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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】経路探索システムおよび経路探索方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/005 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
G08G1/005
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024517668
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2022018947
(87)【国際公開番号】W WO2023209823
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044455(WO,A1)
【文献】特開2008-116320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0225068(US,A1)
【文献】特開2014-190725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内を移動する人の経路を探索する経路探索システムであって、
前記人の経路を探索する処理を実行する制御部と、
前記施設内での前記人の動線を示す複数の動線データの履歴情報を記憶する記憶部とを備え、
前記制御部は、
前記施設内でのユーザの移動開始地点および移動終了地点を含む地点情報と、前記ユーザが指定する前記ユーザの歩行速度を含む指定情報とを取得し、
前記履歴情報と前記地点情報とに基づき、前記ユーザが移動可能な複数の経路を決定し、
前記指定情報に基づき、前記複数の経路から前記ユーザに対する推奨経路を決定し、
画像を表示する表示部に対して前記推奨経路を出力する、経路探索システム。
【請求項2】
前記歩行速度は、第1歩行速度と、前記第1歩行速度よりも大きい第2歩行速度とを含み、
前記制御部は、前記複数の動線データの各々について平均歩行速度を算出し、
前記複数の経路は、第1経路と第2経路とを含み、
前記第2経路に属する動線データの平均歩行速度の平均値は、前記第1経路に属する動線データの平均歩行速度の平均値よりも大きく、
前記第1歩行速度が指定された場合は、前記第1経路と前記第2経路とのうち、前記第1経路が決定される割合が高く、
前記第2歩行速度が指定された場合は、前記第1経路と前記第2経路とのうち、前記第2経路が決定される割合が高い、請求項1に記載の経路探索システム。
【請求項3】
前記指定情報は、前記ユーザが指定する一時停止指定を含み、
前記一時停止指定は、移動中の一時停止を回避する一時停止無指定を含み、
前記複数の経路は、第3経路と第4経路とを含み、
前記第4経路に属する動線データにおいて前記人の一時停止が発生する割合は、前記第3経路に属する動線データ前記人の一時停止が発生する割合よりも大きく、
前記一時停止無指定が指定された場合は、前記一時停止無指定が指定されていない場合よりも、前記第3経路と前記第4経路とのうち、前記第3経路が決定される割合が高い、請求項1または請求項2に記載の経路探索システム。
【請求項4】
前記一時停止指定は、移動中の一時停止を許容する一時停止有指定を含み、
前記一時停止有指定が指定された場合は、前記一時停止有指定が指定されていない場合よりも、前記第3経路と前記第4経路とのうち、前記第4経路が決定される割合が高い、請求項3に記載の経路探索システム。
【請求項5】
前記指定情報は、前記ユーザが指定する異速度指定を含み、
前記異速度指定は、前記ユーザの歩行速度と適合しない速度で歩く前記人を回避するための異速度無指定を含み、
前記制御部は、前記複数の動線データの各々について平均歩行速度を算出し、
前記複数の経路は、第5経路と第6経路とを含み、
前記第6経路に属する動線データの平均歩行速度の標準偏差は、前記第5経路に属する動線データの平均歩行速度の標準偏差よりも大きく、
前記異速度無指定が指定された場合は、前記異速度無指定が指定されていない場合よりも、前記第5経路と前記第6経路とのうち、前記第5経路が決定される割合が高い、請求項1に記載の経路探索システム。
【請求項6】
施設内を移動する人の経路を探索する経路探索方法であって、
前記施設内での前記人の動線を示す複数の動線データの履歴情報を記憶するステップと、
前記施設内でのユーザの移動開始地点および移動終了地点を含む地点情報と、前記ユーザが指定する前記ユーザの歩行速度を含む指定情報とを取得するステップと、
前記履歴情報と前記地点情報とに基づき、前記ユーザが移動可能な複数の経路を決定するステップと、
前記指定情報に基づき、前記複数の経路から前記ユーザに対する推奨経路を決定するステップと、
画像を表示する表示部に対して前記推奨経路を出力するステップとを備える、経路探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施設内を移動する人の経路を探索する経路探索システムおよび経路探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設などの施設内において、施設利用者のためにルート案内を行うシステムが開発されている。たとえば、特開2011-7696号公報(特許文献1)には、現在位置と目的地とを地図上に表示し、移動可能な複数の経路について、施設内の混雑度に基づいて各経路の優先度を決定する経路探索システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-7696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歩行時において、歩行者間の歩行速度の違いによる追い越しあるいは歩行者が一時停止することによる衝突等の危険性などがあり、こういった要因により歩行者にストレスを感じさせる。特許文献1に開示された経路探索システムでは、混雑している経路を避け、移動時間が短くなる経路を推奨経路として提示可能であるものの、低ストレスかつ安全な経路を推奨経路として提示するといった点については何ら鑑みられていない。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、施設内を移動する人に対して低ストレスかつ安全に歩行できる経路を推奨経路として提示することができる経路探索システムおよび経路探索方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従う経路探索システムは、施設内を移動する人の経路を探索するシステムである。経路探索システムは、人の経路を探索する処理を実行する制御部と、施設内での人の動線を示す複数の動線データの履歴情報を記憶する記憶部とを備える。制御部は、施設内でのユーザの移動開始地点および移動終了地点を含む地点情報と、ユーザが指定するユーザの歩行速度を含む指定情報とを取得する。制御部は、履歴情報と地点情報とに基づき、ユーザが移動可能な複数の経路を決定する。制御部は、指定情報に基づき、複数の経路からユーザに対する推奨経路を決定する。制御部は、画像を表示する表示部に対して推奨経路を出力する。
【0007】
経路探索方法は、施設内を移動する人の経路を探索する方法である。経路探索方法は、施設内での人の動線を示す複数の動線データの履歴情報を記憶するステップと、施設内でのユーザの移動開始地点および移動終了地点を含む地点情報と、ユーザが指定するユーザの歩行速度を含む指定情報とを取得するステップと、履歴情報と地点情報とに基づき、ユーザが移動可能な複数の経路を決定するステップと、指定情報に基づき、複数の経路からユーザに対する推奨経路を決定するステップと、画像を表示する表示部に対して推奨経路を出力するステップとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、施設内を移動する人に対して低ストレスで歩行できる経路を推奨経路として提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に従う経路探索システムの全体構成図である。
図2】経路探索システムのハードウェア構成を示す図である。
図3】端末装置のディスプレイに表示される検索条件の入力画面の一例を示す図である。
図4】指定動線データを説明するための図である。
図5】平均歩行速度を説明するための図である。
図6】停止時間等を説明するための図である。
図7】経路分類を説明するための図である。
図8】動線算出結果を説明するための図である。
図9】異速度歩行確認を説明するための図である。
図10】経路毎の平均停止時間等を説明するための図である。
図11】経路特性と推奨経路の決定について説明するための図である。
図12】経路決定処理のフローチャートである。
図13】ストレス項目と経路との関係を説明するための図である。
図14】おすすめ経路の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本開示の実施の形態に従う経路探索システム100の全体構成図である。本実施の形態に従う経路探索システム100は、施設内を移動する人の経路を探索するシステムである。以下では、商業施設(例えば、ショッピングモール)内の経路を探索する場合を例として説明する。
【0012】
図1に示すように、経路探索システム100は、サーバ10,20と、端末装置30と、複数の無線通信機72と、複数のカメラ70とを備える。サーバ10、サーバ20および端末装置30は、通信網NW(代表的には、インターネット)を介して互いに通信可能に構成されている。なお、サーバ10,20のみで経路探索システム100を構成するようにしてもよい。
【0013】
施設内には、多数の人が存在する。多数の人には、買い物客等の施設利用者、各店舗の従業員、清掃員、警備員、および施設管理者等が含まれている。また、施設内を移動する移動体として、人以外にも移動型ロボット40が含まれてもよい。
【0014】
移動型ロボット40は、例えば、自律移動型の掃除機である清掃ロボット、自律移動型の搬送ロボット、買い物客4,5からの問い合わせに対応する自律移動型の案内ロボット等である。移動型ロボット40は、バッテリを搭載しており、バッテリに蓄えられた電力を用いて施設内を移動することができる。
【0015】
移動型ロボット40には、無線通信機42が搭載されている。無線通信機42は、たとえば、BLE(Bluetooth Low Energy、「Bluetooth」が登録商標)通信規格に従う通信方式を用いて、移動型ロボット40の位置を検出するための信号を発信する。BLE通信規格に代えて、UWB(Ultra Wide Band)通信規格等に従う通信方式を用いてもよい。または、無線通信機42は、例えばLTE(Long Term Evolution)等の無線通信規格に従う通信方式を用いて、移動型ロボット40を識別するためのID(Identification)や、移動型ロボット40の運転状態を示す信号等をサーバ20へ送信する。
【0016】
買い物客4が利用するショッピングカート60には、無線通信機62が搭載されている。無線通信機62は、無線通信機42と同様に、BLE通信規格またはUWB通信規格等に従う通信方式を用いて、ショッピングカート60の位置を検出するための信号を発信する。
【0017】
複数の無線通信機72および複数のカメラ70は、例えば、施設の天井45に適当な距離をおいて設置される。複数の無線通信機72は、移動型ロボット40の無線通信機42およびショッピングカート60の無線通信機62と同じ通信規格に従う通信方式を用いて、移動型ロボット40およびショッピングカート60から発生される信号を受信するとともに、その受信強度を検知する。無線通信機72における受信強度から、ショッピングモール内における移動型ロボット40およびショッピングカート60の位置を測定することができる。無線通信機72は、移動型ロボット40およびショッピングカート60から受信した信号の受信強度をサーバ20へ出力する。
【0018】
カメラ70は、施設内を撮像し、撮像画像(動画像)をサーバ20へ出力する。撮像画像には、施設内に存在する人(買い物客、従業員等)または移動型ロボット40の画像が含まれている。なお、無線通信機72およびカメラ70は、壁に設置されてもよい。
【0019】
サーバ20は、屋内位置情報システムあるいは監視カメラシステムが想定される。サーバ20は、施設内に存在する移動体(人または物)を監視する。サーバ20には、天井45に設置された複数の無線通信機72およびカメラ70が通信接続されている。サーバ20は、移動型ロボット40を管理するサーバであってもよい。
【0020】
サーバ20は、無線通信機72において受信される信号の受信強度を無線通信機72から受信し、各無線通信機72における受信強度から、施設内における移動型ロボット40およびショッピングカート60の位置を測定する。また、サーバ20は、カメラ70からの撮像画像(動画像)に基づいて、人の位置を測定する。さらに、サーバ20は、ショッピングカート60の位置情報およびカメラ70からの撮像画像(動画像)に基づいて、動線データを生成する。サーバ20は、動線データを、通信網NWを経由してサーバ10へ送信可能である。
【0021】
サーバ10は、施設の利用者に対して、施設内の推奨経路(おすすめ経路、後述する図14参照)を生成して提示する機能を有する。ここで、施設の利用者は、買い物客、施設管理者等を含むものとする。サーバ10は、一例として、施設を運営する運営会社に設置されている。サーバ10は、運営会社から施設の管理を委託された管理担当者によって利用され得る。サーバ10は、生成した推奨経路(おすすめ経路)を、端末装置30を通じて利用者に表示する。
【0022】
なお、本実施の形態では、施設内を監視するサーバ20と推奨経路を生成するサーバ10を別体として構成されているが、これに限定されず、サーバ10,20を一体に構成してもよい。
【0023】
端末装置30は、通信網NWを介して、サーバ10と通信可能に接続されている。端末装置30は、通信機能および表示機能を有する情報処理装置であり、代表的にはスマートフォンまたはタブレットである。端末装置30は、施設内の買い物客1、施設管理者3、および各店舗の従業員等によって利用され得る。なお、端末装置30は、スマートフォンまたはタブレット等の携帯端末に限定されず、施設内に設置されたPC(Personal Computer)等であってもよい。
【0024】
端末装置30は、典型的には、ウェブブラウザを有している。端末装置30は、サーバ10にアクセスし、画面データ(WEB画面)を自装置に表示する。たとえば、ショッピングセンター内に提示された二次元コードを端末装置30のカメラで読み取り、二次元コードから特定されるURLにアクセスすることで、端末装置30からサーバ10にアクセスするようにしてもよい。あるいは、専用のアプリケーションソフトウェアをダウンロードし、本ソフトウェアを用いて端末装置30からサーバ10にアクセスするようにしてもよい。
【0025】
なお、本実施の形態では、端末装置30とサーバ10とを別体として構成されているが、これに限定されず、端末装置30とサーバ10とを一体に構成してもよい。
【0026】
図2は、経路探索システム100のハードウェア構成を示す図である。経路探索システム100は、サーバ10,20等を備えている。サーバ10,20で構成されるサーバ群は、経路探索システム100に係るプログラムやデータ等を記憶する記憶部と、経路探索システム100に係るプログラムを実行する制御部を備える。制御部は、人の経路を探索する処理等を実行する。記憶部は、施設内での人の動線を示す複数の動線データの履歴情報等を記憶している。
【0027】
サーバ群(サーバ10,20)は、制御部として、以下で説明するサーバ10のプロセッサ11およびサーバ20のプロセッサ21を備える。また、サーバ群(サーバ10,20)は、記憶部として、以下で説明するサーバ10のROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13およびHDD(Hard Disk Drive)14、ならびに、サーバ20のROM22、RAM23およびHDD24を備える。
【0028】
サーバ10は、主たる構成要素として、プログラムを実行するプロセッサ11と、データを不揮発的に格納するROM12と、プロセッサ11によるプログラムの実行により生成されたデータ、または、入力装置を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM13と、データを不揮発的に格納するHDD14と、通信IF(Interface)15とを含む。各構成要素は、相互にデータバス16によって接続されている。
【0029】
なお、通信IF15は、サーバ20および端末装置30とサーバ10との間で通信を行なうためのインターフェイスである。HDD14は、各種データを格納する。なお、サーバ10は、HDD14の代わりに、または、HDD14とともに他の不揮発性記憶装置を備えていてもよい。
【0030】
サーバ20は、主たる構成要素として、プロセッサ21、ROM22、RAM23、HDD24、および通信IF25を含む。各構成要素は、相互にデータバス26によって接続されている。通信IF25は、サーバ10、移動型ロボット40、無線通信機72およびカメラ70との間で通信を行なうためのインターフェイスである。HDD24は、移動型ロボット40の情報、施設の情報、ならびに、移動型ロボット40、人およびショッピングカート60の位置情報等を記憶する。また、HDD24は、移動型ロボット40を管理するための各種データベースを記憶している。
【0031】
なお、図2には、プロセッサ11,21の各々がプログラムを実行することによって必要な処理が提供される構成例を示したが、これらの提供される処理の一部または全部を、専用のハードウェア回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いて実装してもよい。
【0032】
端末装置30は、主たる構成要素として、プロセッサ31、ROM32、RAM33、入力部34、ディスプレイ35、および通信IF36を含む。各構成要素は、相互にデータバス37によって接続されている。入力部34は、ユーザ(例えば、買い物客1、施設管理者3等)からの入力を受け付ける。ディスプレイ35は、プロセッサ11からの処理結果等を出力する。入力部34とディスプレイ35とを一体化したタッチパネルディスプレイを採用してもよい。通信IF36は、サーバ10との間で通信を行なうためのインターフェイスである。HDD34は、インストールされたアプリ等を記憶する。
【0033】
サーバ20は、施設内に存在する人(買い物客、従業員など)の動きを監視する。サーバ20には、天井45に設置された複数の無線通信機72およびカメラ70が通信接続されている。複数の無線通信機72およびカメラ70は、天井45に適当な距離をおいて設置され、施設内に存在する買い物客4,5の動きを検知するために用いられる。無線通信機72およびカメラ70は、壁に設置されてもよい。
【0034】
具体的には、買い物客が利用するショッピングカート60には、無線通信機62が搭載されている。無線通信機62は、無線通信機72と同様に、BLE通信規格またはUWB通信規格等に従う通信方式を用いて、ショッピングカート60の位置を検出するための信号を発信する。
【0035】
無線通信機72は、ショッピングカート60の無線通信機62と同じ通信規格に従う通信方式を用いて、ショッピングカート60から発生される信号を受信するとともに、その受信強度を検知する。無線通信機72は、ショッピングカート60から受信した信号の受信強度をサーバ20へ出力する。カメラ70は、施設内を撮像し、撮像画像(動画像)をサーバ20へ出力する。撮像画像には、施設内を通行する買い物客4,5の画像が含まれている。
【0036】
サーバ20は、無線通信機72において受信される信号の受信強度を無線通信機72から受信し、各無線通信機72における受信強度から施設内におけるショッピングカート60の位置を測定する。また、サーバ20は、公知の画像解析技術を用いて、複数のカメラ70による撮像画像から人の位置を測定する。
【0037】
サーバ20は、これらの位置の測定情報に基づいて、施設内における人の動線を示す動線データを生成する。これらの動線データは、履歴情報としてHDD24に記憶される。サーバ20は、生成した動線データ(履歴情報)を、通信網NWを経由してサーバ10へ送信可能である。
【0038】
また、サーバ20は、無線通信機72において受信される信号の受信強度を無線通信機72から受信し、各無線通信機72における受信強度から施設内における移動型ロボット40の位置を測定する。そして、サーバ20は、移動型ロボット40の位置に基づいて、移動型ロボット40の移動軌跡を示す動線データを生成する。移動型ロボット40の動線データは、履歴情報としてHDD24に記憶される。
【0039】
本実施の形態においては、人の動線データに加えて移動型ロボット40の動線データも含めて履歴情報としてHDD24に記憶し、当該履歴情報に基づき推奨経路を決定するようにしている。しかし、これに限らず、人の動線データのみを履歴情報としてHDD24に記憶し、当該履歴情報に基づき推奨経路を決定するようにしてもよい。
【0040】
図3は、端末装置30のディスプレイ35に表示される検索条件(「経路検索条件」とも称する)の入力画面50の一例を示す図である。図3に示すように、入力画面50には、施設内のエリアを選択するための欄51、対象なる曜日と時間とを選択するための欄53、および、ストレス項目を選択するための欄54が設けられている。
【0041】
ユーザは、欄51において、経路検索条件としてエリア選択を行う。エリア選択において、対象となるフロアおよびエリアを選択する。たとえば、10階建ての建物である場合、1F(1階)~10F(10階)のいずれかのフロア、および、東エリアと西エリアとのうちのいずれかを選択する。本例においては、「3F-東」エリアが選択されている。
【0042】
ユーザによりエリアが選択されると、端末装置30は、サーバ10からフロアマップを取得して、選択されたエリアのフロアマップ52(3F-東エリアのマップ画像)を表示する。そして、利用者は、スタート地点(「移動開始地点」とも称する)とゴール地点(「移動終了地点」とも称する)を設定する。具体的には、フロアマップ52に、スタート地点として星印を設定し、ゴール地点として旗印を設定する。
【0043】
本実施の形態では、エリア選択において設定される情報を「地点情報」と称する。地点情報は、上述のように、施設内でのユーザの移動開始地点(スタート地点)および移動終了地点(ゴール地点)を含む。
【0044】
ユーザは、欄53において、経路検索条件として曜日・時間選択を行う。ユーザは、曜日として、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、日曜日のいずれかを選択する。また、ユーザは、時間として、10~11時、11~12時、12~13時、13~14時、14~15時、15~16時、16~17時、17~18時、18~19時、19~20時のいずれかを選択する。ここで、10~20時が本ショッピングセンターの営業時間であるとする。
【0045】
本実施の形態では、歩行者の歩行ストレスが低減され安全に歩行することができる経路の探索および表示を行う。このような経路を探索するために、経路検索条件として、ストレス項目が用意されている。
【0046】
歩行者によって、速く歩きたい・ゆっくり歩きたい、一時停止したい・一時停止したくないという事情が存在する。たとえば、一時停止したい例としては、ショッピングセンターにおいて、店舗に展示された商品を見るため(ウインドウショッピングのため)に店舗の前で長時間立ち止まることがある。他にも、トイレの前で同行者を待つために一時停止する場合がある。また、待ち合わせスポットとなっている場所では、一時停止が発生しやすい。エレベータを待つためにエレベータ前に一時停止することもある。
【0047】
歩行速度に関しては、たとえば、ウインドウショッピングのために移動が遅くなることがある。また、料金が上がらないように駐車場に早く到着したい、早くトイレに行きたいといった事情がある場合も移動が速くなることがある。また、老人や子供連れの場合は、移動が遅くなる傾向になる。その一方で、移動が速い若者は、移動が遅い経路を移動するとストレスに感じる。また、病人・けが人が発生するなど、緊急の場合に、救急隊や警察等が早く移動したい場合もある。
【0048】
歩行者間で歩行スピードの違いがあった場合、歩行者の追い越しなどが発生し、これによる衝突の危険性がある。また、急いで歩行している人にとっては、ゆっくりと一時停止しながら買物を楽しんでいる他の利用者が歩行の妨げとなり、移動の時間をロスしてしまう。その時間ロスを取り戻そうとしてさらに高速での歩行が発生するため、一時停止は危険歩行を誘発する原因にもなる。
【0049】
このように、ゆっくり歩行したい人にとっては、速く歩く人は危険である。速く歩きたい人にとっては、一時停止は歩行の妨げとなるため、一時停止者を回避したい。これらは、歩行者にとってストレスの原因となる。
【0050】
ユーザは、欄54において、経路検索条件として、ストレス項目を選択する。ユーザは、移動中、快適な気分で歩行できるようにするため、イライラやヒヤッとしにくい経路を探すためにストレス項目を選択する。ストレス項目は、「歩行速度」、「一時停止」(「一時停止指定」とも称する)、「異速度歩行」(「異速度指定」とも称する)の3つの項目により構成される。本実施の形態では、ストレス項目の選択において設定される情報を「指定情報」と称する。
【0051】
「歩行速度」は、自分の歩行速度に合った速度で歩行するために選択する項目である。歩行速度は、第1歩行速度と、第1歩行速度よりも大きい第2歩行速度とを含む。具体的には、「歩行速度」において、「最速」、「やや速い」、「普通」、「やや遅い」、「最遅」の中から歩行時の速度を選択する。これらは、最速、やや速い、普通、やや遅い、最遅の順に歩行速度が大きいことを示す。
【0052】
「一時停止」(一時停止指定)は、移動中に、一時停止を避けるか、許容するかを選択する項目である。一時停止指定は、一時停止によるストレスを回避するために移動中の一時停止を回避する「一時停止無指定」と、移動中の一時停止を許容する「一時停止有指定」とを含む。
【0053】
具体的には、「一時停止」において、「-」、「無し」(一時停止無指定)、「有り」(一時停止有指定)のいずれかを選択する。「無し」を選択した場合、移動中の一時停止を回避するルートが推奨される。「有り」を選択した場合、利用者が移動中の一時停止を許容するルートが推奨される。「-」を選択した場合、推奨ルートの決定時において、本項目が考慮されない。
【0054】
「異速度歩行」(異速度指定)は、移動中に、異速度歩行をする人を避けるか否かを選択する項目である。異速度歩行者は、同じ経路を歩行している人の中でユーザの歩行速度と適合しない速度(ユーザが「速い」または「遅い」と感じる速度)で歩く人のことを指す。同一経路の平均速度の分布が正規分布とならない場合、(例えば二項分布の場合)は速度の違う人が同経路を歩くため、追い越しによる衝突の危険性がある(詳細は後述の図9参照)。
【0055】
異速度指定は、ユーザの歩行速度と適合しない速度で歩く人を回避するための「異速度無指定」を含む。自分の歩行速度より遅い速度で歩行する人にイライラする、あるいは、自分より速い速度で歩行する人に追い越された際にびっくりするなど、自分と異なる速度で歩行する人に対してストレスを感じする場合は、「無し」(異速度無指定)を設定する。「-」を選択した場合、推奨ルートの決定時において、本項目が考慮されない。
【0056】
図3で示した例においては、ユーザは、自分の歩行速度が「やや遅い」と感じており、一時停止する人がいるかいないかを気にしておらず、自分と異なる速度で歩行する人に対してストレスを感じているとする。このため、ユーザは、「歩行速度」として「やや遅い」を選択し、「一時停止」として「-」を選択し、「異速度歩行」として「無し」を選択している。
【0057】
端末装置30が地点情報と指定情報とを含む検索条件(エリア選択、曜日・時間選択、ストレス項目選択)のユーザ入力を受け付けた場合、端末装置30は、動線マップ生成依頼信号を送信するとともに、受け付けた検索条件をサーバ10へ送信する。
【0058】
サーバ10は、動線マップ生成依頼信号および検索条件を受信すると、サーバ20に対して指定動線データを要求する。サーバ20は、履歴データから指定されたエリア・曜日・時間に対応する動線データ(「指定動線データ」と称する。図4参照)の履歴情報を収集して、サーバ10に送信する。
【0059】
以降、サーバ10は、履歴情報(指定動線データ)、地点情報等に基づき、ユーザが移動可能な複数の経路を決定する。さらに、サーバ10は、指定情報を含む検索条件等に基づき、複数の経路からユーザに対する推奨経路を決定する。
【0060】
具体的には、サーバ10は、平均歩行速度の算出(図5参照)、停止時間等の算出(図6参照)、経路分類(図7参照)を行う。サーバ10は、これらの結果に基づいて、動線計算結果を求め(図8参照)、さらに、サーバ10は、経路・平均停止時間等を算出する(図10参照)。また、サーバ10は、異速度歩行確認を行う(図9参照)。そして、サーバ10は、これらの算出結果に基づいて、経路特性を求めて推奨経路を決定する(図11図13参照)。
【0061】
以上、算出した結果に基づいて、サーバ10は、推奨経路を含む表示画面を生成する。端末装置30は、生成された表示画面をサーバ10から受信して、これをディスプレイ35に表示する(図14参照)。以下、平均歩行速度の算出以降の流れを、図4図14を用いて具体的に説明する。
【0062】
図4は、指定動線データを説明するための図である。図3の例においては、ユーザは、3F-東エリアを選択し、さらに、フロアマップ52に示したようなスタート地点とゴール地点を設定している。
【0063】
この場合、サーバ10は、3F-東エリアにおいて設定されたスタート地点およびゴール地点に対応した動線データの履歴をサーバ20から指定動線データとして取得する。各動線データは、動線番号が割り振られている。つまり、指定動線データは、3F-東エリアにおいて採取された動線データであって、動線データ内のスタート地点およびゴール地点がフロアマップ52に示されたものに該当するものである。
【0064】
図4に示すように、本例において、指定動線データは、動線番号「23456」,「53432」の動線データを含む複数の動線データである。動線データは、採取されたエリアにおける、複数の時刻および座標の情報により構成されるデータである。
【0065】
たとえば、動線番号「23456」では、「3F-東」エリアにおいて、時刻1「13:13:32」の人の位置が座標1(X,Y)=(124,23)にあり、時刻2「13:13:33」の移動体の位置が座標2(X,Y)=(125,23)にあることを示す。時刻「13:13:32」は、時刻が13時13分32秒であることを示す。
【0066】
座標(X,Y)は、「3F-東」エリアにおけるフロアの位置をX軸およびY軸の位置により特定するデータである。人は、「13:13:32」から「13:13:33」の1秒間で、X軸方向に「1」(125-124)進んだことを示している。本例では、X軸方向に1進むと、東方向に1m進んだことを意味し、Y軸方向に1進むと、北方向に1m進んだことを意味する。
【0067】
同様に、動線番号「53432」では、「3F-東」エリアにおいて、時刻1「13:42:16」の人の位置が座標1(X,Y)=(75,354)にあり、時刻2「13:42:17」の人の位置が座標2(X,Y)=(76,358)にあることを示す。この場合、移動体は、1秒間で、X軸方向に「1」、Y軸方向に「4」進んだことを示している。
【0068】
図5は、平均歩行速度を説明するための図である。サーバ10は、図4で示した指定動線データの各動線における平均歩行速度を算出する。上述のように、動線番号「23456」では、時刻2-時刻1=1秒、座標2-座標1=(1,0)=東方向に1m移動と算出される。また、時刻1~2の平均速度=物理距離1m÷時間1秒=1m/秒と算出される。
【0069】
サーバ10は、上記処理をデータ内の時刻分繰り返して、各時刻の速度を求める。たとえば、時刻1-2:1m/秒、時刻2-3:1m/秒、時刻3-4:1.2m/秒・・・のように算出されたとする。そして、サーバ10は、求めた各時刻の速度に基づき動線23456全体の平均速度(平均歩行速度)を算出する。図5に示すように、動線番号「23456」の平均歩行速度は「1.05m/秒」と算出されたとする。また、動線番号「53432」の平均歩行速度は「1.20m/秒」と算出されたとする。
【0070】
図6は、停止時間等を説明するための図である。サーバ10は、指定動線データの各動線の停止時間等を算出する。指定動線データにおいて、時刻が進んでも、座標が変わらない場合、その時間は停止しているとみなす。
【0071】
たとえば、動線番号「23456」において、時刻「13:13:45」~「13:13:47」で座標に変化がなかった場合、停止期間1「13:13:45」~「13:13:47」での停止時間=2秒間として設定する。また、時刻「13:13:56」~「13:13:59」で座標に変化がなかった場合、停止期間2「13:13:56」~「13:13:59」での停止時間=3秒間として算出する。
【0072】
そして、図6に示すように、サーバ10は、動線番号「23456」において、合計停止時間=5秒間(2秒間+3秒間)、最大停止時間=3秒間(停止期間2での停止)、最小停止時間=2秒間(停止期間1での停止)、停止回数=2回と算出する。
【0073】
同様に、サーバ10は、動線番号「53432」において、合計停止時間=1秒間、最大停止時間=1秒間、最小停止時間=1秒間、停止回数=1回と算出したものとする。
【0074】
次に、サーバ10は、各動線の座標より、経路を分類する。図7は、経路分類を説明するための図である。図7の画面91には、施設内のフロアを天井から見た平面図が模式的に示されている。図7に示すように、施設には、複数の出入口、複数の店舗、店舗倉庫、買い物客が通行するための買物客通路、従業員が通行するための従業員通路、機械室、休憩室、化粧室(Toilet)、および、エレベータEV1,2が設けられている。
【0075】
図7中に示された移動軌跡(「動線」とも称する)A0,B0は、人またはショッピングカート60の移動軌跡(動線)を示しており、人またはショッピングカート60が通路を通って出入口、エレベータ、および店舗等の設備の間を移動する様子を表している。
【0076】
ここで、移動軌跡A0は、動線番号「23456」による移動軌跡を示す。移動軌跡B0は、動線番号「53432」による移動軌跡を示す。つまり、図4に示された指定動線データにおいて、動線番号「23456」の各座標をフロアマップにプロットして作成した移動軌跡が移動軌跡A0である。動線番号「53432」の各座標をフロアマップにプロットして作成した移動軌跡が移動軌跡B0である。
【0077】
サーバ10は、移動軌跡を複数の経路に分類する。ここでは、画面中央に円形に配置された複数の店舗に対して、反時計回りに進む経路を「経路A」と分類し、時計回りに進む経路を「経路B」と分類するものとする。本例では、サーバ10は、移動軌跡A0を経路Aに分類し、移動軌跡B0を経路Bに分類する。
【0078】
図8は、動線算出結果を説明するための図である。サーバ10は、図5図7に示した、「平均歩行速度」、「停止時間等」および「経路分類」の算出結果を、動線算出結果としてまとめる。
【0079】
図8に示すように、サーバ10は、動線番号「23456」において、経路=経路A、平均速度(平均歩行速度)=1.05m/秒、合計停止時間=5秒間、最大停止時間=3秒間、最小停止時間=2秒間、停止回数=2回と設定する。
【0080】
同様に、サーバ10は、動線番号「53432」において、経路=経路B、平均速度(平均歩行速度)=1.20m/秒、合計停止時間=1秒間、最大停止時間=1秒間、最小停止時間=1秒間、停止回数=1回と設定する。
【0081】
次に、サーバ10が実施する異速度歩行確認について説明する。図9は、異速度歩行確認を説明するための図である。
【0082】
サーバ10は、動線の平均歩行速度と経路分類より、各経路に属する動線の速度の分布を確認し、経路毎の標準偏差を算出する。これにより、同一経路内での歩行速度のばらつきが把握可能になる。
【0083】
経路Aに属する動線番号「23456」の動線においては、上述のように平均速度(「動線平均速度」とも称する)=1.05m/秒である。その他の動線の動線平均速度は、それぞれ、1.2、1.02、0.98、1.15、1.02、1.04、0.99m/秒であったとする。サーバ10は、これらのデータから経路Aの標準偏差を算出する。算出した経路Aの標準偏差は、0.078である。
【0084】
経路Bに属する動線番号「53432」の動線においては、上述のように平均速度(動線平均速度)=1.2m/秒である。その他の動線の動線平均速度は、それぞれ、1.15、1.23、1.23、1.31、1.22、1.21、1m/秒であったとする。サーバ10は、これらのデータから経路Bの標準偏差を算出する。算出した経路Bの標準偏差は、0.090である。
【0085】
各経路の動線平均速度のデータ群をプロットすると、図9に示したような属性を持つ分布に分類することができる。たとえば、ピークを1つ持つ正規分布であって標準偏差が小さいもの、ピークを1つ持つ正規分布であって標準偏差が大きいものに分類される。
【0086】
前者においては、同じような速度で歩行する人が多いことが示される。この場合、歩行者同士の衝突や追い抜きが発生しづらい。一方、後者においては、同じような速度で歩行する人が多いものの歩行速度にばらつきがあることが示される。この場合、前者よりも、歩行者同士の衝突や追い抜きが発生しやすくなる。
【0087】
また、ピークを2つ持つ二峰性分布、ピークを3つ以上持つ多峰性分布に分類される。二峰性分布または多峰性分布の場合、同一経路に異なる速度で歩行する人のグループが2つ(二峰性分布)または3つ以上(多峰性分布)存在することになり、衝突や追い抜きの可能性が高くなる。サーバ10は、分布が「二峰性分布」または「多峰性分布」に該当する場合、「異速度歩行」があると判定してもよい。
【0088】
たとえば、「異速度歩行」のストレス項目において、異速度無指定(「無し」)が指定された場合において、分布が「二峰性分布」または「多峰性分布」に該当する経路を除外して推奨経路を決定するようにしてもよい。
【0089】
図10は、経路毎の平均停止時間等を説明するための図である。サーバ10は、図8に示した動線算出結果より、経路毎の平均停止時間等を算出する。
【0090】
具体的には、図8の動線算出結果において、経路Aに属するデータを抽出し、これらの「平均速度」の平均値を経路Aの「平均速度」として算出し、これらの「合計停止時間」の平均値を経路Aの「平均停止時間」(図10において、単に「停止時間」と表記する)として算出し、これらの「停止回数」の平均値を経路Aの「平均停止回数」(図10において、単に「停止回数」と表記する)として算出する。経路Bについても同様である。
【0091】
その結果、図10に示すように、サーバ10は、「経路A」において、平均速度=1.05m/秒、停止時間=10秒、停止回数=3回と算出している。また、サーバ10は、「経路B」において、平均速度=1.40m/秒、停止時間=1秒、停止回数=1回と算出している。
【0092】
図11は、経路特性と推奨経路の決定を説明するための図である。サーバ10は、図10で示した経路毎の平均停止時間等のデータ、および、図9で示した異速度歩行確認のデータから、経路特性のデータを作成する。
【0093】
具体的には、図11に示すように、サーバ10は、経路毎の平均速度、停止時間、停止回数、標準偏差を経路特性のデータとして設定する。「経路A」において、平均速度=1.05m/秒、停止時間=10秒、停止回数=3回、標準偏差=0.078である。「経路B」において、平均速度=1.40m/秒、停止時間=1秒、停止回数=1回、標準偏差=0.090である。
【0094】
ここで、図3の例においては、ストレス項目選択において、項目「歩行速度」(歩行速度指定)において「やや遅い」を選択し、項目「一時停止」(一時停止指定)において選択を行わず、項目「異速度歩行」(異速度歩行指定)として「無し」を選択している。
【0095】
サーバ10が分類した複数の経路には様々な特性がある。たとえば、経路B1に属する動線データの平均歩行速度の平均値は、経路A1に属する動線データの平均歩行速度の平均値よりも大きい。また、経路B2に属する動線データにおいて人の一時停止が発生する割合は、A2経路に属する動線データ人の一時停止が発生する割合よりも大きい。経路B3に属する動線データの平均歩行速度の標準偏差は、A3に属する動線データの平均歩行速度の標準偏差よりも大きい。
【0096】
上記のような特性を持つ経路A1~A3,B1~B3があった場合、「歩行速度」のストレス項目において、第1歩行速度(たとえば、「やや遅い」)が指定された場合は、経路A1と経路B1とのうち、平均歩行速度の平均値が小さい経路A1が推奨経路として決定される割合が高い。第1歩行速度より大きい第2歩行速度(たとえば、「やや遅い」より歩行速度が大きい「やや速い」)が指定された場合は、経路A1と経路B1とのうち、平均歩行速度の平均値が大きいB1経路が推奨経路として決定される割合が高い。
【0097】
「一時停止」のストレス項目において、一時停止無指定(「無し」)が指定された場合は、一時停止無指定が指定されていない場合よりも、経路A2と経路B2とのうち、一時停止が発生する割合が小さい経路A2が推奨経路として決定される割合が高い。一時停止有指定(「有り」)が指定された場合は、一時停止有指定が指定されていない場合よりも、経路A2と経路B2とのうち、一時停止が発生する割合が大きい経路B2が推奨経路として決定される割合が高い。
【0098】
「異速度歩行」のストレス項目において、異速度無指定(「無し」)が指定された場合は、異速度無指定が指定されていない場合よりも、経路A3と経路B3とのうち、平均歩行速度の標準偏差が小さい経路A3が推奨経路として決定される割合が高い。
【0099】
なお、「異速度歩行」のストレス項目において、ユーザの歩行速度と適合しない速度で歩く人を許容する異速度有指定(「有り」)が指定されるようにしてもよい。この場合、異速度有指定が指定された場合は、異速度有指定が指定されていない場合よりも、経路A3と経路B3とのうち、平均歩行速度の標準偏差が大きい経路B3が推奨経路として決定される割合が高くなる。
【0100】
なお、経路A1とA2とA3とは同一の経路であってもよいし、互いに異なる経路であってもよい。経路B1とB2とB3とは同一の経路であってもよいし、互いに異なる経路であってもよい。
【0101】
推奨経路の決定は、たとえば、次のように行ってもよい。まず、各経路の評価値Vを「V=V1+V2+V3」の式により求める。そして、評価値Vが最小となる経路を推奨経路として決定する。
【0102】
ここで、V1は、歩行速度指定および平均速度に応じて決定される評価値であり、P11,P12,P13・・・P1Nのいずれかの値が選択される。各値は、P11<P12<P13<・・・<P1Nの大小関係である。
【0103】
V2は、一時停止指定および停止時間に応じて決定される評価値であり、P22,P22,P23・・・P2Nのいずれかの値が選択される。各値は、P21<P22<P23<・・・<P2Nの大小関係である。なお、V2は、一時停止指定および停止回数に応じて決定されるようにしてもよい。
【0104】
V3は、異速度歩行指定および標準偏差に応じて決定される評価値であり、P31,P32,P33・・・P3Nのいずれかの値が選択される。各値は、P31<P32<P33<・・・<P3Nの大小関係である。
【0105】
以下、経路決定処理のフローチャートを用いて、各経路の評価値Vの算出および決定される推奨経路について説明する。図12は、経路決定処理のフローチャートである。
【0106】
このフローチャートに示される一連の処理は、サーバ10によって実行される。各ステップは、サーバ10のプロセッサ11によるソフトウェア処理により実現されるが、サーバ10内に配置されたLSI(Large Scale Integration)等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0107】
経路決定処理が開始すると、サーバ10は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)1において、歩行速度指定および平均速度に応じて評価値V1を決定する。たとえば、歩行速度指定「最速」、「やや早い」、「普通」、「やや遅い」、「最遅」のそれぞれに対応する歩行速度がそれぞれ予め定められているとする。
【0108】
そして、指定した歩行速度指定に対応する歩行速度と、平均速度が最も近い経路にはV1=P11を設定し、次に平均速度が近い経路にはV1=P12を設定し、以下、近い順に、P13,P14・・・を設定していく。
【0109】
本例では、歩行速度指定「やや遅い」に対応する歩行速度=1.00であるとする。このため、1.00に最も平均速度が最も近い経路A(1.05)にはV1=P11を設定し、次に平均速度が近い経路B(1.40)にはV1=P12(>P11)を設定する。
【0110】
サーバ10は、S2において、一時停止指定および停止時間に応じて評価値V2を決定する。たとえば、一時停止指定「-」が選択された場合には、評価値V2=0を設定する。一時停止指定「無し」が選択された場合には、停止時間が短い経路順にV2=P21,P22,P23・・・が付与される。一時停止指定「有り」が選択された場合には、停止時間が長い経路順にV2=P21,P22,P23・・・が付与される。本例では、歩行速度指定「-」が選択されているため、経路A,Bのいずれの経路にもV2=0が設定される。
【0111】
なお、サーバ10は、S2において、一時停止指定および停止回数に応じて評価値V2を決定するようにしてもよい。たとえば、一時停止指定「-」が選択された場合には、評価値V2=0を設定する。一時停止指定「無し」が選択された場合には、停止回数が少ない経路順にV2=P21,P22,P23・・・が付与される。一時停止指定「有り」が選択された場合には、停止回数が多い経路順にV2=P21,P22,P23・・・が付与される。
【0112】
サーバ10は、S3において、異速度歩行指定および標準偏差に応じて評価値V3を決定する。たとえば、異速度歩行指定「-」が選択された場合には、評価値V3=0を設定する。異速度歩行指定「無し」が選択された場合には、標準偏差が小さい経路順にV3=P31,P32,P33・・・が付与される。
【0113】
本例では、歩行速度指定「無し」が選択されているため、標準偏差が最も小さい経路A(0.078)にはV3=P31を設定し、次に標準偏差が小さい経路B(0.090)にはV3=P32(>P31)を設定する。
【0114】
なお、歩行速度指定「無し」が選択されている場合、平均速度の分布が図9において示した多峰性分布または二峰性分布に該当する経路を除外して、推奨経路を決定するようにしてもよい。
【0115】
サーバ10は、S4において、評価値V=V1+V2+V3の式から評価値Vを算出する。本例においては、経路Aにおいて、V=P11+P31(=P11+0+P31)である。経路Bにおいて、V=P12+P32(=P12+0+P32)である。
【0116】
サーバ10は、S5において、評価値Vが最小となる経路を推奨経路に決定し、経路決定処理を終了する。本例においては、経路Aの評価値V(=P11+P31)は、経路Bの評価値V(=P12+P32)よりも小さい(P11<P12、P31<P32であるため)。このため、サーバ10は、推奨経路として、経路Aを決定する。
【0117】
図13は、ストレス項目と経路との関係を説明するための図である。上述のように、ストレス項目には、「歩行速度」、「一時停止」、「異速度歩行」がある。
【0118】
上記例において、経路Aは、経路Bよりも平均速度が小さいため、遅く歩きたい人向けの経路であることが言える。遅く歩きたい人が平均速度の大きい経路を走行するとストレスに感じる。たとえば、「歩行速度」として「やや遅い」、「最遅」を選択したような場合は、経路Bよりも経路Aを選択する方が望ましい。
【0119】
経路Aは、経路Bよりも平均速度が小さいため、一時停止が発生しやすいと言える。このため、一時停止を避けたい場合は、経路Aよりも経路Bを選択する方が望ましい。
【0120】
経路Aは、経路Bよりも標準偏差が小さいため、異速度歩行が少なく安全であると言える。このため、異速度歩行を避けたい場合は、経路Bよりも経路Aを選択する方が望ましい。
【0121】
ストレス項目選択において、「歩行速度」=「最速」、「やや速い」を選択したユーザに対しては、平均歩行速度が大きい経路が優先的に選択される。その際、速くゴール地点に到着することを優先するならば、異速度歩行が多くても、一時停止が少ない経路が優先的に選択されるようにしてもよい。
【0122】
ストレス項目選択において、「歩行速度」=「最遅」、「やや遅い」を選択したユーザに対しては、平均歩行速度が小さい経路が優先的に選択される。その際、安全に歩行することを優先するならば、一時停止が多くても、異速度歩行が少ない経路が優先的に選択されるようにしてもよい。
【0123】
図14は、おすすめ経路の表示例を示す図である。サーバ10は、以上算出したデータに基づき、推奨経路(おすすめ経路)を含む表示画面を生成する。端末装置30は、生成した表示画面を探索結果として表示する。
【0124】
上述のように、ユーザは、ストレス項目選択において、「歩行速度」として「やや遅い」を選択し、「一時停止」として「-」を選択し、「異速度歩行」として「無し」を選択している。その結果、サーバ10は、歩行速度が遅く、かつ、異速度歩行が少ない「経路A」を選択している。図14に示すように、端末装置30は、画面92のように、「おすすめ経路」として「経路A」を表示する。
【0125】
移動軌跡A4は、おすすめ経路である経路Aである。スタート地点STおよびゴール地点GLは、図3の入力画面において設定したスタート地点およびゴール地点を示す。
【0126】
画面92には、図4で示した指定動線データを表示するようにしてもよい。たとえば、経路Aとして移動軌跡A1~A3、経路Bとして移動軌跡B1~B3がそれぞれ示されている。なお、平均移動速度に応じて動線(移動軌跡)の色を変えて表示するようにしてもよい。
【0127】
このように、本実施の形態においては、屋内の移動経路の探索方法として、移動中の歩行者のストレスを考慮した経路を探索して表示する。具体的には、経路毎に平均速度、一時停止、異速度歩行のデータ(標準偏差)を保持し、これらに基づいて、歩行速度、移動中の一時停止の有無、異速度歩行者の有無を考慮して最適な経路を探索している。このようにすることで、施設内を移動する人に対して低ストレスかつ安全に歩行できる経路を推奨経路として提示することができる。
【0128】
[付記および効果]
上述した実施形態は、以下の付記の具体例である。
【0129】
(付記1)
施設内を移動する人の経路を探索する経路探索システムであって、
前記人の経路を探索する処理を実行する制御部と、
前記施設内での前記人の動線を示す複数の動線データの履歴情報を記憶する記憶部とを備え、
前記制御部は、
前記施設内でのユーザの移動開始地点および移動終了地点を含む地点情報と、前記ユーザが指定する前記ユーザの歩行速度を含む指定情報とを取得し、
前記履歴情報と前記地点情報とに基づき、前記ユーザが移動可能な複数の経路を決定し、
前記指定情報に基づき、前記複数の経路から前記ユーザに対する推奨経路を決定し、
画像を表示する表示部に対して前記推奨経路を出力する、経路探索システム。
【0130】
このようにすることで、ユーザの歩行速度に適した推奨経路を決定することができる。これにより、速度が異なる歩行者間の追い越しや衝突等の危険性を低減してストレスを低減できるため、施設内を移動する人に対して低ストレスかつ安全に歩行できる経路を推奨経路として提示することができる。
【0131】
(付記2)
前記歩行速度は、第1歩行速度と、前記第1歩行速度よりも大きい第2歩行速度とを含み、
前記制御部は、前記複数の動線データの各々について平均歩行速度を算出し、
前記複数の経路は、第1経路と第2経路とを含み、
前記第2経路に属する動線データの平均歩行速度の平均値は、前記第1経路に属する動線データの平均歩行速度の平均値よりも大きく、
前記第1歩行速度が指定された場合は、前記第1経路と前記第2経路とのうち、前記第1経路が決定される割合が高く、
前記第2歩行速度が指定された場合は、前記第1経路と前記第2経路とのうち、前記第2経路が決定される割合が高い、付記1に記載の経路探索システム。
【0132】
このようにすることで、ユーザの歩行速度が小さい場合は平均歩行速度の小さい経路を推奨経路として決定し、ユーザの歩行速度が大きい場合は平均歩行速度の大きい経路を推奨経路として決定することができるため、ユーザの歩行速度に適した推奨経路を決定することができる。
【0133】
(付記3)
前記指定情報は、前記ユーザが指定する一時停止指定を含み、
前記一時停止指定は、移動中の一時停止を回避する一時停止無指定を含み、
前記複数の経路は、第3経路と第4経路とを含み、
前記第4経路に属する動線データにおいて前記人の一時停止が発生する割合は、前記第3経路に属する動線データ前記人の一時停止が発生する割合よりも大きく、
前記一時停止無指定が指定された場合は、前記一時停止無指定が指定されていない場合よりも、前記第3経路と前記第4経路とのうち、前記第3経路が決定される割合が高い、付記1または付記2に記載の経路探索システム。
【0134】
このようにすることで、ユーザが一時停止を回避したい場合は一時停止が発生しづらい経路を推奨経路として決定するため、一時停止による危険およびストレスを回避する経路を推奨経路として決定することができる。
【0135】
(付記4)
前記一時停止指定は、移動中の一時停止を許容する一時停止有指定を含み、
前記一時停止有指定が指定された場合は、前記一時停止有指定が指定されていない場合よりも、前記第3経路と前記第4経路とのうち、前記第4経路が決定される割合が高い、付記3に記載の経路探索システム。
【0136】
このようにすることで、ユーザが一時停止を許容する場合は一時停止が発生しやすい経路を推奨経路として決定するため、立ち止まりながらのんびりと歩行したい場合には、同様の歩行者が多く存在する経路を推奨経路として決定することができる。
【0137】
(付記5)
前記指定情報は、前記ユーザが指定する異速度指定を含み、
前記異速度指定は、前記ユーザの歩行速度と適合しない速度で歩く前記人を回避するための異速度無指定を含み、
前記制御部は、前記複数の動線データの各々について平均歩行速度を算出し、
前記複数の経路は、第5経路と第6経路とを含み、
前記第6経路に属する動線データの平均歩行速度の標準偏差は、前記第5経路に属する動線データの平均歩行速度の標準偏差よりも大きく、
前記異速度無指定が指定された場合は、前記異速度無指定が指定されていない場合よりも、前記第5経路と前記第6経路とのうち、前記第5経路が決定される割合が高い、付記1~付記4のいずれか1つに記載の経路探索システム。
【0138】
このようにすることで、ユーザの歩行速度と適合しない速度で歩く人を回避したい場合には、速度差のある歩行者が混在する経路(標準偏差が大きい)を回避した経路を推奨経路として決定することができる。これにより、異速度歩行による危険およびストレスを回避することができる。
【0139】
(付記6)
施設内を移動する人の経路を探索する経路探索方法であって、
前記施設内での前記人の動線を示す複数の動線データの履歴情報を記憶するステップと、
前記施設内でのユーザの移動開始地点および移動終了地点を含む地点情報と、前記ユーザが指定する前記ユーザの歩行速度を含む指定情報とを取得するステップと、
前記履歴情報と前記地点情報とに基づき、前記ユーザが移動可能な複数の経路を決定するステップと、
前記指定情報に基づき、前記複数の経路から前記ユーザに対する推奨経路を決定するステップと、
画像を表示する表示部に対して前記推奨経路を出力するステップとを備える、経路探索方法。
【0140】
このようにすることで、施設内を移動する人に対して低ストレスかつ安全に歩行できる経路を推奨経路として提示することができる。
【0141】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0142】
1,4,5 買い物客、3 施設管理者、10,20 サーバ、11,21,31 プロセッサ、15,25,36 通信IF、16,26,37 データバス、22,32 ROM、23,33 RAM、30 端末装置、34 入力部、35 ディスプレイ、40 移動型ロボット、42,62,72 無線通信機、45 天井、50,51,53,54 欄、52 フロアマップ、60 ショッピングカート、70 カメラ、91,92 画面、100 経路探索システム、NW 通信網。
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