stainingの後、permount(Fisher Scientific、NJ、U.S.A.)で封入して顕微鏡(CKX41、Olympus、Japan)で観察して、写真撮影を実施した。
【0165】
前記試験群G2の大腸粘膜はcrypt構造が喪失しながら粘液を分泌するgoblet細胞が消失し、全層炎症(transmural inflammation)が発生した。組織内の赤血球と白血球が多量観察された。G3~G5でcrypt構造が維持され、炎症が減少することが観察された。G7はcrypt構造が喪失し、組織内の赤血球と白血球が観察された。前記観察された結果を
図12に示す。したがって、CLCC1生菌の投与は損傷した腸組織病理を改善させることを確認した。
【0166】
実施例6:Acute DSS-colitisを有する動物モデルに対する治療効能評価
6-1:モデル動物の製造および試料投与
雌BALB/cマウス(約6週齢)を供給業者から受けて、順応期間(約7日)を経て実験を進行させた。順応期間の後に、試験物質投与開始3週目に7日間、正常対照群は正常な飲水を供給し、正常対照群を除いたすべての群は3%DSSを飲水瓶に入れて自由給水して大腸炎を誘発した。雌BALB/cマウス(6週齢)を6日間の順化期間を経て、1群あたり6匹(7週齢)で本実験を進行させた。試験動物は計4群で進行させ、群の構成は次の通りである。
【表18】
【0167】
対照群は正常対照群(G1)、陰性対照群(G2)および陽性対照群(G3)に、治療群(試験物質投与群4)は生菌群G6にそれぞれ設定した。G1およびG2は試験開始日から賦形剤の15%glycerolを投与し、G3はSalicylazosulfapyridine(SASP)を200mg/kg投与した。試験物質投与群G6は、生菌群としてDSSで大腸炎を誘発した時点から10日間1日1回投与して、CLCC1の治療効果をみようとした。大腸炎は試験物質投与開始3週目に7日間3%DSSを飲水瓶に入れて自由給水して誘発した。
【0168】
前記実施例5と実質的に同様の方法で、体重減少評価、疾病活性指数(Disease Activity Index、DAI)、大腸の長さを測定し、大腸組織の組織病理学的検査を行った。
【0169】
6-2:体重減少評価
前記実施例5と実質的に同様の方法で、体重は投与開始日から試験終了日まで2回/週の間隔で測定し、各投与日の投与前に測定した。3%DSS給水前に測定された体重を基準として体重の変化を百分率で計算し、その結果を
図8に示す。
DSSを給水した場合、6日後からすべての群(G2~G7)で給水前に比べて体重が減少し始めて試験終了日まで減少率が増加する傾向が現れた。体重減少は炎症性腸疾患の重要かつ潜在的に危険な副作用である。G2に比べて、G6群において体重減少率が統計的に有意に減少した。(*p<0.05 and **p<0.01、Independent t-test)したがって、CLCC1生菌の投与は大腸炎による体重減少を改善させることが確認された。
【0170】
6-3:DAI(disease activity index)
前記実施例5と実質的に同様の方法で、DAIは点数を付与し、前記評価結果を
図9に示す。G6はDSS投与後にDAI点数が増加したが、試験終了時点ではG2に比べて低い点数を示した。試験終了時点でG6の平均点数は6.2点で、G2に比べて統計学的に有意に低かった。(*p<0.05 and **p<0.01、Independent t-test)
したがって、CLCC1生菌の投与でG2に比べてDAI点数が統計的に有意に減少することを確認し、これは体重、便の状態および糞便内の血液の有無のような症状が改善されたことを意味した。
【0171】
6-4:大腸の長さ測定
前記実施例5と実質的に同様の方法で、実験動物の大腸組織を摘出し、摘出した大腸は写真撮影をし、長さを測定した。前記測定された結果を
図10に示す。DSSで大腸炎を誘発すれば、大腸の長さが減少する。
【0172】
G2の大腸の長さはG1に比べて統計学的に有意に減少した。(††p<0.01、Independent t-test)生菌投与群G6の大腸長さはG2に比べて統計学的に有意に少なく減少した。(*p<0.05、Independent t-test)これは生菌投与群がG2に比べて大腸の萎縮を阻害して大腸の長さが減少するのを防止または改善することを意味した。
【0173】
したがって、CLCC1生菌の投与は結腸の萎縮を阻害して大腸の長さが減少するのを改善することが確認された。
【0174】
6-5:Cytokines分析
前記実施例5と実質的に同様の方法で、大腸からRNAを抽出して、IL-6、TNF-αおよびIFN-γの遺伝子発現をRT-qPCRにより分析した。前記測定された結果を
図11A~
図11Cに示す。
【0175】
DSSで大腸炎誘発時、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-17、IL-1β、IL-2、IFN-γ、IL-6、IL-12、IL-25、IL-33、IL-8、MCP-1、MIP-3α、CXCL1およびIL-23など)は発現が増加し、抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-13、IFN-α、TGF-βなど)は発現が減少する。このうち、本実験では、炎症性サイトカインとしてIFN-γ、IL-6、およびTNF-αの発現レベルを測定した。
【0176】
生菌投与群(G6)でいずれも陰性対照群(G2)に比べてIFN-γ、およびIL-6のレベルが統計的に有意に低かった。TNF-αのレベルはCLCC1高濃度生菌投与群(G6)でG2に比べて統計的に有意に低かった。(*p<0.05、Independent t-test)したがって、CLCC1生菌の投与はIFN-γ、IL-6およびTNF-αのような炎症性サイトカインのレベルを低くすることが確認された。
【0177】
6-6:組織病理学的検査
前記実施例5と実質的に同様の方法で、摘出して固定させた大腸組織の切片を顕微鏡(CKX41、Olympus、Japan)で観察し、写真撮影を実施した。
【0178】
前記試験群G2の大腸粘膜はcrypt構造が喪失しながら粘液を分泌するgoblet細胞が消失し、全層炎症(transmural inflammation)が発生した。組織内の赤血球と白血球が多量観察された。G6においてcrypt構造が維持され、炎症が減少することが観察された。前記観察された結果を
図12に示す。したがって、CLCC1生菌の投与は損傷した腸組織病理を改善させることを確認した。
【0179】
実施例7:炎症性サイトカインの減少評価(HT-29およびRAW 264.7)
7-1:HT-29およびRAW 264.7細胞株の培養
HT-29(韓国細胞株銀行、KCLB 30038)とRAW 264.7(韓国細胞株銀行、KCLB 40071)細胞は37℃、5%のCO2条件下で10%FBS(Fetal bovine serum)、penicillin(100μg/mL)、streptomycin(100μg/mL)を添加したRPMI1640培地で培養し、2~3日に1回ずつ継代培養を進行させた。
【0180】
7-2:菌株の培養および回収
本実験に使用されたF.prausnitzii A2-165はDSMZ(DSMZ collection、Braunschweig、Germany)(DSM N°17677)から入手した。
【0181】
使用されたFaecalibacterium属微生物のF.cancerinhibens CLCC1およびF.prausnitzii A2-165は絶対嫌気性菌株で、すべての培養過程は嫌気チャンバで進行させ、mRCMのmediaで培養し、18~23時間間隔で計2回の継代培養(Subculture)により活性化させた後、実験に用いた。得られた培養液を3200×g、5minの条件で遠心分離した後、沈殿物を除いた上澄液を回収して、実施例7および実施例8の実験に用いた。
【0182】
7-3:HT-29細胞におけるIL-8に対する効能評価
HT-29細胞を用いた免疫調節特性評価(Immuno-Modulatory Properties Using HT-29 Cells)を行った(ELISA)。
【0183】
具体的には、ヒト大腸上皮細胞のHT-29を用いて24-well plateに5×10^4Cells/wellずつcultureした後、CLCC1およびA2-165の上澄液とco-cultureする1日前に、RPMI1640に10%FBSが含まれている培地に入れ替える。Co-culture当日に、RPMI1640(+10%FBS)培地にCLCC1およびA2-165上澄液またはmRCMのmediaを10%となるように入れる。37℃、5%CO2 incubatorで6時間TNF-α(5~10ng/ml;Peprotech、NJ)を処理した後、cultureを行った。すべてのサンプルは3繰り返しを行った。Co-culture後に培養上澄液を収集し、Interleukin-8(IL-8)をELISA(Invitrogen、USA)により測定した。結果はpg/mlで表現され、mRCMのmediaのみ処理したものをnegative controlにIL-8基準値として用いてnormalizationした。
【0184】
前記ELISAで分析したHT-29細胞におけるヒトIL-8の分泌量を
図13に示す。この検査によりF.cancerinhibens CLCC1およびF.prausnitzii A2-165上澄液がHT-29 cellでmRCMのmediaのみ処理した対照群と比較する時、統計的に有意にIL-8が減少することを確認できた。
【0185】
これはF.cancerinhibens CLCC1がTNF-αによって増加した炎症反応を減少させられることを示し、また、IL-8によって誘導されうるNeutrophilによる腸粘膜の浸潤および炎症媒介物質の分泌を抑制することによって、炎症性腸疾患の治療剤として活用可能であることを意味する(
図13)。
【0186】
7-4:RAW 264.7細胞におけるIL-6およびTNF-αに対する効能評価
RAW 264.7細胞を用いた免疫調節特性評価(Immuno-Modulatory Properties Using RAW 264.7)を行った。(ELISA)
【0187】
具体的には、マウス大食細胞由来細胞株のRAW 264.7を用いて、24-well plateに5×10^4 Cells/wellずつcultureした後、F.cancerinhibens CLCCおよびA2-165の上澄液とco-cultureする1日前に、RPMI1640に10%FBSが含まれている培地に入れ替える。Co-culture当日に、RPMI1640(+10%FBS)培地にCLCC1およびA2-165上澄液またはmRCMのmediaを10%となるように入れる。37℃、5%CO2 incubatorで6時間LPS(100ng/ml;Sigma、L4391)を処理した後、cultureを行った。すべてのサンプルは3繰り返しを行った。Co-culture後に培養上澄液を収集し、Interleukin-6(IL-6)およびTNF-αをELISA(Invitrogen、USA)により測定した。結果はpg/mlで表現され、mRCMのmediaのみ処理したものをnegative controlにIL-6およびTNF-α基準値として用いてnormalizationした。
【0188】
前記ELISAで分析したRAW 264.7細胞におけるマウスIL-6およびTNF-αの分泌量を
図14および
図15に示す。この検査によりF.cancerinhibens CLCC1およびF.prausnitzii A2-165上澄液がRAW 264.7 cellでmRCMのmediaのみ処理した対照群と比較する時、統計的に有意にIL-6およびTNF-αが減少することを確認できた。
【0189】
これはCLCC1がLPSによって増加した炎症反応が減少できることを示し、IL-6によって誘導されうるTh17細胞分化によるRORγTやIL-17の分泌を抑制することによって、炎症の改善を期待することができ、また、TNF-αでは様々な免疫細胞の調節により炎症関連cytokineの発現に関与することによって、炎症性腸疾患の治療剤として活用可能であることを意味した(
図14および15)。
【0190】
実施例8:炎症性サイトカインの抑制活性評価(HPBMC)
8-1:HPBMC Culture
HPBMC(Lonza、4W-270)は37℃、5%のCO2条件下で10%FBS(Fetal bovine serum)を添加したLGM-3TM(Lonza、CC-3211)培地でCultureして実験を進行させた。
【0191】
8-2:HPBMCにおけるヒトIL-10に対する効能評価
HPBMCを用いた免疫調節特性評価(Immuno-Modulatory Properties Using HPBMC)を行った。
【0192】
具体的には、ヒト末梢血液単核細胞(Human Peripheral Blood Mononuclear Cells、HPBMC)を12-well plateに1×106Cells/wellずつcultureした後、CLCC1とA2-165の上澄液およびPBSを10%となるように入れた。37℃、5%CO2 incubatorで24時間反応後にcultureを行った。すべてのサンプルは3繰り返しを行った。Co-cultureの後に培養上澄液を収集し、Interleukin-10(IL-10)をELISA(Invitrogen、USA)により測定した。結果はpg/mlで表現され、PBSのみ処理したものをnegative controlにIL-10基準値として用いてnormalizationした。
【0193】
前記分析したHPBMCにおけるヒトIL-10に対する効能結果を
図16に示す。この検査によりF.cancerinhibens CLCC1とF.prausnitzii A2-165上澄液をHPBMCでPBSのみ処理した対照群と比較して、統計的にCLCC1上澄液が有意にIL-10が増加することを確認できた。
【0194】
これはF.cancerinhibens CLCC1がヒト末梢血液単核細胞における抗炎症関cytokineのうちIL-10の発現に関与することによって、抗炎症作用が可能であることを意味し、これは炎症性腸疾患の治療剤として活用可能であることを意味する(
図16)。
【0195】
8-3:HPBMCにおけるIL-6に対する効能評価
HPBMCを用いた免疫調節特性評価(Immuno-Modulatory Properties Using HPBMC)を行った。
【0196】
具体的には、ヒト末梢血液単核細胞(Human Peripheral Blood Mononuclear Cells、HPBMC)を24-well plateに1×105Cells/wellずつcultureした後、CLCC1上澄液およびPBSを10%となるように入れる。37℃、5%CO2 incubatorで6時間LPS(100ng/ml;Sigma、L4391)を処理した後、cultureを行った。すべてのサンプルは3繰り返しを行った。Co-cultureの後に培養上澄液を収集し、Interleukin-6(IL-6)をELISA(Invitrogen、USA)により測定した。結果はpg/mlで表現され、PBSのみ処理したものをnegative controlにIL-6基準値として用いてnormalizationした。
【0197】
前記分析したHPBMCにおけるヒトIL-6に対する効能結果を
図17に示す。この検査によりF.cancerinhibens CLCC1上澄液がHPBMCでPBSのみ処理した対照群と比較して、統計的に有意にIL-6が減少することを確認できた。
【0198】
これはF.cancerinhibens CLCC1がヒト末梢血液単核細胞における炎症関連cytokineのうちIL-6の発現に関与することによって、炎症反応を抑制できることを意味し、これは炎症性腸疾患の治療剤として活用可能であることを意味した(
図17)。
【0199】
実施例9:PCRを用いた微生物検出
9-1:試料およびプライマーの用意
前記菌株ゲノムDNAはDNA prep kit(例.MO BIO’s PowerSoil DNA Isolation Kit)を用いて用意した。
【0200】
blastnプログラムを用いた分析により、Site-specific DNA-methyltransferase(dam)が他の微生物では検索されず、F.cancerinhibens CLCCLに特異的であることを確認した。より容易かつ迅速正確にリアルタイムにF.cancerinhibens CLCCLの特異的検出確認のために、前記dam遺伝子配列に基づいて、正方向および逆方向プライマーから構成されたプライマー対を用いて試料にリアルタイム(real-time)PCR増幅反応を実施した。
【0201】
9-2:カーブ値(Ct値)を用いた検出
リアルタイム(real-time)PCR増幅反応はBio-rad社のCFX96リアルタイムPCRシステム(CFX96 Real-time PCR system;Bio-Rad laboratories,Inc.、USA)を用いて実施し、リアルタイムPCR増幅反応はSYBR premix Ex Taq(2x)(TAKARA Bio,Inc.、Japan)と前記プライマーをそれぞれ10pMを含有するリアルタイム(real-time)PCR混合液で計20μlの量で行った。リアルタイムPCR混合液に添加した菌株のゲノムDNAの量は約25ngであった。リアルタイム(real-time)PCR増幅反応は95℃で30秒間変性し、95℃で5秒、60℃で30秒で40回(40cycles)繰り返した後、95℃で15秒間反応した。以後、融解曲線(melting curve)と融解ピーク(melting peak)を導出するために、65~95℃まで5秒ごとに0.5℃ずつ増加させた。サイクルの数による相対的蛍光(Relative Fluorescence Uints;RFU)を測定した。
【0202】
F.cancerinhibens CLCCL DNAを含む試料でのみ特異的にカーブ値(Ct値)が確認され、前記結果から本発明のプライマーセットおよびプローブはF.cancerinhibensを特異的に検出できることが分かった。
【0203】
9-3:定量分析
Site-specific DNA-methyltransferase(dam)遺伝子を活用してフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスの量を、すでに量を測定済みの物質(例.プラスミド、orgenomic DNA)を用いて、standard curveをとった後、これを活用して濃度を測定した。
【0204】
全体バクテリアの量は16S universal primerを用いて糞便試料の全体微生物のゲノムを抽出した後、これを同様に、すでに量を測定済みの物質(例、プラスミド、genomic DNA)を用いて、standard curveをとった後、これを活用して濃度を測定した。
【0205】
相対定量のために、前記計算したF.cancerinhibens CLCCLの量を全体バクテリアの量で割った値を用いた。
【0206】
実施例10:メタゲノム分析を用いた微生物検出
分析に用いられたデータは大便の微生物に対してショットガンメタゲノム塩基配列分析法を行って得られたデータとして分析に用いられたデータのうち、Colorectal CancerおよびColorectal Cancer集団に比べて、健康群(Healthy controlのうちSampleIdがERRで始まるデータ)の場合、論文で発表された(https://gut.bmj.com/content/66/1/70)公開データのダウンロードを受け、その他の潰瘍性大腸炎、クローン病および健康群データは共同研究により自体収集した大便微生物のショットガンメタゲノム塩基配列データを用いた。
【0207】
それぞれの試料データはショットガンメタゲノムデータを用いて種レベルで微生物の種に対する豊富度を計算するコア遺伝子に対するK-mer完全一致方法(韓国特許公開公報10-2020-0027900)で分析して、試料中の微生物種の豊富度に対するプロファイルを得た。F.cancerinhibens CLCCL菌株の豊富度分析のために、まず、種レベルで既存の遺伝体と区別されることを確認するために、Faecalibacterium prausnitzii ATCC 27768の遺伝体とANI(Average Nucleotide Frequency)分析を行って、種レベルの基準類似度である95に比べて明確に低い85.74の数値で新種であることを確認して、参照微生物遺伝体データベースに追加した。
【0208】
各試料に対してフィーカリバクテリウムキャンサーインヒベンスCLCC1の遺伝体が含まれている前記参照データベースを用いてそれぞれの疾病群と健康群における分布を比較した。前記実験結果を下記表19と
図18に示した。
【表19】
【0209】
本発明によるCLCC1菌株は、健康群と潰瘍性大腸炎群、健康群とクローン病群との間で有意に差がある結果を示し、これは腸内微生物として常在しながら分布量の差で疾病群を区分できることを示す。
【配列表】