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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241011BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241011BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023531285
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024915
(87)【国際公開番号】W WO2023276100
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中原 賢太
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-040051(JP,A)
【文献】特開2020-013866(JP,A)
【文献】特開2006-186035(JP,A)
【文献】特開2016-163372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/60 -21/607
H01L23/48
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電流が厚み方向に流れる複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子を搭載する基板と、
前記基板を搭載するベース板と、
前記ベース板に接合され、前記複数の半導体素子を収納するケースと、
前記ベース板とは反対側の前記ケースの上部に組み込まれ、前記ベース板に対して平行に配置される複数の主配線板と、
前記複数の主配線板の前記複数の半導体素子と向き合う下面に接合された複数の配線と、を備え、
前記複数の半導体素子のそれぞれの上面電極が、前記複数の配線および接合材を介して前記複数の主配線板に電気的に接続され
前記複数の主配線板は、
それぞれの一方端が前記ケースの上端から突出し、他方端が、前記ケースと一体で設けられた配線支持部に埋め込まれ、前記複数の主配線板が同一平面を形成する、パワーモジュール。
【請求項2】
前記複数の主配線板および前記複数の配線は、銅または銅合金で構成され、
前記接合材は半田で構成される、請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記複数の配線は、前記複数の主配線板の下面から突出したループ状となるようにそれぞれの両端が前記複数の主配線板に接合され、ループの先端が前記複数の半導体素子の前記上面電極に接合材を介して接合される、請求項2記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記ケースは、
前記ケースの前記上部に対応するケース上部と、
前記ベース板に接合されるケース下部とで構成され、前記ケース下部に前記ケース上部を接合した状態で、前記複数の配線が前記接合材を介して前記複数の半導体素子の前記上面電極にそれぞれ接合される、請求項2記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記複数の主配線板は、
第1の主配線板、第2の主配線板および第3の主配線板を有し、
前記複数の半導体素子は、
第1の電位が与えられる前記第1の主配線板と、前記第1の電位よりも低い第2の電位が与えられる前記第2の主配線板との間に直列に接続され、相補的に動作する第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子と、を有し、
前記第3の主配線板は、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続ノードに接続され、
前記第2の主配線板の一部が、間に絶縁材を介して前記第1の主配線板を覆った平行平板構造を有する、請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記複数の半導体素子は、
それぞれ還流ダイオードを内蔵した複数の逆導通トランジスタである、請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記配線支持部は、
前記複数の主配線板のそれぞれが互いに隣接する部分に、前記複数の主配線板のそれぞれの輪郭に沿って設けられる、請求項1記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はパワーモジュールに関し、特に配線構造を改良したパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、安定した接合強度を確保することで、信頼性の向上が可能なパワーモジュールが開示されている。特許文献1の図1には、放熱用金属ベース板、絶縁基板、パワー半導体素子、表面電極、主端子、開口、ボンディングリボン、ケース、封止樹脂を備えたパワーモジュールが示されている。
【0003】
当該パワーモジュールは、放熱用の金属ベース板上に絶縁基板が半田等で接合されている。絶縁基板は、絶縁層と金属板とを備えている。主端子は銅製の板状電極であり、パワー半導体素子と対向する箇所に開口部が形成されている。ボンディングリボンは、主端子に形成された開口部をまたいでループ状に形成され、その両端を主端子に超音波溶接されている。また、ボンディングリボンのループ部分は、パワー半導体素子の表面電極と超音波溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/079600号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、主端子とパワー半導体素子の表面電極とがボンディングリボンを介して超音波溶接により接続されている。超音波溶接を行うにはケースの上面から接合のための器具を挿入する必要があるため、開口部を設ける必要があり、小型化が難しかった。また、ボンディングリボンを半導体素子の表面電極に超音波溶接するので、半導体素子のサイズおよび半導体素子に接合する電極のサイズの自由度が少なく、半導体素子のサイズが変わった場合に柔軟に対応できないと言う問題があった。
【0006】
本開示は上記のような問題を解決するためになされたものであり、小型化が可能で、半導体素子のサイズが変わっても、柔軟に対応できて生産性を向上できるパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るパワーモジュールは、主電流が厚み方向に流れる複数の半導体素子と、前記複数の半導体素子を搭載する基板と、前記基板を搭載するベース板と、前記ベース板に接合され、前記複数の半導体素子を収納するケースと、前記ベース板とは反対側の前記ケースの上部に組み込まれ、前記ベース板に対して平行に配置される複数の主配線板と、前記複数の主配線板の前記複数の半導体素子と向き合う下面に接合された複数の配線と、を備え、前記複数の半導体素子のそれぞれの上面電極が、前記複数の配線および接合材を介して前記複数の主配線板に電気的に接続され、前記複数の主配線板は、それぞれの一方端が前記ケースの上端から突出し、他方端が、前記ケースと一体で設けられた配線支持部に埋め込まれ、前記複数の主配線板が同一平面を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るパワーモジュールによれば、小型化が可能で、半導体素子のサイズが変わっても、柔軟に対応できて生産性を向上できるパワーモジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るパワーモジュールの構成を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
図3】実施の形態1に係るパワーモジュールの回路構成を示す図である。
図4】実施の形態1に係るパワーモジュールの組み立て方法の第1の例を説明する断面図である。
図5】実施の形態1に係るパワーモジュールの組み立て方法の第1の例を説明する断面図である。
図6】実施の形態1に係るパワーモジュールの組み立て方法の第2の例を説明する断面図である。
図7】実施の形態1に係るパワーモジュールの組み立て方法の第2の例を説明する断面図である。
図8】実施の形態1に係るパワーモジュールの組み立て方法の第3の例を説明する断面図である。
図9】実施の形態1に係るパワーモジュールの組み立て方法の第3の例を説明する断面図である。
図10】実施の形態2に係るパワーモジュールの構成を示す平面図である。
図11】実施の形態2に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
図12】実施の形態3に係るパワーモジュールの構成を示す平面図である。
図13】実施の形態3に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
図14】実施の形態3に係るパワーモジュールにおける発振現象の抑制を説明する図である。
図15】実施の形態3に係るパワーモジュールにおける発振現象の抑制を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<はじめに>
図面は模式的に示されるものであり、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称および機能も同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
【0011】
また、本明細書において、「~上」および「~を覆う」という場合、構成要素間に介在物が存在することが妨げられるものではない。例えば、「A上に設けられたB」または「AがBを覆う」と記載している場合、AとBとの間に他の構成要素Cが設けられたものも設けられていないものも意味され得る。
【0012】
また、以下の説明では、「上」、「下」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置および方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするため便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向とは関係しない。
【0013】
<実施の形態1>
図1は実施の形態1に係るパワーモジュール100の構成を示す平面図であり、パワーモジュール100を上方から見た上面図である。また、図1におけるA-A線での矢示方向断面図を図2に示す。
【0014】
図2に示すようにパワーモジュール100は、例えば、銅板などの金属板で構成され、放熱板として機能するベース板BSの上面に、絶縁基板ZPが半田(図示せず)などの接合材により接合されている。ベース板BSは、上面側および底面側が開口部となった枠状の樹脂製のケースCSの底面側の開口部を覆うように配設され、ベース板BSがケースCSの底面を構成している。ベース板BSの下面には冷却フィンなどの放熱機構を取り付けることができる。
【0015】
絶縁基板ZPは、窒化シリコン、アルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミック基板を主材とし、図1に示すようにセラミック基板の上面に導体パターンMP1およびMP2が形成されている。絶縁基板ZPの導体パターンMP1上には、半導体素子としてトランジスタQ1およびダイオードD1が、半田等の接合材BMを介して接合されている。また、導体パターンMP2上には、トランジスタQ2およびダイオードD2が、接合材BMを介して接合されている。また、導体パターンMP1およびMP2上には、それぞれ半導体素子と列をなすように、単独接合材BM1およびBM2が設けられている。
【0016】
トランジスタQ1およびQ2の種類は特に限定されないが、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを使用できる。ダイオードD1、D2の種類は特に限定されないが、ショットキーバリアダイオード(SBD)、PN接合ダイオードなどを使用できる。
【0017】
また、図2に示されるように、ケースCSの上面側には、トランジスタQ1およびダイオードD1の上方を覆うように第3の主配線板である主配線板M3が設けられ、単独接合材BM1の上方を覆うように第1の主配線板である主配線板M1が設けられている。主配線板M3およびM1の一方端は、それぞれ出力端子ACTおよびP側端子PTとしてケースCSの上端から垂直に突出し、主配線板M3およびM1の他方端は、ケースCSと一体で設けられた配線支持部SPに埋め込まれている。
【0018】
また、図1に示されるように、ケースCSの上面側には、トランジスタQ2およびダイオードD2の上方を覆うように第2の主配線板である主配線板M2が設けられている。主配線板M2の一方端は、N側端子NTとしてケースCSの上端から垂直に突出し、主配線板M2の他方端は、配線支持部SPに埋め込まれている。また、主配線板M3は、平面視形状がL字形であり、トランジスタQ1およびダイオードD1の上方を覆うと共に、導体パターンMP2上に設けられた単独接合材BM2の上方を覆っている。
【0019】
ここで、出力端子ACTは2つ設けられているが、これらはケースCS内部で繋がっている。出力端子ACTは、実動作時にはP側端子PTおよびN側端子NTに比べ流れる電流量が多くなるので、電流容量を大きくするためである。
【0020】
図1に示されるように、配線支持部SPは、主配線板M1と主配線板M2とが隣接する部分、主配線板M1と主配線板M3とが隣接する部分、主配線板M2と主配線板M3とが隣接する部分に、各配線の輪郭に沿って設けられ、各配線板を支持して、各配線が片持ち状態とならないようにしている。
【0021】
また、図2に示されるように、主配線板M3のトランジスタQ1およびダイオードD1と向かい合う下面には金属ワイヤまたは金属リボンで構成される複数の配線MRが接合されている。配線MRと主配線板M3との接合方法は特に限定されないが、ワイヤボンディング、超音波接合などを使用できる。配線MRは、主配線板M3の下面から突出したループ状となるように両端が主配線板M3に接合され、ループの先端がトランジスタQ1およびダイオードD1の上面電極上に設けた接合材BMに接合されている。従って、トランジスタQ1およびダイオードD1の上面電極は主配線板M3と電気的に接続される。
【0022】
また、図2に示されるように、主配線板M1の単独接合材BM1と向かい合う下面にも配線MRが接合されている。配線MRは、主配線板M1の下面から突出したループ状となるように両端が主配線板M1に接合され、ループの先端が単独接合材BM1に接合されている。主配線板M3と主配線板M1とは配線支持部SPによって電気的に絶縁されており、主配線板M1は、トランジスタQ1およびダイオードD1の下面電極と電気的に接続される。
【0023】
配線MRをループ状とすることで、搭載する半導体素子のサイズが変化した場合には、配線MRの配置および高さを調整することで、柔軟に対応することができ、生産性を向上できる。
【0024】
同様に、主配線板M2とトランジスタQ2およびダイオードD2の上面電極も配線MRと接合材BMを介して電気的に接続され、主配線板M3と単独接合材BM2も配線MRを介して電気的に接続されている。単独接合材BM2は、トランジスタQ2およびダイオードD2の下面電極を主配線板M3と電気的に接続している。
【0025】
以上説明した構成を有するパワーモジュール100は、図3に示すような回路を構成している。図3に示すようにパワーモジュール100は、第1の電位である高電位の主電源端子となるP側端子PTと、第2の電位である低電位の主電源端子となるN側端子NTとの間に、Nチャネル型のトランジスタQ1およびQ2が直列接続され、両トランジスタの接続ノードCTが出力端子ACTに接続されており、単相のインバータ回路を構成している。なお、図3では、トランジスタQ1およびQ2はIGBTとして表している。
【0026】
トランジスタQ1およびQ2には、それぞれダイオードD1およびD2が逆並列に接続され、フリーホイールダイオードとして機能する。なお、何れのトランジスタも主電流が厚み方向に流れる縦型構造のトランジスタであり、何れのダイオードも主電流が厚み方向に流れる縦型構造のダイオードである。
【0027】
なお、トランジスタQ1およびQ2のゲートには、それぞれ制御回路から制御信号が与えられるが、図示は省略している。また、図1および図2においても、制御回路の図示は省略しているが、例えば、トランジスタQ1およびQ2の上面電極側にはゲートパッドを有しており、当該ゲートパッドとボンディングワイヤを介して制御回路と接続する構成とすることができる。本開示は、トランジスタおよびダイオードの主電極と主配線板との接続構造に特徴があり、トランジスタのゲートと制御回路との接続は、従来的な構成を採るので、便宜的に図示は省略している。
【0028】
主配線板M1~M3および配線MRの材料としては、銅(Cu)または銅合金を使用することでパワーモジュール100の電流経路の電気抵抗を下げることができ、通電時の発熱を抑えることでパワーモジュール100の寿命を向上させることができる。また、銅は接合材と接合しやすい利点もある。その他の材料としては、アルミニウム(Al)を使用することもできる。
【0029】
配線MRを半田等の接合材を用いて、トランジスタおよびダイオードと接合するのは、半導体素子の上面電極のメタライズ処理も関係している。従来の配線技術において銅ワイヤをワイヤボンディングで半導体素子の上面電極に接続するには、上面電極を銅などの硬い金属でメタライズする必要がある。しかし、銅によるメタライズには材料の管理が難しくなるが、半導体素子の上面電極と配線MRとの接続に接合材を用いることで、上面電極にニッケル(Ni)メッキまたは金(Au)メッキ上にNiメッキを施した場合でも接合することが可能となり、材料の管理が容易となる。
【0030】
また、配線MRを半田等の接合材を用いて、トランジスタおよびダイオードと接合する主たる理由としては、リフローまたはホットプレートを使用した加熱により接合材を溶融し、配線MRと接合するためである。
【0031】
このような構成を採ることで、パワーモジュール100は、チップ状の半導体素子の上面電極と主配線板とを超音波溶接で接続する場合に比べてアセンブリ性を向上できる。また、ケースの上面から接合のための器具を挿入する必要がないため、開口部を設ける必要がなく、パワーモジュール100の小型化が容易となる。また、搭載する半導体素子のサイズが変化しても、配線MRの配置および高さを調整するなど柔軟な対応が可能で、生産性を向上できる。
【0032】
<組み立て方法>
以下、パワーモジュール100の組み立て方法について、図4図9を用いて説明する。
【0033】
<第1の例>
組み立て方法の第1の例について、図4および図5を用いて説明する。まず、主配線板M1~M3が組み込まれたケースCSを準備する。すなわち、樹脂でケースCSを成形する際に、インサート成形によりケースCSに主配線板M1~M3を埋め込む。インサート成形は成形機を用いて射出成形により電極等の金属部材を樹脂部材に組み込む製法であり、上型と下型に分かれた金型を用いて主配線板M1~M3等のプレス部材を下型に搭載して上型と合わせ、金型内に溶けた樹脂を注入し、冷却することでケースCSに主配線板M1~M3を埋め込むことができる。なお、ケースCSの成形時に配線支持部SPも同時に形成する。
【0034】
準備したケースCSを配線MRを設ける側が上側になるように配置し、図4に示すように主配線板M1~M3の所定の位置、すなわちトランジスタQ1、ダイオードD1および単独接合材BM1と対向する位置およびトランジスタQ2、ダイオードD2および単独接合材BM2と対向する位置に配線MRを接合する。接合には、ワイヤボンディング、超音波接合などを使用する。この際、配線MRは、両端が主配線板M1~M3に接合され、両端間にループが形成され、主配線板からループの先端までの高さが、ケースCSをベース板BSに被せた場合に、ループの先端がトランジスタQ1およびQ2、ダイオードD1およびD2の上面電極上の接合材BM、単独接合材BM1およびBM2に達する高さとなるように、各位置で高さを設定する。
【0035】
次に、図5に示されるように、トランジスタQ1およびQ2、ダイオードD1およびD2、単独接合材BM1およびBM2が搭載されたベース板BSの上側からケースCSを被せ、ベース板BSとケースCSと接合する。接合の方法は限定されないが、例えば接着剤を使用して接合することができる。
【0036】
その後、ベース板BSごと例えばリフロー炉に投入し、半田リフローにより接合材BM、単独接合材BM1およびBM2を溶融させて、配線MRを接合材BM、単独接合材BM1およびBM2に接合することで、図1および図2に示した構成を得る。その後、ケースCSの内部にはモールド樹脂が導入され、トランジスタQ1およびQ2、ダイオードD1およびD2、配線MRは樹脂封止されるが、便宜的に図示は省略する。
【0037】
<第2の例>
組み立て方法の第2の例について、図6および図7を用いて説明する。まず、主配線板M1~M3が組み込まれたケース上部CSXを準備する。ケース上部CSXは、図6に示すように、インサート成形により主配線板M1~M3が埋め込まれた部材であり、図2に示したケースCSの上側部分に対応する構成となっている。
【0038】
準備したケース上部CSXを配線MRを設ける側が上側になるように配置し、図6に示すように主配線板M1~M3の所定の位置、すなわちトランジスタQ1、ダイオードD1および単独接合材BM1と対向する位置およびトランジスタQ2、ダイオードD2および単独接合材BM2と対向する位置に配線MRを接合する。配線MRの接合方法は図4を用いて説明した方法と同じである。
【0039】
次に、図7に示されるように、ケース上部CSXにケース下部CSYを接合し、ケースCSを完成させる。接合の方法は限定されないが、例えば接着剤を使用して接合することができる。
【0040】
その後、トランジスタQ1およびQ2、ダイオードD1およびD2、単独接合材BM1およびBM2が搭載されたベース板BSの上側からケースCSを被せ、ベース板BSとケースCSと接合する。
【0041】
その後、ベース板BSごと例えばリフロー炉に投入し、半田リフローにより接合材BM、単独接合材BM1およびBM2を溶融させて、配線MRを接合材BM、単独接合材BM1およびBM2に接合することで、図1および図2に示した構成を得る。
【0042】
<第3の例>
組み立て方法の第の例について、図8および図9を用いて説明する。図8に示すように、主配線板M1~M3が組み込まれたケース上部CSXを準備し、準備したケース上部CSXを配線MRを設ける側が上側になるように配置し、配線MRを接合する点では、第2の例と同じである。
【0043】
次に、図9に示されるように、トランジスタQ1およびQ2、ダイオードD1およびD2、単独接合材BM1およびBM2が搭載され、ケース下部CSYが接合された状態のベース板BSの上側からケース上部CSXを被せ、ケース下部CSYとケース上部CSXとを接合する。
【0044】
その後、ベース板BSごと例えばリフロー炉に投入し、半田リフローにより接合材BM、単独接合材BM1およびBM2を溶融させて、配線MRを接合材BM、単独接合材BM1およびBM2に接合することで、図1および図2に示した構成を得る。
【0045】
上述した、第2の例および第3の例のように、ケース上部CSXとケース下部CSYとを分けることにより、ケース下部CSYは共通部材とし、ケース上部CSXを、パワーモジュールの製品仕様に合わせて変更することができ、柔軟な対応が可能となる。また、ケース上部CSXを別部材とすることで、インサート成形の対象が小さくなり、インサート成形の歩留が向上し、結果的に部材の不良による損失の低減および部材コストの低減が可能となる。
【0046】
<実施の形態2>
図10は実施の形態2に係るパワーモジュール200の構成を示す平面図であり、パワーモジュール200を上方から見た上面図である。また、図10におけるA-A線での矢示方向断面図を図11に示す。なお、図10および図11においては、図1および図2を用いて説明したパワーモジュール100と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
図10に示されるように、絶縁基板ZPの導体パターンMP1上には、半導体素子としてトランジスタQ10(第1のスイッチング素子)が、半田等の接合材BMを介して接合されている。また、導体パターンMP2上には、トランジスタQ20(第2のスイッチング素子)が、接合材BMを介して接合されている。また、導体パターンMP1およびMP2上には、それぞれ半導体素子と列をなすように、単独接合材BM1およびBM2が設けられている。
【0048】
トランジスタQ10およびQ20には、還流ダイオード(Free Wheeling Diode)を内蔵し、IGBTと還流ダイオードの特性を1つの構造で達成する逆導通(Reverse-Conducting)IGBT(RC-IGBT)を用いる。還流ダイオードを内蔵しているので、導体パターン上に搭載する半導体素子はトランジスタのみで済むので、半導体素子の搭載面積を減らすことができ、パワーモジュールのさらなる小型化が可能となる。なお、半導体素子の搭載面積を変えない場合は、半導体素子の搭載数を増やすこともでき、その場合はパワーモジュールの通電電流の高密度化が可能となる。
【0049】
なお、RC-IGBTを用いる代わりに、逆導通トランジスタとして、ショットキーバリアダイオードを内蔵したMOSFETを用いることもでき、その場合も、パワーモジュールのさらなる小型化および通電電流の高密度化が可能となる。
【0050】
図11に示されるように、ケースCSの上面側には、トランジスタQ10の上方を覆うように主配線板M3が設けられ、単独接合材BM1の上方を覆うように主配線板M1が設けられている。主配線板M3およびM1の一方端は、それぞれ出力端子ACTおよびP側端子PTとしてケースCSの上端から垂直に突出し、主配線板M3およびM1の他方端は、ケースCSと一体で設けられた配線支持部SPに埋め込まれている。
【0051】
また、図10に示されるように、ケースCSの上面側には、トランジスタQ20の上方を覆うように主配線板M2が設けられている。主配線板M2の一方端は、N側端子NTとしてケースCSの上端から垂直に突出し、主配線板M2の他方端は、配線支持部SPに埋め込まれている。また、主配線板M3は、トランジスタQ10の上方を覆うと共に、導体パターンMP2上に設けられた単独接合材BM2の上方を覆っている。
【0052】
図10に示されるように、配線支持部SPは、主配線板M1と主配線板M2とが隣接する部分、主配線板M1と主配線板M3とが隣接する部分、主配線板M2と主配線板M3とが隣接する部分に、各配線の輪郭に沿って設けられ、各配線を支持して、各配線が片持ち状態とならないようにしている。
【0053】
また、図11に示されるように、主配線板M3のトランジスタQ10と向かい合う下面には金属ワイヤまたは金属リボンで構成される複数の配線MRが接合されている。配線MRは、主配線板M3の下面から突出したループ状となるように両端が主配線板M3に接合され、ループの先端がトランジスタQ10の上面電極上に設けた接合材BMに接合されている。従って、トランジスタQ10の上面電極は主配線板M3と電気的に接続される。
【0054】
また、図11に示されるように、主配線板M1の単独接合材BM1と向かい合う下面にも配線MRが接合されている。配線MRは、主配線板M1の下面から突出したループ状となるように両端が主配線板Mに接合され、ループの先端が単独接合材BM1に接合されている。主配線板M3と主配線板M1とは配線支持部SPによって電気的に絶縁されており、主配線板M1は、トランジスタQ10の下面電極と電気的に接続される。
【0055】
同様に、主配線板M2とトランジスタQ20の上面電極も配線MRと接合材BMを介して電気的に接続され、主配線板M3と単独接合材BM2も配線MRを介して電気的に接続されている。単独接合材BM2は、トランジスタQ20の下面電極を主配線板M3と電気的に接続している。
【0056】
以上説明した構成を有するパワーモジュール200は、実施の形態1のパワーモジュール100と同様に単相のインバータ回路を構成している。その回路構成は図3に示したパワーモジュール100と同様であるが、図3のダイオードD1およびD2が、それぞれトランジスタQ1およびQ2と一体となったRC-IGBT、すなわちトランジスタQ10およびQ20となっている。
【0057】
このような構成を採ることで、パワーモジュール200はチップ状の半導体素子の上面電極と主配線板とを超音波溶接で接続する場合に比べてアセンブリ性を向上できる。また、ケースの上面から接合のための器具を挿入する必要がないため、開口部を設ける必要がなく、パワーモジュール200の小型化が容易となる。また、搭載する半導体素子のサイズが変化しても、配線MRの配置および高さを調整するなど柔軟な対応が可能で、生産性を向上できる。
【0058】
<実施の形態3>
図12は実施の形態3に係るパワーモジュール300の構成を示す平面図であり、パワーモジュール300を上方から見た上面図である。また、図12におけるB-B線での矢示方向断面図を図13に示す。なお、図12および図13においては、図1および図2を用いて説明したパワーモジュール100と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0059】
図12および図13に示すパワーモジュール300においては、ベース板BSに搭載されたトランジスタQ1およびQ2、ダイオードD1およびD2、単独接合材BM1およびBM2の個数および配置は、図1および図2を用いて説明したパワーモジュール100と同一であるが、主配線板M2がトランジスタQ2およびダイオードD2の上方を覆うと共に、導体パターンMP2上に設けられた単独接合材BM2の上方を覆う主配線板M1のさらに上方を覆うように、平面視形状がL字形となっている。
【0060】
すなわち、図13に示されるように、主配線板M2は、導体パターンMP2上のダイオードD2の上面電極に配線MRと接合材BMを介して電気的に接続されているが、主配線板M1の上方にまで延在している。主配線板M1と、その上方の主配線板M2とは配線支持部SPを間に介して対向しており、平行平板構造を形成している。なお、主配線板M1と主配線板M2とは絶縁材で構成される配線支持部SPを間に介しているため電気的に絶縁されている。
【0061】
また、図13に示されるように、主配線板M1は、導体パターンMP1上の単独接合材BM1に配線MRを介して電気的に接続されているが、主配線板M1の平面視形状は実施の形態1のパワーモジュール100と同じである。
【0062】
また、図12に示されるように、主配線板M3の平面視形状も実施の形態1のパワーモジュール100と同じであり、主配線板M3と、トランジスタQ1、ダイオードD1および単独接合材BM2との配線MRを介しての電気的な接続も、実施の形態1のパワーモジュール100と同じである。
【0063】
上述したように、主配線板M1と、その上方の主配線板M2とは平行平板構造を有している。主配線板M1およびM2は主電流が流れる主配線板であり、平行平板構造を有することで、パワーモジュール300の主電流が流れる回路の誘導成分を減らすことができ、パワーモジュール300をスイッチング動作させる際の発振現象を抑えることができる。この仕組みについて、図14および図15を用いて説明する。
【0064】
図14は、上述した平行平板構造を有さない場合の単相のインバータ回路を示す回路図である。図14は、実施の形態1において図3を用いて説明したインバータ回路と基本的には同じ回路図であり、図3のインバータ回路と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
図14に示されるように、平行平板構造を有さない場合は、P側端子PTとトランジスタQ1およびダイオードD1との通電経路にインダクタンスL1が存在し、N側端子NTとトランジスタQ2およびダイオードD2との通電経路にインダクタンスL2が存在するので、パワーモジュール300をスイッチング動作させる際に発振現象が生じる。しかし、P側端子PTに接続される主配線板M1とN側端子NTに接続される主配線板M2とを平行平板構造とすることで、図15に示されるように、P側主配線とN側主配線との間にキャパシタンス(容量成分)CPが形成される。キャパシタンスCPを設けることで回路全体ではインダクタンス成分が減ることとなり、結果的にスイッチング動作時の発振現象を抑制し、スイッチング損失を低減できる。
【0066】
<変形例>
以上説明した実施の形態1~3においては、半導体素子を構成する半導体としては特に限定していないが、トランジスタ、ダイオード共に、半導体はシリコン(Si)に限定されず、炭化シリコン(SiC)および窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体を用いることができる。ワイドバンドギャップ半導体で構成される半導体素子は、Siで構成される半導体素子と比較して、耐圧性に優れ、許容電流密度も高く、また耐熱性も高いため高温動作も可能である。
【0067】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0068】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15