(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】炭素発泡シートの製造のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 44/12 20060101AFI20241011BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20241011BHJP
【FI】
B29C44/12
C01B32/05
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024007772
(22)【出願日】2024-01-23
【審査請求日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2023/051907
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522242292
【氏名又は名称】ニッポン・コルンマイヤー・カーボン・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト・クライン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ゲラーツ
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-264991(JP,A)
【文献】特開2003-041041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0410447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/12
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 発泡可能なデンプン粉末の少なくとも一つのできるだけ薄い層を、耐熱性のシート状土台上に散布施用し、
- デンプン粉末でコーティングされた前記土台を炉中に入れ、
- 約720mbarから約1,000mbarまでの内圧が調節されるまで、空気を置換しつつ、または空気を炉からポンプで排出することによって、アルゴンまたは窒素を炉中に導入し、
- 炉を180℃から最大450℃までの発泡温度に加熱して、土台上でデンプン粉末を発泡させ、及び
- 10時間までの比較的長い期間にわたって、前記発泡温度を維持して、前記の発泡されたデンプンを安定化して発泡シート
(11)とする、
ことによって、デンプン粉末または粉末形態の他の発泡可能なポリマー/ポリマー混合物から炭素発泡シート
(11)を製造する方法。
【請求項2】
安定化によって取り扱いが可能になった発泡シート
(11)を、真空または保護ガス中で
、1,000℃
超の温度で炭化するか、また
は2,000℃
超の温度で黒鉛化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発泡可能なデンプン粉末として、コーンスターチ、タピオカデンプン、小麦デンプン、またはオーツ麦または穀類をベースにして得られたデンプン粉末が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
発泡温度への加熱が、約5℃/分の加熱速度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シート状土台が、黒鉛化可能な材料からできていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シート状土台が、鋼、黒鉛または他の耐熱性材料からできていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記発泡可能なデンプン粉末が、シート状土台上への散布前または散布中に、篩分けされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
デンプン粉末の各発泡後、発泡可能なデンプンの更に別のできるだけ薄い層を、既に存在する比較的薄い発泡された発泡シート
(11)上に散布施用し、そして発泡を繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デンプン粉末が、発泡シート
(11)の構造化された表面を形成するために、局所的に異なる層厚で、シート状土台上にまたは既に発泡された発泡シート
(11)上に施用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
デンプン粉末の比較的厚い層が施用される場合、前記発泡温度を約10%低下させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
黒鉛化可能な材料として
、ポリマーが使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
黒鉛化可能な材料として、ポリアクリロニトリルが使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプン粉末からまたは粉末状の他の発泡可能なポリマー/ポリマー混合物から、絶縁材料、フィルターまたは建築材料として使用するための炭素発泡シートを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプン粉末は、一般的には、様々なポリマー及びタンパク質、またはポリマー混合物、例えばコーンスターチまたは植物ベースの他のポリマーから構成される。これには、オーツ麦製品または穀類製品から得られるデンプン粉末も含まれ得る。デンプンは、ポリサッカライドとして天然のバイオポリマーである。
【0003】
ポリマー含有デンプンは、比較的高い温度に加熱された時に、特定の条件下に発泡させることができ、この際、生じる気泡の大きさは、具体的な温度に依存することが知られている。このプロセスの間、ポリマーの一部は溶融し、同時に、このポリマーの他の部分または他のポリマーは分解してガスを形成し、このガスが、溶融されたポリマー中にいわば補足されて、中間生成物として所望の発泡体を形成する。この発泡体は色が茶色で、軟質の粘稠度を有する。
【0004】
しかし、高すぎる温度または不適的な環境条件が選択された場合には、デンプン全体が分解して発泡体が生成されず、この際、生じるのはせいぜい、炭化した残渣である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発泡可能なデンプン粉末、ポリマーまたはポリマー混合物の均一な発泡を保障し、及び追加的な水蒸気は必要とせずかつ確実に機能する、主として均一な構造を有する微細孔性炭素発泡シートを製造するための方法及び装置を提供するという課題に基づくものである。
【0006】
「薄層」(または「薄い層」)という用語は、以下では、土台の表面を本質的に閉じられた層として完全にかつ均一に覆い、及びデンプン粉末の個々の粒子が主として互いに隣り合っている、被膜として理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が基づく前記課題は、
- 発泡可能なデンプン粉末のまたは粉末形態の他の発泡可能なポリマーもしくはポリマー混合物の少なくとも一つのできるだけ薄い層を、耐熱性のシート状土台上に散布し、
- デンプン粉末でコーティングされた前記土台を炉中に入れ、
- 約700から約1,000mbarまでの内部圧が調節されるまで、空気を置換しながら、または空気を高温炉からポンプで排出することによって、炉中にアルゴンまたは窒素を導入し、
- 前記土台上でデンプン粉末を発泡させるために、炉を180℃から最大で450℃までの発泡温度に加熱し、
- 前記発泡デンプンを安定化させて発泡シートにするために、炉内の前記の発泡温度を、10時間までの長められた期間、維持し、
- アルゴンまたは窒素雰囲気中で、空気の排除下に、適切な炉中で>1,000℃において前記の安定化された発泡シートを炭化する、
ことによって解消される。
【0008】
炉中で炭化された発泡シートは、次いで、同じ炉中で、>2,000℃の温度下に保護ガス下または真空中で黒鉛化することができ、この際、前記炉は、真空高温炉であることができる。
【0009】
発泡可能なデンプンとしては、好ましくは粉末状コーンスターチを使用することができる、というのもこれは、特に良好にかつ均一に発泡し得るからである。代替的に、粉末形態の他のポリマーまたはポリマー混合物、例えばタピオカデンプン、小麦デンプンなども発泡のために使用することができる。
【0010】
発泡温度までの加熱は、好ましくは、約5℃/分の加熱速度で行われる。
【0011】
シート状土台は、炭化及び場合により黒鉛化の間に発泡シートと共に同程度に収縮する黒鉛化可能な材料からなることができる。
【0012】
代替的に、シート状土台は、鋼、黒鉛または他の耐熱性材料からなることもでき、この場合、安定化された発泡シートは、炭化の前に、シート状土台から剥がす必要がある。
【0013】
発泡可能なデンプン粉末は、シート状土台上に散布する前にまたはその間に、散布塗布される層が均一な粒度を有することを保障するために、篩分けされる。
【0014】
より厚手の発泡シートを製造するためには、各発泡または安定化の後に、デンプン粉末の更に別のできるだけ薄い層を、既に存在するより薄い発泡された層上に散布塗布し、そして発泡を繰り返す。
【0015】
原則的に、より薄いがより堅固な発泡層が生じ得るように発泡温度を若干下げることもでき、但し、この場合は、デンプンの発泡は比較的長い時間にわたって行われ得る。
【0016】
空気下に発泡を行う場合は、発泡温度は最大250℃であるべきである。
【0017】
デンプン粉末が、シート状土台上にまたは既に発泡した発泡シート上に局所的に異なる層厚で施用される場合には、発泡シートの構造化された表面を達成することができる。
【0018】
デンプン粉末の層を比較的厚く施用する場合は、発泡温度を、約10%低下させることが重要かつ必要であるが、そのためには、このような比較的厚手の層からの発泡の際に生じたガスの拡散を容易化しかつ均一な発泡を達成するために、発泡温度を一定に維持しなければならない時間を長める必要がある。代替的に、「新鮮な」デンプンを、発泡されたデンプン上に定期的に散布することもできる。
【0019】
表面を閉じるためには、シート状土台に散布されたデンプン粉末を、粉末状ポリマーで被覆することができる。
【0020】
耐熱性のシート状土台は、黒鉛化可能な材料、例えばポリマーからなることができ、または鋼、黒鉛、または十分な耐熱性、すなわち>250℃の耐熱性を有する材料からなることもできる。後者の場合、安定化された発泡シートは、黒鉛化の前に、シート状土台から除去する必要がある。
【0021】
シート状土台として黒鉛化可能な材料を使用する場合は、これは、発泡体上層と一緒に黒鉛化することができる。黒鉛化可能な材料としては、紙が適している。
【0022】
要約すると、炭素発泡シートを製造するための該方法は、次のステップ:
- デンプン/ポリマーもしくはポリマー混合物を土台上に散布するステップ、
- コーティングされたこの土台を炉中に入れ、そして温度を180℃から450℃までの発泡温度に高めるステップ、ここで
○ 発泡は、空気中でまたはアルゴンもしくは窒素雰囲気下で行われ、
○ 発泡は、約700mbarから約1,000mbarまでの炉内の内圧下に行われ、
○ 発泡温度は、発泡シートの密度に影響を与える、すなわち、高密度であればあるほど、発泡体は堅固になるが、絶縁性は低くなる、
- より厚手の発泡シートを製造するために、前記ステップを繰り返すステップ、
を含む。
【0023】
このように製造された発泡シートは、茶色帯びた色を有する。
【0024】
この方法を実施するための装置は、アルゴンまたは窒素で満たされた空間またはボックスから構成され、その中には、デンプン粉末がコーティングされたシート状土台を置くための加熱ゾーンを有する炉が存在している。
【0025】
この炉は、例えば、連続炉であることができ、これは、デンプン粉末がコーティングされた土台を、供給位置から加熱ゾーンに、そしてそこから取り出し位置に搬送するための搬送装置を備え、ここで、前記供給位置及び取り出し位置は、空間的に、同じ箇所にまたは互いに並んで存在することもできる。
【0026】
この炉は、最大約450℃の温度及び約700mbarから約1,000mbarまでの範囲の負圧で稼働させるのがよい。
【0027】
前記搬送装置は、耐高温性のコンベアベルトであることが好ましい。
【0028】
更に、供給位置の上方には、振盪装置に結合された容器が配置されており、その中には、土台上に散布するべきデンプン粉末が存在する。
【0029】
更に、前記容器には、土台上に散布されるデンプン粉末の均一な粒度を保障するために、篩装置が装備される。
【0030】
代替法では、デンプン粉末または粉末形態の他の発泡可能なポリマー/ポリマー混合物から炭素発泡シートを製造するために、加熱可能な真空高温炉が設けられ、これには、排気可能な断熱されたハウジングが装備され、このハウジングには、横から前記ハウジング内に突き出る、不活性ガスのためのガス入口が設けられており、ここで、前記ガス入口は、同時に、デンプン粉末のための供給装置と連結されており、及び前記ハウジングには、前記ガス入口の下方に、デンプン粉末を層状に堆積するための置き場が存在する。
【0031】
デンプン粉末用の供給装置を介してガス入口に供給されたデンプン粉末は、ガス流によってハウジング内に同伴されそして置き場上に堆積され、そして温度を発泡温度まで高め、それと同時にハウジング内の圧力を低下させることによって発泡される。その後、所望の層厚を有するサンドイッチ構造が生じるまで、デンプン粉末の更なる層を堆積させ、そして発泡を繰り返すことができる。
【0032】
デンプン粉末の供給を正確に計量できるようにするために、前記供給装置は、貯蔵容器から構成され、この貯蔵装置は、それの下方に存在するアングル管と接続されており、このアングル管は、ガス入口の側壁を終点とする。前記アングル管中には、ハウジング内の置き場上に堆積されるデンプンのための計量供給補助及び供給装置としてスクリューコンベアが更に存在する。
【0033】
この目的のために、ガス入口中のガス流が利用され、これは、ガス入口に達したデンプン粉末を連行して、「人工雪の降雪」のように置き場上にそれを堆積させる。
【0034】
サンドイッチ構造の所望の層厚に達した後は、ガス入口を停止し、そしてこのサンドイッチ構造の炭化または黒鉛化のために真空高温炉を1,000℃または2,000℃に加熱する。
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】該方法の実施に適した連続炉の概略図である。
【
図2】該方法の実施に並びに炭化及び黒鉛化のために適した真空高温炉の概略図である。
【実施例】
【0037】
該方法を実施するための装置は、
図1によれば、アルゴンまたは窒素が満たされたボックス1から構成され、その中には、デンプン粉末4’でコーティングされたシート状土台4を受け入れるための加熱ゾーン3を備えた炉2が存在している。
【0038】
炉2は、ボックス1を用いて排気可能な連続炉であることができ、これは、デンプン粉末でコーティングされたシート状土台4を供給位置6から加熱ゾーン3(発泡ゾーン)に、そしてそこから取り出し位置7に搬送するための耐熱性コンベアベルト5などの形態の搬送デバイスを備えており、この際、供給位置6及び取り出し位置7は、空間的に、同じ箇所にかまたは互いに隣り合って存在することもできる。
【0039】
更に、供給位置6の上方には、振盪装置8と連結した容器9が存在し、この容器9は、シート状土台4上に散布されるデンプン粉末を含む。
【0040】
更に、容器9は、加熱ゾーン3における均一な発泡のための前提条件として同じ大きさの粒度を有するデンプン粉末のみがシート状土台4上に散布されることを保障するために、篩装置10を装備している。原則的に、デンプン粉末の代わりに、グラニュール形態のデンプン、すなわち粉末よりも若干粗い粒度を有するデンプンも使用することができる。
【0041】
また、デンプン粉末の代わりに、他のポリマーまたはポリマー混合物も、これらが比較的高い温度で溶融しそして同時にガスを放出するのであれば、使用することができる。
【0042】
要約すると、炉2は、以下の特性を有するべきである:
- ボックス1において、従って炉2においても、吸引によって負圧を発生可能である必要があり、この場合、炉2は開放したままである。
- ボックス1内の炉2は、ボックス1から提供される様々なガスで稼働できるべきである。
- ボックス1は、アルゴン、窒素を充填されるべきであり、及び空気で充填/パージ可能であるべきである。
- 炉2は、450℃の内部温度に達し得るべきである。
- ボックス1/炉2は、炉中に生じたガスが空気に接して火炎を形成することを防止するために、排気システムを備えるべきである。
【0043】
微細孔性炭素発泡シート11の製造のためには、第一のステップでは、発泡可能なデンプン粉末の少なくとも一つの薄層、または粉末形態の他の発泡可能なポリマーもしくはポリマー混合物の少なくとも一つの薄層を、耐熱性のシート状土台4上に散布する。これは、好ましくは、ボックス1内部で供給位置7において行われる。
【0044】
次いで、デンプン粉末でコーティングされたシート状土台4を、コンベアベルト5を用いて炉2中に搬送する。その後、720mbarの内圧が炉内で調節されるまで、空気を置換するかまたは高温炉から空気をポンプで排出することによって、空気、アルゴンまたは窒素を炉2中に導入する。ここで、炉2において、約720mbarから約1,000mbarまでの内圧を調節可能でなければならない点が重要である。
【0045】
また、ボックス1中に存在する炉2が常に開放状態であるか、またはドアなしで使用され、その結果、炉2中の必要な内圧をボックス1を通して調節することができ、この際、ボックス1を通して、必要なガスも炉2中に導入される点が重要である。このようにすることで、ガス及び圧力の調整のための時間の損失が発生せず、これは、より効率のよい作業を可能にする。
【0046】
次に、炉2を、デンプンを発泡させるために、加熱ゾーン3において180~450℃(発泡温度)に加熱する。アルゴンまたは窒素の代わりに空気を炉2中に導入した場合は、250℃の発泡温度を超過してはならない。
【0047】
それ以外では、具体的に選択される発泡温度は、内圧、ガスのタイプ、発泡させるポリマー、及び炉中へのガス流量に依存する。例えば、ガス流量を高めた場合には、冷却効果が高くなるので、発泡温度を高める必要がある。
【0048】
シート状土台4上で発泡したデンプンを安定化させて発泡シート11とするためには、炉2の加熱ゾーン3における発泡温度は、最大10時間までの長められた期間の間、維持する必要がある。
【0049】
より厚手の発泡シート11を製造するためには、デンプン粉末がコーティングされたシート状土台4を、コンベアベルト4を用いて、更なる層を施用するために供給位置6に戻し、次いで再び炉2中に搬送すれば十分である。このプロセスは、発泡シート11の所望の厚さが達成されるまで、簡単に繰り返すことができ、この際、炉内の温度は一定に保つ。
【0050】
安定化によって取り扱いし易くなった発泡シート11は、最後に、他の炉中で、>1,000℃で真空または保護ガス中で炭化するか、または>2,000℃で黒鉛化される。このような炉は、真空高温炉であることができる。
【0051】
シート状土台4が、ポリマーなどの黒鉛化可能な材料、例えばポリアクリロニトリルからなる場合には、これは、炭化中及び場合により黒鉛化中に、発泡シート11と結合した状態で残り得る。最も簡単な場合には、シート状土台は紙からなることができる。土台がポリアクリロニトリルからなる場合には、これは安定化することができる。
【0052】
代替的に、シート状土台4は、黒鉛から、または紙で覆われた黒鉛もしくは他の耐熱性材料からなることもでき、この場合、安定化された発泡シート11は、炭化の前に、シート状土台4から剥がすことができる、というのも、この場合、シート状土台4は、安定化された発泡シート11に付着しないからである。
【0053】
炭化された発泡シート11は、適切な炉中で、例えば別個の真空高温炉中で、>2,000℃の温度で黒鉛化することもできる。
【0054】
比較的厚手の発泡シート11を製造するべき場合は、各々の発泡の後に、発泡可能なデンプン粉末の更に別の層を、既に存在する比較的薄い発泡シート上に散布し、そしてサンドイッチ構造が生じるまで発泡を繰り返す。
【0055】
しかし、この場合、炭化または黒鉛化は、サンドイッチ構造の全ての層を完全に発泡した時になって始めて、行うことができる。
【0056】
発泡シート11の構造化された表面は、デンプン粉末を、局所的に異なる層厚でシート状土台4上に施用することによって、達成することができる。
【0057】
比較的厚手に施用された層の場合には、発泡の際に生じたガスの拡散を容易にするため及び均一な発泡を達成し及び粗大な気泡の発生を防止するために、発泡温度を最大で10%低下させることが重要かつ必要である。しかし、このためには、発泡温度を一定に維持する時間は、相応して長くする必要がある。代替的に、「新鮮な」デンプンを、発泡されたデンプン上に定期的に散布することもできる。
【0058】
原則的に、「発泡」、「炭化/黒鉛化」のプロセス全体を、同じ炉中で行うことも可能であり、但し、この炉は、各々のプロセスステップに必要な温度を調節可能な密閉真空高温炉である必要がある。
【0059】
図2は、デンプン粉末または粉末形態の他の発泡可能なポリマー/ポリマー混合物から炭素発泡プレート11を製造する該方法の実行に並びに炭化及び黒鉛化に適した真空高温炉12の概略図を示す。
【0060】
真空高温炉12は、真空気密ハウジング13から構成され、このハウジング13は、接続ポート14を介して、負圧を発生させるための図示していないポンプに接続されている。更に、真空高温炉12中には、シート状土台4上に形成するべき発泡シート11、例えばサンドイッチ構造の形態の発泡シート11のためのシート状土台4を置くための置き場15が存在する。
【0061】
更に、真空高温炉12における上部領域の横側には、ガス入口16が設けられており、これは、置き場15の縁の上方に間隔を開けて、真空高温炉12中に突出している。
【0062】
このガス入口16は、一方では、不活性ガス16’のための図示していない源と、及びアングル管17を介してスクリューコンベア18及びその上にあるデンプン20の貯蔵容器19と接続している。
【0063】
高温真空炉12中への粉末状デンプン20の供給は、ガス入口16を介して真空高温炉12中に流入する不活性ガスの助けを借りて行われ、この不活性ガスは、ガス入口16を通るガス流の結果として、スクリューコンベア18を用いて貯蔵容器18からアングル管17に運ばれるデンプン20を連行し、そして地面を人工雪で覆うように、置き場15上に存在するシート状土台4上にそれを堆積し、そして発泡温度に達した時にそれを発泡させる。
【0064】
このようにして、厚手の発泡シート11を製造することができる。代替的に、多少とも密度を有する層を得るために、温度を交互に上げ下げすることができる。
【0065】
また、先ずデンプン20の層を堆積し、その後これを発泡させ、次いで、デンプン20の更に別の層を堆積、発泡させることなどによっても、サンドイッチ構造を生成することができる。
【0066】
発泡シート11の所望の層厚に達したら、ガスの供給を停止し、そして真空高温炉を1,000℃または2,000℃に加熱して炭化または黒鉛化することができる。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
- 発泡可能なデンプン粉末の少なくとも一つのできるだけ薄い層を、耐熱性のシート状土台上に散布施用し、
- デンプン粉末でコーティングされた前記土台を炉中に入れ、
- 約720mbarから約1,000mbarまでの内圧が調節されるまで、空気を置換しつつ、または空気を炉からポンプで排出することによって、アルゴンまたは窒素を炉中に導入し、
- 炉を180℃から最大450℃までの発泡温度に加熱して、土台上でデンプン粉末を発泡させ、及び
- 10時間までの比較的長い期間にわたって、前記発泡温度を維持して、前記の発泡されたデンプンを安定化して発泡シートとする、
ことによって、デンプン粉末または粉末形態の他の発泡可能なポリマー/ポリマー混合物から炭素発泡シートを製造する方法。
2. 安定化によって取り扱いが可能になった発泡シート11を、真空または保護ガス中で、>1,000℃で炭化するか、または>2,000℃で黒鉛化することを特徴とする、前記1.に記載の方法。
3. 発泡可能なデンプン粉末として、コーンスターチ、タピオカデンプン、小麦デンプン、またはオーツ麦または穀類をベースにして得られたデンプン粉末が使用されることを特徴とする、前記1.に記載の方法。
4. 発泡温度への加熱が、約5℃/分の加熱速度で行われることを特徴とする、前記1.に記載の方法。
5. 前記シート状土台が、黒鉛化可能な材料からできていることを特徴とする、前記1.~4.のいずれか1項に記載の方法。
6. 前記シート状土台が、鋼、黒鉛または他の耐熱性材料からできていることを特徴とする、前記1.~4.のいずれか1項に記載の方法。
7. 前記発泡可能なデンプン粉末が、シート状土台上への散布前または散布中に、篩分けされることを特徴とする、前記1.~6.のいずれか1項に記載の方法。
8. デンプン粉末の各発泡後、発泡可能なデンプンの更に別のできるだけ薄い層を、既に存在する比較的薄い発泡された発泡シート上に散布施用し、そして発泡を繰り返すことを特徴とする、前記1.~7.のいずれか1項に記載の方法。
9. 前記デンプン粉末が、発泡シートの構造化された表面を形成するために、局所的に異なる層厚で、シート状土台上にまたは既に発泡された発泡シート上に施用されることを特徴とする、前記1.~8.のいずれか1項に記載の方法。
10. デンプン粉末の比較的厚い層が施用される場合、前記発泡温度を約10%低下させることを特徴とする、前記1.~9.のいずれか1項に記載の方法。
11. シート状土台として、黒鉛化可能な材料である、ポリアクリロニトリルなどのポリマーが使用されることを特徴とする、前記1.~10.のいずれか1項に記載の方法。
12. デンプン粉末または粉末形態の他の発泡可能なポリマー/ポリマー混合物から炭素発泡シートを製造する方法を実施するための装置であって、アルゴンまたは窒素で満たしたボックス(1)中に炉(2)が配置されており、ここで、前記炉(2)は、デンプンがコーティングされたシート状土台(4)を置くための加熱ゾーン(3)を備えており、前記炉(2)は連続炉であり、この連続炉(2)は、デンプンがコーティングされたシート状土台(4)を、供給位置(6)から加熱ゾーン(3)に、そしてそこから取り出し位置(7)に搬送するための搬送装置(5)を装備しており、及び供給位置(6)及び取り出し位置(7)は、空間的に同じ箇所または互いに隣り合って存在することができることを特徴とする、前記装置。
13. 搬送装置(5)が、耐高温性のコンベアベルトであることを特徴とする、前記12.に記載の装置。
14. 供給位置(6)の上方に、振盪装置(8)に連結された、デンプンを収容するための容器(9)が配置されており、及び該容器(9)が篩装置(10)を装備していることを特徴とする、前記12.または13.に記載の装置。
15. デンプン粉末または粉末形態の他の発泡可能なポリマー/ポリマー混合物から炭素発泡シートを製造する方法を実施するための装置であって、加熱可能な真空高温炉(12)が、排気可能な断熱ハウジング(13)を装備しており、前記ハウジング(13)は、横側からハウジング(13)中に突出している、不活性ガスのためのガス入口(16)を備えており、ここで、前記ガス入口(16)は、同時に、デンプン粉末(20)のための供給装置と連結されており、及びハウジング(13)中には、ガス入口(16)の下方に、デンプン粉末(20)を層状に堆積するための置き場(15)が存在することを特徴とする、前記装置。
16. 前記供給装置が貯蔵容器(19)から構成され、該貯蔵容器(19)は、ガス入口(16)の側壁を終点とするその下にあるアングル管(17)と接続されており、及びガス入口(16)中に形成された、供給された不活性ガス(16’)または空気のガス流を用いてハウジング(13)中の置き場(15)上に堆積させるデンプン(20)のための計量供給補助としてのスクリューコンベア(18)がアングル管(17)中に存在することを特徴とする、前記15.に記載の装置。
【符号の説明】
【0067】
1 ボックス
2 炉
3 加熱ゾーン
4 シート状土台
4’ デンプン粉末
5 コンベアベルト/搬送装置
6 供給位置
7 取り出し位置
8 振盪装置
9 容器
10 篩装置
11 発泡シート
12 真空高温炉
13 ハウジング
14 接続ポート
15 置き場
16 ガス入口
16’ 不活性ガス
17 アングル管
18 スクリューコンベア
19 貯蔵容器
20 デンプン