(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】車両用の換気、暖房および/または空調設備
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
B60H1/00 102K
B60H1/00 102P
(21)【出願番号】P 2023530694
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021082230
(87)【国際公開番号】W WO2022106585
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-07-19
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】シリル、ゴンティエ
(72)【発明者】
【氏名】イブ、ルソー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ピエール
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-002250(JP,A)
【文献】特開2020-040557(JP,A)
【文献】特開2017-013704(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1129810(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流(FA)が通過することが意図された少なくとも1つの分配ユニット(200)を備える、車両用の換気、暖房および/または空調設備(100)であって、
前記分配ユニット(200)は、前記空気流(FA)の熱調整のための少なくとも1つの
熱調整手段(250)と、混合チャンバ(280)と、前記分配ユニット(200)内の空気吸入口(200)から前記混合チャンバ(280)の第1入口(281)まで延びる冷気ダクト(260)と、前記熱調整手段(250)から前記混合チャンバ(280)の第2入口(282)まで延びる熱気ダクト(270)と、を含み、
前記分配ユニット(200)は、前記混合チャンバ(280)に通気的に接続する少なくとも第1空気出口(210)と少なくとも第2空気出口(220)とを含み、
前記第1空気出口(210)および前記第2空気出口(220)は、少なくとも2つの長辺(211、212、221、222)と、2つの前記長辺(211、212、221、222)に対して実質的に垂直な少なくとも2つの短辺(213、214、223、224)とにより、それぞれ画定され、
前記空気吸入口(201)、前記混合チャンバ(280)への前記第1入口(281)、前記混合チャンバ(280)への前記第2入口(282)は、この順で、前記第1空気出口(210)を画定するのに寄与する前記短辺(213、214)のうちの少なくとも一方の主延在方向において配置され、
前記空気吸入口(201)、前記第1空気出口(210)、および前記第2空気出口(220)は、この順で、前記第1空気出口(210)を画定するのに寄与する前記短辺(213、214)のうちの少なくとも一方の前記主延在方向において配置される、
換気、暖房および/または空調設備(100)において、
前記換気、暖房および/または空調設備(100)は、前記第1空気
出口(210)を横切って配置される少なくとも1つのスクープ(215、219)であって、前記第1
空気出口(210)の一方の前記長辺(211)から他方の前記長辺(212)まで延びるスクープ(215、219)を備え、
前記スクープ(215、219)は、混合空気流(FAe)を前記第2空気出口(220)に向けてガイドするように構成さ
れ、
前記スクープ(215、219)は、前記第2空気出口(220)の前記長辺(221、222)のうちの少なくとも一方の延長線上に配置され、
前記スクープ(215、219)の空気ガイド面の下流端は、前記第2空気出口(220)の内面の上流端に接続され、これらの下流端と上流端との間に段差が存在しない、
ことを特徴とする換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項2】
前記スクープ(215、219)は、前記第1空気出口(210)の前記長辺(211、212)に対して垂直な方向において主として延びる少なくとも1つの自由辺(315、319)を有する、
請求項1に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項3】
前記分配ユニット(200)は、前記混合空気流(FAe)の第1部分が第1方向(FA1)において前記第1空気出口(210)を通って出るとともに、前記混合空気流(FAe)の第2部分が第2方向(FA2)において前記第2空気出口(220)を通って出るように構成され、
前記第1方向(FA1)は、前記第2方向(FA2)と交差する、
請求項1または2に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項4】
前記混合空気流(FAe)の前記第1部分の前記第1方向(FA1)は、前記第1空気出口(210)を画定するのに寄与する2つの前記長辺(211、212)および2つの前記短辺(213、214)を含む平面を横断する、
請求項3に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項5】
前記スクープ(215、219)は、前記換気、暖房および/または空調設備(100)の前記分配ユニット(200)の内部容積(205)から見て凹形状を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項6】
前記第1空気出口(210)は、前記車両の中央空気口に供給することが意図された中央出口(216)と、前記車両の側部空気口に供給することが意図された少なくとも1つの側部出口(217、218)とに仕切られ、
前記中央出口(216)は、前記側部出口(217、218)から、前記スクープ(215、219)の主延在平面と交差する平面において延びる隔壁(240、241)により仕切られ、
前記隔壁(240、241)は、前記第1空気出口(210)を画定するのに寄与する2つの前記長辺(211、212)の間で延びる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項7】
前記スクープ(215、219)は、前記隔壁(240、241)から突出する、
請求項6に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項8】
前記隔壁(240、241)は、前記第2空気出口(220)の前記短辺(223、224)のうちの少なくとも一方の延長線上に配置される、
請求項
6または7に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項9】
前記換気、暖房および/または空調設備(100)は、少なくとも2つの隔壁(240、241)、すなわち、前記車両の第1側部空気口に供給することが意図された第1側部出口(217)から前記車両の前記中央空気口に供給することが意図された前記中央出口(216)を画定する第1隔壁(240)と、前記車両の第2側部空気口に供給することが意図された第2側部出口(218)から前記中央出口(216)を画定する第2隔壁(241)と、を備える、
請求項6~8のいずれか一項に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【請求項10】
前記換気、暖房および/または空調設備(100)は、少なくとも2つのスクープ(215、219)、すなわち、前記第1隔壁(240)から突出する第1スクープ(215)と、前記第2隔壁(241)から突出する第2スクープ(219)と、を備え、
2つの前記スクープ(215、219)の断面と、前記長辺(211、212)と2つの前記隔壁(240、241)との間で測定される前記第1空気出口(210)の断面と、の比が0.13~0.20である、
請求項
9に記載の換気、暖房および/または空調設備(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の換気、暖房および/または空調設備の分野に関する。より具体的には、本発明は、換気、暖房および/または空調設備に配置される空気ガイド手段の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の態様において、自動車には一般に、このような車両の車室内の空気の全体的な温度を管理することを可能にする空気処理システムが装備されている。特に、外気温が低い場合には、空気処理システムにより、外気を加熱してこれを車室に送ることで車室を暖めることができるとともに、外気温が高い場合には、空気処理システムにより外気を冷却してこれを車室に送ることで中の温度を下げることができる。空気処理システムは、ドライバーの良好な視界を確保するために、車室のガラス面の曇りを除去するためにも使用され得る。
【0003】
システムは、従来的に、外気の取り込み等により空気流を発生させるための少なくとも1つの換気部材、および熱媒体が通過する少なくとも1つの熱交換機が受容されるハウジングを備えている。これにより、ハウジングを通流する空気流を熱的に調整することができる。
【0004】
空気流は、熱的に調整された後、車両内にいる人の必要に応じて、車両の種々の空気口に向けて導かれる。この目的のために、空気処理システムは、単数または複数の空気流ガイド手段を含み得る。例えば、ガイド手段は、調節可能フラップおよび/またはスクープであり得る。
【0005】
現在使用されている空気処理システムの1つの欠点は、空気流が層状になりやすいということである。換言すれば、システムは、種々の空気出口間に温度の不均衡を生じさせやすい。このような不均衡により、車両の車室内の平均温度を管理することが困難になるため、好ましくない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、この文脈に属し、種々の出口間における空気の分配が、混合チャンバの横方向全体範囲に亘る混合空気流を捕捉するように配置された部材により少なくとも部分的に実施されることで、混合空気流に残留し得る高温層または低温層を捕捉することが回避される、換気、暖房および/または空調設備を提案する。
【0007】
したがって、本発明の主題は、空気流が通過することが意図された少なくとも1つの分配ユニットを備える、車両用の換気、暖房および/または空調設備であって、前記分配ユニットは、前記空気流の熱調整のための少なくとも1つの手段と、混合チャンバと、前記分配ユニット内の空気吸入口から前記混合チャンバの第1入口まで延びる冷気ダクトと、前記熱調整手段から前記混合チャンバの第2入口まで延びる熱気ダクトと、を備え、前記分配ユニットは、前記混合チャンバに通気的に接続する少なくとも第1空気出口と少なくとも第2空気出口とを備え、前記第1空気出口および前記第2空気出口は、少なくとも2つの長辺と、2つの前記長辺に対して実質的に垂直な少なくとも2つの短辺とにより、それぞれ画定され、前記空気吸入口、前記混合チャンバへの前記第1入口、前記混合チャンバへの前記第2入口は、この順で、前記第1空気出口を画定するのに寄与する前記短辺のうちの少なくとも一方の主延在方向において配置され、前記空気吸入口、前記第1空気出口、および前記第2空気出口は、この順で、前記第1空気出口を画定するのに寄与する前記短辺のうちの少なくとも一方の前記主延在方向において配置される、換気、暖房および/または空調設備である。本発明によれば、前記換気、暖房および/または空調設備は、前記第1空気入口を横切って配置される少なくとも1つのスクープであって、前記第1出口の一方の前記長辺から他方の前記長辺まで延びるスクープを備え、前記スクープは、混合空気流を前記第2空気出口に向けてガイドするように構成される。本例において「混合空気流」とは、冷気チャネルからの空気と熱気チャネルからの空気とから構成される空気流を意味する。
【0008】
したがって、混合空気流の第1部分が、第1空気出口を通って分配ユニットを出ること、そして混合空気流の第2部分が第2空気出口を通って分配ユニットを出ることに留意されたい。本発明によれば、スクープは、混合空気流の第1部分の方向を横断する方向において主として延びるとともに、混合空気流の第2部分を第2空気出口に向けて導くように、例えば湾曲した外形を有する。
【0009】
したがって、本発明による換気、暖房および/または空調設備の分配ユニットに形成される第1空気出口を横切って配置されるスクープにより、第1空気出口を通って分配ユニットを出る混合空気流の第1部分の温度と、第2空気出口を通って分配ユニットを出る混合空気流の第2部分の温度とを、均質にすることができる。
【0010】
本発明によれば、前記スクープは、その間でこれが延びる前記第1空気出口の前記長辺に対して垂直な方向において主として延びる少なくとも1つの自由辺を有する。換言すれば、この自由辺は、この第1空気出口を画定する短辺に対して平行に延びる。
【0011】
本発明の1つの特徴によれば、前記分配ユニットは、前記混合空気流の第1部分が第1方向において前記第1空気出口を通って出るとともに、前記混合空気流の第2部分が第2方向において前記第2空気出口を通って出るように構成され、前記第1方向は、前記第2方向と交差する。例えば、前記混合空気流の前記第1部分の前記第1方向は、前記第1空気出口を画定するのに寄与する2つの前記長辺および2つの前記短辺を含む平面を横断し得る。換言すれば、混合空気流の第1部分の第1方向は、第1空気出口の断面の主延在平面を横断する。有利には、混合空気流の第2部分の第2方向が、第2空気出口の断面の主延在平面を横断することが想定され得る。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記スクープは、前記換気、暖房および/または空調設備の前記分配ユニットの内部容積から見て凹形状を有し得る。本発明によれば、この内部容積は分配ユニットの周壁により規定され、この内部容積に少なくとも1つの熱調整手段が収容される。有利には、スクープのこのような形状により、スクープは、スクープが発生させる圧力損失および騒音の両方を低減させつつ、混合空気流の少なくとも第2部分を第2空気出口に向けて導くことができる。
【0013】
例えば、前記第1空気出口は、前記車両の中央空気口に供給することが意図された中央出口と、前記車両の側部空気口に供給することが意図された少なくとも1つの側部出口とに仕切られてもよく、前記中央出口は、前記側部出口から、前記スクープの主延在平面と交差する平面において延びる隔壁により仕切られ、前記隔壁は、前記第1空気出口を画定するのに寄与する2つの前記長辺の間で延びる。本発明の1つの構成によれば、前記スクープは、前記隔壁から突出する。有利には、スクープは、それが突出する隔壁と一体部品として製造され得る。すなわち、隔壁およびスクープは、スクープおよび/または隔壁に損傷を与えずには分離できない単一のアセンブリを形成する。換言すれば、隔壁およびスクープは、全体としてL字形状のアセンブリを形成し得ることを理解されたい。
【0014】
本発明の1つの特徴によれば、前記スクープは、前記第2空気出口の前記長辺のうちの少なくとも一方の延長線上に配置され得る。有利には、前記隔壁は、前記第2空気出口の前記短辺のうちの少なくとも一方の延長線上に配置される。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記換気、暖房および/または空調設備は、少なくとも2つの隔壁、すなわち、前記車両の第1側部空気口に供給することが意図された第1側部出口から前記車両の前記中央空気口に供給することが意図された前記中央出口を画定する第1隔壁と、前記車両の第2側部空気口に供給することが意図された第2側部出口から前記中央出口を画定する第2隔壁と、を備える。
【0016】
本態様の1つの特徴によれば、第1隔壁は第2空気出口の第1短辺の延長線上に配置され、第2隔壁は第2空気出口の第2短辺の延長線上に配置される。
【0017】
有利には、2つの隔壁間で測定される第1距離は、第2空気出口を画定するのに寄与する2つの短辺間で測定される第2距離に等しい。これらの距離は、これら2つの短辺のうちの少なくとも一方に対して垂直に測定される。
【0018】
選択的に、前記換気、暖房および/または空調設備は、少なくとも2つのスクープ、すなわち、前記第1隔壁から突出する第1スクープと、前記第2隔壁から突出する第2スクープと、を備え得る。第1スクープおよび第2スクープは、「スクープ」を参照して上述した特徴の全部または一部をそれぞれ備え得ることを理解されたい。したがって、第1スクープは、第1隔壁と一体部品として製造され得る。第2スクープは、第2隔壁と一体部品として製造され得る。代替的に、スクープと隔壁とは、本発明の範囲から逸脱することなく、別個であって任意の既知の手段により互いに堅固に固着され得る。
【0019】
換気、暖房および/または空調設備が2つのスクープを備える場合、2つの前記スクープの断面と、前記長辺と2つの前記隔壁との間で測定される前記第1空気出口の断面との比は、0.13~0.20である。さらに、2つのスクープの断面と、第1空気出口の長辺と短辺との間で測定される第1空気出口の断面との比は、0.07~0.12である
【0020】
また、本発明は、上述の少なくとも1つの換気、暖房および/または空調設備が装備された自動車に関する。
【0021】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、以下の説明、および添付の概略図面を参照して非限定的に示される多数の実施形態の両方から、より明確に明らかになるであろう
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による換気、暖房および/または空調設備の端面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す実施形態による換気、暖房および/または空調設備の分配ユニットの断面図である。
【
図3】
図3は、本発明による換気、暖房および/または空調設備の分配ユニットの部分斜視図である。
【
図4】
図4は、少なくとも第1空気出口および第2空気出口が形成された換気、暖房および/または空調設備の分配ユニットの一部の、
図2から採用した詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書の以下の部分において、「長手方向」、「横方向」および「鉛直方向」という用語は、図面に示す基準系L、V、Tに関する物体の配向を指す。この基準系において、長手方向は長手方向軸Lに対して平行であり、鉛直方向は鉛直方向軸Vに対して平行であり、横方向は横方向軸Tに対して平行である。長手方向軸L、鉛直方向軸V、および横方向Tは、各々が他の2つに対して垂直である。本明細書において、断面は、横方向および鉛直方向平面において、すなわち、図示の三面体の横方向軸および鉛直方向軸を含む平面において作成される。
【0024】
図1は、端面で見た、本発明の一実施形態による換気、暖房および/または空調設備100を示す。本明細書の以下の部分において、「換気、暖房および/または空調設備」および「設備」という用語を区別せずに使用するものとする。
【0025】
この設備100は、少なくとも1つの分配ユニット200を含むとともに、選択的に少なくとも1つの換気ユニット110を含み得る。必要に応じて、この換気ユニット110は、空気流を生成するように構成された少なくとも1つの換気装置を収容する。したがって、換気装置は、少なくとも1つの空気入口と少なくとも1つの空気排出オリフィスとを備える。空気入口は、設備100の外部環境と連通し、空気排出オリフィスは、それ自体が分配ユニット200の吸入口201と連通している。換言すれば、換気ユニット110の空気排出オリフィスは、分配ユニット200の空気入口と一致している。ここでは換気ユニット110を概略的に示すため、換気装置も空気入口も空気排出オリフィスも描かれていない。
【0026】
例えば、換気装置は、空気流を第1軸方向において取り入れ、これを第2径方向において推進させるように構成された渦巻換気装置であり得る。換言すれば、この第2方向は、第1方向に対して垂直、または実質的に垂直である。これは単なる一実施形態であり、既知のあらゆる他のタイプの換気装置が、本発明の範囲から逸脱することなく使用され得ることに留意されたい。
【0027】
分配ユニット200は、空気流用の少なくとも1つの熱調整手段250が収容される内部容積を規定する周壁206を備えている。
図2に部分的に示すように、この熱調整手段250は、伝熱流体回路上に配置された熱交換器を備え、この熱交換機は、空気流と伝熱流体との熱交換を実施するように適合されている。伝熱流体回路は、内部容積の外側で主として延びている。例えば、伝熱流体回路は、空気流を加熱するように構成された熱調整手段と、伝熱流体と空気流との熱交換を実施してこの空気流を冷却するように構成された少なくとも1つの熱交換機251(同様に
図2に見える)と、を備えている。
図2に示すように、この熱交換器251は、分配ユニットの内部容積にも受容されている。
【0028】
また、
図1は、伝熱流体用の入口パイプ202と、この伝熱流体用の排出パイプ203を示す。この入口パイプ202および排出パイプ203は、いずれも熱交換手段に流体的に接続している。
【0029】
本発明によれば、少なくとも2つの空気出口が、分配ユニット200の周壁206に形成されている。したがって、第1空気出口210は、本発明による設備100が意図される車両の中央空気口に接続するように適合されている。第2空気出口220は、この車両の単数または複数の後部空気口に接続するように適合されている。車両の種々の空気口を修飾する形容詞は、前部が車両の前部に最も近い車室の一部により形成され、後部が車両の後部に最も近いこの車室の一部により形成される車両の車室の従来的な区分けを指すことに留意されたい。図示例によれば、分配ユニット200は、車両のフロントガラスの底部に配置された空気口に接続するように適合された少なくとも第3空気出口230をさらに備えている。換言すれば、この空気口により、必要時にフロントガラスの曇りや霜を除去することができる。最後に、分配ユニット200は、いずれも車両の後部ガラスの底部に配置された空気口に接続するように適合された第4空気出口235および第5空気出口236を含んでいる。
【0030】
図2を参照して以下に詳細に説明するように、換気装置が生成した空気流は、該当する空気出口の断面の主延在平面を横断する方向において、有利にはこれに対して垂直な方向において、分配ユニット200を出る。
【0031】
図示例によれば、各空気出口210、220、230は、該当する空気出口の断面の主延在平面にそれぞれ含まれる少なくとも4つの辺により画定されている。換言すれば、空気出口を画定するすべての4つの辺は、上述の空気出口を出る空気流の方向を横断する方向、有利にはこれに対して垂直な方向においてそれぞれ延びている。図示のように、空気流は、第1出口210を、第1移動方向FA1において出る。また、空気流は、第2出口220を第2移動方向FA2において出る。
【0032】
図示例によれば、分配ユニット260の周壁206に形成された空気出口210、220、230は、矩形の断面、または実質的に矩形の断面を有している。換言すれば、各空気出口210、220、230は、互いに対して平行な少なくとも2つの長辺211、212、221、222、231、232、および、互いに対して平行であって該当する2つの長辺同士を接続する少なくとも2つの短辺213、214、223、224、233、234により画定されている。短辺と長辺とは、実質的に、さらには厳密に垂直である。図面に与えられた配向によれば、第1空気出口210を規定するのに寄与する2つの長辺211、212は、長手方向において延び、第1空気出口空気210を規定するのに寄与する2つの短辺213、214は、横方向において延びている。
【0033】
さらに、第2空気出口220は、第1空気出口210を画定するのに寄与する一方の長辺211からこの第1空気出口210から離れるとともに第3空気出口230からも離れて、少なくとも部分的に延びるチャネル225の自由端部に形成されている。この配置の結果、第1空気出口210の断面の主延在平面P1は、第2空気出口220の断面の主延在平面P2と交差している。これらの第1および第2空気出口210、220の断面の主延在平面P1、P2を、例えば
図3に示す。
【0034】
さらに、図示例によれば、第1空気出口210および第3空気出口230は、本例においてこれらの第1および第3空気出口210、230を画定するのに寄与する長辺のうちの1つにより形成される共通の辺212、231を有している。
図3に示すように、第3空気出口230の断面も、第1空気出口210の断面の延在平面P1において延びている。
【0035】
上記から、第2空気出口220および第3空気出口230は、第1空気出口210の両側において、横方向に分散配置されていることを理解されたい。
【0036】
図1に部分的に示すように、少なくとも1つの調節可能フラップ204が、分配ユニット200の内部容積において、この内部容積を通流する空気流を上述の空気出口210、220、230のうちの一方または他方に向けてガイドするように配置されている。
【0037】
本発明によれば、少なくとも1つのスクープ215が、第1出口210を横切って配置されている。このスクープ215について、
図3および
図4を参照して以下により具体的に説明する。
【0038】
図2は、分配ユニット200の断面図であり、この断面は、スクープ215を通過する横方向平面において作成されている。したがって、この
図2は、分配ユニット200の内部容積205、およびこの内部容積205に受容された熱交換手段250および熱交換器251についての特に明瞭な図を呈示する。しかしながら、分配ユニット200は、本発明の範囲から逸脱することなく、熱交換器251を含まなくてもよい。
【0039】
図1および
図2から、分配ユニットの吸入口201は、図示例によれば、熱交換機252に対向して形成されていること、したがってこの吸入口201は
図2において概略的に参照されていることを理解されたい。
【0040】
また、分配ユニット200の内部容積205は、少なくとも冷気チャネル260と、熱気チャネル270と、混合チャンバ280と、空気流FAをガイドするための少なくとも1つのガイド手段290と、を備えている。図示のように、冷気チャネル260は、吸入口201と混合チャンバ280の第1入口281との間で延びているのに対し、熱気チャネル270は、熱調整手段250と混合チャンバ280の第2入口282との間で延びている。図示例によれば、ガイド手段290は、熱気チャネル270からの空気流が混合チャンバ280に到達することのみを許容する位置にある。有利には、ガイド手段290は、可動であり、冷気チャネル260および熱気チャネル270を通流する空気が混合チャンバ280に到達することを許容する、または前記空気がそうなることを防止する種々の位置を取り得る。一方で、第1空気出口210および第2空気出口220は、周壁206のうち、混合チャンバ280を画定する部分に形成されている。
【0041】
図示のように、上述の調節可能フラップ204は、混合チャンバ280に受容されている。この調節可能フラップ204により、混合チャンバ280に存在する空気を、空気出口210、220、230のうちの1つに向けて導くことができる。調節可能フラップ204について、
図4を参照して以下により詳細に説明する。
【0042】
図示のように、吸入口201、混合チャンバ280の第1入口281、および混合チャンバの第2入口282は、この順で横方向に、すなわち第1空気出口210を画定するのに寄与する短辺のうちの少なくとも一方の主延在方向において配置されている。さらに、吸入口201、第1空気出口210、および第2空気出口220は、この順で横方向に、すなわち第1空気出口210を画定するのに寄与する短辺のうちの少なくとも一方の主延在方向において配置されている。
【0043】
図示の動作モードによれば、換気装置が生成した空気流FAは、分配ユニット200の内部容積205に吸入口201を介して到達し、したがって冷気チャネル260に到着する。ガイド手段290が図示の位置にある状態では、この空気流FAの全部が、熱調整手段250に向けて導かれる。熱調整手段250内で、空気流FAは、この熱調整手段250を通流する伝熱流体から熱エネルギーを捕捉することにより加熱される。空気流FAは、熱調整手段250を出ると熱気チャネル270に到達し、そして混合チャンバ280にその第2入口282を介して到達する。混合チャンバ280に入った後、調節フラップ204が
図2に示す状態において、この空気流FAの第1部分が、第1方向FA1において第1出口210を通って分配チャンバ200を出るとともに、この空気流FAの第2部分が、第2方向FA2において第2出口220を通って分配チャンバ200を出る。
【0044】
別の動作モードによれば、ガイド手段290は、冷気チャネル260を出る空気流FAの一部のみが、熱調整手段250を通過して、熱気チャネル270に、その後混合チャンバ280に到達する。また、冷気チャネル260を出た空気流FAの別の一部(点線で示す)は、第1入口281を介して混合チャンバ280に直接的に到達する。これにより、混合空気流FAe(点線で示す)が混合チャンバ280において形成されることとなる。したがって、調節フラップ204が
図2に示す位置にある状態では、この混合空気流FAeの第1部分が、第1方向FA1において第1出口210を通って分配ユニット200を出る。そして、この混合空気流FAeの第2部分が、第2方向FA2において第2出口220を通って分配ユニット200を出る。
【0045】
第2出口220は第1出口210よりも熱気チャネルに近いため、上述のスクープ215(これの動作については以下に詳細に説明する)の存在により、本発明による設備を装備した車両の車室内における均質な温度を得るように、混合空気流FAe第1部分および混合空気流FAeの第2部分の温度を均質化することができる。
【0046】
ここでは図示しない別の動作モードによれば、ガイド手段290は、混合チャンバ280の第2入口282を閉鎖して、冷気チャネル260を出る空気流FAの全部が混合チャンバ280に到達可能な位置にあり得る。
【0047】
図3は、本発明による換気、暖房および/または空調設備の分配ユニット200の部分斜視図である。より詳細には、
図3は、この分配ユニット200に形成された第1空気出口、第2空気出口、および第3空気出口の拡大図である。上述のように、
図3は、第1出口210を横切って配置された少なくとも1つのスクープ215を示す。より詳細には、図示例によれば、第1スクープ215および第2スクープ219が、第1空気出口210を横切って配置されている。
【0048】
以下の説明は、第1スクープ215に関するものであるが、第2スクープ219についても同様に準用される。
【0049】
図示のように、第1スクープ215(以下「スクープ215」と称する)は、第1空気出口210を画定するのに寄与する短辺213、214に対して平行または実質的に平行な方向において、同じく第1空気出口210を画定するのに寄与する2つの長辺211、212の間で、主として延びている。より詳細には、スクープ215は、一方の長辺211からこれらの長辺のうちの他方212まで、これらの長辺211、212の各々に接触するようにして延びている。最後に、このスクープ215は、第2空気出口220を画定するのに寄与する長辺221、222のうちの一方の延長線上に配置されていることに留意されたい。また、このスクープ215は、第2空気出口220において開口する上述のチャネル225の延長線上にも配置されている。このスクープ215は、分配ユニット200の混合チャンバを通流する空気流の一部を、チャネル225に向けて、したがって、このチャネル225の自由端部に形成された第2空気出口220に向けて導くように構成されている。有利には、このスクープ215は、第1空気出口210と同一平面上に配置される。換言すれば、このスクープ215の位置は、空気流が最後の瞬間に、すなわち空気流が分配ユニットの内部容積を出る直前に、第2空気出口220に向けてガイドされるように、かつ混合チャンバに存在する空気流の全体がこうしてガイドされるように選択される。このような配置は、混合チャンバに存在する空気流が混合空気流である場合に、特に有利である。
【0050】
上述のように、第2空気出口220は、第1空気出口210よりも熱気チャネルに近い。一方で、この第1空気出口210は冷気チャネルに近い。このため、混合チャンバ内の空気流が混合空気流である場合、層化が起こり得る。これは、第1出口210を通って分配ユニットを出る混合空気流の第1部分と第2出口220を通って分配ユニットを出るこの混合空気流の第2部分との間に顕著な温度差をもたらす。このスクープ215の位置(上述)および形状(
図4を参照して後述)により、最後の瞬間に、すなわち分配ユニット200の内部容積を通流する空気流の温度が最も均質である瞬間に、空気流をチャネル225に向けて、ひいては第2空気出口220に向けて導くことができる。換言すれば、このスクープ215により、設備の空気熱的挙動を層化現象に適合させることが可能になるとともに、分配チャンバ200を出る空気流の各々の温度をより良好に制御することができ、究極的には、車両の車室における全体的な温度をより良好に制御することができる。
【0051】
この
図3は、第1隔壁240および第2隔壁241も示す。第1隔壁240および第2隔壁241は、それぞれ、車両の中央空気口に接続するように適合された中央出口216を車両の第1側部空気口に接続するように適合された第1側部出口217から分離し、中央出口216を第2側部空気口に接続するように適合された第2側部出口218から分離する。2つの隔壁240、241は、第1空気出口210を画定するのに寄与する短辺213,214に対して平行な方法において、同様に第1空気出口210を画定するのに寄与する2つの長辺211、212の少なくとも間でそれぞれ延びている。これらの隔壁240、241は、少なくとも部分的に、分配ユニット200の内部容積においても延びている。換言すれば、これらの隔壁240、241は、第1空気出口211の断面の主延在平面P1を横断する方向、有利にはこれに対して垂直な方向において、それぞれ延びている。これは単なる一実施形態であり、分配ユニットは、本発明の範囲から逸脱することなく、単一の隔壁を有してもよく、またはまったく有さなくてもよいということに留意されたい。
【0052】
図示例によれば、少なくとも2つのスクープ215、219が、第1出口210を横切って配置されている。第1スクープ215は、中央出口216と第1側部出口217との間に配置され、第2スクープ216は、中央出口216と第2側部出口218との間に配置されている。図示のように、第1スクープ215は、第2空気出口220を画定するのに寄与する一方の短辺223の延長線上に配置された第1隔壁240から突出し、第2スクープ219それ自体は、これら短辺のうちの他方224の延長線上に配置された第2隔壁241から突出している。換言すれば、2つの隔壁223、224間で測定される距離d1は、第2空気出口220を画定するのに寄与する2つの短辺223、224間において、これらの短辺223、224のうちの少なくとも一方に対して垂直な軸に沿って測定される第2距離d2に等しい。
【0053】
有利には、第1スクープ215および第2スクープ219は、それらが突出する隔壁240、241と一体部品として製造され得る。換言すれば、第1スクープ215および第1隔壁240は、それらのうちの少なくとも一方に損傷を与えずには分離できない単一のアセンブリを形成し、第2スクープ219および第2隔壁241も同様に、それらのうちの少なくとも一方に損傷を与えずには分離できない単一のアセンブリを形成する。隔壁およびスクープは、本発明の範囲から逸脱することなく、例えば接着剤やネジ等の付加手段により対となって互いに堅固に固着され得ることに留意されたい。
【0054】
したがって、各スクープ215、219は、一方で、第1空気出口210を画定するのに寄与する2つの長辺211、212の間において第1空気出口210に接触して延び、他方で、隔壁240、241のうちの一方とスクープを画定する自由辺315、319との間で延びている。図示のように、各スクープ215、219の自由辺315、319は、第1空気出口210を画定するのに寄与する短辺213、214に対して平行に延びている。
【0055】
特に、「スクープ/隔壁」アセンブリは、全体としてL字形状であり、Lの一方の分岐がスクープにより形成され、他方の分岐が対応する隔壁により形成されている。
【0056】
図面に示す例によれば、スクープ215、219は、これら2つのスクープ215、219の断面と、長辺211、212と2つの隔壁240、241との間で測定される第1空気出口210の断面との比が、0.13~0.20になるように配置される。さらに、図示例によれば、2つのスクープ215、219の断面と、第1空気出口210の長辺211、212と短辺213、214との間で測定されるこの第1空気出口210の断面との比は、0.07~0.12である。
【0057】
最後に、
図4は、
図2から採用した混合ゾーン280の一部の詳細図である。この詳細図は、上述の第1空気出口210、第2空気出口220、第3空気出口230、一方のスクープ215、および調節可能フラップ204を、特に明瞭に示す。
【0058】
この調節可能フラップ240は、混合チャンバ280にこのように受容されており、この調節可能フラップ204の少なくとも2つの位置を取り得る。したがって、この調節可能フラップ204は、混合チャンバ280を通流する空気流が第1空気出口210および第2空気出口220に向けて導かれる、換言すれば、調節フラップ204が第3空気出口230を閉鎖する第1位置A1と、混合チャンバ280を通流する空気流が第3空気出口230に向けて導かれる、換言すれば、調節フラップ204が第1空気出口210および第2空気出口220に開放するチャネル225を閉鎖する第2位置と、を取り得る。この調節可能フラップ204は、本発明の範囲から逸脱することなく、第1位置A1と第2位置A2との間にあらゆる中間位置をも取り得ることに留意されたい。
【0059】
以下の説明は、混合空気流FAe、すなわち冷気チャネルからの空気流と熱気チャネルからの空気流との混合物が混合チャンバ280を通流するように、ガイド手段が配置される動作モードに特に関連する。具体的には、上述のように、スクープ215の存在が最も有益であるのはこの動作モードである。
【0060】
上述のように、第1出口210を通って混合チャンバ280を出る混合空気流FAeの第1部分および第2出口220を通って混合チャンバ280を出る混合空気流FAeの第2部分が均質な温度を有するように、スクープ215は、混合空気流FAeの一部を第2空気出口220に向けて導くように構成されている。この目的のために、スクープ215は、湾曲形状を有している。この湾曲形状は、本例において、分配ユニット200の内部容積から見て、換言すれば混合チャンバ280から見て凹状である。したがって、上述の第1方向FA1において第1空気出口210に到着した混合空気流FAeの一部は、スクープ215にぶつかり、このスクープ215の湾曲に追従して第2空気出口220に向かう。換言すれば、このスクープ215により、混合空気流FAeの一部の移動方向が変更され得る。これにより、この一部は、第2移動方向FA2において移動し、チャネル225に到達することができ、第2空気出口220を通って分配ユニット200を出る。スクープ215は、第1空気出口210の一方の長辺から他方まで延びることにより、このスクープ215は、第1空気出口210の第1長辺211に近い混合空気流FAe、およびこの第1空気出口210の第2長辺212に近い混合空気流FAeの両方を捕捉することに留意されたい。
【0061】
この
図4は、中央出口を第1側部出口から分離させ得る上述の第1隔壁240を再度示す。最後に、図示例によれば、スクープ215は、分配ユニット200の周壁206と一体部品として製造されること、換言すれば、このスクープ215およびこの周壁206は単一のアセンブリを形成すること、そしてスクープ215および/または周壁206に損傷を与えずにはそれらを分離できないことに留意されたい。
【0062】
したがって、本発明は、自動車の換気、暖房および/または空調設備の種々の空気出口に向かう空気流を分配することができる簡単で安価な手段を提案する一方で、このような設備の空気熱管理を複雑にしがちな層化現象を考慮に入れている。
【0063】
しかしながら、本発明は、本明細書に記載および図示された手段および構成に限定されず、すべての同等の手段および構成、ならびにそのような手段の技術的に実現可能な組み合わせにも及ぶ。特に、スクープの個数や形状は、本明細書に記載した機能を提供する限り、本発明を損なうことなく変更することができる。