(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】部品移載装置および部品装着機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2023529199
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2021023341
(87)【国際公開番号】W WO2022269668
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 賢三
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-209194(JP,A)
【文献】特開平04-279100(JP,A)
【文献】特開2000-269692(JP,A)
【文献】特開2021-190449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めされた基板の所定の装着位置に部品を装着する部品装着具と、
前記部品装着具を昇降駆動する昇降駆動機構と、
前記部品装着具を昇降方向以外に駆動する第二駆動機構と、
位置決めされた前記基板の上面高さを測定する高さ測定部と、
測定された前記上面高さに基づいて、装着済みの前記部品に干渉しない安全高さを演算する演算部と、
前記装着位置で前記部品の装着を終えた前記部品装着具が前記昇降駆動機構に上昇駆動されて前記部品装着具の下端が前記安全高さに上昇するまで、前記昇降駆動機構の動作に前記第二駆動機構の動作をラップさせるラップ動作を禁止するとともに、前記部品装着具の前記下端が前記安全高さまで上昇した以降に前記第二駆動機構の前記ラップ動作を許容する制御部と、を備え
、
前記高さ測定部は、前記部品を保持した前記部品装着具が前記装着位置に向かって下降するときに、前記部品が前記装着位置に接触したことを検知する接触検知センサを含み、前記装着位置の前記上面高さを測定し、
前記演算部は、
前記部品を保持した前記部品装着具が第一の前記装着位置に向かって下降するときに測定された第一の前記装着位置の前記上面高さに基づいて、第一の前記装着位置の前記安全高さを演算するとともに、
第一の前記装着位置の前記安全高さに規定の補正高さを加算して、第二の前記装着位置の前記安全高さとする、
部品移載装置。
【請求項2】
前記演算部は、測定された前記上面高さと、前記基板に装着済みの前記部品の最大高さ寸法とを加算して前記安全高さを演算する、請求項1に記載の部品移載装置。
【請求項3】
前記第二駆動機構は、前記部品装着具を水平二方向に駆動する水平駆動機構、前記部品装着具を垂直軸の回りに自転させるθ軸駆動機構、および、複数の前記部品装着具を垂直中心軸から等距離に有するロータリツールを前記垂直中心軸の回りに自転させるR軸駆動機構の少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の部品移載装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記部品を保持した前記部品装着具が前記装着位置に向かって下降するたびに測定された前記装着位置の前記上面高さに基づいて、複数箇所の前記装着位置に固有の前記安全高さを演算し、
前記制御部は、前記部品の装着を終えた前記部品装着具が上昇するたびに、固有の前記安全高さを用いて制御を行う、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の部品移載装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記部品を保持した前記部品装着具が前記装着位置に向かって下降するときに、保持された前記部品の下端が前記安全高さに下降するときまで前記第二駆動機構の前記ラップ動作を許容するとともに、保持された前記部品の前記下端が前記安全高さに下降した以降に前記第二駆動機構の前記ラップ動作が不要となるように制御する、
請求項
1~
4のいずれか一項に記載の部品移載装置。
【請求項6】
位置決めされた基板の所定の装着位置に部品を装着する部品装着具と、
前記部品装着具を昇降駆動する昇降駆動機構と、
前記部品装着具を昇降方向以外に駆動する第二駆動機構と、
位置決めされた前記基板の上面高さを測定する高さ測定部と、
測定された前記上面高さに基づいて、装着済みの前記部品に干渉しない安全高さを演算する演算部と、
前記昇降駆動機構および前記第二駆動機構を制御する制御部と、を備え、
前記演算部は、前記部品装着具が第一の前記装着位置に向かって下降する以前に前記高さ測定部によって測定された前記上面高さに基づいて下降時の前記安全高さを演算し、さらに、前記部品装着具が第一の前記装着位置に向かって下降するときに測定された第一の前記装着位置の前記上面高さに基づいて上昇時の前記安全高さを演算し、
前記制御部は、前記部品を保持した前記部品装着具が
第一の前記装着位置に向かって下降するときに、保持された前記部品の下端が
下降時の前記安全高さに下降するときまで、前記昇降駆動機構の動作に前記第二駆動機構の動作をラップさせるラップ動作を許容するとともに、保持された前記部品の前記下端が
下降時の前記安全高さに下降した以降に前記第二駆動機構の前記ラップ動作が不要となるように制御
し、さらに、第一の前記装着位置で前記部品の装着を終えた前記部品装着具が前記昇降駆動機構に上昇駆動されて前記部品装着具の下端が上昇時の前記安全高さに上昇するまで、前記昇降駆動機構の動作に前記第二駆動機構の動作をラップさせるラップ動作を禁止するとともに、前記部品装着具の前記下端が上昇時の前記安全高さまで上昇した以降に前記第二駆動機構の前記ラップ動作を許容する、
部品移載装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載された部品移載装置と、
前記基板を搬入し、位置決めし、搬出する基板搬送装置と、
前記部品を供給する部品供給装置と、
を備える部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、位置決めされた基板に部品を装着する部品移載装置、および、この部品移載装置を備える部品装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、基板搬送装置、部品供給装置、および部品移載装置を備える部品装着機がある。多くの部品装着機は、部品移載装置の部品装着具を昇降移動、水平移動、および回転移動させて部品の装着作業を進める。部品装着具が装着済みの部品に干渉することなく、かつタイムリーに移動するように制御することによって、装着作業の作業効率を高めることができる。この種の部品装着具の移動制御に関する技術例が、特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された電子部品実装方法は、装着済み部品の高さを計測する計測工程と、計測工程から得られる高さおよび位置データを部品装着機に伝送する工程と、部品装着機において伝送されたデータをもとにXYテーブルの移動可能期間を算出する工程と、算出結果に基づいて実装動作を行う工程からなる。これによれば、XYテーブルの移動可能期間は、装着位置近傍の装着済み部品の高さをもとに決まるため、移動可能期間を従来よりも長く設定することが可能、とされている。なお、この方法では、部品装着具が移動するのでなく、基板が載置されたXYテーブルが移動することにより、部品装着具との相対位置関係が変化する。
【0004】
また、特許文献2に開示された電子部品実装装置は、既実装部品の高さを計測する部品高さ計測手段と、電子部品を保持した移載ヘッドが移動する際の搬送高さ位置を、既実装部品と電子部品との間に余裕隙間が確保できる高さに設定する搬送高さ制御手段と、を備える。これによれば、移載ヘッドの余分な昇降動作をなくして無駄時間を排し、実装効率を向上させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-79097号公報
【文献】特開2001-237596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2の技術では、装着済みの部品(既実装部品)の高さを測定し、測定した高さに基づいて干渉が発生しないようにXYテーブルや移載ヘッドの移動を制御する。しかしながら、基板に装着される部品の種類は多岐にわたり、かつ装着作業の進捗に伴って装着済みの部品の点数が逐次増加する。このため、高さの測定に多くの時間を費やして作業効率の低下を招いたり、高さ測定部の構成が大掛かりになったりする弊害が懸念される。
【0007】
一方、高さ測定部を備えない構成の部品移載装置もある。この構成における従来技術では、装着済みの部品の既知の高さに加え、基板の反りなどの変形に相当するマージン高さを考慮して、部品装着具が装着済みの部品に干渉しない仮想的な安全高さを求め、部品装着具の移動制御を行う。この従来技術では、仮想的な安全高さが実際の安全高さよりも高くなり、その分だけ部品装着具の移動が制約される。
【0008】
それゆえ、本明細書では、測定した基板の高さに基づいて部品装着具の移動制御を適正化することにより、装着作業の作業効率を高めた部品移載装置、および、この部品移載装置を備える部品装着機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、位置決めされた基板の所定の装着位置に部品を装着する部品装着具と、前記部品装着具を昇降駆動する昇降駆動機構と、前記部品装着具を昇降方向以外に駆動する第二駆動機構と、位置決めされた前記基板の上面高さを測定する高さ測定部と、測定された前記上面高さに基づいて、装着済みの前記部品に干渉しない安全高さを演算する演算部と、前記装着位置で前記部品の装着を終えた前記部品装着具が前記昇降駆動機構に上昇駆動されて前記部品装着具の下端が前記安全高さに上昇するまで、前記昇降駆動機構の動作に前記第二駆動機構の動作をラップさせるラップ動作を禁止するとともに、前記部品装着具の前記下端が前記安全高さまで上昇した以降に前記第二駆動機構の前記ラップ動作を許容する制御部と、を備える部品移載装置を開示する。
【0010】
また、本明細書は、上記した部品移載装置と、前記基板を搬入し、位置決めし、搬出する基板搬送装置と、前記部品を供給する部品供給装置と、を備える部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0011】
開示した部品移載装置や部品装着機では、測定した基板の上面高さに基づいて実際の安全高さを演算し、部品装着具の下端が安全高さに上昇するまで第二駆動機構のラップ動作を禁止する。したがって、部品装着具は、安全高さに上昇するまで装着位置に留まり、装着済みの部品に干渉しない。また、部品装着具の下端が安全高さまで上昇した以降に、第二駆動機構のラップ動作が許容される。したがって、仮想的な安全高さを用いる従来技術と比較して、部品装着具の昇降方向以外への移動開始時期を早めることができ、その結果として、装着作業の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の部品移載装置を備える部品装着機の全体構成を示す平面図である。
【
図2】高さ測定部を構成する接触検知センサを吸着ノズルの詳細構成と併せて模式的に示す側面部分断面図である。
【
図3】部品移載装置の制御の構成を説明するブロック図である。
【
図4】部品移載装置の動作を説明する動作フローの図である。
【
図5】部品移載装置の作用および効果を説明する図であって、吸着ノズルが部品を装着した後の移動を説明する側面図である。
【
図6】変形形態において、部品移載装置の作用および効果を説明する図であって、吸着ノズルが部品を装着する前の移動を説明する側面図である。
【
図7】第2実施形態において、高さ測定部を構成する基板高さセンサを模式的に示す側面図である。
【
図8】第2実施形態において、部品移載装置の動作を説明する動作フローの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.部品装着機1の全体構成
第1実施形態の部品移載装置4を備える部品装着機1の全体構成について、
図1~
図3を参考にして説明する。部品装着機1は、基板Kに部品を装着する装着作業を実施する。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、部品認識用カメラ49、および制御装置9などが基台10に組み付けられて構成される。
【0014】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、図略の一対の搬送ベルト、およびクランプ機構23などで構成される。一対のガイドレール21は、基台10の上面中央を横断して搬送方向(X軸方向)に延在し、かつ互いに平行して基台10に組み付けられる。一対の搬送ベルトは、基板Kの平行する二辺が戴置された状態でガイドレール21に沿って輪転し、基板Kを基台10の中央付近の作業実施位置に搬入する。クランプ機構23は、搬入された基板Kを押し上げて、ガイドレール21の押し当て部22(
図5参照)との間にクランプして位置決めする。部品移載装置4による部品の装着作業が終了した後、クランプ機構23は基板Kを解放し、搬送ベルトは基板Kを機外に搬出する。
【0015】
部品供給装置3は、X軸方向に並んで配列された複数のテープフィーダ31により構成される。各テープフィーダ31は、多数の部品が一列に収納されたキャリアテープを先端側の供給位置32に向けて送り出す。キャリアテープは、供給位置32で部品を採取可能に供給する。
【0016】
部品移載装置4は、Y軸移動体41、X軸移動体42、装着ヘッド43、ロータリツール44、吸着ノズル45、基板認識用カメラ46、移載制御部47、および高さ測定部6(
図3参照)などで構成される。Y軸移動体41は、X軸方向に長い部材で形成され、Y方向駆動機構に駆動されてY軸方向に移動する。X軸移動体42は、Y軸移動体41に装架され、X方向駆動機構に駆動されてX軸方向に移動する。装着ヘッド43は、X軸移動体42の前面に設けられた図略のクランプ機構に取り付けられ、X軸移動体42と共に水平二方向に移動する。Y方向駆動機構およびX方向駆動機構は、部品装着具を水平二方向に駆動する水平駆動機構52(
図3参照)の一形態である。
【0017】
装着ヘッド43の下側に、ロータリツール44が自転可能に設けられる。ロータリツール44は、R軸駆動機構53に駆動されて、垂直中心軸の回りに自転する。ロータリツール44は、複数(
図1の例では12本)の吸着ノズル45を垂直中心軸から等距離に有する。吸着ノズル45は、基板Kの所定の装着位置に部品を装着する部品装着具の一形態である。吸着ノズル45は、昇降駆動機構51に駆動されて昇降し、θ軸駆動機構54に駆動されて垂直軸の回りに自転する。また、ロータリツール44が自転したときに、吸着ノズル45は、ロータリツール44の垂直中心軸の回りを公転する。吸着ノズル45は、図略のエア供給機構から負圧や正圧のエアが選択的に供給されて、部品の吸着および装着を行う。
【0018】
なお、ロータリツール44が省略されて、装着ヘッド43の下側に1本の吸着ノズル45が自転可能に設けられる構成もある。この構成では、昇降駆動機構51およびθ軸駆動機構54が設けられ、R軸駆動機構53が省略される。また、部品装着具として、部品を挟持する挟持チャックを用いることができる。本明細書において、「移動」の用語は、昇降移動や水平移動に加えて、ロータリツール44の自転、ならびに吸着ノズル45の自転および公転を含むものとする。したがって、水平駆動機構52、R軸駆動機構53、およびθ軸駆動機構54は、吸着ノズル45を昇降方向以外に駆動する第二駆動機構となる。
【0019】
基板認識用カメラ46は、装着ヘッド43と並んでX軸移動体42に設けられる。基板認識用カメラ46は、光軸が下向きとなるように配設され、基板Kに付設された位置基準マークを上方から撮像する。取得された画像データは画像処理され、基板Kの作業実施位置が正確に求められる。基板認識用カメラ46として、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0020】
部品認識用カメラ49は、基板搬送装置2と部品供給装置3の間の基台10上に設けられる。部品認識用カメラ49は、光軸が上向きとなるように配置される。部品認識用カメラ49は、装着ヘッド43が部品供給装置3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル45に保持された部品を下方から撮像して認識する。これにより、部品の種類の正誤が判定され、また、吸着ノズル45に対する部品の位置や向きが検出されて装着作業に反映される。部品認識用カメラ49として、CCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0021】
部品移載装置4は、位置決めされた基板Kに対して、複数回の吸着装着サイクルを繰り返すことができる。吸着装着サイクルにおいて、まず、装着ヘッド43が部品供給装置3の上方に移動し、各吸着ノズル45が部品を吸着する。次に、装着ヘッド43が部品認識用カメラ49の上方に移動し、部品認識用カメラ49が撮像を行う。その次に、装着ヘッド43が基板Kの上方に移動し、各吸着ノズル45が部品を基板Kに装着する。そして、装着ヘッド43が、再び部品供給装置3に向かって移動する。吸着装着サイクルとは、上記した一連の動作の総称である。
【0022】
制御装置9は、基台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置9は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御装置9は、複数のCPUが機内に分散配置され、かつ通信接続されて構成されてもよい。制御装置9は、基板Kの種類ごとの装着作業データ91に基づいて、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品認識用カメラ49制御し、部品の装着作業を進める。装着作業データ91は、装着作業の詳細な手順や実施方法などを記述したデータである。
【0023】
2.接触検知センサ61
次に、高さ測定部6を構成する接触検知センサ61について、吸着ノズル45の詳細構成と併せ、
図2を参考にして説明する。ロータリツール44の垂直中心軸から離れた円周上に等間隔で、複数のノズル保持部441が設けられる。ノズル保持部441は、上下方向に延在する円柱状の内部空間によって形成される。ノズル保持部441は、吸着ノズル45を着脱可能、昇降動作可能、および自転動作可能に保持する。
【0024】
吸着ノズル45は、ノズル本体部451、ノズル先端部45A、および付勢ばね45Dなどで構成される。ノズル本体部451は、上下方向に長く形成され、ノズル保持部441の内部に気密を確保して配置される。ノズル本体部451は、外周流路452、径方向流路453、軸方向流路454、および先端保持空間455を有する。ノズル本体部451は、さらに、先端保持空間455の内側から外向きに開口する昇降規制窓456をもつ。
【0025】
外周流路452は、ノズル本体部451の上部寄りの外周において上下方向および周方向に拡がり、ロータリツール44の内部流路442に連通する。外周流路452が拡がっていることにより、吸着ノズル45が昇降しまた自転しても、外周流路452と内部流路442の連通が維持される。内部流路442は、負圧または正圧のエアが選択的に供給され、開口部443もつメカバルブ444の上下動によって開閉される。
【0026】
径方向流路453は、外周流路452から径方向内向きに延び、ノズル本体部451の中心軸上の軸方向流路454に連通する。軸方向流路454は、中心軸に沿って下向きに延び、先端保持空間455に連通する。先端保持空間455は、軸方向流路454よりも大径の円筒状の空間であり、下方に開口する。
【0027】
ノズル先端部45Aは、先端保持空間455の内部に、気密を確保しつつ昇降可能に設けられる。ノズル先端部45Aは、円筒状の部材で形成される。ノズル先端部45Aは、下部が徐々に縮径されており、下端が吸着端45Bとなっている。ノズル先端部45Aの途中高さに、エアの流れを妨げない昇降規制板45Cが設けられる。昇降規制板45Cは、水平方向に配置され、その端部が昇降規制窓456に係入している。
【0028】
先端保持空間455内の昇降規制板45Cとノズル本体部451の間に、付勢ばね45Dが設けられる。付勢ばね45Dは、ノズル本体部451を基準にして、ノズル先端部45Aを下方に付勢する。したがって、
図2に示されるように、通常時、ノズル先端部45Aは、昇降規制板45Cが昇降規制窓456の下面に接する高さに維持される。
【0029】
ここで、装着ヘッド43の前寄りの特定箇所に、吸着ノズル45が昇降するノズル昇降位置が設定されている。ノズル昇降位置の上方には、昇降駆動機構51として、Z軸モータが設けられる。ロータリツール44の自転によってノズル昇降位置にセットされた吸着ノズル45は、昇降駆動機構51に駆動されて、ノズル保持部441の中を昇降する。昇降駆動機構51の駆動量と、吸着ノズル45の高さ位置との関係は、後述するように予め較正される。
【0030】
吸着ノズル45が下降して、吸着端45Bに吸着された部品が基板Kの装着位置に接触すると、ノズル先端部45Aは下降できなくなり、一方でノズル本体部451は下降し続ける。これにより、付勢ばね45Dが圧縮され、昇降規制板45Cは、昇降規制窓456の下面から離れてゆく。換言すると、ノズル本体部451に対してノズル先端部45Aが相対的に上昇する。吸着ノズル45の下降量は、昇降規制板45Cが昇降規制窓456の下面から離れ、かつ昇降規制板45Cが昇降規制窓456の上面に当接しないように、適正に設定される。
【0031】
ノズル昇降位置の近傍に、接触検知センサ61が設けられる。接触検知センサ61は、昇降駆動機構51に駆動されて、ノズル本体部451とともに下降する。接触検知センサ61は、吸着ノズル45が下降して吸着端45Bの部品が基板Kに接触した以降、ノズル本体部451に対してノズル先端部45Aが相対的に上昇することを検知する。吸着ノズル45が部品を吸着していない場合、接触検知センサ61は、吸着端45Bが他の部材に接触したことを検知する。したがって、高さが既知の部材(例えば、基台10の上面に設けられた高さ基準面)に向けて吸着ノズル45を下降させることにより、昇降駆動機構51の駆動量と、吸着ノズル45の高さ位置との関係を較正することができる。
【0032】
接触検知センサ61として、検知光の通過や反射を利用して昇降規制板45Cの高さ位置を検知する光電センサを例示することができる。補足すると、昇降駆動機構51に下降駆動された始めのうち、ノズル本体部451、ノズル先端部45A、および接触検知センサ61は、揃って下降する。部品が基板Kに接触してノズル先端部45Aが下降できなくなっても、ノズル本体部451および接触検知センサ61は下降し続ける。この結果、接触検知センサ61は、昇降規制板45Cが相対的に上昇することに基づいて、接触を検知する。
【0033】
なお、接触検知センサ61として、光電センサ以外の検知方式を用いてもよい。例えば、昇降規制板45Cと昇降規制窓456の下面との接触状態を監視する接触センサや、接触による電気的導通を監視する導通センサや、吸着ノズル45の下降動作を撮影する監視カメラなどを接触検知センサ61に用いることができる。
【0034】
3.部品移載装置4の制御の構成
次に、部品移載装置4の制御の構成について、
図3を参考にして説明する。移載制御部47は、コンピュータ装置を用いて構成される。移載制御部47は、制御装置9に通信接続されており、制御装置9からの指令にしたがって制御を行い、制御状況を制御装置9に報告する。
【0035】
ここで、装着作業データ91は、基板Kに装着する部品の種類、個数、装着座標位置、装着順序、および部品を供給するテープフィーダ31の配列位置の情報を含んでいる。したがって、制御装置9または移載制御部47は、装着作業データ91に基づいて、装着ヘッド43、ロータリツール44、および吸着ノズル45の移動経路や移動速度、移動時期などを決定することができる。さらに、移載制御部47は、決定にしたがって、昇降駆動機構51、水平駆動機構52、R軸駆動機構53、およびθ軸駆動機構54の動作を制御する。
【0036】
移載制御部47は、ソフトウェアを用いて構成される三つの制御機能部、すなわち、高さ算出部71、演算部72、およびラップ制御部73を有する。高さ算出部71および前述した接触検知センサ61により、高さ測定部6が構成される。高さ測定部6は、部品の装着作業と並行して、基板Kに配置される複数の装着位置の上面高さをそれぞれ測定する。
【0037】
詳述すると、高さ算出部71は、接触検知センサ61に接続されており、加えて、昇降駆動機構51の駆動量を取得する機能を有する。接触検知センサ61は、部品を保持した吸着ノズル45が基板Kの装着位置に向かって下降するときに、接触を検知して検知信号を出力する。高さ算出部71は、接触検知センサ61の検知信号を受け取った瞬間における昇降駆動機構51の駆動量、および吸着ノズル45が吸着している部品の既知の高さ寸法に基づいて、基板Kの装着位置の上面高さを算出する。なお、部品の高さ寸法を始めとする形状情報は、装着作業データ91に関連付けて記憶されており、高さ算出部71からのアクセスが可能である。
【0038】
したがって、高さ測定部6は、部品を保持した吸着ノズル45が装着位置に向かって下降するたびに測定を行い、複数の装着位置における固有の上面高さを測定することができる。かつ、装着作業と並行しての測定であるので、高さ測定部6は、専用の測定時間を設ける必要がない。ただし、高さ測定部6は、装着作業の対象となる装着位置に関して、装着作業の開始以前に予め測定を行っておくことができない。
【0039】
演算部72は、高さ測定部6によって測定された基板Kの上面高さに基づいて、装着済みの部品に干渉しない安全高さを演算する。この安全高さは、複数の装着位置で相違することが許容される固有の安全高さである。
【0040】
ラップ制御部73は、部品の装着を終えた吸着ノズル45が上昇するたびに、固有の安全高さを用いて制御を行う。具体的に、ラップ制御部73は、装着位置で部品の装着を終えた吸着ノズル45が昇降駆動機構51に上昇駆動されて吸着端45Bが安全高さに上昇するまで、昇降駆動機構51の動作に第二駆動機構の動作をラップさせるラップ動作を禁止する。さらに、ラップ制御部73は、吸着ノズル45の吸着端45Bが安全高さまで上昇した以降に第二駆動機構のラップ動作を許容する。演算部72およびラップ制御部73の機能については、後で詳述する。
【0041】
4.部品移載装置4の動作
次に、部品移載装置4の動作について、
図4および
図5を参考にして説明する。なお、
図5において、基板Kの大きさと比較して、高さ関係の表示や吸着ノズル45の移動軌跡が誇張されて見易く描かれている(
図6も同様)。
図4に示される動作フローは、主に移載制御部47からの制御によって進められ、位置決めされた基板Kの各々に対して実行される。
図4のステップS1で、位置決めされた基板Kに対して吸着装着サイクルが開始される。
【0042】
ステップS1において、まず、装着ヘッド43は、水平駆動機構52に駆動され、部品供給装置3の上方に移動する。次に、ノズル昇降位置の吸着ノズル45は、昇降駆動機構51に駆動され、下降してテープフィーダ31の供給位置32から部品を吸着し、上昇する。その次に、ロータリツール44は、R軸駆動機構53に駆動されて自転し、これにより、ノズル昇降位置の吸着ノズル45が入れ替わる。この後、ノズル昇降位置における吸着ノズル45の下降および上昇による部品の吸着と、ノズル昇降位置における吸着ノズル45の入れ替わりとが交互に実行される。また、吸着する部品の種類(テープフィーダ31)を変更する場合、装着ヘッド43は、水平駆動機構52に駆動されてX軸方向に移動し、別のテープフィーダ31に移動する。
【0043】
複数の吸着ノズル45が部品を吸着した後のステップS2で、装着ヘッド43は、水平駆動機構52に駆動され、部品認識用カメラ49の上方に移動して撮像される。続いて、装着ヘッド43は、基板Kの装着位置の上方に移動する。次のステップS3で、ノズル昇降位置の吸着ノズル45は、昇降駆動機構51に駆動され、下降して装着位置に部品を装着する。このとき、吸着ノズル45は、必要に応じてθ軸駆動機構54に駆動され、自転して部品の向きを調整する。例えば、部品を装着する向きが基板Kの長辺方向であるか短辺方向であるかに応じて部品の向きが90°調整され、部品認識用カメラ49で部品の向きの誤差が検出されている場合に誤差分が調整される。
【0044】
ステップS3と部分的に並行して実施されるステップS4で、高さ測定部6が動作する。すなわち、吸着ノズル45の下降による部品P1の装着作業と並行して、接触検知センサ61が、部品P1の装着位置A1への接触を検知し(
図5参照)、検知信号を出力する。検知信号を受け取った高さ算出部71は、基板Kの装着位置A1の上面高さH1を算出する。高さ測定部6は、部品を保持した吸着ノズル45が下降するたびに測定を行う。
図5に示されるように、基板Kに反りなどの変形がある場合、装着位置A1の上面高さH1は、ガイドレール21の押し当て部22によって規定される基準高さH0から変化する。
【0045】
次のステップS5で、演算部72は、測定された上面高さH1に基づいて、装着済み部品PZに干渉しない安全高さHS1を演算する。具体的には、演算部72は、測定された上面高さH1と、装着済み部品PZの既知の最大高さ寸法PHとを加算して安全高さHS1(
図5の一点鎖線のレベル)とする。このとき、演算部72は、基板Kに装着済みの全部品を考慮する第一方法を用いる。別法として、演算部72は、吸着装着サイクル内で装着ヘッド43またはノズル昇降位置の吸着ノズル45が通過する可能性のある基板Kの一部領域を求め、一部領域内に装着された部品のみを考慮する第二方法を用いてもよい。
【0046】
第一方法によれば、演算部72の演算負荷が軽減される。一方、第二方法によれば、第一方法と比較して、安全高さHS1を低めに設定することが可能となる。いずれの方法でも、演算部72は、装着位置A1ごとに固有の安全高さHS1を演算する。なお、吸着装着サイクルの繰り返しに伴い、装着済み部品PZの点数が増加する。これに起因して、1枚の基板Kへの装着作業の途中で、最大高さ寸法PHが変更になる場合が多い。演算部72は、最大高さ寸法PHの変更を考慮して、安全高さHS1を演算することができる。
【0047】
次のステップS6で、部品の装着を終えた吸着ノズル45は、昇降駆動機構51に駆動されて上昇する。次のステップS7で、ラップ制御部73は、吸着ノズル45の吸着端45Bが上昇して安全高さHS1に到達したか否かを判定する。到達していない場合、ラップ制御部73は、動作フローの実行をステップS5に戻し、昇降駆動機構51を継続して動作させ、第二駆動機構の動作をラップさせるラップ動作を禁止する。
【0048】
吸着ノズル45の吸着端45Bが安全高さHS1に到達すると、ラップ制御部73は、動作フローの実行をステップS8に進める。ステップS8で、ラップ制御部73は、第二駆動機構のラップ動作を許容する。これにより、吸着ノズル45の昇降移動以外の移動が可能となる。具体的には、装着ヘッド43の水平移動、ロータリツール44の自転、および吸着ノズル45の自転が可能となる。
【0049】
次のステップS9で、移載制御部47は、吸着装着サイクルの終了であるか否かを判定する。少なくとも一つの吸着ノズル45が部品を保持している場合、吸着装着サイクルは未終了であり、動作フローの実行はステップS2に戻される。2度目以降のステップS2で、装着ヘッド43は、次の装着位置に水平移動し、以降はステップS3以下が繰り返される。吸着ノズル45のいずれも部品を保持していない場合、吸着装着サイクルは終了しており、動作フローの実行はステップS1に戻される。2度目のステップS1で、2回目の吸着装着サイクルが開始され、以降はステップS2以下が繰り返される。
【0050】
5.部品移載装置4の作用および効果
次に、部品移載装置4の作用および効果について、
図5を参考にして、従来技術と比較して説明する。なお、第二駆動機構が水平駆動機構52である場合を例にして説明する。第1実施形態の部品移載装置4では、
図5に示されるように、吸着ノズル45の吸着端45Bが安全高さHS1に到達すると、水平駆動機構52(第二駆動機構)のラップ動作が許容される。したがって、吸着ノズル45の吸着端45Bが移動する軌跡M1は、安全高さHS1よりも低い間は垂直方向に延び、かつ、実線の矢印で示されるように、安全高さHS1から水平移動方向に向かって斜め上方に傾斜する。
【0051】
一方、高さ測定部6を備えない従来技術において、基準高さH0と、装着済み部品PZの最大高さ寸法PHを加算し、さらに基板Kの反りなどで生じ得る最大変形量に相当するマージン高さMHを加算して、仮想安全高さHV(
図5の破線のレベル)を求める。そして、吸着ノズル45の吸着端45Bが仮想安全高さHVに到達する以前は水平駆動機構52のラップ動作を禁止し、吸着端45Bが仮想安全高さHVに到達するすると、水平駆動機構52のラップ動作を許容する。したがって、吸着ノズル45の吸着端45Bが移動する軌跡M2は、仮想安全高さHVよりも低い間は垂直方向に延び、かつ、破線の矢印で示されるように、仮想安全高さHVから水平移動方向に向かって斜め上方に傾斜する。
【0052】
軌跡M1と軌跡M2を比較すれば分かるように、第1実施形態では、水平距離D1の分だけ、水平方向の移動が従来技術よりも先行する。つまり、第1実施形態では、装着ヘッド43の水平方向の移動開始時期を従来技術よりも早めることができ、その分だけ移動動作が効率化される。また、R軸駆動機構53およびθ軸駆動機構54に関しても同様のことが成り立ち、ロータリツール44および吸着ノズル45の自転動作が効率化される。
【0053】
なお、上記した効果は、水平方向の移動距離が長い場合、例えば、吸着装着サイクルが終了して装着ヘッド43が部品供給装置3に向かって水平移動する場合に顕著となる。一方、水平方向の移動距離が短い場合、例えば、今回の装着位置と次回の装着位置とが至近である場合には、装着ヘッド43の水平移動が早く始まって早く終了しても、吸着ノズル45の昇降移動に時間を要するため、移動動作の効率化の効果が生じにくい。
【0054】
第1実施形態の部品移載装置4や部品装着機1では、測定した基板Kの上面高さH1に基づいて実際の安全高さHS1を演算し、吸着ノズル45の吸着端45Bが安全高さHS1に上昇するまで第二駆動機構(水平駆動機構52、R軸駆動機構53、θ軸駆動機構54)のラップ動作を禁止する。したがって、吸着ノズル45は、安全高さHS1に上昇するまで装着位置A1に留まり、装着済み部品PZに干渉しない。また、吸着ノズル45の吸着端45Bが安全高さHS1まで上昇した以降に、第二駆動機構(水平駆動機構52、R軸駆動機構53、θ軸駆動機構54)のラップ動作が許容される。したがって、第1実施形態によれば、仮想安全高さHVを用いる従来技術と比較して、吸着ノズル45の昇降方向以外への移動開始時期を早めることができ、その結果として、装着作業の作業効率を高めることができる。
【0055】
6.第1実施形態の変形形態
前述した第1実施形態では、装着ヘッド43が装着位置A2に向かって水平移動するときに、当該装着位置A2の上面高さH2が予め測定されておらず、かつ当該装着位置A2に適用する固有の安全高さHS2が予め演算されていない。このため、装着ヘッド43が装着位置A2に向かって水平移動する途中で、吸着ノズル45を下降させる下限許容高さを従来技術の仮想安全高さHVに設定して運用する。変形形態は、この下限許容高さを仮想安全高さHVよりも低く改善するものであり、演算部72およびラップ制御部73の機能が変更される。
【0056】
変形形態において、
図4のステップS5で、演算部72は、第一の装着位置A1で測定された上面高さH1に基づいて、装着済み部品PZに干渉しない安全高さHS1を演算する。さらに、演算部72は、上面高さH1または安全高さHS1に基づいて、第二の装着位置A2の安全高さHS2を推定演算する。第二の装着位置A2は、第一の装着位置A1の次に装着作業が実施される位置であり、これに限定されず、次の次やそれ以降に装着作業が実施される位置であってもよい。また、第二の装着位置A2は、複数箇所であってもよい。
【0057】
変形形態において、演算部72は、
図6に示されるように、第一の装着位置A1の安全高さHS1に規定の補正高さHHを加算して、第二の装着位置A2の安全高さHS2とする。補正高さHHとして、従来技術で用いるマージン高さMHよりも小さい一定量、例えば、マージン高さMHの半分を用いることができる。また、補正高さHHとして、第一の装着位置A1と第二の装着位置A2の離間距離をパラメータとする変化量であって、マージン高さMHよりも小さな変化量を用いることができる。定性的には、離間距離の大小に対応して単調に変化する補正高さHHを用いることができる。つまり、離間距離が小さい場合の補正高さHHを、離間距離が大きい場合の補正高さHHよりも小さく設定することができる。
【0058】
また、ラップ制御部73は、第一の装着位置A1で部品P1の装着を終えた第一の吸着ノズル45が上昇するときに第1実施形態と同じ制御を行い、続いて装着ヘッド43を第二の装着位置A2に向かって水平移動させるときに次の制御を行う。すなわち、ラップ制御部73は、部品P2を保持した第二の吸着ノズル45が第二の装着位置A2に向かって下降するときに、保持された部品P2の下端が安全高さHS2に下降するときまで第二駆動機構のラップ動作を許容するとともに、保持された部品P2の下端が安全高さHS2に下降した以降に第二駆動機構のラップ動作が不要となるように制御する。
【0059】
ここでも、第二駆動機構が水平駆動機構52である場合を例にして説明する。上記した制御を実現するために、ラップ制御部73は、吸着ノズル45を下降させるラップ動作の事前演算を行う。すなわち、ラップ制御部73は、部品P2の下端の移動軌跡が、
図6に実線の矢印で示される軌跡M3となるように、ラップ開始位置AL2を決定する。装着ヘッド43がラップ開始位置AL2に到達するまで、水平駆動機構52が動作し、昇降駆動機構51は第二の吸着ノズル45を下降駆動しない(ラップ動作しない)。
【0060】
装着ヘッド43がラップ開始位置AL2に到達すると、昇降駆動機構51と水平駆動機構52のラップ動作が開始される(ラップ動作の許容)。つまり、昇降駆動機構51による吸着ノズル45の下降駆動が開始され、軌跡M3は斜め下方に向かう。そして、装着ヘッド43が装着位置A2の真上に到着した瞬間に、部品P2の下端が安全高さHS2まで下降した状態となる。この後、吸着ノズル45の下降が継続され(ラップ動作が不要)、部品P2が装着される。
【0061】
さらに、部品P2の装着作業と並行して、装着位置A2の上面高さH2が測定される。そして、演算部72は、上面高さH2に基づいて、安全高さHS2を再度演算する。上面高さH2に基づく安全高さHS2は、安全高さHS1に補正高さHHを加算して求めた安全高さHS2と相違してもよい。また、ラップ制御部73は、上面高さH2に基づく固有の安全高さHS2を用いて、吸着ノズル45が上昇するときのラップ動作を制御する。このように、変形形態では、吸着ノズル45の下降時と上昇時とで、異なる安全高さHS2を用いる。
【0062】
一方、高さ測定部6を備えない従来技術において、部品P2の下端の移動軌跡が、
図6に破線の矢印で示される軌跡M4となるように、ラップ開始位置ALXが決定される。ラップ開始位置ALXは、変形形態のラップ開始位置AL2よりも装着位置A2に接近している。そして、装着ヘッド43が装着位置A2の真上に到着した瞬間に、部品P2の下端が仮想安全高さHVまで下降した状態となる。
【0063】
したがって、変形形態では、仮想安全高さHVから安全高さHS2を減算して求められる垂直距離D2の分だけ、吸着ノズル45の下降動作が従来技術よりも先行する。つまり、変形形態では、吸着ノズル45の下降による部品P2の装着作業を従来技術よりも早めることができ、その分だけ装着作業が効率化される。
【0064】
7.第2実施形態の部品移載装置
次に、第2実施形態の部品移載装置について、
図7および
図8を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態において、高さ測定部6は、接触検知センサ61に代わる基板高さセンサ63を含んで構成される。基板高さセンサ63は、
図7に示されるようにX軸移動体42の下側、または装着ヘッド43の下側に下向きに設けられる。基板高さセンサ63は、吸着ノズル45が動作する以前、換言すると吸着装着サイクルを開始する以前に、基板Kに設定された測定位置の上面高さを測定する。さらに、高さ測定部6の変更に伴い、演算部72の機能が変更される。演算部72は、吸着ノズル45が動作する以前に、全ての装着位置の安全高さを予め演算する。
【0065】
基板高さセンサ63は、隣接配置された光照射部64および反射光検出部65を有する。光照射部64は、下方に位置決めされている基板Kに向かって、検出光L1を鉛直下向きに照射する。検出光L1として、指向性および直進性が高いレーザー光を例示することができる。検出光L1は基板Kの上面で反射され、斜めに反射した反射光L2が反射光検出部65に入射する。反射光検出部65は、反射光L2の検出位置の違いに基づいて、基板Kの上面高さを検出する。
図7において、基板Kの上面高さが基準高さH0である場合の反射光L2が実線で示され、基板Kの変形の影響で上面高さH3が基準高さH0よりも高い場合の反射光L3が破線で示されている。
【0066】
次に、第2実施形態の部品移載装置の動作について説明する。
図8のステップS11で、高さ測定部6は、位置決めされた基板Kの複数箇所の測定位置の上面高さを測定する。測定に際して、基板高さセンサ63は、水平駆動機構52に駆動されて測定位置の上方に水平移動する。複数箇所の測定位置は、例えば、基板K上に等間隔で二次元格子状に設定される。
【0067】
次のステップS12で、演算部72は、測定された複数箇所の測定位置の上面高さに基づいて、基板Kの変形状態を推定する。具体的には、演算部72は、基板K上の複数箇所の上面高さと位置の関係を統計的に処理し、基板K上のx座標値およびy座標値を用いて基板Kの変形状態を表現する近似式を求める。例えば、二次の近似式により基板Kの反り状態が近似され、三次以上の近似式により基板Kの波打ち等の変形状態が近似される。また、統計的な処理において、押し当て部22に押し当てられた基板Kの二辺が基準高さH0に拘束されている条件を利用することができる。
【0068】
次のステップS13で、演算部72は、各装着位置に固有の安全高さを推定演算する。演算部72は、まず、ステップS12で求めた近似式に装着位置のx座標値およびy座標値を適用して、各装着位置の上面高さを求める。ここで、第1実施形態と相違して、装着済み部品PZは、現時点で存在しない。このため、演算部72は、装着作業データ91の装着順序等を参照して、各装着位置に部品を装着する時点での装着済み部品PZを想定し、さらに最大高さ寸法PHを想定して安全高さを演算する。
【0069】
次のステップS14で、吸着装着サイクルが開始され、吸着ノズル45は、テープフィーダ31の供給位置32から部品を吸着する。次のステップS15で、ラップ制御部73は、吸着ノズル45を下降させるラップ動作の事前演算を行う。この事前演算は、第1実施形態の変形形態で説明したものであって、最初の装着位置を対象として
図6に示されるラップ開始位置AL2を決定するものである。次のステップS16で、装着ヘッド43は、部品認識用カメラ49の上方を経由して、基板Kの装着位置の上方に水平移動する。このとき、第1実施形態の変形形態で説明した吸着ノズル45の下降制御が並行して行われる。次のステップS17で、ノズル昇降位置の吸着ノズル45が下降して装着位置に部品を装着する。
【0070】
次のステップS6~ステップS9では、第1実施形態と同じ動作フローが実行される。第2実施形態では、第1実施形態およびその変形形態と同様の作用および効果が生じる。つまり、
図5および
図6を参考にして説明した作用、および装着作業の作業効率を高める効果が生じる。また、装着位置よりも少ない箇所数の測定位置で測定を行うことにより、全ての装着位置の固有の安全高さを求めることができるので、全ての装着済み部品の高さを測定する特許文献1、2の技術と比較して、測定所要時間が短縮される。
【0071】
8.実施形態の応用および変形
なお、第1実施形態において、ロータリツール44を省略し、複数の吸着ノズル45が一列に配列された装着ヘッド43を用いることができる。この構成の場合、R軸駆動機構53は省略される。また、部品供給装置3は、複数のテープフィーダ31により構成されるものに限定されず、スティック式フィーダやトレー式部品供給部など他種の構成を有してもよい。
【0072】
また、第2実施形態において、演算部72は、各装着位置に固有の安全高さを推定演算するが、これに限定されない。つまり、演算部72は、高さ測定部6によって測定された一箇所の測定位置の上面高さ、または複数箇所の測定位置の上面高さの最大値に基づいて、複数箇所の装着位置に共通の安全高さを演算してもよい。これによれば、例えば基板Kの中央に設定される一箇所の測定位置、または複数の上面高さの最大値を用いることで、基板Kの反りなどの変形に対応する適正な安全高さを求めることができる。加えて、演算負荷の軽減や制御の簡略化の効果が発生する。第1および第2実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:部品装着機 2:基板搬送装置 3:部品供給装置 4:部品移載装置 43:装着ヘッド 44:ロータリツール 45:吸着ノズル 451:ノズル本体部 456:昇降規制窓 45A:ノズル先端部 45B:吸着端 45C:昇降規制板 45D:付勢ばね 47:移載制御部 51:昇降駆動機構 52:水平駆動機構 53:R軸駆動機構 54:θ軸駆動機構 6:高さ測定部 61:接触検知センサ 63:基板高さセンサ 64:光照射部 65:反射光検出部 71:高さ算出部 72:演算部 73:ラップ制御部 9:制御装置 91:装着作業データ K:基板 P1、P2:部品 PZ:装着済み部品 A1、A2:装着位置 H0:基準高さ H1、H2、H3:上面高さ HS1、HS2:安全高さ HH:補正高さ PH:最大高さ寸法 MH:マージン高さ HV:仮想安全高さ D1:水平距離 D2:垂直距離