(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】インシュレーター、ステーター、回転電機、ステーターの製造方法、および回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20241011BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20241011BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20241011BHJP
H02K 15/095 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K1/18 C
H02K15/04 C
H02K15/095
(21)【出願番号】P 2023523957
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048900
(87)【国際公開番号】W WO2022249525
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2021086736
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】並河 遼
(72)【発明者】
【氏名】鬼橋 隆之
(72)【発明者】
【氏名】八木 勇士
(72)【発明者】
【氏名】徳久 太一
(72)【発明者】
【氏名】糸瀬 智也
(72)【発明者】
【氏名】仲 興起
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/033496(WO,A1)
【文献】特開2000-201458(JP,A)
【文献】特開2006-254569(JP,A)
【文献】特開2018-27001(JP,A)
【文献】特開2011-234562(JP,A)
【文献】特開2004-357491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 1/18
H02K 15/04
H02K 15/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターにおいて、前記ステーターコアの周方向両側に突出した2つの腕状の連結部、一方の連結部に形成された柱状部、
前記柱状部と反対側の前記一方の連結部に形成された突起部、他方の連結部に形成され、前記柱状部を移動可能にガイドするガイド部を備え、
一方のインシュレーターの柱状部が隣接する他方のインシュレーターのガイド部内を移動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記ガイド部には、前記柱状部を嵌め合わせ可能な嵌合部が複数箇所形成され、
前記ガイド部は、複数の前記嵌合部の内、隣り合う前記嵌合部同士の間に長穴部を有し、
前記一方のインシュレーターの前記長穴部に前記他方のインシュレーターの前記突起部が係合することで隣接するインシュレーターが予め定められた角度に固定されていることを特徴とするインシュレーター。
【請求項2】
前記インシュレーター同士の距離が最も近くなる第二の嵌合部に前記柱状部が嵌め合わされた状態において、前記第二の嵌合部と異なる第一の嵌合部側の前記突起部の側面は、前記長穴部の前記第一の篏合部側の端面に接する請求項1に記載のインシュレーター。
【請求項3】
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターにおいて、前記ステーターコアの周方向両側に突出した2つの腕状の連結部、一方の連結部に形成された柱状部、他方の連結部に形成され、前記柱状部を移動可能にガイドするガイド部を備え、
一方のインシュレーターの柱状部が隣接する他方のインシュレーターのガイド部内を移動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記ガイド部には、前記柱状部を嵌め合わせ可能な嵌合部が複数箇所形成され、
前記ガイド部は、複数の前記嵌合部の内、隣り合う前記嵌合部同士の間に長穴部を有し、
前記長穴部の両端における前記ガイド部のそれぞれは、前記長穴部の幅よりも小さい幅となる部分を形成する突部を有す
るインシュレーター。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記柱状部が移動可能な間隔を有する周方向に延びる2つの部材の間に複数個所嵌合部が形成され、嵌合部の間の前記長穴部において前記柱状部の移動を妨げない箇所に前記2つの部材を接続する接続部が形成されていることを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載のインシュレーター。
【請求項5】
前記柱状部は、前記インシュレーター同士の距離が最も遠くなる第一の嵌合部において、回動可能に嵌め合わされていることを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載のインシュレーター。
【請求項6】
前記柱状部と前記嵌合部とは、着脱可能なスナップフィット形状となっていることを特徴とする請求項
1から5のいずれか1項に記載のインシュレーター。
【請求項7】
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターにおいて、前記ステーターコアの周方向両側に突出した2つの腕状の連結部、一方の連結部に形成された柱状部、他方の連結部に形成され、前記柱状部を移動可能にガイドするガイド部を備え、
一方のインシュレーターの柱状部が隣接する他方のインシュレーターのガイド部内を移動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記ガイド部は、前記柱状部を嵌め合わせ可能な嵌合部が複数個所形成されているスロット穴状部であり、
前記柱状部には、切欠き部が形成され、前記インシュレーター同士の距離が最も近くなる嵌合部には、前記切欠き部に嵌合する突起部が形成されていることを特徴とするインシュレーター。
【請求項8】
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターにおいて、前記ステーターコアの周方向両側に突出した2つの腕状の連結部、一方の連結部に形成された柱状部、他方の連結部に形成され、前記柱状部を移動可能にガイドするガイド部を備え、
一方のインシュレーターの柱状部が隣接する他方のインシュレーターのガイド部内を移動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記ガイド部は、前記柱状部が移動可能な間隔を有する周方向に延びる2つの部材の間に複数個所嵌合部が形成され、嵌合部の間で前記柱状部の移動を妨げない箇所に前記2つの部材を接続する接続部が形成され、
前記柱状部は、断面が多角形状の角柱であり、前記インシュレーター同士の距離が最も遠くなる第一の嵌合部に、回動可能に嵌め合わされるとともに、前記角柱の角部と係合し、前記柱状部の回動を係止する溝部が前記第一の嵌合部に形成されていることを特徴とするインシュレーター。
【請求項9】
前記インシュレーターの内周側と外周側に形成され、前記コイルを規制するためのツバ部を有し、内周側のツバ部の周方向側面に、隣接するインシュレーターと嵌合する切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインシュレーター。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載のインシュレーターにコイルが巻回されてステーターコアに取り付けられており、前記ステーターコアが円環状に連結されて、樹脂でモールドされていることを特徴とするステーター。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか1項に記載のインシュレーターにコイルが巻回されてステーターコアに取り付けられており、前記ステーターコアが円環状に連結され、前記ステーターコアの外周がフレームで覆われて径方向に与圧がかけられていることを特徴とするステーター。
【請求項12】
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターにおいて、前記ステーターコアの周方向に形成され、径方向外側に突出する2つの突部、前記2つの突部に形成された嵌合部に嵌合する別体連結部を備え、
前記別体連結部が前記嵌合部を軸に回動することで、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記嵌合部は、前記突部に形成された柱状部と前記別体連結部に形成された開口部との嵌合部、または前記突部に形成された開口部と前記別体連結部に形成された柱状部との嵌合部であり、
前記開口部および前記柱状部は複数形成され、
前記開口部は、隣り合う前記嵌合部同士の間に長穴部を有
し、
前記インシュレーターにコイルが巻回されてステーターコアに取り付けられ、
前記ステーターコアが円環状に連結され、樹脂でモールドされるかあるいは前記ステーターコアの外周がフレームで覆われて径方向に与圧がかけられており、
前記別体連結部は、前記ステーターコア外周より内側に収まっていることを特徴とするステーター。
【請求項13】
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターにおいて、前記ステーターコアの周方向両側に突出した2つの腕状の連結部、一方の連結部に形成された柱状部、他方の連結部に形成され、前記柱状部を移動可能にガイドするガイド部を備え、
前記ガイド部には、前記柱状部を嵌め合わせ可能な嵌合部が複数箇所形成され、
前記ガイド部は、複数の前記嵌合部の内、隣り合う前記嵌合部同士の間に長穴部を有しており、
一方のインシュレーターの柱状部が隣接する他方のインシュレーターのガイド部内を移動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記
インシュレーターにはコイルが巻回されて前記ステーターコアに取り付けられており、前記ステーターコアが円環状に連結され、樹脂でモールドされるかあるいは前記ステーターコアの外周がフレームで覆われて径方向に与圧がかけられており、
前記連結部は、前記ステーターコア外周より内側に収まっていることを特徴とするステーター。
【請求項14】
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターにおいて、前記ステーターコアの周方向両側に突出した2つの腕状の連結部、一方の連結部に形成された柱状部、他方の連結部に形成され、前記柱状部を移動可能にガイドするガイド部を備え、
前記ガイド部には、前記柱状部を嵌め合わせ可能な嵌合部が複数箇所形成され、
前記ガイド部は、複数の前記嵌合部の内、隣り合う前記嵌合部同士の間に長穴部を有しており、
一方のインシュレーターの柱状部が隣接する他方のインシュレーターのガイド部内を移動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記インシュレーターにはコイルが巻回されて前記ステーターコアに取り付けられており、前記ステーターコアが円環状に連結され、樹脂でモールドされるかあるいは前記ステーターコアの外周がフレームで覆われて径方向に与圧がかけられており、
前記インシュレーターが、前記ステーターコアのティース部の軸方向に2つ組み付けられ、組み付けられた2つの前記インシュレーターの一方のインシュレーターの柱状部に対応して、軸方向反対側の他方のインシュレーターに、ガイド部が配置されていることを特徴とするステーター。
【請求項15】
前記2つのインシュレーターが組み付けられ、嵌め合わされる前記一方のインシュレーターのコア嵌合部の周方向に左右2つの第1のラップ部を、前記軸方向反対側の他方のインシュレーターのコア嵌合部の周方向に左右2つの第2のラップ部を有し、前記第1のラップ部と前記第2のラップ部は段差で形成され、段差の向きは左右同一であることを特徴とする請求項
14に記載のステーター。
【請求項16】
請求項
10から
15のいずれか1項に記載のステーターと、前記ステーターと径方向に対向して配置されたローターとを備えた回転電機。
【請求項17】
ステーターコアに取り付けられ、コイルと前記ステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーターを備えたステーターの製造方法において、前記インシュレーターは、前記ステーターコアの周方向に形成され、径方向外側に突出する2つの突部、前記2つの突部に形成された嵌合部に嵌合する別体連結部、を備え、
一方のインシュレーターと、隣接する他方のインシュレーターとを、前記別体連結部で回動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
前記インシュレーターまたは前記別体連結部には、前記嵌合部が複数個所形成され、前記ステーターコアの大きさに応じて嵌合部を移動させ、複数個の前記嵌合部の1つに嵌合させた状態で巻線装置に前記インシュレーターを取り付け、
前記嵌合部は、前記突部に形成された柱状部と前記別体連結部に形成された開口部との嵌合部、または前記突部に形成された開口部と前記別体連結部に形成された柱状部との嵌合部であり、
前記開口部は、隣り合う前記嵌合部同士の間に長穴部を有することを特徴とするステーターの製造方法。
【請求項18】
請求項
17に記載のステーターの製造方法に加え、製造したステーターの径方向にローターを対向して配置することを特徴とする回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、インシュレーター、ステーター、回転電機、ステーターの製造方法、および回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の固定子(ステーター)において、ティース単位で分割したコア片(分割コア)同士を、軸に垂直な方向に折り曲げ自在に連結する構成のものが開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。ステーター内の隣り合うティース同士は、径方向の内側で近接しあうが、上記構成によれば、ティースが外径側に位置するように連結部分の角度を変えることで、隣り合うコア片に干渉せず巻回でき、コイルの占積率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-201458号公報
【文献】特開2006-254569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、連結部分で、隣接するコア片の積層鋼板同士を噛み合わせるため、2種類の積層鋼板を用意する必要があり、連結のための抜きカシメを要するなど、部材の種類の増加と工程の複雑化を招く問題があった。また、特許文献2においては、連結と回転のために、軸方向に抜き差しする機構を設けているが、ティースを外側に向けた際に、連結後に軸方向での位置ずれを防止するため、保持機構等を用意する必要があり、製造工程が煩雑となる問題があった。また、特許文献1、2ともに、ステーターコアの形状ごとに連結したティース間の距離が対応して決まるため、ティースの形状によっては、巻線工程で巻線を高密度に巻けない場合があった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、部品点数と製造工程を増加させることなく、巻線を高密度に巻くことが可能なステーターおよびモーターを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示されるインシュレーターは、
ステーターコアに取り付けられ、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するものであって、ステーターコアの周方向両側に突出した2つの腕状の連結部、一方の連結部に形成された柱状部、柱状部と反対側の一方の連結部に形成された突起部、他方の連結部に形成され、柱状部を移動可能にガイドするガイド部を備え、一方のインシュレーターの柱状部が隣接する他方のインシュレーターのガイド部内を移動可能に係合し、隣接するインシュレーター同士の距離を可変とし、
ガイド部には、柱状部を嵌め合わせ可能な嵌合部が複数箇所形成され、
ガイド部は、複数の嵌合部の内、隣り合う嵌合部同士の間に長穴部を有し、前記一方のインシュレーターの前記長穴部に前記他方のインシュレーターの前記突起部が係合することで隣接するインシュレーターが予め定められた角度に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
ステーターおよびモーターにおいて、部品点数と製造工程を増加させることなく、巻線を高密度に巻くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施の形態1に係るインシュレーターの斜視図である。
【
図4】
図3のインシュレーターを径方向外周側からみた背面図である。
【
図5】
図3のインシュレーターを軸方向上面からみた上面図である。
【
図6】実施の形態1のステーターコア連結体に巻線した後、連結部をステーターコア円環組立体に組み付ける姿勢に組み替えた状態を示す上面図である。
【
図7】
図6の状態の一方のインシュレーターを透過して嵌合状態を表した斜視図である。
【
図8】実施の形態1のインシュレーターを径方向内周側からみた斜視図である。
【
図9】
図8を軸方向下側から上側に向かってみた斜視図である。
【
図10】実施の形態1に係るステーターの製造工程を説明するフローチャートである。
【
図11】実施の形態1に係るインシュレーターを連結したステーター連結体の斜視図である。
【
図12】実施の形態1のステーターコア連結体にフライヤ方式の巻線装置で巻線している状態を示す上面図である。
【
図13】
図12と同じ巻線装置で寸法の異なるステーターコアに巻線している状態を示す上面図である。
【
図14】
図12とは異なる方式の巻線装置で実施の形態1のステーターコア連結体に巻線している状態を示す上面図である。
【
図15】実施の形態1のステーターコア連結体に巻線した後、連結部をステーターコア円環組立体に組みつける姿勢に組み替えた状態を示す斜視図である。
【
図17】実施の形態1の半円分のステーターコア連結体を連結した状態を示す上面図である。
【
図18】
図17の半円のステーターコア連結体を連結させる状態を示す斜視図である。
【
図19】実施の形態1のステーターコア円環組立体の斜視図である。
【
図20】実施の形態1のステーターコア円環組立体をモールド樹脂で覆ったステーター完成品の斜視図である。
【
図21】実施の形態1に係るモーターの断面図である。
【
図22】実施の形態2に係るインシュレーターの上面図である。
【
図23】実施の形態2に係るインシュレーターの斜視図である。
【
図24】実施の形態2に係るインシュレーターを第一嵌合部で連結したステーター連結体の上面図である。
【
図25】実施の形態2に係るインシュレーターを第一嵌合部で連結したステーター連結部の別の上面図である。
【
図26】実施の形態2に係るインシュレーターを第二嵌合部で連結したステーター連結部の上面図である。
【
図27】実施の形態3に係るインシュレーターの斜視図である。
【
図28】
図27のインシュレーターを軸方向下側から見た下面図である。
【
図29】実施の形態3に係るステーターコア連結体に巻線した後、連結部をステーターコア円環組立体に組みつける姿勢に組み替えた状態を示す斜視図である。
【
図31】実施の形態4に係るモーターの断面図である。
【
図32】実施の形態4に係るステーター製造工程を表すフローチャートである。
【
図33】実施の形態5に係るステーターコア絶縁組立体を示す斜視図である。
【
図34】実施の形態6に係るステーターコア連結体にフライヤ方式の巻線装置で巻線している状態を示す上面図である。
【
図35】実施の形態7に係るインシュレーターの斜視図である。
【
図36】実施の形態7に係る別体連結部の斜視図である。
【
図37】実施の形態7に係るインシュレーターを連結したステーター連結体の斜視図である。
【
図38】実施の形態7に係るインシュレーターを連結したステーター連結体の上面図である。
【
図39】実施の形態7のステーターコア連結体に巻線した後、連結部をステーターコア円環組立体に組みつける姿勢に組み替えた状態を示す斜視図である。
【
図40】実施の形態7のステーターコア円環組立体の斜視図である。
【
図41】実施の形態7に係る別の別体連結部の斜視図である。
【
図42】実施の形態7に係るインシュレーターを別の別体連結部で連結したステーター連結体の上面図である。
【
図43】実施の形態7に係るインシュレーターを別の別体連結部で連結したステーターコア連結体に巻線した後、連結部をステーターコア円環組立体に組みつける姿勢に組み替えた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願に係る、インシュレーターの好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、同一内容および相当部については同一符号を配し、その詳しい説明は省略する。以降の実施形態も同様に、同一符号を付した構成について重複した説明は省略する。
【0010】
実施の形態1.
まず、本実施の形態の各部品の形状について説明する。
図1のステーターコア10は、インナーローター型のモーター(
図21参照)の円環状のステーターをスロット数分分割したステーターコアであり、ティース部11とバックヨーク部12を有する。隣接するティースとの突き合わせ部である分割面13は単純な平面となっており、ステーターコア単体同士で接合する手段を持たない。ステーターコア10が単純な形状となるため、ステーターコア10の金型を一種類用意すればよく、製造しやすい。
【0011】
図2は、後述するステーターコア円環組立体300を示している。以降の説明において、軸方向(X)、周方向(θ)、半径方向(R)は、それぞれ、
図2に示された方向を示す。
【0012】
図3は、実施の形態1に係るインシュレーターの斜視図、
図4は、半径方向外周側からみた背面図、
図5は軸方向からみた上面図である。
図3から
図5の、コイルとステーターコアを電気的に絶縁するインシュレーター20はステーターコア10に嵌め合わされるコア嵌合部21と巻線されるコイルを支える巻枠部22を有する。
図3のインシュレーター20は、ステーターコア10の軸方向上下から嵌め合わされるうちの上側のインシュレーター(
図11のインシュレーター20a参照)を示している。巻枠部22はステーターコア10を覆う部分と軸方向に突出した内周側ツバ部23と外周側ツバ部24を有し、内周側ツバ部23と外周側ツバ部24はコイルが半径方向R(
図2参照)からはみ出さないように支えている。
【0013】
外周側ツバ部24には、コイルの端末線を導入する導入溝と排出する排出溝が形成されている。外周側ツバ部24のさらに外周側の、隣接するステーターコア10に面した位置に連結部25a、25bを有し、連結部25a、25bはステーターコア10の周方向θ端面から突き出している。
【0014】
連結部25aの先端には、軸方向に伸びた円柱形状の柱状部251を有し、連結部25bは、追って説明するように、他のインシュレーターの柱状部251を移動可能にガイドするガイド部を有する。本実施の形態では、スロット穴状の開口部252がこれに該当する。柱状部251は円柱の一部を切り欠いた形状(切欠き部251a)を有している。柱状部251の径は連結部25aの幅よりも小さいため、柱状部251と連結部25aの境界に段差253が形成される。この段差253は柱状部251の全周に形成されているのが望ましいが、全周のうち一部に形成されていても後述するステーターコア連結体200となったときにステーターコア10の軸方向の移動を規制する位置に段差253が形成されていればよい。また、柱状部251の端面に、柱状部251の円筒面より外側に突き出た突起254を有する。
【0015】
連結部25bのスロット穴状の開口部252の入口側に柱状部251と同径の第一円弧部252aを有し、柱状部251と嵌合し、柱状部251を中心に自在に回動できる構造となっている。すなわち、柱状部251は、インシュレーター20同士の距離が最も遠くなる嵌合部である第一円弧部252aにおいて、回動可能に嵌め合わされる。開口部252の終端側にも同径の第二円弧部252bを有し、ステーターコア10の分割面13を突き合わせた状態で柱状部251が第二円弧部252bに嵌合する位置に配置されている。
【0016】
第一円弧部252aと第二円弧部252bは円弧部を接続する長穴部252cでつながっており、長穴部252cの幅は柱状部251の径と同じか、大きくなっている。第一円弧部252a、長穴部252c、第二円弧部252bからなる開口部252は、概ね柱状部251の径と同じ幅であるが、
図5(a)(b)に示すように、柱状部251の径よりも幅が小さい部分を形成するための突部252dを第一円弧部252aと第二円弧部252bに有する。
【0017】
インシュレーター20は、樹脂、ゴム、紙、または木材などの弾性のある絶縁材料を用いるので、開口部252が部分的に柱状部251よりも小さい幅となっても、インシュレーター20が一時的に弾性変形することで柱状部251が第一円弧部252aと長穴部252cを通過して第二円弧部252bへ移動できる。第二円弧部252bの開口部側に柱状部251の切欠き部251aと嵌合する面を有する。この面は柱状部251を第二円弧部252bから外す方向(開口している方向)と垂直となっている。
【0018】
柱状部251を備える連結部25aの根元側に突起255を有する。追って詳述するが、
図6、
図7で、インシュレーター20を連結してステーターコア連結体200を形成し、連結部をステーターコア円環組立体300に組み付ける姿勢に組み替えた状態で示す。このように、突起255の第一円弧部252a側の側面は、柱状部251が第二円弧部252bに嵌合した状態で長穴部252cの第一円弧部252a側の端面に接する位置にあり、柱状部251に向かって突起255の高さが低くなるような案内テーパを有する。この形状により、連結状態の保持力を強めることができる。
【0019】
これらの機構により、柱状部251は、インシュレーター20同士の距離が最も近くなる嵌合部である第二円弧部252bにおいて、隣接するインシュレーター20及びステーターコア10を予め定められた角度に固定することができる。柱状部251と第一円弧部252aまたは第二円弧部252bとの嵌合は、インシュレーターの弾性変形を利用したスナップフィット形状としていることで、簡単に組み立てることができる。スナップフィットは、軸方向に垂直な面内において着脱可能である。なお、
図7は、嵌合状態を説明するため、インシュレーターの1つを透過して記載している。
【0020】
図8のインシュレーター20を径方向内周側からに示すように、内周側ツバ部23の周方向端面に、隣接するインシュレーター20と嵌合する内周ツバ嵌合部23a、23bを有する。内周ツバ嵌合部23a、23bは内周側から見て軸方向に開いた鉤爪状の形状をしており、内周ツバ嵌合部23a、23b同士ではインシュレーター20の半径方向の移動を規制しない。
【0021】
図9は、
図8を軸方向下側から上側にみた図であるが、インシュレーター20を軸方向に2つに分割した巻枠部22に互いのインシュレーターが重なるラップ部22a、22bを有する。ラップ部22a、22bはステーターコア10とコイル30との間の絶縁距離を増やす機能がある。ラップ部22a、22bは段差状になっており、周方向の一方側のラップ部22aと他方側ラップ部22bで段差の向きが同じになっている。すなわち、インシュレーター20の、軸方向一端側の段差と軸方向他端側の段差とが、周方向の一方側または他方側において互いに嵌め合わされる形状になっている。
【0022】
次に、
図10に示す本実施の形態におけるステーターの組立方法について説明する。
〈ステーターコア絶縁工程S1〉
図11に示すように、
図1で示した1個のステーターコア10に
図3で示したインシュレーター20を2個(インシュレーター20a、インシュレーター20b)を組み付け、ステーターコア絶縁組立体100とする。一方のインシュレーター20aの柱状部251の軸方向反対側に、他方のインシュレーター20bの開口部252(第一円弧部252a)が対向しており、同じ形状のインシュレーター20a、20bを1個のステーターコア10に組み付けてステーターコア絶縁組立体100を構成できる。
【0023】
なお、ステーターの仕様に合わせて、インシュレーター20a、20bの金型部品の一部を変えて、一方のインシュレーター(例えばインシュレーター20a)の一部の形状を変更することもできるが、金型の変更箇所を最小限にするためにも、柱状部251と開口部252が軸方向に対向する配置としたほうがよい。
【0024】
インシュレーター20のラップ部22a、22bの段差形状を周方向の一方側と他方側と同じ向きにしたことで、互いのインシュレーター20a、20bは回転対称となるため、一方のインシュレーター20aと同じ形状で対向するもう一方のインシュレーター20bを形成でき、同じ形状のインシュレーター20でステーターコア絶縁組立体100を構成できる。このラップ部22a、22bはステーターの絶縁仕様により必要とされる場合と必要とされない場合があり、ラップ部22a、22bが必要ない場合は、前述の連結部25a、25bまたは内周ツバ嵌合部23a、23bの要件を満たしていればよい。
【0025】
〈インシュレーター連結工程S2〉
図11のように、インシュレーター20a、20bの柱状部251と第一円弧部252aを嵌合させることでステーターコア絶縁組立体100を複数個連結し、ステーターコア連結体200とする。ステーターコア連結体200は、柱状部251と第一円弧部252aで連結されているため、前述の通り、柱状部251を中心に自在に回動できる。柱状部251と連結部25aで形成された段差253が隣り合うステーターコア10と開口部252との軸方向の隙間に入り込むことにより、開口部252の軸方向の移動を規制している。柱状部251の端面に設けた突起254により、段差253による規制の反対方向への移動を規制している。
【0026】
〈巻線工程S3〉
図12のように、ステーターコア連結体200を巻線装置50のコア把持機構51に装着し、巻線する。ステーターコア連結体200は柱状部251を中心に自在に回動できるため、巻線するステーターコア10aに隣接するステーターコア10bがフライヤ52と干渉しない配置まで回動させた状態で巻線装置50のコア把持機構51で把持することができる。また、
図13のように、寸法が異なるステーターコア10cでもインシュレーターの柱状部251の位置を揃えれば同じ巻線装置50で巻線できる。
【0027】
フライヤ機構ではなく、
図14(a)のように、ノズル53をステーターコア10a、10bに近づけ、矩形軌道で動かすことで巻線する場合でも、
図14(b)に示すように、共通のコア把持機構で、ステーターコア10aと寸法が異なるステーターコア10cを巻線できる。また、この場合、ステーターコアのティース間のスペースを広くとれるため、ノズル53を太径化し、ノズル53の内周から出口をつなぐフィレット形状の曲率を増やすことができ、コイルの被膜の劣化を抑えることができる。
【0028】
〈円環組立工程S4〉
図15、
図16に示すように、巻線されたステーターコア連結体200の連結部をステーターコア円環組立体300に組み付ける姿勢とし、
図17のように円環状に連結しステーターコア円環組立体300とする。このとき、
図18のように、柱状部251を第二円弧部252bまで矢印Aの方向へスライドさせることで、
図19に示すように円環形状となる。このとき、インシュレーター20の連結部25a、25bを、ステーターコア10の外径よりも内側に収める構成であるため、後述するモールド樹脂の肉厚を確保できる。
【0029】
このとき、
図3で説明した、柱状部251の切欠き部251aと第二円弧部252bの面が嵌合し、この面は柱状部251を第二円弧部252bから外す方向(開口している方向)と垂直となっているので、ステーターコア連結体200を分解する荷重が作用しても開口部252を開く分力が発生せず、容易に分解されない。
【0030】
また、
図8で説明した、内周側ツバ部23に設けた内周ツバ嵌合部23a、23bが、隣接するインシュレーター20と嵌合し、引っかかるため、ステーターコア円環組立体300の分解を補助的に妨げる。これにより、ステーターコア10を円環に組んだ後の保持力の増強を図っている。内周ツバ嵌合部23a、23bはインシュレーターの半径方向の移動を規制しない形状(半径方向に同じ断面形状)としているため、外周側の連結部25a、25bの半径方向の位置合わせを阻害しない。
【0031】
なお、ステーターコア円環組立体300は溶接装置あるいは圧入装置などの設備が不要で容易に組立できる。容易に分解しないため、後工程への搬送のために特別な治工具を必要としない。
【0032】
〈結線工程S5〉
ステーター仕様に合わせて、コイル30の端末線を電気的に接続する。
【0033】
〈モールド工程S6〉
巻線および結線されたステーターコア円環組立体300を樹脂成形金型に設置し、モールド成形する。これにより、
図20のようなステーターが完成する(モールド樹脂は透過するように外形のみ記載)。
図21に示すように、モールド成形時の樹脂400の圧力により、ステーターコア10は半径方向内周側に加圧されることで、ステーターコアの分割面13が突き合わせられて磁気回路を形成する。
【0034】
以上の工程により作成されたステーターに軸方向両側のそれぞれに軸受を取り付けたローター60を組み込み、ブラケットを嵌め合わせることにより、
図21のようなモーター70にすることができる。
【0035】
以上の構成により、巻線機の改造または組み換えをせずに、異なる形状のステーターコアを巻線でき、分割されたステーターコアを容易に連結し、円環状に組立てでき、軸方向に分割されたインシュレーターの一部または全部を共通の形状とできる。また、従来のインシュレーターの構造では、ティースを把持する機構をティース形状ごとに用意し、製造装置に付け替える必要があったが、本実施の形態では、インシュレーターの連結部に備えた柱状部と開口部により、隣接するインシュレーター間の距離を可変に調整することができ、複数種類のステーターコアを、製造設備を変更せずに巻線でき、高性能なステーターおよびモーターを得ることができる。よって、ステーターおよびモーターにおいて、部品点数と製造工程を増加させることなく、巻線を高密度に巻くことができる。
【0036】
また、特許文献2では、連結部がステーターコア外径より外側に配置しており、巻線中にステーターコアの隣接するヨーク部が干渉しないようにヨーク部の一部を減肉し、モーターの効率を低下させる必要があった。一方、本実施の形態では、ステーターコアの磁路を確保することが可能なステーターおよびモーターを得ることができる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1の、スロット穴状の開口部252と同様なガイド部の機能を有する連結部25bの構造を
図22、
図23で説明する。連結部25bは、平行に伸びる2つの腕状部25b1、25b2を、接続部25b3により連結して形成してもよい。そして、腕状部25b1、25b2に、突部252dが形成され、実施の形態1で説明した第一円弧部252a、第二円弧部252bと同様な機能を有する第一嵌合部25b4、第二嵌合部25b5が形成されている。接続部25b3は、第一嵌合部25b4と第二嵌合部25b5の間で、柱状部251の移動を妨げないように2つの腕状部25b1、25b2の底部に形成してもよい。なお、
図11で説明したように、同じ形状のインシュレーター20a、20bを軸方向反対側に組み付けてステーターコア絶縁体を構成するため、インシュレーター20a、20bにおいて、柱状部251と第一嵌合部25b4、および柱状部251と第二嵌合部25b5の位置関係は互いに逆となるため、底部の位置も逆となり、接続部25b3は2つの腕状部25b1、25b2の上部に形成されていると言うこともできる。
【0038】
本実施の形態の連結部25aの柱状部251は、実施の形態1のような円柱形状ではなく、例えば六角柱のような多角形状とされている。そして、第一嵌合部25b4、第二嵌合部25b5は、柱状部251の外周に沿う形状とされている。
図22の上面図で理解できるように、第一嵌合部25b4の形状は、柱状部251の形状と図形的に合同または相似形状をベースとしており、予め定められた複数の角度で嵌合するように、多角形状の角部と係合し、回動を係止する三角溝25b7を形成してもよい。
【0039】
また、柱状部251は、インシュレーター20同士の距離が最も近くなる第二嵌合部25b5において、隣接するインシュレーター20及びステーターコア10を予め定められた角度に固定することができる。柱状部251と第一嵌合部25b4または第二嵌合部25b5との嵌合は、インシュレーターの弾性変形を利用したスナップフィット形状としていることで、簡単に組み立てることができる。スナップフィットは、軸方向に垂直な面内において着脱可能である。
【0040】
図24は、実施の形態1の
図11、12で説明したのと同様に、本実施の形態のインシュレーター連結工程において、柱状部251と第一嵌合部25b4とを嵌合させることでステーターコア絶縁組立体100が複数連結され、巻線工程により、ステーターコア連結体200としてコア把持機構51に装着され、巻線された後の状態である。柱状部251の多角形状が第一嵌合部25b4に嵌合した状態でインシュレーター20を回動させる際に、一定以上の回転荷重で第一嵌合部25b4の開口部が弾性変形して回動できる。これにより、巻線工程においてコアの角度を選択的に保持する補助機構の機能を有する。
【0041】
実施の形態1の
図15および
図16で説明したのと同様に、本実施の形態において、巻線されたステーターコア連結体200の連結部をステーターコア円環組立体300とするための過程を
図25、
図26に示す。
図24の状態から第一嵌合部25b4に嵌合している柱状部251を回動させ、
図25の状態とした後、柱状部251を第二嵌合部25b5の方向に移動することにより、
図26に示すように、柱状部251が突部252dを乗り越えて第二嵌合部25b5に嵌合する。
【0042】
本実施の形態のような連結部25a、25bの形状にすることで、インシュレーター20同士の距離が最も遠くなる第一嵌合部25b4と最も近くなる第二嵌合部25b5でのスナップフィット時の発生歪みを同等にすることができる。また、実施の形態1同様、インシュレーター20の連結部25a、25bを、ステーターコア10の外径よりも内側に収める構成であるため、後述するモールド樹脂の肉厚を確保できる。
【0043】
実施の形態3.
図27、
図28で示すように、インシュレーター20の長穴部252cの長辺が第二円弧部252bの円弧の接線となっており、ステーターコア連結体200となったときに第二円弧部252bによる周方向への移動を規制する保持手段を持たない。このため、連結部25a、25bの側面に、係り留め部256を有する。
図29のように、隣接するステーターコア10a、10bと組み合わせられたときに、
図30は、ステーターコアを透過し、係り留め部256が見えるようにした図であり、隣接するインシュレーターの係り留め部256と引っかかり、インシュレーター及びステーターコア絶縁組立体の周方向への移動を規制する位置に設けられている。
図27のように、隣接するインシュレーターの係り留め部256は連結部25a、25bに対して突き出した部分を有する。係り留め部256の一方または両方は、挿入時に弾性変形しやすくなるように、突き出した部分の反対側が切り欠かれている。
【0044】
連結部25a、25bの側面に弾性変形する係り留め部256を有することで、係り留め部256がステーターコア10a、10bの周方向の移動を規制し、長穴部252cはステーターコア10a、10bの半径方向の移動を規制する。実施の形態1の場合、第二円弧部252bは第一円弧部252aと同等の寸法となる制約があるが、本実施の形態の場合、係り留め部256の寸法制約がなく、必要な強度に合わせて構成できる。また、実施の形態1の形状に本実施の形態の係り留め部256を追加することもできる。このような係り留め部256を形成することにより、ステーターコア10を円環に組んだ後の保持力の増強を図っている。
【0045】
実施の形態4.
図31のモーター70のように、ステーターコア10の最終的な固定に樹脂400ではなく、フレーム80を使用する。フレーム80の材質は例えば、鉄またはアルミニウムなどの金属、強化プラスチックなどの構造用の材料である。フレーム80は円筒形状であり、フレームの内径はステーターコア連結体の外径より小さく、ステーターコア10にフレーム80を組み合わせた状態で、ステーターコアを半径方向内周側に予圧がかかる寸法となっている。
図19または
図26に示す通り、インシュレーター20の連結部25a、25bは、ステーターコア10の外径よりも内側に収まるため、フレーム組付け時にインシュレーターがフレームと干渉することを防ぐことができる。
【0046】
フレーム80をステーターに組み付ける方法は、
図32のフレーム圧入または焼嵌め工程S7において、フレーム80を加熱して熱膨張により径を拡大してはめ合わせたのち、フレーム80を冷やすことで収縮させて固定する焼嵌めによる方法、あるいはフレーム80を加熱せずにフレーム80を圧入する方法がある。また、フレーム80を複数に分割した構造とし、ねじ、溶接、または接着で締結する方法もある。
この構成により、モールドのための金型または成型機が不要となり、より簡素な製造設備でステーターを製造できる。
【0047】
実施の形態5.
図33のようにインシュレーター20を軸方向に分割せず、ステーターコア10を樹脂成形金型に投入しインサート成形する。これにより、ラップ部の段差を考慮せずに絶縁距離を確保できる。ラップ部の段差がある場合は、段差部の薄肉側を樹脂成形の最小厚みとする必要があり、ラップ部の無いところのインシュレーターの肉厚が最小厚みの2倍となる。一方、本実施の形態ではラップ部がないため、インシュレーターの肉厚を樹脂成形の最小厚みにでき、コイルを収める空間を増やすことができ、ステーターの銅損を減らすことができる。
【0048】
実施の形態6.
図34のように、ステーターコア絶縁組立体100を、ステーター1台分を超える数連結して、ステーターコア連結体200とし、複数のコア把持機構51に装着することにより、各相のコイルを、複数のフライヤ52で電線を途中で切らずに連続に巻線する。これにより、巻線装置のサイクルタイムのうち、電線を切る時間を短縮でき、巻線装置の稼働率を向上できる。また、巻線中にステーターコア絶縁組立体100を1個ずつ供給することができ、ワーク供給の待ち時間をなくし、稼働率を向上できる。
【0049】
巻線完了したステーターコアは、
図34中、矢印方向に移動し、排出時に予め円環状に組立て、ステーター1台分のステーターコアが揃った段階で、巻線中のステーターコア連結体200と切り離し、ステーターコア円環組立体300を形成することで、各相のステーターコアを並べ替える手間を省くことができる。なお、
図34は、9極12スロットのような、同相のコイルの間に異相のコイルが2つ並ぶ構成の場合を示したが、10極12スロットなどの、同相のコイルが2つ隣接し、2対の同相コイルの間に異相のコイルが2対ずつ入る場合でも、異なるフライヤ間のステーターコア数を適切な数に変更することで同様の構成で巻線できる。
【0050】
実施の形態7.
実施の形態1から5の連結部25a、25bは、インシュレーター20に備えられているが、本実施の形態では、インシュレーターと別に、別体連結部を備えている。
図35は、本実施の形態のインシュレーター20の斜視図である。
図36は、別体連結部25cの斜視図である。インシュレーター20は、柱状部26a、26bが形成された突部27a、27bを有する。別体連結部25cには開口部252e、252fが形成されており、
図37に示すように、インシュレーター20aの突部27bに形成された柱状部26bと別体連結部25cの開口部252eとが嵌合し、インシュレーター20aに隣接するインシュレーター20bの突部27aに形成された柱状部26aと別体連結部25cの開口部252fとが嵌合することにより回動可能に連結される。
【0051】
これにより、
図38に示すように、
図11と同様、柱状部26a、26bを中心に自在に回動できるステーターコア連結体200を構成する。このような構成により、
図12あるいは
図34に示すのと同様、巻線するステーターコアに隣接するステーターコアがフライヤ52と干渉しない配置まで回動させた状態で巻線装置50のコア把持機構51で把持することができ、巻線装置50で巻線できる。そして、
図39に示すように、巻線されたステーターコア連結体200の連結部をステーターコア円環組立体300に組み付ける姿勢とし、
図40のように円環形状となるように連結する。このとき、インシュレーター20の別体連結部25cは、ステーターコア10の外径よりも内側に収まるよう、構成してもよく、このような構成により、実施の形態1同様、モールド樹脂の肉厚を確保できる。
【0052】
なお、上述の構成では、別体連結部25cに開口部、インシュレーター20に2か所の柱状部があるが、別体連結部25cに柱状部、インシュレーター20に開口部を設けても同様の効果を得る。
【0053】
また、別体連結部25cは2か所ある柱状部26a、26bの両方で回動可能に連結されているが、片方が回動可能に連結されている構成でもよい。
【0054】
また、
図41に示すように、別体連結部25cに形成される開口部252e、252fは、第三円弧部252g、第四円弧部252hを有していてもよい。このように構成することで、
図42、
図43に示すように、機種ごとに別体連結部の長さを調整することで、巻線時の隣接するステーターコアの距離を共通化し、共通の製造設備で段取り無しで製造することができる。
【0055】
以上のように、別体連結部25cによりインシュレーター20を連結することで、ステーターコア円環組立体300の状態で、別体連結部25cがコア外径以内に収まるため、実施の形態1および3と同様の組み立て方で、高密度に巻線が可能となる。また、インシュレーター20の柱状部26a、26bと別体連結部25cの開口部252e、252fとが回動可能に連結される嵌合部をインシュレーター及びステーターコアに対して任意の位置に配置できるため、実施の形態1と同様に、複数種類のステーターコアを、製造設備を変更せずに巻線でき、高性能なステーターおよびモーターを得ることができる。これにより、ステーターおよびモーターにおいて、部品点数と製造工程を増加させることなく、巻線を高密度に巻くことができる。
【0056】
このような方法で組み立てたステーターを使用し、実施の形態1または実施の形態3で説明した方法により、回転電機であるモーター70を製造してもよい。
【0057】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0058】
10:ステーターコア、11:ティース部、12:バックヨーク部、13:分割面、20:インシュレーター、21:コア嵌合部、22:巻枠部、23:内周側ツバ部、23a、23b:内周ツバ嵌合部、24:外周側ツバ部、25a、25b:連結部、25b3:接続部、25b4:第一嵌合部、25b5:第二嵌合部、25c:別体連結部、26a、26b:柱状部、30:コイル、50:巻線装置、51:コア把持機構、52:フライヤ、53:ノズル、60:ローター、70:モーター、80:フレーム、100:ステーターコア絶縁組立体、200:ステーターコア連結体、251:柱状部、252、252e、252f:開口部、252a:第一円弧部、252b:第二円弧部、252c:長穴部、252g:第三円弧部、252h:第四円弧部、253:段差、254、255:突起、300:ステーターコア円環組立体、400:樹脂