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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
F25B1/00 304H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023544925
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032382
(87)【国際公開番号】W WO2023032138
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】成井 貴大
(72)【発明者】
【氏名】酒井 瑞朗
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和也
(72)【発明者】
【氏名】秋友 郷志
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-88656(JP,A)
【文献】特開2019-86244(JP,A)
【文献】特開2019-173987(JP,A)
【文献】特開2021-38885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、熱源側の熱交換器、膨張弁、および利用側の熱交換器が冷媒配管で接続された冷媒回路を備える冷凍サイクル装置であって、
凝縮器として機能する前記熱交換器の伝熱管温度および出口管温度と、前記圧縮機の吐出温度とを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて過冷却度制御と吐出温度制御または吐出過熱度制御とを行うことが可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記冷凍サイクル装置の運転開始時は前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づいて制御し、前記冷凍サイクル装置の運転特性に基づいて過冷却度制御の継続が可能でないと判定した場合、前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づく制御から吐出温度制御または吐出過熱度制御に基づく制御へ切り替える
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記運転特性は、前記圧縮機の運転周波数であり、
前記制御部は、
前記圧縮機の運転周波数が所定の閾値よりも小さい場合、前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づく制御から吐出温度制御または吐出過熱度制御に基づく制御に切り替える、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記運転特性は、前記熱交換器の過冷却度であり、
前記制御部は、
前記熱交換器の過冷却度が所定の閾値よりも小さい場合、前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づく制御から吐出温度制御または吐出過熱度制御に基づく制御に切り替える、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記運転特性は、前記膨張弁の開度であり、
前記制御部は、
前記膨張弁の開度が所定の閾値よりも小さい場合、前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づく制御から吐出温度制御または吐出過熱度制御に基づく制御に切り替える、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記運転特性は、前記圧縮機の運転周波数、前記熱交換器の過冷却度、及び前記膨張弁の開度であり、
前記制御部は、
前記圧縮機の運転周波数が所定の閾値よりも小さく、かつ前記熱交換器の過冷却度が所定の閾値よりも小さく、かつ前記膨張弁の開度が所定の閾値よりも小さい場合に、前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づく制御から吐出温度制御または吐出過熱度制御に基づく制御に切り替える、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、熱源側熱交換器、電子膨張弁、および利用側熱交換器を冷媒配管が接続された冷凍サイクル装置においては、凝縮器として機能する熱交換器の過冷却度の値が所定の値の範囲内に収まるように膨張弁開度を制御する過冷却度制御を備えた冷凍サイクル装置が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-96474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような従来の冷凍サイクル装置においては、凝縮器として機能する熱交換器の伝熱管温度および出口管温度の値から過冷却度を算出して膨張弁開度を制御する。しかしながら、冷凍サイクル装置の据え付け環境や運転状態によっては、制御を行う上で十分な過冷却度を確保できないことがある。この場合、冷凍サイクル装置は、過冷却度を確保するために膨張弁開度を絞り続けるため、吐出温度や吐出過熱度が過昇することにより、例えば吐出温度異常の保護によって運転停止してしまう恐れがある。
【0005】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたもので、過冷却度がつきにくい運転状態であっても、吐出温度異常によって運転停止する事態にならない信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、熱源側の熱交換器、膨張弁、および利用側の熱交換器が冷媒配管で接続された冷媒回路を備える冷凍サイクル装置であって、凝縮器として機能する前記熱交換器の伝熱管温度および出口管温度と、前記圧縮機の吐出温度とを検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて過冷却度制御と吐出温度制御または吐出過熱度制御とを行うことが可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記冷凍サイクル装置の運転開始時は前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づいて制御し、前記冷凍サイクル装置の運転特性に基づいて過冷却度制御の継続が可能でないと判定した場合、前記膨張弁の開度を過冷却度制御に基づく制御から吐出温度制御または吐出過熱度制御に基づく制御へ切り替える
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、過冷却度がつきにくい運転状態であっても、吐出温度異常によって運転停止する事態にならない信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成例を示すブロック図。
図2】第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷房運転時のP-h線図。
図3】第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置のSC制御実行時のP-h線図。
図4】第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置のTd制御実行時のP-h線図。
図5】第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置のSHd制御実行時のP-h線図。
図6】第1の実施形態に係るSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャート。
図7】第2の実施形態に係るSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャート。
図8】第3の実施形態に係るSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャート。
図9】第4の実施形態に係るSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャート。
図10】第5の実施形態に係るSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。
[冷凍サイクル装置の構成]
図1は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100の構成例を示すブロック図である。図示する冷凍サイクル装置100は、冷媒回路10と、冷媒回路10を制御する制御部20とを備えている。冷媒回路10は、圧縮機101と、冷媒の流れ方向を切り替える冷媒切り替え装置102と、熱源側熱交換器103と、膨張弁104(電子膨張弁)と、利用側熱交換器105と、それぞれを順次に接続する冷媒配管としての配管11、12、13、14とを含んで構成されている。
【0010】
配管11は、圧縮機101から熱源側熱交換器103までの間を接続する冷媒配管である。配管12は、熱源側熱交換器103から膨張弁104までの間を接続する冷媒配管である。配管13は、膨張弁104から利用側熱交換器105までの間を接続する冷媒配管である。配管14は、利用側熱交換器105から圧縮機101までの間を接続する冷媒配管である。
【0011】
冷媒切り替え装置102は、冷媒の流れ方向を切り替える四方弁を含んで構成され、圧縮機101の下流側の配管11と上流側の配管14の間に接続されている。冷房運転では、冷媒切り替え装置102の接続が図1に示す実線の向きに接続され、暖房運転では、冷媒切り替え装置102の接続が図1に示す破線の向きに接続される。
【0012】
熱源側熱交換器103は、利用側熱交換器105に供給する熱を生成する熱源機または熱源側ユニットとして機能する。利用側熱交換器105は、熱源側熱交換器103から供給される熱を利用する負荷側ユニットとして機能する。
【0013】
熱源側熱交換器103および利用側熱交換器105それぞれの伝熱管および出口管(出口側の配管)と、圧縮機101の下流側の吐出配管および圧縮機101の容器表面とには、それぞれの冷媒温度を検出するための検出部の一例として温度検出器が設けられている。
【0014】
図1において、温度検出器111は、熱源側熱交換器103の伝熱管温度を検出するための温度検出器である。温度検出器112は、熱源側熱交換器103の出口管温度(出口側の配管温度)を検出するための温度検出器である。温度検出器113は、利用側熱交換器105の伝熱管温度を検出するための温度検出器である。温度検出器114は、利用側熱交換器105の出口管温度を検出するための温度検出器である。温度検出器115は、圧縮機101の下流側の吐出配管温度を検出するための温度検出器である。温度検出器116は、圧縮機101の容器表面温度を検出するための温度検出器である。
【0015】
冷媒温度を検出するための検出部は、温度センサなどの温度検出器を用いるほか、凝縮器として機能する熱交換器の伝熱管温度(以下、「凝縮温度」と称する)については温度検出器の代わりに圧力検出器を用いて、冷媒の圧力を検出し、その飽和温度を使用することにより冷媒温度を間接的に検出してもよい。
【0016】
制御部20は、冷房運転、暖房運転などの運転状態に応じて冷媒回路10の冷媒の流れや冷媒回路10の各部を制御する。例えば、制御部20は、上述した温度検出器の検出結果および運転特性などに基づいて膨張弁104の開度を制御する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100の冷房運転時のP-h線図の一例である。この図において、縦軸が圧力P(MPa)、横軸が比エンタルピーh(kJ/kg)を示す。なお、図2の点(a)~点(d)は、図1において同一の記号を付した部分での冷媒の状態を示す。
【0018】
圧縮機101が運転を開始すると、低温低圧のガス冷媒が圧縮機101によって圧縮され、高温高圧のガス冷媒となって吐出される。この圧縮機101の冷媒圧縮過程は、圧縮機101の断熱効率の分だけ、等エントロピ線で断熱圧縮される場合と比較して加熱されるように圧縮され、図2の点(a)から点(b)に示す線で表される。
【0019】
圧縮機101から吐出された高温高圧のガス冷媒は、冷媒切り替え装置102を通過して、熱源側熱交換器103へ流入する。熱源側熱交換器103へ流入した冷媒は、室外空気を加熱しながら冷却され、中温高圧の液冷媒となる。熱源側熱交換器103内での冷媒変化は、熱交換器内の圧力損失を考慮すると、図2の点(b)から点(c)に示す水平から少し左下がりに傾いた線で表される。
【0020】
熱源側熱交換器103から流出した中温高圧の液冷媒は、膨張弁104を通り膨張および減圧され、低温低圧の気液二相流状態になる。この膨張弁104を通過した時の冷媒変化はエンタルピーが一定のもとで行われる。このときの冷媒変化は、図2の点(c)から点(d)に示す垂直線で表される。
【0021】
膨張弁104から流出した低温低圧の気液二相流状態の冷媒は、利用側熱交換器105へ流入する。利用側熱交換器105へ流入した冷媒は、室内空気を冷却しながら加熱され、低温低圧のガス冷媒となる。利用側熱交換器105での冷媒変化は、熱交換器内の圧力損失を考慮すると、図2の点(d)から点(a)に示す水平から少し右に傾いた線で表される。
【0022】
利用側熱交換器105を流出した低温低圧のガス冷媒は、冷媒切り替え装置102を通って圧縮機101に流入し圧縮される。暖房運転時の場合には、制御部20の制御により冷媒切り替え装置102の接続が切り替わり、蒸発器と凝縮器とが逆転するだけで、P-h線図の動きは変わらない。
【0023】
従来は、凝縮器として機能する熱交換器の凝縮温度と出口管温度(以下、「凝縮器出口温度」と称する)の差分である過冷却度(以下、「SC」と称する)を用いて制御を行う過冷却度制御(以下、「SC制御」と称する)を行うことが一般的であった。冷凍サイクル装置100においても、制御部20は、通常の制御としては、SC制御を用いる。
【0024】
[過冷却度制御の説明]
図3は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100のSC制御実行時のP-h線図の一例である。制御部20は、SC制御において、凝縮温度の実測値と凝縮器出口温度の実測値との差分であるSCの算出値(以下、「実働SC」と称する)が所定のSC範囲(例えば、2~6度)に収まるように膨張弁104の開度を調整する。制御部20は、SC制御の実行時に、実働SCが所定のSC範囲に足りていない場合には、膨張弁104を絞り込む。制御部20は、膨張弁104を絞り込むことによって、冷媒循環量を減らし凝縮圧力を上昇させ、蒸発圧力を低下させることにより、SCの値を大きくして所定のSC範囲内に収まるように制御する。
【0025】
なお、図3に示す例とは反対に、制御部20は、SC制御の実行時に、実働SCが所定のSC範囲を上回っている場合には、膨張弁104の開度を開く。制御部20は、膨張弁104の開度を開くことによって、冷媒循環量を増やし凝縮圧力を低下させ、蒸発圧力を上昇させることにより、SCの値を小さくして所定のSC範囲内に収まるように制御する。
【0026】
ここで、SC制御を行う目的としては、性能の向上がある。SCを所定のSC範囲で制御することにより凝縮器として機能する熱交換器の入口エンタルピー(以下、「凝縮器入口エンタルピー」と称する)とその熱交換器の出口エンタルピー(以下、「凝縮器出口エンタルピー」と称する)との差分である凝縮器エンタルピー差を確保することにより、利用側熱交換器105の必要性能を実現している。
【0027】
[吐出温度制御の説明]
また、冷凍サイクル装置100の制御を行う上で、制御部20は、圧縮機101の下流側の吐出配管温度または圧縮機101の容器表面温度を吐出温度の代表温度として、この吐出温度(以下、「Td」と称する)を用いて制御を行う吐出温度制御(以下、「Td制御」と称する)を実行することも可能である。
【0028】
図4は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100のTd制御実行時のP-h線図の一例である。制御部20は、Td制御において、検出されたTdの実測値(以下、「実働Td」と称する)が所定のTd範囲(例えば、60~100度)に収まるように膨張弁104の開度を調整する。制御部20は、Td制御の実行時に、実働Tdが所定のTd範囲を上回っている場合には、膨張弁104の開度を開く。制御部20は、膨張弁104の開度を開くことによって、冷媒循環量を増やし凝縮圧力を低下させ、蒸発圧力を上昇させることにより、Tdの値を低下させて所定のTd範囲内に収まるように制御する。
【0029】
なお、図4に示す例とは反対に、制御部20は、Td制御の実行時に、実働Tdが所定のTd範囲に足りていない場合には、膨張弁104を絞り込む。制御部20は、膨張弁104を絞り込むことによって、冷媒循環量を減らし凝縮圧力を上昇させ、蒸発圧力を低下させることにより、Tdの値を上昇させて所定のTd範囲内に収まるように制御する。
【0030】
[吐出過熱度制御の説明]
なお、制御部20は、Tdと凝縮温度との差分である吐出過熱度(以下、「SHd」と称する)を用いて制御する吐出過熱度制御(以下、「SHd制御」と称する)を、Td制御に代えて実行することも可能である。
【0031】
図5は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100のSHd制御実行時のP-h線図の一例である。制御部20は、SHd制御において、実働Tdと凝縮温度の実測値との差分であるSHdの算出値(以下、「実働SHd」と称する)が所定のSHd範囲(例えば、20~30度)に収まるように膨張弁104の開度を調整する。制御部20は、SHd制御の実行時に、実働SHdが所定のSHd範囲を上回っている場合は、膨張弁104の開度を開く。制御部20は、膨張弁104の開度を開くことによって、冷媒循環量を増やし凝縮圧力を低下させ、蒸発圧力を上昇させることで、SHdの値を低下させて所定のSHd範囲内に収まるように制御する。
【0032】
なお、図5に示す例とは反対に、制御部20は、SHd制御の実行時に、実働SHdが所定のSHd範囲に足りていない場合は、膨張弁104を絞り込む。制御部20は、膨張弁104を絞り込むことによって、冷媒循環量を減らし凝縮圧力を上昇させ、蒸発圧力を低下させることで、SHdの値を上昇させて所定の範囲内に収まるように制御する。
【0033】
ここで、Td制御またはSHd制御を行う目的としては、運転の信頼性の確保がある。圧縮機101の運転中は圧縮された冷媒が高温となり、圧縮機101の構造部やモータなどが内蔵されている圧縮機101の容器が加熱される。制御部20は、所定のTd範囲内でTdを制御することにより、圧縮機101のモータ巻線を減磁させないようにすることができる。また、低負荷運転時などでは、圧縮機101に対して湿りガスが吸入され、液バック運転になることが考えられる。制御部20は、TdまたはSHdを所定の範囲内に制御することにより圧縮機101の吸入状態を制御し、圧縮機101の信頼性を確保することができる。
【0034】
本実施形態に係る冷凍サイクル装置100において、制御部20は、冷凍サイクル装置100の運転特性に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替えて実行することが可能である。例えば、制御部20は、検出部による検出結果と冷凍サイクル装置100の運転特性とに基づいて、膨張弁140の開度をSC制御とTd制御またはSHd制御とのいずれかに基づいて制御する。
【0035】
[制御の切替処理の動作の説明]
次に、冷凍サイクル装置100の制御部20が運転特性に基づいてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の動作について説明する。
図6は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100において、運転特性に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャートである。なお、冷凍サイクル装置100の運転開始時は、従来制御と同様に必要能力を確保するために、制御部20はSC制御を実行する。
【0036】
制御部20は、運転中のSCを算出する(ステップS11)。例えば、制御部20は、温度検出器111により検出された凝縮温度と温度検出器112により検出された凝縮器出口温度とに基づいて運転時のSCを算出する。そして、ステップS12へ進む。
【0037】
制御部20は、冷凍サイクル装置100の運転特性に基づいてSC制御の継続が可能であるか否かを判定する(ステップS12)。冷凍サイクル装置100の運転特性とは、例えば、運転中の空調負荷の大小、SCの値、膨張弁104の開度などである。これらの具体的な運転特性の判定方法については、後述の第2から第4の実施形態にて説明する。制御部20は、ステップS12においてSC制御の継続が可能であると判定した場合(YES)、SC制御を継続して行う(ステップS13)。
【0038】
一方、制御部20は、ステップS12においてSC制御の継続が可能でないと判定した場合(NO)、Td制御またはSHd制御へ切り替える(ステップS14)。例えば、制御部20は、温度検出器115または温度検出器116を用いてTd(吐出温度)を検出し、検出したTdに基づいてTd制御を行う。或いは、制御部20は、検出したTdと凝縮温度との差分であるSHd(吐出過熱度)を算出し、算出したSHdに基づいてSHd制御を行ってもよい。
【0039】
制御部20は、ステップS13においてSC制御を継続した場合、実働SCが所定のSC範囲(例えば、2~6度)内に収まっているか否かを判定する(ステップS15)。例えば、制御部20は、ステップS15において実働SCが閾値A(例えば、2度)以上且つ閾値B(例えば、6度)以下であるか否かを判定する。制御部20は、実働SCが所定のSC範囲内に収まっていないと判定した場合(NO)、ステップS12へ戻り、改めて運転特性に基づいて判定を行う。
【0040】
一方、制御部20は、ステップS15において実働SCが所定のSC範囲内に収まっていると判定した場合(YES)、冷凍サイクルが安定している状態であると判断して制御の切替処理を終了する。なお、制御部20は、この冷凍サイクルが安定している状態であると判断する際には、実働SCが所定のSC範囲内に収まっていることが一定時間にわたって判定された後に判断してもよい。
【0041】
制御部20は、ステップS14においてSC制御からTd制御へ切り替えた場合、実働Tdが所定のTd範囲(例えば、60~100度)内に収まっているか否かを判定する(ステップS16)。例えば、制御部20は、実働Tdが閾値C(例えば、60度)以上且つ閾値D(例えば、100度)以下であるか否かを判定する。制御部20は、ステップS16において実働Tdが所定のTd範囲内に収まっていないと判定した場合(NO)、ステップS12へ戻り、改めて運転特性に基づいて判定を行う。
【0042】
一方、制御部20は、ステップS16において実働Tdが所定のTd範囲内に収まっていると判定した場合(YES)、冷凍サイクルが安定している状態であると判断して制御の切替処理を終了する。例えば、制御部20は、この冷凍サイクルが安定している状態であると判断する際には、実働Tdが所定のTd範囲内に収まっていることが一定時間にわたって判定された後に判断してもよい。
【0043】
また、制御部20は、ステップS14においてSC制御からSHd制御へ切り替えた場合、実働SHdが所定のSHd範囲(例えば、20~30度)内に収まっているか否かを判定する(ステップS16)。例えば、制御部20は、実働SHdが閾値E(例えば、20度)以上且つ閾値F(例えば、30度)以下であるか否かを判定する。制御部20は、ステップS16において実働SHdが所定のSHd範囲内に収まっていないと判定した場合(NO)、ステップS12へ戻り、改めて運転特性に基づいて判定を行う。
【0044】
一方、制御部20は、ステップS16において実働SHdが所定のSHd範囲内に収まっていると判定した場合(YES)、冷凍サイクルが安定している状態であると判断して制御の切替処理を終了する。例えば、制御部20は、この冷凍サイクルが安定している状態であると判断する際には、実働SHdが所定のSHd範囲内に収まっていることが一定時間にわたって判定された後に判断してもよい。
【0045】
なお、制御部20は、冷凍サイクルの安定後も、このSC制御とTd制御またはSHd制御との切替処理を繰り返し実行してもよい。それにより、冷凍サイクル装置100は、運転特性(例えば、空調負荷など)の変動に対しても継続的に運転の信頼性を確保することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、運転特性に応じて、膨張弁104の開度をSC制御(過冷却度制御)とTd制御(吐出温度制御)またはSHd制御(吐出過熱度制御)とのいずれかに基づいて制御することにより、必要能力の確保と運転保護の両面を実現する。よって、本実施形態によれば、SC(過冷却度)がつきにくい運転状態であっても、吐出温度異常によって運転停止する事態にならない信頼性の高い冷凍サイクル装置100を提供することができる。
【0047】
例えば、冷凍サイクル装置100には、環境規制などの社会動向もあり、低GWP(Global Warming Potential)冷媒に適用したものとしてもよい。低GWP冷媒の特性としては、従来用いられている冷媒に比べてGWPが低いことから環境影響度が低いというメリットがあることに対して、可燃性や微燃性を有しているというデメリットがある。その中で近年の環境規制によって冷凍サイクル装置の省冷媒化が進んでいることに加え、可燃性や微燃性がある冷媒の場合は、室内に冷媒漏れが発生すると安全面においても問題があるため、冷媒封入量を極力減らす傾向がある。このような冷媒封入量を減らしたい冷媒、例えば可燃性冷媒を用いる場合に、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100が特に有効である。
【0048】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態において、冷凍サイクル装置100の運転特性に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える例を説明したが、本実施形態では、運転特性の具体例として空調負荷の大小を用いる例について説明する。
【0049】
冷凍サイクル内の封入冷媒量を減らしている状態においては、空調負荷が小さい場合は、必要な空調能力が低下するため、圧縮機101の運転周波数を低下させる。それに伴い、冷凍サイクル装置100内の冷媒循環量が減少することにより、SC制御を行う上で必要な所定のSC範囲まで実測値が満たさない場合が想定される。そこで、制御部20は、冷凍サイクル装置100の空調負荷が小さいと判定した場合には、SC制御からTd制御またはSHd制御へ切り替える。
【0050】
空調負荷の大小については、一例として、制御部20は、運転中に制御している圧縮機101の実際の運転周波数(以下、「実働運転周波数」と称する)に基づいて判定することができる。例えば、制御部20は、圧縮機101の実働運転周波数が所定の閾値(例えば、40Hz)未満の場合、空調負荷が小さいと判定して、SC制御からTd制御またはSHd制御へ切り替える。一方、制御部20は、圧縮機101の実働運転周波数が所定の閾値(例えば、40Hz)以上の場合、空調負荷が小さくないと判定して、SC制御を継続する。この所定の閾値を以下では、「閾値運転周波数」と称する。
【0051】
図7は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100において、圧縮機101の運転周波数に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャートである。この図7に示すステップS21、S25、S26の各処理は、図6に示すステップS11、S15、S16の各処理と同様の処理であり、その説明を省略する。ここでは、図6に示すステップS12、S13、S14において運転特性に応じて制御を切り替える処理の一例として、ステップS22、S23、S24において空調負荷(一例として、圧縮機101の運転周波数)に応じて制御を切り替える点が異なる。
【0052】
制御部20は、冷凍サイクル装置100の空調負荷の大小の判定を行う(ステップS22)。例えば、制御部20は、空調負荷の判定として、圧縮機101の実働運転周波数が閾値運転周波数(例えば、40Hz)以上であるか否かを判定する。制御部20は、ステップS22において実働運転周波数が閾値運転周波数以上であると判定した場合(YES)、空調負荷が小さくないと判定してSC制御を継続して行う(ステップS23)。そして、ステップS25へ進む。
【0053】
一方、制御部20は、ステップS22において実働運転周波数が閾値運転周波数未満であると判定した場合(NO)、空調負荷が小さいと判定してTd制御またはSHd制御へ切り替える(ステップS24)。そして、ステップS26へ進む。
【0054】
なお、図6に示す切替処理で説明したのと同様に、この図7に示す切替処理においても、制御部20は、冷凍サイクルの安定後も、SC制御とTd制御またはSHd制御との切替処理を繰り返し実行してよい。それにより、冷凍サイクル装置100は、運転特性(例えば、空調負荷など)の変動に対しても継続的に運転の信頼性を確保することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、圧縮機101の運転周波数が所定の閾値よりも小さい場合、膨張弁104の開度をSC制御(過冷却度制御)に基づく制御からTd制御(吐出温度制御)またはSHd制御(吐出過熱度制御)に基づく制御に切り替える。
【0056】
これにより、冷凍サイクル装置100は、SCを確保しにくい運転状態、例えば、空調負荷が小さく圧縮機101の運転周波数が低下している運転状態において、圧縮機101の運転周波数の閾値をもとに膨張弁104の開度をSC制御に基づく制御からTd制御またはSHd制御に基づく制御へ切り替えることができる。そのため、本実施形態によれば、膨張弁104の過度な絞り込みを未然に抑制し、吐出温度異常などの保護動作によって、運転停止する事態にならない信頼性の高い冷凍サイクル装置100を提供することができる。
【0057】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
第1の実施形態において、冷凍サイクル装置100の運転特性に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える例を説明したが、本実施形態では、運転特性の具体例としてSCの値を用いる例について説明する。
【0058】
冷凍サイクル内の封入冷媒量を減らしている状態においては、冷凍サイクル内の余剰冷媒が少なくなる運転状態が想定され、SC制御を行う上で必要な所定のSC範囲まで実働SCが満たさないことが考えられる。そこで、制御部20は、実働SCが所定の閾値(以下、「閾値SC」と称する)よりも小さい場合には、SC制御からTd制御またはSHd制御へ切り替える。
【0059】
図8は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100において、SCの値に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャートである。この図8に示すステップS31、S35、S36の各処理は、図6に示すステップS11、S15、S16の各処理と同様の処理であり、その説明を省略する。ここでは、図6に示すステップS12、S13、S14において運転特性に応じて制御を切り替える処理の一例として、ステップS32、S33、S34においてSCの値に応じて制御を切り替える点が異なる。
【0060】
制御部20は、検出された凝縮温度と凝縮器出口温度とに基づいて算出した実働SCが閾値SC(例えば、2度)以上であるか否かを判定する(ステップS32)。制御部20は、ステップS32において実働SCが閾値SC以上であると判定した場合(YES)、冷媒が余剰気味であると判定してSC制御を継続して行う(ステップS33)。そして、ステップS35へ進む。
【0061】
一方、制御部20は、ステップS22において実働SCが閾値SC未満であると判定した場合(NO)、冷媒が不足気味であると判定してTd制御またはSHd制御へ切り替える(ステップS34)。そして、ステップS36へ進む。
【0062】
なお、図6に示す切替処理で説明したのと同様に、この図8に示す切替処理においても、制御部20は、冷凍サイクルの安定後も、SC制御とTd制御またはSHd制御との切替処理を繰り返し実行してよい。それにより、冷凍サイクル装置100は、運転特性(例えば、空調負荷など)の変動に対しても継続的に運転の信頼性を確保することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、凝縮器(例えば、熱源側熱交換器103)のSC(過冷却度)が所定の閾値よりも小さい場合、膨張弁104の開度をSC制御(過冷却度制御)に基づく制御からTd制御(吐出温度制御)またはSHd制御(吐出過熱度制御)に基づく制御に切り替える。
【0064】
これにより、冷凍サイクル装置100は、SCを確保しにくい運転状態、例えば、据付環境や冷房、暖房の運転モードの違いによって、冷凍サイクル内の冷媒の割合が少なくなる運転状態が想定される領域においても、凝縮器のSCの閾値をもとに膨張弁104の開度をSC制御に基づく制御からTd制御またはSHd制御に基づく制御へ切り替えることができる。そのため、本実施形態によれば、膨張弁104の過度な絞り込みを未然に抑制し、吐出温度異常などの保護動作によって、運転停止する事態にならない信頼性の高い冷凍サイクル装置100を提供することができる。
【0065】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
第1の実施形態において、冷凍サイクル装置100の運転特性に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える例を説明したが、本実施形態では、運転特性の具体例として、運転保護の判定のために膨張弁104の開度を用いる例について説明する。
【0066】
冷凍サイクル内の封入冷媒量を減らしている状態においては、冷凍サイクル内の余剰冷媒が少なくなる運転状態が想定され、SC制御を行う上で必要な所定のSC範囲まで実働SCが満たさないことが考えられる。そこで、制御部20は、運転中に制御している膨張弁104の実際の開度(以下、「実働膨張弁開度」と称する)が所定の閾値(以下、「閾値膨張弁開度」と称する)よりも小さい場合には、SC制御からTd制御またはSHd制御へ切り替える。
【0067】
図9は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100において、膨張弁104の開度に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャートである。この図9に示すステップS41、S45、S46の各処理は、図6に示すステップS11、S15、S16の各処理と同様の処理であり、その説明を省略する。ここでは、図6に示すステップS12、S13、S14において運転特性に応じて制御を切り替える処理の一例として、ステップS42、S43、S44において膨張弁104の開度に応じて制御を切り替える点が異なる。
【0068】
制御部20は、実働膨張弁開度が閾値膨張弁開度(例えば、20%)以上であるか否かを判定する(ステップS42)。制御部20は、ステップS42において実働膨張弁開度が閾値膨張弁開度以上であると判定した場合(YES)、膨張弁104は絞り込み可能と判定し、SC制御を継続して行う(ステップS43)。そして、ステップS45へ進む。
【0069】
一方、制御部20は、ステップS42において実働膨張弁開度が閾値膨張弁開度未満であると判定した場合(NO)、膨張弁104の絞り込みによってTdまたはSHdが高くなり、冷媒回路10内の凝縮圧力が過昇することを予防する運転保護が必要であると判定する。そのため、制御部20は、膨張弁104は絞り込みの予防が必要と判定し、Td制御またはSHd制御へ切り替える(ステップS44)。そして、ステップS46へ進む。
【0070】
なお、図6に示す切替処理で説明したのと同様に、この図9に示す切替処理においても、制御部20は、冷凍サイクルの安定後も、SC制御とTd制御またはSHd制御との切替処理を繰り返し実行してよい。それにより、冷凍サイクル装置100は、運転特性(例えば、空調負荷など)の変動に対しても継続的に運転の信頼性を確保することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、膨張弁104の開度が所定の閾値よりも小さい場合、膨張弁104の開度をSC制御(過冷却度制御)に基づく制御からTd制御(吐出温度制御)またはSHd制御(吐出過熱度制御)に基づく制御に切り替える。
【0072】
これにより、冷凍サイクル装置100は、SCを確保しにくい運転状態においての運転保護、例えばSCが所定の制御範囲を満たさない状態においての膨張弁104の過度な絞り込みが想定される領域においても、膨張弁104の開度の閾値をもとに膨張弁104の開度をSC制御に基づく制御からTd制御またはSHd制御に基づく制御へ切り替えることできる。そのため、本実施形態によれば、膨張弁104の過度な絞り込みを未然に抑制し、吐出温度異常などの保護動作によって、運転停止する事態にならない信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0073】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。
本実施形態では、上記第2、第3、及び第4の実施形態のそれぞれで説明した空調負荷(圧縮機101の運転周波数)、SCの値、及び膨張弁104の開度に応じて、SC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える例を説明する。
【0074】
図10は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100において、空調負荷(圧縮機101の運転周波数)、SCの値、及び膨張弁104の開度に応じてSC制御とTd制御またはSHd制御とを切り替える切替処理の一例を示すフローチャートである。この図10に示すステップS51、S58、S59の各処理は、図6に示すステップS11、S15、S16の各処理と同様の処理であり、その説明を省略する。ここでは、ステップS52~S57において、空調負荷(例えば、圧縮機101の運転周波数)、SCの値、及び膨張弁104の開度のそれぞれの判定結果に基づいて制御を切り替える点が図6に示す切替処理と異なる。
【0075】
制御部20は、冷凍サイクル装置100の空調負荷の大小の判定を行う(ステップS52)。例えば、制御部20は、空調負荷の判定として、圧縮機101の実働運転周波数が閾値運転周波数(例えば、40Hz)以上であるか否かを判定する。制御部20は、ステップS52において実働運転周波数が閾値運転周波数以上であると判定した場合(YES)、空調負荷が小さくないと判定してSC制御を継続して行う(ステップS56)。そして、ステップS58へ進む。
【0076】
一方、制御部20は、ステップS52において実働運転周波数が閾値運転周波数未満であると判定した場合(NO)、空調負荷が小さいと判定してステップS53へ進む。
【0077】
制御部20は、検出された凝縮温度と凝縮器出口温度とに基づいて算出した実働SCが閾値SC(例えば、2度)以上であるか否かを判定する(ステップS53)。制御部20は、ステップS53において実働SCが閾値SC以上であると判定した場合(YES)、冷媒が余剰気味であると判定してSC制御を継続して行う(ステップS56)。そして、ステップS58へ進む。
【0078】
一方、制御部20は、ステップS53において実働SCが閾値SC未満であると判定した場合(NO)、冷媒が不足気味であると判定してステップS54へ進む。
【0079】
制御部20は、実働膨張弁開度が閾値膨張弁開度(例えば、20%)以上であるか否かを判定する(ステップS54)。制御部20は、ステップS54において実働膨張弁開度が閾値膨張弁開度以上であると判定した場合(YES)、膨張弁104は絞り込み可能と判定し、SC制御を継続して行う(ステップS56)。そして、ステップS58へ進む。
【0080】
一方、制御部20は、ステップS54において実働膨張弁開度が閾値膨張弁開度未満であると判定した場合(NO)、空調負荷が小さく、冷媒が不足気味であり、且つ膨張弁104は絞り込みの予防が必要であると判定し、Td制御またはSHd制御へ切り替える(ステップS57)。そして、ステップS59へ進む。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置100は、圧縮機101の運転周波数が所定の閾値よりも小さく、かつ凝縮器(例えば、熱源側熱交換器103)のSC(過冷却度)が所定の閾値よりも小さく、かつ膨張弁104の開度が所定の閾値よりも小さい場合に、膨張弁104の開度をSC制御(過冷却度制御)に基づく制御からTd制御(吐出温度制御)またはSHd制御(吐出過熱度制御)に基づく制御に切り替える。
【0082】
これにより、冷凍サイクル装置100は、SCを確保しにくい運転状態、例えば空調負荷が小さく圧縮機101の運転周波数が低下している運転状態や据付環境や冷房、暖房の運転モードの違い、SCが所定の制御範囲を満たさない状態においての膨張弁104の過度な絞り込みが起こり運転保護が必要な領域においても、圧縮機101の運転周波数、凝縮器のSC、膨張弁104の開度の閾値のそれぞれを判定し、膨張弁104の開度をSC制御に基づく制御からTd制御またはSHd制御に基づく制御へ切り替えることができる。そのため、本実施形態によれば、膨張弁104の過度な絞り込みを未然に抑制し、吐出温度異常などの保護動作によって、運転停止する事態にならない信頼性の高い冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0083】
以上、各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0084】
上記実施形態において、熱源側熱交換器103のSCを用いる例を説明したが、利用側熱交換器105のSCを用いてもよい。また、熱源側熱交換器103のSCと利用側熱交換器105のSCの両方を用いてもよい。
【0085】
また、上記第1の実施形態において、図6に示す処理において、制御部20は、冷凍サイクルの安定後も、SC制御とTd制御またはSHd制御との切替処理を繰り返し実行してよいことを説明したが、図7、8、9、および10に示す処理についても同様に、冷凍サイクルの安定後も繰り返し実行してよい。
【0086】
なお、制御部20の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより制御部20の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0087】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記のプログラムを所定のサーバに記憶させておき、他の装置からの要求に応じて、当該プログラムを通信回線を介して配信(ダウンロード等)させるようにしてもよい。
【0088】
また、制御部20の機能の一部、または全部を、LSI(Large SCale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 冷媒回路
11、12、13、14 配管
20 制御部
100 冷凍サイクル装置
101 圧縮機
102 冷媒切り替え装置
103 熱源側熱交換器
104 膨張弁
105 利用側熱交換器
111、112、113、114、115、116 温度検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10