(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】再生ポリオレフィンから得られるポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20241011BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241011BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241011BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
C08L23/12
C08K3/013
C08L23/08
C08L23/10
(21)【出願番号】P 2023526291
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2021079446
(87)【国際公開番号】W WO2022090104
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-28
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】カヴァリエーリ、クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】トレオッシ、マウロ
(72)【発明者】
【氏名】コンサルヴィ、マルコ
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-510864(JP,A)
【文献】特表2015-518078(JP,A)
【文献】特表2012-516385(JP,A)
【文献】国際公開第2019/224129(WO,A1)
【文献】特表2018-532859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0263013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 55
重量%~
85重量%の再生ポリプロピレン(r-PP)と、
(b) 10
重量%~
30重量%のポリオレフィン
エラストマー(POE)と、
(c) i) メルトフローレートMFR
Iが0.5~10g/10分の25
重量%~75
重量%の
画分A1と、MFR
II/MFR
Iを30~2000にされたメルトフローレートMFR
IIの75
重量%~25
重量%の
画分A2と、を含む20
重量%~90
重量%の結晶
性ポリプロピレン
成分であって、前記画分A1及びA2が、プロピレン単独重合体、エチレンを最大で8重量%含むプロピレンのランダム共重合体、及び少なくとも一つのC
4
~C
10
α-オレフィンを最大で8重量%含むプロピレンのランダム共重合体からなる群より独立的に選択される、結晶性ポリプロピレン成分、及び
ii)
エチレンと、少なくとも一つのC
3
~C
10
α-オレフィンとの10重量%~80重量%の共重合体
成分であって、前記共重合体が、10
重量%~70
重量%のエチレン
を含み、
25℃でキシレンに可溶であり、135℃における、テトラヒドロナフタレンにおいて計測される固有粘度[η]が3~9dl/g
である、共重合体成分、
を含む3
重量%~
12重量%の組成物と、
(d) 1~6重量%の無機フィラーと、
を
含むポリプロピレン組成物であって、
前記ポリプロピレン組成物
の全体におけるメルトフローレート(ISO 1133 230℃/2.16kg)値は、10g/10
分~
50g/10分の範囲であり、(a)~(d)の割合は
前記ポリプロピレン組成物の総重量
に対するものである
、ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
成分(a)
は60~80重量%
の範囲であり、
成分(b)
は12~26重量%
の範囲であり、
成分(c)
は4~10重量%
の範囲であり、
成分(d)
は2~4重量%
の範囲である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
再生PP
成分(a)におけるゴムの含有量が1.5~12重量%であることを特徴とする
請求項1又は2に記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
メルトフローレート(ISO 1133 230℃/2.16kg)
が20~45g/10分
の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
成分(b)は、C
2~C
4共重合体、C
2~C
6共重合体、C
2~C
8共重合体から選択
されたエチレン-α-オレフィン共重合体であり、エチレンの
量は70~80重量%
の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項6】
成分(b)
は、0.85~0.89
g/cm
3
の範囲の密度、
及び0.3~1g/10分のメルトフローレー
ト(ISO 1133 230℃/2.16kg)
を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項7】
前記成分(c)には30
重量%~80
重量%の
成分(i)を含み、そして
画分A1とA2のMFRは、MFR
II/MFR
I比が40~2000
の範囲であるように
することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項8】
前記成分(c)
は20
重量%~70
重量%の
成分(ii)を含み、
前記成分(ii)は、
135℃における、テトラヒドロナフタレンにおいて計測される固有粘度[
η]が5~8dl/g
であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項9】
前記成分(c)全体におけるメルトフローレートの
範囲は0.3~15g/10分であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項10】
前記成分(d)は、タルク、ガラスファイバ、CaCO
3、クレイ、カーボンブラック、マイカから選択されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項11】
前記成分(d)は、平均粒度が5μm未満のタルクであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項12】
前記成分(d)は、2~4重量%の
範囲の量で存在することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項13】
さらに、添加剤
パッケージを含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項14】
シャルピー衝撃強度は、23℃で30~100kJ/m
2であり、そして15MPa以上の降伏引張り強度、10%以上の降伏伸長率、10MPa以上の破壊引張り強度、130%以上の破壊伸長率を
示していることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一つに記載
のポリプロピレン組成物。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一つに記載
の組成物によって作成された射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリオレフィン組成物に関し、特に、射出成形品に利用されることができる再生ポリプロピレンを含むポリプロピレン組成物に関する。本開示におけるポリオレフィン組成物によれば、自動車の分野や、スーツケース、コンテナーなどの家庭用品のいずれにも利用されている。
【背景技術】
【0002】
WO 2006/067023において、この用途として利用されるポリオレフィン組成物、特にスーツケースは、
13C-NMRによって25℃でキシレンに不溶である画分に対して計測され、アイソタクチックペンタッド(mmmm)の量が97.5モル%以上で、そして多分散度指数の範囲は、4~10、好ましくは5~10、さらに好ましくは5.5~10である50%~77%、好ましくは50%~70%より小さく結晶性プロピレンポリマーと、
30%~70%、好ましくは35%~60%の量のエチレン由来の繰り返しユニットを有し、そして外気温度において部分的にキシレンに可溶であり、外気温度においてキシレンに可溶されるポリマー画分の固有粘度値の範囲は2~4dl/gである13%~28%、好ましくは15%~28%以上のエチレン及びプロピレンのエラストマー共重合体と、
固有粘度値の範囲は1~3dl/gであり、10%より小さく量のプロピレン由来の繰り返しユニットを任意に含む10%~22%、好ましくは10%~20%のポリエチレンと、
から成形されると記述されており、
【0003】
前記の組成物は、良好な剛性、耐衝撃性、および抗応力致白性を有しており、
【0004】
一般的に、ポリオレフィン組成物は、性能の面では評価されているが、特に再生不可能な資源によって生産されるという事実が、持続可能性の観点から懸念を提起されている。
【0005】
そのため、多成分系ポリオレフィン組成物においてポリプロピレン又はポリエチレンのような可変量な再生ポリオレフィンを使用されることで、この問題を緩和しようとする試みが一般的である。
【0006】
再生ポリオレフィンは、PVC、PET又はPSなどの他のポリマーから離れる様々なステップを経る消費者廃棄物(PCW)由来の材料の流れで得られる。
【0007】
ポリオレフィン回收における重要な問題の一つは、特に消費者廃棄物(PCW)由来の材料の流れを取り扱うとき、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)を定量的に分離されることは難しであり、その逆も同じである。そのため、再生PE(rPE)又は再生PP(rPP)と呼ばれるにもかかわらず、PCW由来の市販品はPP及びPEの混合物であり、二次成分が最大で<50重量%に達することがわかる。
【0008】
この事実は、これらの使用用途を仮定するのに完全に適していない可能性のある再生材料の添加剤及び二次成分の存在と関連付けられ、このような再生PP/PE混合物は、再射出期間における機械的、光学的、美的な劣化が現れる可能性及び主ポリマー相間の互換性が弱いという問題がある。その結果、r-PP又はr-PE由来の組成物の性能が低いため、r-PP又はr-PEによる製品の信頼性が低くなる。
【0009】
そのため、高い性能を必要とする用途に再生材料を使うことには強く反対させられ、低コストで要求が厳しくない用途に限られている。
【0010】
高流動性のポリプロピレン組成物を必要とする場合において、この問題を解決することはさらに困難である。実際、射出成形によって大きなサイズの物体を作るには、一般的には、高い流動性を有するポリマーが必要とされる。しかしながら、高い流動性を有するポリマー組成物は、機械的性質の望ましくない劣化に関する可能性があり、これにより、最終的に、物体は、いくつかの用途には適されないである。
【0011】
再生ポリプロピレンに基づくある特定の製剤が、機械的および美的性質の組み合わせに優れた高流動性射出成形品の調製に使用できることが予想外に判明されたのである。
【発明の概要】
【0012】
そのため、本開示の目的はポリプロピレン組成物を提供することであり、
(a) 55重量%~85重量%、好ましくは60重量%~80重量%、さらに好ましくは62重量%~75重量%の再生ポリプロピレン(r-PP)と、
(b) 10重量%~30重量%、好ましくは12重量%~26重量%、さらに好ましくは15重量%~25重量%のポリオレフィンエラストマー(POE)と、
(c) i) メルトフローレートMFRIが0.5~10g/10分の25重量%~75重量%の画分A1と、MFRII/MFRIを30~2000にされたメルトフローレートMFRIIの75重量%~25重量%の画分A2と、を含む20重量%~90重量%の結晶性ポリプロピレン成分であって、前記画分A1及びA2が、プロピレン単独重合体、エチレンを最大で8重量%含むプロピレンランダム共重合体、及び少なくとも一つのC4-C10α-オレフィンを最大で8重量%含むプロピレンランダム共重合体とからなる群より独立的に選択される、結晶性ポリプロピレン成分、及び、
ii) エチレンと、少なくとも一つのC
3
~C
10
α-オレフィンとの10重量%~80重量%の共重合体成分であって、前記共重合体が、10重量%~70重量%のエチレンと、任意に少量のジエンとを含み、25℃でキシレンに可溶であり、135℃における、テトラヒドロナフタレンにおいて計測される固有粘度[η]が3~9dl/gである、共重合体成分、
を含む3重量%~12重量%、好ましくは4重量%~10重量%、さらに好ましくは5重量%~8重量%の組成物と、
(d) 1~6重量%の無機フィラーと、
を含み、
組成物全体におけるメルトフローレート(ISO 1133 230℃/2.16 kg)値は、10g/10'~50g/10'、好ましくは18.0 g/10'~50 g/10'、さらに好ましくは20~45 g/10'、特に23~35 g/10'であり、(a)~(d)の割合は前述のポリプロピレン組成物の総重量に対するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に係る「共重合体」という用語は、鎖内に2つの異なる繰り返しユニットを持つポリマーと、三元共重合体のような2つ以上の異なる繰り返しユニットを持つポリマーという。「外気温度」及び「室温」とは25℃の温度をいう。
【0014】
本明細書において、「結晶性ポリプロピレン」という用語は、
13C-MNRによって25℃でキシレンに不溶である画分に対して計測され、アイソタクチックペンタッド(mmmm)の量が70モル%を超えるプロピレンポリマーを意味し、「エラストマー」ポリマーとは、外気温度でキシレンにおける溶解度高于50重量%のポリマーを意味する。
【0015】
ポリプロピレン組成物を形成する成分の特徴は、互いに密接していない。これは、これらの特徴における一つの特徴の特定のレベルの好みレベルは、同一又は異なる成分の残りの特徴の同一の好みレベルに必ずしも係らないということを意味する。これに対して、本開示において、如何なる成分(a)~(d)及び成分(a)~(d)の如何なる好ましい範囲の特徴は、成分(a)~(d)の如何なる好ましい範囲の特徴における一つ又は多くの特徴及び本開示に記述された如何なる可能性のある付加成分及びその特徴と組み合わせることを意図している。
【0016】
r-PP成分(a)は、工業化後又は消費後由来のプラスチック廃棄物を含む。好ましくは、洗剤とシャンプーの瓶、乳製品の缶、肉皿などの消費者廃棄物(PCW)PP包装廃棄物由来のものを含む。PP原料廃棄物は、廃棄物管理機関によって事前に分類することができる。適切なPP源は、例えばDSD324(05-2012)とDSD324-1規格(02-2016)によって集まった廃棄物である。光学的選別によって不要なポリマーを除去することもできるが、ポリスチレン又はポリエチレン(PE)による汚染がある程度発生する可能性があるので、組成物の唯一のポリマー成分として使用することを防止する。
【0017】
PPは、PP単独重合体(PPh)、PPランダム共重合体(PPr)とPP衝撃共重合体(又はヘテロフィシックPP共重合体PPc)の3つの製品シリーズを利用可能である。
【0018】
この廃棄物は、例えば(a)主にPP単独重合体(PPh)及びPPランダム共重合体(PPr)を含み、実際にゴム(例えば2軸配向ポリプロピレン(BOPP))を含まない押出シード及びフィルム材と、(b)PP単独重合体(PPh)と、PPランダム共重合体(PPr)と、衝撃共重合体(PPc)との混合物であり、約15重量%のゴムを含む射出材と、から発生していることが特徴としている。
【0019】
再生PP成分(a)は、約半分の包装材(BOPP)と、半分のゴムを含む射出材と、を含む。この射出材は、例えばC2-C3ゴム、熱可塑性エラストマー(TPE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)又はエチレンプロピレンゴム(EPR)などのコムを含むことができる。
【0020】
ポリマー組成物において成分(a)として使用する再生PP自体が得る混合物のゴム含有量(ゴムを含む射出材からのゴムで、重量%は再生PPの混合物の総量に対するものである)は、例えば1.5~12重量%である。
【0021】
ポリプロピレン組成物の再生PP(a)は、好ましくは25~75重量%のBOPPと、25~75重量%のゴムを含む射出材からなり、重量%は再生PPの総量に対するものである。
【0022】
再生PPは、好ましくは60重量%~80重量%、さらに好ましくは62重量%~75重量%で、ポリマー組成物に存在し、重量%は、このポリプロピレン組成物の総重量に対するものである。
【0023】
再生PPのメルトフローレート(ISO 1133 230℃/2.16 kg)は重要ではないにもかかわらず、一般的に、その範囲は、5~150g/10'、好ましくは8~120g/10'、さらに好ましくは40~100g/10'である。
【0024】
ポリマー成分(b)は、エチレン-α-オレフィン共重合体であるポリオレフィンエラストマー(POE)を含む。POEの例として、C2-C4共重合体と、C2-C6共重合体と、C2-C8共重合体とが挙げられる。
【0025】
POEは、70~80重量%、さらに好ましくは73~78重量%、もっとも好ましくは74~77重量%のエチレンを含むC2-C6共重合体又はC2-C8共重合体を含むことが好ましい。その中で、重量%のエチレンはこのPOEに対するものである。
【0026】
本開示のPOEは、好ましくは一中心遷移金属化合物基触媒によって得られるエチレン(C2)オクテン(C8)エラストマーを含む。
【0027】
POEは、好ましくは0.85~0.89g/cm3の間、さらに好ましくは0.855~0.885g/cm3の間、最も好ましくは0.86~0.875g/cm3の間の密度を有する。
【0028】
POEのMFRは、好ましくは0.3~1g/10'の間、さらに好ましくは0.4~0.7の間、最も好ましくは0.45~0.6g/10'(190℃、2.16kg)の間である。
【0029】
POEは市販可能であり、POEの例として、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)が製品化されたInfuse 9107、Infuse 9077、Engage XLT8677が挙げられる。
【0030】
POEは、好ましくはポリプロピレン組成物の10重量%~30重量%、好ましくは12重量%~26重量%、さらに好ましくは15重量%~25重量%の量で存在する。
【0031】
ポリプロピレン組成物の成分(c)は、結晶性ポリプロピレン成分と、共重合体成分との少なくとも2つの成分を含む。結晶性ポリプロピレン成分(i)は、成分(c)の総重量の20重量%~90重量%、好ましくは30重量%~80重量%、最も好ましくは50重量%~80重量%の範囲の量で存在する。共重合体成分(ii)は、成分(c)総重量の80重量%~10重量%、好ましくは70重量%~20重量%、最も好ましくは50重量%~20重量%の範囲の量で存在し、その中で、各成分の割合の和は100重量%に等しい。
【0032】
結晶性ポリプロピレン成分(i)を形成する画分A1とA2は、それぞれプロピレン単独重合体であり、最大で8%、好ましくは0.2%~5%のエチレンのプロピレンランダム共重合体、又は最大で8%、好ましくは1%~8%の少なくとも1つの適合式CH2=CHRのC4-C10α-オレフィンのプロピレンランダム共重合体を含み、その中で、Rは、フェニルのような直鎖又は枝鎖C1-C8アルキル又はアリルラジカルである。例示的なC4-C10α-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンであり、その中で、1-ブテンは特に好ましい。
【0033】
画分A1とA2は、メルトフローレートについて記述したように、その平均分子量について互いに異なっており、画分A1は比較的高い分子量(低メルトフローレートMFRIは0.5~10g/10分)を有し、画分A2は比較的低い分子量(高メルトフローレート)を有する。これはMFRII/MFRIの比によって定義されており、その範囲は、30~2000、好ましくは40~2000、さらに好ましくは50~1000、もっとさらに好ましくは60~500である。
【0034】
一般的に、画分A1とA2に対して、室温でキシレンに不溶であるポリマーの含有量は、80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。プロピレン単独重合体に対して、単一の画分の重量に基づき、室温でキシレンに不溶であるポリマーの含有量は、90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、最も好ましくは97重量%以上である。
【0035】
成分(ii)は、10~70重量%のエチレンと、少なくとも1つの式CH2=CHRのC3-C10α-オレフィンと、任意に少量のジエンの共重合体成分とを含み、その中で、Rはフェニルのような直鎖又は枝鎖C1-C8アルキル又はアリルラジカルである。共重合体成分のエチレン含有量は、好ましくは15~60重量%、最も好ましくは15~50重量%である。
【0036】
例示的なC3-C10α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンを含み、その中でプロピレンと1-ブテンは特に好ましい。適切なジエンには、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、エチリデン-ノルボルネン-1を含む。現れるとき、共重合体成分(ii)の重量に対して、ジエンの量は一般的に0.5~10重量%である。
【0037】
共重合体成分(ii)は、室温で少なくとも部分的にキシレンに可溶であり、そして135℃でテトラヒドロナフタレンにおける固有粘度[η]は、3~9dl/g、好ましくは4~9、さらに好ましくは5~8、最も好ましくは5.5~7dl/gである。
【0038】
成分(c)全体のメルトフローレートの範囲は、0.1~40g/10分、さらに好ましくは0.3~15g/10分、さらに好ましくは0.5~10g/10'である。
【0039】
成分(c)は成分(i)と(ii)を機械的に混合することで調製してもよいし、順次重合ステップによって得られてもよい、例えばUS6,586,531 B2に記述されたように、その相関部分は参照によって組み込まれる。
【0040】
成分(d)は無機フィラーであり、適切な無機フィラーは、タルク、ガラスファイバ、CaCO3、クレイ、カーボンブラック、マイカからなる群から選べることができる。その中で好ましくはタルクであり、タルクは、例えば未変性で、そして好ましくはコーディング又は表面処理がなされていないものであってもよい。好ましくはタルクの粒子のサイズは非常に小さく、平均サイズは5μm未満である。
【0041】
一般的に、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、成分(d)は1~6重量%を占め、さらに好ましくは範囲が2~4重量%の量で存在する。前述の量は、全部又は部分的に組成物の再生成分に存在するフィラーより導出され及び/又はポリプロピレン組成物の調製中において新鮮なフィラーとして付加可能である。
【0042】
任意の成分として、SEBSゴムを利用可能である。
【0043】
SEBSゴムは、(部分的に)水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体であり、これらのSEBSゴムはスチレンブロック共重合体(SBC)ファミリーであり、これらのポリマーは、三ブロック共重合体であり、内部ポリブタジエン、ポリイソプレン又は水素化ポリブタジエン又はポリイソプレンブロックを有するポリマー鎖の両端にスチレンを有する。
【0044】
SEBS共重合体は、例えばKraton SEBS G1657MSのように、KratonとTuftecの商品名で市販可能である。
【0045】
必要する場合には、ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、SEBSは0.1~4重量%、好ましくは0.2~3重量%で存在する。
【0046】
ポリプロピレン組成物は、さらに、0.05~10重量%、好ましくは0.1~8重量%の添加剤を含むことができる。
【0047】
添加剤は、ポリエチレン(例えば原生HDPE又は再生HDPE)、無水マレイン酸グラフトPE(PEMA)、無水マレイン酸グラフトPP(PPMA)、安定剤、過酸化物、酸化カルシウム(CaO)又は着色剤、剥離剤を含むことができる。
【0048】
PEの例として、高密度PE(HDPE)、低密度PE(LDPE)、線形低密度PE(LLDPE)がある。
【0049】
PPMAのような極性基を持つPP互換酸を追加することができる。
【0050】
PEMA、PE又はPPMAは、例えば0.1~2重量%、好ましくは0.2~1重量%、さらに好ましくは0.4~0.8重量%でポリマー組成物に追加することができる。
【0051】
例えばマスターバッチTosaf ME 833848のような安定剤を追加することができ、それは約70重量%のLDPEと、フェノール系安定剤(Irganox B225)及びIrgafosとの混合物であり、一般的に、このようなマスターバッチは0.2~1.5重量%の間、好ましくは0.3~1.2重量%の間の量で追加される。
【0052】
有機化合物又はマスターバッチの形での過酸化物を追加することができ、過酸化物は材料の流れを改善され、そして所望のメルトフローを図ることができる。
【0053】
この過酸化物は、例えばZebraflow T028、Zebraflow T0214又はZebraflow T0318からなるものから選ばれることができ、これらは過酸化物及びポリオレフィンのマスターバッチである。過酸化物の具体的な量は、当業者より、単一成分のメルトフローレート、それぞれの量、および最終的な所望のメルトフローレートを考えて決定される。例えば、過酸化物は添加剤パッケージ全体の2~10重量%を占めることができる。
【0054】
HClの放出を抑制するために、CaOを追加することができ、CaOをマスターバッチとして例えばLDPEと共に追加してもよい。CaOは、例えば0~2重量%の範囲で追加してもよい。
【0055】
黒い着色剤は、例えばマスターバッチ混合物の形で0.1~5重量%、好ましくは1~2重量%でポリマー組成物に追加してもよい。
【0056】
剥離剤は、組成物の加工期間において揮発物を除去するための化合物であり、BYK 4200は市販品の一つである。
【0057】
本開示における好ましく実施例において、
(a) 55重量%~85重量%、好ましくは60重量%~80重量%、さらに好ましくは62重量%~75重量%の再生ポリプロピレン(r-PP)と、
(b) 10重量%~30重量%、好ましくは12重量%~26重量%、さらに好ましくは15重量%~25重量%のポリオレフィンエラストマー(POE)と、
(c) i) メルトフローレートMFRIが0.5~10g/10分の25重量%~75重量%の画分A1と、MFRII/MFRIを30~2000にされたメルトフローレートMFRIIの75重量%~25重量%の画分A2と、を含む20重量%~90重量%の結晶性ポリプロピレン成分であって、前記画分A1及びA2が、プロピレン単独重合体、エチレンを最大で8重量%含むプロピレンランダム共重合体、及び少なくとも一つのC4-C10α-オレフィンを最大で8重量%含むプロピレンランダム共重合体とからなる群より独立的に選択される、結晶性ポリプロピレン成分、及び、
ii) 10重量%~70重量%のエチレンと、任意に少量のジエンとを含み、室温でキシレンに可溶であり、その固有粘度[η]が3~9dl/gの、10%~80%のエチレンと、少なくとも一つのC3-C10α-オレフィンとの共重合体成分、
を含む3重量%~12重量%、好ましくは4重量%~10重量%、さらに好ましくは5重量%~8重量%の組成物と、
(d) 1~6重量%の無機フィラーと、
(e) 0.5~7重量%の添加剤と、
を含むポリプロピレン組成物であって、
【0058】
組成物全体におけるメルトフローレート(ISO 1133 230℃/2.16 kg)値は、10g/10'~50g/10'、好ましくは18.0g/10'~50g/10'、さらに好ましくは20~45g/10'、特に好ましくは23~35g/10'であり、(a)、(b)、(c)、(d)と(e)の割合は前述のポリプロピレン組成物の総重量に対するものである。
【0059】
本開示によれば、ポリプロピレン組成物の湾曲率の範囲は、好ましく800~1400MPa、好ましくは810~1300MPaである。
【0060】
ポリプロピレン組成物は23℃でのシャルピー衝撃強度は、好ましく30~100kJ/m2、さらに好ましくは40~80kJ/m2である。-20℃でのシャルピー衝撃強度の範囲は、5~20kJ/m2、さらに好ましくは6~15kJ/m2である。
【0061】
本開示のポリプロピレン組成物は、15Mpa以上の降伏引張り強度、10%以上の降伏伸長率、10MPa以上の破壊引張り強度、130%以上、好ましくは150%以上の破壊伸長率を現れることができる。
【0062】
本開示のポリプロピレン組成物は、従来の技術に従って、成分(a)~(d)と、任意の他の成分と、添加剤とを機械的に混合することで得ることができる。
【0063】
ポリマー組成物の調製方法は、共回転ツインスクリュータンデム押出機を利用して、成分(a-d)と任意の添加剤を追加することができる。
【0064】
添加剤は、タンデム押出機の回収用押出機(第一の押出機)とコンパウント押出機(第二の押出機)に追加されることができる。
【0065】
ポリプロピレンポリマー組成物は、製品を作るために、粒子状又はフレーク状に現れることができる。
【0066】
本開示のポリプロピレンポリマー組成物再生PPは、例えばボックス、トレイ、スーツケースまたは日用品などの長期使用製品を作るのに適している。
【0067】
ポリマー組成物によって作る制品は、射出成型又はブロー成形によって作るのは好ましい。
【0068】
説明のために以下の実例を提示されるが、本開示を限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
特性
25℃でのキシレン可溶(XS)画分
2.5gポリマー及び250mlキシレンを、チルドルーム及びマグネティックスターラーを組み付けているガラスフラスコに導入され、30分間以内に溶媒の沸点まで温度を上げた後、得られたクリア溶液を還流したまま30分間攪拌されて、そして密閉されたフラスコを氷の水浴において30分間保持された後、25℃での恒温の水浴において30分間保持されて、得られた個体をクイックフィルタリングぺーバーによって濾過され、濾過された液体を予め計量されたアルミニウムコンテナーに100ml注ぎ、蒸発によって溶媒を除去するために、それを、窒素ガス流れ下で加熱プレートに加熱され、そして、一定の重量が得られるまで、コンテナーを真空下で80℃のオーブンに保持され、そして、室温でキシレンに可溶されるポリマーの重量割合を計算される。
【0070】
キシレン可溶画分の含有量は、原本の2.5gの割合で現れ、そして、その差(100%まで補完する)によってキシレン不溶割合(%)を現れる。
【0071】
成分B)とC)のXSは、以下の式に基づいて計算されうる。
【0072】
XStot=WaXSA+WbXSB+WcXSC
【0073】
但し、Wa、WbとWcはそれぞれ成分A、BとCの相対量であり、そして(A+B+C=1)である。
メルトフローレート(MFR)
【0074】
特に指定がない限り、ISO 1133に準拠して230℃及び2.16kgの荷重で計測さらる。
固有粘度(IV)
【0075】
試料を135℃でテトラヒドロナフタレンに溶解させた後、キャピラリ粘度計に注ぐ。粘度計管(ウベローデ型)は円筒形のガラスジャケットで囲まれ、このような設定は、循環恒温液体を利用されて温度制御することを認められ、光電装置によってメニスカスの下方への通過を計時される。
【0076】
メニスカスによる上のランプの前における通過は、石英水晶発振子を備えたカウンターをスタートされる。メニスカスが下のランプを通過されるとカウンターを停止され、流出時間が記録される。これはハギンズの方程式(Huggins, M.L., 《米国化学会志(J. Am. Chem. Soc.)》, 1942, 64, 2716)に基づいて固有粘度に変換され、条件は、同じ試験条件(同じ粘度計と同じ温度)において純溶媒の流れ時間が既知であり、[η]を1つのモノポリマー溶液を利用して測定される。
多分散性指数:
【0077】
RHEOMETRICS(USA)により販売されるRMS-800型の平行板レオメタを利用して200℃の温度で測定されて、このレオメタは、0.1rad/secから100rad/secまで増加する発振周波数で稼働する。クロスオーバー係数に基づいて、以下の式によってP.I.を導出する。
P.I.=105/Gc
【0078】
但し、Gcはクロスオーバー係数で、G'=G''となる値(Paで表す)として定義され、但し、G'は記憶係数であり、そしてG''は損失係数である。
エチレン(C2)含有量
【0079】
プロピレン/エチレン共重合体の13C NMR
【0080】
13C NMRスペクトルは、クリオプローブを整備されたBruker AV-600分光計によって採取され、この分光計は、120℃でフーリエ変換モードにおいて160.91 MHzの周波数で稼働される。
【0081】
Sββカーボン(命名法は、「13C NMRを利用してエチレンプロピレンゴムにおけるモノマーシーケンス分布を測定する。3.反応確率モードの使用(Monomer Sequence Distribution in Ethylene-Propylene Rubber Measured by 13C NMR. 3. Use of Reaction Probability Mode)」C. J. Carman, R. A. HarringtonとC. E. Wilkes,《大分子(Macromolecules)》1977,10,536)のピークは29.9ppmで内部基準として用いられている。試料を120℃で8重量/体積%の濃度で1,1,2,2-テトラクロロエタンd2に溶解される。各パルスとCPDの間の15秒の遅延によって1H-13Cカップリングを除去するために、それぞれのスペクトルを90°パルスで取得され、9000Hzのスペクトルウィンドウを利用して512個のトランジェントを32Kデータポイントに格納される。
【0082】
Kakugo(「カーボン-13 NMRはδ-三塩化チタン-塩化ジエチルアルミニウム製のエチレンプロピレン共重合体におけるモノマーシーケンス分布を特定する(Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylene copolymers prepared with δ-titanium trichloride- diethylaluminum chloride)」M. Kakugo,Y.Naito, K.MizunumaとT. Miyatake,《大分子》1982, 15, 1150)以下の式によってスペクトルを指定され、三元組分布、組成の評価をする。
PPP=100Tββ/S PPE=100Tβδ/S EPE=100Tδδ/S
PEP=100Sββ/S PEE=100Sβδ/S EEE=100(0.25Sγδ+0.5Sδδ)/S
S=Tββ+Tβδ+Tδδ+Sββ+Sβδ+0.25Sγδ+0.5Sδδ
【0083】
以下の式を利用してエチレン含有量のモル割合を評価する。
Eモル%=100*[PEP+PEE+EEE]
【0084】
以下の式を利用してエチレン含有量の重量割合を評価する。
【数1】
【0085】
但し、Pモル%はプロピレン含有量のモル割合であり、MWEとMWpそれぞれはエチレンとプロピレンの分子量である。
【0086】
Carman(C.J. Carman, R.A. HarringtonとC.E. Wilkes,《大分子》, 1977; 10, 536)に基づいて、以下の式によって反応比r1r2の積を計算する。
【数2】
【0087】
プロピレンシーケンスの構造化は、PPPmmTββ(28.90~29.65ppm)と全体Tββ(29.80~28.37ppm)の比率に基づいてmm含有量を計算される。
【0088】
成分b2のエチレンC2含有量は、成分B)におけるC2含有量を計測されることで得られ、そして、式C2tot=Xb1C2b1+Xb2C2b2によって計算され、但しXb1とXb2は、組成物における成分b1とb2の量である。
機械試験用の試料
【0089】
ISO 1873-2:2007に準拠して試料を得られた。
【0090】
シャルピー衝撃試験:ISO 179-leAとISO 1873-2に準拠して確定する。
【0091】
降伏伸長率:ISO 527に準拠して計測される。
【0092】
破壊伸長率:ISO 527に準拠して計測される。
【0093】
破壊応力:ISO 527に準拠して計測される。
【0094】
引張率:ISO 527-2に準拠する。
融点と結晶点
【0095】
融点は、ISO 11357-3に準拠してDSC計測器を利用して、20C/分のスキャンレートで、冷却及び加熱の条件下で、不活性N2の流れで重量5~7mgの試料を計測さらました。インジウムを利用して計測器を校正する。
実施例
材料
【0096】
この例に利用されている再生PPのMFRは、70g/10'であり、密度は0.915 g/cm3である。
【0097】
利用されるPOE成分(b)はInfuse9077である。
【0098】
成分(c)は、US US6,586,531 B2の実施例4に基づいて調製された組成物である。
【0099】
成分(d)として、(IMI Fabi SpA-Italy)(T2)が市販されているHM05を利用される。
【0100】
安定剤としてタルクを利用され、0.75重量%のTOSAFが利用される。
【0101】
添加剤パッケージは、通常安定剤混合物(irgafos168/irganox1010)を含み、過酸化物としてZebraFlow T028、剥離剤としてBYK4200を含む。
【0102】
比較例1では、MFRが14g/10'の再生材料に基づき且つ
成分(c)を含まない市販されているポリマー組成物を使用される。
表1
【表1】
表2-最終の組成物の性質
【表2】
【0103】
以上のデータによると、本開示における大量の再生材料に基づく組成物は、再生材料に基づき且つ成分(c)を含まない組成物(c)と同等かそれ以上の機械的性質(破断引張り率6倍以上)を有することが判りました。