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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】熱交換換気装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/08 20060101AFI20241011BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20241011BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20241011BHJP
【FI】
F24F7/08 101J
F24F7/08 101P
F24F7/007 B
F24F11/77
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023534501
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026404
(87)【国際公開番号】W WO2023286188
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】安田 真海
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-314546(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082531(WO,A1)
【文献】特開2020-098085(JP,A)
【文献】特開2017-053537(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0065732(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/08
F24F 7/007
F24F 11/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気用送風機と、
排気用送風機と、
前記給気用送風機によって形成される屋外から室内に向かう給気流が通る給気風路と、前記排気用送風機によって形成される室内から屋外へ向かう排気流が通る排気風路と、を有するケーシングと、
前記給気風路と前記排気風路との間に設置され、前記給気流と前記排気流との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器で結露によって発生した水を保持し、排水させるドレンパンと、
前記給気流の温度を検知する給気流温度センサと、
前記給気流の湿度を検知する給気流湿度センサと、
前記排気流の温度を検知する排気流温度センサと、
前記排気流の湿度を検知する排気流湿度センサと、
前記給気流の温度および湿度と、前記排気流の温度および湿度と、に基づいて算出した前記熱交換器で結露によって発生し、前記ドレンパンに存在する水の総量に基づいて、前記給気用送風機および前記排気用送風機のうちの少なくとも一方を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする熱交換換気装置。
【請求項2】
前記制御部は、算出した前記水の総量が予め定められた閾値よりも高い場合には、前記排気用送風機および前記給気用送風機のうちの少なくとも一方の風量を減少させることを特徴とする請求項1に記載の熱交換換気装置。
【請求項3】
前記制御部は、算出した前記水の総量が予め定められた閾値よりも低い場合には、前記給気用送風機および前記排気用送風機の風量を増大させることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換換気装置。
【請求項4】
前記制御部は、算出した前記水の総量が予め定められた閾値よりも高い状態が予め定められた時間継続する場合には、前記給気用送風機および前記排気用送風機のうち少なくとも一方を停止させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の熱交換換気装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記給気流温度センサで検知された前記給気流の温度、前記給気流湿度センサで検知された前記給気流の湿度、前記排気流温度センサで検知された前記排気流の温度および前記排気流湿度センサで検知された前記排気流の湿度を用いて算出した前記結露によって発生する水量と、前記ドレンパンから排水させる排水量と、の差と、を用いて前記水の総量を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の熱交換換気装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記熱交換換気装置が配置される空間の空気質の検知結果を受信し、前記給気流の温度および湿度と、前記排気流の温度および湿度と、から算出される前記水の総量に基づいて算出される前記結露を抑制するのに要求される風量である第1要求風量と、前記空気質の検知結果に基づいて算出される前記空気質を予め定められた基準値よりも小さくするのに要求される風量である第2要求風量と、を比較し、前記給気用送風機および前記排気用送風機のうち少なくとも一方を小さい方の要求風量に切り替えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の熱交換換気装置。
【請求項7】
前記空気質は、CO2、粉塵、臭気物質および建築物から発せられる化学物質のうちのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の熱交換換気装置。
【請求項8】
前記給気流温度センサおよび前記給気流湿度センサは、前記給気風路の前記熱交換器の風上側に設けられることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の熱交換換気装置。
【請求項9】
前記排気流温度センサおよび前記排気流湿度センサは、前記排気風路の前記熱交換器の風上側に設けられることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の熱交換換気装置。
【請求項10】
前記排気流温度センサおよび前記排気流湿度センサは、前記排気風路の前記熱交換器の風下側に設けられることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の熱交換換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給気流と排気流との間で熱交換を行いながら換気を行う熱交換換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱交換換気運転と非熱交換換気運転とを切り替え可能な熱交換換気装置が開示されている。熱交換換気運転は、室外の空気を室内に供給する給気と、室内の空気を室外に排気する排気と、を熱交換器を通して流し、給気と排気との間で熱交換させながら、室内の換気を行う運転である。非熱交換換気運転は、室外の空気を熱交換器を通さずにバイパス通路を通して流し、給気と排気との間で熱交換を行わない運転である。特許文献1に記載の熱交換換気装置では、熱交換換気運転中に、室外の空気の湿度が予め定められた値よりも高い高湿状態である場合に、非熱交換換気運転へと切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-220561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の熱交換換気装置は、室外の空気の湿度が高くなり熱交換器が水に濡れる状態になると判断した場合に、熱交換換気運転から非熱交換換気運転に切り替える。このため、換気は継続可能であるが、非熱交換換気運転に切り替わるので、非熱交換換気運転中は、省エネルギ性に劣るという問題があった。また、特許文献1に記載の熱交換換気装置では、空気条件のみで運転の条件を判断している。このため、本来、製品が耐え得る条件よりも早い段階で製品を保護するための制御をかけてしまうという点でも、特許文献1に記載の熱交換換気装置は省エネルギ性に劣るという問題があった。例えば、熱交換器で発生する結露水を貯留するドレンパンを備える熱交換換気装置に、特許文献1に記載の技術を適用した場合には、ドレンパンに溜まる結露水の量に依らず、室外の空気の湿度のみで運転の制御を行うことになる。このため、ドレンパン内の水が予め定められた水位となるまでは、熱交換換気運転が可能であるにもかかわらず、その前に非熱交換換気運転が実行されてしまい、省エネルギ性に劣ってしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、熱交換器から常時結露水が発生する状況において、従来に比して省エネルギ化を図りながら、ドレンパンから水をオーバフローさせることなく換気することができる熱交換換気装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の熱交換換気装置は、給気用送風機と、排気用送風機と、ケーシングと、熱交換器と、ドレンパンと、給気流温度センサと、給気流湿度センサと、排気流温度センサと、排気流湿度センサと、制御部と、を備える。ケーシングは、給気用送風機によって形成される屋外から室内に向かう給気流が通る給気風路と、排気用送風機によって形成される室内から屋外へ向かう排気流が通る排気風路と、を有する。熱交換器は、給気風路と排気風路との間に設置され、給気流と排気流との間で熱交換を行う。ドレンパンは、熱交換器で結露によって発生した水を保持し、排水させる。給気流温度センサは、給気流の温度を検知する。給気流湿度センサは、給気流の湿度を検知する。排気流温度センサは、排気流の温度を検知する。排気流湿度センサは、排気流の湿度を検知する。制御部は、給気流の温度および湿度と、排気流の温度および湿度と、に基づいて算出した熱交換器で結露によって発生し、ドレンパンに存在する水の総量に基づいて、給気用送風機および排気用送風機のうちの少なくとも一方を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる熱交換換気装置は、熱交換器から常時結露水が発生する状況において、従来に比して省エネルギ化を図りながら、ドレンパンから水をオーバフローさせることなく換気することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る熱交換換気装置の構成の一例を模式的に示す透視側面図
図2】熱交換器の構成の一例を示す斜視図
図3】実施の形態1に係る熱交換換気装置の風路切替ダンパが開状態の場合を模式的に示す図
図4】実施の形態1に係る熱交換換気装置の制御の一例を示す制御ブロック図
図5】実施の形態1に係る熱交換換気装置の結露水が発生している状態の一例を模式的に示す図
図6】実施の形態1に係る熱交換換気装置の制御処理の手順の一例を示すフローチャート
図7】実施の形態1に係る熱交換換気装置の制御処理の手順の一例を示すフローチャート
図8】実施の形態2に係る熱交換換気装置の構成の一例を模式的に示す図
図9】実施の形態2に係る熱交換換気装置における水の総量に対して要求される風量の関係の一例を示す図
図10】実施の形態2に係る熱交換換気装置における室内のCO2濃度に対して要求される風量の関係の一例を示す図
図11】実施の形態2に係る熱交換換気装置の制御処理の手順の一例を示すフローチャート
図12】実施の形態1および2に係る熱交換換気装置の制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態にかかる熱交換換気装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る熱交換換気装置の構成の一例を模式的に示す透視側面図である。熱交換換気装置1は、本体ケーシング11と、排気用送風機12Eと、給気用送風機12Sと、熱交換器13と、OA(Outdoor Air)温度センサ14と、OA湿度センサ15と、RA(Return Air)温度センサ16と、RA湿度センサ17と、ドレンパン18と、風路切替ダンパ19と、リモートコントローラ20と、制御回路部30と、を備える。以下では、リモートコントローラ20は、リモコン20と称される。
【0011】
本体ケーシング11は、熱交換換気装置1の外郭をなす箱状の構造を有する。本体ケーシング11は、一例では直方体状である。本体ケーシング11は、ケーシングに対応する。本体ケーシング11は、本体ケーシング11の長手方向の一端面11aにおいて設けられる外気吸込口111および排気吐出口112を有する。本体ケーシング11は、本体ケーシング11の長手方向において一端面11aと対向する他端面11bにおいて設けられる給気吐出口113および室内空気吸込口114を有する。
【0012】
本体ケーシング11は、内部に、給気風路115と排気風路116とを有する。給気風路115は、外気吸込口111と給気吐出口113とを結び、給気用送風機12Sによって形成される屋外から室内に向かう空気の流れである給気流SFが通る風路である。排気風路116は、室内空気吸込口114と排気吐出口112とを結び、排気用送風機12Eによって形成される室内から屋外へ向かう空気の流れである排気流EFが通る風路である。給気風路115および排気風路116との間に、給気風路115および排気風路116を跨ぐように、熱交換器13が配置される。以下では、給気風路115のうち、熱交換器13よりも風上側の部分は風上側給気風路115aとなり、風下側の部分は風下側給気風路115bとなる。排気風路116のうち、熱交換器13よりも風上側の部分は風上側排気風路116aとなり、風下側の部分は風下側排気風路116bとなる。また、排気風路116は、熱交換器13を経由する風路の他に、熱交換器13を通らないバイパス風路116cを有する。
【0013】
給気用送風機12Sは、給気風路115に配置され、給気流SFを形成する。排気用送風機12Eは、排気風路116に配置され、排気流EFを形成する。給気用送風機12Sおよび排気用送風機12Eは、風量を多段で変更可能である。図1の例では、給気用送風機12Sは、風下側給気風路115bに配置され、排気用送風機12Eは、風下側排気風路116bに配置されている。リモコン20からの設定および制御内容から、給気用送風機12Sおよび排気用送風機12Eの風量を任意に変更することが可能である。以下では、給気用送風機12Sおよび排気用送風機12Eは、個々に区別しない場合には、送風機12と称される。
【0014】
熱交換器13は、給気風路115と排気風路116との間に設置され、給気流SFと排気流EFとの間で連続的に熱交換を行う。熱交換器13は、給気流SFと排気流EFとの間で顕熱、すなわち温度を交換する顕熱交換器であってもよいし、給気流SFと排気流EFとの間で顕熱および潜熱、すなわち温度と湿度とを交換する全熱交換器であってもよい。ここでは、熱交換器13が顕熱交換器である場合を例に挙げる。
【0015】
図2は、熱交換器の構成の一例を示す斜視図である。図2には、熱交換器13を通過する排気流EFの進行方向と給気流SFの進行方向とが互いに垂直である直交流型の熱交換器13が例示されている。熱交換器13は、互いに間隔が設けられて配置された複数のシート材131と、複数のシート材131の間隔を保持する間隔保持部材132と、を備える。熱交換器13は、シート材131と間隔保持部材132とを積層させた積層体である。シート材131は、平坦に加工された板状部材である。間隔保持部材132は、波形の凹凸が施されたシート状部材である。シート材131と間隔保持部材132とは、互いに接合されている。
【0016】
間隔保持部材132は、波形の折り目の方向が互いに垂直となるように向きを異ならせた間隔保持部材132aと間隔保持部材132bとを含む。間隔保持部材132aとシート材131との間に形成される空間は、排気流EFが通過する一次側風路133aである。間隔保持部材132bとシート材131との間に形成される空間は、給気流SFが通過する二次側風路133bである。熱交換器13には、複数の一次側風路133aと複数の二次側風路133bとが形成されている。シート材131と、一次側風路133aの構成部材である間隔保持部材132aと、二次側風路133bの構成部材である間隔保持部材132bとは、シート材131の厚さ方向に積層されている。
【0017】
熱交換器13が顕熱交換器である場合には、間隔保持部材132は、気体遮蔽性を有するが透湿性を有さない材料によって構成される。この場合、シート材131では、排気流EFと給気流SFとを混合させずに、一次側風路133aを通過する排気流EFと二次側風路133bを通過する給気流SFとの間の熱のみの交換、すなわち顕熱交換が行われ、熱交換換気を行うことができる。このときに、処理された空気が露点温度を超える場合には熱交換器13から結露による水である結露水が発生する。
【0018】
給気風路115および排気風路116を流れる空気は、熱交換器13の前後によって、以下の4つに分類される。風上側給気風路115aを流れる空気は外気OAと称され、風下側給気風路115bを流れる空気は給気SAと称され、風上側排気風路116aを流れる空気は還気RAと称され、風下側排気風路116bを流れる空気は排気EAと称される。給気流SFは、熱交換器13の前では外気OAの流れであり、熱交換器13の後では給気SAの流れである。排気流EFは、熱交換器13の前では還気RAの流れであり、熱交換器13の後では排気EAの流れである。
【0019】
図1に戻り、OA温度センサ14およびOA湿度センサ15は、給気風路115の熱交換器13の風上側、すなわち風上側給気風路115aに配設され、制御回路部30と配線を介して接続されている。OA温度センサ14は、外気OAの温度を検知し、予め定められた時間間隔で制御回路部30に検知結果を送信する。OA湿度センサ15は、外気OAの湿度を検知し、予め定められた時間間隔で制御回路部30に検知結果を送信する。OA湿度センサ15では、相対湿度が検知される。OA温度センサ14は、給気流SFの温度を検知する給気流温度センサに対応し、OA湿度センサ15は、給気流SFの湿度を検知する給気流湿度センサに対応する。
【0020】
RA温度センサ16およびRA湿度センサ17は、排気風路116の熱交換器13の風上側、すなわち風上側排気風路116aに配設され、制御回路部30と配線を介して接続されている。RA温度センサ16は、還気RAの温度を検知し、予め定められた時間間隔で制御回路部30に検知結果を送信する。RA湿度センサ17は、還気RAの湿度を検知し、予め定められた時間間隔で制御回路部30に検知結果を送信する。RA湿度センサ17では、相対湿度が検知される。RA温度センサ16は、排気流EFの温度を検知する排気流温度センサに対応し、RA湿度センサ17は、排気流EFの湿度を検知する排気流湿度センサに対応する。
【0021】
ドレンパン18は、本体ケーシング11の内部の熱交換器13の設置位置の下方を少なくとも含むように設けられる。ドレンパン18は、熱交換器13で結露によって発生する水を保持し、排水させる。ドレンパン18には、ドレンパン18に貯留した水を外部に排水させる排水口181が設けられる。
【0022】
風路切替ダンパ19は、排気風路116の風上側、すなわち風上側排気風路116aに設けられ、排気流EFを熱交換器13へと通過させるか、または熱交換器13を通さずにバイパス風路116cを通過させて直接に排気用送風機12Eへ送るかを切り替える。ここでは、排気流EFが熱交換器13を通過するように風路切替ダンパ19がバイパス風路116cを塞いでいる閉状態にあるときに、排気流EFは、熱交換器13を通り、給気流SFと連続的に熱交換を行う。排気流EFがバイパス風路116cを通過するように風路切替ダンパ19が熱交換器13への風路を塞いでいる開状態にあるときに、排気流EFは、非熱交換換気として排気用送風機12Eを介して屋外へ排出される。
【0023】
風路切替ダンパ19の開閉の切替は、一例では、リモコン20からの設定によって手動操作によって行われる。あるいは、風路切替ダンパ19の開閉の切替は、OA温度センサ14およびRA温度センサ16の検知温度を用い、外気冷房のように外気OAの温度が室内温度よりも低いと判定される場合に、制御回路部30からの指示によって行われてもよい。図1は、風路切替ダンパ19が閉状態にある場合を示している。図1では、室内空気吸込口114から吸い込まれた還気RAは、本体ケーシング11の内部では、風上側排気風路116a、熱交換器13および風下側排気風路116bを通って、排気吐出口112から排気EAとして屋外に排気される。一方、外気OAは常に熱交換器13を通過するので、還気RAは、熱交換器13で外気OAとの間で熱の交換を行う。
【0024】
図3は、実施の形態1に係る熱交換換気装置の風路切替ダンパが開状態の場合を模式的に示す図である。風路切替ダンパ19が開状態のときには、風路切替ダンパ19は、室内空気吸込口114から熱交換器13への風路を閉じた状態としている。このため、室内空気吸込口114から吸い込まれた還気RAは、本体ケーシング11の内部では、風上側排気風路116a、バイパス風路116cおよび風下側排気風路116bを通って、排気吐出口112から排気EAとして屋外に排気される。このため、常に熱交換器13を通過する外気OAとの間で、還気RAは熱交換を行わず、非熱交換換気が行われる。
【0025】
図1に戻り、リモコン20は、熱交換換気装置1が設けられる室内の換気に関する、図示されていないユーザによって行われる設定を制御回路部30に指示する。リモコン20は、有線または無線によって制御回路部30と接続される。
【0026】
制御回路部30は、ユーザがリモコン20を操作することによって決定されるユーザの指示に従って、熱交換換気装置1の動作を制御する。制御回路部30は、制御部に対応する。図4は、実施の形態1に係る熱交換換気装置の一例を示す制御ブロック図である。図4に示されるように、制御回路部30は、排気用送風機12E、給気用送風機12S、OA温度センサ14、OA湿度センサ15、RA温度センサ16、RA湿度センサ17、風路切替ダンパ19およびリモコン20と配線を介して接続される。配線は、有線でもよいし、無線でもよい。
【0027】
実施の形態1では、制御回路部30は、リモコン20からのユーザの指示と、OA温度センサ14、OA湿度センサ15、RA温度センサ16およびRA湿度センサ17によって検出される温度および湿度と、を基に、送風機12と、風路切替ダンパ19と、の動作を制御する。具体的には、制御回路部30は、OA温度センサ14およびOA湿度センサ15によって検出される給気流SFの温度および湿度と、RA温度センサ16およびRA湿度センサ17によって検出される排気流EFの温度および湿度と、に基づいて熱交換器13で発生する結露水の量を算出し、ドレンパン18からの結露水の排水量を用いて、運転を開始してから算出時点までのドレンパン18に貯留される結露によって発生する水の総量をさらに算出する。そして、制御回路部30は、結露によって発生する水の総量に基づいて、ドレンパン18から水がオーバフローしないように、送風機12の風量を制御する。また、制御回路部30は、結露によって発生する水がドレンパン18からオーバフローしそうな場合には、風路切替ダンパ19を開状態として、還気RAが熱交換器13を通過せず、バイパス風路116cを通過するように切り替える。
【0028】
実施の形態1では、温度のみを交換する顕熱交換器の動作について説明する。冬期、外気OAは、熱交換器13で顕熱のみ熱回収されるので、給気SAは温度のみ上がるが、給気SAの絶対湿度は変わらない。一方、室内の空気である還気RAは、熱交換器13を通過することで絶対湿度が変化せず温度のみ下がるため、排気EAは露点温度を超える場合がある。この場合には、熱交換器13から結露水が発生する。図5は、実施の形態1に係る熱交換換気装置の結露水が発生している状態の一例を模式的に示す図である。なお、図1および図3と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略する。発生した結露水60はドレンパン18に滴下する。結露水60は、ドレンパン18に設けられた排水口181に集められ、熱交換器13の外部へと排水される。
【0029】
つぎに、制御回路部30によるドレンパン18から結露水をオーバフローさせずに、従来に比して省エネルギ化を図りながら熱交換換気を行う制御アルゴリズムについて説明する。図6および図7は、実施の形態1に係る熱交換換気装置の制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0030】
まず、制御回路部30には、運転風量、熱交換器13の顕熱交換効率、ドレンパン18の容量および排水量並びに算出対象時間のそれぞれについて設定された値が予め格納されている(ステップS11)。算出対象時間は、一例では、前回のセンサでの検出結果の取得から今回のセンサでの検出結果の取得までの間の時間である。算出対象時間は、搭載するセンサの通信状態、換気または空調の対象となる室内の温度変化および湿度変化に合わせて定めることができる。一例では、算出対象時間は、センサの計測タイミング間の時間としてもよいし、センサの測定頻度が高い場合には一定の間隔の任意に定められた時間であってもよい。一例では、算出対象時間は、1分程度とすることができる。
【0031】
ついで、制御回路部30は、リモコン20から熱交換換気装置1の運転の状態を示す運転モードを含む運転指令を受信する(ステップS12)。すなわち、風量および換気の種類を示す換気モードを含む熱交換換気装置1の運転の開始指令である。換気モードは、熱交換換気運転または非熱交換換気運転である。その後、制御回路部30は、運転指令に含まれる運転モードでの運転を開始する(ステップS13)。すなわち、制御回路部30は、リモコン20からの運転指令に含まれる風量に基づいて、排気用送風機12Eおよび給気用送風機12Sの運転を開始させ、リモコン20から運転指令に含まれる換気モードに基づいてバイパス風路116cの開閉、すなわち風路切替ダンパ19の動作を制御する。
【0032】
なお、ここでは、制御回路部30は、リモコン20からの運転指令を受けることによって、運転指令に含まれる運転モードでの運転を開始したが、運転モードでの運転の開始はリモコン20によるものには限定されない。一例では、制御回路部30がタイマを備えている場合に、リモコン20によって予め設定された時刻に自動で運転指令に含まれる運転モードを開始するようにしてもよい。
【0033】
運転開始後、OA温度センサ14およびRA温度センサ16はそれぞれ温度を計測し、OA湿度センサ15およびRA湿度センサ17はそれぞれ湿度を計測する。制御回路部30は、予め定められた時間間隔で、OA温度センサ14およびRA温度センサ16から検知結果である温度情報を受信し、OA湿度センサ15およびRA湿度センサ17から検知結果である湿度情報を受信する(ステップS14)。OA湿度センサ15およびRA湿度センサ17は、一般的に相対湿度を計測するものであるので、制御回路部30は相対湿度から絶対湿度に換算する。以下では、OA温度センサ14で計測された温度は、OA温度計測値と称され、OA湿度センサ15で計測された湿度は、OA湿度計測値と称され、RA温度センサ16で計測された温度は、RA温度計測値と称され、RA湿度センサ17で計測された湿度は、RA湿度計測値と称される。OA温度計測値は給気流SFの温度に対応し、OA湿度計測値は給気流SFの湿度に対応する。RA温度計測値は排気流EFの温度に対応し、RA湿度計測値は排気流EFの湿度に対応する。
【0034】
その後、制御回路部30は、ステップS14で受信したOA温度計測値、OA湿度計測値、RA温度計測値およびRA湿度計測値から排気EAの温度と絶対湿度とを算出する(ステップS15)。制御回路部30は、予め格納された顕熱交換効率を用いて排気EAの温度TEAを算出する。一方、熱交換器13で湿度回収は行われないため、排気EAの絶対湿度AHEAは、RAの絶対湿度AHRAと同一であると算出される。
【0035】
ついで、制御回路部30は、排気EAの温度TEAが露点温度であるときの絶対湿度AHDEAを算出する(ステップS16)。露点温度は、相対湿度が100%であるときの値として算出される。以下では、排気EAの温度TEAが露点温度である場合に、排気EAの温度TEAはEA(Exhaust Air)露点温度TEAと称される。
【0036】
さらに、制御回路部30は、熱交換にて発生する単位時間当たりの結露水量MWを算出する(ステップS17)。単位時間当たりの結露水量MWは、次式(1)に示されるように、求められた排気EAの絶対湿度AHEAとEA露点温度TEA時の絶対湿度AHDEAとの差に空気密度ρと排気風量Qを乗じることによって算出される。
【0037】
W=ρ×Q×(AHEA-AHDEA) ・・・(1)
【0038】
ここで、単位時間当たりの結露水量MW>0は、排気EAから結露水が実際に発生することを示し、単位時間当たりの結露水量MW≦0は、結露水が発生していないことを示す。
【0039】
ついで、制御回路部30は、単位時間当たりの結露水量MWから、予め格納された算出対象時間に発生した水量である発生水量Minを算出する(ステップS18)。発生水量Minは、次式(2)に示されるように、単位時間あたりの結露水量MWに算出対象時間tを乗じることによって算出される。上記したように、算出対象時間tは、搭載するOA温度センサ14、OA湿度センサ15、RA温度センサ16およびRA湿度センサ17の通信状態、換気または空調に使用する室内の温度変化または湿度変化に応じて定められる。ここで算出される発生水量Minは、前回、発生水量Minを算出した時点から算出対象時間tにおける結露水量MWの変化分に対応する。
【0040】
in=MW×t ・・・(2)
【0041】
その後、制御回路部30は、算出対象時間にドレンパン18に実際に残る水量Mを算出する(ステップS19)。算出対象時間tにドレンパン18に残る水量Mは、次式(3)に示されるように、算出対象時間tにおける発生水量Minと、ドレンパン18から排出される水量Moutと、の差分によって求められる。
【0042】
M=Min-Mout ・・・(3)
【0043】
ここで、M>0のときには、ドレンパン18に水が溜まっていくことを意味し、逆にM≦0のときには、排水量の方が大きいのでドレンパン18には水が溜まらないことを意味する。なお、Moutは、算出対象時間tにおける排水量であり、排水口181の口径および個数等で求められる値である。通常、製品固有の値として制御回路部30内のメモリに格納される。
【0044】
OA温度計測値TOAが0℃以上のとき、すなわちTOA≧0のときには、熱交換器13で発生した水および排水される水が結氷することがないため、(3)式を用いて実際にドレンパン18に残る水量Mを算出すればよい。しかし、OA温度計測値TOAが氷点下となる条件、すなわちTOA<0のときには、熱交換器13で発生した水および排水が結氷し、ドレンパン18に水が滴下されない場合あるいはドレンパン18上で水が結氷してしまい、ドレンパン18から排出されない可能性がある。制御回路部30は、TOA<0のときには、発生水量Minがすべて溜まるとし、M=Minとする。
【0045】
その後、制御回路部30は、熱交換換気装置1を運転してから、製品内、すなわち熱交換換気装置1に溜まる水量Mを積算し、熱交換換気装置1に存在する水の総量Msumを算出し、記憶する(ステップS20)。一例では、水の総量Msumは、製品内に溜まる水量Mを結露水量MWの算出で用いる算出対象時間t毎に積算することで求められる。あるいは、熱交換換気装置1を運転してから、これまでの算出対象時間tに発生した発生水量Minを積算することで水の総量Msumは求められる。あるいは、記憶された前回の水の総量Msumに、ステップS19で求められた算出対象時間tにドレンパン18に残る水量Mを加算することで、水の総量Msumは求められる。
【0046】
ついで、制御回路部30は、水の総量Msumが、オーバフローの可能性を判定する際の基準値となる予め定められた閾値よりも高いかを判定する(ステップS21)。水の総量Msumが閾値よりも高い場合(ステップS21でYesの場合)には、現在の状態のまま送風機12を運転させていると、ドレンパン18から水がオーバフローする可能性がある。そこで、制御回路部30は、送風機12は最小風量で運転しているかを判定する(ステップS22)。送風機12が最小風量で運転していない場合(ステップS22でNoの場合)には、制御回路部30は、発生水量を抑制する運転に切り替える(ステップS23)。一例では、制御回路部30は、直前の風量の状態から風量を抑制させることで、顕熱交換で発生する結露水量MWを減少させることが可能となる。また、実際のドレンパン18に溜まる水の総量Msumで風量を抑制するため、空気条件で一律に風量を落とす場合に比して、運転時間の伸長が見込まれる。そして、運転時間の伸長によって、熱交換換気運転の継続による快適性と省エネルギ性が見込まれる。なお、風量を抑制するための閾値は搭載されるドレンパン18の容量から決めればよい。
【0047】
なお、ステップS23において、発生水量Minのみを抑制したければ水が発生する排気EA側の風量のみを下げればよく、換気による室内風量バランスを優先する場合には、給気風量、排気風量ともに下げればよい。また、風量を切り替える閾値は複数持たせてもよい。一例では、閾値を複数持たせ、制御回路部30は、送風機12の風量を段階的に減少させてもよく、風量を減少させる閾値を、送風機12を停止させる閾値に設定してもよい。
【0048】
その後、制御回路部30は、リモコン20から熱交換換気装置1の運転の終了を含む運転指令を受けたかを判定する(ステップS27)。リモコン20から熱交換換気装置1の運転の終了を含む運転指令を受けていない場合(ステップS27でNoの場合)には、ステップS14に処理が戻る。この後、ステップS21で水の総量Msumが閾値を超える状態が継続する場合に、制御回路部30は、送風機12の風量を減少させていく。制御回路部30は、最小風量となるまで、風量を減少させることができる。
【0049】
ステップS22で送風機12が最小風量で運転している場合(ステップS22でYesの場合)には、制御回路部30は、最小風量での運転が予め定められた期間継続したかを判定する(ステップS24)。最小風量での運転が予め定められた期間継続していない場合(ステップS24でNoの場合)には、ステップS27に処理が移る。
【0050】
一方、最小風量での運転が予め定められた期間継続している場合(ステップS24でYesの場合)には、制御回路部30は、一時的に送風機12の運転を停止し、結露水の発生を止めて、ドレンパン18からの水抜きを実施する(ステップS25)。制御回路部30は、ドレンパン18からの水抜きが完了した後、送風機12の運転を再開させる(ステップS26)。なお、図7では、最小風量での運転が予め定められた期間継続した場合に、送風機12の運転を一時的に停止する場合を説明したが、送風機12の最小風量での状態ではなく、水の総量Msumが閾値を超える状態が継続する場合に、送風機12の運転を一時的に停止するようにしてもよい。
【0051】
停止時間は、ドレンパン18から排出される水量Moutと、ドレンパン18の容量と、から求められる排水時間から決めることができる。停止時間が短い方が換気停止による快適性悪化を最小限に留められるため、停止時間は5分程度に留めておくことが適切である。また、ステップS25で停止させる送風機12は、結露水の発生を抑制できる排気用送風機12Eだけを停止させればよいが、建物の給気SAおよび排気EAのバランスを崩さないために、排気用送風機12Eと給気用送風機12Sとを同時に停止させてもよい。その後、処理がステップS27へと進む。
【0052】
一方、ステップS21で、水の総量Msumが閾値以下である場合(ステップS21でNoの場合)には、制御回路部30は、直前の風量の状態から送風機12の風量を増加させる(ステップS28)。風量を切り替える閾値を複数設けている場合には、制御回路部30は、風量を段階的に上げてもよい。また、風量を、発生水量を抑制する運転である保護運転の前の状態に戻す閾値を別途設けてもよい。その後、処理がステップS14に戻る。
【0053】
また、ステップS27で、リモコン20から熱交換換気装置1の運転の終了を含む運転指令を受けた場合(ステップS27でYesの場合)には、処理が終了する。
【0054】
上記した説明では、冬期の結露水抑制方法について述べたが、給気SA側から結露水が発生する夏期も同様に、ドレンパン18から結露水をオーバフローさせずに、従来に比して省エネルギ化を図りながら熱交換換気を行うことができる。この場合には、制御回路部30は、給気SAの絶対湿度と露点温度とからSA(Supply Air)露点温度時の絶対湿度を算出する。また、制御回路部30は、給気SAの絶対湿度と、SA露点温度時の絶対湿度と、給気用送風機12Sの給気風量と、から熱交換にて発生する単位時間当たりの結露水量MWを算出し、さらに単位時間当たりの結露水量MWから発生水量Minを算出すればよい。そして、図6に示される処理手順と同様に、給気用送風機12Sの風量の変更および一時停止によるドレンパン18の水抜きを実施してもよい。
【0055】
また、上記した説明では、熱交換器13が顕熱交換器である場合の送風機12の風量の制御方法について述べた。しかし、熱交換器13が全熱交換器である場合においても、結露水が発生するような空気条件で使用する場合に有用である。なお、熱交換器13が全熱交換器である場合には、間隔保持部材132は、気体遮蔽性および透湿性を有する材料によって構成される。この場合、シート材131では、排気流EFと給気流SFとを混合させずに、一次側風路133aを通過する排気流EFと二次側風路133bを通過する給気流SFとの間の顕熱交換と潜熱交換とが行われる。
【0056】
以上のように、実施の形態1に係る熱交換換気装置1によれば、制御回路部30は、OA温度計測値、OA相対湿度計測値、RA温度計測値、RA相対湿度計測値、熱交換効率、運転風量および閾値情報から、熱交換換気装置1の運転にて結露によって発生する水の総量を算出する。そして、制御回路部30は、水の総量が予め定められた閾値よりも大きい場合に、少なくとも排気用送風機12Eの風量を一時的に下げるようにした。これによって、換気運転の継続と同時に熱交換にて発生する結露水の発生を抑制し、ドレンパン18からのオーバフローを防止することが可能となる。また、風量を低減するタイミングは、結露によって発生する水が、閾値情報によって定められるドレンパン18の容量の予め定められた割合になった時点とすることができる。この時点は、空気条件で送風機12の風量を低減する時点に比して、一般的に遅くなる。このため、空気条件で送風機12の風量を一律に低減する場合に比して、運転時間の伸長が見込まれる。この運転時間の伸長によって、熱交換換気運転の継続による快適性と省エネルギ性が見込まれる。つまり、熱交換器13から常時結露水が発生する状況において、ドレンパン18から水をオーバフローさせることなく、従来に比して省エネルギ化を図りながら換気することができるという効果を有する。
【0057】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る熱交換換気装置の構成の一例を模式的に示す図である。熱交換換気装置1は、熱交換換気装置1が設置される部屋等の空間である換気空間に配置されるCO2センサ41の検知結果を取得することができる構成を有する。以下では、換気空間が室内50である例を挙げる。また、この例では、熱交換換気装置1の制御回路部30が、CO2センサ41と通信線42を介して接続されている。CO2センサ41は、室内50のCO2濃度を検出することができるセンサである。CO2センサ41は、予め定められた時間間隔で、CO2濃度の検出結果を熱交換換気装置1の制御回路部30に送信する。なお、熱交換換気装置1がCO2センサ41を備えていてもよい。あるいは、熱交換換気装置1が設置される室内50に配置され、CO2センサ41が備えられる空気調和機、空気清浄機等の他の機器が、熱交換換気装置1の制御回路部30と通信可能に接続され、他の機器がCO2センサ41での検知結果を熱交換換気装置1の制御回路部30に送信するものであってもよい。なお、CO2センサ41は熱交換換気装置1と通信線42を介して接続されているが、通信線42は有線であっても無線であってもよい。
【0058】
熱交換換気装置1は、実施の形態1で説明したものと同様の構成を有する。ただし、制御回路部30は、CO2センサ41と連携し、送風機12の風量を制御する。一般的には、制御回路部30は、CO2センサ41から室内50のCO2濃度を受信し、室内50のCO2濃度が予め定められた基準値よりも高い場合には、送風機12の風量が高くなるように設定し、CO2濃度が予め定められた基準値よりも低い場合には、送風機12の風量が低くなるよう設定する。CO2濃度が予め定められた基準値と等しい場合には、送風機12の風量が高くなるように設定してもよいし、送風機12の風量が低くなるように設定してもよい。また、熱交換換気装置1内で発生する水の総量を減少させるために、風量を減少させた運転中の場合には、制御回路部30は、水の総量を減少させるために要求される風量と、CO2濃度を低減させるために要求される風量と、を比較し、要求される風量が低い方の条件に従って送風機12を制御する。
【0059】
図9は、実施の形態2に係る熱交換換気装置における水の総量に対して要求される風量の関係の一例を示す図である。この図において、横軸は、熱交換換気装置1の水の総量Msumを示し、縦軸は、送風機12に要求される風量である要求風量Q1を示している。図9に示されるように、水の総量Msumがa1以下では、要求風量Q1は最大となり、水の総量Msumがa1よりも増加するにしたがって要求風量Q1が減少し、水の総量Msumがa2以上では、要求風量Q1が最小となるように送風機12が制御される。要求風量Q1は、第1要求風量に対応する。
【0060】
図10は、実施の形態2に係る熱交換換気装置における室内のCO2濃度に対して要求される風量の関係の一例を示す図である。この図において、横軸は、室内50のCO2濃度を示し、縦軸は、送風機12に要求される風量である要求風量Q2を示している。図10に示されるように、CO2濃度がb2以上では、要求風量Q2は最大となり、CO2濃度がb2よりも減少するにしたがって要求風量Q2が減少し、CO2濃度がb1以下では、要求風量Q2が最小となるように送風機12が制御される。要求風量Q2は、第2要求風量に対応する。
【0061】
制御回路部30は、水の総量Msumを算出した後、水の総量Msumに対応する要求風量Q1を算出する。また、制御回路部30は、CO2センサ41からCO2濃度を取得すると、図10に示される室内50のCO2濃度と要求風量Q2との関係を示す情報から、室内50のCO2濃度を予め定められた値に保つための要求風量Q2を算出する。制御回路部30は、水の総量Msumに対応する要求風量Q1と室内50のCO2濃度に対応する要求風量Q2との大小を比較する。
【0062】
水の総量Msumに対応する要求風量Q1が室内50のCO2濃度に対応する要求風量Q2よりも大きい場合には、送風機12の風量をQ2まで減少させても、結露水の発生の抑制とCO2濃度の維持とを両立することができる。このため、制御回路部30は、送風機12の風量をQ2に設定する。この場合には、風量が要求風量Q1よりも小さくなるため、室内50のCO2濃度を考慮しない場合に比して、送風機12の消費電力の抑制が可能となる。
【0063】
水の総量Msumに対応する要求風量Q1が室内50のCO2濃度に対応する要求風量Q2よりも小さい場合には、CO2濃度よりも結露水によるドレンパン18のオーバフローの発生を抑制するため、制御回路部30は、送風機12の風量をQ1に設定して運転を継続する。
【0064】
なお、水の総量Msumに対応する要求風量Q1が室内50のCO2濃度に対応する要求風量Q2と等しい場合には、制御回路部30は、送風機12の風量をQ1すなわちQ2に設定する。
【0065】
つぎに、制御回路部30によるドレンパン18から結露水をオーバフローさせずに、室内50のCO2濃度を低減させる熱交換換気を行う制御アルゴリズムについて説明する。図11は、実施の形態2に係る熱交換換気装置の制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS11からステップS20までは、実施の形態1の図6と同様であるので、図面および説明を省略する。
【0066】
図6のステップS20で熱交換換気装置1に存在する水の総量Msumを算出し、記憶した後に、制御回路部30は、水の総量Msumで求められる結露抑制のための要求風量Q1を算出する(ステップS51)。ついで、制御回路部30は、CO2センサ41から室内50のCO2濃度を取得する(ステップS52)。制御回路部30は、取得したCO2濃度から室内50のCO2濃度を快適に保つための要求風量Q2を算出する(ステップS53)。その後、制御回路部30は、結露抑制のための要求風量Q1と室内50のCO2濃度を快適に保つための要求風量Q2との比較を実施し、要求風量Q1が要求風量Q2よりも大きいかを判定する(ステップS54)。
【0067】
要求風量Q1が要求風量Q2よりも大きい場合(ステップS54でYesの場合)には、風量を要求風量Q2まで減少させても結露水の発生の抑制とCO2濃度の維持とが両立できるため、熱交換換気装置1は風量をQ2まで落とすことが可能となる。このため、制御回路部30は、送風機12の風量をQ2に制御する(ステップS55)。その後、処理がステップS14に戻る。
【0068】
要求風量Q1が要求風量Q2以下の場合(ステップS54でNoの場合)には、制御回路部30は、送風機12は最小風量で運転しているかを判定する(ステップS56)。送風機12が最小風量で運転していない場合(ステップS56でNoの場合)には、CO2濃度よりも結露水によるドレンパン18のオーバフローの防止を優先するため、制御回路部30は、送風機12の風量をQ1に制御する(ステップS57)。なお、熱交換換気装置1での結露水の発生による水の総量が減った場合には、要求風量Q1が大きくなる。そして、要求風量Q1が要求風量Q2よりも大きくなった場合には、CO2濃度を優先した省エネルギ運転に復帰することができる。
【0069】
その後、実施の形態1の図7で説明したステップS27に処理が移る。すなわち、制御回路部30は、リモコン20から熱交換換気装置1の運転の終了を含む運転指令を受けたかを判定し、リモコン20から熱交換換気装置1の運転の終了を含む運転指令を受けていない場合には、ステップS14に処理が戻る。この後、ステップS54で要求風量Q1が要求風量Q2以下の状態が継続し、かつ要求風量Q1が減少していく場合に、制御回路部30は、ステップS57の送風機12の風量を減少させていく。そして、要求風量Q1が最小風量となるまで、風量を減少させることができる。
【0070】
ステップS56で送風機12が最小風量で運転している場合(ステップS56でYesの場合)、すなわち要求風量Q1が送風機12の最小風量となっている場合には、制御回路部30は、実施の形態1の図7で説明したステップS24に処理が移る。ステップS24以降の処理は、実施の形態1で説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0071】
なお、上記した説明では、CO2センサ41を用いて計測した室内50のCO2濃度を用いた風量の制御方法について説明したが、室内50における空気の性質である空気質の計測結果を用いて風量の制御を行ってもよい。空気質として、CO2だけではなく、粉塵、臭気物質、建築物から発せられる化学物質等を計測することができる。臭気物質は、人体から発せられる物質であり、一例では、アンモニア、硫化水素またはメチルメルカプタンである。この場合には、図8で、CO2センサ41の代わりに、室内50からの排気の目的となる物質を検知することができる空気質検知部が設けられる。そして、図11のステップS53では、空気質検知部で検知される目的の物質の濃度が室内50を快適に保つための濃度となる要求風量Q2が算出される。
【0072】
実施の形態2に係る熱交換換気装置1によれば、制御回路部30は、OA温度計測値、OA相対湿度計測値、RA温度計測値、RA相対湿度計測値、熱交換効率、運転風量および閾値情報から算出される水の総量から結露を抑制する要求風量Q1を算出し、空気質の計測結果から室内50の空気質の濃度を予め定められた基準値よりも小さくする要求風量Q2を算出する。要求風量Q2が要求風量Q1よりも小さい場合には、制御回路部30は、送風機12の風量をQ2に制御する。これによって、結露水の発生の抑制と空気質の維持とを両立することができる。また、この場合には、風量が要求風量Q1よりも小さくなるため、室内50の空気質を考慮しない場合の実施の形態1に比して、送風機12の消費電力の抑制が可能となる。また、要求風量Q1が要求風量Q2よりも小さい場合には、送風機12の風量をQ1に制御する。これによって、CO2濃度よりも結露水によるドレンパン18のオーバフローの発生を抑制することができる。
【0073】
なお、上記した説明では、RA温度センサ16およびRA湿度センサ17は、排気風路116の熱交換器13の風上側、すなわち風上側排気風路116aに配設される場合を示したが、排気流EFの温度および湿度を検知することができる位置に配置されていればよい。一例では、RA温度センサ16およびRA湿度センサ17は、排気風路116の熱交換器13の風下側、すなわち風下側排気風路116bに設けられてもよい。また、OA温度センサ14およびOA湿度センサ15は、給気風路115の熱交換器13の風上側、すなわち風上側給気風路115aに配設される場合を示したが、給気流SFの温度および湿度を検知することができる位置に配置されていればよい。一例では、OA温度センサ14およびOA湿度センサ15は、給気風路115の熱交換器13の風下側、すなわち風下側給気風路115bに設けられてもよい。
【0074】
制御回路部30は、処理回路として実現される。処理回路は専用のハードウェアであってもよいし、集積回路であってもよいし、プロセッサを備える回路であってもよい。図12は、実施の形態1および2に係る熱交換換気装置の制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御回路部30は、プロセッサ501と、メモリ502と、を備える。プロセッサ501は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)とも称される)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ502は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)等である。プロセッサ501とメモリ502とはバスライン503を介して接続される。
【0075】
制御回路部30は、OA温度センサ14、OA湿度センサ15、RA温度センサ16およびRA湿度センサ17での検知結果、あるいはこれらおよび空気質検知部での検知結果に基づく給気用送風機12Sおよび排気用送風機12Eの風量の制御の処理の手順を記述したプログラムをメモリ502から読み出し、プロセッサ501が実行することにより実現される。また、複数のプロセッサおよび複数のメモリが連携して上記機能を実現してもよい。また、制御回路部30の機能のうちの一部を専用のハードウェアである電子回路として実装し、他の部分をプロセッサ501およびメモリ502を用いて実現するようにしてもよい。一例では、制御回路部30は、給気用送風機12Sおよび排気用送風機12Eの動作を電気信号によって制御する。
【0076】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 熱交換換気装置、11 本体ケーシング、12 送風機、12E 排気用送風機、12S 給気用送風機、13 熱交換器、14 OA温度センサ、15 OA湿度センサ、16 RA温度センサ、17 RA湿度センサ、18 ドレンパン、19 風路切替ダンパ、20 リモコン、30 制御回路部、41 CO2センサ、42 通信線、50 室内、60 結露水、111 外気吸込口、112 排気吐出口、113 給気吐出口、114 室内空気吸込口、115 給気風路、115a 風上側給気風路、115b 風下側給気風路、116 排気風路、116a 風上側排気風路、116b 風下側排気風路、116c バイパス風路、131 シート材、132 間隔保持部材、132a 間隔保持部材、132b 間隔保持部材、133a 一次側風路、133b 二次側風路、181 排水口、EA 排気、EF 排気流、OA 外気、Q1 要求風量、Q2 要求風量、RA 還気、SA 給気、SF 給気流。
図1
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図12