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特許7570581プログラム、デバッグ装置、デバッグシステム及びデバッグ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】プログラム、デバッグ装置、デバッグシステム及びデバッグ方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/36 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
G06F11/36 120
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024547026
(86)(22)【出願日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2024013010
【審査請求日】2024-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】原 泰裕
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/207919(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0024500(US,A1)
【文献】特開2012-084030(JP,A)
【文献】特表2016-506550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
プログラマブル表示器の画面設計のデバッグのために、前記プログラマブル表示器に操作信号を出力して前記プログラマブル表示器に対するユーザの操作をシミュレーションするシミュレーション手段、
前記操作信号に応じて前記プログラマブル表示器が出力したログに基づいて前記デバッグの試験成績書を生成する成績書生成手段、
として機能させ
前記シミュレーション手段は、前記ユーザによる前記コンピュータに対する入力操作と、前記画面設計に係るプロジェクトデータとに基づいて前記操作信号を生成し、
前記成績書生成手段は、前記ログと前記プロジェクトデータとに基づいて前記試験成績書を生成する、
プログラム。
【請求項2】
前記プロジェクトデータは、複数の画面に関するデータを含み、
前記試験成績書は、前記複数の画面の遷移の網羅性に関する情報を含む、
請求項に記載のプログラム。
【請求項3】
前記プロジェクトデータは、複数のスイッチに関するデータを含み、
前記試験成績書は、前記複数のスイッチの押下の網羅性に関する情報を含む、
請求項又はに記載のプログラム。
【請求項4】
前記プロジェクトデータは、数値入力に関するデータを含み、
前記試験成績書は、前記数値入力における境界値の網羅性に関する情報を含む、
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記プロジェクトデータは、条件分岐を含むスクリプト文に関するデータを含み、
前記試験成績書は、前記条件分岐の条件の網羅性に関する情報を含む、
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項6】
前記コンピュータをさらに、
前記ログと前記プロジェクトデータとに基づいて、前記デバッグに必要な試験項目に漏れがあるか否かを判定する漏れ判定手段、
前記漏れ判定手段により前記必要な試験項目に漏れがあると判定されたとき、前記ユーザによる入力操作に漏れがあることを前記ユーザに通知する通知手段、
として機能させる請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項7】
前記通知手段はさらに、前記漏れ判定手段により前記必要な試験項目に漏れがないと判定されたとき、前記デバッグが完了したことを前記ユーザに通知する、
請求項に記載のプログラム。
【請求項8】
デバッグ装置であって、
プログラマブル表示器の画面設計のデバッグのために、前記プログラマブル表示器に操作信号を出力して前記プログラマブル表示器に対するユーザの操作をシミュレーションするシミュレーション手段と、
前記操作信号に応じて前記プログラマブル表示器が出力したログに基づいて前記デバッグの試験成績書を生成する成績書生成手段と、
を備え
前記シミュレーション手段は、前記ユーザによる前記デバッグ装置に対する入力操作と、前記画面設計に係るプロジェクトデータとに基づいて前記操作信号を生成し、
前記成績書生成手段は、前記ログと前記プロジェクトデータとに基づいて前記試験成績書を生成する、
デバッグ装置。
【請求項9】
請求項に記載のデバッグ装置と、前記プログラマブル表示器とを備えるデバッグシステム。
【請求項10】
コンピュータが、
プログラマブル表示器の画面設計のデバッグのために、前記プログラマブル表示器に操作信号を出力して前記プログラマブル表示器に対するユーザの操作をシミュレーションし、
前記操作信号に応じて前記プログラマブル表示器が出力したログに基づいて前記デバッグの試験成績書を生成
前記操作信号は、前記ユーザによる前記コンピュータに対する入力操作と、前記画面設計に係るプロジェクトデータとに基づいて生成され、
前記試験成績書は、前記ログと前記プロジェクトデータとに基づいて生成される、
デバッグ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、デバッグ装置、デバッグシステム及びデバッグ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラマブル表示器(Human Machine Interface:以下「HMI」ともいう)の画面設計の際には作画ソフトと呼ばれる画面設計ソフトウェアが使用される。作画ソフトで作成した画面設計に係るデータはプロジェクトデータと呼ばれる。
【0003】
作画ソフトで作成したプロジェクトデータにはデバッグが必要である。デバッグの際には、作成された全画面への遷移、作成された全スイッチの押下、数値入力についての境界値、スクリプト文の条件分岐について全条件を漏れなく確認する必要がある。
【0004】
特許文献1には、表示器の操作画面に表示されたオブジェクト、デバイス及び実行条件を含む各項目を組み合わせたカバレッジ画面データを出力し、カバレッジ画面データに基づいたシミュレーション機能により実際に設定した全ての実行条件を行ったか否かが確認できるデバッグ装置が開示されている。特許文献1のデバッグ装置により、デバッグ検証が容易となる。なお、カバレッジとは、試験すべき項目を漏れなく試験したこと、あるいは試験すべき項目に漏れがあることを示すものをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-155158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のデバッグ装置によるデバッグの際には、予めどのような項目をカバレッジ計測の対象にするかを事前に人手で設定して試験方案を作成する必要がある。さらに、デバッグのエビデンスを作成するために、デバッグ後にもデバッグの実施結果を反映した試験成績書の作成をする必要がある。試験方案とは、試験すべき項目をまとめたものをいう。試験成績書とは、試験すべき項目を漏れなく試験したこと及び各試験項目の試験結果を示すものをいう。そのため、デバッグのエビデンスを作成する手間が大きい。
【0007】
本開示の目的は、上記の事情に鑑み、プログラマブル表示器の画面設計のデバッグにおいて、試験成績書を容易に生成できるプログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示に係るプログラムは、
コンピュータを、
プログラマブル表示器の画面設計のデバッグのために、前記プログラマブル表示器に操作信号を出力して前記プログラマブル表示器に対するユーザの操作をシミュレーションするシミュレーション手段、
前記操作信号に応じて前記プログラマブル表示器が出力したログに基づいて前記デバッグの試験成績書を生成する成績書生成手段、
として機能させ
前記シミュレーション手段は、前記ユーザによる前記コンピュータに対する入力操作と、前記画面設計に係るプロジェクトデータとに基づいて前記操作信号を生成し、
前記成績書生成手段は、前記ログと前記プロジェクトデータとに基づいて前記試験成績書を生成する
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、プログラマブル表示器の画面設計のデバッグにおいて、試験成績書を容易に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係るデバッグシステムの全体構成を示す図
図2】本開示の実施の形態に係るデバッグシステムにおけるプロジェクトデータの一例を示す図
図3】本開示の実施の形態に係るHMIが出力するログの一例を示す図
図4】本開示の実施の形態に係るデバッグ装置が出力する試験成績書の一例を示す図
図5】本開示の実施の形態に係るデバッグ装置のハードウェア構成の一例を示す図
図6】本開示の実施の形態に係るデバッグ装置によるデバッグの動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態に係るデバッグシステムを説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0012】
(実施の形態)
図1を参照しながら、実施の形態に係るデバッグシステム1を説明する。デバッグシステム1は、プログラマブル表示器であるHMI20と、HMI20の画面設計をデバッグするためのデバッグ装置10とを備える。デバッグシステム1は、本開示に係るデバッグシステムの一例である。
【0013】
デバッグ装置10は、HMI20の画面設計をデバッグするためのデバッグ装置である。デバッグ装置10は、例えば作画ソフトがインストールされたパーソナルコンピュータである。デバッグ装置10は、ユーザによるデバッグ装置10に対する入力操作と、HMI20の画面設計に係るプロジェクトデータとに基づいて操作信号をHMI20に出力することにより、HMI20上の操作をシミュレーションする。後述するが、HMI20は、操作信号に応じて各種動作を実行し、実行結果のログをデバッグ装置10に出力する。デバッグ装置10は、HMI20が出力したログとプロジェクトデータとに基づいて試験成績書を生成して出力する。また、デバッグ装置10は、ログとプロジェクトデータとに基づいて試験項目に漏れがあるか否かを判定し、試験項目に漏れがあるときはユーザの入力操作に漏れがあることをユーザに通知し、試験項目に漏れがないときはデバッグが完了したことをユーザに通知する。デバッグ装置10の機能的構成については後述する。デバッグ装置10は、本開示に係るデバッグ装置の一例である。
【0014】
HMI20は、プログラマブル表示器(HMI)である。HMI20は、作画ソフトにより作成されたプロジェクトデータに基づく画面を表示し、ユーザからの操作を受け付ける。ただし、デバッグシステム1によるHMI20のデバッグにおいては、HMI20がユーザからの操作を受け付けるのに代えて、デバッグ装置10からの操作信号を受け付ける。これにより、ユーザは、デバッグ装置10に対する入力操作にて、HMI20に対する操作をシミュレーションすることができる。HMI20は、操作信号に応じて各種動作を実行する。例えば、プロジェクトデータが複数の画面に関するデータを含み、操作信号が画面遷移の操作であるとき、HMI20は画面遷移の動作を実行する。HMI20は、動作の実行結果のログをデバッグ装置10に出力する。HMI20は、本開示に係るプログラマブル表示器の一例である。
【0015】
図2を参照しながら、作画ソフトにて作成される、画面設計に係るプロジェクトデータの一例を説明する。図2に示すプロジェクトデータは、画面切替設定に関するデータと画面群設定に関するデータとオブジェクト設定に関するデータとスクリプト設定に関するデータとを含む。画面切替設定のデータと画面群設定のデータとにより、HMI20上の操作にて複数の画面を切り替えることができる。オブジェクト設定により、画面上にスイッチ、数値入力オブジェクトなどユーザの操作を受付可能なオブジェクトを画面に表示させることができる。スクリプト設定は、HMI20上で実行されるスクリプト文に関する設定である。図2では1つのスクリプト文のみが設定されているが、スクリプト設定は複数のスクリプト文に関する設定を含み得る。また、1つのスクリプト文は、通常1以上の条件分岐を含む。なお、図2に示すGD100、GB100などの文字列はデバイス名を表す。
【0016】
図3を参照しながら、HMI20が操作信号に応じて出力するログの一例を説明する。図3に示すログは、操作信号により操作の対象となった画面切替、オブジェクト、スクリプトなどの要素と、対象となるデバイスを示す対象デバイス名と、対象デバイスに入力された入力値と、操作の結果として出力された出力情報とを含む。デバッグ装置10は、このログをプロジェクトデータと照らし合わせて分析して、試験成績書を生成し、かつ、ユーザの入力操作に漏れがあるか否かを判定する。
【0017】
例えば、プロジェクトデータが示す画面切替設定及び画面群設定と、ログが示す画面切替の項目とを分析することにより、画面遷移の網羅性に関する試験成績を求めることができ、画面遷移に関する入力操作の漏れがあるか否かを判定できる。
【0018】
同様に、プロジェクトデータが示すオブジェクト設定とログが示すオブジェクトの項目とを分析することにより、画面上に表示されるスイッチの押下の網羅性についても試験成績を求めることができ、全てのスイッチが押下されたか、それとも押下されていないスイッチが存在し入力操作の漏れがあるか否かを判定できる。例えば、図2に示すプロジェクトデータでは、デバイス名がGB100のスイッチとデバイス名がGB101のスイッチとの2つのスイッチがある。一方、図3に示すログは、デバイス名がGB100のスイッチはオン・オフされていることがわかるものの、デバイス名がGB101のスイッチの押下状況は不明である。図3に示すログが、デバイス名がGB101のスイッチに関するログを含まないとき、スイッチの押下操作に漏れがあることとなる。なお、画面上に表示されるスイッチとして、押しボタンスイッチ、スライドスイッチ、ロータリスイッチなどが挙げられる。また、スイッチに対する操作として、タッチ操作、スワイプ操作などが挙げられる。これらの操作はいずれも、画面を押下して操作するものであるため、これらの操作を含めて「押下」と表現する。
【0019】
同様に、プロジェクトデータが示すオブジェクト設定とログが示すオブジェクトの項目とを分析することにより、数値入力オブジェクトにおける境界値の網羅性についても、試験成績を求めることができ、境界値の入力に漏れがあるか否かを判定できる。境界値とは、数値入力オブジェクトに入力可能な下限値及び上限値のことである。境界値の網羅とは、数値入力オブジェクトに境界値及び境界値を超える次の値を入力して動作を確認することである。例えば図2に示すとおり、数値入力オブジェクトは符号なし16ビットであるため、0以上65535以下の数値のみ正常に受け入れられる値となる。したがって、境界値は0及び65535であり、境界値を超える次の値は-1及び65536である。
【0020】
同様に、プロジェクトデータが示すスクリプト設定とログが示すスクリプトの項目とを分析することにより、スクリプト文が含む条件分岐の条件の網羅性についても、試験成績を求めることができ、入力操作の漏れがあるか否かを判定できる。例えば、図2に示すとおりスクリプト設定が示すスクリプト番号1のスクリプト文は、デバイスGB100が1か否かによりPath1を実行するかPath2を実行するかの条件分岐を含む。図3に示すスクリプトの項目から、GB100が1の場合とそれ以外の場合の双方が実行されていることがわかるので、この場合は当該条件分岐の各条件は網羅されたこととなる。
【0021】
図4を参照しながら、デバッグ装置10が生成する試験成績書の一例を説明する。図4に示す試験成績書は、概ね図3に示すログをもとに生成されるが、図3に示す「出力情報」の項目に代えて同内容の「確認結果」の項目が設けられ、さらに「判定結果」の項目が設けられている点がログと異なる。「判定結果」は、図2に示すプロジェクトデータと照らし合わせて、確認結果に問題がないときに「OK」の判定となる。
【0022】
再び図1を参照し、デバッグ装置10の機能的構成を説明する。デバッグ装置10は、プロジェクト記憶部100と入力部101とシミュレーション部102と通信部103とログ取得部104とログ記憶部105と成績書生成部106と成績書出力部107と漏れ判定部108と通知部109と表示部110とを備える。
【0023】
プロジェクト記憶部100は、作画ソフトにて作成された、HMI20の画面設計に係るプロジェクトデータを保存する。上述のように、デバッグ装置10が、作画ソフトがインストールされたパーソナルコンピュータであるとき、当該プロジェクトデータはデバッグ装置10にて作成されたものであることが通常である。しかし、プロジェクトデータは、デバッグ装置10とは異なる他の装置で実行される作画ソフトにて作成されたものであってもよい。
【0024】
入力部101は、ユーザの入力操作を受け、ユーザの入力操作に応じた信号をシミュレーション部102に出力する。入力部101は、例えばキーボード・マウスなどの入力装置を含む。あるいは、入力部101は、後述の表示部110と一体となったタッチスクリーンであってもよい。
【0025】
シミュレーション部102は、入力部101が出力した、ユーザの入力操作に応じた信号と、プロジェクト記憶部100に保存されたプロジェクトデータとに基づいて、HMI20に対するユーザの操作をシミュレーションするための操作信号を生成して通信部103に出力する。シミュレーション部102は、本開示に係るシミュレーション手段の一例である。
【0026】
通信部103はHMI20と通信する。通信部103は特に、シミュレーション部102が出力した操作信号をHMI20に送信し、HMI20が出力したログを受信して後述のログ取得部104に出力する。
【0027】
ログ取得部104は、通信部103がHMI20から受信したログを取得して後述のログ記憶部105に保存する。
【0028】
ログ記憶部105は、ログ取得部104が取得して保存したログを保存する。
【0029】
成績書生成部106は、ログ記憶部105に保存されたログとプロジェクト記憶部100に保存されたプロジェクトデータとに基づいて試験成績書を生成する。ただし、試験成績書が生成されるのは、後述する漏れ判定部108によりユーザの入力操作に漏れがないと判定されたときだけである。これは、試験成績書が、試験すべき項目を漏れなく試験したことを示すものだからである。成績書生成部106は、生成した試験成績書を成績書出力部107に出力する。成績書生成部106は、本開示に係る成績書生成手段の一例である。
【0030】
成績書出力部107は、後述の表示部110を制御して、成績書生成部106が出力した試験成績書を表示部110に表示させる。これにより、ユーザは試験成績書を確認することができる。また、成績書出力部107は、あわせて、試験成績書を示すデータを図示しない記憶部に保存してもよい。
【0031】
漏れ判定部108は、ログ記憶部105に保存されたログとプロジェクト記憶部100に保存されたプロジェクトデータとに基づいて、デバッグに必要な試験項目に漏れがあるか否かを判定する。例えば、プロジェクトデータが図2に示すものであるとき、漏れ判定部108は、ログが全ての画面への遷移の網羅性、全てのスイッチの押下の網羅性、数値入力の境界値の網羅性、スクリプト文の条件分岐の条件の網羅性を確認し、試験項目に漏れがあるか否かを判定する。例えば、一部のスイッチが押下されていないとき、スイッチの押下について漏れがあると判定する。漏れ判定部108は、判定結果を示す信号を通知部109に出力する。漏れ判定部108は、本開示に係る漏れ判定手段の一例である。
【0032】
通知部109は、漏れ判定部108により必要な試験項目に漏れがあると判定されたとき、後述の表示部110を制御して、ユーザによる入力操作に漏れがあることを表示部110に表示させてユーザに通知する。上述のとおり、ログはシミュレーション部102が出力する操作信号に応じてHMI20が出力するものであり、操作信号はユーザによる入力部101に対する入力操作に基づくものであるため、必要な試験項目に漏れがあるとき、ユーザによる入力操作に漏れがあることとなる。通知部109は、本開示に係る通知手段の一例である。
【0033】
また、通知部109は、漏れ判定部108により必要な試験項目に漏れがないと判定されたとき、後述の表示部110を制御して、デバッグが完了したことを表示部110に表示させてユーザに通知する。
【0034】
表示部110は、成績書出力部107の制御に応じて試験成績書を表示する。表示部110は、通知部109の制御に応じて、ユーザの入力操作に漏れがあること、デバッグが完了したことを表示する。表示部110は、例えば液晶ディスプレイである。表示部110は、入力部101と一体となったタッチスクリーンであってもよい。
【0035】
デバッグ装置10のハードウェア構成の一例について、図5を参照しながら説明する。図5に示すデバッグ装置10は、例えばパーソナルコンピュータ、マイクロコントローラなどのコンピュータにより実現される。
【0036】
デバッグ装置10は、バス1000を介して互いに接続された、プロセッサ1001と、メモリ1002と、インタフェース1003と、二次記憶装置1004と、を備える。
【0037】
プロセッサ1001は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)である。プロセッサ1001が、二次記憶装置1004に記憶された動作プログラムをメモリ1002に読み込んで実行することにより、デバッグ装置10の各機能が実現される。
【0038】
メモリ1002は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成される主記憶装置である。メモリ1002は、プロセッサ1001が二次記憶装置1004から読み込んだ動作プログラムを記憶する。また、メモリ1002は、プロセッサ1001が動作プログラムを実行する際のワーキングメモリとして機能する。
【0039】
インタフェース1003は、例えばシリアルポート、USB(Universal Serial Bus)ポート、ネットワークインタフェースなどのI/O(Input/Output)インタフェースである。インタフェース1003により通信部103の機能が実現される。
【0040】
二次記憶装置1004は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)である。二次記憶装置1004は、プロセッサ1001が実行する動作プログラムを記憶する。二次記憶装置1004により、プロジェクト記憶部100及びログ記憶部105の機能が実現される。
【0041】
図6を参照しながら、デバッグ装置10による試験成績書生成の動作の一例を説明する。図6に示す動作は、例えばユーザがデバッグ装置10を操作してデバッグを開始させたときに実行される。また、図6に示す動作の実行にあたり、すでにプロジェクト記憶部100にはプロジェクトデータが保存されているものとする。
【0042】
デバッグ装置10のシミュレーション部102は、ユーザによる入力部101に対する入力操作と、プロジェクト記憶部100に保存されたプロジェクトデータとに基づいて操作信号を生成する(ステップS1)。このステップにて、ユーザがデバッグのためにデバッグ装置10に対して行った入力操作に対応する操作信号が生成される。
【0043】
シミュレーション部102は、ステップS1で生成した操作信号を、デバッグ装置10の通信部103を介してHMI20に出力することにより、HMI20に対するユーザ操作をシミュレーションする(ステップS2)。このステップにて、ユーザがデバッグのためにデバッグ装置10に対して行った入力操作がHMI20にてシミュレーションされ、HMI20は操作信号に対応した動作を実行し、ログを出力する。
【0044】
デバッグ装置10のログ取得部104は、HMI20が操作信号に応じて出力したログを、通信部103を介して取得してログ記憶部105に保存する(ステップS3)。
【0045】
デバッグ装置10の漏れ判定部108は、ステップS3にてログ記憶部105に保存されたログと、プロジェクト記憶部100に保存されたプロジェクトデータとに基づいて、デバッグに必要な試験項目に漏れがあるか否かを判定する(ステップS4)。
【0046】
ステップS4にて漏れがあると判定されたとき(ステップS5:Yes)、デバッグ装置10の通知部109は、表示部110を制御して、ユーザの入力操作に漏れがあることを通知する(ステップS6)。そしてデバッグ装置10はステップS1からの動作を繰り返すことにより、ユーザによる新たな入力操作をデバッグに反映させる。
【0047】
ステップS4にて漏れがないと判定されたとき(ステップS5:No)、通知部109は、表示部110を制御して、デバッグが完了したことを通知する(ステップS7)。
【0048】
デバッグ装置10の成績書生成部106は、ログ記憶部105に保存されたログと、プロジェクト記憶部100に保存されたプロジェクトデータとに基づいて、試験成績書を生成する(ステップS8)。
【0049】
デバッグ装置10の成績書出力部107は、表示部110を制御して、ステップS8にて生成された試験成績書を表示させる(ステップS9)。そしてデバッグ装置10はデバッグの動作を終了する。
【0050】
以上、実施の形態に係るデバッグシステム1を説明した。デバッグ装置10によれば、ユーザによるデバッグ装置10に対する入力操作と、HMI20の画面設計に係るプロジェクトデータとに基づいて、デバッグのためにHMI20に操作信号を出力することにより、ユーザによるHMI20に対する操作をシミュレーションする。デバッグ装置10は、HMI20が操作信号に応じて出力したログとプロジェクトデータとに基づいて試験成績書を生成する。そのため、デバッグシステム1によれば、HMI20の画面設計のデバッグにおいて、試験成績書を容易に生成できる。
【0051】
また、デバッグ装置10によれば、ログとプロジェクトデータとに基づいて、必要な試験項目に漏れがあるか否かを判定し、漏れがあるときにはユーザに入力操作の漏れを通知する。これにより、ユーザはデバッグの際に入力操作の漏れを容易に認識することができ、デバッグの際の追加操作が容易となる。
【0052】
(変形例)
実施の形態1に係るデバッグシステム1では、1回のデバッグにのみ着目したが、2回目以降のデバッグにも当然デバッグシステム1を利用することができる。また、2回目以降のデバッグの際に、前回のデバッグの際に生成された試験成績書を試験方案として利用することができる。これにより、前回のデバッグ時から変更のない箇所については前回のデバッグの試験成績書の結果を援用し、今回のデバッグの際に同一の操作を再びする手間を省略することができる。
【0053】
図5に示すハードウェア構成においては、デバッグ装置10が二次記憶装置1004を備えている。しかし、これに限らず、二次記憶装置1004をデバッグ装置10の外部に設け、インタフェース1003を介してデバッグ装置10と二次記憶装置1004とが接続される形態としてもよい。この形態においては、USBフラッシュドライブ、メモリカードなどのリムーバブルメディアも二次記憶装置1004として使用可能である。
【0054】
また、図5に示すハードウェア構成に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いた専用回路によりデバッグ装置10を構成してもよい。また、図5に示すハードウェア構成において、デバッグ装置10の機能の一部を、例えばインタフェース1003に接続された専用回路により実現してもよい。
【0055】
デバッグ装置10で用いられるプログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、USBフラッシュドライブ、メモリカード、HDD等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することが可能である。そして、かかるプログラムを特定の又は汎用のコンピュータにインストールすることによって、当該コンピュータをデバッグ装置10として機能させることが可能である。
【0056】
また、上述のプログラムをインターネット上の他のサーバが有する記憶装置に格納しておき、当該サーバから上述のプログラムがダウンロードされるようにしてもよい。
【0057】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。つまり、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0058】
1 デバッグシステム、10 デバッグ装置、20 HMI、100 プロジェクト記憶部、101 入力部、102 シミュレーション部、103 通信部、104 ログ取得部、105 ログ記憶部、106 成績書生成部、107 成績書出力部、108 漏れ判定部、109 通知部、110 表示部、1000 バス、1001 プロセッサ、1002 メモリ、1003 インタフェース、1004 二次記憶装置。
【要約】
デバッグ装置(10)は、HMI(20)の画面設計のデバッグのために、HMI(20)に操作信号を出力してHMI(20)に対するユーザの操作をシミュレーションするシミュレーション部(102)と、操作信号に応じてHMI(20)が出力したログに基づいてデバッグの試験成績書を生成する成績書生成部(106)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6